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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】抗ウイルス剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/12 20060101AFI20241126BHJP
   A61K 31/785 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20241126BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20241126BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A01N37/12
A61K31/785
A61P31/12
A61P31/16
A61Q11/00
A61P1/02
A61Q19/10
A61P17/00 101
A61Q19/00
A61K8/81
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020147171
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2022041763
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】田畑 優子
(72)【発明者】
【氏名】太田 聡子
(72)【発明者】
【氏名】仁科 彰
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-079239(JP,A)
【文献】特開2015-193560(JP,A)
【文献】ALASINO, R. V. and et al.,Macromol. Biosci.,2007年,Vol.7,pp.1132-1138,DOI:10.1002/mabi.200700102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A01N
C08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)と、下記式(2)で表されるメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)とを有し、
全構造単位100質量%に対して、該構造単位(A)の割合が5565質量%であり、該構造単位(B)の割合が3545質量%であり、その他の単量体由来の構造単位の割合が5質量%未満であり、
重量平均分子量が2万~5万である共重合体を含有し、
生活日用品、皮膚外用剤、化粧料、医薬部外品のいずれかに抗ウイルス性を付与するためのものであることを特徴とする抗ウイルス剤。
【化1】

【化2】
【請求項2】
対象ウイルスが、エンベロープウイルスであることを特徴とする請求項1に記載の抗ウルス剤。
【請求項3】
対象ウイルスが、インフルエンザウイルスであることを特徴とする請求項1または2に記載の抗ウイルス剤。
【請求項4】
ブチレングリコールまたはエタノールを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の抗ウイルス剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のウイルス剤を含むことを特徴とする生活日用品、皮膚外用剤または化粧料。
【請求項6】
化粧水、乳液、クリーム、ジェル、乳化物状、高分子ゲル状製剤、泡状製剤、多層状製剤、スプレー製剤、不織布に含浸させたシート、ゲルパック製剤のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の生活日用品、皮膚外用剤または化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザや新型コロナウイルス等のウイルスによる病気の感染予防のために、さまざまな抗ウイルス剤が提案されている。例えば、特許文献1には、メソポーラス構造を有することを特徴とするシリカを有効成分として含有する抗ウイルス剤が提案されている。特許文献2には、白金を担持したメソポーラス構造を有するシリカに、水又は水性の液体を接触させ、抗ウイルス作用を有する水又は水性の液体を得る技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-151598号公報
【文献】特開2020-000953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な抗ウイルス剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題を解決するための主な手段は、次のとおりである。
1.下記式(1)で表されるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)と、下記式(2)で表されるメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)とを有し、
全構造単位100質量%に対して、該構造単位(A)の割合が50~95質量%であり、該構造単位(B)の割合が5~50質量%であり、その他の単量体由来の構造単位の割合が5質量%未満であり、
重量平均分子量が2万~5万である共重合体を含有することを特徴とする抗ウイルス剤。
【化1】
【化2】
2.対象ウイルスが、エンベロープウイルスであることを特徴とする1.に記載の抗ウイルス剤。
3.対象ウイルスが、インフルエンザウイルスであることを特徴とする1.または2.に記載の抗ウイルス剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、抗ウイルス剤を提供することができる。本発明の抗ウイルス剤は、単体、または他の化合物と組み合わせた組成物、例えば抗ウイルス作用を有する化粧品、口腔ケア用品、石鹸等とすることができる。
なお、本発明において、抗ウイルス作用とは、ウイルスの増殖の抑制又は減少作用をいう。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、下記式(1)で表されるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)と、下記式(2)で表されるメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)との共重合体(INCI名:(アクリレーツ/メタクリル酸ジメチルアミノエチル)コポリマー)を有効成分として含有する抗ウイルス剤に関する。
【0008】
【化3】
【化4】
【0009】
本発明の抗ウイルス剤は、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)とメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)とを有する共重合体を含有し、
この共重合体は、全構造単位100質量%に対して、
メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)の割合が、50~95質量%、メタクリル酸エチル由来の構造単位(B)の割合が5~50質量%、その他の単量体由来の構造単位の割合が5質量%未満であり、
重量平均分子量が2万~5万である。
【0010】
<共重合体について>
共重合体の全構造単位100質量%に対する構造単位(A)の割合は、50~95質量%であり、50~85質量%が好ましく、50~75質量%がより好ましく、55~65質量%がさらに好ましい例として挙げられる。
共重合体の全構造単位100質量%に対する構造単位(B)の割合は、5~50質量%であり、15~50質量%が好ましく、25~50質量%がより好ましく、35~45質量%がさらに好ましい例として挙げられる。
なお、本明細書において、「A~B」(A、Bは数値)との記載は、A、Bも含む範囲を表す。
【0011】
本発明の共重合体は、上記メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)及びメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。その他の単量体(E)としては、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル及びメタクリル酸エチルと共重合できるものである限り特に制限されない。
【0012】
以下に単量体(E)として用いることができる単量体を例示する。
例えば、不飽和モノカルボン酸(塩)であり、(メタ)アクリル酸(塩)などが挙げられる。
例えば、(メタ)アクリル酸とアルキルアルコールとのエステルとして、アルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる。この場合アルキル基は直鎖構造であっても、分岐構造であってもよく、炭素数は1~12が好ましい。
例えば、上記(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステル(メタ)アクリレート類で、置換基を有するものが挙げられる。この場合置換基としては、水酸基、アルコキシ基、オキシアルキレン基、スルホン基などが挙げられる。
例えば、エチレン性不飽和基を2個以上有する単量体が含まれていてもよい。
例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、1,4-ブタンジオール等のポリオールの2置換以上の水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステル類;上記ポリオールの2置換以上の水酸基とアリルアルコール、ビニルアルコール等の不飽和アルコールとのエーテル類等が挙げられる。
これらその他の単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
本発明の抗ウイルス剤は、抗ウイルス作用を付与することを目的とする添加剤として提供され、また、本発明の抗ウイルス剤は、抗ウイルス作用を付与することを目的とする、衣服用洗剤、柔軟剤等の生活日用品、皮膚外用剤、化粧料、医薬部外品、医薬品等の組成物として提供されるものであって、通常使用される製剤化方法にしたがって製造することができ、化粧水、乳液、クリーム、ジェル等の溶液状、乳化物状、高分子ゲル状製剤、また、泡状製剤、多層状製剤、スプレー製剤、不織布等に含浸させたシートあるいはゲルパック製剤とすることができる。
【0014】
本発明の抗ウイルス剤には、植物油のような油脂類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、防腐剤、糖類、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子のような高分子、増粘剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、ヒアルロン酸のような保湿剤、香料、pH調整剤等を含有させることができる。ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分を含有させることもできる。
【0015】
本発明の抗ウイルス剤におけるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体の濃度は、抗ウイルス効果が期待できる範囲内であれば特に制限されないが、濃度の下限値は、抗ウイルス剤全質量%に対して0.0001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがさらに好ましい。また、濃度の上限値は、抗ウイルス剤全質量%に対して30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明の抗ウイルス剤の対象ウイルスは特に制限されないが、具体的には、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、ヘルペスウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス等のエンベロープウイルス、及び、ノロウイルス、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス等の非エンベロープウイルス(エンベロープを有さないウイルス)等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはエンベロープウイルスが挙げられ、より好ましくはインフルエンザウイルスが挙げられる。
【実施例
【0017】
以下、実施例に基づいて本発明について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)>
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。測定条件、装置などは以下の通りである。
装置:Waters社製 e2695
検出器:示差屈折率計(RI)検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel α-M、α-2500
カラム温度:40℃
流速:0.8mL/min
注入量:10μL(試料濃度0.4wt%の溶離液調製溶液)
検量線:ジーエルサイエンス社製 ポリエチレングリコール
GPCソフト:Waters社製 EMPOWER3
溶離液:0.5M酢酸+0.2M硝酸Na/アセトニトリル=50/50(v/v)
【0019】
<抗ウイルス作用の確認試験>
本発明のメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体(INCI名:(アクリレーツ/メタクリル酸ジメチルアミノエチル)コポリマーとして、全構造単位100質量%に対してメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルが約60質量%、メタクリル酸エチルが約40質量%であり、分子量が約30000である共重合体(以下、共重合体(1))37.9質量%、ブチレングリコール19.6質量%、水42.5質量%の混合物を用い、共重合体濃度が0.038質量%となるように水で薄めたものを試験液とした。
比較例として、ポリクオタニウム-51の5質量%水溶液(Lipidure(登録商標)-PMB、日油株式会社)を高分子濃度が0.038質量%となるように水で薄めたもの、70vol%エタノール水溶液を試験液とし、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)を対照とした。
【0020】
Influenza A virus(H3N2) A/Hong Kong/8/68株(A型インフルエンザウィルス、ATCC VR-1679)を宿主細胞であるMDCK細胞(ATCC CCL-34)に感染させ、この培養液の上清を、リン酸緩衝液(PBS)で100倍に希釈して試験ウイルス液を得た。
ASTM E1052-懸濁液中のウイルスに対する殺菌剤の活性を評価するための標準試験法-に準拠して、抗ウイルス試験を行った。
(抗ウイルス試験)
試験液0.9mlと試験ウイルス液0.1mlを混和し、10分間室温で静置した。その後、SCDLP9.0mlを加え、10倍希釈系列を作製し、宿主細胞であるMDCK細胞(ATCC CCL-34)に添加し、培養した。プラーク法により作用後のウイルス感染価(TCID50(50% Tissue Culture Infectious Dose))を求めた。
(抗ウィルス活性値)
抗ウィルス活性値は下記計算式により導いた。
抗ウィルス活性値=Log(対照のウィルス感染価)-Log(実施例又は比較例のウィルス感染価)
【0021】
【表1】
【0022】
本発明である実施例1は、抗ウイルス活性値が1.0より大きく、抗ウイルス作用を有していることが確認できた。
【0023】
(処方例1)化粧水
共重合体(1) 1%
1,3-ブチレングリコール 6%
グリセリン 4%
ジプロピレングリコール 1%
ソルビット 1%
クエン酸 0.1%
エタノール 5%
水 残余
【0024】
(処方例2)クリーム
共重合体(1) 1%
スクワラン 9%
ワセリン 5%
ステアリン酸 2%
ベヘニルアルコール 3%
1,3-ブチレングリコール 6%
ソルビット 1%
モノステアリン酸グリセリン 2%
POE(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル 2%
水 残余