(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】センサチップ、力覚センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/162 20200101AFI20241126BHJP
【FI】
G01L5/162
(21)【出願番号】P 2020215554
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 真也
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-063263(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0234104(US,A1)
【文献】米国特許第05526700(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0233774(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016212407(DE,A1)
【文献】特開2019-132613(JP,A)
【文献】特開2020-165898(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0334288(US,A1)
【文献】特開2020-091097(JP,A)
【文献】特開2006-275979(JP,A)
【文献】特開2016-057113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/16-5/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検知ブロックを有し、
各々の前記検知ブロックは、歪検出素子が配置されたT字型梁構造を2組以上備え、
各々の前記T字型梁構造は、第1検知用梁と、前記第1検知用梁から前記第1検知用梁と直交する方向に伸びる第2検知用梁と、を含み、
各々の前記検知ブロックにおいて、各々の前記T字型梁構造の前記第2検知用梁の端部同士が接続して接続部を形成し、
前記接続部には力点が設けられ、
前記力点に印加された入力に応じた前記歪検出素子の出力の変化に基づいて、所定の軸方向の力又はモーメントを最大で6軸検知する、センサチップ。
【請求項2】
前記検知ブロックを2つ以上有し、一方の前記検知ブロックの前記第1検知用梁と、他方の前記検知ブロックの前記第1検知用梁とは、互いに直交する、請求項1に記載のセンサチップ。
【請求項3】
平面視で、各々の前記検知ブロックは、前記センサチップの中心に対して点対称に配置されている、請求項1又は2に記載のセンサチップ。
【請求項4】
前記検知ブロックを4つ有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のセンサチップ。
【請求項5】
平面形状が矩形であり、
前記矩形の四隅に配置された第1支持部と、
前記矩形の中央に配置された第2支持部と、
隣接する前記第1支持部同士を連結する枠部と、
前記第2支持部と各々の前記第1支持部とを連結する連結部と、を有し、
各々の前記検知ブロックは、隣接する前記第1支持部と、該第1支持部に連結する前記枠部及び前記連結部と、前記第2支持部と、に囲まれた領域に配置される、請求項4に記載のセンサチップ。
【請求項6】
各々の前記検知ブロックは、前記T字型梁構造を3組備える、請求項5に記載のセンサチップ。
【請求項7】
3組の前記T字型梁構造は、平面視で、前記接続部を挟んで前記第1検知用梁が平行に配置された2組のT字型梁構造と、2組の前記T字型梁構造の前記第2検知用梁と平行に配置された前記第1検知用梁を備えた1組のT字型梁構造と、を含み、
1組の前記T字型梁構造の前記第1検知用梁は、前記接続部と前記第2支持部との間に配置されている、請求項6に記載のセンサチップ。
【請求項8】
前記6軸は、前記T字型梁構造の厚さ方向であるZ軸、前記Z軸に直交するX軸及びY軸を含み、
前記第1検知用梁に、前記X軸方向の変位及び前記Y軸方向の変位を検知する複数の前記歪検出素子を配置し、
前記第2検知用梁に、前記Z軸方向の変位を検知する複数の前記歪検出素子を配置した、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のセンサチップ。
【請求項9】
前記第1検知用梁に、前記Z軸方向のモーメントを検知する複数の前記歪検出素子を配置し、
前記第2検知用梁に、前記X軸方向のモーメント及び前記Y軸方向のモーメントを検知する複数の前記歪検出素子を配置した、請求項
8に記載のセンサチップ。
【請求項10】
請求項1乃至
9のいずれか一項に記載のセンサチップと、印加された力及び/又はモーメントを前記センサチップに伝達する起歪体と、を有する力覚センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサチップ、力覚センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、所定の軸方向の変位を検知する力覚センサ装置が知られている。一例として、センサチップと、センサチップの周囲に配置され、外力が加わる外力印加板、センサチップを支持する台座部、外力印加板を台座部に固定する外力緩衝機構、外力伝達機構である連結ロッドから成る構造体を備え、外力印加板と作用部が連結ロッドで連結されている力覚センサ装置が挙げられる。
【0003】
センサチップは、中央部に位置するほぼ正方形の形状をした作用部と、この作用部を囲むような位置にある正方形リング形状の支持部と、作用部と支持部の間に位置して四辺の各部分に対応して両者を連結するT字形状の4つの連結部とから構成されている。4つの連結部の各々はT字梁となっており、橋梁部と弾性部を有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、定格の大きな力覚センサ装置の要求があるが、定格の大きな力覚センサ装置を構成する起歪体の変位は小型のものに比べ大きい。そのため、上記のセンサチップの構造では、起歪体から入力される特定の方向の変位に対して大きく変形できない梁が存在し、その梁が破壊してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、様々な方向の変位に対する梁の破壊耐性を向上したセンサチップの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本センサチップ(100)は、複数の検知ブロック(B1~B4)を有し、各々の前記検知ブロック(B1~B4)は、歪検出素子(FxR1等)が配置されたT字型梁構造(131T1等)を2組以上備え、各々の前記T字型梁構造(131T1等)は、第1検知用梁(131a等)と、前記第1検知用梁(131a等)から前記第1検知用梁(131a等)と直交する方向に伸びる第2検知用梁(131b等)と、を含み、各々の前記検知ブロック(B1~B4)において、各々の前記T字型梁構造(131T1等)の前記第2検知用梁(131b等)の端部同士が接続して接続部(141等)を形成し、前記接続部(141等)には力点(151等)が設けられ、前記力点(151等)に印加された入力に応じた前記歪検出素子(FxR1等)の出力の変化に基づいて、所定の軸方向の力又はモーメントを最大で6軸検知する。
【0008】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、様々な方向の変位に対する梁の破壊耐性を向上したセンサチップを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る力覚センサ装置を例示する斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る力覚センサ装置を例示する断面斜視図である。
【
図3】入力伝達部にセンサチップが取り付けられた状態を示す上面側斜視図である。
【
図4】入力伝達部にセンサチップが取り付けられた状態を示す下面側斜視図である。
【
図5】センサチップ100をZ軸方向上側から視た斜視図である。
【
図6】センサチップ100をZ軸方向上側から視た平面図である。
【
図7】センサチップ100をZ軸方向下側から視た斜視図である。
【
図8】センサチップ100をZ軸方向下側から視た底面図である。
【
図9】各軸にかかる力及びモーメントを示す符号を説明する図である。
【
図10】センサチップ100のピエゾ抵抗素子の配置を例示する図である。
【
図11】
図10に示すセンサチップの1組の検知ブロックの部分拡大図である。
【
図12】各ピエゾ抵抗素子を用いた検出回路の一例を示す図(その1)である。
【
図13】各ピエゾ抵抗素子を用いた検出回路の一例を示す図(その2)である。
【
図16】センサチップにFx入力があった場合のシミュレーション結果である。
【
図17】センサチップにMz入力があった場合のシミュレーション結果である。
【
図18】センサチップにFz入力があった場合のシミュレーション結果である。
【
図20】起歪体を構成する受力板を例示する斜視図である。
【
図21】起歪体を構成する起歪部を例示する斜視図である。
【
図22】起歪体を構成する入力伝達部を例示する上面側の斜視図である。
【
図23】起歪体を構成する入力伝達部を例示する下面側の斜視図である。
【
図24】起歪体を構成する入力伝達部を例示する側面図である。
【
図25】起歪体を構成する蓋板を例示する斜視図である。
【
図26】起歪部にFx入力があった場合のシミュレーション結果である。
【
図27】起歪部にMz入力があった場合のシミュレーション結果である。
【
図28】センサチップ100AをZ軸方向上側から視た平面図である。
【
図29】センサチップ100BをZ軸方向上側から視た部分平面図である。
【
図30】センサチップ100CをZ軸方向上側から視た部分平面図である。
【
図33】起歪体を構成する入力伝達部を例示する斜視図である。
【
図34】起歪体を構成する蓋板を例示する斜視図である。
【
図36】起歪体を構成する起歪部を例示する下面側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
〈第1実施形態〉
(力覚センサ装置1の概略構成)
図1は、第1実施形態に係る力覚センサ装置を例示する斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る力覚センサ装置を例示する断面斜視図である。
図1及び
図2を参照すると、力覚センサ装置1は、センサチップ100と、起歪体200とを有している。力覚センサ装置1は、例えば、工作機械等に使用されるロボットの腕や指等に搭載される多軸の力覚センサ装置である。
【0013】
センサチップ100は、所定の軸方向の変位を最大で6軸検知する機能を有している。起歪体200は、印加された力及び/又はモーメントをセンサチップ100に伝達する機能を有している。以降の実施形態では、一例として、センサチップ100が6軸を検知する場合について説明するが、これには限定されず、例えば、センサチップ100は3軸を検知する場合等にも用いることができる。
【0014】
起歪体200は、受力板210と、起歪部220と、入力伝達部230と、蓋板240とを有している。受力板210上に起歪部220が積層され、起歪部220上に入力伝達部230が積層され、入力伝達部230上に蓋板240が積層され、全体として略円筒状の起歪体200を形成している。なお、起歪体200としての機能は主に起歪部220及び入力伝達部230が担っているため、受力板210及び蓋板240は必要に応じて設けられる。
【0015】
なお、本実施形態では、便宜上、力覚センサ装置1において、蓋板240側を上側又は一方の側、受力板210側を下側又は他方の側とする。また、各部位の蓋板240側の面を一方の面又は上面、受力板210側の面を他方の面又は下面とする。但し、力覚センサ装置1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。また、平面視とは対象物を蓋板240の上面の法線方向(Z軸方向)から視ることを指し、平面形状とは対象物を蓋板240の上面の法線方向(Z軸方向)から視た形状を指すものとする。
【0016】
図3は、入力伝達部にセンサチップが取り付けられた状態を示す上面側斜視図である。
図4は、入力伝達部にセンサチップが取り付けられた状態を示す下面側斜視図である。
図3及び
図4に示すように、入力伝達部230には、入力伝達部230の下面から起歪部220側に突出する収容部235が設けられている。そして、収容部235の蓋板240側に、センサチップ100が固定されている。
【0017】
具体的には、後述のように、収容部235には、蓋板240側に突起する4つの第2接続部235c(後述の
図22~
図24等参照)が配置されている。そして、各々の第2接続部235cは、センサチップ100の力点151~154(後述の
図5~
図8等参照)の下面と接続されている。
【0018】
また、収容部235は起歪部220側に入り込んでいる。そして、後述のように、起歪部220には、入力伝達部230側に突起する5本の柱状の第1接続部224(後述の
図21等参照)が配置されている。そして、各々の第1接続部224は、センサチップ100の支持部101~105(後述の
図5~
図8等参照)の下面と接続されている。
【0019】
以下、センサチップ100及び起歪体200について詳説する。なお、以下の説明において、『平行』とは、2つの直線や辺等が0°±10°の範囲にある場合を含むものとする。また、『垂直』又は『直交』とは、2つの直線や辺等が90°±10°の範囲にある場合を含むものとする。ただし、個別に特別な説明がある場合は、この限りではない。また、『中心』や『中央』は、対象物のおおよその中心や中央を示すものであり、厳密な中心や中央を示すものではない。すなわち、製造誤差程度のばらつきは、許容されるものとする。点対称や線対称についても同様である。
【0020】
(センサチップ100)
図5は、センサチップ100をZ軸方向上側から視た斜視図である。
図6は、センサチップ100をZ軸方向上側から視た平面図である。
図7は、センサチップ100をZ軸方向下側から視た斜視図である。
図8は、センサチップ100をZ軸方向下側から視た底面図である。なお、
図8において、便宜上、同一高さの面を同一の梨地模様で示している。なお、ここでは、センサチップ100の上面の一辺に平行な方向をX軸方向、垂直な方向をY軸方向、センサチップ100の厚さ方向(センサチップ100の上面の法線方向)をZ軸方向としている。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、互いに直交している。
【0021】
図5~
図8に示すセンサチップ100は、1チップで最大6軸を検知できるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサチップであり、SOI(Silicon On Insulator)基板等の半導体基板から形成されている。センサチップ100の平面形状は、例えば、7000μm角程度の矩形(正方形又は長方形)とすることができる。
【0022】
センサチップ100は、柱状の5つの支持部101~105を備えている。支持部101~105の平面形状は、例えば、2000μm角程度の正方形とすることができる。支持部101~104は、矩形のセンサチップ100の四隅に配置されている。支持部105は、矩形のセンサチップ100の中央に配置されている。なお、支持部101~104は本発明に係る第1支持部の代表的な一例であり、支持部105は本発明に係る第2支持部の代表的な一例である。
【0023】
支持部101と支持部102との間には、支持部101と支持部102とに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)枠部112が設けられている。支持部102と支持部103との間には、支持部102と支持部103とに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)枠部113が設けられている。
【0024】
支持部103と支持部104との間には、支持部103と支持部104とに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)枠部114が設けられている。支持部104と支持部101との間には、支持部104と支持部101とに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)枠部111が設けられている。
【0025】
言い換えれば、4つの枠部111、112、113、及び114が枠状に形成され、各枠部の交点をなす角部が、支持部101、102、103、及び104となる。
【0026】
支持部101の内側の角部と、それに対向する支持部105の角部とは、連結部121により連結されている。支持部102の内側の角部と、それに対向する支持部105の角部とは、連結部122により連結されている。
【0027】
支持部103の内側の角部と、それに対向する支持部105の角部とは、連結部123により連結されている。支持部104の内側の角部と、それに対向する支持部105の角部とは、連結部124により連結されている。
【0028】
すなわち、センサチップ100は、支持部105と支持部101~104とを連結する連結部121~124を有している。連結部121~124は、X軸方向(Y軸方向)に対して斜めに配置されている。つまり、連結部121~124は、枠部111、112、113、及び114と非平行に配置されている。
【0029】
支持部101~105、枠部111~114、及び連結部121~124は、例えば、SOI基板の活性層、BOX層、及び支持層から形成することができ、それぞれの厚さは、例えば、400μm~600μm程度とすることができる。
【0030】
センサチップ100は、4つの検知ブロックB1~B4を有している。また、各々の検知ブロックは、歪検出素子であるピエゾ抵抗素子が配置されたT字型梁構造を3組備えている。ここで、T字型梁構造とは、第1検知用梁と、第1検知用梁の中央部から第1検知用梁と直交する方向に伸びる第2検知用梁とを含む構造を指す。
【0031】
具体的には、検知ブロックB1は、T字型梁構造131T1、131T2、及び131T3を備えている。また、検知ブロックB2は、T字型梁構造132T1、132T2、及び132T3を備えている。また、検知ブロックB3は、T字型梁構造133T1、133T2、及び133T3を備えている。また、検知ブロックB4は、T字型梁構造134T1、134T2、及び134T3を備えている。以下に、より詳しい梁構造の説明を行う。
【0032】
検知ブロックB1には、平面視において、枠部111の支持部101に近い側と、連結部121の支持部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて支持部101の支持部104側の辺と平行に第1検知用梁131aが設けられている。また、第1検知用梁131aの長手方向の中央部に一端が接続され、支持部104側に向かって第1検知用梁131aの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁131bが設けられている。第1検知用梁131aと第2検知用梁131bとは、T字型梁構造131T1を形成している。
【0033】
平面視において、枠部111の支持部104に近い側と、連結部124の支持部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて支持部104の支持部101側の辺と平行に第1検知用梁131cが設けられている。また、第1検知用梁131cの長手方向の中央部に一端が接続され、支持部101側に向かって第1検知用梁131cの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁131dが設けられている。第1検知用梁131cと第2検知用梁131dとは、T字型梁構造131T2を形成している。
【0034】
平面視において、連結部121の支持部105に近い側と、連結部124の支持部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて支持部105の枠部111側の辺と平行に第1検知用梁131eが設けられている。また、第1検知用梁131eの長手方向の中央部に一端が接続され、枠部111側に向かって第1検知用梁131eの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁131fが設けられている。第1検知用梁131eと第2検知用梁131fとは、T字型梁構造131T3を形成している。
【0035】
第2検知用梁131bと第2検知用梁131dと第2検知用梁131fの他端側同士が接続して接続部141を形成し、接続部141の下面側に力点151が設けられている。力点151は、例えば、四角柱状である。T字型梁構造131T1、131T2、及び131T3と接続部141及び力点151とにより、検知ブロックB1を構成している。
【0036】
検知ブロックB1において、第1検知用梁131aと第1検知用梁131cと第2検知用梁131fとは平行であり、第2検知用梁131b及び131dと第1検知用梁131eとは平行である。検知ブロックB1の各々の検知用梁の厚さは、例えば、30μm~50μm程度とすることができる。
【0037】
検知ブロックB2には、平面視において、枠部112の支持部102に近い側と、連結部122の支持部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて支持部102の支持部101側の辺と平行に第1検知用梁132aが設けられている。また、第1検知用梁132aの長手方向の中央部に一端が接続され、支持部101側に向かって第1検知用梁132aの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁132bが設けられている。第1検知用梁132aと第2検知用梁132bとは、T字型梁構造132T1を形成している。
【0038】
平面視において、枠部112の支持部101に近い側と、連結部121の支持部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて支持部101の支持部102側の辺と平行に第1検知用梁132cが設けられている。また、第1検知用梁132cの長手方向の中央部に一端が接続され、支持部102側に向かって第1検知用梁132cの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁132dが設けられている。第1検知用梁132cと第2検知用梁132dとは、T字型梁構造132T2を形成している。
【0039】
平面視において、連結部122の支持部105に近い側と、連結部121の支持部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて支持部105の枠部112側の辺と平行に第1検知用梁132eが設けられている。また、第1検知用梁132eの長手方向の中央部に一端が接続され、枠部112側に向かって第1検知用梁132eの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁132fが設けられている。第1検知用梁132eと第2検知用梁132fとは、T字型梁構造132T3を形成している。
【0040】
第2検知用梁132bと第2検知用梁132dと第2検知用梁132fの他端側同士が接続して接続部142を形成し、接続部142の下面側に力点152が設けられている。力点152は、例えば、四角柱状である。T字型梁構造132T1、132T2、及び132T3と接続部142及び力点152とにより、検知ブロックB2を構成している。
【0041】
検知ブロックB2において、第1検知用梁132aと第1検知用梁132cと第2検知用梁132fとは平行であり、第2検知用梁132b及び132dと第1検知用梁132eとは平行である。検知ブロックB2の各々の検知用梁の厚さは、例えば、30μm~50μm程度とすることができる。
【0042】
検知ブロックB3には、平面視において、枠部113の支持部103に近い側と、連結部123の支持部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて支持部103の支持部102側の辺と平行に第1検知用梁133aが設けられている。また、第1検知用梁133aの長手方向の中央部に一端が接続され、支持部102側に向かって第1検知用梁133aの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁133bが設けられている。第1検知用梁133aと第2検知用梁133bとは、T字型梁構造133T1を形成している。
【0043】
平面視において、枠部113の支持部102に近い側と、連結部122の支持部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて支持部102の支持部103側の辺と平行に第1検知用梁133cが設けられている。また、第1検知用梁133cの長手方向の中央部に一端が接続され、支持部103側に向かって第1検知用梁133cの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁133dが設けられている。第1検知用梁133cと第2検知用梁133dとは、T字型梁構造133T2を形成している。
【0044】
平面視において、連結部123の支持部105に近い側と、連結部122の支持部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて支持部105の枠部113側の辺と平行に第1検知用梁133eが設けられている。また、第1検知用梁133eの長手方向の中央部に一端が接続され、枠部113側に向かって第1検知用梁133eの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁133fが設けられている。第1検知用梁133eと第2検知用梁133fとは、T字型梁構造133T3を形成している。
【0045】
第2検知用梁133bと第2検知用梁133dと第2検知用梁133fの他端側同士が接続して接続部143を形成し、接続部143の下面側に力点153が設けられている。力点153は、例えば、四角柱状である。T字型梁構造133T1、133T2、及び133T3と接続部143及び力点153とにより、検知ブロックB3を構成している。
【0046】
検知ブロックB3において、第1検知用梁133aと第1検知用梁133cと第2検知用梁133fとは平行であり、第2検知用梁133b及び133dと第1検知用梁133eとは平行である。検知ブロックB3の各々の検知用梁の厚さは、例えば、30μm~50μm程度とすることができる。
【0047】
検知ブロックB4には、平面視において、枠部114の支持部104に近い側と、連結部124の支持部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて支持部104の支持部103側の辺と平行に第1検知用梁134aが設けられている。また、第1検知用梁134aの長手方向の中央部に一端が接続され、支持部103側に向かって第1検知用梁134aの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁134bが設けられている。第1検知用梁134aと第2検知用梁134bとは、T字型梁構造134T1を形成している。
【0048】
平面視において、枠部114の支持部103に近い側と、連結部123の支持部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて支持部103の支持部104側の辺と平行に第1検知用梁134cが設けられている。また、第1検知用梁134cの長手方向の中央部に一端が接続され、支持部104側に向かって第1検知用梁134cの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁134dが設けられている。第1検知用梁134cと第2検知用梁134dとは、T字型梁構造134T2を形成している。
【0049】
平面視において、連結部124の支持部105に近い側と、連結部123の支持部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて支持部105の枠部114側の辺と平行に第1検知用梁134eが設けられている。また、第1検知用梁134eの長手方向の中央部に一端が接続され、枠部114側に向かって第1検知用梁134eの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁134fが設けられている。第1検知用梁134eと第2検知用梁134fとは、T字型梁構造134T3を形成している。
【0050】
第2検知用梁134bと第2検知用梁134dと第2検知用梁134fの他端側同士が接続して接続部144を形成し、接続部144の下面側に力点154が設けられている。力点154は、例えば、四角柱状である。T字型梁構造134T1、134T2、及び134T3と接続部144及び力点154とにより、検知ブロックB4を構成している。
【0051】
検知ブロックB4において、第1検知用梁134aと第1検知用梁134cと第2検知用梁134fとは平行であり、第2検知用梁134b及び134dと第1検知用梁134eとは平行である。検知ブロックB4の各々の検知用梁の厚さは、例えば、30μm~50μm程度とすることができる。
【0052】
このように、センサチップ100は、4つの検知ブロック(検知ブロックB1~B4)を有している。そして、各々の検知ブロックは、支持部101~104のうちの隣接する支持部と、隣接する支持部に連結する枠部及び連結部と、支持部105と、に囲まれた領域に配置されている。平面視で、各々の検知ブロックは、例えば、センサチップの中心に対して点対称に配置することができる。
【0053】
また、各々の検知ブロックは、T字型梁構造を3組備えている。各々の検知ブロックにおいて、3組のT字型梁構造は、平面視で、接続部を挟んで第1検知用梁が平行に配置された2組のT字型梁構造と、2組のT字型梁構造の第2検知用梁と平行に配置された第1検知用梁を備えた1組のT字型梁構造とを含む。そして、1組のT字型梁構造の第1検知用梁は、接続部と支持部105との間に配置されている。
【0054】
例えば、検知ブロックB1では、3組のT字型梁構造は、平面視で、接続部141を挟んで第1検知用梁131aと第1検知用梁131cとが平行に配置されたT字型梁構造131T1及び131T2と、T字型梁構造131T1及び131T2の第2検知用梁131b及び131dと平行に配置された第1検知用梁131eを備えたT字型梁構造131T3とを含む。そして、T字型梁構造131T3の第1検知用梁131eは、接続部141と支持部105との間に配置されている。検知ブロックB2~B4も同様の構造である。
【0055】
力点151~154は、外力が印加される箇所であり、例えば、SOI基板のBOX層及び支持層から形成することができる。力点151~154のそれぞれの下面は、支持部101~105の下面と略面一である。
【0056】
このように、力又は変位を4つの力点151~154から取り入れることで、力の種類毎に異なる梁の変形が得られるため、6軸の分離性が良いセンサを実現することができる。力点の数は組み合わされる起歪体の変位入力箇所と同数である。
【0057】
なお、センサチップ100において、応力集中を抑制する観点から、内角を形成する部分はR状とすることが好ましい。
【0058】
センサチップ100の支持部101~105は起歪体200の非可動部に接続され、力点151~154は起歪体200の可動部に接続される。ただし、可動と非可動との関係が逆であっても力覚センサ装置として機能する。すなわち、センサチップ100の支持部101~105は起歪体200の可動部に接続され、力点151~154は起歪体200の非可動部に接続されてもよい。
【0059】
図9は、各軸にかかる力及びモーメントを示す符号を説明する図である。
図9に示すように、X軸方向の力をFx、Y軸方向の力をFy、Z軸方向の力をFzとする。また、X軸を軸として回転させるモーメントをMx、Y軸を軸として回転させるモーメントをMy、Z軸を軸として回転させるモーメントをMzとする。
【0060】
図10は、センサチップ100のピエゾ抵抗素子の配置を例示する図である。
図11は、
図10に示すセンサチップの1組の検知ブロックの部分拡大図である。
図10及び
図11に示すように、4つ力点151~154に対応する各検知ブロックの所定位置には、ピエゾ抵抗素子が配置されている。なお、
図10に示す他の検知ブロックにおけるピエゾ抵抗素子の配置は、
図11に示す一の検知ブロックにおけるピエゾ抵抗素子の配置と同様である。
【0061】
図5~
図8、
図10、及び
図11を参照すると、接続部141及び力点151を有する検知ブロックB
1において、ピエゾ抵抗素子MzR1'は、第1検知用梁131aにおいて、第2検知用梁131bと第1検知用梁131eとの間に位置する部分の第2検知用梁131bに近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子FxR3は、第1検知用梁131aにおいて、第2検知用梁131bと第1検知用梁131eとの間に位置する部分の第1検知用梁131eに近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子MxR1は、第2検知用梁131bにおいて、接続部141に近い側に配置されている。
【0062】
また、ピエゾ抵抗素子MzR2'は、第1検知用梁131cにおいて、第2検知用梁131dと第1検知用梁131eとの間に位置する部分の第2検知用梁131dに近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子FxR1は、第1検知用梁131cにおいて、第2検知用梁131dと第1検知用梁131eとの間に位置する部分の第1検知用梁131eに近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子MxR2は、第2検知用梁131dにおいて、接続部141に近い側に配置されている。
【0063】
また、ピエゾ抵抗素子FzR1'は、第2検知用梁131fにおいて、接続部141に近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子FzR2'は、第2検知用梁131fにおいて、第1検知用梁131eに近い側に配置されている。なお、ピエゾ抵抗素子MzR1'、FxR3、MxR1、MzR2'、FxR1、及びMxR2は、各々の検知用梁の長手方向の中心からオフセットした位置に配置されている。
【0064】
接続部142及び力点152を有する検知ブロックB2において、ピエゾ抵抗素子MzR4は、第1検知用梁132aにおいて、第2検知用梁132bと第1検知用梁132eとの間に位置する部分の第2検知用梁132bに近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子FyR3は、第1検知用梁132aにおいて、第2検知用梁132bと第1検知用梁132eとの間に位置する部分の第1検知用梁132eに近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子MyR4は、第2検知用梁132bにおいて、接続部142に近い側に配置されている。
【0065】
また、ピエゾ抵抗素子MzR3は、第1検知用梁132cにおいて、第2検知用梁132dと第1検知用梁132eとの間に位置する部分の第2検知用梁132dに近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子FyR1は、第1検知用梁132cにおいて、第2検知用梁132dと第1検知用梁132eとの間に位置する部分の第1検知用梁132eに近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子MyR3は、第2検知用梁132dにおいて、接続部142に近い側に配置されている。
【0066】
また、ピエゾ抵抗素子FzR4は、第2検知用梁132fにおいて、接続部142に近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子FzR3は、第2検知用梁132fにおいて、第1検知用梁132eに近い側に配置されている。なお、ピエゾ抵抗素子MzR4、FyR3、MyR4、MzR3、FyR1、及びMyR3は、各々の検知用梁の長手方向の中心からオフセットした位置に配置されている。
【0067】
接続部143及び力点153を有する検知ブロックB3において、ピエゾ抵抗素子MzR4'は、第1検知用梁133aにおいて、第2検知用梁133bと第1検知用梁133eとの間に位置する部分の第2検知用梁133bに近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子FxR2は、第1検知用梁133aにおいて、第2検知用梁133bと第1検知用梁133eとの間に位置する部分の第1検知用梁133eに近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子MxR4は、第2検知用梁133bにおいて、接続部143に近い側に配置されている。
【0068】
また、ピエゾ抵抗素子MzR3'は、第1検知用梁133cにおいて、第2検知用梁133dと第1検知用梁133eとの間に位置する部分の第2検知用梁133dに近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子FxR4は、第1検知用梁133cにおいて、第2検知用梁133dと第1検知用梁133eとの間に位置する部分の第1検知用梁133eに近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子MxR3は、第2検知用梁133dにおいて、接続部143に近い側に配置されている。
【0069】
また、ピエゾ抵抗素子FzR4'は、第2検知用梁133fにおいて、接続部143に近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子FzR3'は、第2検知用梁133fにおいて、第1検知用梁133eに近い側に配置されている。なお、ピエゾ抵抗素子MzR4'、FxR2、MxR4、MzR3'、FxR4、及びMxR3は、各々の検知用梁の長手方向の中心からオフセットした位置に配置されている。
【0070】
接続部144及び力点154を有する検知ブロックB4において、ピエゾ抵抗素子MzR1は、第1検知用梁134aにおいて、第2検知用梁134bと第1検知用梁134eとの間に位置する部分の第2検知用梁134bに近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子FyR2は、第1検知用梁134aにおいて、第2検知用梁134bと第1検知用梁134eとの間に位置する部分の第1検知用梁134eに近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子MyR1は、第2検知用梁134bにおいて、接続部144に近い側に配置されている。
【0071】
また、ピエゾ抵抗素子MzR2は、第1検知用梁134cにおいて、第2検知用梁134dと第1検知用梁134eとの間に位置する部分の第2検知用梁134dに近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子FyR4は、第1検知用梁134cにおいて、第2検知用梁134dと第1検知用梁134eとの間に位置する部分の第1検知用梁134eに近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子MyR2は、第2検知用梁134dにおいて、接続部144に近い側に配置されている。
【0072】
また、ピエゾ抵抗素子FzR1は、第2検知用梁134fにおいて、接続部144に近い側に配置されている。ピエゾ抵抗素子FzR2は、第2検知用梁134fにおいて、第1検知用梁134eに近い側に配置されている。なお、ピエゾ抵抗素子MzR1、FyR2、MyR1、MzR2、FyR4、及びMyR2は、各々の検知用梁の長手方向の中心からオフセットした位置に配置されている。
【0073】
このように、センサチップ100では、各検知ブロックに複数のピエゾ抵抗素子を分けて配置している。これにより、力点151~154に印加された入力に応じた所定の梁に配置された複数のピエゾ抵抗素子の出力の変化に基づいて、所定の軸方向の力又はモーメントを最大で6軸検知できる。
【0074】
なお、センサチップ100において、歪の検出に用いるピエゾ抵抗素子以外に、ダミーのピエゾ抵抗素子が配置されてもよい。ダミーのピエゾ抵抗素子は、検知用梁にかかる応力やブリッジ回路の抵抗のバランスを調整するために用いられ、例えば、歪の検出に用いるピエゾ抵抗素子も含めた全てのピエゾ抵抗素子が、支持部105の中心に対して点対称となるように配置される。
【0075】
センサチップ100では、T字型梁構造を構成する第1検知用梁に、X軸方向の変位及びY軸方向の変位を検知する複数のピエゾ抵抗素子を配置している。また、T字型梁構造を構成する第2検知用梁に、Z軸方向の変位を検知する複数のピエゾ抵抗素子を配置している。また、T字型梁構造を構成する第1検知用梁に、Z軸方向のモーメントを検知する複数のピエゾ抵抗素子を配置している。また、T字型梁構造を構成する第2検知用梁に、X軸方向のモーメント及びY軸方向のモーメントを検知する複数のピエゾ抵抗素子を配置している。
【0076】
ここで、ピエゾ抵抗素子FxR1~FxR4は力Fxを検出し、ピエゾ抵抗素子FyR1~FyR4は力Fyを検出し、ピエゾ抵抗素子FzR1~FzR4及びFzR1'~FzR4'は力Fzを検出する。また、ピエゾ抵抗素子MxR1~MxR4はモーメントMxを検出し、ピエゾ抵抗素子MyR1~MyR4はモーメントMyを検出し、ピエゾ抵抗素子MzR1~MzR4及びMzR1'~MzR4'はモーメントMzを検出する。
【0077】
このように、センサチップ100では、各検知ブロックに複数のピエゾ抵抗素子を分けて配置している。これにより、力点151~154に印加(伝達)された力又は変位の向き(軸方向)に応じた、所定の梁に配置された複数のピエゾ抵抗素子の出力の変化に基づいて、所定の軸方向の変位を最大で6軸検知することができる。また、各検知用梁の厚みと幅を可変することで、検出感度の均一化や、検出感度の向上等の調整を図ることができる。
【0078】
なお、ピエゾ抵抗素子の数を減らし、5軸以下の所定の軸方向の変位を検知するセンサチップとすることも可能である。
【0079】
センサチップ100において、力及びモーメントは、例えば、以下に説明する検出回路を用いて検出できる。
図12及び
図13に各ピエゾ抵抗素子を用いた検出回路の一例を示す。
図12及び
図13において、四角で囲まれた数字は外部出力端子を示している。例えば、No1はFx軸Fy軸Fz軸の電源端子、No2はFx軸出力マイナス端子、No3はFx軸のGND端子、No4はFx軸出力プラス端子である。No19はFy軸出力マイナス端子、No20はFy軸のGND端子、No21はFy軸出力プラス端子である。No22はFz軸出力マイナス端子、No23はFz軸のGND端子、No24はFz軸出力プラス端子である。
【0080】
また、No9はMx軸出力マイナス端子、No10はMx軸のGND端子、No11はMx軸出力プラス端子である。No12はMx軸My軸Mz軸の電源端子である。No13はMy軸出力マイナス端子、No14はMy軸のGND端子、No15はMy軸出力プラス端子である。No16はMz軸出力マイナス端子、No17はMz軸のGND端子、No18はMz軸出力プラス端子である。
【0081】
次に、検知用梁の変形について説明する。
図14は、Fx入力について説明する図である。
図15は、Fy入力について説明する図である。
図14に示すように、センサチップ100が搭載される起歪体200からの入力がFxである場合、4つの力点151~154の全てが同じ方向(
図14の例では右方向)に移動しようとする。同様に、
図15に示すように、センサチップ100が搭載される起歪体200からの入力がFyである場合、4つの力点151~154の全てが同じ方向(
図15の例では上方向)に移動しようとする。すなわち、センサチップ100では、4つの検知ブロックが存在するが、いずれの検知ブロックにおいても、X軸方向の変位及びY軸方向の変位に対して、すべての力点が同じ方向に移動する。
【0082】
図16は、センサチップにFx入力があった場合のシミュレーション結果である。
図14の矢印に示すようなFx入力があった場合、
図16に示すように各検知用梁が変形する。特に、各検知ブロックにおいてT字型梁構造の第1検知用梁(T字の横線をなす梁)が大きく変形していることがわかる。
【0083】
センサチップ100では、T字型梁構造の第1検知用梁の中に、入力の変位方向に対して直交する第1検知用梁を1つ以上有し、入力の変位方向に対して直交する第1検知用梁が
図16に示すように大きな変形に対応できる。なお、
図16において、入力の変位方向に対して直交する第1検知用梁は、
図6等に示す第1検知用梁131a、131c、132e、133a、133c、及び134eである。
【0084】
Fx入力の検知に使用する梁は、第1検知用梁131a、131c、133a、及び133cであり、いずれも力点から一定距離離れたT字型梁構造の第1検知用梁である。また、Fy入力の検知に使用する梁は、第1検知用梁132a、132c、134a、及び134cであり、いずれも力点から一定距離離れたT字型梁構造の第1検知用梁である。
【0085】
Fx入力及びFy入力において、ピエゾ抵抗素子が配置されたT字型梁構造の第1検知用梁が大きく変形することで、入力される力を効果的に検知できる。また、入力の検知に使用しない梁もFx入力及びFy入力の変位に追従して大きく変形可能に設計されているため、大きなFx入力及び/又はFy入力があっても検知用梁が破壊されることがない。
【0086】
なお、従来のセンサチップでは、Fx入力及び/又はFy入力に対して大きく変形できない梁が存在していたため、大きなFx入力及び/又はFy入力があった場合には、変形できない検知用梁が破壊されるおそれがあった。センサチップ100では、このような問題を抑制できる。すなわち、センサチップ100では、様々な方向の変位に対する梁の破壊耐性を向上できる。
【0087】
このように、センサチップ100は、入力の変位方向に対して直交する第1検知用梁を1つ以上有し、入力の変位方向に対して直交する第1検知用梁が大きく変形できる。そのため、Fx入力及びFy入力を効果的に検知できると共に、大きなFx入力及び/又はFy入力があっても検知用梁が破壊されることがない。その結果、センサチップ100は、大きな定格にも対応でき、測定範囲や耐荷重の向上が可能となる。例えば、センサチップ100では、定格を従来の10倍程度である500Nとすることも可能である。
【0088】
また、各検知ブロックにおいて力点から3方向へ繋がるT字型梁構造が入力によって異なる変形をするため、多軸の力を分離性良く検出できる。
【0089】
また、梁がT字型であるため、梁から枠部や連結部へ至る経路が多いため、配線をセンサチップの外周部へ引き回すことが容易となり、レイアウト自由度を向上できる。
【0090】
図17は、センサチップにMz入力があった場合のシミュレーション結果である。
図17に示すように、Z軸方向のモーメントに対しては、各力点を挟んで対向して配置された第1検知用梁131a、131c、132a、132c、133a、133c、134a、及び134cが大きく変形する。従って、これらの第1検知用梁の一部又は全部にピエゾ抵抗素子を配置できる。
【0091】
図18は、センサチップにFz入力があった場合のシミュレーション結果である。
図19は、
図18に対応する部分斜視図である。
図18及び
図19に示すように、Z軸方向の変位に対しては、主に、各力点に直接繋がる第2検知用梁131b、131d、131f、132b、132d、132f、133b、133d、133f、134b、134d、及び134fが大きく変形する。従って、これらの第2検知用梁の一部又は全部にピエゾ抵抗素子を配置できる。
【0092】
(起歪体200)
図1及び
図2に示したように、起歪体200は、受力板210と、起歪部220と、入力伝達部230と、蓋板240とを有している。ここでは、起歪体200の各構成部について説明する。
【0093】
図20は、起歪体を構成する受力板を例示する斜視図である。
図20に示すように、受力板210は、全体的には略円盤状の部材であり、被測定物から力やモーメントが入力される部材である。受力板210は、平面視で略リング状の外枠部211と、外枠部211と離隔して外枠部211の内側に配置された平面視で略円形状の中央部212と、外枠部211と中央部212とを橋渡しする複数の梁構造213とを有している。梁構造213によって受力板210の強度を増加させて被測定物から力やモーメントが入力された場合にも、受力板210自体はほとんど変形せずに中央部212で接続される起歪部220へと変形(変位)が損失することなく伝わる。外枠部211の内側から梁構造213側に突起する部分には、貫通孔218が設けられている。貫通孔218は、例えば、受力板210を被測定物にねじで締結する際に使用できる。
【0094】
図21は、起歪体を構成する起歪部を例示する斜視図である。
図21に示すように、起歪部220は、全体的には略円盤状の部材であり、受力板210から力を受けて変形する部分である。
【0095】
起歪部220は、平面視で略リング状の外枠部221と、外枠部221と離隔して外枠部221の内側に配置された平面視で略円形状の中央部222と、外枠部221と中央部222とを橋渡しする複数の梁構造223とを有している。複数の梁構造223は、例えば、起歪部220の中心に対して点対称に配置される。梁構造223は、例えば、4つである。各々の梁構造223は、例えば、第1梁と、第1梁の中央部から第1梁と直交する方向に伸びる第2梁とを含むT字型であり、第1梁の両端が外枠部221と連結し、第2梁の端部が中央部222と連結する。
【0096】
中央部222は外枠部221よりも薄く形成されており、梁構造223は中央部222よりもさらに薄く形成されている。中央部222の上面及び梁構造223の上面は略面一であり、外枠部221の上面よりも低い位置にある。中央部222の下面は、外枠部221の下面よりも僅かに突出している。梁構造223の下面は、外枠部221の下面及び中央部222の下面よりも高い位置にある。受力板210から力を受けて変形するのは梁構造223及び中央部222のみであり、外枠部221は変形しない。ただし、中央部222は梁構造223の変形に追従して動くだけで、中央部222自体は変形しない。
【0097】
中央部222の入力伝達部230側の面には、溝220xが形成されている。溝220xは、平面視で正方形の溝と、正方形の一辺よりも長い細長状の2本の溝が直交した十字形の溝とが、中心を合わせた状態で重なった形状である。平面視で正方形の溝と、平面視で十字形の溝とは、同じ深さである。
【0098】
十字形の溝の外側で正方形の溝の四隅の部分と、正方形の溝の中心の部分には、入力伝達部230側に突起する5本の柱状の第1接続部224が、溝220xの内壁と接しないように配置されている。第1接続部224は、センサチップ100の支持部101~105と接続される部分である。各々の第1接続部224の上面は略面一であり、中央部222の上面及び梁構造223の上面よりも低い位置にある。外枠部221には、貫通孔228が設けられている。貫通孔228は、例えば、起歪部220、入力伝達部230、及び蓋板240を固定側(ロボット等の側)にねじで締結する際に使用できる。
【0099】
なお、中央部222の上面側には空間が設けられているため、中央部222の上面側に、例えば、外枠部221の上面から突出しないように、コネクタや半導体素子等の電子部品が実装された回路基板等を配置してもよい。
【0100】
図22は、起歪体を構成する入力伝達部を例示する上面側の斜視図である。
図23は、起歪体を構成する入力伝達部を例示する下面側の斜視図である。
図24は、起歪体を構成する入力伝達部を例示する側面図である。
図22~
図24に示すように、入力伝達部230は、全体的には略円盤状の部材であり、起歪部220の変形(入力)をセンサチップ100に伝達する部分である。
【0101】
入力伝達部230は、平面視で略リング状の外枠部231と、外枠部231と離隔して外枠部231の内側に配置された中央部232と、外枠部231と中央部232とを橋渡しする複数の梁構造233とを有している。複数の梁構造233は、例えば、入力伝達部230の中心に対して点対称に配置される。梁構造233は、例えば、4つである。各々の梁構造233は、例えば、I字型である。
【0102】
中央部232は、梁構造233と接続する平面視で略リング状の内枠部234と、内枠部234の下面から起歪部220側に伸びる略十字状の収容部235とを有している。収容部235は、内枠部234の下面から起歪部220側に垂直に伸びる4本の垂直支持部235aと、垂直支持部235aの下端から水平方向に伸びて内枠部234の中央で交わる4本の水平支持部235bとを有している。
【0103】
梁構造233及び内枠部234は外枠部231よりも薄く形成されている。梁構造233及び内枠部234の上面は、外枠部231の上面よりも低い位置にある。外枠部231の下面と梁構造233の下面と内枠部234の下面とは略面一である。入力伝達部230は、いずれの部分も受ける力やモーメントで変形しない。
【0104】
平面視において、4本の垂直支持部235a及び4本の水平支持部235bは、入力伝達部230の中心に対して点対称に配置されている。平面視において、各々の水平支持部235bの長手方向と、各々の梁構造233の長手方向は一致していない。例えば、平面視において、各々の水平支持部235bの長手方向と、各々の梁構造233の長手方向は45度ずれている。
【0105】
略十字状の収容部235の中心付近には溝235xが設けられ、溝235xの底面には蓋板240側に突起する4つの第2接続部235cが、溝235xの内壁と接しないように配置されている。各々の第2接続部235cは、各々の水平支持部235bを長手方向に2分する線上に、おおよそ位置している。第2接続部235cは、センサチップ100の力点151~154と接続される部分である。外枠部231には、貫通孔238が設けられている。貫通孔238は、例えば、起歪部220、入力伝達部230、及び蓋板240を固定側(ロボット等の側)にねじで締結する際に使用できる。
【0106】
なお、梁構造233の上面側には空間が設けられているため、梁構造233の上面側に、例えば、外枠部231の上面から突出しないように、コネクタや半導体素子等の電子部品が実装された回路基板等を配置してもよい。
【0107】
図25は、起歪体を構成する蓋板を例示する斜視図である。
図25に示すように、蓋板240は、全体的には略円盤状の部材であり、内部部品(センサチップ100等)を保護する部材である。蓋板240は、受力板210、起歪部220、及び入力伝達部230よりも薄く形成されている。蓋板240には、貫通孔248が設けられている。貫通孔248は、例えば、起歪部220、入力伝達部230、及び蓋板240を固定側(ロボット等の側)にねじで締結する際に使用できる。
【0108】
受力板210、起歪部220、入力伝達部230、及び蓋板240の材料としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)等の硬質な金属材料を用いることができる。中でも、特に硬質で機械的強度の高いSUS630を用いることが好ましい。起歪体200を構成する部材のうち、特に受力板210と起歪部220と入力伝達部230とは強固に接続されているか、もしくは一体構造であることが望ましい。受力板210と起歪部220と入力伝達部230との接続方法としては、ねじでの締結、溶接等が考えられるが、いずれの方法でも起歪体200に入力される力やモーメントに十分耐えられる必要がある。
【0109】
本実施形態では、一例として、受力板210と起歪部220と入力伝達部230とを金属粉末射出成型で作製し、それらを合わせて再度焼結を行うことで拡散接合させている。拡散接合された受力板210と起歪部220と入力伝達部230とは必要十分な接合強度を得ることができる。蓋板240は、センサチップ100や他の内部部品を実装後、例えば、ねじで入力伝達部230に締結すればよい。
【0110】
起歪体200において、受力板210に力やモーメントが印加されると、力やモーメントは受力板210と接続された起歪部220の中央部222へ伝達し、4つの梁構造223で入力に応じた変形が生じる。このとき、起歪部220の外枠部221と入力伝達部230は変形しない。
【0111】
すなわち、起歪体200において、受力板210と起歪部220の中央部222及び梁構造223とは、所定の軸方向の力又はモーメントを受けて変形する可動部であり、起歪部220の外枠部221は力又はモーメントを受けて変形しない非可動部である。また、非可動部である起歪部220の外枠部221と接合される入力伝達部230は、力又はモーメントを受けて変形しない非可動部であり、入力伝達部230と接合される蓋板240も力又はモーメントを受けて変形しない非可動部である。
【0112】
起歪体200が力覚センサ装置1に用いられる場合、可動部である中央部222に設けられた第1接続部224に、センサチップ100の支持部101~105が接続される。また、非可動部である収容部235に設けられた第2接続部235cに、センサチップ100の力点151~154が接続される。そのため、センサチップ100は、力点151~154が動かずに、支持部101~105を通じて各検知用梁が変形する動作となる。
【0113】
ただし、可動部である中央部222に設けられた第1接続部224にセンサチップ100の力点151~154が接続され、非可動部である収容部235に設けられた第2接続部235cにセンサチップ100の支持部101~105が接続された構成としてもよい。
【0114】
すなわち、収容部235に収容可能なセンサチップ100は、力又はモーメントを受けて互いの相対位置が変化する支持部101~105及び力点151~154を有している。そして、起歪体200において、可動部である中央部222は、入力伝達部230側に延伸して支持部101~105及び力点151~154の一方と接続される第1接続部224を備えている。また、収容部235は、支持部101~105及び力点151~154の他方と接続される第2接続部235cを備えている。
【0115】
図26は、起歪部にFx入力があった場合のシミュレーション結果である。
図27は、起歪部にMz入力があった場合のシミュレーション結果である。
図26及び
図27に示すように、いずれの場合も起歪部220の外枠部221は変形せずに、4つのT字型の梁構造223が変形していることが確認できる。他の入力の場合も同様である。
【0116】
このように、起歪体200は、入力された力やモーメントを変位に変換し、搭載されるセンサチップ100に伝達する。従来、同様の機能を目的とした起歪体では、力やモーメントを受ける構造と変位を伝える構造が一体もしくは密接な構成であった。そのため、変位と耐荷重とのトレードオフの関係が強く、特に耐荷重を大きくとることが困難であった。
【0117】
起歪体200では、力やモーメントを受ける起歪部220と、変位をセンサチップ100に伝達する入力伝達部230とを別々の構造体としているため、高い耐荷重と変位を両立することが可能となる。
【0118】
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、第1実施形態とは構造の異なるセンサチップの例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0119】
図28は、センサチップ100AをZ軸方向上側から視た平面図である。
図28に示すように、センサチップ100Aは、検知用梁の構造はセンサチップ100(
図6等参照)と同様である。ただし、検知用梁の周囲の空間の形状がセンサチップ100と相違する。すなわち、センサチップ100Aでは、各々の検知用梁の両側において、平面視における空間の開口幅が均一である。
【0120】
一般に、センサチップの梁構造は、シリコンウエハから半導体プロセスによって形成するが、その際、ドライエッチングによる深掘りが用いられる。センサチップ100の形状のように、検知用梁によって区切られたエッチング領域の開口幅が大きくかつ均一でない場合、加工難度が上がり加工品質が悪くなる懸念がある。
【0121】
センサチップ100Aでは、各々の検知用梁の両側において、均一の開口幅で細いスリット状にエッチング領域を形成している。これにより、ドライエッチングで深掘りする際の加工難度が下がり加工品質を向上できる。なお、
図28における4か所の円形開口部分は、センサチップ100Aを起歪体200に搭載する際に、起歪体200と接しないようにする逃げ部である。そのため、ドライエッチングの効率のみを考える場合には、4か所の円形開口部分は設けなくてもよい。
【0122】
図29は、センサチップ100BをZ軸方向上側から視た部分平面図である。
図29に示すように、センサチップ100Bは、検知ブロックB
1において2つのT字型梁構造の第2検知用梁の端部同士が接続している点が、3つのT字型梁構造の第2検知用梁の端部同士が接続しているセンサチップ100(
図6等参照)と相違する。センサチップ100Bは、センサチップ100とは異なり、第1検知用梁131e、132e、133e、及び134e、並びに、第2検知用梁131f、132f、133f、及び134fを有していない。検知ブロックB
2~B
4についても、検知ブロックB
1と同様の構造である。
【0123】
図30は、センサチップ100CをZ軸方向上側から視た部分平面図である。
図30に示すように、センサチップ100Cは、検知ブロックB
1において4つのT字型梁構造の第2検知用梁の端部同士が接続している点が、3つのT字型梁構造の第2検知用梁の端部同士が接続しているセンサチップ100(
図6等参照)と相違する。センサチップ100Cは、センサチップ100とは異なり、第1検知用梁131g及び第2検知用梁131hを含むT字型梁構造131T
4をさらに有している。T字型梁構造131T
4は、接続部141を挟んで、T字型梁構造131T
3と対向するように配置されている。検知ブロックB
2~B
4についても、検知ブロックB
1と同様の構造である。
【0124】
このように、センサチップにおいてT字型梁構造は3つには限定されず、センサチップ100Bのように2つにしてもよいし、センサチップ100Cのように4つにしてもよい。いずれの場合も、各々の検知ブロックがT字型梁構造を2組以上備えることで、T字型梁構造を構成する第1検知用梁又は第2検知用梁が大きく変形できる。そのため、Fx入力及びFy入力を効果的に検知できると共に、大きなFx入力及び/又はFy入力があっても検知用梁が破壊されることがない。すなわち、いずれのセンサチップでも、様々な方向の変位に対する梁の破壊耐性を向上できる。その結果、大きな定格にも対応でき、測定範囲や耐荷重の向上が可能なセンサチップを実現できる。
【0125】
ただし、T字型梁構造が2つの場合には6軸方向の変位を検知することは困難である。また、T字型梁構造が多い方が多軸の力に対して分離しやすい点で有利であるが、チップサイズが大きくなりやすい点では不利である。このような点を考慮すると、6軸方向の変位を検知する場合には、T字型梁構造は3つにすることが好ましいといえる。
【0126】
〈第1実施形態の変形例2〉
第1実施形態の変形例2では、第1実施形態とは構造の異なる起歪体の例を示す。なお、第1実施形態の変形例2において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0127】
図31は、起歪体200Aの斜視図である。
図32は、起歪体200Aの断面斜視図である。
図31及び
図32を参照すると、起歪体200Aは、受力板210と、起歪部220と、入力伝達部230Aと、蓋板240Aとを有している。受力板210上に起歪部220が積層され、起歪部220上に入力伝達部230Aが積層され、入力伝達部230A上に蓋板240Aが積層され、全体として略円筒状の起歪体200Aを形成している。蓋板240Aの中央部は、内側蓋部241により開閉可能である。なお、受力板210及び起歪部220については、起歪体200の場合と同様である。
【0128】
図33は、起歪体を構成する入力伝達部を例示する上面側の斜視図である。
図33に示すように、入力伝達部230Aは、基本構造は入力伝達部230と同様である。ただし、入力伝達部230Aは、入力伝達部230よりも薄型に形成されている。
【0129】
図34は、起歪体を構成する蓋板を例示する斜視図である。
図34に示すように、蓋板240Aは、全体的には略円盤状の部材であり、内部部品(センサチップ100等)を保護する部材である。蓋板240Aは、例えば、受力板210、起歪部220、及び入力伝達部230Aよりも厚く形成されており、入力伝達部230A側に広い内部空間を有している。蓋板240Aには、貫通孔248及び249が設けられている。貫通孔249は、内側蓋部241(
図31参照)により閉じられる。
【0130】
このように、起歪体を構成する各部品の分割位置は、起歪体に設ける内部空間、組み立て性等を考慮して変更できる。
図31~
図34に示した例では、入力伝達部と蓋板との分割位置を
図1等に比べて変更しているが、この場合、蓋板240A側に広い内部空間を持たせることが可能となるため、より多くの部品を組み込むことができる。
【0131】
〈第1実施形態の変形例3〉
第1実施形態の変形例3では、第1実施形態とは構造の異なる起歪体の他の例を示す。なお、第1実施形態の変形例3において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0132】
図35は、起歪体200Bの側面図である。
図35を参照すると、起歪体200Bは、受力板210と、起歪部220Bと、入力伝達部230と、蓋板240とを有している。受力板210上に起歪部220Bが積層され、起歪部220B上に入力伝達部230が積層され、入力伝達部230上に蓋板240が積層され、全体として略円筒状の起歪体200Bを形成している。なお、受力板210、入力伝達部230、及び蓋板240については、起歪体200の場合と同様である。
【0133】
図36は、起歪体を構成する起歪部を例示する下面側の斜視図である。つまり、
図36において起歪部220Bは、
図35とは上下が反転している。
図35及び
図36に示すように、起歪部220Bは、受力板210側に突出する突出部225を有している。突出部225は、平面視で略円形状であり、受力板210の中央部212と接触可能な形状とされている。起歪部220Bの下面からの突出部225の突出量は、例えば、0.5mm程度である。突出部225は、例えば、受力板210の中央部212と拡散接合により接合されるが、ねじ締結や溶接で接合されてもよい。なお、突出部225の高さが、起歪部220Bと受力板210とを接合した後に、起歪部220Bと受力板210との間に形成される隙間となる。
【0134】
受力板210が力を受けて変位するためには起歪部220Bとの間に隙間が必要である。起歪体200Bでは、起歪部220Bに突出部225を設けることで、受力板210と起歪部220Bとの間に容易に隙間を設けることができる。すなわち、起歪部220Bに突出部225を設け、突出部225の高さを制御することで、起歪部220Bと受力板210との隙間の制御が可能である。例えば、起歪部220Bと受力板210との接合前に突出部225の高さを研磨等で精密に制御することで、接合後の隙間を任意に制御できる。また、起歪部220Bに突出部225を設ける方法では、接合やワイヤーカット等の機械加工では難しい狭い隙間も形成できる。また、起歪部220Bと受力板210とを拡散接合により接合する場合には、材料強度と同等の接合強度が得られる。
【0135】
なお、突出部は受力板210側に設けてもよく、起歪部220Bと受力板210の双方に設けてもよい。いずれの場合も、突出部は、起歪部220Bと受力板210との間に設けられ、起歪部220Bと受力板210との隙間を規定する隙間規定部として機能する。
【0136】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0137】
1 力覚センサ装置、100、100A、100B、100C センサチップ、101~105 支持部、111~114 枠部、121~124 連結部、131a、131c、131e、131g、132a、132c、132e、133a、133c、133e、134a、134c、134e 第1検知用梁、131b、131d、131f、131h、132b、132d、132f、133b、133d、133f、134b、134d、134f 第2検知用梁、131T1、131T2、131T3、131T4、132T1、132T2、132T3、133T1、133T2、133T3、134T1、134T2、134T3 T字型梁構造、141~144 接続部、151~154 力点、200、200A、200B 起歪体、210 受力板、211、221、231 外枠部、212、222、232 中央部、213、223、233 梁構造、218、228、238、248 貫通孔、220、220B 起歪部、220x、235x 溝、224 第1接続部、225 突出部、230、230A 入力伝達部、234 内枠部、235 収容部、235a 垂直支持部、235b 水平支持部、235c 第2接続部、240、240A 蓋板、241 内側蓋部