(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】射出成形機、射出成形機システム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20241126BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/17
(21)【出願番号】P 2021558374
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2020042654
(87)【国際公開番号】W WO2021100665
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2019207924
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】谷田 和貴
(72)【発明者】
【氏名】茂木 浩
(72)【発明者】
【氏名】有田 未来生
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-110125(JP,A)
【文献】特開2009-255437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
B29C 45/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型装置を型締する型締装置と、
前記型締装置により型締された前記金型装置に成形材料を充填する射出装置と、
前記射出装置により充填された成形材料が冷却固化した後、前記金型装置から成形品を取り出すエジェクタ装置と、を備え、
二つの内部機器同士並びに自機及び外部機器の少なくとも一方の間で、データのやり取りを行う通信周期が、受信される前記データを用いて所定の制御を行う制御周期よりも短く、
前記少なくとも一方の間で、周期的に更新される前記データをやり取りする通信を前記データの更新周期内で複数回行い、前記複数回のうちの何れかの一回で受信される前記データを用いて前記所定の制御を行う
、
射出成形機。
【請求項2】
金型装置を型締する型締装置と、
前記型締装置により型締された前記金型装置に成形材料を充填する射出装置と、
前記射出装置により充填された成形材料が冷却固化した後、前記金型装置から成形品を取り出すエジェクタ装置と、を備え、
二つの内部機器同士並びに自機及び外部機器の少なくとも一方の間で、データのやり取りを行う通信周期が、受信される前記データを用いて所定の制御を行う制御周期よりも短く、
前記少なくとも一方では、無線回線で前記データのやり取りが行われ、
前記通信周期は、前記無線回線への外部からの影響によって、前記データのやり取りに失敗する頻度が相対的に高い状態で、前記少なくとも一方の受信側が前記制御周期ごとに最新の前記データを用いて前記所定の制御を行うこと
が可能な頻度を相対的に高めるように設定される
、
射出成形機。
【請求項3】
前記所定の制御は、射出成形機の全体の作業手順に関するシーケンス制御、射出成形機の被駆動部の動作制御、射出成形機の被駆動部を駆動するアクチュエータの駆動制御、又は、射出成形機の各種データの収集に関する制御である、
請求項1
又は2に記載の射出成形機。
【請求項4】
受信済みの前記データの中から、前記所定の制御に用いられておらず、且つ、より新しい内容の前記データを取得し、前記所定の制御を行う、
請求項3に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記少なくとも一方では、受信側で最新の前記データを使用可能なように、前記データの通信タイミング及び受信側での前記データの使用タイミングが同期されており、
前記データには、更新の有無を表す情報が含まれる、
請求項4に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記情報は、前記データの更新ごとにカウントアップ又はカウントアップされるカウンタである、
請求項5に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記データを使用する場合、受信済みの直近の前記データ、及び前回に使用した前記データのそれぞれの前記情報に基づき、受信済みの直近の前記データが更新済みの最新の前記データであるか否かを判定する、
請求項5又は6に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記内部機器同士には、射出成形機の全体動作を管理する上位コントローラ、及び前記上位コントローラからの指令に基づき、射出成形機の被駆動部の動作制御を行う下位コントローラの組み合わせ、前記下位コントローラ、及び前記下位コントローラからの指令に基づき、前記被駆動部を駆動するアクチュエータの駆動制御を行うドライバの組み合わせ、射出成形機を制御するコントローラに内蔵される二つのCPUの組み合わせ、並びに検出データを出力するセンサ及び前記センサから前記検出データを受信する前記コントローラの組み合わせ、のうちの少なくとも一つが含まれる、
請求項1乃至
7の何れか一項に記載の射出成形機。
【請求項9】
前記外部機器には、他の射出成形機、端末装置、エッジサーバ、及びクラウドサーバの少なくとも一つが含まれる、
請求項1乃至
8の何れか一項に記載の射出成形機。
【請求項10】
前記データをやり取りする前記通信周期、及び前記所定の制御が行われる前記制御周期のうちの少なくとも一方を表示する表示装置を備える、
請求項1乃至
9の何れか一項に記載の射出成形機。
【請求項11】
自機に対する操作入力、又は、外部から受信される要求信号に応じて、前記データのやり取りする前記通信周期、及び前記所定の制御が行われる前記制御周期のうちの少なくとも一方を変更する、
請求項1乃至1
0の何れか一項に記載の射出成形機。
【請求項12】
金型装置を型締する型締装置と、
前記型締装置により型締された前記金型装置に成形材料を充填する射出装置と、
前記射出装置により充填された成形材料が冷却固化した後、前記金型装置から成形品を取り出すエジェクタ装置と、を備え、
内部機器同士並びに自機及び外部機器の少なくとも一方の間で、データのやり取りを行い、受信される前記データを用いて所定の制御を行う場合に、前記データの受信に失敗が生じていても、最新の前記データを用いることが可能な、
射出成形機。
【請求項13】
射出成形機と、
管理装置と、を備え、
前記射出成形機及び前記管理装置の間で、データのやり取りを行う通信周期が、受信される前記データを用いて所定の制御を行う制御周期よりも短く、
前記所定の制御は、前記射出成形機の全体の作業手順に関するシーケンス制御、前記射出成形機の被駆動部の動作制御、又は前記射出成形機の被駆動部を駆動するアクチュエータの駆動制御であ
り、
前記射出成形機及び前記管理装置の間で、周期的に更新される前記データをやり取りする通信を前記データの更新周期内で複数回行い、前記複数回のうちの何れかの一回で受信される前記データを用いて前記所定の制御を行う、
射出成形機システム。
【請求項14】
射出成形機と、
管理装置と、を備え、
前記射出成形機及び前記管理装置の間で、データのやり取りを行う通信周期が、受信される前記データを用いて所定の制御を行う制御周期よりも短く、
前記所定の制御は、前記射出成形機の全体の作業手順に関するシーケンス制御、前記射出成形機の被駆動部の動作制御、又は前記射出成形機の被駆動部を駆動するアクチュエータの駆動制御であり、
前記射出成形機及び前記管理装置の間では、無線回線で前記データのやり取りが行われ、
前記通信周期は、前記無線回線への外部からの影響によって、前記データのやり取りに失敗する頻度が相対的に高い状態で、前記射出成形機及び前記管理装置のうちの受信側が前記制御周期ごとに最新の前記データを用いて前記所定の制御を行うことが可能な頻度を相対的に高めるように設定される、
射出成形機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形機等に関する。
【背景技術】
【0002】
制御システムでは、出力されるデータを一方から他方に送信し、他方で受信されるデータを使用して制御が行われる場合がある。
【0003】
例えば、射出成形機等の産業用の機械では、各種センサで出力されるデータがコントローラに送信され、コントローラで受信されるデータが成形動作等の制御に使用される(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通信障害等の何等かの理由で、データを受信できない場合、最新のデータを使用することができなくなってしまう可能性がある。
【0006】
そこで、上記課題に鑑み、射出成形機等において、何等かの理由でデータを受信できない場合であっても、最新のデータを用いた制御を行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
金型装置を型締する型締装置と、
前記型締装置により型締された前記金型装置に成形材料を充填する射出装置と、
前記射出装置により充填された成形材料が冷却固化した後、前記金型装置から成形品を取り出すエジェクタ装置と、を備え、
内部機器同士並びに自機及び外部機器の少なくとも一方の間で、データのやり取りを行う通信周期が、受信される前記データを用いて所定の制御を行う制御周期よりも短く、
前記少なくとも一方の間で、周期的に更新される前記データをやり取りする通信を前記データの更新周期内で複数回行い、前記複数回のうちの何れかの一回で受信される前記データを用いて前記所定の制御を行う、
射出成形機が提供される。
また、本開示の他の実施形態では、
金型装置を型締する型締装置と、
前記型締装置により型締された前記金型装置に成形材料を充填する射出装置と、
前記射出装置により充填された成形材料が冷却固化した後、前記金型装置から成形品を取り出すエジェクタ装置と、を備え、
二つの内部機器同士並びに自機及び外部機器の少なくとも一方の間で、データのやり取りを行う通信周期が、受信される前記データを用いて所定の制御を行う制御周期よりも短く、
前記少なくとも一方では、無線回線で前記データのやり取りが行われ、
前記通信周期は、前記無線回線への外部からの影響によって、前記データのやり取りに失敗する頻度が相対的に高い状態で、前記少なくとも一方の受信側が前記制御周期ごとに最新の前記データを用いて前記所定の制御を行うことが可能な頻度を相対的に高めるように設定される、
射出成形機が提供される。
【0008】
また、本開示の更に他の実施形態では、
金型装置を型締する型締装置と、
前記型締装置により型締された前記金型装置に成形材料を充填する射出装置と、
前記射出装置により充填された成形材料が冷却固化した後、前記金型装置から成形品を取り出すエジェクタ装置と、を備え、
内部機器同士並びに自機及び外部機器の少なくとも一方の間で、データのやり取りを行い、受信される前記データを用いて所定の制御を行う場合に、前記データの受信に失敗が生じていても、最新の前記データを用いることが可能な、
射出成形機が提供される。
【0009】
また、本開示の更に他の実施形態では、
射出成形機と、
管理装置と、を備え、
前記射出成形機及び前記管理装置の間で、データのやり取りを行う通信周期が、受信される前記データを用いて所定の制御を行う制御周期よりも短く、
前記所定の制御は、前記射出成形機の全体の作業手順に関するシーケンス制御、前記射出成形機の被駆動部の動作制御、又は前記射出成形機の被駆動部を駆動するアクチュエータの駆動制御であり、
前記射出成形機及び前記管理装置の間で、周期的に更新される前記データをやり取りする通信を前記データの更新周期内で複数回行い、前記複数回のうちの何れかの一回で受信される前記データを用いて前記所定の制御を行う、
射出成形機システムが提供される。
また、本開示の更に他の実施形態では、
射出成形機と、
管理装置と、を備え、
前記射出成形機及び前記管理装置の間で、データのやり取りを行う通信周期が、受信される前記データを用いて所定の制御を行う制御周期よりも短く、
前記所定の制御は、前記射出成形機の全体の作業手順に関するシーケンス制御、前記射出成形機の被駆動部の動作制御、又は前記射出成形機の被駆動部を駆動するアクチュエータの駆動制御であり、
前記射出成形機及び前記管理装置の間では、無線回線で前記データのやり取りが行われ、
前記通信周期は、前記無線回線への外部からの影響によって、前記データのやり取りに失敗する頻度が相対的に高い状態で、前記射出成形機及び前記管理装置のうちの受信側が前記制御周期ごとに最新の前記データを用いて前記所定の制御を行うことが可能な頻度を相対的に高めるように設定される、
射出成形機システムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
上述の実施形態によれば、射出成形機等において、何等かの理由でデータを受信できない場合であっても、最新のデータを用いた制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】射出成形機を含む射出成形機管理システムの構成の一例を示す図である。
【
図1B】射出成形機を含む射出成形機管理システムの構成の一例を示す図である。
【
図3A】コントローラの動作の一例を示す図である。
【
図3B】コントローラの動作の一例を示す図である。
【
図4A】コントローラの動作の他の例を示す図である。
【
図4B】コントローラの動作の他の例を示す図である。
【
図5】表示装置に表示される周期設定画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0013】
[射出成形機管理システムの構成]
まず、
図1(
図1A,1B)を参照して、本実施形態に係る射出成形機管理システムSYSの構成について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る射出成形機管理システムSYSの一例を示す図である。具体的には、
図1Aには、射出成形機1の型開完了時の状態を示す側面断面図が描画され、
図1Bには、射出成形機1の型締時の状態を示す側面断面図が描画される。以下、本実施形態の図中において、X軸、Y軸、及びZ軸は互いに垂直であり、X軸の正負方向(以下、単に「X方向」)及びY軸の正負方向(以下、単に「Y方向」)は水平方向を表し、Z軸の正負方向(以下、単に「Z方向」)は鉛直方向を表す。
【0015】
射出成形機管理システムSYSは、複数(本例では、3台)の射出成形機1と、管理装置2とを含む。
【0016】
尚、射出成形機管理システムSYSに含まれる射出成形機1は、1台であってもよい。
【0017】
<射出成形機>
射出成形機1は、成形品を得るための一連の動作を行う。
【0018】
また、射出成形機1は、所定の通信回線NWを通じて、管理装置2と通信可能に接続される。また、射出成形機1は、通信回線NWを通じて、他の射出成形機1と通信可能に接続されてもよい。通信回線NWは、例えば、射出成形機1が設置される工場の外部の広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)を含んでよい。広域ネットワークは、例えば、基地局を末端とする移動体通信網を含んでよい。移動体通信網は、例えば、LTE(Long Term Evolution)を含む4G(4th Generation)や5G(5th Generation)等に対応していてよい。また、広域ネットワークは、例えば、通信衛星を利用する衛星通信網を含んでもよい。また、広域ネットワークは、例えば、インターネット網を含んでもよい。また、通信回線NWは、例えば、射出成形機1が設置される工場内のローカルネットワーク(LAN:Local Area Network)を含んでもよい。ローカルネットワークは、有線で構築されていてもよいし、無線で構築されていてもよいし、有線及び無線の双方を含む態様で構築されていてもよい。また、通信回線NWは、例えば、ブルートゥース(登録商標)通信やWiFi通信等に対応する近距離無線通信回線であってもよい。
【0019】
例えば、射出成形機1は、通信回線NWを通じて、管理装置2(所定の外部装置の一例)に射出成形機1の稼働状態に関するデータ(以下、「稼働状態データ」)を送信(アップロード)する。これにより、管理装置2(或いは、その管理者や作業者等)は、稼働状態を把握し、射出成形機1のメンテナンスのタイミングや射出成形機1の稼働スケジュール等を管理することができる。
【0020】
また、例えば、射出成形機1は、マスタ機として、通信回線NWを通じて、スレーブ機としての他の射出成形機1の動作を監視したり、制御したりしてもよい。具体的には、射出成形機1(スレーブ機)は、通信回線NWを通じて、稼働状態データを射出成形機1(マスタ機)に送信してよい。これにより、射出成形機1(マスタ機)は、他の射出成形機1(スレーブ機)の動作を監視することができる。また、射出成形機1(マスタ機)は、稼働状態データに基づき、他の射出成形機1(スレーブ機)の動作状態を把握しながら、動作に関する制御指令を、通信回線NWを通じて、他の射出成形機1(スレーブ機)に送信してもよい。これにより、射出成形機1(マスタ機)は、他の射出成形機1(スレーブ機)の動作を制御することができる。
【0021】
射出成形機1(所定の機械の一例)は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、コントローラ700とを含む。
【0022】
<<型締装置>>
型締装置100は、金型装置10の型閉、型締、及び型開を行う。型締装置100は、例えば、横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、トグルサポート130、タイバー140、トグル機構150、型締モータ160、運動変換機構170、及び型厚調整機構180を有する。
【0023】
以下、型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(
図1A及び
図1B中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(
図1A及び
図1B中左方向)を後方として説明する。
【0024】
固定プラテン110は、フレームFrに対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型11が取付けられる。
【0025】
可動プラテン120は、フレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされる。フレームFr上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型12が取付けられる。
【0026】
固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。
【0027】
金型装置10は、固定プラテン110に対応する固定金型11と、可動プラテン120に対応する可動金型12とを含んで構成される。
【0028】
トグルサポート130は、固定プラテン110と所定の間隔Lをおいて連結され、フレームFr上に型開閉方向に移動自在に載置される。トグルサポート130は、例えば、フレームFr上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてよい。この場合、トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通であってもよい。
【0029】
尚、固定プラテン110がフレームFrに対し固定され、トグルサポート130がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート130がフレームFrに対し固定され、固定プラテン110がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
【0030】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば、4本)用いられてよい。各タイバー140は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられる。タイバー歪検出器141は、例えば、歪みゲージである。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、例えば、型締力の検出等に用いられる。
【0031】
尚、タイバー歪検出器141に代えて、或いは、加えて、型締力を検出するために利用可能な任意の型締力検出器が用いられてもよい。例えば、型締力検出器は、歪みゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式等であってもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0032】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配設され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群等で構成される。各リンク群は、ピン等で屈伸自在に連結される第1リンク152及び第2リンク153を有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピン等で揺動自在に取付けられ、第2リンク153はトグルサポート130に対しピン等で揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152及び第2リンク153が屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0033】
尚、トグル機構150の構成は、
図1A及び
図1Bに示す構成に限定されない。例えば、
図1A及び
図1Bでは、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0034】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152及び第2リンク153を屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリ等を介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0035】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0036】
型締装置100は、コントローラ700による制御下で、型閉工程、型締工程、型開工程等を行う。
【0037】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型12を固定金型11にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば、型締モータエンコーダ161等を用いて検出される。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。
【0038】
尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、及び、クロスヘッド151の速度を検出するクロスヘッド速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の速度を検出する可動プラテン速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0039】
型締工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型12と固定金型11との間にキャビティ空間14が形成され、射出装置300がキャビティ空間14に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間14の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
【0040】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型12を固定金型11から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型12から成形品を突き出す。
【0041】
型閉工程及び型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および型締工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)や型締力等は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0042】
また、型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、型開工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型開開始位置、速度切替位置、および型開完了位置を含む)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、速度切替位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型締位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0043】
尚、クロスヘッド151の速度や位置等の代わりに、可動プラテン120の速度や位置等が設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば、型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0044】
トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角(以下、「リンク角度」)θに応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0045】
金型装置10の交換や金型装置10の温度変化等により金型装置10の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば、可動金型12が固定金型11にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0046】
型締装置100は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0047】
ねじ軸181及びねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転は、回転伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。
【0048】
尚、回転伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0049】
回転伝達部185は、例えば、歯車等で構成される。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車及び駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。
【0050】
尚、回転伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリ等で構成されてもよい。
【0051】
型厚調整機構180の動作は、コントローラ700によって制御される。コントローラ700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させることで、ねじナット182を回転自在に保持するトグルサポート130の固定プラテン110に対する位置を調整し、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0052】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。
【0053】
尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0054】
型厚調整機構180は、互いに螺合するねじ軸181とねじナット182の一方を回転させることで、間隔Lを調整する。複数の型厚調整機構180が用いられてもよく、複数の型厚調整モータ183が用いられてもよい。
【0055】
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0056】
また、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0057】
<<エジェクタ装置>>
エジェクタ装置200は、金型装置10から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、及びエジェクタロッド230等を有する。
【0058】
以下、エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(
図1A及び
図1B中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(
図1A及び
図1B中左方向)を後方として説明する。
【0059】
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリ等を介して運動変換機構220に連結されてもよい。
【0060】
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0061】
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型12の内部に進退自在に配設される可動部材15と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材15と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0062】
エジェクタ装置200は、コントローラ700による制御下で、突き出し工程を行う。
【0063】
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材15を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で後退させ、可動部材15を元の待機位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や速度は、例えば、エジェクタモータエンコーダ211を用いて検出する。エジェクタモータエンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。
【0064】
尚、エジェクタロッド230の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド230の速度を検出するエジェクタロッド速度検出器は、エジェクタモータエンコーダ211に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0065】
<<射出装置>>
射出装置300は、フレームFrに対し進退自在なスライドベース301に設置され、金型装置10に対し進退自在とされる。射出装置300は、金型装置10にタッチし、金型装置10内のキャビティ空間14に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、及び圧力検出器360等を有する。
【0066】
以下、射出装置300の説明では、射出装置300を金型装置10に対し接近させる方向(
図1A及び
図1B中左方向)を前方とし、射出装置300を金型装置10に対し離間させる方向(
図1A及び
図1B中右方向)を後方として説明する。
【0067】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば、樹脂等を含む。成形材料は、例えば、ペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダ等の冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータ等の加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0068】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(
図1A及び
図1B中左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、コントローラ700が加熱器313を制御する。
【0069】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置10に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、コントローラ700が加熱器313を制御する。
【0070】
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置10内に充填される。
【0071】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0072】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図1B参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0073】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図1A参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0074】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプとのいずれでもよい。
【0075】
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0076】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば、油圧ポンプ等でもよい。
【0077】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構等が設けられる。運動変換機構は、例えば、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラ等が設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば、油圧シリンダ等でもよい。
【0078】
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
【0079】
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力等の制御や監視に用いられる。
【0080】
射出装置300は、コントローラ700による制御下で、計量工程、充填工程、及び、保圧工程等を行う。
【0081】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転数で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転数は、例えば、計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。
【0082】
尚、スクリュ330の回転数を検出するスクリュ回転数検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0083】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば、圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0084】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置10内のキャビティ空間14に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば、射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。V/P切替が行われる位置をV/P切替位置とも称する。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間等に応じて変更されてもよい。
【0085】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切替が行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の速度を検出するスクリュ速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0086】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも称する。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置10に向けて押す。金型装置10内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば、圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間等に応じて変更されてもよい。
【0087】
保圧工程では金型装置10内のキャビティ空間14の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間14の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間14からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間14内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0088】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
【0089】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0090】
<<移動装置>>
移動装置400は、金型装置10に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置10に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、及び液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430等を有する。
【0091】
以下、移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、射出装置300を金型装置10に対し接近させる方向(
図1A及び
図1B中左方向)を前方とし、射出装置300を金型装置10に対し離間させる方向(
図1A及び
図1B中右方向)を後方として説明する。
【0092】
尚、移動装置400は、
図1A,1Bでは射出装置300のシリンダ310の片側に配置されるが、シリンダ310の両側に配置されてもよく、シリンダ310を中心に対称に配置されてもよい。
【0093】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切り替えることにより、第1ポート411及び第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば、油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。また、液圧ポンプ410は、タンクから作動液を吸引して第1ポート411及び第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出させることもできる。
【0094】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、コントローラ700からの制御信号に応じた回転方向及び回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0095】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、及びピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0096】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型11に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0097】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型11から離間される。
【0098】
尚、移動装置400は、液圧シリンダ430を含む構成に限定されない。例えば、液圧シリンダ430に代えて、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0099】
<<コントローラ>>
コントローラ700は、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、及び移動装置400等に直接的に制御信号を送信し、射出成形機1に関する各種制御を行う。
【0100】
コントローラ700は、任意のハードウェア、或いは、任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実現されてよい。コントローラ700は、例えば、CPU(Central Processing Unit)701と、メモリ装置702と、補助記憶装置703と、入出力用のインタフェース装置704とを有するコンピュータを中心に構成される。コントローラ700は、補助記憶装置703にインストールされるプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、コントローラ700は、インタフェース装置704を通じて、外部の信号を受信したり、外部に信号を出力したりする。例えば、コントローラ700は、インタフェース装置704に基づき、通信回線NWを通じて、管理装置2と通信可能に接続される。また、コントローラ700は、インタフェース装置704に基づき、通信回線NWを通じて、他の射出成形機1(のコントローラ700)と通信可能に接続されてもよい。
【0101】
コントローラ700の機能は、一のコントローラ700だけで実現されてもよいし、後述の如く、複数のコントローラ(例えば、上位コントローラ700A、及び下位コントローラ700B等)により分担されてもよい(
図2参照)。
【0102】
コントローラ700は、射出成形機1に型閉工程、型締工程、及び型開工程等を繰り返し行わせることにより、成形品を繰り返し製造させる。また、コントローラ700は、型締工程の間に、射出装置300に計量工程、充填工程、及び保圧工程等を行わせる。
【0103】
成形品を得るための一連の動作、例えば、射出装置300による計量工程の開始から次の射出装置300による計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも称する。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」とも称する。
【0104】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、型開工程、及び突き出し工程の順に構成される。この順番は、各工程の開始の順番である。また、充填工程、保圧工程、及び冷却工程は、型締工程の開始から型締工程の終了までの間に行われる。また、型締工程の終了は、型開工程の開始と一致する。
【0105】
尚、成形サイクル時間の短縮のため、同時に複数の工程が行われてもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。また、射出装置300のノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないからである。
【0106】
コントローラ700は、操作装置750及び表示装置760等と接続されている。
【0107】
操作装置750は、ユーザによる射出成形機1に関する操作入力を受け付け、操作入力に応じた信号をコントローラ700に出力する。
【0108】
表示装置760は、コントローラ700による制御下で、各種画像を表示する。
【0109】
表示装置760は、例えば、操作装置750における操作入力に応じた射出成形機1に関する操作画面を表示する。
【0110】
表示装置760に表示される操作画面は、射出成形機1に関する設定等に用いられる。射出成形機1に関する設定には、例えば、射出成形機1に関する成形条件の設定(具体的には、設定値の入力)が含まれる。また、当該設定には、例えば、成形動作時のロギングデータとして記録される射出成形機1に関する各種センサ等の検出値の種類の選択に関する設定が含まれる。また、当該設定には、例えば、成形動作時の射出成形機1に関する各種センサ等の検出値(実績値)の表示装置760への表示仕様(例えば、表示する実績値の種類や表示のさせ方等)の設定が含まれる。操作画面は、複数用意され、表示装置760に切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760に表示される操作画面を見ながら、操作装置750を操作することにより、射出成形機1に関する設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。
【0111】
また、表示装置760は、例えば、コントローラ700による制御下で、操作画面上での操作に応じた各種情報をユーザに提供する情報画面を表示する。情報画面は、複数用意され、表示装置760に切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。例えば、表示装置760は、射出成形機1に関する設定内容(例えば、射出成形機1の成形条件に関する設定内容)を表示する。また、例えば、表示装置760は、管理情報(例えば、射出成形機1の稼働実績に関する情報等)を表示する。
【0112】
操作装置750及び表示装置760は、例えば、タッチパネル式のディスプレイとして構成され、一体化されてよい。
【0113】
尚、本実施形態の操作装置750及び表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
【0114】
<管理装置>
管理装置2は、通信回線NWを通じて、射出成形機1と通信可能に接続される。
【0115】
管理装置2は、例えば、射出成形機1が設置される工場の外部の管理センタ等の遠隔地に設置されるクラウドサーバである。また、管理装置2は、例えば、射出成形機1が設置される工場内部や工場に相対的に近い場所(例えば、工場の近くの無線基地局や局舎等)に設置されるエッジサーバであってもよい。また、管理装置2は、射出成形機1が設置される工場内のデスクトップ型のコンピュータ端末であってもよい。また、管理装置2は、射出成形機1の管理者等が携帯可能な携帯端末(例えば、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型のコンピュータ端末等)であってもよい。
【0116】
管理装置2は、例えば、射出成形機1から送信(アップロード)されるデータに基づき、射出成形機1の稼働状態を把握し、射出成形機1の稼働状態を管理することができる。また、管理装置2は、把握される射出成形機1の稼働状態に基づき、射出成形機1の異常診断等の各種診断を行うことができる。
【0117】
また、管理装置2は、例えば、通信回線NWを通じて、射出成形機1に対する制御情報(例えば、各種の設定条件に関する情報)を送信してもよい。これにより、管理装置2は、射出成形機1の動作を制御することができる。
【0118】
[射出成形機の内部通信に関する構成]
次に、
図2を参照し、射出成形機1の内部通信に関する構成について説明する。
【0119】
図2は、コントローラ700の構成の一例を示す図である。
【0120】
コントローラ700は、上位コントローラ700Aと、下位コントローラ700Bとを含む。
【0121】
上位コントローラ700Aは、例えば、射出成形機1の各種動作(例えば、成形動作)を管理し、射出成形機1の全体の作業手順に関するシーケンス制御を行う。具体的には、上位コントローラ700Aは、射出成形機1の各種センサの検出データに基づき、射出成形機1の稼働状態をモニタリングし、射出成形機1の動作に関する指令データ(以下、「動作指令データ」)を下位コントローラ700Bに送信してよい。各種センサには、例えば、型締モータエンコーダ161、型厚調整モータエンコーダ184、エジェクタモータエンコーダ211、温度検出器314、計量モータエンコーダ341、射出モータエンコーダ351、及び圧力検出器360等が含まれる。
【0122】
また、上位コントローラ700Aは、射出成形機1に関する各種データの収集に関する制御を行ってもよい。各種データには、例えば、各種センサの検出データ、下位コントローラ700B等から出力される制御指令のデータ等の制御データ、及び上位コントローラ700Aで管理されるショット数等の生産情報に相当データ等が含まれる。
【0123】
上位コントローラ700Aは、CPU701Aと、FPGA(Field-Programmable Gate Array)704Aとを含む。
【0124】
CPU701Aは、上位コントローラ700Aの補助記憶装置703にインストールされる各種プログラムを実行し、上位コントローラ700Aの各種機能を実現する。CPU701Aは、例えば、所定の制御周期T_CTL1ごとに、動作指令データを生成し、FPGA704Aに出力する。出力される動作指令データは、FPGA704Aのメモリに記憶される。また、CPU701Aは、例えば、制御周期T_CTL1ごとに、FPGA704Aのメモリにアクセスし、下位コントローラ700Bから受信されたデータ(例えば、各種センサの検出データ)を取得してもよい。
【0125】
FPGA704Aは、上位コントローラ700Aと外部機器との間で通信を行う。FPGA704Aは、例えば、所定の通信周期T_COMごとに、メモリ内の最新の動作指令データを読み出し、所定の通信経路を通じて、下位コントローラ700BのFPGA704Bに送信する。上位コントローラ700A(FPGA704A)と下位コントローラ700B(FPGA704B)との間の通信経路は、例えば、相互アクセス可能なデュアルポートメモリ等により実現されてよい。また、当該通信経路は、例えば、イーサネット(登録商標)等の射出成形機1の内部のローカルネットワーク等により実現されてもよい。また、FPGA704Bは、例えば、通信周期T_COMごとに、下位コントローラ700Bから送信されるデータ(例えば、検出データ)を受信してもよい。受信されるデータは、FPGA704Aのメモリに記憶される。
【0126】
下位コントローラ700Bは、例えば、上位コントローラ700Aの制御下で、射出成形機1の各種動作(例えば、成形動作)を具体的に実現する動作制御(モーション制御)を行う。具体的には、下位コントローラ700Bは、動作指令データに基づき、動作指令データに対応する射出成形機1の成形動作が実現されるように、射出成形機1の被駆動部を駆動する各種アクチュエータを制御する。射出成形機1の被駆動部には、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、及び移動装置400等が含まれる。各種アクチュエータには、例えば、型締モータ160、型厚調整モータ183、エジェクタモータ210、計量モータ340、射出モータ350、液圧シリンダ430等が含まれる。
【0127】
また、コントローラ700は、複数の下位コントローラ700Bを含んでもよい。例えば、下位コントローラ700Bは、複数の被駆動部ごとに設けられてもよい。また、一つの下位コントローラ700Bの中に複数の被駆動部ごとのCPU701Bが搭載される形態であってもよい。
【0128】
また、下位コントローラ700Bは、各種アクチュエータの駆動制御を行うドライバを介して各種アクチュエータの動作制御を行ってもよい。この場合、下位コントローラ700Bは、ドライバに対して、制御指令を出力し、ドライバは、下位コントローラ700Bから受信される制御指令に応じて、制御対象のアクチュエータの駆動制御を行う。
【0129】
また、下位コントローラ700Bは、例えば、射出成形機1の所定部位の状態を変化させる機器を制御し、所定部位の状態を調整してもよい。具体的には、下位コントローラ700Bは、温度検出器314の検出データに基づき、加熱器313に制御指令を出力し、シリンダ310のゾーン毎の温度を調整してよい。
【0130】
また、下位コントローラ700Bは、例えば、各種センサの検出データを取り込み(取得し)、上位コントローラ700Aに送信してもよい。
【0131】
下位コントローラ700Bは、CPU701Bと、FPGA704Bとを含む。
【0132】
CPU701Bは、下位コントローラ700Bの補助記憶装置703にインストールされる各種プログラムを実行し、下位コントローラ700Bの各種機能を実現する。CPU701Bは、例えば、所定の制御周期T_CTL2ごとに、FPGA704Bのメモリにアクセスし、上位コントローラ700Aから受信された動作指令データを取得する。そして、CPU701Bは、取得した動作指令データを用いて、各種アクチュエータの制御指令を生成し、各種アクチュエータに出力してよい。
【0133】
FPGA704Bは、下位コントローラ700Bと外部機器との間で通信を行う。FPGA704Bは、例えば、通信周期T_COMごとに、上位コントローラ700A(FPGA704A)から送信される動作指令データを受信し、メモリに記憶させる。また、FPGA704Bは、例えば、通信周期T_COMごとに、各種センサに検出データの送信リクエストを送信すると共に、各種センサから送信される検出データを受信し、メモリに記憶させてもよい。FPGA704Bと各種センサとの間では、例えば、シリアル通信が行われる。また、FPGA704Bは、例えば、通信周期T_COMごとに、メモリ内の最新の検出データを読み出し、所定の通信経路を通じて、上位コントローラ700AのFPGA704Aに検出データを送信してもよい。
【0134】
本例では、コントローラ700のCPU701には、上位コントローラ700AのCPU701Aと、下位コントローラ700BのCPU701Bとが含まれる。また、コントローラ700のインタフェース装置704には、上位コントローラ700AのFPGA704Aと、下位コントローラ700BのFPGA704Bとが含まれる。
【0135】
コントローラ700では、上位コントローラ700A及び下位コントローラ700Bのそれぞれが他方から受信される最新のデータを使用可能なように、データの通信タイミング及びデータの使用タイミング(即ち、データを用いた所定の制御の実行タイミング)が同期される。
【0136】
また、通信周期T_COMは、制御周期T_CTL1,T_CTL2よりも短く設定される。例えば、通信周期T_COMは、制御周期T_CTL1,T_CTL2の1/2以下に設定される。これにより、射出成形機1は、上位コントローラ700A及び下位コントローラ700Bの間、或いは、下位コントローラ700Bと各種センサとの間で、制御周期T_CTL1,T_CTL2の間に、2回以上の通信を行うことができる。そのため、射出成形機1は、例えば、制御周期T_CTL1,T_CTL2の間に行われる2回以上の通信のうちの1回で通信障害等が発生し、受信側でデータの受信が完了できない場合であっても、もう1回で同じデータを受信できる機会を得ることができる。
【0137】
通信周期T_COMと制御周期T_CTL1,T_CTL2との間の大小関係は、例えば、通信速度の高速化(例えば、ギガビットのイーサネット)により実現されてよい。また、通信周期T_COMと制御周期T_CTL1,T_CTL2との間の大小関係は、例えば、制御周期T_CTL1,T_CTL2を相対的に長くする、即ち、データの取得間隔を長くすることにより実現されてもよい。これにより、CPU701A,701BのFPGA704A,704Bのメモリへのハードウェアアクセスの頻度を低減させ、CPU701A,701Bの負荷を軽減させることができる。
【0138】
制御周期T_CTL1,T_CTL2の少なくとも一方は、表示装置760を通じてユーザが参照(確認)可能に構成されてもよい。また、通信周期T_COMについても同様であってよい。例えば、コントローラ700は、操作装置750を通じたユーザからの所定の操作入力に応じて、制御周期T_CTL1,T_CTL2、及び通信周期T_COMの少なくとも一つを確認可能な画面(以下、「周期確認画面」)を表示させてよい。これにより、射出成形機1のユーザは、周期確認画面を通じて、現在の通信周期T_COMや制御周期T_CTL1,T_CTL2を確認したり、通信周期T_COMと制御周期T_CTL1,T_CTL2との間の関係を確認したりすることができる。
【0139】
また、周期確認画面と同様の画面は、射出成形機1と通信可能な外部装置(例えば、管理装置2)に設けられる表示装置に表示されてもよい。これにより、例えば、管理装置2の管理者等は、外部から管理対象の射出成形機1における通信周期T_COM、制御周期T_CTL1,T_CTL2を確認したり、通信周期T_COMと制御周期T_CTL1,T_CTL2との間の関係を確認したりすることができる。
【0140】
また、制御周期T_CTL1,T_CTL2の少なくとも一方は、ユーザが設定内容を変更可能に構成されてもよい。通信周期T_COMについても同様であってよい。例えば、コントローラ700は、操作装置750を通じたユーザからの所定の操作入力に応じて、制御周期T_CTL1,T_CTL2、通信周期T_COMの少なくとも一つの設定内容を変更可能な操作画面(以下、「周期設定画面」)を表示させてよい。周期確認画面と周期設定画面とは、共通であってもよい。即ち、周期確認画面は、ユーザが周期確認画面で現在の制御周期T_CTL1,T_CTL2や通信周期T_COMの設定内容を確認し、そのまま、周期確認画面上でその設定内容を変更する操作を行うことが可能に構成されていてもよい。そして、コントローラ700は、操作装置750を用いた周期設定画面上での操作入力に応じて、制御周期T_CTL1,T_CTL2や通信周期T_COMの設定内容を変更してよい。これにより、ユーザは、周期設定画面を通じて、制御周期T_CTL1,T_CTL2や通信周期T_COMを意図的に変更することができる。
【0141】
また、コントローラ700は、外部(例えば、管理装置2)からの要求信号に応じて、制御周期T_CTL1,T_CTL2や通信周期T_COMの設定内容を変更してもよい。これにより、例えば、管理装置2の管理者等は、外部から管理対象の射出成形機1における制御周期T_CTL1,T_CTL2や通信周期T_COMの設定内容を変更することができる。この場合、管理装置2等の外部装置に設けられる表示装置には、周期設定画面と同様の設定画面が表示されてよい。これにより、例えば、管理装置2の管理者等は、この設定画面を通じて、管理対象の射出成形機1における制御周期T_CTL1,T_CTL2や通信周期T_COMの設定内容を変更することができる。
【0142】
また、制御周期T_CTL1,T_CTL2は、通信周期T_COMに近づく方向、即ち、短くする方向に設定変更可能であってよい。例えば、CPU701A,701Bの間にギガビットイーサネット等の非常に高い通信速度を有する通信規格が採用される場合がありうる。このような場合に、射出成形機1のユーザや管理装置2の管理者等は、例えば、非常に短い通信周期T_COMに合わせて、制御周期T_CTL1,T_CTL2をデフォルト設定より短く設定すること等ができる。
【0143】
[射出成形機の内部通信に関する動作の具体例]
次に、
図3(
図3A、
図3B)、
図4(
図4A、
図4B)を参照し、射出成形機1の内部通信に関する動作の具体例を説明する。
【0144】
<コントローラの動作の一例>
図3A、
図3Bは、コントローラ700の動作の一例を示す図である。図中の黒塗りの枠は、コントローラ700の処理を表し、白塗りの枠は、データを表す。以下、後述の
図4A、
図4Bについても同様である。
【0145】
尚、
図3A、
図3Bでは、上位コントローラ700A(FPGA704A)と下位コントローラ700B(FPGA704B)との間の通信遅延は無視されている。以下、後述の他の例(
図4A、
図4B)の場合についても同様である。
【0146】
図3A、
図3Bに示すように、本例では、コントローラ700において、制御周期T_CTL1,T_CTL2は、同じに設定され、通信周期T_COMは、制御周期T_CTL1,T_CTL2の1/2(半分)に設定されている。
【0147】
CPU701Aは、制御周期T_CTL1ごとに、データDを生成する。データDは、例えば、動作指令データである。
図3A、
図3Bでは、時系列的に異なるタイミングで生成されるデータDがデータD1,D2,D3,D4・・・として区別されている。以下、
図4A、
図4Bの場合についても同様である。
【0148】
FPGA704Aは、通信周期T_COMごとに、CPU701Aにより出力される最新のデータDを下位コントローラ700B(FPGA704B)に送信する。具体的には、FPGA704Aは、CPU701AによりデータDが出力される直後のタイミングで最新のデータDを送信し、次のデータDが出力される前に、更にもう1度、同じデータDを送信する。これにより、FPGA704Aは、CPU701Aから制御周期T_CTL1ごとに出力される最新のデータDを下位コントローラ700Bに向けて2回送信することができる。
【0149】
FPGA704Bは、通信周期T_COMごとに、上位コントローラ700A(FPGA704A)から送信されるデータDを受信する。具体的には、FPGA704Bは、制御周期T_CTL2の間で、上位コントローラ700A(CPU701A)で出力される最新のデータDを2回受信することができる。
【0150】
CPU701Bは、制御周期T_CTL2ごとに、FPGA704Bのメモリにアクセスし、FPGA704Bにより直近で受信されたデータDを取得する。
【0151】
図3Aの例では、CPU701Bは、FPGA704Bで最新のデータDが受信される2回のうちの1回目のタイミングの直後にFPGA704Bにアクセスし、FPGA704Bにより直近で受信されたデータDを取得する。また、
図3Bの例では、CPU701Bは、FPGA704Bで最新のデータDが受信される2回のうちの2回目のタイミングの直後にFPGA704Bにアクセスし、FPGA704Bにより直近で受信されたデータDを取得する。
【0152】
ここで、
図3Aの例では、データD2がFPGA704AからFPGA704Bに送信される2回のうち2回目のタイミングで、通信障害CF1が発生している。そのため、FPGA704Bは、2回目のデータD2を受信することができない。
【0153】
しかし、CPU701Bは、上述の如く、FPGA704Bが最新のデータDを受信する2回のうちの1回目のタイミングの直後にFPGA704BのメモリのデータDを取得する。そのため、FPGA704BがデータD2を受信する2回目のタイミングで受信に失敗しても、FPGA704Bがその次回の受信タイミングで更新されたデータD3を受信することで、CPU701Bは、最新のデータD3を問題なく取得することができる。
【0154】
また、
図3Bの例では、データD3がFPGA704AからFPGA704Bに送信される2回のうち2回目のタイミングで、通信障害CF2が発生している。そのため、FPGA704Bは、2回目のデータD3を受信することができない。
【0155】
しかし、FPGA704Bは、既に1回目のデータD3を受信しており、メモリには、直近で受信されたデータDとして、最新のデータD3が記憶されている。そのため、CPU701Bは、FPGA704Bで最新のデータD3が受信される2回目のタイミングの直後にFPGA704Bにアクセスしても、1回目のタイミングで受信された最新のデータD3を問題なく取得することができる。
【0156】
このように、本例では、通信周期T_COMが制御周期T_CTL2よりも短く設定される。これにより、通信障害CF1,CF2等が発生する場合でも、下位コントローラ700Bは、最新のデータDを用いた所定の制御(例えば、動作指令データに基づく被駆動部の動作制御や被駆動部を駆動するアクチュエータの駆動制御)を行うことができる。
【0157】
また、上位コントローラ700Aから下位コントローラ700BにデータDが送信されるのに代えて、或いは、加えて、下位コントローラ700Bから上位コントローラ700Aにデータ(例えば、各種センサの検出データ)が送信されてもよい。この場合についても、同様に、通信周期T_COMが制御周期T_CTL1よりも短く設定される。これにより、通信障害等が発生する場合でも、上位コントローラ700Aは、最新の検出データ等を用いた所定の制御(例えば、作業手順に沿って動作指令データを生成するシーケンス制御や射出成形機1の各種データの収集に関する制御)を行うことができる。
【0158】
<コントローラの動作の他の例>
図4A、
図4Bは、コントローラ700の動作の他の例を示す図である。以下、上述の一例と異なる部分を中心に説明する。
【0159】
図4A、
図4Bに示すように、本例では、コントローラ700において、上述の一例の場合と同様、制御周期T_CTL1,T_CTL2は、同じに設定され、通信周期T_COMは、制御周期T_CTL1,T_CTL2の1/2(半分)に設定されている。
【0160】
CPU701Aは、制御周期T_CTL1ごとに、データDを生成する。この際、CPU701Aは、データDの中にデータDが更新されたことを表すカウンタ(図中のデータD1,D2,D3,D4の白塗りの枠の中の数字"1"、"2"、"3"、"4")を付加する。カウンタの値は、データDが更新されるごとに1ずつインクリメントされている。本例では、データD1には、カウンタ"1"が付加され、データD2には、カウンタ"2"が付加され、データD3には、カウンタ"3"が付加され、データD4には、カウンタ"4"が付加されている。
【0161】
尚、CPU701Aの代わりに、FPGA704Aがカウンタを付加してもよい。
【0162】
図4A、
図4Bにおいて、FPGA704A、及びFPGA704Bの動作は、それぞれ、
図3A、
図3Bの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0163】
CPU701Bは、上述の一例の場合、制御周期T_CTL2ごとに、FPGA704Bのメモリにアクセスし、FPGA704Bにより直近で受信されたデータDを取得する。
【0164】
CPU701Bは、データDを取得すると、前回、FPGA704Bのメモリから取得し使用したデータDのカウンタの値と、今回、FPGA704Bのメモリから取得したデータDのカウンタの値とを比較する。また、CPU701Bは、FPGA704Bが直近のデータDを受信できなかった場合、或いは、FPGA704BがデータDの受信ができない可能性がある状況である(例えば、通信障害が発生している)場合に限定して、二つのデータDのカウンタの値を比較してもよい。CPU701Bは、前回のデータDのカウンタの値に対して今回のデータDのカウンタの値の方が増加していない場合、例えば、通信障害等の何等かの理由で、FPGA704Bのメモリに格納されているデータDが上位コントローラ700Aから送信される最新のデータDで更新されていないと判定する。即ち、CPU701Bは、今回取得したデータDが最新のデータDではないと判定する。一方、CPU701Bは、前回のデータDのカウンタの値に対して今回のデータDのカウンタの値の方が増加している場合、FPGA704Bのメモリに格納されているデータDが上位コントローラ700Aから送信される最新のデータDで更新されていると判定する。即ち、CPU701Bは、今回取得したデータDが最新のデータDであると判定する。
【0165】
CPU701Bは、今回取得したデータDが更新済みの最新のデータDである場合、その最新のデータDを使用する。
【0166】
例えば、
図4Bの例では、
図3Bと同様のタイミングで通信障害CF4が発生し、FPGA704Bは、2回目のデータD3を受信することができない。しかし、FPGA704Bは、上述の如く、既に1回目のデータD3を受信しており、メモリには、直近で受信されたデータDとして、更新済みの最新のデータD3が記憶されている。そのため、CPU701Bは、FPGA704Bで最新のデータD3が受信される2回目のタイミングの直後にFPGA704Bにアクセスしても、1回目のタイミングで受信された最新のデータD3を問題なく取得することができる。そして、CPU701Bは、取得したデータD3のカウンタ"3"と、前回使用したデータD2のカウンタ"2"とを比較することで、最新のデータD3を取得できたことを確認し、その最新のデータD3を用いた所定の制御を行うことができる。
【0167】
一方、CPU701Bは、今回取得したデータDが最新のデータDでない場合、過去に使用したデータDに基づき、最新のデータDに相当するデータを外挿し、外挿したデータを使用する。
【0168】
例えば、
図4Aの例では、データD3がFPGA704AからFPGA704Bに送信される2回のうち1回目のタイミングで、通信障害CF3が発生している。そのため、FPGA704Bは、1回目のデータD3を受信することができない。よって、CPU701Bは、FPGA704Bによる最新のデータD3の1回目の受信タイミングの直後に、FPGA704Bのメモリにアクセスし、その前に受信されたデータD2を取得する。
【0169】
CPU701Bは、今回取得したデータD2のカウンタ"2"と前回使用したデータD2のカウンタ"2"を比較することで、今回取得したデータD2が最新のデータD3ではないと判定する。そして、CPU701Bは、過去に使用したデータDを用いて、最新のデータD3を外挿する。例えば、CPU701Bは、1次補完に相当する以下の式(1)を用いて、最新のデータD3の外挿値D3_EPを算出してよい。
【0170】
D3_EP=2×(D2-D1) ・・・(1)
【0171】
これにより、下位コントローラ700Bは、最新のデータDを使用できない場合であっても、過去に使用したデータDから最新のデータDを補完することができる。そのため、下位コントローラ700Bは、データDに基づく射出成形機1の制御性能を向上させることができる。
【0172】
このように、本例では、上位コントローラ700Aから下位コントローラ700Bに送信されるデータDに、データDの更新の有無を表すカウンタが含まれる。そのため、下位コントローラ700Bは、直近で受信されたデータDを使用する場合に、データDが最新のデータDであるか否かを判定することができる。そして、下位コントローラ700Bは、最新のデータDでない場合、過去に使用したデータDを用いて、最新のデータDを外挿することができる。
【0173】
また、上位コントローラ700Aから下位コントローラ700BにデータDが送信されるのに代えて、或いは、加えて、下位コントローラ700Bから上位コントローラ700Aにデータ(例えば、各種センサの検出データ)が送信されてもよい。この場合についても、同様に、送信されるデータに更新の有無を表すカウンタが付加されることで、上位コントローラ700Aは、直近で受信されたデータを使用する場合に、データが最新のデータであるか否かを判定することができる。そして、上位コントローラ700Aは、最新のデータでない場合、過去に使用したデータを用いて、最新のデータに相当するデータを外挿することができる。
【0174】
尚、データに付加される更新の有無を表す情報は、更新前と更新後との間で異なる内容に変化する態様であれば、カウンタ以外であってもよい。
【0175】
[周期設定画面の具体例]
次に、
図5を参照し、周期設定画面の具体例について説明する。
【0176】
図5は、表示装置760に表示される周期設定画面の一例(周期設定画面5000)を示す図である。
【0177】
尚、周期設定画面5000と同様の周期設定画面は、管理装置2等の外部装置に設けられる表示装置に表示されてもよい。
【0178】
図5に示すように、周期設定画面5000は、模式図表示部5100と、設定状態表示部5200とを含む。
【0179】
模式図表示部5100は、周期設定画面500の上下方向における上端部から中央部に亘る範囲に配置される。模式図表示部5100には、上位コントローラ700Aと下位コントローラ700Bとの間のデータの通信に関する処理を模式的に示す模式図(タイムチャート)が表示される。本例では、模式図表示部5100には、
図3A,
図4Aに対応する上位コントローラ700Aと下位コントローラ700Bとの間のデータの通信に関する処理が模式的に示されている。
【0180】
模式図表示部5100の模式図(タイムチャート)には、設定対象の制御周期T_CTL1,T_CTL2、及び通信周期T_COMのそれぞれに相当する区間5110,5120,5130が示される。
【0181】
設定状態表示部5200は、設定対象の制御周期T_CTL1,T_CTL2、及び通信周期T_COMのそれぞれの現在の設定状態が表示される。設定状態表示部5200は、設定対象の制御周期T_CTL1,T_CTL2、及び通信周期T_COMのそれぞれに対応する設定状態表示部5210,5220,5230を含む。
【0182】
本例では、設定状態表示部5230がカーソル(図中の太線枠)により選択された状態が表示される。この状態で、ユーザは、操作装置750を通じて、所望の数値を入力し、確定させることにより、通信周期T_COMを設定(変更)させることができる。
【0183】
同様に、ユーザは、操作装置750を通じて、カーソルを移動させ、設定状態表示部5200を、設定状態表示部5210或いは設定状態表示部5220が選択された状態に遷移させてよい。そして、ユーザは、操作装置750を通じて、所望の数値を入力し、確定させることにより、制御周期T_CTL1或いは制御周期T_CTL2を設定(変更)させることができる。
【0184】
また、設定状態表示部5230を通じて、通信周期T_COMの設定内容が変更されると、その変更の内容に合わせて、区間5110を含む模式図表示部5100の内容が変更されてよい。同様に、設定状態表示部5220或いは設定状態を通じて、制御周期T_CTL1設定内容が変更されると、その変更の内容に合わせて、区間5110を含む模式図表示部5100の内容が変更されてよい。
【0185】
このように、射出成形機1(コントローラ700)は、周期設定画面5000を表示装置760に表示させ、周期設定画面5000を通じて、制御周期T_CTL1,T_CTL2や通信周期T_COMの設定状態をユーザに確認させることができる。また、射出成形機1は、周期設定画面5000を通じて、制御周期T_CTL1,T_CTL2や通信周期T_COMのユーザからの変更の要求を受け付け、制御周期T_CTL1,T_CTL2や通信周期T_COMの設定内容を変更することができる。これにより、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0186】
尚、周期設定画面5000と同様の画面が周期確認画面として、表示装置760や管理装置2等の表示装置に表示されてもよい。
【0187】
[作用]
次に、本実施形態に係る射出成形機1やコントローラ700の作用について説明する。
【0188】
本実施形態では、上位コントローラ700A及び下位コントローラ700B(共に、内部機器の一例)の間のデータのやり取りを行う通信周期T_COMが、受信されたデータを用いて所定の制御を行う制御周期T_CTL1,T_CTL2よりも短い。所定の制御は、例えば、上述の如く、射出成形機1の全体の作業手順に関するシーケンス制御、射出成形機1の被駆動部の動作制御、射出成形機1の被駆動部を駆動するアクチュエータの駆動制御、或いは、射出成形機の各種データの収集に関する制御等である
【0189】
これにより、例えば、上位コントローラ700Aや下位コントローラ700Bは、制御周期T_CTL1,T_CTL2の間に、2回以上のデータを受信する機会を得ることができる。そのため、上位コントローラ700Aや下位コントローラ700Bは、例えば、通信障害等により最新のデータの受信に1度失敗しても、他の機会で最新のデータを取得することができる。即ち、本実施形態では、射出成形機1は、上位コントローラ700A及び下位コントローラ700Bの間でデータのやり取りを行い、受信側でデータを使用する場合に、データの受信に失敗が生じても、直近で受信済みの最新のデータを使用可能に構成される。
【0190】
例えば、射出成形機1において、コントローラ700に含まれる、上位コントローラ700Aや下位コントローラ700B等の各種コントローラ、及び各種ドライバ、各種センサ等は、物理的に数珠つなぎの態様で通信可能に接続される場合がある。例えば、各種コントローラと、各種ドライバや各種センサ等との間を全て一対一で接続すると配線数及び配線距離等が膨大になる可能性があるからである。このような場合、例えば、下位コントローラ700Bは、数珠つなぎの通信経路を通じて、所定の制御に必要な各種センサや各種ドライバの出力データを送信してもらう必要がある。そのため、下位コントローラ700Bは、通信経路上、相対的に近いセンサやドライバ等から出力データを取得するのに要する時間よりも、相対的に遠いセンサやドライバ等から同じ取得タイミングの出力データを取得するのに要する時間が長くなってしまう。即ち、下位コントローラ700Bや下位コントローラ700Bからデータを送信してもらう上位コントローラ700Aは、同じ取得タイミングに相当する各種センサや各種ドライバ等の出力データを揃えるのに要する時間が相対的に長くなる。よって、本例のような状況では、制御周期T_CTL1,T_CTL2は、相対的に長く設定される必要がある。
【0191】
このような状況において、本実施形態では、相対的に長く設定される制御周期T_CTL1,T_CTL2に対して、通信周期T_COMが相対的に短く設定される。そのため、射出成形機1は、物理的に制御周期が相対的に長く設定される必要がある場合に、その相対的に長い制御周期を利用して、制御周期中に2回以上のデータのやり取りを行う機会を設けることができる。
【0192】
また、例えば、上位コントローラ700A及び下位コントローラ700Bの間が無線回線により通信接続される場合もあり得る。この場合、無線回線への外部からのノイズ等の影響によって、データを適切にやり取りできない頻度が有線回線等の場合よりも相対的に高くなる可能性があり得る。
【0193】
これに対して、本実施形態では、コントローラ700は、制御周期中に2回以上のデータのやり取りを行う機会を設けることで、2回以上のやり取りのうちで受信側がデータを取得できる可能性を相対的に高めることができる。そのため、コントローラ700は、無線回線への外部からのノイズ等の影響によって、データを適切にやり取りできない頻度が相対的に高い状態で、受信側が制御周期ごとに最新のデータを用いて所定の制御を行うことが可能な頻度を高めることができる。
【0194】
また、本実施形態では、射出成形機1は、上位コントローラ700A及び下位コントローラ700Bの間で、周期的に更新されるデータをやり取りする通信をデータの更新周期内で複数回行ってよい。そして、射出成形機1は、その複数回のうちの何れかの一回で受信されるデータを用いて所定の制御を行ってよい。
【0195】
これにより、上位コントローラ700Aや下位コントローラ700Bは、最新のデータのやり取りを複数回行い、そのうちの一回のデータを読み出し、そのデータを用いて所定の制御を行うことができる。そのため、射出成形機1は、通信障害等により最新のデータの受信に1度失敗しても、他の機会で最新のデータを取得できると共に、CPU701が受信済みのデータにアクセスする機会を抑制し負荷を低減させることができる。
【0196】
また、本実施形態では、上位コントローラ700Aや下位コントローラ700Bは、受信済みのデータの中から、所定の制御に用いられておらず、且つ、より新しい内容のデータを取得し、所定の制御を行う。
【0197】
これにより、上位コントローラ700Aや下位コントローラ700Bは、受信済みのデータの中から更新済みの最新のデータを取得することができる。
【0198】
また、本実施形態では、上位コントローラ700A及び下位コントローラ700Bのうちの受信側で最新のデータを使用可能なように、データの通信タイミング及び受信側でのデータの使用タイミングが同期されている。そして、上位コントローラ700A及び下位コントローラ700Bのうちの少なくとも一方から他方に送信されるデータには、更新の有無を表す情報が含まれてよい。
【0199】
これにより、上位コントローラ700Aや下位コントローラ700Bは、直近で受信したデータが前回使用したデータから更新されているか否かを確認することができる。
【0200】
また、本実施形態では、データの更新の有無に関する情報は、データの更新ごとにカウントアップされるカウンタであってよい。
【0201】
例えば、タイムスタンプ等を用いる場合、これを実現するための構成を準備する必要となる。また、送信されるデータ量も相対的に大きくなり通信負荷の増大を招く可能性がある。これに対して、本実施形態では、容易な構成且つ最小のデータ量でデータの更新の有無に関する情報を実現することができる。
【0202】
尚、カウンタは、データの更新ごとにカウントダウンされる態様であってもよい。
【0203】
また、本実施形態では、上位コントローラ700A及び下位コントローラ700Bの少なくとも一方は、データを使用する場合に、受信済みのデータ及び前回に使用したデータのそれぞれの更新の有無を表す情報を比較してよい。そして、上位コントローラ700A及び下位コントローラ700Bの少なくとも一方は、受信済みの直近のデータ及び前回に使用したデータのそれぞれの更新の有無を表す情報に基づき、受信済みの直近のデータが最新のデータであるか否かを判定してよい。
【0204】
これにより、上位コントローラ700Aや下位コントローラ700Bは、データを用いて所定の制御を行う場合に、データに含まれる更新の有無を表す情報を用いて、受信済みのデータが直近のデータであるか否かを確認することができる。例えば、最新のデータを受信するタイミングが2回以上ある場合、データの受信を一度失敗しても、受信済みの直近のデータが最新のデータである場合があるからである。そのため、上位コントローラ700Aや下位コントローラ700Bは、直近のデータ受信タイミングでデータを受信できていない状況で、それ以前のタイミングで受信済みのデータが最新のデータである否かを把握した上で、射出成形機1の制御を行うことができる。
【0205】
また、本実施形態では、上位コントローラ700A及び下位コントローラ700Bの少なくとも一方は、受信済みの直近のデータが更新済みの最新のデータでない場合、受信済みのデータに基づき、更新済みの最新のデータに相当するデータを外挿してよい。
【0206】
これにより、上位コントローラ700Aや下位コントローラ700Bは、直近の受信済みのデータが最新のデータがない場合に、受信済みの過去のデータから最新のデータを外挿しながら、射出成形機1の制御を行うことができる。そのため、射出成形機1の制御性能を向上させることができる。
【0207】
また、本実施形態では、表示装置760は、上位コントローラ700A及び下位コントローラ700Bとの間でデータをやり取りする通信周期T_COM、及び所定の制御が行われる制御周期T_CTL1,T_CTL2のうちの少なくとも一方を表示してよい。
【0208】
これにより、射出成形機1のユーザは、通信周期T_COMや制御周期T_CTL1,T_CTL2の設定内容を確認することができる。また、ユーザは、通信周期T_COMや制御周期T_CTL1,T_CTL2の双方が表示される場合、通信周期T_COMと制御周期T_CTL1,T_CTL2との間の関係を確認することができる。そのため、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0209】
また、本実施形態では、コントローラ700は、射出成形機1に対する操作入力、或いは、外部から受信される要求信号に応じて、データのやり取りする通信周期T_COM、及び所定の制御が行われる制御周期T_CTL1,T_CTL2のうちの少なくとも一方を変更してよい。これにより、射出成形機1のユーザや管理装置2の管理者等は、通信周期T_COMや制御周期T_CTL1,T_CTL2の設定内容を意図的に変更することができる。そのため、ユーザ等の利便性を向上させることができる。
【0210】
また、本実施形態では、射出成形機1は、通信周期T_COMに近づく方向に、制御周期T_CTL1,T_CTL2を変更可能に構成されてよい。
【0211】
これにより、射出成形機1のユーザや管理装置2の管理者等は、例えば、非常に短い通信周期T_COMに合わせて、制御周期T_CTL1,T_CTL2をデフォルト設定より短く設定することができる。そのため、ユーザ等の利便性を更に向上させることができる。
【0212】
また、本実施形態では、上位コントローラ700A及び下位コントローラ700Bの間のデータのやり取りに関する構成は、コントローラ700と射出成形機1に搭載される他の機器との間のデータのやり取りに適用されてもよい。他の機器は、例えば、エンコーダ、電圧センサ、電流センサ、温度センサ等の各種センサ(内部機器の一例)である。また、他の機器は、射出成形機1の被駆動部を駆動するアクチュエータを駆動制御するドライバ(内部機器の一例)であってもよい。また、上位コントローラ700A及び下位コントローラ700Bとの間のデータのやり取りに関する構成は、コントローラ700に内蔵される二つのCPU701(内部機器の一例)の間のデータのやり取りに適用されてもよい。
【0213】
また、本実施形態では、上位コントローラ700A及び下位コントローラ700Bの間のデータのやり取りに関する構成は、射出成形機1(コントローラ700)と外部機器との間のデータのやり取りに適用されてもよい。この場合、射出成形機1と外部機器との間のデータのやり取りが行われる通信経路(通信回線NW)には、上述の如く、5Gの通信回線(移動帯通信網)やギガビットイーサの通信規格に対応するイーサネット通信回線が含まれてもよい。これにより、非常に短い通信周期を実現することができる。外部機器は、例えば、他の射出成形機1であってよい。例えば、複数の射出成形機1は、上述の如く、その中の一の射出成形機1がマスタ機、それ以外の他の射出成形機1がスレーブ機に区分され、一の射出成形機1が自機を含む全ての射出成形機1の動作状態を制御し、複数の射出成形機1の成形動作が同期されてよい。この場合、一の射出成形機1から他の射出成形機1に制御データが送信され、他の射出成形機1から一の射出成形機1に他の射出成形機1の稼働状態データに相当する各種センサの検出データ等が送信されてよい。また、外部機器は、例えば、管理装置2であってもよい。例えば、複数の射出成形機1は、管理装置2により制御され、その成形動作が同期されてよい。この場合、管理装置2から複数の射出成形機1のそれぞれに制御データが送信され、複数の射出成形機1のそれぞれから管理装置2にその稼働状態データに相当する各種センサの検出データ等が送信されてよい。
【0214】
[変形、変更]
以上、射出成形機1の実施形態等について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0215】
例えば、上述した実施形態では、射出成形機1の内部機器同士や射出成形機1と外部機器との間のデータのやり取りに関する構成を説明したが、同様の内容は、他の機械の内部機器同士や当該機械と外部機器との間のデータのやり取りに適用されてもよい。他の機械は、例えば、工場で利用される産業機械や産業ロボットである。また、他の機械は、例えば、作業現場で利用される作業機械(例えば、ショベル、ブルドーザ、クレーン等)であってもよい。即ち、射出成形機1の内部機器同士や射出成形機1と外部機器との間のデータのやり取りに関する構成は、データのやり取りを行う送信部及び受信部と、受信部が受信するデータを使用する制御部とを含む任意の制御システムに適用されてもよい。
【0216】
最後に、本願は、2019年11月18日に出願した日本国特許出願2019-207924号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0217】
1 射出成形機
2 管理装置(外部機器)
100 型締装置
200 エジェクタ装置
300 射出装置
400 移動装置
700 コントローラ
700A 上位コントローラ
700B 下位コントローラ
701 CPU
701A CPU
701B CPU
702 メモリ装置
703 補助記憶装置
704 インタフェース装置
704A FPGA
704B FPGA
750 操作装置
760 表示装置
SYS 射出成形機管理システム