(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241126BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20241126BHJP
B41J 29/13 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/175 503
B41J29/13
(21)【出願番号】P 2020072700
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】高林 和典
(72)【発明者】
【氏名】エリック ヒダヤット
(72)【発明者】
【氏名】ムハマド アウフ
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-039827(JP,A)
【文献】特開2019-181747(JP,A)
【文献】特開2017-123525(JP,A)
【文献】特開2014-034202(JP,A)
【文献】特開2019-089214(JP,A)
【文献】特開2017-191279(JP,A)
【文献】特開2019-025655(JP,A)
【文献】特開2017-065024(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154831(WO,A1)
【文献】特開2013-146997(JP,A)
【文献】特開2016-104582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01- 2/215
B41J 29/00-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に液体を噴射して記録を行う記録部と、
前記記録部を内部空間に収容し、その外面が、第1面と、前記第1面に隣接して交差す
る第2面と、を含んで構成される装置本体と、
前記装置本体の前記第1面において、前記内部空間を開閉可能に設けられた第1開閉体
と、
前記装置本体の前記第2面において、前記内部空間を開閉可能に設けられた第2開閉体
と、
前記第1開閉体を前記第1面にロックするロック機構と、
前記装置本体に対して開いた前記第1開閉体を支持する衝立部材と、を備え、
前記ロック機構は、前記第2開閉体から突出した突出部材と、前記第1開閉体に設けら
れ、前記突出部材が嵌合する受け部材と、を有し、
前記第1開閉体が閉じられた状態において、前記第2開閉体を閉じた際に、前記突出部
材が前記受け部材に嵌合し、前記第1開閉体の回動が規制され、
前記第1開閉体は、前記装置本体に回動可能に支持されるスキャナーユニットであり、
前記ロック機構は、前記第2開閉体が開かれたときに前記第1開閉体のロックを開放し
、
前記衝立部材は、前記第1開閉体が開かれたときの前記第1面に対する最大角度を規制
する、
記録装置。
【請求項2】
記録媒体に液体を噴射して記録を行う記録部と、
前記記録部を内部空間に収容し、その外面が、第1面と、前記第1面に隣接して交差す
る第2面と、を含んで構成される装置本体と、
前記装置本体の前記第1面において、前記内部空間を開閉可能に設けられた第1開閉体
と、
前記装置本体の前記第2面において、前記内部空間を開閉可能に設けられた第2開閉体
と、
前記装置本体との間に、閉じられた状態の前記第2開閉体を挟んで前記第2面を覆う閉
姿勢と、前記閉じられた状態の前記第2開閉体から離間する開姿勢との間で回動可能に設
けられた操作パネルと、
前記第1開閉体を前記第1面にロックするロック機構と、
前記装置本体に対して開いた前記第1開閉体を支持する衝立部材と、を備え、
前記ロック機構は、前記第2開閉体から突出した突出部材と、前記第1開閉体に設けら
れ、前記突出部材が嵌合する受け部材と、を有し、
前記第1開閉体が閉じられた状態において、前記第2開閉体を閉じた際に、前記突出部
材が前記受け部材に嵌合し、前記第1開閉体の回動が規制され、
前記第1開閉体は、前記装置本体に回動可能に支持されるスキャナーユニットであり、
前記ロック機構は、前記第2開閉体が開かれたときに前記第1開閉体のロックを開放し
、
前記衝立部材は、前記第1開閉体が開かれたときの前記第1面に対する最大角度を規制
する、
記録装置。
【請求項3】
前記最大角度が20度である、
請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
記録媒体に液体を噴射して記録を行う記録部と、
前記記録部を内部空間に収容し、その外面が、第1面と、前記第1面に隣接して交差す
る第2面と、を含んで構成される装置本体と、
前記装置本体の前記第1面において、前記内部空間を開閉可能に設けられた第1開閉体
と、
前記装置本体の前記第2面において、前記内部空間を開閉可能に設けられた第2開閉体
と、
前記第1開閉体を前記第1面にロックするロック機構と、
前記内部空間に設けられるテーブルプレートと、を備え、
前記ロック機構は、前記第2開閉体から突出した突出部材と、前記第1開閉体に設けら
れ、前記突出部材が嵌合する受け部材と、を有し、
前記第1開閉体が閉じられた状態において、前記第2開閉体を閉じた際に、前記突出部
材が前記受け部材に嵌合し、前記第1開閉体の回動が規制され、
前記第1開閉体は、スキャナーユニットであり、
前記ロック機構は、前記第2開閉体が開かれたときに前記第1開閉体のロックを開放し
、
前記テーブルプレートは、前記第2開閉体が開かれたときに露出する、
記録装置。
【請求項5】
記録媒体に液体を噴射して記録を行う記録部と、
前記記録部を内部空間に収容し、その外面が、第1面と、前記第1面に隣接して交差す
る第2面と、を含んで構成される装置本体と、
前記装置本体の前記第1面において、前記内部空間を開閉可能に設けられた第1開閉体
と、
前記装置本体の前記第2面において、前記内部空間を開閉可能に設けられた第2開閉体
と、
前記装置本体との間に、閉じられた状態の前記第2開閉体を挟んで前記第2面を覆う閉
姿勢と、前記閉じられた状態の前記第2開閉体から離間する開姿勢との間で回動可能に設
けられた操作パネルと、
前記第1開閉体を前記第1面にロックするロック機構と、
前記内部空間に設けられるテーブルプレートと、を備え、
前記ロック機構は、前記第2開閉体から突出した突出部材と、前記第1開閉体に設けら
れ、前記突出部材が嵌合する受け部材と、を有し、
前記第1開閉体が閉じられた状態において、前記第2開閉体を閉じた際に、前記突出部
材が前記受け部材に嵌合し、前記第1開閉体の回動が規制され、
前記第1開閉体は、スキャナーユニットであり、
前記ロック機構は、前記第2開閉体が開かれたときに前記第1開閉体のロックを開放し
、
前記テーブルプレートは、前記第2開閉体が開かれたときに露出する、
記録装置。
【請求項6】
記録媒体に液体を噴射して記録を行う記録部と、
前記記録部を内部空間に収容し、その外面が、第1面と、前記第1面に隣接して交差す
る第2面と、を含んで構成される装置本体と、
前記装置本体の前記第1面において、前記内部空間を開閉可能に設けられた第1開閉体
と、
前記装置本体の前記第2面において、前記内部空間を開閉可能に設けられた第2開閉体
と、
前記第1開閉体を前記第1面にロックするロック機構と、
前記第1開閉体に設けられ、前記第1開閉体からひさし状に張り出す指掛け部と、を備
え、
前記ロック機構は、前記第2開閉体から突出した突出部材と、前記第1開閉体に設けら
れ、前記突出部材が嵌合する受け部材と、を有し、
前記第1開閉体が閉じられた状態において、前記第2開閉体を閉じた際に、前記突出部
材が前記受け部材に嵌合し、前記第1開閉体の回動が規制され、
前記第1開閉体は、スキャナーユニットであり、
前記ロック機構は、前記第2開閉体が開かれたときに前記第1開閉体のロックを開放
する、
記録装置。
【請求項7】
記録媒体に液体を噴射して記録を行う記録部と、
前記記録部を内部空間に収容し、その外面が、第1面と、前記第1面に隣接して交差す
る第2面と、を含んで構成される装置本体と、
前記装置本体の前記第1面において、前記内部空間を開閉可能に設けられた第1開閉体
と、
前記装置本体の前記第2面において、前記内部空間を開閉可能に設けられた第2開閉体
と、
前記装置本体との間に、閉じられた状態の前記第2開閉体を挟んで前記第2面を覆う閉
姿勢と、前記閉じられた状態の前記第2開閉体から離間する開姿勢との間で回動可能に設
けられた操作パネルと、
前記第1開閉体を前記第1面にロックするロック機構と、
前記第1開閉体に設けられ、前記第1開閉体からひさし状に張り出す指掛け部と、を備
え、
前記ロック機構は、前記第2開閉体から突出した突出部材と、前記第1開閉体に設けら
れ、前記突出部材が嵌合する受け部材と、を有し、
前記第1開閉体が閉じられた状態において、前記第2開閉体を閉じた際に、前記突出部
材が前記受け部材に嵌合し、前記第1開閉体の回動が規制され、
前記第1開閉体は、スキャナーユニットであり、
前記ロック機構は、前記第2開閉体が開かれたときに前記第1開閉体のロックを開放
する、
記録装置。
【請求項8】
前記液体を収容する液体収容部と、
前記液体を前記液体収容部から前記記録部に送るチューブと、を備え、
前記チューブは、前記内部空間において、前記第2開閉体を開いたときに露出する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すような、記録媒体に記録を行うプリンターの上部に、原稿の画像を読み取るスキャナーを設けた複合型の記録装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の記録装置では、プリンター本体の内部を簡便に開放できるカバーがフロントカバーのみであるため、例えば、プリンター内部の搬送経路内で記録媒体のジャムが発生した場合に、内部にアクセスし難く、ジャムを除去する作業がし難いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の記録装置は、記録媒体に液体を噴射して記録を行う記録部と、前記記録部を内部空間に収容し、その外面が、第1面と、前記第1面に隣接して交差する第2面と、を含んで構成される装置本体と、前記装置本体の前記第1面において、前記内部空間を開閉可能に設けられた第1開閉体と、前記装置本体の前記第2面において、前記内部空間を開閉可能に設けられた第2開閉体と、前記第1開閉体を前記第1面にロックするロック機構と、を備え、前記ロック機構は、前記第2開閉体が開かれたときに前記第1開閉体のロックを開放する。
【0006】
本願の記録装置は、記録媒体に液体を噴射して記録を行う記録部と、前記記録部を内部空間に収容し、その外面が、第1面と、前記第1面に隣接して交差する第2面と、を含んで構成される装置本体と、前記装置本体の前記第1面において、前記内部空間を開閉可能に設けられた第1開閉体と、前記装置本体の前記第2面において、前記内部空間を開閉可能に設けられた第2開閉体と、前記装置本体との間に、閉じられた状態の前記第2開閉体を挟んで前記第2面を覆う閉姿勢と、前記閉じられた状態の前記第2開閉体から離間する開姿勢との間で回動可能に設けられた操作パネルと、前記第1開閉体を前記第1面にロックするロック機構と、を備え、前記ロック機構は、前記第2開閉体が開かれたときに前記第1開閉体のロックを開放する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る複合記録装置のフロントカバー、スキャナーユニット、およびタンク収容部カバーを閉じた状態を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る複合記録装置のフロントカバーを開いた状態を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係る複合記録装置のフロントカバー、およびスキャナーユニットを開いた状態を示す斜視図である。
【
図4】実施形態に係る複合記録装置のフロントカバー、スキャナーユニット、およびタンク収容部カバーを開いた状態を示す斜視図である。
【
図5】前面に操作パネルを備える複合記録装置の操作パネル、フロントカバー、スキャナーユニット、およびタンク収容部カバーを閉じた状態を示す斜視図である。
【
図6】前面に操作パネルを備える複合記録装置の操作パネルを開いた状態を示す斜視図である。
【
図7】前面に操作パネルを備える複合記録装置の操作パネル、およびフロントカバーを開いた状態を示す斜視図である。
【
図8】前面に操作パネルを備える複合記録装置の操作パネル、フロントカバー、およびスキャナーユニットを開いた状態を示す斜視図である。
【
図9】前面に操作パネルを備える複合記録装置の操作パネル、フロントカバー、スキャナーユニット、およびタンク収容部カバーを開いた状態を示す斜視図である。
【
図10】実施形態に係る複合記録装置のロック機構を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る記録装置の実施形態としての複合記録装置1について、図面に基づき説明する。
複合記録装置1には、
図1から
図4に示すように、プリンター2と、プリンター2の上部に設けられたスキャナーユニット3から構成されているタイプと、
図5から
図9に示すように、複合記録装置1の前面に更に操作パネル4を備えたタイプの2つのタイプがある。以下、スキャナーユニット3を単にスキャナー3と言う。
なお、各図において示すX-Y-Z座標系は、X軸方向が複合記録装置1の幅方向、および、複合記録装置1が記録を行う記録媒体の一例である用紙を複合記録装置1にセットした場合の用紙の幅方向であり、Y軸方向が用紙に記録を行う際の用紙搬送方向および装置奥行き方向である。また、+Y方向が装置前方側、+X方向が装置左側であり、Z軸方向が装置高さ方向および重力方向を示している。
【0009】
プリンター2は、スキャナー3が読み取った画像データ、あるいは、外部電子機器から取得した画像データに基づき記録を行うことができるインクジェットプリンターである。
プリンター2は、記録部20、インク供給部30、搬送機構40などにより構成されている。
複合記録装置1の装置本体としてのプリンター2の筐体は、その内部空間Siに記録部20を含み、その外面が第1面としての上面S1と、上面S1に隣接して交差する第2面としての前面S2を含んで構成される。なお、第1面、第2面、つまり、上面S1と前面S2は、プリンター2の内部空間Siを構成する実体の無い仮想面であり、その仮想面に沿って、後述する複数の部材が設けられている。
【0010】
記録部20は、記録ヘッド22、キャリッジ24、ガイド軸26、ケーブル28などを含み構成され、プリンター2の筐体の内部空間Siに収容されている。
記録ヘッド22は、液体としての記録用のインクをインク滴として吐出する複数のノズルを列設したノズル列を備えている。
キャリッジ24は、記録ヘッド22を搭載し、キャリッジモーターの駆動力を受けて、ガイド軸26に沿ってX軸方向に走査移動する。キャリッジモーターは図示を省略する。
ガイド軸26は、X軸方向に延在してキャリッジ24を摺接可能な状態で支持する。
ケーブル28は、プリンター2およびスキャナー3を制御する制御部と記録ヘッド22とを接続する信号ケーブルである。制御部は図示を省略する。
【0011】
インク供給部30は、液体収容部としてのインクタンク32、タンク収容部34、タンク収容部カバー36、チューブ38などにより構成されている。
タンク収容部34は、プリンター2の筐体の前方右側に設けられ、タンク収容部34の上部に設けられたタンク収容部カバー36を手前側に開くことで、タンク収容部34の内部に収容されたインクタンク32のインク注入口が露出し、例えば、インクボトルなどによりインクの補充を行うことができる。
チューブ38は、インクタンク32と記録ヘッド22とを接続し、ポンプの圧力によりインクを記録ヘッド22に供給する。すなわち、チューブ38は、インクをインクタンク32から記録部20に送る。ポンプは、図示を省略する。
【0012】
搬送機構40は、用紙を搬送する搬送経路において、用紙をガイドするガイド部材や、用紙に搬送力を付与する搬送ローラーなどによって構成されている。ガイド部材、搬送ローラーは図示を省略する。
搬送経路は、プリンター2の筐体の後方に設けられた給紙口45から、内部のプラテン46を経由し、プリンター2の筐体の前方に設けられた排出口47に至る経路として構成されている。
搬送ローラーとしては、搬送モーターによって駆動される駆動ローラー、駆動ローラーの駆動や用紙の移動に伴って回転する従動ローラーなどが有り、搬送経路の複数の箇所に配置されている。
給紙口45から差し入れられて給送される用紙は、駆動ローラーと従動ローラーとによるローラー対にニップされ、プラテン46に向かって搬送される。
プラテン46は、キャリッジ24に搭載された記録ヘッド22に対向配置されており、記録ヘッド22により記録が行われる記録領域を構成している。
記録が完了した用紙は、プラテン46の搬送経路下流側に設けられた駆動ローラーにより排出口47から装置前方側に排出される。
【0013】
このように、内部空間Siには、用紙が搬送される搬送経路が含まれ、キャリッジ24の往復移動領域が含まれる。つまり、内部空間Siには、キャリッジ24に接続されるケーブル28やチューブ38も含まれる。
【0014】
また、プリンター2の前面S2には、内部空間Siを開閉可能に設けられた第2開閉体としてのフロントカバー5が設けられている。フロントカバー5は、閉じた状態における下辺側が、前面S2に設けられた排出口47の上側においてプリンター2の筐体に設けられたヒンジに軸支され、プリンター2の前方に回動させることで、内部空間Siを開放することができる。
図1は、フロントカバー5が閉じた状態を、
図2は、フロントカバー5が開いた状態を示している。また、
図5は、操作パネル4を備えるタイプの複合記録装置1において、フロントカバー5および操作パネル4が閉じた状態を、
図7は、それぞれが開いた状態を示している。
チューブ38は、少なくともその一部が内部空間Siに含まれるため、フロントカバー5を開いたときに露出する。なお、チューブ38の露出位置は、フロントカバー5を開いたときのキャリッジ24の停止位置に依存する。
【0015】
スキャナー3は、読取ユニット、原稿台、原稿台カバーなどから構成されるフラットベッド型のスキャナーである。用紙を自動搬送するオートドキュメントフィーダーを備えるタイプであっても良い。
スキャナー3は、装置後方上側に設けられたヒンジを介してプリンター2の筐体に対して回動可能に設けられており、回動することでプリンター2の内部空間Siを露呈させ、開放することができる。すなわち、スキャナー3は、プリンター2の上面S1において、プリンター2の内部空間Siを開閉可能に設けられた第1開閉体である。
【0016】
また、複合記録装置1は、開いた状態のスキャナー3を支持する衝立部材70を備えている。衝立部材70は、その下端がプリンター2の前方左側上部に支持され、上端が回動して開いたスキャナー3の底部を支持し、スキャナー3の開いた状態を維持するように設けられている。また、衝立部材70は、スキャナー3が回動可能な最大開度を規制する。スキャナー3が開かれたときのプリンター2の上面S1に対する最大角度θは、20度である。
【0017】
操作パネル4を備えるタイプの複合記録装置1において、操作パネル4は、複合記録装置1における記録動作および画像読取動作を操作するためのユーザーインターフェイスとして設けられており、表示部および複数の操作ボタンを備えている。操作パネル4は、その上辺側が、スキャナー3の前方に設けられたヒンジに軸支され、このヒンジを介し、スキャナー3に対して回動可能に設けられている。より具体的には、操作パネル4は、複合記録装置1の前面側において、プリンター2の筐体との間に、閉じられた状態のフロントカバー5を挟んで前面S2を覆う閉姿勢と、閉じられた状態のフロントカバー5から離間する開姿勢との間で回動可能にスキャナー3に支持されている。
【0018】
操作パネル4が前面S2を覆い、垂直面に沿った状態を全閉姿勢と言い、最大角度開いた状態を全開姿勢と言う。操作パネル4が、全閉姿勢であっても、操作パネル4の自由端の下側には、排出口47が開口する。また操作パネル4は、スキャナー3が水平状態のとき、全開姿勢においてパネル面が水平に沿った状態となる。また、操作パネル4は、姿勢保持手段により所定の回動角で姿勢保持可能である。姿勢保持手段についての説明は省略する。
フロントカバー5は、操作パネル4を上方向にチルトさせることで開閉可能となる。換言すると、操作パネル4を上方向にチルトさせることで、フロントカバー5が開閉可能な領域が確保される。
なお、操作パネル4は、操作ボタンを備えることなく、表示部だけの構成であっても良い。この場合、操作ボタンは、必要に応じ、操作パネル4以外の場所に備えられる。
【0019】
操作パネル4を備えない複合記録装置1の場合、フロントカバー5およびスキャナー3を開くことにより、
図3に示すように、内部空間Siを露呈させ、開放することができる。また、操作パネル4を備える複合記録装置1の場合、操作パネル4を水平方向に回動させ、次いで、フロントカバー5およびスキャナー3を開くことにより、
図8に示すように、内部空間Siを露呈させ、開放することができる。
また、フロントカバー5を開いた際に露出するプリンター2の内部空間Siの前面S2の下部には、
図3、
図8に示すように、X-Y面内において、X軸方向に延在するテーブルプレート6が設けられている。テーブルプレート6は、プリンター2の内部空間Siに手を差し入れてメンテナンス作業を行う際の手置きテーブルとしての利便性を備えている。
また、
図4、
図9に示すように、タンク収容部カバー36を手前側に開くことで、タンク収容部34の奥側の内部空間Siへのアクセスもし易くなる。更に、タンク収容部カバー36を手前側に開くことで、スキャナー3の前方右側上部に設けられ、ひさし状に張り出した指掛け部7が露出する。この指掛け部7に指を掛けることにより、スキャナー3の回動を容易にすることができる。
【0020】
このように、プリンター2の内部空間Siの上面S1および前面S2の両方が開放できる構成において、複合記録装置1は、スキャナー3を上面S1にロックするロック機構60を備えている。
ロック機構60は、
図2から
図4、および
図7から
図10に示すように、フロントカバー5から突出した突出部材62と、スキャナー3に設けられ、突出部材62が嵌合する受け部材64と、を有している。なお、
図7から
図9では、操作パネル4に遮られる位置にある受け部材64の図示を省略している。
突出部材62は、フロントカバー5を閉じた際の上辺側の中央領域、つまり回動する自由端の中央領域において、フロントカバー5の延在方向と交差する方向、具体的には、回動するフロントカバー5の回転円の接線方向であって、フロントカバー5を閉じた際に内部空間Siに向かう方向に突出するように設けられている。
受け部材64は、スキャナー3の前方端の底部において、フロントカバー5を閉じた際の突出部材62に対応する位置に設けられている。受け部材64は、
図10に示すように、スキャナー3が閉じられた状態において、フロントカバー5を閉じた際に、スキャナー3の底部との間に突出部材62の突出部が嵌合する顎状の突出部が設けられた形状をしている。
【0021】
また、ロック機構60は、フロントカバー5を閉じた状態に保持する保持機構66を備えている。保持機構66は、保持ピン67、ばね68などから構成されている。
保持ピン67は、閉じた状態におけるフロントカバー5の突出部材62に対応する位置に、スキャナー3の底部から突出するように設けられ、且つ、その突出位置が変位可能にばね68に押圧されるように設けられている。
また、突出部材62には、フロントカバー5が閉じた状態において、突出する保持ピン67の先端領域が入り込む凹部69が形成されている。
フロントカバー5が閉じる際、保持ピン67が、ばね68の押圧力に抗して一旦引っ込み、その後、凹部69に突出して嵌まり込むことで
図10に示す様な保持状態となる。
【0022】
ロック機構60は、スキャナー3が閉じられた状態において、フロントカバー5を閉じた際に、フロントカバー5から突出した突出部材62が、スキャナー3に設けられた受け部材64に嵌合し、またその状態が保持機構66によって保持され、スキャナー3の回動が規制される。また、ロック機構60は、フロントカバー5が開かれたときにスキャナー3のロックを開放する。
【0023】
本実施形態の複合記録装置1によれば、以下の効果を得ることができる。
スキャナー3とフロントカバー5とを開くことにより、プリンター2の内部空間Siを広い範囲で開放することができる。その結果、例えば、プリンター2の内部において、記録媒体の搬送経路にジャムが発生した場合に、ジャムを除去するなどのメンテナンス作業が行いやすくなる。
また、複合記録装置1によれば、フロントカバー5が開かれたときに、プリンター2の上面S1に設けられロックされているスキャナー3のロックが開放される。つまり、複合記録装置1の使用状態においては、フロントカバー5を閉じることにより、スキャナー3がプリンター2の上面S1にロックされた状態に維持することができる。そのため、プリンター2の上面S1と前面S2の2つの面が開放できる構成において、装置の使用状態における堅牢性を維持することができる。
【0024】
また、操作パネル4を備える複合記録装置1の場合、操作パネル4は、閉じられた状態のフロントカバー5を挟んで前面S2を覆う閉姿勢と、閉じられた状態のフロントカバー5から離間する開姿勢との間で回動可能に設けられている。そのため、操作パネル4を回動させてフロントカバー5から離間させることで、フロントカバー5を開閉させることができる。
【0025】
また、スキャナー3が閉じられた状態において、フロントカバー5を閉じることで、フロントカバー5から突出した突出部材62が、スキャナー3に設けられた受け部材64に嵌合し、スキャナー3の回動が規制される。この構成により、フロントカバー5を閉じることで、スキャナー3を上面S1にロックすることができる。つまり、スキャナー3を上面S1にロックするロック機構60を、フロントカバー5に設けた突出部材62とスキャナー3に設けた受け部材64とで簡便に構成することができる。
【0026】
また、複合記録装置1は、インクを収容するインクタンク32と、インクをインクタンク32から記録部20に送るチューブ38とを備え、チューブ38は、内部空間Siにおいて、フロントカバー5を開いたときに露出する。つまり、前面S2から内部空間Siの必要な箇所へアクセスしようとした場合に、チューブ38は、そのアクセスを阻害する場合がある。しかしながら、複合記録装置1は、スキャナー3とフロントカバー5とを開くことにより、プリンター2の内部空間Siを広い範囲で開放することができるため、必要な箇所へのアクセスが、より容易になる。
【0027】
また、スキャナー3は、プリンター2の上面S1において、プリンター2に最大角度が20度で回動可能に支持される。従って、回動の先端側の領域は、アクセスが容易な比較的広い空間として開放されるが、回動軸付近の領域は、スキャナー3の最大開度が20度に制限されるため、開放される空間を狭くすることができる。その結果、スキャナー3の回動の先端側の領域においてはメンテナンスの作業性を向上させながら、スキャナー3の回動軸付近の内部空間Siの領域を、例えば、容易なアクセスを避けたい領域や、アクセス不要な領域として設けることができる。
【0028】
また、スキャナー3は、開いた際に、衝立部材70により支持されるため、プリンター2の内部空間Siを開放したままの状態に維持することができる。その結果、例えば、メンテナンス作業などを行い易くすることができる。
【0029】
また、第1開閉体をスキャナー3で構成することにより、スキャナー3が読み込んだ原稿の画像を記録することのできる記録装置として構成することができる。
また、プリンター2の上面S1に設けられたスキャナー3を開くことで、プリンター2の内部空間Siを開放することができるので、例えば、プリンター2の内部において、記録媒体の搬送経路にジャムが発生した場合に、ジャムを除去するなどのメンテナンス作業が行いやすくなる。
また、複合記録装置1の使用状態においては、フロントカバー5を閉じることにより、スキャナー3がプリンター2の上面S1にロックされた状態になるため、装置の使用状態における堅牢性を維持することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、プリンター2の上部にスキャナー3を備えているが、スキャナー3を備えない構成、すなわち、第1開閉体として、スキャナー3に代えて、例えば、天板を備える構成であっても良い。
また、プリンター2が用紙に記録を行う方式は、インクジェット方式に限られず、電子写真方式、ドットインパクト方式など、種々のものを採用可能である。またインクジェット方式では、キャリッジ24にインクカートリッジを搭載するタイプであってもよい。また更に、記録ヘッド22が用紙搬送方向と交差する方向の領域全体をカバーする大きさに形成されて移動しない、ラインヘッドタイプであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…複合記録装置、2…プリンター、3…スキャナー、4…操作パネル、5…フロントカバー、6…テーブルプレート、7…指掛け部、20…記録部、22…記録ヘッド、24…キャリッジ、26…ガイド軸、28…ケーブル、30…インク供給部、32…インクタンク、34…タンク収容部、36…タンク収容部カバー、38…チューブ、40…搬送機構、45…給紙口、46…プラテン、47…排出口、60…ロック機構、62…突出部材、64…受け部材、66…保持機構、67…保持ピン、69…凹部、70…衝立部材、Si…内部空間、S1…上面、S2…前面。