(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】集積回路、発振器、電子機器および移動体
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20241126BHJP
H01L 23/06 20060101ALI20241126BHJP
H01L 23/58 20060101ALI20241126BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20241126BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03B5/32 A
H01L23/06 Z
H01L23/56 D
H01L27/04 A
H01L27/04 E
H01L27/04 B
(21)【出願番号】P 2020091103
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-04-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】丸山 泰央
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-067967(JP,A)
【文献】特開2012-156977(JP,A)
【文献】特開2018-026649(JP,A)
【文献】特開2017-139717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/30- 5/42
H01L 23/06
H01L 23/58
H01L 21/822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1辺に沿って配置される第1接続端子および第2接続端子と、
前記第1接続端子および前記第2接続端子を介して振動片と電気的に接続される発振回
路と、
前記第1辺と対向する第2辺側に偏在して配置されている温度センサーと、
前記温度センサーの出力信号に基づいて前記振動片の温度特性を補償する温度補償回路
と、
平面視で、前記第1接続端子と前記第2接続端子との間に位置し、前記発振回路から出
力される信号が入力され、発振信号を出力する出力回路と、を有し、
平面視で、前記第1辺と直交し、かつ
、集積回路の中心を通る軸を中心軸としたとき、
前記温度センサーおよび前記出力回路は前記中心軸と重なっており、
前記温度センサーと前記出力回路との離間距離をd0とし、
前記第1接続端子と前記出力回路との離間距離をd1とし、
前記第2接続端子と前記出力回路との離間距離をd2としたとき、
d1<d0、かつ、d2<d0、および、
1.5≦d0/d1≦5.0、かつ、1.5≦d0/d2≦5.0、を満たすことを特
徴とする集積回路。
【請求項2】
前記第1辺と前記第2辺との一端部同士を接続する第3辺に沿って配置される第3接続
端子および第4接続端子と、
前記第1辺と前記第2辺との他端部同士を接続する第4辺に沿って配置される第5接続
端子および第6接続端子と、を有する請求項1に記載の集積回路。
【請求項3】
前記第3接続端子と前記第5接続端子および前記第4接続端子と前記第6接続端子は、
それぞれ、前記第1接続端子と前記第2接続端子とが並ぶ方向に沿って配置され、
前記第1接続端子と前記第2接続端子との離間距離をD1とし、
前記第3接続端子と前記第5接続端子との離間距離をD2とし、
前記第4接続端子と前記第6接続端子との離間距離をD3としたとき、
D1<D2、かつ、D1<D3である請求項
2に記載の集積回路。
【請求項4】
前記出力回路と前記第4接続端子との離間距離をd4とし、
前記出力回路と前記第6接続端子との離間距離をd6としたとき、
d4<d0、かつ、d6<d0である請求項2または3に記載の集積回路。
【請求項5】
前記出力回路と前記第3接続端子との離間距離をd3とし、
前記出力回路と前記第5接続端子との離間距離をd5としたとき、
d3<d0、かつ、d5<d0である請求項
2ないし4のいずれか1項に記載の集積回
路。
【請求項6】
集積回路と、
前記集積回路と電気的に接続される振動片と、を有し、
前記集積回路は、
第1辺に沿って配置される第1接続端子および第2接続端子と、
前記第1接続端子および前記第2接続端子を介して前記振動片と電気的に接続される発
振回路と、
前記第1辺と対向する第2辺側に偏在して配置されている温度センサーと、
前記温度センサーの出力信号に基づいて前記振動片の温度特性を補償する温度補償回路
と、
平面視で、前記第1接続端子と前記第2接続端子との間に位置し、前記発振回路から出
力される信号が入力され、発振信号を出力する出力回路と、を有し、
平面視で、前記第1辺と直交し、かつ、前記集積回路の中心を通る軸を中心軸としたと
き、前記温度センサーおよび前記出力回路は前記中心軸と重なっており、
前記温度センサーと前記出力回路との離間距離をd0とし、
前記第1接続端子と前記出力回路との離間距離をd1とし、
前記第2接続端子と前記出力回路との離間距離をd2としたとき、
d1<d0、かつ、d2<d0、および、
1.5≦d0/d1≦5.0、かつ、1.5≦d0/d2≦5.0、を満たすことを特
徴とする発振器。
【請求項7】
凹部を有するベースと、
前記凹部の開口を塞ぐように、前記ベースに接合されるリッドと、を有し、
前記凹部に前記集積回路および前記振動片が配置される請求項6に記載の発振器。
【請求項8】
表裏関係にある第1主面および第2主面を有し、前記第1主面に開口する第1凹部およ
び前記第2主面に開口する第2凹部を備えるベースと、
前記第1凹部の開口を塞ぐように、前記ベースの前記第1主面に接合されるリッドと、
を有し、
前記第1凹部に前記振動片が配置され、
前記第2凹部に前記集積回路が配置される請求項6に記載の発振器。
【請求項9】
表裏関係にある第1主面および第2主面を有し、前記第1主面または前記第2主面に前
記集積回路が形成される半導体基板と、
前記第1主面側に配置される前記振動片と、
前記振動片を覆うように、前記半導体基板に接合されるリッドと、を有する請求項6に
記載の発振器。
【請求項10】
請求項6に記載の発振器と、
前記発振信号に基づいて動作する処理回路と、を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項6に記載の発振器と、
前記発振信号に基づいて動作する処理回路と、を備えることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路、発振器、電子機器および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された温度補償型水晶発振器(TCXO)では、集積回路内の温度センサーを、振動片と電気的に接続された接続端子の近傍に配置することにより、振動片の温度と温度センサーで感知した温度との差の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の発振器では、定常状態における前記差については低減できるが、起動時の挙動については考慮されていない。特許文献1の発振器のレイアウトでは、発熱量が大きい出力回路からの熱が振動片に伝わるまでの時間が、出力回路からの熱が温度センサーに伝わるまでの時間よりも長くなる。そのため、起動後の振動片の温度収束にかかる時間と、温度センサーの温度収束にかかる時間との差が大きくなる。これにより、起動から出力信号の周波数が安定するまでの時間が長くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る集積回路は、第1辺に沿って配置される第1接続端子および第2接続端子と、
前記第1接続端子および前記第2接続端子を介して振動片と電気的に接続される発振回路と、
温度センサーと、
前記温度センサーの出力信号に基づいて前記振動片の温度特性を補償する温度補償回路と、
前記発振回路から出力される信号が入力され、発振信号を出力する出力回路と、を有し、
前記温度センサーと前記出力回路との離間距離をd0とし、
前記第1接続端子と前記出力回路との離間距離をd1とし、
前記第2接続端子と前記出力回路との離間距離をd2としたとき、
d1<d0、かつ、d2<d0である。
【0006】
本発明に係る発振器は、集積回路と、
前記集積回路と電気的に接続される振動片と、を有し、
前記集積回路は、
第1辺に沿って配置される第1接続端子および第2接続端子と、
前記第1接続端子および前記第2接続端子を介して前記振動片と電気的に接続される発振回路と、
温度センサーと、
前記温度センサーの出力信号に基づいて前記振動片の温度特性を補償する温度補償回路と、
前記発振回路から出力される信号が入力され、発振信号を出力する出力回路と、を有し、
前記温度センサーと前記出力回路との離間距離をd0とし、
前記第1接続端子と前記出力回路との離間距離をd1とし、
前記第2接続端子と前記出力回路との離間距離をd2としたとき、
d1<d0、かつ、d2<d0である。
【0007】
本発明に係る電子機器は、上述の発振器と、
前記発振信号に基づいて動作する処理回路と、を備える。
【0008】
本発明に係る移動体は、上述の発振器と、
前記発振信号に基づいて動作する処理回路と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】
図1の発振器が有する集積回路を示すブロック図である。
【
図5】集積回路の出力回路および温度センサーの配置を示す平面図である。
【
図6】第2実施形態に係る集積回路の出力回路および温度センサーの配置を示す平面図である。
【
図7】第3実施形態に係る集積回路の出力回路および温度センサーの配置を示す平面図である。
【
図8】第4実施形態に係る発振器を示す断面図である。
【
図9】第5実施形態に係る発振器を示す断面図である。
【
図10】第6実施形態のスマートフォンを示す斜視図である。
【
図11】第7実施形態の自動車を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の集積回路、発振器、電子機器および移動体の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の発振器を示す断面図である。
図2および
図3は、それぞれ、
図1の発振器を示す平面図である。
図4は、
図1の発振器が有する集積回路を示すブロック図である。
図5は、集積回路の出力回路および温度センサーの配置を示す平面図である。なお、
図1は、
図2中のA-A線断面図である。また、以下では、説明の便宜上、
図1中の上側を「上」とも言い、下側を「下」とも言う。
【0012】
図1に示す発振器1は、温度補償型水晶発振器であり、パッケージ2と、パッケージ2に収容された振動片3および集積回路4と、を有する。
【0013】
パッケージ2は、上面21aに開口する凹部211を備えるベース21と、凹部211の開口を塞ぐようにベース21の上面21aに接合部材23を介して接合されたリッド22と、を有する。また、凹部211の開口がリッド22によって塞がれることにより、パッケージ2内に気密な内部空間Sが形成され、内部空間Sに振動片3および集積回路4が収容される。これにより、集積回路4および振動片3を衝撃や外部の環境、特に埃、水分、湿気等から保護することができる。なお、特に限定されないが、ベース21は、アルミナ等のセラミックスで構成することができ、リッド22は、コバール等の金属材料で構成することができる。
【0014】
内部空間Sの雰囲気としては、特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換され、大気圧に対して減圧された減圧状態、好ましくはより真空に近い状態であることが好ましい。これにより、粘性抵抗が減り、振動片3のQ値を効果的に下げることができ、振動片3の発振特性が向上する。ただし、内部空間Sの雰囲気としては、これに限定されず、大気圧状態、加圧状態であってもよい。
【0015】
また、凹部211は、複数の凹部によって構成され、図示の構成では、ベース21の上面に開口する凹部211aと、凹部211aの底面に開口し、凹部211aよりも開口が小さい凹部211bと、を有する。また、凹部211aの底面に振動片3が固定され、凹部211bの底面に集積回路4が固定されている。また、
図2に示すように、凹部211aの底面には内部端子241、242が配置されている。また、凹部211bの底面には6つの内部端子251、252、253、254、255、256が配置されている。また、ベース21の下面には4つの外部端子263、264、265、266が配置されている。
【0016】
また、内部端子251と内部端子241、内部端子252と内部端子242、内部端子253と外部端子263、内部端子254と外部端子264、内部端子255と外部端子265、内部端子256と外部端子266がそれぞれベース21内に形成された不図示の内部配線を介して電気的に接続されている。また、内部端子241、242は、それぞれ、導電性の接合部材B1を介して振動片3と電気的に接続されている。また、内部端子251~256は、それぞれ、導電性の接合部材B2を介して集積回路4と電気的に接続されている。ただし、各部の接続方法は、特に限定されない。
【0017】
また、接合部材B1、B2としては、導電性と接合性とを兼ね備えていれば、特に限定されず、例えば、金バンプ、銀バンプ、銅バンプ、はんだバンプ等の各種金属バンプ、ポリイミド系、エポキシ系、シリコーン系、アクリル系の各種接着剤に銀フィラー等の導電性フィラーを分散させた導電性接着剤等を用いることができる。接合部材B1、B2として前者の金属バンプを用いると、接合部材B1、B2からのガスの発生を抑制でき、内部空間Sの環境変化、特に圧力の上昇を効果的に抑制することができる。また、優れた熱導電性を有するため、集積回路4の熱が振動片3に伝わり易くもなる。一方、接合部材B1、B2として後者の導電性接着剤を用いると、接合部材B1、B2が金属バンプに比べて柔らかくなり、ベース21から振動片3に応力が伝わり難くなる。
【0018】
また、振動片3は、ATカットの水晶振動片である。ATカットの水晶振動片は、三次の周波数温度特性を有するため、周波数安定性に優れている。
図3に示すように、振動片3は、ATカットで切り出された矩形の水晶基板30と、水晶基板30の表面に配置された電極31と、を有する。また、電極31は、水晶基板30の上面に配置された第1励振電極321と、水晶基板30の下面に配置され、水晶基板30を介して第1励振電極321と対向する第2励振電極331と、を有する。また、電極31は、水晶基板30の下面であって、その縁部に並んで配置された第1パッド電極322および第2パッド電極332と、第1励振電極321と第1パッド電極322とを電気的に接続する第1引出電極323と、第2励振電極331と第2パッド電極332とを電気的に接続する第2引出電極333と、を有する。
【0019】
ただし、振動片3の構成は、特に限定されない。例えば、水晶基板30の平面視形状は、矩形に限定されない。また、振動片3として、ATカット水晶振動片の他にも、SCカット水晶振動片、BTカット水晶振動片、音叉型水晶振動片、弾性表面波共振子、その他の圧電振動片、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)共振素子等を用いることもできる。
【0020】
また、水晶基板30に替えて、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、リン酸ガリウム(GaPO4)、ガリウム砒素(GaAs)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO、Zn2O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、ニオブ酸ナトリウムカリウム((K,Na)NbO3)、ビスマスフェライト(BiFeO3)、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO3)、チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)、チタン酸ビスマスナトリウム(Na0.5Bi0.5TiO3)等の各種圧電基板を用いてもよいし、例えば、シリコン基板等の圧電基板以外の基板を用いてもよい。
【0021】
このような振動片3は、一対の接合部材B1を介して凹部211aの底面に接合されている。また、一方の接合部材B1は、内部端子241と第1パッド電極322とに接触し、これらを電気的に接続している。また、他方の接合部材B1は、内部端子242と第2パッド電極332とに接触し、これらを電気的に接続している。
【0022】
図4に示すように、集積回路4は、温度センサー41と、発振回路42と、温度補償回路43と、出力回路44と、メモリー45と、レギュレーター回路46と、振幅制御回路47と、シリアルインターフェース回路48、スイッチ回路49と、を有する。また、集積回路4は、その下面に配置された6つの端子、具体的には、第1接続端子としてのXI端子、第2接続端子としてのXO端子、第3接続端子としてのOUT端子、第4接続端子としてのVCC端子、第5接続端子としてのGND端子および第6接続端子としてのVC端子を有する。このような集積回路4は、
図2に示すように、接合部材B2を介して凹部211bの底面に接合されている。また、接合部材B2を介して、XI端子と内部端子251、XO端子と内部端子252、OUT端子と内部端子253、VCC端子と内部端子254、GND端子と内部端子255およびVC端子と内部端子256がそれぞれ電気的に接続されている。
【0023】
発振回路42は、XI端子およびXO端子を介して振動片3と電気的に接続されている。発振回路42は、振動片3を発振させる回路であり、振動片3の出力信号を増幅して振動片3にフィードバックする。そして、発振回路42は、振動片3の発振に基づく発振信号VOSCを出力する。温度センサー41は、集積回路4の温度を検出し、温度に応じた電圧の温度信号を出力する。
【0024】
温度補償回路43は、温度センサー41の出力信号に基づいて振動片3の温度特性を補償する回路である。本実施形態では、温度補償回路43は、温度センサー41から出力される温度信号と、メモリー45に記憶されている振動片3の周波数温度特性に応じた係数値と、に基づいて、温度補償電圧VCOMPを生成する。この温度補償電圧VCOMPは、発振回路42の負荷容量として機能する不図示の可変容量素子の一端に印加され、発振周波数が制御される。なお、温度補償回路43は、振動片3の温度特性に応じて、発振回路42から出力される発振信号VOSCの周波数を変換することにより、振動片3の温度特性を補償する回路であってもよい。このような回路は、例えば、フラクショナルN-PLL回路によって実現される。
【0025】
出力回路44は、発振回路42から出力される発振信号VOSCが入力され、発振信号VOUTを出力する。例えば、発振器1をセルラー等に使用されるGPS用途の発振器として使用する場合、例えば±0.5ppmといった高い周波数温度補償精度が要求される。そこで、本実施形態では、レギュレーター回路46で出力回路44の出力電圧振幅を安定化させるとともに、低消費電流化の観点から、出力回路44は、出力振幅を抑えたクリップド・サイン波形の発振信号VOUTを出力する。レギュレーター回路46は、VCC端子から供給される電源電圧に基づき、発振回路42、温度補償回路43、出力回路44等の電源電圧または基準電圧となる一定電圧Vregを生成する。
【0026】
振幅制御回路47は、出力回路44が出力する発振信号VOUTの振幅を制御する回路である。また、メモリー45には、振動片3の周波数に応じて発振回路42の発振段電流を調整・選択するための発振段電流調整データIADJと、出力回路44の内部に設けられた分周回路により発振信号VOSCを分周して出力するか否かを選択するための分周切替データDIVと、出力回路44が出力するクリップド・サイン波の発振信号VOUTの振幅レベルを調整するための出力レベル調整データVADJと、が記憶されている。これらデータは、発振器1の製造工程において、メモリー45に記憶される。また、発振器1の製造工程において、メモリー45には、振動片3の周波数温度特性に応じた不図示の0次、1次、3次等の係数値も記憶される。
【0027】
このようなメモリー45は、シリアルインターフェース回路48を介してリード/ライトが可能に構成されている。なお、本実施形態では、集積回路4の端子が振動片3と接続されるXI端子およびXO端子を除くと、VCC端子、GND端子、OUT端子およびVC端子の4つしかない。そのため、シリアルインターフェース回路48は、例えば、VCC端子の電圧が閾値よりも高い時に、VC端子から外部入力されるクロック信号とOUT端子から外部入力されるデータ信号を受け付け、メモリー45に対してデータのリード/ライトを行う。
【0028】
スイッチ回路49は、温度補償回路43と、出力回路44の出力側と電気的に接続されているOUT端子との電気的な接続を切り替える回路である。例えば、発振器1の出荷前の検査工程では、VC端子にローレベルまたはハイレベルのテスト信号TPを入力可能であり、検査工程が終了した後にVC端子が接地され、テスト信号TPがローレベルに固定される。VC端子に入力されるテスト信号TPがローレベルのとき、スイッチ回路49は、温度補償回路43とOUT端子とを電気的に接続せず、出力回路44から出力される発振信号VOUTがOUT端子に出力される。また、テスト信号TPがハイレベルのとき、スイッチ回路49は、温度補償回路43とOUT端子とを電気的に接続し、出力回路44からの発振信号VOUTの出力が停止され、温度補償電圧VCOMPがOUT端子に出力される。
【0029】
以上、集積回路4の回路構成について説明した。次に、発振器1の特徴の1つである出力回路44および温度センサー41の配置について説明する。発振器1では、起動から振動片3と温度センサー41とが熱平衡状態となるまでに要する時間が短くなるように、出力回路44および温度センサー41の配置を工夫している。
【0030】
図5に示すように、集積回路4は、平面視で略矩形である。そのため、集積回路4の輪郭は、互いに平行に延在し、かつ離間して配置された第1辺4Aおよび第2辺4Bと、第1辺4Aおよび第2辺4Bが延在する方向と直交する方向に延在し、かつ互いに離間して配置された第3辺4Cおよび第4辺4Dと、を含む。なお、第3辺4Cは、第1辺4Aと第2辺4Bの一端部同士を接続し、第4辺4Dは、第1辺4Aと第2辺4Bの一端部同士を接続している。そして、第4辺4Dに沿って、XI端子、VC端子およびGND端子が並んで配置され、第3辺4Cに沿って、XO端子、VCC端子およびOUT端子が並んで配置されている。また、XI端子およびXO端子は、第1辺4Aに沿って配置されており、GND端子およびOUT端子は、第2辺4Bに沿って配置されている。
【0031】
言い換えると、第1辺4Aと第3辺4Cとで形成された角部E1にXO端子が配置され、第1辺4Aと第4辺4Dとで形成された角部E2にXI端子が配置され、第2辺4Bと第3辺4Cとで形成された角部E3にOUT端子が配置され、第2辺4Bと第4辺4Dとで形成された角部E4にGND端子が配置され、XI端子とGND端子との間にVC端子が配置され、XO端子とOUT端子との間にVCC端子が配置されている。このような配置とすることにより、6つの端子を集積回路4の下面にバランスよく配置することができる。
【0032】
ただし、集積回路4の平面視形状は、第1辺4Aを有していれば、特に限定されず、例えば、三角形、矩形以外の四角形、五角形以上の多角形、オーバル形、異形等であってもよい。
【0033】
また、集積回路4では、温度センサー41と出力回路44との離間距離をd0とし、XI端子と出力回路44との離間距離をd1とし、XO端子と出力回路44との離間距離をd2としたとき、d1<d0、かつ、d2<d0の関係を満足している。なお、前記「離間距離」は、平面視での最短距離を意味する。ここで、集積回路4に含まれる各種回路の中でも出力回路44が特に発熱し易い。そのため、出力回路44が集積回路4の主な熱源となり、この熱源から生じる熱が温度センサー41および振動片3に伝わり、これらが熱平衡状態となることにより発振信号VOUTの周波数が安定する。
【0034】
ここで、出力回路44で生じた熱は、主に、集積回路4内を通って温度センサー41に伝わる。一方、出力回路44で生じた熱は、主に、集積回路4内を通り、XI端子およびXO端子からベース21内に設けられた前記内部配線を介して振動片3まで伝わる。そのため、出力回路44から温度センサー41までの熱伝達経路t1に対して、出力回路44から振動片3までの熱伝達経路t2が長くなり易い。その結果、起動から出力回路44と温度センサー41とが熱平衡状態となるまでの時間T1に対して、起動から出力回路44と振動片3とが熱平衡状態となるまでの時間T2が長くなり易い。
【0035】
そこで、発振器1では、出力回路44を温度センサー41よりもXI端子およびXO端子の近くに配置している。これにより、熱伝達経路t1を延長し、熱伝達経路t2を短縮することができ、熱伝達経路t1、t2の差を小さくすることができる。したがって、時間T1、T2の差ΔTを短縮することができる。そのため、温度センサー41と振動片3とがより短時間で熱平衡状態となり、起動からより短時間で発振器1の発振信号VOUTの周波数が安定する。さらには、振動片3と温度センサー41の昇温の度合いの差も小さくなるため、起動から熱平衡状態となるまでの振動片3と温度センサー41との温度差を小さく抑えることもできる。そのため、起動から熱平衡状態となるまでの発振信号VOUTの周波数偏差を小さくすることもできる。
【0036】
特に、XI端子およびXO端子は、それぞれ、接合部材B1側に位置する第1辺4Aに沿って配置されている。そのため、XI端子と内部端子241およびXO端子と内部端子242を電気的に接続する前記内部配線をより短くすることができる。そのため、差ΔTをより短縮することができる。その結果、温度センサー41と振動片3とがより短時間で熱平衡状態となり、起動からより短時間で発振器1の発振信号VOUTの周波数が安定する。また、本実施形態では、d1=d2であり、出力回路44の熱が、XI端子とXO端子とを介してバランスよく振動片3に伝わる。そのため、時間T2をより短縮することができ、上述した効果をより顕著に発揮することができる。ただし、これに限定されず、d1≠d2であってもよい。
【0037】
なお、d0/d1は、振動片3と温度センサー41の昇温の度合いの差が小さくなるように、前記内部配線の長さ、断面積、熱伝導率等を考慮して設計される。例えば、1.5≦d0/d1≦5.0であることが好ましく、2.0≦d0/d1≦4.5であることがより好ましく、2.5≦d0/d1≦3.5であることがさらに好ましい。d0/d2についても同様である。これにより、上述した効果がより顕著となる。
【0038】
特に、本実施形態では、集積回路4の平面視で、出力回路44は、XI端子と、XO端子との間に位置している。これにより、出力回路44をXI端子およびXO端子の近傍に配置することができる。そのため、離間距離d1、d2をより短くすることができ、差ΔTをより短縮することができる。なお、出力回路44がXI端子とXO端子との間に位置するとは、例えば、集積回路4の平面視で、XI端子とXO端子との間の領域R1に、出力回路44の少なくとも一部が重なる状態を言う。ただし、出力回路44の配置は、特に限定されず、領域R1と重なっていなくてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、集積回路4の平面視で、温度センサー41は、集積回路4の中心Oよりも第2辺4B側に配置されている。つまり、集積回路4の平面視で、温度センサー41は、XI端子およびXO端子が配置された第1辺4A側とは反対側の第2辺4B側に偏在して配置される。これにより、出力回路44と温度センサー41とを集積回路4内においてなるべく離間して配置することができ、離間距離d0をより大きくすることができる。そのため、熱伝達経路t1、t2の差をより小さくすることができ、熱平衡状態となるまでの振動片3と温度センサー41との温度差をより小さく抑えることができる。したがって、熱平衡状態となるまでの発振信号VOUTの周波数偏差をより小さくすることができる。
【0040】
特に、温度センサー41は、第2辺4Bに沿って配置されており、GND端子とOUT端子との間に位置している。これにより、出力回路44と温度センサー41との離間距離d0をより大きくすることができる。なお、温度センサー41がGND端子とOUT端子との間に位置するとは、例えば、集積回路4の平面視で、GND端子とOUT端子との間の領域R2に、温度センサー41の少なくとも一部が重なる状態を言う。ただし、温度センサー41の配置は、特に限定されず、領域R2と重なっていなくてもよいし、第2辺4B側に偏在していなくてもよい。
【0041】
以上、出力回路44および温度センサー41の配置について説明した。以上のような集積回路4は、前述したように、第1辺4Aに沿って配置される第1接続端子としてのXI端子および第2接続端子としてのXO端子と、XI端子およびXO端子を介して振動片3と電気的に接続される発振回路42と、温度センサー41と、温度センサー41の出力信号に基づいて振動片3の温度特性を補償する温度補償回路43と、発振回路42から出力される信号である発振信号VOSCが入力され、発振信号VOUTを出力する出力回路44と、を有する。また、温度センサー41と出力回路44との離間距離をd0とし、XI端子と出力回路44との離間距離をd1とし、XO端子と出力回路44との離間距離をd2としたとき、d1<d0、かつ、d2<d0である。つまり、XI端子およびXO端子をそれぞれ温度センサー41よりも出力回路44の近くに配置している。
【0042】
これにより、出力回路44から振動片3への熱伝達経路t2が短くなり、時間T2を短縮することができる。そのため、時間T1、T2の差ΔTが小さくなる。その結果、温度センサー41と振動片3とがより短時間で熱平衡状態となり、これにより、起動からより短時間で発振器1の発振信号VOUTの周波数が安定する。さらには、起動から熱平衡状態となるまでの振動片3と温度センサー41との温度差を小さく抑えることもできる。そのため、起動から熱平衡状態となるまでの発振信号VOUTの周波数偏差をより小さくすることができる。
【0043】
また、前述したように、出力回路44は、集積回路4の平面視で、XI端子とXO端子との間に位置する。これにより、出力回路44をXI端子およびXO端子の近傍に配置することができる。そのため、離間距離d1、d2をより短くすることができる。
【0044】
また、前述したように、温度センサー41は、第1辺4Aと対向する第2辺4B側に偏在して配置される。これにより、出力回路44と温度センサー41とを集積回路4内においてなるべく離間して配置することができる。そのため、離間距離d0をより大きくすることができる。
【0045】
また、前述したように、集積回路4は、第1辺4Aと、第1辺4Aに対向する第2辺4Bと、の一端部同士を接続する第3辺4Cに沿って配置される第3接続端子としてのOUT端子および第4接続端子としてのVCC端子と、第1辺4Aと第2辺4Bの他端部同士を接続する第4辺4Dに沿って配置される第5接続端子としてのGND端子および第6接続端子としてのVC端子と、を有する。これにより、6つの端子をバランスよく配置することができる。
【0046】
また、前述したように、発振器1は、集積回路4と、XI端子およびXO端子を介して集積回路4と電気的に接続される振動片3と、を有する。これにより、前述した集積回路4の効果を享受することができる。すなわち、出力回路44で生じる熱が温度センサー41に伝わり、時間T1、T2の差ΔTを短くすることができる。そのため、温度センサー41と振動片3とがより短時間で熱平衡状態となり、これにより、起動からより短時間で発振器1の発振信号VOUTの周波数が安定する。さらには、起動から熱平衡状態となるまでの振動片3と温度センサー41との温度差をより小さく抑えることができる。そのため、起動から熱平衡状態となるまでの発振信号VOUTの周波数偏差をより小さくすることができる。
【0047】
また、前述したように、発振器1は、凹部211を有するベース21と、凹部211の開口を塞ぐように、ベース21に接合されるリッド22と、を有し、凹部211に集積回路4および振動片3が配置されている。これにより、集積回路4および振動片3を衝撃や外部の環境、特に埃、水分、湿気等から保護することができる。
【0048】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態に係る集積回路の出力回路および温度センサーの配置を示す平面図である。
【0049】
本実施形態に係る発振器1は、集積回路4の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の発振器1と同様である。なお、以下の説明では、第2実施形態の発振器1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図6では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0050】
図6に示すように、本実施形態の発振器1が有する集積回路4では、前述した第1実施形態と同様に、XI端子およびXO端子が第1辺4Aに沿って配置され、これらの間に出力回路44が配置され、温度センサー41が第2辺4B側に偏って配置されている。さらに、集積回路4の平面視で、集積回路4の中心Oを通り、第1辺4Aに直交する軸を中心軸Jとしたとき、出力回路44と電気的に接続され、発振信号VOUTが出力されるOUT端子と温度センサー41とが中心軸Jを間に挟んで配置されている。つまり、温度センサー41が第4辺4D側に偏っており、中心軸Jの一方側すなわち第3辺4C側にOUT端子が位置し、他方側すなわち第4辺4D側に温度センサー41が位置している。これにより、OUT端子と温度センサー41とを集積回路4内でなるべく離間させて配置することができる。
【0051】
OUT端子は、出力回路44と集積回路4内の配線を介して接続されており、出力回路44の熱が伝わり易い。そのため、OUT端子の近傍に温度センサー41が位置すると、OUT端子の熱によっても温度センサー41が昇温し、時間T1が短縮されることにより、時間T1、T2の差ΔTが大きくなるおそれがある。そこで、本実施形態のように、OUT端子と温度センサー41とを中心軸Jの両側に分けて配置し、これらをなるべく離間させて配置することにより、OUT端子の熱を温度センサー41に伝わり難くし、差ΔTを小さく抑えることができる。そのため、熱平衡状態となるまでの振動片3と温度センサー41との温度差をより小さく抑えることができ、熱平衡状態となるまでの発振信号VOUTの周波数偏差をより小さくすることができる。
【0052】
また、本実施形態では、XI端子とXO端子、VCC端子とVC端子、OUT端子とGND端子がそれぞれ第1辺4Aに沿って配置されている。そして、XI端子とXO端子との離間距離をD1とし、OUT端子とGND端子との離間距離をD2とし、VCC端子とVC端子との離間距離をD3としたとき、D1<D2、かつ、D1<D3の関係を満足している。これにより、離間距離d1、d2が短くなり、時間T2が短縮される。そのため、時間T1、T2の差ΔTをより短くすることができる。したがって、熱平衡状態となるまでの振動片3と温度センサー41との温度差をより小さく抑えることができ、熱平衡状態となるまでの発振信号VOUTの周波数偏差をより小さくすることができる。
【0053】
以上のように、本実施形態の集積回路4では、OUT端子は、出力回路44と電気的に接続され、発振信号VOUTが出力される端子である。また、集積回路4の平面視で、第1辺4Aと直交し、かつ、集積回路4の中心Oを通る軸を中心軸Jとしたとき、中心軸Jの一方側にOUT端子が位置し、他方側に温度センサー41が位置する。これにより、OUT端子の熱が温度センサー41に伝わり難くなり、差ΔTを小さく抑えることができる。そのため、起動から熱平衡状態となるまでの振動片3と温度センサー41との温度差をより小さく抑えることができ、熱平衡状態となるまでの発振信号VOUTの周波数偏差をより小さくすることができる。
【0054】
また、前述したように、OUT端子とGND端子およびVCC端子とVC端子は、それぞれ、XI端子とXO端子とが並ぶ方向に沿って配置されている。そして、XI端子とXO端子との離間距離をD1とし、OUT端子とGND端子との離間距離をD2とし、VCC端子とVC端子との離間距離をD3としたとき、D1<D2、かつ、D1<D3である。これにより、離間距離d1、d2が短くなり、時間T2が短縮される。そのため、時間T1、T2の差ΔTをより短くすることができる。したがって、起動から熱平衡状態となるまでの振動片3と温度センサー41との温度差をより小さく抑えることができ、その間の発振信号VOUTの周波数偏差をより小さくすることができる。
【0055】
このような第2実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0056】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態に係る集積回路の出力回路および温度センサーの配置を示す平面図である。
【0057】
本実施形態に係る発振器1は、集積回路4の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の発振器1と同様である。なお、以下の説明では、第3実施形態の発振器1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図7では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0058】
図7に示すように、本実施形態の発振器1が有する集積回路4では、前述した第1実施形態よりもさらに温度センサー41が第2辺4B側に偏在し、出力回路44と温度センサー41との離間距離d0が大きくなっている。そして、出力回路44とVCC端子との離間距離をd4とし、出力回路44とVC端子との離間距離をd6としたとき、d4<d0、かつ、d6<d0である。なお、前記「離間距離」は、平面視での最短距離を言う。これにより、離間距離d0が大きくなり、時間T1、T2の差ΔTが小さくなる。そのため、振動片3と温度センサー41の昇温の度合いの差がより小さくなり、起動から熱平衡状態となるまでの振動片3と温度センサー41との温度差をより小さく抑えることができる。したがって、起動から熱平衡状態となるまでの発振信号VOUTの周波数偏差をより小さくすることができる。さらに、出力回路44とOUT端子との離間距離をd3とし、出力回路44とGND端子との離間距離をd5としたとき、d3<d0、かつ、d5<d0である。これにより、上述の効果がより顕著となる。
【0059】
このような第3実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0060】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態に係る発振器を示す断面図である。
【0061】
本実施形態に係る発振器1は、パッケージ2の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の発振器1と同様である。なお、以下の説明では、第4実施形態の発振器1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図8では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0062】
図8に示すように、ベース21は、表裏関係にある第1主面としての上面21aおよび第2主面としての下面21bを有する。また、ベース21は、上面21aに開口する第1凹部218および下面21bに開口する第2凹部219を備える。また、第1凹部218と第2凹部219とは、ベース21の平面視で、互いに重なるように配置されている。そして、第1凹部218に振動片3が配置され、第2凹部219に集積回路4が配置されている。
【0063】
また、
図8には一部しか図示されていないが、第1凹部218の底面には、接合部材B1を介して振動片3と電気的および機械的に接続される内部端子241、242が配置され、第2凹部219の底面には、接合部材B2を介して集積回路4と電気的および機械的に接続される内部端子251~256が配置され、ベース21の下面21bには外部端子263~266が配置されている。
【0064】
このような構成によれば、内部端子241、242と内部端子251、252とを平面的に近接して、好ましくは重ねて配置することが可能となる。そのため、内部端子241、242と内部端子251、252とを電気的に接続する前記内部配線の配線長を、前述した第1実施形態と比べて短くすることができる。そのため、前述した第1実施形態と比べて、出力回路44の熱が振動片3へ伝わり易くなり、時間T2が短縮される。これにより、時間T1、T2の差ΔTがより短くなり、熱平衡状態となるまでの振動片3と温度センサー41との温度差をより小さく抑えることができる。したがって、熱平衡状態となるまでにおいても、発振信号VOUTの周波数が安定する。
【0065】
また、リッド22は、第1凹部218の開口を塞ぐように、接合部材23を介してベース21の上面21aに接合されている。第1凹部218の開口がリッド22で塞がれることによりパッケージ2内に気密な内部空間Sが形成され、内部空間Sに振動片3が収容される。これにより、振動片3を衝撃や外部の環境、特に埃、水分、湿気等から保護することができる。なお、内部空間Sの雰囲気としては、特に限定されないが、例えば、前述した第1実施形態と同様とすることができる。また、集積回路4は、モールド材Mで封止されている。これにより、集積回路4を衝撃や外部の環境、特に埃、水分、湿気等から保護することができる。
【0066】
以上のように、本実施形態の発振器1は、表裏関係にある第1主面としての上面21aおよび第2主面としての下面21bを有し、上面21aに開口する第1凹部218および下面21bに開口する第2凹部219を備えるベース21と、第1凹部218の開口を塞ぐように、ベース21の上面21aに接合されるリッド22と、を有する。そして、第1凹部218に振動片3が配置され、第2凹部219に集積回路4が配置される。このような構成によれば、例えば、前述した第1実施形態と比べて、出力回路44の熱が振動片3に伝わり易くなる。そのため、時間T2が短縮され、その分、時間T1、T2の差ΔTがより短くなり、熱平衡状態となるまでの振動片3と温度センサー41との温度差をより小さく抑えることができる。したがって、起動から熱平衡状態となるまでの発振信号VOUTの周波数偏差をより小さくすることができる。
【0067】
このような第4実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0068】
<第5実施形態>
図9は、第5実施形態に係る発振器を示す断面図である。なお、
図9は、
図1の横側から見た断面図である。
【0069】
本実施形態に係る発振器1は、パッケージ2の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の発振器1と同様である。なお、以下の説明では、第5実施形態の発振器1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図9では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0070】
図9に示すように、パッケージ2は、半導体回路基板6と、半導体回路基板6に接合されたリッド9と、を有する。
【0071】
また、半導体回路基板6は、半導体基板7と、集積回路4と、を有する。半導体基板7は、シリコン基板である。ただし、半導体基板7は、シリコン基板以外の半導体基板、例えば、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガリウム砒素リン、窒化ガリウム、炭化珪素等で構成された各種半導体基板であってもよい。また、半導体基板7は、表裏関係にある第1主面としての上面71および第2主面としての下面72を有し、表面が絶縁膜70で覆われている。また、半導体基板7の下面71側には振動片3と電気的に接続された集積回路4が設けられ、上面71側には振動片3が配置されている。半導体基板7に集積回路4を配置することにより、半導体基板7のスペースを有効活用することができる。そのため、発振器1の小型化を図ることができる。
【0072】
半導体基板7の下面71には、絶縁層81、配線層82、絶縁層83、パッシベーション膜84および端子層85が積層された積層体80が配置されている。そして、配線層82に含まれる配線を介して、下面71に形成された図示しない複数の能動素子が電気的に接続されて集積回路4が構成される。また、端子層85には、一部しか図示されていないが、外部端子263~266が含まれている。
【0073】
なお、図示の構成では、積層体80に1つの配線層82が含まれているが、これに限定されず、複数の配線層82が絶縁層83を介して積層されていてもよい。つまり、絶縁層81とパッシベーション膜84との間に、配線層82と絶縁層83とが交互に複数回積層されていてもよい。また、図示の構成では、半導体基板7の下面71に集積回路4が形成されているが、これに限定されず、上面72に集積回路4が形成されていてもよい。前者によれば、後者よりも集積回路4を形成するスペースが大きくなるため、集積回路4の設計自由度が増す。反対に、後者によれば、集積回路4を内部空間S内に収容することができるため、集積回路4を環境雰囲気、衝撃等から保護することができる。
【0074】
また、半導体基板7には、厚さ方向に貫通する一対の貫通孔73、74が形成されている。これら貫通孔73、74内には導電性材料が充填され、これにより、貫通電極730、740が形成されている。また、半導体基板7の上面72には、接合部材B1を介して振動片3と電気的に接続された内部端子241、242が配置されている。そして、内部端子241は、貫通電極730を介して集積回路4と電気的に接続され、内部端子242は、貫通電極740を介して集積回路4と電気的に接続されている。なお、本実施形態のXI端子は、貫通電極730と配線層82との接続部を指し、XO端子は、貫通電極740と配線層82との接続部を指す。
【0075】
リッド9は、半導体基板7と同様、シリコン基板である。これにより、半導体基板7とリッド9との線膨張係数が等しくなり、熱膨張に起因する熱応力の発生が抑えられ、優れた振動特性を有する発振器1となる。また、発振器1を半導体プロセスによって形成することができるため、発振器1を精度よく製造することができると共に、その小型化を図ることもできる。また、リッド9は、下面に開口する有底の凹部92を有する。そして、この凹部92に振動片3が収容されている。また、リッド9は、下面において半導体基板7の上面72に接合されている。これにより、リッド9と半導体回路基板6との間に振動片3を収容する内部空間Sが形成される。
【0076】
以上のように、本実施形態の発振器1は、表裏関係にある第1主面としての上面71および第2主面としての下面72を有し、上面71または下面72に集積回路4が形成される半導体基板7と、上面71側に配置される振動片3と、振動片3を覆うように、半導体基板7に接合されるリッド9と、を有する。このように、半導体基板7に集積回路4を配置することにより、半導体基板7のスペースを有効活用することができる。そのため、発振器1の小型化を図ることができる。
【0077】
<第6実施形態>
図10は、第6実施形態のスマートフォンを示す斜視図である。
【0078】
図10に示すスマートフォン1200は、本発明の電子機器を適用したものである。スマートフォン1200には、発振器1と、発振器1からの発振信号VOUTに基づいて動作する処理回路1210と、を有する。処理回路1210は、例えば、画面1208から入力された入力信号に基づいて表示画面を変化させたり、特定のアプリケーションを立ち上げたり、警告音や効果音を鳴らしたり、振動モーターを駆動して本体を振動させたりする。
【0079】
このような電子機器としてのスマートフォン1200は、発振器1と、発振信号VOUTに基づいて動作する処理回路1210と、を備える。そのため、前述した発振器1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0080】
なお、発振器1を備える電子機器は、前述したスマートフォン1200の他にも、例えば、パーソナルコンピューター、デジタルスチールカメラ、タブレット端末、時計、スマートウォッチ、インクジェットプリンター、テレビ、スマートグラス、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等のウェアラブル端末、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ドライブレコーダー、電子手帳、電子辞書、電子翻訳機、電卓、電子ゲーム機器、玩具、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器、魚群探知機、各種測定機器、移動体端末基地局用機器、車両、鉄道車輌、航空機、ヘリコプター、船舶等の各種計器類、フライトシミュレーター、ネットワークサーバー等に適用することができる。
【0081】
<第7実施形態>
図11は、第7実施形態の自動車を示す斜視図である。
【0082】
図11に示す自動車1500は、本発明の移動体を適用したものである。自動車1500は、エンジンシステム、ブレーキシステムおよびキーレスエントリーシステム等のシステム1502を含む。また、自動車1500には、発振器1と、発振器1からの発振信号VOUTに基づいて動作し、システム1502を制御する処理回路1510と、を備える。
【0083】
このように、移動体としての自動車1500は、発振器1と、発振信号VOUTに基づいて動作する処理回路1510と、を備える。そのため、前述した発振器1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0084】
なお、発振器1を備える移動体は、自動車1500の他、例えば、ロボット、ドローン、二輪車、航空機、船舶、電車、ロケット、宇宙船等であってもよい。
【0085】
以上、本発明の集積回路、発振器、電子機器および移動体を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…発振器、2…パッケージ、3…振動片、4…集積回路、4A…第1辺、4B…第2辺、4C…第3辺、4D…第4辺、6…半導体回路基板、7…半導体基板、9…リッド、21…ベース、21a…上面、21b…下面、22…リッド、23…接合部材、30…水晶基板、31…電極、41…温度センサー、42…発振回路、43…温度補償回路、44…出力回路、45…メモリー、46…レギュレーター回路、47…振幅制御回路、48…シリアルインターフェース回路、49…スイッチ回路、70…絶縁膜、71…下面、72…上面、73、74…貫通孔、80…積層体、81…絶縁層、82…配線層、83…絶縁層、84…パッシベーション膜、85…端子層、92…凹部、211、211a、211b…凹部、218…第1凹部、219…第2凹部、241、242、251、252、253、254、255、256…内部端子、263、264、265、266…外部端子、321…第1励振電極、322…第1パッド電極、323…第1引出電極、331…第2励振電極、332…第2パッド電極、333…第2引出電極、730…貫通電極、740…貫通電極、1200…スマートフォン、1208…画面、1210…処理回路、1500…自動車、1502…システム、1510…処理回路、B1、B2…接合部材、DIV…分周切替データ、E1、E2、E3、E4…角部、IADJ…発振段電流調整データ、J…中心軸、M…モールド材、O…中心、R1、R2…領域、S…内部空間、TP…テスト信号、VADJ…出力レベル調整データ、VCOMP…温度補償電圧、VOSC…発振信号、VOUT…発振信号、Vreg…一定電圧、d0、d1、d2、d3、d4、d5、d6、D1、D2、D3…離間距離、t1、t2…熱伝達経路