(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】射出成形体及びその製造方法、並びにこれに使用する原料
(51)【国際特許分類】
B29C 45/00 20060101AFI20241126BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20241126BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B29C45/00
C08L23/10
C08L23/04
(21)【出願番号】P 2020095406
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】三宅 翔平
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184727(JP,A)
【文献】特開2019-182528(JP,A)
【文献】特開2016-089054(JP,A)
【文献】特開2008-255326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00
C08L 23/10
C08L 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来のポリエチレン樹脂と化石燃料由来のポリプロピレン樹脂とを含む原料を準備する工程と、
金型内に前記原料を供給する工程と、
を含み、
前記原料において、前記植物由来のポリエチレン樹脂と前記化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の合計質量を基準として、前記植物由来のポリエチレン樹脂の含有量が5~95質量%であり且つ前記化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の含有量が95~5質量%であり、
前記植物由来のポリエチレン樹脂の190℃におけるメルトフローレートが5~15g/10分であり、
前記化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の230℃におけるメルトフローレートが7~20g/10分であり、
前記植物由来のポリエチレン樹脂の190℃におけるメルトフローレートの値Aに対する、前記化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の230℃におけるメルトフローレートの値Bの比(B/A)が1.1~2.0であ
り、
前記原料の全質量に対する前記植物由来のポリエチレン樹脂及び前記化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の合計量が90質量%以上である、射出成形体の製造方法。
【請求項2】
前記化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の230℃におけるメルトフローレートが15g/10分以下である、請求項1に記載の射出成形体の製造方法。
【請求項3】
前記金型がコールドランナーを有し、前記コールドランナーを通じて前記金型内に前記原料を供給する、請求項1又は2に記載の射出成形体の製造方法。
【請求項4】
植物由来のポリエチレン樹脂と、
化石燃料由来のポリプロピレン樹脂と、
を含
む射出成形体製造用原料であって、
前記植物由来のポリエチレン樹脂と前記化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の合計質量を基準として、前記植物由来のポリエチレン樹脂の含有量が5~95質量%であり且つ前記化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の含有量が95~5質量%であり、
前記植物由来のポリエチレン樹脂の190℃におけるメルトフローレートが5~15g/10分であり、
前記化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の230℃におけるメルトフローレートが7~20g/10分であり、
前記植物由来のポリエチレン樹脂の190℃におけるメルトフローレートの値Aに対する、前記化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の230℃におけるメルトフローレートの値Bの比(B/A)が1.1~2.0であ
り、
当該射出成形体製造用原料の全質量に対する前記植物由来のポリエチレン樹脂及び前記化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の合計量が90質量%以上である、射出成形体製造用原料。
【請求項5】
植物由来のポリエチレン樹脂と、
化石燃料由来のポリプロピレン樹脂と、
を含
む射出成形体であって、
前記植物由来のポリエチレン樹脂と前記化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の合計質量を基準として、前記植物由来のポリエチレン樹脂の含有量が5~95質量%であり且つ前記化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の含有量が95~5質量%であり、
前記植物由来のポリエチレン樹脂の190℃におけるメルトフローレートが5~15g/10分であり、
前記化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の230℃におけるメルトフローレートが7~20g/10分であり、
前記植物由来のポリエチレン樹脂の190℃におけるメルトフローレートの値Aに対する、前記化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の230℃におけるメルトフローレートの値Bの比(B/A)が1.1~2.0であ
り、
当該射出成形体の全質量に対する前記植物由来のポリエチレン樹脂及び前記化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の合計量が90質量%以上である、射出成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は射出成形体及びその製造方法、並びにこれに使用する原料に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境保全の観点から、植物由来の原料を使用したプラスチック材料の開発が進められている。特許文献1は再生可能な天然原料(例えば、サトウキビ)の残渣から1つ又は複数のオレフィンを生成する方法を開示するとともに、これらを使用したポリマーを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラスチック材料を原料に用いる射出成形の分野において、原料の一部に植物由来の原料を使用することは地球環境保全に寄与する。そこで、本発明者らは、植物由来のポリエチレン樹脂と、化石燃料由来のポリプロピレン樹脂とをブレンドした原料を調製し、これをコールドランナー方式の金型に供給して射出成形体を製造した。しかし、金型から取り出された成形体のゲート部分には固化した樹脂が残っていた。これは成形不良の一種であり、ゲート残りと称されるものである。
【0005】
図1(a)及び
図1(b)を参照して、ゲート残りについて説明する。
図1(a)は一対の金型1a,1bによって画成されたキャビティCにプラスチック材料Pが充填された状態を模式的に示す断面図である。金型1bに設けられたコールドランナーRを通じてキャビティC内にプラスチック材料Pが供給される。この状態ではコールドランナーRにもプラスチック材料Pが充填されている。コールドランナーRの先端開口がゲート部分に相当する。
図1(b)は金型1a,1bから回収した射出成形体10を模式的に示す断面図である。射出成形体10はゲート部分にプラスチック材料Pの突起10a(ゲート残り)がある。
【0006】
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、地球環境保全に寄与するとともに、成形不良の発生を抑制できる射出成形体の製造方法及びこれに使用する原料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、化石燃料由来のポリプロピレン樹脂と併用する植物由来のポリエチレン樹脂として、190℃におけるメルトフローレートの値が比較的小さいもの(溶融粘度が比較的高いもの)を選択して使用することにより、上記成形不良の発生を抑制できることを実験的に見出した。以下の本開示はこの知見に基づいてなされたものである。
【0008】
本開示の一側面に係る射出成形体の製造方法は、植物由来のポリエチレン樹脂と化石燃料由来のポリプロピレン樹脂とを含む原料を準備する工程と、金型内に上記原料を供給する工程とを含み、上記原料において、植物由来のポリエチレン樹脂と化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の合計質量を基準として、植物由来のポリエチレン樹脂の含有量が5~95質量%であり且つ化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の含有量が95~5質量%であり、植物由来のポリエチレン樹脂の190℃におけるメルトフローレートが15g/10分以下である。
【0009】
上記製造方法によれば、植物由来の樹脂材料を原料の一部として使用するため、地球環境保全に寄与し得る。また、上記製造方法によれば、コールドランナー方式の金型を使用した場合であっても、成形不良の発生を十分に抑制できる。なお、本開示おけるメルトフローレートの値は、JIS K7210-1:2014に記載の方法に準拠し、所定の温度(190℃又は後述の230℃)及び荷重2.16kgの条件で測定された値を意味する。
【0010】
本開示の一側面は、上記射出成形体の製造方法に使用する原料に関する。この原料は、植物由来のポリエチレン樹脂と、化石燃料由来のポリプロピレン樹脂とを含み、植物由来のポリエチレン樹脂と化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の合計質量を基準として、植物由来のポリエチレン樹脂の含有量が5~95質量%であり且つ化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の含有量が95~5質量%であり、植物由来のポリエチレン樹脂の190℃におけるメルトフローレートが15g/10分以下である。
【0011】
本開示の一側面は射出成形体に関する。この射出成形体は、植物由来のポリエチレン樹脂と、化石燃料由来のポリプロピレン樹脂とを含み、植物由来のポリエチレン樹脂と化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の合計質量を基準として、植物由来のポリエチレン樹脂の含有量が5~95質量%であり且つ化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の含有量が95~5質量%であり、植物由来のポリエチレン樹脂の190℃におけるメルトフローレートが15g/10分以下である。
【0012】
本開示において、上記成形不良をより一層低減する観点から、化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の230℃におけるメルトフローレートは15g/10分以下であることが好ましい。これと同様の観点から、植物由来のポリエチレン樹脂の190℃におけるメルトフローレートの値Aに対する、化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の230℃におけるメルトフローレートの値Bの比(B/A)は1.1以上2.0以下であることが好ましい。植物由来のポリエチレン樹脂の190℃におけるメルトフローレートは、原料の流動性の観点から、3g/10分以上であることが好ましい。これと同様の観点から、化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の230℃におけるメルトフローレートは5g/10分以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、地球環境保全に寄与するとともに、成形不良の発生を十分に抑制できる射出成形体の製造方法及びこれに使用する原料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)はコールドランナー方式の金型内にプラスチック材料が供給された状態を模式的に示す断面図であり、
図1(b)はゲート部分に固化した樹脂が残っている成形体を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は実施例及び比較例で作製した射出成形体を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は実施例及び比較例で使用した金型を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<射出成形体の製造方法>
本実施形態に係る射出成形体の製造方法は、以下の工程を含む。
(A)植物由来のポリエチレン樹脂と化石燃料由来のポリプロピレン樹脂とを含む原料を準備する工程。
(B)金型内に上記原料を供給する工程。
【0017】
(射出成形体製造用原料)
まず、射出成形体製造用原料について説明する。この原料は、上述のとおり、植物由来のポリエチレン樹脂と、化石燃料由来のポリプロピレン樹脂とを含む。植物由来のポリエチレン樹脂として、例えば、ブラスケム社製のものが挙げられる。ブラスケム社は、再生可能な天然原料から、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)を製造し、これらを販売している。なお、植物由来のLLDPEは、C4-LLDPEもしくはC6-LLDPEと表記される炭素数4もしくは6のα-オレフィンを側鎖に有するものである。
【0018】
植物由来のポリエチレン樹脂の190℃におけるメルトフローレートは15g/10分以下であり、好ましくは12g/10分以下であり、より好ましくは10g/10分以下である。この値が15g/10分以下であることで、植物由来のポリエチレン樹脂を化石燃料由来のポリプロピレン樹脂と併用しても、成形不良の発生を十分に抑制できる。この値は好ましくは3g/10分以上であり、より好ましくは5g/10分以上であり、更に好ましくは7g/10分以上である。この値が3g/10分以上であることで、原料に占める植物由来のポリエチレン樹脂の割合が比較的多くても、原料の流動性を十分に維持することができる。また、植物由来のポリエチレン樹脂と化石燃料由来のポリプロピレンをブレンドしても射出成型品としての落下強度などの基本的な機能を満たすことができる。
【0019】
植物由来のポリエチレン樹脂の密度は、例えば、0.910~0.960g/cm3であり、0.915~0.918g/cm3又は0.953~0.959g/cm3であってもよい。植物由来のポリエチレン樹脂の密度がこの範囲であることで、植物由来のポリエチレン樹脂を化石燃料由来のポリプロピレン樹脂と併用しても、成形不良の発生を十分に抑制できる。
【0020】
化石燃料由来のポリプロピレン樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン及び変性ポリプロピレンが挙げられる。ここでのブロックポリプロピレンとは、一般的に重合段階のホモポリプロピレンに対してゴム成分及びポリエチレンを分散させた構造を持つものである。ポリプロピレン樹脂として、ブロックポリプロピレン及びランダムポリプロピレンを組み合わせて用いる場合、ブロックポリプロピレンと、ランダムポリプロピレンとの質量比(ブロックポリプロピレン/ランダムポリプロピレン)は、20/80~80/20であることが好ましく、40/60~60/40であることが更に好ましい。
【0021】
変性ポリプロピレンは、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステル等から導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分で、ポリプロピレンをグラフト変性することで得られる。また、ポリプロピレン樹脂として、水酸基変性ポリプロピレンやアクリル変性ポリプロピレン等の変性ポリプロピレンを使用することもできる。プロピレン系共重合体を得るために用いられるαオレフィン成分としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどを例示することができる。
【0022】
化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の230℃におけるメルトフローレートは、例えば、30g/10分以下又は20g/10分以下あればよく、15g/10分以下であることが好ましくい。この値が15g/10分以下であることで、原料に占める植物由来のポリエチレン樹脂の割合が比較的多くても、成形不良の発生を十分に抑制できる。この値は好ましくは3g/10分以上であり、より好ましくは5g/10分以上であり、更に好ましくは7g/10分以上である。この値が3g/10分以上であることで、原料に占める化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の割合が多くても、原料の流動性を十分に維持することができる。
【0023】
化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の密度は、例えば、0.900~0.910g/cm3である。化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の密度がこの範囲であることで、植物由来のポリエチレン樹脂を化石燃料由来のポリプロピレン樹脂と併用しても、成形不良の発生を十分に抑制できる。
【0024】
上述の成形不良をより一層低減する観点から、植物由来のポリエチレン樹脂の190℃におけるメルトフローレートの値Aに対する、化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の230℃におけるメルトフローレートの値Bの比(B/A)は、例えば、1.1~4.0であり、1.1~2.0又は2.0~4.0であってもよく、より一層高度に成形不良を抑制する観点から、1.1~2.0であることが好ましい。
【0025】
植物由来のポリエチレン樹脂と化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の合計質量を基準として、原料における植物由来のポリエチレン樹脂の含有量は5質量%以上であり、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上である。この値が5質量%以上であることで、カーボンニュートラルの点で地球環境保全に寄与できる。他方、同基準で、原料における化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の含有量は5質量%以上であり、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。この値が5質量%以上であることで、ポリプロピレン樹脂に起因する効果(例えば、優れた成形性及び物性)が十分に奏される。
【0026】
原料の全質量に対する植物由来のポリエチレン樹脂及び化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の合計量は、例えば、90質量%以上であり、95質量%以上又は98質量%以上であってもよい。原料は植物由来のポリエチレン樹脂及び化石燃料由来のポリプロピレン樹脂の他に、例えば、射出成形体の原料に配合される添加剤等を含んでもよい。
【0027】
植物由来のポリエチレン樹脂と、化石燃料由来のポリプロピレン樹脂と、必要に応じて他の成分とを混合又は混練することによって原料を調製することができる((A)工程)。この原料の溶融物を金型のキャビティ内に供給する工程((B)工程)を経て射出成形体を得ることができる。原料の調製及び原料の金型への供給を混練押出機で実施してもよい。例えば、スクリュを有する混練押出機を使用する場合、原料のメルトフローレート(溶融粘度)に応じてスクリュ温度を調整すればよい。スクリュ温度は、例えば、190~220℃であればよい。金型のキャビティへの原料の射出速度は、例えば、30~80mm/秒であればよい。なお、メルトフローレートの値が比較的小さい(溶融粘度が比較的高い)原料を使用する場合、混練押出機におけるV-P切り替え位置をノズル(吐出口)側に近づけることで、キャビティへの原料の充填性を向上し得る。
【0028】
金型はコールドランナー方式であっても、ホットランナー方式であってもよいが、本実施形態によれば、ホットランナー方式と比較してゲート残りが生じやすいコールドランナー方式の金型を使用した場合であっても、ゲート残りの発生を十分に抑制できる。これは、既存のコールドランナー方式の金型を使用し、従来の化石燃料由来の樹脂原料から本実施形態に係る原料に代えるだけで地球環境に配慮した射出成形体を製造し得るという利点がある。つまり、例えば、ホットランナー方式の金型を新たに導入する必要がないという利点がある。
【0029】
上記実施形態によれば、地球環境保全に寄与するとともに、成形不良の発生を十分に抑制できる射出成形体を効率的に製造することができる。射出成形体の具体例としては、プラスチック製のキャップ、容器、口栓が挙げられる。
【0030】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、コールドランナー方式の金型を使用して射出成形体を製造する場合を例示したが、ホットランナー方式の金型を使用して射出成形体を製造してもよい。
【0031】
上記実施形態においては、植物由来のポリエチレン樹脂と化石燃料由来のポリプロピレン樹脂を併用する場合を例示したが、植物由来のポリエチレン樹脂の代わりに化石燃料由来のポリエチレン樹脂を使用して射出成形体を製造してもよい。化石燃料由来のポリエチレン樹脂の物性(例えば、190℃におけるメルトフローレート及び密度)は、上述の植物由来のポリエチレン樹脂と同様の範囲であることが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、本開示について実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
以下の材料を使用し、比較例及び実施例に係る原料を調製した。
<植物由来のポリエチレン樹脂(バイオPE)>
・バイオPE1:ブラスケム社製HDPE(190℃におけるメルトフローレート:20.0g/10分)
・バイオPE2:ブラスケム社製HDPE(190℃におけるメルトフローレート:30.0g/10分)
・バイオPE3:ブラスケム社製LDPE(190℃におけるメルトフローレート:8.3g/10分)
・バイオPE4:ブラスケム社製LDPE(190℃におけるメルトフローレート:7.2g/10分)
<化石燃料由来のポリプロピレン樹脂(PP)>
・PP1:サンアロマー社製PP(230℃におけるメルトフローレート:25.0g/10分)
・PP2:サンアロマー社製PP(230℃におけるメルトフローレート:14.0g/10分)
・PP3:サンアロマー社製PP(230℃におけるメルトフローレート:9.5g/10分)
【0034】
表1及び表2に示す条件で比較例及び実施例に係る以下の射出成形体をそれぞれ作製した。
・射出成形体:ヒンジを有するキャップ(直径:68.4mm、高さ:22.2mm)
図2は実施例及び比較例で作製したキャップ(射出成形体)を模式的に示す断面図である。この図に示すように、キャップ20は、上蓋20aと、キャップ本体部20bと、キャップ本体部20bに対して上蓋20aを開閉自在にするヒンジ20cとを備える。表1及び表2中の「ゲート高」はゲート残りの高さを意味する(
図1(b)参照)。
【0035】
成形機として、住友重機工業社の射出成形機を使用した。金型にはコールドランナー方式の金型を使用した。
図3は実施例及び比較例で使用した金型を模式的に示す斜視図である。この図に示すとおり、金型5は三つのパーツ5a,5b,5cを備える。金型5によれば、計8つのキャップ20を同時に製造することができる。パーツ5aは開口6を有する。開口6から金型5内に溶融樹脂が供給される。パーツ5bはコールドランナー7を有する。パーツ5cはパーツ5bとともに、キャビティを構成する凹部8を有する。
【0036】
【0037】
【符号の説明】
【0038】
1a,1b,5…金型、5a,5b,5c…パーツ、6…開口、7,R…コールドランナー、8…凹部、10…射出成形体、10a…突起(ゲート残り)、20…キャップ(射出成形体)、20a…上蓋、20b…キャップ本体部、20c…ヒンジ、C…キャビティ、P…プラスチック材料