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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】蓄電素子の製造方法、及び、蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/536 20210101AFI20241126BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20241126BHJP
   H01G 11/76 20130101ALI20241126BHJP
【FI】
H01M50/536
H01G11/84
H01G11/76
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020098699
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021192347
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】赤津 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡田 尚樹
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-136731(JP,A)
【文献】特表2016-531405(JP,A)
【文献】特開2017-084695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01G 11/84
H01G 11/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極板が積層方向に積層された積層部を有する電極体と、前記積層部に接合される集電体とを備える蓄電素子の製造方法であって、
前記積層部において積層された極板同士を熱を用いて仮付けし、当該極板同士が仮付けされた仮付部を形成する仮付工程と、
前記仮付部と前記集電体とが重ね合わされた部分に向けてレーザ光を照射し、前記仮付部と前記集電体とをレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を含み、
前記仮付工程では、前記積層部に対向する面が平坦な仮付器具を用いて、前記極板同士と、前記極板及び前記集電体とが仮付けされた前記仮付部を形成する
電素子の製造方法。
【請求項2】
前記仮付工程では、前記極板同士と、前記極板及び前記集電体とを熱を用いて仮付けし、前記極板同士と、前記極板及び前記集電体とが仮付けされた前記仮付部を形成する
請求項1に記載の蓄電素子の製造方法。
【請求項3】
前記仮付工程では、前記積層部に前記積層方向に電流を通電することにより発生する熱を用いて、前記仮付部を形成する
請求項1または2に記載の蓄電素子の製造方法。
【請求項4】
前記レーザ溶接工程では、前記レーザ光の照射方向から見て、前記極板同士が接触した領域内に溶接部が形成されるように、前記仮付部と前記集電体とをレーザ溶接する
請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電素子の製造方法。
【請求項5】
極板が積層方向に積層された積層部を有する電極体と、前記積層部に接合される集電体とを備える蓄電素子であって、
前記積層部と前記集電体との接合部は、
前記積層部において積層された極板同士が仮付けされた仮付部と、
前記仮付部と前記集電体とが重ね合わされた部分において、前記仮付部と前記集電体とがレーザ溶接されたレーザ溶接部と、を有し、
前記仮付部は、前記極板同士と、前記極板及び前記集電体とが仮付けされた部位であり、前記積層方向から見て前記レーザ溶接部よりもサイズが大きく、かつ、前記集電体とは反対側の面が平坦である
蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極板が積層された電極体と電極体に接合される集電体とを備える蓄電素子の製造方法、及び、蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、極板が積層された積層部を有する電極体と、積層部に接合される集電体とを備える蓄電素子の製造方法が広く知られている。例えば、特許文献1には、電極板(極板)から突出形成された電極タップ(電極体の積層部)と、電極タップを外部端子と電気的に連結するリード部(集電体)とを抵抗溶接で連結するメイン溶接段階を含む電極タップ溶接方法(蓄電素子の製造方法)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-531405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の蓄電素子の製造方法では、電極体の積層部と集電体とを抵抗溶接で接合している。これに対し、レーザ溶接は、一般的に、短時間で深くまで溶接可能で、熱影響も少なく安定した溶接が可能であるため、上記従来の蓄電素子の製造方法において、電極体の積層部と集電体とをレーザ溶接で接合するのが、溶接の品質の向上を図る上で好ましい場合がある。しかしながら、積層部と集電体とをレーザ溶接で接合する場合、溶接箇所において極板間に空気層があるとスパッタが発生したりブローホールができたりして、溶接の品質が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、電極体と集電体との溶接の品質の向上を図ることができる蓄電素子の製造方法、及び、蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電素子の製造方法は、極板が積層方向に積層された積層部を有する電極体と、前記積層部に接合される集電体とを備える蓄電素子の製造方法であって、前記積層部において積層された極板同士を熱を用いて仮付けし、当該極板同士が仮付けされた仮付部を形成する仮付工程と、前記仮付部と前記集電体とが重ね合わされた部分に向けてレーザ光を照射し、前記仮付部と前記集電体とをレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を含む。
【0007】
これによれば、蓄電素子の製造方法は、電極体の積層部において積層された極板同士を熱を用いて仮付けし仮付部を形成する仮付工程と、仮付部と集電体とをレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を含む。このように、積層部の極板同士を熱を用いて仮付けして仮付部を形成することで、極板を押さえるための複雑な装置や治具を用いることなく、極板間に空気層が生じるのを容易に抑制することができる。また、仮付部と集電体とをレーザ溶接することで、極板間に空気層が生じるのが抑制された箇所で、レーザ溶接を行うことができる。これにより、電極体と集電体との溶接において、極板間に空気層がある箇所でレーザ溶接が行われるのを抑制することができるため、電極体と集電体との溶接の品質の向上を図ることができる。
【0008】
また、前記仮付工程では、前記極板同士と、前記極板及び前記集電体とを熱を用いて仮付けし、前記極板同士と、前記極板及び前記集電体とが仮付けされた前記仮付部を形成することにしてもよい。
【0009】
これによれば、仮付工程では、極板同士と、極板及び集電体とを熱を用いて仮付けし、仮付部を形成する。このように、仮付工程において、極板同士に加え、極板及び集電体も仮付けすることで、レーザ溶接を行う箇所において極板と集電体との間に空気層が生じるのを抑制することができる。これにより、電極体と集電体との溶接において、極板と集電体との間に空気層がある箇所でレーザ溶接が行われるのを抑制することができるため、電極体と集電体との溶接の品質の向上を図ることができる。
【0010】
また、前記仮付工程では、前記積層部に前記積層方向に電流を通電することにより発生する熱を用いて、前記仮付部を形成することにしてもよい。
【0011】
これによれば、仮付工程では、電極体の積層部に電流を通電することにより発生する熱を用いて、仮付部を形成する。これにより、積層部に対して低出力の抵抗溶接を行うことにより、仮付部を容易に形成することができるため、電極体と集電体との溶接の品質の向上を容易に図ることができる。
【0012】
また、前記レーザ溶接工程では、前記レーザ光の照射方向から見て、前記極板同士が接触した領域内に溶接部が形成されるように、前記仮付部と前記集電体とをレーザ溶接することにしてもよい。
【0013】
これによれば、レーザ溶接工程では、極板同士が接触した領域内に溶接部が形成されるように、仮付部と集電体とをレーザ溶接する。このように、極板同士が接触した領域内でレーザ溶接を行うことで、極板間に空気層が生じるのがより確実に抑制された箇所で、レーザ溶接を行うことができる。これにより、電極体と集電体との溶接の品質の向上を図ることができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子は、極板が積層方向に積層された積層部を有する電極体と、前記積層部に接合される集電体とを備える蓄電素子であって、前記積層部と前記集電体との接合部は、前記積層部において積層された極板同士が仮付けされた仮付部と、前記仮付部と前記集電体とが重ね合わされた部分において、前記仮付部と前記集電体とがレーザ溶接されたレーザ溶接部と、を有する。
【0015】
これによれば、蓄電素子において、電極体の積層部と集電体との接合部は、積層部において積層された極板同士が仮付けされた仮付部と、仮付部と集電体とがレーザ溶接されたレーザ溶接部と、を有している。このように、極板同士が仮付けされた仮付部と集電体とがレーザ溶接されてレーザ溶接部が形成されていることで、極板間に空気層が生じるのが抑制された箇所で、レーザ溶接が行われている。これにより、レーザ溶接部において、極板間に空気層がある箇所でレーザ溶接が行われるのを抑制することができているため、電極体と集電体との溶接の品質の向上を図ることができている。
【0016】
なお、本発明は、このような蓄電素子の製造方法、及び、蓄電素子として実現することができるだけでなく、電極体と集電体との接合方法、電極体と集電体との組み合わせ、または、電極体と集電体との接合部としても実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明における蓄電素子の製造方法によれば、電極体と集電体との溶接の品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る蓄電素子の容器内方に配置されている構成要素を示す斜視図である。
図3】実施の形態に係る蓄電素子を分解して各構成要素を示す分解斜視図である。
図4】実施の形態に係る電極体と集電体とを接合して接合部が形成された状態での構成を示す正面図である。
図5】実施の形態に係る電極体、集電体、当て板及び接合部の構成を示す正面図及び断面図である。
図6】実施の形態に係る電極体と集電体とを接合して接合部を形成する方法を示す断面図である。
図7】実施の形態の変形例に係る接合部の構成を示す正面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(及びその変形例)に係る蓄電素子及びその製造方法について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。さらに、各図において、同一または同様な構成要素については同じ符号を付している。
【0020】
以下の説明及び図面中において、蓄電素子が有する一対(正極側及び負極側、以下同様)の電極端子の並び方向、一対の集電体の並び方向、または、容器の短側面の対向方向を、X軸方向と定義する。容器の長側面の対向方向、容器の厚さ方向、電極体と集電体との接合部における極板の積層方向、当該接合部における集電体と電極体と当て板との並び方向、または、当該接合部におけるレーザ光の照射方向を、Y軸方向と定義する。蓄電素子の容器本体と蓋体との並び方向、集電体の脚部(電極体接続部)の延設方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0021】
また、以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。さらに、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0022】
(実施の形態)
[1 蓄電素子10の全般的な説明]
まず、図1図3を用いて、本実施の形態における蓄電素子10の全般的な説明を行う。図1は、本実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。図2は、本実施の形態に係る蓄電素子10の容器100内方に配置されている構成要素を示す斜視図である。具体的には、図2は、蓄電素子10から容器本体110を分離した状態での構成を示す斜視図であり、電極体300に集電体400を接合した後の状態を示している。図3は、本実施の形態に係る蓄電素子10を分解して各構成要素を示す分解斜視図である。具体的には、図3は、図2に示した容器本体110以外の構成要素を分解して示す斜視図であり、電極体300に集電体400を接合する前の状態を示している。
【0023】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及びガソリン自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。また、蓄電素子10は、家庭用または発電機用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0024】
なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電素子10は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。蓄電素子10は、固体電解質を用いた電池であってもよい。蓄電素子10は、パウチタイプの蓄電素子であってもよい。本実施の形態では、扁平な直方体形状(角形)の蓄電素子10を図示しているが、蓄電素子10の形状は、直方体形状には限定されず、円柱形状、長円柱形状または直方体以外の多角柱形状等であってもよい。
【0025】
図1に示すように、蓄電素子10は、容器100と、一対(正極側及び負極側)の電極端子200と、一対(正極側及び負極側)の上部ガスケット210と、を備えている。図2及び図3に示すように、容器100の内方には、一対(正極側及び負極側)の下部ガスケット220と、電極体300と、一対(正極側及び負極側)の集電体400(401及び402)と、一対(正極側及び負極側)の当て板500と、が収容されている。なお、容器100の内部には、電解液(非水電解質)が封入されているが、図示は省略する。当該電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。上記の構成要素の他、電極体300の側方または下方等に配置されるスペーサ、電極体300等を包み込む絶縁フィルム等が配置されていてもよい。
【0026】
容器100は、開口が形成された容器本体110と、容器本体110の当該開口を閉塞する蓋体120と、を有する直方体形状(角形または箱形)のケースである。容器本体110は、容器100の本体部を構成する矩形筒状で底を備える部材である。容器本体110は、X軸方向両側の側面(短側面)に一対の平板状かつ矩形状の短側壁部111を有し、Y軸方向両側の側面(長側面)に一対の平板状かつ矩形状の長側壁部112を有し、Z軸マイナス方向側に平板状かつ矩形状の底壁部113を有している。蓋体120は、容器100の蓋部を構成する矩形状の板状部材であり、容器本体110のZ軸プラス方向側にX軸方向に延設されて配置されている。蓋体120には、容器100内方の圧力が上昇した場合に当該圧力を開放するガス排出弁121、及び、容器100の内方に電解液を注液するための注液部122等が設けられている。
【0027】
このような構成により、容器100は、電極体300等を容器本体110の内部に収容後、容器本体110と蓋体120とが溶接等によって接合されることにより、内部が密封される構造となっている。なお、容器100(容器本体110及び蓋体120)の材質は特に限定されず、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄など溶接可能な金属とすることができるが、樹脂を用いることもできる。
【0028】
電極体300は、正極板と負極板とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる蓄電要素(発電要素)である。正極板は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等からなる長尺帯状の集電箔である正極基材層上に正極活物質層が形成された極板である。負極板は、銅または銅合金等からなる長尺帯状の集電箔である負極基材層上に負極活物質層が形成された極板である。なお、上記集電箔として、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al-Cd合金など、適宜公知の材料を用いることもできる。正極活物質層及び負極活物質層に用いられる正極活物質及び負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。セパレータは、樹脂からなる微多孔性のシートまたは不織布等を用いることができる。
【0029】
電極体300は、正極板と負極板とセパレータとが積層されて形成されている。具体的には、電極体300は、正極板と負極板との間にセパレータが配置され巻回されて形成されている。さらに具体的には、電極体300は、正極板と負極板とが、セパレータを介して、巻回軸の方向に互いにずらして巻回されている。巻回軸とは、正極板及び負極板等を巻回する際の中心軸となる仮想的な軸であり、本実施の形態では、電極体300の中心を通る、X軸方向に平行な直線である。そして、正極板及び負極板は、それぞれのずらされた方向の端部に、活物質が形成(塗工)されず基材層が露出した部分(活物質層非形成部)を有している。
【0030】
これにより、電極体300は、巻回軸方向の一端部に、正極板の活物質層非形成部が積層されて束ねられた正極側の積層部320を有し、巻回軸方向の他端部に、負極板の活物質層非形成部が積層されて束ねられた負極側の積層部320を有している。積層部320は、極板(正極板または負極板)が積層方向(Y軸方向)に積層された部位である。つまり、電極体300は、電極体300の本体を構成する電極体本体部310と、電極体本体部310からX軸方向両側に突出した一対(正極側及び負極側)の積層部320と、を有している。電極体本体部310は、正極板及び負極板の活物質層が形成(塗工)された部分とセパレータとが巻回されて形成された長円形状の部位(活物質層形成部)である。なお、本実施の形態では、電極体300(電極体本体部310)の断面形状として長円形状を図示しているが、円形状、楕円形状、または、多角形状等でもよい。
【0031】
電極端子200は、集電体400を介して、電極体300に電気的に接続される端子部材(正極端子及び負極端子)である。つまり、電極端子200は、電極体300に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体300に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の部材である。電極端子200は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金等の金属等の導電部材で形成されている。電極端子200は、かしめ等によって、集電体400に接続(接合)され、かつ、蓋体120に取り付けられている。
【0032】
具体的には、図3に示すように、電極端子200は、軸部201が、上部ガスケット210の貫通孔211と、蓋体120の貫通孔123と、下部ガスケット220の貫通孔221と、集電体400の貫通孔411とに挿入されて、かしめられることにより、集電体400とともに蓋体120に固定される。なお、電極端子200と集電体400とを接続(接合)する手法は、かしめ接合には限定されず、超音波接合、レーザ溶接若しくは抵抗溶接等の溶接、または、ねじ締結等のかしめ以外の機械的接合等が用いられてもよい。
【0033】
上部ガスケット210は、容器100の蓋体120と電極端子200との間に配置され、蓋体120と電極端子200との間を絶縁し、かつ封止する板状かつ矩形状の部材(正極上部ガスケット及び負極上部ガスケット)である。上部ガスケット210の中央部には、上述の電極端子200の軸部201が挿入される貫通孔211が形成されている。下部ガスケット220は、容器100の蓋体120と集電体400との間に配置され、蓋体120と集電体400との間を絶縁する板状かつ矩形状の部材(正極下部ガスケット及び負極下部ガスケット)である。下部ガスケット220の中央部には、上述の電極端子200の軸部201が挿入される貫通孔221が形成されている。
【0034】
上部ガスケット210及び下部ガスケット220は、絶縁性を有していればどのような素材で形成されてもよいが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ABS樹脂、若しくは、それらの複合材料等の絶縁部材により形成されている。
【0035】
集電体400は、電極体300のX軸方向両側に配置され、電極体300の積層部320と電極端子200とに接続(接合)されて、電極体300と電極端子200とを電気的に接続する導電性と剛性とを備えた集電部材(正極集電体及び負極集電体)である。具体的には、集電体400は、容器本体110の側壁から蓋体120に亘って当該側壁及び蓋体120に沿って屈曲状態で配置される板状部材である。また、集電体400は、蓋体120に固定的に接続(接合)される。この構成により、電極体300が、集電体400によって蓋体120から吊り下げられた状態で保持(支持)され、振動や衝撃等による揺れが抑制される。集電体400の材質は特に限定されないが、例えば、正極側の集電体400は、電極体300の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金等で形成され、負極側の集電体400は、電極体300の負極基材層と同様、銅または銅合金等で形成されている。
【0036】
図3に示すように、正極側及び負極側の集電体400のうちのX軸プラス方向側の集電体401とX軸マイナス方向側の集電体402とは、YZ平面に対して対称な形状を有している。そして、それぞれの集電体400(集電体401及び402)は、端子接続部410と、端子接続部410からZ軸マイナス方向に向けて延設された電極接続部420と、を有している。
【0037】
端子接続部410は、電極端子200に接続(接合)される集電体400の基部である。具体的には、端子接続部410は、集電体400の電極端子200側(上側、Z軸プラス方向)に配置される、上述の円形状の貫通孔411が形成されたXY平面に平行な平板状の部位であり、電極端子200に電気的及び機械的に接続(接合)される。電極接続部420は、電極体300に接続(接合)される集電体400の脚部である。つまり、電極接続部420は、集電体400の電極体300側(下側、Z軸マイナス方向)に配置される部位であり、電極体300に電気的及び機械的に接続(接合)される。具体的には、電極接続部420は、端子接続部410のY軸プラス方向の端部からZ軸マイナス方向に延びる長尺状かつ平板状の部位であり、電極体300の積層部320のY軸プラス方向に配置されて、積層部320に接合される。
【0038】
当て板500は、集電体400とで電極体300を挟む位置に配置され、集電体400とで電極体300を挟んだ状態で、集電体400とともに電極体300に接合される部材である。つまり、当て板500は、電極接続部420とで、積層部320を挟む位置に配置された、積層部320を保護するカバーである。具体的には、当て板500は、積層部320のY軸マイナス方向に配置され、積層部320に沿ってZ軸方向に延びる平板状かつ矩形状の金属製の部材である。当て板500の材質は特に限定されないが、例えば、正極側の当て板500は、電極体300の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金等で形成され、負極側の当て板500は、電極体300の負極基材層と同様、銅または銅合金等で形成されている。
【0039】
このような構成により、電極接続部420と当て板500とで積層部320を挟んだ状態で、電極接続部420と積層部320と当て板500とが接合されて、接合部700(図2参照)が形成される。本実施の形態では、1つの電極接続部420に対して、Z軸方向に並ぶ2つの接合部700が形成される。つまり、1つの集電体400において2つの接合部700が形成され、1つの蓄電素子10において4つの接合部700が形成される。
【0040】
[2 接合部700の説明]
[2.1 接合部700の構成の説明]
次に、電極体300の積層部320と集電体400の電極接続部420との接合部700の構成について、詳細に説明する。図4は、本実施の形態に係る電極体300と集電体400とを接合して接合部700が形成された状態での構成を示す正面図である。具体的には、図4は、図2に示した状態をY軸マイナス方向から見た場合の構成を示す平面図である。図5は、本実施の形態に係る電極体300、集電体400、当て板500及び接合部700の構成を示す正面図及び断面図である。具体的には、図5の(a)は、図4に示した接合部700及びその周囲の構成を拡大して示す正面図であり、図5の(b)は、図5の(a)の構成をV(b)-V(b)断面で切断した場合の構成を示す断面図である。なお、図5では、図4に示した接合部700のうちのX軸プラス方向側の接合部700及びその周囲の構成について示しているが、その他の接合部700及びその周囲の構成についても、同様の構成を有している。
【0041】
これらの図に示すように、電極体300の積層部320のY軸プラス方向に集電体400の電極接続部420が配置され、かつ、積層部320のY軸マイナス方向に当て板500が配置されて、電極体300、集電体400及び当て板500が接合された接合部700が形成されている。図5に示すように、接合部700は、仮付部710と、レーザ溶接部720と、を有している。
【0042】
仮付部710は、積層部320において積層された極板301同士が仮付け(仮止め)された部位である。極板301は、正極板または負極板であり、詳細には、正極板または負極板の基材層(活物質層非形成部)である。極板301同士が仮付け(仮止め)されたとは、極板301同士が強固に接合された状態ではなく、極板301同士が弱い力で接合され、極板301同士が少なくとも一時的に接触した状態(極板301間への隙間の形成が抑制された状態)になっていたことをいう。例えば、極板301の内部までは溶融することなく極板301の表面が溶融して、極板301同士が弱い力で接合されている。これにより、仮付部710は、その全体において極板301同士が接触した状態になっていてもよいし、一部のみにおいて極板301同士が接触した状態になっていてもよい。
【0043】
具体的には、当て板500の仮付部710に対応する位置に、Y軸方向から見て円形状の、Y軸プラス方向に膨出する膨出部510が形成されている。膨出部510は、当て板500のY軸プラス方向の面がY軸プラス方向に突出し、かつ、Y軸マイナス方向の面がY軸プラス方向に凹んだ膨出状の部位である。当て板500に膨出部510が形成されて、積層部320のY軸マイナス方向の面が凹むことにより、仮付部710は、積層部320のうちのY軸方向の厚みが薄い円柱状の部位となっている。つまり、仮付部710は、極板301同士がY軸方向に圧接されて仮付けされている。
【0044】
本実施の形態では、極板301同士に加え、積層部320に含まれるY軸プラス方向端部の極板301、及び、集電体400の電極接続部420も、仮付けされている。さらに、積層部320に含まれるY軸マイナス方向端部の極板301、及び、当て板500の膨出部510も、仮付けされている。つまり、仮付部710は、極板301同士と、極板301及び集電体400と、極板301及び当て板500とが仮付けされた部位である。具体的には、仮付部710は、極板301同士と、極板301及び集電体400と、極板301及び当て板500とが、圧接されて仮付けされた部位である。さらに具体的には、仮付部710は、圧接され、かつ、熱を用いて仮付けされた部位であるが、詳細については後述する。
【0045】
レーザ溶接部720は、仮付部710と集電体400とが重ね合わされた部分において、仮付部710と集電体400とがレーザ溶接されて形成された溶接部である。具体的には、レーザ溶接部720は、仮付部710と集電体400の電極接続部420の対向部421とが重ね合わされた部分において、仮付部710と対向部421とがレーザ溶接されて形成されたレーザ溶接痕である。対向部421は、電極接続部420のうちの、Y軸方向において仮付部710と対向する円柱状の部位である。本実施の形態では、レーザ溶接部720は、当て板500の膨出部510と仮付部710と対向部421とが、レーザ溶接されて形成されたレーザ溶接痕である。
【0046】
具体的には、レーザ溶接部720は、Y軸方向から見て、極板301同士が接触した領域内に形成されている。さらに具体的には、レーザ溶接部720は、極板301同士と、極板301及び対向部421と、極板301及び膨出部510とが接触した領域内に形成されている。本実施の形態では、レーザ溶接部720は、Y軸方向から見て、仮付部710の中央部(対向部421及び膨出部510の中央部)に形成されている。また、レーザ溶接部720は、膨出部510のY軸マイナス方向の表面から、仮付部710を貫通し、対向部421の内部まで溶融した溶融痕である。
【0047】
集電体400は、対向部421がY軸方向に圧接されることにより、対向部421のY軸方向の両面に、凹部等の圧接痕(図示せず)が形成される。つまり、集電体400は、対向部421が、対向部421の周囲よりもY軸方向に突出していない。なお、集電体400は、対向部421のY軸方向の両面に圧接痕が形成されておらず、Y軸方向の両面が平面状となっていてもよい。
【0048】
[2.2 接合部700の形成方法の説明]
次に、蓄電素子10の製造方法のうち、上述した接合部700の形成方法、つまり、電極体300と集電体400との接合方法について、詳細に説明する。図6は、本実施の形態に係る電極体300と集電体400とを接合して接合部700を形成する方法を示す断面図である。具体的には、図6の(a)は、蓄電素子10の製造方法(接合部700の形成方法)のうちの仮付工程前の状態を示し、図6の(b)は、仮付工程を示し、図6の(c)は、レーザ溶接工程を示している。
【0049】
まず、図6の(a)に示すように、電極体300に集電体400を配置する。具体的には、電極体300の積層部320のY軸プラス方向に集電体400の電極接続部420を配置し、積層部320のY軸マイナス方向に当て板500を配置して、積層部320を、極板301の積層方向(Y軸方向)において電極接続部420と当て板500とで挟み込む。
【0050】
そして、図6の(b)に示すように、仮付工程として、積層部320において積層された極板301同士を熱を用いて仮付けし、極板301同士が仮付けされた仮付部710を形成する。具体的には、仮付工程では、極板301同士と、極板301及び集電体400とを熱を用いて仮付けし、極板301同士と、極板301及び集電体400とが仮付けされた仮付部710を形成する。さらに具体的には、仮付工程では、積層部320に積層方向に電流を通電することにより発生する熱を用いて、仮付部710を形成する。
【0051】
本実施の形態では、電極接続部420と当て板500とで積層部320を挟んだ状態で、電極接続部420のY軸プラス方向及び当て板500のY軸マイナス方向に、仮付器具20(21及び22)が配置される。仮付器具20は、例えば、抵抗溶接用の電極(タングステン製の電極先端チップ)である。具体的には、当て板500側に仮付器具21が配置され、かつ、電極接続部420側に仮付器具22が配置されて、仮付器具21と仮付器具22とを近付けることにより、当て板500、積層部320及び電極接続部420を圧接(圧縮)する。これにより、当て板500に膨出部510が形成され、かつ、積層部320の膨出部510と対向する位置に厚みの薄い部位が形成される。
【0052】
また、仮付器具21と仮付器具22との間に、通常の抵抗溶接時よりも小さい電流値の電流Iが流れることで、膨出部510と対向部421との間に電流Iが流れて、比較的低温の熱が発生し、低出力の抵抗溶接が行われる。電流Iの電流値は、小さいほど好ましく、抵抗溶接によって、積層部320内の極板301同士の間、極板301及び対向部421の間、及び、極板301及び膨出部510の間の隙間がなくなる程度の電流値であるのが好ましい。これにより、積層部320内の極板301同士と、極板301及び対向部421と、極板301及び膨出部510とが低出力で抵抗溶接されて仮付けされた仮付部710が形成される。
【0053】
次に、図6の(c)に示すように、レーザ溶接工程として、仮付部710と集電体400とが重ね合わされた部分に向けてレーザ光Lを照射し、仮付部710と集電体400とをレーザ溶接して、レーザ溶接部720を形成する。具体的には、レーザ溶接工程では、レーザ光Lの照射方向から見て、極板301同士が接触した領域内に溶接部が形成されるように、仮付部710と集電体400とをレーザ溶接する。さらに具体的には、レーザ溶接工程では、レーザ光Lの照射方向から見て、極板301同士と、極板301及び集電体400と、極板301及び当て板500とが接触した領域内に溶接部が形成されるように、仮付部710と集電体400とをレーザ溶接する。
【0054】
本実施の形態では、レーザ光Lの照射方向(Y軸方向)から見て、膨出部510、仮付部710及び対向部421の中央部が、仮付部710内の極板301同士と、極板301及び対向部421と、極板301及び膨出部510とが接触している。このため、レーザ光Lの照射方向(Y軸方向)から見て、膨出部510、仮付部710及び対向部421の中央部に、Y軸プラス方向に向けて膨出部510側からレーザ光Lが照射される。これにより、膨出部510、仮付部710及び対向部421がレーザ溶接されて、レーザ溶接部720が形成される。
【0055】
レーザ溶接部720は、膨出部510、仮付部710及び対向部421が溶融して一体化された部位である。本実施の形態では、Y軸方向から見て、膨出部510の中央部と、仮付部710の中央部と、対向部421の中央部かつ仮付部710側の部分とが溶融して、レーザ溶接部720が形成される。具体的には、膨出部510、仮付部710及び対向部421は、キーホール(深溶込み)溶接によりレーザ溶接される。キーホール(深溶込み)溶接は、レーザ光のパワー密度を高くして、材料にキーホールを形成することにより、ビード幅が狭く溶込みが深い溶接部を形成する手法である。これにより、仮付部710と集電体400とを深い位置まで高速でスポット的に溶接できる。
【0056】
[3 効果の説明]
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10の製造方法は、電極体300の積層部320において積層された極板301同士を熱を用いて仮付けし仮付部710を形成する仮付工程と、仮付部710と集電体400とをレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を含む。このように、積層部320の極板301同士を熱を用いて仮付けして仮付部710を形成することで、極板301を押さえるための複雑な装置や治具を用いることなく、極板301間に空気層が生じるのを容易に抑制することができる。また、仮付部710と集電体400とをレーザ溶接することで、極板301間に空気層が生じるのが抑制された箇所で、レーザ溶接を行うことができる。これにより、電極体300と集電体400との溶接において、極板301間に空気層がある箇所でレーザ溶接が行われるのを抑制することができるため、電極体300と集電体400との溶接の品質の向上を図ることができる。
【0057】
また、仮付工程では、極板301同士と、極板301及び集電体400とを熱を用いて仮付けし、仮付部710を形成する。このように、仮付工程において、極板301同士に加え、極板301及び集電体400も仮付けすることで、レーザ溶接を行う箇所において極板301と集電体400との間に空気層が生じるのを抑制することができる。これにより、電極体300と集電体400との溶接において、極板301と集電体400との間に空気層がある箇所でレーザ溶接が行われるのを抑制することができるため、電極体300と集電体400との溶接の品質の向上を図ることができる。
【0058】
また、仮付工程では、電極体300の積層部320に電流Iを通電することにより発生する熱を用いて、仮付部710を形成する。これにより、積層部320に対して低出力の抵抗溶接を行うことにより、仮付部710を容易に形成することができるため、上述した電極体300と集電体400との溶接の品質の向上を図る構成を容易に実現することができる。また、低出力で抵抗溶接を行うことにより、抵抗溶接用の電極(仮付器具20等)の磨耗を抑制することができるため、当該電極の交換頻度を長くすることができる。さらに、低出力で抵抗溶接を行うことにより、仮付け時に熱が発生するのを抑制することができるため、電極体300(特にセパレータ)等に与える影響(例えば、セパレータが溶ける等)を低減することができる。
【0059】
また、レーザ溶接工程では、極板301同士が接触した領域内に溶接部が形成されるように、仮付部710と集電体400とをレーザ溶接する。このように、極板301同士が接触した領域内でレーザ溶接を行うことで、極板301間に空気層が生じるのがより確実に抑制された箇所で、レーザ溶接を行うことができる。これにより、電極体300と集電体400との溶接の品質の向上を図ることができる。
【0060】
また、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、電極体300の積層部320と集電体400との接合部700は、積層部320において積層された極板301同士が仮付けされた仮付部710と、仮付部710と集電体400とがレーザ溶接されたレーザ溶接部720と、を有している。このように、極板301同士が仮付けされた仮付部710と集電体400とがレーザ溶接されてレーザ溶接部720が形成されていることで、極板301間に空気層が生じるのが抑制された箇所で、レーザ溶接が行われている。これにより、レーザ溶接部720において、極板301間に空気層がある箇所でレーザ溶接が行われるのを抑制することができているため、電極体300と集電体400との溶接の品質の向上を図ることができている。
【0061】
また、集電体400は、仮付部710と対向する対向部421の両面が対向部421の周囲よりも突出していない。このため、仮付部710を形成するために、かしめ接合のような集電体400を変形する強固な接合が行われたのではなく、熱等による簡易な手法が行われたものと推認できる。このように、簡易に仮付部710を形成することにより、容易に、電極体300及び集電体400の溶接の品質の向上を図ることができる。
【0062】
[4 変形例の説明]
次に、上記実施の形態の変形例について、説明する。図7は、本実施の形態の変形例に係る接合部701の構成を示す正面図及び断面図である。具体的には、図7は、図5に対応する図である。
【0063】
図7に示すように、本変形例における接合部701は、上記実施の形態における接合部700のレーザ溶接部720に代えて、レーザ溶接部721を有している。レーザ溶接部721は、上記実施の形態におけるレーザ溶接部720よりも、Y軸方向から見た場合の面積が大きい。つまり、上記実施の形態では、仮付部710と集電体400とがキーホール(深溶込み)溶接によりレーザ溶接されてレーザ溶接部720が形成されることとしたが、本変形例では、仮付部710と集電体400とが熱伝導溶接によりレーザ溶接されてレーザ溶接部721が形成される。熱伝導溶接は、比較的パワー密度の低いレーザ光を材料表面で吸収させて熱に変換し、融解させて冷やし固めることにより、ビード幅が広い溶接部を形成する手法である。
【0064】
なお、レーザ溶接部721は、Y軸方向における溶接の深さが、レーザ溶接部720と同等でもよいし、レーザ溶接部720よりも浅くてもよい。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0065】
以上のように、本変形例に係る蓄電素子及びその製造方法によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に、本変形例では、仮付部710と集電体400とが熱伝導溶接によりレーザ溶接されるため、溶接に多少時間を要するものの、溶接時にスパッタが発生しにくくなる。また、体積が比較的大きなレーザ溶接部721が形成されるため、接合部701における接合の電気的及び機械的な安定性を向上させることができる。これにより、電極体300と集電体400との溶接の品質の向上を図ることができる。
【0066】
(その他の変形例)
以上、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る蓄電素子及びその製造方法について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されない。つまり、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であり、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0067】
例えば、上記実施の形態では、極板301同士と、極板301及び集電体400と、極板301及び当て板500とを圧接し、かつ、熱を加えて仮付けすることとした。しかし、これらを圧接することなく、熱を加えて仮付けすることにしてもよい。この場合、当て板500には、膨出部510が形成されていなくてもよい。
【0068】
上記実施の形態では、極板301同士と、極板301及び集電体400と、極板301及び当て板500とが仮付けされることとした。しかし、極板301及び集電体400が仮付けされなくてもよいし、極板301及び当て板500が仮付けされなくてもよい。つまり、積層部320内の極板301同士を仮付けした後、積層部320に集電体400及び当て板500を重ねてレーザ溶接してもよい。極板301及び集電体400、並びに、極板301及び当て板500も仮付けするのが好ましいが、これらが仮付けされなくても、極板301同士を仮付けすれば、電極体300と集電体400との溶接の品質の向上を図る効果を得ることはできる。
【0069】
上記実施の形態では、電流を通電することにより発生する熱を用いて、仮付部710を形成することとした。しかし、電流を通電することなく熱を用いて仮付部710を形成することにしてもよい。例えば、低出力での超音波接合を行ったり、熱した器具で挟み込んだりして発生する熱を用いて、仮付部710を形成することにしてもよい。超音波接合を行う場合、極板301に接触する面がフラット(平坦)なホーンを用いるのが好ましく、これによって、仮付けできる領域を大きくできる。または、熱を用いることなく仮付けを行うことができれば、熱を用いることなく、仮付部710を形成することにしてもよい。これらの場合、極板301同士を固相接合することで、仮付部710を形成することにしてもよい。
【0070】
上記実施の形態では、当て板500(膨出部510)側からレーザ光Lを照射して接合部700(または701)を形成することとした。しかし、集電体400(電極接続部420)側からレーザ光Lを照射して、接合部700(または701)を形成することにしてもよい。
【0071】
上記実施の形態では、レーザ溶接部720(または721)は、レーザ光Lの照射方向(Y軸方向)から見て、極板301同士等が接触した領域内、具体的には、仮付部710の中央部に形成されていることとした。しかし、極板301同士等が仮付部710の端部等で接触していれば、レーザ溶接部720(または721)は、仮付部710の当該端部等に形成されていてもよい。また、レーザ溶接部720(または721)は、極板301同士等が接触した領域外に形成されていてもよい。
【0072】
上記実施の形態では、集電体400に1つの電極接続部420が設けられ、1つの電極接続部420に対して、1枚の当て板500が配置されて、2つの接合部700(または701)が形成されることとした。しかし、集電体400に設けられる電極接続部420の数、1つの電極接続部420に形成される接合部700(または701)の数、及び、1つの電極接続部420に配置される当て板500の枚数は、特に限定されない。
【0073】
上記実施の形態では、膨出部510、対向部421、接合部700(または701)、仮付部710、及び、レーザ溶接部720(または721)等は、Y軸方向から見て円形状を有していることとした。しかし、これらの形状は特に限定されず、Y軸方向から見て、楕円形状、長円形状、矩形状、または、その他の多角形状等であってもよい。
【0074】
上記実施の形態では、集電体400と電極体300と当て板500とが接合されることとしたが、これら以外の部材も一緒に接合されてもよい。または、当て板500は設けられておらず、電極体300及び集電体400が接合されることにしてもよい。
【0075】
上記実施の形態では、電極体300は、巻回軸が蓋体120に平行となるいわゆる縦巻きの巻回型電極体であることとした。しかし、電極体300は、巻回軸が蓋体120に垂直となるいわゆる横巻きの巻回型電極体であってもよい。また、電極体300の形状は巻回型に限らず、平板状極板を積層したスタック型、または、極板及び/又はセパレータを蛇腹状に折り畳んだ形状(セパレータを蛇腹状にして矩形の極板を挟む形態、極板とセパレータとを重ねた後に蛇腹状にする形態等)等であってもよい。この場合、積層部320は、電極体300の電極体本体部310から突出するタブであってもよい。
【0076】
上記実施の形態では、全ての接合部700(または701)について上記の構成が適用されることとしたが、いずれかの接合部700(または701)については上記の構成が適用されないことにしてもよい。
【0077】
上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0078】
本発明は、このような蓄電素子の製造方法、及び、蓄電素子として実現することができるだけでなく、電極体300と集電体400との接合方法、電極体300と集電体400との組み合わせ、または、電極体300と集電体400との接合部としても実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子の製造方法に適用できる。
【符号の説明】
【0080】
10 蓄電素子
20、21、22 仮付器具
100 容器
110 容器本体
120 蓋体
200 電極端子
300 電極体
301 極板
310 電極体本体部
320 積層部
400、401、402 集電体
410 端子接続部
420 電極接続部
421 対向部
500 当て板
510 膨出部
700、701 接合部
710 仮付部
720、721 レーザ溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7