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特許7592984樹脂組成物、静電荷像現像用トナー、画像形成方法及び感光性接着剤
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  • 特許-樹脂組成物、静電荷像現像用トナー、画像形成方法及び感光性接着剤 図1
  • 特許-樹脂組成物、静電荷像現像用トナー、画像形成方法及び感光性接着剤 図2
  • 特許-樹脂組成物、静電荷像現像用トナー、画像形成方法及び感光性接着剤 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】樹脂組成物、静電荷像現像用トナー、画像形成方法及び感光性接着剤
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20241126BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20241126BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20241126BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20241126BHJP
   C09B 67/20 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
G03G9/08 391
G03G9/087
G03G9/087 325
G03G9/087 331
G03G9/097 365
G03G15/20 510
C09B67/20 G
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020102757
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021196498
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 和明
(72)【発明者】
【氏名】草野 優咲子
(72)【発明者】
【氏名】堀口 治男
(72)【発明者】
【氏名】芝田 豊子
(72)【発明者】
【氏名】須釜 宏二
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-156111(JP,A)
【文献】特開2019-164335(JP,A)
【文献】特開2018-203959(JP,A)
【文献】特開平05-273788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
G03G 9/087
G03G 9/097
G03G 15/20
C09B 67/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【化1】
[一般式(1)中、Z及びZは、それぞれ独立して、N又はCHを表し、かつZ≠Zである。A及びAは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基又は置換若しくは非置換の芳香族複素環基を表す。L及びLは、連結基を表す。nは、0又は1を表す。Bは、相補的多重水素結合性基を表し、前記相補的多重水素結合性基が、アデニン、チミン、2,6-ジアセチルアミノピリジン、メラミン、シアヌル酸、及び4,6-ジアミノ-2-ピリミジノンから選択される化合物の残基のいずれか一つである。Gは、置換基、又は前記的多重水素結合性基を表し、Gが置換基の場合は、n=0を表す。]
【請求項2】
光照射で可逆的に流動化及び非流動化することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記光照射の波長が、280~480nmの範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
トナー母体粒子が、結着樹脂を含有することを特徴とする請求項4に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項5に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
トナー母体粒子が、着色剤を含有することを特徴とする請求項4から請求項6までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
トナー母体粒子が、離型剤を含有することを特徴とする請求項4から請求項7までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
請求項4から請求項8までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを用いた画像形成方法であって、
前記静電荷像現像用トナーからなるトナー像を記録媒体上に形成する工程と、前記トナー像に光照射して、前記トナー像を軟化させる工程と、を備えることを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
前記光照射の波長が、280~480nmの範囲内であることを特徴とする請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記トナー像を加圧する工程をさらに備えることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記加圧する工程では、前記トナー像をさらに加熱することを特徴とする請求項11に記載の画像形成方法。
【請求項13】
下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする感光性接着剤。
【化2】
[一般式(1)中、Z及びZは、それぞれ独立して、N又はCHを表し、かつZ≠Zである。A及びAは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基又は置換若しくは非置換の芳香族複素環基を表す。L及びLは、連結基を表す。nは、0又は1を表す。Bは、相補的多重水素結合性基を表し、前記相補的多重水素結合性基が、アデニン、チミン、2,6-ジアセチルアミノピリジン、メラミン、シアヌル酸、及び4,6-ジアミノ-2-ピリミジノンから選択される化合物の残基のいずれか一つである。Gは、置換基、又は前記的多重水素結合性基を表し、Gが置換基の場合は、n=0を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、静電荷像現像用トナー、画像形成方法及び感光性接着剤に関し、特に、無色でありながら異性化に伴い可逆的な流動体化・非流動体化現象を誘起し、かつ迅速な非流動化ができる樹脂組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
アゾベンゼン誘導体は、光を吸収し固体状態から軟化(光相転移)する材料であることが知られている。その光相転移は、トランス体(E)がシス体(Z)へ異性化することにより結晶構造が崩れることで生じていると考えられる。
特許文献1又は特許文献2に記載のアゾベンゼン誘導体では、光照射による異性化反応に伴って相変化を起こすが、これらの化合物は長波長領域にn-π*遷移に由来する強い吸収により、橙色に着色しているため、工業製品に適用する際に所望の色を再現できないという点で問題があった。
また、昨今の3Dプリンターの普及により、熱溶融押し出し方式による積層体の造形も着色、又は不透明なポリ乳酸、ABS樹脂やポリプロピレン等からなるフィラメントの他に、PET系、ポリカーボネート等の透明フィラメントも上市されている。3Dプリンターは、造形物の形によりダミーの支持体を作製し、造形終了後に支持体を除去する工程がある。この除去時に接点にバリが出て、研磨等の手間がかかる。3Dプリンターの製造工程の簡略化には、光で容易に除去可能な支持体が望まれており、そのフィラメント材料としては、光で軟化する組成物が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-191078号公報
【文献】特開2014-191077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、無色でありながら異性化に伴い可逆的な流動体化・非流動体化現象を誘起し、かつ迅速な非流動化ができる樹脂組成物を提供することである。また、当該樹脂組成物を用い、光照射により定着可能かつ色再現性の高い静電荷像現像用トナー及び当該静電荷像現像用トナーを用いた画像形成方法を提供することである。さらに、感光性接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、アゾメチン部位を有する特定の化合物を用いることで、無色で、可逆的に流動化・非流動化し、また、迅速な非流動化が可能な樹脂組成物等を提供することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0006】
1.下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【化1】
[一般式(1)中、Z及びZは、それぞれ独立して、N又はCHを表し、かつZ≠Zである。A及びAは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基又は置換若しくは非置換の芳香族複素環基を表す。L及びLは、連結基を表す。nは、0又は1を表す。Bは、相補的多重水素結合性基を表し、前記相補的多重水素結合性基が、アデニン、チミン、2,6-ジアセチルアミノピリジン、メラミン、シアヌル酸、及び4,6-ジアミノ-2-ピリミジノンから選択される化合物の残基のいずれか一つである。Gは、置換基、又は前記的多重水素結合性基を表し、Gが置換基の場合は、n=0を表す。]
【0008】
.光照射で可逆的に流動化及び非流動化することを特徴とする第1項に記載の樹脂組成物。
【0009】
.前記光照射の波長が、280~480nmの範囲内であることを特徴とする第項に記載の樹脂組成物。
【0010】
.第1項から第項までのいずれか一項に記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0011】
.トナー母体粒子が、結着樹脂を含有することを特徴とする第項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0012】
.前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする第項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0013】
.トナー母体粒子が、着色剤を含有することを特徴とする第項から第項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0014】
.トナー母体粒子が、離型剤を含有することを特徴とする第項から第項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0015】
.第項から第項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを用いた画像形成方法であって、
前記静電荷像現像用トナーからなるトナー像を記録媒体上に形成する工程と、前記トナー像に光照射して、前記トナー像を軟化させる工程と、を備えることを特徴とする画像形成方法。
【0016】
10.前記光照射の波長が、280~480nmの範囲内であることを特徴とする第項に記載の画像形成方法。
【0017】
11.前記トナー像を加圧する工程をさらに備えることを特徴とする第項又は第10項に記載の画像形成方法。
【0018】
12.前記加圧する工程では、前記トナー像をさらに加熱することを特徴とする第11項に記載の画像形成方法。
【0019】
13.下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする感光性接着剤。
【化2】
[一般式(1)中、Z及びZは、それぞれ独立して、N又はCHを表し、かつZ≠Zである。A及びAは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基又は置換若しくは非置換の芳香族複素環基を表す。L及びLは、連結基を表す。nは、0又は1を表す。Bは、相補的多重水素結合性基を表し、前記相補的多重水素結合性基が、アデニン、チミン、2,6-ジアセチルアミノピリジン、メラミン、シアヌル酸、及び4,6-ジアミノ-2-ピリミジノンから選択される化合物の残基のいずれか一つである。Gは、置換基、又は前記的多重水素結合性基を表し、Gが置換基の場合は、n=0を表す。]
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記手段により、無色でありながら異性化に伴い可逆的な流動体化・非流動体化現象を誘起し、かつ迅速な非流動化ができる樹脂組成物を提供することができる。また、当該樹脂組成物を用い、光照射により定着可能かつ色再現性の高い静電荷像現像用トナー及び当該静電荷像現像用トナーを用いた画像形成方法を提供することができる。さらに、感光性接着剤を提供することができる。
【0021】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明の樹脂組成物は、一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有しており、すなわち、アゾメチン部位を有する化合物(以下、「アゾメチン誘導体」ともいう。)を含有している。そのため、光照射により可逆的に流動化・非流動化する無色の化合物を提供することができる。
アゾベンゼン誘導体は、n-π*遷移に由来する強い吸収により、橙色に着色しているが、前記吸収ピークがほとんど見られないアゾメチン誘導体を用いることで、無色化を実現できる。
【0022】
また、光異性化に伴う流動化は、非流動性のトランス体(E)が光照射され、シス体(Z)へ異性化することで結晶の規則構造が崩れ、相転移変化することで前記現象を誘起できると考えられる。したがって、可逆的な流動体・非流動体化現象を誘起するためには、多くのトランス体(E)がシス体(Z)へ異性化する必要があると考えられる。
【0023】
これは、アゾベンゼン誘導体と同様に、トランス体(E)がシス体(Z)へ異性化することにより結晶構造が崩れることで生じると考えられる。そのメカニズムは、以下のように考えられる。
アゾメチン誘導体結晶へ光を照射すると、結晶表面のアゾメチン分子が異性化し、結晶構造が壊れることで流動化するとともに、光の透過率が向上する。結晶表面層が流動化し、透過率が向上することで結晶内部へ光が到達し、最表層より内部の結晶層が流動化する。このメカニズムにより、結晶全体が流動化する。
【0024】
本発明のアゾメチン誘導体は、アゾベンゼンを構成する2つのベンゼン環の平面性に比べて、若干ねじれた構造を有している。また、パラ置換されたアゾベンゼン構造に対して、5員環-6員環で構成されるアゾメチン誘導体は、分子の直線性が低下する。その結果、分子の結晶性やパッキングがアゾベンゼン誘導体に対して乏しくなる。これらのことより、光相転移(流動化)時にはアゾメチン誘導体は、アゾベンゼン誘導体に対して優位であると考えられる。
一方、流動化した溶融状態から非流動化する際、シス体(Z)からトランス体(E)へ異性化し、その後結晶化することで非流動化すると考えられる。この際、分子パッキングが弱いと結晶化が遅くなるため、分子構造上アゾメチン誘導体は、アゾベンゼン誘導体に対して不利になることが予想される。
そこで、迅速、かつ積極的な非流動化を達成するために、アゾメチン誘導体の分子末端に相補的多重水素結合性基を導入した分子構造に至った。非流動化の際、シス体(Z)からトランス体(E)への異性化率が低くても、水素結合により超分子ポリマーが形成されて非流動化する設計とした。
超分子ポリマーを用いた流動化は、光照射により、アゾメチン部位が異性化することで超分子ポリマーを構成している水素結合が切れて分子単位を減少させることで、流動化する。
以上より、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物は、無色でありながら異性化に伴い可逆的な流動体化・非流動体化現象を誘起し、かつ迅速な非流動化ができると考えられ、当該化合物を静電荷像現像用トナーに導入することで、光照射により定着可能、かつ色再現性の高いトナーを得ることができる。
なお、本発明における「流動」とは、外力なし、又は少ない外力で系が変形する状態のことをいう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態による画像形成方法で用いられる画像形成装置を示す概略構成図
図2】画像形成装置における照射部の概略構成図
図3】実施例及び比較例で合成した化合物の光照射に伴う接着性の変化を測る装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の樹脂組成物は、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
【0027】
本発明の実施態様としては、相補的多重水素結合性基が、アデニン、チミン、2,6-ジアセチルアミノピリジン、ウラシル、メラミン、シアヌル酸、4,6-ジアミノ-2-ピリミジノン及び2-ウレイド-4-ピリミジノンから選択される化合物の残基のいずれか一つであることが、ドナー、アクセプターの配置、数の点で好ましい。
【0028】
また、光照射で可逆的に流動化及び非流動化することが、当該化合物を静電荷像現像用トナーに導入することで、光照射により定着可能、かつ色再現性の高いトナーを得ることができる点で好ましい。
【0029】
前記光照射の波長が、280~480nmの範囲内であることが、光を良く吸収するため、光溶融性が良好となり、定着性が良好となる点で好ましい。また、熱や圧力を加えなくとも、流動化させることができる点で好ましい。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、静電荷像現像用トナーの好適に用いられる。これにより、光照射により定着可能、かつ色再現性の高いトナーを得ることができる。
【0031】
前記静電荷像現像用トナーを構成するトナー母体粒子は、結着樹脂を含有することが好ましく、当該結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが、溶融すると低粘度になり、かつ高いシャープメルト性を有する点で好ましい。
【0032】
また、トナー母体粒子が着色剤を含有することが、着色剤の色再現性の高いトナーを得ることができる点で好ましい。さらに、トナー母体粒子が離型剤を含有することが、より定着性に優れたトナーを得ることができる点で好ましい。
【0033】
本発明の静電荷像現像用トナーを用いた画像形成方法は、前記静電荷像現像用トナーからなるトナー像を記録媒体上に形成する工程と、前記トナー像に光照射して、前記トナー像を軟化させる工程と、を備えることを特徴とする。
【0034】
前記光照射の波長は、280~480nmの範囲内であることが、定着性が良好となる点で好ましい。また、熱や圧力を加えなくとも、流動化させることができる点で好ましい。
また、前記トナー像を加圧する工程をさらに備えることが好ましく、当該加圧する工程では、前記トナー像をさらに加熱すること、より軟化させることができる点で好ましい。
【0035】
本発明の感光性接着剤は、前記一般式(1)で表される構造を含有することを特徴とする。これにより、光照射により定着可能な接着剤を得ることができる。
【0036】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0037】
[本発明の樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物(「アゾメチン部位を有する化合物」又は「アゾメチン誘導体」ともいう。)を含有することを特徴とする。
【0038】
【化3】
[一般式(1)中、Z及びZは、それぞれ独立して、N又はCHを表し、かつZ≠Zである。A及びAは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基又は置換若しくは非置換の芳香族複素環基を表す。L及びLは、連結基を表す。nは、0又は1を表す。Bは、相補的多重水素結合性基を表す。Gは、置換基、又は相互的多重水素結合性基を表し、Gが置換基の場合は、n=0を表す。]
【0039】
前記一般式(1)において、B及びGは相補的多重水素結合性基を表す。
前記相補的多重水素結合性基は、後述する相補的多重水素結合をする基であり、構造中に複数の水素結合アクセプター(Acceptor)とドナー(Donor)を有し、分子間で水素結合を形成する。具体的な構造としては、アデニン、グアニン、ピリミジン誘導体であるシトシン、チミン、ウラシル等の核酸塩基やその誘導体の残基、ウレア、チオウレア、メラミン、シアヌル酸、バルビツール酸、2,6-ジアシルアミノピリミジン、4,6-ジアミノ-2-ピリミジノン、2-アミノ-4,6-ピリミジンジノン、2,4,6-トリアミノピリミジン、フタルイミド、2,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、2-ウレイド-4-アミノ-1,3,5-トリアジン及び2-ウレイド-4-ピリミジノン等やその誘導体が挙げられるが、好ましくはアデニン、チミン、2,6-ジアセチルアミノピリジン、ウラシル、メラミン、シアヌル酸、4,6-ジアミノ-2-ピリミジノン及び2-ウレイド-4-ピリミジノンである。
【0040】
nが0の場合に示される置換基Gとしては、種々のものが挙げられ、特に制限はないが、代表的なものとして、アルキル、アリール、アニリノ、アシルアミノ、スルホンアミド、アルキルチオ、アリールチオ、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、アルコキシ、アリールオキシ、複素環オキシ、シロキシ、アミノ、アルキルアミノ、イミド、ウレイド、スルファモイルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、複素環チオ、チオウレイド、ヒドロキシ及びメルカプトの各基、並びに、スピロ化合物残基、有橋炭化水素化合物残基、スルホニル、スルフィニル、スルホニルオキシ、スルファモイル、ホスホリル、カルバモイル、アシル、アシルオキシ、オキシカルボニル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン置換アルコキシ、ハロゲン置換アリールオキシ、ピロリル、テトラゾリル等の各基及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0041】
上記アルキル基としては、炭素数1~32のものが好ましく、直鎖でも分岐でもよい。アリール基としては、フェニル基が好ましい。
上記アシルアミノ基としては、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基;スルホンアミド基としては、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基;アルキルチオ基、アリールチオ基におけるアルキル成分、アリール成分は上記のアルキル基、アリール基が挙げられる。
上記アルケニル基としては、炭素数2~32のもの、シクロアルキル基としては、炭素数3~12、特に5~7のものが好ましく、アルケニル基は直鎖でも分岐でもよい。シクロアルケニル基としては、炭素数3~12、特に5~7のものが好ましい。
【0042】
上記ウレイド基としては、アルキルウレイド基、アリールウレイド基等;スルファモイルアミノ基としては、アルキルスルファモイルアミノ基、アリールスルファモイルアミノ基等;複素環基としては、5~7員のものが好ましく、具体的には、2-フリル基、2-チェニル基、2-ピリミジニル基、2-ベンゾチアゾリル基等;複素環オキシ基としては、5~7員の複素環を有するものが好ましく、例えば、3,4,5,6-テトラヒドロピラニル-2-オキシ基、1-フェニルテトラゾール-5-オキシ基等;複素環チオ基としては、5~7員の複素環チオ基が好ましく、例えば、2-ピリジルチオ基、2-ベンゾチアゾリルチオ基、2,4-ジフェノキシ-1,3,5-トリアゾール-6-チオ基等;シロキシ基としては、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、ジメチルブチルシロキシ基等;イミド基としては、琥珀酸イミド基、3-ヘプタデシル琥拍酸イミド基、フタルイミド基、グルタルイミド基等;スピロ化合物残基としては、スピロ〔3.3〕ヘプタン-1-イル等;有橋炭化水素化合物残基としては、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-1-イル、トリシクロ〔3.3.l.3.7〕デカン-1-イル、7,7-ジメチル-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-1-イル等が挙げられる。
【0043】
上記スルホニル基としては、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ハロゲン置換アルキルスルホニル、ハロゲン置換アリールスルホニル等;スルフィニル基としては、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル等;スルホニルオキシ基としては、アルキルスルホニルオキシ、アリールスルホニルオキシ等;スルファモイル基としては、N,N-ジアルキルスルファモイル、N-N-ジアリールスルファモイル、N-アルキル-N-アリールスルファモイル等;ホスホリル基としては、アルコキシホスホリル、アリールオキシホスホリル、アルキルホスホリル、アリールホスホリル等;カルバモイル基としては、N,N-ジアルキルカルバモイル、N,N-ジアリールカルバモイル、N-アルキル-N-アリールカルバモイル等;アシル基としては、アルキルカルボニル、アリールカルボニル等;アシルオキシ基としては、アルキルカルボニルオキシ等;オキシカルボニル基としては、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル等;ハロゲン置換アルコキシ基としては、α-ハロゲン置換アルコキシ等;ハロゲン置換アリールオキシ基としては、テトラフルオロアリールオキシ、ペンタフルオロアリールオキシ等;ピロリル基としては1-ピロリル等;テトラゾリル基としては、1-テトラゾリル等の各基が挙げられる。
上記置換基の他に、トリフルオロメチル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノニルフルオロ-t-ブチル基や、テトラフルオロアリール基、ペンタフルオロアリール基なども好ましく用いられる。
【0044】
上記これらの基は、さらに長鎖炭化水素基やポリマー残基等の耐拡散性基などの置換基を含んでいてもよい。また、これらの置換基が、さらに一つ、又は複数の置換基で置換されても良い。
【0045】
前記一般式(1)において、A及びAは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基又は置換若しくは非置換の芳香族複素環基を表す。置換芳香族炭化水素基及び置換芳香族複素環基は、上述の置換基により置換されても良い。
【0046】
前記一般式(1)において、L及びLは、連結基を表す。
連結基とは、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン、1,2-エチレン、1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、シクロヘキサン-1,4-ジイルなど)、アルケニレン基(例えば、エテン-1,2-ジイル、ブタジエン-1,4-ジイルなど)、アルキニレン基(例えば、エチン-1,2-ジイル、ブタン-1,3-ジイン-1,4-ジイルなど)、少なくとも一つの芳香族基を含む化合物から誘導される連結基(例えば、置換若しくは無置換のベンゼン、縮合多環炭化水素、芳香族複素環、芳香族炭化水素環集合、芳香族複素環集合など)、ヘテロ原子連結基(酸素、硫黄、窒素、ケイ素、リン原子など)が挙げられるが、好ましくは、アルキレン基、アリーレン基で連結する基である。これら連結基はさらに上記置換基により置換されても良く、連結基を組み合わせて複合基を形成してもよい。
【0047】
前記一般式(1)で表される構造を有する化合物としては、例えば以下に示されるものが挙げられる。
【0048】
【化4】
【0049】
【化5】
【0050】
【化6】
【0051】
【化7】
【0052】
【化8】
【0053】
【化9】
【0054】
【化10】
【0055】
【化11】
【0056】
【化12】
【0057】
【化13】
【0058】
【化14】
【0059】
【化15】
【0060】
【化16】
【0061】
【化17】
【0062】
【化18】
【0063】
【化19】
【0064】
【化20】
【0065】
(合成法)
前記一般式(1)で表される構造を有する化合物の合成方法は、従来公知の合成方法を適用することができる。以下に、前記した例示化合物の合成方法の一例を示す。
【0066】
〔合成例1:例示化合物1の合成〕
<アゾメチン-2NOの合成>
冷却管、窒素導入管、温度計を備えた2000mlの4頭フラスコに、4-ニトロアニリン(東京化成社製)(80.0g、0.58mol)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)(81.7g、0.58mol)とエタノール1000mlを投入し、50℃で加熱撹拌した。反応液を吸引ろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄した。さらに、メタノール/エタノールの混合溶媒中で再結晶を行い、アゾメチン-2NOを128.6g(収率85%)得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0067】
<アゾメチン-2NHの合成>
Chemistry of Heterocyclic Compounds, 2004,40(6), 701を参考に合成した。
1000ml四頭フラスコに三方コック2個、温度計、滴下ロート及び玉栓を設置し、容器内を減圧後、窒素置換を行なった。この操作を3回行なった。窒素フローしながら、酢酸エチル400ml、アゾメチン-2NO(100.0g、0.38mol)及びアリルパラジウム(II)クロリドダイマー(東京化成社製)(2.8g、8mmol)を投入し、室温で30分撹拌した。その後アイスバスで液温を10℃以下に保ちながら、トリエチルシラン(東京化成社製)(53.4g、0.46mol)を滴下ロートへ投入後、30分かけて溶液中へ滴下した。滴下後アイスバスをオイルバスに交換し、65℃で17時間撹拌した。反応溶液をエバポレーターにて濃縮し、得られた固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、アゾメチン-2NHが50.1g(収率65%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0068】
以下J.Am.Chem.Soc.,2001,123(25),5947を参考に合成した。
【0069】
<アデニン-COOHの合成>
アデニンとβ-プロピオラクトンを用いChem.Lett.,1973,967と同様な手法で9-(2-カルボキシエチル)アデニンを合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0070】
<アデニンCF-COOPhNO(活性エステル)の合成>
5L四頭フラスコに、ピリジン2000ml、9-(2-カルボキシエチル)アデニン(40.0g、0.19mol)、4-ニトロフェノール(東京化成社製)(30.0g、0.22mol)、4-ニトロフェニルトリフルオロアセテート(東京化成社製)(200.0g、0.85mol)を添加し、50℃で2時間撹拌した。その後溶液が固化するまでロータリーエバポレータで濃縮し、得られた固形分をCHClで溶解した。この溶液にジエチルエーテルを加え、析出した固体をヌッチェで濾過した。この固体をCHCl3に再溶解し、激しく撹拌したCHClと同量のジエチルエーテル中にゆっくり滴下し、再沈精製を行った。この固体をヌッチェで濾過し、50℃の減圧オーブンにて乾燥することで、4-ニトロフェニル-3-(6-トリフルオロアセトアミドプリン-9-イル)プロピオネートを63.0g得た(収率77%)。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0071】
<チミン-COOHの合成>
チミンとβ-プロピオラクトンを用いChem.Lett.,1973,967と同様な手法で1-(2-カルボキシエチル)アデニンを合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0072】
<チミン-COOPhCl(活性エステル)の合成>
2L四頭フラスコに、DMF1000ml、トリエチルアミン400ml、ペンタクロロフェニルトリクロロアセテート(東京化成社製)(200g、0.49mol)を添加し、室温で撹拌することで完溶させた。この溶液中に1-(2-カルボキシエチル)チミン(50.0g、0.25mol)を添加し、室温で20h反応させた。その後溶液が固化するまでDMF,トリエチルアミン等を減圧留去し、得られた固体をフラスコから取出し、ヌッチェ上にて冷水で水洗した。この固体を50℃の減圧オーブンにて乾燥後、CHCl/MeOH=1/1(v/v)で再結晶することで、ペンタクロロフェニル3-(2、4-ジヒドロキシ-5-メチルピリミジン-1-イル)プロピオネートを40g得た(収率36%)。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0073】
<ハーフアミンの合成>
500mlナスフラスコに、ペンタクロロフェニル3-(2、4-ジヒドロキシ-5-メチルピリミジン-1-イル)プロピオネート(11.1g、0.02mol)、上述の<アゾメチン-2NHの合成>で合成したアゾメチン-2NH(50.0g、0.25mol)及びジエチルエーテル200mlを投入し、室温撹拌により溶解させた。その後室温で12時間反応させた後、ロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、固形分を得た。得られた固形分を水洗し、その後アセトンにて洗浄した。洗浄後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、モノアミンが2.2g(収率23%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0074】
<CFCO保護された例示化合物1の合成>
500mlナスフラスコに、4-ニトロフェニル-3-(6-トリフルオロアセトアミドプリン-9-イル)プロピオネート(9.4g、22.2mmol)、上述の<ハーフアミンの合成>で合成したハーフアゾメチン(2.0g、5.2mmol)及びジエチルエーテル400mlを投入し、室温撹拌により溶解させた。その後室温で3日間反応させた後、ロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、固形分を得た。得られた固形分を水洗し、その後ジエチルエーテルにて洗浄した。洗浄後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、CFCO保護された例示化合物1が2.5g(収率72%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0075】
<例示化合物1の合成(CFCOの脱保護)>
100mlナスフラスコに、炭酸カリウム(1.0g、7.5mmol)、水を10mlを投入し、室温撹拌により溶解させた。その後メタノール10mlを加えた溶液中に上述の<CFCO保護された例示化合物1の合成>で合成したCFCO保護された例示化合物1(2.5g、3.8mmol)を投入し、室温で12時間撹拌した。ロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。得られた固体をエタノールに再溶解させ、激しく撹拌した水中へゆっくり滴下することで、再沈精製した。この固形分を50℃の減圧オーブンにて乾燥することで、例示化合物1を1.9g得た(収率90%)。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0076】
〔合成例2:例示化合物3の合成〕
合成例1の5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を1-メチル-5-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボキシアルデヒド(Accel Pharmtec社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物3を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0077】
〔合成例3:例示化合物6の合成〕
合成例1の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を5-ニトロ-2-チオフェンアミン(Chemieliva Pharmaceutica社製)と4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物6を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0078】
〔合成例4:例示化合物8の合成〕
合成例1の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を2,5-ジメトキシー4-ニトロアニリン(東京化成社製)と4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物8を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0079】
〔合成例5:例示化合物11の合成〕
合成例1の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を1-メチル-5-ニトロ-1H-ピロール-2-アミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)と3-フルオロ-4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物11を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0080】
〔合成例6:例示化合物14の合成〕
合成例1の5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を4-メトキシ-5-ニトロ-2-チオフェンカルボキシアルデヒド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物14を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0081】
〔合成例7:例示化合物16の合成〕
合成例1の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を3-アセチルー2-アミノ-5-ニトロチオフェン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)と4-メチル-5-ニトロ-2-フランカルボキシアルデヒド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物16を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0082】
〔合成例8:例示化合物18の合成〕
合成例1の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を5-ニトロ-2-チオフェンアミン(Chemieliva Pharmaceutica社製)と4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)に代えて合成したアゾメチン-2NH(100.0g、0.5mol)をトルエン500mlに溶解し、トリエチルアミン(112.7g、1.1mol)を加えた後に、氷浴にて溶液温度を10℃以下に保った。この溶液中へ5-アミノペンタノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)(137.3g、1.0mol)を30分かけて滴下後、50℃で5時間反応させた。メタノールを添加しクエンチした後、ロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。得られた固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、アゾメチン-2NH(2)を86.1g得た(収率45%)。構造は、H-NMR、IRにて確認した。その後のプロセスは、合成例1と同様な方法で例示化合物18を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0083】
〔合成例9:例示化合物20の合成〕
合成例1の4-ニトロアニリン(東京化成社製)を1-メチル-5-ニトロ-1H-ピロール-2-アミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えて合成したアゾメチン-2NH(100.0g、0.46mol)をトルエン200mlに溶解し、トリエチルアミン(5.6g、0.06mol)を加えた後に、氷浴にて溶液温度を10℃以下に保った。この溶液中へ5-アミノペンタノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)(6.2g、0.05mol)を30分かけて滴下後、50℃で5時間反応させた。メタノールを添加しクエンチした後、ロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。得られた固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、アゾメチン-2NH(3)を4.3g得た(収率31%)。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
アゾメチン-2NH(3)(4.0g、13.2mmol)をトルエン30mlに溶解し、トリエチルアミン(1.8g、17.4mmol)を加えた後に、氷浴にて溶液温度を10℃以下に保った。この溶液中へ3-アミノ-5-メチルベンゾイルクロリド(Chemieliva Pharmaceutical社製)(2.5g、14.5mmol)を30分かけて滴下後、50℃で5時間反応させた。メタノールを添加しクエンチした後、ロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。得られた固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、アゾメチン-2NH(4)を4.5g得た(収率82%)。構造は、H-NMR、IRにて確認した。その後のプロセスは、合成例1と同様な方法で例示化合物20を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0084】
〔合成例10:例示化合物41の合成〕
合成例1の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を3-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-チオフェンカルボキシアルデヒド(Aldrich社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物41を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0085】
〔合成例11:例示化合物25の合成〕
合成例1の<ハーフアミンの合成>で、チミン部位が六員環アミンに結合したハーフアミンを使用した以外は、同様な方法で例示化合物25を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0086】
〔合成例12:例示化合物27の合成〕
合成例1の5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を1-メチル-5-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボキシアルデヒド(Accel Pharmtec社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物27を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0087】
〔合成例13:例示化合物22の合成〕
合成例1の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)と5-ニトロ-2-チオフェンアミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物22を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0088】
〔合成例14:例示化合物24の合成〕
合成例1の5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物24を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0089】
〔合成例15:例示化合物29の合成〕
合成例1の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を3-フルオロ-4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フランアミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物29を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0090】
〔合成例16:例示化合物35の合成〕
合成例1の5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を5-ニトロ-1-フェニルメチル-1H-ピロール-2-カルボキシアルデヒド(Chemieliva Pharmaceutical社製に代えた以外は、同様な方法で例示化合物35を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0091】
〔合成例17:例示化合物36の合成〕
合成例1の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を4-メチル-5-ニトロ-2-フランカルボキシアルデヒド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)と5-ニトロ-2-フランアミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物36を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0092】
〔合成例18:例示化合物37の合成〕
合成例1の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フランアミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代え、アゾメチン-2NH2として、フラン環のアミンに5-アミノペンテノイル基を導入したハーフアミンを用いた以外は、同様な方法で例示化合物37を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0093】
〔合成例19:例示化合物39の合成〕
合成例8の5-ニトロ-2-チオフェンアミン(Chemieliva Pharmaceutica社製)と4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)を4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)と5-ニトロ-2-チオフェンアミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代え、5-アミノペンタノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC5社製)を4-アミノベンゾイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物39を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0094】
〔合成例20:例示化合物44の合成〕
合成例1の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を3-ニトロアニリン(東京化成社製)と3-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物44を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0095】
〔合成例21:例示化合物52の合成〕
<CFCO保護された例示化合物52の合成>
1000mlナスフラスコに、合成例1の<アデニンCF-COOPhNO(活性エステル)の合成>で合成した4-ニトロフェニル-3-(6-トリフルオロアセトアミドプリン-9-イル)プロピオネート(23.2g、54.7mmol)、イミダゾール(4.2g、62.1mmol)、合成例1の<アゾメチン-2NHの合成>で合成したアゾメチン-2NH(5.0g、24.8mmol)及びDMF500mlを投入し室温撹拌により溶解させた。その後室温で3日間反応させた後、ロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、固形分を得た。得られた固形分を水洗し、その後ジエチルエーテルにて洗浄した。洗浄後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、CFCO保護された例示化合物52が8.1g(収率42%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0096】
<例示化合物52の合成(CFCOの脱保護)>
200mlナスフラスコに、炭酸カリウム(2.0g、20.7mmol)、水を30mlを投入し、室温撹拌により溶解させた。その後メタノール30mlを加えた溶液中に上述の<CFCO保護された例示化合物52の合成>で合成したCFCO保護された例示化合物52(8.0g、10.4mmol)を投入し、室温で12時間撹拌した。ロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。得られた固体をエタノールに再溶解させ、激しく撹拌した水中へゆっくり滴下することで、再沈精製した。この固形分を50℃の減圧オーブンにて乾燥することで、例示化合物52を5.5g得た(収率91%)。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0097】
〔合成例22:例示化合物48の合成〕
<例示化合物48の合成>
1000mlナスフラスコに、<チミン-COOPhCl(活性エステル)の合成>の<チミン-COOPhCl(活性エステル)の合成>で合成したペンタクロロフェニル3-(2、4-ジヒドロキシ-5-メチルピリミジン-1-イル)プロピオネート(22.2g、54.7mmol)、合成例1の<アゾメチン-2NHの合成>で合成したアゾメチン-2NH(5.0g、24.8mmol)及びDMF300mlを投入し、室温撹拌により溶解させた。その後室温で12時間反応させた後、ロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、固形分を得た。得られた固形分を水洗し、その後アセトンにて洗浄した。洗浄後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、CFCO保護された例示化合物48が14.2g(収率51%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0098】
〔合成例23:例示化合物55の合成〕
合成例21の5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物55を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0099】
〔合成例24:例示化合物51の合成〕
合成例22の5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物51を合成した。構造は、1H-NMR、IRにて確認した。
【0100】
〔合成例25:例示化合物57の合成〕
合成例21の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を3-フルオロ-4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-チオフェンカルボキシアルデヒド(Aldrich社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物57を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0101】
〔合成例26:例示化合物58の合成〕
合成例22の4-ニトロアニリン(東京化成社製)を5-ニトロ-2-フランアミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物58を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0102】
〔合成例27:例示化合物62の合成〕
合成例1の5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を1-メチル-5-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボキシアルデヒド(Accel Pharmtec社製)に代えアゾメチン-2NHを合成した。アゾメチン-2NHを用い、合成例8の5-アミノペンタノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)を3-アミノ-2-メチルプロパノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えて、アゾメチン-2NH(2)を合成した。その後合成例21と同様な方法で例示化合物62を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0103】
〔合成例28:例示化合物61の合成〕
合成例1の5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を5-ニトロ-2-チオフェンカルボキシアルデヒド(Aldrich社製)アゾメチン-2NHを合成した。アゾメチン-2NHを用い、合成例8の5-アミノペンタノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)を3-アミノ-プロパノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えて、アゾメチン-2NH2(2)を合成した。その後合成例22と同様な方法で例示化合物61を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0104】
〔合成例29:例示化合物70の合成〕
合成例21の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)と1-メチル-5-ニトロ-1H-ピロール-2-アミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物70を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0105】
〔合成例30:例示化合物66の合成〕
合成例22の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)と1-メチル-5-ニトロ-1H-ピロール-2-アミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物66を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0106】
〔合成例31:例示化合物69の合成〕
合成例21の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)と5-ニトロ-2-チオフェンアミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物69を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0107】
〔合成例32:例示化合物65の合成〕
合成例22の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)と5-ニトロ-2-チオフェンアミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物65を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0108】
〔合成例33:例示化合物75の合成〕
合成例21の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を1-メチル-5-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボキシアルデヒド(Accel Pharmtec社製)と5-ニトロ-2-フランアミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物75を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0109】
〔合成例34:例示化合物72の合成〕
合成例22の4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)と3-メチル-4-ニトロアニリン(東京化成社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物72を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0110】
〔合成例35:例示化合物79の合成〕
合成例1の5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を3-フルオロ-4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)に代えアゾメチン-2NHを合成した。アゾメチン-2NHを用い、合成例8の5-アミノペンタノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)を4-アミノベンゾイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えて、アゾメチン-2NH(2)を合成した。その後合成例21と同様な方法で例示化合物79を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0111】
〔合成例36:例示化合物77の合成〕
合成例1の5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を5-ニトロ-2-チオフェンカルボキシアルデヒド(Aldrich社製)アゾメチン-2NHを合成した。アゾメチン-2NHを用い、合成例8と同様な方法でアゾメチン-2NH(2)を合成した。その後合成例22と同様な方法で例示化合物77を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0112】
〔合成例37:例示化合物80の合成〕
<2,6-ジアセトアミドピリジン-NOの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた100ml4頭フラスコにCHCl50ml、2,6-ジアセトアミド-4-ヒドロキシメチルピリジン(Apichemical社製)(5.0g、22.4mmol)、トリエチルアミン(東京化成社製)(4.1g、40.3mmol)を投入し、室温で撹拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、4-ニトロベンゾイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)(5.0g、26.9mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間撹拌した。溶液をロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、2,6-ジアセトアミドピリジン-NOが7.0g(収率84%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0113】
<2,6-ジアセトアミドピリジン-NH2の合成>
200mlの三角フラスコに、2,6-ジアセトアミドピリジン-NO(7.0g、18.8mmol)とパラジウム炭素(0.09g、188mmol)を入れ、エタノールとテトラヒドロフランをそれぞれ30ml入れ、水素を封入しながら撹拌した。反応液からパラジウム炭素を除去し、得られた溶液を濃縮した後、エタノールで再結晶を行い、2,6-ジアセトアミドピリジン-NHを5.9g(収率84%)得た。
【0114】
<5-ホルミル-2-フランカルボニルクロリドの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた100ml4頭フラスコにCHCl50ml、5-ホルミル-2-フランカルボン酸(Sigma-Aldrich社製)(5.5g、39.3mmol)及びDMF数滴を投入し、室温で撹拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、オキザリルクロリド(東京化成社製)(5.5g、43.2mmol)を30分かけて滴下し、その後アイスバスを取り除き液温を室温とし、5時間撹拌した。溶液をロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、再度CHClを50ml投入後、ロータリーエバポレータ―で減圧濃縮した。この操作を3回繰り返した。その結果、5-ホルミル-2-フランカルボン酸が6.2g(収率99%)得られた。
【0115】
<ウラシル-CHOの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた100ml4頭フラスコにCHCl50ml、1-N-メチル-6-(ヒドロキシエチル)ウラシル(Chemieliva Pharmaceutical社製)(5.0g、32.0mmol)、トリエチルアミン(東京化成社製)(4.9g、48.0mmol)を投入し、室温で撹拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、上記で合成した5-ホルミル-2-フランカルボニルクロリド(6.1g、38.4mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間撹拌した。溶液をロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、ウラシル-CHOが8.7g(収率81%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0116】
<例示化合物80の合成>
冷却管、窒素導入管、温度計を備えた50mlの4頭フラスコに上記で合成したジアミノピリジン-NH(5.0g、14.6mmol)とウラシル-CHO(4.1g、14.6mmol)及びエタノール30mlを投入し、50℃で加熱撹拌した。反応液を吸引ろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄した。さらに、塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、例示化合物80が5.7g(収率65%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0117】
〔合成例38:例示化合物85の合成〕
合成例37の5-ホルミル-2-フランカルボン酸(Sigma-Aldrich社製)を5-ホルミル-2-チオフェンカルボン酸(Sigma-Aldrich社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物85を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0118】
〔合成例39:例示化合物90の合成〕
合成例37の4-ニトロベンゾイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)と5-ホルミル-2-フランカルボン酸(Sigma-Aldrich社製)を3-ホルミル-5-メチルベンゾイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)と1-メチル-5-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボン酸(Sigma-Aldrich社製)に代えた以外は、同様な方法で例示化合物90を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0119】
〔合成例40:例示化合物95の合成〕
<2,6-ジアセトアミドピリジン-NHの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた100ml4頭フラスコにCHCl50ml、2,6-ジアセトアミド-4-ヒドロキシメチルピリジン(Apichemical社製)(6.0g、26.9mmol)、トリエチルアミン(東京化成社製)(4.9g、48.4mmol)を投入し、室温で撹拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、4-アミノプロパノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)(3.5g、32.3mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間撹拌した。溶液をロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、2,6-ジアセトアミドピリジン-NHが7.0g(収率88%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0120】
<2,6-ジアセトアミドピリジン-NOの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた100ml4頭フラスコにCHCl50ml、上記で合成した2,6-ジアセトアミドピリジン-NH(7.0g、23.8mmol)、トリエチルアミン(東京化成社製)(4.3g、42.8mmol)を投入し、室温で撹拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、3-ニトロベンゾイルクロリド(東京化成社製)(5.3g、28.5mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間撹拌した。溶液をロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、2,6-ジアセトアミドピリジン-NOが8.4g(収率80%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0121】
<2,6-ジアセトアミドピリジン-NH(2)の合成>
200mlの三角フラスコに、2,6-ジアセトアミドピリジン-NO(7.0g、15.8mmol)とパラジウム炭素(0.07g、158mmol)を入れ、エタノールとテトラヒドロフランをそれぞれ30ml入れ、水素を封入しながら撹拌した。反応液からパラジウム炭素を除去し、得られた溶液を濃縮した後、エタノールで再結晶を行い、2,6-ジアセトアミドピリジン-NH(2)を5.4g(収率82%)得た。
【0122】
<ウラシル-NHの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた100ml4頭フラスコにCHCl50ml、1-N-メチル-6-(ヒドロキシエチル)ウラシル(Chemieliva Pharmaceutical社製)(5.0g、32.0mmol)(6.0g、26.9mmol)、トリエチルアミン(東京化成社製)(5.8g、57.6mmol)を投入し、室温で撹拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、4-アミノプロパノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)(4.1g、38.4mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間撹拌した。溶液をロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、ウラシル-NHが5.9g(収率81%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0123】
<ウラシル-CHOの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた100ml4頭フラスコにCHCl50ml、上記で合成したウラシル-NH(5.0g、22.0mmol)、トリエチルアミン(東京化成社製)(3.3g、33.0mmol)を投入し、室温で撹拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、4-ホルミル-2、5-ジメトキシベンゾイルクロリド(6.0g、26.4mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間撹拌した。溶液をロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、ウラシル-CHOが8.4g(収率76%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0124】
<例示化合物95の合成>
冷却管、窒素導入管、温度計を備えた50mlの4頭フラスコに上記で合成したジアミノピリジン-NH(2)(5.0g、12.1mmol)とウラシル-CHO(5.1g、12.1mmol)及びエタノール30mlを投入し、50℃で加熱撹拌した。反応液を吸引ろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄した。さらに、塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、例示化合物95が6.1g(収率64%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0125】
〔合成例41:例示化合物96の合成〕
合成例37で用いた手法を参考に例示化合物96を合成した。
<2,6-ジアセトアミドピリジン-CHOの合成>
合成例37の<ウラシル-CHOの合成>の1-N-メチル-6-(ヒドロキシエチル)ウラシル(Chemieliva Pharmaceutical社製)を2,6-ジアセトアミド-4-ヒドロキシメチルピリジン(Apichemical社製)に代えた以外は同様な方法で、2,6-ジアセトアミドピリジン-CHOを合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0126】
<例示化合物96の合成>
合成例41の<2,6-ジアセトアミドピリジン-CHOの合成>で合成した2,6-ジアセトアミドピリジン-CHOと合成例37の<2,6-ジアセトアミドピリジン-NH2の合成>で合成した2,6-ジアセトアミドピリジン-NH2を用い、合成例37の<例示化合物80の合成>と同様の方法で例示化合物96を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0127】
〔合成例42:例示化合物98の合成〕
合成例41の4-ニトロベンゾイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)と5-ホルミル-2-フランカルボン酸(Sigma-Aldrich社製)を4-ホルミルベンゾイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)と5-アミノ-1-メチル-1H-ピロールカルボン酸(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、合成例41で用いた手法を参考に例示化合物98を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0128】
〔合成例43:例示化合物99の合成〕
合成例41の5-ホルミル-2-フランカルボン酸(Sigma-Aldrich社製)を3-ホルミルベンゾイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)に代えた以外は、合成例41で用いた手法を参考に例示化合物99を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0129】
〔合成例44:例示化合物101の合成〕
合成例41の4-ニトロベンゾイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)と5-ホルミル-2-フランカルボン酸(Sigma-Aldrich社製)を4-ホルミルベンゾイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)、5-ニトロ-2-チオフェンアミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代え、2,6-ジアセトアミド-4-ヒドロキシメチルピリジン(Apichemical社製)と4-アミノプロパノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)との反応は、合成例40の<ウラシル-NHの合成>と同様な手法で合成した。また、2,6-ジアセトアミド-4-ヒドロキシメチルピリジン(Apichemical社製)と4-アミノプロパノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)から得られた化合物と3-ホルミベンゾイルクロリドとの反応は、合成例40の<ウラシル-CHOの合成>と同様な手法で合成し、その他については、合成例41の手法を用い、例示化合物101を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0130】
〔合成例45:例示化合物107の合成〕
合成例41の5-ホルミル-2-フランカルボン酸(Sigma-Aldrich社製)を4-ホルミルベンゾイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)に代え、さらに2,6-ジアセトアミド-4-ヒドロキシメチルピリジン(Apichemical社製)を1-N-メチル-6-(ヒドロキシエチル)ウラシル(Chemieliva Pharmaceutical社製)に代えた以外は、合成例41の手法を用いて例示化合物107を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0131】
〔合成例46:例示化合物108の合成〕
合成例41の2,6-ジアセトアミド-4-ヒドロキシメチルピリジン(Apichemical社製)と1-N-メチル-6-(ヒドロキシエチル)ウラシル(Chemieliva Pharmaceutical社製)を6-(2-アミノエチル)-1-メチル-2,4-ピリミジンジオン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、合成例41の手法を用いて例示化合物108を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0132】
〔合成例47:例示化合物109の合成〕
合成例41の4-ニトロベンゾイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)と5-ホルミル-2-フランカルボン酸(Sigma-Aldrich社製)を4-ホルミルベンゾイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)と5-ニトロ-2-チオフェンアミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代え、さらに2,6-ジアセトアミド-4-ヒドロキシメチルピリジン(Apichemical社製)を1-N-メチル-6-(ヒドロキシエチル)ウラシル(Chemieliva Pharmaceutical社製)に代えた以外は、合成例41の手法を用いて例示化合物109を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0133】
〔合成例48:例示化合物111の合成〕
合成例41の4-ニトロベンゾイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)と5-ホルミル-2-フランカルボン酸(Sigma-Aldrich社製)を3-ニトロベンゾイルクロリド(東京化成社製)、2-シアノ-4-ホルミル安息香酸(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代え、1-N-メチル-6-(ヒドロキシエチル)ウラシル(Chemieliva Pharmaceutical社製)と4-アミノプロパノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)との反応は、合成例40の<2,6-ジアセトアミドピリジン-NH2の合成>と同様な手法で合成した。また、1-N-メチル-6-(ヒドロキシエチル)ウラシル(Chemieliva Pharmaceutical社製)と4-アミノプロパノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)から得られた化合物と3-ニトロベンゾイルクロリド(東京化成社製)との反応は、合成例40の<2,6-ジアセトアミドピリジン-NOの合成>同様な手法で合成し、その他については、合成例41の手法を用い、例示化合物111を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0134】
〔合成例49:例示化合物116の合成〕
<アゾメチン-NOの合成>
冷却管、窒素導入管、温度計を備えた100mlの4頭フラスコに5-ニトロ-2-フランアミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)(6.0g、46.8mmol)と2,4,6-トリメチルベンズアルデヒド(東京化成社製)(6.9g、46.8mmol)及びエタノール50mlを投入し、50℃で加熱撹拌した。反応液を吸引ろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄した。さらに、塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、アゾメチン-NOが8.4g(収率69%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0135】
<アゾメチン-NHの合成>
200mlの三角フラスコに、上記で合成したアゾメチン-NO(8.0g、31.0mmol)とパラジウム炭素(0.14g、310mmol)を入れ、エタノールとテトラヒドロフランをそれぞれ30ml入れ、水素を封入しながら撹拌した。反応液からパラジウム炭素を除去し、得られた溶液を濃縮した後、エタノールで再結晶を行い、アゾメチン-NHを6.2g(収率87%)得た。
【0136】
<アゾメチン-NH(2)の合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた100ml4頭フラスコにCHCl50ml、上記で合成したアゾメチン-NH(6.0g、26.9mmol)、トリエチルアミン(東京化成社製)(4.8g、47.3mmol)を投入し、室温で撹拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、3-アミノプロパノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)(3.4g、31.5mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間撹拌した。溶液をロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、アゾメチン-NH(2)が6.9g(収率88%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0137】
<例示化合物116の合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた100ml4頭フラスコにDMF100ml、上記で合成したアゾメチン-NH(2)(6.0g、20.0mmol)、炭酸水素ナトリウム(関東化学社製)(3.0g、36.1mmol)を投入し、室温で撹拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、ジアミノトリアジンクロリド(Sigma-Aldrich社製)(3.5g、24.1mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間撹拌した。溶液を水あけ後、濾過し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を乾燥後、塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、例示化合物116が6.0g(収率73%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0138】
〔合成例50:例示化合物113の合成〕
合成例49の5-ニトロ-2-フランアミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)と2,4,6-トリメチルベンズアルデヒド(東京化成社製)を4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ブチル-2-チオフェンカルボキシアルデヒド(Sigma-Aldrich社製)に代えた以外は、合成例41の手法を用いて例示化合物113を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0139】
〔合成例51:例示化合物115の合成〕
合成例49の5-ニトロ-2-フランアミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)と2,4,6-トリメチルベンズアルデヒド(東京化成社製)を4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)と4-ドデシルアニリン(東京化成社製)に代えた以外は、合成例41の手法を用いて例示化合物115を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0140】
〔合成例52:例示化合物123の合成〕
<アゾメチン-NOの合成>
冷却管、窒素導入管、温度計を備えた100mlの4頭フラスコに上記で合成したアゾメチン-NO(8.0g、56.7mmol)と4-デシルアニリン(東京化成社製)(13.2g、56.7mmol)及びエタノール100mlを投入し、50℃で加熱撹拌した。反応液を吸引ろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄した。さらに、塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、アゾメチン-NOが14.6g(収率72%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0141】
<アゾメチン-NHの合成>
200mlの三角フラスコに、上記で合成したアゾメチン-NO(14.0g、39.3mmol)とパラジウム炭素(0.18g、393mmol)を入れ、エタノールとテトラヒドロフランをそれぞれ50ml入れ、水素を封入しながら撹拌した。反応液からパラジウム炭素を除去し、得られた溶液を濃縮した後、エタノールで再結晶を行い、アゾメチン-NHを11.0g(収率87%)得た。
【0142】
<アゾメチン-NO(2)の合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた100ml4頭フラスコにCHCl50ml、上記で合成したアゾメチン-NH(11.0g、33.7mmol)、トリエチルアミン(東京化成社製)(6.1g、60.6mmol)を投入し、室温で撹拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、4-ニトロベンゾイルクロリド(東京化成社製)(7.5g、40.4mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間撹拌した。溶液をロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、アゾメチン-NO(2)が13.1g(収率82%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0143】
<アゾメチン-NH(2)の合成>
200mlの三角フラスコに、上記で合成したアゾメチン-NO(13.0g、27.3mmol)とパラジウム炭素(0.13g、273mmol)を入れ、エタノールとテトラヒドロフランをそれぞれ30ml入れ、水素を封入しながら撹拌した。反応液からパラジウム炭素を除去し、得られた溶液を濃縮した後、エタノールで再結晶を行い、アゾメチン-NH(2)を10.5g(収率87%)得た。
【0144】
<例示化合物123の合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた300ml4頭フラスコにCHCl100ml、上記で合成したアゾメチン-NH(2)(10.0g、22.4mmol)、トリエチルアミン(東京化成社製)(4.1g、40.4mmol)を投入し、室温で撹拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、N-クロロカルボニルイソシアネート(Aurora Fine Chemicals LLC社製)(2.8g、26.9mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間撹拌した。溶液を水あけ後、濾過し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を乾燥後、塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、例示化合物123が7.3g(収率80%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0145】
〔合成例53:例示化合物125の合成〕
合成例52の4-デシルアニリン(東京化成社製)と4-ニトロベンゾイルクロリド(東京化成社製)を1-メチル-5-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボキシアルデヒド(Accel Pharmtec社製)と4-ドデシルアニリン(東京化成社製)に代えた以外は、合成例41の手法を用いて例示化合物125を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0146】
〔合成例54:例示化合物122の合成〕
合成例52の4-ニトロベンゾイルクロリド(東京化成社製)を4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成社製)に代えた以外は、合成例41の手法を用いて例示化合物122を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0147】
〔合成例55:例示化合物131の合成〕
<アゾメチン-COOHの合成>
冷却管、窒素導入管、温度計を備えた200mlの4頭フラスコに5-アミノ-2-チオフェンカルボン酸(Aurora Fine Chemicals LLC社製)(15.0g、104.8mmol)と4-イソブチルベンズアルデヒド(東京化成社製)(17.0g、104.8mmol)及びエタノール100mlを投入し、50℃で加熱撹拌した。反応液を吸引ろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄した。さらに、塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、アゾメチン-COOHが21.7g(収率72%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0148】
<アゾメチン-COClの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた100ml4頭フラスコにCHCl50ml、上記で合成したアゾメチン-COOH(20.0g、69.6mmol)及びDMF数滴を投入し、室温で撹拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、オキザリルクロリド(東京化成社製)(9.2g、76.6mmol)を30分かけて滴下し、その後アイスバスを取り除き液温を室温とし、5時間撹拌した。溶液をロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、再度CHClを50ml投入後、ロータリーエバポレータ―で減圧濃縮した。この操作を3回繰り返した。その結果、アゾメチン-COClが21.1g(収率99%)得られた。
【0149】
<ジカルボニトリルの合成>
200mlの三角フラスコに、マロニトリル(東京化成社製)(15.0g、0.23mol)、4-アセトキシベンズアルデヒド(Sigma-Aldrich社製)(41.0g、0.25mol)、パラジウム炭素(1.1g、2.27mol)及び酢酸30mlを入れ、さらに酢酸10ml中にピぺリジン0.8mlを溶解した溶液を加えた。この溶液を水素を封入しながら18時間撹拌した。反応液を濾過することでパラジウム炭素を除去し、得られた溶液を濃縮した後、エタノールで再結晶を行い、ジカルボニトリルを34.0g(収率70%)得た。
【0150】
<ジアミノピリミジン-OAcの合成>
500ml四頭フラスコに三方コック2個、温度計、滴下ロート及び玉栓を設置し、容器内を減圧後、窒素置換を行なった。この操作を3回行なった。窒素フローしながら、上記で合成したジカルボニトリル(30.0g、0.14mol)、ナトリウムエトキシド(9.5g、0.14mol)、チオウレア(10.7g、0.14mol)及び脱水エタノール(関東化学社製)150mlを投入し、80℃で5時間撹拌した。溶液を室温まで冷却した後、撹拌しながら、水125mlを加え、塩酸で溶液を中性付近まで中和した。濾過により得られた固形分を水375mlに懸濁させ、そこへクロロ酢酸(東京化成社製)(33.1g、0.35mol)を加え、100℃で3時間撹拌した。溶液を室温まで冷却した後、撹拌しながら、濃硫酸40mlを注意深く加えた。その後再度100℃で3時間撹拌した。溶液を室温まで冷却した後、固形分を濾過した。得られた固形分を500ml四頭フラスコに入れた後、飽和NaHCO水溶液を溶液が中性になるまで加え、溶液を70℃で10時間撹拌した。溶液を濾過することでジアミノピリミジン-OAcを28.0g(収率73%)得た。
【0151】
<ジアミノピリミジン-OHの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた300ml4頭フラスコに、上記で合成したジアミノピリミジン-OAc(25.0g、91.1mmol)、THF100mlを加えた後、6N塩酸(関東化学社製)(45.5g、45.6mmol)を投入し、70℃で3時間加熱還流した。水酸化ナトリウム水溶液で溶液を中性付近まで中和し、分液ロートにて有機層を分離した。有機層をMgSOで乾燥後、濾過した有機層をロータリーエバポレータ―にて濃縮することで、ジアミノピリミジン-OHを20.3g(収率96%)得た。
【0152】
<ジアミノピリミジン-NHの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた200ml4頭フラスコにCHCl100ml、上記で合成したジアミノピリミジン-OH(20.0g、86.1mmol)、トリエチルアミン(東京化成社製)(12.5g、124.0mmol)を投入し、室温で撹拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、5-アミノペンタノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)(14.0g、103.3mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間撹拌した。溶液を水あけ後、濾過し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を乾燥後、塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、ジアミノピリミジン-NHを10.3g(収率36%)得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0153】
<例示化合物131の合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた200ml4頭フラスコにCHCl100ml、上記で合成したジアミノピリミジン-NH(10.0g、30.2mmol)、トリエチルアミン(東京化成社製)(7.3g、72.4mmol)を投入し、室温で撹拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、上記で合成したアゾメチン-COCl(18.5g、60.4mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間撹拌した。溶液を水あけ後、濾過し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を乾燥後、塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、例示化合物131を6.0g(収率38%)得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0154】
〔合成例56:例示化合物126の合成〕
合成例55の5-アミノ-2-チオフェンカルボン酸(Aurora Fine Chemicals LLC社製)と4-イソブチルベンズアルデヒド(東京化成社製)を4-アミノ安息香酸(東京化成社製)と5-ペンチル-2-フランカルボキシアルデヒド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は合成例55の手法を用い、例示化合物126を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0155】
〔合成例57:例示化合物132の合成〕
合成例55の5-アミノ-2-チオフェンカルボン酸(Aurora Fine Chemicals LLC社製)と4-イソブチルベンズアルデヒド(東京化成社製)及び5-アミノペンタノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)を5-ホルミル-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボン酸(Sigma-Aldrich社製)と4-ヘキシルアニリン(東京化成社製)及び3-アミノプロぺノイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)に代えた以外は合成例55の手法を用い、例示化合物132を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0156】
〔合成例58:例示化合物129の合成〕
合成例55の5-アミノ-2-チオフェンカルボン酸(Aurora Fine Chemicals LLC社製)と4-イソブチルベンズアルデヒド(東京化成社製)及び5-アミノペンタノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)を4-ホルミル安息香酸(東京化成社製)と4-ヘキシルアニリン(東京化成社製)及び3-アミノブタノイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)に代えた以外は合成例55の手法を用い、例示化合物129を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0157】
〔合成例59:例示化合物133の合成〕
<アゾメチン-2NOの合成>
合成例1と同様、4-ニトロアニリン(東京化成社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)より、アゾメチン-2NOを合成した。
【0158】
<アゾメチン-2NHの合成>
合成例1と同様な方法により、アゾメチン-2NHを合成した。
【0159】
<UPy-COOHの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた1000ml4頭フラスコにN-(1、6-ジヒドロ-4-メチル-6-オキソ-2-ピリミジニル)-1H-イミダゾール-1-カルボキシアミド(Chemieliva Pharmaceutical社製)(50.0g、0.23mol)、DMF500mlを投入した。続いて7-アミノヘプタン酸(Sigma-Aldrich社製)(49.7g、0.34mol)を徐々に加えた後、室温で12時間撹拌した。その後溶液を水へ投入し、固形分を濾過により濾取し、50℃減圧かで乾燥させた。この固形分を、塩化メチレン/メタノール系溶媒により、カラムクロマトグラフィー精製した。その結果、UPy-COOHを56.8g(収率84%)得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0160】
<UPy-COOPhCl(活性エステル)の合成>
2L四頭フラスコに、DMF1000ml、トリエチルアミン400ml、ペンタクロロフェニルトリクロロアセテート(138.9g、0.34mol)を添加し、室温で撹拌することで完溶させた。この溶液中にUPy-COOH(50.0g、0.17mol)を添加し、室温で20h反応させた。その後溶液が固化するまでDMF,トリエチルアミン等を減圧留去し、得られた固体をフラスコから取出し、ヌッチェ上にて冷水で水洗した。この固体を50℃の減圧オーブンにて乾燥後、CHCl/MeOHで再結晶することで、UPy-COOPhClを34.9g得た(収率38%)。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0161】
<例示化合物133の合成>
500mlナスフラスコに、上記で合成したUPy-COOPhCl(29.8g、54.7mmol)、上記で合成したアゾメチン-2NH(5.0g、24.8mmol)及びCHCl200mlを投入し、室温撹拌により溶解させた。その後室温で12時間反応させた後、ロータリーエバポレータ―で減圧濃縮し、固形分を得た。得られた固形分を水洗し、その後アセトンにて洗浄した。洗浄後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、例示化合物133が12.6g(収率67%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0162】
〔合成例60:例示化合物134の合成〕
合成例59のアゾメチン-2NH、7-アミノヘプタン酸(Sigma-Aldrich社製)を合成例28で用いたアゾメチン-2NH、7-アミノ-4-メチルヘプタン酸(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、合成例59の手法を用い例示化合物134を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0163】
〔合成例61:例示化合物135の合成〕
合成例59のアゾメチン-2NH、7-アミノヘプタン酸(Sigma-Aldrich社製)を合成例2で用いたアゾメチン-2NH、7-アミノ-5-エチルヘプタン酸(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、合成例59の手法を用い例示化合物135を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0164】
〔合成例62:例示化合物136の合成〕
合成例59のアゾメチン-2NH、7-アミノヘプタン酸(Sigma-Aldrich社製)を合成例14で用いたアゾメチン-2NH、7-アミノウンデカン酸(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、合成例59の手法を用い例示化合物136を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
【0165】
上記例示した以外の化合物の合成について、特に限定は内外、上記で示した方法を参照して合成することができる。
【0166】
本発明の樹脂組成物は、相補的多重水素結合からなる超分子ポリマー形成のため、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物の種類によって、当該化合物を単独又は2種以上用いることが好ましい。
【0167】
<相補的多重水素結合>
本発明において、相補的多重水素結合とは、下記に示すように、核酸塩基間で水素結合を形成するグアニン/シトシン、アデニン/チミンのペアが知られている。
【0168】
【化21】
【0169】
グアニンは、N-H、N-Hの水素がドナー、カルボニル酸素共有電子対がアクセプター、その対となるシトシンは、N-Hの水素がドナー、窒素原子の共有電子対、カルボニル酸素がアクセプターを有している。グアニンのドナー部は、シトシンのアクセプター部と水素結合することで、相補的に多重の水素結合を形成する。
例えば、分子末端にグアニン部を2つとシトシン部を2つ有する化合物同志を溶液中で溶解混合させると、溶液中でグアニン/シトシン部で相補的多重水素結合を形成し、これらを繰り返すことで超分子ポリマーを形成する。一つ一つの水素結合の結合エネルギーは小さいが、多重水素結合を複数形成することにより、ポリマーとしての物性が発現する。
【0170】
相補的多重水素結合を形成する部位としては、グアニン/シトシン、アデニン/チミン、アデニン/ウラシル、グアニン/シトシン等のような核酸塩基対、バルビツール酸/2、4、6-トリアミノピリミジン、2,6-ジアセチルアミノピリジン/ウラシル、2,4-ジアミノ-1,3,5-トリアジン/1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3-ジオン、メラミン/シアヌル酸、メラミン/バルビツール酸、4,6-ジアミノ-2-ピリミジノン/2-アミノ-4,6-ピリミジンジオン等が挙げられる。一つの構造で相補的多重水素結合を形成する部位としては、4,6-ジアミノ-2-ピリミジノン、2-アミノ-4,6-ピリミジンジオン、2-アミノ-4-アシルアミノ-1,3,5-トリアジン、尿素、チオ尿素、2-ウレイドピリミジノン等が挙げられる。
これらの中で、アデニン/チミン、2,6-ジアセチルアミノピリジン/ウラシル、メラミン/シアヌル酸、4,6-ジアミノピリミジノン、2-ウレイド-4-ピリミジノンが好ましい。
【0171】
<化合物Aと化合物Bの比率>
二つの本発明の一般式(1)で表される構造を有する化合物を用いて相補的多重水素結合を形成する場合、モル数が異なり、いずれかの化合物が過剰となる場合、過剰化合物は、超分子化合物を形成せずに、組成物の可塑剤として機能してしまうため、所望の物性を得ることができない。そのため、二つの本発明の一般式(1)で表される構造を有する化合物を用いて相補的多重水素結合を形成する場合、等モルで使用することが好ましい。
【0172】
また、本発明の樹脂組成物は、樹脂を含有する。
【0173】
<樹脂>
本発明の樹脂組成物を構成する樹脂としては、特に制限はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフロロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ乳酸、セルロースエステル等のセルロース誘導体やこれらの共重合体等の熱可塑性樹脂であれば特に限定はないが、本発明で使用される樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、スチレン・アクリル共重合体、ポリエステルが好ましく使用される。また、トナーには、スチレン・アクリル共重合体、ポリエステルが好ましく、さらに好ましくはスチレン・アクリル共重合体である。
【0174】
(スチレン・アクリル樹脂)
本発明でいうスチレン・アクリル樹脂とは、少なくともスチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを用いて、重合を行うことにより形成されるものである。ここで、スチレン単量体とは、CH=CH-Cの構造式で表されるスチレンの他、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものも含まれる。
【0175】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体とは、エステル結合を有する官能基を側鎖に有するものである。具体的には、CH=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル単量体の他、CH=C(CH)COOR(Rはアルキル基)で表されるメタクリル酸エステル単量体などのビニル系エステル化合物が含まれる。
【0176】
以下に、スチレン・アクリル樹脂を形成することが可能なスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、以下に示すものに限定されるものではない。
【0177】
スチレン単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレンなどが挙げられる。
【0178】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、以下に示すアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体が代表的なもので、アクリル酸エステル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレートフェニルなどが挙げられる。メタクリル酸エステル単量体としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0179】
これらのスチレン単量体、アクリル酸エステル単量体、又はメタクリル酸エステル単量体は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0180】
また、スチレン・アクリル共重合体には、上述したスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体のみで形成された共重合体の他に、これらスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に加えて、一般のビニル単量体を併用して形成されるものもある。以下に、本発明でいうスチレン・アクリル共重合体を形成する際に併用可能なビニル単量体を例示するが、併用可能なビニル単量体は以下に示すものに限定されるものではない。
【0181】
(1)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレン等
(2)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等
(3)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等
(4)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等
(5)N-ビニル化合物類
N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドン等
(6)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体等。
【0182】
また、多官能性ビニル単量体を使用して、架橋構造の樹脂を作製することも可能である。さらに、側鎖にイオン性解離基を有するビニル単量体を使用することも可能である。イオン性解離基の具体例としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。以下に、これらイオン性解離基を有するビニル単量体の具体例を示す。
【0183】
カルボキシル基を有するビニル単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。
【0184】
スチレン・アクリル樹脂の形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。必要に応じて例えば、n-オクチルメルカプタンなどの公知の連鎖移動剤を使用してもよい。
【0185】
本発明に使用されるスチレン・アクリル樹脂を形成する場合、スチレン単量体及びアクリル酸エステル単量体の含有量は特に限定されるものではなく、結着樹脂の軟化温度やガラス転移温度を制御する観点から適宜調整することが可能である。具体的には、スチレン単量体の含有量は、単量体全体に対し40~95質量%の範囲内が好ましく、50~80質量%の範囲内がより好ましい。また、アクリル酸エステル単量体の含有量は、単量体全体に対し5~60質量%の範囲内が好ましく、10~50質量%の範囲内がより好ましい。
【0186】
スチレン・アクリル樹脂の形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系又はジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
【0187】
アゾ系又はジアゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
【0188】
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2-ビス-(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス-(t-ブチルパーオキシ)トリアジンなどが挙げられる。
【0189】
また、乳化重合法でスチレン・アクリル樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素などが挙げられる。
【0190】
重合温度は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、50~100℃であることが好ましく、55~90℃であることがより好ましい。また、重合時間は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、例えば2~12時間であることが好ましい。
【0191】
乳化重合法により形成されるスチレン・アクリル樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とすることもできる。この場合の製造方法としては、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する多段重合法を採用することができる。
【0192】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂である。なお、ポリエステル樹脂は、非晶性であってもよいし結晶性であってもよい。
【0193】
多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2~3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
【0194】
ジカルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸、ドデセニルコハク酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-フェニレン二酢酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの不飽和芳香族ジカルボン酸;などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。ジカルボン酸成分は、単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。
【0195】
その他、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸、及び上記のカルボン酸化合物の無水物、又は炭素数1~3のアルキルエステルなども用いることができる。
【0196】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの飽和脂肪族ジオール;2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、3-ブチン-1,4-ジオール、9-オクタデセン-7,12-ジオールなどの不飽和脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などの芳香族ジオールが挙げられ、また、これらの誘導体を用いることもできる。ジオール成分は、単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。
【0197】
ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分を重縮合する(エステル化する)ことによりを製造することができる。
【0198】
ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属の化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物などが挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ(ジブチル錫オキサイド)、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩などを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート(Ti(O-n-Bu))、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどなどのチタンキレートなどを挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。さらにアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0199】
重合温度は特に限定されるものではないが、70~250℃であることが好ましい。また、重合時間も特に限定されるものではないが、0.5~10時間であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
【0200】
<樹脂組成物のその他の添加剤>
本発明の樹脂組成物には、前記した樹脂の他に、各種添加剤を本発明の目的効果を損なわない範囲で適用することができる。以下に、適用可能な添加剤の一例を示す。
【0201】
(可塑剤)
本発明において、可塑剤として知られる化合物を添加することは、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率の低減等の樹脂組成物の改質の観点において好ましい。
本発明に適用可能な可塑剤としては、リン酸エステル系可塑剤、エチレングリコールエステル系可塑剤、グリセリンエステル系可塑剤、ジグリセリンエステル系可塑剤(脂肪酸エステル)、多価アルコールエステル系可塑剤、ジカルボン酸エステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリマー可塑剤等が挙げられる。
この中でも多価アルコールエステル系可塑剤(多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤)、多価カルボン酸エステル系可塑剤(多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤)のどちらか、又はその両方を使用することが好ましい。
【0202】
本発明の樹脂組成物に適用可能な可塑剤の詳細については、例えば、特許第5380840号公報の段落[0102]~同[0162]に記載されている化合物を挙げることができる。
可塑剤の添加量は、本発明の樹脂組成物100質量部において、好ましくは0.001~50質量部、より好ましくは0.01~30質量部、さらに好ましくは、0.1~15質量部の範囲内である。
【0203】
(酸化防止剤)
本発明の樹脂組成物には、熱、光による樹脂の分解を防止するため、酸化防止剤を適用することもできる。
本発明に適用可能な酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、耐熱加工安定剤、光安定剤、酸素スカベンジャー等が挙げられる。これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にフェノール化合物のヒドロキシ基に対してオルト位置に嵩高い分岐アルキルを有するヒンダードフェノール系酸化防止剤、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体、及びその併用が好ましい。
【0204】
本発明の樹脂組成物に適用可能な酸化防止剤の詳細については、例えば、特許第5380840号公報の段落[0163]~同[0186]に記載されている化合物を挙げることができる。
酸化防止剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明の樹脂組成物100質量部において、好ましくは0.001~5質量部、より好ましくは0.01~3.0質量部、さらに好ましくは、0.1~1.0質量部の範囲内である。
【0205】
(酸掃去剤、紫外線吸収剤)
本発明の樹脂組成物を用いた三次元積層体に適用可能な添加剤としては、例えば、特許第5380840号公報の段落[0187]~同[0192]に記載されている酸掃去剤、段落[0193]~同[0197]に記載されている紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0206】
(他の添加剤)
また、本発明の樹脂組成物に併用できる各種樹脂添加剤としては、微粒子、離型剤、染顔料、難燃剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤・アンチブロッキング剤、流動性改良剤、分散剤、防菌剤などが挙げられる。また、各種充填剤も配合することができる。配合する充填材は、組成物の機能を低下させなければ特に制限は無く、粉末状、繊維状、粒状及び板状の無機充填材が、また、樹脂系の充填材又は天然系の充填材も好ましく使用できる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0207】
本発明の樹脂組成物において、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物(アゾメチン部位を有する化合物)と、樹脂の比率(アゾメチン部位を有する化合物/樹脂)は、樹脂の少ない領域では、組成物への光照射に伴う異性化で、組成物は軟化するが、接着物から組成物の剥離が起こる。また、トナー内への導入時には、本発明のアゾメチン部位を有する化合物同士で水素結合を形成しない分子数が増加し、超分子ポリマーを形成しないアゾメチン化合物が、可塑剤として作用し、粘度を低下させる。そのため、多色にした場合、光照射後の粒子が広がり、混色の原因となる。樹脂の多い領域では、組成物への光照射に伴う異性化で、組成物の軟化が十分に進行せず、組成物やトナーの軟化不良を引き起こす。そのため、前記アゾメチン部位を有する化合物と、樹脂の比率(アゾメチン部位を有する化合物/樹脂)は、5/95~95/5が好ましく、より好ましくは10/90~90/10、さらに好ましくは、20/80~80/20の範囲内である。
【0208】
本発明の樹脂組成物を、ある対象物と対象物を接着する仮止め材に用いた場合、光照射により対象物から剥離した後、非流動化しないと、作業環境内にある様々なものに接着し、作業環境を汚染してしまう。また、対象物の品質の劣化を引き起こす原因となるため、本発明の樹脂組成物には、光照射で可逆的に流動化及び非流動化することが、必要とされる。
【0209】
前記光照射の波長が、280~480nmの範囲内であり、より好ましくは300~420nmの範囲内、特に好ましくは330~420nmの範囲内である。この範囲内であれば、光を良く吸収するため、光溶融性が良くなり、定着性が良くなる。また、上記波長の照射光を照射することにより、熱や圧力を加えなくとも、流動化させることができる。そのため、前記アゾメチン部位を有する化合物を後述するトナーに導入することで、上記波長での定着が可能となり、かつ色再現性の高いトナーを得ることができる。なお、上記波長範囲は、紫外線の領域であるが、紫外線に近い可視光の領域も含まれる。紫外線に近い可視光の領域の照射光でも下記の照射条件により前記アゾメチン部位を有する化合物を流動化させることができるためである。
【0210】
[静電電荷像現像用トナー]
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、前記した樹脂組成物を含有することを特徴とする。
前記トナーに含有される樹脂組成物中の樹脂、すなわち結着樹脂と、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物(アゾメチン部位を有する化合物)の含有量は、化合物種や樹脂種によるが、定着性と色再現性の観点から、好ましくは、前記アゾメチン部位を有する化合物:結着樹脂=5:95~95:5(質量比)の範囲であればよいが、10:90~90:10(質量比)の範囲がより好ましく、10:90~80:20(質量比)の範囲がさらに好ましく、10:90~70:30(質量比)の範囲が中でも好ましく、10:90~60:40(質量比)の範囲が特に好ましい。この範囲であれば、前記アゾメチン部位を有する化合物の光相転移が生じやすく、トナーの光照射による軟化速度が十分なものとなる。
【0211】
本発明のトナーは、トナー母体粒子と、トナー母体粒子表面に付着される外添剤とを備えるトナー粒子を含む。
本明細書において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するものである。「トナー母体粒子」は、少なくとも結着樹脂を含有するものであり、その他必要に応じて、着色剤、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
【0212】
<結着樹脂>
前記トナー母体粒子は、前記一般式(1)で表され構造を有する化合物に加え、さらに結着樹脂を含有することが好ましい。
トナーの製造方法として後述の乳化凝集法を利用することにより、略均一な粒子径及び形状を有するトナー粒子を作製できることが一般的に知られている。
前記アゾメチン部位を有する化合物と結着樹脂とを併用することにより、乳化凝集法における塩析を用いて略均一な粒子径及び形状を有するトナー粒子の作製を行うことができる。よって、前記アゾメチン部位を有する化合物及び結着樹脂を含有するトナーは、電子写真用トナーにより容易に適用することができる。
【0213】
このような結着樹脂は、一般にトナーを構成する結着樹脂として用いられている樹脂を制限なく用いることができる。具体的には、例えば、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、アミド樹脂、及びエポキシ樹脂などが挙げられる。これら結着樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0214】
これらの中でも、溶融すると低粘度になり、かつ高いシャープメルト性を有するという観点から、結着樹脂は、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、スチレン・アクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0215】
好ましい結着樹脂であるスチレン・アクリル樹脂及びポリエステル樹脂については、前記樹脂組成物に含有されるスチレン・アクリル樹脂及びポリエステル樹脂と同様のため、ここではその説明を省略する。
【0216】
なお、前記アゾメチン部位を有する化合物及び結着樹脂を含有するトナーは、単層構造であってもよいしコア・シェル構造であってもよい。コア・シェル構造のコア粒子及びシェルに用いられる結着樹脂の種類は、特に制限されない。
【0217】
<着色剤>
前記トナー母体粒子は、さらに着色剤を含むのが好ましい。前記アゾメチン部位を有する化合物は無色でありながら異性化に伴い可逆的な流動化及び非流動化現象を誘起することができると考えられる。そのため、前記アゾメチン部位を有する化合物とともに所望の着色剤をトナーに導入することで、光照射により定着可能となり、かつ加えた着色剤の色再現性の高いトナーを得ることができる。着色剤としては、一般に知られている染料及び顔料を用いることができる。
【0218】
黒色のトナーを得るための着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラックなどが挙げられ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。また、磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどが挙げられる。
【0219】
イエローのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162などの染料;C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185などの顔料が挙げられる。
【0220】
マゼンタのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122などの染料;C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222などの顔料が挙げられる。
【0221】
シアンのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などの染料;C.I.ピグメントブルー1、同7、同15、同60、同62、同66、同76などの顔料が挙げられる。
【0222】
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0223】
着色剤の含有割合は、トナー母体粒子中0.5~20質量%の範囲内であることが好ましく、2~10質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0224】
<離型剤>
本発明のトナーは、さらに離型剤を含むのが好ましい。前記アゾメチン部位を有する化合物とともに離型剤をトナーに導入することで、より定着性に優れたトナーを得ることができる。
【0225】
使用される離型剤は、特に限定されるものではなく、公知の種々のワックスを用いることができる。ワックスとしては、低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、又は酸化型の低分子量ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、パラフィン、合成エステルワックスなどが挙げられ、特に、低融点及び低粘度であることから、合成エステルワックスを用いることが好ましく、合成エステルワックスとしてベヘン酸ベヘニル、グリセリントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネートなどを用いることが特に好ましい。
【0226】
離型剤の含有割合は、トナー母体粒子中1~30質量%の範囲内であることが好ましく、3~15質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0227】
<荷電制御剤>
本発明のトナーは、さらに荷電制御剤を含有してもよい。使用される荷電制御剤は、摩擦帯電により正又は負の帯電を与えることのできる物質であり、かつ無色のものであれば特に限定されず、公知の種々の正帯電性の荷電制御剤及び負帯電性の荷電制御剤を用いることができる。
【0228】
荷電制御剤の含有割合は、トナー母体粒子中0.01~30質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~10質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0229】
<外添剤>
トナーの流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するために、当該トナー粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤を添加して本発明のトナーを構成してもよい。
【0230】
外添剤としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子などの無機酸化物粒子、ステアリン酸アルミニウム粒子、ステアリン酸亜鉛粒子などの無機ステアリン酸化合物粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸亜鉛粒子などの無機チタン酸化合物粒子などの無機粒子が挙げられる。これらは単独でも又は2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0231】
これら無機粒子は、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性や環境安定性の向上のために、表面処理が行われていてもよい。
【0232】
これら外添剤の添加量は、トナー母体粒子中0.05~5質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~3質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0233】
<トナーの平均粒径>
トナーの平均粒径は、体積基準のメジアン径(D50)で4~10μmの範囲内であることが好ましく、6~9μmの範囲内であることがより好ましい。体積基準のメジアン径(D50)が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなりハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
【0234】
本発明において、トナーの体積基準のメジアン径(D50)は、「コールターカウンター3」(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター株式会社製)を接続した測定装置を用いて測定、算出されるものである。
【0235】
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、たとえば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター株式会社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。
【0236】
ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を50μmにし、測定範囲である1~30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径(D50)とされる。
【0237】
[トナーの製造方法]
本発明のトナーの製造方法は特に制限されない。
前記一般式(1)で表される化合物、結着樹脂及び着色剤等の添加剤を含むトナーを製造する場合は、粒子径及び形状の制御が容易な乳化凝集法を利用した製造方法であることが好ましい。
【0238】
このような製造方法は、
(1A)結着樹脂粒子の分散液を調製する結着樹脂粒子分散液調製工程
(1B)着色剤粒子の分散液を調製する着色剤粒子分散液調製工程
(1C)前記アゾメチン部位を有する化合物粒子の分散液を調製するアゾメチン部位を有する化合物粒子分散液調製工程
(2)結着樹脂粒子、着色剤粒子及び前記アゾメチン部位を有する化合物粒子が存在している水系媒体中に、凝集剤を添加し、塩析を進行させると同時に凝集、融着を行い、会合粒子を形成する会合工程
(3)会合粒子の形状制御をすることによりトナー母体粒子を形成する熟成工程
(4)水系媒体からトナー粒子を濾別し、当該トナー母体粒子から界面活性剤等を除去する濾過、洗浄工程
(5)洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程
(6)乾燥処理されたトナー母体粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程
の各工程を含むことが好ましい。以下、(1A)~(1C)の工程について説明する。
【0239】
(1A)結着樹脂粒子分散液調製工程
本工程では、従来公知の乳化重合などにより樹脂粒子を形成し、この樹脂粒子を凝集、融着させて結着樹脂粒子を形成する。一例として、結着樹脂を構成する重合性単量体を水系媒体中へ投入、分散させ、重合開始剤によりこれら重合性単量体を重合させることにより、結着樹脂粒子の分散液を作製する。
【0240】
また、結着樹脂粒子分散液を得る方法として、上記の水系媒体中で重合開始剤により重合性単量体を重合させる方法の他に、例えば、溶媒を用いることなく、水性媒体中において分散処理を行う方法、又は結着樹脂(結晶性樹脂等)を酢酸エチルなどの溶媒に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水性媒体中に乳化分散させた後、脱溶媒処理を行う方法などが挙げられる。
【0241】
この際、必要に応じ、結着樹脂には離型剤(ワックス)をあらかじめ含有させておいてもよい。また、分散のために、適宜公知の界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸などのアニオン系界面活性剤)の存在下で重合させることも好ましい。なお、結着樹脂粒子分散液とは別に離型剤粒子分散液を、着色剤粒子分散液調製工程と同様にして調製し、上記(2)の会合工程の水系媒体中に存在させるようにしてもよい。
【0242】
分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、50~300nmの範囲内が好ましい。分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定することができる。
【0243】
(1B)着色剤粒子分散液調製工程
この着色剤粒子分散液調製工程は、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。
【0244】
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。分散液中の着色剤粒子の個数基準のメジアン径は、10~300nmの範囲内であることが好ましく、50~200nmの範囲内であることがより好ましい。着色剤粒子の個数基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
【0245】
(1C)アゾメチン部位を有する化合物粒子分散液調製工程
前記化合物粒子分散液調製工程は、前記アゾメチン部位を有する化合物を水系媒体中に微粒子状に分散させて、前記アゾメチン部位を有する化合物粒子の分散液を調製する工程である。前記化合物粒子分散液を調製するにあたり、まず、アゾメチン部位を有する化合物の乳化液を調製する。
前記化合物の乳化液の調製方法としては、例えば、有機溶媒に前記アゾメチン部位を有する化合物を溶解させた前記アゾメチン部位を有する化合物液を得た後、該化合物液を水系媒体中で乳化させる方法が挙げられる。
【0246】
前記アゾメチン部位を有する化合物を有機溶媒に溶解する方法は、特に制限されず、例えば、前記アゾメチン部位を有する化合物を有機溶媒に添加して、前記アゾメチン部位を有する化合物が溶解するように撹拌混合する方法がある。前記アゾメチン部位を有する化合物の添加割合は、有機溶媒100質量部に対して、好ましくは5~100質量部の範囲内、より好ましくは10~50質量部の範囲内である。
【0247】
次に、前記アゾメチン部位を有する化合物液と水系媒体とを混合し、ホモジナイザーなどの公知の分散機を用いて撹拌する。これにより、アゾメチン部位を有する化合物が液滴となって、水系媒体中に乳化され、アゾメチン部位を有する化合物の乳化液が調製される。
【0248】
アゾメチン部位を有する化合物液の添加割合は、水系媒体100質量部に対して、好ましくは10~90質量部の範囲内、より好ましくは30~70質量部の範囲内である。
【0249】
また、アゾメチン部位を有する化合物液と水系媒体との混合時における、アゾメチン部位を有する化合物液及び水系媒体のそれぞれの温度は、有機溶媒の沸点未満となる温度範囲であって、好ましくは20~80℃の範囲内、より好ましくは30~75℃の範囲内である。アゾメチン部位を有する化合物液と水系媒体との混合時における、アゾメチン部位を有する化合物液の温度と水系媒体の温度とは、互いに同一であっても異なっていてもよく、好ましくは互いに同一である。
【0250】
分散機の撹拌条件は、例えば、容量が1~3Lの場合、その回転数が7000~20000rpmの範囲内であることが好ましく、また、その撹拌時間が10~30分の範囲内であることが好ましい。
【0251】
アゾメチン部位を有する化合物粒子分散液は、アゾメチン部位を有する化合物の乳化液から有機溶媒を除去することにより調製される。アゾメチン部位を有する化合物の乳化液から有機溶媒を除去する方法としては、例えば、送風、加熱、減圧、又はこれらの併用など、公知の方法が挙げられる。
【0252】
一例として、アゾメチン部位を有する化合物の乳化液は、例えば、窒素などの不活性ガス雰囲気下において、好ましくは25~90℃の範囲内、より好ましくは30~80℃の範囲内で、初期の有機溶媒量の80~95質量%の程度が除去されるまで加熱されることにより、有機溶媒が除去される。これにより、水系媒体から有機溶媒が除去されて、アゾメチン部位を有する化合物粒子が水系媒体中に分散されたアゾメチン部位を有する化合物粒子分散液が調製される。
【0253】
アゾメチン部位を有する化合物粒子分散液中のアゾメチン部位を有する化合物粒子の質量平均粒径は、90~nmの範囲内が好ましい。アゾメチン部位を有する化合物粒子の質量平均粒径は、アゾメチン部位を有する化合物を有機溶媒に配合したときの粘度、アゾメチン部位を有する化合物液と水との配合割合、アゾメチン部位を有する化合物の乳化液を調製するときの分散機の撹拌速度などを適宜調節することにより、上記範囲内に設定することができる。アゾメチン部位を有する化合物粒子分散液中のアゾメチン部位を有する化合物粒子の質量平均粒径は、電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
【0254】
<有機溶媒>
本工程で用いられる有機溶媒は、本発明のアゾメチン部位を有する化合物を溶解させることができれば特に制限されず使用することができる。具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ヘキサン、ヘプタンなどの飽和炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
【0255】
このような有機溶媒は、単独でも又は2種以上混合しても用いることができる。これら有機溶媒の中でも、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類が好ましく、メチルエチルケトン、ジクロロメタンがより好ましい。
【0256】
<水系媒体>
本工程で用いられる水系媒体は、水、又は水を主成分として、アルコール類、グリコール類などの水溶性溶媒や、界面活性剤、分散剤などの任意成分が配合されている水系媒体などが挙げられる。水系媒体は、好ましくは水と界面活性剤とを混合したものが用いられる。
【0257】
界面活性剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウムなどの脂肪酸石けん、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖などが挙げられる。
【0258】
このような界面活性剤は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。界面活性剤の中では、好ましくはアニオン性界面活性剤、より好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが使用される。
【0259】
界面活性剤の添加量は、水系媒体100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部の範囲内、より好ましくは0.04~1質量部の範囲内である。
【0260】
(2)会合工程から(6)外添剤添加工程までの工程については、従来公知の種々の方法にしたがって行うことができる。
【0261】
なお、(2)会合工程において使用される凝集剤は、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩等の一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0262】
[現像剤]
本発明のトナーは、例えば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも好適に使用することができる。
【0263】
上記磁性体としては、例えばマグネタイト、γ-ヘマタイト、又は各種フェライトなどを使用することができる。
【0264】
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。
【0265】
キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体粉末を分散してなるいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。被覆用の樹脂としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂又はフッ素樹脂などが用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂など使用することができる。
【0266】
キャリアの体積基準のメジアン径は、20~100μmの範囲内であることが好ましく、25~80μmであることがより好ましい。キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパテック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0267】
トナーのキャリアに対する混合量は、トナーとキャリアとの合計質量を100質量%として、2~10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0268】
[画像形成方法]
本発明のトナーは、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができる。例えば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、1つの感光体とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置及び感光体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法にも適用することができる。
本発明の一実施形態による画像形成方法では、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有するトナーからなるトナー像を記録媒体上に形成する工程と、前記トナー像に光を照射して、前記トナー像を軟化させる工程とを含む。
【0269】
また、トナー中のアゾメチン部位を有する化合物を十分に流動化させ、トナー像を素早く軟化させる観点から、前記トナー像に光を照射する際の光の波長は、280~480nmの範囲内であることが好ましい。
また、より良い定着性を得るという観点から、前記トナー像を加圧する工程をさらに含むのが好ましい。さらに、より良い定着性を得るという観点から、前記加圧する工程では、前記トナー像をさらに加熱するのが好ましい。
【0270】
図1は、本発明の一実施形態による画像形成方法で用いられる画像形成装置100を示す概略構成図である。ただし、本発明に用いられる画像形成装置としては、下記の形態及び図示例に限定されるものではない。図1には、モノクロの画像形成装置100の例を示すが、カラーの画像形成装置にも本発明を適用することができる。
【0271】
画像形成装置100は、記録媒体としての記録用紙Sに画像を形成する装置であって、画像読取装置71及び自動原稿送り装置72を備え、用紙搬送系7により搬送される記録用紙Sに対し画像形成部10、照射部40、及び圧着部9により画像形成を行う。
【0272】
また、記録媒体として、画像形成装置100では記録用紙Sを用いているが、画像形成を行う対象とされる媒体は、用紙以外でもよい。
【0273】
自動原稿送り装置72の原稿台上に載置された原稿dは、画像読取装置71の走査露光装置の光学系により走査露光されてイメージセンサーCCDに読み込まれる。イメージセンサーCCDにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部20において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、画像形成部10の露光器3に入力される。
【0274】
用紙搬送系7は、複数のトレイ16、複数の給紙部11、搬送ローラー12、搬送ベルト13等を備えている。トレイ16は、決められたサイズの記録用紙Sをそれぞれ収容しており、制御部90からの指示に応じて定められたトレイ16の給紙部11を作動させ、記録用紙Sを供給する。搬送ローラー12は、給紙部11によってトレイ16から送り出された記録用紙S又は手差し給紙部15から搬入された記録用紙Sを画像形成部10へ搬送する。
【0275】
画像形成部10は、感光体1の周りに、感光体1の回転方向に沿って、帯電器2、露光器3、現像部4、転写部5、除電部(図示せず)及びクリーニング部8がこの順番に配置されて構成されている。
【0276】
像担持体である感光体1は、表面に光導電層の形成された像担持体であり、図示しない駆動装置により図1中の矢印方向に回転可能に構成されている。感光体1の近傍には、画像形成装置100内の温度や湿度を検知する温湿度計17が設けられている。
【0277】
帯電器2は、感光体1の表面に均一に電荷を与え、感光体1の表面を一様に帯電させる。露光器3は、レーザーダイオード等のビーム発光源を備え、帯電された感光体1の表面にビーム光を照射することで照射部分の電荷を消失させ、感光体1上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像部4は、内部に収容されるトナーを感光体1に供給して、感光体1表面上に静電潜像に基づくトナー像を作像する。
【0278】
転写部5は、記録用紙Sを介して感光体1と対向し、トナー像を記録用紙Sに転写する。除電部は、トナー像を転写した後の感光体1上の除電を行う。クリーニング部8は、ブレード85を備える。ブレード85により、感光体1表面をクリーニングして感光体1の表面に残留した現像剤を除去する。
【0279】
トナー像が転写された記録用紙Sは、搬送ベルト13により圧着部9へ搬送される。圧着部9は、任意に設置されるものであり、トナー像が転写された記録用紙Sに対し、加圧部材91及び92によって圧力のみまたは熱及び圧力を加えて定着処理を施し、これにより記録用紙S上に画像を定着させる。画像が定着された記録用紙Sは、搬送ローラーによって排紙部14に搬送され、排紙部14から機外へ排出される。
【0280】
また、画像形成装置100は用紙反転部24を備えており、加熱定着処理がなされた記録用紙Sを排紙部14の手前で用紙反転部24に搬送し、表裏を反転して排出するか、又は表裏を反転した記録用紙Sを再度画像形成部10に搬送し記録用紙Sの両面に画像形成を行うことを可能としている。
【0281】
<照射部>
図2は、画像形成装置100における照射部40の概略構成図である。
【0282】
本発明の一実施形態による画像形成装置100は、照射部40を備える。照射部40を構成する装置の例としては、発光ダイオード(LED)、レーザー光源などが挙げられる。
【0283】
照射部40は、現像剤のトナーに含まれる光吸収により相転移する化合物(前記一般式(1)で表される構造を有する化合物)を溶融、流動化させるものである。照射する光の波長は、十分に流動化させうる程度であればよく、好ましくは280~480nmの範囲内、より好ましくは300~420nmの範囲内、さらに好ましくは330~420nmの範囲内の波長を有する光を照射する。照射部40における光の照射量も、十分に流動化させうる程度であればよく、好ましくは0.1~200J/cmの範囲内、より好ましくは0.1~100J/cmの範囲内、さらに好ましくは0.1~50J/cmの範囲内である。
【0284】
アゾメチン部位を有する化合物を非流動化(再固化)させる際は、そのまま室温(25±15℃の範囲)で放置することで非流動化させればよい。
【0285】
すなわち、本発明の一実施形態による画像形成方法は、記録媒体上に本発明のトナーからなるトナー像を形成する工程と、前記トナー像に対して、280~480nmの範囲内の波長を有する光を照射して前記トナー像を軟化させる工程と、軟化した前記トナー像に対して、室温(25±15℃の範囲)で放置することで、前記トナー像を固化させ記録媒体に定着させる工程と、を含む。なお、定着させる工程においては、軟化した前記トナー像を加圧する工程をさらに含むことが好ましい。前記加圧する工程では、軟化した前記トナー像をさらに加熱することが好ましい。加熱することで、より軟化させることができるからである。
【0286】
前記加圧する工程でさらに加熱する際の加熱温度としては、好ましくは30~100℃の範囲内、より好ましくは40~100℃の範囲内である。
【0287】
照射部40はトナー像を保持する記録用紙Sにおける感光体側の第1面に向かって光を照射するものであり、感光体1と転写部である転写ローラー5とにニップされた記録用紙S面に対して感光体側に配置されている。また、記録用紙Sの搬送方向(用紙搬送方向)に沿って、照射部40が配置されている。
【0288】
照射部40は、感光体1と転写ローラー5とのニップ位置に対して、用紙搬送方向下流側、かつ圧着部9に対して用紙搬送方向上流側に配置されている。
【0289】
本発明の一実施形態による画像形成方法によれば、帯電器2により感光体1に一様な電位を付与して帯電させた後、原画像データに基づいて露光器3により照射した光束で感光体1上を走査し、静電潜像を形成する。次に現像部4により光吸収により相転移する化合物(前記アゾメチン部位を有する化合物)を含むトナーを有する現像剤を感光体1上に供給する。
【0290】
感光体1の表面に担持されたトナー像が、感光体1の回転によって転写部である転写ローラー5の位置に至るタイミングに合わせて、トレイ16から記録用紙Sを画像形成部10に搬送すると、転写ローラー5に印加される転写バイアスにより、感光体1上のトナー像が、転写ローラー5と感光体1とにニップされた記録用紙S上に転写される。
【0291】
また、転写部材5は、加圧部材を兼ねており、感光体1から記録用紙Sにトナー像を転写させることができながら、トナー像に含まれるアゾメチン部位を有する化合物を確実に記録用紙Sに密着させることができる。
【0292】
トナー像が記録用紙Sに転写された後に、クリーニング部8のブレード85は、感光体1表面に残留する現像剤を除去する。
【0293】
トナー像が転写された記録用紙Sが搬送ベルト13により圧着部9に搬送される過程において、照射部40は、記録用紙S上に転写されたトナー像に対して、280~480nmの波長を有する光を照射する。照射部40により記録用紙Sの第1面上のトナー像に向かって紫外光を照射することにより、トナー像をより確実に溶融させることができ、トナー像の記録用紙Sに対する定着性を向上させることができる。
【0294】
トナー像が保持された記録用紙Sが、搬送ベルト13により圧着部9に至ると、加圧部材91及び92が、トナー像を記録用紙Sの第1面に圧着する。圧着部9により定着処理が施される前に、トナー像が照射部40による紫外光照射により軟化するため、記録用紙Sに対する画像圧着の省エネルギー化を図ることができる。本発明の画像形成方法は、前記トナー像を固化させ記録媒体に定着させる工程において、室温(25±15℃の範囲)で放置しつつ、トナー像を加圧部材91、92により加圧する工程をさらに含むことが好ましい。加圧部材91、92により、圧力を加えることで、トナー像の記録用紙Sへの定着性がより向上する。
【0295】
記録媒体上のトナー像を加圧する際の圧力は、特に限定されないが、0.01~5.0MPaの範囲内であることが好ましく、0.05~1.0MPaの範囲内であることがより好ましい。圧力を0.01MPa以上とすることで、トナー像の変形量を大きくしうるため、トナー像と記録用紙Sとの接触面積が増加し、画像の定着性をさらに高めやすい。また、圧力を5.0MPa以下とすることで、加圧時のショックノイズを抑制できる。
【0296】
また、加圧する工程では、前記トナー像をさらに加熱することが好ましい。加圧部材91、92により圧力及び熱を加えることで、トナー像の記録用紙Sへの定着性がより一層向上する。具体的には、加圧部材91は、記録用紙Sが加圧部材91及び92の間を通過する際に、光照射によって軟化したトナー像は、加熱によりさらに軟化された状態で加圧されることで、トナー像の記録用紙Sへの定着性がより一層向上する。
【0297】
その後、記録用紙S上のトナー像を、自然環境下で(室温で放置して)固化する。詳しくは、加圧部材91及び92の間を通過した記録用紙Sが、排紙部14に至るまで、自然環境下(室温で放置する状態)におくことで、記録用紙S上のトナー像をより確実に凝固させることができ、トナー像の記録用紙Sに対する定着性をより向上させることができる。
【0298】
記録用紙Sの両面に画像を形成する場合、圧着処理がなされた記録用紙Sを排紙部14の手前で用紙反転部24に搬送し、表裏を反転して排出するか、又は表裏を反転した記録用紙Sを再度画像形成部10に搬送する。
【0299】
[感光性接着剤]
本発明に係る一般式(1)で表される構造を有する化合物は、光照射で可逆的に流動化及び非流動化するため、繰り返しの利用が可能な感光性接着剤を作製することができる。例えば、粘度(摩擦係数)の変化に対応して、繰り返しの光脱着可能な感光性接着剤として各種の接着技術に応用することが可能である。
【0300】
本発明の感光性接着剤は、繰り返しの利用が可能な仮止めに使えるほか、リサイクル利用にも適しているが、これらに何ら制限されるものではない。
【0301】
また、本発明の感光性接着剤は、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物のほか、前記<樹脂>、<樹脂組成物のその他の添加剤>で記載した樹脂、可塑剤、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有していてもよく、これらに限定されるものではない。
【実施例
【0302】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0303】
下記表I~表IVに示す化合物1~62を前記した合成法によりそれぞれ合成した。また、比較例で使用した比較化合物D~Fを下記の方法により合成した。
【0304】
[比較化合物D(アゾベンゼン化合物D)の合成]
特開2014-191078号公報の段落[0217]~[0224]に記載の「(1-1-1)UV軟化材料Aの合成」と同様の方法で、アゾベンゼン化合物Dを得た。構造は、H-NMR、IRにて確認し、目的の化合物が得られていることがわかった。
【0305】
【化22】
【0306】
[比較化合物E(アゾベンゼン化合物E)の合成]
特開2014-191078号公報の段落[0227]~[0237]に記載の「(1-2-1)UV軟化材料Bの合成」と同様の方法で、アゾベンゼン化合物Eを得た。構造は、H-NMR、IRにて確認し、目的の化合物が得られていることがわかった。
【0307】
【化23】
【0308】
[比較化合物F(アゾメチン化合物F)の合成]
ジメチルホルムアミド(DMF)中、4-ヒドロキシ-3-メチルベンズアルデヒドとヨードヘキサン(C13I)とを炭酸カリウム(KCO)を用いて加熱還流して反応させ、反応液を水洗後、濃縮し、カラムクロマトグラフィーにて精製することで、4-ヘキシルオキシ-3-メチルベンズアルデヒドを得た(下記スキーム*参照)。エタノール(EtOH)中、スキーム1で得られた4-ヘキシルオキシ-3-メチルベンズアルデヒドと5-ヘキシルチオフェン-2-アミンとを加熱撹拌して反応させ、反応液をろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄し、メタノール/エタノールで再結晶することで目的物であるアゾメチン化合物Fを得た(下記スキーム2参照)。構造は、H-NMR、IRにて確認し、目的の化合物が得られていることがわかった。
【0309】
【化24】
【0310】
また、下記で使用した樹脂の略称及び物性(Tg:ガラス転移温度)は以下のとおりで、各々の文献情報より調製した。
PMMA:ポリメチルメタクリレート(PolyMethyl Methacrylate)、Tg 42℃、Journal of Polymer Science, Part A-2 , 4 , 199-208 (1966)
PBT:ポリブチレンテレフタレート(Polybutyleneterephtalate)、Tg 42℃、Journal of Polymer Science, Polymer Physics Edition , 21 , 7 , 1091-1101 (1983)
PET:ポリエチレンテレフタレート(Polyethyleneterephtalate)、Tg 48℃、Macromolecules , 37 , 7 , 2532-2537 (2004)
PC:ポリカーボネート(2,2’-Dimethylbisphenol A polycarbonate)、Tg 49℃、Macromolecules , 25 , 18 , 4588-4596 (1992)
【0311】
(1)実施例1
[樹脂組成物の調製]
<樹脂組成物1-1の調製>
PMMA 5mg、例示化合物1 95mgをシャーレに入れた後、CHClを100ml添加した。アルミ箔でフタをして、ドラフト内でCHClが乾固するまで放置した。その後、室温で減圧乾燥機を用いて真空乾燥することにより、溶媒を除去した。
【0312】
<樹脂組成物1-2~1-60及び1-A~1-F>
表I及び表IIに記載されている樹脂及び例示化合物を用い、また、表I及び表II記載の割合で樹脂と例示化合物を使用し、<組成物1-1の調製>と同様な方法で、組成物1-2~1-60及び比較例1-A~1-Fを調製した。
溶解しにくい組成物の場合は、溶液を加熱し溶解した。また、2種類の例示化合物(例示化合物A、例示化合物B)を用いる場合は、例示化合物Aと例示化合物Bが同モル数になるように秤量した。
【0313】
[光応答接着試験]
前記で調製した樹脂組成物1-1~1-60及び1-A~1-Fの光照射に伴う接着性の変化を図3に示す装置を用いて、以下の光応答接着試験で評価した。
図3に示すように、18mm角のカバーガラス1に化合物2mgをガラス中心から半径6mm内に載せ、同サイズのカバーガラス2を、カバーガラス1に対して平行方向に約4mmずらした位置に設置した。
カバーガラス間に各樹脂組成物1-1~1-60及び1-A~1-Fを挟んだ後に、カバーガラスを加熱し、当該樹脂組成物を溶融させ、カバーガラス1とカバーガラス2とを接着させた。得られた各サンプルを下記の流動化試験(非流動性→流動性の試験)に供し、その後、下記の非流動化の試験(流動性→非流動性の試験)に供した。
【0314】
<流動化試験(非流動性→流動性の試験)>
図3に示す(A)部分を台にセロハンテープで固定し、(C)部分には100gのおもりを装着した長さ30cmのビニル紐をセロハンテープで固定した。(B)部分に波長365nmの光を照射量30J/cmで5分照射し、カバーガラス2がカバーガラス1から剥がれるかを確認し、下記の評価基準にしたがって判定した。なお、下記評価基準で○を合格とした。得られた結果を表I及び表IIに示す。
(評価基準)
〇:カバーガラス2がカバーガラス1から完全に剥がれた
△:カバーガラス2がずれた
×:カバーガラス2は動かなかった
【0315】
<非流動化試験(流動性→非流動性の試験)>
非流動性→流動性試験開始5分(5分は、自然環境下、すなわち室温(25±15℃の範囲)で放置した。)後に、上記試験で使用したカバーガラス1の試料部分((B)部分)を覆いかぶせるようにカバーガラス3(カバーガラス1、2と同サイズ)をのせ、カバーガラス1とカバーガラス3とが接着するかを確認し、下記の評価基準にしたがって判定した。なお、下記評価基準で○を合格とした。得られた結果を表I及び表IIに示す。
【0316】
(評価基準)
〇:接着しなかった(非流動化していた)
△:一部接着した(一部、流動化状態が保たれていた)
×:接着した(流動化状態が保たれていた)
【0317】
【表1】
【0318】
【表2】
【0319】
上記結果に示されるように、本発明の樹脂組成物は、流動化及び非流動化試験において可逆的な流動体化・非流動体化現象を誘起することが認められた。これに対して、比較例の樹脂組成物は、流動化・非流動化現象の両方を誘起することはなかった。なお、比較例である樹脂組成物1-Aは、流動化試験において、カバーガラス2がカバーガラス1から完全に剥がれたが、塗膜がカバーガラスから剥離してしまった。
【0320】
(2)実施例2
[トナー2-1の製造]
<スチレン・アクリル樹脂粒子分散液1の調製>
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温80℃とし、スチレン480質量部、n-ブチルアクリレート250質量部、メタクリル酸68.0質量部及びn-オクチル-3-メルカプトプロピオネート16.0質量部よりなる重合性モノマー溶液を1時間かけて滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、スチレン・アクリル樹脂粒子(1a)を含有するスチレン・アクリル樹脂粒子分散液(1A)を調製した。
【0321】
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン-2-ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水800質量部に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱後、上記のスチレン・アクリル樹脂粒子分散液(1A)260質量部とスチレン245質量部、n-ブチルアクリレート120質量部、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート1.5質量部、離型剤としてパラフィンワックス「HNP-11」(日本精蝋社製)67質量部を90℃にて溶解させた重合性モノマー溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CREARMIX」(エム・テクニック社製)により1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を82℃にて1時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行い、スチレン・アクリル樹脂粒子(1b)を含有するスチレン・アクリル樹脂粒子分散液(1B)を調製した。
【0322】
(第3段重合)
上記のスチレン・アクリル樹脂粒子分散液(1B)に過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下に、スチレン435質量部、n-ブチルアクリレート130質量部、メタクリル酸33質量部及びn-オクチル-3-メルカプトプロピオネート8質量部からなる重合性モノマー溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却しスチレン・アクリル樹脂1を含有するスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1を得た。また、このスチレン・アクリル樹脂1のガラス転移点Tgを測定したところ、45℃であった。
【0323】
(ポリエステル樹脂粒子分散液1の調製)
窒素導入管、脱水管、撹拌器、及び熱電対を備えた容量10リットルの四つ口フラスコに、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物524質量部、テレフタル酸105質量部、フマル酸69質量部、及びオクチル酸スズ(エステル化触媒)2質量部を投入し、温度230℃で8時間の重縮合反応を行った。さらに、8kPaで1時間重縮合反応を継続後、160℃に冷却し、ポリエステル樹脂1を得た。このポリエステル樹脂1 100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(株式会社徳寿工作所製)で粉砕し、あらかじめ作製した0.26質量%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液 638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US-150T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて、V-LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、ポリエステル樹脂粒子分散液1を得た。また、このポリエステル樹脂1のガラス転移点Tgを測定したところ、42℃であった。
【0324】
(シアン分散液の調製)
n-ドデシル硫酸ナトリウム 11.5質量部を純水 1600質量部に溶解し、銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3) 25質量部を徐々に添加し、次いで、「クレアミックス(登録商標)WモーションCLM-0.8(エム・テクニック株式会社製)」を用い、シアン分散液を調製した。
【0325】
(アゾメチン部位を有する化合物粒子分散液1の調製)
ジクロロメタン80質量部と、例示化合物1 20質量部とを40℃で加熱しながら混合撹拌し、化合物1を溶解させた。その後、加熱及び撹拌を止め、3時間静置させた。再度撹拌を開始し、この液100質量部に、50℃に温めた蒸留水99.5質量部と、20質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.5質量部との混合液を添加した。その後、シャフトジェネレーター18Fを備えるホモジナイザー(ハイドルフ社製)により16000rpmで20分間撹拌して乳化させ、アゾメチン部位を有する化合物の乳化液1を得た。
得られたアゾメチン部位を有する化合物の乳化液1をセパラブルフラスコへ投入し、窒素を気相中へ送気しながら40℃で90分間加熱撹拌して有機溶媒を除去して、アゾメチン部位を有する化合物粒子分散液1を得た。
【0326】
(凝集、融着)
上記で作製したスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1を固形分換算で504質量部、アゾメチン部位を有する化合物粒子分散液を固形分換算で216質量部、イオン交換水900質量部、及びシアン分散液を固形分換算で70質量部を、撹拌装置、温度センサー、及び冷却管を装着した反応装置に投入した。容器内の温度を30℃に保持して、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
次に、塩化マグネシウム・6水和物 2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を撹拌下、10分間かけて滴下した後、昇温を開始し、この系を60分間かけて70℃まで昇温し、70℃を保持したま粒子成長反応を継続した。この状態で「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準におけるメジアン径(D50)が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。70℃で1時間撹拌した後、さらに昇温を行い、75℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させた。その後、30℃まで冷却することにより、トナー粒子の分散液を得た。
上記で得られたトナー粒子の分散液を遠心分離機で固液分離し、トナー粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)」に移し、水分量が0.5質量%になるまで乾燥して、トナー2-1を作製した。
【0327】
[トナー2-2~2-58及び2-A~2-Fの製造]
前記トナー2-1の製造において、樹脂、例示化合物及び着色剤の種類、樹脂と例示化合物の質量比、ワックスの有無等を下記IIIに記載のとおりに適宜変更した以外は同様にして、トナー2-2~2-58及び2-A~2-Fを製造した。
なお、2種類の例示化合物(例示化合物A、例示化合物B)を用いる場合は、例示化合物Aと例示化合物Bが同モル数になるように秤量した。
【0328】
[現像剤の作製]
上記で作製した各トナーについて、シクロヘキサンメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体樹脂(モノマー質量比1:1)で被覆した体積平均粒径が30μmのフェライトキャリア粒子を、トナー粒子濃度が6質量%となるように混合し、現像剤2-1~2-58及び2-A~2-Fを得た。混合は、V型混合機を用いて30分間行った。
【0329】
[画像形成方法]
得られた各現像剤を用いて、記録媒体として普通紙上にトナー画像を形成し、印刷物を得た。具体的には、一方を現像剤、他方にグロスコート紙(坪量:128g/m)を設置した一対の平行平板(アルミニウム)電極間に、現像剤を磁力によって摺動させながら配置し、電極間ギャップが0.5mm、DCバイアスとACバイアスとはトナー付着量4g/mとなる条件でトナーを現像させ、普通紙の表面にトナー層を形成し、定着装置で定着させて、印刷物を得た。
【0330】
[評価]
<定着性試験>
前記で得られた印刷物の1cm角の画像を、「JKワイパー(登録商標)」(日本製紙クレシア社製)で50kPaの圧力をかけて10回こすり、画像の定着率で評価した。定着率80%以上を合格とする。得られた定着性試験の評価結果(定着率)を下記表IIIに示す。
なお、画像の定着率とは、プリント後の画像及びこすった後の画像の濃度を反射濃度計「RD-918」(サカタインクスエンジニアリング社製)で測定し、こすった後のベタ画像の反射濃度を、プリント後のベタ画像の反射濃度で除した値を百分率で表した数値である。
定着装置は、図2に示す装置を適宜改変して構成された下記3種の装置を用いた。
定着装置No.1:図2の圧着部9がなく、照射部40から照射される紫外光の波長は365nmであり(光源:発光波長が365nm±10nmのLED光源)、照射量は10J/cmである。また紫外光照射により軟化したトナーは、排紙部14(図1参照)に至るまで、自然環境下、即ち室温(20℃)で放置した状態で固化(化合物を非流動化)、定着させた。
定着装置No.2:図2の圧着部9があり、加圧部材91の温度が20℃であり、加圧時の圧力は0.2MPaである。照射部の光源及び照射量はNo.1と同様である。また紫外光照射により軟化したトナーは、加圧部材91による加圧により定着させ、その後、排紙部14(図1参照)に至るまで、室温(20℃)で放置した状態で固化(化合物を非流動化)させた。
定着装置No.3:図2の圧着部9があり、加圧部材91の温度が80℃である。照射部の光源及び照射量はNo.1と同様である。また、加圧部材91での加圧時の圧力は、No.2と同様である。また紫外光照射により軟化したトナーは、加圧部材91による加圧、加熱により、より軟化させて定着させた。その後、排紙部14(図1参照)に至るまで、室温(20℃)で放置した状態で固化(化合物を非流動化)させた。
【0331】
(定着性の評価基準)
合格:80%以上
不合格:80%未満
【0332】
<色再現性>
上記で得られた実施例画像について色再現性を、10名のモニターによる目視評価により下記評価基準にしたがって評価した。具体的には、評価比較用サンプルとして、各実施例に記載のトナーに対し、結着樹脂のみのトナーを作製し、(画像形成)と同様に現像し、表IIIに示す定着装置No.1~3にて定着を行った。
10名のモニターに対して、前記評価比較用サンプルと実施例記載のサンプルを順番に見せ、2つの画像の色が明らかに異なるか質問した。下記色再現性の評価基準による判定結果を下記表IIIに示す。なお、「◎」、「〇」を合格とした。
【0333】
(色再現性の評価基準)
◎:2名以下が明らかに異なると答えた
○:3~4名が明らかに異なると答えた
△:5~7名が明らかに異なると答えた
×:8名以上が明らかに異なると答えた
【0334】
【表3】
【0335】
【表4】
【0336】
上記結果に示されるように、本発明のトナーは、比較例のトナーに比べて、光照射による定着性及び色再現性が高いことが認められる。
【符号の説明】
【0337】
1 感光体
2 帯電器
3 露光器
4 現像部
5 転写部(転写ローラー)
7 用紙搬送系
8 クリーニング部
9 圧着部
10 画像形成部
11 給紙部
12 搬送ローラー
13 搬送ベルト
14 排紙部
15 手差し給紙部
16 トレイ
17 温湿度計
20 画像処理部
24 用紙反転部
40 照射部
71 画像読取装置
72 自動原稿送り装置
85 ブレー
90 制御部
91、92 加圧部材
100 画像形成装置
d 原稿
S 記録用紙
図1
図2
図3