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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20241126BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20241126BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20241126BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/01 114
G03G21/14
G03G21/00 370
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020103590
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021196531
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】野口 英俊
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-267519(JP,A)
【文献】特開2006-098895(JP,A)
【文献】特開平04-148952(JP,A)
【文献】特開2006-337655(JP,A)
【文献】特開2012-242780(JP,A)
【文献】特開2006-030737(JP,A)
【文献】特開2020-085921(JP,A)
【文献】特開2009-025713(JP,A)
【文献】特開平09-200551(JP,A)
【文献】特開平10-207172(JP,A)
【文献】特開2013-130780(JP,A)
【文献】特開2012-027076(JP,A)
【文献】特開2020-052314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 15/01
G03G 21/14
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体に、複数色のトナーを使用して、1枚の画像内でトナー層の厚さの異なるトナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記像担持体に形成された前記トナー像を用紙に転写する転写手段と、
前記像担持体に形成されるトナー像における厚さの薄い肉薄トナー層を検出する検出手段と、
を備え、
前記トナー像は、発泡トナー像を含まない非発泡性のトナー像であり、
前記トナー像形成手段は、前記検出手段により検出された前記肉薄トナー層の下側に、前記複数色のトナーのうちの前記肉薄トナー層とは異なる色のトナーを補給するとともに、
前記転写手段による転写電圧は、前記肉薄トナー層の厚さよりも肉厚のトナー層に合わせて設定されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
像担持体と、
前記像担持体に、複数色のトナーを使用して、1枚の画像内でトナー層の厚さの異なるトナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記像担持体に形成された前記トナー像を用紙に転写する転写手段と、
を備え、
前記トナー像形成手段は、前記像担持体に形成されるトナー像における厚さの薄い肉薄トナー層の下側に、前記肉薄トナー層とは異なる色のトナーを補給し、
前記肉薄トナー層の下側に補給されるトナーは、肉薄トナー層以外の色のトナーのうち、帯電量が相対的に高いトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
像担持体と、
前記像担持体に、複数色のトナーを使用して、1枚の画像内でトナー層の厚さの異なるトナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記像担持体に形成された前記トナー像を用紙に転写する転写手段と、
を備え、
前記トナー像形成手段は、前記像担持体に形成されるトナー像における厚さの薄い肉薄トナー層の下側に、前記肉薄トナー層とは異なる色のトナーを補給し、
色毎に複数の画像ドットパターンからなるスクリーンを有し、
前記肉薄トナー層が前記スクリーンで形成されている場合、前記肉薄トナー層の下側へのトナーの補給は、肉薄トナー層のスクリーンと同じスクリーンを使用して行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記肉薄トナー層は単色のトナー層である請求項1~3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記単色は黒色である請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記肉薄トナー層の厚さは1色で作像するトナー層の厚さ未満である請求項1~5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記肉薄トナー層の下側に補給されるトナー量は、当該トナー量の70~100%が転写残になる量である請求項1~6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記肉薄トナー層の下側に補給されるトナー量は、環境、現像器の耐久状態、補給されるトナーの色、用紙種類のうちの少なくともいずれかに基づいて制御する請求項1~7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記肉薄トナー層の下側に補給されるトナーは、肉薄トナー層以外の色のトナーのうち、帯電量が相対的に高いトナーである請求項1または3に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記肉薄トナー層の下側に補給されるトナーの色はイエローである請求項1~9のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記肉薄トナー層の下側に補給されるトナーは、最も耐久が少ない現像器で供給されるトナーである請求項1~10のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記肉薄トナー層の下側に補給されるトナーは複数の現像器で供給されるトナーである請求項1~10のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項13】
モノクロモードとカラーモードをユーザーが選択可能な選択手段を備えている請求項1~12のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記肉薄トナー層の下側にトナーを補給するモードと補給しないモードをユーザーが選択可能な選択手段を備えている請求項1~13のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項15】
色毎に複数の画像ドットパターンからなるスクリーンを有する請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記肉薄トナー層が前記スクリーンで形成されている場合、前記肉薄トナー層の下側へのトナーの補給は、肉薄トナー層のスクリーンと同じスクリーンを使用して行う請求項15に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリあるいはこれらのうちの複数の機能を備えた複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような画像形成装置は、複数の色を重ねて作像するカラーモードと、黒トナーだけで作像するモノクロモードを搭載しているのが一般的であるが、カラーモードでは像担持体に形成された多層(複数の色)のトナーを用紙に転写するため、転写電圧は単層(黒トナーだけ)のモノクロモードと比較し高く設定する。
【0003】
しかしながらカラーモード時でも、1枚の画像内の黒部分は黒トナーが単層しか付着していないため、カラーモードの転写電圧では転写が過剰になって像担持体の表面に残ってしまい、用紙へ転写された画像において黒色部分の濃度が薄くなってしまうという問題があった。このような問題は、黒トナーに限られる問題ではなく、像担持体に形成されるトナー像における厚さの薄い肉薄トナー層において、発生する問題である。
【0004】
なお、特許文献1には、透明記録媒体上に形成された重ねトナー画像の上に白色トナー画像を形成する画像形成装置において、画素毎の重ねトナー画像のトナー付着量に応じて、重ねトナー画像上に形成させる白色トナー画像のトナー付着量を変更するように画像形成手段を制御する技術が開示されている。
【0005】
特許文献2には、1次転写部で中間転写対から像担持体への再転写量に応じて、最下流色(K)以外の画像形成条件を変更する画像形成装置が開示されている。
【0006】
特許文献3には、複数の各色成分トナー像の色重ねにより形成されたブラックトナー像における各色成分トナー像の単位面積当たりのトナー重量が略同程度に転写されるように転写効率を制御する画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-64401号公報
【文献】特開2001-42593号公報
【文献】特開平08-95337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの特許文献に記載された技術は、カラーモード時に、像担持体に形成されるトナー像における肉薄トナー層(例えば単層のトナーしか付着していない部分)の転写性が悪化することについての言及はなく、このような転写性の悪化を抑制できる解決策を提供しうるものではなかった。
【0009】
この発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたものであって、カラーモード時に、像担持体に形成されるトナー像における肉薄トナー層の転写性の悪化を抑制できる画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は以下の手段によって達成される。
(1)像担持体と、前記像担持体に、複数色のトナーを使用して、1枚の画像内でトナー層の厚さの異なるトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記像担持体に形成された前記トナー像を用紙に転写する転写手段と、前記像担持体に形成されるトナー像における厚さの薄い肉薄トナー層を検出する検出手段と、を備え、前記トナー像は、発泡トナー像を含まない非発泡性のトナー像であり、前記トナー像形成手段は、前記検出手段により検出された前記肉薄トナー層の下側に、前記複数色のトナーのうちの前記肉薄トナー層とは異なる色のトナーを補給するとともに、前記転写手段による転写電圧は、前記肉薄トナー層の厚さよりも肉厚のトナー層に合わせて設定されていることを特徴とする画像形成装置。
(2)像担持体と、前記像担持体に、複数色のトナーを使用して、1枚の画像内でトナー層の厚さの異なるトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記像担持体に形成された前記トナー像を用紙に転写する転写手段と、を備え、前記トナー像形成手段は、前記像担持体に形成されるトナー像における厚さの薄い肉薄トナー層の下側に、前記肉薄トナー層とは異なる色のトナーを補給し、前記肉薄トナー層の下側に補給されるトナーは、肉薄トナー層以外の色のトナーのうち、帯電量が相対的に高いトナーであることを特徴とする画像形成装置。
(3)像担持体と、前記像担持体に、複数色のトナーを使用して、1枚の画像内でトナー層の厚さの異なるトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記像担持体に形成された前記トナー像を用紙に転写する転写手段と、を備え、前記トナー像形成手段は、前記像担持体に形成されるトナー像における厚さの薄い肉薄トナー層の下側に、前記肉薄トナー層とは異なる色のトナーを補給し、色毎に複数の画像ドットパターンからなるスクリーンを有し、前記肉薄トナー層が前記スクリーンで形成されている場合、前記肉薄トナー層の下側へのトナーの補給は、肉薄トナー層のスクリーンと同じスクリーンを使用して行うことを特徴とする画像形成装置。
(4)前記肉薄トナー層は単色のトナー層である前項1~3のいずれかに記載の画像形成装置。
(5)前記単色は黒色である前項4に記載の画像形成装置。
(6)前記肉薄トナー層の厚さは1色で作像するトナー層の厚さ未満である前項1~5のいずれかに記載の画像形成装置。
(7)前記肉薄トナー層の下側に補給されるトナー量は、当該トナー量の70~100%が転写残になる量である前項1~6のいずれかに記載の画像形成装置。
(8)前記肉薄トナー層の下側に補給されるトナー量は、環境、現像器の耐久状態、補給されるトナーの色、用紙種類のうちの少なくともいずれかに基づいて制御する前項1~7のいずれかに記載の画像形成装置。
(9)前記肉薄トナー層の下側に補給されるトナーは、肉薄トナー層以外の色のトナーのうち、帯電量が相対的に高いトナーである前項1または3に記載の画像形成装置。
(10)前記肉薄トナー層の下側に補給されるトナーの色はイエローである前項1~9のいずれかに記載の画像形成装置。
(11)前記肉薄トナー層の下側に補給されるトナーは、最も耐久が少ない現像器で供給されるトナーである前項1~10のいずれかに記載の画像形成装置。
(12)前記肉薄トナー層の下側に補給されるトナーは複数の現像器で供給されるトナーである前項1~10のいずれかに記載の画像形成装置。
(13)モノクロモードとカラーモードをユーザーが選択可能な選択手段を備えている前項1~12のいずれかに記載の画像形成装置。
(14)前記肉薄トナー層の下側にトナーを補給するモードと補給しないモードをユーザーが選択可能な選択手段を備えている前項1~13のいずれかに記載の画像形成装置。
(15)色毎に複数の画像ドットパターンからなるスクリーンを有する前項1または2に記載の画像形成装置。
(16)前記肉薄トナー層が前記スクリーンで形成されている場合、前記肉薄トナー層の下側へのトナーの補給は、肉薄トナー層のスクリーンと同じスクリーンを使用して行う前項15に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0011】
前項(1)に記載の発明によれば、複数色のトナーを使用して像担持体に形成される、1枚の画像内でトナー層の厚さの異なるトナー像であって、発泡トナー像を含まない非発泡性のトナー像において、検出手段により検出された厚さの薄い肉薄トナー層の下側に、複数色のトナーのうちの肉薄トナー層とは異なる色のトナーが補給される。このため、転写手段による転写電圧が、前記肉薄トナー層の厚さよりも肉厚のトナー層に合わせて設定されていても、像担持体に形成されたトナー像を用紙に転写したときには、肉薄トナー層の下側に補給されたトナーが像担持体の表面に残り、肉薄トナー層は用紙に転写されるから、用紙へ転写された画像において肉薄トナー層の濃度が薄くなってしまうという問題を解消できる。つまり、肉薄トナー層の転写性の悪化を抑制でき、画像品質の良い画像形成装置となる。
【0012】
前項()に記載の発明によれば、肉薄トナー層は単色のトナー層であるから、用紙へ転写された画像において単色部分の濃度が薄くなってしまうという問題を解消できる。
【0013】
前項()に記載の発明によれば、用紙へ転写された画像において黒色部分の濃度が薄くなってしまうという問題を解消できる。
【0014】
前項()に記載の発明によれば、肉薄トナー層が1色で作像するトナー層の厚さ未満の場合に、用紙へ転写された画像において肉薄トナー層の濃度が薄くなってしまうという問題をより効果的に解消できる。
【0015】
前項()に記載の発明によれば、肉薄トナー層の下側に補給されるトナー量を、当該トナー量の70~100%が転写残になる量とすることにより、補給されるトナーの用紙への転写を抑制することができ、転写後の用紙においてトナーの混色による色の変化を防ぐことができる。
【0016】
前項()に記載の発明によれば、肉薄トナー層の下側に補給されるトナー量を、環境、現像器の耐久状態、補給されるトナーの色、用紙種類のうちの少なくともいずれかに基づいて、望ましい値に制御することができる。
【0017】
前項()に記載の発明によれば、肉薄トナー層の下側に補給されるトナーは、肉薄トナー層以外の色のトナーのうち、帯電量が相対的に高いトナーであるから、補給されるトナー量を少なくでき、トナー消費を抑制できる。
【0018】
前項(10)に記載の発明によれば、肉薄トナー層の下側に補給されるトナーの色は、用紙に転写されたとしても目立ちにくいイエローであるから、画像品質の低下を防止することができる。
【0019】
前項(11)に記載の発明によれば、肉薄トナー層の下側に補給されるトナーは、最も耐久が少ない現像器で供給されるトナーであるから、現像器毎の寿命の偏りを少なくでき、サービスマンの訪問回数や現像器の購入回数等を少なくできる。
【0020】
前項(12)に記載の発明によれば、肉薄トナー層の下側に補給されるトナーは複数の現像器で供給されるトナーであるから、補給されるトナーの消費を平均化することができ、トナー消費の偏りによる現像器の寿命の偏りを防止できる。
【0021】
前項(13)に記載の発明によれば、モノクロモードとカラーモードをユーザーが選択することができる。
【0022】
前項(14)に記載の発明によれば、肉薄トナー層の下側にトナーを補給するモードと補給しないモードをユーザーが選択でき、ユーザーの意思を尊重することができる。
【0023】
前項(15)に記載の発明によれば、色毎に複数の画像ドットパターンからなるスクリーンを有するから、ドットパターンで形成された中間調の肉薄トナー層の下側に、異なる色のドットパターンのスクリーンによりトナーを補給することができる。
【0024】
前項(16)に記載の発明によれば、肉薄トナー層の下側へのトナーの補給は、肉薄トナー層のスクリーンと同じスクリーンを使用して行うから、肉薄トナー層とその下側に補給されるトナーの各ドットパターンを重ねることができ、用紙転写時に肉薄トナー層が像担持体に残るのを防止でき、肉薄トナー層を効率よく用紙に転写することができる。

【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成図である。
図2】転写電圧と転写効率の関係をトナー層の厚み毎に示したグラフである。
図3】従来の課題を説明するための図で、像担持体に形成した、用紙への二次転写前の肉薄トナー層を示す断面図である。
図4図3の肉薄トナー層を二次転写した後の像担持体と用紙のトナー像の様子を示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態において、像担持体に形成した、用紙への二次転写前の肉薄トナー層を示す断面図である。
図6図5の肉薄トナー層を二次転写した後の像担持体と用紙のトナー像の様子を示す斜視図である。
図7】肉薄トナー層の下側への補給用トナーの補給決定処理を示すフローチャートである。
図8】各パラメータに基づく具体的な補給用トナー量の補正の仕方を示す表である。
図9】肉薄トナー層の厚さに対する補給用トナー層の厚さの一例を示す表である。
図10】(A)(B)は、ドットパターンからなるスクリーンを用いることにより、肉薄トナー層を中間調の濃度に形成した場合に、肉薄トナー層の下側にトナーを補給する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、この発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成図である。
【0028】
図1において、符号4は、駆動ローラ15と従動ローラ16に掛け渡されて本体中央水平状態に配置された像担持体としての中間転写ベルトであり、中間転写ベルト4は矢印方向に走行するようになっている。
【0029】
中間転写ベルト4の下方には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー層を中間転写ベルト4に形成するためのイメージングユニット20Y、20M、20C、20Kが、中間転写ベルト4の上流側から下流側に向かってそれぞれ配置されている。
【0030】
各イメージングユニット20Y、20M、20C、20Kは、それぞれ回転可能な感光体1を備えると共に、感光体1の周囲に、帯電装置2、露光装置8、現像器3、一次転写ローラ(図示せず)、感光体1を清掃するクリーニングユニット9が配置されている。感光体1は帯電装置2により帯電された後、露光装置8により潜像が生成され、各トナーボトル13から現像器3に供給されるトナーによって潜像が現像され可視化される。可視化されたトナー像は一次転写ローラにより中間像担持体4に転写される。
【0031】
カラーモード時には、4個のイメージングユニット20Y、20M、20C、20Kにそれぞれ形成された各色のトナー像を、中間転写ベルト4上に重ね合わせ状態に転写して、中間転写ベルト4上に、4層のトナー層からなる1つのカラートナー像を形成する。モノクロモード時には、黒色のイメージングユニット20Kによりモノクロトナー層からなるトナー像を形成する。
【0032】
中間転写ベルト4上に形成されたトナー像は、二次転写ローラ5で更に転写材(用紙)に転写された後、分離部14で中間転写ベルト4から用紙が分離され、定着ユニット6で定着後、装置外に排出される。
【0033】
なお、図1において、符号7は中間転写ベルト4を清掃するクリーニング装置、符号10は中間転写ベルト4上のトナー像の濃度読み取りセンサ、符号11は用紙搬送位置読み取りセンサ、符号12は原稿を読み取るスキャナである。
【0034】
また、画像形成装置の構成やイメージングユニット20Y、20M、20C、20Kの構成や配置、動作は上記例に限定されず、例えばイメージングユニットが1つである画像形成装置において、1つのイメージングユニットで各色のトナー像を形成し、これらを中間転写体に重ね合わせて1つのカラー画像を形成しても良い。あるいは、クリーニング手段を持たないクリーニングレス方式などの画像形成装置であっても良い。
【0035】
通常、カラーモードでコピーやプリントを行なう場合、1枚の画像内において、画像(色)によって重ねるトナー層の厚さ(トナー厚さ)が異なる。なかでも、画像が黒色のみからなる部分は単層以下の厚さになり、複数の色を重ねるカラー部分とトナー厚みの差が大きくなる。
【0036】
トナー像を用紙に転写する際の転写出力は、トナー厚みが厚くなるほど高い電圧が必要になるため、カラーモードではトナー厚みが最も厚くなる部分に合わせた転写電圧を出力するのが一般的である。これを図2のグラフで説明する。
【0037】
図2は、転写電圧と転写効率の関係をトナー層の厚み毎に示したグラフである。図2において、A1は0.5層のトナー厚さを、A2は1層のトナー厚さを、A3は0.5層の下側に0.7層の別のトナー層を形成した場合のトナー厚さを、A4は2層のトナー厚さを、それぞれ示している。トナー厚さが大きくなるほど転写電圧を高く設定することで、転写効率が良くなることが示されている。図2の例では、トナー厚さが最も厚い2層のトナー層に合わせた転写電圧(図2では2層の決定電圧と記している)を出力する。
【0038】
しかし、トナー厚さが最も厚くなる部分に合わせた転写電圧を出力すると、トナー厚さの薄い黒色等の肉薄トナー層では転写出力が過剰になって逆転写が発生し、転写効率が悪化して用紙への転写後の濃度が低下し、画像が薄くなる。
【0039】
この現象を、用紙への二次転写後の状態を示す図3及び図4を用いて説明する。図3は、従来の課題を説明するための図で、中間転写ベルト4に形成した、用紙Pへの二次転写前の肉薄トナー層30を示す断面図である。図3の例では、カラートナー像の一部として、黒色Kの単色からなるトナー厚さの薄い肉薄トナー層30が形成されているものとする。
【0040】
中間転写ベルト4に形成された図3のカラートナー像を用紙Pに二次転写すると、図4に示すように、カラートナー像のうち黒色Kの肉薄トナー層30は、二次転写後も中間転写ベルト4に多くが残留してしまい、転写後の用紙P上の黒色Kのトナー量が少なくなって濃度が低下し、画像が薄くなる。なお、図4では、マゼンタMとシアンCの2層のトナー層についても二次転写後の様子を示しており、下層のマゼンタMの一部は中間転写ベルト4に残留するが、残留量は黒色の肉薄トナー層30の残留量よりも少ない。
【0041】
そこで、この実施形態では、肉薄トナー層30のトナーの多くが二次転写後も中間転写ベルト4に残留してしまい、転写後の用紙P上の濃度が低下するという問題を解決するため、次のような対策を講じている。
【0042】
図5は、本実施形態において、中間転写ベルト4に形成した、用紙Pへの二次転写前の肉薄トナー層30を示す断面図であり、図3に対応するものである。図5の例では、肉薄トナー層30の下側つまり肉薄トナー層30と中間転写ベルト4の間に、肉薄トナー層30の黒色Kとは異なる色(例えばイエローY)のトナーが補給され、補給されたトナーの層(補給用トナー層)40の上層に肉薄トナー層30が形成されている。
【0043】
このように、肉薄トナー層30の下側に肉薄トナー層30の色とは異なる色の補給用トナーを補給することにより、肉薄トナー層30と補給用トナー層40を併せた全体の厚さが厚くなる。この状態で用紙Pにトナー像を二次転写すると、図6に示すように、下側の補給用トナー層40のトナー色Yのトナーが中間転写ベルト4へ残留し、上側の肉薄トナー層30のトナー色Kのトナーは効率よく用紙Pに転写される。このようにして、本来の肉薄トナー層30の用紙Pへの良好な転写性を維持できるため、トナー層の厚さが薄くても、転写後の用紙P上の濃度の低下を防止して高い画像品質を実現することができる。なお、図6に示すように、補給用トナー層40の一部のトナーは肉薄トナー層30のトナーとともに用紙Pに転写される。
【0044】
ここで、補給用トナーの色は、肉薄トナー層30の色(この例では黒色K)よりも、中間転写ベルト4の回転方向からみて上流のイメージングユニット20Y、20M、20Cで使用されるトナーのうちの1色(図5、6の例ではY色)とする。
【0045】
また、肉薄トナー層30は2層(2色)以上のトナー層で形成されていても良いが、単色のトナー層の場合に肉薄となることが多いことから、単色のトナー層であることが望ましい。特に、単層で濃度低下が目立ちやすい黒色(K色)の肉薄トナー層30に対して適用するのが効果的である。
【0046】
また、肉薄トナー層30の色に関わらず、肉薄トナー層30の厚さが1色で作像するトナー層の厚さ未満(例えば0.5層)である場合には、2色(2層)で形成されるトナー層との転写必要電圧が大きく異なるため、補給用トナーによる補給効果が大きい。また、補給用トナーによる補給を行うことで、肉薄トナー層30のトナー量を節約することもできる。
【0047】
さらに、補給用トナーの量は補給用トナーの量の70~100%が転写残になる量に設定するのが望ましい。これによって、補給用トナーの用紙Pへの転写を可及的に抑制することができ、転写したトナーの混色による色の変化を防ぐことができる。
【0048】
図7は、肉薄トナー層30の下側への補給用トナーの補給決定処理を示すフローチャートである。
【0049】
ステップS01で印字制御を開始し、ステップS02で、形成する画像における肉薄トナー層30の位置や厚さ等を検出する。ステップS03では、検出した肉薄トナー層30に応じて下側に補給する補給用トナーの量を決定したのち、ステップS04で印字を開始し、ステップS05で処理を終了する。
【0050】
この実施形態では、ステップS03において決定される補給用トナーの量は、環境(温度及び/または湿度)、現像器3の耐久状態(現像剤の寿命等)、補給されるトナーの色(使用する現像器3)、用紙種類、転写ローラの寿命等のパラメータのうちの少なくともいずれかに基づいて、望ましい値に設定ないし補正することで、補給用トナーの殆どを逆転写により中間転写ベルト4に残すようにするのが望ましい。これによって、肉薄トナー層30の良好な転写性を確保でき転写後の混色による色彩変化を防ぐことができる。
【0051】
各パラメータに基づく具体的な補給用トナー量の補正の仕方を、図8の表に示す。すなわち、温湿度については高湿であるほど補給用トナー量を多くし、補給用トナーを供給する現像耐久枚数が多い場合は補給用トナー量を多くするのが良い。
【0052】
また、補給用トナーの色は、帯電量が高い色のトナーを使用するのが良い。帯電量が高いトナーは層の厚みが厚くなると高い転写電圧が必要になるのと同様に、転写するのに低い帯電量のトナーより高い電圧が必要になることが知られているため、帯電量が高いトナーを選択することで、補給用トナーの量を少なくすることが可能になり、補給用トナーの消費を節約することが可能になる。
【0053】
また、イエロー(Y色)のトナーは混色した際に目立ちにくく、特に画像の色が黒の場合は混色していることが殆ど認識できないため、補給用トナーとして採用するのが望ましい。また、肉薄トナー層30の色に対応するイメージングユニットの上流側に存在する複数のイメージングユニットにおける複数の現像器3のトナーにより、複数色で複数層の補給用トナー層40を形成しても良い。例えば、肉薄トナー層30の色がK色の場合は、イメージングユニット20Kの上流側のイメージングユニット20Y、20M、20Cの各現像器3のうちの少なくとも2つを使用する場合である。複数の現像器3を使用することで、補給用トナーの消費を平均化することができ、トナー消費の偏りによる現像器3の寿命の偏りを防止できる。
【0054】
また、肉薄トナー層30の厚さが薄いほど補給用トナーの量を多くするのが良く、電気抵抗が少ない種類の用紙Pに転写する場合は、補給用トナーの量を多くするのが良い。
【0055】
図9に、肉薄トナー層30の厚さに対する補給用トナー層40の厚さの一例を示す。肉薄トナー層30の厚さが薄くなるほど、補給用トナー層40の厚さは相対的に厚く設定されている。例えば、肉薄トナー層30が0.2層の場合、補給用トナー層40は0.4~0.7層に設定するのが良い。
【0056】
さらに、一般的にお客様の使用方法によって色毎のトナーの使用比率は異なるため、肉薄トナー層30の下側に補給されるトナーは、最も耐久(使用)が少ない現像器3で供給されるトナーであってもよい。この場合は、現像器3毎の寿命の偏りを少なくでき、サービスマンの訪問回数や現像器3の購入回数等を少なくできる。
【0057】
ところで、図10(A)(B)の上段に示すようなドットパターンからなるスクリーン1を用いることにより、肉薄トナー層30が中間調の濃度に形成される場合がある。スクリーン1では、複数のドットが縦横に整列状態に配置されている。
【0058】
この場合、肉薄トナー層30の下側に補給される補給用トナー層40としても、同図(B)の中段に示すように、肉薄トナー層30と同じドットパターンのスクリーン2を使用することが望ましい。これによって、同図(B)の下段の断面図に示すように、肉薄トナー層30の各トナードットと補給用トナー層40の各トナードットが重なって、肉薄トナー層30の各トナードットの下側に補給用トナー層40の各トナードットが存在する状態となるから、肉薄トナー層30の良好な転写性を確保でき転写後の混色による色彩変化を防ぐことができる。
【0059】
これに対し、図10(A)の中段に示すように、各ドットが1列おきに横方向にずれて配置されているドットパターンのスクリーン2を使用した場合には、同図(A)の下段の断面図の2列目に表示されているように、1列おきに肉薄トナー層30のトナードットと補給用トナー層40のトナードットの重なりが発生しない状態となり、肉薄トナー層30の転写性の改善効果が半減する。
【0060】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることはない。例えば、肉薄トナー層30が黒色である場合について主として説明したが、肉薄トナー層30は黒色以外の他の色であっても良い。
【0061】
また、ユーザーがコピーやプリントを行う際に、カラーモードとモノクロモードのいずれのモードとするかを、ハードキーや操作画面上のソフトキー等の選択手段により選択し、カラーモードが選択された場合に、肉薄トナー層30の下側に補給用トナーを補給する構成としても良い。
【0062】
さらには、肉薄トナー層30の下側に補給用トナーを補給するか否かを、ハードキーや操作画面上のソフトキー等の選択手段により選択し、補給用トナーを補給することが選択された場合に、肉薄トナー層30の下側に補給用トナーを補給する構成としても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 感光体
2 帯電ローラ
3 現像器
4 中間転写ベルト(像担持体)
5 二次転写ローラ
6 定着ユニット
7 中間転写ベルトクリーニング装置
8 露光装置
9 感光体クリーニングユニット
20Y、20M、20C、20K イメージングユニット(トナー像形成手段)
30 肉薄トナー層
40 補給用トナー層
P 用紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10