(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】感光性組成物、硬化物および有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20241126BHJP
G03F 7/033 20060101ALI20241126BHJP
G03F 7/037 20060101ALI20241126BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20241126BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20241126BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20241126BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20241126BHJP
C09B 57/12 20060101ALI20241126BHJP
C09B 57/00 20060101ALI20241126BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20241126BHJP
C08F 290/12 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
G03F7/004 505
G03F7/033
G03F7/004 504
G03F7/037 501
H05B33/14 A
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
C09B67/20 F
C09B57/12
C09B57/00 Z
C08F2/50
C08F290/12
(21)【出願番号】P 2020110109
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石川 暁宏
(72)【発明者】
【氏名】本間 高志
(72)【発明者】
【氏名】杉原 充
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-070352(JP,A)
【文献】特開2018-025797(JP,A)
【文献】国際公開第2018/038083(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/065359(WO,A1)
【文献】特表2018-528447(JP,A)
【文献】国際公開第2015/147186(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/033
G03F 7/037
H10K 50/10
H05B 33/12
H05B 33/22
C09B 67/20
C09B 57/12
C09B 57/00
C08F 2/50
C08F 290/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a-1)ベンゾジフラノン系黒色顔
料、(b)樹脂、(c)感光剤並びに(d)溶剤を含有し、式(1)におけるXの値が55~125であ
り、
前記(b)樹脂が(b-1)塩基性基含有樹脂および(b-2)アルカリ可溶性樹脂を含有し、
該(b-1)塩基性基含有樹脂が、式(9)で表される構造を有する樹脂を含有し、
該(c)感光剤がラジカル重合性基を分子内に2つ以上有する化合物および光重合開始剤を含有する感光性組成物。
X=T
2/A・・・(1)
(式(1)中、T
2は、T
2測定試料について測定核
1Hのパルス核磁気共鳴装置によるCarr-Purcell-Meiboom-Gill法で測定されるスピン-スピン緩和時間(ms)を3回測定したときの平均値を表す。
Aは該T
2測定試料の全量100重量%中の、粒子成分および溶剤成分を除いた全ての成分の含有量(重量%)を表し、6.50~8.80である。)
【化1】
(式(9)中、繰り返し単位数n
1
は整数であり、1~9を表す。R
21
、R
22
はそれぞれ独立に、炭素数1~5のアルキレン基を表す。*はアルキレンオキサイド構造との結合部位を表す。)
【請求項2】
動的光散乱法により測定される光散乱強度を基準とした粒子成分の粒度分布における最大累積粒子径Dmaxが、150~350nmである請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記(a-1)ベンゾジフラノン系黒色顔料が、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物およびそれらの異性体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含
有する請求項1または2に記載の感光性組成物。
【化2】
【化3】
(式(2)および式(3)中、R
1およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、CH
3、CF
3またはフッ素原子を表す。R
2、R
3、R
4、R
5、R
7、R
8、R
9およびR
10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のシクロアルキル基、炭素数1~12のアルケニル基、炭素数1~12のシクロアルケニル基、炭素数1~12のアルキニル基、COOH、COOR
11、COO
-、CONH
2、CONHR
11、CONR
11R
12、CN、OH、OR
11、OCOR
11、OCONH
2、OCONHR
11、OCONR
11R
12を表す。R
2およびR
3、R
3およびR
4、R
4およびR
5、R
7およびR
8、R
8およびR
9並びにR
9およびR
10は直接結合またはO、S、NHもしくはNR
11によって結合してもよい。R
11およびR
12は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のシクロアルキル基、炭素数1~12のアルケニル基、炭素数1~12のシクロアルケニル基または炭素数1~12のアルキニル基を表す。)
【請求項4】
前
記(b-1)塩基性基含有樹脂が、四級アンモニウム塩基を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体を含有し、該四級アンモニウム塩基が、四級アンモニウムカチオンと、炭素原子含有カウンターアニオンとの塩からなる構造を含む請求項3に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記(a-1)ベンゾジフラノン系黒色顔料がその表面に被覆材を有し、該被覆材がシリカを含有する請求項1~4のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項6】
前
記(b-2)アルカリ可溶性樹脂が、式(12)で表される構造を有する樹脂を含有する請求項1~5のいずれかに記載の感光性組成物。
【化4】
(式(12)中、R
32およびR
33並びにR
35およびR
36は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4の炭化水素基を表す。R
34およびR
37は、それぞれ独立に、炭素数1~16の1価の有機基を表す。*は炭素原子との結合部位を表す。)
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載の感光性組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項
7に記載の硬化物を具備する有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物、硬化物および有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、テレビ、車載モニターなど、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置が搭載された多くの製品が開発されている。有機EL表示装置は陰極から注入された電子と、陽極から注入された正孔との再結合によるエネルギーで発光する自発光型の表示装置であり、レッド/ブルー/グリーン、またはホワイトなどの各発光画素は絶縁層の機能を有するパターン状の画素分割層の開口部に形成される。
【0003】
通常、有機EL表示装置のパネル前面部、すなわち画素部から出力される光取り出し側には、太陽光などの外光反射を抑制して視認性を高めるために偏光板が具備される。ところが、偏向板は発光画素部から出力された光量の一部を遮蔽して輝度のロスが避けられないことがよく知られている。高い輝度を得るためには高い駆動電圧を印加する必要があり、発光素子への負担が大きくなる点が製品寿命の長い有機EL表示装置を開発する上での技術的ハードルとなる。
【0004】
そこで近年、偏光板を外したパネル構造とする試みがなされており、視認性と寿命のトレードオフ関係を解消するために画素分割層を黒色化して外光反射抑制機能を付与する技術が特に注目されている。黒色の画素分割層を形成するための材料としては、例えば、特定範囲のキュムラント平均粒子径を有するように分散された有機黒色顔料または混色有機黒色顔料を含有するネガ型感光性組成物が特許文献1で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示されたネガ型感光性組成物を用いて黒色の画素分割層を形成すると、偏光板を具備していないにも関わらず有機EL表示装置の駆動開始直後において駆動電圧が高いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a-1)ベンゾジフラノン系黒色顔料および/または(a-2)ベンゾイミダゾール骨格を有するペリレン系黒色顔料、(b)樹脂、(c)感光剤並びに(d)溶剤を含有し、式(1)におけるXの値が55~125である感光性組成物である。
X=T2/A・・・(1)
式(1)中、T2は、T2測定試料について測定核1Hのパルス核磁気共鳴装置によるCarr-Purcell-Meiboom-Gill法で測定されるスピン-スピン緩和時間(ms)を3回測定したときの平均値を表す。
Aは該T2測定試料の全量100重量%中の、粒子成分および溶剤成分を除いた全ての成分の含有量(重量%)を表し、6.50~8.80である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の感光性組成物によれば、有機EL表示装置において低い駆動電圧で高い輝度が得られる画素分割層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】全ての実施例および比較例における、画素分割層の形成工程を含む有機EL表示装置の作製工程である。
【
図2】式(1)におけるXの値と、有機EL表示装置の駆動電圧(V)の関係を示すグラフである。横軸がXの値であり、縦軸が駆動電圧(V)である。全ての実施例を丸(●)のプロットで表し、全ての比較例を三角(▲)のプロットで表す。
【
図3】最大累積粒子径Dmaxと、有機EL表示装置の駆動電圧(V)の関係を示すグラフである。横軸がDmax(nm)であり、縦軸が駆動電圧(V)である。全ての実施例を丸(●)のプロットで表し、比較例3~6を三角(▲)のプロットで表す。
【
図4】最大累積粒子径Dmaxと、緩和時間T
2の関係を示すグラフである。横軸がDmax(nm)であり、縦軸が緩和時間T
2(ms)である。全ての実施例を丸(●)のプロットで表し、比較例3~6を三角(▲)のプロットで表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。画素分割層とは、有機EL表示装置が具備する画素分割層のことを意味する。可視光線とは、波長380nm以上780nm未満の領域の光を意味し、近紫外線とは200nm以上380nm未満の領域の光を意味する。遮光とは、硬化膜に対して垂直方向に入射した光の強度と比べて、透過した光の強度を低下させる機能を意味し、遮光性とは、可視光線を遮蔽する程度のことをいう。
【0011】
感光性組成物とは、近紫外線に対して感光性を有し、かつアルカリ現像型の感光性組成物のことを意味しており、近紫外線に対して感光性を有さない組成物や、有機溶剤現像型の組成物を包括しない。樹脂とは、高分子鎖を有する重量平均分子量1000以上の化合物のことを意味し、重量平均分子量1000未満の低分子化合物を包括しない。重量平均分子量(Mw)とは、テトラヒドロフランをキャリヤーとするゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分析し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算した値である。
【0012】
着色材の呼称に用いた「C.I.」とは、Colour Index Generic Nameの略であり、The Society of Dyers and Colourists発行のカラーインデックスに基づき、カラーインデックスに登録済の着色材に関しては、Colour Index Generic Nameが、顔料または染料の化学構造や結晶形を表す。色の分類については、例えば、黄色顔料とは、「C.I.ピグメントイエロー」に属する顔料、青色顔料とは、「C.I.ピグメントブルー」に属する顔料、赤色顔料とは「C.I.ピグメントレッド」に属する顔料、紫色顔料とは「C.I.ピグメントバイオレット」に属する顔料を包括し、橙色顔料、茶色顔料、緑色顔料、黒色顔料などの記載もまた同様である。カラーインデックスに未登録の着色剤については具体的構造を例示する。
【0013】
なお、C.I.ピグメントブラック7などに分類されるカーボンブラックは、その結晶性の高低、導電性の高低または製法によらず無機黒色顔料に分類する。また、アニリンブラックなどに代表されるアジン系化合物はその分子量によって染料、顔料の区別が様々であり、本明細書中では黒色染料に分類する。したがって、例えば、C.I.ピグメントブラック1、21は本明細書中における有機黒色顔料に包括されない。また、アゾ系黒色顔料とは、アゾ基を有する有機基で表面修飾された無機黒色顔料を包括しない。
【0014】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、式(1)におけるXの値が55~125である感光性組成物を用いて画素分割層を形成すると、有機EL表示装置の駆動電圧を低くすることができることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明の感光性組成物は、(a-1)ベンゾジフラノン系黒色顔料および/または(a-2)ベンゾイミダゾール骨格を有するペリレン系黒色顔料、(b)樹脂、(c)感光剤並びに(d)溶剤を含有し、式(1)におけるXの値が55~125である感光性組成物である。
X=T2/A・・・(1)
式(1)中、T2は、T2測定試料について測定核1Hのパルス核磁気共鳴装置によるCarr-Purcell-Meiboom-Gill法で測定されるスピン-スピン緩和時間(ms)を3回測定したときの平均値を表す。
Aは該T2測定試料の全量100重量%中の、粒子成分および溶剤成分を除いた全ての成分の含有量(重量%)を表し、6.50~8.80である。
【0016】
本明細書中、T2は下記の測定方法により測定される値のことを意味する。
<T2測定条件>
測定装置:Bruker BioSpin社製パルス核磁気共鳴装置“BRUKER”(登録商標)minispec mp20
測定核:1H
測定核の周波数:19.95MHz
パルス幅:2.18μs(90°パルス)
パルス繰り返し時間:10秒
T2測定試料の固形分:10.00重量%
T2測定試料を充填する容器:10mmφNMR用サンプルチューブ
T2測定試料の液温:温調機能により25.0℃一定(大気圧下)
測定前の操作:プローブ内で20分間放置し、測定試料の液温を安定させる。
T2の算出方法:T2測定試料について測定核1Hのパルス核磁気共鳴装置によるCarr-Purcell-Meiboom-Gill法で測定されるスピン-スピン緩和時間(ms)を3回測定したときの平均値を算出し、小数点第一位を四捨五入する。
【0017】
ここでいうT2測定試料とは、T2を測定する対象物のことを意味し、感光性組成物の固形分を10.00重量%となるように調製したものに相当する。感光性組成物の固形分(重量%)とは、大気圧/空気下、実温200℃に設定したホットプレート上で1.00gの感光性組成物を30分間加熱した後の残分の重量(g)を100倍した値のことをいう。良好な塗布性を得て最終的に得られる画素分割層の膜厚均一性を高めるため、黒色画素分割層形成用の感光性組成物は通常、固形分10.00~30.00重量%の範囲で設計される。
【0018】
測定試料を調製する方法としては、感光性組成物の固形分が10.00重量%を上回る場合は、感光性組成物が含有する(d)溶剤成分と同一の溶剤組成となるように単独または複数種の溶剤を添加して攪拌し、固形分が10.00重量%となるように希釈する。なお、複数種の溶剤を添加する場合、(d)溶剤と同一の混合比率となるよう予め調製した混合溶剤を感光性組成物中に添加する。
【0019】
逆に、感光性組成物の固形分が10.00重量%を下回る場合は、感光性組成物を大気圧下/液温25±1℃の条件下で維持して攪拌して、加熱することなく(d)溶剤を揮発させて固形分11.00重量%にまで一旦濃縮した後、T2測定試料中の溶剤成分が、希釈前の感光性組成物中の(d)溶剤と同一の溶剤組成となるように単独または複数種の溶剤を添加して攪拌し、固形分が10.00重量%となるように希釈する。仮に(d)溶剤が大気圧下で揮発性を有さない場合は、減圧操作により濃縮しても構わない。
【0020】
感光性組成物中に含有する(d)溶剤の成分が不明である場合は、ガスクロマトグラフィ-質量スペクトル法で分析すればよい。なお、感光性組成物の固形分が元々10.00重量%である場合には、前述の固形分調整の操作は不要であり、そのままT2測定試料として用いることができる。
【0021】
パルス核磁気共鳴分析(Pulse Nuclear Magnetic Resonance Analysis)による緩和時間の測定方法について以下に説明する。
【0022】
90°パルス印加後に位相を90°変えて第二の90°パルスを印加し、エコー現象を誘起させるSolid-Echo法と、90°パルス印加で発生した回転磁場に位相を90°変えて180°パルスを印加し、これにより生じるそれぞれのエコー強度の減衰挙動を測定するCarr-Purcell-Meiboom-Gill法の2種類がある。緩和時間の短い固体試料を測定対象物とする場合は前者の方法が適用され、緩和時間の長い液体試料を測定対象物とする場合は位相の不完全さを相殺することができる後者の方法が適用される。本発明における測定試料は固体粒子を含有する液体状の分散体であるため、T2は後者の方法を適用して測定される値と定義する。
【0023】
測定試料に磁場をパルスとして与えると、測定試料中のプロトンの核スピンは向きの揃った励起状態となる。これが時間の経過とともに元のランダムな基底状態に戻るまでの過程を緩和現象といい、過程に要する時間が緩和時間であり、磁化強度の減衰曲線は緩和時間の関数で表されることが知られている。すなわち、緩和時間とは緩和現象の速さを表すパラメータである。また、静磁場に垂直な平面内での磁化が時間とともに零に近づき平衡へと復帰する過程をスピン-スピン緩和と呼び、その速さは横緩和時間で表される。
【0024】
この横緩和時間のことを緩和時間T2(ms)と定義する。緩和時間T2(ms)は磁場中に置かれた測定試料中のプロトン-プロトン間の相互作用により決定される。単位(ms)はミリ秒を意味し、緩和時間T2(ms)は正の値(T2>0)である。すなわち、分子運動性が高いほど近接するプロトンの相互作用が小さく、緩和時間T2(ms)は大きな値となる。逆に、分子運動性が低いほど、近接するプロトンの相互作用が大きく、緩和時間T2(ms)は小さな値となる。
【0025】
T2測定試料の緩和時間T2(ms)は、主に分散媒の分子運動性により制御することができる。分散媒とは、被分散物である粒子成分を分散させるための媒体のことであり、T2測定試料中に含有する粒子成分以外の全ての成分のことを意味する。
【0026】
一方、Aの値は該T2測定試料の全量100重量%中の、粒子成分および溶剤成分を除いた全ての成分の含有量(重量%)を表し、6.50~8.80である。この数値範囲は、T2測定試料中の粒子成分の含有量(%)が1.20~3.50重量%であることに加えて、感光性組成物の固形分中の粒子成分の含有量が12~35重量%であることもまた同時に意味する。Aの値は駆動電圧を低くする上で7.50~8.60であることが好ましい。
【0027】
式(1)におけるXの値は、T2の値をAの値で除して、小数点第一位を四捨五入することにより算出される。粒子成分および溶剤成分を除いた全ての成分1.00重量%あたりに換算した緩和時間(ms/重量%)を意味する。ここでいう粒子成分とは、感光性組成物中に含有する後述の(a)成分を包括する。粒子成分および溶剤成分を除く全ての成分とは、感光性組成物中に含有する後述の(b)成分および(c)成分を包括する。溶剤成分とは、T2測定試料の調製に用いた溶剤および感光性組成物中に含有する(d)成分を包括する。
【0028】
感光性組成物は、式(1)におけるXの値が55~125であることを満たす。式(1)におけるXの値が55~125であることにより、遮光性に優れた画素分割層を形成でき、それを具備する有機EL表示装置において高い輝度を得るための駆動電圧を低くすることができる。以下、高い輝度を得る場合に低い電圧で駆動させることができる特性を低電圧駆動(Low Voltage Driving)と表記する。Xの値は低電圧駆動の観点から、60~100であることが好ましく、65~85であることがより好ましい。
【0029】
本発明の感光性組成物は、(a-1)ベンゾジフラノン系黒色顔料(以下、(a-1)成分と表記する場合がある。)および/または(a-2)ベンゾイミダゾール骨格を有するペリレン系黒色顔料(以下、(a-2)成分と表記する場合がある。)を含有する。以下、(a-1)成分と(a-2)成分とをまとめて(a)成分と表記する場合がある。
【0030】
(a)成分は、高い可視光吸収性と高い近赤外線透過性を兼ね備えた顔料であり、近赤外線カメラを用いたマスクアライメントを簡便に行うことができ、高い位置精度と高い遮光性を両立する画素分割層を形成することができる。また、絶縁性に優れた顔料であるため(a)成分が充填された画素分割層は好ましく高い絶縁性を有する。
【0031】
感光性組成物がネガ型の感光性を有する場合、すなわちネガ型感光性組成物である場合、(c)感光剤が含む後述の光重合開始剤との光学的相性が良く、低電圧駆動の観点から、少なくとも(a-1)成分を含有することが好ましい。一方で、感光性組成物がポジ型の感光性を有する場合、すなわちポジ型感光性組成物である場合、(c)感光剤が含む後述の光酸発生剤との光学的相性が良く、低電圧駆動の観点から、(a-2)成分を含有することが好ましい。
【0032】
(a-1)成分とは、1つのベンゼン環に対して2つのフラノン環が縮合したベンゾジフラノン骨格を分子内に有する有機黒色顔料のことをいう。
【0033】
(a-1)成分としては、例えば、国際公開第2009/010521号に記載のビス-オキソジヒドロインドリレン-ベンゾジフラノンが挙げられる。中でも、低電圧駆動の観点から、(a-1)成分が式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物およびそれらの異性体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。ここでいう異性体とは、幾何異性体および互変異性体を包括する。異性体は混合物として含まれていてもよく、異性体の関係にある複数種の化合物が混晶をなして1つの結晶子または一次粒子を構成していてもよい。
【0034】
【0035】
【0036】
式(2)および式(3)中、R1およびR6は、それぞれ独立して、水素原子、CH3、CF3またはフッ素原子を表す。R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のシクロアルキル基、炭素数1~12のアルケニル基、炭素数1~12のシクロアルケニル基、炭素数1~12のアルキニル基、COOH、COOR11、COO-、CONH2、CONHR11、CONR11R12、CN、OH、OR11、OCOR11、OCONH2、OCONHR11、OCONR11R12を表す。R2およびR3、R3およびR4、R4およびR5、R7およびR8、R8およびR9、並びにR9およびR10は、直接結合またはO、S、NHもしくはNR11によって結合してもよい。R11およびR12は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のシクロアルキル基、炭素数1~12のアルケニル基、炭素数1~12のシクロアルケニル基または炭素数1~12のアルキニル基を表す。
【0037】
中でも、低電圧駆動の観点から、(a-1)成分が、式(2)中のR1~R10が水素原子である化合物またはその異性体を含有することがより好ましい。すなわち、(a-1)成分が、式(4)で表される化合物またはその異性体を含有することがより好ましい。式(4)で表される化合物は、市販品を用いてもよく、例えば、“Irgaphor”(登録商標)Black S0100CF、およびExperimental Black 582(いずれもBASF社製)が挙げられる。
【0038】
【0039】
(a-2)成分とは、ベンゾイミダゾール骨格とペリレン骨格とを有する有機黒色顔料のことを意味する。中でも、(a-2)成分が、式(5)で表される化合物および/または式(6)で表される化合物を含有することが好ましい。これらシス-トランスの関係にある異性体は混合物として含まれていてもよく、あるいは複数種の化合物が混晶をなして1つの結晶子または一次粒子を構成していてもよい。
【0040】
【0041】
【0042】
式(5)および式(6)中、R13~R20は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、または水酸基を表す。
【0043】
中でも、低電圧駆動の観点から、R13~R20が水素原子である化合物を含有することがより好ましい。すなわち、(a-2)成分が、シス体である式(7)で表される化合物およびトランス体である式(8)で表される化合物の混合物からなるペリレン系黒色顔料を含有することがより好ましい。紫外線透過率が高く露光感度に優れ、低駆動電圧の観点から、前述のシス体とトランス体との合計を100重量%としてトランス体を30重量%以上含有することがさらに好ましい。
【0044】
式(7)で表される化合物と式(8)で表される化合物との混合物としては市販品を用いてもよく、例えば、“Lumogen Black”(登録商標)FK4281(BASF社製)が挙げられる。(a-2)成分は顔料の乾燥凝集性を緩和し、後述する湿式分散処理における解凝集性を高める目的でロジン系処理剤が施されたものであっても構わない。ロジン系処理剤は顔料表面に対して5~25重量%、酸析により不溶化して処理されたものであることが望ましい。ロジン系処理剤を含む微細化顔料としては市販品を用いてもよく、例えば、“Lumogen Black”(登録商標)K0087、“Paliogen Black”(登録商標)EH0788(いずれもBASF社製)が挙げられる。
【0045】
【0046】
【0047】
本発明の感光性組成物は、画素分割層の光学特性を調整する目的で、その他の粒子成分をさらに含有してもよく、例えば、(a)成分以外の有機黒色顔料の他、有機黄色顔料、有機橙色顔料、有機赤色顔料、有機青色顔料、有機紫色顔料、無機黒色顔料が挙げられる。
【0048】
(a)成分以外の有機黒色顔料としては、例えば、特開2010-116549号公報、特開2017-193689号公報に記載のアゾメチン系黒色顔料や、特開2018-145353号公報に記載のアントラキノン系黒色顔料が挙げられる。有機黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー120、138、139、151、175、180、185、181、192、193、194が挙げられる。有機橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ13、36、43、61、64、71、72が挙げられる。
【0049】
有機赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド122、123、149、178、179、180、189、190、202、209、254、255、264が挙げられる。有機青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:6、16、56、57、60、61、64、65、66、75、79、80を好ましく挙げることができる。有機紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、32、37が挙げられる。無機黒色顔料としては、ポリマーで被覆されたカーボンブラック、窒化チタンが挙げられる。中でも、アゾメチン系黒色顔料、ポリマーで被覆されたカーボンブラックが好ましい。
【0050】
一般的には、粒子成分の比表面積のみが異なる同一の種類の粒子成分からなる複数の粒子分散液を比較する場合、粒子成分の比表面積が大きいほど緩和時間T2は小さくなり、比表面積が小さいほど緩和時間T2が大きくなるという関係性の得られる一定の範囲が存在することが知られている。しかしながら、構成成分および/または製造方法が異なる感光性組成物同士の比較においては、例えば、粒子成分の表面平滑性、官能基、電荷、活性度の違いに加えて、(b)~(d)成分との相互作用などが複合的に分散媒全体の分子運動性に影響するため、緩和時間T2は全ての構成成分および分散体の製法によって左右される。したがって、本発明の効果を得るためには、それら種々パラメータを総合的に考慮して、式(1)におけるXの値が55~125となるように制御することが必要である。
【0051】
粒子成分により式(1)におけるXの値を制御するための手段は特に限定されないが、感光性組成物が含有する粒子成分の比表面積としては、10~100m2/gが好ましく、20~60m2/gがより好ましい。複数種の粒子を混合して用いる場合、比表面積はそれぞれの粒子ごと比表面積の加重平均により算出することができる。比表面積が前述の範囲内であれば、Xの値を55~125の範囲に制御しやすくなる。ここでいう比表面積とは、窒素を吸着ガスとして用いたBET法による比表面積を意味する。
【0052】
粒子成分の平均一次粒子径は、10~150nmが好ましく、40~100nmがより好ましい。平均一次粒子径が前述の範囲内であれば、顔料凝集物の偏在が抑制され、Xの値を55~125の範囲に制御しやすくなる。ここでいう平均一次粒子径とは、画像解析式粒度分布測定装置を用いた粒度測定法により算出した、一次粒子径の数平均値をいう。画像の撮影には、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いることができ、倍率50000倍の条件で、一次粒子が100個以上撮影された画像から、平均一次粒子径を算出することができる。粒子が球状でない場合は、その長径と短径の平均値を一次粒子径とする。画像の解析には、マウンテック社製画像解析式粒度分布ソフトウェアMac-Viewを用いることができる。
【0053】
平均一次粒子径は湿式粉砕処理により制御することができる。湿式粉砕処理としては、例えば、(a)成分であれば、ソルベントソルトミリング法などの公知手法を用いることができる。
【0054】
感光性組成物において、(a-1)成分はその表面に被覆材を有し、被覆材がシリカを含有することが好ましい。
【0055】
本発明の感光性組成物がネガ型感光性を有する場合、(a-1)成分が式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物およびまたはそれらの異性体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、(c)感光剤がラジカル重合性基を分子内に2つ以上有する化合物および光重合開始剤を含有し、さらに(a-1)成分がその表面に被覆材を有し、被覆材がシリカを含有することがより好ましい。さらに、(b)樹脂が、(b-1)塩基性基含有樹脂を含有し、(b-1)塩基性基含有樹脂が、四級アンモニウム塩基を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体を含有し、四級アンモニウム塩基が、四級アンモニウムカチオンと、炭素原子含有カウンターアニオンとの塩からなる構造を含むことが最も好ましい。
ここでいうシリカとは、二酸化ケイ素(SiO2)、または含水二酸化ケイ素(SiO2・H2O)のことをいう。シリカは画素分割層の開口部となる電極表面との相互作用が有機顔料と比べて小さく、式(1)におけるXの値が同等となるように制御したとき、駆動電圧をより低くする効果を得ることができる。被覆材として用いるためのシリカとしては、顔料表面への密着性に優れ、緻密なシリカ層が得られる点で、有機酸および/または無機酸と、アルカリ金属ケイ酸塩との反応により得られるシリカが望ましい。
【0056】
(a-1)成分の被覆の方法としては、例えば、(a-1)成分を水系媒体中で解凝集させた後に、硫酸の希薄水溶液と、アルカリ性であるアルカリ金属ケイ酸塩の希薄水溶液とをそれぞれ連続的に並行して添加し、中和させて顔料表面で含水シリカを析出させて層状に堆積させる。次いで、乾式での加熱処理により脱水焼結、粉砕して得ることができる。加熱処理の温度としては顔料表面への密着性を高める上で、230℃以上が好ましい。加熱前の粒子形状を維持して異物の発生を抑える上で、280℃以下がより好ましい。加熱時間としては同様の観点から1~6時間が好ましい。
【0057】
シリカを含有する被覆材による低電圧駆動の効果を高める上で、SiO2換算質量あたりの反応性シラノール基の数が、5.00×1010/g以上、7.50×1018/g以下となるように脱水焼結させることが好ましい。反応性シラノール基の数は、有機溶媒中、シリカが有する残存シラノール基に対してシラン処理剤である(3,3,3-トリフルオロプロピル)クロロジメチルシランを塩基触媒の存在下で反応させた後、燃焼法イオンクロマトグラフィにより全フッ素量を定量して算出することができる。シリカ以外の成分がフッ素原子を含む場合にはそれらを由来とするフッ素量を差し引いて算出すればよい。
【0058】
シリカを含有する被覆材による効果は、感光性組成物がネガ型感光性組成物である場合、後述の露光工程において十分に膜の光硬化を促進することができない場合、例えば、ハーフトーン加工により段差を有する画素分割層を形成し、スペーサー機能を付与した場合の低電圧駆動化において特に有効となる。ここでいうハーフトーン加工とは、面内で光透過率が異なる開口部を有するハーフトーン露光マスクを用いてパターン露光をした後に現像して、基板面内に厚膜部と薄膜部とで膜厚の差がある形状を有するパターンを形成する方法のことを意味する。
【0059】
ハーフトーン加工による画素分割層の形成方法の具体例としては、例えば、国際公開WO2019/182041号に記載の方法が挙げられる。なお、前述のシリカは式(1)におけるXの値を制御する目的で、その表面の一部が、例えば、ブロックイソシアネートシランなどのシランカップリング剤により表面修飾されていてもよい。
【0060】
本発明の感光性組成物は(b)樹脂(以下、(b)成分と表記する場合がある。)を含有する。(b)成分は粒子成分の分散状態を安定化する効果を奏するとともに、画素分割層を構成する結着剤である。
【0061】
(b)成分により式(1)におけるXの値を制御するための手段は特に限定されないが、例えば、(b)成分に属する成分の分子量分布や、粒子成分に対して吸着性を有する官能基の数、粒子1個に吸着する1分子あたりの吸着点の数、複数の粒子間に跨った橋掛け型の吸着形態をとる分子の数、後述する(d)溶剤の分子との親和性を操作する方法が挙げられる。
【0062】
(b)樹脂は、(b-1)塩基性基含有樹脂および/または(b-2)アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。それぞれ(b-1)成分、(b-2)成分と表記する場合がある。
【0063】
感光性組成物がネガ型感光性組成物である場合、低電圧駆動の観点から、(b-1)成分および(b-2)成分を含有することが好ましい。一方で、ポジ型感光性組成物である場合、低電圧駆動の観点から、(b-2)成分のみを含有することが好ましい。なお、塩基性基を含有し、かつアルカリ可溶性樹脂に相当する樹脂は(b-1)成分に属するものと定義する。
【0064】
(b-1)成分とは、分子内に1つ以上の塩基性基を有する樹脂のことをいい、いわゆる樹脂型分散剤に相当する。
【0065】
塩基性基としては、一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基、およびそれらの塩に加えて、四級アンモニウム塩基が挙げられる。樹脂構造中の塩基性基の結合部位は特に限定されず、末端基、連結基、側鎖および/または主鎖の一部であってもよく、環状構造またはポリアミン構造をなしていてもよい。中でも、式(1)におけるXの値を55~125の範囲内に制御する上で、三級アミノ基、四級アンモニウム塩基が好ましく、(b-1)成分が両官能基を含有することがより好ましい。なお、含窒素構造であるアミド構造およびイミド構造は、ここでいう塩基性基に属さない。
【0066】
環状構造を有する塩基性基としては、例えば、無置換もしくは置換基を有する含窒素複素環構造を有する有機基が挙げられ、例えば、ピリジル基、ピペラジニル基、N-メチルピペラジニル基、N-エチルピペラジニル基、N-ヒドロキシエチルピペラジニル基、ピペリジル基が挙げられる。
【0067】
ポリアミン構造を有する塩基性基としては、例えば、三級アミノ基のみを含む直鎖状ポリアルキレンアミン構造、少なくとも四級アンモニウム塩基を含む直鎖状ポリアルキレンアミン構造、少なくとも一級アミノ基または二級アミノ基を含む直鎖状または分岐状ポリアルキレンイミン構造が挙げられる。中でも、三級アミノ基のみを含む直鎖状ポリアルキレンアミン構造が好ましい。
【0068】
(b-1)成分は塩基性基以外の部位に少なくとも親溶媒性を有する高分子鎖を有することが好ましい。親溶媒性高分子鎖としては、ポリエーテル系高分子鎖、(メタ)アクリル系高分子鎖、ポリウレタン系高分子鎖、ポリエステル系高分子鎖、ポリアミド系高分子鎖が挙げられ、中でも、低電圧駆動の観点から、ポリエーテル系高分子鎖、(メタ)アクリル系高分子鎖が好ましく、(b-1)成分が両方の高分子鎖を含有することがより好ましい。ここでいう(メタ)アクリル系との表記は、メタクリル系またはアクリル系を意味する。
【0069】
(b-1)成分に属する樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、低電圧駆動の観点から、1000~25000が好ましく、3000~15000がより好ましい。
【0070】
(b-1)成分に属する樹脂の塩基価としては、低電圧駆動の観点から、3~100(mgKOH/g)が好ましく、10~50(mgKOH/g)がより好ましい。ここでいう塩基価(mgKOH/g)とは(b-1)成分1gを中和するために要する塩酸と当量の水酸化カリウムの重量(mg)のことをいう。(b-1)成分1gを塩酸溶液で中和させた後、水酸化カリウム溶液で滴定することで測定することができる。また、塩基価から、塩基性基1mol当たりの樹脂重量である塩基当量(g/mol)を算出することもできる。塩基価の測定は、電位差自動滴定装置(AT-510;京都電子工業(株)製)を用い、滴定試薬として0.1mol/Lの塩酸溶液、滴定溶剤としてテトラヒドロフランを用いて、「JIS K2501(2003)」に基づき、電位差滴定法により測定して求めることができる。樹脂がテトラヒドロフランへの溶解性に乏しい場合、エタノールまたは2-プロパノールを用いてよい。
【0071】
(b-1)成分の含有量は、Xの値を55~125の範囲に制御する上で、(a)成分100重量%に対して5~50重量%が好ましく、10~40重量%がより好ましい。
【0072】
三級アミノ基のみを含む直鎖状ポリアルキレンアミン構造とポリエーテル系高分子鎖とを有する樹脂としては、例えば、一級アミノ基および二級アミノ基を有する脂肪族ポリアミン化合物へのポリエーテル高分子鎖のグラフト反応により得られる樹脂が挙げられる。Xの値を55~125の範囲に制御する上で好ましく用いることができる樹脂としては、式(9)で表される構造を有する樹脂が挙げられる。
【0073】
【0074】
式(9)中、繰り返し単位数n1は整数であり、1~9を表す。R21、R22はそれぞれ独立に、炭素数1~5のアルキレン基を表す。*はアルキレンオキサイド構造との結合部位を表す。
【0075】
低電圧駆動の観点から、式(9)中、n1は1~5であることが好ましく、R21およびR22はそれぞれメチレン基、エチレン基またはプロピレン基であることが好ましい。*はエチレンオキサイド構造またはプロピレンオキサイド構造との結合部位であることが好ましい。ポリエーテル系高分子鎖としては、エチレンオキサイド構造およびプロピレンオキサイド構造を含むポリアルキレン構造を有することが好ましく、末端基が水酸基であることが好ましい。式(9)中、ポリアルキレンオキサイド構造とは、繰り返し単位としてアルキレンオキサイド構造が3つ以上連なった構造のことをいう。
【0076】
三級アミノ基および/または四級アンモニウム塩基を有し、かつ(メタ)アクリル系高分子鎖を有する樹脂もまた、Xの値を55~125の範囲に制御する上で好ましく用いることができる。
【0077】
樹脂の構造としては、塩基性基を有する構造単位の分子構造中への連続的な配置と、狭く制御された分子量分布により(a)成分を含む粒子成分への吸着効率を高めることができる点で、(メタ)アクリル系ブロック共重合体が望ましい。ここでいう(メタ)アクリル系ブロック共重合体とは、塩基性基を有する構造単位が10個以上連なった構造(Aブロック)と、塩基性基を有さない構造単位が10個以上連なった構造(Bブロック)とが結合した(メタ)アクリル系共重合体のことをいう。(メタ)アクリル系ブロック共重合体としては、例えば、式(10)で表される構造単位を有するAブロックと、式(10)で表される構造単位を有さないBブロックとを含むA-Bジブロック型、A-B-Aトリブロック型またはB-A-Bトリブロック型などの(メタ)アクリル系共重合体が挙げられる。Bブロックの構成単位としては、塩基性基を有さない(メタ)アクリルエステル類や(メタ)アクリルアミド類などの共重合成分を由来とする構造単位が挙げられる。(メタ)アクリル系ブロック共重合体の合成方法としては、例えば、ATRP法(Atom transfer polymerization)やRAFT法(Reversible addition fragmentation chain transfer polymerization)、国際公開第2006/074969号に開示されたCFRP法(Controlled free radical polymerization)、有機テルル化合物を用いたリビングラジカル重合法などが挙げられる。
【0078】
【0079】
R23は、水素原子またはメチル基を表す。R24は炭素数1~5の二価の連結基を表す。R25およびR26は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~12の芳香族基またはベンジル基を表す。*は炭素原子との結合部位を表す。
【0080】
低電圧駆動の観点から、R24はメチレン基、エチレン基またはプロピレン基が好ましく、R25およびR26は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基またはプロピル基が好ましい。最も好ましくは、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートを由来とする構造である。
【0081】
(a-1)成分が、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物およびまたはそれらの異性体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、さらに、(c)感光剤がラジカル重合性基を分子内に2つ以上有する化合物および光重合開始剤を含有する場合、(b)樹脂が、(b-1)成分を含有し、(b-1)成分が、四級アンモニウム塩基を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体を含有し、四級アンモニウム塩基が、四級アンモニウムカチオンと、炭素原子含有カウンターアニオンとの塩からなる構造を含むことが好ましい。
四級アンモニウムカチオンと、炭素原子含有カウンターアニオンとの塩からなる構造を含み、かつ四級アンモニウムカチオンと、塩素原子含有カウンターアニオンとの塩からなる構造を有さないことがさらに好ましい。具体例としては、式(11)で表される構造単位を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体を含有することがより好ましい。
【0082】
式(11)で表される構造単位を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体の合成方法としては、例えば、前述の式(10)で表される構造単位を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体の三級アミノ基を四級化する方法が挙げられ、全ての三級アミノ基を四級化してもよく、あるいは部分的に四級化してもよい。なお、四級化反応は、所望のカウンターアニオン源となる有機酸とグリシジルエーテル類と有機溶剤との共存下で加熱するなどして直接行ってもよく、あるいは一旦ハロゲンアニオンを含む四級アンモニウム塩基へ変換した後にアニオン交換を行ってもよい。
【0083】
【0084】
R27は、水素原子またはメチル基を表す。R28は炭素数1~5の二価の連結基を表す。R29~R31は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~12の芳香族基またはベンジル基を表す。X-は炭素原子含有カウンターアニオンを表す。*は炭素原子との結合部位を表す。
【0085】
低電圧駆動の観点から、R28はメチレン基、エチレン基またはプロピレン基が好ましく、R29~R31は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基またはベンジル基が好ましい。X-としては、カルボン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオンが挙げられるが、カルボン酸アニオンが好ましい。カルボン酸アニオンとしては、例えば、酢酸アニオン、乳酸アニオン、ベンゼンカルボン酸アニオン、ナフタレンカルボン酸アニオン、p-スチレンカルボン酸アニオンが挙げられる。
【0086】
四級アンモニウムカチオンと、炭素原子含有カウンターアニオンとの塩からなる四級アンモニウム塩基を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体としては市販品を用いてもよく、例えば、“DISPERBYK”(登録商標)-2013、2025が挙げられる。
【0087】
(b-2)成分とは、アルカリ可溶性基を有し、酸価が5(mgKOH/g)以上であり、前述の塩基性基を有さず、重量平均分子量(Mw)が1000以上150000以下の樹脂のことをいう。アルカリ可溶性基とは、水酸基、カルボキシル基、リン酸基およびスルホ基のことをいう。アルカリ可溶性基を有することで現像液に対する溶解性が高まり、ネガ型のフォトリソグラフィにおいては未露光部を、ポジ型のフォトリソグラフィにおいては露光部を選択的に除去しやすくなり、画素分割層のパターニング性が良好なものとなる。
【0088】
酸価とは、樹脂1gを中和させるために要する水酸化カリウムの重量(mg)のことをいい、樹脂1gを水酸化カリウム溶液で滴定することで測定することができる。酸価の値から酸性基1mol当たりの樹脂重量である酸当量(g/mol)を算出することもできる。
【0089】
酸価の測定は、電位差自動滴定装置(AT-510;京都電子工業(株)製)を用い、滴定試薬として0.1mol/Lの水酸化カリウム溶液、滴定溶剤としてテトラヒドロフランを用いて、「JIS K2501(2003)」に基づき、電位差滴定法により測定して求めることができる。樹脂がテトラヒドロフランへの溶解性に乏しい場合、エタノール、2-プロパノールまたはジメチルホルムアミドを用いてもよい。
【0090】
(b-2)成分としては、アルカリ可溶性マレイミド樹脂、アルカリ可溶性(メタ)アクリル樹脂、アルカリ可溶性ポリイミド樹脂、アルカリ可溶性ポリイミド前駆体、アルカリ可溶性ポリベンゾオキサゾール樹脂、アルカリ可溶性ポリベンゾオキサゾール前駆体、アルカリ可溶性カルド樹脂、アルカリ可溶性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、アルカリ可溶性ポリシロキサン樹脂、アルカリ可溶性ノボラック樹脂、アルカリ可溶性ポリウレタン樹脂、アルカリ可溶性ポリエステル樹脂、アルカリ可溶性ポリエーテル樹脂が挙げられる。中でも、低電圧駆動の観点から、アルカリ可溶性マレイミド樹脂、アルカリ可溶性(メタ)アクリル樹脂、アルカリ可溶性ポリイミド樹脂、アルカリ可溶性ポリイミド前駆体、アルカリ可溶性カルド樹脂が好ましく、アルカリ可溶性マレイミド樹脂とアルカリ可溶性(メタ)アクリル樹脂を併用することがより好ましい。なお、マレイミドを由来とする構造単位を有する場合、マレイミド以外の共重合成分を由来とする構造単位を有していても、アルカリ可溶性マレイミド樹脂に属するものと定義する。
【0091】
アルカリ可溶性ポリイミド前駆体とは、後述のキュア工程における熱処理によりポリイミド樹脂が得られるアルカリ可溶性樹脂のことをいい、具体的には、アルカリ可溶性ポリアミド酸またはアルカリ可溶性ポリアミド酸エステルのことをいう。
【0092】
アルカリ可溶性カルド樹脂とは、カルド骨格を有するアルカリ可溶性樹脂のことをいい、カルド骨格とは、フルオレン骨格などの環状構造を構成する環炭素原子である四級炭素原子に、2つの芳香族基が単結合で繋がった骨格をいう。
【0093】
(b-2)成分に属する樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、低電圧駆動の観点から、2000~50000が好ましく、3000~30000がより好ましい。
【0094】
(b-2)成分に属する樹脂の酸価としては、低電圧駆動の観点から、30~300(mgKOH/g)が好ましく、50~200(mgKOH/g)がより好ましい。
【0095】
感光性組成物がネガ型感光性組成物である場合、低電圧駆動の観点から、(b-2)成分としては、式(12)で表される構造を有する樹脂、式(13)で表される構造を有する樹脂、式(14)で表される構造を有する樹脂および式(15)で表される構造を有する樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。式(13)で表される構造を有する樹脂、式(14)で表される構造を有する樹脂を含有する場合、R40およびR41は、テトラヒドロフタル酸無水物を由来とする環状構造であることが特に望ましい。
【0096】
【0097】
式(12)中、R32およびR33、R35およびR36は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4の炭化水素基を表す。R34およびR37は、それぞれ独立に、炭素数1~16の1価の有機基を表す。*は炭素原子との結合部位を表す。
【0098】
【0099】
式(13)中、R38およびR39は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R40は炭素数2~6の2価の有機基を表す。*は炭素原子との結合部位を表す。
【0100】
【0101】
式(14)中、R42およびR43は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R41は炭素数2~6の2価の有機基を表す。*は結合部位を表す。
【0102】
【0103】
式(15)中、R44は水素原子またはメチル基を表す。*は炭素原子との結合部位を表す。
【0104】
中でも、(b-2)成分が、式(12)で表される構造を有する樹脂を含有することがより好ましい。低電圧駆動の観点から、R32、R33、R35およびR36は水素原子が好ましく、R34およびR37は置換基を有していてもよい環状構造を有する炭素数6~16の一価の有機基が好ましい。すなわち、式(16)で表される構造を有する樹脂を含有することがさらに好ましい。
【0105】
【0106】
式(16)中、R45およびR46は、それぞれ独立に、直接結合または炭素数1~4の2価の連結基を表す。R47およびR48は、それぞれ独立に、エチレン性不飽和二重結合を1つ有する1価の有機基、またはカルボキシル基を表す。n1およびn2は整数を表し、それぞれ独立に、0~3である。ただし、R45と(R47)n2が含む炭素数の合計、R46と(R48)n3が含む炭素数の合計は、それぞれ独立に、0~10である。
【0107】
式(16)で表される構造を有する樹脂は、例えば、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-カルボキシフェニルマレイミド、N-ジカルボキシマレイミド、N-カルボキシシクロヘキシルメチルマレイミドなどのマレイミド化合物を由来とすることができる。また、エチレン性不飽和二重結合を1つ有する一価の有機基としては、例えば、N-カルボキシフェニルマレイミド由来のカルボキシル基に、グリシジル(メタ)アクリレートが有するグリシジル基を付加反応させて得られる有機基が好ましく挙げられる。
【0108】
式(12)で表される構造を有する樹脂、および式(16)で表される構造を有する樹脂は、N-置換マレイミド化合物と、分子内に1つエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との共重合体であることが好ましい。合成方法としては、熱重合開始剤と分子量調節剤の存在下、溶剤中で加熱する方法が挙げられる。低電圧駆動と現像性の観点から、N-置換マレイミド化合物由来の構造単位が15~50mol%であることがより好ましい。
【0109】
分子内に1つエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレンが挙げられる。分子量調節剤としては、例えば、1,1-ジフェニルエチレン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタンが挙げられる。
【0110】
(e)染料型分散助剤が、アルカリ可溶性基と芳香族テトラカルボン酸ビスイミド骨格とを有する化合物またはその塩を含有する場合、低電圧駆動の観点から、前記(b)樹脂が(b-2)アルカリ可溶性樹脂を含有し、前記(b-2)成分がアルカリ可溶性ポリイミド前駆体を含有することが好ましい。アルカリ可溶性ポリイミド前駆体としては、例えば、式(17)で表される構造を有する樹脂が挙げられる。具体例としては、特開2002-278061号に記載の、アルカリ可溶性基が部分エステル化されたアルカリ可溶性ポリイミド前駆体が挙げられる。
【0111】
【0112】
式(17)中、R49およびR50は2~8価の有機基を表す。R51およびR52は、水酸基または-COOMを表し、それぞれ単一の基であっても、異なる基が混在していてもよい。Mは水素原子、または炭素数1~20の1価の炭化水素基を示す。rは2~6の整数を表す。sは0~6の整数を表す。ただし、R51が水酸基である場合、R49は芳香族環を有し、R52が水酸基である場合、R50は芳香族環を有する。
R49-(R51)rは、酸二無水物の残基を表す。R49は、芳香族環または環状脂肪族基を有する、炭素原子数5~50の有機基が好ましい。
R50-(R52)sはジアミンの残基を表す。R50は、芳香族環または環状脂肪族基を有する、炭素原子数5~40の有機基が好ましい。
【0113】
本発明の感光性組成物は、(c)感光剤を含有する。以下、(c)成分と表記する場合がある。(c)成分もまた、式(1)におけるXの値を制御する上で効果的な成分であり、特に粒子成分と(b)成分との相互作用を阻害しないものであることが望ましい。
【0114】
感光性組成物がネガ型感光性組成物である場合、(c)感光剤が(c-1)ラジカル重合性基を分子内に2つ以上有する化合物および光重合開始剤を含有する。以下、(c-1)成分と表記する場合がある。本発明の感光性組成物は、低電圧駆動の観点から、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物およびそれらの異性体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、さらに、(c)感光剤がラジカル重合性基を分子内に2つ以上有する化合物および光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0115】
一方、感光性組成物がポジ型感光性組成物である場合、(c)感光剤が(c-2)キノンジアジド化合物を含有する。以下、(c-2)成分と表記する場合がある。本発明の感光性組成物は、低電圧駆動の観点から、式(5)で表される化合物および/または式(6)で表される化合物を含有し、さらに、(c)感光剤がキノンジアジド化合物を含有することが好ましい。
【0116】
(c-1)成分を含有することで紫外線などの活性化学線に感光してラジカル重合反応を起こして光硬化する機能を与え、露光部が現像液に対して不溶化するネガ型のパターンを形成することができる。
【0117】
ラジカル重合性基としては、ビニル基、(メタ)アクリル基が挙げられ、光硬化性に優れる点で(メタ)アクリル基が好ましい。(メタ)アクリル基とは、メタクリル基またはアクリル基を意味する。
【0118】
(c-1)成分に属する、ラジカル重合性基を分子内に2つ以上有する化合物としては、高い光硬化性を得て後述する現像工程における加工マージンを向上し、かつ画素分割層のパターンエッジを低テーパー形状として電極の断線を回避する上で、5官能または6官能(メタ)アクリレート化合物と、2官能(メタ)アクリレート化合物とを組み合わせて含有することが好ましい。
【0119】
5官能または6官能の(メタ)アクリレート化合物としては、ε-カプロラクトン変性6官能アクリレートである“KAYARAD”(登録商標)DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120(以上、いずれも日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0120】
2官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、“KAYARAD”(登録商標)HX-220(以下、「HX-220」)、HX-620(以上、いずれも日本化薬(株)製)、フルオレン系(メタ)アクリレートが挙げられる。中でも、式(18)で表される化合物が好ましい。
【0121】
【0122】
式(18)中、R53およびR54は、それぞれ独立に、式(19)で表される有機基または水酸基を表す。R55およびR56は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。t1およびt2は、それぞれ独立に、0~2の整数を表す。
【0123】
【0124】
式(18)で表される化合物の市販品としては、例えば、式(20)で表される化合物の固形分50重量%PGMEA溶液である“OGSOL”(登録商標)EA-0250P(大阪ガスケミカル(株)製。以下、「EA-0250P」)が挙げられる。
【0125】
【0126】
式(19)中、*は結合部位を表す。
【0127】
ラジカル重合性基を分子内に2つ以上有する化合物と、前述の(b-2)成分との合計量を100重量%として、ラジカル重合性基を分子内に2つ以上有する化合物の含有量は15~50重量%が好ましい。
【0128】
光重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が挙げられ、中でも低電圧駆動の観点から、膜深部の光硬化性に優れるオキシムエステル系光重合開始剤が好ましい。
【0129】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、式(21)で表される化合物、式(22)で表される化合物である“アデカクルーズ”(登録商標)NCI-831E((株)ADEKA製、以下「NCI-831E」と表記する。)、特開2008/100955号公報に記載の化合物、国際公開第2006/018405公報に記載の化合物、“Irgacure”(登録商標)OXE03(いずれもBASF製、以下「OXE03と表記する」)が挙げられる。
【0130】
【0131】
【0132】
光重合開始剤の含有量は、パターンエッジのテーパー形状と低電圧駆動を両立する観点で、感光性組成物中の全固形分100重量%中、1~10重量%が好ましい。
【0133】
(c-2)成分は露光工程で紫外線などの活性化学線に感光して、アルカリ可溶性基を有する化合物へと変換され、未露光部と比べて露光部の膜の溶解速度を相対的に高めてポジ型のフォトリソグラフィによる画素分割層のパターニングを可能とする成分である。
【0134】
(c-2)成分としては、ナフトキノンジアジド化合物が好ましく、フェノール性水酸基を有する化合物をナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリドでエステル化した反応物がより好ましい。
【0135】
本発明の感光性組成物は(d)溶剤を含有する。ここでいう(d)溶剤は、水を包括する。(d)成分は、式(1)におけるXの値を55~125の範囲内に制御する上で必須成分であり、(b)成分の溶解力に優れる点で有機溶剤を含有することが望ましい。また、少なくとも一部が(a)成分を含む粒子成分に直接吸着していながら、(b)成分、特に(b-1)成分を含む場合は、(b-1)成分の粒子成分への吸着を妨げない有機溶剤が選択するのが好ましい。
【0136】
(d)溶剤としては、前述の(b)成分の溶解力の観点から、エーテル系溶剤、アセテート系溶剤、環状エステル系溶剤、アルコール系溶剤を好ましく用いることができ、単独または複数種を組み合わせて式(1)におけるXの値を制御することができる。
【0137】
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGME」)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0138】
アセテート系溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」)、3-メトキシブチルアセテート(以下、「MBA」)、ブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0139】
環状エステル系溶剤としては、例えば、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン(以下、「γ-BL」)、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトンまたはε-カプロラクトンが挙げられる。
【0140】
アルコール系溶剤としては、3-メトキシ-1-ブタノール(以下、「MB」)が挙げられる。
【0141】
本発明の感光性組成物は、さらに(e)染料型分散助剤を含有することが好ましい。以下、(e)成分と表記する場合がある。(e)成分は、(a)成分の顔料表面に吸着して好適な電荷を与え、主に(b)成分との相互作用を高める効果を奏する。なお、(e)成分は粒子成分に属さない。
【0142】
(e)成分としては、アルカリ可溶性基を有する染料またはその塩がよく、例えば、ペリレン系染料、ペリノン系染料、シアニン系染料、フタロシアニン系染料、アゾ系染料、アゾメチン系染料、アントラキノン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、キサンテン系染料、トリアリールメタン系染料、キノフタロン系染料が挙げられる。ここでいうアルカリ可溶性基とは、前述と同様に、水酸基、カルボキシル基およびスルホ基のことをいう。
【0143】
(a-2)成分が、式(5)で表される化合物および/または式(6)で表される化合物を含有し、さらに、(c)感光剤がキノンジアジド化合物を含有する場合、式(1)におけるXの値を55~125の範囲内に制御する上で、(e)染料型分散助剤が、アルカリ可溶性基と芳香族テトラカルボン酸ビスイミド骨格とを有する化合物またはその塩を含有することが好ましい。スルホ基またはカルボキシル基を分子内に2つ以上有し、芳香族テトラカルボン酸ビスイミド骨格を有する化合物またはその塩を含有することがより好ましい。
【0144】
感光性組成物が(e)成分を含有する場合、低電圧駆動の観点から、(d)成分として環状エステル系溶剤を含有させることが好ましい。芳香族テトラカルボン酸ビスイミド骨格としては、例えば、ペリレンテトラカルボン酸ビスイミド骨格、ナフタレンテトラカルボン酸ビスイミド骨格が好ましく挙げられる。中でも、ペリレンテトラカルボン酸ビスイミド骨格を有する化合物を含有することがより好ましい。(e)成分の具体例としては、C.I.ピグメントレッド149、178、179、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントブラック31、32などのペリレンテトラカルボン酸ビスイミド骨格を有する有機顔料をスルホン化して得られるスルホン酸誘導体が挙げられ、特に前述のアルカリ可溶性ポリイミド前駆体と組み合わせて好ましく用いることができる。
【0145】
感光性組成物は、ネガ型/ポジ型に関わらず、さらに熱架橋剤を含有しても構わない。熱架橋剤を含有することにより、キュア工程で熱架橋させて、最終的に得られる画素分割層の膜強度および耐熱性を向上することができる。熱架橋剤としてはエポキシ基を2つ以上有する化合物が挙げられる。
【0146】
エポキシ基を2つ以上有する化合物としては、例えば、TR-FR-201(Tronly社製)、“TECHMORE”(登録商標)VG-3101L((株)プリンテック製、以下「VG-3101L」)、“TEPIC”(登録商標)S、G、P、L(以上、いずれも日産化学工業(株)製)が挙げられる。
【0147】
感光性組成物は、その他成分として、さらに、界面活性剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを含有しても構わない。
【0148】
本発明の感光性組成物を調製する方法としては、例えば、(a)成分、(b)成分および(d)成分を混合して、湿式分散処理により顔料分散液を調製し、次いで(c)成分およびその他成分を、顔料分散液中に添加し撹拌して、必要に応じてフィルタ濾過を行うことで調製してもよい。
【0149】
湿式分散処理を行なうための分散機としては湿式メディア分散機であっても、湿式メディアレス分散機であってもよいが、分散処理効率に優れる点で湿式メディア分散機であることが望ましい。湿式メディア分散機としては、例えば、“レボミル”(登録商標)(浅田鉄工製)、“ナノ・ゲッター”(登録商標)(アシザワファインテック製)、“DYNO-MILL”(登録商標)(Willy A.Bachofen社製)、“スパイクミル”(登録商標)((株)井上製作所製)、“サンドグラインダー”(登録商標)(デュポン社製)、“ウルトラアペックスミル アドバンス”(登録商標)((株)広島メタル&マシナリー製)、“NEO-アルファミル”(登録商標)(AIMEX(株)製)などのビーズミルが挙げられる。
【0150】
分散機用メディアとしてはジルコニアビーズやジルコンビーズが挙げられる。ビーズ直径は0.03~5mmφが好ましく、真球度が高いほど好ましい。市販品の具体例としては、“トレセラム”(登録商標)(東レ(株)製)や、“YTZ”(登録商標)(ニッカトー(株)製)が好ましく挙げられる。特に0.03~0.5mmφの範囲のビーズを使用することが好ましく、分散機ベッセル内におけるビーズ充填率は70~90体積%が好ましい。
【0151】
分散条件は特に限定されないが、湿式メディア分散機を用いる場合、ベッセル直径やアジテータ形状に応じて機械的エネルギーを必要十分に投入することが望ましい。アジテータ形状としては、ディスクタイプ、ピンタイプなどが挙げられる。機械的エネルギー投入量は、せん断力および分散処理時間により決定される。せん断力はビーズの比重、直径、ベッセル内の充填率、顔料分散液の粘度に加えて、分散機内のアジテータの周速(m/s)などの各種パラメータにより複合的に決定される。
【0152】
式(1)におけるXの値は2段階以上の複数の分散条件を設定して制御することが好ましい。Xの値を55~125の範囲内となるよう制御する上では、微細化の進行と再凝集の抑制とを両立する観点で、分散初期から分散終点にかけて周速を段階的に高めることが望ましい。必要に応じて、(b)成分および/または(d)成分を、湿式メディア分散処理の工程中に多段階で添加しても構わない。
【0153】
式(1)におけるXの値を同等に制御したとき、さらに低電圧駆動の効果が得られる点で、本発明の感光性組成物は、動的光散乱法により測定される光散乱強度を基準とした前記粒子成分の粒度分布における最大累積粒子径Dmaxが、150~350nmであることが好ましい。170~250nmであることがより好ましい。ここでいう最大累積粒子径Dmaxは、最大累積粒子径Dmax測定試料を測定した値のことをいう。最大累積粒子径Dmax測定試料とは、感光性組成物/希釈溶剤=1/99(重量比)となるよう、3回に分けて等分の希釈溶剤を感光性組成物に混合して10分間シェーカー上で攪拌した測定対象物のことをいう。希釈溶剤としては、感光性組成物が含有する(d)溶剤と同一の溶剤を用いる。
【0154】
ここでいう粒度分布とは、動的光散乱法の粒度分布測定装置「SZ-100(堀場製作所製)」で測定することができ、光源に対する光散乱強度を基準とした粒度分布のことをいう。
【0155】
最大累積粒子径Dmaxとは、累積粒度分布曲線において、小さい粒子径の側を基点(0%)として、大きい粒子径の側へ累積して99%に相当する粒子径のことを意味し、実質的には99%累積径(D99)として算出される値のことである。なお、ここでいう最大累積粒子径Dmaxは光散乱強度を基準としており、特開2019-160473号公報に記載の動的光散乱法におけるキュムラント平均径との大小関係とは全く異なる指標である。なお、動的光散乱法において、(a)成分などの顔料を、湿式分散機を用いて大きい粒子径から小さい粒子径へと微細化する、いわゆるブレイクダウン法で製造された顔料分散液を含有する1つの感光性組成物を測定対象とする場合、光散乱強度に基づいて算出された99%累積径(D99)は、体積に基づいて算出された99%累積径(D99)と比べて大きく、個数に基づいて算出された99%累積径(D99)と比べてさらに大きいという関係性が成り立つ。
【0156】
本発明の硬化物は、感光性組成物を硬化して得られる硬化物である。前記硬化物は、例えば、有機EL表示装置の画素分割層、TFT平坦化層、液晶表示装置のブラックマトリクス、ブラックカラムスペーサー、固体撮像素子の近赤外線高透過性黒色膜、タッチパネルのベゼル用近赤外線高透過性黒色膜などに利用することができ、用途は特に限定されない。前記硬化物は、感光性組成物を大気圧下200℃以上400℃以下の温度で10分間以上加熱する工程を経て得られたものを意味する。
【0157】
本発明の感光性組成物の硬化物を得る方法の具体例として、画素分割層を形成する方法について以下に説明する。画素分割層は、例えば、塗布工程、プリベーク工程、露光工程、現像工程、キュア工程をこの順に含む公知のフォトリソグラフィ法により得ることができる。
【0158】
画素分割層の膜厚1.0μmあたりの光学濃度(Optical Density)は、外光反射を抑制して表示装置としての価値を高める上で、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましい。低電圧駆動の観点から、1.5以下が好ましく、1.3以下がより好ましい。
【0159】
光学濃度とは、透明基材上に膜厚1.5μmの膜厚となるように形成した画素分割層を、光学濃度計(X-Rite社製;X-Rite 361T」を用いて入射光強度と透過光強度を測定し、以下の式から算出された値を、膜厚の値である1.5で除した値のことを意味し、光学濃度が高いほど遮光性が高いことを示す。透明基材としては、透明ガラス基材である「テンパックス(AGCテクノグラス(株)製)」を好ましく用いることができる。
【0160】
光学濃度 = log10(I0/I)
I0:入射光強度
I:透過光強度
本発明の有機EL表示装置は、前記硬化物を具備する有機EL表示装置である。有機EL表示装置において、硬化物は画素分割層、TFT平坦化層に含まれることが好ましい。
【実施例】
【0161】
以下に本発明を、その実施例および比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
まず、各実施例および比較例における評価方法について説明する。
<必要最低露光量の算出>
150mm×150mmの無アルカリガラス基板の表面に、スパッタ法によりITOを全面成膜し、乾燥窒素雰囲気下150℃30分間の低温アニール処理を行い、膜厚10nmのITO膜を具備する基板を得た。ITO膜の表面に実施例または比較例の感光性組成物を、最終的に得られる硬化膜の厚さが1.5μmとなるように回転数を調節してスピンコーターで塗布して塗布膜を得た。ネガ型感光性組成物の場合、ホットプレート(SCW-636;大日本スクリーン製造(株)製)を用いて、塗布膜を大気圧下100℃で2分間プリベークして、プリベーク膜形成基板を得て2枚に割断した。2.38重量%TMAH水溶液を入れたトレーに、一方のプリベーク膜形成基板を浸漬してプリベーク膜を溶解させた時点から、基板表面が目視されるまでの経過時間を必要最低現像時間とした。
【0162】
さらに、もう一方のプリベーク膜形成基板を用いて、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナーPEM-6M;ユニオン光学(株)製)に、感度測定用グレースケールマスク(MDRM MODEL 4000-5-FS;Opto-Line International社製)を介して、超高圧水銀灯のg、h、i混合線でパターニング露光し、露光膜を得た。次いで、フォトリソグラフィ用小型現像装置(AD-2000;滝沢産業(株)製)を用いて前述の必要最低現像時間に対して1.5倍の現像時間、2.38重量%TMAH水溶液を用いてパドル方式で現像した。さらに、脱イオン水を用いて30秒間シャワー方式でリンスした後に200rpmで30秒間の条件で基板を空回しして乾燥させ、パターン状の現像膜を具備する現像膜形成基板を得た。
【0163】
次いで、FPD検査顕微鏡(MX-61L;オリンパス(株)製)を用いて、作製した現像膜の解像パターンを観察し、ライン・アンド・スペースパターンの開口寸法の幅40μm幅に対して、マスクバイアスが-2μmとなる条件(現像膜の開口寸法38μm、パターン線幅42μm)となるよう開口するための露光量(mJ/cm2:i線換算値)を、ネガ型感光性組成物の必要最低露光量(露光感度)とした。
【0164】
一方で、塗布膜のプリベーク温度を120℃としたこと、パドル現像時間を90秒に設定したこと、マスクバイアスが0μmとなる条件(現像膜の開口寸法40μm、パターン線幅40μm)としたこと以外は前述のネガ型感光性組成物の場合と同様の手順で、ポジ型感光性組成物の必要最低露光量を求めた。
【0165】
(1)硬化膜の光学濃度(OD/μm)の評価
実施例1~9および比較例1~6により得られた、透明ガラス基材である「テンパックス(AGCテクノグラス(株)製)の表面に厚さ1.5μmの硬化膜を形成した光学濃度評価用基板について、光学濃度計(X-Rite社製;X-Rite 361T)を用いて膜面側から面内3箇所において全光学濃度(Total OD値)を測定して平均値を算出し、その数値を1.5で除した値を小数点第二位を四捨五入した小数点第一位までの数値を、硬化膜の厚さ1.0μmあたりのOD値(OD/μm)とした。
【0166】
OD/μmが高いほど遮光性に優れた硬化膜であるとの基準で評価を行った。硬化膜を形成していないテンパックスのOD値を別途測定した結果、0.00であったため、光学濃度評価用基板のOD値を、硬化膜のOD値とみなした。硬化膜の厚さは、触針式膜厚測定装置(東京精密(株);サーフコム)を用いて、面内3箇所において測定し、その平均値の小数点第二位を四捨五入して、小数点第一位までの数値を求めた。
【0167】
(2)粒度分布における最大累積粒子径Dmaxの評価
実施例1~9および比較例1~6の感光性組成物について、以下の方法で粒度分布を測定し、最大累積粒子径Dmaxを算出した。なお、動的光散乱法は粒子成分のブラウン運動をデータソースとしているため、Dmaxが500nmを超えた試料、すなわち粗大な粒子を含む試料については絶対値として十分に高い測定精度を得ることが原理的に困難である。したがって、Dmaxが500nmを超えた試料についてはその結果によらず、表中「>500nm」とし、不合格とした。
【0168】
<最大累積粒子径Dmax測定試料の調製方法>
感光性組成物/希釈溶剤=1/99(重量比)となるよう、3回に分けて等分の希釈溶剤を混合して10分間シェーカー上で攪拌した。希釈溶剤としては、感光性組成物が含有する(d)溶剤と同一の溶剤を用いた。
【0169】
<最大累積粒子径Dmaxの測定方法>
測定装置:動的光散乱法 粒度分布測定装置「SZ-100(堀場製作所製)」
光源:波長532nm/10mW(半導体励起固体レーザー)
測定試料の液温:25±1℃(大気圧下)
算出方法:光散乱強度を基準とする累積99%径を求め、測定3回分の平均値を算出し、小数点第一位を四捨五入した値を最大累積粒子径Dmaxとした。
【0170】
(3)式(1)におけるXの値の算出
実施例1~9および比較例1~6の感光性組成物について、以下の条件で緩和時間T2を測定し、T2の値をAの値で除して、小数点第一位を四捨五入することによりXの値を算出した。
X=T2/A・・・(1)
式(1)中、T2は、T2測定試料について測定核1Hのパルス核磁気共鳴装置によるCarr-Purcell-Meiboom-Gill法で測定されるスピン-スピン緩和時間(ms)を3回測定したときの平均値を表す。
Aは該T2測定試料中の、粒子成分および溶剤成分を除いた全ての成分の含有量(重量%)を表し、6.50~8.80である。
【0171】
<T2測定試料の調製方法>
固形分が10.00重量%となるように、感光性組成物が含有する(d)溶剤と同一の溶剤を添加して密栓し、10分間シェーカー上で攪拌する。
【0172】
<T2測定条件>
測定装置:Bruker BioSpin社製パルス核磁気共鳴装置“BRUKER”(登録商標)minispec mp20
測定核:1H
測定核の周波数:19.95MHz
パルス幅:2.18μs(90°パルス)
パルス繰り返し時間:10秒
T2測定試料を充填する容器:10mmφNMR用サンプルチューブ
T2測定試料の液温:温調機能により25.0℃一定(大気圧下)
測定前の操作:プローブ内で20分間放置し、測定試料の液温を安定させた。
T2の算出方法:T2測定試料について測定核1Hのパルス核磁気共鳴装置によるCarr-Purcell-Meiboom-Gill法で測定されるスピン-スピン緩和時間(ms)を3回測定したときの平均値を算出し、小数点第一位を四捨五入した。
【0173】
(4)有機EL表示装置の駆動電圧の評価
実施例1~9および比較例1~6により得られた有機EL表示装置を、下限2.0Vから上限8.0Vへと駆動電圧(Driving Voltage)を変えながら発光させた。評価に用いた有機EL表示装置はいずれもボトムエミッション型の発光方式であり、
図2における無アルカリガラス基板11が光取り出し側である。分光放射輝度計(コニカミノルタ製CS-1000A)を用いて発光画素220個分から放たれる緑色発光の輝度を測定して単位面積あたりの値に換算し、6000(cd/m
2)の輝度が得られたときの駆動電圧を測定した。
【0174】
なお、ここでいう単位面積あたりとは発光画素部の単位面積あたりのことを意味し、前述の換算にあたり画素分割層形成部の面積は含まれない。駆動電圧は小数点第二位を四捨五入した値を算出した。なお、以下の判定基準に基づいて評価し、AAおよびA~Cを合格、D~Eを不合格とした。
AA:駆動電圧が、4.0V未満である。
A:駆動電圧が、4.0V以上、4.5V未満である。
B:駆動電圧が、4.5V以上、5.0V未満である。
C:駆動電圧が、5.0V以上、5.5V未満である。
D:駆動電圧が、5.5V以上、6.0V未満である。
E:駆動電圧が、6.0V以上である。
【0175】
以下に、実施例および比較例で用いた各種原料について化学構造や固形分などの情報を示す。
「ベンゾジフラノン系黒色顔料1」:“Irgaphor”(登録商標)Black S0100CF。式(4)で表される化合物に相当する。
「ペリレン系黒色顔料1」:式(7)で表される化合物と式(8)で表される化合物との異性体混合物(重量比率1:1)。ベンゾイミダゾール骨格を有するペリレン系黒色顔料に相当する。BET法での比表面積は50m2/gである。
「塩基性基含有樹脂1」:式(23)で表される化合物(前述の式(9)中、n1が1であり、R21およびR22がエチレン基であり、*がエチレンオキサイド構造との連結部位である構造を有する樹脂に相当する。固形分100重量%)。
【0176】
【0177】
「DISPERBYK-2013」:四級アンモニウムカチオンと炭素原子含有カウンターアニオンとの塩からなる四級アンモニウム塩基を有し、四級アンモニウムカチオンと塩素原子含有カウンターアニオンとの塩からなる四級アンモニウム塩基を有さない(メタ)アクリル系ブロック共重合体。固形分97重量%であり、酸価7mgKOH/g、塩基価18mgKOH/gである。
「BYK-LPN21116」:式(24)で表される構造単位、式(25)で表される構造単位、および式(26)で表される構造単位を有する樹脂のPGMEA溶液。固形分40重量%。溶剤を除いた固形分の酸価1mgKOH/g以下であり、塩基価70mgKOH/gである。四級アンモニウムカチオンと炭素原子含有カウンターアニオンとの塩からなる四級アンモニウム塩基を有さない。
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
「ZCR-1569H」:アルカリ可溶性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂のPGMEA溶液(日本化薬(株)製:溶剤を除いた固形分の酸価98mgKOH/g、重量平均分子量3900、固形分70重量%)。
「SPC-3410」:式(13)中、R38がメチル基であり、R39が水素原子であり、R40がテトラヒドロ無水フタル酸を由来とする構造である構造単位を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル樹脂のPGMEA溶液。グリシジルメタクリレートを由来とする構造単位のグリシジル基にアクリル酸を反応させて得られる構造単位1/スチレンを由来とする構造単位2/トリシクロデカニルメタクリレートを由来とする構造単位3=60/10/30(mol%)からなる共重合体の構造単位が有する水酸基に、さらに、36mol%のテトラヒドロ無水フタル酸由来のカルボキシル基が開環付加反応した構造を有する樹脂の溶液(昭和電工(株)製:固形分42重量%、重量平均分子量(Mw)7300、固形分酸価75mgKOH/g)。
【0182】
「Solsperse41000」:塩基性基を有さず、リン酸基を有するアルカリ可溶性ポリエーテル樹脂(ルーブリゾール社製、固形分100重量%)。
「界面活性剤溶液1」:メガファックF-559(DIC(株)製)のPGMEA溶液。固形分1重量%。
「添加剤溶液1」:“KAYAMER”(登録商標)PM-21(日本化薬(株)製)のPGMEA溶液。固形分10重量%。
「染料型分散助剤1」:C.I.Basic Blue140。N,N-ジメチルアミノプロピル基を分子内に3つ有する銅フタロシアニンスルホンアミド染料である。
「染料型分散助剤2」:式(27)で表される化合物(整数n2=2~4の混合物)。アルカリ可溶性基を分子内に2つ以上有し、かつ芳香族テトラカルボン酸ビスイミド骨格を有する化合物に相当する。
【0183】
【0184】
「Solsperse22000」:スルホ基を有し、芳香族テトラカルボン酸ビスイミド骨格を有さないアゾ系染料である。
「Solsperse12000S」:スルホ基を有し、芳香族テトラカルボン酸ビスイミド骨格を有さない銅フタロシアニン系染料である。
【0185】
(合成例1:「アルカリ可溶性メタクリル樹脂溶液A」の合成)
溶剤として145.00gのPGMEAを反応容器内に入れ、窒素置換しながら攪拌して液温120℃に昇温した。ここに10.00gのスチレン(0.10mol)、85.20gのグリシジルメタクリレート(0.60mol)および66.00gのトリシクロデカン骨格を有するモノメタクリレート(日立化成社製「FA-513M」;0.30mol)、8.47gの2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリルを3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容器内を空気置換に変え、43.20gのアクリル酸(0.60mol)、0.70gのトリスジメチルアミノメチルフェノールおよび0.12gのハイドロキノンを投入し、100℃で12時間反応を続けた。
【0186】
その後、56.20gのテトラヒドロ無水フタル酸(0.37mol)、0.70gのトリエチルアミンを加え、液温100℃で3.5時間反応させ、アルカリ可溶性メタクリル樹脂aのPGMEA溶液を合成した。
アルカリ可溶性メタクリル樹脂aは、重量平均分子量8400、酸価80mgKOH/g、二重結合当量480g/molであった。アルカリ可溶性メタクリル樹脂aは、前述の式(13)中、R38がメチル基であり、R39が水素原子であり、R40がテトラヒドロ無水フタル酸を由来とする構造である構造単位を有する。さらに、アルカリ可溶性メタクリル樹脂aのPGMEA溶液の固形分が40重量%となるようにPGMEAを加えて攪拌し、アルカリ可溶性メタクリル樹脂溶液Aを得た。
【0187】
(合成例2:「アルカリ可溶性ポリイミド樹脂B」の合成)
乾燥窒素気流下、150.15gの2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(0.41mol)、6.20gの1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(0.02mol)、および、末端封止剤である13.65gの3-アミノフェノール(0.13mol)を、有機溶剤である500.00gのN-メチル-2-ピロリドン(以下、「NMP」)に溶解し、そこに155.10gのビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(0.50mol)および150gのNMPを加えて20℃で1時間撹拌し、さらに水を除去しながら180℃で4時間撹拌した。反応終了後、反応液を10Lの水に投入し、生成した沈殿物を濾過して集め、水で5回洗浄し、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥して、白色粉末状であり、重量平均分子量(Mw)が25000のアルカリ可溶性ポリイミド樹脂Bを合成した。
【0188】
(合成例3:「アルカリ可溶性マレイミド樹脂溶液C」の合成)
溶剤として150.00gのPGMEAを反応容器内に入れ、窒素置換しながら攪拌して液温120℃に昇温した。ここに、25.00gのN-ベンジルマレイミド(0.13mol)、15.00gのメタクリル酸メチル(0.15mol)、25.00gのメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(0.19mol)、10.00gのアクリル酸(0.14mol)、0.50gのn-オクチルメルカプタン、5.00gの2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリルおよび50.00gのPGMEAを予め混合攪拌した液を3時間かけて滴下した後、更に液温を90℃に維持したまま2時間攪拌し反応させた後に冷却し、式(12)で表される構造を有するアルカリ可溶性マレイミド樹脂cのPGMEA溶液を得た。アルカリ可溶性マレイミド樹脂cの重量平均分子量(Mw)は16000であった。さらに、アルカリ可溶性マレイミド樹脂cのPGMEA溶液の固形分が20重量%となるようにPGMEAを加えて攪拌し、アルカリ可溶性マレイミド樹脂溶液Cを得た。
【0189】
(合成例4:「アルカリ可溶性ポリイミド前駆体D」の合成)
18.30gの2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(0.05mol)を100mLのアセトン、17.4gのプロピレンオキシド(0.30mol)に溶解させ、-15℃に冷却した。ここに20.40gの3-ニトロベンゾイルクロリド(0.11mol)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体を濾別し、50℃で真空乾燥した。得られた白色固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム-炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。
【0190】
反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、ヒドロキシル基含有ジアミン化合物1を得た。乾燥窒素気流下、21.2gのヒドロキシル基含有ジアミン化合物1(0.035mol)、7.00gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(0.035mol)、1.20gのビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(0.005mol)を400gのNMPに溶解した。ここに、31.00gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物(0.10mol)をNMP50gとともに加えて、40℃で1時間撹拌した。その後、末端封止剤として5.50gの3-アミノフェノール(0.050mol)を加えて40℃で1時間撹拌して反応させた。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で72時間乾燥して粉末状とし、酸当量220g/molのアルカリ可溶性ポリイミド前駆体Dを得た。
【0191】
(合成例5:「キノンジアジド化合物a」の合成)
乾燥窒素気流下、フェノール性水酸基を有する化合物である21.23g(0.05mol)のTrisP-PA(本州化学工業(株)製)と、33.58g(0.125mol)の5-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリドを、450.00gの1,4-ジオキサンに溶解させ、室温にした。ここに、50.00gの1,4-ジオキサンと混合させた12.65g(0.125mol)のトリエチルアミンを系内が25~35℃となるよう維持しつつ滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。次いで、トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入し、析出した沈殿を濾過し回収した。この沈殿物を真空乾燥機で乾燥させ、式(28)で表されるキノンジアジド化合物aを得た。
【0192】
【0193】
(合成例6:「ベンゾジフラノン系黒色顔料2」の合成)
500.00gの式(4)で表されるベンゾジフラノン系黒色顔料を、4500.00gの脱イオン水を入れたガラス容器に投入してディゾルバーで攪拌し、水性顔料懸濁液の予備攪拌液を得た。これをチューブポンプで吸い上げ、0.4mmφジルコニアビーズ(東レ製:トレセラム(登録商標))が充填率75体積%で充填されたベッセルを具備するビーズミル内に送液し、吐出量300mL/minで2パス分散を行った。次いで、0.05mmφジルコニアビーズ(東レ製:トレセラム(登録商標))が充填率75体積%で充填されたベッセルを具備するビーズミル内に送液して吐出量300mL/minで6時間循環分散を行い、口径10μmのフィルタで加圧濾過を行った後にガラス容器内に全量を吐出させ、再び攪拌した。
【0194】
式(4)で表されるベンゾジフラノン系黒色顔料100重量部に対して、シリカの被覆量が10重量部となるように、ケイ酸ナトリウム(Na2O・nSiO2・mH2O:酸化ナトリウムとして10重量%、二酸化ケイ素として30重量%:アルカリ性)を脱イオン水で100倍希釈した液と、0.001mol/Lの硫酸水溶液とを、水性顔料懸濁液のpHが2以上7未満の範囲で維持されるようにそれぞれの添加速度を調節して同時に並行添加し、式(4)で表されるベンゾジフラノン系黒色顔料の表面にシリカ水和物を析出させて被覆した。
【0195】
次いで、ヌッチェフィルタを用いて水洗および濾過を3回繰り返して水溶性不純物を除去した。さらに、顆粒状の固体酸吸着剤(合成ケイ酸アルミニウム)を加えて5時間撹拌して金属イオン分を捕捉後、濾過して黒色濾物を得た。これを実温90℃のオーブン内で乾燥空気下6時間加熱して水分を除去してパウダー化し、さらに実温260℃のオーブン内で乾燥空気下1時間加熱して脱水焼結させ、シリカからなる被覆層を形成した。ジェットミルを用いて乾式粉砕処理を30分間行って整粒し、ベンゾジフラノン系黒色顔料2を得た。
【0196】
ベンゾジフラノン系黒色顔料2の表面および割断面の元素をSEM-EDXで解析し、顔料表面がケイ素原子と酸素原子で覆われていることを確認した。また、実温800℃の電気炉で6時間焼成することで有機成分を熱分解させて除去した結果、その残分の重量から、ベンゾジフラノン系黒色顔料2の構成成分は、100重量部の式(4)で表されるベンゾジフラノン系黒色顔料と、10重量部のシリカであると考えられた。ベンゾジフラノン系黒色顔料2のBET法での比表面積は40m2/gであった。また、ベンゾジフラノン系黒色顔料2中、シリカ被覆層のSiO2換算質量あたりの反応性シラノール基の数は7.10×1018/gであった。
【0197】
(実施例1)
34.00gの塩基性基含有樹脂1と、109.52gのSPC-3410とを、有機溶剤である736.48gのPGMEAに混合して10分間撹拌した後、120.00gのベンゾジフラノン系黒色顔料2を添加して30分間撹拌して予備攪拌液を得た。ベッセル充填率75体積%で0.4mmφのジルコニアビーズがベッセル内に充填されたビーズミルに予備攪拌液を送液し、循環方式で湿式分散処理を周速8m/sで1時間行った。さらに、ベッセル充填率75体積%で0.05mmφのジルコニアビーズがベッセル内に充填されたビーズミルに送液し、循環方式で周速8m/sで湿式分散処理を2時間行い、さらに周速9m/sで湿式分散処理を2時間行い、固形分20.00重量%の顔料分散液1を調製した。
【0198】
次いで黄色灯下、17.00gのMBAと、35.83gのPGMEAとの混合溶剤中に、光重合開始剤である0.60gのNCI-831Eと、熱架橋剤である0.30gのTR-FR-201を添加して10分間攪拌して溶解させた。これに、11.67gのSPC-3410と、1.20gのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、「DPHA」)と、0.75gのHX-220と、2.40gのEA-0250Pとを添加して攪拌し調合液を得た。この調合液に30.25gの顔料分散液1を混合して30分間撹拌して、固形分15.00重量%であるネガ型感光性組成物1を調製した。各原料の配合重量を表1~2に示す。ネガ型感光性組成物1について、前述の方法でDmaxを測定した結果、214nmであった。また、前述の方法に基づき、PGMEAとMBAとの混合溶剤を用いてネガ型感光性組成物1を固形分10.00重量%に希釈して緩和時間T2を測定し、式(1)におけるXの値を算出した結果、73であった。
【0199】
【0200】
【0201】
透明ガラス基材である「テンパックス(AGCテクノグラス(株)製)の表面に、ネガ型感光性組成物1を、最終的に得られる硬化膜の厚さが1.5μmとなるように回転数を調節してスピンコーターで塗布して塗布膜を得た。次いで、ホットプレート(SCW-636;大日本スクリーン製造(株)製)を用いて塗布膜を大気圧下100℃で120秒間プリベークして、プリベーク膜を得た。両面アライメント片面露光装置を用い、超高圧水銀灯のg,h,i混合線を前述の方法で求めた必要最低露光量で、プリベーク膜の全面に照射して露光膜を得た。次いで、フォトリソグラフィ用小型現像装置(AD-2000;滝沢産業(株)製)を用いて必要最低現像時間に対して1.5倍の現像時間、2.38重量%TMAH水溶液でパドル式で現像した後に、脱イオン水で30秒間シャワー式でリンスして現像膜を得て、高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム(株)製)を用いて、窒素雰囲気下、現像膜を250℃で60分間加熱して厚さ1.5μmの硬化膜を具備する光学濃度評価用基板を得て、前述の方法で光学濃度(OD/μm)を評価した結果、1.0であった。
【0202】
次いで、以下の方法で、ネガ型感光性組成物1の硬化物からなる硬化膜を画素分割層として具備するボトムエミッション型の有機EL表示装置を作製し、駆動電圧を評価した。
図2に、画素分割層の形成工程を含む有機EL表示装置の作製工程を示す。
【0203】
縦70mm/横70mmの無アルカリガラス基板11の表面に、スパッタ法により銀合金(99.00重量%の銀と、1.00重量%の銅からなる合金)を全面成膜した。アルカリ可溶性ノボラック系ポジ型レジストを用いて、液温30℃の銀合金エッチング液SEA-1に浸漬してエッチングして、膜厚100nmのパターン状の銀合金膜12を得た。さらに、スパッタ法によりITO膜を全面成膜した。アルカリ可溶性ノボラック系ポジ型レジストを用いて液温50℃の5重量%シュウ酸水溶液に5分間浸漬し、脱イオン水で2分間シャワー水洗した後にエアーブローで乾燥させ、乾燥窒素雰囲気下150℃30分間加熱して膜厚10nmの同パターン状のITO膜13を得た。以上の工程により、無アルカリガラス基板の表面に、銀合金膜/ITO膜の積層パターンからなる第一電極を具備する第一電極形成基板を得た。
【0204】
ネガ型感光性組成物1を、スピンコーターを用いて、最終的に得られる画素分割層の膜厚が1.5μmとなるように回転数を調節して、第一電極形成基板の表面に塗布し、塗布膜を得た。さらに、ホットプレートを用いて、塗布膜を大気圧下100℃で120秒間プリベークして、プリベーク膜を得た。両面アライメント片面露光装置を用いて、ネガ型露光マスク(縦260μm、横70μmの開口部が220個配列)を介して、必要最低露光量でプリベーク膜にパターン露光して、露光膜を得た。次いで、フォトリソグラフィ用小型現像装置を用いて必要最低現像時間に対して1.5倍の現像時間で、2.38重量%TMAH水溶液を用いてパドル式で現象し、脱イオン水で30秒間シャワー式でリンスして、パターン状の現像膜を得た。高温イナートガスオーブンを用いて、現像膜を窒素雰囲気下250℃で60分間加熱して、第一電極形成基板中央部の縦30mm/横30mmのエリア内に、開口部(縦258μm/横68μm)を220個有する、膜厚1.5μmの画素分割層14を具備する画素分割層形成基板を得た。
【0205】
次に、真空蒸着法により発光層を含む有機EL層15を、画素分割層14の開口部に形成するため、真空度1×10-3Pa以下の蒸着条件下で、蒸着源に対して画素分割層形成基板1を回転させ、まず、正孔注入層として、式(29)で表される化合物(HT-1)を10nm、正孔輸送層として、式(30)で表される化合物(HT-2)を50nmの膜厚で成膜した。次に、発光層上に、ホスト材料として、式(31)で表される化合物(GH-1)、ドーパント材料として式(32)で表される化合物(GD-1)を40nmの膜厚で蒸着した。次いで、電子輸送材料として、式(33)で表される化合物(ET-1)と、式(34)で表される化合物(LiQ)を、体積比1:1で40nmの厚さで積層した。有機EL層15の形成に用いた化合物の構造を以下に示す。
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
次に、化合物(LiQ)を2nm蒸着した後、銀/マグネシウム合金(体積比10:1)を膜厚150nmとなるように蒸着して第二電極16を形成した。次いで、低湿/窒素雰囲気下、エポキシ樹脂系接着剤を用いて、キャップ状ガラス板を接着することにより封止し、有機EL表示装置を得た。なお、有機EL層15を構成する層は、前述の画素分割層と比べて非常に薄く、触針式膜厚測定装置では高い測定精度が得られないため、100nm未満の薄膜に好適な水晶発振式膜厚モニターを用いてそれぞれ測定し、面内3点の平均値の少数点第一位を四捨五入して得られた値を膜厚とした。以上より得られた有機EL表示装置の駆動電圧を前述の方法で測定した結果、4.6Vであった。評価結果を表3に示す。
【0213】
【0214】
(実施例2~4)
表1~2に示す各原料の配合重量とした以外は実施例1と同様の手順で固形分20.00重量%の顔料分散液2~4を得て、これらを用いて表2に示す配合重量で固形分15.00重量%のネガ型感光性組成物2~4をそれぞれ調製し、Dmax、式(1)におけるXの値、硬化膜のOD/μmを評価した。さらに、ネガ型感光性組成物2~4をそれぞれ用いて実施例1と同様の手順で有機EL表示装置を作製し、駆動電圧を評価した。評価結果を表3に示す。
【0215】
(実施例5~6)
表1に示す各原料の配合重量で予備分散液を作製し、ベッセル充填率75体積%で1.0mmφのジルコニアビーズがベッセル内に充填されたビーズミルに予備攪拌液を送液し、循環方式で湿式分散処理を周速7m/sで1時間行った。さらに、ベッセル充填率75体積%で0.05mmφのジルコニアビーズがベッセル内に充填されたビーズミルに送液し、循環方式で周速8m/sで湿式分散処理を3時間行い、固形分20.00重量%の顔料分散液5~6をそれぞれ得た。顔料分散液5~6を用いて表2に示す各原料の配合重量で固形分15.00重量%のネガ型感光性組成物5~6をそれぞれ調製し、Dmax、式(1)におけるXの値、硬化膜のOD/μmを評価した。さらに、ネガ型感光性組成物5~6をそれぞれ用いて実施例1と同様の手順で有機EL表示装置を作製し、駆動電圧を評価した。評価結果を表3に示す。
【0216】
(比較例1)
30mL容器SV-30(日電理化硝子社製)に、3.35gのPGMEAと、1.00gのMBと、0.75gのアルカリ可溶性メタクリル樹脂溶液Aと、0.30gのBYK-LPN21116とを添加した。さらに、0.60gのベンゾジフラノン系黒色顔料1を添加して密栓した。同じものを10本作成し、容器容積に対して80体積%のジルコニアビーズ(0.3mm)をそれぞれ充填して密栓し、ペイントシェイカー(浅田鉄工社製)を用いて、振動数643rpmの条件下、バッチ式で湿式分散処理を5時間行い、ジルコニアビーズと顔料分散液とを濾別した。10本分を100mL容器にまとめて混合したものを顔料分散液7とした。各原料の配合重量を表4に示す。顔料分散液7を用いて、表5に示す各原料の配合重量で固形分17.00重量%のネガ型感光性組成物7を調製した。ネガ型感光性組成物7は前述の方法でDmaxを高い精度で安定して測定することが困難であったため、濃厚系粒径アナライザーFPAR-1000(大塚電子社製)を用いて特開2019-160473号公報に記載の方法でキュムラント平均粒子径を測定した結果、178nmであった。また、式(1)におけるXの値、硬化膜のOD/μmを評価した。さらに、ネガ型感光性組成物7を用いて実施例1と同様の手順で有機EL表示装置を作製し、駆動電圧を評価した。評価結果を表6に示す。
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
(比較例2)
0.60gのベンゾジフラノン系黒色顔料1に替えて、0.27gのC.I.ピグメントブルー15:6と、0.09gのC.I.ピグメントバイオレット29と、0.24gのC.I.ピグメントオレンジ64とを用いたこと以外は比較例1と同様にして、表4に示す各原料の配合重量で固形分17.00重量%の顔料分散液8を調製した。顔料分散液8を用いて、表5に示す各原料の配合重量で固形分17.00重量%のネガ型感光性組成物8を調製した。比較例1と同じ方法で測定したキュムラント平均粒子径は99nmであった。式(1)におけるXの値、硬化膜のOD/μmを評価した。さらに、ネガ型感光性組成物8を用いて実施例1と同様の手順で有機EL表示装置を作製し、駆動電圧を評価した。評価結果を表6に示す。
【0221】
(比較例3)
表4に示す各原料の配合重量で予備分散液を作製し、ベッセル充填率75体積%で0.4mmφのジルコニアビーズがベッセル内に充填されたビーズミルに予備攪拌液を送液し、循環方式で湿式分散処理を周速7m/sで5時間行い、固形分20.00重量%の顔料分散液9を得た。顔料分散液9を用いて、表5に示す各原料の配合重量で固形分15.00重量%のネガ型感光性組成物9を調製し、Dmax、式(1)におけるXの値、硬化膜のOD/μmを評価した。さらに、ネガ型感光性組成物9を用いて実施例1と同様の手順で有機EL表示装置を作製し、駆動電圧を評価した。評価結果を表6に示す。
【0222】
(比較例4)
表4に示す各原料の配合重量で予備分散液を作製し、ベッセル充填率75体積%で0.1mmφのジルコニアビーズがベッセル内に充填されたビーズミルに予備攪拌液を送液し、循環方式で湿式分散処理を周速12m/sで5時間行い、固形分20.00重量%の顔料分散液10を得た。顔料分散液10を用いて、表5に示す各原料の配合重量で固形分15.00重量%のネガ型感光性組成物10を調製し、Dmax、式(1)におけるXの値、硬化膜のOD/μmを評価した。さらに、ネガ型感光性組成物10を用いて実施例1と同様の手順で有機EL表示装置を作製し、駆動電圧を評価した。評価結果を表6に示す。
【0223】
(実施例7)
880.00gの混合溶剤(PGME/γ-BL=70/30(重量比率))中に、72.48gのアルカリ可溶性ポリイミド前駆体Dを添加して30分間攪拌し、さらに、7.25gの染料型分散助剤2を添加して10分間攪拌した。これに、40.27gのペリレン系黒色顔料1を添加して30分間攪拌して予備攪拌液を得た。ベッセル充填率75体積%で0.05mmφのジルコニアビーズがベッセル内に充填されたビーズミルに送液し、循環方式で周速8m/sで湿式分散処理を1時間行い、さらに周速9m/sで湿式分散処理を2時間行い、固形分12.00重量%の顔料分散液11を得た。各原料の配合重量を表7に示す。顔料分散液11を用いて、表8に示す各原料の配合重量で固形分12.00重量%のポジ型感光性組成物1を調製し、Dmax、式(1)におけるXの値を評価した。また、プリベーク温度を120℃としたこと、露光工程を除いたこと以外は実施例1と同様の手順で硬化膜のOD/μmを評価した。さらに、プリベーク温度を120℃としたこと、ネガ型露光マスクに替えて遮光部と開口部とが同一パターンサイズで反転したポジ型露光マスクを用いたこと、現像時間を90秒としたこと以外は実施例1と同様の手順で、ポジ型感光性組成物1を用いて有機EL表示装置を作製し、駆動電圧を評価した。評価結果を表9に示す。
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
(実施例8~9、および比較例5~6)
実施例7と同様の手順で、表7に示す配合重量で顔料分散液12~15をそれぞれ調製した。顔料分散液12~15を用いて、表8に示す各原料の配合重量で固形分12.00重量%のポジ型感光性組成物2~5を調製し、実施例7と同様の手順で、Dmax、式(1)におけるXの値、硬化膜のOD/μmを評価した。評価結果を表9に示す。
実施例1~9は、比較例1~6と比べて、一定の発光輝度を得るために必要となる駆動電圧が低いことがわかる。
図3によれば、Xの値と駆動電圧との間に一定の相関があり、式(1)におけるXの値が55~125の範囲内にあるとき、好ましく低い駆動電圧が得られていることがわかる。また、
図4によれば、式(1)におけるXの値が55~125の範囲にある実施例に限っては、最大累積粒子径Dmaxが150~350nmの範囲内にあるとき、さらに好ましく低い駆動電圧が得られていることがわかる。一方で、
図4によれば、プロットはランダムであり、Dmaxと緩和時間T
2との間には相関が観られない。
以上の結果から、式(1)におけるXの値が駆動電圧に支配的であり、本発明の感光性組成物が有用であることがわかる。
【符号の説明】
【0228】
1:無アルカリガラス基板
2:銀合金膜
3:ITO膜
4:画素分割層
5:有機EL層
6:第二電極