(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】遊具用投影システム
(51)【国際特許分類】
A63G 31/16 20060101AFI20241126BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241126BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A63G31/16
G09F9/00 360K
G09F9/00 362
H04N5/74 C
(21)【出願番号】P 2020113987
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高木 利晃
(72)【発明者】
【氏名】林部 暁
(72)【発明者】
【氏名】中山 健太郎
【審査官】西村 民男
(56)【参考文献】
【文献】特許第6669300(JP,B1)
【文献】特開2017-176305(JP,A)
【文献】特開2014-000169(JP,A)
【文献】特表2012-514446(JP,A)
【文献】特開2006-343444(JP,A)
【文献】特開平05-161762(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0134516(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0345198(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0323482(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0032053(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63G 1/00-33/00
G02F 1/00
G03B 21/14
G09F 9/00
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の領域内を乗物が動く遊具の経路に沿って配置された投影切替ユニットと、前記乗物の位置を検出する位置検出手段と、制御部と、を備え、前記投影切替ユニットは、透明状態から不透明状態にわたり光透過率を調節可能な複数の調光スクリーンと、画像を投影可能な複数のプロジェクタとを含み、前記制御部により、前記位置検出手段からの前記乗物の位置情報を基に、投影切替ユニットの調光スクリーンの光透過率を透明状態から不透明状態にわたり切り替え、不透明状態としたときに前記調光スクリーンに前記プロジェクタで画像を投影する様に当該投影切替ユニットを制御する工程を備えることを特徴とする遊具用投影システム。
【請求項2】
前記投影切替ユニットに位置検出領域が予め設定され、前記制御部は、前記位置検出領域外に前記乗物が含まれている間、前記調光スクリーンを透明状態に制御する工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の遊具用投影システム。
【請求項3】
前記調光スクリーンを透明状態に制御する工程の前に、前記調光スクリーンと対応する前記プロジェクタの投影を停止する工程を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の遊具用投影システム。
【請求項4】
前記投影切替ユニットにマスタセンサをさらに備え、前記位置検出手段が前記乗物に搭載した搭乗者センサであり、前記マスタセンサにより前記位置検出手段の位置情報を取得する工程を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の遊具用投影システム。
【請求項5】
前記位置検出手段では前記乗物の駆動情報から前記乗物の位置を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の遊具用投影システム。
【請求項6】
前記位置検出手段ではGPS機能を用いて前記乗物の位置を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の遊具用投影システム。
【請求項7】
請求項2に記載の遊具用投影システムを備えた遊具であって、
前記位置検出手段が
、搭乗者が保持する搭乗者センサであり、
前記遊具用投影システムは、前記位置検出領域に前記乗物が含まれている間、前記乗物の周囲に前記画像を投影するように構成され、
前記遊具は、前記位置検出領域を見学者が把握できるマーカーを備えることを特徴とする遊具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊具用投影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
遊園地にある遊具には、メリーゴーラウンドやローラーコースター、回転ブランコ、コーヒーカップ、ゴーカートなど、人を乗せた乗物が一定の領域内を機械的に動く遊具がある。例えばローラーコースターには、急角度に落下したり宙返りしたりしてスリルを味わえるジェットコースターや、川下りを楽しんだ最後のクライマックスで一気に川を下り、滝つぼへダイブする様にして爽快感、清涼感が味わえる川下りコースターなどがある。
【0003】
ローラーコースターの搭乗者は、その動きそのものにスリルを感じるなどして楽しむと共に、周囲の風景を眺めてその景観を楽しむことも同時に行える。またその搭乗者の関係者は見学者として、搭乗者の様子を見たり、撮影したりする。搭乗者と見学者は、例えば子とその親である。
【0004】
しかし、例えば川下りコースターでは、川下りの始めは暗い部屋の中を通過し、乗物の中から展示されている風景などを見ながら進むが、川下りするスピードがどうしても遅いためその風景にあきてしまい、川下りコースターに搭乗していることにより得られるはずの没入感が損なわれてしまうことがある。そのため、たとえば特許文献1に開示されている様な、ローラーコースターの乗客一人ひとりが電子ゴーグルを装着し、電子ゴーグルのディスプレイに仮想現実画像を表示して、現実の風景と重ね合わせて見える様にしたシステムが提案されている。
【0005】
しかし電子ゴーグルはディスプレイ装置などが組み込まれているため重く、視界も狭まり、夏季などには蒸れて暑苦しく、装着すると髪型が乱れるなどするため快適とは言えず、ゴーグル越しに見るため川下りのライブ感が薄れ、また装着位置が搭乗者自身やコースターの動きに伴いずれると画像もずれてしまい、外れて他の搭乗者にぶつかる恐れもあるなど、最適な解決手段とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、実際の風景とスクリーンに投影された静止画像や動画とを組み合わせたより多彩なイメージが見られる様にすることで、遊具であるローラーコースターなどの乗物の搭乗者の快適性を損なうことなく、ローラーコースターの世界観に没入でき、よりエンターテインメント性に富んだローラーコースターとすることができる遊具用投影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、所定の領域内を乗物が動く遊具の経路に沿って配置された投影切替ユニットと、前記乗物の位置を検出する位置検出手段と、制御部と、を備え、
前記投影切替ユニットは、透明状態から不透明状態にわたり光透過率を調節可能な調光スクリーンと画像を投影可能なプロジェクタを含み、
前記制御部により、前記位置検出手段からの前記乗物の位置情報を基に、投影切替ユニットの調光スクリーンの光透過率を透明状態から不透明状態にわたり切り替え、不透明状態としたときに前記調光スクリーンに前記プロジェクタで画像を投影する様に当該投影切替ユニットを制御する工程を備えることを特徴とする遊具用投影システムである。
【0009】
乗物の経路に沿って風景との間に調光スクリーンを配置し、乗物の動きに合わせて調光スクリーンを透明または不透明な状態に適宜切り替え、透明状態では風景そのものが透過して見え、不透明状態ではプロジェクタで風景にマッチした静止画像や動画を投影することで、多彩なイメージを見せることができ、乗り物の世界観への没入感が満たされる。また乗客がびっくりするような静止画像や動画を投影することもでき、アトラクションとしての演出の幅を広げることができる。
【0010】
本発明の一態様は、上記の遊具用投影システムであって、前記投影切替ユニットに位置検出領域が予め設定され、前記制御部は、前記位置検出領域外に前記乗物が含まれている間、前記調光スクリーンを透明状態に制御する工程を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様は、上記の遊具用投影システムであって、前記調光スクリーンを透明状態に制御する工程の前に、前記調光スクリーンと対応する前記プロジェクタの投影を停止する工程を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様は、上記の遊具用投影システムであって、前記投影切替ユニットにマスタセンサをさらに備え、前記位置検出手段がセンサであり、前記マスタセンサにより前記位置検出手段の位置情報を取得する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様は、上記の遊具用投影システムであって、前記位置検出手段では前記乗物の駆動情報から前記乗物の位置を算出することを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様は、上記の遊具用投影システムであって、前記位置検出手段ではGPS機能を用いて前記乗物の位置を算出することを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様は、上記の遊具用投影システムを備えた遊具であって、前記位置検出領域を見学者が把握できるマーカーを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、搭乗者が遊具の世界観に没入でき、搭乗者と関係のある見学者がその搭乗者の乗っている乗物の位置を知ることができる遊具用投影システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態の遊具用投影システムの動作を説明するための図。
【
図2】実施形態の遊具用投影システムの動作を説明するための図。
【
図3】実施形態の遊具用投影システムの調光部材30の構造を説明するための図。
【
図4】実施形態の遊具用投影システムの動作を説明するための図。
【
図5】実施形態の遊具用投影システムの概略構成を示す図。
【
図6】実施形態の遊具用投影システムの制御部において実行される処理を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第一実施形態>
以下、本発明の遊具用投影システムの第一実施形態について
図1、
図2を参照して説明する。
図1は、
図5に概略構成を示した遊具用投影システム1の動作を説明するための図である。システム1は、遊具である川下りコースターなどの乗物2の経路3に沿って、周囲の植栽、展示物などの静物7が任意の個数配置されている。静物7と乗物2の間に、投影切替ユニット10が配置されている。なお、
図1では、説明の便宜上、経路3の片側のみに静物7およびユニット10を示しているが、両側に設けても良いことは言うまでもない。投影切替ユニット10は、調光スクリーン21と複数のプロジェクタ22a~22cとマスタセンサ5とを備える。
【0019】
調光スクリーン21に投影できる位置にプロジェクタ22が設置される。すなわち、プロジェクタ22の設置位置は調光スクリーン21を基準として乗物2側に設置してもよく(いわゆるフロントプロジェクションタイプ)、静物7側に設置してもよい(いわゆるリアプロジェクションタイプ)。またプロジェクタ22は一つの調光スクリーン21あたり1台でも複数台でも良い。
図1の例ではプロジェクタ22が3台設置されている。マスタセンサ5は調光スクリーン21に取り付けられるか、調光スクリーン21の近傍に設置される。投影切替ユニット10は、経路3に沿って任意の数だけ配置して良い。
【0020】
調光スクリーン21は、詳細は後述するが、印加される電圧に応じて透過率が変化する機能を有する。プロジェクタ22は、公知の投影装置である。調光スクリーン21が不透明な状態のときに、調光スクリーン21の一方の面から映像を投射することで、調光スクリーン21の同一面もしくは他方の面に映像を映す。投影される映像は特に限定されず、例えば川下りの雰囲気を高めるための平原、森、峡谷、動植物などの自然の風景の画像や動画、娯楽性を高めるためのゲームの一場面やキャラクターなどのバーチャルな画像や動画などが例示できる。
【0021】
また、調光スクリーン21は、
図2に示す様に透明な状態として、プロジェクタ22からの投影をやめると、搭乗者4は調光スクリーン21を透して周囲の植栽7、展示物など実際の風景や見学者など見ることができる。特に乗物2が川下りコースターの場合、
図4の様に最後のクライマックスの急角度の下りの場面では、周囲の風景が見えたほうが速いスピードで急角度に下っている状況をよりリアルに体感でき、また水飛沫をダイレクトに浴びることができるため、調光スクリーン21を設置しないシステム構成とすると好ましい。
【0022】
調光スクリーン21は、
図3(a)に示すように、調光部材30と、制御ユニット36と、支持体40と、を備える。調光部材30は、
図3(b)に示すように、一対の積層体32の間に液晶層31が挟持された構造を有する。液晶層31は、三次元の網目状の高分子ネットワークと、その空隙に保持された液晶材料とを備える。高分子ネットワークは、高分子材料の硬化物から形成される。液晶材料は、誘電率異方性が正の液晶分子を含む。液晶分子の長手方向の誘電率は、液晶分子の長手方向に直交する方向の誘電率よりも大きい。液晶分子は、例えば、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系の液晶分子である。
【0023】
各積層体32は、基材33、電極層34および配向膜35がこの順に積層されたものである。各積層体32は、それぞれの配向膜35を液晶層31と対向させた状態で、液晶層31を挟持する。
【0024】
配向膜35は、垂直配向膜である。液晶層31中の液晶分子を、液晶分子の長手方向が配向膜35の法線方向に沿うように配向させる。このとき、調光スクリーン21に入射した光が透過し、調光スクリーン21は透明状態である。そのため、調光スクリーン21は、電圧の印加がないときに透明状態を呈する。他方、調光スクリーン21に電圧を印加すると、液晶層31中の液晶分子の長手方向が不規則になり、入射した光は液晶分子で散乱されるため調光スクリーン21は不透明状態になる。
【0025】
配向膜35を構成する材料は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、シアン化化合物等の有機化合物、シリコーン、シリコン酸化物、酸化ジルコニウム等の無機化合物、または、これらの混合物により構成されている。
【0026】
電極層34は、導電性を有し、透明である。電極層34の材料には、例えば酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を含む高分子が用いられる。
【0027】
基材33は、透明であり、例えば、ガラス基板や樹脂製フィルムである。樹脂製フィルムの材料には、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド等、種々の高分子材料を用いることができる。
【0028】
調光部材30は、その一部に、一方の積層体32、液晶層31、および他方の積層体32の配向膜35が除かれ、後者の積層体32の電極層34が露出した給電領域60を有する。給電領域60では、露出した電極層34に、導電性部材61を介して電気配線62が設けられる。導電性部材61には、銀ペーストやカーボンテープ、銅テープなど、導電性の高い種々の部材を用いることができる。電気配線62は、制御ユニット36に接続されている。調光部材30は制御ユニット36により駆動が制御される。
【0029】
調光スクリーン21は、調光部材30が支持体40により支持された構造を有する。支持体40は例えばガラス板、アクリル板などの透明な板状の部材であり、調光部材30と貼り合せて用いられる。支持体40は枠状の部材であって、その枠内に調光部材30を張るように用いられてもよい。また支持体40は垂直に立てる棒状の部材であって、調光部材30を吊るすように用いられてもよい。
【0030】
マスタセンサ5は、調光部材30の画像が投影される領域を搭乗者4から見て遮らないように、調光スクリーン21に設けられる。例えば棒状又は枠状の支持体40に設けられる。マスタセンサ5は、マスタセンサ5がセンシングする位置検出領域において、搭乗者センサ11を検知する。
【0031】
図1において、搭乗者4は、遊具である乗物2に乗って例えば矢印の方向に移動する。乗物2の移動をマスタセンサ5で検知するため、搭乗者4に搭乗者センサ11を保持させる。あるいは搭乗者が搭乗者センサ11を保持するのではなく、乗物2に搭乗者センサ11を備える構成を採用してもよい。搭乗者センサ11を乗物2に搭載することで、搭乗者4は搭乗者センサ11を保持する必要がなくなる。例えば搭乗者4が搭乗者センサ11を自身で所持することが難しい幼児や児童などの低年齢者であっても、搭乗者センサ11を持たせることなく本発明の効果を奏することができるため好ましい。
【0032】
搭乗者4が搭乗者センサ11を保持した状態において、搭乗者センサ11をそれぞれの調光スクリーン21に設けられたマスタセンサ5のうちの一つのマスタセンサ5aが検知する場合について説明する。マスタセンサ5aが、その検知領域に、搭乗者センサ11aを検知しない場合、マスタセンサ5aと対応する調光スクリーン21aは透明状態である。そして、プロジェクタ22aは調光スクリーン21aに映像を投影しないように制御される。このときには見学者は搭乗者4を撮影等することもできる。
【0033】
マスタセンサ5aが、その検知領域に搭乗者センサ11aを検知した場合、対応する調光スクリーン21aは不透明状態に制御される。不透明状態とは透明状態ではない状態を指し、半透明な状態も含む。そして前述のようにプロジェクタ22aから調光スクリーン21aに映像を投射することで、調光スクリーン21aに映像を映す。
【0034】
次に、
図5を用いて、遊具用投影システム1の概略構成を説明する。制御部12は、遊具用投影システム1の全体を統括制御する。遊具用投影システム1は、制御部12と調光スクリーン21とプロジェクタ22と搭乗者センサ11とマスタセンサ5を備え、必要に応じて操作パネル13と記憶装置14とをさらに備える。搭乗者センサ11は遊具システムで使用される乗物2の台数、想定される搭乗者数などに応じ、適宜装備される。
【0035】
制御部12は、各調光スクリーン21の透過率の制御と各プロジェクタ22の動作の制御を行う。制御部12は、マスタセンサ5の信号に基づいて各調光スクリーン21の透過率を切り替える。例えばある投影切替ユニット10aにおいては、制御部12は、マスタセンサ5aの信号に基づいて不透明状態の調光スクリーン21aに対し、対応するプロジェクタ22a、22b、22cにより適当なタイミングで適当な映像が投影されるように制御する。プロジェクタ22で投影される映像は、記憶装置14に保存されている。
【0036】
制御部12はまた、操作パネル13からの情報を取得し、その情報に基づいた制御を行う。操作パネル13は、乗物2および遊具用投影システム1の運営者(以下、スタッフ)が、運転の開始や停止などの操作を行うための操作パネルである。操作パネル13は乗物2の運転状況を機械的に切り替えるスイッチなどでもよい。以下は操作パネル13を用いた場合について説明する。
【0037】
制御部12が遊具用投影システム1を制御するときの概略のフローチャートを
図6に示す。まず制御部12は、動作スイッチがオンであるか否かを判定する(S1)。動作スイッチは、スタッフが操作パネル13を操作することにより、オンまたはオフにされる。制御部12は、動作スイッチがオンになるまで、S1の処理を繰り返す。S1にて、スイッチがオンであった場合、制御部12がすべてのプロジェクタ22をOFFにし(S2)、調光スクリーン21を透明状態にする(S3)。投影切替ユニット10が初期化された状態である。
【0038】
続いて、マスタセンサ5は、その検知領域において搭乗者センサ11が検知されたか否かを判定する(S4)。S4にて、搭乗者センサ11が検知されなかった場合は、検知を繰り返す。S4にて、搭乗者センサ11が検知された場合は、どの投影切替ユニット10で検知されたかを特定する(S5)。続いて、制御部12は、特定された投影切替ユニット10の調光スクリーン21を不透明状態にする(S6)。これにより、搭乗者から周囲の景色が遮られ、搭乗者は非現実な世界に導入されたと感じる。
【0039】
次に、制御部12は、プロジェクタ22を起動し、調光スクリーン21に映像を投影させる(S7)。映像は、例えば複数の調光スクリーン21が連続して見える様に配置したうえで、映像が連結して一つの画面を形成してもよいし、各調光スクリーン21の映像が他の調光スクリーン21の映像と繋がらず独立していてもよい。投影される映像は記憶装置14に保存されている。投影される映像は固定画像でも動画でも良い。
【0040】
乗物2がそれぞれの投影切替ユニット10の対応領域内にある間、調光スクリーン21への投影が継続される。乗物2が対応領域外に出たと判定されると(S8)、対応するプロジェクタ22の投影が停止され(S9)、調光スクリーン21は透明化される(S10)。そして、制御部12は動作スイッチがオンであるか否かを判定する(S11)。動作スイッチがオンである場合、S4に戻り、マスタセンサ5が搭乗者センサ11を検知したか否かを判定する。制御部12は、以上のステップを順次繰り返し、S11にて動作スイッチがオフになるまで繰り返す。S11で動作スイッチがオフになったと判定されると、すべてのプロジェクタの投影を停止し(S12)、調光スクリーンを透明化し(S13)、すなわちシステムを初期状態に戻して、処理を終了する。動作スイッチは、スタッフが操作パネル13を操作することによりオフにされる。
【0041】
上記で説明したフローチャートは基本的な処理の流れを説明するもので、これ以外に特別な処理を組み込んでも良い。例えば以上の処理を多重化して行ったり、乗物2が対応領域内にある時にプロジェクタ22の投影を止めて調光スクリーン21を透明化したり、調光スクリーン21を半透明な状態としたりすることもできる。
【0042】
操作パネル13の操作によらず、S1にて動作スイッチがオンになってから一定の時間が経過したことを契機として運転停止のための処理が行われるようにしてもよい。例えば、S11にて動作スイッチがオンであった場合に、制御部12が、S1の動作スイッチのオンの判定から一定時間が経過したか否かを判定し、そこで一定時間が経過したと判定された場合にはS12の処理に進み、一定時間が経過していないと判定された場合にはS4に進む。このとき、乗物2の運転開始から一定時間が経過するまでは、動作スイッチがオンである限り乗物2の運転自体は継続される。動作スイッチがオンであっても乗物2の運転開始から一定時間が経過していれば自動的にシステム停止の処理が行われ、また動作スイッチがオフであれば運転開始からの経過時間に関係なくシステムの運転停止の処理が行われる。
【0043】
システムの構成においては、上記の実施形態と異なる構成を採用することもできる。例えば乗物2や搭乗者4に搭乗者センサ11を装着しない構成とすることができる。その場合は、乗物2が決められたルートおよび速度で進行することを利用して、運転開始からの時間を計測することで乗物2の現在位置を割り出すことができる。
【0044】
あるいはまた、広く普及しているスマートフォンに搭載されたGPS機能を用いることができる。搭乗者の持つスマートフォン情報を搭乗前に登録しておき、スマートフォンの位置をGPS情報から算出し、乗物2の現在位置を割り出すことができる。
【0045】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【0046】
<変形例>
変形例として、調光部材30は、各積層体32に配向膜35を備えない構成を採用してもよい。すなわち、電圧が印加された状態で透過率が高く、電圧が印加されていない状態で透過率が低い、所謂ノーマル型の切り替えが可能な部材を用いてもよい。電極層34に駆動電力が印加されていないとき、液晶分子の長軸方向の向きは不規則である。そのため、調光部材30に入射した光は散乱し、不透明状態となる。他方、電極層34間に駆動電力が印加されると、液晶分子が配向され、液晶分子の長軸方向が電極層34間の電界方向に沿った向きとなる。その結果、調光部材30を光が透過しやすくなり、透明状態となる。
【0047】
また、調光部材30は、エレクトロクロミック材料の酸化還元反応による色調の変化を利用して透過率を切り替えるものでもよい。
【0048】
変形例として、
図7に示すように支持体40の一部領域に調光スクリーン21を備え、調光スクリーン21以外の領域に絵や写真などの静止画部を施した構成としてもよい。
図7において静止画部の領域を図柄で示している。プロジェクタ22による動画再生と絵や写真などの静止画部を組み合わせた表現が可能となるため、搭乗者の没入感をさらに高めることができる。
【0049】
変形例として、投影切替ユニット10におけるプロジェクタ22の配置数を調光スクリーン21の配置数より少なくしても良い。例えば2つの調光スクリーン21を一つのプロジェクタ22で投影することで、プロジェクタ数の低減を図ることができる。その結果、隣接する調光スクリーン間の投影映像の連動性が高まり滑らかな投影が可能となるほか、コストを削減できる。その際には例えばプロジェクタ22の投影方向を乗物2の進行に合わせて変えられる様にすると良い。
【0050】
変形例として、見学者が位置検出領域を把握できるように、マーカーで位置検出領域を可視化してもよい。本構成により、見学者は本発明の効果を奏する領域を簡便に把握することができ、搭乗者がどの乗物2に乗っているか把握できるため利便性が高まる。見学者のためのマーカーの一例として、見学者のスマートフォンの情報をあらかじめ登録して、その画面上に位置検出領域を現すことなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0051】
1・・・遊具用投影システム、2・・・乗物、3・・・経路、4・・・搭乗者、5・・・マスタセンサ、7・・・植栽、10・・・投影切替ユニット、11・・・搭乗者センサ、12・・・制御部、13・・・操作パネル、14・・・記憶装置、21・・・調光スクリーン、22・・・プロジェクタ、30・・・調光部材、31・・・液晶層、32・・・積層体、33・・・基材、34・・・電極層、35・・・配向膜、36・・・制御ユニット、40・・・支持体