IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-発振器 図1
  • 特許-発振器 図2
  • 特許-発振器 図3
  • 特許-発振器 図4
  • 特許-発振器 図5
  • 特許-発振器 図6
  • 特許-発振器 図7
  • 特許-発振器 図8
  • 特許-発振器 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20241126BHJP
   H01L 23/10 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H03B5/32 A
H03B5/32 H
H01L23/10 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020129647
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026266
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】松川 典仁
(72)【発明者】
【氏名】近藤 学
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-006808(JP,A)
【文献】特開2017-130861(JP,A)
【文献】特開2014-197730(JP,A)
【文献】特開2020-014055(JP,A)
【文献】特開2015-002392(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0076438(US,A1)
【文献】米国特許第06731180(US,B1)
【文献】国際公開第2017/111020(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110336556(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B5/30-5/42
H01L23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間を有する外側パッケージと、
前記収容空間に収容され、断熱部材を介して前記外側パッケージに固定されている内側パッケージと、
前記内側パッケージに収容されている振動素子と、
前記収容空間に収容され、前記内側パッケージに固定されている発熱素子と、
前記振動素子を発振させる発振回路と、
前記収容空間外に配置され、前記発熱素子を制御する制御回路と、
前記外側パッケージと前記内側パッケージとを電気的に接続する導電性ワイヤーと、を有し、
前記外側パッケージは、
前記内側パッケージを収容する第1凹部と、前記第1凹部が開口する面と反対側の面に開口し、前記制御回路を収容する第3凹部と、を有する第1ベース基板と、
前記第1凹部の開口を塞ぐように前記第1ベース基板に接合されている第1リッドと、を有し、
前記第1凹部および前記第1リッドにより前記収容空間が形成され、
前記内側パッケージは、
前記振動素子を収容する第2凹部を備える第2ベース基板と、
前記第2凹部の開口を塞ぐように前記第2ベース基板に接合されている第2リッドと、を有し、
前記振動素子は、前記第2ベース基板に固定され、
前記第2リッドは、前記断熱部材を介して前記第1ベース基板に固定されており、
前記第1凹部および前記第3凹部を有する前記第1ベース基板は、セラミックスで形成されていることを特徴とする発振器。
【請求項2】
前記内側パッケージは、前記第2ベース基板の前記第2リッドが接合されている面と反対側の面に配置されている外部端子を有し、
前記外部端子と前記外側パッケージとが前記導電性ワイヤーを介して電気的に接続されている請求項に記載の発振器。
【請求項3】
前記発振回路は、前記内側パッケージに収容されている請求項1または2に記載の発振器。
【請求項4】
温度センサーを含む請求項1ないしのいずれか1項に記載の発振器。
【請求項5】
前記収容空間は、減圧状態である請求項1ないしのいずれか1項に記載の発振器。
【請求項6】
前記断熱部材は、前記収容空間に充填されている請求項1ないしのいずれか1項に記載の発振器。
【請求項7】
前記発熱素子は、前記内側パッケージに収容されている請求項1ないしのいずれか1項に記載の発振器。
【請求項8】
前記発熱素子は、前記第2ベース基板の前記第2リッドが接合されている面と反対側の面に配置されている請求項またはに記載の発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ベース基板とカバーケースとで構成された外側パッケージ内に、ヒーターICおよび振動素子が搭載されたパッケージ体が固定されてなる水晶発振器が記載されている。また、この水晶発振器においては、パッケージ体が複数のスペーサーを介してベース基板に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-130861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の水晶発振器では、パッケージ体とベース基板との間で電気的な接続を取るために、スペーサーには金属配線や金属メッキがされたスルーホールが形成されている。そのため、スペーサーに形成された金属部分を介してベース基板とパッケージ体との間で熱が移動し易い構成となっている。したがって、外部からの熱がスペーサーを介してパッケージ体に搭載されている振動素子に伝わり易く、発振信号の特性が周囲温度の影響を受け易いという問題があった。また、ヒーターICで生じさせる熱がパッケージ体から外へ逃げてしまうため、振動素子を効率的に加熱することができないという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発振器は、収容空間を有する外側パッケージと、
前記収容空間に収容され、断熱部材を介して前記外側パッケージに固定されている内側パッケージと、
前記内側パッケージに収容されている振動素子と、
前記収容空間に収容され、前記内側パッケージに固定されている発熱素子と、
前記振動素子を発振させる発振回路と、
前記収容空間外に配置され、前記発熱素子を制御する制御回路と、
前記外側パッケージと前記内側パッケージとを電気的に接続する導電性ワイヤーと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の発振器を示す断面図である。
図2図1の発振器が有する内側パッケージ内を示す平面図である。
図3】第2実施形態の発振器を示す断面図である。
図4】第3実施形態の発振器を示す断面図である。
図5】第4実施形態の発振器を示す断面図である。
図6】第5実施形態の発振器を示す断面図である。
図7】第6実施形態の発振器を示す断面図である。
図8】第7実施形態の発振器を示す断面図である。
図9】第8実施形態の発振器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の発振器の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0008】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の発振器を示す断面図である。図2は、図1の発振器が有する内側パッケージ内を示す平面図である。なお、説明の便宜上、各図には、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を図示している。また、X軸に沿う方向をX軸方向、Y軸に沿う方向をY軸方向、Z軸に沿う方向をZ軸方向とも言う。また、Z軸方向の矢印側を「上」とも言い、反対側を「下」とも言う。また、Z軸方向からの平面視を単に「平面視」とも言う。
【0009】
図1に示す発振器1は、恒温槽型の水晶発振器(OCXO)である。このような発振器1は、外側パッケージ2と、外側パッケージ2に収容された内側パッケージ3と、内側パッケージ3に収容された振動素子4および発熱素子5と、外側パッケージ2に固定された回路素子6と、外側パッケージ2と内側パッケージ3との間に介在する断熱部材7と、外側パッケージ2と内側パッケージ3とを電気的に接続する導電性ワイヤーであるボンディングワイヤーBW3と、を有する。このような発振器1は、発熱素子5の熱によって振動素子4を加熱し、振動素子4を所望の温度に保つことにより、発振信号の周波数変動を抑え、優れた発振特性を実現する。
【0010】
外側パッケージ2は、第1ベース基板21を有する。第1ベース基板21は、表裏関係にある上面21aおよび下面21bを有する。また、第1ベース基板21は、上面21aに開口する第1凹部である有底の凹部211と、下面21bに開口する第3凹部である有底の凹部212と、を有する。そのため、第1ベース基板21は、H型の断面形状をなす。また、凹部211は、複数の凹部で構成され、上面21aに開口する凹部211aと、凹部211aの底面に開口し、凹部211aよりも開口が小さい凹部211bと、を有する。また、凹部212は、複数の凹部で構成され、下面21bに開口する凹部212aと、凹部212aの底面に開口し、凹部212aよりも開口が小さい凹部212bと、を有する。そして、凹部211bの底面に内側パッケージ3が断熱部材7を介して固定され、凹部212bの底面に回路素子6が固定されている。
【0011】
また、凹部211aの底面には複数の内部端子241が配置され、凹部212aの底面には複数の内部端子242が配置され、下面21bには複数の実装端子243が配置されている。これら端子241、242、243は、第1ベース基板21内に形成された図示しない内部配線を介して電気的に接続されている。後述するように、各内部端子241は、ボンディングワイヤーBW3を介して内側パッケージ3の外部端子342と電気的に接続され、各内部端子242は、ボンディングワイヤーBW4を介して回路素子6と電気的に接続されている。そして、発振器1は、複数の実装端子243を介して図示しない外部装置と電気的に接続される。
【0012】
また、外側パッケージ2は、第1リッド22を有する。第1リッド22は、第1ベース基板21の上面21aに接合部材23を介して接合され、凹部211の開口を塞いでいる。このように凹部211の開口を第1リッド22で塞ぐことにより、外側パッケージ2の内部に気密な第1収容空間S1が形成される。そして、第1収容空間S1に、内側パッケージ3が収容されている。
【0013】
第1収容空間S1は、減圧状態、好ましくは、より真空に近い状態である。これにより、優れた断熱性を発揮することができ、発振器1の外部の熱が内側パッケージ3に伝わり難くなる。そのため、振動素子4が外部の熱の影響を受け難くなり、発熱素子5の熱によって振動素子4を所望の温度に保ち易くなる。ただし、第1収容空間S1の雰囲気は、特に限定されず、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを封入した雰囲気であってもよく、減圧状態でなく大気圧状態または加圧状態となっていてもよい。また、後述する実施形態のように、第1収容空間S1に断熱部材7が充填されていてもよい。
【0014】
なお、特に限定されないが、第1ベース基板21は、アルミナ等のセラミックスで構成することができ、第1リッド22は、コバール等の金属材料で構成することができる。
【0015】
内側パッケージ3は、第2ベース基板31を有する。第2ベース基板31は、表裏関係にある上面31aおよび下面31bを有する。また、第2ベース基板31は、下面31bに開口する第2凹部である有底の凹部311を有する。また、凹部311は、複数の凹部で構成され、下面31bに開口する凹部311aと、凹部311aの底面に開口し、凹部311aよりも開口が小さい凹部311bと、を有する。そして、凹部311bの底面に発熱素子5が固定され、発熱素子5の下面に振動素子4が固定されている。
【0016】
また、凹部311aの底面には複数の内部端子341が配置され、上面31aには複数の外部端子342が配置されている。これら端子341、342は、第2ベース基板31内に形成された図示しない内部配線を介して電気的に接続されている。
【0017】
また、複数の外部端子342は、それぞれ、ボンディングワイヤーBW3を介して第1ベース基板21の内部端子241と電気的に接続されている。このように、内側パッケージ3の外部に臨む外部端子342を設けることにより、内側パッケージ3と外側パッケージ2との電気的な接続が容易となる。
【0018】
ここで、内側パッケージ3と外側パッケージ2とを電気的に接続する導電性部材は、高い熱伝導率を有するため、内側パッケージ3と外側パッケージ2との間の熱伝達経路として機能し易い。そのため、前記導電性部材として、細く長い線状のボンディングワイヤーBW3を用いることにより、内側パッケージ3と外側パッケージ2との間の熱の伝達を効果的に抑制することができる。そのため、発振器1の外部の熱が内側パッケージ3に伝わり難くなる。よって、振動素子4が外部の熱の影響を受け難くなり、発熱素子5の熱によって振動素子4を所望の温度に保ち易くなる。また、反対に、発熱素子5の熱がボンディングワイヤーBW3を介して外側パッケージ2に逃げ難くなり、発熱素子5の熱を効率的に振動素子4に伝えることができる。そのため、発熱素子5の効率的な駆動を行うことができると共に、振動素子4の温度をより安定させることができる。
【0019】
また、内側パッケージ3は、第2リッド32を有する。第2リッド32は、第2ベース基板31の下面31bに接合部材33を介して接合され、凹部311の開口を塞いでいる。このように、凹部311の開口を第2リッド32で塞ぐことにより、内側パッケージ3の内部に気密な第2収容空間S2が形成される。そして、この第2収容空間S2に、振動素子4および発熱素子5が収容されている。
【0020】
第2収容空間S2は、減圧状態、好ましくは、より真空に近い状態となっている。これにより、振動素子4のCI(クリスタルインピーダンス)値が低下し、発振特性が向上する。ただし、第2収容空間S2の雰囲気は、特に限定されず、例えば、大気圧状態、加圧状態となっていてもよい。
【0021】
なお、特に限定されないが、第2ベース基板31は、アルミナ等のセラミックスで構成することができ、第2リッド32は、コバール等の金属材料で構成することができる。
【0022】
このような内側パッケージ3は、第2リッド32を凹部211の底面側に向けた姿勢で配置され、第2リッド32において、断熱部材7を介して凹部211の底面に固定されている。このように、内側パッケージ3と外側パッケージ2との間に断熱部材7を介在させることにより、外部の熱、特に回路素子6の熱が外側パッケージ2を介して内側パッケージ3に伝わり難くなる。そのため、振動素子4が外部の熱の影響を受け難くなり、発熱素子5の熱により振動素子4を所望の温度に保ち易くなる。また、反対に、発熱素子5の熱が内側パッケージ3を介して外側パッケージ2に逃げ難くなり、発熱素子5の熱を効率的に振動素子4に伝えることができる。そのため、発熱素子5の効率的な駆動を行うことができると共に、振動素子4の温度をより安定させることができる。
【0023】
特に、内側パッケージ3を構成する部材のうち、振動素子4が固定されていない第2リッド32を外側パッケージ2に固定することにより、断熱部材7から振動素子4までの熱伝達経路を長くすることができる。そのため、外部の熱が断熱部材7を介して内側パッケージ3に伝わっても、その熱が振動素子4に伝わり難くなる。したがって、振動素子4が外部の熱の影響をさらに受け難くなり、発熱素子5の熱により振動素子4を所望の温度に保ち易くなる。ただし、これに限定されず、第2ベース基板31が断熱部材7を介して第1ベース基板21に固定されていてもよい。
【0024】
断熱部材7は、第2リッド32よりも熱伝導率が低い材料から構成されている。このような断熱部材7としては、特に限定されず、例えば、各種樹脂材料、この中でも、特に、多孔質ポリイミド等の多孔質樹脂材料を好適に用いることができ、樹脂材料の他にも、例えば、各種ガラス材料、シリカエアロゲル等の無機多孔質材料等を用いることができる。なお、断熱部材7の熱伝導率としては、特に限定されないが、1.0W/m・K以下であることが好ましい。これにより、熱伝導率の十分に低い断熱部材7となる。
【0025】
また、断熱部材7は、互いに離間して配置された複数の柱状部71を有し、これら柱状部71が第2リッド32の全域に広がって島状に配置されている。これにより、内側パッケージ3を安定した姿勢で外側パッケージ2に固定することができる。また、断熱部材7と外側パッケージ2との接触面積を小さくすることができ、外部の熱が断熱部材7を介して内側パッケージ3に伝わり難くなる。ただし、これに限定されず、断熱部材7は、第2リッド32の下面の全面に広がってベタに配置されていてもよい。これにより、内側パッケージ3と外側パッケージ2との接合面積が大きくなり、接着強度が増す。そのため、発振器1の機械的強度が高まる。
【0026】
なお、断熱部材7が接着力を有する場合は、第2リッド32と第1ベース基板21とを断熱部材7を介して接合すればよい。一方、断熱部材7が接着力を有しない場合は、断熱部材7と第2リッド32および断熱部材7と第1ベース基板21をそれぞれ接着剤等の接合部材を介して接合すればよい。また、断熱部材7には、シリカゲル等の熱伝導率が十分に低いギャップ材が含まれていてもよい。これにより、断熱部材7の厚みを制御することができ、断熱効果をより確実に発揮することができる。
【0027】
振動素子4は、SCカット水晶振動素子である。これにより、周波数安定性に優れた振動素子4となる。図2に示すように、振動素子4は、上述のSCカットで切り出された円板状の水晶基板41と、水晶基板41の表面に設けられた電極と、を有する。また、電極は、水晶基板41の下面の中央部に配置された第1励振電極421と、水晶基板41の上面の中央部に、第1励振電極421と対向して配置された第2励振電極431と、を有する。また、電極は、下面の外縁部に配置された第1接続電極422と、第1励振電極421と第1接続電極422とを接続する第1引出電極423と、上面の外縁部に配置された第2接続電極432と、第2励振電極431と第2接続電極432とを接続する第2引出電極433と、を有する。
【0028】
ただし、振動素子4の構成は、これに限定されない。例えば、水晶基板41の平面視形状は、円形に限定されず、例えば、矩形であってもよい。また、振動素子4として、ATカット水晶振動素子、BTカット水晶振動素子、音叉型水晶振動素子、弾性表面波共振子、その他の圧電振動素子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)共振素子等であってもよい。
【0029】
このような振動素子4は、上面を発熱素子5側に向けた姿勢で配置され、その外縁部が発熱素子5の下面に導電性の接合部材B1を介して固定されている。なお、接合部材B1としては、導電性を有していれば特に限定されず、例えば、金属バンプ、半田、金属ペースト、導電性樹脂接着剤等を用いることができる。
【0030】
発熱素子5は、振動素子4と共に内側パッケージ3に収容されている。これにより、発熱素子5を振動素子4の近傍に配置することができ、発熱素子5の熱を振動素子4に効率的に伝えることができる。
【0031】
このような発熱素子5は、振動素子4を加熱する発熱部としての機能を有する発熱回路51と、温度センサー52と、を有する。また、発熱素子5は、その下面が振動素子4を固定する固定面となっており、図2に示すように、下面には複数の電極パッド53が設けられている。そして、各電極パッド53は、ボンディングワイヤーBW1を介して内部端子341と電気的に接続されている。
【0032】
これら複数の電極パッド53に含まれる電極パッド53aは、発熱回路51と電気的に接続されておらず、内部端子341と振動素子4とを電気的に接続する中継電極として機能する。この電極パッド53aは、導電性の接合部材B1を介して振動素子4の第2接続電極432と電気的に接続されている。一方、振動素子4の第1接続電極422は、電極パッド53を介することなくボンディングワイヤーBW2を介して内部端子341と電気的に接続されている。ただし、振動素子4と内部端子341との電気的な接続方法は、特に限定されない。
【0033】
図1に示すように、回路素子6は、第1ベース基板21の凹部212内に配置され、凹部212の底面に固定されている。つまり、回路素子6は、第1収容空間S1の外側に位置している。これにより、回路素子6の熱が内側パッケージ3に伝わり難くなる。そのため、振動素子4が回路素子6の熱の影響を受け難くなり、発熱素子5の熱により振動素子4を所望の温度に保ち易くなる。また、内側パッケージ3と回路素子6とをZ軸方向に重ねて配置することができるため、発振器1のX軸方向およびY軸方向への広がりが抑えられ、発振器1の小型化を図ることができる。
【0034】
また、回路素子6は、ボンディングワイヤーBW4を介して第1ベース基板21の内部端子242と電気的に接続されている。これにより、回路素子6と振動素子4および発熱素子5とが電気的に接続される。
【0035】
回路素子6は、温度センサー61と、発振回路62と、温度制御回路64と、を有する。発振回路62は、振動素子4を発振させ、温度センサー61の検出温度に基づいて温度補償された発振信号を生成する機能を有する。すなわち、発振回路62は、振動素子4と電気的に接続され、振動素子4の出力信号を増幅し、増幅した信号を振動素子4にフィードバックすることにより振動素子4を発振させる発振回路部と、温度センサー61から出力される温度情報に基づいて、発振信号の周波数変動が振動素子4自身の周波数温度特性よりも小さくなるように温度補償する温度補償回路部と、を有する。
【0036】
温度制御回路64は、発熱素子5を制御する制御回路である。具体的には、温度制御回路64は、温度センサー52の出力信号に基づき、発熱回路51の抵抗を流れる電流量を制御し、振動素子4を一定温度に保つための回路である。例えば、温度制御回路64は、温度センサー52の出力信号から判定される現在の温度が設定された基準温度よりも低い場合には、発熱回路51の抵抗に所望の電流を流し、現在の温度が基準温度よりも高い場合には発熱回路51の抵抗に電流が流れないように制御する。また、例えば、温度制御回路64は、現在の温度と基準温度との差に応じて、発熱回路51の抵抗を流れる電流量を増減させるように制御してもよい。
【0037】
以上、発振器1について説明した。このような発振器1は、前述したように、収容空間である第1収容空間S1を有する外側パッケージ2と、第1収容空間S1に収容され、断熱部材7を介して外側パッケージ2に固定されている内側パッケージ3と、内側パッケージ3に収容されている振動素子4と、第1収容空間S1に収容され、内側パッケージ3に固定されている発熱素子5と、振動素子4を発振させる発振回路62と、第1収容空間S1外に配置され、発熱素子5を制御する制御回路である温度制御回路64と、外側パッケージ2と内側パッケージ3とを電気的に接続する導電性ワイヤーであるボンディングワイヤーBW3と、を有する。
【0038】
このように、内側パッケージ3と外側パッケージ2との間に断熱部材7を介在させることにより、外部の熱が外側パッケージ2を介して内側パッケージ3に伝わり難くなる。そのため、振動素子4が外部の熱の影響を受け難くなり、発熱素子5の熱により振動素子4を所望の温度に保ち易くなる。また、反対に、発熱素子5の熱が内側パッケージ3を介して外側パッケージ2に逃げ難くなり、発熱素子5の熱を効率的に振動素子4に伝えることができる。そのため、発熱素子5の効率的な駆動を行うことができると共に、振動素子4の温度をより安定させることができる。また、内側パッケージ3と外側パッケージ2とを電気的に接続する導電性部材は、高い熱伝導率を有するため、内側パッケージ3と外側パッケージ2との間の熱伝達経路として機能し易い。その点、前記導電性部材として、細く長い線状のボンディングワイヤーBW3を用いているため、内側パッケージ3と外側パッケージ2との間の熱の伝達を効果的に抑制することができる。そのため、発振器1の外部の熱が内側パッケージ3に伝わり難くなる。よって、この点においても、振動素子4が外部の熱の影響を受け難くなり、発熱素子5の熱によって振動素子4を所望の温度に保ち易くなる。したがって、高い周波数特性を有し、かつ、省電力駆動が可能な発振器1となる。
【0039】
また、前述したように、外側パッケージ2は、内側パッケージ3を収容する第1凹部である凹部211を備える第1ベース基板21と、凹部211の開口を塞ぐように第1ベース基板21に接合されている第1リッド22と、を有し、凹部211および第1リッド22により第1収容空間S1が形成されている。そして、内側パッケージ3は、断熱部材7を介して第1ベース基板21に固定されている。このような構成によれば、外側パッケージ2の構成が簡単なものとなる。
【0040】
また、前述したように、内側パッケージ3は、振動素子4を収容する第2凹部である凹部311を備える第2ベース基板31と、凹部311の開口を塞ぐように第2ベース基板31に接合されている第2リッド32と、を有し、振動素子4は、第2ベース基板31に固定されている。そして、第2リッド32が断熱部材7を介して外側パッケージ2に固定されている。このように、振動素子4が固定されていない第2リッド32を外側パッケージ2に固定することにより、断熱部材7から振動素子4までの熱伝達経路を長くすることができる。そのため、断熱部材7を介して外側パッケージ2から内側パッケージ3に伝わる熱が振動素子4により伝わり難くなる。そのため、振動素子4が外部の熱の影響を受け難くなり、発熱素子5の熱により振動素子4を所望の温度に保ち易くなる。
【0041】
また、前述したように、内側パッケージ3は、第2ベース基板31の第2リッド32が接合されている面である下面31bと反対側の面である上面31aに配置されている外部端子342を有する。そして、外部端子342と外側パッケージ2とがボンディングワイヤーBW3を介して電気的に接続されている。これにより、内側パッケージ3と外側パッケージ2との電気的な接続が容易となる。
【0042】
また、前述したように、発振器1は、温度センサー52を含む。これにより、振動素子4を所望の温度に保つことが容易となる。
【0043】
また、前述したように、第1収容空間S1は、減圧状態である。これにより、優れた断熱性を発揮することができ、発振器1の外部の熱が内側パッケージ3に伝わり難くなる。そのため、振動素子4が外部の熱の影響を受け難くなり、発熱素子5の熱によって振動素子4を所望の温度に保ち易くなる。
【0044】
また、前述したように、発熱素子5は、内側パッケージ3に収容されている。これにより、発熱素子5を振動素子4の近傍に配置することができ、発熱素子5の熱を振動素子4に効率的に伝えることができる。そのため、発熱素子5の効率的な駆動が可能となる。
【0045】
なお、発振器1の構成としては、特に限定されず、例えば、第1ベース基板21の凹部212に、回路素子6とは別の回路部品が配置されていてもよい。この回路部品としては、特に限定されないが、例えば、回路素子6にPLL回路(位相同期回路)が形成されている場合には、当該PLL回路に用いるための発振器とすることができる。また、凹部212に充填材が充填され、回路素子6がモールドされていてもよい。
【0046】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態の発振器を示す断面図である。
【0047】
本実施形態は、発熱素子5と内側パッケージ3との間にも断熱部材8が介在していること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図3において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0048】
図3に示すように、本実施形態の発振器1では、発熱素子5は、断熱部材8を介して凹部311bの底面に固定されている。これにより、発熱素子5の熱が第2ベース基板31に逃げ難くなり、発熱素子5の熱を効率的に振動素子4に伝えることができる。そのため、発熱素子5の効率的な駆動を行うことができると共に、振動素子4の温度をより安定させることができる。断熱部材8は、第2ベース基板31よりも熱伝導率が低い材料から構成されている。このような断熱部材8としては、特に限定されず、例えば、前述した断熱部材7と同様の材料とすることができる。
【0049】
以上のような第2実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0050】
<第3実施形態>
図4は、第3実施形態の発振器を示す断面図である。
【0051】
本実施形態は、発熱素子5の大きさが異なること以外は、前述した第2実施形態と同様である。以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図4において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0052】
図4に示すように、本実施形態の発振器1では、発熱素子5は、平面視で振動素子4よりも大きく構成され、かつ、振動素子4の全域と重なるように配置されている。これにより、発熱素子5からより多くの熱を発生させることができると共に、その熱をより効率的に、かつ、振動素子4の全域にムラなく伝えることができる。そのため、振動素子4の温度をより安定させることができる。
【0053】
以上のような第3実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0054】
<第4実施形態>
図5は、第4実施形態の発振器を示す断面図である。
【0055】
本実施形態は、回路素子6と外側パッケージ2との間に断熱部材9が介在していること以外は、前述した第1実施形態と同様である。以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図5において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0056】
図5に示すように、本実施形態の発振器1では、回路素子6は、断熱部材9を介して凹部212bの底面に固定されている。これにより、回路素子6の熱が第1ベース基板21に伝わり難くなる。そのため、振動素子4が外部の熱、特に回路素子6の熱の影響を受け難くなり、発熱素子5の熱により振動素子4を所望の温度に保ち易くなる。断熱部材9は、第1ベース基板21よりも熱伝導率が低い材料から構成されている。このような断熱部材9としては、特に限定されず、例えば、前述した断熱部材7と同様の材料とすることができる。
【0057】
以上のような第4実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0058】
<第5実施形態>
図6は、第5実施形態の発振器を示す断面図である。
【0059】
本実施形態は、発熱素子5が内側パッケージ3の外側に位置し、回路素子6のうち発振回路62および温度センサー61が内側パッケージ3に収容されていること以外は、前述した第1実施形態と同様である。以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図6において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0060】
図6に示すように、発熱素子5は、内側パッケージ3の外側に位置し、第1収容空間S1に収容されている。また、発熱素子5は、第2ベース基板31の上面31aに固定されている。そのため、発熱素子5の熱は、第2ベース基板31を介して振動素子4に伝わる。また、発熱素子5は、ボンディングワイヤーBW7を介して内部端子241と電気的に接続されている。このように、内側パッケージ3の外周面に発熱素子5を配置することにより、内側パッケージ3内に収容する部品点数を削減することができる。そのため、内側パッケージ3の小型化を図ることができると共に、アウトガス等による第2収容空間S2の汚染、変動を抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態の発振器1では、回路素子6は、温度センサー61および発振回路62を含む第1回路素子6Aと、温度制御回路64を含む第2回路素子6Bとに分かれている。第2回路素子6Bは、凹部212の底面に固定されている。一方、第1回路素子6Aは、振動素子4と共に内側パッケージ3に収容されている。このように、第1回路素子6Aを内側パッケージ3に収容することにより、発振回路62と振動素子4とを接続する配線長を短くすることができ、当該配線からノイズが混入し難く、精度のよい発振信号を生成することができる。また、温度センサー61を振動素子4の近傍に配置することができるため、温度センサー61によって振動素子4の温度をより精度よく検出することができる。
【0062】
以上のように、本実施形態の発振器1では、発振回路62は、内側パッケージ3に収容されている。これにより、発振回路62と振動素子4とを接続する配線長を短くすることができ、当該配線からノイズが混入し難く、精度のよい発振信号を生成することができる。
【0063】
また、前述したように、発熱素子5は、第2ベース基板31の第2リッド32が接合されている面である下面31bと反対側の面である上面31aに配置されている。このように、内側パッケージ3の外周面に発熱素子5を配置することにより、内側パッケージ3内に収容する部品点数を削減することができる。そのため、内側パッケージ3の小型化を図ることができると共に、アウトガス等による第2収容空間S2の汚染、変動を抑制することができる。特に、発熱素子5を上面31aに配置することにより、振動素子4までの熱伝達経路を十分に短くすることができ、発熱素子5の熱を振動素子4へ効率的に伝えることができる。
【0064】
以上のような第5実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0065】
<第6実施形態>
図7は、第6実施形態の発振器を示す断面図である。
【0066】
本実施形態は、第1回路素子6Aが内側パッケージ3の外側に位置する以外は、前述した第5実施形態と同様である。以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図7において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0067】
図7に示すように、本実施形態の発振器1では、発振回路62を含む第1回路素子6Aは、内側パッケージ3の外側に位置し、第1収容空間S1に収容されている。また、第1回路素子6Aは、発熱素子5と共に、第2ベース基板31の上面31aに固定されている。第1回路素子6Aは、第2ベース基板31内に形成された図示しない内部配線を介して振動素子4や外部端子342と電気的に接続されている。このように、第1回路素子6Aを内側パッケージ3の外側に配置することにより、内側パッケージ3内に収容する部品点数を削減することができる。そのため、内側パッケージ3の小型化を図ることができると共に、アウトガス等による第2収容空間S2の汚染、変動を抑制することができる。
【0068】
以上のような第6実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0069】
<第7実施形態>
図8は、第7実施形態の発振器を示す断面図である。
【0070】
本実施形態は、発熱素子5の配置が異なること以外は、前述した第5実施形態と同様である。以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図8において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0071】
図8に示すように、本実施形態の発振器1では、発熱素子5は、第2リッド32と断熱部材7との間に配置されている。これにより、外部から断熱部材7を介して内側パッケージ3に伝わる熱が発熱素子5に吸収され、発熱素子5の熱の一部として利用される。そのため、発熱素子5以外の熱による振動素子4の温度変化を抑制することができ、振動素子4の温度がより安定する。
【0072】
以上のような第7実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0073】
<第8実施形態>
図9は、第8実施形態の発振器を示す断面図である。
【0074】
本実施形態は、断熱部材7の配置が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図9において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0075】
図9に示すように、本実施形態の発振器1では、断熱部材7は、第1収容空間S1に充填されている。つまり、断熱部材7は、第1収容空間S1内に実質的に隙間なく配置されている。そして、内側パッケージ3は、断熱部材7によってその全周を覆われている。これにより、内側パッケージ3を外側パッケージ2により強固に固定することができ、発振器1の機械的強度が高まる。
【0076】
以上のような第8実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0077】
以上、本発明の発振器を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、前述した各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…発振器、2…外側パッケージ、3…内側パッケージ、4…振動素子、5…発熱素子、6…回路素子、6A…第1回路素子、6B…第2回路素子、7、8、9…断熱部材、21…第1ベース基板、21a…上面、21b…下面、22…第1リッド、23…接合部材、31…第2ベース基板、31a…上面、31b…下面、32…第2リッド、33…接合部材、41…水晶基板、51…発熱回路、52…温度センサー、53…電極パッド、53a…電極パッド、61…温度センサー、62…発振回路、64…温度制御回路、71…柱状部、211、211a、211b…凹部、212、212a、212b…凹部、241…内部端子、242…内部端子、243…実装端子、311、311a、311b…凹部、341…内部端子、342…外部端子、421…第1励振電極、422…第1接続電極、423…第1引出電極、431…第2励振電極、432…第2接続電極、433…第2引出電極、B1…接合部材、BW1、BW2、BW3、BW4、BW7…ボンディングワイヤー、S1…第1収容空間、S2…第2収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9