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特許7593005表示システム、表示方法、及び表示プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】表示システム、表示方法、及び表示プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20241126BHJP
   B65B 57/00 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
G05B23/02 301X
B65B57/00 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020133641
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022029983
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 早映子
(72)【発明者】
【氏名】服部 玲子
(72)【発明者】
【氏名】峯本 俊文
【審査官】田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-346444(JP,A)
【文献】特開2018-206362(JP,A)
【文献】特開2009-064407(JP,A)
【文献】特開2018-206081(JP,A)
【文献】特開2007-329329(JP,A)
【文献】特開2019-053537(JP,A)
【文献】特開平07-225609(JP,A)
【文献】米国特許第06847916(US,B1)
【文献】特開2013-092908(JP,A)
【文献】特開2009-258961(JP,A)
【文献】特開2007-048158(JP,A)
【文献】国際公開第2010/122627(WO,A1)
【文献】特開2020-052714(JP,A)
【文献】特開2010-122847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
B65B 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を生産する生産設備であって、当該生産設備の駆動を行う少なくとも1つの駆動手段及び前記生産の監視を行う少なくとも1つの監視手段を、それぞれ、構成要素として有し、当該各構成要素が制御可能な特徴量を有する、生産設備に設けられる表示システムであって、
制御部と、
表示部と、
記憶部と、
を備え、
前記記憶部は、前記生産設備に生じ得る異常に関し、複数の前記構成要素のうちの2以上の前記構成要素の関係を因果関係モデルとして、記憶し、
前記制御部は、
前記因果関係モデルに基づいて、前記各構成要素に対応するノードと、前記ノード間を連結するエッジと、を有するモデル図を前記表示部に表示し、
前記モデル図、前記生産設備を表す図において、前記各構成要素が設置される位置に前記ノードが重なるように、前記生産設備を表す図に重ねて表示
前記生産設備に異常が生じたときには、前記異常に関連する前記構成要素に対応するノード、及び当該ノードに連結されるエッジの少なくとも一方の表示態様を変化させる、ように構成されているとともに
経時的に、所定の条件下で、前記因果関係モデルを生成または更新するとともに、前記生成または更新した因果関係モデルを、生成または更新の時系列を示すラベルとともに前記記憶部に記憶させ、
前記記憶させた前記因果関係モデルの前記ラベルのリストを前記表示部に表示させ、
ユーザからの要求に応じて、前記リストの中から選択された前記ラベルに対応する前記因果関係モデルを前記表示部に表示させるように構成されている、表示システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記異常の予兆が検知された場合に、前記表示態様を変化させる、ように構成されている、請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記特徴量が第1基準値を充足したときに、前記異常の予兆が生じたとして、前記表示態様を第1表示態様とし、
前記特徴量が第2基準値を充足したときに、前記異常が生じたとして、前記表示態様を第2表示態様とする、請求項1に記載の表示システム。
【請求項4】
前記記憶部は、前記因果関係モデルに含まれる前記構成要素の特徴量の経時的な変化を記憶し、
前記制御部は、前記特徴量の経時的な変化を前記表示部に表示可能に構成されている、請求項1から3のいずれかに記載の表示システム。
【請求項5】
製品を生産する生産設備であって、当該生産設備の駆動を行う少なくとも1つの駆動手段及び前記生産の監視を行う少なくとも1つの監視手段を、それぞれ、構成要素として有し、当該各構成要素が制御可能な特徴量を有する、生産設備において生じ得る異常に関する前記構成要素間の因果関係を表示部に表示するための表示方法であって、
前記生産設備に生じ得る異常について、複数の前記構成要素のうちの2以上の前記構成要素の関係を因果関係モデルとして、記憶するステップと、
前記因果関係モデルに基づいて、前記各構成要素に対応するノードと、前記ノード間を連結するエッジと、を有するモデル図を前記表示部に表示するステップと、
前記生産設備に異常が生じたときに、前記異常に関連する前記構成要素に対応するノード、及び当該ノードに連結されるエッジの少なくとも一方の表示態様を変化させるステップと、
を備え、
前記記憶するステップは、経時的に、所定の条件下で、前記因果関係モデルを生成または更新するとともに、前記生成または更新した因果関係モデルを、生成または更新の時系列を示すラベルとともに記憶することを含み、
前記モデル図を前記表示部に表示するステップは、前記生産設備を表す図を前記表示部に表示することと、前記生産設備を表す図において、前記各構成要素が設置される位置に前記ノードが重なるように、前記モデル図を前記生産設備を表す図に重ねて表示することと、前記記憶した前記因果関係モデルの前記ラベルのリストを前記表示部に表示することとを含み、
ユーザからの要求に応じて、前記リストの中から選択された前記ラベルに対応する前記因果関係モデルを前記表示部に表示させるステップ
をさらに備える、表示方法。
【請求項6】
製品を生産する生産設備であって、当該生産設備の駆動を行う少なくとも1つの駆動手段及び前記生産の監視を行う少なくとも1つの監視手段を、それぞれ、構成要素として有し、当該各構成要素が制御可能な特徴量を有する、生産設備において生じ得る異常に関する前記構成要素間の因果関係を表示部に表示するための表示プログラムであって、
コンピュータに、
前記生産設備に生じ得る異常について、複数の前記構成要素のうちの2以上の前記構成要素の関係を因果関係モデルとして、記憶するステップと、
前記因果関係モデルに基づいて、前記各構成要素に対応するノードと、前記ノード間を連結するエッジと、を有するモデル図を前記表示部に表示するステップと、
前記生産設備に異常が生じたときに、前記異常に関連する前記構成要素に対応するノード、及び当該ノードに連結されるエッジの少なくとも一方の表示態様を変化させるステップと、
を実行させ、
前記記憶するステップは、経時的に、所定の条件下で、前記因果関係モデルを生成または更新するとともに、前記生成または更新した因果関係モデルを、生成または更新の時系列を示すラベルとともに記憶することを含み、
前記モデル図を前記表示部に表示するステップは、前記生産設備を表す図を前記表示部に表示することと、前記生産設備を表す図において、前記各構成要素が設置される位置に前記ノードが重なるように、前記モデル図を前記生産設備を表す図に重ねて表示することと、前記記憶した前記因果関係モデルの前記ラベルのリストを前記表示部に表示することとを含み、
ユーザからの要求に応じて、前記リストの中から選択された前記ラベルに対応する前記因果関係モデルを前記表示部に表示させるステップ
をさらに備える、表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示システム、表示方法、及び表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
設備状態を監視する方法として、特許文献1では、イベント信号に基づいて運転状態別にモード分割し、モード毎に正常モデルを作成し、作成した正常モデルに基づいて異常判定を行う方法が提案されている。この方法では、正常モデルの作成に用いた学習データの十分性をチェックし、その結果に応じて、異常判定に利用する閾値を設定することで、正常を異常と判定する誤報の発生を防止している。
【0003】
また、特許文献2では、生産設備が生産する製品に異常が生じたことを検知する方法が提案されている。具体的に、特許文献2では、生産システムから収集されるデータを製品が正常な場合と異常な場合とに分類し、正常な場合と異常な場合とで有意な差異が生じる特徴量を特定して、特定した特徴量に基づいて製品が正常であるか否かを診断する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-172945号公報
【文献】特開2010-277199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、生産設備において、異常が生じた場合には、これを即座に解決しなければならないが、ユーザは、生じた異常の原因をマニュアルなどで調べた上で、解決のための処理を行うのが一般的である。しかしながら、異常が生じる度にマニュアルを調べるとなると、時間を要し、処理が遅れることがある。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、生産設備において生じ得る異常に関連する構成要素を容易に確認することができる、表示システム、表示方法、及び表示プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る表示システムは、製品を生産する生産設備であって、当該生産設備の駆動を行う少なくとも1つの駆動手段及び前記生産の監視を行う少なくとも1つの監視手段を、それぞれ、構成要素として有し、当該各構成要素が制御可能な特徴量を有する、生産設備に設けられる表示システムであって、制御部と、表示部と、記憶部と、を備え、前記記憶部は、前記生産設備に生じ得る異常に関し、複数の前記構成要素のうちの2以上の前記構成要素の関係を因果関係モデルとして、記憶し、前記制御部は、前記因果関係モデルに基づいて、前記各構成要素に対応するノードと、前記ノード間を連結するエッジと、を有するモデル図を前記表示部に表示し、前記生産設備に異常が生じたときには、前記異常に関連する前記構成要素に対応するノード、及び当該ノードに連結されるエッジの少なくとも一方の表示態様を変化させる、ように構成されている。
【0007】
この構成によれば、生産設備の構成要素のうちの2以上の構成要素の関係を因果関係モデルとして記憶し、この因果関係モデルに基づいて、各構成要素に対応するノードと、ノード間を連結するエッジと、を有するモデル図を表示部に表示することができる。その上で、生産設備に異常が生じたときに、その異常に関連する構成要素に対応するノード、及び当該ノードに連結されるエッジの少なくとも一方の表示態様を変化させるように構成されている。そのため、ユーザは、異常に関連する構成要素を容易に視認することができる。
【0008】
上記表示システムにおいて、前記制御部は、前記異常の予兆が検知された場合に、前記表示態様を変化させる、ように構成することができる。
【0009】
これにより、異常が生じたときのみならず、異常の予兆を検知したときにも、その予兆に関連する構成要素に対応するノード等の表示態様が変化していることで、そのノード等に対応する構成要素が異常の予兆に関連していることを容易に視認することができる。したがって、異常が発生する前に、対応を行うことができる。
【0010】
上記表示システムにおいて、前記制御部は、前記特徴量が第1基準値を充足したときに、前記異常の予兆が生じたとして、前記表示態様を第1表示態様とし、前記特徴量が第2基準値を充足したときに、前記異常が生じたとして、前記表示態様を第2表示態様とすることができる。
【0011】
上記表示システムにおいて、前記記憶部は、前記因果関係モデルに含まれる前記構成要素の特徴量の経時的な変化を記憶し、前記制御部は、前記特徴量の経時的な変化を前記表示部に表示可能に構成することができる。
【0012】
この構成によれば、ユーザは、異常が生じたときに、関連のある構成要素の特徴量の経時的な変化を視覚的に確認することができる。これにより、例えば、特徴量がどのように変化して異常が生じたかを事後的に確認することができる。あるいは、特徴量の変化を視認することで、異常の発生の予兆を検知することができる。
【0013】
上記表示システムにおいて、前記制御部は、経時的に、所定の条件下で、前記因果関係モデルを生成するとともに、前記記憶部に記憶させ、前記記憶部に記憶された前記因果関係モデルのリストを前記表示部に表示させ、ユーザからの要求に応じて、前記リストの中から選択された前記因果関係モデルを前記表示部に表示させるように構成することができる。
【0014】
この構成によれば、因果関係モデルの変化を経時的に確認することができる。所定の条件下とは、例えば、因果関係モデルが変化したとき、異常が発生して上述したノードの表示態様が変化したとき、生産設備の稼働開始時/停止時などにすることができ、このような条件下で記憶された因果関係モデルを、それぞれ過去に遡って視認することができる。したがって、例えば、因果関係モデルの経時的な変化、異常発生時の構成要素の確認などを事後的に行うことができる。
【0015】
本発明に係る表示方法は、製品を生産する生産設備であって、当該生産設備の駆動を行う少なくとも1つの駆動手段及び前記生産の監視を行う少なくとも1つの監視手段を、それぞれ、構成要素として有し、当該各構成要素が制御可能な特徴量を有する、生産設備において生じ得る異常に関する前記構成要素間の因果関係を表示部に表示するための表示方法であって、前記生産設備に生じ得る異常について、複数の前記構成要素のうちの2以上の前記構成要素の関係を因果関係モデルとして、記憶するステップと、前記因果関係モデルに基づいて、前記各構成要素に対応するノードと、前記ノード間を連結するエッジと、を有するモデル図を前記表示部に表示するステップと、前記生産設備に異常が生じたときに、前記異常に関連する前記構成要素に対応するノード、及び当該ノードに連結されるエッジの少なくとも一方の表示態様を変化させるステップと、を備えている。
【0016】
本発明に係る表示プログラムは、製品を生産する生産設備であって、当該生産設備の駆動を行う少なくとも1つの駆動手段及び前記生産の監視を行う少なくとも1つの監視手段を、それぞれ、構成要素として有し、当該各構成要素が制御可能な特徴量を有する、生産設備において生じ得る異常に関する前記構成要素間の因果関係を表示部に表示するための表示プログラムであって、コンピュータに、前記生産設備に生じ得る異常について、複数の前記構成要素のうちの2以上の前記構成要素の関係を因果関係モデルとして、記憶するステップと、前記因果関係モデルに基づいて、前記各構成要素に対応するノードと、前記ノード間を連結するエッジと、を有するモデル図を前記表示部に表示するステップと、前記生産設備に異常が生じたときに、前記異常に関連する前記構成要素に対応するノード、及び当該ノードに連結されるエッジの少なくとも一方の表示態様を変化させるステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、生産設備において生じ得る異常に関連する構成要素を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明が適用される場面の一例を模式的に例示する。
図2】本発明の一実施形態に係る解析装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る生産設備の概略図である。
図4】解析装置の機能構成を示すブロック図である。
図5】因果関係モデルの構築の例を示すフローチャートである。
図6】制御信号とタクト時間との関係の例である。
図7A】因果関係モデルの例である。
図7B】因果関係モデルの例である。
図7C】因果関係モデルの例である。
図8】包装機の概略図に因果関係モデルのノードを重ねた図である。
図9A】表示装置の画面の例である。
図9B】表示装置の画面の例である。
図9C】表示装置の画面の例である。
図10】異常が発生したときの表示装置の画面の例である。
図11】異常の予兆を検知したときの表示装置の画面の例である。
図12A】記憶した因果関係モデルのリストが表示された表示装置の画面の例である。
図12B】記憶した因果関係モデルのリストが表示された表示装置の画面の例である。
図12C】記憶した因果関係モデルのリストが表示された表示装置の画面の例である。
図13】表示装置の画面の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。なお、本実施形態において登場するデータを自然言語により説明しているが、より具体的には、コンピュータが認識可能な疑似言語、コマンド、パラメータ、マシン語等で指定される。
【0020】
<1.適用例>
まず、図1を用いて、本発明が適用される場面の一例について説明する。図1は、本実施形態に係る生産システムの適用場面の一例を模式的に例示する。本実施形態に係る生産システムは、生産設備の一例である包装機3と、解析装置1と、表示装置2と、を備えている。解析装置1は、包装機3に設けられたサーボモータ(駆動手段)や各種センサ(監視手段)間の因果関係を導出し、これを表示するように構成されたコンピュータである。なお、以下では、サーボモータ等の駆動手段や各種センサ等の監視手段を構成要素と称することとする。
【0021】
解析装置1は、包装機3に生じ得る異常について、構成要素間の因果関係モデルを生成し、これを表示装置2の画面21に表示する。図1の例では、後述するフィルムロール30(図3参照)のブレーキ用の革ベルトの摩耗が異常として生じるときの因果関係モデルを示している。すなわち、包装機3に設けられた複数のサーボモータのうち、サーボ1,3,4がノードとして表示され、これらがエッジにより連結されている。そして、エッジの向きが因果関係を示している。つまり、革ベルトの摩耗が生じるときには、サーボ1がサーボ3に影響を及ぼし、さらにサーボ3がサーボ4に影響を及ぼすことで、結果として革ベルトの摩耗が生じることを示している。したがって、包装機3の作業者は、サーボ4,3,1の順に異常が生じる原因を確認すればよい。但し、詳細は後述するが、各サーボモータには、トルク、位置などの制御可能な複数の特徴量があり、サーボモータの特徴量のいずれかが上記因果関係を構築する。
【0022】
また、図1の例に示すように、表示装置2の画面21には、包装機3の概略図が表示され、この概略図に因果関係モデル(以下、単にモデル図ということがある)が重ねて表示される。この例では、サーボ3を示すノードの外縁が着色されており、他のノードとは表示態様が相違している。これは、発生した異常に関連する構成要素と対応するノードを視認しやすくしたものである。例えば、サーボ3の特徴量の少なくとも1つが所定の基準値から外れた上で、異常が発生した場合には、サーボ3を示すノードの表示態様を変化させることで、異常に関連のある構成要素を容易に視認することができる。したがって、異常に対する対応を迅速に行うことができる。なお、図1の例では、包装機の概略図を示しているが、これは必須ではなく、少なくともモデル図が示されていればよい。
【0023】
なお、上記の説明では、生産設備の例として包装機3を示しているが、何らかの物を生産可能であればよく、その種類は、特に限定されなくてもよい。各構成要素の種類は、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。各構成要素は、例えば、コンベア、ロボットアーム、サーボモータ、シリンダ(成形機等)、吸着パッド、カッター装置、シール装置等であってよい。また、生産設備は、上述した包装機3のほか、例えば、印刷機、実装機、リフロー炉、基板検査装置等の複合装置であってもよい。更に、生産設備は、例えば、上記のような何らかの物理的な動作を伴う装置の他に、例えば、各種センサにより何らかの情報を検知する装置、各種センサからデータを取得する装置、取得したデータから何らかの情報を検知する装置、取得したデータを情報処理する装置等の内部処理を行う装置を含んでもよい。1つの生産設備は、1又は複数の装置で構成されてもよいし、装置の一部で構成されてもよい。また、同一の装置が複数の処理を実行する場合には、それぞれを別の構成要素とみなしてもよい。例えば、同一の装置が第1の処理と第2の処理とを実行する場合に、第1の処理を実行する当該装置を第1の構成要素とみなし、第2の処理を実行する当該装置を第2の構成要素とみなしてもよい。
【0024】
<2.構成例>
<2-1.ハードウェア構成>
次に、本実施形態に係る生産システムのハードウェア構成の一例について説明する。図2は、本実施形態に係る解析装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図であり、図3は包装機の概略構成を示す図である。
【0025】
<2-1-1.解析装置>
まず、図2を用いて、本実施形態に係る解析装置1のハードウェア構成の一例を説明する。図2に示すように、この解析装置1は、制御部11、記憶部12、通信インタフェース13、外部インタフェース14、入力装置15、及びドライブ16が電気的に接続されたコンピュータである。
【0026】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じて各構成の制御を行う。記憶部12は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置であり、制御部11で実行されるプログラム121、概略図データ122、因果関係モデルデータ123、及び動作状態データ124等を記憶する。
【0027】
プログラム121は、包装機3に生じる異常と構成要素との因果関係モデルを生成したり、これを表示装置2に表示すること等を行うためのプログラムである。概略図データ122は、対象となる生産設備の概略図が示されたデータであり、本実施形態においては、包装機3の概略図を示すデータである。概略図は、少なくとも因果関係モデルで示される構成要素の位置が分かるような包装機全体の概略図であればよく、必ずしも詳細に図でなくてもよい。また、包装機3の一部のみを示す拡大図であってもよい。
【0028】
因果関係モデルデータ123は、包装機3から抽出される各構成要素の特徴量によって構築される異常発生の因果関係モデルを示すデータである。すなわち、異常が発生するときの、構成要素間の因果関係を示すデータである。この解析装置1では、後述するように、包装機3から抽出される特徴量等によって因果関係モデルデータが生成されるが、外部の装置において予め生成された因果関係モデルデータを記憶することもできる。
【0029】
動作状態データ124は、包装機3の動作状態を示すデータである。詳細は、後述するが、例えば、上述した各構成要素の駆動において生じ得るデータ、例えば、トルク、速度、加速度、温度、圧力等の計測データとすることができる。また、構成要素がセンサの場合には、検出される結果、例えば、内容物WAが存在するか否かを「on」と「off」とで示す検出データとすることができる。
【0030】
通信インタフェース13は、例えば、有線LAN(Local Area Network)モジュール、無線LANモジュール等であり、有線又は無線通信を行うためのインタフェースである。すなわち、通信インタフェース13は、他の装置と通信を行うように構成された通信部の一例である。本実施形態の解析装置1は、通信インタフェース13を介して包装機3と接続されている。
【0031】
外部インタフェース14は、外部装置と接続するためのインタフェースであり、接続する外部装置に応じて適宜構成される。本実施形態では、外部インタフェース14が、表示装置2に接続されている。なお、表示装置2は、公知の液晶ディスプレイ、タッチパネルディスプレイ等が用いられてよい。
【0032】
入力装置15は、例えば、マウス、キーボード等の入力を行うための装置である。
【0033】
ドライブ16は、例えば、CD(Compact Disk)ドライブ、DVD(Digital Versatile Disk)ドライブ等であり、記憶媒体17に記憶されたプログラムを読み込むための装置である。ドライブ16の種類は、記憶媒体17の種類に応じて適宜選択されてよい。なお、記憶部に記憶されている、プログラム121を含む各種のデータ122~124の少なくとも一部は、この記憶媒体17に記憶されていてもよい。
【0034】
記憶媒体17は、コンピュータその他装置、機械等が記録されたプログラム等の情報を読み取り可能なように、このプログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積する媒体である。図2では、記憶媒体17の一例として、CD、DVD等のディスク型の記憶媒体を例示している。しかしながら、記憶媒体17の種類は、ディスク型に限定される訳ではなく、ディスク型以外であってもよい。ディスク型以外の記憶媒体として、例えば、フラッシュメモリ等の半導体メモリを挙げることができる。
【0035】
なお、解析装置1の具体的なハードウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、構成の省略、置換及び追加が可能である。例えば、制御部11は、複数のプロセッサを含んでもよい。解析装置1は、複数台の情報処理装置で構成されてもよい。また、解析装置1には、提供されるサービス専用に設計された情報処理装置の他、汎用のサーバ装置等が用いられてよい。
【0036】
<2-1-2.包装機>
次に、図3を用いて、本実施形態に係る包装機3のハードウェア構成の一例を説明する。図3は、本実施形態に係る包装機3のハードウェア構成の一例を模式的に例示する。包装機3は、いわゆる横ピロー包装機であり、食品(乾燥麺等)、文房具(消しゴム等)等の内容物WAを包装する装置である。但し、内容物WAの種類は、実施の形態に応じて適宜選択可能であり、特には限定されない。この包装機3は、主としての3つの装置、つまり、包装フィルムが巻き取られたフィルムロール30を含み包装フィルムを搬送するフィルム搬送部31と、内容物WAを搬送する内容物搬送部32と、内容物を包装フィルムで包装する製袋部33と、を備えている。
【0037】
包装フィルムは、例えば、ポリエチレンフィルム等の樹脂フィルムとすることができる。フィルムロール30は巻き芯を備えており、包装フィルムはその巻き芯に巻き取られている。巻き芯は軸周りに回転可能に支持されており、これにより、フィルムロール30は、回転しながら包装フィルムを繰り出すことができるように構成されている。
【0038】
フィルム搬送部31は、サーボモータ(サーボ1)311により駆動される駆動ローラと、この駆動ローラから回転力を付与される受動ローラ312と、包装フィルムにテンションをかけながらガイドする複数のプーリ313と、を備えている。これにより、フィルム搬送部31は、フィルムロール30から包装フィルムを繰り出し、繰り出した包装フィルムを弛ませることなく製袋部33に搬送するように構成されている。
【0039】
内容物搬送部32は、包装対象となる内容物WAを搬送するコンベア321と、コンベア321を駆動するサーボモータ(サーボ2)322と、を備えている。図3に例示されるように、内容物搬送部32は、フィルム搬送部31の下方を経て、製袋部33に連結している。これにより、内容物搬送部32により搬送される内容物WAは、製袋部33に供給され、フィルム搬送部31から供給された包装フィルムにより包装される。また、コンベア321の下流の上方には、内容物WAの位置を検知するファイバセンサ(センサ1)324が設けられている。さらに、コンベア321の下方には、内容物WAの乗り上げ等を検知するファイバセンサ(センサ2)325が設けられている。これらセンサ1,2により、内容物WAが正しく包装されるために、正しい位置で搬送されているか否かを検知する。
【0040】
製袋部33は、コンベア331と、コンベア331を駆動するサーボモータ(サーボ3)332と、包装フィルムを搬送方向にシールするセンターシール部333と、包装フィルムを搬送方向の両端側で切断し、各端部でシールするエンドシール部334と、を備えている。
【0041】
コンベア331は、内容物搬送部32から搬送された内容物WAとフィルム搬送部31から供給された包装フィルムとを搬送する。フィルム搬送部31から供給された包装フィルムは、幅方向の両側端縁部同士が重なるように適宜折り曲げられつつ、センターシール部333に供給される。センターシール部333は、例えば、左右一対の加熱ローラ(ヒータ1,2)により構成されており、折り曲げられた包装フィルムの両側端縁部を加熱により搬送方向に沿ってシールする。これにより、包装フィルムは、筒状に形成される。内容物WAは、この筒状に形成された包装フィルム内に投入される。また、エンドシール部334の上流側には、コンベア331の上方に、内容物WAの位置を検知するファイバセンサ(センサ3)336が設けられている。
【0042】
一方、エンドシール部334は、例えば、サーボモータ335により駆動されるローラと、ローラの回転によって開閉する一対のカッタと、各カッタの両側に設けられるヒータ(ヒータ3)と、を有している。これらにより、エンドシール部334は、搬送方向に直交する方向に筒状の包装フィルムをカットするとともに、カットした部分で加熱によりシールすることができるように構成されている。このエンドシール部334を通過すると、筒状に形成された包装フィルムの先端部分は、搬送方向の両側でシールされ、後続から分離されて、内容物WAを内包する包装体WBとなる。
【0043】
<2-1-3.包装工程>
以上の包装機3は、次のような工程で、内容物WAの包装を行うことができる。すなわち、フィルム搬送部31によって、フィルムロール30から包装フィルムを繰り出す。また、内容物搬送部32によって、包装対象となる内容物WAを搬送する。次に、製袋部33のセンターシール部333によって、繰り出された包装フィルムを筒状に形成する。そして、形成した筒状の包装フィルムに内容物WAを投入した上で、エンドシール部334によって、搬送方向に直交する方向に筒状の包装フィルムをカットするとともに、カットした部分の搬送方向の両側で加熱によりシールする。これにより、内容物WAを内包する横ピロー型の包装体WBが形成される。すなわち、内容物WAの包装が完了する。
【0044】
なお、包装機3の駆動の制御は、包装機3とは別個に設けたPLCなどで行うこともできる。この場合、上述した動作状態データ124は、PLCから取得することができる。また、上記のように構成された包装機3では、一例として、異常の因果関係を構築するために、10個の構成要素が設定されている(例えば、図8参照)。すなわち、上述したサーボ1~4,ヒータ1~3,及びセンサ1~3が構成要素として設定され、異常が発生するときの、これら構成要素間の因果関係が因果関係モデルとして構築される。詳細は後述する。
【0045】
<2-2.機能構成>
次に、解析装置1の機能構成(ソフトウエア構成)を説明する。図4は、本実施形態に係る解析装置1の機能構成の一例である。解析装置1の制御部11は、記憶部12に記憶されたプログラム121をRAMに展開する。そして、制御部11は、RAMに展開されたプログラム121をCPUにより解釈及び実行して、各構成を制御する。これによって、図4に示すように、本実施形態に係る解析装置1は、特徴量取得部111、モデル構築部112、及び表示制御部113を備えるコンピュータとして機能する。
【0046】
特徴量取得部111は、包装機3が包装体WBを正常に形成した正常時、及び形成される包装体WBに異常が生じた異常時それぞれについて、包装機3の動作状態を示す動作状態データ124から算出される複数種の特徴量の値を取得する。モデル構築部112は、取得した正常時及び異常時それぞれの各種類の特徴量の値から、形成される包装体WBに生じる異常と各種類の特徴量との関連度を導出する所定のアルゴリズムに基づいて、取得した複数種の特徴量の中から異常の予測に有効な特徴量を選択する。そして、選択した特徴量を用いて、異常が生じるときの、構成要素間の因果関係を示す因果関係モデル123を構築する。
【0047】
表示制御部113は、上述した包装機3の概略図、因果関係モデル、各種の特徴量等を表示装置2の画面21に表示する機能を有する。その他、表示制御部113は、表示装置2の画面21に各種の情報を表示するための制御を行う。
【0048】
解析装置1の各機能に関しては後述する動作例で詳細に説明する。なお、本実施形態では、以上の機能がいずれも汎用のCPUによって実現される例について説明している。しかしながら、以上の機能の一部又は全部が、1又は複数の専用のプロセッサにより実現されてもよい。また、解析装置1の機能構成に関しては、実施形態に応じて、適宜、機能の省略、置換及び追加が行われてもよい。
【0049】
<3.動作例>
次に、上記のように構成された生産システムの動作例を説明する。
【0050】
<3-1.因果関係モデルの作成>
まず、図5を用いて、解析装置が因果関係モデルを作成する際の処理手順について説明する。図5は、因果関係モデルを作成する際の解析装置の処理手順の一例を例示する。
【0051】
(ステップS101)
最初のステップS101では、解析装置1の制御部11は、特徴量取得部111として機能し、包装機3が包装体WBを正常に形成した正常時、及び形成される包装体WBに異常が生じた異常時それぞれについて、包装機3の動作状態を示す動作状態データ124から算出される複数種類の特徴量の値を取得する。
【0052】
具体的には、まず、制御部11は、正常時と異常時とに分類して、動作状態データ124を収集する。収集する動作状態データ124の種類は、包装機3の状態を示すデータであれば、特に限定されないが、本実施形態においては、上述した各構成要素の駆動において生じ得るデータ、例えば、トルク、速度、加速度、温度、圧力等の計測データとすることができる。
【0053】
構成要素がセンサの場合には、ON時間、OFF時間、ターンON時間、ターンOFF時間などの計測データを動作状態データ124とすることができる。ON時間及びOFF時間は、後述する図6に示すように、対象とするフレーム内での制御信号がONまたはOFFとなっている総時間であり、ターンON時間及びターンOFF時間は、対象とするフレーム内で制御信号が初めてONまたはOFFになるまでの時間である。その他、制御部11は、各センサの検出結果、例えば、内容物WAが存在するか否かを「on」と「off」とで示す検出データを動作状態データ124として取得することができる。なお、収集した動作状態データ124は、記憶部12に蓄積してもよいし、外部の記憶装置に蓄積してもよい。
【0054】
次に、制御部11は、特徴量を算出する処理範囲を規定するため、収集した動作状態データ124をフレーム毎に分割する。例えば、制御部11は、動作状態データ124を一定時間長のフレーム毎に分割してもよい。ただし、包装機3は、必ずしも一定時間間隔で動作しているとは限らない。そのため、動作状態データ124を一定時間長のフレーム毎に分割すると、各フレームに反映される包装機3の動作がずれてしまう可能性がある。
【0055】
そこで、本実施形態では、制御部11は、動作状態データ124をタクト時間毎にフレーム分割する。タクト時間は、製品を所定個数分生産する、すなわち、包装体WBを所定個数分形成するのにかかる時間である。このタクト時間は、包装機3を制御する信号、例えば、包装機3の各サーボモータ等の動作を制御する制御信号に基づいて特定することができる。
【0056】
図6を用いて、制御信号とタクト時間との関係について説明する。図6は、制御信号とタクト時間との関係を模式的に例示する。図6に示すように、包装機3のような製品の生産を繰り返す生産設備に対する制御信号は、所定個数分の製品の生産に応じて「on」と「off」とが周期的に表れるパルス信号になっている。
【0057】
例えば、図6に示す制御信号では、1つの包装体WBを形成する間に、「on」と「off」とが1回ずつ表れている。そこで、制御部11は、この制御信号を包装機3から取得し、取得した制御信号の立ち上がり(「on」)から次の立ち上がり(「on」)までの時間をタクト時間とすることができる。そして、制御部11は、図6に示すように、タクト時間毎に動作状態データ124をフレームに分割することができる。
【0058】
なお、制御信号の種類は、包装機3を制御するのに利用可能な信号であれば、特に限定されなくてもよい。例えば、包装機3が、包装フィルムに付されたマークを検知するためのセンサを備えており、このセンサの出力信号を包装フィルムの送り量の調節に利用する場合には、このセンサの出力信号を制御信号として利用してもよい。
【0059】
次に、制御部11は、動作状態データ124の各フレームから特徴量の値を算出する。特徴量の種類は、生産設備の特徴を示すものであれば、特に限定されなくてもよい。
【0060】
例えば、動作状態データ124が上記計測データのような量的データ(図6の物理量データ)である場合には、制御部11は、フレーム内の振幅、最大値、最小値、平均値、分散値、標準偏差、自己相関係数、フーリエ変換により得られるパワースペクトルの最大値、歪度、尖度等を特徴量として算出してもよい。
【0061】
また、例えば、動作状態データ124が上記検出データのような質的データ(図6のパルスデータ)である場合には、制御部11は、各フレーム内の「on」時間、「off」時間、Duty比、「on」回数、「off」回数、等を特徴量として算出してもよい。
【0062】
さらに、特徴量は、単一の動作状態データ124からだけではなく、複数件の動作状態データ124から導出してもよい。例えば、制御部11は、2種類の動作状態データ124の対応するフレーム同士の相互相関係数、比率、差分、同期のずれ量、距離、等を特徴量として算出してもよい。
【0063】
制御部11は、動作状態データ124から上記のような特徴量を複数種類算出する。これにより、制御部11は、正常時及び異常時それぞれについて、動作状態データ124から算出される複数種類の特徴量の値を取得することができる。なお、動作状態データ124の収集から特徴量の値の算出までの処理は、解析装置1ではなく、包装機3またはそれを制御する各種の装置で行うようにしてもよい。また、制御部11は、各種類の特徴量の値を、例えば、閾値より高い状態を「1」又は「high」、閾値を低い状態を「0」又は「low」というように離散化してもよい。
【0064】
(ステップS102)
次のステップS102では、制御部11は、モデル構築部112として機能し、ステップS101で取得した正常時及び異常時それぞれの各種類の特徴量の値から、形成される包装体WBに生じる異常と各種類の特徴量との関連度を特定する所定のアルゴリズムに基づいて、取得した複数種類の特徴量の中から異常の予測に有効な特徴量を選択する。
【0065】
所定のアルゴリズムは、例えば、ベイジアンネットワークを利用して構成されてもよい。ベイジアンネットワークは、複数の確率変数間の因果関係を有向非巡回グラフ構造で表現すると共に、各確率変数間の因果関係を条件付確率で表現するグラフィカルモデリングの1つである。
【0066】
制御部11は、取得した各特徴量及び包装体WBの状態を確率変数として扱って、すなわち、取得した各特徴量及び包装体WBの状態を各ノードに設定して、ベイジアンネットワークを構築することで、各特徴量と包装体WBの状態との因果関係を導出することができる。ベイジアンネットワークの構築には、公知の方法が用いられてよい。例えば、ベイジアンネットワークの構築には、Greedy Search アルゴリズム、Stingy Search アルゴリズム、全探索法等の構造学習アルゴリズムを用いることができる。また、構築されるベイジアンネットワークの評価基準には、AIC(Akaike ' s. Information Criterion)、C4.5、CHM(Cooper Herskovits Measure)、MDL(Minimum Description Length)、ML(Maximum Likelihood)等を用いることができる。また、ベイジアンネットワークの構築に利用する学習データ(動作状態データ124)に欠損値が含まれる場合の処理方法として、ペアワイズ法、リストワイズ法等を用いることができる。
【0067】
例えば、図7Aは、革ベルトの摩耗が異常イベントであるときの因果関係モデルを示している。すなわち、サーボ1の特徴量であるトルク平均値と位置の標準偏差が、サーボ3の特徴量である速度最小値とトルク最大値に影響を与え、さらにこれらがサーボ4のトルク平均値に影響を与える、という因果関係モデルが構築される。
【0068】
図7Bは、内容物搬送部32のコンベア321のチェーンの緩みが異常イベントであるときの因果関係モデルを示している。すなわち、センサ2の特徴量であるON時間が、センサ3の特徴量であるターンON時間に影響を与え、さらにこれがサーボ4のトルク平均値に影響を与える、という因果関係モデルが構築される。
【0069】
図7Cは、包装フィルムのシール不良が異常イベントであるときの因果関係モデルを示している。この異常イベントについては、サーボ4のトルク平均値のみが原因であるという因果関係モデルが構築される。このように構築された因果関係モデルは、因果関係モデルデータ123として、記憶部12に記憶される。
【0070】
なお、取得した各特徴量及び包装体WBの状態を確率変数として取り扱う方法は、実施の形態に応じて適宜設定可能である。例えば、包装体WBが正常である事象を「0」、包装体WBに異常が発生している事象を「1」として、それぞれの事象に確率を対応させることにより、包装体WBの状態を確率変数とみなすことができる。また、例えば、各特徴量の値が閾値以下である事象を「0」、各特徴量の値が閾値を超えている事象を「1」として、それぞれの事象に確率を対応させることにより、各特徴量の状態を確率変数とみなすことができる。ただし、各特徴量に対して設定する状態数は、2つに限定されなくてもよく、3つ以上であってもよい。
【0071】
<3-2.因果関係モデルの表示>
次に、上記のように構築された因果関係モデルの表示について説明する。このとき、解析装置1の制御部11は、表示制御部113として機能する。表示制御部113は、以下に示す画面21の表示を制御する。まず、表示制御部113は、記憶部12から読み出した概略図122と、上述した因果関係モデル123とを重ねて表示装置2の画面21に表示する。図8は、本実施形態における異常イベントの原因となり得る構成要素を、概略図に重ね合わせた図である。ここでは、上述したように、因果関係モデルのノードであるサーボ1~4,ヒータ1~3,及びセンサ1~3を、概略図において、それらが設置される位置に配置している。そして、次に説明する表示装置2の画面21においては、ユーザによって選択された異常イベントに応じて、これらの構成要素の中から、因果関係モデルを構築する構成要素がノードとして選択されるとともに、因果関係を示す矢印が示されたエッジがノードとともに表示される。
【0072】
図9Aは、因果関係モデルを示す表示装置2の画面21の例である。この画面21は、上述した入力装置15により操作することができる。この画面21には、左上に異常イベントを選択するための選択ボックス211が表示され、プルダウンメニューにより、異常イベントを選択できるようになっている。この例では、革ベルトの摩耗、チェーンの緩み、及びシール不良が異常イベントとして示され、この中から革ベルトの摩耗が選択されている。
【0073】
この選択ボックス211の下側には、包装機の概略図と因果関係モデルとが重ねられたモデル図212が表示されている。図9Aの例では、異常イベントが革ベルトの摩耗であるときのモデル図が表示されている。そして、このモデル図212の左下には、選択された異常イベントに応じて、構成要素とその特徴量とが示されたリスト213が表示されている。ユーザは、このリスト213の中から、いずれかの構成要素及び特徴量を選択することができ、いずれかを選択すると、モデル図212の中の対応する構成要素が強調表示される。この例では、リスト213の中から(サーボ1-トルク平均値)が選択されており、これによって、モデル図212の中のサーボ1が強調表示される。強調表示は、種々の方法が可能であり、着色、点滅等、他のノードと区別できるように表示されればよい。
【0074】
さらに、リスト213の右側には、選択された特徴量の経時変化がグラフ214によって表示されている。この例では、(サーボ1-トルク平均値)が選択されているため、その経時的な変化を示す折れ線グラフ214が表示されている。
【0075】
図9Bは、ボックス211において、チェーンの緩みが異常イベントとして表示された例を示している。これにより、リスト213には、チェーンの緩みの原因となる構成要素と特徴量が表示されている。ここでは、(サーボ4-トルク平均値)が選択されているため、モデル図212のサーボ4が強調されるとともに、(サーボ4-トルク平均値)の経時的な変化を示す折れ線グラフ214が表示されている。
【0076】
図9Cは、ボックス211において、シール不良が異常イベントとして表示された例を示している。これにより、リスト213には、シール不良の原因となる構成要素と特徴量が表示されている。ここでは、(サーボ4-トルク平均値)が選択されているため、モデル図212のサーボ4が強調されるとともに、(サーボ4-トルク平均値)の経時的な変化を示す折れ線グラフ214が表示されている。
【0077】
上記の画面21の操作をまとめると、以下の通りである。まず、ユーザは、入力装置15によって、選択ボックス211から確認を行うべき異常イベントを選択する。これにより、表示制御部113は、選択された異常イベントに対応するモデル図212及びリスト213を画面に表示する。そして、リスト213から、いずれかの特徴量が選択されると、対応するモデル図212のノードが強調表示されるとともに、選択された特徴量の経時変化を示すグラフ214が表示される。したがって、ユーザは、この画面21を見ながら、異常イベントに係る因果関係を視認することができる。なお、グラフ214に表示する特徴量の経時変化の期間は、ユーザが適宜設定することができる。
【0078】
<3-3.異常発生時の表示>
次に、異常が発生したときの画面の表示について、図10を参照しつつ説明する。図10は、図9Aと対応する図であり、異常イベントが革ベルトの摩耗であるときのモデル図212が表示されており、実際に革ベルトの摩耗に関する異常が発生している。このとき、モデル図212のサーボ1のノードの外縁が着色され、強調表示がなされている。これは、この異常がサーボ1に起因している可能性があることを示している。この例では、折れ線グラフ214に示すように、サーボ1のトルク平均値がある時期から上昇しており、所定値(例えば、0.8)を超えている。したがって、サーボ1のトルク平均値が所定値を超えていることが、異常発生の原因と考えることができる。このように、表示制御部113は、異常が発生したときに、特に、特徴量が所定値を超えた構成要素に対応するノードを強調表示する。
【0079】
なお、上記のように、異常が発生したときに、原因と考えられるノードを強調表示するのみならず、異常の予兆が検知されたときにもノードを強調表示することもできる。異常の予兆とは、包装機の駆動は継続できるが、将来的に異常が発生する可能性がある挙動が示されたことをいう。例えば、図11に示すように、サーボ1のトルク平均値が、異常の発生の予兆となる基準値(例えば、0.6)を超えたときには、サーボ1のノードの外縁を異常発生時よりも薄く着色し、これによって異常の予兆をユーザに視認させることができる。その後、異常が発生したときには、ノードの外縁の着色を図10に示すようにすることができる。これにより、異常の発生を予兆が検知されたときから段階的に表示することができる。なお、異常や異常の予兆を判断するための基準は、適宜変更することができ、特徴量が上記のような所定の閾値を超えたとき、閾値を超えた時間が所定時間に達したときなど、種々の設定が可能である。
【0080】
<3-4.因果関係モデルの経時的な記憶>
因果関係モデルは、経時的に記憶部12に記憶しておき、過去に遡って表示することができる。図12A図12Cは、図9A図9Cとは異なる画面21であり、例えば、図示を省略するタブを選択することで、図12A図12Cのような画面21に遷移することができる。所定条件下で、経時的に因果関係モデルを記憶した例を示す画面21である。この画面の左側には、時系列に記憶されている因果関係モデルのラベル215a~215dを含むリスト215が表示されている。この例では、所定の条件下で、因果関係モデルを記憶するようにしている。例えば、因果関係モデルが新たに生成されたとき、因果関係モデルが更新されたとき、異常が発生したとき、生産設備の稼働を開始したとき/停止したとき、生産設備または構成要素の設定を変更したとき、ユーザが事前に設定した各構成要素の特徴値が所定値に達したとき、ユーザが任意に設定した時刻になったとき、ユーザがリアルタイム監視時にキャプションを付けたとき、など、種々の条件下で因果関係モデルが記憶される。
【0081】
そして、このリスト215では、最新の因果関係モデルを示すラベルが最も上に表示され、因果関係モデルが記憶されるたびに、新たなラベルがリスト215の最も上に表示される。例えば、図12Aの例では、因果関係モデルが更新されたときに記憶された因果関係モデルが最新のものであることを示している。また、図12Bは、図12Aの状態から所定時間が経過し、ユーザが設定した規定時刻における因果関係モデルが記憶され、それを示すラベル215cがリスト215の最も上に表示されている。そして、図12Cは、図12Bの状態から所定時間が経過し、異常が発生したときの因果関係モデルが記憶され、それを示すラベル215dがリスト215の最も上に表示されている。図12Cの例では、異常が発生しているため、この異常に関連のある構成要素(例えば、サーボ1)に対応するノードが強調表示されている。なお、図12A及び図12Bの例では、異常は発生しておらず、また、図12A図12Cを通して、因果関係モデル自体に変更はない。
【0082】
このようなリスト215を設けることで、過去に遡って因果関係モデルを確認することができる。例えば、図12Cの例において、ユーザが、リスト215の中のいずれかのラベル215a~215dを選択すると、そのときの因果関係モデルをモデル図212として表示することができる。
【0083】
<4.特徴>
(1)本実施形態によれば、包装機3において生じ得る異常に係る因果関係モデルを表示し、包装機3に異常が生じたときに、その異常に関連する構成要素に対応するノードを強調表示するようにしている。そのため、ユーザは、異常に関連する構成要素を容易に視認することができ、異常に対する処理を迅速に進めることができる。また、異常の予兆が検知されたときにも、その異常に関連する構成要素に対応するノードを、異常が発生したときとは異なる表示態様で、強調表示することができる。これにより、異常の予兆を視認することができ、異常の発生に備えた準備、例えば、部品の準備などを進めることができる。
【0084】
(2)各構成要素の特徴量の経時的な変化をグラフによって表しているため、ユーザは、異常が生じたときに、関連のある構成要素の特徴量の経時的な変化を視覚的に確認することができる。これにより、例えば、特徴量がどのように変化して異常が生じたかを事後的に確認することができる。あるいは、特徴量の変化を視認することで、異常の発生の予兆を検知することができる。
【0085】
(3)図12A図12Cに示すように、所定の条件下で、経時的に因果関係モデルを記憶し、これをリスト化しているため、ユーザは、過去に遡って因果関係モデルを容易に視認することができる。したがって、例えば、因果関係モデルの経時的な変化、異常発生時の構成要素の確認などを事後的に行うことができる。
【0086】
<5.変形例>
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0087】
<5-1>
上記実施形態では、画面21に、異常イベントの選択ボックス211、モデル図212、リスト213、及びグラフ214を表示しているが、これに限定されるものではなく、少なくともモデル図212が示されていればよい。例えば、対象となる生産設備によっては、異常イベントが1つの場合もあるため、この場合には、選択ボックス211も不要となる。また、画面21に、全ての要素211~214を表示する必要はなく、これらを複数の画面に分けて表示し、ユーザがこれらを切り替えられるようにしてもよい。また、図12A図12Cの画面は、図9A図9Cとは異なる画面であるが、図9A図9Cにリスト215を表示することもでき、画面構成は適宜変更することができる。
【0088】
<5-2>
異常が発生したとき、異常の予兆が検知されたときのノードの表示態様は特には限定されず、異常に関連しない構成要素に対応するノードと異なる表示態様、または異常が発生してない構成要素に対応するノードと異なる表示態様であればよい。例えば、色、形状、アニメーションなど、種々の表示態様を採用することができる。表示態様を経時的に変化させることができる。例えば、異常発生直後と、そこから所定時間経過したときの表示態様を変化させることで、ユーザは、異常発生時からの概ねの時間経過を視認することができる。また、ノードのみならず、そのノードに接続されるエッジの表示態様も変化させることができる。すなわち、異常に関連のあるノードあるいはエッジの少なくとも一方の表示態様が変化するように構成されていればよい。さらに、ノードやエッジの表示態様の変化に加え、警告音を発したり、あるいはメールなどの手段で関係者に異常を通知することもできる。
【0089】
<5-3>
図12A図12Cの画面では、因果関係モデルを経時的に記憶しているため、記憶されたモデル図212を順次表示することができる。図13の例では、モデル図212を時系列で表示するための表示制御ボックス216が表示されている。この表示制御ボックス216には、タイムライン216a、記憶された因果関係モデルを示すラベル216b、時刻ポインタ216c、表示制御ボタン216dが表示されている。例えば、時系列に因果関係モデルを表示させる場合には、タイムライン216a上で、時刻ポインタ216cが所定の速度で右側へ移動していき、各ラベル216bが作成された位置に達すると、それに対応するモデル図212が順次、表示される。また、タイムライン216a上の時刻ポインタ216cは、表示制御ボタン216dにより適宜移動させることができる。すなわち、時刻ポインタ216cを、最も古い/新しい時刻へ移動、所定時刻だけ進める/戻る、停止させることができる。また、タイムライン216a上の所定の時間(例えば、符号216eの範囲)を選択することで、その時間内で時刻ポインタ216cを繰り返し移動させることができる。これにより、この時間における因果関係モデルの変化を視認することができる。この例では、時系列に沿って、モデル図を表示することを説明したが、表示制御ボックスの形態は特には限定されない。
【0090】
<5-4>
上記実施形態で示した因果関係モデルの構築は、一例であり、その他の方法であってもよい。また、他の装置で構築した概略図データ122や因果関係モデルデータ123を記憶部12に逐次記憶することもできる。
【0091】
<5-5>
包装機3以外の生産設備においても適用可能であり、その場合には、因果関係モデルを構築するための構成要素も、生産設備に応じて適宜選択することができる。また、複数の生産設備に係る概略図データを記憶部12に記憶しておき、対応する生産設備ごとに、表示装置2に表示することもできる。但し、生産設備の概略図は必須ではなく、因果関係モデルのみを表示することもできる。
【0092】
<5-6>
本発明に係る表示システムは、上記生産システムにおける解析装置1と表示装置2により構成することができる。したがって、上記実施形態の表示装置2が本発明の表示部に相当し、解析装置1の制御部11及び記憶部12が、本発明の制御部及び記憶部に相当する。例えば、本発明に係る制御部、記憶部、及び表示部をタブレットPCなどで構成することもできる。
【符号の説明】
【0093】
1…解析装置、
11…制御部
12…記憶部、
2…表示装置(表示部)
3…包装機(生産設備)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13