(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241126BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241126BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241126BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652H
H01L29/78 658F
H01L21/316 S
(21)【出願番号】P 2020147099
(22)【出願日】2020-09-01
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 亜樹
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-082454(JP,A)
【文献】特開2014-045053(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103186(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0069493(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L29/78
H01L29/12
H01L21/312-21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素層と、
前記炭化珪素層の上方に設けられ、窒素を含む二酸化珪素層と、
前記炭化珪素層および前記二酸化珪素層の間に配置され、炭素と酸素と窒素とを含む遷移領域と
を備え、
前記遷移領域は、前記二酸化珪素層から前記炭化珪素層に向かって、前記二酸化珪素層の酸素濃度が前記二酸化珪素層中の酸素濃度の最大値の95%になる位置から、前記炭化珪素層から前記二酸化珪素層に向かって、前記炭化珪素層の炭素濃度が前記炭化珪素層中の炭素濃度の最大値の95%以下になる位置までの領域であり、
前記遷移領域の窒素濃度の最大値は、1.0×10
20cm
-3以上であ
り、
前記遷移領域の窒素濃度はピークを有している
炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
炭化珪素層と、
前記炭化珪素層の上方に設けられ、窒素を含む二酸化珪素層と、
前記炭化珪素層および前記二酸化珪素層の間に配置され、炭素と酸素と窒素とを含む遷移領域と
を備え、
前記遷移領域は、前記二酸化珪素層から前記炭化珪素層に向かって、前記二酸化珪素層の酸素濃度が前記二酸化珪素層中の酸素濃度の最大値の95%になる位置から、前記炭化珪素層から前記二酸化珪素層に向かって、前記炭化珪素層の炭素濃度が前記炭化珪素層中の炭素濃度の最大値の95%以下になる位置までの領域であり、
前記遷移領域の窒素濃度の最大値は、1.0×10
20
cm
-3
以上であり、
前記遷移領域の窒素濃度の最大値は、前記二酸化珪素層の窒素濃度の最大値の5倍以上である
炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
炭化珪素層と、
前記炭化珪素層の上方に設けられ、窒素を含む二酸化珪素層と、
前記炭化珪素層および前記二酸化珪素層の間に配置され、炭素と酸素と窒素とを含む遷移領域と
を備え、
前記遷移領域の窒素濃度の最大値は、1.0×10
20
cm
-3
以上であり、
前記遷移領域の窒素濃度の最大値の半値全幅は、1.0nm以下である
炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
炭化珪素層と、
前記炭化珪素層の上方に設けられ、窒素を含む二酸化珪素層と、
前記炭化珪素層および前記二酸化珪素層の間に配置され、炭素と酸素と窒素とを含む遷移領域と
を備え、
前記遷移領域の窒素濃度の最大値は、1.0×10
20
cm
-3
以上であり、
前記炭化珪素層は、
前記遷移領域の下方に設けられ、LEED分析により規定される歪炭化珪素層と
前記歪炭化珪素層の下方に設けられる結晶炭化珪素層と、
を有する
炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
炭化珪素層と、
前記炭化珪素層の上方に設けられ、窒素を含む二酸化珪素層と、
前記炭化珪素層および前記二酸化珪素層の間に配置され、炭素と酸素と窒素とを含む遷移領域と
を備え、
前記遷移領域の窒素濃度の最大値は、1.0×10
20
cm
-3
以上であり、
前記遷移領域は、
前記二酸化珪素層の下方に設けられる二酸化珪素変質層と、
前記二酸化珪素変質層の下方に設けられる混合層と、
前記混合層の下方に設けられる炭化珪素変質層と、
を有し、
炭素濃度の最大値は、前記炭化珪素変質層、前記混合層、前記二酸化珪素変質層の順に大きく、
酸素濃度の最大値は、前記二酸化珪素変質層、前記混合層、前記炭化珪素変質層の順に大きく、
窒素濃度の最大値は、前記混合層、前記二酸化珪素変質層、前記炭化珪素変質層の順に大きい
炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記炭化珪素変質層は、
前記混合層の下方に設けられる窒化不完全炭化珪素層と、
前記窒化不完全炭化珪素層の下方に設けられ、窒素を含まない不完全炭化珪素層と、
前記不完全炭化珪素層の下方に設けられ、酸素を含まない非晶質炭化珪素層と
を有し、
前記二酸化珪素変質層は、
前記混合層の上方に設けられる炭化不完全二酸化珪素層と、
前記炭化不完全二酸化珪素層の上方に設けられ、炭素を含まない不完全二酸化珪素層と
を有する
請求項
5に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記遷移領域の窒素濃度の最大値は、前記二酸化珪素層の窒素濃度の最大値の5倍以上である
請求項1または3から6のいずれか一項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記二酸化珪素層の窒素濃度の最大値は、前記炭化珪素層の窒素濃度の最大値より大きい
請求項
1から7のいずれか一項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記遷移領域の厚さは、3nm以上である
請求項1から
8のいずれか一項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
前記遷移領域の厚さは、5nm以下である
請求項1から
9のいずれか一項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項11】
前記炭化珪素層にはトレンチが設けられ、
前記トレンチの内部に、前記二酸化珪素層が形成される
請求項1から
10のいずれか一項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項12】
前記二酸化珪素層は、
炭素濃度が窒素濃度よりも小さい下方領域と、
前記下方領域の上方に設けられ、炭素濃度が窒素濃度よりも大きい上方領域と
を有する請求項1から11のいずれか一項に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素層上に二酸化珪素層が形成された炭化珪素半導体装置が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【文献】特許第6648852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
炭化珪素半導体装置において、炭化珪素層と二酸化珪素層の界面における欠陥を低減することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、炭化珪素半導体装置を提供する。炭化珪素半導体装置は、炭化珪素層を有してよい。炭化珪素半導体装置は、二酸化珪素層を有してよい。二酸化珪素は、炭化珪素層の上方に設けられてよい。二酸化珪素は、窒素を含んでよい。炭化珪素半導体装置は、遷移領域を有してよい。遷移領域は、炭化珪素層および二酸化珪素層の間に配置されてよい。遷移領域は、炭素と酸素と窒素とを含んでよい。遷移領域の窒素濃度の最大値は、1.0×1020cm-3以上であってよい。
【0005】
遷移領域の窒素濃度の最大値は、二酸化珪素層の窒素濃度の最大値の5倍以上であってよい。
【0006】
二酸化珪素層の窒素濃度の最大値は、炭化珪素層の窒素濃度の最大値より大きくてよい。
【0007】
遷移領域の窒素濃度の最大値の半値全幅は、1.0nm以下であってよい。
【0008】
遷移領域の厚さは、3nm以上であってよい。遷移領域の厚さは、5nm以下であってよい。
【0009】
炭化珪素層は、歪炭化珪素層を有してよい。歪炭化珪素層は、遷移領域の下方に設けられてよい。歪炭化珪素層は、LEED分析により規定されてよい。炭化珪素層は、結晶炭化珪素層を有してよい。結晶炭化珪素層は、歪炭化珪素層の下方に設けられてよい。
【0010】
遷移領域は、二酸化珪素変質層を有してよい。二酸化珪素変質層は、二酸化珪素層の下方に設けられてよい。遷移領域は、混合層を有してよい。混合層は、二酸化珪素変質層の下方に設けられてよい。遷移領域は、炭化珪素変質層を有してよい。炭化珪素変質層は、混合層の下方に設けられてよい。炭素濃度の最大値は、炭化珪素変質層、混合層、二酸化珪素変質層の順に大きくてよい。酸素濃度の最大値は、二酸化珪素変質層、混合層、炭化珪素変質層の順に大きくてよい。窒素濃度の最大値は、混合層、二酸化珪素変質層、炭化珪素変質層の順に大きくてよい。
【0011】
炭化珪素変質層は、窒化不完全炭化珪素層を有してよい。窒化不完全炭化珪素層は、混合層の下方に設けられてよい。炭化珪素変質層は、不完全炭化珪素層を有してよい。不完全炭化珪素層は、窒化不完全炭化珪素層の下方に設けられてよい。不完全炭化珪素層は、窒素を含まなくてよい。炭化珪素変質層は、非晶質炭化珪素層を有してよい。非晶質炭化珪素層は、不完全炭化珪素層の下方に設けられてよい。非晶質炭化珪素層は、酸素を含まなくてよい。二酸化珪素変質層は、炭化不完全二酸化珪素層を有してよい。炭化不完全二酸化珪素層は、混合層の上方に設けられてよい。二酸化珪素変質層は、不完全二酸化珪素層を有してよい。不完全二酸化珪素層は、炭化不完全二酸化珪素層の上方に設けられてよい。不完全二酸化珪素層は、炭素を含まなくてよい。
【0012】
炭化珪素層にはトレンチが設けられてよい。トレンチの内部に、二酸化珪素層が形成されてよい。
【0013】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る炭化珪素半導体装置100の構成の一例を示す図である。
【
図2】領域Aにおける炭化珪素半導体装置100の構成を示す。
【
図3】サンプル200の形成方法の一例を示す図である。
【
図4】サンプル200の遷移領域18近傍をSIMS分析した結果の濃度プロファイルの一例である。
【
図5】炭化珪素層20をLEED分析した結果の一例を示す図である。
【
図6】NOガスで熱処理した炭化珪素層20をLEED分析した結果の一例を示す図である。
【
図7】二酸化珪素層42形成後の炭化珪素層20をLEED分析した結果の一例を示す図である。
【
図8】酸素について炭化珪素層20をXPS分析した結果の一例を示す図である。
【
図9】窒素について炭化珪素層20をXPS分析した結果の一例を示す図である。
【
図10】珪素について炭化珪素層20をXPS分析した結果の一例を示す図である。
【
図11】透過電子顕微鏡像で撮像した遷移領域18近傍を示す図である。
【
図12】遷移領域18をEELS分析した結果を示す図である。
【
図13】遷移領域18の層構成を詳細に示す図である。
【
図14】サンプル200の形成方法の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る炭化珪素半導体装置100の構成の一例を示す図である。
図1の炭化珪素半導体装置100は、縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。炭化珪素半導体装置100の上面および下面は、X-Y平面に平行であってよい。
図1は、炭化珪素半導体装置100の一部をX-Z平面で切断した断面である。本例において、X軸方向とY軸方向とは互いに垂直な方向であり、Z軸方向はX-Y平面に垂直な方向である。
【0017】
本例においては、Z軸方向の正方向を「上」と称し、Z軸方向の負方向を「下」と称する場合がある。ただし、「上」および「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」および「下」の方向は、重力方向に限定されない。「上」および「下」は、基板、層、領域および膜等における相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎない。
【0018】
図1に示す構造は、縦型MOSFETの単位構造を2つ並べたものであってよい。当該単位構造は、Y軸方向に延在し、かつ、X軸方向に繰り返し設けられてよい。複数の単位構造は、X-Y平面視において略矩形形状を構成するよう配置されてよい。複数の単位構造が設けられた領域を活性領域と称する場合もある。活性領域の周囲には、活性領域における電界集中を防ぐ機能を有するエッジ終端構造が設けられてよい。エッジ終端構造は、ガードリング構造、フィールドプレート構造およびJTE(Junction Termination Extension)構造の一以上を含んでよい。
【0019】
本例の炭化珪素半導体装置100は、炭化珪素基板10を有する。炭化珪素基板10は、いわゆるm面炭化珪素基板であってよい。炭化珪素基板10のm軸方向は、Z軸方向と平行であってよい。炭化珪素基板10は、いわゆるSi面炭化珪素基板であってもよい。炭化珪素基板10のSi軸方向は、Z軸方向と平行であってよい。炭化珪素基板10は、いわゆるC面炭化珪素基板であってよい。炭化珪素基板10のC軸方向は、Z軸方向と平行であってよい。炭化珪素基板10は、いわゆるa面炭化珪素基板であってよい。炭化珪素基板10のa軸方向は、Z軸方向と平行であってよい。また、炭化珪素基板10は、貫通転位密度が1×107cm-2未満の低転位自立基板であってよい。本例の炭化珪素基板10は、n+型の基板である。
【0020】
本例においては、基板および各層の導電型をp型およびn型の一方を用いて説明しているが、他の例においては基板および各層の導電型は、逆の導電型であってもよい。なお、n型またはp型は、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。nまたはpの後に記載した+または-について、+はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が高く、-はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が低いことを意味する。
【0021】
炭化珪素層12は、炭化珪素基板10よりも低い不純物濃度のn-型の炭化珪素層である。炭化珪素層12は、低濃度n型ドリフト層である。炭化珪素層12は、炭化珪素基板10の上面に設けられる。炭化珪素層12は、エピタキシャル成長によって成膜されてよい。炭化珪素層12の、炭化珪素基板10側に対して反対側には、高濃度領域14が形成されている。高濃度領域14は、炭化珪素基板10よりも不純物濃度が低く、炭化珪素層12よりも不純物濃度が高いn型の炭化珪素層である。本例の高濃度領域14は、高濃度n型ドリフト層である。高濃度領域14は、エピタキシャル成長によって成膜されてよい。高濃度領域14の、炭化珪素層12側に対して反対側には、ベース層16が形成されている。本例のベース層16は、p型である。ベース層16は、エピタキシャル成長によって成膜されてよい。
【0022】
図1において、炭化珪素基板10の下面には、ドレイン電極54が設けられている。ドレイン電極54の下方には、ドレイン電極パッド56が設けられている。
【0023】
炭化珪素半導体装置100の上面側には、トレンチ構造が形成されている。具体的には、トレンチ38は、ベース層16の炭化珪素基板10側に対して反対側の上面(炭化珪素半導体装置100の上面側)からベース層16を貫通して高濃度領域14に達する。ベース層16および高濃度領域14(つまり、炭化珪素層)にはトレンチ38が形成される。トレンチ38の内壁に沿って、トレンチ38の底部および側壁に遷移領域18が形成されており、トレンチ38内の遷移領域18の内側に二酸化珪素層42が形成されている。つまり、炭化珪素層と、二酸化珪素層42との間に、遷移領域18が設けられている。二酸化珪素層42は、高温酸化(HTO)により形成されてよい。遷移領域18については、後で詳細に説明する。さらに、トレンチ38内の二酸化珪素層42の内側にゲート電極44が形成されている。ゲート電極44は、例えばポリシリコンで形成されている。二酸化珪素層42により、ゲート電極44が、高濃度領域14およびベース層16と絶縁されている。ゲート電極44の一部は、トレンチ38の上方からソース電極パッド52側に突出してよい。また、ゲート電極44上には、層間絶縁膜48が形成されてよい。層間絶縁膜48は、ゲート電極44とソース電極パッド52を絶縁する。
【0024】
炭化珪素半導体装置100のおもて面側には、ソース領域22とコンタクト領域25が選択的に設けられている。ソース領域22とコンタクト領域25は、ソース電極50と接してよい。また、ソース領域22は、トレンチ38と接してよい。本例において、ソース領域22はn+型であり、コンタクト領域25はp+型である。ソース領域22およびコンタクト領域25は、ドーピングによって形成されてよい。
【0025】
本例の高濃度領域14には、第1ベース領域26と第2ベース領域28が選択的に設けられている。第1ベース領域26の下端部は、トレンチ38の底部よりもドレイン電極54側に位置する。第2ベース領域28の下端部は、トトレンチ38の底部よりもドレイン電極54側に位置する。第2ベース領域28は、トレンチ38の底部と深さ方向(Z軸方向)において対向する位置に形成される。第2ベース領域28のX軸方向における幅は、トレンチ38のX軸方向における幅より広くてよい。トレンチ38の底部は、第2ベース領域28に達してもよいし、ベース層16と第2ベース領域28に挟まれた高濃度領域14に位置し、第2ベース領域28と接触しなくてもよい。本例において、トレンチ38の底部は、第2ベース領域28に達している。本例において、第1ベース領域26および第2ベース領域28は、p+型である。第1ベース領域26および第2ベース領域28は、たとえばアルミニウム元素がドーピングされている。
【0026】
ゲート電極44に所定の正電位が供給されることにより、ベース層16に電荷反転領域(即ち、チャネル)が形成される。ソース電極50(ソース電極パッド52)およびドレイン電極54(ドレイン電極パッド56)間に所定の電位差が形成されると、チャネルを介してソース電極50からドレイン電極54へ電子電流が流れる。
【0027】
図2は、領域Aにおける炭化珪素半導体装置100の構成を示す。領域Aは、トレンチ38近傍の二酸化珪素層42、ベース層16および高濃度領域14を示している。
【0028】
二酸化珪素層42と炭化珪素層(ベース層16および高濃度領域14)の間には、遷移領域18が設けられている。遷移領域18は、酸素と炭素を含んでいる。また、遷移領域18は、後述するNOガス雰囲気中で熱処理されているため、窒素も含んでいる。本例において、遷移領域18が窒素を含んでいるため、遷移領域18(炭化珪素層と二酸化珪素層42の界面)の欠陥を低減することができる。したがって、炭化珪素半導体装置100の電界効果移動度を高め、電気特性を向上することができる。今回、遷移領域18の分析のため、炭化珪素半導体装置100の遷移領域18と同様の形成方法によりサンプルを作成した。
【0029】
図3は、サンプル200の形成方法の一例を示す図である。サンプル200は、炭化珪素基板10、炭化珪素層20、二酸化珪素層42および遷移領域18を備える。炭化珪素層20は、ベース層16および高濃度領域14のいずれかと同一である。まず、炭化珪素基板10上に炭化珪素層20を形成する炭化珪素層形成工程S101を実施する(S101)。本例の炭化珪素層20の厚さは、3μm以上、7μm以下(例えば5μm)である。炭化珪素層形成工程S101は、エピタキシャル成長によって実施されてよい。なお、炭化珪素層形成工程S101を実施する前に、炭化珪素基板10をRCA洗浄等で洗浄しておくことが好ましい。
【0030】
次に、炭化珪素層20上に二酸化珪素層42を形成する二酸化珪素層形成工程S102を実施する(S102)。本例の二酸化珪素層42の厚さは、30nm以上(例えば60nm)である。二酸化珪素層形成工程S102は、高温酸化(HTO)により実施されてよい。高温酸化は、炭化珪素基板10を載置したチャンバ内に、ジクロロシランとN2Oを導入して実施されてよい。高温酸化の処理温度は、一例として、800℃である。二酸化珪素層形成工程S102は、他の公知の方法で実施されてよい。
【0031】
二酸化珪素層42を形成後、熱処理を行う熱処理工程S103を実施する(S103)。熱処理工程S103は、N2ガス90%、NOガス10%のガス雰囲気中で実施してよい。熱処理工程の処理温度は、1300℃以上1500℃以下であってよい。熱処理工程S103の処理温度は、1350℃以上であってもよい。本例の熱処理工程S103の処理温度は、1300℃である。本例の熱処理工程S103の処理時間は、15分以上、45分以下(例えば30分)である。処理温度を高くし、また処理時間を長くすることで、遷移領域18を効率よく形成することができる。熱処理工程S103により、遷移領域18が形成される。また、熱処理工程S103により、NOガスからの窒素が遷移領域18に蓄積される。窒素が遷移領域18に蓄積されることにより、遷移領域18の欠陥が低減される。二酸化珪素層42から窒素が導入されるため、二酸化珪素層42に窒素が含まれる。
【0032】
図4は、サンプル200の遷移領域18近傍をSIMS分析した結果の濃度プロファイルの一例である。
図4の(a)は、遷移領域18の近傍の濃度プロファイルを示している。遷移領域18の近傍とは、二酸化珪素層42の一部、遷移領域18および炭化珪素層20の一部である。
図4の(a)は、炭素、窒素、酸素および珪素の不純物濃度を示している。
図4の(a)の横軸は、深さ(
図4におけるZ軸方向の深さ)である。
【0033】
図4の(b)は、サンプル200の遷移領域18近傍の層構造を示している。
図4の(b)において、
図4の(a)に示されていない領域に関しては、深さ方向における長さを一部省略している。
【0034】
図4の(a)を参照すると、酸素濃度は、二酸化珪素層42中において、略一定の不純物濃度d1ある。酸素濃度は、二酸化珪素層42から遷移領域18に到達した際に単調に減少し始め、炭化珪素層20中において一定の不純物濃度となる。また、炭素濃度は、炭化珪素層20中において、略一定の不純物濃度d2である。炭素濃度は、炭化珪素層20から遷移領域18に到達した際に単調に減少し始め、二酸化珪素層42中において一定の不純物濃度となる。
【0035】
遷移領域18は、二酸化珪素層42中の酸素濃度が二酸化珪素層42から炭化珪素層20に向かって減少し始める位置から、炭化珪素層20の炭素濃度が炭化珪素層20から二酸化珪素層42に向かって減少し始める位置までの領域であってよい。二酸化珪素層42中の酸素濃度が減少し始める位置は、酸素濃度が、二酸化珪素層42中の酸素濃度の最大値の95%になる位置であってよく、90%以下になる位置であってもよい。
図4の(a)においては、当該位置におけるXY面を第1面91としている。二酸化珪素層42中の酸素濃度の最大値とは、不純物濃度d1であってよい。
【0036】
また同様に、炭化珪素層20の炭素濃度が減少し始める位置は、炭素濃度が、炭化珪素層20中の炭素濃度の最大値の95%以下になる位置であってよく、90%以下になる位置であってもよい。
図4の(a)においては、当該位置におけるXY面を第2面92としている。炭化珪素層20中の炭素濃度の最大値とは、不純物濃度d2であってよい。また、シリコン濃度は、遷移領域18に到達した際に単調に減少し始め、二酸化珪素層42中において一定の不純物濃度となる。
【0037】
以上で説明した通り、遷移領域18は炭化珪素層20および二酸化珪素層42の間に配置される。また、遷移領域18は、炭素と酸素と窒素とを含んでいる。炭化珪素層20に二酸化珪素層42を成膜し、熱処理することにより、遷移領域18を形成することができる。
【0038】
遷移領域18の窒素濃度は、ピークを有している。これは、熱処理工程S103により、NOガスからの窒素が遷移領域18に蓄積されるためである。本例において、遷移領域18の窒素濃度の最大値は、1.0×1020cm-3以上である。遷移領域18の窒素濃度の最大値が、1.0×1020cm-3以上であることにより、遷移領域18の欠陥をより低減することができる。
【0039】
また、遷移領域18の窒素濃度の最大値は、二酸化珪素層42の窒素濃度の最大値より大きくてよい。本例では、遷移領域18の窒素濃度の最大値は、二酸化珪素層42の窒素濃度の最大値の5倍以上である。二酸化珪素層42の窒素濃度が最大値を示すのは、第2面92である。遷移領域18には、未結合手(ダングリングボンド)が二酸化珪素層42に比べ多く存在する。したがって、遷移領域18の未結合手が窒素と多く結合し、結果、遷移領域18の窒素濃度の最大値は、二酸化珪素層42の窒素濃度の最大値より大きくなる。
【0040】
二酸化珪素層42の窒素濃度の最大値は、炭化珪素層20の窒素濃度の最大値より大きくてよい。つまり、第2面92における窒素濃度は、第1面91における窒素濃度より大きくてよい。窒素は、二酸化珪素層42側から供給されるため、結果として、二酸化珪素層42の窒素濃度の最大値は、炭化珪素層20の窒素濃度の最大値より大きくなる。
【0041】
また、遷移領域18の厚さは、3nm以上であってよい。遷移領域18の厚さは、3nm以上にすることにより、窒素を十分蓄積することができる。遷移領域18の厚さは、5nm以下であってよい。遷移領域18の厚さは、5nm以下にすることにより、電気特性が悪化することを防ぐことができる。本例において、遷移領域18の厚さは、4nmである。なお、遷移領域18の窒素濃度の最大値の半値全幅は、1.0nm以下であってよい。遷移領域18の窒素濃度の最大値の半値全幅を狭くすることにより、遷移領域18の厚さを5nm以下にすることができる。
【0042】
図5は、炭化珪素層20をLEED分析した結果の一例を示す図である。
図5では、炭化珪素層形成工程S101実施後のサンプル200の炭化珪素層20の表面をLEED分析している。炭化珪素層形成工程S101実施後のサンプル200の炭化珪素層20を炭化珪素層20-1とする。LEED分析とは、低速電子線回折である。また、
図5では、画像をある一定の閾値で白黒2値化している。
図5では、ある一定領域の炭化珪素層20-1を示している。
【0043】
図5において、スポット(
図5中の黒い点)が一定の間隔で配置されている。したがって、LEED分析により、炭化珪素層20-1は、結晶構造であると判定することができる。スポットが一定の間隔で配置されているかどうかは、例えば、
図5のスポットが配列されている配列方向に並んでいる各スポットが識別できるかどうかで判定してよい。配列方向とは、少なくとも3つ以上のスポットが配列されている方向である。
図5の例では、配列方向は、D1でもD2でもよい。
図5の例では、スポット82が識別できるかどうかは、配列方向D1に並んでいる各スポットが黒い点として鮮明であればよい。黒い点が識別できれば、炭化珪素層20-1は、結晶構造であると判定してよい。
【0044】
図6は、NOガスで熱処理した炭化珪素層20をLEED分析した結果の一例を示す図である。
図6では、熱処理工程S103実施後のサンプル200を、HF(フッ酸)で二酸化珪素層42のみ除去した後、炭化珪素層20の二酸化珪素層42を除去した表面をLEED分析している。熱処理工程S103実施後のサンプル200の炭化珪素層20を炭化珪素層20-3とする。また、
図6においても、画像をある一定の閾値で白黒2値化している。
【0045】
図6において、
図5に比べ、スポットが一定の間隔で配置されておらず黒い点の配列が識別できない。
図6において、配列方向を規定することができない。そのため、
図6において、各スポットは一定の間隔で配置されていないと判定できる。したがって、
図6において、LEED分析により、炭化珪素層20は、結晶に乱れが生じていると判定することができる。つまり、NOガスで熱処理した炭化珪素層20-3には歪が生じている。
【0046】
図7は、二酸化珪素層42形成後の炭化珪素層20をLEED分析した結果の一例を示す図である。
図7では、二酸化珪素層形成工程S102実施後のサンプル200を、HF(フッ酸)で二酸化珪素層42のみ除去した後、炭化珪素層20の二酸化珪素層42を除去した表面をLEED分析している。酸化珪素層形成工程S102実施後のサンプル200の炭化珪素層20を炭化珪素層20-2とする。また、
図7においても、画像をある一定の閾値で白黒2値化している。
【0047】
図7において、スポットが観察されない。したがって、二酸化珪素層42形成後において、炭化珪素層20-2の表面は非晶質(アモルファス)化していると判定することができる。
【0048】
図8は、酸素について炭化珪素層20をXPS分析した結果の一例を示す図である。
図8において、炭化珪素層20-1(
図5)および炭化珪素層20-2(
図7)の結果を示している。XPSとは、X線光電分光方法である。
【0049】
図8において、炭化珪素層20-2は、炭化珪素層20-1に比べピークが増加している。したがって、二酸化珪素層形成工程S102を実施することにより、炭化珪素層20-2の表面に酸素を残存させることができる。
【0050】
図9は、窒素について炭化珪素層20をXPS分析した結果の一例を示す図である。
図9において、炭化珪素層20-3(
図6)の結果を示している。
【0051】
図9において、炭化珪素層20-3は、窒素のピークが存在している。したがって、熱処理工程S103を実施することにより、炭化珪素層20-3の表面に窒素を存在させることができる。
【0052】
図10は、珪素について炭化珪素層20をXPS分析した結果の一例を示す図である。
図10において、炭化珪素層20-1(
図5)および炭化珪素層20-3(
図6)の結果を示している。
【0053】
図10において、炭化珪素層20-1および炭化珪素層20-3は、炭化珪素のピークが存在している。また、炭化珪素層20-3は、炭化珪素層20-1と比べ、不完全な二酸化珪素(SiOx)のピークが高くなっている。以上より、炭化珪素層20-3は、炭化珪素層20-1と比べ、不完全な二酸化珪素が存在していると判定できる。
【0054】
図11は、透過電子顕微鏡像で撮像した遷移領域18近傍を示す図である。
図11において、遷移領域18の近傍とは、二酸化珪素層42の一部、遷移領域18および炭化珪素層20の一部である。
図11では、画像をある一定の閾値で白黒2値化している。
【0055】
図11において、遷移領域18は、結晶が乱れている領域であってよい。結晶が乱れているとは、コントラストにより規定されてよい。つまり、コントラストが不鮮明な領域を遷移領域18としてよい。
図11において、遷移領域18は、白黒の明暗がはっきりしない領域である。
【0056】
図12は、遷移領域18をEELS分析した結果を示す図である。EELSとは、電子エネルギー損失分光である。
図12の横軸は、損失エネルギー、縦軸は深さを示す。
図12の例では、-1.0nmからー1.6nmの深さ位置の波形では、ΠーC結合のピークが存在している。したがって、遷移領域18において、過剰の炭素が混入していると判定できる。
【0057】
図13は、遷移領域18の層構成を詳細に示す図である。遷移領域18は、二酸化珪素変質層66、混合層64および炭化珪素変質層62を有している。二酸化珪素変質層66は、二酸化珪素層42の下方に設けられる。混合層64は、二酸化珪素変質層66の下方に設けられる。炭化珪素変質層62は、混合層64の下方に設けられる。
【0058】
二酸化珪素変質層66、混合層64および炭化珪素変質層62は、SIMS分析から判別できる。炭素濃度の最大値は、炭化珪素変質層62、混合層64、二酸化珪素変質層66の順に大きい。また、酸素濃度の最大値は、二酸化珪素変質層66、混合層64、炭化珪素変質層62の順に大きい。また、窒素濃度の最大値は、混合層64、二酸化珪素変質層66、炭化珪素変質層62の順に大きい。このように、SIMS分析、XPS分析等から二酸化珪素変質層66、混合層64および炭化珪素変質層62を判別できる。
【0059】
炭化珪素変質層62は、窒化不完全炭化珪素層72、不完全炭化珪素層70および非晶質炭化珪素層68を有してよい。窒化不完全炭化珪素層72は、混合層64の下方に設けられてよい。不完全炭化珪素層70は、窒化不完全炭化珪素層72の下方に設けられてよい。不完全炭化珪素層70は、窒素を含まなくてよい。非晶質炭化珪素層68は、不完全炭化珪素層70の下方に設けられてよい。非晶質炭化珪素層68は、酸素を含まなくてよい。SIMS分析、XPS分析、EELS分析等から窒化不完全炭化珪素層72、不完全炭化珪素層70および非晶質炭化珪素層68を判別できる。また、非晶質であるかは、LEED分析や透過電子顕微鏡により判定されてよい。
【0060】
二酸化珪素変質層66は、炭化不完全二酸化珪素層74および不完全二酸化珪素層76を有してよい。炭化不完全二酸化珪素層74は、混合層64の上方に設けられてよい。不完全二酸化珪素層76は、炭化不完全二酸化珪素層74の上方に設けられてよい。不完全二酸化珪素層76は、炭素を含まなくてよい。SIMS分析、XPS分析等から炭化不完全二酸化珪素層74および不完全二酸化珪素層76を判別できる。
【0061】
炭化珪素層20は、歪炭化珪素層80および結晶炭化珪素層78を有してよい。歪炭化珪素層80は、遷移領域18の下方に設けられてよい。歪炭化珪素層80は、LEED分析により規定されてよい。つまり、
図6に示した通り、LEED分析においてスポットが一定の間隔で配置されているかどうかで歪炭化珪素層80を判別してよい。結晶炭化珪素層78は、歪炭化珪素層80の下方に設けられてよい。
【0062】
図14は、サンプル200の形成方法の他の例を示す図である。まず、炭化珪素基板10上に炭化珪素層20を形成する炭化珪素層形成工程S201を実施する(S201)。炭化珪素層形成工程S201は、
図3の炭化珪素層形成工程S101と同一であってよい。
【0063】
次に、第1熱処理工程S202を実施する(S202)。第1熱処理工程S202の処理温度は、1200℃以上1300℃未満であってよい。第1熱処理工程S202は、N2ガス90%、NOガス10%のガス雰囲気中で実施してよい。本例の第1熱処理工程S202の処理時間は、5分以上、10分以下である。第1熱処理工程S202を実施することにより、炭化珪素層20の上方に窒化層21が形成される。また、窒化層21の上方に、二酸化珪素層42-1が形成される。二酸化珪素層42-1の厚さは、例えば、1nm以下である。二酸化珪素層42-1が設けられるため、二酸化珪素形成工程S203および第2熱処理工程S204における酸化を少なくすることができる。
【0064】
窒化層21および二酸化珪素層42-1の形成後、二酸化珪素形成工程S203を実施する。二酸化珪素層形成工程S203は、高温酸化(HTO)により実施されてよい。高温酸化は、ジクロロシランとN2Oを導入して実施されてよい。高温酸化の処理温度は、一例として、800℃である。なお、高温酸化は、ジクロロシランの代わりにモノシランを導入することにより実施されてよい。二酸化珪素形成工程S203を実施することにより、二酸化珪素層42-2が形成される。二酸化珪素層42-2の厚さは、例えば、2nmである。また、酸化珪素形成工程S203を実施することにより、窒化層21の窒素が抜けてしまう。
【0065】
二酸化珪素形成工程S203を実施後、第2熱処理工程S204を実施する(S204)。第2熱処理工程S204の処理温度は、第1熱処理工程S202の処理温度より50℃以上高くてよい。一例として、第2熱処理工程S204の処理温度は、第1熱処理工程S202の処理温度より100℃高くてよい。第2熱処理工程S204の処理温度は、1300℃以上1330℃以下であってよい。第2熱処理工程S204は、N2ガス90%、NOガス10%のガス雰囲気中で実施してよい。本例の第2熱処理工程S204の処理時間は、5分以上、15分以下である。第1熱処理工程S202および第2熱処理工程S204の処理時間の合計は、30分以下であることが好ましい。第2熱処理工程S204の処理温度を第1熱処理工程S202の処理温度より高くすることにより、窒化層21に十分に窒素を導入することができ、炭化珪素層20界面の欠陥を低減することができる。第2熱処理工程S204を実施することにより、炭化珪素層20界面近傍には遷移領域18が形成される。遷移領域18は、窒化層21を含んでよい。
【0066】
なお、第1熱処理工程S202のガス雰囲気と第2熱処理工程S204のガス雰囲気は、異なってよい。例えば、第1熱処理工程S202は、N2ガス92%、NOガス8%のガス雰囲気中で実施し、第2熱処理工程S204は、N2ガス88%、NOガス12%のガス雰囲気中で実施する。
【0067】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0068】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0069】
10・・炭化珪素基板、12・・炭化珪素層、14・・高濃度領域、16・・ベース層、18・・遷移領域、20・・炭化珪素層、21・・窒化層、22・・ソース領域、25・・コンタクト領域、26・・第1ベース領域、28・・第2ベース領域、38・・トレンチ、42・・二酸化珪素層、44・・ゲート電極、48・・層間絶縁膜、50・・ソース電極、52・・ソース電極パッド、54・・ドレイン電極、56・・ドレイン電極パッド、62・・炭化珪素変質層、64・・混合層、66・・二酸化珪素変質層、68・・非晶質炭化珪素層、70・・不完全炭化珪素層、72・・窒化不完全炭化珪素層、74・・炭化不完全二酸化珪素層、76・・不完全二酸化珪素層、78・・結晶炭化珪素層、80・・歪炭化珪素層、82・・スポット、91・・第1面、92・・第2面、100・・炭化珪素半導体装置、200・・サンプル