(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置、吐き捨て量の決定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20241126BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/165 503
(21)【出願番号】P 2020168142
(22)【出願日】2020-10-05
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 眞也
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-194934(JP,A)
【文献】特開平9-193397(JP,A)
【文献】特開2016-150486(JP,A)
【文献】特開2015-66890(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016159(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部と、
前記複数のノズルからのインクの吐き捨てに係る制御を行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記複数のノズルの各々から記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定のベタパターンを形成させ、
前記複数のノズルから前記記録媒体に対してインクを吐出させて、当該記録媒体上に、前記ベタパターンに続いて所定の検出パターンを形成させ、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定める、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インク吐出部と記録媒体とを所定の移動方向に相対移動させる移動部を備え、
前記複数のノズルは、前記移動方向と直交する幅方向について互いに異なる位置に設けられており、
前記制御手段は、
前記移動部により前記インク吐出部に対して相対移動している記録媒体上に前記検出パターンを形成させ、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の、前記基準位置からの前記移動方向についての前記位置ずれ量に基づいて前記吐き捨て量を定める、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記検出パターンは、前記移動方向に交差するラインからなる、請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記基準位置は、前記移動方向に直交する基準直線上にあり、
前記制御手段は、前記複数のノズルの各々が、前記基準直線に平行な前記記録媒体上の所定の直線に対向するタイミングで各ノズルからインクを吐出させて前記検出パターンを形成させる、請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記ベタパターン及び前記検出パターンを交互に繰り返し形成させ、形成された複数の前記検出パターンの前記位置ずれ量に基づいて前記吐き捨て量を定める、請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記複数のノズルの各々について、前記複数の検出パターンのうち当該ノズルに対応する部分の前記位置ずれ量が初めて所定の下限値未満となった検出パターンを特定し、当該検出パターンより前に形成された前記ベタパターンの形成時の合計インク吐出量を、当該ノズルの前記吐き捨て量として定める、請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記複数のノズルから同一タイミングでインクを吐出させて、前記複数のノズルの位置関係を反映したドット群を含む前記検出パターンを形成させる、請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記記録媒体を読み取る読取部を備え、
前記制御手段は、前記読取部による前記記録媒体の前記読取結果に基づいて、前記検出パターンの各部の前記基準位置からの位置ずれ量を特定する、請求項1~7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成して予め所定の記憶部に記憶させ、
前記吐き捨てを実行する場合に、前記吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させる、請求項1~8のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部と、
前記複数のノズルからのインクの吐き捨てに係る制御を行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記複数のノズルから記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定の検出パターンを形成させ、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定め、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成して予め所定の記憶部に記憶させ、
前記吐き捨てを実行する場合に、前記吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させる、インクジェット記録装置。
【請求項11】
前記インク吐出部の前記複数のノズルからインクが吐出されない期間の長さを中断時間とした場合に、
前記制御手段は、
異なる複数の中断時間が経過したときにそれぞれ前記検出パターンを形成させ、
前記複数の中断時間の各々について、前記検出パターンに基づいて前記吐き捨て量を定めて前記吐き捨て画像データを生成し、生成した複数の前記吐き捨て画像データを前記記憶部に記憶させ、
前記吐き捨てを実行する場合には、その時点における中断時間に応じて、前記複数の前記吐き捨て画像データのうち1つを選択し、選択した吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させる、請求項9又は10に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記制御手段は、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量に係る吐き捨て量情報を所定の記憶部に記憶させ、
前記吐き捨てを実行する場合には、前記記憶部に記憶された前記吐き捨て量情報に基づいて、所望の吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成し、当該吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させる、請求項1~8のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部と、
前記複数のノズルからのインクの吐き捨てに係る制御を行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記複数のノズルから記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定の検出パターンを形成させ、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定め、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量に係る吐き捨て量情報を所定の記憶部に記憶させ、
前記吐き捨てを実行する場合には、前記記憶部に記憶された前記吐き捨て量情報に基づいて、所望の吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成し、当該吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させる、インクジェット記録装置。
【請求項14】
前記インク吐出部の前記複数のノズルからインクが吐出されない期間の長さを中断時間とした場合に、
前記制御手段は、前記吐き捨てを実行する場合には、その時点における中断時間と、前記吐き捨て量情報に係る前記検出パターンが形成されたときの中断時間と、に基づいて前記吐き捨て量情報の前記吐き捨て量を補正し、当該補正後の吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための前記吐き捨て画像データを生成する、請求項12又は13に記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
前記インク吐出部の前記複数のノズルからインクが吐出されない期間の長さを中断時間とした場合に、
前記制御手段は、
異なる複数の中断時間が経過したときにそれぞれ前記検出パターンを形成させ、
前記複数の中断時間の各々について、前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量に係る前記吐き捨て量情報を前記記憶部に記憶させ、
前記吐き捨てを実行する場合には、
前記複数の中断時間のうち、当該吐き捨ての実行時における中断時間を挟む2つの中断時間に対応する2つの前記吐き捨て量情報を特定し、
前記2つの吐き捨て量情報に係る2つの吐き捨て量に基づく補間処理により、前記実行時における中断時間に対応する吐き捨て量を算出し、
算出した前記吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための前記吐き捨て画像データを生成する、請求項12又は13に記載のインクジェット記録装置。
【請求項16】
前記制御手段は、
前記吐き捨てを実行する場合に前記検出パターンを形成させ、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成し、
前記吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させる、請求項1~8のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項17】
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部を備え、前記複数のノズルからのインクの吐き捨てを行うインクジェット記録装置における吐き捨て量の決定方法であって、
前記複数のノズルの各々から記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定のベタパターンを形成させるステップと、
前記複数のノズルから前記記録媒体に対してインクを吐出させて、当該記録媒体上に、前記ベタパターンに続いて所定の検出パターンを形成させるステップと、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定めるステップと、
を含む、吐き捨て量の決定方法。
【請求項18】
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部を備え、前記複数のノズルからのインクの吐き捨てを行うインクジェット記録装置における吐き捨て量の決定方法であって、
前記複数のノズルから記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定の検出パターンを形成させるステップと、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定めるステップと、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成して予め所定の記憶部に記憶させるステップと、
前記吐き捨てを実行する場合に、前記吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させるステップと、
を含む、吐き捨て量の決定方法。
【請求項19】
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部を備え、前記複数のノズルからのインクの吐き捨てを行うインクジェット記録装置における吐き捨て量の決定方法であって、
前記複数のノズルから記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定の検出パターンを形成させるステップと、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定めるステップと、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量に係る吐き捨て量情報を所定の記憶部に記憶させるステップと、
前記吐き捨てを実行する場合には、前記記憶部に記憶された前記吐き捨て量情報に基づいて、所望の吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成し、当該吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させるステップと、
を含む、吐き捨て量の決定方法。
【請求項20】
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部を備えたインクジェット記録装置に設けられたコンピューターを、前記複数のノズルからのインクの吐き捨てに係る制御を行う制御手段として機能させるプログラムであって、
前記制御手段は、
前記複数のノズルの各々から記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定のベタパターンを形成させ、
前記複数のノズルから前記記録媒体に対してインクを吐出させて、当該記録媒体上に、前記ベタパターンに続いて所定の検出パターンを形成させ、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定める、プログラム。
【請求項21】
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部を備えたインクジェット記録装置に設けられたコンピューターを、前記複数のノズルからのインクの吐き捨てに係る制御を行う制御手段として機能させるプログラムであって、
前記制御手段は、
前記複数のノズルから記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定の検出パターンを形成させ、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定め、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成して予め所定の記憶部に記憶させ、
前記吐き捨てを実行する場合に、前記吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させる、プログラム。
【請求項22】
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部を備えたインクジェット記録装置に設けられたコンピューターを、前記複数のノズルからのインクの吐き捨てに係る制御を行う制御手段として機能させるプログラムであって、
前記制御手段は、
前記複数のノズルから記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定の検出パターンを形成させ、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定め、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量に係る吐き捨て量情報を所定の記憶部に記憶させ、
前記吐き捨てを実行する場合には、前記記憶部に記憶された前記吐き捨て量情報に基づいて、所望の吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成し、当該吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置、吐き捨て量の決定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクを吐出する複数のノズルが設けられたインク吐出部から記録媒体に対してインクを吐出して当該記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置がある。インクジェット記録装置では、ノズルからインクが吐出されない状態が続くと、インクに含まれる顔料等の固形物が沈降してインクの特性(例えば粘性や比重)が変化し、所望の速度でインクを吐出できなくなって画質が低下する。
【0003】
これに対し、従来、ノズルからインクを吐き捨てる吐き捨て動作を行うことによりインクの特性変化を抑制して画質低下を抑える技術がある。この吐き捨て動作では、インクの特性変化を抑制可能な範囲内で吐き捨て量を小さくすることで、インクの消費量を抑えることができる。例えば特許文献1には、インク中の固形物の沈降が進むと、吐出されたインクの飛翔速度が低下することに着目し、インクの飛翔速度の測定結果に応じてノズルからのインクの吐き捨て量を調整する技術が開示されている。インクの飛翔速度の測定方法としては、インクの飛翔経路に検出光を照射し、インクが吐出されてから、検出光がインクにより遮られるまでの時間を計測する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多数のノズルの各々についてインクの飛翔速度を測定するためには大掛かりな機構が必要であり、装置の大型化や製造コストの上昇を招く。また、全てのノズルについてインクの飛翔速度を測定するためには長時間を要するため、ダウンタイムが長くなって生産性が低下する。
このように、上記従来の技術では、適切なインクの吐き捨て量を簡易に決定することができないという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、適切なインクの吐き捨て量を簡易に決定することができるインクジェット記録装置、吐き捨て量の決定方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のインクジェット記録装置の発明は、
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部と、
前記複数のノズルからのインクの吐き捨てに係る制御を行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記複数のノズルの各々から記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定のベタパターンを形成させ、
前記複数のノズルから前記記録媒体に対してインクを吐出させて、当該記録媒体上に、前記ベタパターンに続いて所定の検出パターンを形成させ、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定める。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記インク吐出部と記録媒体とを所定の移動方向に相対移動させる移動部を備え、
前記複数のノズルは、前記移動方向と直交する幅方向について互いに異なる位置に設けられており、
前記制御手段は、
前記移動部により前記インク吐出部に対して相対移動している記録媒体上に前記検出パターンを形成させ、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の、前記基準位置からの前記移動方向についての前記位置ずれ量に基づいて前記吐き捨て量を定める。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記検出パターンは、前記移動方向に交差するラインからなる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のインクジェット記録装置において、
前記基準位置は、前記移動方向に直交する基準直線上にあり、
前記制御手段は、前記複数のノズルの各々が、前記基準直線に平行な前記記録媒体上の所定の直線に対向するタイミングで各ノズルからインクを吐出させて前記検出パターンを形成させる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御手段は、前記ベタパターン及び前記検出パターンを交互に繰り返し形成させ、形成された複数の前記検出パターンの前記位置ずれ量に基づいて前記吐き捨て量を定める。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御手段は、前記複数のノズルの各々について、前記複数の検出パターンのうち当該ノズルに対応する部分の前記位置ずれ量が初めて所定の下限値未満となった検出パターンを特定し、当該検出パターンより前に形成された前記ベタパターンの形成時の合計インク吐出量を、当該ノズルの前記吐き捨て量として定める。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御手段は、前記複数のノズルから同一タイミングでインクを吐出させて、前記複数のノズルの位置関係を反映したドット群を含む前記検出パターンを形成させる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1~7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記記録媒体を読み取る読取部を備え、
前記制御手段は、前記読取部による前記記録媒体の前記読取結果に基づいて、前記検出パターンの各部の前記基準位置からの位置ずれ量を特定する。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1~8のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御手段は、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成して予め所定の記憶部に記憶させ、
前記吐き捨てを実行する場合に、前記吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させる。
また、上記目的を達成するため、請求項10に記載のインクジェット記録装置の発明は、
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部と、
前記複数のノズルからのインクの吐き捨てに係る制御を行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記複数のノズルから記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定の検出パターンを形成させ、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定め、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成して予め所定の記憶部に記憶させ、
前記吐き捨てを実行する場合に、前記吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させる。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10に記載のインクジェット記録装置において、
前記インク吐出部の前記複数のノズルからインクが吐出されない期間の長さを中断時間とした場合に、
前記制御手段は、
異なる複数の中断時間が経過したときにそれぞれ前記検出パターンを形成させ、
前記複数の中断時間の各々について、前記検出パターンに基づいて前記吐き捨て量を定めて前記吐き捨て画像データを生成し、生成した複数の前記吐き捨て画像データを前記記憶部に記憶させ、
前記吐き捨てを実行する場合には、その時点における中断時間に応じて、前記複数の前記吐き捨て画像データのうち1つを選択し、選択した吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させる。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項1~8のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御手段は、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量に係る吐き捨て量情報を所定の記憶部に記憶させ、
前記吐き捨てを実行する場合には、前記記憶部に記憶された前記吐き捨て量情報に基づいて、所望の吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成し、当該吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させる。
また、上記目的を達成するため、請求項13に記載のインクジェット記録装置の発明は、
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部と、
前記複数のノズルからのインクの吐き捨てに係る制御を行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記複数のノズルから記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定の検出パターンを形成させ、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定め、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量に係る吐き捨て量情報を所定の記憶部に記憶させ、
前記吐き捨てを実行する場合には、前記記憶部に記憶された前記吐き捨て量情報に基づいて、所望の吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成し、当該吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させる。
【0019】
請求項14に記載の発明は、請求項12又は13に記載のインクジェット記録装置において、
前記インク吐出部の前記複数のノズルからインクが吐出されない期間の長さを中断時間とした場合に、
前記制御手段は、前記吐き捨てを実行する場合には、その時点における中断時間と、前記吐き捨て量情報に係る前記検出パターンが形成されたときの中断時間と、に基づいて前記吐き捨て量情報の前記吐き捨て量を補正し、当該補正後の吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための前記吐き捨て画像データを生成する。
【0020】
請求項15に記載の発明は、請求項12又は13に記載のインクジェット記録装置において、
前記インク吐出部の前記複数のノズルからインクが吐出されない期間の長さを中断時間とした場合に、
前記制御手段は、
異なる複数の中断時間が経過したときにそれぞれ前記検出パターンを形成させ、
前記複数の中断時間の各々について、前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量に係る前記吐き捨て量情報を前記記憶部に記憶させ、
前記吐き捨てを実行する場合には、
前記複数の中断時間のうち、当該吐き捨ての実行時における中断時間を挟む2つの中断時間に対応する2つの前記吐き捨て量情報を特定し、
前記2つの吐き捨て量情報に係る2つの吐き捨て量に基づく補間処理により、前記実行時における中断時間に対応する吐き捨て量を算出し、
算出した前記吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための前記吐き捨て画像データを生成する。
【0021】
請求項16に記載の発明は、請求項1~8のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御手段は、
前記吐き捨てを実行する場合に前記検出パターンを形成させ、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成し、
前記吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させる。
【0023】
また、上記目的を達成するため、請求項18に記載の吐き捨て量の決定方法の発明は、
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部を備え、前記複数のノズルからのインクの吐き捨てを行うインクジェット記録装置における吐き捨て量の決定方法であって、
前記複数のノズルの各々から記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定のベタパターンを形成させるステップと、
前記複数のノズルから前記記録媒体に対してインクを吐出させて、当該記録媒体上に、前記ベタパターンに続いて所定の検出パターンを形成させるステップと、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定めるステップと、
を含む。
また、上記目的を達成するため、請求項19に記載の吐き捨て量の決定方法の発明は、
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部を備え、前記複数のノズルからのインクの吐き捨てを行うインクジェット記録装置における吐き捨て量の決定方法であって、
前記複数のノズルから記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定の検出パターンを形成させるステップと、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定めるステップと、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成して予め所定の記憶部に記憶させるステップと、
前記吐き捨てを実行する場合に、前記吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させるステップと、
を含む。
また、上記目的を達成するため、請求項20に記載の吐き捨て量の決定方法の発明は、
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部を備え、前記複数のノズルからのインクの吐き捨てを行うインクジェット記録装置における吐き捨て量の決定方法であって、
前記複数のノズルから記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定の検出パターンを形成させるステップと、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定めるステップと、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量に係る吐き捨て量情報を所定の記憶部に記憶させるステップと、
前記吐き捨てを実行する場合には、前記記憶部に記憶された前記吐き捨て量情報に基づいて、所望の吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成し、当該吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させるステップと、
を含む。
【0025】
また、上記目的を達成するため、請求項22に記載のプログラムの発明は、
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部を備えたインクジェット記録装置に設けられたコンピューターを、前記複数のノズルからのインクの吐き捨てに係る制御を行う制御手段として機能させるプログラムであって、
前記制御手段は、
前記複数のノズルの各々から記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定のベタパターンを形成させ、
前記複数のノズルから前記記録媒体に対してインクを吐出させて、当該記録媒体上に、前記ベタパターンに続いて所定の検出パターンを形成させ、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定める。
また、上記目的を達成するため、請求項23に記載のプログラムの発明は、
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部を備えたインクジェット記録装置に設けられたコンピューターを、前記複数のノズルからのインクの吐き捨てに係る制御を行う制御手段として機能させるプログラムであって、
前記制御手段は、
前記複数のノズルから記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定の検出パターンを形成させ、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定め、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成して予め所定の記憶部に記憶させ、
前記吐き捨てを実行する場合に、前記吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させる。
また、上記目的を達成するため、請求項24に記載のプログラムの発明は、
インクを吐出する複数のノズルを有するインク吐出部を備えたインクジェット記録装置に設けられたコンピューターを、前記複数のノズルからのインクの吐き捨てに係る制御を行う制御手段として機能させるプログラムであって、
前記制御手段は、
前記複数のノズルから記録媒体に対してインクを吐出させて当該記録媒体上に所定の検出パターンを形成させ、
前記記録媒体の読取結果における前記検出パターンの各部の所定の基準位置からの位置ずれ量に基づいて、前記複数のノズルの各々からのインクの吐き捨て量を定め、
前記検出パターンに基づいて定めた前記吐き捨て量に係る吐き捨て量情報を所定の記憶部に記憶させ、
前記吐き捨てを実行する場合には、前記記憶部に記憶された前記吐き捨て量情報に基づいて、所望の吐き捨て量のインクを前記複数のノズルの各々から吐出させるための吐き捨て画像データを生成し、当該吐き捨て画像データに従って前記複数のノズルの各々からインクを吐出させる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、適切なインクの吐き捨て量を簡易に決定することができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す図である。
【
図3】インクジェット記録装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
【
図4】顔料の沈降に起因するインクの着弾位置ずれを説明する図である。
【
図5】インクの着弾位置ずれによる画質の低下を説明する図である。
【
図6】吐き捨て量の決定に用いるテストチャートを示す図である。
【
図8】吐き捨て量決定処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図9】印刷処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図10】変形例1に係る吐き捨て量決定処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図11】変形例1に係る吐き捨て処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図12】複数の吐き捨てプロファイルデータを用いて吐き捨て量を算定する場合の吐き捨て処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図13】変形例2に係るテストチャートを示す図である。
【
図14】吐き捨て量テーブルの内容例を示す図である。
【
図15】吐き捨て実行時にテストチャートを形成する場合の吐き捨て処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図16】変形例3に係るテストチャートを示す図である。
【
図17】変形例4に係るテストチャートを示す図である。
【
図18】変形例4に係る吐き捨て量決定処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のインクジェット記録装置、吐き捨て量の決定方法及びプログラムに係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1は、本発明の実施形態であるインクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。
インクジェット記録装置1は、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30と、制御部50(制御手段、コンピューター)(
図3参照)などを備える。インクジェット記録装置1は、制御部50による制御下で、給紙部10に格納された記録媒体Mを画像形成部20に搬送し、画像形成部20で記録媒体Mに画像を記録し、画像が記録された記録媒体Mを排紙部30に搬送する。記録媒体Mとしては、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛又はシート状の樹脂等、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0031】
給紙部10は、記録媒体Mを格納する給紙トレー11と、給紙トレー11から画像形成部20に記録媒体Mを搬送して供給する媒体供給部12とを有する。媒体供給部12は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを備え、このベルト上に記録媒体Mを載置した状態でローラーを回転させることで記録媒体Mを給紙トレー11から画像形成部20へ搬送する。
【0032】
画像形成部20は、搬送部21(移動部)と、受け渡しユニット22と、加熱部23と、ヘッドユニット24と、定着部25と、読取部26と、デリバリー部27などを有する。
【0033】
搬送部21は、円筒状の搬送ドラム211の外周曲面211a(搬送面)の上に載置された記録媒体Mを保持し、搬送ドラム211が、
図1における図面に垂直な幅方向に延びる回転軸の回りで回転して周回移動することで、搬送ドラム211上の記録媒体Mを所定の搬送経路で搬送方向に搬送する。すなわち、搬送部21は、ヘッドユニット24と記録媒体Mとを所定の移動方向(上記の搬送方向)に相対移動させる。搬送ドラム211による記録媒体の搬送経路は、搬送ドラム211の外周曲面211aに沿う曲面状の経路である。搬送ドラム211は、その外周曲面211a上で記録媒体Mを保持するための図示しない爪部及び吸気部を備える。記録媒体Mは、爪部により端部が押さえられ、かつ吸気部により外周曲面211aに吸い寄せられることで外周曲面211aに保持される。搬送部21は、搬送ドラム211を回転させるための図示しない搬送ドラムモーターを有し、搬送ドラム211は、搬送ドラムモーターの回転量に比例した角度だけ回転する。
【0034】
受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12により搬送された記録媒体Mを搬送部21に引き渡す。受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12と搬送部21との間の位置に設けられ、媒体供給部12から搬送された記録媒体Mの一端をスイングアーム部221で保持して取り上げ、受け渡しドラム222を介して搬送部21に引き渡す。
【0035】
加熱部23は、受け渡しドラム222の配置位置とヘッドユニット24の配置位置との間に設けられ、搬送部21により搬送される記録媒体Mが所定の温度範囲内の温度となるように当該記録媒体Mを加熱する。加熱部23は、例えば、赤外線ヒーター等を有し、制御部50から供給される制御信号に基づいて赤外線ヒーターに通電して当該赤外線ヒーターを発熱させる。
【0036】
ヘッドユニット24は、インクを吐出するノズルの開口部が設けられたノズル面がその外部に露出しており、記録媒体Mが保持された搬送ドラム211の回転に応じた適切なタイミングで、搬送ドラム211の外周曲面211aに対向するノズル面のノズルの開口部から記録媒体Mに対してインクを吐出することにより画像を記録する。ヘッドユニット24は、ノズル面と外周曲面211aとが所定の距離だけ離隔されるように配置されている。本実施形態のインクジェット記録装置1では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット24が記録媒体Mの搬送方向上流側からY、M、C、Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。ヘッドユニット24の数は、記録する色の数等に応じて適宜変更可能である。
【0037】
図2は、ヘッドユニット24の構成を示す模式図である。
図2は、ヘッドユニット24を搬送ドラム211の外周曲面211aに相対する側から見た平面図である。
ヘッドユニット24は、板状の支持部24aと、支持部24aに設けられた貫通孔に篏合した状態で支持部24aに固定された複数の(ここでは4つの)インクジェットヘッド241(インク吐出部)とを有する。ただし、インクジェットヘッド241の数はこれに限られず、画像の記録幅に応じて5つ以上、又は3つ以下とされていてもよい。インクジェットヘッド241は、ノズルNの開口部が設けられたインク吐出面が支持部24aの貫通孔から搬送ドラム211側に向けて露出した状態で支持部24aに固定されている。
【0038】
インクジェットヘッド241では、複数のノズルNが幅方向に等間隔にそれぞれ配列されている。本実施形態では、各インクジェットヘッド241は、幅方向に等間隔に一次元配列されたノズルNの列(ノズル列)を4つ有している。これらの4つのノズル列は、ノズルNの幅方向についての位置が重ならないように、幅方向の位置がずらされている。したがって、インクジェットヘッド241の複数のノズルNは、幅方向について互いに異なる位置に設けられている。なお、インクジェットヘッド241が有するノズル列の数は4つに限られず、3つ以下又は5つ以上であってもよい。
【0039】
各ノズルNからインクを吐出させるためのインク吐出機構は、特には限られないが、圧電体を用いたピエゾ式のものを用いることができる。ピエゾ式のインク吐出機構としては、シアモード及びベントモードが知られている。シアモードのインク吐出機構は、ノズルNに連通する圧力室の壁面の圧電体にシアモード型の変位を生じさせて圧力室内のインクの圧力を変動させてインクを吐出させる。また、ベントモードのインク吐出機構は、圧力室の壁面を構成する振動板に固着された圧電体を変形させることで圧力室内のインクの圧力を変動させてインクを吐出させる。
【0040】
ヘッドユニット24における4つのインクジェットヘッド241は、ノズルNの幅方向についての配置範囲が連続するように千鳥格子状に配置されている。ヘッドユニット24に含まれるノズルNの幅方向についての配置範囲は、記録媒体Mのうち画像が記録可能な領域の幅方向の幅(記録可能幅)をカバーしている。ヘッドユニット24は、画像の形成時には位置が固定されて用いられ、記録媒体Mの搬送に応じて搬送方向についての所定間隔の各位置に対してノズルNからインクを吐出することで、シングルパス方式で画像を形成する。
なお、2つのインクジェットヘッド241を、ノズルNの幅方向の位置が重ならないように若干ずらして組み合わせてヘッドモジュールを構成し、このヘッドモジュールを千鳥格子状に配置してもよい。これにより、幅方向の記録解像度を高めることができる。この場合には、ヘッドモジュールが「インク吐出部」に相当する。
また、各ヘッドユニット24は、図示略の移動機構によって、幅方向に移動可能に設けられている。
【0041】
ノズルNから吐出されるインクとしては、温度によってゲル状又はゾル状に相変化し、紫外線等のエネルギー線を照射することにより硬化する性質を有するものを用いることができる。
また、本実施形態では、常温でゲル状であり加熱されることによりゾル状となるインクが用いられる。ヘッドユニット24は、インクを加熱する図示略のインク加熱部を備え、このインク加熱部によってインクをゾル状となる温度に加熱する。インクジェットヘッド241は、加熱されてゾル状となったインクを吐出する。このゾル状のインクが記録媒体Mに吐出されると、インク滴が記録媒体Mに着弾した後、自然冷却されることで速やかにインクがゲル状となって記録媒体M上で凝固する。
インクには、顔料等の固形物が含有されて分散されている。
【0042】
図1に示す定着部25は、搬送ドラム211の幅方向の幅に亘って配置された紫外線照射部を有し、搬送ドラム211に載置された記録媒体Mに対して当該紫外線照射部から紫外線を照射する。これにより、定着部25は記録媒体M上に吐出されたインクを硬化させて定着させる。定着部25は、搬送方向についてヘッドユニット24の配置位置からデリバリー部27の受け渡しドラム271の配置位置までの間において外周曲面211aと対向して配置される。
【0043】
読取部26は、搬送方向について定着部25によるインクの定着位置から受け渡しドラム271の配置位置までの間の位置において、搬送ドラム211の搬送面上の記録媒体Mの表面を撮像可能に配置される。読取部26は、幅方向に配列された複数の撮像素子を有するインラインセンサーを備える。インラインセンサーは、入射光の強度に応じた信号を各々出力する幅方向に配列された複数の撮像素子を有する。各撮像素子としては、例えば、光電変換素子としてフォトダイオードを備えるCCD(Charge Coupled Device)センサー又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサーを用いることができる。読取部26は、インラインセンサーにより、幅方向について上述の記録可能幅に亘る撮像範囲に一次元配列される撮像画素の撮像画素データ(各撮像画素について、各々RGBの画素値を含む)からなる一次元撮像データを取得して制御部50に出力する。インラインセンサーから出力された信号は、図示略のアナログフロントエンドにおいて電流電圧変換、増幅、雑音除去、アナログデジタル変換等がなされ、読取画像の輝度値を示す撮像データとして制御部50に出力される。
この一次元撮像データを、記録媒体Mの搬送に応じて繰り返し取得することで、記録媒体Mの全体の撮像データを取得することができ、記録媒体M(したがって、記録媒体M上に記録された画像)を読み取ることができる。
【0044】
デリバリー部27は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを有するベルトループ272と、記録媒体Mを搬送部21からベルトループ272に受け渡す円筒状の受け渡しドラム271とを有し、受け渡しドラム271により搬送部21からベルトループ272上に受け渡された記録媒体Mをベルトループ272により搬送して排紙部30に送出する。
【0045】
排紙部30は、デリバリー部27により画像形成部20から送り出された記録媒体Mが載置される板状の排紙トレー31を有する。
【0046】
図3は、インクジェット記録装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1は、加熱部23と、インクジェットヘッド241及び記録ヘッド駆動部242を有するヘッドユニット24と、定着部25と、読取部26と、搬送駆動部41と、メンテナンス部42と、通信部43と、制御部50と、バス80などを備える。以下では、既に説明した構成要素については説明を省略する。
【0047】
記録ヘッド駆動部242は、インクジェットヘッド241のインク吐出機構に対して適切なタイミングで画像データに応じて圧電体を変形動作させる駆動信号を供給することにより、インクジェットヘッド241のノズルNからインクを吐出させる。
【0048】
搬送駆動部41は、制御部50から供給される制御信号に基づいて搬送ドラム211の搬送ドラムモーターに駆動信号を供給して搬送ドラム211を所定の速度及びタイミングで回転させる。また、搬送駆動部41は、制御部50から供給される制御信号に基づいて媒体供給部12、受け渡しユニット22、及びデリバリー部27を動作させるためのモーターに駆動信号を供給して、記録媒体Mの搬送部21への供給及び搬送部21からの排出を行わせる。
【0049】
メンテナンス部42は、ヘッドユニット24のインクジェットヘッド241のメンテナンスに用いられる。メンテナンス部42は、例えば幅方向について搬送ドラム211に隣り合う位置に設けられている。メンテナンスを行う場合には、ヘッドユニット24が、搬送ドラム211の外周曲面211aに対向する位置から、メンテナンス部42と対向する位置まで幅方向に移動する。
【0050】
インクジェットヘッド241のメンテナンスでは、まず、インクジェットヘッド241の各ノズルNからインクを排出させるパージメンテナンスが行われる。メンテナンス部42は、このパージメンテナンスで排出されたインクを受けるインク受容部を備える。パージメンテナンスで排出されるインク量は、後述する吐き捨て動作におけるインクの吐出量より多い。パージメンテナンスは、例えばインクジェットヘッド241へのインクの供給圧力を高めることでインクを強制的に排出させる方法(加圧パージ)で行うことができる。あるいは、通常の画像形成と同様に、インク吐出機構への駆動信号の供給によりインクを吐出させてもよい。パージメンテナンスにより、インクジェットヘッド241内の異物、気泡、及びノズル内で固化したインクなどを外部に排出することができる。
【0051】
パージメンテナンスが終了すると、メンテナンス部42は、インクジェットヘッド241のインク吐出面を払拭布等により払拭する払拭メンテナンスを実行する。メンテナンス部42は、上記の払拭布と、当該払拭布をインク吐出面に当接させつつインク吐出面に沿って移動させる移動機構とを備える。払拭メンテナンスを行うことで、インク吐出面に付着したインクや異物を除去することができる。
【0052】
通信部43は、外部機器との間での通信動作を制御する通信インターフェースである。通信インターフェースとしては、例えば、LANボードやLANカードなど、各種通信プロトコルに対応したものが一又は複数含まれる。通信部43は、制御部50の制御に基づいて外部装置から記録対象の画像データや画像記録に係る設定データ(ジョブデータ)を取得し、また、外部機器に対してステータス情報などを送信する。
【0053】
制御部50は、CPU51(Central Processing Unit)、RAM52(Random Access Memory)、ROM53(Read Only Memory)及び記憶部54を有する。
【0054】
CPU51は、ROM53に記憶されたプログラム531や設定データを読み出してRAM52に記憶させ、当該プログラム531を実行して各種演算処理を行う。
【0055】
RAM52は、CPU51に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM52は、不揮発性メモリーを含んでいてもよい。
【0056】
ROM53は、CPU51により実行されるプログラム531や設定データ等を格納する。なお、ROM53に代えてフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。また、プログラム531は記憶部54に記憶されていてもよい。
【0057】
記憶部54には、通信部43を介して外部装置から入力されたプリントジョブ(画像記録命令)及び当該プリントジョブに係る記録対象の画像の画像データが記憶される。また、記憶部54には、後述する吐き捨てに係る制御に用いられる吐き捨て画像データ541、吐き捨てプロファイルデータ542(吐き捨て量情報)及び吐き捨て量テーブル543が記憶されている。
記憶部54としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されてもよい。
【0058】
このような構成の制御部50は、CPU51がプログラム531を実行することで、インクジェット記録装置1の全体動作を統括制御する。
例えば、制御部50は、搬送部21及びヘッドユニット24を動作させて、記録媒体Mを搬送させるとともに当該記録媒体Mに各種画像を形成させる。
また、制御部50は、インクジェットヘッド241の複数のノズルNからのインクの吐き捨てに係る各種制御を行う制御手段として機能する。この吐き捨てに係る制御ついては、後に詳述する。
また、制御部50は、ヘッドユニット24及びメンテナンス部42を動作させて、上述したインクジェットヘッド241のメンテナンスを行わせる。
【0059】
バス80は、制御部50と他の構成との間で信号の送受信を行うための経路である。
【0060】
次に、インクジェット記録装置1の動作について、ノズルNからのインクの吐き捨て動作を中心に説明する。
【0061】
以下では、インクジェット記録装置1において、インクジェットヘッド241の複数のノズルNからインクが吐出されない期間の長さを中断時間とする。この中断時間がある下限値を超えると、ノズルNの内部で固形物(本実施形態では顔料)の沈降が発生する。これは、顔料成分等の固形物はインクの他の成分に対して比重が大きいことに起因する。顔料が沈降すると、ノズルNの近傍においてインクの比重が増大する。インク成分の不均衡により粘性が増大する場合もある。このインクの特性(比重、粘性)の変化により、ノズルNから吐出されるインクの飛翔速度が所望の速度より低くなり、記録媒体Mにおける着弾位置のずれが生じる。
【0062】
図4は、顔料の沈降に起因するインクの着弾位置ずれを説明する図である。
図4(a)に示すように、インクジェットヘッド241のノズルNが記録媒体M上の位置P0と対向したときに、ノズルNからインクInが吐出されたとする。
図4(b)は、インクに顔料の沈降が生じておらず、インクの飛翔速度Vが正常値(V1)である場合を示す。この場合には、インクInは、位置P0に対して、記録媒体Mの搬送速度に応じた距離d1だけ搬送方向上流側の位置P1に着弾する。
【0063】
一方、
図4(c)は、インクに顔料の沈降が生じており、インクの飛翔速度VがV2(<V1)に低下している場合を示す。この場合には、インクInは、位置P0に対して、距離d1よりも大きい距離d2だけ搬送方向上流側の位置P2に着弾する。すなわち、インクの飛翔速度がV2に低下していることで、着弾までの時間が長くなり、着弾位置が(d2-d1)だけ上流側にずれる。
【0064】
ところで、顔料の沈降は、インクジェットヘッド241の幅方向中央部よりも、両端部の近傍で進みやすい。これは、ノズルNに連通するインク流路におけるインクの流速を、中央部と両端部近傍とで均一にすることが困難であり、特に両端部近傍でインクの滞留が生じやすいこと等に起因する。
このため、
図4に示したインクの着弾位置ずれは、インクジェットヘッド241の中央部よりも両端部近傍で大きくなる傾向がある。
【0065】
例えば、
図5(a)のように配置されたインクジェットヘッド241により、幅方向に平行な複数のラインからなる画像を形成する場合を考える。
図5(a)では、説明の便宜上、インクジェットヘッド241を上方(搬送ドラム211側とは反対側)から見たときのノズルNの位置を透視して描いている。
インクに顔料の沈降が生じていない場合には、各ノズルNからのインクの飛翔速度が均一であり着弾位置ずれが生じないため、
図5(b)に示すように、直線状のラインからなる画像が形成される。
一方、インクに顔料の沈降が生じており、かつインクジェットヘッド241の両端部近郷における沈降がより進んでいる場合には、中央部より端部近傍で、吐出されたインクの飛翔速度が遅くなる。このため、
図5(c)に示すように、各ラインの端部近傍で、搬送方向上流側へのインクの着弾位置ずれ量が大きくなり、ラインが弓状に曲がってしまう。
このように、顔料の沈降が生じると、ノズル間で飛翔速度がばらつく結果、着弾位置ずれ量がばらつき、画質の低下に繋がる。
【0066】
また、顔料の沈降が生じるとノズルNの近傍で顔料の濃度が増大するため、吐出されたインクにより形成される画像の濃度が変化(増大)する。このことによっても画質が低下する。
【0067】
顔料の沈降が発生している場合には、ノズルNから適量のインクを吐出する吐き捨て動作を行うことにより、沈降が進んだインクを外部に排出して、インクジェットヘッド241内のインクを正常な状態に戻すことができる。正常な状態に戻すために必要な吐き捨て量は、顔料の沈降が進んでいるほど多くなり、顔料の沈降が僅かであれば、少量の吐き捨てで正常な状態に復帰する。
しかしながら、顔料の沈降が進みやすいヘッド端部に合わせて全ノズルNから均一な吐き捨て量で吐き捨てを行うと、中央部では吐き捨て量が過剰となり、インクの無駄な消費が発生してしまう。
そこで、本実施形態では、各ノズルNについて適切なインクの吐き捨て量を定め、この吐き捨て量で各ノズルNからの吐き捨てを行うことで、インクの無駄な消費を抑制する。以下、吐き捨て量の決定方法について説明する。
【0068】
図6は、吐き捨て量の決定に用いるテストチャート60を示す図である。
テストチャート60は、当該テストチャート60の画像データに従ったタイミングでインクジェットヘッド241の各ノズルNからインクを吐出させることで、記録媒体Mに形成される。
図6では、ヘッドユニット24の4つのインクジェットヘッド241のうち1つのインクジェットヘッド241により形成されたテストチャート60を例示している。残りのインクジェットヘッド241についても同様のテストチャート60が形成される。
また、テストチャート60は、インクジェットヘッド241のインク吐出動作が最後に終了してから所定の中断時間が経過し、インクジェットヘッド241内のインクに顔料の沈降が生じている状態で形成されているものとする。
【0069】
テストチャート60では、搬送方向下流側から順に、ベタパターンA1、検出パターンB1、ベタパターンA2、検出パターンB2、ベタパターンA3、検出パターンB3、ベタパターンA4、検出パターンB4が形成されている(以下では、ベタパターンA1~A4のうち任意の1つを指す場合には、ベタパターンAと記し、検出パターンB1~B4のうち任意の1つを指す場合には、検出パターンBと記す)。すなわち、テストチャート60を形成する際には、ベタパターンA、検出パターンBが交互に繰り返し形成され、このうちベタパターンA1が最初に形成され、検出パターンB4が最後に形成される。
また、1つのベタパターンA及び1つの検出パターンBからなるパターンをパターンセットとした場合に、パターンセット同士の搬送方向についての配置ピッチは、一定値pとなっている。
【0070】
ベタパターンAは、複数のノズルNの各々から所定時間連続してインク吐出を行わせることで形成される。テストチャート60の画像データのうちベタパターンAに対応する部分は、矩形のベタ画像である。画像データのこの部分に従って各ノズルNからインクを吐出させることで、ベタパターンAが形成される。各ベタパターンAの形状は同一である。
【0071】
検出パターンBは、搬送方向に交差する複数の(ここでは4本の)ラインからなる。ラインの数はこれに限られず、少なくとも1本のラインが含まれていればよい。テストチャート60の画像データのうち検出パターンBに対応する部分は、幅方向に平行な複数の等間隔の直線の画像である。画像データのこの部分に従って各ノズルNからインクを吐出させることで、検出パターンBが形成される。詳しくは、複数のノズルNの各々が、記録媒体M上の幅方向に平行な所定の直線に対向するタイミングで、各ノズルからインクを吐出させることで、検出パターンBが形成される。
【0072】
ここで、検出パターンB1~B3では、幅方向の端部に近いほど顔料の沈降の進みが大きくなっていることに起因して、ラインの幅方向の端部近傍でインクの着弾位置ずれが大きくなり、ラインに曲がりが生じている。
【0073】
具体的には、検出パターンB1では、先頭の(搬送方向最下流側の)ラインの中央部は、記録媒体Mの先端Maから距離L1の位置に形成されており、当該ラインの幅方向の端部から範囲R1内の各部は、基準直線61上の基準位置に対し、搬送方向上流側に向かって位置ずれ量Dだけ位置ずれが生じている。ここで、基準直線61は、先端Maから距離L1の位置にあり幅方向に平行な仮想の直線である。また、基準位置は、基準直線61のうち、検出パターンBのラインの各部と幅方向の位置が同一となる部分の位置である。位置ずれ量Dは、幅方向の端部に近いほど大きくなっている。また、ラインのうち範囲R1を除く部分は、略直線状となっている。ここで、略直線状とは、基準直線61上の基準位置からの搬送方向の位置ずれ量Dが所定の下限値未満であって無視できるほど小さいことをいい、ごくわずかに曲がっている状態も含む。
【0074】
検出パターンB2の先頭のラインの中央部は、先端Maから距離L2の位置に形成されている。また、当該ラインの幅方向の端部から範囲R2内の各部は、距離L2の位置にある基準直線61上の基準位置に対して位置ずれ量Dだけ位置ずれが生じている。ラインのうち範囲R2を除く部分は、略直線状となっている。範囲R2の幅方向の長さは、範囲R1の幅方向の長さより短い。
【0075】
検出パターンB3の先頭のラインの中央部は、先端Maから距離L3の位置に形成されている。また、ラインの幅方向の端部から範囲R3内の各部は、距離L3の位置にある基準直線61上の基準位置に対して位置ずれ量Dだけ位置ずれが生じている。ラインのうち範囲R3を除く部分は、略直線状となっている。範囲R3の幅方向の長さは、範囲R2の幅方向の長さより短い。
【0076】
ここで、検出パターンB1~B3におけるラインの曲がり量、すなわち位置ずれ量Dの最大値は、検出パターンB1で最も大きく、検出パターンB3で最も小さい。
【0077】
検出パターンB4の先頭のラインの中央部は、先端Maから距離L4の位置に形成されている。検出パターンB4のラインには曲がりが生じておらず、略直線状となっている。
【0078】
このように検出パターンBのラインの形状が互いに相違するのは、以下の理由による。
すなわち、4つの検出パターンBのうち最初の検出パターンB1が形成される段階では、顔料の沈降が大きく残っているため、検出パターンB1のラインの曲がりが大きくなる。
次いで検出パターンB2が形成されるが、その直前にベタパターンA2を形成したときのインク吐出(吐き捨て)により顔料の沈降が改善されるため、検出パターンB2のラインの曲がりは検出パターンB1より小さくなる。
同様に、その後のベタパターンA3の形成時に顔料の沈降がさらに改善されるため、検出パターンB3のラインの曲がりは検出パターンB2より小さくなる。
そして、続くベタパターンA4の形成時に顔料の沈降が解消され、検出パターンB4のラインは直線状となる。
【0079】
図6の例では、4つ目の検出パターンB4でラインが略直線状となっているが、顔料の沈降の程度によっては、3つ目以前の検出パターンBでラインが直線状となる場合もあり、また直線状となるのが5つ目以降の検出パターンBとなる場合もある。
【0080】
このような特徴のテストチャート60における検出パターンBの位置ずれ量Dに基づいて、各ノズルNについて、着弾位置ずれ(すなわち、顔料の沈降)を解消させるために必要なインクの吐き捨て量をそれぞれ個別に特定することができる。
すなわち、n番目(nは自然数)の検出パターンBで初めて、ラインのうち対象のノズルNに対応する部分の曲がりが解消されて略直線状となった場合(位置ずれ量Dが上記の下限値未満となった場合)に、n番目の検出パターンBより前のベタパターンAの形成のために吐出されたインク量の合計(ベタパターンAの搬送方向についての画素数の合計に相当)が、対象のノズルNについての着弾位置ずれを解消させるために必要なインクの吐き捨て量であると特定することができる。
【0081】
例えば、
図6では、範囲R3に対応する各ノズルNについては、4番目の検出パターンB4で初めてラインが略直線状となる。このため、それ以前に形成されたベタパターンA1~A4の形成時の合計インク吐出量が、範囲R3に対応するノズルNについての適切な吐き捨て量と定められる。
また、範囲R2のうち範囲R3を除いた部分に対応する各ノズルNについては、3番目の検出パターンB3で初めてラインが略直線状となる。このため、それ以前に形成されたベタパターンA1~A3の形成時の合計インク吐出量が、当該ノズルNについての適切な吐き捨て量と定められる。
また、範囲R1のうち範囲R2を除いた部分に対応する各ノズルNについては、2番目の検出パターンB2で初めてラインが略直線状となる。このため、それ以前に形成されたベタパターンA1、A2の形成時の合計インク吐出量が、当該ノズルNについての適切な吐き捨て量と定められる。
また、範囲R1を除いた部分に対応する各ノズルNについては、1番目の検出パターンB1でラインが略直線状となっている。このため、それ以前に形成されたベタパターンA1の形成時のインク吐出量が、当該ノズルNについての適切な吐き捨て量と定められる。
【0082】
なお、幅方向についての中央部のノズルNについては、検出パターンBのラインの、記録媒体Mの先端Maからの距離をさらに考慮して吐き捨て量を定めてもよい。具体的には、
図6における一部の検出パターンBにおいて、先頭のラインの先端Maからの距離(すなわち、距離L1~L4)が、顔料の沈降がない場合の距離(規定距離)に一致していない場合には、規定距離に初めて一致した検出パターンBより前のベタパターンAの形成時の合計インク吐出量を、中央部のノズルNの吐き捨て量と定めてもよい。例えば、距離L1が規定距離と一致せず、距離L2が規定距離と一致した場合には、ベタパターンA1、A2の形成時の合計インク吐出量を、中央部のノズルNの吐き捨て量として定めることができる。この場合には、他の全てのノズルNの吐き捨て量を、中央部のノズルNの吐き捨て量以上に定めることが望ましい。
【0083】
このような各ノズルNに対する吐き捨て量の算定は、読取部26によるテストチャート60の読取結果(すなわち、撮像データ)に基づいて、制御部50が行う。
【0084】
図7は、各ノズルNについて、適切な吐き捨て量で吐き捨てを行わせるための吐き捨てパターン70を説明する図である。
図7の上部には、インクジェットヘッド241の各ノズルNについて、着弾位置ずれの解消のために実際に必要な吐き捨て量が示されている。
その下部には、各ノズルNについて、テストチャート60の読取結果から上記の方法で決定した吐き捨て量、すなわち着弾位置ずれの解消に要したベタパターンAの数が示されている。
図7の下部には、各ノズルNから、決定した吐き捨て量で吐き捨てを行わせるための吐き捨てパターン70が示されている。吐き捨てパターン70は、吐き捨て量が多いノズルNに対応する部分ほど搬送方向の長さが大きくなるベタパターンである。換言すれば、吐き捨てパターン70の各部の搬送方向の長さ(画素数)は、対応するノズルNについて着弾位置ずれの解消に要した全てのベタパターンAを搬送方向に繋げた長さ(画素数)に等しい。
【0085】
制御部50は、この吐き捨てパターン70を形成するための吐き捨て画像データ541を生成して記憶部54に記憶させる。吐き捨て画像データ541は、吐き捨てパターン70のベタ領域に対応する画素が、インクを吐出させるオン画素となっており、その他の画素がインクを吐出させないオフ画素となっている画像データである。
そして、制御部50は、吐き捨てを実行するタイミングにおいて記憶部54から吐き捨て画像データ541を読み出し、吐き捨て画像データ541に従って各ノズルNからインクを吐出させることで、吐き捨てを実行させる。
【0086】
上記の吐き捨て量の算定は、異なる複数の中断時間の各々について行ってもよい。
すなわち、異なる複数の中断時間T1~Tnが経過したときにそれぞれテストチャート60を形成し、中断時間T1~Tnの各々について、テストチャート60に基づいて各ノズルNからの適切な吐き捨て量を定める。そして、定めた吐き捨て量でインクを吐出させるための吐き捨て画像データ541(すなわち、n個の吐き捨て画像データ541)を生成して記憶部54に記憶させる。
【0087】
インクジェット記録装置1の運用中に吐き捨てを実行する場合には、その時点における中断時間Txに応じて、複数の吐き捨て画像データ541のうち1つを選択する。例えば、中断時間T1~Tnのうち、Ta<Tx<Tb(a=b-1)を満たす中断時間Tbを特定し、当該中断時間Tbに対応する吐き捨て画像データ541を用いて吐き捨てを行わせる。
【0088】
上記の中断時間Tnは、メンテナンス部42によるメンテナンスを行う基準となる中断時間Tz以下の範囲で定められる。例えば、中断時間が30分以上である場合にメンテナンス部42によるメンテナンスを行うと設定されている場合(すなわち、中断時間Tzが30分である場合)に、中断時間T1を15分、中断時間T2を30分として、これらの中断時間T1、T2について吐き捨て量を決定して吐き捨て画像データ541を生成すればよい。
【0089】
次に、吐き捨て量を決定するための吐き捨て量決定処理、及び吐き捨て動作を含む印刷動作を実行させるための印刷処理について、制御部50による制御手順を説明する。
【0090】
図8は、吐き捨て量決定処理の制御手順を示すフローチャートである。
吐き捨て量決定処理が開始されると、制御部50は、最後にインク吐出が行われた後、所定の中断時間Tm(1≦m≦n)が経過しているか否かを判別する(ステップS101)。中断時間Tmが経過していないと判別された場合には(ステップS101で“NO”)、制御部50は、再度ステップS101の処理を実行する。
【0091】
中断時間Tmが経過したと判別された場合には(ステップS101で“YES”)、制御部50は、搬送部21及びヘッドユニット24を動作させてテストチャート60を記録させる(ステップS102)。すなわち、制御部50は、記録媒体Mを載置した搬送ドラム211を回転させつつ、テストチャート60の画像データに基づいてインクジェットヘッド241の各ノズルNからインクを吐出させることで、インクジェットヘッド241に対して搬送方向に相対移動する記録媒体M上にインクを着弾させてテストチャート60を形成させる。
【0092】
制御部50は、テストチャート60を読取部26により読み取らせて撮像データを取得する(ステップS103)。
【0093】
制御部50は、ノズルNの番号を表す変数iに「1」を代入し(ステップS104)、変数iがインクジェットヘッド241の全ノズル数より大きいか否かを判別する(ステップS105)。変数iが全ノズル数以下であると判別された場合には(ステップS105で“NO”)、制御部50は、検出パターンBの番号を表す変数jに「1」を代入する(ステップS106)。
【0094】
制御部50は、i番目のノズルNについて、j番目の検出パターンBで着弾位置ずれが解消しているか否かを判別する(ステップS107)。すなわち、制御部50は、テストチャート60の画像データにおいて、j番目の検出パターンBのうちi番目のノズルNに対応する部分の位置ずれ量Dが所定の下限値未満となっているか否かを特定し、下限値未満となっている場合に、着弾位置ずれが解消していると判別する。ここで、検出パターンBのうちi番目のノズルNに対応する部分は、読取部26の読取解像度に応じてノズルNに一対一に対応する部分が特定できる場合には当該部分とすればよい。また、読取解像度が、単一のノズルNに対応する部分を特定できる解像度より低い場合等には、検出パターンBのうちi番目のノズルNを含む複数のノズルNに対応する部分を対象にステップS107の処理を行えばよい。
【0095】
j番目の検出パターンBで着弾位置ずれが解消していないと判別された場合には、(ステップS107で“NO”)、制御部50は、変数jをインクリメントし(ステップS108)、処理をステップS107に戻す。
【0096】
j番目の検出パターンBで着弾位置ずれが解消していると判別された場合には、(ステップS107で“YES”)、制御部50は、i番目のノズルNの吐き捨て量を、ベタパターンAのj回分のインク吐出量に決定する(ステップS109)。
また、制御部50は、変数iをインクリメントし(ステップS110)、処理をステップS105に戻す。
【0097】
ステップS105において変数iが全ノズル数より大きいと判別された場合には(ステップS105で“YES”)、制御部50は、各ノズルNの吐き捨て量が、ステップS109で決定した値となるように、吐き捨て画像データ541を生成して記憶部54に記憶させる(ステップS111)。
ステップS111の処理が終了すると、制御部50は、吐き捨て量決定処理を終了させる。
異なる複数の中断時間T1~Tnの各々について吐き捨て量を決定して吐き捨て画像データ541を生成する場合には、各中断時間について上記の吐き捨て量決定処理が実行される。
【0098】
図9は、印刷処理の制御手順を示すフローチャートである。
印刷処理は、プリントジョブを受信した場合等、記録媒体Mに通常画像印刷を行う場合に開始される。
ここでは、メンテナンス部42によるメンテナンスを開始する中断時間TzがT2であり、中断時間T1(<T2)及び中断時間T2についてそれぞれ吐き捨て量が定められて吐き捨て画像データ541が生成されている場合を例に挙げて説明する。
【0099】
印刷処理が開始されると、制御部50は、最後にインク吐出が行われた後、所定の基準中断時間が経過しているか否かを判別する(ステップS201)。ここで、基準中断時間は、顔料の沈降によるインクの着弾位置ずれが生じない中断時間の範囲の上限以下に定められている。したがって、中断時間が基準中断時間以下である場合には、画質に影響を与える着弾位置ずれが生じないため、吐き捨て動作やメンテナンス動作を行うことなく通常画像印刷を行うことができる。
【0100】
基準中断時間が経過していないと判別された場合には(ステップS201で“NO”)、制御部50は、インクジェット記録装置1の各部を動作させて、記録媒体Mに対する通常画像印刷を行わせ(ステップS202)、印刷処理を終了させる。
【0101】
基準中断時間が経過していると判別された場合には(ステップS201で“YES”)、制御部50は、中断時間T2が経過しているか否かを判別する(ステップS203)。中断時間T2が経過していると判別された場合には(ステップS203で“YES”)、制御部50は、ヘッドユニット24をメンテナンス部42と対向する位置に移動させて、メンテナンス部42を用いたメンテナンスを実行させる(ステップS204)。続いて制御部50は、ヘッドユニット24を搬送ドラム211と対向する位置に移動させて、記録媒体Mに対する通常画像印刷を行わせ(ステップS205)、印刷処理を終了させる。
【0102】
ステップS203において中断時間T2が経過していないと判別された場合には(ステップS203で“NO”)、制御部50は、中断時間T1が経過しているか否かを判別する(ステップS206)。中断時間T1が経過していないと判別された場合には(ステップS206で“NO”)、制御部50は、中断時間T1で生成した吐き捨て画像データ541に基づいてインクジェットヘッド241からインクを吐出させて、記録媒体Mに吐き捨てパターン70を出力(形成)させる(ステップS207)。これにより、中断時間T1に対応する吐き捨て量で各ノズルNからのインクの吐き捨てが行われる。ステップS207の処理が終了すると、制御部50は、記録媒体Mに対する通常画像印刷を行わせ(ステップS208)、印刷処理を終了させる。
【0103】
中断時間T1が経過していると判別された場合には(ステップS206で“YES”)、制御部50は、中断時間T2で生成した吐き捨て画像データ541に基づいてインクジェットヘッド241からインクを吐出させて、記録媒体Mに吐き捨てパターン70を出力(形成)させる(ステップS209)。これにより、中断時間T2に対応する吐き捨て量で(したがって、ステップS207よりも多い吐き捨て量で)各ノズルNからのインクの吐き捨てが行われる。ステップS209の処理が終了すると、制御部50は、記録媒体Mに対する通常画像印刷を行わせ(ステップS210)、印刷処理を終了させる。
【0104】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。以下の各変形例では、上記実施形態と共通する内容については説明を省略し、上記実施形態との相違点について述べる。
【0105】
(変形例1)
変形例1は、吐き捨て実行時の中断時間Txに基づいて吐き捨て量を補正する点で上記実施形態と異なる。本変形例では、吐き捨て量決定処理において、各ノズルNの吐き捨て量の情報を含む吐き捨てプロファイルデータ542を記憶部54に記憶しておき、吐き捨て実行時に、必要に応じて吐き捨てプロファイルデータ542の吐き捨て量を補正した上で吐き捨て画像データ541を生成し、この吐き捨て画像データ541に基づいて吐き捨てパターン70を出力する。
【0106】
図10は、変形例1に係る吐き捨て量決定処理の制御手順を示すフローチャートである。
図10のフローチャートは、
図8のフローチャートのステップS111をステップS111aに変更したものに相当する。以下では、
図8のフローチャートとの相違点について説明する。
【0107】
吐き捨て量決定処理が開始され、ステップS105において変数iが全ノズル数より大きいと判別された場合には、制御部50は、ステップS109で決定した各ノズルNの吐き捨て量の情報を含む吐き捨てプロファイルデータ542を生成して記憶部54に記憶させる(ステップS111a)。吐き捨てプロファイルデータ542は、例えば、各ノズルNについて、吐き捨て画像データ541を生成する場合の吐き捨てパターン70の搬送方向の画素数(したがって、インクの吐出回数)が対応付けられたものとすることができる。また、画素数に代えて、吐き捨てパターン70の搬送方向の長さなどの、吐き捨て量に対応する値が対応付けられていてもよい。
ステップS111aの処理が終了すると、制御部50は、吐き捨て量決定処理を終了させる。
【0108】
図11は、変形例1に係る吐き捨て処理の制御手順を示すフローチャートである。
吐き捨て処理は、インクジェット記録装置1の運用中に吐き捨てを実行する場合、例えば基準中断時間経過後に通常画像印刷を開始する場合に開始される。
【0109】
吐き捨て処理が開始されると、制御部50は、その時点の中断時間Txを特定する(ステップS301)。
【0110】
制御部50は、中断時間Txと、吐き捨てプロファイルデータ542を生成したときの中断時間Tmと、に基づいて、吐き捨てプロファイルデータ542の吐き捨て量を補正する(ステップS302)。例えば、適正な吐き捨て量が、中断時間に比例して増大すると仮定し、中断時間Txにおける吐き捨て量Qxを、Qx=Qm・Tx/Tmの式により補正する。ここでQmは、中断時間Tmの吐き捨てプロファイルデータ542に記憶されている対象ノズルNの吐き捨て量である。制御部50は、各ノズルNについて吐き捨て量を補正する。
【0111】
制御部50は、各ノズルNの吐き捨て量が、ステップS302で補正した吐き捨て量となるように吐き捨て画像データ541を生成して記憶部54に記憶させる(ステップS303)。
【0112】
制御部50は、生成した吐き捨て画像データ541に基づいてインクジェットヘッド241からインクを吐出させて、記録媒体Mに吐き捨てパターン70を出力させる(ステップS304)。これにより、中断時間Txに応じて補正された吐き捨て量で各ノズルNからのインクの吐き捨てが行われる。
ステップS304の処理が終了すると、制御部50は、吐き捨て処理を終了させる。
【0113】
なお、中断時間Txが、吐き捨てプロファイルデータ542を生成したときのTmと一致又は近似している場合等、吐き捨てプロファイルデータ542の吐き捨て量の補正が必要ない場合には、吐き捨てプロファイルデータ542の吐き捨て量をそのまま用いて吐き捨て画像データ541を生成してもよい。
【0114】
吐き捨て処理における吐き捨て量の補正方法は、
図11に示したものに限られない。例えば、異なる複数の中断時間T1~Tnについてそれぞれ吐き捨てプロファイルデータ542を生成しておき、このうち吐き捨て実行時の中断時間Txに近接する2つの中断時間に対応する吐き捨てプロファイルデータ542を用いて吐き捨て量を算定してもよい。
【0115】
図12は、複数の吐き捨てプロファイルデータ542を用いて吐き捨て量を算定する場合の吐き捨て処理の制御手順を示すフローチャートである。
吐き捨て処理が開始されると、制御部50は、その時点の中断時間Txを特定する(ステップS401)。
【0116】
制御部50は、吐き捨てプロファイルデータ542を生成した中断時間T1~Tnのうち、Ta<Tx<Tb(a=b-1)を満たす中断時間Ta、Tbを特定する(ステップS402)。
【0117】
制御部50は、中断時間Ta、Tbに対応する吐き捨てプロファイルデータ542を特定し、これらの2つの吐き捨てプロファイルデータ542に係る2つの吐き捨て量に基づく補間処理により、中断時間Txに対応する吐き捨て量を算出する(ステップS403)。例えば、対象のノズルNについて、中断時間Ta、Tbに対応する吐き捨て量がそれぞれQa、Qbである場合に、以下の式により中断時間Txにおける吐き捨て量Qxを算出する。
Qx=Qa+(Qb-Qa)・(Tx-Ta)/(Tb-Ta)
制御部50は、各ノズルNについて補間後の吐き捨て量Qxを算出する。
【0118】
制御部50は、各ノズルNの吐き捨て量が、ステップS403で算出した吐き捨て量となるように吐き捨て画像データ541を生成して記憶部54に記憶させる(ステップS404)。
【0119】
制御部50は、生成した吐き捨て画像データ541に基づいてインクジェットヘッド241からインクを吐出させて、記録媒体Mに吐き捨てパターン70を出力させる(ステップS405)。これにより、中断時間Txに応じて補間した吐き捨て量で各ノズルNからのインクの吐き捨てが行われる。
ステップS405の処理が終了すると、制御部50は、吐き捨て処理を終了させる。
【0120】
なお、上記では、吐き捨てプロファイルデータ542に基づいて吐き捨て量を補正する例で説明したが、これに代えて、予め生成された吐き捨て画像データ541を補正することで吐き捨て量を補正してもよい。したがって、「吐き捨て量情報」には、吐き捨て画像データ541が含まれ得る。
【0121】
(変形例2)
変形例2は、1つの検出パターンBからなるテストチャート60の読取結果に基づいて、各ノズルNの吐き捨て量を定める点で上記実施形態と異なる。
【0122】
図13は、変形例2に係るテストチャート60を示す図である。
このテストチャート60は、1つの検出パターンBからなる。なお、検出パターンBの搬送方向下流側に、ベタパターンAを形成してもよい。
【0123】
本変形例では、各ノズルNについて、基準直線61からの位置ずれ量Dから直接吐き捨て量が定められる。吐き捨て量は、予め記憶部54に記憶された吐き捨て量テーブル543を参照することで特定される。
【0124】
図14は、吐き捨て量テーブル543の内容例を示す図である。
吐き捨て量テーブル543では、位置ずれ量Dと、当該位置ずれ量Dが生じているときに位置ずれを解消させるために必要な吐き捨て量と、が対応付けられて記憶されている。
図14の例では、位置ずれ量Dが画素単位で表され、また吐き捨て量が、吐き捨てパターン70の搬送方向の長さで表されているが、これら以外の方法で表されていてもよい。
例えば、
図13のテストチャート60の読取結果から、あるノズルNに対応する位置ずれ量Dが0.3画素であると判別された場合には、吐き捨て量テーブル543を参照して、吐き捨て量が19mmと特定される。
【0125】
このように位置ずれ量Dから吐き捨て量を直接特定する方法は、短時間で実行可能であるため、例えば、インクジェット記録装置1の運用中に吐き捨てを実行する場合に、テストチャート60を形成してその場で吐き捨て量を定め、その吐き捨て量で吐き捨てを実行する場合に好適に用いることができる。
【0126】
図15は、吐き捨て実行時にテストチャート60を形成する場合の吐き捨て処理の制御手順を示すフローチャートである。
吐き捨て処理が開始されると、制御部50は、搬送部21及びヘッドユニット24を動作させてテストチャート60を記録させる(ステップS501)。また、制御部50は、テストチャート60を読取部26により読み取らせて撮像データを取得する(ステップS502)。
【0127】
制御部50は、ノズルNの番号を表す変数iに「1」を代入し(ステップS503)、変数iがインクジェットヘッド241の全ノズル数より大きいか否かを判別する(ステップS504)。変数iが全ノズル数以下であると判別された場合には(ステップS504で“NO”)、制御部50は、テストチャート60の読取結果から、i番目のノズルNに対応する位置ずれ量Dを特定し、吐き捨て量テーブル543において対応する吐き捨て量を特定する(ステップS505)。また、制御部50は、変数iをインクリメントして(ステップS506)、処理をステップS504に戻す。
【0128】
ステップS504において変数iが全ノズル数より大きいと判別された場合には(ステップS504で“YES”)、制御部50は、各ノズルNの吐き捨て量が、ステップS505で特定した値となるように、吐き捨て画像データ541を生成して記憶部54に記憶させる(ステップS507)。また、制御部50は、生成した吐き捨て画像データ541に基づいてインクジェットヘッド241からインクを吐出させて、記録媒体Mに吐き捨てパターン70を出力させる(ステップS508)。これにより、適切な吐き捨て量で各ノズルNからのインクの吐き捨てが行われる。
ステップS508の処理が終了すると、制御部50は、吐き捨て処理を終了させる。
【0129】
(変形例3)
変形例3は、検出パターンBの内容が上記実施形態と異なる。変形例3は、上記の変形例1又は変形例2と組み合わせてもよい。
【0130】
図16は、変形例3に係るテストチャート60を示す図である。
本変形例のテストチャート60の検出パターンBは、インクジェットヘッド241における複数のノズルNの位置関係を反映したドット群を含む。この検出パターンBは、複数のノズルNから同一タイミングでインクが吐出されるように、各ノズルNに対応するインク吐出機構に対して駆動信号を一斉に供給することにより形成される。
【0131】
この検出パターンBは、顔料の沈降がない場合には、ノズルNの位置関係をそのまま引き写した配置のドット群となる。このときのドット群の位置が、基準位置に相当する。顔料の沈降が生じると、検出パターンBのうち特に幅方向の両端部近傍のドットが、基準位置に対して搬送方向上流側にずれることとなる。この位置ずれ量Dに基づいて、上記実施形態と同様に適切な吐き捨て量を定めることができる。
【0132】
(変形例4)
変形例4は、検出パターンBの内容が上記実施形態と異なる。変形例4は、上記の変形例1又は変形例2と組み合わせてもよい。
【0133】
図17は、変形例4に係るテストチャート60を示す図である。
本変形例のテストチャート60の検出パターンBは、所定階調のベタパターンである。
図17では、濃度分布が見やすくなるように中間調のベタパターンとしている。上述のとおり、顔料の沈降が進むとノズルNの近傍で顔料の濃度が増大するため、吐出されたインクにより形成される画像の濃度が増大する。よって、本変形例の検出パターンBでは、特に幅方向の両端部の近傍部分において、濃度が中央部より大きくなる。この中央部の濃度(基準濃度)との差分が大きいほど、そのノズルNにおいて顔料の沈降が進んでいることを表す。
複数の検出パターンBのうちいずれかの検出パターンBにおいて、あるノズルNに対応する部分の濃度と中央部の濃度との差分が初めて所定の下限値未満となった場合に、それ以前に形成されたベタパターンAの形成時の合計インク吐出量を、そのノズルNの吐き捨て量と定めることができる。この吐き捨て量の算定を各ノズルNについて行うことで、各ノズルNの適切な吐き捨て量を定めることができる。
【0134】
図18は、変形例4に係る吐き捨て量決定処理の制御手順を示すフローチャートである。
図18のフローチャートは、
図8のフローチャートのステップS107をステップS107aに変更したものに相当する。以下では、
図8のフローチャートとの相違点について説明する。
【0135】
図18の吐き捨て量決定処理では、ステップS106で変数jに1を代入した後、又はステップS108で変数jをインクリメントした後に、j番目の検出パターンで、i番目のノズルNに対応する部分の濃度と、基準濃度(ここでは中央部の濃度)との差分が下限値未満であるか否かを判別する(ステップS107a)。基準濃度との差分が下限値未満であると判別された場合には(ステップS107aで“YES”)、制御部50は、i番目のノズルNの吐き捨て量を、ベタパターンAのj回分のインク吐出量に決定する(ステップS109)。
以下の各ステップの処理は、
図8と同様である。
【0136】
なお、上記では中央部の濃度を基準濃度として用いたが、顔料の沈降がない正常な状態で検出パターンBを形成したときの濃度を基準濃度としてもよい。
また、変形例3のように、単一の検出パターンBを含むテストチャート60を形成し、この検出パターンBの濃度と基準濃度との差分から直接吐き捨て量を特定してもよい。
【0137】
以上のように、本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、インクを吐出する複数のノズルNを有するインクジェットヘッド241と、複数のノズルNからのインクの吐き捨てに係る制御を行う制御手段としての制御部50と、を備える。制御部50は、複数のノズルNから記録媒体Mに対してインクを吐出させて当該記録媒体M上に検出パターンBを形成させ、記録媒体Mの読取結果における検出パターンBの各部の、所定の基準位置からの位置ずれ量Dに基づいて、複数のノズルNの各々からのインクの吐き捨て量を定める。
これにより、各ノズルNについての適切なインクの吐き捨て量を簡易に決定することができる。また、各ノズルNからのインクの吐き捨て量を必要最小限に抑えることができるため、インクの無駄な消費を抑制することができる。また、通常の画像形成のための装置構成で適切な吐き捨て量を定めることができるため、装置を大型化させたり、製造コストを上昇させたりすることなく、適切な吐き捨て量を定めることができる。また、記録媒体Mに検出パターンBを形成して読み取る処理で短時間に吐き捨て量を算出することができるため、生産性の低下を最小限に抑えることができる。
【0138】
また、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド241と記録媒体Mとを搬送方向に相対移動させる搬送部21を備える。また、複数のノズルNは、搬送方向と直交する幅方向について互いに異なる位置に設けられている。また、制御部50は、搬送部21によりインクジェットヘッド241に対して相対移動している記録媒体M上に検出パターンBを形成させ、記録媒体Mの読取結果における検出パターンBの各部の、基準位置からの搬送方向についての位置ずれ量Dに基づいて吐き捨て量を定める。
これにより、各ノズルNについての適切なインクの吐き捨て量を簡易に決定することができる。
【0139】
また、検出パターンBは、搬送方向に交差するラインからなる。これにより、検出パターンBの各部の位置ずれ量Dを簡易に特定することができる。
【0140】
また、基準位置は、搬送方向に直交する基準直線61上にあり、制御部50は、複数のノズルNの各々が、基準直線61に平行な記録媒体M上の所定の直線に対向するタイミングで各ノズルNからインクを吐出させて検出パターンBを形成させる。これにより、顔料の沈降がない場合に直線となり、顔料の沈降がある場合に曲線となる検出パターンBを形成することができる。よって、検出パターンBの曲がり量から簡易に位置ずれ量Dを特定することができる。
【0141】
また、制御部50は、複数のノズルNの各々からインクを吐出させて記録媒体M上にベタパターンAを形成させ、ベタパターンAに続いて検出パターンBを形成させる。このように先行してベタパターンAを形成させることで、検出パターンBの形成時にノズルN内のインクの状態を安定させることができるため、安定したライン状の検出パターンBを形成させることができる。
【0142】
また、制御部50は、ベタパターンA及び検出パターンBを交互に繰り返し形成させ、形成された複数の検出パターンBの位置ずれ量Dに基づいて吐き捨て量を定める。より具体的には、制御部50は、複数のノズルNの各々について、複数の検出パターンBのうち当該ノズルNに対応する部分の位置ずれ量Dが初めて所定の下限値未満となった検出パターンBを特定し、当該検出パターンBより前に形成されたベタパターンAの形成時の合計インク吐出量を、当該ノズルNの吐き捨て量として定める。
これにより、顔料の沈降による着弾位置ずれが実際に解消される吐き捨て量を簡易かつ確実に特定することができる。
【0143】
また、変形例3では、制御部50は、複数のノズルNから同一タイミングでインクを吐出させて、複数のノズルNの位置関係を反映したドット群を含む検出パターンBを形成させる。これにより、簡易な制御で検出パターンBを形成させることができる。
【0144】
また、記録媒体Mを読み取る読取部26を備え、制御部50は、読取部26による記録媒体Mの読取結果に基づいて、検出パターンBの各部の、基準位置からの位置ずれ量Dを特定する。これにより、インクジェット記録装置1の内部で記録媒体Mの読み取りを行うことができるため、より短時間で吐き捨て量を定めることができる。
【0145】
また、制御部50は、検出パターンBに基づいて定めた吐き捨て量のインクを複数のノズルNの各々から吐出させるための吐き捨て画像データ541を生成して予め記憶部54に記憶させ、吐き捨てを実行する場合に、吐き捨て画像データ541に従って複数のノズルNの各々からインクを吐出させる。このように、予め適切な吐き捨て量を定めて吐き捨て画像データ541を生成しておくことで、インクジェット記録装置1の運用時における吐き捨て動作を短時間に行うことができる。
【0146】
また、インクジェットヘッド241の複数のノズルNからインクが吐出されない期間の長さを中断時間とした場合に、制御部50は、異なる複数の中断時間T1~Tnが経過したときにそれぞれ検出パターンBを形成させ、複数の中断時間T1~Tnの各々について、検出パターンBに基づいて吐き捨て量を定めて吐き捨て画像データ541を生成し、生成した複数の吐き捨て画像データ541を記憶部54に記憶させ、吐き捨てを実行する場合には、その時点における中断時間Txに応じて、複数の吐き捨て画像データ541のうち1つを選択し、選択した吐き捨て画像データ541に従って複数のノズルNの各々からインクを吐出させる。これにより、吐き捨て実行時の中断時間Txの長さに応じた適切な吐き捨て量で吐き捨てを行わせることができる。また、予め適切な吐き捨て量を定めて吐き捨て画像データ541を生成しておくことで、インクジェット記録装置1の運用時における吐き捨て動作を短時間に行うことができる。
【0147】
また、変形例1の制御部50は、検出パターンBに基づいて定めた吐き捨て量に係る吐き捨てプロファイルデータ542を所定の記憶部54に記憶させ、吐き捨てを実行する場合には、記憶部54に記憶された吐き捨てプロファイルデータ542に基づいて、所望の吐き捨て量のインクを複数のノズルNの各々から吐出させるための吐き捨て画像データ541を生成し、当該吐き捨て画像データ541に従って複数のノズルNの各々からインクを吐出させる。このような方法によっても、適切な吐き捨て量で吐き捨てを実行することができる。
【0148】
また、変形例1の制御部50は、吐き捨てを実行する場合には、その時点における中断時間Txと、吐き捨てプロファイルデータ542に係る検出パターンBが形成されたときの中断時間Tmと、に基づいて吐き捨てプロファイルデータ542の吐き捨て量を補正し、当該補正後の吐き捨て量のインクを複数のノズルNの各々から吐出させるための吐き捨て画像データ541を生成する。これにより、吐き捨て実行時の中断時間Txの長さに応じた適切な吐き捨て量をより正確に定めて吐き捨てを実行することができる。
【0149】
また、変形例1の制御部50は、異なる複数の中断時間T1~Tnが経過したときにそれぞれ検出パターンBを形成させ、複数の中断時間T1~Tnの各々について、検出パターンBに基づいて定めた吐き捨て量に係る吐き捨てプロファイルデータ542を記憶部54に記憶させ、吐き捨てを実行する場合には、複数の中断時間T1~Tnのうち、当該吐き捨ての実行時における中断時間Txを挟む2つの中断時間Ta、Tbに対応する2つの吐き捨てプロファイルデータ542を特定し、2つの吐き捨てプロファイルデータ542に係る2つの吐き捨て量に基づく補間処理により、実行時における中断時間Txに対応する吐き捨て量を算出し、算出した吐き捨て量のインクを複数のノズルNの各々から吐出させるための吐き捨て画像データ541を生成する。これにより、吐き捨て実行時の中断時間Txの長さに応じた適切な吐き捨て量をより正確に定めて吐き捨てを実行することができる。
【0150】
また、変形例2の制御部50は、吐き捨てを実行する場合に検出パターンBを形成させ、検出パターンBに基づいて定めた吐き捨て量のインクを複数のノズルNの各々から吐出させるための吐き捨て画像データ541を生成し、吐き捨て画像データ541に従って複数のノズルNの各々からインクを吐出させる。これにより、インクジェットヘッド241の特性が経時変化している場合であっても、その時点の特性に応じた適切な吐き捨て量を定めて吐き捨てを実行することができる。
【0151】
また、変形例4に係るインクジェット記録装置1は、インクを吐出する複数のノズルNを有するインクジェットヘッド241と、複数のノズルNからのインクの吐き捨てに係る制御を行う制御部50と、を備え、制御部50は、複数のノズルNから記録媒体Mに対してインクを吐出させて当該記録媒体M上に検出パターンBを形成させ、記録媒体Mの読取結果における検出パターンBの各部の濃度の、所定の基準濃度との差分に基づいて、複数のノズルNの各々からのインクの吐き捨て量を定める。このように、検出パターンBの濃度を用いる方法によっても、各ノズルNについての適切なインクの吐き捨て量を簡易に決定することができる。また、この方法によれば、読取部26による撮像データの濃度(階調)の情報をそのまま用いて簡易に吐き捨て量を定めることができる。
【0152】
また、本実施形態に係る吐き捨て量の決定方法は、複数のノズルNから記録媒体Mに対してインクを吐出させて当該記録媒体M上に所定の検出パターンBを形成させるステップと、記録媒体Mの読取結果における検出パターンBの各部の、所定の基準位置からの位置ずれ量Dに基づいて、複数のノズルNの各々からのインクの吐き捨て量を定めるステップと、を含む。このような方法によれば、各ノズルNについての適切なインクの吐き捨て量を簡易に決定することができる。
【0153】
また、変形例4に係る吐き捨て量の決定方法は、
複数のノズルNから記録媒体Mに対してインクを吐出させて当該記録媒体M上に所定の検出パターンBを形成させるステップと、記録媒体Mの読取結果における検出パターンBの各部の濃度の、所定の基準濃度との差分に基づいて、複数のノズルNの各々からのインクの吐き捨て量を定めステップと、を含む。このような方法によれば、各ノズルNについての適切なインクの吐き捨て量を簡易に決定することができる。
【0154】
また、本実施形態に係るプログラム531は、インクジェット記録装置1に設けられたコンピューターを、複数のノズルNからのインクの吐き捨てに係る制御を行う制御手段として機能させ、当該制御手段は、複数のノズルNから記録媒体Mに対してインクを吐出させて当該記録媒体M上に所定の検出パターンBを形成させ、記録媒体Mの読取結果における検出パターンBの各部の、所定の基準位置からの位置ずれ量Dに基づいて、複数のノズルNの各々からのインクの吐き捨て量を定める。このようなプログラム531によりインクジェット記録装置1を動作させることで、各ノズルNについての適切なインクの吐き捨て量を簡易に決定することができる。
【0155】
また、変形例4に係るプログラム531は、インクジェット記録装置1に設けられたコンピューターとしての制御部50を、複数のノズルNからのインクの吐き捨てに係る制御を行う制御手段として機能させ、当該制御手段は、複数のノズルNから記録媒体Mに対してインクを吐出させて当該記録媒体M上に所定の検出パターンBを形成させ、記録媒体Mの読取結果における検出パターンBの各部の濃度の、所定の基準濃度との差分に基づいて、複数のノズルNの各々からのインクの吐き捨て量を定める、プログラム。このようなプログラム531によりインクジェット記録装置1を動作させることで、各ノズルNについての適切なインクの吐き捨て量を簡易に決定することができる。
【0156】
なお、本発明は、上記実施形態及び各変形例に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、検出パターンBは、ライン状のものに限られない。例えば、幅方向の位置が隣り合うノズルNから吐出されたインクが、記録媒体M上で搬送方向に分離して着弾するようなパターンであってもよい。これによれば、各ノズルNの着弾位置ずれDを別個に特定することができる。
【0157】
また、上記実施形態では、搬送ドラム211により記録媒体Mを搬送する例を用いて説明したが、これに限定する趣旨ではない。例えば、2以上のローラーに支持されローラーの回転に応じて移動する搬送ベルトにより記録媒体Mを搬送してもよい。
【0158】
また、上記実施形態では、シングルパス形式のインクジェット記録装置1を例に挙げて説明したが、インクジェットヘッドを走査させながら画像の記録を行うインクジェット記録装置に本発明を適用してもよい。この場合には、インクジェットヘッドの走査方向が「移動方向」に対応する。
【0159】
また、上記実施形態では、常温でゲル状であり加熱されることによりゾル状となるインクをゾル状に加熱して吐出するインクジェット記録装置1を例に説明したが、これに限定する趣旨ではなく、常温でゾル状又は液体であるインクを含む種々の公知のインクを用いてもよい。
【0160】
また、上記実施形態では、インクジェット記録装置1が読取部26を備える例を用いて説明したが、これに代えて、インクジェット記録装置1の外部に別個に設けられた画像読取装置によりテストチャート60の読み取りを行ってもよい。
【0161】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0162】
1 インクジェット記録装置
10 給紙部
20 画像形成部
21 搬送部(移動部)
211 搬送ドラム
22 受け渡しユニット
23 加熱部
24 ヘッドユニット
241 インクジェットヘッド(インク吐出部)
242 記録ヘッド駆動部
25 定着部
26 読取部
27 デリバリー部
30 排紙部
41 搬送駆動部
42 メンテナンス部
43 通信部
50 制御部(制御手段)
51 CPU
52 RAM
53 ROM
531 プログラム
54 記憶部
541 吐き捨て画像データ
542 吐き捨てプロファイルデータ(吐き捨て量情報)
543 吐き捨て量テーブル
60 テストチャート
61 基準直線
70 吐き捨てパターン
80 バス
A、A1~A4 ベタパターン
B、B1~B4 検出パターン
D 位置ずれ量
In インク
M 記録媒体
Ma 先端
N ノズル