(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】捺染用インクジェットインク、捺染用インクジェットインクセット、および画像形成方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20241126BHJP
D06P 5/30 20060101ALI20241126BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241126BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C09D11/30
D06P5/30
B41M5/00 120
B41M5/00 114
B41J2/01 501
(21)【出願番号】P 2020169160
(22)【出願日】2020-10-06
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛久 正幸
(72)【発明者】
【氏名】森 恒
(72)【発明者】
【氏名】青山 亮
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/097061(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/110744(WO,A1)
【文献】特開2016-138343(JP,A)
【文献】特開2009-227895(JP,A)
【文献】特開2010-023362(JP,A)
【文献】国際公開第2015/137497(WO,A1)
【文献】特開2013-216996(JP,A)
【文献】特開2017-110097(JP,A)
【文献】国際公開第2009/104547(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41M 5/00
C09D 11/00-13/00
D06P 1/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性染料、2種類以上の有機溶剤および水を含有する捺染用インクジェットインクであって、
要件(1)~(4)をすべて充足する、捺染用インクジェットインク。
(1)前記捺染用インクジェットインクの全質量に対する、沸点が240℃以上である有機溶剤の比率が、3質量%以上10質量%以下である
(2)質量基準による、前記2種類以上の有機溶剤を合計した含有量は、前記水の含有量よりも多い
(3)前記捺染用インクジェットインクの25℃における表面張力が38mN/m以上55mN/m以下である
(4)前記捺染用インクジェットインクの25℃における粘度が10mPa・s以上14mPa・s以下である
【請求項2】
前記2種類以上の有機溶剤のうち、質量基準による含有量が最も多い有機溶剤は、25℃における表面張力が41mN/m以上50mN/m以下である有機溶剤である、請求項1に記載の捺染用インクジェットインク。
【請求項3】
前記2種類以上の有機溶剤のうち、質量基準による含有量が最も多い有機溶剤は、グリコールである、請求項1または2に記載の捺染用インクジェットインク。
【請求項4】
前記水溶性染料の種類が互いに異なる、2種類以上の捺染用インクジェットインクを含む捺染用インクジェットインクセットであって、
請求項1~3のいずれか1項に記載の捺染用インクジェットインクを含む、捺染用インクジェットインクセット。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の捺染用インクジェットインクをインクジェットヘッドから吐出して、布帛に着弾させる工程を含む、画像形成方法。
【請求項6】
前記インクジェットヘッドからの吐出時の周波数が30kHz以上である、請求項5に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捺染用インクジェットインク、捺染用インクジェットインクセット、および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式による布帛の捺染は、インクをインクジェットヘッドから吐出して布帛に着弾させる工程、インクが着弾された布帛を加熱等してインクが含有する染料を布帛の繊維に定着させる工程、および蒸気が付与された布帛を洗浄して定着されなかった染料を除去する工程などを含んで行われる。
【0003】
インクジェット捺染には、捺染された布帛の用途によって、様々な特性が要求されることがある。たとえば、装飾用の布類などには、裏側が見えたときにも十分な見栄えを保てるように、表裏両面が十分に発色するように捺染することが要求されることがある。そのため、裏面まで十分に染色して、表裏の濃度差を小さくできるような捺染方法が検討されている。
【0004】
このような方法として、特許文献1には、インクを付与された布帛を100℃以上で加熱圧着しながら、液体成分は透過しないが水蒸気のみを透過する新聞紙やガス透過性シートによって水蒸気のみを布帛に付与する方法が記載されている。
【0005】
特許文献2には、布帛へのインク組成物の浸透を調整する浸透液を、インク組成物とともに布帛に付与し、インク組成物と浸透液とを同時に加熱してインク中の染料を裏側まで十分に浸透させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-293272号公報
【文献】特開2016-138343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2に記載の技術は、いずれも、布帛へのインクの浸透性を高めることにより、布帛の裏側まで十分に染色させようとするものである。しかし、本発明者らの知見によると、布帛の裏側まで十分に染色させることと、裏側の発色濃度の増加分から予測されるよりも大きく表側の発色濃度が低下してしまうことがあった。
【0008】
また、本発明者らの知見によると、これらの方法で布帛の裏側まで十分に染色させようとすると、インクの滲みが発生しやすくなることがあった。
【0009】
また、これらの方法はいずれも、画像形成装置の構成の大きな変更が必要だったり、インク以外の浸透液の使用が必要だったりして、実用が容易ではない。これに対し、インクの組成を変更することにより布帛の裏側まで十分に染色されるようにすれば、従来の画像形成装置への応用が容易であり、実用性が高い。
【0010】
前記の事情に鑑みて、本発明は、布帛の表面および裏面の両方をいずれも十分に発色させて、布帛の表裏の濃度差を小さくしつつ、表側の発色濃度の低下および滲みの発生を抑制できる捺染用インクジェットインクおよびこれを含む捺染用インクジェットインクセット、ならびに当該捺染用インクジェットインクを用いる画像形成方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態は、水溶性染料、2種類以上の有機溶剤および水を含有し、要件(1)~(4)をすべて充足する、捺染用インクジェットインクに関する。
(1)前記捺染用インクジェットインクの全質量に対する、沸点が240℃以上である有機溶剤の比率が、3質量%以上10質量%以下である
(2)質量基準による、前記2種類以上の有機溶剤を合計した含有量は、前記水の含有量よりも多い
(3)前記捺染用インクの25℃における表面張力が38mN/m以上55mN/m以下である
(4)前記捺染用インクの25℃における粘度が10mPa・s以上14mPa・s以下である
【0012】
また、上記課題を解決するための本発明の他の実施形態は、水溶性染料の種類が互いに異なる2種類以上の上記捺染用インクジェットインクを含む、捺染用インクジェットインクセットに関する。
【0013】
また、上記課題を解決するための本発明の他の実施形態は、上記捺染用インクジェットインクをインクジェットヘッドから吐出して、布帛に着弾させる工程を含む、画像形成方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、布帛の表面および裏面の両方をいずれも十分に発色させて、布帛の表裏の濃度差を小さくしつつ、表側の発色濃度の低下および滲みの発生を抑制できる捺染用インクジェットインクおよびこれを含む捺染用インクジェットインクセット、ならびに当該捺染用インクジェットインクを用いる画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、インクジェット捺染装置の構成の一例を示す部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.捺染用インクジェットインク
本発明の一実施形態は、水溶性染料、2種類以上の有機溶剤および水を含有し、以下の(1)~(4)をすべて充足する、捺染用インクジェットインクに関する。
(1)上記捺染用インクジェットインクの全質量に対する、沸点が240℃以上である有機溶剤の比率が、3質量%以上10質量%以下である
(2)質量基準による、上記2種類以上の有機溶剤を合計した含有量は、上記水の含有量よりも多い
(3)上記捺染用インクジェットインクの25℃における表面張力が38mN/m以上55mN/m以下である
(4)上記捺染用インクジェットインクの25℃における粘度が10mPa・s以上14mPa・s以下である
【0017】
本発明者らの新たな知見によれば、布帛の裏側へのインクの浸透性を高めようとすると、布帛の内部に浸透させたインクが、その後、糸間の微細な界面や糸の内部の微細な空間などの、布帛の外部から視認できない部位にインクが入り込んでいってしまう。そのため、布帛の裏側までインクを十分に到達させて布帛の裏側の発色濃度を高めることはできるものの、上記視認できない部位に入り込んだインクによる表面の発色濃度の損失も大きくなり、表側の発色濃度が予測以上に低下してしまうと考えられる。また、布帛の裏側へのインクの浸透性を高めようとすると、布帛への付与後に時間がたつにつれて布帛の表面方向にインクが広がっていったり、糸の内部に浸透したインクが糸の内部を繊維の配向方向に沿って拡散したりすることによる、インクの滲みが生じやすくなる。
【0018】
インクの組成によって布帛の裏側へのインクの浸透性を高めようとするならば、インクの表面張力が低くなるようにインクの組成を変更すればよい。しかし、上記視認できない部位に入り込んだインクによる表面の発色濃度の損失や、布帛の表面方向にインクが広がったり糸の内部にインクが浸透して糸の内部を拡散したりすることによる滲みの発生は、インクの表面張力を低くしたときにも生じやすい。
【0019】
そこで、本実施形態では、有機溶媒の量を多くして布帛の内部へのインクの拡散速度を高め、布帛の裏側までインクを到達させやすくする。つまり、有機溶媒を多く含むインクは、相対的に水が少なくなって有機溶媒の移動距離が短くなるため、布帛に付与された後に有機溶媒が短時間でインク中を拡散する。有機溶媒は水より表面張力が低く界面活性剤的に機能する結果、布帛に付与された後の表面張力が極めて短時間で低下する。これにより、本実施形態のインクは、布帛への付与直後の表面張力が、従来のインクよりも低くなる。そのため、本実施形態のインクは、布帛への付与後すぐに布帛の内部に浸透していきやすく、これにより布帛の裏側まで十分に到達して、布帛の裏面も十分に発色させることができると考えられる。
【0020】
一方で、本実施形態では、上記低下した後のインクの表面張力を、比較的高い範囲にとどめる。これにより、布帛の内部に浸透したインクの、上記視認できない部位への入り込みを抑制して、表面の発色濃度の損失も抑制することができると考えられる。また、これにより、布帛に付与された後に布帛の表面方向にインクが広がることによる、インクの滲みも抑制できると考えらえれる。さらには、これにより、糸の内部に浸透したインクが糸の内部を繊維の配向方向に沿って拡散することによる、インクの滲みも抑制できると考えらえれる。
【0021】
本実施形態に関するインクは、上記思想に基づき、上記(1)~(4)のすべてを充足することで、布帛の表裏の濃度差を小さくしつつ、表側の発色濃度の低下および滲みの発生を抑制しようとするものである。以下、(1)~(4)の各要件について具体的に説明する。
【0022】
本実施形態に関するインクは、(1)捺染用インクジェットインクの全質量に対する、沸点が240℃以上である有機溶剤(以下、単に「高沸点溶剤」ともいう。)の比率が、3質量%以上10質量%以下である。高沸点溶剤は、インクの射出性を高め、かつインクの表面張力の低下速度を速めて布帛の裏面まで十分に発色させやすい。これらの効果を十分に得るため、高沸点溶剤の上記比率は、3質量%以上とする。一方で、高沸点溶媒の比率が過剰であると、インクの乾燥性が低下し、あるいは乾燥後に布帛に残存した有機溶媒が染料を移動させることによる、裏抜け(裏面の発色濃度の過剰な高まり)や、表面の発色濃度の低下や、滲みの発生などが生じやすい。これらを抑制するため、高沸点溶剤の上記比率は、10質量%以下とする。これらのバランスをとる観点から、上記高沸点溶剤の比率は、3質量%以上8質量%以下であることが好ましく、3質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
また、本実施形態に関するインクは、(2)質量基準による、有機溶剤の合計含有量が、水の含有量よりも多い。上記説明したように、水に対する有機溶剤の相対量を多くすることで、布帛に付与された直後のインクの表面張力を低下させて、布帛の裏側まで十分にインクを浸透させ、布帛の裏側まで十分に発色させることができる。また、速い速度で表面張力を一定範囲に制御することにより、糸表面に沿った比較的大きな空隙への浸透が優先され、糸間の微細な界面や糸の内部の微細な空間などへの浸透は抑制されるので、上記視認できない部位に入り込んだインクによる表面の発色濃度の損失や、布帛への付与後に時間が経つにつれて布帛の表面方向にインクが広がったり、糸の内部にインクが浸透して糸の内部を拡散したりすることによる滲みの発生を抑制することができる。なお、インクの表面張力を下げすぎないように制御しやすい観点から水は必須成分であり、有機溶剤の合計含有量と水の含有量との比率は、(有機溶剤:水)=(95:5)~(51:49)であることが好ましく、(70:30)~(55:45)であることがより好ましい。
【0024】
また、本実施形態に関するインクは、(3)25℃における表面張力が38mN/m以上55mN/m以下である。上記表面張力が38mN/m以上であると、上記視認できない部位へのインクの入り込みや、布帛への付与後に布帛の表面方向へのインクの広がりを抑制して、表面の発色濃度の損失や、滲みの発生を抑制することができる。上記表面張力が55mN/m以下であると、布帛への付与直後の表面張力が高すぎることによる、インクの浸透不足を抑制して、布帛の裏面を十分に発色させることができる。これらのバランスをとる観点から、上記インクの表面張力は、40mN/m以上52mN/m以下であることが好ましく、43mN/m以上50mN/m以下であることがより好ましい。
【0025】
また、本実施形態に関するインクは、(4)25℃における粘度が10mPa・s以上14mPa・s以下である。上記粘度が10mPa・s以上であると、布帛への付与後に布帛の表面方向へのインクが広がったり、糸の内部にインクが浸透して糸の内部を拡散したりすることによる滲みの発生を抑制することができる。上記粘度が15mPa・s以下であると、布帛の内部にインクを十分に浸透させて、布帛の裏側まで十分に発色させることができ、かつドットの広がり不足を抑制することができる。これらのバランスをとる観点から、上記インクの粘度は、10mPa・s以上13mPa・s以下であることが好ましく、11mPa・s以上13mPa・s以下であることがより好ましい。
【0026】
以下、本実施形態に関するインクについて、さらに詳しく説明する
【0027】
1-1.水溶性染料
水溶性染料は、水に可溶な染料である。たとえば、水溶性染料は、25℃における水への溶解度が、1g/L以上である染料とすることができる。水溶性染料の例には、反応染料、酸性染料、塩基性染料および直接染料などが含まれる。これらのうち、反応染料、酸性染料および直接染料が好ましく、反応染料がより好ましい。
【0028】
イエローの反応染料の例には、C.I.Reactive Yellow 2、C.I.Reactive Yellow 3、C.I.Reactive Yellow 7、C.I.Reactive Yellow 15、C.I.Reactive Yellow 17、C.I.Reactive Yellow 18、C.I.Reactive Yellow 22、C.I.Reactive Yellow 23、C.I.Reactive Yellow 24、C.I.Reactive Yellow 25、C.I.Reactive Yellow 27、C.I.Reactive Yellow 37、C.I.Reactive Yellow 39、C.I.Reactive Yellow 42、C.I.Reactive Yellow 57、C.I.Reactive Yellow 69、C.I.Reactive Yellow 76、C.I.Reactive Yellow 81、C.I.Reactive Yellow 84、C.I.Reactive Yellow 85、C.I.Reactive Yellow 86、C.I.Reactive Yellow 87、C.I.Reactive Yellow 92、C.I.Reactive Yellow 95、C.I.Reactive Yellow 102、C.I.Reactive Yellow 105、C.I.Reactive Yellow 111、C.I.Reactive Yellow 125、C.I.Reactive Yellow 135、C.I.Reactive Yellow 136、C.I.Reactive Yellow 137、C.I.Reactive Yellow 142、C.I.Reactive Yellow 143、C.I.Reactive Yellow 145、C.I.Reactive Yellow 151、C.I.Reactive Yellow 160、C.I.Reactive Yellow 161、C.I.Reactive Yellow 165、C.I.Reactive Yellow 167、C.I.Reactive Yellow 168、C.I.Reactive Yellow 175、およびC.I.Reactive Yellow 176などが含まれる。
【0029】
オレンジの反応染料の例には、C.I.Reactive Orange1、C.I.Reactive Orange 4、C.I.Reactive Orange 5、C.I.Reactive Orange 7、C.I.Reactive Orange 11、C.I.Reactive Orange 12、C.I.Reactive Orange 13、C.I.Reactive Orange 15、C.I.Reactive Orange 16、C.I.Reactive Orange 20、C.I.Reactive Orange 30、C.I.Reactive Orange 35、C.I.Reactive Orange 56、C.I.Reactive Orange 64、C.I.Reactive Orange 67、C.I.Reactive Orange 69、C.I.Reactive Orange 70、C.I.Reactive Orange 72、C.I.Reactive Orange 74、C.I.Reactive Orange 82、C.I.Reactive Orange 84、C.I.Reactive Orange 86、C.I.Reactive Orange 87、C.I.Reactive Orange 91、C.I.Reactive Orange 92、C.I.Reactive Orange 93、C.I.Reactive Orange 95、およびC.I.Reactive Orange 107などが含まれる。
【0030】
レッドの反応染料の例には、C.I.Reactive Red 2、C.I.Reactive Red 3、C.I.Reactive Red 3:1、C.I.Reactive Red 5、C.I.Reactive Red 8、C.I.Reactive Red 11、C.I.Reactive Red 21、C.I.Reactive Red 22、C.I.Reactive Red 23、C.I.Reactive Red 24、C.I.Reactive Red 28、C.I.Reactive Red 29、C.I.Reactive Red 31、C.I.Reactive Red 33、C.I.Reactive Red 35、C.I.Reactive Red 43、C.I.Reactive Red 45、C.I.Reactive Red 49、C.I.Reactive Red 55、C.I.Reactive Red 56、C.I.Reactive Red 58、C.I.Reactive Red 65、C.I.Reactive Red 66、C.I.Reactive Red 78、C.I.Reactive Red 83、C.I.Reactive Red 84、C.I.Reactive Red 106、C.I.Reactive Red 111、C.I.Reactive Red 112、C.I.Reactive Red 113、C.I.Reactive Red 114、C.I.Reactive Red 116、C.I.Reactive Red 120、C.I.Reactive Red 123、C.I.Reactive Red 124、C.I.Reactive Red 128、C.I.Reactive Red 130、C.I.Reactive Red 136、C.I.Reactive Red 141、C.I.Reactive Red 147、C.I.Reactive Red 158、C.I.Reactive Red 159、C.I.Reactive Red 171、C.I.Reactive Red 174、C.I.Reactive Red 180、C.I.Reactive Red 183、C.I.Reactive Red 184、C.I.Reactive Red 187、C.I.Reactive Red 190、C.I.Reactive Red 193、C.I.Reactive Red 194、C.I.Reactive Red 195、C.I.Reactive Red 198、C.I.Reactive Red 218、C.I.Reactive Red 220、C.I.Reactive Red 222、C.I.Reactive Red 223、C.I.Reactive Red 226、C.I.Reactive Red 228、およびC.I.Reactive Red 235などが含まれる。
【0031】
バイオレットの反応染料の例には、C.I.Reactive Violet 1、C.I.Reactive Violet 2、C.I.Reactive Violet 4、C.I.Reactive Violet 5、C.I.Reactive Violet 6、C.I.Reactive Violet 22、C.I.Reactive Violet 23、C.I.Reactive Violet 33、C.I.Reactive Violet 36、およびC.I.Reactive Violet 38などが含まれる。
【0032】
ブルーの反応染料の例には、C.I.Reactive Blue 2、C.I.Reactive Blue 3、C.I.Reactive Blue 4、C.I.Reactive Blue 7、C.I.Reactive Blue 13、C.I.Reactive Blue 14、C.I.Reactive Blue 15、C.I.Reactive Blue 19、C.I.Reactive Blue 21、C.I.Reactive Blue 25、C.I.Reactive Blue 27、C.I.Reactive Blue 28、C.I.Reactive Blue 29、C.I.Reactive Blue 38、C.I.Reactive Blue 39、C.I.Reactive Blue 41、C.I.Reactive Blue 49、C.I.Reactive Blue 50、C.I.Reactive Blue 52、C.I.Reactive Blue 63、C.I.Reactive Blue 69、C.I.Reactive Blue 71、C.I.Reactive Blue 72、C.I.Reactive Blue 77、C.I.Reactive Blue 79、C.I.Reactive Blue 89、C.I.Reactive Blue 104、C.I.Reactive Blue 109、C.I.Reactive Blue 112、C.I.Reactive Blue 113、C.I.Reactive Blue 114、C.I.Reactive Blue 116、C.I.Reactive Blue 119、C.I.Reactive Blue 120、C.I.Reactive Blue 122、C.I.Reactive Blue 137、C.I.Reactive Blue 140、C.I.Reactive Blue 143、C.I.Reactive Blue 147、C.I.Reactive Blue 160、C.I.Reactive Blue 161、C.I.Reactive Blue 162、C.I.Reactive Blue 163、C.I.Reactive Blue 168、C.I.Reactive Blue 171、C.I.Reactive Blue 176、C.I.Reactive Blue 182、C.I.Reactive Blue 184、C.I.Reactive Blue 191、C.I.Reactive Blue 194、C.I.Reactive Blue 195、C.I.Reactive Blue 198、C.I.Reactive Blue 203、C.I.Reactive Blue 204、C.I.Reactive Blue 207、C.I.Reactive Blue 209、C.I.Reactive Blue 211、C.I.Reactive Blue 214、C.I.Reactive Blue 220、C.I.Reactive Blue 221、C.I.Reactive Blue 222、C.I.Reactive Blue 231、C.I.Reactive Blue 235、およびC.I.Reactive Blue 236などが含まれる。
【0033】
グリーンの反応染料の例には、C.I.Reactive Green 8、C.I.Reactive Green 12、C.I.Reactive Green 15、C.I.Reactive Green 19、およびC.I.Reactive Green 21などが含まれる。
【0034】
ブラウンの反応染料の例には、C.I.Reactive Brown 2、C.I.Reactive Brown 7、C.I.Reactive Brown 9、C.I.Reactive Brown 10、C.I.Reactive Brown 11、C.I.Reactive Brown 17、C.I.Reactive Brown 18、C.I.Reactive Brown 19、C.I.Reactive Brown 21、C.I.Reactive Brown 23、C.I.Reactive Brown 31、C.I.Reactive Brown 37、C.I.Reactive Brown 43、およびC.I.Reactive Brown 46などが含まれる。
【0035】
ブラックの反応染料の例には、C.I.リアクティブブラック5、C.I.Reactive Black 8、C.I.Reactive Black 13、C.I.Reactive Black 14、C.I.Reactive Black 31、C.I.Reactive Black 34、およびC.I.Reactive Black 39などが含まれる。
【0036】
イエローの酸性染料の例には、C.I.Acid Yellow 1、C.I.Acid Yellow 3、C.I.Acid Yellow 11、C.I.Acid Yellow 17、C.I.Acid Yellow 18、C.I.Acid Yellow 19、C.I.Acid Yellow 23、C.I.Acid Yellow 25、C.I.Acid Yellow 36、C.I.Acid Yellow 38、C.I.Acid Yellow 40、C.I.Acid Yellow 42、C.I.Acid Yellow 44、C.I.Acid Yellow 49、C.I.Acid Yellow 59、C.I.Acid Yellow 61、C.I.Acid Yellow 65、C.I.Acid Yellow 67、C.I.Acid Yellow 72、C.I.Acid Yellow 73、C.I.Acid Yellow 79、C.I.Acid Yellow 99、C.I.Acid Yellow 104、C.I.Acid Yellow 110、C.I.Acid Yellow 114、C.I.Acid Yellow 116、C.I.Acid Yellow 118、C.I.Acid Yellow 121、C.I.Acid Yellow 127、C.I.Acid Yellow 129、C.I.Acid Yellow 135、C.I.Acid Yellow 137、C.I.Acid Yellow 141、C.I.Acid Yellow 143、C.I.Acid Yellow 151、C.I.Acid Yellow 155、C.I.Acid Yellow 158、C.I.Acid Yellow 159、C.I.Acid Yellow 169、C.I.Acid Yellow 176、C.I.Acid Yellow 184、C.I.Acid Yellow 193、C.I.Acid Yellow 200、C.I.Acid Yellow 204、C.I.Acid Yellow 207、C.I.Acid Yellow 215、C.I.Acid Yellow 219、C.I.Acid Yellow 220、C.I.Acid Yellow 230、C.I.Acid Yellow 232、C.I.Acid Yellow 235、C.I.Acid Yellow 241、C.I.Acid Yellow 242、およびC.I.Acid Yellow 246などが含まれる。
【0037】
オレンジの酸性染料の例には、C.I,Acid Orange 3、C.I.Acid Orange 7、C.I.Acid Orange 8、C.I.Acid Orange 10、C.I.Acid Orange 19、C.I.Acid Orange 22,24、C.I.Acid Orange 51、C.I.Acid Orange 56、C.I.Acid Orange 67、C.I.Acid Orange 74、C.I.Acid Orange 80、C.I.Acid Orange 86、C.I.Acid Orange 87、C.I.Acid Orange 88、C.I.Acid Orange 89、C.I.Acid Orange 94、C.I.Acid Orange 95、C.I.Acid Orange 107、C.I.Acid Orange 108、C.I.Acid Orange 116、C.I.Acid Orange 122、C.I.Acid Orange 127、C.I.Acid Orange 140、C.I.Acid Orange 142、C.I.Acid Orange 144、C.I.Acid Orange 149、C.I.Acid Orange 152、C.I.Acid Orange 156、C.I.Acid Orange 162、C.I.Acid Orange 166、C.I.Acid Orange 168、およびC.I.Acid Orangeなどが含まれる。
【0038】
レッドの酸性染料の例には、C.I. Acid Red 88、C.I.Acid Red 97、C.I.Acid Red 106、C.I.Acid Red 111、C.I.Acid Red 114、C.I.Acid Red 118、C.I.Acid Red 119、C.I.Acid Red 127、C.I.Acid Red 131、C.I.Acid Red 138、C.I.Acid Red 143、C.I.Acid Red 145、C.I.Acid Red 151、C.I.Acid Red 183、C.I.Acid Red 195、C.I.Acid Red 198、C.I.Acid Red 211、C.I.Acid Red 215、C.I.Acid Red 217、C.I.Acid Red 225、C.I.Acid Red 226、C.I.Acid Red 249、C.I.Acid Red 251、C.I.Acid Red 254、C.I.Acid Red 256、C.I.Acid Red 257、C.I.Acid Red 260、C.I.Acid Red 261、C.I.Acid Red 265、C.I.Acid Red 266、C.I.Acid Red 274、C.I.Acid Red 276、C.I.Acid Red 277、C.I.Acid Red 289、C.I.Acid Red 296、C.I.Acid Red 299、C.I.Acid Red 315、C.I.Acid Red 318、C.I.Acid Red 336、C.I.Acid Red 337、C.I.Acid Red 357、C.I.Acid Red 359、C.I.Acid Red 361、C.I.Acid Red 362、C.I.Acid Red 364、C.I.Acid Red 366、C.I.Acid Red 399、C.I.Acid Red 407、C.I.Acid Red 415、およびC.I.Acid Red 447などが含まれる。
【0039】
バイオレットの酸性染料の例には、17、C.I.Acid Violet 19、C.I.Acid Violet 21、C.I.Acid Violet 42、C.I.Acid Violet 43、C.I.Acid Violet 47、C.I.Acid Violet 48、C.I.Acid Violet 49、C.I.Acid Violet 54、C.I.Acid Violet 66、C.I.Acid Violet 78、C.I.Acid Violet 90、C.I.Acid Violet 97、C.I.Acid Violet 102、C.I.Acid Violet 109、およびC.I.Acid Violet 126などが含まれる。
【0040】
ブルーの酸性染料の例には、C.I. Acid Blue 1、C.I.Acid Blue 7、C.I.Acid Blue 9、C.I.Acid Blue 15、C.I.Acid Blue 23、C.I.Acid Blue 25、C.I.Acid Blue 40、C.I.Acid Blue 62、C.I.Acid Blue 72、C.I.Acid Blue 74、C.I.Acid Blue 80、C.I.Acid Blue 83、C.I.Acid Blue 90、C.I.Acid Blue 92、C.I.Acid Blue 103、C.I.Acid Blue 104、C.I.Acid Blue 112、C.I.Acid Blue 113、C.I.Acid Blue 114、C.I.Acid Blue 120、C.I.Acid Blue 127、C.I.Acid Blue 128、C.I.Acid Blue 129、C.I.Acid Blue 138、C.I.Acid Blue 140、C.I.Acid Blue 142、C.I.Acid Blue 156、C.I.Acid Blue 158、C.I.Acid Blue 171、C.I.Acid Blue 182、C.I.Acid Blue 185、C.I.Acid Blue 193、C.I.Acid Blue 199、C.I.Acid Blue 201、C.I.Acid Blue 203、C.I.Acid Blue 204、C.I.Acid Blue 205、C.I.Acid Blue 207、C.I.Acid Blue 209、C.I.Acid Blue 220、C.I.Acid Blue 221、C.I.Acid Blue 224、C.I.Acid Blue 225、C.I.Acid Blue 229、C.I.Acid Blue 230、C.I.Acid Blue 239、C.I.Acid Blue 249、C.I.Acid Blue 258、C.I.Acid Blue 260、C.I.Acid Blue 264、C.I.Acid Blue 278、C.I.Acid Blue 279、C.I.Acid Blue 280、C.I.Acid Blue 284、C.I.Acid Blue 290、C.I.Acid Blue 296、C.I.Acid Blue 298、C.I.Acid Blue 300、C.I.Acid Blue 317、C.I.Acid Blue 324、C.I.Acid Blue 333、C.I.Acid Blue 335、C.I.Acid Blue 338、C.I.Acid Blue 342、およびC.I.Acid Blue 350などが含まれる。
【0041】
グリーンの酸性染料の例には、C.I. Acid Green 9、C.I.Acid Green 12、C.I.Acid Green 16、C.I.Acid Green 19、C.I.Acid Green 20、C.I.Acid Green 25、C.I.Acid Green 27、C.I.Acid Green 28、C.I.Acid Green 40、C.I.Acid Green 43、C.I.Acid Green 56、C.I.Acid Green 73、C.I.Acid Green 81、C.I.Acid Green 84、C.I.Acid Green 104、C.I.Acid Green 108、およびC.I.Acid Green 109などが含まれる。
【0042】
ブラウンの酸性染料の例には、C.I.Acid Brown 2、C.I.Acid Brown 4、C.I.Acid Brown 13、C.I.Acid Brown 14、C.I.Acid Brown 19、C.I.Acid Brown 28、C.I.Acid Brown 44、C.I.Acid Brown 123、C.I.Acid Brown 224、C.I.Acid Brown 226、C.I.Acid Brown 227、C.I.Acid Brown 248、C.I.Acid Brown 282、C.I.Acid Brown 283、C.I.Acid Brown 289、C.I.Acid Brown 294、C.I.Acid Brown 297、C.I.Acid Brown 298、C.I.Acid Brown 301、C.I.Acid Brown 355、C.I.Acid Brown 357、およびC.I.Acid Brown 413などが含まれる。
【0043】
ブラックの酸性染料の例には、C.I.Acid Black 1、C.I.Acid Black 2、C.I.Acid Black 3、C.I.Acid Black 24、C.I.Acid Black 26、C.I.Acid Black 31、C.I.Acid Black 50、C.I.Acid Black 52、C.I.Acid Black 52:1、C.I.Acid Black 58、C.I.Acid Black 60、C.I.Acid Black 63、C.I.Acid Black 107、C.I.Acid Black 109、C.I.Acid Black 112、C.I.Acid Black 119、C.I.Acid Black 132、C.I.Acid Black 140、C.I.Acid Black 155、C.I.Acid Black 172、C.I.Acid Black 187、C.I.Acid Black 188、C.I.Acid Black 194、C.I.Acid Black 207、およびC.I.Acid Black 222などが含まれる。
【0044】
イエローの直接染料の例には、C.I. Direct Yellow 8、C.I. Direct Yellow 9、C.I. Direct Yellow 10、C.I. Direct Yellow 11、C.I. Direct Yellow 12、C.I. Direct Yellow 22、C.I. Direct Yellow 27、C.I. Direct Yellow 28、C.I. Direct Yellow 39、C.I. Direct Yellow 44、C.I. Direct Yellow 50、C.I. Direct Yellow 58、C.I. Direct Yellow 79、C.I. Direct Yellow 86、C.I. Direct Yellow 87、C.I. Direct Yellow 98、C.I. Direct Yellow 105、C.I. Direct Yellow 106、C.I. Direct Yellow 130、C.I. Direct Yellow 132、C.I. Direct Yellow 137、C.I. Direct Yellow 142、C.I. Direct Yellow 147、およびC.I. Direct Yellow 153などが含まれる。
【0045】
オレンジの直接染料の例には、C.I. Direct Orange 6、C.I. Direct Orange 26、C.I. Direct Orange 27、C.I. Direct Orange 34、C.I. Direct Orange 39、C.I. Direct Orange 40、C.I. Direct Orange 46、C.I. Direct Orange 102、C.I. Direct Orange 105、C.I. Direct Orange 107、およびC.I. Direct Orange 118などが含まれる。
【0046】
レッドの直接染料の例には、C.I. Direct Red 2、C.I. Direct Red 4、C.I. Direct Red 9、C.I. Direct Red 23、C.I. Direct Red 24、C.I. Direct Red 31、C.I. Direct Red 54、C.I. Direct Red 62、C.I. Direct Red 69、C.I. Direct Red 79、C.I. Direct Red 80、C.I. Direct Red 81、C.I. Direct Red 83、C.I. Direct Red 84、C.I. Direct Red 89、C.I. Direct Red 95、C.I. Direct Red 212、C.I. Direct Red 224、C.I. Direct Red 225、C.I. Direct Red 226、C.I. Direct Red 227、C.I. Direct Red 239、C.I. Direct Red 242、C.I. Direct Red 243、およびC.I. Direct Red 254などが含まれる。
【0047】
バイオレットの直接染料の例には、C.I. Direct Violet 9、C.I. Direct Violet 35、C.I. Direct Violet 51、C.I. Direct Violet 66、C.I. Direct Violet 94、およびC.I. Direct Violet 95などが含まれる。
【0048】
ブルーの直接染料の例には、C.I. Direct Blue 1、C.I. Direct Blue 15、C.I. Direct Blue 71、C.I. Direct Blue 76、C.I. Direct Blue 77、C.I. Direct Blue 78、C.I. Direct Blue 80、C.I. Direct Blue 86、C.I. Direct Blue 87、C.I. Direct Blue 90、C.I. Direct Blue 98、C.I. Direct Blue 106、C.I. Direct Blue 108、C.I. Direct Blue 160、C.I. Direct Blue 168、C.I. Direct Blue 189、C.I. Direct Blue 192、C.I. Direct Blue 193、C.I. Direct Blue 199、C.I. Direct Blue 200、C.I. Direct Blue 201、C.I. Direct Blue 202、C.I. Direct Blue 203、C.I. Direct Blue 218、C.I. Direct Blue 225、C.I. Direct Blue 229、C.I. Direct Blue 237、C.I. Direct Blue 244、C.I. Direct Blue 248、C.I. Direct Blue 251、C.I. Direct Blue 270、C.I. Direct Blue 273、C.I. Direct Blue 274、C.I. Direct Blue 290、およびC.I. Direct Blue 291などが含まれる。
【0049】
グリーンの直接染料の例には、C.I. Direct Green 26、C.I. Direct Green 28、C.I. Direct Green 59、C.I. Direct Green 80、およびC.I. Direct Green 85などが含まれる。
【0050】
ブラウンの直接染料の例には、C.I. Direct Brown 44、C.I. Direct Brown 106、C.I. Direct Brown 115、C.I. Direct Brown 195、C.I. Direct Brown 209、C.I. Direct Brown 210、C.I. Direct Brown 222、およびC.I. Direct Brown 223などが含まれる。
【0051】
ブラックの直接染料の例には、C.I. Direct Black 17、C.I. Direct Black 19、C.I. Direct Black 22、C.I. Direct Black 32、C.I. Direct Black 51、C.I. Direct Black 62、C.I. Direct Black 108、C.I. Direct Black 112、C.I. Direct Black 113、C.I. Direct Black 117、C.I. Direct Black 118、C.I. Direct Black 132、C.I. Direct Black 146、C.I. Direct Black 154、C.I. Direct Black 159、およびC.I. Direct Black 169などが含まれる。
【0052】
これらの水溶性染料の含有量は、インクの全質量に対して1質量%以上35質量%以下であることが好ましい。1質量%以上であると、画像の色濃度を高めやすく、35質量%以下であると、インクの吐出安定性が損なわれにくい。上記含有量は、インクの全質量に対して3質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
1-2.有機溶剤
本実施形態に関するインクは、2種類以上の有機溶剤を含む。上記有機溶剤は、水溶性有機溶剤であることが好ましい。
【0054】
水溶性有機溶剤の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノールおよびt-ブタノールを含む1価のアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、チオジグリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオールおよび1,2-ヘプタンジオールを含むグリコール、グリセリンおよび1,2,6-ヘキサントリオールを含むその他の多価アルコール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミンおよびテトラメチルプロピレンジアミンを含むアミン、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミドおよびN,N-ジメチルアセトアミドを含むアミド、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2-オキサゾリドンおよび1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを含む複素環化合物、ジメチルスルホキシドを含むスルホキシド、ならびにジエチレングリコールのアルキルエーテル、トリエチレングリコールのアルキルエーテルおよびジプロピレングリコールのアルキルエーテルを含むグリコールエーテルなどが含まれる。
【0055】
本実施形態に関するインクは、上記2種類以上の有機溶剤として、沸点が240℃以上の有機溶剤(高沸点溶剤)と、沸点が240℃未満の有機溶剤と、を含む。
【0056】
高沸点溶剤は、インクの射出性を高め、かつインクの表面張力の低下速度を速めて布帛の裏面まで十分に発色させやすい。高沸点溶剤の例には、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、およびジグリセリンなどが含まれる。
【0057】
上述したように、捺染用インクジェットインクの全質量に対する高沸点溶剤の比率は、3質量%以上10質量%以下である(要件(1))。上記比率が3質量%以上であると、インクの射出性が高まり、かつ浮薄の裏面まで十分に発色させることができる。上記比率が10質量%以下であると、インクの乾燥性が良好であり、また乾燥後に布帛に有機溶剤が残存しにくいので、裏抜けや、表面の発色濃度の低下や、滲みの発生などが生じにくい。これらのバランスをとる観点から、上記高沸点溶剤の比率は、3質量%以上8質量%以下であることが好ましく、3質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0058】
また、質量基準による、上記2種類以上の有機溶剤の合計含有量は、水の含有量よりも多い(要件(2))。有機溶剤の含有量を水の含有量よりも多くすることで、布帛に付与された直後のインクの表面張力を低下させて、布帛の裏側まで十分に発色させることができる。また、上述した視認できない部位に入り込んだインクによる表面の発色濃度の損失や、布帛への付与後に布帛の表面方向へインクが広がったり糸の内部にインクが浸透して糸の内部を拡散したりすることによる滲みの発生を抑制することができる。
【0059】
具体的には、上記2種類以上の有機溶剤の合計含有量は、インクの全質量に対して35質量%以上60質量%以下とすることができる。有機溶剤の含有量をインク全体の質量に対して35質量%以上とすることで、上述した作用による、布帛の裏側の発色性の向上、ならびに表面の発色濃度の損失および滲みの発生の抑制効果が十分に奏される。また、有機溶剤の含有量をインク全体の質量に対して60質量%以下とすることで、インクの乾燥性がより高くなり、また、乾燥後に布帛に有機溶剤が残存しくくなるため、裏抜けや、表面の発色濃度の低下や、滲みの発生などがより生じにくくなる。これらのバランスをとる観点から、上記2種類以上の有機溶剤の合計含有量は、インクの全質量に対して38質量%以上58質量%以下であることが好ましく、43質量%以上53質量%以下であることがより好ましい。
【0060】
なお、水の含有量は、インクの全質量に対して25質量%以上55質量%以下であることが好ましく、30質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、35質量%以上45質量%以下であることがさらに好ましい。
【0061】
また、上記2種類以上の有機溶剤のうち、質量基準による含有量が最も多い有機溶剤は、25℃における表面張力が41mN/m以上50mN/m以下である有機溶剤(以下、単に「高表面張力溶剤」ともいう。)であることが好ましい。このような表面張力が高い有機溶剤の量が多いと、布帛への付与後、表面張力が低下した後のインクの表面張力をより高めることができ、上述した視認できない部位に入り込んだインクによる表面の発色濃度の損失や、布帛への付与後に布帛の表面方向へインクが広がったり糸の内部にインクが浸透して糸の内部を拡散したりすることによる滲みの発生をより効果的に抑制することができる。また、これにより、インクの乾燥性をより高めることができる。
【0062】
上記高表面張力溶剤の例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、などが含まれる。これらのうち、ヘッドノズル表面の保湿や染料溶解性の観点からは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオールなどのグリコールであることが好ましい。
【0063】
なお、上記水の含有量は、3質量%以上48質量%未満であることが好ましく、5質量%以上45質量%未満であることがより好ましく、10質量%以上45質量%未満であることがさらに好ましい。
【0064】
1-3.その他の添加剤
上記インクは、任意に界面活性剤、および防腐剤または防黴剤などを含有してもよい。
【0065】
上記界面活性剤の例には、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類および脂肪酸塩類を含むアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類およびポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類を含むノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類および第四級アンモニウム塩類を含むカチオン性界面活性剤、ならびにシリコーン系やフッ素系の界面活性剤が含まれる。
【0066】
これらのうち、ナイロンの線維構造に上記蛍光酸性染料をより浸透しやすくして、上記蛍光酸性染料の定着不良による濃度むらをより生じにくくする観点からは、アニオン性界面活性剤が好ましい。好ましいアニオン性界面活性剤の例には、ジ-2-エチルヘキシルスルホこはく酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム、およびポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムが含まれる。
【0067】
上記防腐剤または防黴剤の例には、芳香族ハロゲン化合物、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(たとえばプロキセルGXL(アーチ ケミカル社製、プロキセルは同社の登録商標))が含まれる。
【0068】
1-4.物性等
上記インクは、25℃における表面張力(静的表面張力)が38mN/m以上55mN/m以下である(要件(3))。上記表面張力が38mN/m以上であると、上述した視認できない部位に入り込んだインクによる表面の発色濃度の損失や、布帛への付与後に布帛の表面方向へインクの広がったり糸の内部にインクが浸透して糸の内部を拡散したりすることによる滲みの発生を抑制することができる。上記表面張力が55mN/m以下であると、布帛への付与直後の表面張力が高すぎることによる、インクの浸透不足を抑制して、布帛の裏面を十分に発色させることができる。これらのバランスをとる観点から、上記インクの表面張力は、40mN/m以上52mN/m以下であることが好ましく、43mN/m以上50mN/m以下であることがより好ましい。インクの表面張力は、デュ・ニュイ法により測定された値とすることができ、たとえば、CBVP-Z、協和界面科学株式会社製により測定することができる。
【0069】
インクの上記表面張力は、界面活性剤の有無およびその量、有機溶剤の組み合わせなどにより調整することができる。
【0070】
また、上記インクは、25℃における粘度が10mPa・s以上14mPa・s以下である(要件(4))。上記粘度を10mPa・s以上に高めることで、布帛への付与後に布帛の表面方向へインクの広がったり糸の内部にインクが浸透して糸の内部を拡散したりすることによる滲みの発生を抑制することができる。上記粘度が14mPa・s以下であると、布帛の内部にインクを十分に浸透させて、布帛の裏側まで十分に発色させることができ、かつ布帛の内部に浸透しなかったインクが布帛の表面を拡散することによる滲みの発生を抑制することができる。これらのバランスをとる観点から、上記インクの粘度は、10mPa・s以上13mPa・s以下であることが好ましく、11mPa・s以上13mPa・s以下であることがより好ましい。インクの粘度は、E型粘度計により、25℃、20rpmで測定した値とすることができ、たとえば、V-25、東機産業株式会社製により測定することができる。
【0071】
1-5.製造方法
上記インクは、たとえば、水、上記2種類以上の有機溶剤、水溶性染料および任意に添加される他の添加剤を公知の方法で混合して調製することができる。
【0072】
2.インクセット
本発明の他の実施形態は、上述したインクを含むインクセットに関する。
【0073】
上記インクセットは、布帛に付与したときに当該布帛が呈する色調が互いに異なる、2種類以上のインクを含むインクセットである。具体的には、上記インクセットは、水溶性染料の種類が互いに異なる、2種類以上の(インク)捺染用インクジェットインクを含む。上記2種類以上のインクは、少なくとも1種類が上述したインクであればよいが、2種類以上が上述したインクであることが好ましい。なお、水溶性染料の種類が異なるとは、それぞれのインクに互いに異なる水溶性染料が含まれていてもよいし、同種の染料を含むが当該染料の量が異なっていてもよい。
【0074】
上述した、糸の内部にインクが浸透して糸の内部を拡散することによる滲みの発生は、複数の色を布帛に重ねて付与して、これらの混合色を発色させようとするときに特に生じやすい。しかし、上述したインクを含む複数色のインクセットにより上記混合色を発生させれば、糸の内部にインクが浸透しにくいので、上記滲みの発生も抑制される。
【0075】
上記インクセットは、たとえば、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックを含む複数色のインクのセットとすることができる。上記インクセットは、さらに、これら以外の特色のインクを含んでいてもよい。
【0076】
3.画像形成方法、画像形成装置
3-1.画像形成方法
本発明の他の実施形態は、上述したインクまたは上述したインクセットを用いる画像形成方法に関する。上記画像形成方法は、上記インクの液滴を記録ヘッドから吐出させて、布帛に画像を形成する工程と、画像が形成された布帛を加熱して、画像を定着させる工程とを含む。
【0077】
具体的には、本実施形態に関する画像形成方法は、(1)布帛に前処理剤を付与する工程(前処理工程)と、(2)前処理剤が付与された布帛にインクの液滴を吐出して画像を形成する工程(インク付与工程)と、(3)布帛に着弾した染料を繊維に定着させる工程(発色工程)とを含み、必要に応じて(4)インク付与後の布帛を乾燥させる工程(予備乾燥工程)と、(5)布帛へ染着できなかった染料や前処理剤を除去する工程(洗浄工程)と、(6)洗浄された布帛を乾燥する工程(乾燥工程)とをさらに含んでもよい。
【0078】
(前処理工程)
前処理工程は、布帛に前処理剤を付与する工程である。布帛に前処理剤を付与する方法の例には、パッド法、コーティング法、スプレー法、及びインクジェット法等が含まれる。これらの方法によって、前処理剤を布帛上に付与できる。
【0079】
均一な画像を得る観点から、布帛に前処理剤を塗布する前に、布帛繊維に付着した天然不純物(油脂、ロウ、ペクチン質、天然色素等)、布帛製造過程で用いた薬剤の残留物(のり剤等)、又は布帛に付着した汚れ等を洗浄しておくことが好ましい。布帛を洗浄する洗浄剤には、水酸化ナトリウム、若しくは炭酸ナトリウム等のアルカリ剤、陰イオン性若しくは非イオン性の界面活性剤、又は酵素等が含まれる。
【0080】
前処理剤は、樹脂成分、ヒドロトロピー剤、およびアルカリ剤を含有することが好ましく、その他に還元防止剤、防腐剤、およびキレート剤などの添加剤をさらに含有してもよい。
【0081】
樹脂成分は、ヒドロキシ基を有する親水性樹脂を含むことが好ましい。ヒドロキシ基を有する親水性樹脂の例には、グアー、ローカストビーンなどを含む天然ガム類、澱粉類、アルギン酸ナトリウム、ふのりなどの海草類、ペクチン酸などを含む植物皮類、メチル繊維素、エチル繊維素、ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースなどを含む繊維素誘導体、焙焼澱粉、アルファ澱粉、カルボキシメチル澱粉、カルボキシエチル澱粉、およびヒドロキシエチル澱粉などを含む加工澱粉、シラツガム系、およびローストビーンガム系などの加工天然ガム、ならびに、アルギン誘導体、ポリビニールアルコール、およびポリアクリル酸エステルなどを含む合成糊などが含まれる。
【0082】
ヒドロトロピー剤の例には、尿素、エチレン尿素、ジメチル尿素、チオ尿素、モノメチルチオ尿素、ジメチルチオ尿素等のアルキル尿素等が含まれる。ヒドロトロピー剤の添加により、画像濃度が向上するためである。
【0083】
アルカリ剤の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属、モノ,ジ,トリエタノールアミン等のアミン類、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)等の炭酸若しくは重炭酸アルカリ金属塩等、酢酸カルシウム、酢酸バリウム等の有機酸金属塩やアンモニア及びアンモニア化合物等、スチーミング又は乾熱下でアルカリ剤となるトリクロロ酢酸ナトリウム等が含まれる。これらの中でも、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが好ましい。アルカリ剤の付与量は、布帛の全質量に対して0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。適度なアルカリ剤が布帛に存在することで、反応染料を含む捺染インクを確実に染着させることができる。そのため、布帛にアルカリ剤をあらかじめ含有させることが好ましい。
【0084】
前処理剤の付与量(絞り率)、又は前処理剤に含まれる樹脂成分の量は、布帛の種類やその用途に応じて適宜設定される。
【0085】
前処理剤は、必要に応じて還元防止剤、防腐剤、又はキレート剤をさらに含んでもよい。還元防止剤は、m-ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム等であればよい。防腐剤は、捺染インクの防腐剤として例示した防腐剤であってもよく、また同一であってもよい。キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、又はメタリン酸塩等であればよい。
【0086】
布帛に付与された前処理剤は、温風、ホットプレート、又はヒートローラー等を用いて加熱乾燥させることもできる。
【0087】
布帛を構成する繊維素材は、(前処理剤として)ヒドロキシ基を有する親水性樹脂が付与される限り、特に制限はないが、染着性を高める点では、反応染料で染色可能な繊維;即ち、ヒドロキシ基を有する繊維を含むことが好ましい。ヒドロキシ基を有する繊維の例には、綿等のセルロース繊維、及び絹等の蛋白繊維が含まれる。布帛は、これらの繊維を、織布、不織布、編布等、いずれの形態にしたものであってもよい。また、本発明で使用しうる布帛は、反応染料で染色可能な繊維のみから構成されてもよいが、レーヨン、ポリウレタン、ポリエステル、若しくはアクリル等との混紡織布又は混紡不織布等であってもよい。また、布帛を構成する繊維の太さは、10~100dの範囲内であることが好ましい。
【0088】
(インク付与工程)
インク付与工程は、インクジェットヘッドからインクの液滴を布帛に向けて吐出して、発色前の画像を形成する工程である。複数のインクジェットヘッドを搭載するヘッドキャリッジに対して、布帛を相対移動させながら、インクセットの液滴を吐出し、布帛に着弾させる。インクの液滴が着弾するときの布帛の表面温度は、特に限定されないが、発色前画像の滲み抑制等の観点から、35~70℃の範囲で加熱されることが好ましい。複数色のインクを重ねて付与するときは、上述したインクセットに含まれる複数のインクを、布帛の同じ箇所に付与する。
【0089】
上述したインクは、インクの吐出速度が速いときであっても、布帛の裏側まで十分に浸透して布帛の裏側まで十分に発色させることができる。そのため、本実施形態は、インクジェットヘッドからのインクの吐出時の周波数が30kHz以上であっても、布帛の裏側まで十分に発色させることができる。インクの吐出時の周波数は、10kHz以上50kHz以下であることが好ましく、20kHz以上45kHz以下であることがより好ましい。
【0090】
(予備乾燥工程)
予備乾燥工程は、インク付与後の布帛を乾燥させる工程である。特に限定されないが、予備乾燥は、150℃以下で0.5~30分間布帛を乾燥させることが好ましい。乾燥方法の例には、空気対流方式、加熱ロール直付け方式、及び照射方式等が含まれる。具体的には、布帛にインクの付与を行い、その布帛が巻き取られる前に上記の条件及び方法で布帛を乾燥させればよい。
【0091】
(発色工程)
発色工程とは、インク付与後(予備乾燥工程を含むときは予備乾燥後)の布帛を加熱して布帛中へ十分に染着されていない反応染料を布帛中に染着させて、インク本来の色相を発現させる工程である。
【0092】
発色温度(加熱温度)は、発色方法(加熱方法)にもよるが、布帛への反応染料の染着を強固にする観点では、95℃以上220℃未満であることが好ましく、95℃以上190℃以下であることがより好ましく、100℃以上180℃以下であることがさらに好ましい。
【0093】
発色方法(加熱方法)は、従来公知の方法でよく、捺染インクや布帛等により適宜選択される。発色方法の例には、蒸気によるスチーミング、乾熱によるベーキングまたはサーモゾル、過熱蒸気によるHTスチーマーなどが含まれる。これらのうち、高熱の蒸気によりインク中の反応染料を定着させる方式(スチーミング方式)および乾熱方式(ベーキング方式)が好ましい。
【0094】
高温蒸気を用いるスチーミング方式では、加熱温度が低すぎると、液体の水が多く存在するため、濃色インクや淡色インクに含まれる反応染料は、布帛以外に液体の水と水素結合しやすくなるため、水と共に流されやすくなり、十分には染着できない場合がある。従って、布帛への反応染料の染着を強固にする観点から、加熱温度は、95℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。
【0095】
乾熱によるベーキング方式では、十分な染着性が得られやすく、かつ染料の分解を抑制しやすくする観点から、加熱温度は、150℃以上220℃未満であることが好ましく、150℃以上190℃以下であることがより好ましく、150℃以上180℃以下であることがより好ましい。
【0096】
(洗浄工程)
洗浄工程は、布帛の発色工程後に布帛へ染着できなかった反応染料や前処理剤を除去する工程である。布帛へ染着できなかった反応染料の除去は、従来公知の洗浄方法を用いることができ、捺染インクや布帛等により適宜選択される。
【0097】
(乾燥工程)
乾燥工程は、前記洗浄工程の後に行われ、洗浄された布帛を乾燥させる工程である。乾燥方法は、特に限定されないが、洗浄された布帛を絞ったり、干したり、乾燥機(ヒートロール、アイロン等)を使用して乾燥させたりする方法であり得る。
【0098】
3-2.インクジェット捺染装置
本発明の他の実施形態は、上述した画像形成方法を実施するための画像形成装置(インクジェット捺染装置)に関する。
【0099】
図1は、インクジェット捺染装置の構成の一例を示す部分概略図である。インクジェット捺染装置は、布帛Pを搬送する搬送手段2と、布帛Pにインクの液滴を吐出する複数のインクジェットヘッド(不図示)を搭載するヘッドキャリッジ5と、布帛Pに温風を付与する温風付与手段6とを有する。
【0100】
搬送手段2は、粘着性ベルト21と、サポートローラ22と、搬送ローラ23と、ニップローラ24と、を備えている。粘着性ベルト21は、サポートローラ22と搬送ローラ23とに保持され、サポートローラ22と搬送ローラ23との間を周回している。ニップローラ24は、粘着性ベルト21を介して、搬送ローラ23に対向して配置されている。
【0101】
温風付与手段6及びヘッドキャリッジ5は、布帛Pの上方に配置される。温風付与手段6は、内部に布帛に風を吹きつけるファン6Aと温度制御ができる発熱体6Bとを備えている。一方、ヘッドキャリッジ5は、インクジェットヘッドを備えている。インクジェットヘッドの種類は、特に制限されず、サーマル型、ピエゾ型のいずれであってもよい。インクジェットヘッドのノズル径は、10~100μmであることが好ましく、10~50μmであることがより好ましい。ノズル径が10μm以上であると、不溶物によるノズル目詰まりが生じにくく、100μm以下であると、形成画像の鮮鋭性が低くなりにくいからである。また、吐出するインクの液滴サイズは、4~150plであることが好ましく、5~80plであることがより好ましい。インクの液滴サイズが4pl以上であると、吐出されたインクの液滴がヘッド近傍の気流の影響を受けにくく、150pl以下であると、形成画像の粒状感が目立ちにくいからである。
【0102】
搬送ローラ23が駆動すると、粘着性ベルト21の上面に配置された布帛Pがニップローラ24下面に搬送される。布帛Pは粘着性ベルト21とニップローラ24により加圧されて、粘着性ベルト21に固定される。粘着性ベルト21に固定された布帛Pは、ヘッドキャリッジ5の下方に搬送される。ヘッドキャリッジ5に搭載される複数のインクジェットヘッドは、インクの液滴を吐出し、前処理剤が付与された布帛の一定領域(着弾可能領域)に着弾させ、画像を形成する。次いで、温風付与手段6から温度制御された風又は温風を吹き付けて、布帛Pに形成された画像を乾燥させる。
【実施例】
【0103】
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、これらの記載によって本発明の範囲は限定して解釈されない。
【0104】
1.インクの調製
[染料]
以下の染料を用意した。
RY95: C.I. Reactive Yellow 95
【0105】
[インクの調製]
上記精製した染料および以下の材料を表1に記載の質量比で混合し、撹拌して均一に混合した後、1μmメッシュのフィルターでろ過して、インク1~インク4を得た。なお、それぞれのインクには、pH添加剤を加えてpHを7に調整した。
【0106】
(水溶性有機溶媒)
EG: エチレングリコール
PG: プロピレングリコール
DEG: ジエチレングリコール
1,3-PGO: 1,3-プロパンジオール
1,3-BGO: 1,3-ブタンジオール
Gly: グリセリン
【0107】
(界面活性剤)
界面活性剤1: 日信化学工業株式会社製、オルフィン E1010 (ノニオン性の界面活性剤(ポリオキシエチレンアセチレングリコールエーテル)、「オルフィン」は同社の登録商標)
【0108】
(その他)
防黴剤: アーチケミカル社製、製品名 プロキセルGXL
イオン交換水
【0109】
形成されたインクの表面張力を、CBVP-Z、協和界面科学株式会社製を用いて、デュ・ニュイ法によりにより測定した。
【0110】
形成されたインクの粘度を、E型粘度計(TV-25、東機産業株式会社製)により、25℃、20rpmで測定した。
【0111】
表1に、調製した各インクの組成(含有量の単位は質量%)を示す。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
2.前処理剤の調製
以下の材料を撹拌および混合して、前処理剤を調製した。
アルギン酸ナトリウム(樹脂成分): 5質量部
尿素(ヒドロトロピー剤): 10質量部
炭酸水素ナトリウム(アルカリ剤): 5質量部
イオン交換水: 80重量部
【0117】
3.画像の形成
3-1.前処理工程
100%コットン布帛(綿ブロードシル付、色染社製)を用意し、上記の前処理剤を絞り率80%で付与した後、乾燥させた。
【0118】
3-2.インク付与工程
インクA-1~インクA-22をそれぞれ、ナッセンジャーV(コニカミノルタ株式会社製)にセットした。インクジェットヘッドからの吐出時の周波数を35kHzとして、インクを用いてベタ画像を形成した。
【0119】
3-3.発色工程
画像が形成された布帛を、相対湿度100%、温度103℃の条件下で8分間スチーム処理して、染料を定着および発色させた。
【0120】
4.評価
4-1.表面濃度、裏面濃度、濃度比
得られたベタ画像の表面濃度と裏面濃度を、それぞれミノルタ分光測色計CM-2022で測定した。得られた表面濃度および裏面濃度、ならびにそれらの比(表面濃度/裏面濃度×100(%))を算出した。表裏面の色濃度比が100%に近いほど、表裏面の色濃度の違いが小さいことを意味する。表裏の濃度比が95%より大きく105%未満であるものを合格とした。
【0121】
4-2.線描画品質
インク付与工程において、得られたベタ画像に重ねて、直線の細線状(幅1ピクセル、720dpi条件)にシアンインクを付与し、その後に発色させて、緑の細線を形成した。形成された細線の線幅が拡大しているか否か、および細線の縁部にひげ状の滲みが確認されるか否かもとに、以下の基準で線描画品質を評価した。評価結果が3以上であるものを合格とした。なお、上記シアンインクは、対応するインクA-1~インクA-22に対して、染料をRY95からC.I. Reactive Blue72(RB72)に変更して調製したものである。
4. 縁部に滲みは見られず、良好な細線が形成された
3. 縁部に滲みは見られなかったが、線幅が拡大している部分があった
2. 縁部に滲みが見られた
1. 縁部に滲みが見られ、直線状の細線が形成されなかった
【0122】
4-3.乾燥性
ベタ画像を形成したプリント物を、80℃で1分間乾燥させた後(予備乾燥工程後)、布を重ねたときの色移りの有無を目視観察した。そして、以下の基準に基づいて評価した。評価結果が△以上であるものを合格とした。
〇: 色移りが認められないまったくない
△: わずかな色移りが認められるが、実用上問題ないレベル
×: 色移りが顕著に認められ、実用上問題となるレベル
【0123】
4-4.射出性
25℃50%RH下で、インクジェットヘッドからのインクを一定時間射出させた。その後、30分放置し、再度インクの射出を行い、そのときの射出性をドロップウォッチャーにて観察した。そして、30分間放置後の再射出性を以下の基準に基づいて評価した。評価結果が○であるものを合格とした。
〇: 問題なく再射出可能だった
×: 射出不良が発生し、メンテナンス(手動でのノズル表面の清掃)が必要だった
【0124】
結果を表5に示す。
【0125】
【0126】
表5から明らかなように、要件(1)~(4)をすべて満たすインクを用いて画像を形成すると、布帛の表面および裏面の両方をいずれも十分に発色させて、布帛の表裏の濃度差を小さくしつつ、表側の発色濃度の低下および滲みの発生を抑制できた。
【0127】
これに対し、高沸点溶媒の含有量が10質量%より多いインクA-3およびインクA-19(要件(1)を不充足)は、乾燥性が低く、表面の発色が裏面の発色に対して少なくなっていた。これは、沸点が高い有機溶媒が多いためインクが乾燥しにくく、かつ、乾燥せずに残存した有機溶媒(表側に多く残存)が染料を移動させたためと考えられる。
【0128】
また、高沸点溶媒の含有量が3質量%より少ないインクA-5(要件(1)を不充足)は、インクの射出性が不良であり、かつ、裏面の発色が少なかった。これは、沸点が高い有機溶剤が少ないため、布帛に付与された直後のインクの表面張力が低下しにくく、インクが裏面まで到達しにくかったためと考えられる。
【0129】
また、有機溶剤の量が水の量より少ないインクA-6およびインクA-7(要件(2)を不充足)は、裏面の発色が少なかった。これは、布帛に付与された直後のインクの表面張力が低下しにくく、インクが裏面まで到達しにくかったためと考えられる。
【0130】
また、25℃における表面張力が38mN/m未満であるインクA-8、インクA-21およびインクA-22(要件(3)を不充足)は、表面の発色が裏面の発色に対して少なく、かつ滲みも多く発生していた。これは、糸間の微細な界面や糸の内部の微細な空間などにインクが入り込み、表面の発色濃度の損失や、糸の内部をインクが拡散することによる滲みの発生が生じやすかったためと考えられる。
【0131】
また、25℃における表面張力が55mN/mより大きいインクA-13(要件(3)を不充足)は、裏面の発色が不十分だった。これは、布帛への付与直後のインクの表面張力が高すぎたため、インクが布帛に十分に浸透できなかったためと考えられる。
【0132】
また、25℃における粘度が10mPa・s未満であるインクA-14(要件(4)を不充足)は、滲みが多く発生していた。これは、糸の内部の微細な空間にインクが入り込み、糸の内部をインクが拡散することによる滲みの発生が生じやすかったためと考えられる。
【0133】
また、25℃における粘度が15mPa・sより大きいインクA-17(要件(4)を不充足)は、裏面の発色が不十分であり、かつ、滲みが多く発生していた。これは、インクの粘度が高いため、インクが布帛に十分に浸透できず、かつ布帛の内部に浸透しなかったインクが布帛の表面を拡散したためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明のインクは、布帛の表面および裏面の両方をいずれも十分に発色させて、布帛の表裏の濃度差を小さくしつつ、表側の発色濃度の低下および滲みの発生を抑制できる。そのため、装飾用の布類などの、裏側が見えたときにも十分な見栄えを保つことを要求される分野への、インクジェット捺染のさらなる普及に寄与することが期待される。
【符号の説明】
【0135】
P 布帛
2 搬送手段
21 粘着性ベルト
22 サポートローラ
23 搬送ローラ
24 ニップローラ
5 ヘッドキャリッジ
6 温風付与手段
6A ファン
6B 発熱体