(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】センサユニット
(51)【国際特許分類】
F16C 41/00 20060101AFI20241126BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20241126BHJP
F16C 19/52 20060101ALI20241126BHJP
F16C 35/067 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C19/06
F16C19/52
F16C35/067
(21)【出願番号】P 2020174368
(22)【出願日】2020-10-16
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 知之
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-053002(JP,A)
【文献】特開2020-148676(JP,A)
【文献】特開2003-315095(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015214029(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0287018(US,A1)
【文献】特開2017-180649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 41/00
F16C 19/06
F16C 19/52
F16C 35/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体、及び、前記筐体の内周側に配置される回転シャフトを前記筐体に対して軸心を中心に回転可能に支持する軸受、の側方に設けられるセンサユニットであって、
円環状の形状を有し貫通孔が設けられた厚肉部と、前記厚肉部から径方向内側へ延び且つ前記厚肉部よりも厚さが薄い薄肉部と、を有する円環状の支持体と、
前記支持体の前記薄肉部に固定されるセンサと、を備え、
前記厚肉部は、前記軸受に含まれる外輪の側面に接した状態で、前記貫通孔を通る締結具を介して前記筐体の端部に固定され、
前記貫通孔の中心は、前記軸受の前記外輪の外周面よりも径方向外側に位置
し、
前記厚肉部の前記貫通孔は、前記軸心の軸回りの周方向に沿って複数設けられ、当該周方向に隣接する前記貫通孔同士の周方向に沿った間隔が全て異なる、
センサユニット。
【請求項2】
前記厚肉部は、
前記筐体の端面と前記外輪の前記側面との双方に接する当接面を備え、
前記筐体の端面、前記外輪の前記側面及び前記当接面は、前記軸心に直交して延びる、
請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項3】
前記支持体の前記厚肉部は、径方向外側に突出する突出部を備え、当該突出部に前記貫通孔が設けられる、
請求項1又は2に記載のセンサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
センサを搭載した間座側のセンサユニットを、軸受に隣接した状態で筐体に設ける構造が公知である(例えば、特許文献1参照)。軸受は、内輪と、外輪と、転動体と、を備える。内輪は、内周側に配置され、外輪は内輪の外周側に配置され、転動体は内輪と外輪との間に配置される。転動体は例えば球体であり、転動体が転がることにより、内輪と外輪とが相対的に回転する。特許文献1では、内輪と外輪との双方にセンサユニットを押し当てて軸受の軸方向の位置決めを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、軸受において内輪に対する外輪の軸方向位置は、高い精度が要求されるため、さらなる工夫が望まれる。
【0005】
本開示は、前記に鑑みてなされたものであって、軸受の側方に設けられるセンサユニットであって、軸受の内輪に対する外輪の軸方向位置の精度をさらに高くすることが可能なセンサユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様のセンサユニットは、筐体、及び、前記筐体の内周側に配置される回転シャフトを前記筐体に対して軸心を中心に回転可能に支持する軸受、の側方に設けられるセンサユニットであって、円環状の形状を有し貫通孔が設けられた厚肉部と、前記厚肉部から径方向内側へ延び且つ前記厚肉部よりも厚さが薄い薄肉部と、を有する円環状の支持体と、前記支持体の前記薄肉部に固定されるセンサと、を備え、前記厚肉部は、前記軸受に含まれる外輪の側面に接した状態で、前記貫通孔を通る締結具を介して前記筐体の端部に固定され、前記貫通孔の中心は、前記軸受の前記外輪の外周面よりも径方向外側に位置する。このように、貫通孔の中心が外輪の外周面よりも径方向外側に位置するため、支持体の厚肉部が締結具を介して筐体の端部に固定され、軸受に含まれる外輪の側面に厚肉部が接する。即ち、従来のように、支持体のみが外輪の側面に接するのではなく、筐体の端部に固定した支持体で外輪の側面の軸方向位置を規定する。従って、軸受の内輪に対する外輪の軸方向位置の精度をさらに高くすることが可能となる。
【0007】
上記のセンサユニットの他の態様として、前記厚肉部は、前記筐体の端面と前記外輪の前記側面との双方に接する当接面を備え、前記筐体の端面、前記外輪の前記側面及び前記当接面は、前記軸心に直交して延びることが望ましい。このように、支持体の厚肉部の当接面を筐体の端面に当てることにより、軸受の外輪の側面の軸方向位置の精度をさらに高くすることが可能となる。
【0008】
上記のセンサユニットの他の態様として、前記支持体の前記厚肉部は、径方向外側に突出する突出部を備え、当該突出部に前記貫通孔が設けられることが望ましい。これによれば、支持体の径方向の大きさをより小さくすることができるため、支持体の重量を軽減することができる。また、突出部がたわみ易いため、突出部が筐体の端部に、隙間がない状態でより当接しやすくなる。
【0009】
上記のセンサユニットの他の態様として、前記厚肉部の前記貫通孔は、前記軸心の軸回りの周方向に沿って複数設けられ、当該周方向に隣接する前記貫通孔同士の周方向に沿った間隔が全て異なることが望ましい。これによれば、支持体を筐体に取り付ける際に、支持体の周方向の位置が一意的に定めるため、支持体の組付け間違いを防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るセンサユニットによれば、軸受の側方に設けられるセンサユニットであって、軸受の内輪に対する外輪の軸方向位置の精度をさらに高くすることが可能なセンサユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態のセンサユニットを備えるセンサ付き軸受の斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のセンサユニットの背面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態のセンサユニットの正面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態のセンサユニットを備えるモータの断面を示す模式図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態のセンサユニットの正面図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態のセンサ付き軸受の断面図である。
【
図13】
図13は、第1変形例によるセンサユニットの斜視図である。
【
図14】
図14は、第2変形例によるセンサユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のセンサユニットを備えるセンサ付き軸受の斜視図である。
図2及び
図3は、
図1のセンサ付き軸受の分解斜視図である。
図2はセンサ付き軸受をカバー側から見た図であり、
図3はセンサ付き軸受を軸受側から見た図である。
図4は、第1実施形態のセンサユニットの背面図である。
図5は、第1実施形態のセンサユニットの正面図である。
【0014】
図1から
図3に示すように、センサ付き軸受100は、センサユニット110と、マグネット31と、スペーサ33と、シール材60と、後述するリテーナ50(
図7等参照)と、軸受120と、を備える。
図2及び
図3に示すように、センサユニット110は、カバー10(支持体)と、コイル基板20と、回路基板40と、を備える。
【0015】
カバー10(支持体)は、径方向外側(外周側)の端部に配置された円環状(リング状)の厚肉部11と、厚肉部11の径方向内側(内周側)に配置された薄肉部12と、を有する。薄肉部12は、厚肉部11から径方向内側へ延びる板状の部位である。薄肉部12の径方向中央部には、挿通孔H12が設けられる。挿通孔H12には、後述するように、
図7に示す回転シャフト70が挿入される。厚肉部11は、薄肉部12よりも厚い。換言すると、薄肉部12の外周端部に、裏面12a側(軸受120側)に向けて突出する厚肉部11が設けられる。厚肉部11には、詳細に後述する位置決め穴11eが設けられる。
図1に示すように、検出軸のX軸及びY軸がマーキングされている。X軸は、平面視で、軸心Axから位置決め穴11eに向かう径方向に延びる。Y軸は、周方向に沿って直線状に延びる。なお、図示しないが、Z軸は軸心Axに沿って延びる。X軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交する。カバー10は、ケイ素鋼板、炭素鋼(JIS規格 SS400又はS45C)、マルテンサイト系ステンレス(JIS規格 SUS420)又はフェライト系ステンレス(JIS規格 SUS430)のいずれかのような磁性を有する材料で形成される。
【0016】
図3に示すように、回路基板40及びコイル基板20は、薄肉部12の裏面12aに取り付けられている。ここで、裏面12aは、軸受120と対向する面である。なお、薄肉部12の表面12dは、裏面12aとは反対側の面である。回路基板40は、電源基板41と、センサ基板(センサ)42とを有する。例えば、
図1及び
図2に示すように、薄肉部12に開けられた雌ねじ穴に、黄銅など非磁性材料のボルト19Bが締結することで、電源基板41とセンサ基板42とが薄肉部12の裏面12aに固定される。
図1及び
図2に示すように、ボルト19Bは、カバー10に取り付けられた状態で、カバー10から突出しない長さを有する。
【0017】
また、カバー10には、孔が開けられ、樹脂などの非磁性材料で形成された非磁性蓋17で密閉されている。センサ基板42には、
図4に示すアンテナ47が実装される。さらに、
図1から
図5に示すように、カバー10には、3つの突出部11f,11g,11hが設けられる。突出部11f,11g,11hは、軸心Axを中心とする周方向に120度ずつ離隔して等間隔に配置される。突出部11f,11g,11hは、厚肉部11と同一の厚さを有し、厚肉部11から径方向外側に向けて突出する。突出部11f,11g,11hは、
図4及び
図5に示すように半円の形状を有する。突出部11f,11g,11hのそれぞれには、ボルト81が貫通する円形の貫通孔11iが設けられる。
【0018】
図4に示すように、薄肉部12の裏面12aには、電源基板41とセンサ基板42とが取り付けられている。電源基板41とセンサ基板42は、平面視で、厚肉部11とコイル基板20との間に位置する。電源基板41には、電源部43が実装されている。コイル基板20とマグネット31とで発電部が構成される。電源部43は、発電部から供給された単相交流電圧を直流電圧に変換して、センサ基板42へ供給する。
【0019】
センサ基板42には、センサ44と、通信回路を有する制御部45と、アンテナ47とが実装されている。電源部43からの直流電力は、センサ44及び制御部45に供給される。センサ44、制御部45及びアンテナ47は、別々のIC(Integrated Circuit)チップで構成されていてもよいし、それらの一部又は全部が1つのICチップで構成されていてもよい。センサ44は、供給される直流電力を使用して、各種の物理量又は化学量を検出する。例えば、センサ44は、軸受120の振動を検出する加速度センサ441と、軸受120の周囲温度を検出する温度センサ442と、を含む。加速度センサ441は、センサ基板42を薄肉部12に固定するボルト19Bの近くに配置している。センサ基板42の部位のうち、ボルト19Bの近傍部は振動等が少ないため、より正確な加速度を検出でき、加速度センサ441を設置する位置として好適である。
【0020】
図4に示すように、コイル基板20は、フレキシブル基板21と、フレキシブル基板21に設けられたコイルパターン23と、フレキシブル基板21に設けられた複数のヨーク25と、を有する。フレキシブル基板21の平面視による形状は、軸心Axを中心とする正円のリング状である。コイルパターン23は、フレキシブル基板21の厚さ方向に積層された複数の平面コイルを有する。平面コイルとは、絶縁体の所定の面上にパターニングされて設けられた導電体のパターンである。本実施形態においては、導電体のパターンが絶縁体の複数の面上に形成されている。これに限られず、導電体のパターンが絶縁体の1つの面上に形成されていてもよい。
【0021】
図4に示すように、コイルパターン23の両端は、リード線16を介して電源基板41に接続される。なお、本実施形態において、コイルパターン23と電源基板41との接続は、リード線16ではなく、FPC(Flexible Printed Circuit)コネクタを介して行われてもよい。または、コイル基板20を延長して電源基板41と直接接続されてもよい。
【0022】
図4に示すように、コイルパターン23は、複数の第1導電部231と、複数の第2導電部232と、を有する。第1導電部231は、軸心Axを中心とする円の周方向に延びる。第2導電部232は、軸心Axを中心とする円の径方向に延びる。第1導電部231と第2導電部232は、交互に直列に接続されている。
【0023】
ヨーク25は、平面視で、第1導電部231の一方の側に位置する第1ヨーク25Aと、第1導電部231の他方の側に位置する第2ヨーク25Bとを有する。例えば、第1ヨーク25Aは、第1導電部231よりも軸心Axから遠い側に位置する。第2ヨーク25Bは、第1導電部231よりも軸心Axから近い側に位置する。但し、第1ヨーク25Aと軸心Axとの距離と、第2ヨーク25Bと軸心Axとの距離は、互いに同じ長さである。
【0024】
例えば、コイルパターン23は、平面視で、軸心Axを中心とする円の円周方向に沿って凹凸が交互に並ぶように延設されている。この凹凸の凹部233にヨーク25が1つずつ配置されている。
【0025】
本実施形態では、マグネット31は、磁気トラックと基材とが一体となったエンコーダマグネットである。例えば、エンコーダマグネットは、金属製の基材の一方の面にプラスチックマグネットが形成され、形成されたプラスチックマグネットの表面にN極とS極とが交互に着磁されることにより形成される。
【0026】
図6は、
図5のVI-VI線による断面図である。
図7は、
図6の一部を拡大した断面図である。なお、以下において、「軸方向」は、回転シャフト70の軸方向を示し、「径方向」は、回転シャフト70の径方向を示す。軸方向と径方向は、交差(直交)する。「周方向」は、回転シャフト70の軸心Axの軸回り方向を示す。
【0027】
センサユニット110の径方向中央部には、
図2及び
図3に示す挿通孔H12が設けられる。
図6及び
図7に示すように、挿通孔H12には、回転シャフト70が挿入されている。回転シャフト70は、軸心Axを中心として回転可能である。回転シャフト70は、大径部71と、小径部72と、を有する。小径部72は、大径部71よりも外径が小さい。よって、小径部72の外周面72aは、大径部71の外周面71aよりも径方向内側に位置する。大径部71の外周面71aと小径部72の外周面72aとの境界部には、側壁71bが設けられる。側壁71bは、大径部71の外周面71aにおける小径部72側の端縁と、小径部72の外周面72aにおける大径部71側の端縁と、を連結する。側壁71bは、径方向に延びる平坦な壁である。
【0028】
筐体80(被取付部材)は、回転シャフト70の径方向外側に回転シャフト70から離隔して配置される。筐体80は、内周面80aと、縦壁面80bと、外側面(端面)80cと、ねじ穴80dと、を有する。内周面80aは、軸心Axを中心として周方向に延びる。縦壁面80b及び外側面80cは、径方向に延びる。筐体80は、例えばモータや工作機械等の種々の設備に設けられたケースである。さらに具体的には、筐体80の外側面(端面)80cは、軸心Axと直交して延びる。
【0029】
軸受120は、外輪122と、内輪121と、転動体123と、を有する。
【0030】
外輪122は、外周面122aと、内周面122bと、外側壁(外面)122cと、内側壁122dと、を有する。外周面122a及び内周面122bは、軸心Axを中心として周方向に延びる。外側壁122c及び内側壁122dは、径方向に延びる平坦な壁である。外側壁122cと内周面122bとの角部には、切欠部122eが設けられる。外側壁(外面)122cは、軸心Axに直交して延びる。
【0031】
内輪121は、外周面121b(径方向外側端)と、内周面121aと、外側壁121cと、内側壁121dと、を有する。
図7に示すように、内周面121aと外側壁121cとの角部は、円弧状に湾曲した湾曲部121gの形状を有する。外周面121b及び内周面121aは、軸心Axを中心として周方向に延びる。外側壁121c及び内側壁121dは、径方向に延びる平坦な壁である。外側壁121cと外周面121bとの角部には、切欠部121eが設けられる。転動体123は、外輪122と内輪121との間に設けられる。また、シール材60の外周端部は、切欠部122eに挿入されてはめ込み、加締め、あるいは溶接などで外輪122に固定される。同様にシール材61も外輪122に固定される。
【0032】
前述のように、
図7に示すカバー10は、薄肉部12と、厚肉部11とを有する。薄肉部12の裏面12aには、コイル基板20(発電コイル)と、回路基板40と、が固定される。具体的には、裏面12aにおいて、径方向内側の端部にコイル基板20が位置し、コイル基板20よりも径方向外側に回路基板40が位置する。薄肉部12の裏面12aにコイル基板20が固定されている。コイル基板20は、例えば接着剤を介して固定される。
【0033】
図6及び
図9に示すように、カバー10の径方向内側端12bは、大径部71の外周面71aよりも径方向内側に位置する。具体的には、径方向内側端12bと外周面71aとの径方向に沿った距離は、第1距離D1である。カバー10の径方向内側の端部10aにおける径方向内側の端縁が径方向内側端12bである。カバー10の径方向内側の端部10aの表面12dと側壁71bとは、軸方向に沿って第4距離D4だけ離隔される。この第4距離D4は、回転シャフト70が回転する際に軸受120の外輪122と内輪121との軸方向の変位量以上の距離である。
【0034】
内輪121の外側壁121cは、側壁71bから軸心Axの軸方向に離隔して位置する。外側壁121cと、側壁71bとの間には、リテーナ50と、マグネット31と、スペーサ33と、が設けられる。
【0035】
リテーナ50は、上壁52と、側壁54と、側壁55と、切欠底面56と、底壁51と、を有する。側壁55と切欠底面56とで切欠部が構成される。側壁54は、径方向に延びる平坦な壁である。側壁54は、側壁71bと接する。底壁51は、小径部72の外周面72aに接する。側壁55は、径方向に延びる平坦な壁である。側壁55は、マグネット31における薄板部31bと接する。
【0036】
マグネット31は、径方向内側の薄板部31bと、径方向外側の厚板部31aと、を有する。マグネット31の径方向外側端31cと、コイル基板20の径方向外側端20aとは、径方向の位置が略同一である。換言すると、径方向外側端31cと径方向外側端20aとは、軸方向に並んで位置する。マグネット31の径方向内側端31dは、切欠底面56の上に載置される。マグネット31の径方向外側端31cは、内輪121の外周面121b(径方向外側端)よりも第2距離D2だけ径方向外側に位置する。
【0037】
スペーサ33は、軸方向の厚さが一定である平板状の形状を有する。スペーサ33は、径方向に延びる。スペーサ33の径方向外側端33aは、切欠部121eよりも径方向内側に位置する。スペーサ33の径方向内側端33bは、切欠底面56に接する。スペーサ33は、外側壁121cに接する。スペーサ33と側壁55との間に、マグネット31の薄板部31bが挟まれる。
【0038】
このように、軸受120の内輪121における外側壁121cと、回転シャフト70の大径部71における側壁71bとによって、リテーナ50、マグネット31及びスペーサ33が軸方向に挟まれて固定される。スペーサ33の径方向内側端33bと上壁52との径方向に沿った距離は、第3距離D3である。また、軸受120の内輪121における内側壁121dは、図示しない固定手段によって軸方向に固定される。
【0039】
軸受120の外輪122は、筐体80の縦壁面80bと、センサユニット110のカバー10の厚肉部11と、によって軸方向に挟持される。
図6に示すように、外輪122の内側壁122dは、筐体80の縦壁面80bに接する。外輪122の外側壁122cは、カバー10の厚肉部11に接する。
【0040】
図3及び
図7に示すように、カバー10の厚肉部11は、厚肉本体11jと、突出部11f,11g,11hと、を備える。即ち、
図7において、径方向内側に厚肉本体11jが位置し、径方向外側に突出部11fが位置する。突出部が設けられる部位においては、厚肉部11は、内側面(当接面)11aと、外側面11bと、外周面11cと、内周面11dと、を有する。外周面11cは、突出部11fの径方向外側端である。厚肉部11の内側面11a及び外側面11bは、径方向に延びる。外周面11c及び内周面11dは、周方向に延びる。さらに具体的には、内側面(当接面)11aは、軸心Axに直交して延びる。
【0041】
厚肉本体11jには、厚さ方向(回転シャフト70の軸方向)に沿って位置決め穴11eが設けられる。即ち、位置決め穴11eは、径方向と直交する厚さ方向である軸方向に延びる円筒状の内周面の内側に設けられる。本実施形態では、位置決め穴11eは厚さ方向(軸方向)に貫通する。突出部11fには、厚さ方向(回転シャフト70の軸方向)に沿って延び突出部11fを貫通する貫通孔11iが設けられる。筐体80には、ねじ穴80dが設けられる。ねじ穴80dは、いわゆる止まり穴(凹部)である。突出部11fの貫通孔11iにボルト81が挿入されてとねじ穴80dに締結されている。ボルト81は、頭部81aと、ねじ部81bと、を有する。即ち、ボルト81のねじ部81bが、突出部11fの貫通孔11iを貫通し、ねじ部81bの先端部がねじ穴80dに締結される。これにより、ボルト81を介して、突出部11fが筐体80に固定される。突出部11fは、筐体80の外側面80cに接する。なお、厚肉本体11jは、外輪122の外側壁122cに接する。また、突出部11fの貫通孔11iとねじ穴80dとは、孔(穴)の中心C1が一致する。中心C1は、外輪122の外周面122aよりも径方向外側に位置する。
【0042】
図8は、第1実施形態のセンサユニットを備えるモータの断面を示す模式図である。
図9は、
図8のP部を拡大した模式図である。
図8及び
図9に示すように、モータ200は、筐体80(被取付部材)と、回転シャフト70と、ロータ210と、ステータ220と、を備える。筐体80の内周面には、軸心Axの軸回り方向に沿ってステータ220が設けられる。回転シャフト70には、ステータ220の内周側に対向する部位にロータ210が固定される。回転シャフト70の軸方向一方側には、支持部75が設けられ、支持部75は筒状部76に回転可能に支持されている。支持部75の更に軸方向一方側には、軸方向端部73が設けられる。回転シャフト70の軸方向他方側には、支持部78が設けられ、支持部78は筐体80に設けられたベアリング77に回転可能に支持されている。支持部78の更に軸方向他方側には、軸方向端部74が設けられる。なお、筐体80に軸受120が設けられ、軸受120を介して回転シャフト70が回転可能に支持されている。筐体80には、センサユニット110がボルト81を介して固定されている。
【0043】
以上説明したように、第1実施形態によるセンサユニット110は、筐体80、及び、筐体80の内周側に配置される回転シャフト70を筐体80に対して軸心Axを中心に回転可能に支持する軸受120、の側方に設けられる。センサユニット110は、円環状の形状を有し貫通孔11iが設けられた厚肉部11と、厚肉部11から径方向内側へ延び且つ厚肉部11よりも厚さが薄い薄肉部12と、を有する円環状のカバー(支持体)10と、カバー(支持体)10の薄肉部12に固定されるセンサ基板(センサ)42と、を備える。厚肉部11は、軸受120に含まれる外輪122の外側壁(側面)122cに接した状態で、貫通孔11iを通るボルト(締結具)81を介して筐体80の端部に固定され、貫通孔11iの中心C1は、軸受120の外輪122の外周面122aよりも径方向外側に位置する。
【0044】
これによれば、カバー(支持体)10の厚肉部11をボルト(締結具)81を介して筐体80の端部に固定することにより、軸受120に含まれる外輪の側面に厚肉部11が接する。即ち、従来のように、支持体のみが外輪の側面に接するのではなく、筐体80の端部に固定したカバー10で外輪122の外側壁(側面)122cの軸方向位置を規定する。従って、軸受120の内輪121に対する外輪122の軸方向位置の精度をさらに高くすることが可能となる。なお、別途の取付部材を介してカバー10を筐体80に固定する構造に対して、当該取付部材が不要になるため、センサユニット110、軸受120及び筐体80を含んだ装置全体の重量軽減及びコスト低減が図れる。
【0045】
また、厚肉部11は、筐体80の外側面(端面)80cと外輪122の外側壁(側面)122cとの双方に接する内側面(当接面)11aを備え、内側面(当接面)11aは、軸心Axに直交して延びる。
これによれば、カバー(支持体)10の厚肉部11の内側面(当接面)11aを筐体80の外側面(端面)80cに当てたときに、軸受120の外輪122の外側壁(側面)122cの軸方向位置の精度をさらに高くすることが可能となる。
【0046】
カバー(支持体)10の厚肉部11は、径方向外側に突出する突出部11f,11g,11hを備え、突出部11f,11g,11hに貫通孔11iが設けられる。
これによれば、カバー(支持体)10の径方向の大きさをより小さくすることができるため、カバー10の重量を軽減することができる。
【0047】
[第2実施形態]
図10は、第2実施形態のセンサユニットの正面図である。
図11は、
図10のXI-XI線による断面図である。
【0048】
第2実施形態に係るカバー10Aには、第1実施形態のカバー10の突出部11f,11g,11hが設けられておらず、カバー10Aの外周縁部にボルト81が貫通する円形の貫通孔11iが設けられる。
【0049】
図10及び
図11に示すように、カバー10Aは、薄肉部12と、厚肉部11Aとを有する。薄肉部12は、第1実施形態のカバー10と同じである。厚肉部11Aは、軸心Axを中心とする周方向に沿って延びる円環状である。
【0050】
厚肉部11Aには、厚さ方向(回転シャフト70の軸方向)に沿って延び厚肉部11Aを貫通する貫通孔11iが設けられる。筐体80には、ねじ穴80dが設けられる。ねじ穴80dは、いわゆる止まり穴(凹部)である。厚肉部11Aの貫通孔11iにボルト81が挿入されてとねじ穴80dに締結されている。ボルト81は、頭部81aと、ねじ部81bと、を有する。即ち、ボルト81のねじ部81bが、厚肉部11Aの貫通孔11iを貫通し、ねじ部81bの先端部がねじ穴80dに締結される。これにより、ボルト81を介して、厚肉部11Aが筐体80に固定される。厚肉部11Aは、筐体80の外側面80cに接する。なお、厚肉部11Aは、外輪122の外側壁122cに接する。その他の構造は、第1実施形態の
図6と同じである。
【0051】
以上説明したように、第2実施形態によるセンサユニット110Aにおいて、厚肉部11は、軸受120に含まれる外輪122の外側壁(側面)122cに接した状態で、貫通孔11iを通るボルト(締結具)81を介して筐体80の端部に固定され、貫通孔11iの中心C1は、軸受120の外輪122の外周面122aよりも径方向外側に位置する。
【0052】
従って、第2実施形態によっても、軸受120の内輪121に対する外輪122の軸方向位置の精度をさらに高くすることが可能となる。
【0053】
[第3実施形態]
図12は、第3実施形態のセンサ付き軸受の断面図である。
第1実施形態に係る
図7では、ボルト81を締結する前の状態において、筐体80の外側面80cと、外輪122の外側壁122cとの軸方向位置が同一である。つまり、ボルト81を締結する前の状態においても、ボルト81を締結した後の状態においても、筐体80の外側面80cと、外輪122の外側壁122cとの軸方向位置が同一である。
【0054】
しかし、第3実施形態では、ボルト81を締結する前の状態において、筐体80Aの外側面80Acは、外輪122の外側壁122cよりも軸方向の一方側(カバー10から遠ざかる方向)に位置している。従って、突出部11f,11g,11hと外輪122の外側壁122cとの間に、軸方向に沿った隙間Gが設けられる。
【0055】
そして、ボルト81の頭部81aを回転させて、ねじ部81bの先端部をねじ穴80dにさらに締結させると、頭部81aが突出部11fの外側面11bを軸方向に押圧し突出部11fが弾性変形して筐体80Aに接する。これにより、厚肉本体11jは、外輪122の外側壁122cを軸方向に押圧した状態となる。
【0056】
以上説明したように、第3実施形態によるセンサユニット110において、ボルト81を締結する前の状態において、筐体80Aの外側面80Acは、外輪122の外側壁122cよりも軸方向の一方側(カバー10から遠ざかる方向)に位置している。
【0057】
従って、厚肉本体11jは、外輪122の外側壁122cを軸方向に押圧した状態となるため、第1実施形態及び第2実施形態よりも更に外輪122の軸方向位置の変動を抑制することができる。
【0058】
[変形例]
図13は、第1変形例によるセンサユニットの斜視図である。
図14は、第2変形例によるセンサユニットの斜視図である。
【0059】
前述した実施形態では、突出部11f,11g,11hに設ける貫通孔11iは、周方向に沿って120度ずつ等間隔に配置したが、本開示はこれに限定されない。例えば、
図13の第1変形例に係るセンサユニット110Bでは、突出部11fの貫通孔11iと突出部11gの貫通孔11iとは周方向に沿って角度θ1離隔され、突出部11gの貫通孔11iと突出部11hの貫通孔11iとは周方向に沿って角度θ2離隔され、突出部11hの貫通孔11iと突出部11fの貫通孔11iとは周方向に沿って角度θ3離隔される。角度θ1は、例えば135度であり、角度θ2は、例えば90度であり、角度θ3は、例えば135度である。
【0060】
図14の第2変形例に係るセンサユニット110Cでは、突出部11fの貫通孔11iと突出部11gの貫通孔11iとは周方向に沿って角度θ4離隔され、突出部11gの貫通孔11iと突出部11hの貫通孔11iとは周方向に沿って角度θ5離隔され、突出部11hの貫通孔11iと突出部11fの貫通孔11iとは周方向に沿って角度θ6離隔される。角度θ4は、例えば135度であり、角度θ5は、例えば100度であり、角度θ6は、例えば125度であるため、周方向に隣接する貫通孔11i同士の周方向に沿った間隔が全て異なる。
【0061】
以上説明したように、第1変形例によるセンサユニット110Bにおいて、厚肉部11の貫通孔11iは、軸心Axの軸回りの周方向に沿って3つ(複数)設けられ、周方向に隣接する貫通孔11i同士の周方向に沿った間隔は、2つが同一であり、1つが異なる。これによれば、カバー10を筐体80に取り付ける際に、カバー10の周方向の位置が一意的に定めるため、カバー10の組付け間違いを防止できる。特に、センサに加速度センサ441が含まれる場合、加速度センサ441の検出軸を特に意識して合わせることなく、容易に検出軸を決めることができる。
【0062】
第2変形例によるセンサユニット110Cにおいて、厚肉部11の貫通孔11iは、軸心Axの軸回りの周方向に沿って3つ(複数)設けられ、周方向に隣接する貫通孔11i同士の周方向に沿った間隔が全て異なる。これによれば、カバー10を筐体80に取り付ける際に、カバー10の周方向の位置が第1変形例よりも更に一意的に定めるため、カバー10の組付け間違いをより確実に防止できる。
【符号の説明】
【0063】
10,10A カバー(支持体)
11,11A 厚肉部
11a 内側面(当接面)
11b 外側面
11c 外周面
11d 内周面
11e 位置決め穴
11f,11g,11h 突出部
11i 貫通孔
11j 厚肉本体
12 薄肉部
12a 裏面
12d 表面
16 リード線
17 非磁性蓋
19B ボルト
20 コイル基板
21 フレキシブル基板
23 コイルパターン
25 ヨーク
25A 第1ヨーク
25B 第2ヨーク
31 マグネット
31a 厚板部
31b 薄板部
33 スペーサ
40 回路基板
41 電源基板
42 センサ基板(センサ)
43 電源部
44 センサ
45 制御部
47 アンテナ
50 リテーナ
51 底壁
52 上壁
54,55 側壁
56 切欠底面
60,61 シール材
70 回転シャフト
71 大径部
71a 外周面
71b 側壁
72 小径部
72a 外周面
73,74 軸方向端部
75 支持部
76 筒状部
77 ベアリング
78 支持部
80,80A 筐体
80a 内周面
80b 縦壁面
80c,80Ac 外側面(端面)
80d ねじ穴
81 ボルト(締結具)
81a 頭部
81b ねじ部
100 センサ付き軸受
110,110A,110B,110C センサユニット
120 軸受
121 内輪
121a 内周面
121b 外周面(径方向外側端)
121c 外側壁
121d 内側壁
121g 湾曲部
122 外輪
122a 外周面
122b 内周面
122c 外側壁
122d 内側壁
122e 切欠部
123 転動体
231 第1導電部
232 第2導電部
441 加速度センサ
442 温度センサ
Ax 軸心
C1 中心
G 隙間
H12 挿通孔