(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】配線基板および配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/38 20060101AFI20241126BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20241126BHJP
H01Q 1/22 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
H01Q1/38
H05K1/02 J
H01Q1/22 Z
(21)【出願番号】P 2020181465
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】武 誠司
(72)【発明者】
【氏名】川口 修司
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-195090(JP,A)
【文献】特開2001-007456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/38
H05K 1/02
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板であって、
透明性を有する基板と、
前記基板上に配置され、複数の第1方向配線を含む配線パターン領域と、
前記配線パターン領域の前記複数の第1方向配線に電気的に接続された給電部と、を備え、
前記第1方向配線は、前記給電部の近傍に位置する第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを有し、
前記第1領域における前記第1方向配線の高さは、前記第2領域における前記第1方向配線の高さよりも高
く、
前記配線パターン領域は、アンテナとしての機能を有する、配線基板。
【請求項2】
前記配線パターン領域は、前記複数の第1方向配線を連結する複数の第2方向配線を含み、前記第1領域は、少なくとも前記給電部に最も近い第2方向配線と前記給電部との間に位置する、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第1領域における前記第1方向配線の高さは、前記給電部から遠ざかるにつれて段階的に低くなる、請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記配線パターン領域の長手方向に沿う前記第1領域の長さは、0.1mm以上0.5mm以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記第1領域における前記第1方向配線の高さは、前記第2領域における前記第1方向配線の高さの150%以上であり、10μm以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記第1領域における前記第1方向配線の裏面は、前記第2領域における前記第1方向配線の裏面と同一平面上にある、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記第1領域における前記第1方向配線の表面は、前記第2領域における前記第1方向配線の表面と同一平面上にある、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項8】
配線基板の製造方法であって、
透明性を有する基板を準備する工程と、
前記基板上に、複数の第1方向配線を含む配線パターン領域と、前記配線パターン領域の前記複数の第1方向配線に電気的に接続された給電部とを形成する工程と、を備え、
前記第1方向配線は、前記給電部の近傍に位置する第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを有し、
前記第1領域における前記第1方向配線の高さは、前記第2領域における前記第1方向配線の高さよりも高
く、
前記配線パターン領域は、アンテナとしての機能を有する、配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施の形態は、配線基板および配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スマートフォン、タブレット等の携帯端末機器の高機能、小型化、薄型化および軽量化が進んでいる。これら携帯端末機器は、複数の通信帯域を使用するため、通信帯域に応じた複数のアンテナが必要とされる。例えば、携帯端末機器には、電話用アンテナ、WiFi(Wireless Fidelity)用アンテナ、3G(Generation)用アンテナ、4G(Generation)用アンテナ、LTE(Long Term Evolution)用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、NFC(Near Field Communication)用アンテナ等の複数のアンテナが搭載されている。しかしながら、携帯端末機器の小型化に伴い、アンテナの搭載スペースは限られており、アンテナ設計の自由度は狭まっている。また、限られたスペース内にアンテナを内蔵していることから、電波感度が必ずしも満足できるものではない。
【0003】
このため、携帯端末機器の表示領域に搭載することができるフィルムアンテナが開発されている。このフィルムアンテナは、透明基材上にアンテナパターンが形成された透明アンテナにおいて、アンテナパターンが、不透明な導電体層の形成部としての導体部と非形成部としての多数の開口部とによるメッシュ状の導電体メッシュ層によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-66610号公報
【文献】特許第5636735号明細書
【文献】特許第5695947号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のフィルムアンテナにおいては、導電体メッシュ層のうち給電部の付近の領域は、他の領域と比べて電流密度が高くなりやすい傾向がある。このため、長期間にわたってフィルムアンテナを使用した場合、導電体メッシュ層の他の領域と比べて給電部の付近で配線が断線しやすい。
【0006】
本実施の形態は、給電部の付近で配線パターン領域の配線が断線することを抑制することが可能な、配線基板および配線基板の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施の形態による配線基板は、配線基板であって、透明性を有する基板と、前記基板上に配置され、複数の第1方向配線を含む配線パターン領域と、前記配線パターン領域の前記複数の第1方向配線に電気的に接続された給電部と、を備え、前記第1方向配線は、前記給電部の近傍に位置する第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを有し、前記第1領域における前記第1方向配線の高さは、前記第2領域における前記第1方向配線の高さよりも高い、配線基板である。
【0008】
本開示の一実施の形態による配線基板において、前記配線パターン領域は、前記複数の第1方向配線を連結する複数の第2方向配線を含み、前記第1領域は、少なくとも前記給電部に最も近い第2方向配線と前記給電部との間に位置していてもよい。
【0009】
本開示の一実施の形態による配線基板において、前記第1領域における前記第1方向配線の高さは、前記給電部から遠ざかるにつれて段階的に低くなっていてもよい。
【0010】
本開示の一実施の形態による配線基板において、前記配線パターン領域の長手方向に沿う前記第1領域の長さは、0.1mm以上0.5mm以下であってもよい。
【0011】
本開示の一実施の形態による配線基板において、前記第1領域における前記第1方向配線の高さは、前記第2領域における前記第1方向配線の高さの150%以上であり、10μm以下であってもよい。
【0012】
本開示の一実施の形態による配線基板において、前記第1領域における前記第1方向配線の裏面は、前記第2領域における前記第1方向配線の裏面と同一平面上にあってもよい。
【0013】
本開示の一実施の形態による配線基板において、前記第1領域における前記第1方向配線の表面は、前記第2領域における前記第1方向配線の表面と同一平面上にあってもよい。
【0014】
本開示の一実施の形態による配線基板の製造方法は、配線基板の製造方法であって、透明性を有する基板を準備する工程と、前記基板上に、複数の第1方向配線を含む配線パターン領域と、前記配線パターン領域の前記複数の第1方向配線に電気的に接続された給電部とを形成する工程と、を備え、前記第1方向配線は、前記給電部の近傍に位置する第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを有し、前記第1領域における前記第1方向配線の高さは、前記第2領域における前記第1方向配線の高さよりも高い、配線基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本開示の実施の形態によると、給電部の付近で配線パターン領域の配線が断線することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施の形態による配線基板を示す平面図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態による配線基板を示す拡大平面図(
図1のII部拡大図)である。
【
図3A】
図3Aは、一実施の形態による配線基板を示す断面図(
図2のIIIA-IIIA線断面図)である。
【
図3B】
図3Bは、一実施の形態による配線基板を示す断面図(
図2のIIIB-IIIB線断面図)である。
【
図4】
図4は、一実施の形態による配線基板を示す断面図(
図2のIV-IV線断面図)である。
【
図5】
図5は、一実施の形態による配線基板を示す断面図(
図2のV-V線断面図)である。
【
図6】
図6は、一実施の形態による配線基板を示す断面図である。
【
図7A】
図7A(a)-(e)は、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図7B】
図7B(a)-(e)は、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図8】
図8は、一実施の形態による画像表示装置を示す平面図である。
【
図9】
図9は、一実施の形態による配線基板の変形例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、一実施の形態による配線基板の変形例を示す断面図である。
【
図11】
図11(a)-(d)は、一実施の形態による配線基板の変形例の製造方法を示す断面図である。
【
図12】
図12は、一実施の形態による配線基板の変形例を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、
図1乃至
図8により、一実施の形態について説明する。
図1乃至
図8は本実施の形態を示す図である。
【0018】
以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0019】
本実施の形態において、「X方向」とは、基板の1つの辺に対して平行な方向である。「Y方向」とは、X方向に垂直かつ基板の他の辺に対して平行な方向である。「Z方向」とは、X方向およびY方向の両方に垂直かつ配線基板の厚み方向に平行な方向である。また、「表面」とは、Z方向プラス側の面をいう。「裏面」とは、Z方向マイナス側の面をいう。なお、本実施の形態において、配線パターン領域20が、電波送受信機能(アンテナとしての機能)を有するアンテナパターン領域20である場合を例にとって説明するが、配線パターン領域20は電波送受信機能(アンテナとしての機能)を有していなくても良い。
【0020】
[配線基板の構成]
図1乃至
図6を参照して、本実施の形態による配線基板の構成について説明する。
図1乃至
図6は、本実施の形態による配線基板を示す図である。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態による配線基板10は、例えば画像表示装置のディスプレイ上に配置されるものである。このような配線基板10は、透明性を有する基板11と、基板11上に配置されたアンテナパターン領域(配線パターン領域)20と、を備えている。また、アンテナパターン領域20には、給電部40が電気的に接続されている。
【0022】
このうち基板11は、平面視で略長方形状であり、その長手方向がY方向に平行であり、その短手方向がX方向に平行となっている。基板11は、透明性を有するとともに略平板状であり、その厚みは全体として略均一となっている。基板11の長手方向(Y方向)の長さL1は、例えば100mm以上200mm以下の範囲で選択することができ、基板11の短手方向(X方向)の長さL2は、例えば50mm以上100mm以下の範囲で選択することができる。なお、基板11は、その角部がそれぞれ丸みを帯びていても良い。
【0023】
基板11の材料は、可視光線領域での透明性および電気絶縁性を有する材料であればよい。本実施の形態において基板11の材料はポリエチレンテレフタレートであるが、これに限定されない。基板11の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、或いは、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂材料等の有機絶縁性材料を用いることが好ましい。また、基板11の材料としては、用途に応じてガラス、セラミックス等を適宜選択することもできる。なお、基板11は、単一の層によって構成された例を図示したが、これに限定されず、複数の基材又は層が積層された構造であってもよい。また、基板11はフィルム状であっても、板状であってもよい。このため、基板11の厚さは特に制限はなく、用途に応じて適宜選択できるが、一例として、基板11の厚みT
1(Z方向の長さ、
図3A参照)は、例えば10μm以上200μm以下の範囲とすることができる。
【0024】
図1において、アンテナパターン領域20は、基板11上に複数(3つ)存在しており、それぞれ異なる周波数帯に対応している。すなわち、複数のアンテナパターン領域20は、その長さ(Y方向の長さ)L
aが互いに異なっており、それぞれ特定の周波数帯に対応した長さを有している。なお、対応する周波数帯が低周波であるほどアンテナパターン領域20の長さL
aが長くなっている。配線基板10が例えば画像表示装置90のディスプレイ91(後述する
図8参照)上に配置される場合、各アンテナパターン領域20は、配線基板10が電波送受信機能を有する場合、電話用アンテナ、WiFi用アンテナ、3G用アンテナ、4G用アンテナ、5G用アンテナ、LTE用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、NFC用アンテナ等のいずれかに対応していても良い。あるいは、配線基板10が電波送受信機能を有していない場合、各アンテナパターン領域20は、例えばホバリング(使用者がディスプレイに直接触れなくても操作可能となる機能)、指紋認証、ヒーター、ノイズカット(シールド)等の機能を果たしても良い。
【0025】
各アンテナパターン領域20は、それぞれ平面視で略長方形状である。各アンテナパターン領域20は、その長手方向がY方向に平行であり、その短手方向(幅方向)がX方向に平行となっている。各アンテナパターン領域20の長手方向(Y方向)の長さLaは、例えば3mm以上100mm以下の範囲で選択することができ、各アンテナパターン領域20の短手方向(X方向)の幅Waは、例えば1mm以上25mm以下の範囲で選択することができる。
【0026】
アンテナパターン領域20は、それぞれ金属線が格子形状または網目形状に形成され、X方向およびY方向に均一な繰り返しパターンを有している。すなわち
図2に示すように、アンテナパターン領域20は、X方向に延びる部分(第2方向配線22)とY方向に延びる部分(第1方向配線21)とから構成されるL字状の単位パターン形状20a(
図2の網掛け部分)の繰り返しから構成されている。
【0027】
図2に示すように、各アンテナパターン領域20は、アンテナとしての機能をもつ複数の第1方向配線(配線)21と、複数の第1方向配線21を連結する複数の第2方向配線(連結配線)22とを含んでいる。具体的には、複数の第1方向配線21と複数の第2方向配線22とは、全体として一体となって、規則的な格子形状または網目形状を形成している。各第1方向配線21は、アンテナの周波数帯に対応する方向(Y方向)に延びており、各第2方向配線22は、第1方向配線21に直交する方向(X方向)に延びている。第1方向配線21は、所定の周波数帯に対応する長さL
a(上述したアンテナパターン領域20の長さ、
図1参照)を有することにより、主としてアンテナとしての機能を発揮する。一方、第2方向配線22は、これらの第1方向配線21同士を連結することにより、第1方向配線21が断線したり、第1方向配線21と給電部40とが電気的に接続しなくなったりする不具合を抑える役割を果たす。
【0028】
各アンテナパターン領域20においては、互いに隣接する第1方向配線21と、互いに隣接する第2方向配線22とに取り囲まれることにより、複数の開口部23が形成されている。また、第1方向配線21と第2方向配線22とは互いに等間隔に配置されている。すなわち複数の第1方向配線21は、互いに等間隔に配置され、そのピッチP
1(
図2参照)は、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。また、複数の第2方向配線22は、互いに等間隔に配置され、そのピッチP
2(
図2参照)は、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。このように、複数の第1方向配線21と複数の第2方向配線22とがそれぞれ等間隔に配置されていることにより、各アンテナパターン領域20内で開口部23の大きさにばらつきがなくなり、アンテナパターン領域20を肉眼で視認しにくくすることができる。また、第1方向配線21のピッチP
1は、第2方向配線22のピッチP
2と等しい。このため、各開口部23は、それぞれ平面視略正方形状となっており、各開口部23からは、透明性を有する基板11が露出している。このため、各開口部23の面積を広くすることにより、配線基板10全体としての透明性を高めることができる。なお、各開口部23の一辺の長さL
3(
図2参照)は、例えば0.01μm以上1μm以下の範囲とすることができる。なお、各第1方向配線21と各第2方向配線22とは、互いに直交しているが、これに限らず、互いに鋭角または鈍角に交差していてもよい。また、開口部23の形状は、全面で同一形状同一サイズとするのが好ましいが、場所によって変えるなど全面で均一としなくても良い。
【0029】
図3Aおよび
図3Bに示すように、各第1方向配線21は、その長手方向に垂直な断面(X方向断面)が略長方形形状又は略正方形形状となっている。この場合、第1方向配線21の断面形状は、後述する第1領域26と第2領域27との間で互いに異なっている。すなわち、後述するように、第1領域26における第1方向配線21の高さH
11は、第2領域27における第1方向配線21の高さH
12よりも高くなっている。このため、第1領域26内における第1方向配線21の断面(X方向断面)形状(
図3A参照)は、第2領域27内における第1方向配線21の断面(X方向断面)形状(
図3B参照)よりもZ方向に沿った長さが長い略長方形形状になっている。第1領域26内又は第2領域27内においては、第1方向配線21の断面形状は、それぞれ第1方向配線21の長手方向(Y方向)に沿って略均一となっている。
【0030】
また、
図4に示すように、各第2方向配線22の長手方向に垂直な断面(Y方向断面)の形状は、略長方形形状又は略正方形形状となっている。この場合、第2方向配線22の断面形状は、後述する第1領域26に対応する領域と、後述する第2領域27に対応する領域との間で互いに異なっている。第1領域26に対応する領域内における第2方向配線22の断面(Y方向断面)形状は、第1領域26内での第1方向配線21の断面(X方向断面)形状と略同一である。また、第2領域27に対応する領域内における第2方向配線22の断面(Y方向断面)形状は、第2領域27内での第1方向配線21の断面(X方向断面)形状と略同一である。第1領域26に対応する領域内又は第2領域27に対応する領域内においては、第2方向配線22の断面形状は、それぞれ第2方向配線22の長手方向(X方向)に沿って略均一となっている。
【0031】
なお、第1方向配線21と第2方向配線22の断面形状は、必ずしも略長方形形状又は略正方形形状でなくても良く、例えば表面側(Z方向プラス側)が裏面側(Z方向マイナス側)よりも狭い略台形形状、あるいは、幅方向両側に位置する側面が湾曲した形状であっても良い。
【0032】
本実施の形態において、第1方向配線21の線幅W
1(X方向の長さ、
図2乃至
図3B参照)および第2方向配線22の線幅W
2(Y方向の長さ、
図2および
図4参照)は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。例えば、第1方向配線21の線幅W
1は0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択することができ、第2方向配線22の線幅W
2は、0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択することができる。
【0033】
図2に示すように、複数の第1方向配線21は、Y方向マイナス側においてそれぞれ給電部40に電気的に接続されている。複数の第1方向配線21はそれぞれ、給電部40の近傍に位置する第1領域26と、第1領域26以外の第2領域27とを有している。第1領域26は、第1方向配線21のうちY方向マイナス側に位置する領域であり、給電部40との接続部を含む領域である。また、第2領域27は、第1方向配線21のうちY方向プラス側に位置する領域であり、第1領域26よりも給電部40から遠い位置にある領域である。なお、配線パターン領域20の長手方向(Y方向)において、第2領域27の長さは、第1領域26よりも長い。
【0034】
図5に示すように、第1領域26における第1方向配線21の高さH
11は、第2領域27における第1方向配線21の高さH
12よりも高くなっている。すなわち、第1方向配線21の高さは、給電部40との接続部近傍に位置する第1領域26で高くなっており、給電部40から離れた第2領域27で低くなっている。これにより、他の部分より電流密度が高い領域である給電部40との接続部(第1領域26)で第1方向配線21の高さH
11を高くし、第1方向配線21の断線を抑えることができる。
【0035】
第1領域26における第1方向配線21の高さH11は、第2領域27における第1方向配線21の高さH12の150%以上であり、10μm以下(1.5高さH12≦高さH11≦10μm)とすることが好ましい。高さH11が高さH12の150%以上であることにより、他の部分より電流密度が高い給電部40との接続部の近傍領域で第1方向配線21の高さを高くし、第1方向配線21の断線を抑えることができる。また、高さH11が10μm以下であることにより、後述するように、第1領域26における第1方向配線21を120°の視野角で見たときの最長幅が長くなることを抑制することができる。この場合、第2領域27における第1方向配線21の高さH12は特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができ、例えば0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択することができる。このため、第1領域26における第1方向配線21の高さH11は、例えば、0.15μm以上10μm以下の範囲で選択することができる。なお、本実施の形態において、複数の第1方向配線21の高さH11は全て同一となっている。また、複数の第1方向配線21の高さH12は全て同一となっている。
【0036】
図5において、第1領域26における第1方向配線21の裏面(Z方向マイナス側の面)は、第2領域27における第1方向配線21の裏面(Z方向マイナス側の面)と同一平面上にある。また、第1領域26における第1方向配線21の高さH
11は、第1領域26内で第1方向配線21の長手方向(Y方向)に沿って略均一となっている。さらに、第2領域27における第1方向配線21の高さH
12は、第2領域27内で第1方向配線21の長手方向(Y方向)に沿って略均一となっている。なお、第1方向配線21の線幅W
1(X方向の長さ、
図2乃至
図3B参照)は、第1領域26と第2領域27との間で互いに均一となっている。
【0037】
図2に示すように、第1領域26は、少なくとも給電部40に最も近い(最もY方向マイナス側に位置する)第2方向配線22と、給電部40との間に位置していることが好ましい。
図2においては、第1領域26は、給電部40から2番目に近い(給電部40から見て2番目にY方向プラス側に位置する)第2方向配線22と、給電部40との間に位置している。しかしながら、これに限らず、第1領域26は、給電部40からN番目に近い(Nは3以上)第2方向配線22と、給電部40との間に位置していても良い。
【0038】
具体的には、第1領域26のY方向の長さL
4(Y方向の長さ、
図2参照)は、0.1mm以上0.5mm以下とすることが好ましい。第1領域26のY方向の長さL
4を0.1mm以上とすることにより、他の部分より電流密度が高い給電部40との接続部の近傍領域で第1方向配線21の高さを高くし、第1方向配線21の断線を抑えることができる。また、第1領域26のY方向の長さL
4を0.5mm以下とすることにより、第1方向配線21の高さが高い領域(高さH
11を有する領域)が過度に長くなることがない。すなわち、第1領域26における第1方向配線21を所定の視野角(例えば、120°の視野角)で見たときの最長幅が長くなり得る領域を短くすることができる。
【0039】
ここで、視野角とは、
図6に示すように、基板11の表面に垂直な法線N
Lと、法線N
Lと基板11の表面との交点O
Zに向けた視線L
Dの角度をθとした場合、2×θとなる角度をいう。
【0040】
ところで、
図6に示すように、第1方向配線21の長手方向に対して垂直な断面において、第1方向配線21を、所定の視線L
Dの方向から見た場合の幅W
Dが規定される。視線L
Dの方向から見た場合の幅W
Dとは、視線L
Dに平行な一対の直線L
m、L
nが、断面視で第1方向配線21に接触するときの、一対の直線L
m、L
n間の距離をいう。
【0041】
例えば、第1領域26における第1方向配線21の高さH11と、第1方向配線21の線幅W1とが同一である場合(H11=W1)、120°以下の視野角で見たときの幅WDはθ=45°の場合に最長となり、その値は1.41×W1となる。また、第1領域26における第1方向配線21の高さH11が、第1方向配線21の線幅W1の2倍となる場合(H11=2×W1)、120°以下の視野角で見たときの幅WDは、θ=60°の場合に最長となり、その値は2.23×W1となる。
【0042】
一般に、使用者が配線基板10を視認する場合、その視野角は最大120°程度であると考えられる。したがって、第1方向配線21を120°の視野角で見たときの最長幅を短くすることにより、使用者が第1方向配線21を肉眼で認識しにくくすることができる。また、第1方向配線21を120°の視野角で見たときの最長幅が長くなる領域を短くした場合にも、使用者が第1方向配線21を肉眼で認識しにくくすることができる。
【0043】
上述したように、第1領域26における第1方向配線21の高さH11は、第2領域27における第1方向配線21の高さH12よりも高くなっている。このため、第1領域26においては、所定の視野角で見たときの幅WDが、第2領域27における当該幅WDよりも長くなり得る。したがって、第1領域26のY方向の長さL4を0.5mm以下とすることにより、所定の視野角で見たときの幅WDが長くなる領域が過度に長くなることを抑制することができる。このため、使用者が第1方向配線21を肉眼で認識しにくくすることができる。この結果、配線基板10の全体としての透明性を損なうことを抑制することができる。
【0044】
次に、第1領域26に対応する領域における第2方向配線22について説明する。
図4に示すように、第1領域26に対応する領域における第2方向配線22の高さH
21は、第2領域27に対応する領域における第2方向配線22の高さH
22よりも高くなっている。すなわち、第2方向配線22の高さは、給電部40との接続部近傍に位置する第1領域26に対応する領域で高くなっており、給電部40から離れた第2領域27に対応する領域で低くなっている。これにより、他の部分より電流密度が高い領域である第1領域26に対応する領域で第2方向配線22の高さH
21を高くし、第2方向配線22の断線を抑えることができる。
【0045】
第1領域26に対応する領域における第2方向配線22の高さH21は、第2領域27に対応する領域における第2方向配線22の高さH22の150%以上であり、10μm以下(1.5高さH22≦高さH21≦10μm)とすることが好ましい。高さH21が高さH22の150%以上であることにより、他の部分より電流密度が高い給電部40との接続部の近傍領域で第2方向配線22の高さを高くし、第2方向配線22の断線を抑えることができる。また、高さH21が10μm以下であることにより、第1領域26に対応する領域における第2方向配線22を120°の視野角で見たときの最長幅が長くなることを抑制することができる。この場合、第2領域27に対応する領域における第2方向配線22の高さH22は特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができ、例えば0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択することができる。このため、第1領域26に対応する領域における第2方向配線22の高さH21は、例えば、0.15μm以上10μm以下の範囲で選択することができる。なお、本実施の形態において、複数の第2方向配線22の高さH21は全て同一となっている。また、複数の第2方向配線22の高さH22は全て同一となっている。
【0046】
第1領域26に対応する領域における第2方向配線22の高さH21は、第1領域26に対応する領域内で第2方向配線22の長手方向(X方向)に沿って略均一となっている。また、第2領域27に対応する領域における第2方向配線22の高さH22は、第2領域27に対応する領域内で第2方向配線22の長手方向(X方向)に沿って略均一となっている。なお、第2方向配線22の線幅W2は、第1領域26に対応する領域と第2領域27に対応する領域との間で互いに均一となっている。
【0047】
なお、上述したように、第1領域26のY方向の長さL
4(Y方向の長さ、
図2参照)は、0.5mm以下とすることが好ましい。この場合、第2方向配線22の高さが高い領域(高さH
21を有する領域)が過度に長くなることがない。すなわち、第1領域26に対応する領域における第2方向配線22を所定の視野角(例えば、120°の視野角)で見たときの最長幅が長くなり得る領域を短くすることができる。このため、使用者が第2方向配線22を肉眼で認識しにくくすることができ、配線基板10の全体としての透明性を損なうことを抑制することができる。
【0048】
第1方向配線21および第2方向配線22の材料は、導電性を有する金属材料であればよい。本実施の形態において第1方向配線21および第2方向配線22の材料は銅であるが、これに限定されない。第1方向配線21および第2方向配線22の材料は、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄、ニッケルなどの金属材料(含む合金)を用いることができる。
【0049】
本実施の形態において、アンテナパターン領域20の全体の開口率Atは、例えば87%以上100%未満の範囲とすることができる。アンテナパターン領域20の全体の開口率Atをこの範囲とすることにより、配線基板10の導電性と透明性を確保することができる。なお、開口率とは、所定の領域(例えばアンテナパターン領域20の一部)の単位面積に占める、開口領域(第1方向配線21、第2方向配線22等の金属部分が存在せず、基板11が露出する領域)の面積の割合(%)をいう。
【0050】
再度
図1を参照すると、給電部40は、各アンテナパターン領域20にそれぞれ電気的に接続されている。この給電部40は、略長方形状の導電性の薄板状部材からなる。給電部40の長手方向はX方向に平行であり、給電部40の短手方向はY方向に平行である。また、給電部40は、基板11の長手方向端部(Y方向マイナス側端部)に配置されている。給電部40の材料は、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄、ニッケルなどの金属材料(含む合金)を用いることができる。この給電部40は、配線基板10が画像表示装置90(
図8参照)に組み込まれた際、画像表示装置90の無線通信用回路92と電気的に接続される。なお、給電部40は、基板11の表面に設けられているが、これに限らず、給電部40の一部又は全部が基板11の周縁よりも外側に位置していても良い。
【0051】
給電部40の厚みT
3(
図4および
図5参照)は、第1領域26における第1方向配線21の高さH
11(
図5参照)、および第1領域26に対応する領域における第2方向配線22の高さH
21(
図4参照)と同一とすることができ、例えば0.15μm以上10μm以下の範囲で選択することができる。
【0052】
さらに、
図3A乃至
図5に示すように、基板11の表面上には、アンテナパターン領域20及び給電部40を覆うように保護層17が形成されている。保護層17は、アンテナパターン領域20及び給電部40を保護するものであり、基板11の表面の略全域に形成されていても良い。保護層17の材料としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート等のアクリル樹脂とそれらの変性樹脂と共重合体、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニル樹脂とそれらの共重合体、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアミド、塩素化ポリオレフィン等の無色透明の絶縁性樹脂を用いることができる。また、保護層17の厚みT
2(
図3A参照)は、0.3μm以上100μm以下の範囲で選択することができる。
【0053】
[配線基板の製造方法]
次に、
図7A(a)-(e)および
図7B(a)-(e)を参照して、本実施の形態による配線基板の製造方法について説明する。
図7A(a)-(e)および
図7B(a)-(e)は、本実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【0054】
まず、透明性を有する基板11を準備する。
【0055】
次に、基板11上に、複数の第1方向配線21を含むアンテナパターン領域20と、アンテナパターン領域20に電気的に接続された給電部40とを形成する。
【0056】
この際、まず、
図7A(a)に示すように、基板11の表面の略全域に導電層51を形成する。本実施の形態において導電層51の厚さは、200nmである。しかしながらこれに限定されず、導電層51の厚さは10nm以上1000nm以下の範囲で適宜選択することができる。本実施の形態において導電層51は、銅を用いてスパッタリング法によって形成する。導電層51を形成する方法としては、蒸着法、プラズマCVD法、無電解めっき法等を用いても良い。
【0057】
次に、
図7A(b)に示すように、基板11の表面の略全域に光硬化性絶縁レジスト52を供給する。この光硬化性絶縁レジスト52としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ系樹脂等の有機樹脂を挙げることができる。なお、いわゆるネガ型(光硬化性絶縁)レジストの他、いわゆるポジ型(光溶解性絶縁)レジストを使用しても良い。
【0058】
続いて、
図7A(c)に示すように、絶縁層54をフォトリソグラフィ法により形成する。この場合、フォトリソグラフィ法により光硬化性絶縁レジスト52をパターニングし、トレンチ54aが形成された絶縁層54(レジストパターン)を形成する。トレンチ54aは、第1方向配線21および第2方向配線22に対応する平面形状パターンを有する。また、この際、第1方向配線21および第2方向配線22に対応する導電層51が露出するように、絶縁層54を形成する。
【0059】
なお、これに限らず、絶縁層54の表面に、インプリント法によってトレンチ54aを形成することができる。この場合、トレンチ54aに対応した凸部を有する透明なインプリント用のモールドを準備し、このモールドと基板11とを近接させて、モールドと基板11との間に光硬化性絶縁レジスト52を展開する。次に、モールド側から光照射を行い、光硬化性絶縁レジスト52を硬化させることにより、絶縁層54を形成する。これにより、絶縁層54の表面に、凸部が転写された形状をもつトレンチ54aが形成される。その後モールドを絶縁層54から剥離することで、
図7A(c)に示す断面構造の絶縁層54を得ることができる。ここで、図示はしないが、絶縁層54のトレンチ54aの底部には、絶縁材料の残渣が残ることがある。このため過マンガン酸塩溶液やN-メチル-2-ピロリドンを用いたウェット処理や、酸素プラズマを用いたドライ処理を行うことによって、絶縁材料の残渣を除去する。このように、絶縁材料の残渣を除去することによって、
図7A(c)に示すように導電層51を露出したトレンチ54aを形成することができる。
【0060】
次に、
図7A(d)に示すように、絶縁層54のトレンチ54aを、導電体55で充填する。本実施の形態において、導電層51をシード層として、電解メッキ法を用いて絶縁層54のトレンチ54aを銅で充填する。
【0061】
次に、
図7A(e)に示すように、絶縁層54上および導電体55上の略全域に光硬化性絶縁レジスト56を供給する。この光硬化性絶縁レジスト56としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ系樹脂等の有機樹脂を挙げることができる。
【0062】
続いて、
図7B(a)に示すように、レジストパターン57をフォトリソグラフィ法により形成する。この場合、フォトリソグラフィ法により光硬化性絶縁レジスト56をパターニングし、レジストパターン57を形成する。このレジストパターン57は、第2領域27における第1方向配線21および第2領域27に対応する領域における第2方向配線22に対応する平面形状パターンを有する。また、この際、第1方向配線21および第2方向配線22に対応する導電体55が露出するように、レジストパターン57を形成する。
【0063】
次に、
図7B(b)に示すように、導電体55のうちレジストパターン57によって覆われていない領域を、エッチング液を用いてエッチングする。銅に対するエッチング液としては、例えば、塩化第二鉄、塩化第二銅、過酸化水素、硫酸・塩酸等の強酸、過硫酸塩、またはこれらの水溶液、組合せ等を用いてもよい。
【0064】
続いて、
図7B(c)に示すように、レジストパターン57および絶縁層54を除去する。この場合、過マンガン酸塩溶液やN-メチル-2-ピロリドン、酸またはアルカリ溶液等を用いたウェット処理や、酸素プラズマを用いたドライ処理を行うことによって、基板11上のレジストパターン57および絶縁層54を除去する。
【0065】
その後、
図7B(d)に示すように、基板11の表面上の導電層51を除去する。この際、過酸化水素水を用いたウェット処理を行うことによって、基板11の表面が露出するように導電層51をエッチングする。このようにして、基板11と、基板11上に配置されたアンテナパターン領域20と、を備える配線基板10が得られる。この場合、アンテナパターン領域20は、第1方向配線21および第2方向配線22を含む。上述した導電体55は、第1方向配線21と、第2方向配線22とを含んでいる。このとき、導電体55の一部によって、給電部40が形成されても良い。あるいは、平板状の給電部40を別途準備し、この給電部40を配線パターン領域20に電気的に接続しても良い。
【0066】
その後、
図7B(e)に示すように、基板11上のアンテナパターン領域20及び給電部40を覆うように保護層17を形成する。保護層17を形成する方法としては、ロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、マイクログラビアコート、スロットダイコート、ダイコート、ナイフコート、インクジェットコート、ディスペンサーコート、キスコート、スプレーコート、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷を用いても良い。
【0067】
[本実施の形態の作用]
次に、このような構成からなる配線基板の作用について述べる。
【0068】
図8に示すように、配線基板10は、ディスプレイ91を有する画像表示装置90に組み込まれる。配線基板10は、ディスプレイ91上に配置される。このような画像表示装置90としては、例えばスマートフォン、タブレット等の携帯端末機器を挙げることができる。配線基板10のアンテナパターン領域20は、給電部40を介して画像表示装置90の無線通信用回路92に電気的に接続される。このようにして、アンテナパターン領域20を介して、所定の周波数の電波を送受信することができ、画像表示装置90を用いて通信を行うことができる。
【0069】
ところで、一般に、アンテナパターン領域20を用いて電波を送受信している間、アンテナパターン領域20のうち、給電部40付近において電流密度が高くなる傾向がある。このため、給電部40付近の第1方向配線21においては、とりわけ長期間にわたって配線基板10を使用した場合、第1方向配線21の他の部分と比べて断線が生じやすい。これに対して本実施の形態においては、給電部40の近傍に位置する第1領域26における第1方向配線21の高さH11が、第1領域26以外の第2領域27における第1方向配線21の高さH12よりも高くなっている。これにより、電流密度が高くなりやすく、長期間使用した際に断線が生じやすい給電部40の近傍(第1領域26)における第1方向配線21の強度を高め、第1方向配線21の断線を抑制することができる。とりわけ、第1領域26における第1方向配線21の高さH11が、第2領域27における第1方向配線21の高さH12よりも高くなっていることにより、例えば、第1領域26における第1方向配線21の線幅W1を太くすることなく、第1方向配線21の断線を抑制することができる。このため、配線基板10の全体としての透明性を損なうおそれもない。また、配線基板10を作製する工程においても、給電部40付近の第1方向配線21は、他の部分に比べて断線が生じやすい。このため、給電部40の近傍(第1領域26)における第1方向配線21の強度を高め、配線基板10の製造時に第1方向配線21が断線することを抑制することができる。
【0070】
また、第1領域26における第1方向配線21の高さH11が、第2領域27における第1方向配線21の高さH12よりも高くなっていることにより、給電部40の厚みT3と、第1方向配線21の高さH11との間の差を小さく(またはゼロに)することが容易になる。このため、給電部40と、第1領域26との間のインピーダンス整合を容易に取ることができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、配線基板10は、透明性を有する基板11と、基板11上に配置され、複数の第1方向配線21を含むアンテナパターン領域20とを備えるので、配線基板10の透明性が確保されている。これにより、配線基板10がディスプレイ91上に配置されたとき、アンテナパターン領域20の開口部23からディスプレイ91を視認することができ、ディスプレイ91の視認性が妨げられることがない。
【0072】
また、本実施の形態によれば、アンテナパターン領域20は、複数の第1方向配線21を連結する複数の第2方向配線22を含む。これにより、第1方向配線21を断線しにくくすることができ、第1方向配線21の機能が低下することを抑制することができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、アンテナパターン領域20の第1領域26は、少なくとも給電部40に最も近い第2方向配線22と、給電部40との間に位置する。これにより、給電部40との接続部の近傍で第1方向配線21の高さH11を高くし、第1方向配線21の強度を高めて断線を抑えることができる。また、第1方向配線21の高さH11が高い領域が過度に長くなることがないので、第1領域26における第1方向配線21を所定の視野角で見たときの最長幅が長くなり得る領域を短くすることができる。このため、配線基板10の全体としての透明性を損なうおそれがない。
【0074】
(変形例)
次に、
図9乃至
図12を参照して、配線基板の各種変形例について説明する。
図9乃至
図12は、配線基板の各種変形例を示す図である。
図9乃至
図12に示す変形例は、アンテナパターン領域20の第1方向配線21の構成が異なるものであり、他の構成は上述した
図1乃至
図8に示す実施の形態と略同一である。
図9乃至
図12において、
図1乃至
図8に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0075】
(変形例1)
図9は、変形例1による配線基板10Aを示している。
図9において、第1領域26における第1方向配線21の高さH
11は、第1方向配線21の長手方向(Y方向)に沿って不均一となっている。すなわち、第1領域26における第1方向配線21の高さH
11は、給電部40近傍が最も高く、第2領域27近傍が最も低くなっている。この場合、第1領域26における第1方向配線21の高さH
11は、給電部40から遠ざかるにつれて段階的に低くなっている。図示された例において、第1領域26における第1方向配線21の高さH
11は、2段階にわたって低くなるように変化している。しかしながら、これに限らず、第1領域26における第1方向配線21の高さH
11は、給電部40近傍から第2領域27近傍まで1段階または3段階以上にわたって低くなっていても良い。
図9に示す構成とした場合においても、第1領域26のうち、より電流密度の高い給電部40との接続部における強度を高め、給電部40との接続部における第1方向配線21の断線を抑えることができる。
【0076】
(変形例2)
図10は、変形例2による配線基板10Bを示している。
図10において、第1領域26における第1方向配線21の表面が、第2領域における第1方向配線21の表面と同一平面上にある。この場合においても、電流密度が高くなりやすく、長期間使用した際に断線が生じやすい第1領域26における第1方向配線21の強度を高め、第1方向配線21の断線を抑制することができる。
【0077】
本変形例による配線基板10Bは、例えば、いわゆる転写法により製造されても良い。この場合、まず、基材11aを準備する。この基材11aとしては、基板11と同様のものを使用しても良い。
【0078】
次に、
図11(a)に示すように、基材11a上に、離型層11bおよび保護層17を順番に形成する。この際、離型層11bは、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリオール樹脂、セルロース樹脂及びシリコーン樹脂等の樹脂材料を含んでいても良い。この離型層11bは、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法等の公知の手段により、基材11a上に塗布して塗膜を形成させ、これを乾燥させることにより形成できる。
【0079】
次いで、
図11(b)に示すように、保護層17上に、第1方向配線21および第2方向配線22に対応する導電体55を形成する。この場合、導電体55は、例えば
図7A(a)-(e)および
図7B(a)-(d)に示す方法により形成されても良い。
【0080】
また、基板11を準備する。次に、
図11(c)に示すように、導電体55と、基板11とを接合する。この際、例えば、まず、導電体55上に図示しない接着層を形成する。そして、接着層を介して、導電体55を基板11に接合させる。
【0081】
その後、基材11aおよび離型層11bを保護層17から剥離する。これにより、
図11(d)に示すように、配線基板10Bが得られる。
【0082】
(変形例3)
図12は、変形例3による配線基板10Cを示している。
図12において、第1方向配線21と第2方向配線22とは、斜めに交わっており、各開口部23は、平面視で菱形状に形成されている。第1方向配線21および第2方向配線22は、それぞれX方向及びY方向のいずれに対しても非平行となっている。給電部40に隣接する位置において、給電部40と第1方向配線21と第2方向配線22とによって取り囲まれる領域28は、非開口部となっている。この領域28は、平面視で三角形となっている。すなわち領域28には、第1方向配線21、第2方向配線22および給電部40を構成する金属が充填されており、基板11が露出していない。これにより、電流密度が高くなりやすく長期間使用した際に断線が生じやすい給電部40の近傍(第1領域26)における第1方向配線21および第2方向配線22の強度を高め、第1方向配線21及び第2方向配線22の断線を抑制することができる。
【0083】
なお、給電部40と第1方向配線21と第2方向配線22とによって取り囲まれる複数の領域28の全てが非開口部となっていても良く、複数の領域28の一部のみが非開口部となっていても良い。後者の場合、例えば配線パターン領域20の幅方向(X方向)中央部近傍に位置する複数の領域28を開口部とし、配線パターン領域20の幅方向(X方向)縁部近傍に位置する複数の領域28を非開口部としても良い。
【0084】
ところで、一般に、アンテナパターン領域20を用いて電波を送受信している間、アンテナパターン領域20を流れる電流値は幅方向(X方向)に均一にならない。具体的には、アンテナパターン領域20の幅方向縁部を流れる電流値は、アンテナパターン領域20の幅方向中央部を流れる電流値よりも大きくなる。これに対して、例えば配線パターン領域20の幅方向中央部近傍に位置する複数の領域28を開口部とし、配線パターン領域20の幅方向縁部近傍に位置する複数の領域28を非開口部とした場合、流値が高い配線パターン領域20の幅方向縁部における金属部の密度を、電流値が低い配線パターン領域20の幅方向中央部における金属部の密度よりも高くすることができる。これにより、配線パターン領域20の幅方向中央部と幅方向縁部とで電流分布が均一化されるため、配線パターン領域20の特性(アンテナ特性等)をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0085】
10 配線基板
11 基板
20 アンテナパターン領域
21 第1方向配線
22 第2方向配線
26 第1領域
27 第2領域
40 給電部