IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

特許7593056印刷装置、印刷装置の制御方法、及びプログラム
<>
  • 特許-印刷装置、印刷装置の制御方法、及びプログラム 図1
  • 特許-印刷装置、印刷装置の制御方法、及びプログラム 図2
  • 特許-印刷装置、印刷装置の制御方法、及びプログラム 図3
  • 特許-印刷装置、印刷装置の制御方法、及びプログラム 図4
  • 特許-印刷装置、印刷装置の制御方法、及びプログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷装置の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20241126BHJP
   H04N 1/21 20060101ALI20241126BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H04N1/00 885
H04N1/00 912
H04N1/00 127Z
H04N1/21
B41J29/38 104
B41J29/38 201
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020181600
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072255
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 元
(72)【発明者】
【氏名】島村 泰浩
(72)【発明者】
【氏名】林 聖悟
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174374(JP,A)
【文献】特開2009-044452(JP,A)
【文献】特開2013-086407(JP,A)
【文献】特開2004-201027(JP,A)
【文献】特開2016-022614(JP,A)
【文献】特開2006-338524(JP,A)
【文献】特開2019-123214(JP,A)
【文献】特開2018-171879(JP,A)
【文献】特開2017-205876(JP,A)
【文献】特開2019-134421(JP,A)
【文献】特開2000-228738(JP,A)
【文献】特開2008-028585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/21
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷を実行する印刷部と、
USB Power Delivery規格に準拠した電力授受を行うインタフェースと、
制御部と、
FAXデータを含むFAXジョブの送受信を実行するFAX通信部と、
を備え、
前記制御部は、
前記インタフェースを介して外部機器へ所定の供給電力量の電力を供給している状態において、前記印刷部による印刷を指示する印刷ジョブを受け付けた場合、第1条件を満たすか前記第1条件と異なる第2条件を満たすかを判断する判断処理と、
前記判断処理の結果、前記第1条件を満たすと判断する場合、前記インタフェースを介して前記外部機器へ供給する前記供給電力量を制限し、前記印刷ジョブに基づいて前記印刷部により印刷を実行する印刷処理と、
前記判断処理の結果、前記第2条件を満たすと判断する場合、前記インタフェースを介して前記外部機器へ供給する前記供給電力量を制限せずに、前記印刷ジョブに基づく前記印刷部による印刷の実行を保留する保留処理と、
を実行し、
前記印刷ジョブが、前記FAX通信部を介して受信した前記FAXジョブである場合、前記第2条件を満たすと判断する、印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記インタフェースを介して前記外部機器へ電力を供給していない状態において、前記印刷ジョブを受け付けた場合、前記第1条件及び前記第2条件に関わらず、前記印刷ジョブに基づいて前記印刷部により印刷を実行する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
記印刷ジョブは、
前記FAX通信部を介して受信した前記FAXジョブであり、
前記制御部は、
前記印刷ジョブに基づく前記印刷部による印刷の実行を保留する時間帯を示す印刷保留時間情報を取得し、現在時間が、前記印刷保留時間情報が示す前記時間帯の時間である場合、前記第2条件を満たすと判断する、請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
記制御部は、
前記FAX通信部を介して受信した前記FAXジョブに設定された送信元情報が、前記FAX通信部を介して前記FAXジョブを送信する送信先情報を登録したアドレス情報に前記送信先情報として設定されていない場合、前記第2条件を満たすと判断する、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷ジョブは、
前記FAX通信部を介して受信した前記FAXジョブであり、
前記制御部は、
受け付けた前記FAXジョブの印刷枚数が、閾値枚数以下である場合、前記第2条件を満たすと判断する、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、
受け付けた前記印刷ジョブの送信元情報に基づいて、前記印刷ジョブの送信元の装置と、自装置との間の距離が、所定の距離以上だけ離れていると判断した場合、前記第2条件を満たすと判断する、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷部に電力を供給する電源部を備え、
前記制御部は、
前記印刷部による印刷の実行を保留した後、印刷の実行を保留した前記印刷ジョブに基づく印刷に必要な電力量が、前記電源部から供給可能な電源容量以上であるか否かを判断する電力量判断処理を実行し、
前記電力量判断処理の結果、印刷に必要な電力量が前記電源容量より小さいと判断した場合、印刷の実行を保留した前記印刷ジョブに基づく印刷を実行する、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
ユーザインタフェースを備え、
前記制御部は、
前記印刷部による印刷の実行を保留した後、保留している印刷の実行を開始する指示を、前記ユーザインタフェースを介して受け付けたか否かを判断する実行指示判断処理を実行し、
前記実行指示判断処理の結果、実行を開始する指示を受け付けた場合、印刷の実行を保留した前記印刷ジョブに基づく印刷を実行する、請求項1から請求項7の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記印刷部による印刷の実行を保留した後、前記印刷ジョブに基づく前記印刷部による印刷の実行を保留する時間帯を示す印刷保留時間情報を取得し、現在時間が、前記印刷保留時間情報が示す前記時間帯の時間外であるか否かを判断する時間帯判断処理と、
前記時間帯判断処理の結果、現在時間が前記時間帯の時間外である場合、印刷の実行を保留した前記印刷ジョブに基づく印刷を実行する、請求項1から請求項8の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
印刷の実行を保留した前記印刷ジョブに係わるデータを記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、
前記印刷部による印刷の実行を保留した後、前記記憶部の空き容量が、所定の閾値容量以下であるか否かを判断する空き容量判断処理と、
前記空き容量判断処理の結果、前記記憶部の空き容量が、所定の閾値容量以下である場合、前記印刷ジョブに係わるデータを前記記憶部から読み出して印刷を実行し、読み出したデータを前記記憶部から削除する、請求項1から請求項9の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項11】
近距離無線通信部を備え、
前記制御部は、
前記印刷ジョブを、前記近距離無線通信部を介して受信した場合、前記第1条件を満たすと判断する、請求項1から請求項10の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記印刷ジョブが、有線ケーブルのみを介して接続された装置から受信したジョブである条件、前記印刷ジョブが、前記インタフェースに接続された外部メモリに記憶された印刷データを読み出して実行するジョブである条件、前記印刷ジョブが、前記印刷装置が備えるユーザインタフェースに対する操作入力に基づいて発生したジョブである条件、の何れかの条件を満たした場合、前記第1条件を満たすと判断する、請求項1から請求項11の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記制御部による前記判断処理を実行せずに、受け付けた全ての前記印刷ジョブについて、前記インタフェースを介して外部機器へ供給する前記供給電力量を制限せずに、前記印刷ジョブに基づく前記印刷部による印刷の実行を保留する電力供給優先モードと、
前記制御部による前記判断処理を実行する印刷保留モードと、
前記制御部による前記判断処理を実行せずに、受け付けた全ての前記印刷ジョブについて、前記インタフェースを介して前記外部機器へ供給する前記供給電力量を制限し、前記印刷ジョブに基づいて前記印刷部により印刷を実行する印刷優先モードと、
を備える請求項1から請求項12の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記印刷ジョブは、
他の前記印刷ジョブに対する優先度を示す優先度情報を設定され、
前記制御部は、
受け付けた前記印刷ジョブに設定された前記優先度情報が示す優先度が、所定の優先度以上である場合、前記第1条件を満たすと判断する、請求項1から請求項13の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項15】
印刷を実行する印刷部と、USB Power Delivery規格に準拠した電力授受を行うインタフェースと、制御部と、FAXデータを含むFAXジョブの送受信を実行するFAX通信部と、を備える印刷装置の制御方法であって、
前記インタフェースを介して外部機器へ所定の供給電力量の電力を供給している状態において、前記印刷部による印刷を指示する印刷ジョブを受け付けた場合、第1条件を満たすか前記第1条件と異なる第2条件を満たすかを判断する判断工程と、
前記判断工程の結果、前記第1条件を満たすと判断する場合、前記インタフェースを介して前記外部機器へ供給する前記供給電力量を制限し、前記印刷ジョブに基づいて前記印刷部により印刷を実行する印刷工程と、
前記判断工程の結果、前記第2条件を満たすと判断する場合、前記インタフェースを介して前記外部機器へ供給する前記供給電力量を制限せずに、前記印刷ジョブに基づく前記印刷部による印刷の実行を保留する保留工程と、
を含
前記印刷ジョブが、前記FAX通信部を介して受信した前記FAXジョブである場合、前記第2条件を満たすと判断する、印刷装置の制御方法。
【請求項16】
印刷を実行する印刷部と、USB Power Delivery規格に準拠した電力授受を行うインタフェースと、FAXデータを含むFAXジョブの送受信を実行するFAX通信部と、を備える印刷装置の制御をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記インタフェースを介して外部機器へ所定の供給電力量の電力を供給している状態において、前記印刷部による印刷を指示する印刷ジョブを受け付けた場合、第1条件を満たすか前記第1条件と異なる第2条件を満たすかを判断する判断処理と、
前記判断処理の結果、前記第1条件を満たすと判断する場合、前記インタフェースを介して前記外部機器へ供給する前記供給電力量を制限し、前記印刷ジョブに基づいて前記印刷部により印刷を実行する印刷処理と、
前記判断処理の結果、前記第2条件を満たすと判断する場合、前記インタフェースを介して前記外部機器へ供給する前記供給電力量を制限せずに、前記印刷ジョブに基づく前記印刷部による印刷の実行を保留する保留処理と、
を実行させ、
前記印刷ジョブが、前記FAX通信部を介して受信した前記FAXジョブである場合、前記第2条件を満たすと判断させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外部機器へ電力を供給する印刷装置、印刷装置の制御方法、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インタフェースを介して外部機器へ電力を供給する印刷装置が種々提案されている。例えば、特許文献1の印刷装置は、USB PD(USB Power Delivery)規格のUSBインタフェースから外部機器へ電力を供給している。印刷装置は、外部機器へ電力を供給中に印刷指示を受け付けた場合、外部機器に供給する供給電力量を減らした後、受け付けた印刷指示に基づく印刷を実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6448200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した印刷装置は、外部機器から印刷指示を受け付けたことを条件に、外部機器に供給する供給電力量を減らしている。外部機器は、供給電力量が減らされると、電力不足となる虞がある。外部機器は、印刷指示の種類に係わらず、印刷装置に印刷指示が受信される度に、供給電力量を減らされ、電力不足となる虞がある。
【0005】
本願は、上記の課題に鑑み提案されたものであって、電力の供給先である外部機器における電力不足の発生を抑制できる印刷装置、印刷装置の制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、印刷を実行する印刷部と、インタフェースと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記インタフェースを介して外部機器へ所定の供給電力量の電力を供給している状態において前記印刷部による印刷を指示する印刷ジョブを受け付けた場合、第1条件を満たすか前記第1条件と異なる第2条件を満たすかを判断する判断処理と、前記判断処理の結果、前記第1条件を満たすと判断する場合、前記インタフェースを介して前記外部機器へ供給する前記供給電力量を制限し、前記印刷ジョブに基づいて前記印刷部により印刷を実行する印刷処理と、前記判断処理の結果、前記第2条件を満たすと判断する場合、前記インタフェースを介して外部機器へ供給する前記供給電力量を制限せずに、前記印刷ジョブに基づく前記印刷部による印刷の実行を保留する保留処理と、を実行する印刷装置を開示する。
【0007】
尚、本願の内容は、印刷装置としての実施に限らず、種々の形態により実施することができる。本願の内容は、印刷装置を制御する制御方法、印刷装置を制御するコンピュータで実行するプログラムとして実施しても有益である。
【発明の効果】
【0008】
本願に係る印刷装置等によれば、電力の供給先である外部機器における電力不足の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図2】ユーザインタフェースに表示する印刷保留設定画面を示す図である。
図3】印刷保留判断処理の内容を示すフローチャートである。
図4】保留印刷ジョブ処理の内容を示すフローチャートである。
図5】ユーザインタフェースに表示する保留印刷情報画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の印刷装置を具体化した一実施形態である携帯型のプリンタ1について図1を参照しつつ説明する。
【0011】
(1.携帯型のプリンタの構成)
図1は、実施形態の携帯型のプリンタ1の電気的構成を示している。プリンタ1は、例えば、持ち運び可能な携帯型の印刷装置であり、PCやスマートフォン等との間で有線通信又は無線通信を介して受信した印刷ジョブの画像データを所定のシート(感熱紙など)に印刷等する。プリンタ1は、CPU12、RAM13、ROM14、NVRAM15、印刷部16、画像読取部17、USB(Universal Serial Bus)接続部19、ユーザインタフェース20、通信部21、近距離無線通信部22、FAX通信部23、電力コントローラ25、電源部27などを備えている。これらのCPU12等は、バス11で互いに接続され、通信可能となっている。
【0012】
ROM14は、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリであり、制御プログラム41などの各種プログラムを記憶している。例えば、CPU12は、ROM14から読み出した制御プログラム41を実行して、プリンタ1のシステムを起動する。制御プログラム41は、本願のプログラムの一例である。尚、上記した制御プログラム41の記憶先は一例である。例えば、制御プログラム41を、NVRAM15やハードディスクに記憶しても良い。また、制御プログラム41の記憶先は、コンピュータが読み取り可能なストレージ媒体であってもよい。コンピュータが読み取り可能なストレージ媒体としては、上記の例の他に、CD-ROM、DVD-ROM等の記録媒体を採用しても良い。
【0013】
制御プログラム41は、例えば、プリンタ1の各部を統括的に制御するファームウェアである。CPU12は、制御プログラム41を実行し、実行した処理結果をRAM13に一時的に記憶させながら、バス11で接続された各部を制御する。尚、以下の説明では、制御プログラム41を実行するCPU12のことを、単にCPU12として記載する場合がある。例えば、「CPU12が」という記載は、「制御プログラム41を実行するCPU12が」ということを意味する場合がある。
【0014】
NVRAM15は、不揮発性のメモリである。NVRAM15は、プリンタ1の各種設定情報等が記憶される。本実施形態のNVRAM15には、アドレス情報33、保留設定情報34が記憶されている。アドレス情報33は、FAXの送信先の情報であり、例えば、登録番号、相手先の名前、電話番号等の情報を関連付けて記憶されている。ユーザは、例えば、ユーザインタフェース20を操作することで、アドレス情報33を編集することができる。保留設定情報34は、印刷を保留する設定情報である。保留設定情報34の詳細については後述する。また、プリンタ1は、後述するように、印刷指示を受け付けた印刷の実行を保留する場合、印刷指示に係わる印刷ジョブのデータをNVRAM15に記憶する。
【0015】
印刷部16は、例えば、ライン型のサーマルヘッド47を備え、CPU12の制御に基づいて、ダイレクトサーマル方式によりシートに画像を印刷する。印刷部16は、サーマルヘッド47に対向して設けられたプラテンローラ48を回転させシートを搬送する。例えば、印刷を開始する際に、プリンタ1の挿入口にシートが挿入されると、挿入されたシートは、プラテンローラ48とサーマルヘッド47との対向部分に案内され、印刷完了後に排出口より排出される。
【0016】
尚、上記した印刷部16の構成は、一例である。印刷部16は、トナーカートリッジ、感光ドラム、現像ローラ、露光装置等を備え、電子写真方式により印刷を実行する構成でも良い。あるいは、印刷部16は、例えば、インクジェットヘッドやインクカートリッジ等を備え、インクジェット方式で印刷する構成であっても良い。
【0017】
画像読取部17は、不図示の原稿台及びCIS(Contact Image Sensor)やCCD(Charge-Coupled Device)等のイメージセンサを備える。画像読取部17は、原稿台に載置された原稿に対してCIS等を移動させ、原稿を読み取り、画像データを生成しRAM13に記憶する。
【0018】
また、USB接続部19は、例えば、USB PD(USB Power Delivery)規格に準拠した通信や電力授受を行うインタフェースである。USB接続部19は、コネクタとしてレセプタクル51を備える。USB接続部19は、レセプタクル51に接続された様々な外部機器61との間で、データ通信や電力授受を行う。図1では、一例として、1つのレセプタクル51に、1台の外部機器61が接続されている。この外部機器としては、例えば、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、ノートパソコン、プリンタ、外付けハードディスク、USBメモリ、カードリーダーなど、USB規格の通信で接続可能な様々な機器を採用できる。尚、USB接続部19は、複数のレセプタクル51を備えても良い。
【0019】
レセプタクル51は、例えば、USB Type-C規格に準拠したコネクタである。レセプタクル51は、データ通信や電力授受を行うための複数の信号線を備える。例えば、レセプタクル51は、複数の信号線として、USB Type-C規格のコネクタにおけるTX信号線、RX信号線、D信号線、Vbus信号線、CC信号線、グランド信号線などを備える。尚、信号線とは、ピンとも言い得る。レセプタクル51は、例えば、TX信号線、RX信号線、D信号線のいずれかを用いてデータ通信を行う。D信号線とは、例えば、Data信号線であり、D+/D-を指す。また、レセプタクル51は、Vbus信号線を用いて電力の供給、電力の受電を行う。
【0020】
また、CC信号線は、例えば、電力ロールを決定するために用いられる信号線であり、レセプタクル51に接続するプラグの表裏に対応してCC1信号線、CC2信号線を備えている。尚、CC信号線は、アラートメッセージなどの機器管理に関する通信の信号線としても用いることができる。レセプタクル51は、電力を供給する電力ロールである電力ソース、又は電力を受電する電力ロールである電力シンクに切り替え可能なデュアル・ロール・パワー(DRP)機能を有している。
【0021】
電力コントローラ25は、USB接続部19を介した電力の授受及びデータの送受信を制御する。電力コントローラ25は、例えば、レセプタクル51に外部機器61を接続された際のCC信号線の接続状態(CC信号線の電位など)に基づいて電力ロールを決定し、電力授受のネゴシエーションを実行する。ここでいうネゴシエーションとは、例えば、電力ソース又は電力シンクの設定、授受する電力量の設定などを行う処理である。
【0022】
電力コントローラ25は、例えば、電力ソースとして機能させるレセプタクル51について、Vbus信号線を介して供給する供給電力量Wの設定などのネゴシエーションを実行する。電力コントローラ25は、例えば、CPU12の制御に基づいて、供給電力量Wの電力リストを外部機器61へ送信する。ここでいう電力リストとは、プリンタ1が電力ソースとして供給可能な供給電圧Vsの電圧値と供給電流Asの電流値との組み合わせを示す情報である。電力リストとは、プロファイルとも言い得る。電圧値と電流値の組み合わせは、PDO(Power Data Object)とも言い得る。例えば、本実施形態のUSB接続部19を介した電力授受では、10W(5V、2A)~100W(20V、5A)までの電力量の範囲で、電力ソースから電力シンクへ電力を供給できる。電力リストは、この電力量の範囲内のうち、電力ソースとして機能するプリンタ1が供給可能な電圧値及び電流値の組み合わせ(PDO)を示す情報である。
【0023】
電力コントローラ25は、送信した電力リストの中から受電したい電圧値と電流値の組み合わせを、電力シンクとして機能する外部機器61から受信する。電力コントローラ25は、要求された電圧値の供給電圧Vsと、電流値の供給電流Asの供給電力量Wを供給可能であれば、その供給電力量Wを外部機器61に供給する。
【0024】
また、図1に示すように、電力コントローラ25は、メモリ26を備えている。メモリ26には、プログラムPGが記憶されている。電力コントローラ25は、CPUなどの処理回路を備え、処理回路でプログラムPGを実行することで、電源部27の制御等を実行する。メモリ26は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリなどが組み合わされて構成されている。
【0025】
電源部27は、プリンタ1内の各装置の電源として機能し、各装置へ電力を供給する。電源部27は、電源コード28、バッテリ31等を備えている。電源部27は、電源コード28を介してAC電源から受電した交流電圧から所望の電圧値の直流電圧を生成し、生成した直流電圧をプリンタ1内の各装置へ供給する。また、電源部27は、バッテリ31から供給される直流電圧を変圧してプリンタ1内の各装置へ供給する直流電圧を生成する。従って、プリンタ1は、AC電源を接続されていない場合でも、バッテリ31によって駆動可能となっている。また、電源部27は、電源コード28を介して供給された電力や、USB接続部19を介して外部機器61から受電した電力によりバッテリ31を充電可能となっている。尚、電源部27は、バッテリ31を備えなくとも良い。
【0026】
また、電源部27は、USB接続部19に接続されている。電源部27は、USB接続部19から外部機器61へ供給する供給電力量W(供給電圧Vs,供給電流As)の電力を、電源コード28を介して受電した交流電圧やバッテリ31から供給される直流電圧から生成する。
【0027】
ユーザインタフェース20は、例えば、タッチパネルであり、液晶パネル、液晶パネルの背面側から光を照射するLED等の光源、液晶パネルの表面に貼り合わされた接触感知膜等を備えている。ユーザインタフェース20は、プリンタ1に対する操作を受け付け、操作入力に応じた信号をCPU12へ出力する。また、ユーザインタフェース20は、プリンタ1に係わる情報の表示を行う。ユーザインタフェース20は、CPU12の制御に基づいて液晶パネルの表示内容を変更する。尚、ユーザインタフェース20は、ハードキーなどの操作ボタンを備えても良い。また、ユーザインタフェース20は、タッチパネルのような表示部と操作部とを一体的に備える構成に限らず、表示部と操作部とを別で備える構成でも良い。
【0028】
通信部21は、有線通信や無線通信が可能な通信装置である。通信部21は、例えば、LANケーブル、ルータ等の有線ネットワーク62を介してPC63と接続されている。CPU12は、PC63から通信部21を介して画像形成ジョブJOB1を受信する。画像形成ジョブJOB1は、例えば、画像データを含み、その画像データに基づく印刷を指示する情報である。CPU12は、受信した画像形成ジョブJOB1の画像データに基づいて印刷部16による印刷を実行する。また、CPU12は、通信部21を介してスキャンジョブ等の他のジョブを受信することができる。以下の説明では、画像形成ジョブJOB1やスキャンジョブ等のプリンタ1に対する指示情報を、ジョブという場合がある。また、ジョブの中で印刷を指示するものを、印刷ジョブという場合がある。尚、通信部21の通信手段は、有線通信に限らず、WiFi(登録商標)等の無線通信でも良い。また、通信部21を介して画像形成ジョブJOB1等のジョブをプリンタ1へ送信する装置は、PC63に限らず、スマートフォン、サーバ装置等でも良い。また、通信部21が接続されるネットワークは、ローカルエリアネットワークに限らず、インターネットなどの広域ネットワークでも良い。従って、プリンタ1は、インターネットを介してジョブを受信しても良い。
【0029】
近距離無線通信部22は、プリンタ1の近傍に存在している他の無線通信装置と所定の近距離無線通信方式にて無線通信を行う。所定の近距離無線通信方式の通信規格は、特に限定されないが、例えば、NFC(Near Field Communication)やBluetooth(登録商標)等の通信規格を採用できる。CPU12は、例えば、近距離無線通信部22を介して、PC、タブレット端末、スマートフォン等からジョブを受け付けることができる。
【0030】
FAX通信部23は、電話回線64を介して、ファクシミリ装置65と通信可能となっている。FAX通信部23は、電話回線64を介して交換機に接続されることにより、相手先のファクシミリ装置65からFAXジョブJOB2を受信可能となり、また、相手先のファクシミリ装置65に対してFAXジョブJOB2を送信可能となる。FAXジョブJOB2は、例えば、FAXデータ(画像データ)を含み、そのFAXデータの印刷等を相手の装置に指示する情報である。FAX通信部23は、CPU12の制御に基づいて、ファクシミリ装置65からFAXジョブJOB2を受信する。CPU12は、受信したFAXジョブJOB2に含まれるFAXデータを、印刷部16により印刷する。
【0031】
また、CPU12は、ユーザインタフェース20に対する操作入力に基づいて、FAXの送信、コピー、スキャン等を実行するジョブを受け付ける。CPU12は、ユーザインタフェース20の操作入力に基づいて、例えば、ファクシミリ装置65へFAXジョブJOB2を送信する指示を受け付けると、画像読取部17で読み取った画像データをFAXデータとして含むFAXジョブJOB2をファクシミリ装置65へ送信する。
【0032】
(2.印刷保留機能)
本実施形態のプリンタ1は、USB接続部19から電力を供給している状態(以下、電力供給状態という場合がある)で印刷の実行を保留する印刷保留機能を有している。プリンタ1は、印刷ジョブを受け付けると、その印刷ジョブに基づく印刷の実行を保留する(以下、印刷ジョブを保留する、画像形成ジョブJOB1を保留する、FAXジョブJOB2を保留するなどという場合がある)か否かを判断する。プリンタ1は、印刷ジョブとして、様々な形態で受け付けた印刷を指示するジョブを処理できる。例えば、プリンタ1は、上記したPC63から通信部21を介して受信した画像形成ジョブJOB1、ファクシミリ装置65からFAX通信部23を介して受信したFAXジョブJOB2を、印刷ジョブとして受け付けることができる。
【0033】
尚、プリンタ1は、上記した画像形成ジョブJOB1、FAXジョブJOB2の他に、例えば、USB接続部19に接続されたPC等から印刷ジョブを受信することができる。あるいは、プリンタ1は、例えば、近距離無線通信部22の無線通信によりタブレット端末等から印刷ジョブを受信することができる。また、プリンタ1は、FAXジョブJOB2として、インターネットファクス(IFAX)のようなEメール形式のFAXジョブを受信しても良い。
【0034】
例えば、プリンタ1のCPU12は、制御プログラム41を実行することで、ユーザインタフェース20を介して、印刷保留機能の設定を受け付ける。CPU12は、ユーザインタフェース20に対する所定の操作入力を受け付けると、図2に示す印刷保留設定画面71を、ユーザインタフェース20に表示させる。図2に示すように、CPU12は、印刷モード選択欄73、印刷保留時間欄75、印刷保留枚数欄77、設定ボタン78、キャンセルボタン79を、印刷保留設定画面71に表示する。CPU12は、NVRAM15の保留設定情報34を読み出して、現状の設定を、印刷モード選択欄73等に反映させて印刷保留設定画面71に表示する。
【0035】
印刷モード選択欄73は、印刷モードの設定を受け付ける部分である。プリンタ1は、例えば、印刷モードとして、印刷優先モード、電力供給優先モード、ハイブリッドモードの3つのモードを有している。印刷優先モードは、印刷を優先するモードであり、受け付けた印刷ジョブの全てについて、印刷の実行を保留せずに実行するモードである。
【0036】
電力供給優先モードは、USB接続部19から外部機器61への電力供給を優先するモードである。より具体的には、CPU12は、電力供給優先モードを設定された状態において、印刷ジョブを受け付けると、その印刷ジョブに基づく印刷時の合計電力量が電源容量以上である場合、その印刷ジョブを保留する。ここでいう合計電力量とは、例えば、印刷ジョブを実行する際にプリンタ1で消費される電力量と、外部機器61へ供給中の供給電力量Wを合計した電力量である。従って、合計電力量は、電力供給を実行したまま印刷ジョブを実行した場合に、プリンタ1で必要となる電力量の合計値である。尚、CPU12は、例えば、印刷ジョブを実行する際にプリンタ1で消費される電力量を、印刷前に電源部27からプリンタ1内の各装置へ供給していた電力量と、印刷に必要な電力量とを合計することで演算する。また、CPU12は、印刷に必要な電力量を、例えば、印刷枚数・印刷色の数等と消費電力とを関連付けたテーブルから検出することができる。
【0037】
また、電源容量は、例えば、電源部27から供給可能な電力量であり、プリンタ1で使用可能な電力量である。このため、合計電力量が電源容量を超えた場合、プリンタ1は、電力不足となる。CPU12は、電力供給優先モードにおいて、電力不足となる可能性がある印刷ジョブについて、その実行を一律に保留する。尚、CPU12は、例えば、予めROM14に記憶された設定データから電源部27の電源容量を検出することができる。
【0038】
ハイブリッドモードは、電力供給状態で印刷ジョブを受け付けた場合に、所定の条件に基づいて印刷の実行を保留するか判断するモードであり、後述する図3の処理を実行するモードである。CPU12は、印刷モード選択欄73において、各モードに関連付けて表示したラジオボタンで、3つのモードの中から1つのモードの選択を受け付ける。
【0039】
印刷保留時間欄75は、ハイブリッドモードにおいて、印刷の実行を保留する時間(以下、印刷保留時間という)の条件の設定を受け付ける部分である。CPU12は、例えば、印刷保留時間欄75の追加ボタンを選択されると、印刷保留開始時間、印刷保留終了時間、曜日の各項目を設定するプルダウンメニューを表示する。図2に示す例では、一番上の行の条件は、月曜日から金曜日の22時~7時までが印刷保留時間として設定されている。また、CPU12は、印刷保留時間欄75の削除ボタンを選択されると、印刷保留時間欄75の一番左のラジオボタンを選択された印刷保留時間の条件を削除する。
【0040】
印刷保留枚数欄77は、印刷の実行を保留するか否かを判断する印刷保留枚数の設定を受け付ける部分である。図示例では、印刷保留枚数として5枚が設定されている。CPU12は、設定ボタン78を選択されると、上記した印刷保留設定画面71で受け付けた設定を、NVRAM15の保留設定情報34に記憶する。これにより、ユーザが印刷保留設定画面71で選択した設定が反映される。また、CPU12は、キャンセルボタン79を選択されると、印刷保留設定画面71で受け付けた設定を保留設定情報34に記憶せずに、印刷保留設定画面71の表示を消去する。
【0041】
尚、図2に示す表示項目や、上記した設定の受け付け方法は、一例である。例えば、CPU12は、印刷保留開始時間、印刷保留終了時間、印刷保留枚数の数値を、ユーザインタフェース20のタッチパネルに表示したテンキーで受け付けても良い。また、CPU12は、曜日の選択を受け付けずに、印刷保留開始時間と印刷保留終了時間だけを受け付け、受け付けた時間を、全ての曜日(全日)に適用しても良い。
【0042】
(3.印刷保留判断処理)
次に、本実施形態のプリンタ1によって実行される印刷保留判断処理について、図3を参照しつつ、説明する。プリンタ1のCPU12は、例えば、上記したハイブリッドモードを設定されると、図3に示す印刷保留判断処理を開始する。CPU12は、印刷保留判断処理を実行することで、電力供給状態において受け付けた印刷ジョブを保留するか否かを判断する。これにより、所定の条件に合った印刷ジョブを保留することで、外部機器61へ供給する供給電力量Wを維持する。
【0043】
尚、図3に示す印刷保留判断処理を開始する条件は、ハイブリッドモードが設定される条件に限らない。CPU12は、例えば、ハイブリッドモードを設定された後、USB接続部19から電力の供給を開始することを条件に、図3の処理を開始しても良い。即ち、CPU12は、ハイブリッドモード且つ電力供給状態のみ、図3の処理を実行しても良い。この場合、電力供給を停止した状態や受電しているだけの状態では、CPU12は、受け付けた印刷ジョブを保留せずに実行しても良い。また、本明細書のフローチャートは、基本的に、プログラムに記述された命令に従ったCPU12の処理を示す。従って、以下の説明における「判断」、「制限」、「実行」等の処理は、CPU12の処理を表している。CPU12による処理は、ハードウェア制御も含む。また、図3に示す処理を、CPU12以外の装置が実行しても良い。例えば、電力コントローラ25が、プログラムPGを実行することで、図3に示す処理を実行しても良い。
【0044】
まず、図3のステップ(以下、単に「S」と記載する)11において、CPU12は、印刷ジョブを受け付けたか否かを判断する。CPU12は、印刷ジョブを受け付けるまでの間(S11:NO)、S11の判断処理を繰り返し実行する。ここでいう印刷ジョブとは、上記した通信部21で受信する画像形成ジョブJOB1、FAX通信部23で受信するFAXジョブJOB2、USB接続部19に接続されたPC等から受信した印刷ジョブ等である。尚、CPU12は、印刷ジョブ以外のジョブ(FAXの送信ジョブ、スキャンジョブなど)を受け付けた場合、各ジョブに基づく画像形成を適宜実行する。
【0045】
CPU12は、印刷ジョブを受け付けたと判断すると(S11:YES)、電力供給状態であるか否かを判断する(S13)。CPU12は、USB接続部19から外部機器61等へ電力を供給していない場合(S13:NO)、S11で受け付けた印刷ジョブに基づく印刷を、印刷部16により実行する(S15)。これにより、CPU12は、ハイブリッドモードを設定された状態でも、電力供給状態でなければ、受け付けた印刷ジョブの印刷を実行する。CPU12は、S15を実行すると、図3に示す処理を終了し、S11からの処理を再度実行して、新たな印刷ジョブを受け付ける。
【0046】
一方、CPU12は、電力供給状態である場合(S13:YES)、S11で受け付けた印刷ジョブがFAXジョブJOB2であるか否かを判断する(S17)。CPU12は、受け付けた印刷ジョブがFAXジョブJOB2である場合(S17:YES)、現在時間が印刷保留時間内であるか否かを判断する(S19)。CPU12は、NVRAM15から読み出した保留設定情報34から印刷保留時間の設定情報を取得し、現在時間が取得した設定情報の時間帯内である場合、S19で肯定判断し(S19:YES)、S21を実行する。
【0047】
CPU12は、S11で受け付けた印刷ジョブ(この場合はFAXジョブJOB2)のデータをNVRAM15に記憶し、印刷ジョブに基づく印刷の実行を保留する(S21)。CPU12は、S21を実行すると、図3に示す処理終了し、S11からの処理を再度実行する。ここで、例えば、深夜の時間帯など、受信したFAXジョブJOB2の印刷物を印刷しても確認するユーザがいない時間帯は、印刷を直ぐに実行する必要性が低い。従って、受信したFAXジョブJOB2の内容を直ぐに確認できない、印刷物を直ぐに使用しない時間帯を、印刷保留時間として設定することで、後述するように、不必要に供給電力量Wを下げてまで印刷を実行することを抑制できる。
【0048】
一方、CPU12は、現在時間が印刷保留時間外である場合(S19:NO)、受け付けたFAXジョブJOB2に設定された送信元のFAX番号が、アドレス情報33に登録されているか否かを判断する(S23)。CPU12は、FAX番号がアドレス情報33に登録されていない場合(S23:NO)、FAXジョブJOB2のデータをNVRAM15に記憶し、印刷の実行を保留する(S21)。
【0049】
例えば、アドレス情報33に登録されているFAX番号がユーザの顧客、知り合い等の番号であれば、ユーザが、FAXジョブJOB2の印刷物をできるだけ早期に確認したい可能性がある。このため、登録されているFAX番号のFAXジョブJOB2は、印刷の実行を保留せずに印刷することが好ましい。一方で、アドレス情報33に登録されていないFAX番号は、広告会社のFAX番号など、面識のない会社や人のFAX番号の可能性がある。このため、登録されていないFAX番号のFAXジョブJOB2は、直ぐに印刷する必要性が低い。そこで、CPU12は、アドレス情報33に登録されていないFAX番号のFAXジョブJOB2については印刷の実行を保留する。
【0050】
また、CPU12は、FAX番号がアドレス情報33に登録されている場合(S23:YES)、FAXジョブJOB2の印刷枚数が印刷保留枚数以下であるか否かを判断する(S25)。CPU12は、NVRAM15から保留設定情報34を読み出し、読み出した保留設定情報34から印刷保留枚数を取得する。CPU12は、FAXジョブJOB2の印刷枚数が取得した印刷保留枚数以下である場合(S25:YES)、印刷の実行を保留する(S21)。
【0051】
ここで、仮に、印刷枚数が少ない印刷の実行を保留しても、印刷を実行する条件が成立した場合に、直ぐに印刷を完了させることができる。このため、後述するように、例えば、保留した印刷ジョブの印刷指示をユーザから受け付けた場合に、速やかに印刷を完了させることができる。プリンタ1の前でユーザを待たせる時間を少なくして印刷できる。また、例えば、電力供給状態が変化し供給電力量Wが減って印刷に必要な電力量が確保できた場合、供給電力量Wが減っている間に、印刷を速やかに完了させることができる。尚、CPU12は、印刷枚数以外の条件でFAXジョブJOB2の保留を判断しても良い。例えば、CPU12は、FAXジョブJOB2の印刷に必要な時間が所定時間以下である場合、FAXジョブJOB2を保留しても良い。
【0052】
一方、CPU12は、印刷枚数が印刷保留枚数より多い場合(S25:NO)、FAXジョブJOB2の印刷時における合計電力量が、電源容量以上であるか否かを判断する(S27)。CPU12は、合計電力量が電源容量未満である場合、即ち、印刷時に電力不足とならず供給電力量Wを制限する必要がない場合(S27:NO)、S11で受信したFAXジョブJOB2を印刷する(S15)。
【0053】
また、CPU12は、合計電力量が電源容量以上である場合、即ち、印刷時に電力不足となる場合(S27:YES)、供給電力量Wを制限した上で(S29)、印刷を実行する(S15)。CPU12は、例えば、不足する電力量だけ供給電力量Wを低減するネゴシエーションを、外部機器61との間で実行する(S29)。従って、CPU12は、電力供給状態においてFAXジョブJOB2を受信しても、S19、S23、S25の条件を満たさなければ、印刷を実行する。尚、CPU12は、S29の供給電力量Wを制限する処理として、供給電力量Wを低減する処理だけでなく、供給電力量Wの供給を停止する処理を実行しても良い。また、CPU12は、S15の印刷が完了した後、供給電力量Wを制限前の電力量まで戻す処理を実行しても良い。
【0054】
一方、CPU12は、S17において、受け付けた印刷ジョブがFAXジョブJOB2でなかったと判断した場合(S17:NO)、受け付けた印刷ジョブが画像形成ジョブJOB1であるか否かを判断する(S31)。CPU12は、受け付けた印刷ジョブが画像形成ジョブJOB1である場合(S31:YES)、S33を実行する。
【0055】
CPU12は、S33において、画像形成ジョブJOB1の送信元の位置が所定距離以上離れているか否かを判断する(S33)。CPU12は、例えば、通信部21のLANインタフェースに設定された自装置のIPアドレスと、画像形成ジョブJOB1の送信元のPC63のIPアドレスとが同一ネットワークに属しているか否かを判断する。CPU12は、例えば、通信部21のLANインタフェースに設定されたサブネットマスクに基づいて、自装置のIPアドレスと、送信元のIPアドレスのサブネット(ネットワークの範囲)が同一である場合、同一ネットワーク内に属していると判断する。送信元のIPアドレスの検出方法は特に限定されないが、例えば、画像形成ジョブJOB1に送信元IPアドレスを設定しても良く、CPU12が送信元のPC63へIPアドレスを問い合わせても良い。CPU12は、同一ネットワーク内に属していると判断する場合、S33で肯定判断し(S33:YES)、S21を実行する。これにより、例えば、プリンタ1が設置された部署と別の部署に所属するユーザの画像形成ジョブJOB1、プリンタ1が設置された建物とは別の建物から受信した画像形成ジョブJOB1など、遠い位置の装置から受信した画像形成ジョブJOB1の印刷の実行を保留できる。遠い位置の装置から画像形成ジョブJOB1を受信した場合、印刷を指示したユーザは、印刷物を取りに来るまでに時間が掛かる可能性が高い。このため、印刷の実行を保留することで、印刷物が長時間放置されることを抑制でき、印刷物が他のユーザの目に触れることを抑制できる。
【0056】
また、CPU12は、自装置のIPアドレスと、画像形成ジョブJOB1の送信元のIPアドレスとが同一ネットワークに属している場合、S33で否定判断し(S33:NO)、S34を実行する。後述するように、S34で肯定判断した場合、S27を実行する。これにより、例えば、直ぐに印刷物を取りに来る可能性が高い近くに存在するユーザの画像形成ジョブJOB1を保留せずに実行できる。
【0057】
尚、S33で所定距離以上離れているか否かを判断する方法は、サブネットマスクを用いる方法に限定されない。例えば、CPU12は、自装置のIPアドレスと、送信元のIPアドレスとが、上位ビットから何ビットまで一致するか否かに基づいて、送信元の位置が所定距離以上離れているかを判断しても良い。あるいは、CPU12は、自装置のIPアドレスと、送信元のIPアドレスのネットワーク部の数値の差に基づいて、送信元の位置が所定距離以上離れているかを判断しても良い。また、CPU12は、送信元のPC63のホスト名、画像形成ジョブJOB1に設定されたユーザ名等で、送信元の位置が所定距離以上離れているか否かを判断しても良い。また、CPU12は、送信元のPC63のプリンタドライバへ所属情報や設置位置の情報を問い合わせても良い。
【0058】
CPU12は、S34において、画像形成ジョブJOB1の優先度が所定の優先度以上であるか否かを判断する。上記したS19、S23、S25、S33等の処理では、CPU12が、印刷ジョブの情報等に基づいて、印刷の実行の保留を判断している。一方で、例えば、画像形成ジョブJOB1を送信するユーザは、画像形成ジョブJOB1の種類に応じて優先度を設定したい場合がある。例えば、ユーザは、直ぐに使用する書類の画像形成ジョブJOB1であれば優先度を高くし、時間の空いた時に後から取りに行く画像形成ジョブJOB1であれば優先度を低くする。CPU12は、S34において、このような画像形成ジョブJOB1の送信側で設定された優先度を判断し、印刷の実行の保留を判断する。このため、S34で判断する所定の優先度は、例えば、他の印刷ジョブに対して先に印刷すべきであるか否かを示す印刷の優先度である。また、画像形成ジョブJOB1に設定される優先度は、本願の優先度情報の一例である。
【0059】
CPU12は、画像形成ジョブJOB1に設定された優先度が所定の優先度以上であると判断すると(S34:YES)、S27を実行して、画像形成ジョブJOB1を印刷する。また、CPU12は、画像形成ジョブJOB1に設定された優先度が所定の優先度より低い場合(S34:NO)、画像形成ジョブJOB1を保留する(S21)。これにより、優先度に応じて保留すべき画像形成ジョブJOB1を判断できる。
【0060】
尚、画像形成ジョブJOB1に優先度を設定する方法は、特に限定されない。例えば、PC63のプリンタドライバの印刷設定の画面において、画像形成ジョブJOB1の優先度を受け付けても良い。また、優先度を設定する印刷ジョブは、画像形成ジョブJOB1に限らない。例えば、プリンタ1は、メールに添付されたファイルの印刷を実行可能な構成でも良い。この場合、CPU12は、受信したEメールに添付されたファイルの印刷を実行する印刷ジョブを受け付けた際に、Eメールに設定された優先度(メールヘッダのX-Priorityなど)に基づいて、印刷ジョブを保留するか否かを判断しても良い。例えば、CPU12は、メールの優先度が「高」である場合、S34で肯定判断して印刷を実行し、メールの優先度が「中」、「低」である場合、S34で否定判断して印刷の実行を保留しても良い。この場合、メールの優先度の情報は、本願の優先度情報の一例である。
【0061】
また、CPU12は、FAXジョブJOB2についても優先度を判断し、印刷の実行を保留するか判断しても良い。例えば、CPU12は、インターネットファクス(IFAX)のようなEメール形式のFAXジョブについて、Eメールに設定された優先度に基づいて、FAXジョブを保留するか判断しても良い。
【0062】
一方、CPU12は、S31で否定判断した場合(S31:NO)、S27を実行し、受け付けた印刷ジョブを印刷する。ここで、例えば、USB接続部19で接続されたPC、即ち、有線ネットワーク62などを介さずにUSBケーブル(有線ケーブル)のみで直接接続されたPCは、通信部21に接続されたPC63に比べて、プリンタ1により近い位置に存在する可能性が高い。この場合、印刷を指示したユーザもプリンタ1の近くに存在する可能性が高く、印刷物を直ぐに取りに来る可能性がある。仮に、USB接続部19を介して受信した印刷ジョブを保留すると、プリンタ1の近くに存在するユーザは、印刷ジョブを送信した後、プリンタ1の前に来て、保留した印刷ジョブの印刷を指示する作業が必要となる。その結果、ユーザビリティの低下を招くこととなる。そこで、例えば、CPU12は、受け付けた印刷ジョブが、USB接続部19で接続された装置から受信した印刷ジョブである場合、S31で否定判断し(S31:NO)、S27を実行する。これにより、プリンタ1に直接接続された装置から受け付けた印刷ジョブを保留せずに印刷することができる。プリンタ1の近くに存在するユーザのユーザビリティを向上できる。
【0063】
同様に、印刷ジョブが、近距離無線通信部22を介して受信した印刷ジョブである場合、印刷ジョブを送信した装置やユーザがプリンタ1の近くに存在する可能性が高い。そこで、CPU12は、受け付けた印刷ジョブが近距離無線通信部22を介して受信した印刷ジョブである場合、S31で否定判断し(S31:NO)、S27を実行する。この場合にも、近距離無線通信で通信可能な近い範囲に存在するユーザのユーザビリティを向上できる。
【0064】
また、CPU12は、例えば、受け付けた印刷ジョブが、ダイレクト印刷の印刷ジョブである場合、S31で否定判断し(S31:NO)、印刷ジョブを保留せずに印刷しても良い(S27)。ここでいうダイレクト印刷とは、例えば、プリンタ1が、USB接続部19に接続されたUSBメモリ等のメディアから印刷データを読み出して、読み出した印刷データを印刷する機能である。この場合にも、ダイレクト印刷を指示した(USBメモリ等を接続した)ユーザが、プリンタ1の近くに存在する可能性が高い。このため、ダイレクト印刷の印刷ジョブを保留せずに印刷することで、ユーザビリティを向上できる。
【0065】
また、CPU12は、例えば、受け付けた印刷ジョブが、ユーザインタフェース20に対する操作入力に基づいて発生したコピー印刷の印刷ジョブである場合、印刷ジョブを保留せずに印刷しても良い(S31:NO、S27)。コピー印刷の場合、ユーザは、ユーザインタフェース20を操作可能な位置に存在する。このため、コピー印刷の印刷ジョブを保留せずに印刷することで、ユーザビリティを向上できる。
【0066】
尚、ユーザインタフェース20に対する操作入力で発生する印刷ジョブは、上記したコピー印刷の印刷ジョブに限らない。例えば、プリンタ1は、ユーザインタフェース20でユーザIDやパスワードを受け付けてユーザ認証を実行し、認証に成功したログインユーザに関連する印刷ジョブを印刷する構成でも良い。この場合、CPU12は、ユーザ認証の成功に基づいて発生した印刷ジョブを、保留せずに印刷しても良い(S31:NO、S27)。
【0067】
(4.保留印刷ジョブ処理)
次に、本実施形態のプリンタ1によって実行される保留印刷ジョブ処理について、図4を参照しつつ、説明する。CPU12は、例えば、保留優先モードやハイブリッドモードなどの印刷ジョブを保留するモードがオン設定されると、図4に示す保留印刷ジョブ処理を開始する。CPU12は、保留印刷ジョブ処理を実行することで、保留した印刷ジョブに基づく印刷の実行を判断する。尚、以下の説明では、上記した図3の処理等により印刷の実行を保留した印刷ジョブを、「保留した印刷ジョブ」と記載する。
【0068】
まず、CPU12は、保留印刷ジョブ処理を開始すると、S41において、印刷ジョブが保留されているか否かを判断する。CPU12は、例えば、保留した印刷ジョブのデータがNVRAM15に記憶されているか否かを判断し、記憶されていない場合(S41:NO)、S41の判断処理を繰り返し実行する。また、CPU12は、保留した印刷ジョブがNVRAM15に記憶されている場合(S41:YES)、S43を実行する。
【0069】
CPU12は、S43において、印刷時の合計電力量が電源容量以上であるか否かを判断する。CPU12は、例えば、複数の印刷ジョブを保留している場合、少なくとも1つの印刷ジョブの印刷時における合計電力量が電源容量より小さい場合(S49:NO)、その合計電力量が電源容量より小さい全ての印刷ジョブについて、印刷を実行する(S45)。即ち、CPU12は、供給電力量Wを制限せずに印刷可能な印刷ジョブについては、その印刷ジョブを印刷する(S45)。CPU12は、例えば、複数の印刷ジョブを保留している場合、先に保留した印刷ジョブから順番に印刷する。
【0070】
これにより、例えば、FAX印刷ジョブを一時的に保留しても、印刷する電力量を確保できている場合には、保留時間を出来るだけ短くして印刷することができる。また、例えば、印刷ジョブの受け付け時には電力を確保できなかったものの、その後に供給電力量Wが減り、余剰の電力量が増加した場合に、保留しておいた印刷ジョブを実行できる。CPU12は、印刷可能な印刷ジョブを全て印刷すると、印刷した印刷ジョブのデータをNVRAM15から削除し図4の処理を終了する。CPU12は、S41からの処理を再度実行する。また、CPU12は、例えば、複数の印刷ジョブの実行中に供給電力量Wが増加した場合や電力供給を再開した場合など、印刷ジョブの実行を中断して、S41からの処理を再度実行しても良い。
【0071】
一方、CPU12は、保留した印刷ジョブの全てが、合計電力量が電源容量以上となる場合(S43:YES)、NVRAM15に記憶された印刷ジョブの情報が更新されたか否かを判断する(S47)。ここでいう情報が更新されるとは、例えば、前回のS47を実行した際に、NVRAM15に保留されていた印刷ジョブと、今回のS47を実行した際にNVRAM15に保留されていた印刷ジョブとが異なる場合をいう。例えば、新たな印刷ジョブがNVRAM15に保留された場合、後述するS59を実行し、新たな印刷ジョブについて印刷指示をユーザから受け付けることが好ましい。そこで、CPU12は、NVRAM15の印刷ジョブの情報が更新された場合(S47:YES)、S53以降の処理を実行し、保留した印刷ジョブの実行を判断する。
【0072】
一方、CPU12は、印刷ジョブの情報が更新されていなかった場合(S47:NO)、前回の処理から閾値時間経過したか否かを判断する(S51)。CPU12は、S51において、前回S51を実行してから閾値時間経過したか否かを判断する(S51)。NVRAM15の印刷ジョブの情報が更新されない状態が継続する場合でも、S53以降の印刷ジョブの実行判断を定期的に実行し、保留した印刷ジョブを実行すべきか判断することが好ましい。そこで、CPU12は、閾値時間だけ経過するごとに、S51で肯定判断し(S51:YES)、S53を実行する。このため、S51の閾値時間は、例えば、S53以降の処理を定期的に実行すべき時間であり、具体的には数十分である。CPU12は、閾値時間だけ経過していない場合(S51:NO)、S41からの処理を実行する。
【0073】
CPU12は、S53において、NVRAM15の残容量が閾値容量以下であるか否かを判断する(S53)。NVRAM15の残容量が不足すると、アドレス情報33の追加、保留設定情報34の変更、新たな印刷ジョブ(画像形成ジョブJOB1、FAXジョブJOB2)の追加、その他の情報の追加等、NVRAM15のデータの変更が難しくなる。その結果、CPU12は、NVRAM15を用いた処理を適切に実行できなくなる。このため、S53の閾値容量は、残容量としてNVRAM15に最低限確保する必要がある容量である。
【0074】
CPU12は、残容量が閾値容量以下である場合(S53:YES)供給電力量Wを制限し(S49)、保留した印刷ジョブの印刷を実行する(S45)。この場合(S43:NO)、保留した印刷ジョブを実行するためには供給電力量Wの制限が必要となる。CPU12は、S49で供給電力量Wを制限した上で、保留した印刷ジョブを印刷する(S45)。CPU12は、例えば、保留している印刷ジョブの全てを実行する。あるいは、CPU12は、NVRAM15の残容量が閾値容量より多くなるまで、保留した印刷ジョブを実行してNVRAM15から削除しても良い。また、CPU12は、S49の供給電力量Wを制限する処理として、印刷に必要な電力量だけ供給電力量Wを減らす処理を実行しても良く、供給電力量Wの供給を停止しても良い。また、CPU12は、S45の印刷が完了した後、供給電力量Wを制限前の電力量まで戻す処理を実行しても良い。
【0075】
また、CPU12は、S53で否定判断した場合(S53:NO)、現在時間が印刷保留時間外であるか否かを判断する(S55)。CPU12は、NVRAM15から読み出した保留設定情報34から印刷保留時間を取得し、現在時間が、取得した印刷保留時間の時間帯外である場合、S55で肯定判断する(S55:YES)。CPU12は、供給電力量Wを制限し(S49)、保留した全ての印刷ジョブを印刷する(S45)。これにより、上記した図3の処理によって印刷保留時間内に保留した印刷ジョブを印刷できる。尚、CPU12は、S55で肯定判断した後のS45において、保留した印刷ジョブのうち、図3のS19で肯定判断して保留した印刷ジョブ、即ち、印刷保留時間内に保留したFAXジョブJOB2だけ印刷しも良い。
【0076】
一方、CPU12は、現在時間が、印刷保留時間内である場合(S55:NO)、図5に示す保留印刷情報画面81をユーザインタフェース20に表示し(S57)、印刷指示を受け付けたか否かを判断する(S59)。図5に示すように、CPU12は、メッセージ欄83、ジョブ選択欄85、印刷実行ボタン87、キャンセルボタン89を保留印刷情報画面81に表示させる。CPU12は、供給電力量Wを制限して印刷ジョブを実行すべきか否かを確認するメッセージを、メッセージ欄83に表示する。また、CPU12は、NVRAM15に保留中の印刷ジョブの情報を、ジョブ選択欄85に一覧で表示する。CPU12は、保留している印刷ジョブを個別に、又はまとめて選択するラジオボタンを、ジョブ選択欄85に表示する。CPU12は、印刷実行ボタン87をタッチする操作入力をユーザインタフェース20で受け付けると、S59で肯定判断し(S59:YES)、供給電力量Wを制限し(S49)、ジョブ選択欄85で選択された1又は複数の印刷ジョブを印刷する(S45)。これにより、印刷したい印刷ジョブの選択を、ユーザから受け付けて印刷を実行できる。
【0077】
また、CPU12は、キャンセルボタン89をタッチする操作入力をユーザインタフェース20で受け付けた場合(S59:NO)、保留印刷情報画面81の表示をユーザインタフェース20から消去する(S61)。CPU12は、S41からの処理を再度実行する。このようにして、CPU12は、保留した印刷ジョブについて、所定の条件に基づいて印刷を実行することができる。
【0078】
尚、CPU12は、保留印刷情報画面81をユーザインタフェース20に表示した後、所定時間だけ経過した場合に、S59で否定判断してS61を実行しても良い。また、CPU12は、保留印刷情報画面81を能動的に表示しなくとも良い。例えば、CPU12は、ユーザインタフェース20に対する所定の操作入力を受け付けた場合に、保留印刷情報画面81をユーザインタフェース20に表示し、印刷の指示を受け付けても良い。そして、CPU12は、S59を実行するごとに、保留印刷情報画面81で印刷の実行を受け付けたか否かを判断し、S59の処理前にユーザインタフェース20で受け付けた印刷指示を実行しても良い(S59:YES)。この場合、CPU12は、S57の表示処理を実行しなくとも良い。また、CPU12は、S57の能動的な表示処理と、上記したユーザインタフェース20による表示の受付処理との両方を実行しても良い。
【0079】
因みに、プリンタ1は、印刷装置の一例である。CPU12は、制御部の一例である。NVRAM15は、記憶部の一例である。USB接続部19は、インタフェースの一例である。S17、S19、S23、S25、S31、S33、S34は、判断処理、判断工程の一例である。S17、S19、S23、S25、S31、S33、S34の条件は、第1条件及び第2条件の一例である。S15は、印刷処理、印刷工程の一例である。S21は、保留処理、保留工程の一例である。S43は、電力量判断処理の一例である。S59は、実行指示判断処理の一例である。S55は、時間帯判断処理の一例である。S53は、空き容量判断処理の一例である。
【0080】
(5.効果)
以上、上記した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態のプリンタ1のCPU12は、USB接続部19を介して外部機器61へ所定の供給電力量Wの電力を供給している状態において印刷部16による印刷を指示する印刷ジョブを受け付けた場合、所定の条件を判断し、印刷ジョブに基づく印刷の実行を保留するか否かを判断する。CPU12は、例えば、印刷ジョブが画像形成ジョブJOB1やFAXジョブJOB2でない場合(S31:NO)、供給電力量Wを制限し(S29)、印刷ジョブに基づいて印刷部16により印刷を実行する(S15)。一方、CPU12は、例えば、印刷ジョブがFAXジョブJOB2である場合(S17:YES)、供給電力量Wを制限せずに、印刷の実行を保留する(S21)。
【0081】
これによれば、プリンタ1は、電力供給中に印刷ジョブを受け付けると、供給電力量Wを直ぐに制限せずに、所定の条件を判断する。プリンタ1は、印刷ジョブが画像形成ジョブJOB1やFAXジョブJOB2でない場合など、供給電力量Wを制限し印刷を実行する。これにより、直ぐに印刷を実行する必要がある印刷ジョブについては、所定の条件を満たすことで印刷を実行できる。
【0082】
一方、プリンタ1は、印刷ジョブがFAXジョブJOB2である場合など、外部機器61へ供給する供給電力量Wを制限せずに、印刷の実行を保留する。これにより、プリンタ1の余剰の電力量が増加した場合や、外部機器61で必要な電力量が減り供給電力量Wを減らすことができた場合など、供給電力量Wを維持したまま印刷を実行できるタイミングまで、印刷の実行を保留できる。その結果、外部機器61における電力不足の発生を抑制できる。
【0083】
(2)また、CPU12は、印刷ジョブが、FAX通信部23を介して受信したFAXジョブJOB2である場合(S17:YES)、印刷の実行を保留する。FAXジョブJOB2は送信元の都合で送信されるため、受信者がFAXジョブJOB2の受信をプリンタ1の前で待っている可能性は低い。換言すれば、FAXジョブJOB2は、一時的に保留してから印刷しても、印刷が遅延しているとユーザが感じる可能性が低い。そこで、印刷ジョブがFAXジョブJOB2である場合にFAXジョブJOB2を一時的に保留することで、ユーザビリティの低下を抑制しつつ、外部機器61における電力不足の発生を抑制できる。
【0084】
(3)また、CPU12は、印刷の実行を保留する時間帯を示す印刷保留時間の情報を保留設定情報34から取得し、現在時間が、印刷保留時間の時間帯内である場合(S19:YES)、印刷の実行を保留する(S21)。これによれば、ユーザがFAXの受信を確認しない時間帯を、印刷保留時間として設定することで、直ぐにFAXの内容を確認しないような時間帯には、印刷よりも給電を優先し、外部機器61における電力不足の発生を抑制できる。
【0085】
(4)また、CPU12は、FAXジョブJOB2に設定された送信元のFAX番号(送信元情報の一例)が、アドレス情報33に登録されていない場合(S23:NO)、印刷の実行を保留する。アドレス情報33に登録されていないFAX番号のFAXジョブJOB2は、ユーザの知らない送信元のFAXジョブJOB2である可能性が高い。このため、このようなFAXジョブJOB2は、直ぐに印刷する必要性が低い。そこで、アドレス情報33に登録されていないFAX番号のFAXジョブJOB2を保留することで、外部機器61における電力不足の発生を抑制できる。
【0086】
(5)また、CPU12は、受け付けたFAXジョブJOB2の印刷枚数が、印刷保留枚数(本願の閾値枚数の一例)以下である場合(S25:YES)、印刷の実行を保留する。印刷枚数が少ないFAXジョブJOB2であれば、比較的短い時間で印刷を完了することができる。このため、一時的に保留した後で、ユーザの印刷指示を受け付けて保留していたFAXジョブJOB2を印刷したとしても、ユーザを待たせる時間を短くして、印刷物をユーザに渡すことができる。
【0087】
(6)また、CPU12は、受け付けた画像形成ジョブJOB1の送信元情報に基づいて、画像形成ジョブJOB1の送信元の装置と、自装置との間の距離が、所定距離以上だけ離れていると判断した場合(S33:YES)、印刷の実行を保留する。画像形成ジョブJOB1の送信元と自装置の距離が、物理的に離れている場合、画像形成ジョブJOB1を受信してから画像形成ジョブJOB1を送信したユーザがプリンタ1に到着するまでの時間が長くなる。換言すれば、画像形成ジョブJOB1を一時的に保留しても、ユーザに対して発生する印刷の遅延時間を短くでき、外部機器61における電力不足の発生を抑制できる。
【0088】
(7)また、CPU12は、印刷の実行を保留した後、保留した印刷ジョブに基づく印刷時に必要な合計電力量が、電源部27から供給可能な電源容量以上であるか否かを判断する(S43)。CPU12は、合計電力量が電源容量より小さいと判断した場合(SS43:NO)、保留した印刷ジョブを印刷する(S45)。
【0089】
合計電力量が電源容量より小さい場合、印刷時に供給電力量Wを制限する必要がなく、印刷の実行を保留する必要がない。このため、合計電力量が電源容量より小さいことに応じて、保留していた印刷を実行することで、保留時間が不必要に長くなることを抑制できる。
【0090】
(8)また、CPU12は、印刷の実行を保留した後、保留している印刷の実行を開始する指示を、ユーザインタフェース20を介して受け付けたか否かを判断する(S59)。CPU12は、実行を開始する指示を受け付けた場合(S59:YES)、保留した印刷ジョブを印刷する(S45)。これによれば、一度保留した後、保留した印刷を、供給電力量Wを制限してでも実行したくなった場合、ユーザインタフェース20を介して指示することができる。あるいは、外部機器61を停止する、外部機器61を取り外すなどの措置をした後で、印刷を指示できる。
【0091】
(9)また、CPU12は、印刷の実行を保留した後、印刷保留時間の情報を保留設定情報34から取得し、現在時間が、印刷保留時間の時間外であるか否かを判断する(S55)。CPU12は、現在時間が、印刷保留時間の時間外である場合(S55:YES)、保留した印刷ジョブを印刷する。これによれば、所定の印刷保留時間の時間帯内で保留した印刷ジョブを、その時間帯が経過した後に速やかに印刷できる。例えば、深夜の時間帯に保留したFAXジョブJOB2を、出勤時間に合せて印刷できる。
【0092】
(10)また、CPU12は、印刷の実行を保留した後、NVRAM15の空き容量が、所定の閾値容量以下であるか否かを判断する(S53)。CPU12は、NVRAM15の空き容量が、所定の閾値容量以下である場合(S53:YES)、印刷ジョブに係わるデータをNVRAM15から読み出して印刷を実行し、読み出したデータをNVRAM15から削除する。
【0093】
保留した印刷ジョブが増加すると、NVRAM15の空き容量が不足する可能性がある。そこで、空き容量が不足する前に、保留していた印刷ジョブを実行しデータをNVRAM15から削除することで、空き容量の不足が発生することを抑制できる。
【0094】
(11)また、CPU12は、印刷ジョブを、近距離無線通信部22を介して受信した場合(S31:NO)、その印刷ジョブを印刷しても良い。これによれば、印刷を指示したユーザが、プリンタ1の近くに存在する場合、印刷を保留せずに実行することで、ユーザに対して印刷の遅延が発生することを抑制できる。
【0095】
(12)また、CPU12は、印刷ジョブが、USB接続部19にUSBケーブルのみを介して接続された装置から受信したジョブである条件、印刷ジョブが、USB接続部19に接続されたUSBメモリに記憶された印刷データを読み出して実行するジョブ(ダイレクト印刷のジョブ)である条件、印刷ジョブが、ユーザインタフェース20に対するコピー操作等に基づいて発生したジョブである条件、の何れかの条件を満たした場合(S31:NO)、その印刷ジョブを印刷しても良い。上記した何れかの条件を満たす場合、印刷を指示したユーザが、プリンタ1の近くに存在する可能性が高い。このため、印刷を保留せずに実行することで、ユーザに対して印刷の遅延が発生することを抑制できる。
【0096】
(13)また、プリンタ1は、CPU12による条件の判断処理を実行せずに、受け付けた全ての印刷ジョブについて、供給電力量Wを制限せずに印刷の実行を保留する電力供給優先モードと、判断処理を実行するハイブリッドモード(本願の印刷保留モードの一例)と、CPU12による判断処理を実行せずに、受け付けた全ての印刷ジョブについて、供給電力量Wを制限し、印刷を実行する印刷優先モードと、を備える(図2参照)。これによれば、電力供給を優先するか、印刷を優先するか、電力供給と印刷の保留の両立を図るかを、モードで切り替えることができる。
【0097】
(14)また、印刷ジョブは、他の印刷ジョブに対する優先度を示す優先度情報が設定可能である。この場合、CPU12は、受け付けた印刷ジョブに設定された優先度情報が示す優先度が、所定の優先度以上である場合(S34:YES)、保留せずに印刷を実行しても良い。これによれば、ユーザ側で印刷ジョブに優先度を設定することで、印刷の実行と保留を切り替えることができる。
【0098】
(6.変形例)
尚、本願は上記実施形態に限定されるものではなく、本願の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態の図3及び図4に示すフローチャートの処理内容、処理の順番等は、一例である。例えば、CPU12は、図3のS13において、S27と同様に、印刷時の合計電力量が電源容量以上であるか否かを判断しても良い。そして、CPU12は、合計電力量が電源容量以上である場合、S15を実行し、合計電力量が電源容量未満である場合、S17を実行しても良い。即ち、CPU12は、供給電力量Wの制限を必要としない印刷ジョブであれば、保留せずに印刷しても良い。図3の処理内容であれば、合計電力量の演算等をすることなく、供給電力量Wの供給の有無をS13で判断しS17以降を迅速に実行できる利点がある。一方で、図4の処理において、CPU12は、S43の判断処理が必要となる。これに対し、S13の時点で合計電力量を判断しておけば、図4の処理において、合計電力量の判断を省略することが可能となる。この場合、S43に加え、図3のS27の処理も省略しても良い。
【0099】
また、CPU12は、画像形成ジョブJOB1についても、FAXジョブと同様に、S19の印刷保留時間の判断や、S25の印刷保留枚数の判断処理を実行しても良い。例えば、CPU12は、画像形成ジョブJOB1の印刷枚数が所定の印刷保留枚数以下であった場合、S21を実行し、画像形成ジョブJOB1を保留しても良い。この場合、CPU12は、画像形成ジョブJOB1及びFAXジョブJOB2の印刷保留時間として一括して設定時間を受け付けても良く、別々の設定時間を受け付けても良い。印刷保留枚数についても同様である。
また、CPU12は、様々な種類の印刷ジョブを対象に図3及び図4の処理を実行したが、例えば、画像形成ジョブJOB1とFAXジョブJOB2だけを対象に、図3図4の処理を実行し、印刷の実行を保留するか否かを判断しても良い。この場合、S31の処理を省略しても良い。
【0100】
また、CPU12は、S33の送信元の位置の判断処理や、S34の優先度の判断処理を実行しなくとも良い。逆に、CPU12は、S17やS31の判断処理を実行せずに、S33の送信元の位置の判断処理だけや、S34の優先度の判断処理だけを実行しても良い。
また、CPU12は、例えば、画像形成ジョブJOB1なら印刷し、FAXジョブJOB2なら印刷を保留する処理を実行する構成でも良い。
また、CPU12は、例えば、S19、S23,S25の少なくとも1つの判断処理を実行する構成でも良い。
また、CPU12は、S53、S55、S59の少なくとも1つの処理を実行する構成でも良い。
また、プリンタ1は、ハイブリッドモードだけを備える構成でも良い。
【0101】
また、上記実施形態では、図3図4に示す処理を、CPU12により実行したが、他の装置が実行しても良い。例えば、電力コントローラ25が、メモリ26のプログラムPGを実行することで、図3図4に示す処理を実行しても良い。この場合、電力コントローラ25は、本願の制御部の一例である。プログラムPGは、本願のプログラムの一例である。
また、本願における電力量の制限とは、電力量を減らす動作だけでなく、電力量をゼロにする(電力の供給を停止する)動作も含む概念である。
また、本願におけるインタフェースの通信規格は、USB PD規格の通信規格に限らず、電力の授受が可能な他の通信規格でもよい。このため、本願のインタフェースは、USBインタフェースに限らない。
また、上記実施形態では、本願の制御部として、CPU12を採用したが、これに限らない。例えば、制御部の少なくとも一部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアで構成してもよい。また、制御部は、例えばソフトウェアによる処理と、ハードウェアによる処理とを併用して動作する構成でもよい。
また、電源部27は、バッテリ31を備えない構成でもよい。
また、上記実施形態では、本願の印刷装置として携帯型のプリンタ1を採用したが、これに限らない。本願の印刷装置は、携帯型でない据え置き型のプリンタでも良く、プリンタに限らず、コピー装置、ファックス装置、スキャナ装置でも良い。また、本願の印刷装置は、複数の機能を有する複合機でも良い。
【符号の説明】
【0102】
1 プリンタ(印刷装置)、12 CPU(制御部)、15 NVRAM(記憶部)、16 印刷部、19 USB接続部(インタフェース)、20 ユーザインタフェース、22 近距離無線通信部、23 FAX通信部、27 電源部、33 アドレス情報、61 外部機器、JOB1 画像形成ジョブ、JOB2 FAXジョブ、W 供給電力量。
図1
図2
図3
図4
図5