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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】作業システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241126BHJP
   B41J 29/377 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 301
B41J29/377 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020189259
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078524
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】堀江 星潤
(72)【発明者】
【氏名】小室 清人
(72)【発明者】
【氏名】藤井 優和
(72)【発明者】
【氏名】大津 拓充
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-026588(JP,A)
【文献】特開2020-088906(JP,A)
【文献】特開2007-289822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 29/377
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアを粘着可能な粘着剤が設けられて前記メディアを搬送可能な搬送ベルトと、前記メディアに記録可能な記録部が収容される本体部と、を備える記録装置と、
前記搬送ベルトのうち、前記本体部から露出する露出部分の少なくとも一部を覆うカバーと、
前記カバーに覆われた空間の気体を除去可能な除去部と、を備え、
前記カバーは、
互いに間隔を置いて設けられる複数のフレームと、
前記複数のフレームに張架される少なくとも1つの張架部材と、を含み、
前記複数のフレームの導電率は、前記少なくとも1つの張架部材の導電率より大きく、
前記複数のフレームは、前記記録装置と電気的に接続されることを特徴とする作業システム。
【請求項2】
前記露出部分は、前記本体部に対して突出することを特徴とする、請求項1に記載の作業システム。
【請求項3】
前記カバーは、前記記録装置から取り外し可能に装着されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の作業システム。
【請求項4】
前記カバーには、
開口と、
前記開口に設けられる蓋部と、が設けられ、
前記蓋部は、前記開口を通じて前記空間を前記カバーの外部空間に連通する位置に変位可能であることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の作業システム。
【請求項5】
前記カバーは、前記記録装置が設置される設置面に接触する接触部を含み、
前記設置面に前記接触部を押さえる押さえ部を有することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の作業システム。
【請求項6】
前記カバーには、
前記カバーに覆われた空間を前記カバーの外部空間に連通する連通部と、
前記連通部を介して前記空間に空気を送る送風部と、が設けられることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、印刷部と、粘着層が表面に形成された無端状の搬送用ベルトとを備えるプリンター装置が開示されている。当該文献には、ベルトの粘着層を構成する地張り剤(接着剤)を剥がすための剥離用溶剤(例えば灯油)を搬送用ベルトの表面に塗布し、その後改めて新たな地張り剤を塗布して粘着層を形成することが記載されている。この作業によって地張り剤が交換され、地張り剤の粘着力が回復される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-154483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地張り剤や剥離用溶剤は揮発性有機化合物(VOC)を含む場合がある。この場合、気化したVOCが地張り剤を交換する際に周囲に拡散する可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
作業システムは、メディアを粘着可能な粘着剤が設けられて前記メディアを搬送可能な搬送ベルトと、前記メディアに記録可能な記録部が収容される本体部と、を備える記録装置と、前記搬送ベルトのうち、前記本体部から露出する露出部分の少なくとも一部を覆うカバーと、前記カバーに覆われた空間の気体を除去可能な除去部と、を備える。
【0006】
記録装置は、メディアを粘着可能な粘着剤が設けられて前記メディアを搬送可能な搬送ベルトと、前記メディアに記録可能な記録部が収容される本体部と、前記搬送ベルトのうち、前記本体部から露出する露出部分の少なくとも一部を覆うカバーと、前記カバーに覆われた空間の気体を除去可能な除去部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態にかかる記録装置の構成を示す模式図。
図2】第1実施形態にかかる作業システムの構成を示す斜視図。
図3】第1実施形態にかかる作業システムの構成を示す側面図。
図4】第1実施形態にかかる作業システムの構成を示す正面図。
図5】第2実施形態にかかる作業システムの構成を示す側面図。
図6A】第2実施形態にかかる蓋部の構成を示す模式図。
図6B】第2実施形態にかかる蓋部の構成を示す模式図。
図7】第3実施形態にかかる作業システムの構成を示す斜視図。
図8】第4実施形態にかかる作業システムの構成を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.第1実施形態
まず、作業システム1を構成する記録装置10の構成について説明する。記録装置10は、メディアM(例えば、布帛や用紙)に記録可能なプリンターである。
なお、以下の各図において、X軸に沿った方向は、記録装置10の幅方向を示す。Y軸に沿った方向は、記録装置10の奥行き方向を示す。Z軸に沿った方向は、記録装置10の高さ方向を示す。
【0009】
図1は、設置場所の一例である工場の床部の設置面2に設置された記録装置10の構成を示す。設置面2には、排気設備の一例としての排気装置4が設置される。なお、排気装置4は、工場の不図示の天井部に設けてもよい。排気装置4は、不図示の排気ファンを備えており、記録装置10の排気ダクト6に接続される。記録装置10からの排気は、排気ダクト6を介して排気装置4によって回収されると共に浄化され、排気装置4から工場の外部に放出される。
【0010】
記録装置10は、本体フレーム12と、筐体14(本体部)と、搬送ユニット16と、記録部20と、クリーニングユニット24と、制御ユニット28と、流路部30とを含む。
【0011】
本体フレーム12は、記録装置10の各部が設けられる基部として構成される。筐体14は、記録装置10の各部を覆う外装部材である。本体フレーム12及び筐体14は、磁性体を有する部材である。筐体14は、記録部20等を収容する。
筐体14の+Y方向端部には、開閉可能な筐体カバー19が設けられる。筐体カバー19は、筐体14の一部である。筐体カバー19は、搬送ベルト17(グルーベルト)の上方に位置する。筐体カバー19は、X軸に沿った方向に延在する。筐体カバー19のX軸に沿った方向における幅寸法は、搬送ベルト17のX軸に沿った方向における幅寸法よりも若干長い。筐体カバー19はX軸に沿った方向に設けられた軸を中心にして、筐体カバー19が閉状態と開状態とに回動する。筐体カバー19が閉状態の場合は、側面視において筐体カバー19がZ軸に沿った方向となる。筐体カバー19が開状態の場合は、側面視において筐体カバー19が水平方向よりさらに上方に向いた位置となる。筐体カバー19には不図示のダンパーが設けられ、筐体カバー19が開状態で保持可能となる。
記録装置10の記録処理中では、筐体カバー19を閉状態とし、後述する搬送ベルト17のメンテナンス作業においては、筐体カバー19を開状態とする。
【0012】
搬送ユニット16は、駆動ローラー16Aと、従動ローラー16Bと、搬送ベルト17と、不図示の巻取ローラーとを含む。そして、搬送ユニット16は、駆動ローラー16Aの回転による搬送ベルト17の移動に伴って、メディアMを+Y方向に倣って搬送可能である。駆動ローラー16Aは搬送方向下流に配置され、従動ローラー16Bは搬送方向上流に配置される。また、駆動ローラー16A及び従動ローラー16Bは、いずれもX軸に沿った方向に回転軸を有する。駆動ローラー16Aの回転は、制御ユニット28によって制御される。
【0013】
搬送ベルト17は、弾性を有する平板の両端を接合した無端ベルトで構成される。また、搬送ベルト17は、駆動ローラー16Aの外周面及び従動ローラー16Bの外周面に巻き掛けられており、周回移動が可能である。搬送ベルト17の外周面17Aには、メディアMを粘着可能な粘着剤が設けられる。メディアMは粘着剤に粘着した状態で搬送ベルト17に支持される。メディアMは、粘着剤から剥離されて不図示の巻取装置に回収される。
外周面17Aのうち、駆動ローラー16Aと従動ローラー16Bとの間で且つ+Z方向に位置する平坦な部分が、メディアMを支持する支持面18である。
【0014】
また、本実施形態の搬送ベルト17は、筐体14に対して搬送ベルト17の一部が露出する露出部分90を有する。具体的には、搬送ベルト17は筐体14(閉状態の筐体カバー19)に対して+Y方向に突出する。当該突出した部分が露出部分90に該当する。搬送ベルト17が筐体14に対して突出するため、後述する搬送ベルト17のメンテナンス作業、例えば、ユーザーが搬送ベルト17上の粘着剤を剥がし取ったり、粘着剤を塗布したりする作業の際に、筐体14にユーザーの手指が干渉しにくくなり、作業性を向上させることができる。
【0015】
記録部20は、搬送されるメディアMに記録する。具体的には、記録部20は、液体(例えば、インク)を液滴として吐出する記録ヘッド21と、記録ヘッド21を支持し、X軸に沿った方向に往復移動するキャリッジ22とを含む。記録部20は、支持面18に対向し、搬送ベルト17の上方(+Z方向)に配置される。記録ヘッド21が、X軸に沿った方向に移動しながら搬送されるメディアMに対して液滴を吐出することでメディアMへの記録が可能となる。
【0016】
クリーニングユニット24は、搬送ベルト17が周回移動する方向において駆動ローラー16Aよりも下流に位置し、外周面17Aを清掃する。
制御ユニット28は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びストレージを含んで構成されており、記録装置10の各部の動作を制御する。
【0017】
流路部30は、筐体14の内部のうち、空間41を含み且つ空気が強制的に流される流路として機能する部位である。また、流路部30は、送込部32と、吸引部42とを有する。
【0018】
送込部32は、記録部20の-Y方向側(上流側)に設けられる。送込部32は、第1ファン38を備え、流入口15を介して空気の流入し、支持面18に向けて空気を送り込む。
【0019】
吸引部42は、記録部20の+Y方向側(下流側)に設けられ、支持面18から流れる空気を吸引する。具体的には、吸引部42は、流通部44と、第2ファン52とを有する。流通部44は、第1ダクト56と、第1ダクト56の上方に配置された第2ダクト76と、を備える。第2ダクト76は、排気ダクト6に接続される。
第2ファン52は、第1ダクト56の内部に設けられる。第2ファン52は、流通部44の空気を吸引する。そして、第2ファン52によって吸引された空気は、第1ダクト56及び第2ダクト76を介して排気ダクト6から排出される。
第2ダクト76の内部にはフィルター78が配置される。フィルター78は、空気に混入したミストなどの異物を捕捉可能である。フィルター78として、不織布、グラスウール、ロックウールを用いることが可能である。
【0020】
次に、搬送ベルト17のメンテナンス作業について説明する。
搬送ベルト17のメンテナンス作業とは、例えば、搬送ベルト17の粘着剤の交換作業である。具体的には、メディアMを搬送ベルト17に粘着させて、メディアMを搬送させながら記録処理を行っていると、搬送ベルト17に設けられた粘着剤にインクや糸くず、ほこり等が付着する。そのため、次第に粘着剤の粘着力が低下し、メディアMが搬送ベルト17に十分に粘着された状態で搬送されなくなる。このような場合、搬送ベルト17の外周面17Aに設けられた粘着剤を除去し、新たな粘着剤を塗布して搬送ベルト17の上に粘着層を形成する。これにより、メディアMに対する粘着力が回復する。なお、このような粘着剤の塗布作業にかかるメンテナンス作業は、新規に記録装置10を工場に設置した場合に、新規の搬送ベルト17に対しても同様に行われる。
【0021】
ここで、上記メンテナンス作業において、搬送ベルト17の粘着剤を除去するための溶剤や粘着剤には揮発性有機化合物(VOC)を含む場合がある。このような場合、気化したVOCが周囲に拡散する可能性がある。さらに、周囲に拡散したVOCが記録装置10を構成する種々の機械要素や電装部分に化学的な作用を与え、結果として記録装置10の動作に影響を与える可能性がある。
そこで、本実施形態では、上記メンテナンス作業において気化したVOCの拡散を抑制する作業システム1が構成される。
以下、作業システム1の構成について説明する。
【0022】
図2図3及び図4に示すように、作業システム1は、記録装置10と、カバー100と、除去部と、を備える。記録装置10の構成は上述の通りである。
なお、図2では、記録装置10を実線で示し、カバー100を二点鎖線で示している。図3及び図4では、記録装置10の一部を二点鎖線で示し、カバー100を実線で示している。
カバー100は、搬送ベルト17のメンテナンス作業において設置される。カバー100は、記録装置10に設けられる搬送ベルト17のうち、筐体14から露出する露出部分90の少なくとも一部を覆うものである。また、本実施形態の除去部は、第2ファン52であり(図1参照)、カバー100に覆われた空間の気体を吸引する。吸引された気体は排気ダクト6を介して工場の外部に放出される。これにより、カバー100に覆われた空間の気体、例えば、VOCが除去される。すなわち、気化したVOCの拡散を抑制することができる。
【0023】
なお、カバー100によって搬送ベルト17の露出部分90の少なくとも一部を覆う、とは、平面視、または側面視(図3)、または正面視(図4)において、搬送ベルト17の露出部分90とカバー100とが重なる領域が存在することである。本実施形態では、平面視及び側面視において搬送ベルト17の露出部分90全体とカバー100とが重なる。すなわち、平面視及び側面視において露出部分90がカバー100によって覆われる。一方、正面視では、カバー100に開口130が設けられ、カバー100は当該開口130を介して搬送ベルト17の幅方向及び高さ方向に重なっていない。すなわち、開口130は、ユーザーが正面視において搬送ベルト17を直視可能に形成される。これにより、開口130を介して搬送ベルト17に直接アクセス可能となり、搬送ベルト17のメンテナンス作業が容易となる。
なお、カバー100に覆われた空間とは、開口130が閉じられた場合を想定し、露出部分90周辺のカバー100によって閉じられた空間を指す。
【0024】
本実施形態のカバー100は、第1カバー101と第2カバー102とを有する。
第1カバー101は、筐体カバー19から+Y方向の搬送ベルト17が突出した部分(露出部分90)を略中心に配置される。第2カバー102は、筐体カバー19から-Y方向の筐体14部分を略中心に配置される。
【0025】
第1カバー101は、筐体カバー19を開状態にして設置される。具体的には、開状態の筐体カバー19の上面から記録装置10の下方に垂れ下がった状態で設置される。第1カバー101の下端部は設置面2に接する程度である。これにより、記録装置10の下部からの気体の漏れを抑制することができる。なお、操作パネル部29が配置される部分は露出するように第1カバー101を設置してもよい。
【0026】
本実施形態では、互いに間隔を置いて設けられる複数のフレーム110が設けられる。フレーム110は、帯電防止材で形成される。本実施形態では、2本の棒状のフレーム110が設けられる。具体的には、一方のフレーム110は、筐体カバー19と搬送ベルト17の+X方向に位置する筐体14部分との間に設けられる。他方のフレーム110は、筐体カバー19と搬送ベルト17の-X方向に位置する筐体14部分との間に設けられる。これらのフレーム110は、筐体カバー19を支持する。これにより、筐体カバー19の開状態を確実に保持させることができる。
【0027】
開状態における筐体カバー19の+Y方向端部は、搬送ベルト17及び本体フレーム12よりも若干+Y方向に位置する。すなわち、第1カバー101の+Y方向端部は、搬送ベルト17の+Y方向端部の近傍に垂れ下がった状態で設置される。これにより、第1カバー101で搬送ベルト17の露出部分90の周囲を最小限の大きさで覆うことができる。従って、第1カバー101で覆われた空間内の気体の除去効率を高め、換気効率を高めることができる。
さらに、筐体カバー19を開状態とすることで、筐体カバー19が閉状態である場合と比べて露出部分90と第2ファン52との間の領域が大きくなるので第1カバー101に覆われた空間の気体の排気効率を更に高めることができる。
【0028】
第1カバー101は、帯電防止材で形成される。これにより、静電気が帯びるの防ぎ、放電を防止することができる。第1カバー101は、例えば、布材やビニール材等が用いられる。特に、第1カバー101は、透光性を有する薄手のビニール材が好ましい。これにより、第1カバー101を介して、搬送ベルト17を視認可能となり、作業効率を高めることができる。
【0029】
第1カバー101は、記録装置10に対して取り外し可能に装着される。第1カバー101は、筐体14または本体フレーム12に対して少なくとも一つの固定部104によって固定される。固定部104は、例えば、自在に変形可能なシート状のマグネットである。本実施形態では、複数の固定部104(マグネット)が第1カバー101の複数個所に設けられ、磁性体を有する筐体14や本体フレーム12にくっ付ける。これにより、例えば、第2ファン52の吸引時における筐体14や本体フレーム12に対する第1カバー101のずれが抑制され、第1カバー101に覆われた空間を保持することができる。また、固定部104(マグネット)は筐体14から手指で容易に取り外し可能である。これにより、搬送ベルト17のメンテナンス作業が行われない場合には、第1カバー101を筐体14から取り外すことにより、例えば、露出部分90にユーザーがアクセスしてメディアMをセットする作業の障害となることを抑制できる。
なお、固定部104は、面ファスナー等を用いて第1カバー101と筐体14や本体フレーム12とを固定してもよい。
【0030】
第2カバー102も同様にして、記録装置10から取り外し可能に装着され、排気ダクト6を除き、筐体14の上部から記録装置10の下方に垂れ下がった状態で設置される。第2カバー102も筐体14または本体フレーム12に対して固定部104(例えば、マグネット)によって固定される。本実施形態では、筐体14の-Y方向端部には開口部が設けられ、搬送ベルト17の一部が筐体14から開放する。このため、記録装置10の-Y方向端部も含めて第2カバー102で覆うことで、搬送ベルト17の粘着剤等から発するVOCの拡散を抑制する。第2カバー102も第1カバー101と同様にして帯電防止材が用いられる。
【0031】
第1カバー101の一部と第2カバー102の一部とが重なるように、固定部104を固定する。これより、第1カバー101と第2カバー102との隙間を無くし、VOCの漏れを抑制する。
なお、カバー100は、一体に形成されたものであってもよい。
【0032】
本実施形態によれば、搬送ベルト17の露出部分90の少なくとも一部を覆うカバー100(第1カバー101、第2カバー102)を備えることにより、例えば、搬送ベルト17のメンテナンス作業において、離型剤や粘着剤等から生じる気化した揮発性有機化合物(VOC)が記録装置10の周辺に拡散する範囲を制限することができる。そして、第2ファン52によって、カバー100に覆われた空間の気体を除去することにより、気化したVOCを除去することができる。従って、記録装置10に対する科学的な作用が抑えられ、記録装置10の動作等への影響を抑制できる。
【0033】
なお、作業システム1における除去部は、第2ファン52に限定されない。例えば、除去部が工場に設置された排気装置4であってもよい。また、除去部が送風装置であってもよいし、カバー100で覆われた空間の気体を吸収または吸着する多孔質材料を用いてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、カバー100は、帯電防止材で形成したが、これに限定されない。例えば、複数のフレーム110に張架部材としてカバー100を張架した形態を構成してもよい。この場合、フレーム110の導電率は、カバー100の導電率より大きく、フレーム110は、直接的に又は間接的に、記録装置10と電気的に接続される。フレーム110が間接的に記録装置10と電気的に接続される場合は、フレーム110が電線等の電気伝導性部材を介して記録装置10に接続される。記録装置10は接地される。これにより、カバー100及びフレーム110の電位を記録装置10の電位と略等しくすることができる。従って、フレーム110の電位と記録装置10の電位との電位差に起因する放電が抑制される。
【0035】
本実施形態では、第1カバー101の+Y方向端部に大きな開口130を設けたが、これに限定されない。例えば、開口130を複数に形成し、開口130の総面積を小さくしてもよい。これにより、第1カバー101で覆われる面積が増え、第1カバー101で覆われた空間の吸気効率を高めることができる。
【0036】
また、本実施形態では、第1カバー101の+Y方向端部にのみ開口130を設けたが、これに加え、例えば、第1カバー101の+X方向端部や第1カバー101の-X方向端部等に複数の開口を設けてもよい。このようにすれば、複数人でメンテナンス作業を行うことができる。
【0037】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0038】
第1実施形態では、第1カバー101に開口130が設けられ、正面視において搬送ベルト17が露出した形態であったが、本実施形態では、図5に示すように、第1カバー101の開口130に蓋部140が設けられる。蓋部140によって開口130全体が覆われる。これにより、搬送ベルト17の露出部分90の全方向において第1カバー101によって覆われる。これにより、第1カバー101の外部へのVOCの拡散を抑制することができる。なお、図5では、記録装置10の一部を二点鎖線で示し、カバー100を実線で示している。
【0039】
また、蓋部140は、開口130を通じて第1カバー101に覆われた空間を第1カバー101の外部空間に連通する位置に変位可能である。具体的には、図6A及び図6Bに示すように、本実施形態の蓋部140は、複数の短冊状の短冊部材141(141a,141b)によって構成される。本実施形態の蓋部140は、短冊部材141によって暖簾状に構成される。短冊部材141(141a,141b)は、弾性部材であり、例えば、透光性を有するゴム部材で形成される。短冊部材141aの+Z方向の端部及び-Z方向の端部が第1カバー101に固定される。短冊部材141aの第1カバー101に固定された部分以外の部分は自在に変形可能である。各短冊部材141aは、X軸に沿った方向に所定の間隔を空けて配列される。また、短冊部材141bの+Z方向の端部が、隣り合う短冊部材141aの+Z方向の端部に固定される。同様に、短冊部材141bの-Z方向の端部が、隣り合う短冊部材141aの-Z方向の端部に固定される。すなわち、X方向における短冊部材141aの端部とX方向における短冊部材141bの端部とが互いに重なるように配置される。これにより、正面視において開口130が蓋部140によって閉口される。短冊部材141bの固定された部分以外の部分は自在に変形可能である。
【0040】
短冊部材141は帯電防止材で形成される。これにより、容易に変形(変位)可能となる。そして、蓋部140から搬送ベルト17に向けてユーザーの手指や腕を進入させると蓋部140が容易に変形し、第1カバー101の内部空間と外部空間とが連通する。そして、第1カバー101に覆われた空間に容易にアクセスでき、作業が可能となる。また、蓋部140から手指や腕を退避させると、短冊部材141が有する弾性によって短冊部材141の形状が手指や腕が進入される前の状態に戻る。これにより、ユーザーが作業しない場合には、開口130が塞がれることによってVOCの拡散を低減できる。
【0041】
また、蓋部140が第1カバー101に対して着脱可能に構成してもよい。この場合、例えば、蓋部140を第1カバー101に着けた状態(開口130を閉口させた状態)で所定期間、第2ファン52で吸気を行い、第1カバー101に覆われた空間のVOCを除去した後、蓋部140を取り外して、メンテナンス作業を行ってもよい。
【0042】
また、本実施形態では、蓋部140を短冊部材141で構成したが、これに限定されない。例えば、蓋部140が、一枚のゴム部材で形成され、第1カバー101に対して線ファスナーや面ファスナーにより第1カバー101に固定する構成でもよい。このようにしても、蓋部140は変位可能となり、上記同様の効果を得ることができる。
【0043】
3.第3実施形態
次に、第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。なお、図7では、記録装置10を二点鎖線で示し、カバー100Aを実線で示している。
【0044】
本実施形態のカバー100Aは、第1カバー101Aと第2カバー102Aとを有する。カバー100A(第1カバー101A、第2カバー102A)には、記録装置10が設置される設置面2に接触する接触部105を含む。図7に示すように、接触部105は、カバー100Aの下方の裾部分が設置面2に広がり、設置面2と接触する接触面を有する。接触部105は、カバー100Aの周囲全体に設けられる。そして、設置面2に接触部105を押さえる押さえ部150が配置される。押さえ部150は、チェーン等の錘である。押さえ部150を接触部105の全体(記録装置10の全周)に亘って配置する。これにより、設置面2とカバー100Aとの密着性を向上できる。従って、カバー100Aに覆われた空間の気密性が向上し、カバー100Aの下部のすき間からVOCが拡散することを低減できる。なお、押さえ部150は、接触部105に対して風圧を印加する機構等であってもよい。なお、第1カバー101A及び第2カバー102Aの他の構成は第1実施形態の構成と同様である。
【0045】
4.第4実施形態
次に、第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。なお、図8では、記録装置10の一部を二点鎖線で示し、カバー100を実線で示している。
【0046】
図8に示すように、本実施形態の作業システム1Aには、第1カバー101に覆われた空間に外気を取り入れる外気吸入部160が設けられる。
外気吸入部160は、第1カバー101に覆われた空間を第1カバー101の外部空間に連通する連通部161と、連通部161を介して第1カバー101に覆われた空間に空気を送る送風部162と、を有する。連通部161は管であり、第1カバー101を貫通して設けられる。送風部162はファンである。送風部162に対しては、例えば商用電源から電力が供給される。送風部162は、第1カバー101に覆われた空間内に配置してもよいし、第1カバー101の外側に配置してもよい。外気吸入部160は、例えば、メンテンナス作業を行うユーザーの上方となるように配置する。送風部162を駆動させることにより、連通部161を介して、第1カバー101に覆われた空間内に外気が流入する。これにより、第1カバー101に覆われた空間にVOCが滞留することが抑制されるとともに、外気吸入部160が設けられていない構成の場合と比べてVOCの濃度をより短い時間で低減できる。これにより、記録装置10の動作に影響が与えられることを更に抑制できる。なお、送風部162の電源を、記録装置10の電源と共通化してもよい。具体的には、送風部162を記録装置10と電気ケーブルを介して電気的に接続し、記録装置10を商用電源に接続する。これにより、記録装置10を介して送風部162に電力が供給される。また、送風部162の電源は、蓄電池でもよい。
【0047】
5.第5実施形態
次に、第5実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
第1実施形態では、記録装置10とカバー100と除去部とにより作業システム1を構成したが、これら全体を記録装置10として構成してもよい。
すなわち、記録装置10が、メディアMを粘着可能な粘着剤が設けられてメディアMを搬送可能な搬送ベルト17と、メディアMに記録可能な記録部20が収容される筐体14と、搬送ベルト17のうち、筐体14から露出する露出部分90の少なくとも一部を覆うカバー100と、カバー100に覆われた空間の気体を除去可能な除去部(例えば、第2ファン52)と、を備える構成であってもよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1,1A…作業システム、2…設置面、4…排気装置、6…排気ダクト、10…記録装置、12…本体フレーム、14…筐体、17…搬送ベルト、17A…外周面、18…支持面、19…筐体カバー、20…記録部、21…記録ヘッド、22…キャリッジ、52…第2ファン、78…フィルター、90…露出部分、100,100A…カバー、101,101A…第1カバー、102,102A…第2カバー、104…固定部、105…接触部、110…フレーム、130…開口、140…蓋部、141…短冊部材、150…押さえ部、160…外気吸入部、161…連通部、162…送風部、M…メディア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8