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特許7593069教習支援装置、教習支援方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】教習支援装置、教習支援方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 15/00 20060101AFI20241126BHJP
   G10G 1/00 20060101ALI20241126BHJP
   G09B 5/02 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
G09B15/00 Z
G10G1/00
G09B5/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020190868
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022079963
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】有元 慶太
(72)【発明者】
【氏名】増田 英之
【審査官】白形 優依
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-035436(JP,A)
【文献】特開2007-187898(JP,A)
【文献】特開2002-091290(JP,A)
【文献】特開2009-180958(JP,A)
【文献】特開2017-058461(JP,A)
【文献】特開2009-180957(JP,A)
【文献】特開2001-249675(JP,A)
【文献】特開2005-318094(JP,A)
【文献】Saxophonists tune vocal tract resonances in advanced performance technics,The Journal of the Acoustical Society of America,2011年,Vol.129, No.1,pp.415-426
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 11/00 - 15/08
G09B 1/00 - 9/56
G09B 17/00 - 19/26
G10G 1/00 - 7/02
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管楽器を用いた演奏の演奏対象である音の音高情報を取得する音高情報取得部と、
前記音高情報に応じた音を演奏する際の手本となる口腔音響特性を取得する手本情報取得部と、
前記音高情報に応じた音を演奏する場合における演奏者の口腔音響特性を示す特性情報を取得する特性情報取得部と、
前記特性情報取得部によって取得された前記演奏者の口腔音響特性と、前記手本情報取得部によって取得された前記手本となる口腔音響特性と、を音高と共鳴の強さとの関係として表示する出力部と、
を備える教習支援装置。
【請求項2】
管楽器を用いた演奏の演奏対象である音の音高情報を取得する音高情報取得部と、
前記音高情報に応じた音を演奏する際の手本となる口腔音響特性を取得する手本情報取得部と、
前記音高情報に応じた音を演奏する場合における演奏者の口腔音響特性を示す特性情報を取得する特性情報取得部と、
前記特性情報取得部によって取得された前記演奏者の口腔音響特性と、前記手本情報取得部によって取得された前記手本となる口腔音響特性と、前記音高情報に対応する音に基づいて推定された前記演奏者の口腔形状を表示する出力部と、
を備える教習支援装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記演奏者の口腔形状に対するコメントを表示する、
請求項2に記載の教習支援装置。
【請求項4】
前記手本となる口腔音響特性を示す手本特性情報を記憶する記憶部を更に備え、
前記手本情報取得部は、前記音高情報に応じた音に対応する前記手本特性情報を前記記憶部から読み出して取得する、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の教習支援装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記演奏者の口腔音響特性における共鳴のピークとなる音高と、前記手本となる口腔音響特性における共鳴のピーク音高をマークして表示する、
請求項に記載の教習支援装置。
【請求項6】
スピーカから演奏者の口腔内に入力させた音による前記演奏者の口腔における共鳴音をマイクに集音させ、前記集音させた共鳴音に基づいて、演奏者の口腔音響特性を測定する口腔音響特性測定部を更に備え、
前記特性情報取得部は、前記口腔音響特性測定部によって測定された前記特性情報を取得する、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の教習支援装置。
【請求項7】
演奏者が演奏する場合に形成される口腔形状を維持させた状態で発音された有声音を線形予測分析することによって、前記演奏者の口腔音響特性を測定し、前記演奏者の口腔形状を推定する信号処理部を更に備え、
前記特性情報取得部は、前記信号処理部によって測定された前記演奏者の口腔音響特性、及び前記信号処理部によって推定された前記演奏者の口腔形状を取得する、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の教習支援装置。
【請求項8】
教習支援装置のコンピュータが行う教習支援方法であって、
音高情報取得部が、管楽器を用いる演奏の演奏対象である音の音高情報を取得し、
手本情報取得部が、前記音高情報に応じた音を演奏する際の手本となる口腔音響特性を取得し、
特性情報取得部が、前記音高情報に応じた音を演奏する場合における演奏者の口腔音響特性を示す特性情報を取得し、
出力部が、前記特性情報取得部によって取得された前記演奏者の口腔音響特性と、前記手本情報取得部によって取得された前記手本となる口腔音響特性と、を音高と共鳴の強さとの関係として表示する、
教習支援方法。
【請求項9】
教習支援装置のコンピュータに、
管楽器を用いる演奏の演奏対象である音の音高情報を取得する音高情報取得手段、
前記音高情報に応じた音を演奏する際の手本となる口腔音響特性を取得する手本情報取得手段、
前記音高情報に応じた音を演奏する場合における演奏者の口腔音響特性を示す特性情報を取得する特性情報取得手段、
前記特性情報取得手段において取得された前記演奏者の口腔音響特性と、前記手本情報取得手段において取得された前記手本となる口腔音響特性と、を音高と共鳴の強さとの関係として表示する出力手段、
を実行させるプログラム。
【請求項10】
教習支援装置のコンピュータが行う教習支援方法であって、
音高情報取得部が、管楽器を用いる演奏の演奏対象である音の音高情報を取得し、
手本情報取得部が、前記音高情報に応じた音を演奏する際の手本となる口腔音響特性を取得し、
特性情報取得部が、前記音高情報に応じた音を演奏する場合における演奏者の口腔音響特性を示す特性情報を取得し、
出力部が、前記特性情報取得部によって取得された前記演奏者の口腔音響特性と、前記手本情報取得部によって取得された前記手本となる口腔音響特性と、前記音高情報に対応する音に基づいて推定された前記演奏者の口腔形状を表示する、
教習支援方法。
【請求項11】
教習支援装置のコンピュータに、
管楽器を用いる演奏の演奏対象である音の音高情報を取得する音高情報取得手段、
前記音高情報に応じた音を演奏する際の手本となる口腔音響特性を取得する手本情報取得手段、
前記音高情報に応じた音を演奏する場合における演奏者の口腔音響特性を示す特性情報を取得する特性情報取得手段、
前記特性情報取得手段において取得された前記演奏者の口腔音響特性と、前記手本情報取得手段において取得された前記手本となる口腔音響特性と、前記音高情報に対応する音に基づいて推定された前記演奏者の口腔形状を表示する出力手段、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、教習支援装置、教習支援方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
金管楽器、木管楽器等の管楽器を用いた演奏において、演奏者による口腔形状(アンブシュア)が重要である。演奏者が口腔にある様々な筋肉を動かすことにより、目的とする音が管楽器から出るような音響特性を有する空間を口腔に形成することで、目的とする音を演奏(吹鳴)しやすくなるためである。特許文献1には、口腔形状を測定し、測定した形状が手本に合致しているかを表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-187898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、口腔内の筋肉のつき方や喉の長さなどが個人ごとに異なるため口腔形状には個人差がある。そのため、手本の口腔形状を真似ても、口腔内の音響特性が目的の奏法の音響特性とならないことがあるため目的の奏法が実現できないことがあった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、その目的は、目的とする音を演奏することができる口腔の音響特性と、演奏者の口腔の音響特性を、演奏者に認識させることが可能な教習支援装置、教習支援方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、管楽器を用いた演奏の演奏対象である音の音高情報を取得する音高情報取得部と、前記音高情報に応じた音を演奏する際の手本となる口腔音響特性を取得する手本情報取得部と、前記音高情報に応じた音を演奏する場合における演奏者の口腔音響特性を示す特性情報を取得する特性情報取得部と、前記特性情報取得部によって取得された前記演奏者の口腔音響特性と、前記手本情報取得部によって取得された前記手本となる口腔音響特性と、を音高と共鳴の強さとの関係として表示する出力部と、を備える教習支援装置である。
また、本発明の一態様は、管楽器を用いた演奏の演奏対象である音の音高情報を取得する音高情報取得部と、前記音高情報に応じた音を演奏する際の手本となる口腔音響特性を取得する手本情報取得部と、前記音高情報に応じた音を演奏する場合における演奏者の口腔音響特性を示す特性情報を取得する特性情報取得部と、前記特性情報取得部によって取得された前記演奏者の口腔音響特性と、前記手本情報取得部によって取得された前記手本となる口腔音響特性と、前記音高情報に対応する音に基づいて推定された前記演奏者の口腔形状を表示する出力部と、を備える教習支援装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、教習支援装置のコンピュータが行う教習支援方法であって、音高情報取得部が、管楽器を用いる演奏の演奏対象である音の音高情報を取得し、手本情報取得部が、前記音高情報に応じた音を演奏する際の手本となる口腔音響特性を取得し、特性情報取得部が、前記音高情報に応じた音を演奏する場合における演奏者の口腔音響特性を示す特性情報を取得し、出力部が、前記特性情報取得部によって取得された前記演奏者の口腔音響特性と、前記手本情報取得部によって取得された前記手本となる口腔音響特性と、を音高と共鳴の強さとの関係として表示する、教習支援方法である。
また、本発明の一態様は、教習支援装置のコンピュータが行う教習支援方法であって、音高情報取得部が、管楽器を用いる演奏の演奏対象である音の音高情報を取得し、手本情報取得部が、前記音高情報に応じた音を演奏する際の手本となる口腔音響特性を取得し、特性情報取得部が、前記音高情報に応じた音を演奏する場合における演奏者の口腔音響特性を示す特性情報を取得し、出力部が、前記特性情報取得部によって取得された前記演奏者の口腔音響特性と、前記手本情報取得部によって取得された前記手本となる口腔音響特性と、前記音高情報に対応する音に基づいて推定された前記演奏者の口腔形状を表示する、教習支援方法である。
【0008】
また、本発明の一態様は、教習支援装置のコンピュータに、管楽器を用いる演奏の演奏対象である音の音高情報を取得する音高情報取得手段、前記音高情報に応じた音を演奏する際の手本となる口腔音響特性を取得する手本情報取得手段、前記音高情報に応じた音を演奏する場合における演奏者の口腔音響特性を示す特性情報を取得する特性情報取得手段、前記特性情報取得手段において取得された前記演奏者の口腔音響特性と、前記手本情報取得手段において取得された前記手本となる口腔音響特性と、を音高と共鳴の強さとの関係として表示する出力手段、を実行させるプログラムである。
また、本発明の一態様は、教習支援装置のコンピュータに、管楽器を用いる演奏の演奏対象である音の音高情報を取得する音高情報取得手段、前記音高情報に応じた音を演奏する際の手本となる口腔音響特性を取得する手本情報取得手段、前記音高情報に応じた音を演奏する場合における演奏者の口腔音響特性を示す特性情報を取得する特性情報取得手段、前記特性情報取得手段において取得された前記演奏者の口腔音響特性と、前記手本情報取得手段において取得された前記手本となる口腔音響特性と、前記音高情報に対応する音に基づいて推定された前記演奏者の口腔形状を表示する出力手段、を実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、目的とする音を演奏することができる口腔の音響特性と、演奏者の口腔の音響特性を、演奏者に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の教習支援装置10の構成の例を示すブロック図である。
図2】実施形態の口腔音響特性を測定する方法を説明する図である。
図3】実施形態の口腔形状を推定する方法を説明する図である。
図4】実施形態の口腔形状を推定する方法を説明する図である。
図5】実施形態の口腔形状を推定する方法を説明する図である。
図6】実施形態の口腔形状を推定する方法を説明する図である。
図7】実施形態の口腔形状を推定する方法を説明する図である。
図8】実施形態の手本特性情報160の構成の例を示す図である。
図9】実施形態の手本形状情報161の構成の例を示す図ある。
図10】実施形態の表示部15に表示される画像の例を示す図である。
図11】実施形態の表示部15に表示される画像の例を示す図である。
図12】実施形態の表示部15に表示される画像の例を示す図である。
図13】実施形態の表示部15に表示される画像の例を示す図である。
図14】実施形態の教習支援装置10が行う処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。以下の説明では、口腔とは人間の口唇から声門に至るまでの気道であって、管楽器を演奏する際に音響管として機能し、演奏する音に応じて形状が変化する部位のこと示す。
【0012】
図1は、実施形態の教習支援装置10の構成の例を示すブロック図である。教習支援装置10は、管楽器を用いる演奏に係る教習を支援するコンピュータであり、例えば、PC(Personal Computer)、サーバ装置などである。図1に示すように、教習支援装置10は、例えば、音高情報取得部11と、手本情報取得部12と、特性情報取得部13と、口腔音響特性測定部14と、表示部15と、記憶部16と、口腔形状推定部17とを備える。
【0013】
音高情報取得部11は、音高情報を取得する。音高情報は、音高(ピッチ)を示す情報である。音高情報取得部11は、例えば、マウスやキーボードなどの入力装置から入力された音高を示す情報を、音高情報として取得する。或いは、音高情報取得部11は、楽譜データに示された音符における音高を示す情報を、音高情報として取得するようにしてもよい。音高情報取得部11は、取得した音高情報を、手本情報取得部12に出力する。
【0014】
手本情報取得部12は、音高情報に応じた音を演奏する場合に手本となる口腔音響特性を取得する。ここでの手本は、演奏を教習させる場合に模範として示される対象である。口腔音響特性は、口腔内に形成された空間における音響の特性である。例えば、口腔音響特性は、口腔内に形成される空間において異なる周波数の音に対して共鳴する大きさ(共鳴の強さ)との関係を示すものである(図10参照)。手本情報取得部12は、例えば、音高情報取得部11から音高情報を取得し、取得した音高情報に基づいて、記憶部16から音高情報に応じた音に対応する手本特性情報160を取得する。手本特性情報160は、手本となる口腔音響特性を示す情報である(図8参照)。
【0015】
また、手本情報取得部12は、音高情報に応じた音を演奏する場合に手本となる口腔形状を取得する。口腔形状は、口腔の形状を示す情報であり、例えば、口唇から声門に至るまでの気道における各部位(唇、歯、口腔、口狭部、下咽頭等)における気道断面積を示す情報である(図4参照)。あるいは、口腔形状は、口腔の入り口から声門に至るまでの気道を側面からみた模式図で示す情報である(図12の画像G4参照)。手本情報取得部12は、例えば、音高情報取得部11から音高情報を取得し、取得した音高情報に基づいて、記憶部16から音高情報に応じた音に対応する手本形状情報161を取得する。手本形状情報161は、手本となる口腔形状を示す情報である(図9参照)。
【0016】
特性情報取得部13は、音高情報に応じた音を演奏する演奏者の口腔音響特性を取得する。特性情報取得部13は、例えば、口腔音響特性測定部14によって測定された演奏者の口腔音響特性を取得する。また、特性情報取得部13は、音高情報に応じた音を演奏する演奏者の口腔形状を取得する。特性情報取得部13は、例えば、口腔形状推定部17によって推定された演奏者の口腔形状を取得する。
【0017】
口腔音響特性測定部14は、音高情報に応じた音を演奏する演奏者の口腔音響特性を測定する。口腔音響特性測定部14は、任意の測定方法を用いて、演奏者の口腔音響特性を測定してよい。口腔音響特性測定部14が口腔音響特性を測定する方法については後で詳しく説明する。
【0018】
口腔形状推定部17は、音高情報に応じた音を演奏する演奏者の口腔形状を推定する。口腔形状推定部17は、任意の測定方法を用いて、演奏者の口腔形状を推定してよい。口腔形状推定部17が口腔形状を推定する方法については後で詳しく説明する。
【0019】
教習支援装置10における上記の各構成要素(音高情報取得部11、手本情報取得部12、特性情報取得部13、口腔音響特性測定部14、及び口腔形状推定部17)が行う各処理は、例えば、教習支援装置10が備えるCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサが、記憶部16に格納されたプログラムを実行することにより実現されるように構成される。或いは、教習支援装置10における上記の各構成要素の全部または一部が、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用ハードウェアにより実現されてもよい。
【0020】
表示部15は、画像を表示する機能を有するハードウェアとしてのLED(light emitting diode、発光ダイオード)やLCD(Liquid Crystal Display、液晶ディスプレイ)などから構成される。表示部15は、音高情報に応じた音における、手本となる口腔音響特性、及び演奏者による口腔音響特性を表示する。
【0021】
記憶部16は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)、或いはこれらの組合せである。記憶部16は、教習支援装置10の各構成要素を実現するためのプログラム、プログラムを実行する際に用いられる変数、及び各種の情報を記憶する。記憶部16は、例えば、手本特性情報160と、手本形状情報161を記憶する。手本特性情報160は、手本となる口腔音響特性を示す情報である。手本形状情報161は、手本となる口腔形状を示す情報である。
【0022】
ここで、口腔音響特性測定部14が、口腔音響特性を測定する方法について説明する。測定には、任意の方法が用いられてよいが、例えば、ニューサウスウェールズ大学(UNSW(University of New South Wales))等の研究者らにより開示された文献1("Saxophonists tune vocal tract resonances in advanced performance techniques, Jer-Ming Chen, et al, January 2011, The Journal of the Acoustical Society of America 129(1):415-26")や、他の文献2("A Single Microphone Capillary-Based System for Measuring the Complex Input Impedance of Musical Wind Instruments, D. B. Sharp, et al, September 2011, Acta Acustica united with Acustica 97(5):819-829")を、用いることができる。文献2には、細くて長い音響管を用いることによって、駆動源(スピーカ)への反射を近似的に0(ゼロ)とみなせるような測定環境を構築することが記載されている。
【0023】
図2は、口腔音響特性測定部14による測定方法を説明する図である。図2に示すように、例えば、口腔音響特性測定部14は、特殊マウスピースTMを用いて、演奏者Pにおける口腔音響特性を測定する。特殊マウスピースTMは、マイクMと接続される第1音響管C1と、スピーカSと接続される第2音響管C2とを備える。第1音響管C1は、口腔の入り口における音をマイクMに集音させる。第2音響管C2は、スピーカSによって発音された音を口腔内に入力させる。
【0024】
演奏者は、特殊マウスピースTMを装着した状態において、音高情報に応じた音を演奏するための口腔形状を形成する。口腔音響特性測定部14は、DAC(Digital-to-Analog Converter)を介してスピーカSに特定の音高に対応する音を発音させる。これにより、第2音響管C2を介して演奏者の口腔内に音が入力され、その音が口腔内で共鳴し、共鳴した音響(共鳴音)が第1音響管C1を介してマイクMに集音される。口腔音響特性測定部14は、マイクMに集音された音を、ADC(Analog-to-Digital Converter)を介して取得する。口腔音響特性測定部14は、例えば、スピーカSにより発音させた音の音圧と、マイクMに集音された音の音圧とを比較することによって、その音による口腔内における共鳴の強さを取得する。口腔音響特性測定部14は、順次、音高を変化させた音をスピーカから発音させ、発音させた音に対応する共鳴の強さを取得する。これによって、口腔音響特性測定部14は、演奏者の口腔音響特性を測定する。
【0025】
口腔音響特性測定部14は、演奏者が特殊マウスピースTMを装着して管楽器を演奏した状態で、演奏者の口腔音響特性を測定するようにしてもよい。この場合、口腔音響特性測定部14は、マイクMに集音された音にフィルタ処理する等して、演奏により管楽器から出力された音に相当する成分を減衰させる。口腔音響特性測定部14は、フィルタ処理後の音の音圧を用いて、口腔内における共鳴の強さを取得する。
【0026】
ここで、口腔形状推定部17が、口腔形状を推定する方法について説明する。推定には任意の方法が用いられてよいが、例えば、WareとAkiのアルゴリズム(文献3「音を用いた気道断面積測定法とその臨床応用」日本音響学会誌49巻4号(1993)等に開示)を用いることができる。
【0027】
図3図7は、口腔形状推定部17による推定方法を説明する図である。図3に示すように、例えば、口腔形状推定部17は、ウェーブチューブ(音響管)C3を用いて、演奏者Pにおける口腔形状を推定する。ウェーブチューブC3には、圧力トランスデューサATと、ホーンドライバHとが設けられる。ホーンドライバHは、ウェーブチューブC3を介して、音を口腔内に入力させる。圧力トランスデューサATは、口腔からウェーブチューブC3を介して外部に出力される音の反射波の音圧に応じた電気信号を出力する。ホーンドライバHは、「スピーカ」の一例である。圧力トランスデューサATは、「マイク」の一例である。
【0028】
演奏者は、ウェーブチューブC3を装着した状態において、音高情報に応じた音を演奏する場合における口腔形状を形成する。口腔形状推定部17は、DAC(Digital-to-Analog Converter)を介してホーンドライバHにインパルス波形を発音させる。これにより、ウェーブチューブC3を介して演奏者の口腔内に音が入力される。そして、その音が口腔内で反射し、ウェーブチューブC3を介して口腔外に出力され、圧力トランスデューサATで測定される。口腔形状推定部17は、圧力トランスデューサATで測定された音圧を、ADC(Analog-to-Digital Converter)を介して取得する。
【0029】
口腔形状推定部17は、取得した反射波の音圧を用いて、原点から距離xだけ離れた位置における気道の断面積を算出する。ここでの原点とは、入力波及び反射波を計測する際に原点となる位置であり、ウェーブチューブC3における圧力トランスデューサATが設けられた位置である。これにより、図4に示すように、口腔形状推定部17は、入口からの距離xと、気道断面積との関係を算出することができ、この関係に基づいて口腔形状を推定することが可能となる。
【0030】
図5には、口腔形状を単純化したモデル(以下、単純モデル)が示されている。単純モデルは、原点におけるウェーブチューブC3の断面積が面積A0であり、原点から距離x0離れた位置における気道の断面積がA1に変化するモデルである。この場合、口腔形状推定部17は、以下の(1)式を用いて、原点からの距離x0にある部位における反射係数rを表記する。
【0031】
r=(Pr/Pi)×(A0-A1)/(A0+A1) …(1)
【0032】
(1)式におけるPrは反射波の音圧、Piは入力波の音圧を示す。また、(1)式におけるA0は原点における断面積、A1は原点から距離x0離れた位置における気道の断面積を示す。
【0033】
口腔形状推定部17は、(1)式を面積A1について解き、(2)式のように変形させて、面積A1を、係数Kと断面積A0との積で表記する。
【0034】
A1=K×A0 …(2)
但し、K=(Pr-rPi)/(Pr+rPi)
【0035】
面積A0が既知であることから、口腔形状推定部17は、係数Kを決定することにより、面積A1を算出することができる。係数Kは、入力波Piの音圧、時刻Tにおいて測定された反射波Pr(T)の音圧、及び反射係数rを用いて算出することが可能である。ここで、時刻Tは、往復距離(2×x0)を音波が伝搬するのに要した時間である。
【0036】
図6には、実際の口腔形状に近いモデル(以下、実モデル)が示されている。実モデルは、入口における気道の断面積が面積A0であり、入口から距離x0、2x0、3x0、4x0、…離れた位置における気道の断面積がA1、A2、A3、A4、…と段階的に変化するモデルである。
【0037】
実モデルでは、時刻0(ゼロ)において、入力波Piが口腔に接続されたウェーブチューブC3に入力されるものとする。また、時刻Tにおいて、原点から距離x0離れた位置における断面において反射した反射波Pr(T)が測定されるものとする。同様に、時刻2T、3T、…において、原点から距離2x0、3x0、…離れた位置における断面において反射した反射波Pr(2T)、Pr(3T)、…が測定されるものとする。
【0038】
実モデルにおいては、時刻2Tまでは多重反射が無いため単純モデルと同様に、(2)式を用いて、面積A1、A2を算出することができる。しかしながら、図7に示すように、実モデルでは、時刻T3において、原点から距離3x0離れた位置において反射した反射波と、破線の矢印で示すような多重反射した反射波とが混在した波が、圧力トランスデューサATによって測定される。
【0039】
口腔形状推定部17は、このような多重反射した反射波を、面積A0~A2を用いて算出する。口腔形状推定部17は、時刻T3において測定された反射波の音圧から、多重反射した反射波音圧を減算し、減算後の(すなわち、原点から距離3x0離れた位置における断面に反射した反射波のみからなる)音圧を(2)式に代入することによって、面積A3を算出する。このような、多重反射による影響を考慮した推定を行うことで、より精度よく、口腔形状を推定することが可能となる。
【0040】
上述した、口腔音響特性測定部14による測定、及び口腔形状推定部17による推定に係る処理を、例えば、DSPなどを用いて実行することにより、DSPを用いずにCPUのみで実行する場合と比較して、より高速に演算処理を実行することができる。したがって、演奏する音の変化とほぼリアルタイムに、口腔音響特性の測定、及び口腔形状の推定を実行することが可能となる。
【0041】
図8は、実施形態の手本特性情報160の構成の例を示す図である。図8に示すように、手本特性情報160は、例えば、音高情報と、手本特性との項目を備える。音高情報は、音高を示す情報である。手本特性は、音高情報で特定される音を演奏する場合において手本となる口腔音響特性を示す情報である。手本となる口腔音響特性は、例えば、熟練の演奏者による演奏において実際に測定(実測)された口腔音響特性である。或いは、実測ではなく、シミュレーションなどの手法を用いて作成された特性であってもよい。
【0042】
図9は、実施形態の手本形状情報161の構成の例を示す図である。図9に示すように、手本形状情報161は、例えば、音高情報と、手本形状との項目を備える。音高情報は、音高を示す情報である。手本形状は、音高情報で特定される音を演奏する場合において手本となる口腔形状を示す情報である。手本となる口腔形状は、例えば、熟練の演奏者による演奏において、MRI(Magnetic Resonance Imaging)等の測定装置を用いて実際に測定(実測)された口腔形状である。或いは、実測ではなく、シミュレーションなどの手法を用いて作成された形状であってもよい。
【0043】
図10から図13は、実施形態の表示部15に表示される画像の例を示す図である。図10に示すように、表示部15は、手本となる口腔音響特性L1と、演奏者による口腔音響特性L2を表示する。この図の例では、画像G1が表示されている。画像G1には、特性L1と、特性L2とが、重ねて表示されている。ここでの口腔音響特性は、横軸が音高、縦軸が共鳴の強さを示す。このように、口腔音響特性の音高が周波数で示されていてもよい。これにより、演奏者に、特性L1とL2との相違を認識させることが可能である。演奏者は、口腔にある筋肉の動かし方を変えることによって音響特性がどう変化するのかを認識することができる。したがって、目的とする音を演奏することができる音響特性と、その音を演奏する場合における口腔にある筋肉の動かし方との関係を、演奏者に習得させることができる。
【0044】
図11に示すように、表示部15は、口腔音響特性を示す波形に加え、マーカMK1~MK3を表示するようにしてもよい。この図の例では、表示部15は、画像G2、G3を表示する場合の例が示されている。画像G2では、楽譜GHと、演奏位置を示すマーカMK1が示されている。画像G2を表示させることによって、演奏者が演奏位置や演奏音を認識しやすくなる。また、画像G3では、周波数の差分(図11では、「音ズレ」と記載)を示すマーカMK2と、強度差を示すマーカMK3とが示されている。ここでの周波数の差分は、手本の特性L1における共振のピークとなる周波数と、演奏者の特性L2における共振のピークとなる周波数との差分である。強度差は、手本の特性L1における共振のピーク値と、演奏者の特性L2における共振のピーク値との差分である。この図の例に示すように表示部15は、周波数の差分を、[cent]など演奏者が把握しやすい単位で示すようにしてもよい。周波数(Hz)で表示する場合と比較して、より直感的に周波数のずれ度合を認識させることができる。
【0045】
図12に示すように、表示部15は、さらに手本となる口腔形状L3と、演奏者の口腔形状L4を表示するようにしてもよい。この図の例では、さらに画像G4が表示されている。画像G4には、形状L3と、形状L4とが、重ねて表示されている。
【0046】
図13に示すように、表示部15は、口腔形状に、コメントCM1、CM2を表示するようにしてもよい。この図の例では、表示部15は、画像G5を表示する場合の例が示されている。画像G5では、演奏者の口腔形状における舌の位置に「舌を下げて」とのコメントCM1が示されている。また、画像G5では、演奏者の口腔形状における下咽頭の位置に「喉を閉めて」とのコメントCM2が示されている。このようなコメントを付すことにより、演奏者に筋肉の動かし方のヒントを与えることができる。
【0047】
図14は、実施形態の教習支援装置10が行う処理の流れを説明するフローチャートである。教習支援装置10は、音高情報を取得する(ステップS10)。教習支援装置10は、音高情報に対応する音を演奏する場合において手本となる口腔音響特性を取得する(ステップS11)。教習支援装置10は、音高情報に対応する音を演奏する場合における演奏者の口腔音響特性を測定する(ステップS12)。教習支援装置10は、手本となる口腔音響特性と、演奏者の口腔音響特性とを表示する(ステップS13)。
【0048】
一方、教習支援装置10は、音高情報に対応する音を演奏する場合において手本となる口腔形状を取得する(ステップS14)。教習支援装置10は、音高情報に対応する音を演奏する場合における演奏者の口腔形状を推定する(ステップS15)。教習支援装置10は、手本となる口腔形状と、演奏者の口腔形状とを表示する(ステップS16)。
【0049】
なお、上述したフローチャートでは、口腔音響特性と口腔形状との両方を表示する場合を例示して説明した。しかしながら、これに限定されない。教習支援装置10は、少なくとも、手本となる口腔音響特性と、演奏者による口腔音響特性とを表示すればよい。
また、上述したフローチャートでは、口腔音響特性を表示した後に、口腔形状を推定する場合を例示した。しかしながら、これに限定されない。教習支援装置10は、口腔音響特性と口腔形状とをまとめて表示するようにしてもよい。この場合、ステップS12の後にステップS14、S15が実行され、その後、ステップS13、S16が実行される。
【0050】
なお、上述した実施形態では、口腔音響特性測定部14が演奏者の口腔音響特性を測定する場合を例示して説明した。しかしながら、これに限定されない。教習支援装置10は、外部装置によって測定された口腔音響特性を取得するようにしてもよい。この場合、外部装置は、口腔音響特性測定部14と同等の機能部を備え、その機能部によって測定された口腔音響特性を、教習支援装置10に送信する。
【0051】
以上説明したように、実施形態の教習支援装置10は、音高情報取得部11と、手本情報取得部12と、特性情報取得部13と、表示部15とを備える。表示部15は、「出力部」の一例である。音高情報取得部11は、演奏対象である音高情報を取得する。手本情報取得部12は、音高情報に応じた音を演奏する際の手本となる口腔音響特性を取得する。特性情報取得部13は、演奏者が音高情報に応じた音を演奏する場合における口腔音響特性を取得する。表示部15は、特性情報取得部13によって取得された演奏者の口腔音響特性、及び手本情報取得部12によって取得された手本となる口腔音響特性を表示する。
【0052】
これによって、実施形態の教習支援装置10は、演奏者の口腔音響特性と、手本となる口腔音響特性とを示すことができる。演奏時に形成される口腔形状は、口腔に所望の音響共鳴(口腔音響特性)を持つ空間をつくるための手段でしかない。目的とする音が吹鳴できるか否かは、口腔形状を提示するより、口腔音響特性を提示する方が、より本質的である。このため、演奏者に、手本となる音響特性との差異を認識させ、口腔にある筋肉の動かし方を変えることによって音響特性がどう変化するのかを認識させることが可能である。したがって、目的とする音を演奏することができる音響特性と、その音を演奏する場合における口腔にある筋肉の動かし方との関係を、演奏者に習得させることが可能となる。
【0053】
また、実施形態の教習支援装置10では、記憶部16を更に備える。記憶部16は、手本特性情報160を記憶する。手本特性情報160は、手本となる口腔音響特性を示す情報である。手本情報取得部12は、音高情報に応じた音に対応する手本特性情報160を記憶部16から読み出して取得する。これにより、実施形態の教習支援装置10は、予め記憶された手本特性情報160を音高情報に応じて選択することができ、インターネットなどの通信網と接続されていない環境であっても、手本特性情報160を取得することが可能である。
【0054】
また、実施形態の教習支援装置10では、表示部15は、演奏者による口腔音響特性と、手本となる口腔音響特性とを、音高と共鳴の強さとの関係を表示する。これにより、実施形態の教習支援装置10は、手本との周波数の差や強度差を直感的に認識することが可能となる。
【0055】
また、実施形態の教習支援装置10では、表示部15は、演奏者の口腔音響特性における共鳴のピークとなる音高と、手本となる口腔音響特性における共鳴のピーク音高をマークして表示する。これにより、実施形態の教習支援装置10は、手本と音ズレや強度差を定量的に認識することが可能となる。
【0056】
また、実施形態の教習支援装置10では、口腔音響特性測定部14を更に備える。口腔音響特性測定部14は、図2に示すように、スピーカSから演奏者の口腔内に音を入力させる。口腔音響特性測定部14は、演奏者Pの口腔内に入力させた音による、演奏者Pの口腔における共鳴音をマイクMに集音させる。口腔音響特性測定部14は、マイクMに集音させた共鳴音に基づいて、演奏者の口腔音響特性を測定する。これにより、実施形態の教習支援装置10では、演奏者の口腔音響特性を測定することができる。
【0057】
(実施形態の変形例1)
ここで、実施形態の変形例1について説明する。本変形例では、演奏者の口腔音響特性の測定処理と、口腔形状の推定処理とを、まとめて実施する点において、上述した実施形態と相違する。
【0058】
以下の説明では、口腔音響特性測定部14が、演奏者の口腔音響特性の測定処理と、口腔形状の推定処理とを、まとめて実施する場合を例示して説明する。しかしながら、これに限定されない。口腔形状推定部17や、教習支援装置10における他の機能部が奏者における口腔音響特性の測定処理と、口腔形状の推定処理とを、まとめて実施するようにしてもよい。
【0059】
まず、演奏者は、マウスピースを装着した状態で音高情報に応じた音を演奏する場合における口腔形状を形成する。ここでのマウスピースは、上述した特殊マウスピースTMではなく、通常のマウスピースである。
【0060】
次に、演奏者は、演奏する場合における口腔形状を維持させたまま、有声音を発声する。口腔音響特性測定部14は、演奏者により発生された有声音をマイクに集音させ、集音させた有声音を取得する。口腔音響特性測定部14は、取得した音を、例えば線形予測分析(LPC、Linear Predictive Coding)することによって、口腔における伝達関数を推定し、推定した伝達関数に基づく共振特性を求めることによって、口腔における共振特性(音響特性)を測定する。また、口腔音響特性測定部14は、推定した伝達関数に基づいて、その伝達関数を持つ等価音響管(口腔形状のモデル)の形状を推定する。
【0061】
以上説明したように、実施形態の変形例1に係る教習支援装置10は、口腔音響特性測定部14を更に備える。口腔音響特性測定部14は、演奏者が演奏する場合に形成される口腔形状を維持させた状態で発音された有声音を線形予測分析する。口腔音響特性測定部14は、線形予測分析した結果を用いて、演奏者の口腔音響特性を算出する。口腔音響特性測定部14は、線形予測分析した結果を用いて、演奏者の口腔形状を算出する。特性情報取得部13は、口腔音響特性測定部14によって算出された演奏者の口腔音響特性、及び口腔形状を取得する。これにより、実施形態の変形例1に係る教習支援装置10では、マイクやスピーカが内蔵された特殊な装置(例えば、特殊マウスピースTM)などを使わなくても、演算処理により簡便に、口腔音響特性及び口腔形状を算出することができる。
【0062】
(実施形態の変形例2)
ここで、実施形態の変形例2について説明する。本変形例では、手本となる口腔形状が、同じ音高に対応する音ごとに複数記憶される点において、上述した実施形態と相違する。上述したように、演奏時に形成される口腔形状を、見本の口腔形状と真似ても目的とする音を吹鳴できない場合があり得る。この対策として、演奏者の属性と似た属性をもつ熟練者による口腔形状を提示する。これにより、見本の口腔形状と真似ると、目的の音を吹鳴できるようになる可能性を高めることが期待できる。ここでの属性は、任意の属性であってよく、例えば、性別、年齢、身長や体重などの体格、喉の長さ、肺活量など、演奏に寄与すると考えられる部位の属性が好適である。或いは、演奏者が、手本とする熟練者を指定できるようにしてもよい。例えば、演奏者が憧れる熟練者の口腔形状を提示することにより、演奏者における練習意欲を向上させることが期待できる。
【0063】
上述した実施形態における教習支援装置10の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
10…教習支援装置、11…音高情報取得部、12…手本情報取得部、13…特性情報取得部、14…口腔音響特性測定部(信号処理部)、15…表示部、16…記憶部、160…手本特性情報、161…手本形状情報、17…口腔形状推定部(信号処理部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14