(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】液晶デバイス、及びその駆動方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20241126BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20241126BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 611A
G09G3/20 621F
G09G3/20 621A
G09G3/20 624B
G09G3/20 621B
G09G3/20 623Y
G09G3/20 623R
G02F1/133 550
(21)【出願番号】P 2020195460
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】樋口 潤
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-223289(JP,A)
【文献】特開平11-026598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0220705(US,A1)
【文献】特開平11-119750(JP,A)
【文献】特開2009-049859(JP,A)
【文献】特開2001-051292(JP,A)
【文献】特開2015-228645(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0068219(KR,A)
【文献】特開2012-163669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/26
G09G 3/30 - 3/38
G09G 5/00 - 5/42
G02F 1/133
H01L 21/336
H01L 29/76
H01L 29/772
H01L 29/78
H03K 19/00
H03K 19/01 -19/082
H03K 19/094-19/096
H03F 1/00 - 3/45
H03F 3/50 - 3/52
H03F 3/62 - 3/64
H03F 3/68 - 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のデータ線を1組とする複数組のデータ線と、
前記データ線と交差する複数本のゲート線と、
前記ゲート線と1組の前記データ線とに接続された画素と、
1組の前記データ線の一方のデータ線に正極性の映像信号を供給し、他方のデータ線に負極性の映像信号を供給することを、前記複数組のデータ線に対して組単位で順次行う複数のスイッチと、
前記複数のスイッチを前記組単位で水平走査期間内に駆動する水平方向駆動回路と、
前記複数本のゲート線を水平走査期間毎に選択する垂直方向駆動を行う垂直方向駆動回路と、を備え、
複数の前記画素は、
前記正極性の映像信号をサンプリングして、一定期間保持する第1サンプルホールド回路と、
前記負極性の映像信号をサンプリングして、一定期間保持する第2サンプルホールド回路と、
前記第1サンプルホールド回路で保持された正極性の映像信号と前記第2サンプルホールド回路で保持された負極性の映像信号とを、垂直走査周波数よりも高い周波数で切替えて画素電極に交互に印加する切替スイッチと、を備え、
前記第1及び第2サンプルホールド回路のそれぞれが、
n型MOSトランジスタと、p型MOSトランジスタとを備え、
前記n型MOSトランジスタのゲートは入力端子、ソースは出力端子、ドレインは第1電源電位に接続され、
前記p型MOSトランジスタのゲートは入力端子、ソースは出力端子に接続され、ドレインは第2電源電位に接続され、
前記n型MOSトランジスタ、及び前記p型MOSトランジスタが、ノーマリオン型の閾値電圧を持
ち、
前記p型MOSトランジスタ又は前記n型MOSトランジスタのドレインには、前記第1電源電位と前記第2電源電位との間を流れる電流を遮断するための遮断スイッチが接続され、
前記切替スイッチにより前記第1および第2サンプルホールド回路に保持された映像信号を前記画素電極に転送後、前記遮断スイッチをオフにして電流を遮断する、
液晶デバイス。
【請求項2】
前記p型MOSトランジスタ又は前記n型MOSトランジスタの閾値電圧を可変とする回路が設けられている請求項
1に記載の液晶デバイス。
【請求項3】
2本のデータ線を1組とする複数組のデータ線と、
前記データ線と交差する複数本のゲート線と、
前記ゲート線と1組の前記データ線とに接続された画素と、
1組の前記データ線の一方のデータ線に正極性の映像信号を供給し、他方のデータ線に負極性の映像信号を供給することを、前記複数組のデータ線に対して組単位で順次行う複数のスイッチと、
前記複数のスイッチを前記組単位で水平走査期間内に駆動する水平方向駆動回路と、
前記複数本のゲート線を水平走査期間毎に選択する垂直方向駆動を行う垂直方向駆動回路と、を備えた液晶デバイスの駆動方法であって、
第1サンプルホールド回路を用いて、前記正極性の映像信号をサンプリングして一定期間保持する第1サンプリングステップと、
第2サンプルホールド回路を用いて、前記負極性の映像信号をサンプリングして一定期間保持する第2サンプリングステップと、
切替スイッチを用いて、前記第1サンプリングステップで保持された正極性の映像信号と前記第2サンプリングステップで保持された負極性の映像信号とを、垂直走査周波数よりも高い周波数で切替えて画素電極に交互に印加するステップと、を備え、
前記画素は、
n型MOSトランジスタと、p型MOSトランジスタとを備え、
前記n型MOSトランジスタのゲートは入力端子、ソースは出力端子、ドレインは第1電源電位に接続され、
前記p型MOSトランジスタのゲートは入力端子、ソースは出力端子、ドレインは第2電源電位に接続され、
前記n型MOSトランジスタ、及び前記p型MOSトランジスタが、ノーマリオン型の閾値電圧を持
ち、
前記p型MOSトランジスタ又は前記n型MOSトランジスタのドレインには、前記第1電源電位と前記第2電源電位との間を流れる電流を遮断するための遮断スイッチが接続され、前記切替スイッチにより前記第1および第2サンプルホールド回路に保持された映像信号を前記画素電極に転送後、前記遮断スイッチをオフにして電流を遮断する、
液晶デバイスの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液晶デバイス、及びその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液晶表示装置とその駆動方法が開示されている。特許文献1では、DA(Digital to Analog)コンバータと、ソースアンプと、バッファとを備えている。バッファは、第1のn型MOSトランジスタと、第1のp型MOSトランジスタとを備えている。
【0003】
第1のn型MOSトランジスタのゲートには階調電圧が供給され、ドレインが電源に接続されている。第1のn型MOSトランジスタは、ソースアンプの入力端子に、第1のn型MOSトランジスタに流れる電流を供給するように構成されている。
【0004】
第1のp型MOSトランジスタのゲートには諧調電圧が供給され、ドレインが回路接地に接続されている。第1のp型MOSトランジスタは、第1のp型MOSトランジスタに流れる電流を、ソースアンプの入力端子から引き出すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなバッファ回路は、画素電極に接続された容量を充電する時には、定電流回路として動作する。つまり、定電流回路がバッファ回路の出力端子から電荷を供給して、電圧を上昇させる。さらに、バッファ回路は、容量を放電するために、容量に保持されている電荷をグランド(GND)に引き抜くための動作を行う。
【0007】
ここで、出力端子の電圧上昇速度は、画素電極に接続される容量を定電流回路が充電する速度で決まる。定電流回路の出力電流値は、全体の消費電流に影響する。このため、高速動作のために低電流回路の出力電流値を高くすると、表示装置全体として低消費電力化を図ることが困難となってしまう。また、出力端子の電流変化が終了しても定電流が流れ続けてしまうため、消費電力を抑制することが困難である。
【0008】
本開示は上記の点に鑑みなされたものであり、低消費電力で高速動作が可能な液晶デバイスとその駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施の形態にかかる液晶デバイスは、2本のデータ線を1組とする複数組のデータ線と、前記データ線と交差する複数本のゲート線と、前記ゲート線と1組の前記データ線とに接続された画素と、1組の前記データ線の一方のデータ線に正極性の映像信号を供給し、他方のデータ線に負極性の映像信号を供給することを、前記複数組のデータ線に対して組単位で順次行う複数のスイッチと、前記複数のスイッチを前記組単位で水平走査期間内に駆動する水平方向駆動回路と、前記複数本のゲート線を水平走査期間毎に選択する垂直方向駆動を行う垂直方向駆動回路と、を備え、前記複数の画素は、前記正極性の映像信号をサンプリングして、一定期間保持する第1サンプルホールド回路と、前記負極性の映像信号をサンプリングして、一定期間保持する第2サンプルホールド回路と、前記第1サンプルホールド回路で保持された正極性の映像信号と前記第2サンプルホールド回路で保持された負極性の映像信号とを、垂直走査周波数よりも高い周波数で切替えて画素電極に交互に印加する切替スイッチと、を備え、前記第1及び第2サンプルホールド回路のそれぞれが、n型MOSトランジスタと、p型MOSトランジスタとを備え、前記n型MOSトランジスタのゲートは入力端子、ソースは出力端子、ドレインは第1電源電位に接続され、前記p型MOSトランジスタのゲートは入力端子、ソースは出力端子に接続され、ドレインは第2電源電位に接続され、前記n型MOSトランジスタ、及び前記p型MOSトランジスタが、ノーマリオン型の閾値電圧を持つ。
【0010】
本実施の形態にかかる液晶デバイスの駆動方法は、2本のデータ線を1組とする複数組のデータ線と、前記データ線と交差する複数本のゲート線と、前記ゲート線と1組の前記データ線とに接続された画素と、1組の前記データ線の一方のデータ線に正極性の映像信号を供給し、他方のデータ線に負極性の映像信号を供給することを、前記複数組のデータ線に対して組単位で順次行う複数のスイッチと、前記複数のスイッチを前記組単位で水平走査期間内に駆動する水平方向駆動回路と、前記複数本のゲート線を水平走査期間毎に選択する垂直方向駆動を行う垂直方向駆動回路と、を備えた液晶デバイスの駆動方法であって、前記正極性の映像信号をサンプリングして一定期間保持する第1サンプリングステップと、前記負極性の映像信号をサンプリングして一定期間保持する第2サンプリングステップと、前記第1サンプリングステップで保持された正極性の映像信号と前記第2サンプリングステップで保持された負極性の映像信号とを、垂直走査周波数よりも高い周波数で切替えて画素電極に交互に印加するステップと、を備えており、前記画素は、n型MOSトランジスタと、p型MOSトランジスタとを備え、前記n型MOSトランジスタのゲートは入力端子、ソースは出力端子、ドレインは第1電源電位に接続され、前記p型MOSトランジスタのゲートは入力端子、ソースは出力端子、ドレインは第2電源電位に接続され、前記n型MOSトランジスタ、及び前記p型MOSトランジスタが、ノーマリオン型の閾値電圧を持つ。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、低消費電力で高速動作が可能な液晶デバイス、及びその駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】実施の形態1にかかるバッファ回路の構成を示す回路図である。
【
図4】実施の形態1にかかるバッファ回路の出力端子の電圧変化を示す図である。
【
図5】比較例にかかるバッファ回路の構成を示す回路図である。
【
図6】比較例にかかるバッファ回路の出力端子の電圧変化を示す図である。
【
図7】実施の形態2にかかるバッファ回路の構成を示す回路図である。
【
図8】実施の形態2にかかるバッファ回路の出力端子の電圧変化を示す図である。
【
図9】実施の形態3にかかるバッファ回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本開示が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。
【0014】
実施の形態1.
本実施にかかる液晶デバイスは、例えばLCOS(Liquid Crystal on Silicon)技術を用いて構成された反射型液晶表示装置である。本実施の形態にかかる液晶表示装置について
図1を用いて説明する。
図1は液晶表示装置のパネル構成を示す図である。液晶表示装置100は、水平方向駆動回路10と、垂直方向駆動回路20と、画素表示部30と、コントローラ60とを備えている。
【0015】
画素表示部30には、複数本のデータ線6と、複数本のゲート線8と、複数の画素42とが設けられている。複数本のデータ線6は互いに平行に配置されている。複数本のゲート線8は、互いに平行に配置されている。複数本のデータ線6と、複数本のゲート線8とは互いに交差するように配置されている。ゲート線8は行走査線となる。
【0016】
液晶表示装置100は、2本を1組として、複数組のデータ線6を備えている。液晶表示装置100は、1組のデータ線6を用いて画素42を反転駆動する。以下、1組のデータ線6のうち、正極側のデータ線6をデータ線6aとして、負極側のデータ線6をデータ線6bとする。また、スイッチ1及び映像信号線5についても、同様にスイッチ1a、スイッチ1b、及び映像信号線5a、5bとして、極性を識別する。極性反転するために、2系統のデータ線6、スイッチ1、及び映像信号線5が設けられている。
【0017】
データ線6とゲート線8との交差部に画素42が配置されている。画素42はマトリクス状(行列状)に配置されている。各画素42は、1組のデータ線6と1本のゲート線8とによって駆動される。例えば、ゲート線8がn本、データ線6が2m本とすると、画素42はn×mのマトリクス状に配列されている。なお、m、nはそれぞれ2以上の整数である。
【0018】
さらに、画素表示部30には、各画素42に共通電位を供給するための共通電極線7が設けられている。共通電極線7は、画素42に設けられた保持容量と接続される。
【0019】
垂直方向駆動回路20は、複数本のゲート線を水平走査期間毎に選択する垂直方向駆動を行う。垂直方向駆動回路20は、複数本のゲート線8に走査信号を供給する。つまり、垂直方向駆動回路20は、1行目からn行目のゲート線8を順次選択するように、走査信号を供給する。これにより、1行毎に画素42が順次選択されていく。1垂直走査期間内に全てのゲート線8が選択される。選択された1行の画素42では、映像信号の書き込みが可能となる。複数本のゲート線を水平走査期間毎に選択する垂直方向駆動を行う。
【0020】
水平方向駆動回路10は、複数のスイッチ1を水平走査期間内で駆動する水平方向駆動を行う。これにより、複数本のデータ線6に映像信号が供給される。上記のように、2本のデータ線6a、6bが1組として、画素42に接続されている。よって、1行の画素42に対して、2本のデータ線6a、6bが共通に接続されている。
【0021】
データ線6aは、スイッチ1aを介して、映像信号線5aに接続されている。データ線6bは、スイッチ1bを介して、映像信号線5bに接続されている。映像信号線5aには、正極側の映像信号71aが供給されている。映像信号線5bには、負極側の映像信号71bが供給されている。水平方向駆動回路10は、スイッチ1a、スイッチ1bを制御する。
【0022】
よって、1組のデータ線6a、6bの一方のデータ線6aには、正極性の映像信号71aが供給され、他方のデータ線6bには、負極性の映像信号71bが供給される。正極性の映像信号71aは、共通電極線7の共通電位に対して正電圧となり、負極性の映像信号71bは、共通電極線7の共通電位に対して負電圧となる。選択された1行の画素42に対して、それぞれ正極性の映像信号71a、負極性の映像信号71bを供給することができる。水平方向駆動回路10は、それぞれのスイッチ1を水平走査期間内で複数回オンオフする。
【0023】
コントローラ60は、映像信号71a、71bに同期するように生成した各種クロック信号を水平方向駆動回路10と垂直方向駆動回路20に供給する(経路は図示せず)。水平方向駆動回路10と垂直方向駆動回路20が映像信号71a、71bと同期した形でデータ線6、ゲート線8をそれぞれ駆動することで、水平と垂直の各走査を伴った画素選択を行う。これにより、本実施の形態では、液晶の交流駆動を高速に行うことが可能になる。
【0024】
図2は、画素42の構成を示す回路図である。画素42は、画素選択トランジスタQ1、Q2と、保持容量C1、C2、C3と、バッファ回路44a、44bと、を備えている。さらに、画素42は、画素電極PEと共通電極CEと液晶LCとを備えている。液晶LCは画素電極PEと共通電極CEとの間に挟持されている。つまり、画素電極PEと液晶LCと共通電極CEとは容量素子を構成する。画素電極PEに供給される映像信号に応じた電圧で液晶LCが駆動する。
【0025】
画素42は、正極性の画素回路43aと、負極側の画素回路43bを備えている。画素回路43aと画素回路43bは同様の回路構成を有している。画素回路43aは、バッファ回路44aと保持容量C1と画素選択トランジスタQ1とスイッチs+を備えている。画素回路43bは、バッファ回路44bと保持容量C2と画素選択トランジスタQ2とスイッチs-とを備えている。
【0026】
ゲート線8は、画素42において2本に分岐されている。分岐された2本のゲート線8の一方をゲート線8aとし、他方をゲート線8bとする。ゲート線8aは、画素選択トランジスタQ1のゲートに接続されている。ゲート線8bは、画素選択トランジスタQ2のゲートに接続されている。画素選択トランジスタQ1のドレインはデータ線6aに接続されている。画素選択トランジスタQ2のドレインはデータ線6bに接続されている。
【0027】
画素選択トランジスタQ1のソースは保持容量C1の一端に接続されている。保持容量C1の他端は共通電極線7に接続されている。画素選択トランジスタQ2のソースは保持容量C2の一端に接続されている。保持容量C2の他端は共通電極線7に接続されている。保持容量C1、C2は、電荷を保持するキャパシタとなる。
【0028】
画素42は、バッファ回路44aとバッファ回路44bとを備えている。バッファ回路44aとバッファ回路44bは同様の構成を備えている。バッファ回路44aとバッファ回路44bを総称してバッファ回路44ともいう。
【0029】
バッファ回路44aの入力端子(図中のin)は、画素選択トランジスタQ1と保持容量C1の接続ノードに接続されている。バッファ回路44bの入力端子は、画素選択トランジスタQ2と保持容量C2の接続ノードに接続されている。バッファ回路44aの出力端子(図中のout)は、スイッチs+を介して、画素電極PEに接続されている。バッファ回路44bの出力端子は、スイッチs-を介して、画素電極PEに接続されている。バッファ回路44a、44bは、映像信号をサンプリングして、一定時間保持するサンプルホールド回路となる。
【0030】
バッファ回路44aは、垂直走査期間よりも短い所定周期で、正極性の映像信号をサンプリングして、保持する。バッファ回路44bは、垂直走査期間よりも短い所定周期で、負極性の映像信号をサンプリングして、垂直走査期間よりも短い期間保持する。バッファ回路44aによるサンプリングを第1サンプリングステップとし、バッファ回路44bによるサンプリングを第2サンプリングステップとする。
【0031】
さらに、スイッチs+の出力端子とスイッチs-の出力端子との接続ノード45にて接続されている。接続ノード45と画素電極PEとの間には、保持容量C3の一端が接続されている。保持容量C3の他端は、共通電極線7に接続されている。
【0032】
このように、1つの画素42が、2系統のデータ線6a、6b、バッファ回路44a、44b、及びスイッチs+、s-等で駆動されている。バッファ回路44aが正極性側の映像信号をサンプリングして保持する回路となる。バッファ回路44bが負極性側の映像信号をサンプリングして保持する回路となる。スイッチs+とスイッチs-は垂直走査周波数よりも高い周波数で、映像信号の極性を切替えて、画素電極PEに交互に印加する切替スイッチとなっている。
【0033】
スイッチs+とスイッチs-が交互にオンオフ制御される。スイッチs-がオフした状態でスイッチs+がオンすると、バッファ回路44aが保持している正極性の映像信号が画素電極PEに書き込まれる。スイッチs+がオフした状態でスイッチs-がオンすると、バッファ回路44bが保持している負極性の映像信号が画素電極PEに書き込まれる。
【0034】
データ線6aの正極性の映像信号と、データ線6bの正極性の映像信号とが交互に画素電極PEに供給される。1フレームに一度、映像信号が保持容量C1、C2に書き込まれて、次フレームでの書き込みまで保持される。そして、次のフレームでの書き込みまで、スイッチs+とスイッチs-が複数回オンオフする。スイッチs+とスイッチs-を交互にオンすることで極性反転が可能となる。例えば、垂直走査周波数(フレーム周波数)が60Hz(60fps)として、1フレームにおいて、正極性と負極性の映像信号を切替える切替回数を30回とすると、1.8kHzで交流駆動することができる。
【0035】
本実施の形態では、1垂直走査期間内に1度保持容量C1、C2への映像信号の書き込みが行われる。1垂直走査期間内において、正電圧及び負電圧を複数回、画素電極PEに印加することができる。画素42への書き込み周波数を増加させることなく、高速に液晶を交流駆動できる。このため、画素電極PEと共通電極CEの間の直流分を低減させることができ、液晶の焼き付き防止など画質や信頼性を向上できる。また、本実施の形態では、極性反転可能な画素回路43a、43bが画素42に設けられている。画素回路43a、43bを高速で制御することにより、垂直走査周波数の制約のない、高い周波数での交流駆動が可能である。
【0036】
バッファ回路44a、44bの構成について説明する。バッファ回路44aとバッファ回路44は同様の回路構成であるため、以下、まとめてバッファ回路44として説明する。
図3は、バッファ回路44の構成を示す回路図である。
【0037】
バッファ回路44は、トランジスタTr3とトランジスタTr4とを備えている。トランジスタTr3は、p型MOS(Metal Oxide Transistor)トランジスタであり、トランジスタTr4はn型MOSトランジスタである。トランジスタTr4のゲートは、バッファ回路44の入力端子inに接続されている。トランジスタTr3のゲートは、バッファ回路44の入力端子inに接続されている。トランジスタTr3とトランジスタTr4はノーマリオン型の閾値電圧を持っている。つまり、ゲート電圧が0Vの時に、トランジスタTr3,T4はオンする。
【0038】
電源電位VDDとグランドGNDとの間には、トランジスタTr4とトランジスタTr3が直列に接続されている。具体的には、トランジスタTr4のドレインが第1の電源電位である電源電位VDDに接続されている。トランジスタTr4のソースが、トランジスタTr3のソースに接続されている。トランジスタTr3のドレインが第2の電源電位であるグランドGNDに接地されている。トランジスタTr3のソースとトランジスタTr4のソースは、出力端子outに接続されている。
【0039】
トランジスタTr4は、出力端子outの電圧を上昇させるときのソースフォロワとして動作する。トランジスタTr3は、出力端子outの電圧を下降させるときのソースフォロワとして動作する。昇圧時、及び降圧時の両方において、ソースフォロワを駆動することができるため、高速動作が可能となる。
【0040】
図4~
図6を用いて、バッファ回路の電圧波形について説明する。
図4は、バッファ回路44の出力端子outの電圧変化を示す波形図である。
図5は、比較例にかかるバッファ回路144の構成を示す回路図である。
図6は、比較例のかかるバッファ回路144の出力端子outの電圧変化を示す波形図である。
【0041】
まず、比較例に係るバッファ回路144について説明する。
図5に示すように、比較例にかかるバッファ回路144は、トランジスタTr1,及びトランジスタTr2を備えている。トランジスタTr1,及びトランジスタTr2は、p型MOSトランジスタとなっている。トランジスタTr1のゲートは、入力端子inに接続されている。トランジスタTr1のドレインは、グランドGNDに接続されている。トランジスタTr1のソースは、トランジスタTr2のドレインと接続されている。
【0042】
トランジスタTr2のソースは、電源電位VDDに接続されている。トランジスタTr2のゲートはバイアス電位に接続されている。トランジスタTr2のドレインと、トランジスタTr1のソースは、出力端子outに接続されている。
【0043】
トランジスタTr2は、定電流をトランジスタTr1に供給するための定電流回路147となる。トランジスタTr2のゲートにバイアス電位を供給することで、トランジスタTr2がソースフォロワとして動作して、トランジスタTr1に定電流を供給する。トランジスタTr2がソースフォロワとして動作しないときは、バイアス端子を電源電位VDDにすることで、定電流を遮断することができる。
【0044】
出力端子outを0Vから2.5Vに昇圧する場合と、5Vから2.5Vに降圧する2通りで、画素電極PEを駆動する例について説明する。入力端子inの電圧は2.5VでトランジスタTr1の閾値電圧VTは0Vとなっている。5Vから2.5Vに降圧する場合、トランジスタTr1がオンして、出力端子outがグランドGNDに接続する。画素電極PEに接続される保持容量C3の電荷をグランドGNDに引く抜くため、高速動作が可能となる。
【0045】
一方、0Vから2.5Vに昇圧する場合、出力端子outの電圧の上昇速度は、定電流回路が画素電極PE、及び保持容量C3を充電する速度で決まる。定電流回路から出力される定電流値は、液晶表示装置全体の消費電流に影響するため、定電流値を低くすることが好ましい。したがって、
図6に示すように、0Vから2.5Vへの昇圧時は、5Vから2.5Vの降圧時に比べて、電圧変化に時間がかかってしまう。
【0046】
出力端子outの電圧変化を速くするためには、定電流回路147に流れる定電流を大きくすれば良い。しかしながら、定電流回路147に流れる定電流を大きくすると、液晶表示装置全体に流れる電流が大きくなってしまう。また、出力端子outの電圧変化が終了しても、定電流が流れつづけるため、不要な電流が流れてしまう。よって、
図5に示す構成では、消費電流の低減が困難となる。
【0047】
これに対して、本実施の形態のバッファ回路44では、
図3に示したように、トランジスタTr3、及びトランジスタTr4が、それぞれソースフォロワとして動作する。例えば、トランジスタTr4の閾値電圧VT=0.2V、トランジスタTr3の閾値電圧VT=-0.2Vとする。また、バッファ回路44の入力端子inの電圧を2.5Vとする。
【0048】
5Vから2.5Vへの降圧時では、
図4に示すように、トランジスタTr3のVT=-0.2Vであることから、2.7Vまでは高速に電圧変化する。そして、2.7Vからの電圧変化が遅くなって、2.5Vまで降下する。つまり、5Vから2.7Vまでの電圧変化を示す傾きが、2.7Vから2.5Vまでの電圧変化を示す傾きよりも急峻になっている。入力端子inの電圧の近傍では、電圧変化が遅くなるが、大半は高速に動作する。したがって、高速動作が可能となる。
【0049】
0Vから2.5Vまでの昇圧時では、トランジスタTr4のVT=0.2Vであることから、2.3Vまでは高速に電圧変化する。そして、2.3Vからの電圧変化が遅くなって、2.5Vまで上昇する。つまり、0Vから2.3Vまでの電圧変化を示す傾きが、2.3Vから2.5Vまでの電圧変化を示す傾きよりも急峻になっている。入力端子inの電圧の近傍では、電圧変化が遅くなるが、大半は高速に動作する。したがって、高速動作が可能となる。
【0050】
降圧時の2.7V以下ではトランジスタTr3はサブスレッショルド領域に入る。また、昇圧時の2.3V以上ではトランジスタTr4はサブスレッショルド領域に入る。サブスレッショルド領域に入ると、トランジスタTr3,Tr4に流れる電流は大幅に少なくなる。よって、バッファ回路に流れる電流が小さくなり全体の消費電流を低減することが出来る。また、
図5のバッファ回路を用いた場合と異なり、入力端子inの電圧に近づくと流れる電流が自動的に減少する。よって、無駄に電流を流し続けることが無くなる。これにより、消費電流を低減することが可能になる。
【0051】
本実施の形態にかかる駆動方法は、正極性の映像信号をサンプリングして一定期間保持する第1サンプリングステップと、負極性の映像信号をサンプリングして一定期間保持する第2サンプリングステップと、を備えている。さらに、駆動方法は、第1サンプリングステップで保持された正極性の映像信号と第2サンプリングステップで保持された負極性の映像信号とを、垂直走査周波数よりも高い周波数で切替えて画素電極に交互に印加するステップと、を備えている。これにより、低消費電流で高速動作が可能となる。
【0052】
実施の形態2.
実施の形態2にかかるバッファ回路44について、
図7を用いて説明する。
図7は、バッファ回路44の構成を示す回路図である。本実施の形態では、
図3の構成に、グランドGNDとトランジスタTr3との間にスイッチsoが追加されている。つまり、トランジスタTr3のドレインは、スイッチsoを介して、グランドGNDに接地されている。なお、スイッチso以外の基本的な構成及び動作は実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0053】
実施の形態1と同様に、トランジスタTr4及びトランジスタTr3はソースフォロワとして動作する。つまり、トランジスタTr4は、出力端子outの電圧を上昇させるときに、ソースフォロアとして動作する。トランジスタTr4は、出力端子outの電圧を下降させるときに、ソースフォロアとして動作する。昇圧方向、及び降圧方向のいずれにも、ソースフォロアが駆動出来るので高速動作を行うことができる。
【0054】
スイッチsoはソースフォロアとして動作しない時に回路をオフするために設けられている。スイッチsoをオフすることで、電源電位VDDとグランドGNDとの間に流れる電流を遮断することができる。よって、待機時の電流を減少することができ、より消費電流を低減することができる。昇圧時及び降圧時は、スイッチsoをオンする。スイッチsoは、電源電位VDDとグランドGNDとの間に流れる電流を遮断する遮断スイッチとなる。
【0055】
図8は、実施の形態2のバッファ回路44の出力端子outの電圧変化を示す図である。トランジスタTr4の閾値電圧VT=0V、トランジスタTr3の閾値電圧VT=0Vとする。入力端子inの電圧は2.5Vとする。つまり、トランジスタTr3及びトランジスタTr4は、ノーマリオン型の閾値電圧を持っている。
【0056】
5Vから2.5Vへの降圧時はトランジスタTr3の閾値電圧VT=0Vであることから、2.5Vまで高速に電圧変化する。電圧変化が遅くなる所がなくなるので、実施の形態1よりも高速動作が期待出来る。
【0057】
0Vから2.5Vへの昇圧時はトランジスタTr4の閾値電圧VT=0Vであることから、2.5Vまで高速に電圧変化する。降圧時と同様に、電圧変化が遅くなる所がなくなるので、実施の形態1よりも高速動作が期待出来る。
【0058】
実施の形態2では、トランジスタTr3、Tr4がサブスレッショルド領域に入る所がなくなる。そのため、電圧変化が終了しても電流が流れ続けることを防ぐためにスイッチsoを設けることが好ましい。スイッチsoをオフすることで電流経路をなくし無駄な電流を削減することが出来る。
【0059】
具体的には
図2に示したスイッチs+、s-によって電圧を画素電極PEに転送後に、スイッチsoをオフにする。このようにすることで、動作に影響なく低消費電流化を図ることが可能となる。
【0060】
なお、
図7では、スイッチsoをグランドGND側に接続しているが、スイッチsoを電源側に接続しても良い。電源側に設ける場合、例えば、トランジスタTr4のドレインと電源電位VDDとの間に、スイッチsoを配置すればよい。つまり、トランジスタTr3又はトランジスタTr4のドレインに電流を切るためのスイッチsoが設けられていれば良い。このようにすることで、電源電位VDDからグランドGNDに流れる電流を完全に遮断することができる。
【0061】
実施の形態3.
実施の形態3にかかるバッファ回路44について、
図9を用いて説明する。実施の形態3では、
図3の構成に、可変電源48、及び可変電源49が追加されている。なお、可変電源48、及び可変電源49以外の基本的な構成及び動作については、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0062】
可変電源48は、トランジスタTr4の閾値電圧を変更するための変更回路である。可変電源49は、トランジスタTr3の閾値電圧を変更するための変更回路である。可変電源48は、出力電圧が可変の電源であり、トランジスタTr4の基板電位を可変にする。可変電源49は、出力電圧が可変の電源であり、トランジスタTr3の基板電位を可変にする。
【0063】
例えば、可変電源48の出力電圧VAは、0~-1Vの範囲で可変となっている。通常は、VA=0Vとするが、VA=-1VとすることでトランジスタTr4の閾値電圧VTを大きくすることができる。また、可変電源49の出力電圧VBは、VDD~(VDD+1V)の範囲で可変となっている。通常は、VB=VDDとするが、VB=VDD+1VとすることでトランジスタTr3の閾値電圧VTを大きくすることができる。
【0064】
例えば、製造プロセスで作り込んだ閾値電圧VTが小さすぎる場合に、出力電圧VA,VBを偏向することで、閾値電圧VTを大きくすることができる。閾値電圧VTを変更することで、待機電流値及び動作の適正化が可能となる。
【0065】
なお、上記の実施の形態1~3は適宜組み合わせることができる。例えば、実施の形態2のスイッチsoと可変電源48,49を組み合わせて用いても良い。
【0066】
なお、上記実施の形態1~3にかかる液晶表示装置の仕組みは、例えば、波長多重光通信の分野で用いられる波長選択光スイッチ装置(WWS;Wavelength Selective Switch)に搭載された空間光変調器(SLM;Spatial Light Modulator)にも適用されることができる。空間光変調器は、例えばLCOS(Liquid Crystal on Silicon)技術を用いて構成され、入力ポートに入射された光信号を偏向して、一又は複数の出力ポートのうち選択された何れかの出力ポートから出射する。
【0067】
より具体的には、波長選択光スイッチ装置は、例えば、入力ポート、一又は複数の出力ポート、波長分散器、光学結合器、及び、空間光変調器を備える。波長分散器は、入力ポートに入射された光信号を複数の波長成分に空間的に分散させる。光学結合器は、波長分散器によって分散された複数の波長成分を集光する。空間光変調器は、例えば、波長に応じて展開されたx軸方向と、x軸方向に垂直なy軸方向と、からなるxy平面にマトリクス状に配置された複数の画素12を有する。複数の画素12は、光学結合器によって集光された光信号を、波長毎に反射方向を変化させて(即ち、偏向して)、一つ又は複数の出力ポートのうち選択された何れかの出力ポートから出射する。
【0068】
波長選択光スイッチ装置は、空間光変調器に上記実施の形態1から3にかかる液晶表示装置の仕組みを適用することにより、液晶表示装置と同等の効果を奏することができる。
【0069】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0070】
100 液晶表示装置
1 スイッチ
5 映像信号線
6 データ線
7 共通電極線
8 ゲート線
10 水平方向駆動回路
20 垂直方向駆動回路
30 画素表示部
42 画素
43a 正極側の画素回路
43b 負極側の画素回路
44a バッファ回路
44b バッファ回路
45 接続ノード
48 可変電源
49 可変電源
60 コントローラ
71a、71b 映像信号
C1 保持容量
C2 保持容量
C3 保持容量
PE 画素電極
LC 液晶
CE 共通電極
s+ スイッチ
s- スイッチ
so スイッチ