IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特許7593078モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法
<>
  • 特許-モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法 図1
  • 特許-モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法 図2
  • 特許-モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法 図3
  • 特許-モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法 図4
  • 特許-モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法 図5
  • 特許-モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法 図6
  • 特許-モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法 図7
  • 特許-モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法 図8
  • 特許-モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法 図9
  • 特許-モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法 図10
  • 特許-モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法 図11
  • 特許-モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法 図12
  • 特許-モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 31/00 20060101AFI20241126BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H02P31/00
G01B7/30 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020198146
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086241
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】今井 涼介
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-090307(JP,A)
【文献】特開2017-229115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 31/00
H02P 29/024
G01B 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターの駆動に応じた信号を出力するセンサーと、
演算処理部と、
動作履歴一時記憶部と、
動作履歴保存部と、を有し、
前記演算処理部は、外部装置から定期的に送信されるリクエスト信号に応じて前記セン
サーから出力される信号に基づいて取得した前記モーターの位置および前記位置を取得し
た時刻を含む位置情報データを生成し、生成した前記位置情報データを前記動作履歴一時
記憶部に記憶する処理を繰り返し、異常を検知した場合または前記外部装置から異常を知
らせる信号を受信した場合に、前記動作履歴一時記憶部に記憶されている前記位置情報デ
ータを動作履歴保存部に保存し、
n-2回目の前記リクエスト信号に対応する時刻を示すカウント数に対して直後のn-
1回目の前記リクエスト信号に対応する時刻を示すカウント数の変化量と比べて、n-1
回目の前記リクエスト信号に対応する時刻を示すカウント数に対して直後のn回目の前記
リクエスト信号に対応する時刻を示すカウント数の変化量が変化した場合、前記演算処理
部は、前記リクエスト信号の受信失敗を検出することを特徴とするモーター制御用角度セ
ンサー。
【請求項2】
前記演算処理部は、前記外部装置からのリクエスト信号に応じて前記位置情報データを
生成し、生成した前記位置情報データを前記動作履歴一時記憶部に記憶する請求項1に記
載のモーター制御用角度センサー。
【請求項3】
前記演算処理部は、前記外部装置からのリクエスト信号に応じて前記位置情報データを
生成し、生成した前記位置情報データを前記外部装置に送信する請求項1または2に記載
のモーター制御用角度センサー。
【請求項4】
前記動作履歴一時記憶部は、リングバッファで構成されている請求項1ないし3のいず
れか1項に記載のモーター制御用角度センサー。
【請求項5】
前記モーターの温度を検出する温度センサーを有し、
前記演算処理部は、前記位置および前記時刻に加えて、前記時刻における前記モーター
の温度を含む前記位置情報データを生成する請求項1ないし4のいずれか1項に記載のモ
ーター制御用角度センサー。
【請求項6】
モーターと、
前記モーターの駆動に応じた信号を出力するセンサーと、
演算処理部と、
動作履歴一時記憶部と、
動作履歴保存部と、
前記モーターの駆動を制御する制御装置と、を有し、
前記演算処理部は、前記制御装置から定期的に送信されるリクエスト信号に応じて前記
センサーから出力される信号に基づいて取得した前記モーターの位置および前記位置を取
得した時刻を含む位置情報データを生成し、生成した前記位置情報データを前記動作履歴
一時記憶部に記憶する処理を繰り返し、異常を検知した場合または前記制御装置から異常
を知らせる信号を受信した場合に、前記動作履歴一時記憶部に記憶されている前記位置情
報データを動作履歴保存部に保存し、
n-2回目の前記リクエスト信号に対応する時刻を示すカウント数に対して直後のn-
1回目の前記リクエスト信号に対応する時刻を示すカウント数の変化量と比べて、n-1
回目の前記リクエスト信号に対応する時刻を示すカウント数に対して直後のn回目の前記
リクエスト信号に対応する時刻を示すカウント数の変化量が変化した場合、前記演算処理
部は、前記リクエスト信号の受信失敗を検出することを特徴とするモーター制御システム
【請求項7】
モーターと、
前記モーターの駆動に応じた信号を出力するセンサーと、
演算処理部と、
動作履歴一時記憶部と、
動作履歴保存部と、
前記モーターの駆動を制御する制御装置と、を有するモーター制御用角度センサーの制
御方法であって、
前記演算処理部は、前記制御装置から定期的に送信されるリクエスト信号を受信する度
に、前記センサーから出力される信号に基づいて取得した前記モーターの位置および前記
位置を取得した時刻を含む位置情報データを生成し、生成した前記位置情報データを前記
動作履歴一時記憶部に記憶する処理を繰り返し、異常を検知した場合または前記制御装置
から異常を知らせる信号を受信した場合に、前記動作履歴一時記憶部に記憶されている前
記位置情報データを動作履歴保存部に保存し、
n-2回目の前記リクエスト信号に対応する時刻を示すカウント数に対して直後のn-
1回目の前記リクエスト信号に対応する時刻を示すカウント数の変化量と比べて、n-1
回目の前記リクエスト信号に対応する時刻を示すカウント数に対して直後のn回目の前記
リクエスト信号に対応する時刻を示すカウント数の変化量が変化した場合、前記演算処理
部は、前記リクエスト信号の受信失敗を検出することを特徴とするモーター制御用角度セ
ンサーの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロボットの動作に異常が発生したときに、制御装置内の故障履歴メモリー部にエラー時の動作履歴を残し、その後のエラー発生原因の解析を容易にするロボット制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-130503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成では、エラー発生原因の解析を行うためには故障履歴メモリー部を持つロボット制御装置を解析する必要がある。そのため、例えば、ロボットの駆動に用いられるモーターの回転量を検出する角度センサーに異常が生じた場合でも、角度センサーではなくロボット制御装置を解析する必要がある。ロボット制御装置は、角度センサーよりもサイズが大きく、解析のための搬送コストの増加や、解析の柔軟性低下に繋がるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のモーター制御用角度センサーは、モーターの駆動に応じた信号を出力するセンサーと、
演算処理部と、
動作履歴一時記憶部と、
動作履歴保存部と、を有し、
前記演算処理部は、前記センサーから出力される信号に基づいて取得した前記モーターの位置および前記位置を取得した時刻を含む位置情報データを生成し、生成した前記位置情報データを前記動作履歴一時記憶部に記憶する処理を繰り返し、異常を検知した場合または外部装置から異常を知らせる信号を受信した場合に、前記動作履歴一時記憶部に記憶されている前記位置情報データを動作履歴保存部に保存する。
【0006】
本発明のモーター制御システムは、モーターと、
前記モーターの駆動に応じた信号を出力するセンサーと、
演算処理部と、
動作履歴一時記憶部と、
動作履歴保存部と、
前記モーターの駆動を制御する制御装置と、を有し、
前記演算処理部は、前記センサーから出力される信号に基づいて取得した前記モーターの位置および前記位置を取得した時刻を含む位置情報データを生成し、生成した前記位置情報データを前記動作履歴一時記憶部に記憶する処理を繰り返し、異常を検知した場合または前記制御装置から異常を知らせる信号を受信した場合に、前記動作履歴一時記憶部に記憶されている前記位置情報データを動作履歴保存部に保存する。
【0007】
本発明のモーター制御用角度センサーの制御方法は、モーターと、
前記モーターの駆動に応じた信号を出力するセンサーと、
演算処理部と、
動作履歴一時記憶部と、
動作履歴保存部と、
前記モーターの駆動を制御する制御装置と、を有するモーター制御用角度センサーの制御方法であって、
前記演算処理部は、前記制御装置からリクエスト信号を受信する度に、前記センサーから出力される信号に基づいて取得した前記モーターの位置および前記位置を取得した時刻を含む位置情報データを生成し、生成した前記位置情報データを前記動作履歴一時記憶部に記憶する処理を繰り返し、異常を検知した場合または前記制御装置から異常を知らせる信号を受信した場合に、前記動作履歴一時記憶部に記憶されている前記位置情報データを動作履歴保存部に保存する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るロボットシステムを示す全体図である。
図2】駆動装置の断面図である。
図3】駆動装置の断面図である。
図4】駆動装置のブロック図である。
図5】駆動装置が有する演算処理部が生成する位置情報データの一例を示す図である。
図6】駆動装置が有する演算処理部の処理工程を示すフローチャートである。
図7】駆動装置が有する演算処理部の異常検出方法を説明するためのグラフである。
図8】駆動装置が有する演算処理部の異常検出方法を説明するためのグラフである。
図9】駆動装置が有する演算処理部の異常検出方法を説明するためのグラフである。
図10】駆動装置が有する演算処理部の異常検出方法を説明するためのグラフである。
図11】駆動装置の変形例を示すブロック図である。
図12】駆動装置の変形例を示すブロック図である。
図13】駆動装置の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のモーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るロボットシステムを示す全体図である。図2および図3は、それぞれ、駆動装置の断面図である。図4は、駆動装置のブロック図である。図5は、駆動装置が有する演算処理部が生成する位置情報データの一例を示す図である。図6は、駆動装置が有する演算処理部の処理工程を示すフローチャートである。図7ないし図10は、それぞれ、駆動装置が有する演算処理部の異常検出方法を説明するためのグラフである。
【0011】
なお、図2および図3には互いに直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸を図示している。また、X軸、Y軸およびZ軸を示す各矢印の先端側を「+」、基端側を「-」とする。また、X軸に平行な方向を「X軸方向」といい、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」といい、Z軸に平行な方向を「Z軸方向」という。また、+Z軸方向側を「上」、-Z軸方向側を「下」ともいう。図3は、図2をZ軸まわりに90°回転させた断面図である。
【0012】
図1に示すロボットシステム1は、精密機器やこれを構成する部品の給材、除材、搬送および組立等の作業を行うことができる。ロボットシステム1は、所定の作業を実行するロボット2と、ロボット2の駆動を制御する外部装置としてのロボット制御装置3と、を有する。
【0013】
ロボット2は、6軸ロボットである。ロボット2は、床、壁、天井等に固定されるベース20と、ベース20に支持されたロボットアーム21と、ロボットアーム21の先端に装着されたエンドエフェクター22と、を有する。また、ロボットアーム21は、ベース20に回動自在に連結されたアーム211と、アーム211に回動自在に連結されたアーム212と、アーム212に回動自在に連結されたアーム213と、アーム213に回動自在に連結されたアーム214と、アーム214に回動自在に連結されたアーム215と、アーム215に回動自在に連結されたアーム216と、を有する。そして、アーム216にエンドエフェクター22が装着されている。
【0014】
ただし、ロボット2の構成は、特に限定されず、例えば、アームの数は、1本以上5本以下であってもよいし7本以上であってもよい。また、例えば、ロボット2は、スカラーロボット、双腕ロボット等であってもよい。
【0015】
ロボット2は、ベース20に対してアーム211を回動させる駆動装置41と、アーム211に対してアーム212を回動させる駆動装置42と、アーム212に対してアーム213を回動させる駆動装置43と、アーム213に対してアーム214を回動させる駆動装置44と、アーム214に対してアーム215を回動させる駆動装置45と、アーム215に対してアーム216を回動させる駆動装置46と、を有する。これら駆動装置41~46は、それぞれ、ロボット制御装置3によって独立して制御される。
【0016】
ロボット制御装置3は、図示しないホストコンピューターからの位置指令を受けて、各アーム211~216が前記位置指令に応じた位置となるように駆動装置41~46の駆動を独立して制御する。ロボット制御装置3は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部インターフェースと、を有する。また、メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することができる。
【0017】
次に、駆動装置41~46について説明するが、これらは互いに同様の構成であるため、以下では、駆動装置41について代表して説明し、その他の駆動装置42~46についてはその説明を省略する。駆動装置41は、モーター制御システムであり、図2に示すように、モーター5と、モーター5の回転軸の回転状態を検出するモーター制御用角度センサー6と、を有する。
【0018】
モーター5は、2相ACブラシレスモーター、3相ACブラシレスモーター、3相同期モーター等の各種モーターである。モーター5は、Z軸に平行な軸線aZに沿って配置された回転軸51と、回転軸51に固定されたローター52と、ローター52の周囲に配置されたステーター53と、これらを収納すると共にステーター53を支持する筒状のハウジング54と、回転軸51をハウジング54に対して軸線aZまわりに回転可能に支持する軸受55、56と、を有する。また、ハウジング54は、ベース20に固定されている。また、回転軸51のモーター制御用角度センサー6とは反対側の端部にはアーム211が接続されている。これにより、モーター5の出力がベース20からアーム211に伝達され、ベース20に対してアーム211が回動する。なお、回転軸51は、必要に応じて減速機等の歯車装置を介してアーム211に接続されていてもよい。
【0019】
モーター制御用角度センサー6は、エンコーダーユニットであり、モーター5の上側すなわち+Z軸側に配置されている。モーター制御用角度センサー6は、回転角度検出型の光学式エンコーダー61と、多回転検出型の磁気式エンコーダー62と、基板63と、を有する。これら各部は、ハウジング54に固定されたハウジング68内に収納されている。
【0020】
光学式エンコーダー61は、反射型の光学式エンコーダーであり、モーター5の回転軸51に固定された光学スケール611と、光学スケール611の回転状態を検出する光学センサー612と、を有する。光学スケール611は、回転軸51と共に軸線aZまわりに回転する。光学スケール611は、モーター5の回転軸51に固定されたハブ611aと、ハブ611aに固定されたディスク611bと、を有する。ディスク611bの上面には、ディスク611bの回転角度や回転速度を検出し得る図示しない検出用パターンが形成されている。検出用パターンとしては、特に限定されず、例えば、軸線aZを中心とする周方向に沿って、光の反射率の異なる2つの領域つまり反射領域と非反射領域とを交互に並べたパターンが挙げられる。
【0021】
光学センサー612は、ディスク611bの上側にディスク611bと離間して配置されている。光学センサー612は、ディスク611b上の検出用パターンに向けて光Lを出射する発光素子612aと、検出用パターンで反射した光Lを受光する受光素子612bと、を有する。発光素子612aは、例えば、レーザダイオード、発光ダイオードであり、受光素子612bは、例えば、フォトダイオードである。このような構成の光学式エンコーダー61では、ディスク611bの軸線aZまわりの回転に伴って受光素子612bからの出力信号の波形が変化する。そのため、この出力信号に基づいて、ディスク611bの360°範囲内での回転角度θを検出することができる。ただし、光学式エンコーダー61の構成は、特に限定されない。
【0022】
磁気式エンコーダー62は、光学センサー612の上側すなわち+Z軸側に配置されている。磁気式エンコーダー62は、回転軸51に固定された主歯車621と、主歯車621に噛合する2つの副歯車622a、622bと、副歯車622a、622bに固定された磁石623a、623bと、磁石623a、623bの回転状態を検出する磁気センサー624a、624bと、を有する。
【0023】
主歯車621は、回転軸51と共に軸線aZまわりに回転する。副歯車622aは、軸線aZに平行な軸線aZ1まわりに回転可能に軸支され、主歯車621に従動して主歯車621との歯車比に応じた回転量で回転する。同様に、副歯車622bは、軸線aZに平行な軸線aZ2まわりに回転可能に軸支され、主歯車621に従動して主歯車621との歯車比に応じた回転量で回転する。主歯車621、副歯車622aおよび副歯車622bの歯数は、互いに異なっており、特に本実施形態では互いに素の関係となっている。
【0024】
磁石623aは、副歯車622aに固定されている。そのため、磁石623aは、副歯車622aと共に軸線aZ1まわりに回転する。同様に、磁石623bは、副歯車622bに固定されている。そのため、磁石623bは、副歯車622bと共に軸線aZ2まわりに回転する。磁石623a、623bは、例えば、ネオジム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、ボンド磁石等の永久磁石であり、軸線aZ1、aZ2まわりの回転に伴って磁界の方向が変化するように配置されている。
【0025】
磁気センサー624a、624bは、磁石623a、623bの下側すなわち-Z軸側に配置されている。このうち、磁気センサー624aは、磁石623aと対向して配置され、磁石623aの磁界の方向つまり副歯車622aの360°範囲内での回転角度に応じた信号を出力する。一方、磁気センサー624bは、磁石623bに対向して配置され、磁石623bの磁界の方向つまり副歯車622bの360°範囲内での回転角度に応じた信号を出力する。このような構成の磁気式エンコーダー62では、磁気センサー624a、624bからの信号の値の組み合わせにより回転軸51の回転数nを検出することができる。ただし、磁気式エンコーダー62の構成は、特に限定されない。
【0026】
基板63は、光学式エンコーダー61と磁気式エンコーダー62との間に配置されている。基板63は、配線基板であり、ハウジング68に固定されている。基板63の下面631には、光学スケール611と対向して光学センサー612が実装されており、上面632には、磁石623a、623bと対向して磁気センサー624a、624bが実装されている。
【0027】
また、基板63の下面631の光学センサー612と重ならない位置には、光学センサー612および磁気センサー624a、624bと電気的に接続された半導体素子64が実装されている。半導体素子64は、例えば、コンピューターで構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部インターフェースと、を有する。また、メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することができる。
【0028】
また、図3に示すように、基板63の上面632にはコネクター65が実装されている。そして、コネクター65に接続された配線66を介して半導体素子64とロボット制御装置3とが電気的に接続されている。
【0029】
以上、駆動装置41の構成について説明した。なお、以下では、光学センサー612および磁気センサー624a、624bをセンサー60とも言う。次に、駆動装置41に含まれている半導体素子64について詳細に説明する。図4に示すように、半導体素子64は、演算処理部641と、動作履歴一時記憶部642と、動作履歴保存部643と、タイマー644と、温度センサー69と、を有する。このように、演算処理部641と、動作履歴一時記憶部642と、動作履歴保存部643と、タイマー644と、温度センサー69と、を1つの半導体装置64に設けることにより、駆動装置41の小型化を図ることができる。ただし、これに限定されず、これらのうちの少なくとも1つは、半導体素子64外に設けられていてもよい。
【0030】
動作履歴一時記憶部642は、RAM(ランダムアクセスメモリー)であり、動作履歴保存部643は、ROM(ロードオンリーメモリー)である。そのため、動作履歴一時記憶部642に記憶されたデータは、駆動装置41の電源が落とされると消去され、動作履歴保存部643に保存されたデータは、駆動装置41の電源が落とされてもそのまま保存される。また、温度センサー69は、モーター5の温度を検出する。
【0031】
演算処理部641は、センサー60からの出力に基づいて回転軸51の回転量Rを検出する。具体的には、電源投入時に磁気センサー624a、624bの出力に基づいてモーター5の回転軸51の回転数nを検出し、その後は、検出した回転数nに対して光学センサー612の出力(パルス信号)に基づいて検出した回転軸51の回転角度θを加減することにより回転量Rを検出する。ただし、回転量Rの検出方法としては、特に限定されない。
【0032】
図5に示すように、演算処理部641は、回転量Rと、回転量Rを取得した時刻Tiと、回転量Rを取得した時刻Tiにおけるモーター5の温度Teと、を含む位置情報データDrを生成する。そして、演算処理部641は、生成した位置情報データDrを動作履歴一時記憶部642に一時的に記憶する処理を行うと共に、ロボット制御装置3に送信する処理を行う。なお、時刻Tiは、タイマー644で生成されるクロックに基づいた時刻であり、カウント数で示される。また、モーター5の温度Teは、温度センサー69により検出された温度である。
【0033】
図6に示すように、演算処理部641は、ロボット制御装置3から定期的に送信されるリクエスト信号Srを受信する毎に位置情報データDrを生成し、生成した位置情報データDrを動作履歴一時記憶部642に一時的に記憶すると共にロボット制御装置3に送信する。これにより、不必要な位置情報データDrの生成や送信を防止することができ、処理負担を軽減することができる。このような処理を繰り返し行う中で、演算処理部641は、駆動装置41の異常を検知したり、ロボット制御装置3から異常を知らせる信号であるエラーフラグFeを受信したりした場合、リクエスト信号Srを受信する毎に動作履歴一時記憶部642に記憶し続けた多数の位置情報データDrの中から必要な位置情報データDrを選択し、異常発生日時を紐付けて動作履歴保存部643に保存する。
【0034】
図6に示す例では、演算処理部641は、n回目のリクエスト信号Srに対応する位置情報データDrに基づいて駆動装置41の異常を検知したため、電源投入からn回目のリクエスト信号Srまでに生成され、動作履歴一時記憶部642に記憶された多数の位置情報データDrのうち、直近5つの位置情報データDrつまりn-4回目のリクエスト信号Srに対応する位置情報データDrからn回目のリクエスト信号Srに対応する位置情報データDrを選択し、これらと異常発生日時すなわちn回目のリクエスト信号Srに対応する時刻Tiに相当する日時とを紐付けて、動作履歴保存部643に保存する。
【0035】
これにより、駆動装置41の異常を検知した回を含む直近複数回の位置情報データDrは、電源が落とされても保存される。そのため、その後、動作履歴保存部643に保存された位置情報データDrを解析することにより、異常の原因を解析することが可能となる。駆動装置41は、ロボット制御装置3よりもサイズが小さいため、従来と比べて異常の解析のための搬送コストの削減や、解析の柔軟性向上を図ることができる。また、異常発生の再現が不要となり、異常の解析が容易となる。また、位置情報データDrに温度Teが含まれているため、異常時のモーター5の状態を確認することもでき、異常の解析をより精度よく行うことができる。
【0036】
ここで、動作履歴一時記憶部642は、リングバッファで構成されている。これにより、最新の位置情報データDrを逐次記憶することができる。また、動作履歴一時記憶部642の容量を小さくすることができるため、つまり、上記の例で言えば少なくとも5回分の位置情報データDrを保存できる容量があればよいため、駆動装置41の低コスト化を図ることもできる。
【0037】
動作履歴保存部643に保存する位置情報データDrの数は、5つに限定されず、適宜設定することができる。また、例えば、動作履歴一時記憶部642に一時的に記憶された全ての位置情報データDrを動作履歴保存部643に保存してもよい。つまり、電源投入後から異常を検知するまでの間に生成された全ての位置情報データDrを動作履歴保存部643に保存してもよい。また、異常検知前だけでなく、検知後の位置情報データDrについても併せて動作履歴保存部643に保存してもよい。例えば、n回目のリクエスト信号Srに対応する位置情報データDrの異常を検知した場合、n-4回目のリクエスト信号Srに対応する位置情報データDrからn+4回目のリクエスト信号Srに対応する位置情報データDrを動作履歴保存部643に保存してもよい。これにより、その異常が突発的なものなのか、慢性的なものなのかを解析し易くなる。
【0038】
なお、前記「駆動装置41の異常」としては、特に限定されないが、例えば、以下のような例が挙げる。例えば、図7に示すように、n-1回目のリクエスト信号Srに対応する回転量Rに対して直後のn回目のリクエスト信号Srに対応する回転量Rの出力が急増した場合、演算処理部641は、光学式エンコーダー61の異常を検知する。また、例えば、図8に示すように、n-1回目のリクエスト信号Srに対応する時刻Tiを示すカウント数に対して直後のn回目のリクエスト信号Srに対応する時刻Tiを示すカウント数が急増した場合、演算処理部641は、リクエスト信号Srの受信失敗を疑い、配線66の断線、ノイズの発生等の異常を検知する。また、例えば、図9に示すように、n-1回目のリクエスト信号Srに対応する温度Teに対して直後のn回目のリクエスト信号Srに対応する温度Teが急増した場合、演算処理部641は、温度センサー69の異常を検知する。また、例えば、図10に示すように、温度Teが閾値SHを超えた場合、演算処理部641は、モーター5の異常を検知する。このように、駆動装置41によれば、急変するパラメータに基づいて、異常がどの要素に起因したものであるかを推定することもできる。そのため、その後の異常の解析がより容易となる。
【0039】
また、「ロボット制御装置3がエラーフラグFeを送信する場合」としては、特に限定されないが、例えば、リクエスト信号Srに応じた位置情報データDrの送信がない場合、位置情報データDrに含まれる回転量Rが位置指令から大きく乖離している場合、駆動装置41以外の要素で異常が発生した場合等が挙げられる。
【0040】
以上、ロボットシステム1について説明した。このようなロボットシステム1に含まれるモーター制御用角度センサー6は、前述したように、モーター5の駆動に応じた信号を出力するセンサー60と、演算処理部641と、動作履歴一時記憶部642と、動作履歴保存部643と、を有する。そして、演算処理部641は、センサー60から出力される信号に基づいて取得したモーター5の位置としての回転量Rおよび回転量Rを取得した時刻Tiを含む位置情報データDrを生成し、生成した位置情報データDrを動作履歴一時記憶部642に記憶する処理を繰り返し、異常を検知した場合または外部装置としてのロボット制御装置3から異常を知らせる信号を受信した場合に、動作履歴一時記憶部642に記憶されている位置情報データDrを動作履歴保存部643に保存する。このような構成によれば、異常を検知した回またはロボット制御装置3から異常を知らせる信号を受信した回を含む直近複数回の位置情報データDrについては電源が落とされても保存される。そのため、その後、動作履歴保存部643に保存された位置情報データDrを解析することにより、異常の原因を解析することが可能となる。ここで、モーター制御用角度センサー6は、ロボット制御装置3よりもサイズが小さいため、従来と比べて異常解析のための搬送コストの削減や、解析の柔軟性向上を図ることができる。特に、位置情報データDrに時刻Tiが含まれているため、例えば、異常がセンサー60の異常なのか、あるいは、ロボット制御装置3との通信異常なのかを容易に判断できるようにもなる。
【0041】
また、前述したように、演算処理部641は、ロボット制御装置3からのリクエスト信号Srに応じて位置情報データDrを生成し、生成した位置情報データDrを動作履歴一時記憶部642に記憶する。これにより、不必要な位置情報データDrの生成や、動作履歴一時記憶部642への記憶を抑えることができる。
【0042】
また、前述したように、演算処理部641は、ロボット制御装置3からのリクエスト信号Srに応じて位置情報データDrを生成し、生成した位置情報データDrをロボット制御装置3に送信する。これにより、不必要な位置情報データDrの生成や、ロボット制御装置3への送信を抑えることができる。
【0043】
また、前述したように、動作履歴一時記憶部642は、リングバッファで構成されている。これにより、最新の位置情報データDrを逐次記憶することができる。また、動作履歴一時記憶部642の容量を小さくすることができるため、モーター制御用角度センサー6の低コスト化を図ることもできる。
【0044】
また、前述したように、モーター制御用角度センサー6は、モーター5の温度Teを検出する温度センサー69を有する。そして、演算処理部641は、回転量Rおよび時刻Tiに加えて、時刻Tiにおけるモーター5の温度Teを含む位置情報データDrを生成する。これにより、モーター制御用角度センサー6は、センサー60の異常だけではなく、モーター5の異常を検知することができる。
【0045】
また、前述したように、演算処理部641、動作履歴一時記憶部642および動作履歴保存部643は、1つの半導体素子64に含まれている。これにより、モーター制御用角度センサー6の小型化を図ることができる。
【0046】
また、前述したように、モーター制御システムとしての駆動装置41は、モーター5と、モーター5の駆動に応じた信号を出力するセンサー60と、演算処理部641と、動作履歴一時記憶部642と、動作履歴保存部643と、モーター5の駆動を制御する制御装置としてのロボット制御装置3、を有する。そして、演算処理部641は、センサー60から出力される信号に基づいて取得したモーター5の位置である回転量Rおよび回転量Rを取得した時刻Tiを含む位置情報データDrを生成し、生成した位置情報データDrを動作履歴一時記憶部642に記憶する処理を繰り返し、異常を検知した場合またはロボット制御装置3から異常を知らせる信号を受信した場合に、動作履歴一時記憶部642に記憶されている位置情報データDrを動作履歴保存部643に保存する。このような構成によれば、異常を検知した回またはロボット制御装置3から異常を知らせる信号を受信した回を含む直近複数回の位置情報データDrについては電源が落とされても保存される。そのため、その後、動作履歴保存部643に保存された位置情報データDrを解析することにより、異常の原因を解析することが可能となる。ここで、駆動装置41は、ロボット制御装置3よりもサイズが小さいため、従来と比べて異常解析のための搬送コストの削減や、解析の柔軟性向上を図ることができる。
【0047】
また、前述したように、モーター5と、モーター5の駆動に応じた信号を出力するセンサー60と、演算処理部641と、動作履歴一時記憶部642と、動作履歴保存部643と、モーター5の駆動を制御するロボット制御装置3、を有するモーター制御システムとしての駆動装置41の制御方法では、演算処理部641は、ロボット制御装置3からリクエスト信号を受信する度に、センサー60から出力される信号に基づいて取得したモーター5の回転量Rおよび回転量Rを取得した時刻Tiを含む位置情報データDrを生成し、生成した位置情報データDrを動作履歴一時記憶部642に記憶する処理を繰り返し、異常を検知した場合またはロボット制御装置3から異常を知らせる信号を受信した場合に、動作履歴一時記憶部642に記憶されている位置情報データDrを動作履歴保存部643に保存する。このような方法によれば、異常を検知した回またはロボット制御装置3から異常を知らせる信号を受信した回を含む直近複数回の位置情報データDrについては電源が落とされても保存される。そのため、その後、動作履歴保存部643に保存された位置情報データDrを解析することにより、異常の原因を解析することが可能となる。ここで、駆動装置41は、ロボット制御装置3よりもサイズが小さいため、従来と比べて異常解析のための搬送コストの削減や、解析の柔軟性向上を図ることができる。
【0048】
以上、本発明のモーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、前述した実施形態では、モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法をロボットシステムに適用した例について説明したが、モーター制御用角度センサー、モーター制御システムおよびモーター制御用角度センサーの制御方法は、ロボットシステム以外の各種電子機器にも適用することができる。
【0049】
また、前述した実施形態では、温度センサー69が半導体素子64内に配置されているが、これに限定されず、例えば、図11および図12に示すように、半導体素子64外に配置されていてもよい。また、前述した実施形態では、動作履歴保存部643が半導体素子64内に配置されているが、これに限定されず、図13に示すように、半導体素子64外に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…ロボットシステム、2…ロボット、20…ベース、21…ロボットアーム、211…アーム、212…アーム、213…アーム、214…アーム、215…アーム、216…アーム、22…エンドエフェクター、3…ロボット制御装置、41…駆動装置、42…駆動装置、43…駆動装置、44…駆動装置、45…駆動装置、46…駆動装置、5…モーター、51…回転軸、52…ローター、53…ステーター、54…ハウジング、55…軸受、56…軸受、6…モーター制御用角度センサー、60…センサー、61…光学式エンコーダー、611…光学スケール、611a…ハブ、611b…ディスク、612…光学センサー、612a…発光素子、612b…受光素子、62…磁気式エンコーダー、621…主歯車、622a…副歯車、622b…副歯車、623a…磁石、623b…磁石、624a…磁気センサー、624b…磁気センサー、63…基板、631…下面、632…上面、64…半導体素子、641…演算処理部、642…動作履歴一時記憶部、643…動作履歴保存部、644…タイマー、65…コネクター、66…配線、68…ハウジング、69…温度センサー、Dr…位置情報データ、Fe…エラーフラグ、L…光、R…回転量、SH…閾値、Sr…リクエスト信号、Te…温度、Ti…時刻、aZ…軸線、aZ1…軸線、aZ2…軸線、n…回転数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13