(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】電子回路基板、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20241126BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20241126BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H05K1/18 S
H05K1/02 C
(21)【出願番号】P 2020198415
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】山下 正展
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 大毅
(72)【発明者】
【氏名】平松 佑基
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-003672(JP,U)
【文献】特開2001-267716(JP,A)
【文献】特開2019-111759(JP,A)
【文献】特開2018-117438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H05K 1/18
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路を有する基板と、
前記基板上に実装される蓄電部材と、
前記基板に設けられ、不使用時には前記蓄電部材との導通を遮断し、使用時には前記蓄電部材を導通させるスイッチ手段と
を備え
、
前記スイッチ手段は、
前記基板に接続される基端部と、前記基板に対向して配置される先端部とを備えた導電性のバネ部材と、
前記バネ部材の弾性力により前記先端部と前記基板との間で挟持された絶縁性の絶縁部材と
を備え、
前記バネ部材は、前記絶縁部材が取り除かれた場合、弾性力により前記先端部が前記基板に接触して導通され、
前記蓄電部材は、
一対の極端子を備えた第1蓄電部材と、
一対の極端子を備え、外形寸法及び前記一対の極端子の間の距離が前記第1蓄電部材と異なる第2蓄電部材と
を備え、
前記第1蓄電部材と前記第2蓄電部材のうち何れか一つを選択的に取付可能な複数のスルーホールが前記基板に設けられ、
前記複数のスルーホールは、
前記第1蓄電部材及び前記第2蓄電部材の前記一対の極端子のうち、同一の極性を有する一方の極端子を挿入可能な共通の孔であり、前記第1蓄電部材又は前記第2蓄電部材の前記一方の極端子が挿入接続される第1孔と、
前記第1蓄電部材の他方の極端子が挿入接続される第2孔と、
前記第2孔とは異なる位置に設けられ、前記第2蓄電部材の他方の極端子が挿入接続される第3孔と
を含み、
前記第1蓄電部材が前記基板に実装された場合、前記第1蓄電部材は、前記第3孔が露出しないように覆い、
前記第2蓄電部材が前記基板に実装された場合、前記第2蓄電部材は、所定条件を満たすときに前記第2孔が露出しないように覆い、
前記所定条件は、
前記第2蓄電部材が前記基板に実装された状態で前記基板を覆う領域が円形であり、前記円形の直径をD1とし、
前記第2蓄電部材の前記一対の極端子の間の距離をF1とし、
前記第1蓄電部材の前記一対の極端子の間の距離をF2とし、
前記第1孔と前記第2孔とを結ぶ第1線分と、前記第1孔と前記第3孔とを結ぶ第2線分とがなす角度をθとし、
実装された状態の前記第2蓄電部材の外形を示す曲線と、前記第1孔を起点として前記第2孔へ伸ばした半直線との交点をX1とし、
前記第1孔と前記交点までの距離をLとした場合、
L=(F1cosθ+√((F1cosθ)
2
+(D1
2
-F1
2
)))/2、且つ、L>F2
を満たすことを特徴とする電子回路基板。
【請求項2】
前記第1孔は、前記バネ部材の前記基端部と接続する
ことを特徴とする請求項
1に記載の電子回路基板。
【請求項3】
前記蓄電部材が出力する電圧の電圧値を検知する検知手段と、
検知された前記電圧値が所定の閾値よりも小さい場合、異常を報知する報知手段と
を備えることを特徴とする請求項1
又は2に記載の電子回路基板。
【請求項4】
前記蓄電部材は、リチウムイオンキャパシタである
ことを特徴とする請求項1~
3の何れか一つに記載の電子回路基板。
【請求項5】
請求項1~
4の何れか一つに記載の電子回路基板を備えた
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路基板、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、駆動装置に着脱可能であり、リチウムイオンキャパシタからの漏れ電流を抑制する電源モジュールを開示する。電源モジュールは、リチウムイオンキャパシタユニット、電源ライン、第1のスイッチユニット、保護回路、第2のスイッチユニットを備える。リチウムイオンキャパシタユニットは、少なくとも1つのリチウムイオンキャパシタセルを含む。電源ラインは、駆動装置へ電力を供給する。第1のスイッチユニットは、電源ラインに設けられる。保護回路は、少なくとも1つのリチウムイオンキャパシタセルの過充電及び/又は過放電を防止する。第2のスイッチユニットは、リチウムイオンキャパシタユニットと保護回路との間に設けられ、1つのスイッチング素子を有する。第2のスイッチユニットは、駆動装置からの制御信号に基づいてオンオフされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電源モジュールは、リチウムイオンキャパシタセルからの過充電及び/又は過放電を防止する為に、電源ライン、第1のスイッチユニット、保護回路、第2のスイッチユニット等の構成を必要とするので、電子回路基板が複雑になるという可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、簡易な構成で、蓄電部材の短絡を防止できる電子回路基板及び電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る電子回路基板は、電子回路を有する基板と、前記基板上に実装される蓄電部材と、前記基板に設けられ、不使用時には前記蓄電部材との導通を遮断し、使用時には前記蓄電部材を導通させるスイッチ手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
電子回路基板は、スイッチ手段により、簡易な構成で蓄電部材の導通を制御できる。
【0008】
前記スイッチ手段は、前記基板に接続される基端部と、前記基板に対向して配置される先端部(先端部)とを備えた導電性のバネ部材と、前記バネ部材の弾性力により前記先端部と前記基板との間で挟持された絶縁性の絶縁部材とを備え、前記バネ部材は、前記絶縁部材が取り除かれた場合、弾性力により前記先端部が前記基板に接触して導通されてもよい。電子回路基板は、バネ部材と絶縁部材との簡易な構成で、バネ部材の導通状態を切り替えできる。
【0009】
前記蓄電部材は、一対の極端子を備えた第1蓄電部材と、一対の極端子を備え、外形寸法及び前記一対の極端子の間の距離が前記第1蓄電部材と異なる第2蓄電部材とを備え、前記第1蓄電部材と前記第2蓄電部材のうち何れか一つを選択的に取付可能な複数のスルーホールが前記基板に設けられ、前記複数のスルーホールは、前記第1蓄電部材及び前記第2蓄電部材の前記一対の極端子のうち、同一の極性を有する一方の極端子を挿入可能な共通の孔であり、前記第1蓄電部材又は前記第2蓄電部材の前記一方の極端子が挿入接続される第1孔と、前記第1蓄電部材の他方の極端子が挿入接続される第2孔と、前記第2孔とは異なる位置に設けられ、前記第2蓄電部材の他方の極端子が挿入接続される第3孔とを含み、前記第1蓄電部材が前記基板に実装された場合、前記第1蓄電部材は、前記第3孔が露出しないように覆い、前記第2蓄電部材が前記基板に実装された場合、前記第2蓄電部材は、所定条件を満たすときに前記第2孔が露出しないように覆ってもよい。第1蓄電部材が実装されると第1蓄電部材は第3孔が露出しないように覆い、第2蓄電部材が実装されると第2蓄電部材は第2孔が露出しないように覆う。故に、電子回路基板は、第1孔と第2孔又は第1孔と第3孔が誤って短絡する可能性を低減できる。
【0010】
前記第1孔は、前記バネ部材の前記基端部と接続してもよい。電子回路基板は、第1孔がバネ部材の基端部と接続されるので、第1孔とバネ部材に対して同一の電圧を印加できる。
【0011】
前記所定条件は、前記第2蓄電部材が前記基板に実装された状態で前記基板を覆う領域が円形であり、前記円形の直径をD1とし、前記第2蓄電部材の前記一対の極端子の間の距離をF1とし、前記第1蓄電部材の前記一対の極端子の間の距離をF2とし、前記第1孔と前記第2孔とを結ぶ第1線分と、前記第1孔と前記第3孔とを結ぶ第2線分とがなす角度をθとし、実装された状態の前記第2蓄電部材の外形を示す曲線と、前記第1孔を起点として前記第2孔へ伸ばした半直線との交点をX1とし、前記第1孔と前記交点までの距離をLとした場合、L=(F1cosθ+√((F1cosθ)2+(D12-F12)))/2、且つ、L>F2を満たしてもよい。電子回路基板は、第2蓄電部材が実装された場合、所定条件を満たすことにより、第2蓄電部材が基板の第2孔を露出しないように覆う。これにより、電子回路基板は、リチウムイオンキャパシタが短絡する可能性を低減できる。
【0012】
前記蓄電部材が出力する電圧の電圧値を検知する検知手段と、検知された前記電圧値が所定の閾値よりも小さい場合、異常を報知する報知手段とを備えてもよい。電子回路基板は、検知された電圧に基づき異常を報知するので、ユーザに対して異常を知らせることができる。
【0013】
前記蓄電部材は、リチウムイオンキャパシタであってもよい。電子回路基板は、リチウムイオンキャパシタにより、効率的に電力を供給できる。
【0014】
本発明の第2態様に係る電子機器は、第1態様に係る電子回路基板を備えたことを特徴とする。電子機器は、第1態様に係る電子回路基板を備えるので、簡易な構成で蓄電部材の短絡を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】印刷装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】(a)はスイッチ15が基板8に実装された状態を示す図であり、(b)はスイッチ15の構造を示す図である。
【
図5】(a)は基板8の斜視図であり、(b)は第1キャパシタ52A又は第2キャパシタ52Bが実装される基板8の平面図である。
【
図6】メイン処理のフローチャートを示す図である。
【
図7】(a)は第1変形例における基板8Aを示す斜視図であり、(b)は第1キャパシタ52A又は第2キャパシタ52Bが実装される基板8Aを示す平面図である。
【
図8】(a)は第2変形例における基板8Bを示す斜視図であり、(b)は第1キャパシタ52A又は第2キャパシタ52Bが実装される基板8Bを示す平面図である。
【
図9】(a)は第3変形例における基板8Cを示す斜視図であり、(b)は第1キャパシタ52A又は第2キャパシタ52Bが実装される基板8Cを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<印刷装置1の概要>
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。印刷装置1は、印刷媒体であるテープ(図示略)に対し、文字、文字列、記号、数字、図形、絵文字等の印刷情報を印刷してラベルを作成可能である。以下の説明では、
図1の左上側、右下側、右上側、左下側、上側、及び下側を、夫々、印刷装置1の左側、右側、上側、下側、前側、及び後側とする。
【0017】
図1に示すように、印刷装置1は、直方体状の筐体である本体カバー2を備える。本体カバー2の上面前部には、文字列等を入力する為のキーボード3が設けられる。キーボード3は、電源スイッチ、用途キー、カーソルキー等を含む。キーボード3の上側には、各種情報を表示するディスプレイ5が設けられる。一例として、ディスプレイ5はドットマトリクスLCDである。ディスプレイ5の後側には、本体カバー2に対して開閉可能なカセットカバー6が設けられる。本体カバー2の上面には、印刷されたテープを本体カバー2の外部に排出する排出口(図示略)が設けられる。本体カバー2の右上角部には、操作部14が設けられる。操作部14が内側へ押圧操作されることによって、印刷済みのテープは切断される。
【0018】
本体カバー2の内部におけるカセットカバー6(
図1参照)の前側には、非図示の装着部及び電池収容部が設けられる。装着部は、テープカセットの形状に対応する凹部であり、テープカセットを着脱可能な部位である。印刷装置1は、装着部に装着されたテープカセットを用いて、キーボード3を介して入力された文字列の印刷を実行する。電池収容部には、印刷装置1が印刷を実行する為に必要な電力の供給源となる乾電池11(
図3参照)が収容される。
【0019】
印刷装置1は、テープ駆動軸(図示略)の駆動により、テープカセットからテープを繰り出して搬送する。印刷装置1は、未使用のインクリボンをサーマルヘッド83により加熱し、テープへの印刷を行う。印刷装置1は、プラテン機構(図示略)の駆動により、テープとインクリボンとをサーマルヘッド83に圧接して搬送する。
【0020】
<印刷装置1の電気的構成>
図2を参照し、印刷装置1の電気的構成を説明する。印刷装置1は制御回路部70を備える。制御回路部70は、CPU71、ROM72、CGROM73、RAM74、フラッシュメモリ75、及び入出力インタフェース77を備え、これらがデータバス69を介して接続される。CPU71は、印刷装置1を統括制御する。CPU71は、ADコンバータからなる検出部21を含む。ROM72は、CPU71が各種プログラムの実行時に必要な定数を記憶する。CGROM73は、内蔵フォント等を記憶する。RAM74は、テキストメモリ、印刷バッファ等、複数の記憶領域を備える。フラッシュメモリ75は、CPU71が実行する各種プログラム、変数等を記憶する。フラッシュメモリ75に記憶される変数は、所定の閾値Th等である。
【0021】
入出力インタフェース77には、充電IC51、キーボード3、液晶駆動回路(LCDC)25、駆動回路26、27、及び外部インタフェース(I/F)19が接続される。LCDC25は、ディスプレイ5に表示データを出力する為のビデオRAM(図示略)を有する。駆動回路26は、サーマルヘッド83を駆動する為の電子回路である。駆動回路27は、テープ送りモータ23を駆動する為の電子回路である。外部I/F19は、外部端末19Aと接続して通信を行う。例えばCPU71は、外部端末19Aから受信したプログラムをフラッシュメモリ75に記憶することにより、プログラムを更新できる。外部端末19Aは、汎用のパーソナルコンピュータ(PC)又は携帯端末である。充電IC51の詳細は後述する。
【0022】
<印刷装置1の電源系統図>
図3を参照して、印刷装置1の電源系統の一部について説明する。
図3に示す電源系統図は、サーマルヘッド83、テープ送りモータ23、及び、制御回路部70と乾電池11との間の電源系統を示す。その他のデバイスと乾電池11との間の電源系統は省略されている。
【0023】
印刷装置1が印刷を実行する為の電源として乾電池11が用いられる。乾電池11と、サーマルヘッド83及びテープ送りモータ23との間に、充電IC51とキャパシタ52が介在する。なお、電源系統において、後述の第1キャパシタ52A、第2キャパシタ52Bの何れか一つが実装される。以下、第1キャパシタ52Aと第2キャパシタ52Bを総称してキャパシタ52と称する。
【0024】
キャパシタ52の一対の極端子のうち正極端子は、充電IC51と制御回路部70内の検出部21に接続する。キャパシタ52の一対の極端子のうち負極端子は、後述するスイッチ15を介して、グラウンドGNDに接続する。乾電池11と制御回路部70との間に、システム電源生成回路54が介在する。
【0025】
キャパシタ52は、充電及び放電が可能なリチウムイオンキャパシタである。リチウムイオンキャパシタは、負極にリチウムイオンが予めドーピングされたキャパシタであり、通常の電気二重層キャパシタと比べて高電圧(約3.7V)での使用が可能である。キャパシタ52を充電する為の電力は、乾電池11からキャパシタ52に供給される。また、充電IC51は、乾電池11の電力がキャパシタ52に供給される状態と、供給されない状態とを切り替える。
【0026】
サーマルヘッド83は、キャパシタ52に充電された電力が供給されることにより発熱し、インクリボンを加熱してテープへの印刷を行う。テープ送りモータ23は、キャパシタ52に充電された電力が供給されることにより回転する。テープ送りモータ23の回転により、テープ駆動軸は回転し、テープが搬送される。
【0027】
制御回路部70に含まれる各種デバイス(CPU71等)は、システム電源生成回路54を介して乾電池11から供給される電力により駆動する。システム電源生成回路54は、降圧回路であり、乾電池11の電圧を、制御回路部70に含まれる各種デバイスの駆動が可能な電圧まで降圧する。CPU71(
図2参照)に含まれる検出部21は、キャパシタ52の正極端子に接続し、キャパシタ52の電圧を検出可能である。
【0028】
<スイッチ15>
図4を参照して、キャパシタ52とスイッチ15の関係について説明する。キャパシタ52は、電子回路が実装されている電子回路基板(以下「基板8」という。)上に実装される。基板8は、複数のスルーホール(
図5の孔A1(B1)、A2、B2参照)、パターン29、30、31、及びグラウンドGND等を備える。キャパシタ52の正極端子は、パターン29に接続される。キャパシタ52の負極端子は、パターン30に接続される。乾電池11からの電力は、充電IC51、パターン29を介してキャパシタ52の正極端子に供給される。
【0029】
スイッチ15の一端は、パターン30を介して、キャパシタ52の負極端子と接続している。スイッチ15の他端は、パターン31を介して、グラウンドGNDと接続する。従って、スイッチ15がオンオフすることで、キャパシタ52の負極端子のグラウンドGNDへの電気的な接続が切り替えられる。キャパシタ52の正極端子と負極端子と孔A1(B1)、A2、B2との関係は、後述する。
【0030】
スイッチ15の構造について説明する。スイッチ15は、バネ部材13、及び絶縁シート17を備える。バネ部材13は、導電性の部材であり、弾性力を有する。バネ部材13は、基端部13Aと先端部13Bを備える。基端部13Aは、パターン30に対して電気的に接続されている。なお、後述の孔A1(B1)は、バネ部材13の基端部13Aと接続している。先端部13Bは、基板8のパターン31に対向して配置される。
【0031】
絶縁シート17は、バネ部材13の弾性力により、先端部13Bと基板8のパターン31の間で挟持される。これにより、キャパシタ52の負極端子は解放状態となり、グラウンドGNDに対して導通されない状態となる。この場合、スイッチ15は、オフ状態であり、キャパシタ52より後段には、電圧が印加されない状態となる。
【0032】
一方で、絶縁シート17が取り除かれた場合、バネ部材13は、弾性力により先端部13Bがパターン31に接触する。キャパシタ52の負極端子は、グラウンドGNDに対して導通した状態となる。この場合、スイッチ15はオン状態であり、キャパシタ52より後段には、キャパシタ52の電圧が印加される。印刷装置1の不使用時には、先端部13Bと基板8のパターン31の間で絶縁シート17が挟持された状態が維持される。これによりキャパシタ52との導通を遮断する。一方、印刷装置1の使用時には、ユーザは絶縁シート17を脱離させる。これによりキャパシタ52を導通させる。
【0033】
<キャパシタ52の実装>
図5を参照して、キャパシタ52の基板8への実装の態様について説明する。製造時、作業者は、例えば、第1キャパシタ52A、第2キャパシタ52Bの何れか一つを選択して基板8に実装する。第1キャパシタ52Aと第2キャパシタ52Bは、外形寸法及び一対の極端子の間の距離が互いに異なる。第1キャパシタ52Aは、第2キャパシタ52Bよりも寸法が大きい。また、第1キャパシタ52Aの一対の極端子間の距離は、第2キャパシタ52Bの一対の極端子間の距離以上である。なお、第1キャパシタ52A及び第2キャパシタ52Bは、円柱状であるので、実装された状態で基板8を覆う領域が円形である(
図5参照)。
【0034】
第1キャパシタ52A、第2キャパシタ52Bを実装可能とする為、基板8には、複数のスルーホール(以下、孔A1、B1、孔A2、B2という。)が設けられる。
【0035】
孔A1、A2は、第1キャパシタ52Aを実装する為の孔である。孔A1、A2は、第1キャパシタ52Aの正極端子と負極端子の間の極端子間の距離に対応して、距離F2だけ離間している。孔B1、B2は、第2キャパシタ52Bを実装する為の孔である。孔B1、B2は、第2キャパシタ52Bの正極端子と負極端子の間の極端子間の距離に対応して、距離F1だけ離間している。
【0036】
孔A1と孔B1は、第1キャパシタ52A及び第2キャパシタ52Bの一対の極端子のうち、負極端子を挿入可能な共通の孔である。つまり、孔A1(B1)には、第1キャパシタ52A又は第2キャパシタ52Bの負極端子が接続される。また、孔A2は、第1キャパシタ52Aの正極端子が接続される。孔B2は、第2キャパシタ52Bの正極端子が接続される。
【0037】
第1キャパシタ52Aが実装された場合、第2キャパシタ52Bの為の孔B2は、第1キャパシタ52Aにより覆われた状態となる。この場合、基板8に対して、第2キャパシタ52Bは、実装不能となる。従って、第1キャパシタ52Aが実装された場合、誤って第2キャパシタ52Bが基板8に対して実装されることはない。また、基板8上で、孔A1、A2、B1、B2同士が誤って短絡する可能性が低くなる。これにより、第1キャパシタ52Aが短絡される可能性が低減される。
【0038】
一方、第2キャパシタ52Bが実装された場合、第1キャパシタ52Aの為の孔A2は、第2キャパシタ52Bにより覆われた状態となる。この場合、孔B2に対して、第1キャパシタ52Aは、実装不能となる。従って、第2キャパシタ52Bが実装された場合、誤って第1キャパシタ52Aが基板8に対して実装されることはない。また、基板8上で、孔A1、A2、B1、B2同士が誤って短絡する可能性が低くなる。これにより、第2キャパシタ52Bが短絡される可能性が低減される。
【0039】
<スルーホールの配置位置に関する説明>
孔A1(B1)、A2、B2は、以下に説明する所定条件を満たすよう基板8に配置されている。所定条件を満たすことで、第1キャパシタ52Aよりも寸法の小さい第2キャパシタ52Bが基板8に実装された場合に、孔A1、A2が覆われる。これにより、第1キャパシタ52Aは、基板8に対して実装不能となる。
【0040】
第2キャパシタ52Bが孔B1、B2に実装された場合に、第1キャパシタ52Aの孔A2を第2キャパシタ52Bが覆う為には、L=(F1cosθ+√((F1cosθ)2+(D12-F12)))/2、且つ、L>F2の条件を満たす必要がある。
【0041】
ここで、F2は、第1キャパシタ52Aの一対の極端子間の距離である。F1は、第2キャパシタ52Bの一対の極端子間の距離である。D1は、第2キャパシタ52Bの円形の直径である。θは、孔A1と孔A2とを結ぶ第1線分と、孔B1と孔B2とを結ぶ第2線分とがなす角度である。Lは、交点X1と孔A1との間の距離である。X1は、実装された第2キャパシタ52Bの外形を示す曲線と、孔A1を起点として孔A2へ伸ばした半直線との交点である。
【0042】
基板8は、上記所定条件を満たすように孔A1(B1)、A2、B2の位置が決定される。故に、第2キャパシタ52Bが基板8に実装された場合、第2キャパシタ52Bが基板8の孔A2を露出しないように覆うことが可能となる。
【0043】
<メイン処理>
図6を参照し、メイン処理について説明する。メイン処理は、印刷装置1の電源がONされた場合において、フラッシュメモリ75に記憶されたプログラムをCPU71が読み出して実行することにより、開始される。
【0044】
メイン処理が開始されると、CPU71は、検出部21の検出結果に基づき、キャパシタ52が出力する電圧の電圧値を検知する(S1)。次いで、CPU71は、検知された電圧値が所定の閾値Th以上か否か判断する(S3)。CPU71は、取得された電圧値が所定の閾値Th以上と判断した場合(S3:YES)、CPU71は、処理をS1に戻す。
【0045】
一方、電圧値が所定の閾値Thよりも小さいと判断した場合(S3:NO)、CPU71は、キャパシタ52からの出力電圧に異常があるとしてエラーを報知する(S5)。エラー報知は、例えば、「基板に異常があります」等の情報をディスプレイ5に表示する。CPU71は処理を終了する。
【0046】
<本実施形態の作用、効果>
以上説明したように、基板8に設けられたスイッチ15は、印刷装置1の不使用時にはキャパシタ52との導通を遮断し、印刷装置1の使用時にはキャパシタ52を導通させる。これにより、印刷装置1は、スイッチ15を用いた簡易な構成で、第1キャパシタ52A、第2キャパシタ52Bの導通を制御できる。
【0047】
絶縁シート17は、絶縁性であり、バネ部材13の弾性力により先端部13Bと基板8のパターン31との間で挟持される。バネ部材13は、絶縁シート17が取り除かれた場合、弾性力により先端部13Bが基板8のパターン31に接触して導通される。印刷装置1は、バネ部材13と絶縁シート17との簡易な構成で、バネ部材13の導通状態を切り替えできる。
【0048】
第1キャパシタ52Aが基板8に実装された場合、第1キャパシタ52Aは、孔B2が露出しないように覆う。第2キャパシタ52Bが基板8に実装された場合、第2キャパシタ52Bは、所定条件を満たすときに孔A2が露出しないように覆う。故に、印刷装置1は、孔A1(B1)、A2、B2が誤って短絡する可能性を低減できる。
【0049】
孔A1(B1)は、バネ部材13の基端部13Aと接続する。故に、スイッチ15がオンされた場合、孔A1(B1)に接続されたキャパシタ52の負極端子は、グラウンドGNDに接続できる。
【0050】
L=(F1cosθ+√((F1cosθ)2+(D12-F12)))/2、且つ、L>F2を満たす場合、第2キャパシタ52Bが基板8の孔A2を露出しないように覆う。これにより、孔A1(B1)、A2、B2が短絡しにくくなるので、印刷装置1は、第2キャパシタ52Bが短絡する可能性を低減できる。
【0051】
CPU71は、キャパシタ52が出力する電圧の電圧値を検知する。CPU71は、検知された電圧値が所定の閾値Thよりも小さい場合、異常を報知する。印刷装置1は、検知された電圧値に基づき、キャパシタ52が実装された基板8の異常をユーザに対して知らせることができる。
【0052】
第1キャパシタ52A、第2キャパシタ52Bは、リチウムイオンキャパシタである。印刷装置1は、リチウムイオンキャパシタにより、サーマルヘッド83に対して効率的に電力を供給できる。
【0053】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。
図7を参照して、第1変形例におけるキャパシタ52の基板8Aへの実装の態様について説明する。第1変形例における基板8Aには、複数のスルーホール(以下、孔H1、H2、孔I1、I2という。)が設けられる。
【0054】
孔H1、H2は、第1キャパシタ52Aを実装する為の孔である。孔H1、H2は、第1キャパシタ52Aの一対の極端子間の距離に対応して、距離F2だけ離間している。孔I1、I2は、第2キャパシタ52Bを実装する為の孔である。孔I1、I2は、第2キャパシタ52Bの一対の極端子間の距離に対応して、距離F1だけ離間している。
【0055】
孔H1(I1)は、第1キャパシタ52A及び第2キャパシタ52Bの一対の極端子のうち、負極端子を挿入可能な共通の孔である。つまり、孔H1(I1)には、第1キャパシタ52A又は第2キャパシタ52Bの負極端子が接続される。また、孔H2は、第1キャパシタ52Aの正極端子が接続される。孔I2は、第2キャパシタ52Bの正極端子が接続される。
【0056】
第1キャパシタ52Aが実装された場合、第2キャパシタ52Bの為の孔I2は、第1キャパシタ52Aにより覆われた状態となる。この場合、第2キャパシタ52Bは、孔I2に対して実装不能となる。従って、第1キャパシタ52Aが実装された場合、誤って第2キャパシタ52Bが基板8Aに対して実装されることはない。また、基板8上で、孔H1(I1)、H2、I2同士が誤って短絡する可能性が低くなる。これにより、第1キャパシタ52Aが短絡される可能性が低減される。
【0057】
一方、第2キャパシタ52Bが実装された場合、第1キャパシタ52Aの負極端子が挿通される孔H1(I1)が既に使用されているので、第1キャパシタ52Aは、取り付け不能である。これにより、作業者は、第2キャパシタ52Bに加えて、誤って第1キャパシタ52Aを実装する可能性が低減される。
【0058】
図8を参照して、第2変形例における第1キャパシタ52A、第2キャパシタ52Bの基板8Bへの実装について説明する。第2変形における基板8Bは、複数のスルーホール(以下、孔J1、J2、孔K1、K2という。)を備える。
【0059】
孔J1、J2は、第1キャパシタ52Aを実装する為の孔である。孔K1、K2は、第2キャパシタ52Bを実装する為の孔である。孔J1は、第1キャパシタ52Aの負極端子が接続される。孔K1は、第2キャパシタ52Bの負極端子が接続される。孔J2は、第1キャパシタ52Aの正極端子が接続される。孔K2は、第2キャパシタ52Bの正極端子が接続される。孔J1と孔J2は、第1キャパシタ52Aの一対の極端子間の距離に応じて、距離F2だけ離間して配置されている。孔K1、K2は、第2キャパシタ52Bの一対の極端子間の距離に応じて、距離F1だけ離間して配置されている。
【0060】
第1キャパシタ52Aが実装された場合、第2キャパシタ52Bの為の孔K1、K2は、第1キャパシタ52Aにより覆われた状態となる。この場合、孔K1、K2に対して、第2キャパシタ52Bの実装は不能となる。従って、基板8Bに対して、誤って第2キャパシタ52Bが実装されることはない。また、基板8B上では、孔J1、J2、K1、K2同士が導通される可能性が低くなり、第1キャパシタ52Aが短絡される可能性は低減される。
【0061】
一方、第2キャパシタ52Bが実装された場合、第2キャパシタ52Bにより、第1キャパシタ52Aの為の孔J1、孔J2が覆われた状態となる。この場合、第1キャパシタ52Aは実装不能となる。従って、基板8Bに対して、誤って第1キャパシタ52Aが実装されることはない。また、基板8B上では、孔J1、J2、K1、K2同士が導通される可能性が低くなり、第2キャパシタ52Bを短絡する可能性が低減される。
【0062】
図9を参照して、第3変形例における第1キャパシタ52A、第2キャパシタ52B、第3キャパシタ52Cの基板8Cへの実装について説明する。第3変形例において、作業者は、第1キャパシタ52A、第2キャパシタ52B、第3キャパシタ52Cのうち1つのキャパシタを基板8Cに対して選択的に取り付け可能である。第1キャパシタ52A、第2キャパシタ52B、第3キャパシタ52Cの寸法は、この順に小さくなる。第1キャパシタ52Aの極端子間の距離は、距離F2である。第2キャパシタ52Bの極端子間の距離は、距離F1である。第3キャパシタ52Cの極端子間の距離は、距離F3である。
【0063】
孔O1、O2は、第1キャパシタ52Aを実装する為の孔である。孔O1、O2は、第1キャパシタ52Aの一対の端子間の距離に応じて、距離F2だけ離間している。孔P1、P2は、第2キャパシタ52Bを実装する為の孔である。孔Q1、Q2は、第2キャパシタ52Bの一対の端子間の距離に応じて、距離F1だけ離間している。孔Q1、Q2は、第3キャパシタ52Cを実装する為の孔である。孔Q1、Q2は、第2キャパシタ52Bの一対の端子間の距離に応じて、距離F3だけ離間している。
【0064】
孔O1は、第1キャパシタ52Aの負極端子が接続される。孔P1は、第2キャパシタ52Bの負極端子が接続される。孔Q1は、第3キャパシタ52Cの負極端子が接続される。また、孔O2は、第1キャパシタ52Aの正極端子が接続される。孔P2は、第2キャパシタ52Bの正極端子が接続される。孔Q2は、第3キャパシタ52Cの正極端子が接続される。
【0065】
第1キャパシタ52Aが実装される場合、第2キャパシタ52Bの為の孔P1、P2は、第1キャパシタ52Aにより覆われた状態となる。また、第3キャパシタ52Cの為の孔Q1、Q2は、第1キャパシタ52Aにより覆われた状態となる。この場合、第2キャパシタ52B、第3キャパシタ52Cの実装は不能となる。従って、第1キャパシタ52Aが実装された場合、第2キャパシタ52B、第3キャパシタ52Cが、誤って基板8Cに対して実装されることはない。また、基板8C上では、孔O1、O2、P1、P2、Q1、Q2同士が導通される可能性が低くなり、第1キャパシタ52Aが短絡される可能性は低減される。
【0066】
第2キャパシタ52Bが実装された場合、第1キャパシタ52Aは、第2キャパシタ52Bにより実装スペースがないので、取り付け不能である。これにより、作業者は、第2キャパシタ52Bに加えて、誤って第1キャパシタ52Aを実装する可能性が低くなる。また、第3キャパシタ52Cが実装された場合、第1キャパシタ52Aは、第3キャパシタ52Cにより実装スペースがないので、取り付け不能である。これにより、作業者は、第3キャパシタ52Cに加えて、誤って第1キャパシタ52Aを実装する可能性が低くなる。
【0067】
上記実施形態は、更に以下のように変形可能である。上記実施形態では、スイッチ15はバネ部材13と、絶縁シート17で構成されていたがこれらに限らない。例えば、基板8、8A~8Cには、トランジスタが実装され、トランジスタ等のオンオフによりスイッチが実現されてもよい。また、作業者は、製造時には、キャパシタ52の負極端子を解放状態としておき、出荷の際にジャンパー等で短絡してもよい。
【0068】
上記実施形態では、1つのリチウムイオンキャパシタのみが基板8に実装可能であったが、キャパシタ52は、複数のリチウムイオンキャパシタが直列又は並列に接続した構成であってもよい。キャパシタ52はリチウムイオンキャパシタに限定されず、電気二重層キャパシタでもよい。第1キャパシタ52A、第2キャパシタ52Bの負極端子が共通して孔A1(B1)に接続可能であったが、第1キャパシタ52Aと第2キャパシタ52Bの正極端子が共通して接続可能でもよい。
【0069】
検出部21は、CPU71とは別に設けられたADコンバータ、コンパレータ等でもよい。制御回路部70に含まれる各種デバイスは、システム電源生成回路54を介さずに乾電池11と直接接続してもよい。
【0070】
キャパシタ52の電圧値が所定の閾値Thよりも低いと判断された場合における報知態様は、上記実施形態に限らない。例えば印刷装置1は、LEDの点灯、ブザーによる警告音等によりユーザに報知してもよい。
【0071】
印刷装置1は、サーマルヘッドを用いたサーマルプリンタに限定されず、他の方式(インクジェット方式、レーザ方式等)で印刷を行う為の印刷部を備えた印刷装置でもよい。キャパシタ52を充電する為の電源として、一次電池や二次電池等の乾電池11の代わりに、ACアダプターより供給されるDC電源等(第2電源という。)が用いられてもよい。
【0072】
上記実施形態のスイッチ15及び基板8を、印刷装置以外の他の電子機器に対して、搭載してもよい。これにより、他の電子機器においても、簡易な構成でキャパシタ52の短絡を防止できる。
【0073】
<その他>
キャパシタ52は、本発明の「蓄電部材」の一例である。スイッチ15は、本発明の「スイッチ手段」の一例である。第1キャパシタ52Aは、本発明の「第1蓄電部材」の一例である。第2キャパシタ52Bは、本発明の「第2蓄電部材」の一例である。キャパシタ52の負極端子は、本発明の「一方の極端子」の一例である。キャパシタ52の正極端子は、本発明の「他方の極端子」の一例である。孔A1(B1)、孔H1(I1)は、本発明の「第1孔」の一例である。孔A2、H2は、本発明の「第2孔」の一例である。孔B2、I2は、本発明の「第3孔」の一例である。CPU71が実行するS1の処理は、本発明の「検知手段」の一例である。CPU71が実行するS5の処理は、本発明の「報知手段」の一例である。
【符号の説明】
【0074】
1 :印刷装置
8、8A、8B、8C :基板
13 :バネ部材
13A :基端部
13b :先端部
15 :スイッチ
21 :検出部
52、52A、52B :キャパシタ
71 :CPU
A1、A2、B1、B2、H1、H2、I1、I2 :孔