(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】コンタクトレンズおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20241126BHJP
C08F 220/20 20060101ALI20241126BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
G02C7/04
C08F220/20
C08F290/06
(21)【出願番号】P 2020211555
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 俊祐
(72)【発明者】
【氏名】五反田 龍矢
(72)【発明者】
【氏名】岩切 規郎
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/135421(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/054711(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0300654(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103467652(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
C08F 220/20
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(1)で表されるホスホリルコリン基含有メタクリルエステルモノマーと、
(B)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルおよびN-ビニルピロリドンから選択される1種以上の親水性モノマーと、
(C)N,N-ジメチルアクリルアミドおよびN,N-ジエチルアクリルアミドから選択される1種以上のアクリルアミド含有モノマーと、
(D)式(2)で表されるシロキサニル基含有イタコン酸ジエステルモノマーと、
(E)式(3)で表されるシロキサニル基含有(メタ)アクリレートと、
を含有する組成物であり、
前記組成物中の(A)~(E)成分の合計量基準で、(A)を5~25質量%、(B)を5~30質量%、(C)を10~35質量%、(D)を7~27質量%、および(E)を15~40質量%含有
し、(C)の含有量に対する(A)と(B)の合計含有量が、質量比[(A)+(B)]/(C)で0.8~1.5である、コンタクトレンズ用モノマー組成物
の重合体であるコンタクトレンズ用重合体の水和物を有するコンタクトレンズであり、
含水率が45%以下、モジュラスが0.3MPa~0.7MPa、破断伸びが200%以上のコンタクトレンズ。
【化1】
【化2】
【化3】
[式(3)中、R
1は水素原子またはメチル基である。mは0または1、nは5~20である。]
【請求項2】
前記組成物が、さらに(F)前記(A)~(E)以外のモノマーを、(A)~(E)成分の合計量100質量部に対して、30質量部以下含有する、請求項1に記載のコンタクトレン
ズ。
【請求項3】
(A)式(1)で表されるホスホリルコリン基含有メタクリルエステルモノマーと、
(B)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルおよびN-ビニルピロリドンから選択される1種以上の親水性モノマーと、
(C)N,N-ジメチルアクリルアミドおよびN,N-ジエチルアクリルアミドから選択される1種以上のアクリルアミド含有モノマーと、
(D)式(2)で表されるシロキサニル基含有イタコン酸ジエステルモノマーと、
(E)式(3)で表されるシロキサニル基含有(メタ)アクリレートと、
を含有する組成物であり、
前記組成物中の(A)~(E)成分の合計量基準で、(A)を5~25質量%、(B)を5~30質量%、(C)を10~35質量%、(D)を7~27質量%、および(E)を15~40質量%含有し、(C)の含有量に対する(A)と(B)の合計含有量が、質量比[(A)+(B)]/(C)で0.8~1.5である、コンタクトレンズ用モノマー組成物の重合体であるコンタクトレンズ用重合体と、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、および2-プロパノールから選択される1種以上の溶剤を混合し、未反応物を除去する工程(1)と、
前記未反応物を除去したコンタクトレンズ用重合体を生理食塩水に浸漬して水和させる工程(2)と、を有する、
請求項1に記載のコンタクトレンズの製造方法。
【化4】
【化5】
【化6】
[式(3)中、R
1
は水素原子またはメチル基である。mは0または1、nは5~20である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ用モノマー組成物、その重合体、ならびに当該重合体を有する、優れた機械的強度と適度な含水率により取り扱いが容易で装用感が良好なコンタクトレンズおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来型のヒドロゲルコンタクトレンズは目の角膜への酸素供給量が不十分であり、長時間装用時の安全性に問題があった。この欠点を解決し、安全性を向上させたコンタクトレンズとして、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが開発されている。しかし、コンタクトレンズの製造方法上の点で、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面を親水性にすることが困難であるという問題点を有している。すなわち、ソフトコンタクトレンズの一般的製造方法である、ポリプロピレン製モールドを使用したキャストモールド法でシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した場合、ポリプロピレンが疎水性であるため、原料のシリコーンモノマーがモールドとの界面に配向した状態で重合される。その結果、レンズ表面にシリコーン重合体部が存在することになり、そのため、レンズ表面の親水性が小さくなる。
【0003】
ソフトコンタクトレンズ表面の親水性が十分でない場合は脂質、タンパク質付着によるレンズの白濁や、付着物による眼疾患の懸念がある。そのため、親水性が不十分なシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、レンズの形成後にその表面へのプラズマガスや親水性ポリマーによるコーティングや、親水性モノマーによる表面グラフトポリマーの形成がなされている。しかし、これらの表面処理は、表面処理を必要としない場合と比較し、ソフトコンタクトレンズを製造するための多くの装置および工程を必要とするため、量産化において望ましくない。
【0004】
特許文献1には、(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンモノマー、ビニル基を有する親水性モノマー、架橋性モノマー、および10時間半減期温度が70℃~100℃の重合開始剤を含むシリコーンヒドロゲル用組成物からレンズを製造する方法が開示されている。特許文献1は、原料モノマーの重合性の差を利用してレンズ表面の親水性の向上を狙いとしているが、やはり、満足のいく親水性は得られない。
【0005】
特許文献2には、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)と、ジメタクリロイルシリコーンマクロマーと、(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(SiGMA)とを含む組成物から得られるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが開示されている。
しかし、特許文献2に係るコンタクトレンズは、レンズ表面の親水性に改善が見られるものの、酸素透過性が低下するという問題がある。
【0006】
特許文献3、4には一級水酸基を有するシロキサニル基含有イタコン酸ジエステルモノマーと、MPCとを含む組成物が開示されており、その重合体がコンタクトレンズに利用できることが記載されている。
特許文献3に係るコンタクトレンズは、レンズ表面の親水性及び酸素透過性の点で良好な結果が得られており、特許文献4に係るコンタクトレンズは、これらに加えて破断伸びと剥離性の点でも良好な結果が得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/001811号
【文献】特開2014-089477号公報
【文献】国際公開第2018/135421号
【文献】国際公開第2020/054711号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3及び4に係るコンタクトレンズは、レンズ表面の親水性及び酸素透過性の点で良好であるものの、MPCおよびその他の親水性モノマーを多く含有することから含水率が高く、長時間の装用で乾燥感を感じ易い懸念がある。また、適度な含水率に調整するため、シリコーンモノマーの含有量を高くすると、機械的強度が悪化して、長期間の装用で異物感を感じ易いことや、コンタクトレンズの取り扱いが困難となる懸念がある。
【0009】
そこで本発明の課題は、MPCと親水性モノマーを多く含有する場合でも、シリコーンモノマーの含有量を高くすることなく、適度な含水率と優れた機械的強度を有し、装用感と取り扱いが良好なコンタクトレンズ用モノマー組成物を重合させたコンタクトレンズ用重合体を使用したコンタクトレンズおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、MPCと、特定の親水性モノマー、アクリルアミド含有モノマー、シロキサニル基含有イタコン酸ジエステルモノマー、及びシロキサニル基含有(メタ)アクリレートを、それぞれ特定範囲の量で配合したモノマー組成物をコンタクトレンズ用原料として使用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明によれば、(A)式(1)で表されるホスホリルコリン基含有メタクリルエステルモノマーと、(B)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルおよびN-ビニルピロリドンから選択される1種以上の親水性モノマーと、(C)N,N-ジメチルアクリルアミドおよびN,N-ジエチルアクリルアミドから選択される1種以上のアクリルアミド含有モノマーと、(D)式(2)で表されるシロキサニル基含有イタコン酸ジエステルモノマーと、(E)式(3)で表されるシロキサニル基含有(メタ)アクリレートと、を含有する組成物であり、前記組成物中の(A)~(E)成分の合計量基準で、(A)を5~25質量%、(B)を5~30質量%、(C)を10~35質量%、(D)を7~27質量%、および(E)を15~40質量%含有し、(C)の含有量に対する(A)と(B)の合計含有量が、質量比[(A)+(B)]/(C)で0.8~1.5である、コンタクトレンズ用モノマー組成物の重合体であるコンタクトレンズ用重合体の水和物を有するコンタクトレンズであり、含水率が45%以下、モジュラスが0.3MPa~0.7MPa、破断伸びが200%以上のコンタクトレンズが提供される。
【0012】
【0013】
【0014】
【化3】
[式(3)中、R1は水素原子またはメチル基である。mは0または1、nは5~20である。]
【0016】
さらに、別の観点の本発明によれば、本発明のコンタクトレンズの製造方法が提供される。
【0017】
すなわち本発明は、以下の[1]~[
3]に関する。
[1](A)式(1)で表されるホスホリルコリン基含有メタクリルエステルモノマーと、(B)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルおよびN-ビニルピロリドンから選択される1種以上の親水性モノマーと、(C)N,N-ジメチルアクリルアミドおよびN,N-ジエチルアクリルアミドから選択される1種以上のアクリルアミド含有モノマーと、(D)式(2)で表されるシロキサニル基含有イタコン酸ジエステルモノマーと、(E)式(3)で表されるシロキサニル基含有(メタ)アクリレートと、を含有する組成物であり、前記組成物中の(A)~(E)成分の合計量基準で、(A)を5~25質量%、(B)を5~30質量%、(C)を10~35質量%、(D)を7~27質量%、および(E)を15~40質量%含有
し、(C)の含有量に対する(A)と(B)の合計含有量が、質量比[(A)+(B)]/(C)で0.8~1.5である、コンタクトレンズ用モノマー組成物
の重合体であるコンタクトレンズ用重合体の水和物を有するコンタクトレンズであり、含水率が45%以下、モジュラスが0.3MPa~0.7MPa、破断伸びが200%以上のコンタクトレンズ。
【化4】
【化5】
【化6】
[式(3)中、R
1は水素原子またはメチル基である。mは0または1、nは5~20である。]
[2]前記組成物が、さらに(F)前記(A)~(E)以外のモノマーを、(A)~(E)成分の合計量100質量部に対して、30質量部以下含有する、上記[1]に記載のコンタクトレン
ズ。
[
3]
(A)式(1)で表されるホスホリルコリン基含有メタクリルエステルモノマーと、(B)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルおよびN-ビニルピロリドンから選択される1種以上の親水性モノマーと、(C)N,N-ジメチルアクリルアミドおよびN,N-ジエチルアクリルアミドから選択される1種以上のアクリルアミド含有モノマーと、(D)式(2)で表されるシロキサニル基含有イタコン酸ジエステルモノマーと、(E)式(3)で表されるシロキサニル基含有(メタ)アクリレートと、を含有する組成物であり、前記組成物中の(A)~(E)成分の合計量基準で、(A)を5~25質量%、(B)を5~30質量%、(C)を10~35質量%、(D)を7~27質量%、および(E)を15~40質量%含有し、(C)の含有量に対する(A)と(B)の合計含有量が、質量比[(A)+(B)]/(C)で0.8~1.5である、コンタクトレンズ用モノマー組成物の重合体であるコンタクトレンズ用重合体と、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、および2-プロパノールから選択される1種以上の溶剤を混合し、未反応物を除去する工程(1)と、前記未反応物を除去したコンタクトレンズ用重合体を生理食塩水に浸漬して水和させる工程(2)と、を有する、
上記[1]に記載のコンタクトレンズの製造方法。
【化6-1】
【化6-2】
【化6-3】
[式(3)中、R
1
は水素原子またはメチル基である。mは0または1、nは5~20である。]
【発明の効果】
【0018】
本発明のコンタクトレンズ用モノマー組成物は、(A)~(E)成分を特定割合で必須として含有するので、その重合体により、適度な含水率と優れた機械的強度を有し、装用感と取り扱いが良好なシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得ることができる。また、本発明のコンタクトレンズの製造方法によれば、上記優れた性能のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のコンタクトレンズ用モノマー組成物は、(A)式(1)で表されるホスホリルコリン基含有メタクリルエステルモノマー[(A)成分]と、(B)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルおよびN-ビニルピロリドンから選択される1種以上の親水性モノマー[(B)成分]と、(C)N,N-ジメチルアクリルアミドおよびN,N-ジエチルアクリルアミドから選択される1種以上のアクリルアミド含有モノマー[(C)成分]と、(D)式(2)で表されるシロキサニル基含有イタコン酸ジエステルモノマー[(D)成分]と、(E)式(3)で表されるシロキサニル基含有(メタ)アクリレート[(E)成分]と、を特定割合で含有する組成物であることを特徴とする。以後、本発明のコンタクトレンズ用モノマー組成物を、単に、本発明の組成物と称することもある。
本発明の組成物は、さらに、(F)上記(A)~(E)以外のモノマー[(F)成分]、ならびに(G)水酸基を有する溶剤[(G)成分]から選択される1種以上の成分を特定量含有してもよい。また、本発明の組成物は、(H)重合開始剤[(H)成分]を含有してもよい。
本発明の組成物は、必須成分として上記(A)~(E)成分、および任意成分として(F)~(H)成分を含有する均一な透明液体である。
【0020】
(A)成分;ホスホリルコリン基含有メタクリルエステルモノマー
(A)成分は式(1)で表されるホスホリルコリン基含有メタクリルエステルモノマーであり、具体的には2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)である。(A)成分を含有することにより、本発明の組成物の重合体から製造されるコンタクトレンズの、表面の親水性と潤滑性を良好にすることができる。
【化7】
【0021】
(A)成分の含有量は、本発明の組成物中のモノマー(A)~(E)成分の合計量基準で5~25質量%であり、好ましくは8~20質量%であり、8~18質量%がより好ましい。5質量%未満では、コンタクトレンズの表面の十分な親水性が得られず、25質量%超では、本発明の組成物中への(A)成分の溶解が困難となり、また、コンタクトレンズの機械的強度の低下が懸念される。
【0022】
(B)成分;親水性モノマー
(B)成分は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルおよびN-ビニルピロリドンから選択される1種以上の親水性モノマーである。(B)成分を所定量含有することにより、得られるコンタクトレンズの機械的強度が良好となる。
(B)成分の具体例としては、N-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノビニルエーテル、およびジエチレングリコールモノビニルエーテルが挙げられ、最終的に得られるコンタクトレンズへの取り込まれやすさの観点から、N-ビニルピロリドンや2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。(B)成分は、これらのモノマーのいずれか1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」および「(メタ)アクリルエステル」は、各々アクリレートおよび/またはメタクリレート、アクリルエステルおよび/またはメタクリルエステルを意味するものとする。
【0023】
(B)成分の含有量は、本発明の組成物中のモノマー(A)~(E)成分の合計量基準で5~30質量%であり、好ましくは5~25質量%であり、10~25質量%がより好ましい。5質量%未満では、得られるコンタクトレンズが脆くなる懸念があり、30質量%超では、含水率が高くなる懸念がある。
【0024】
(C)成分;アクリルアミド含有モノマー
(C)成分は、(C)N,N-ジメチルアクリルアミドおよびN,N-ジエチルアクリルアミドから選択される1種以上のアクリルアミド含有モノマーである。(C)成分を所定量含有することにより、得られるコンタクトレンズは適度な含水率に調整することができる。
【0025】
(C)成分の含有量は、本発明の組成物中のモノマー(A)~(E)成分の合計量基準で10~35質量%であり、好ましくは10~30質量%であり、15~30質量%がより好ましい。10質量%未満では、得られるコンタクトレンズの含水率が高くなる懸念があり、35質量%超では酸素透過性が低下する懸念がある。
【0026】
(C)成分の含有量に対する(A)成分と(B)成分の合計含有量は、質量比[(A)成分+(B)]/(C)成分で0.8~3.5が好ましく、より好ましくは0.8~2.5であり、更に好ましくは0.8~1.5である。質量比を0.8~3.5とすることで、適度な含水率と良好な機械的強度を有するコンタクトレンズが得られやすくなる。
【0027】
(D)成分;シロキサニル基含有イタコン酸ジエステルモノマー
(D)成分は、式(2)で表されるシロキサニル基含有イタコン酸ジエステルモノマーである。(D)成分は、製造されるコンタクトレンズの酸素透過性の向上および透明性に寄与する成分である。
【化8】
【0028】
(D)成分の含有量は、本発明の組成物中のモノマー(A)~(E)成分の合計量基準で7~27質量%であり、好ましくは7~25質量%であり、10~22質量%がより好ましい。7質量%未満では、本発明の組成物中への(A)成分の溶解が困難となる可能性や、得られるコンタクトレンズ用重合体が白濁する可能性があり、27質量%超では、コンタクトレンズの破断伸びが低下する懸念がある。
【0029】
(E)成分;シロキサニル基含有(メタ)アクリレート
(E)成分は、式(3)で表されるシロキサニル基含有(メタ)アクリレートである。(E)成分は、製造されるコンタクトレンズの酸素透過性の向上と機械的強度との調節に寄与する成分である。
【化9】
[式(3)中、R
1は水素原子またはメチル基である。mは0または1であり、nは5~20である。]
【0030】
(E)成分の含有量は、本発明の組成物中のモノマー(A)~(E)成分の合計量基準で15~40質量%であり、好ましくは15~35質量%であり、20~35質量%がより好ましい。15質量%未満では、コンタクトレンズの酸素透過性が低下する懸念があり、40質量%超では、コンタクトレンズの機械的強度が低下する懸念がある。
【0031】
(D)成分と(E)成分の合計含有量は、本発明の組成物中のモノマー(A)~(E)成分の合計量基準で35~60質量%が好ましく40~55質量%がより好ましい。(D)成分と(E)成分の合計含有量を35質量%以上とすることで、得られるコンタクトレンズの酸素透過性が良好になる。また、60質量%以下とすることで、得られるコンタクトレンズの機械的強度が良好になり、コンタクトレンズの取り扱いが容易になる。
【0032】
(F)成分;(A)~(E)以外のモノマー
(F)成分は、(A)~(E)以外のモノマーである。(F)成分は任意成分であり、得られるコンタクトレンズの物性の調整や耐溶剤性の向上等を目的として配合することができる。
(F)成分の例としては、N-ビニルピペリジン-2-オン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-カプロラクタム、アクリロイルモルホリン、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリル酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、3- (メタクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシリルオキシ)シラン、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールメタクリレートなどのモノマーや、式(4)で表されるシリコーンジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、メチレンビスアクリルアミド、アリルメタクリレート、(2-アリルオキシ)エチルメタクリレート、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルメタクリレート、およびジビニルベンゼンなどの架橋剤が挙げられる。
(F)成分は、これらのモノマーのいずれか1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
【化10】
[式(4)中、p,rはそれぞれ0または1である。qは5~20である。]
【0033】
(F)成分を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、本発明の組成物中のモノマー(A)~(E)成分の合計量100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、より好ましくは20質量部以下で、15質量部以下がさらに好ましい。30質量部以下であれば、得られるコンタクトレンズの表面親水性や機械的強度を損なうことなく物性の調整等が行える。さらに、(F)成分に架橋剤を有する場合、架橋剤の含有量は、本発明の組成物中のモノマー(A)~(E)成分の合計量100質量部に対して、0.1~3質量部が好ましく、0.1~2質量部がより好ましい。0.1~2質量部であれば、機械的強度を損なうことなく耐溶剤性を向上できる。
【0034】
(G)成分;溶剤
(G)成分は、水酸基を有する溶剤である。(G)成分は任意成分であり、(A)成分の本発明の組成物中への溶解性をより良好にする目的で配合してもよい。(G)成分としては、アルコール類、カルボン酸類が挙げられる。水酸基を有する溶剤を用いることにより本発明の組成物中での(A)成分の溶解速度が高くなり、その溶解が容易になるという利点を有する。アルコール類の例としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、tert-アミルアルコール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、1-デカノール、1-ドデカノールなどが挙げられる。
カルボン酸類の例としては、グリコール酸、乳酸、および酢酸などが挙げられる。 (G)成分は、これら溶剤のいずれか1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。(A)成分の溶解性の点、および本発明の組成物のpH安定性の点において、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールおよび1-ヘキサノールから選択される1種以上が特に好ましい。
【0035】
(G)成分を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、本発明の組成物中のモノマー(A)~(E)成分の合計量100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。15質量部以下であれば、得られるコンタクトレンズの含水率や機械的強度を損なうことなく、(A)成分の溶解を容易にする。
【0036】
本発明の組成物は、(H)重合開始剤[(H)成分]を含有する組成物であってもよい。(H)成分を含有する場合、本発明の組成物の保管等に留意が必要であるが、本発明の組成物を加熱等するだけで本発明のコンタクトレンズ用重合体が安定した品質で簡便に得られるという利点がある。
(H)成分としては、特に限定されないが、公知の熱重合開始剤を用いることができる。
(H)成分の例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル 2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドレート、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジハイドレート、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-{1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル}プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などのアゾ系重合開始剤、およびベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシヘキサノエート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
(H)成分として、これら重合開始剤のいずれか1種類を配合しても、2種類以上を配合してもよい。(H)成分としては、安全性と入手性の点でアゾ系重合開始剤が好ましく、反応性の面から、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル 2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、および2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)が特に好ましい。
【0037】
(H)成分を含有する場合、その含有量は、本発明の組成物中のモノマー(A)~(E)成分の合計量100質量部に対して0.1~3質量部が好ましく、0.2~1質量部がより好ましい。0.1質量部未満の場合、本発明の組成物の重合性が不十分で、(H)成分を配合する利点が得られないおそれがある。3質量部超では、重合により得られるコンタクトレンズ用重合体を洗浄してコンタクトレンズを製造するときに、(H)成分の反応分解物の抽出除去が不十分になるおそれがある。
【0038】
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、各成分を任意の順または一括して撹拌(混合)装置に投入して、40℃以下で各配合成分が均一になるまで撹拌混合することにより製造することができる。ただし、(H)成分を含む場合は混合時に重合反応が開始するのを避けるために、(H)成分が熱重合開始剤である場合、40℃以下で、かつ、開始剤の10時間半減期温度よりも10℃以上低い温度で混合するのが好ましい。 本発明の組成物中での(A)成分の溶解性が良好となる点において、(A)成分、(B)成分および(D)成分の3成分を混合溶解した後、他の成分を添加して混合することが好ましい。
【0039】
本発明の組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で上記成分以外の成分(他成分)を含有させることができる。他成分としては、重合性紫外線吸収剤、および着色剤としての重合性色素などが挙げられる。紫外線吸収剤を配合することにより、日光などの紫外線による目の負担を低減できる。また、色素を配合することにより、カラーコンタクトレンズとすることができる。
本発明の組成物中の他成分の含有量は、本発明の組成物中のモノマー(A)~(E)成分の合計量100質量部に対して、各々5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
【0040】
本発明のコンタクトレンズ用重合体は、上記説明した本発明の組成物の重合体であり、該組成物が(H)成分を含まない場合は、重合開始剤を添加して重合反応を行うことが好ましい。添加する重合開始剤としては、(H)成分して例示した開始剤を用いることができる。
また、本発明の組成物が(H)成分を含有する場合、本発明のコンタクトレンズ用重合体は(H)成分を含有している。
【0041】
次に、本発明のコンタクトレンズ用重合体の製造方法の実施形態について説明する。なお、以下に示す製造方法は、本発明のコンタクトレンズ用重合体を得るための1実施形態であり、本発明のコンタクトレンズ用重合体を当該製造方法によって得られる重合体に限定するものではない。
以後、特に断らない限り、「組成物」と称した場合は本発明の組成物を指し、「重合体」と称した場合は本発明のコンタクトレンズ用重合体を指すものとする。
【0042】
重合体は、ポリプロピレン製などの疎水性表面を有するモールド(金型)を用い、組成物を該モールドに充填して重合させることにより製造する。(H)成分を含まない組成物の場合は、(H)成分と同様の重合開始剤を、(H)成分の配合量と同程度になるように組成物に添加してモールドに充填する。
重合は、使用する重合開始剤の分解温度に合わせて45~140℃で1時間以上反応させる。重合終了後、60℃以下まで冷却し、製造された重合体をモールドから取り出す。
【0043】
重合雰囲気は特に限定されないが、窒素またはアルゴン等の不活性ガス雰囲気とすることが、重合率が向上する点で好ましい。当該不活性ガス雰囲気とする方法としては、組成物への不活性ガスの通気や、モールドへの組成物充填場所を当該雰囲気とする方法を例示できる。
【0044】
モールド内の圧力は、大気圧~微加圧でよく、不活性ガス雰囲気で重合する場合には、ゲージ圧で1kgf/cm2以下の圧力であることが好ましい。
【0045】
本発明のコンタクトレンズはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであり、上記重合体の水和物である。ここで、水和物とは水を含んでいることを意味し、重合体が含水してヒドロゲル形態を示しているものが本発明のコンタクトレンズ、すなわち、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。ただし、重合体中には未反応物や副生物等、および任意に(G)溶剤が含まれているので、水和の前に、重合体を洗浄等により精製する。
以後、特に断らない限り、「コンタクトレンズ」と称した場合は本発明のコンタクトレンズを指すものとする。
本明細書中において、「シリコーンヒドロゲル」とは、重合体中にシリコーン部を有するヒドロゲルのことをいう。本発明の組成物はシリコーン含有モノマーである(D)および(E)成分を含有するので、その重合体は重合体中にシリコーン部を有しており、水和(含水)させることによりシリコーンヒドロゲルを形成できる。
【0046】
コンタクトレンズの含水率は、実施例で詳述する含水率測定において、45%以下であることが好ましく、より好ましくは42%以下であり、40%以下がさらに好ましい。含水率を45%以下とすることで、長時間の装用であってもコンタクトレンズの乾燥感を感じにくくなる。また、コンタクトレンズの機械的強度は、実施例に記述する機械的強度測定において、モジュラスが0.3MPa~0.7MPa且つ破断伸びが200%以上であることが好ましい。モジュラスを0.3MPa~0.7MPa且つ破断伸びを200%以上とすることで、長時間の装用であってもコンタクトレンズの異物感を感じにくく、コンタクトレンズの取り扱いを容易にする。なお、「適度な含水率」とは、実施例で詳述する含水率測定において45%以下の含水率であることを指す。また「優れた機械的強度」とは実施例で詳述する機械的強度測定においてモジュラスが0.3~0.7MPa且つ破断伸びが200%以上であることを指す。
【0047】
次に、本発明のコンタクトレンズの製造方法の実施形態について説明する。なお、以下に示す製造方法は、本発明のコンタクトレンズを得るための1実施形態であり、本発明のコンタクトレンズを当該製造方法によって得られるコンタクトレンズに限定するものではない。
【0048】
本発明のコンタクトレンズの製造方法は、コンタクトレンズ用重合体と、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、および2-プロパノールから選択される1種以上の溶剤を混合し、未反応物を除去する工程(1)と、前記未反応物を除去したコンタクトレンズ用重合体を生理食塩水に浸漬して水和させる工程(2)と、を有することが好ましい。
【0049】
上記工程(1)は、モールドから取り出した重合体を、溶剤で洗浄して未反応モノマー等の未反応物および不純物を除去することにより精製する工程である。溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールまたはそれらの混合物を使用することができる。洗浄は、例えば、重合体を10~40℃下で、上記アルコールに10分間~5時間浸漬し、次に水に10分間~5時間浸漬する、等のように実施できる。また、アルコール洗浄と水洗浄との間に、アルコール濃度20~50wt%の含水アルコールに10分間~5時間浸漬する洗浄を加えてもよい。水としては、純水、イオン交換水等が好ましい。
【0050】
上記工程(2)は、洗浄により未反応物等を除去して精製した重合体を、生理食塩水に浸漬し、所定量の含水率となるように水和させることによってコンタクトレンズを得る工程である。生理食塩水としては、ホウ酸緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水を使用してもよい。これらの生理食塩水は、ソフトコンタクトレンズ用保存液に使用されているので、重合体をソフトコンタクトレンズ用保存液に浸漬して水和させてもよい。これらの生理食塩水の浸透圧は250~400mOms/kgであることが水和の点で好ましい。
【0051】
本発明のコンタクトレンズは、レンズ表面の親水性が良好で、脂質等の汚れが付着しにくく、また、付着した場合でも洗浄除去が容易であり、かつ機械的強度に優れているので、所望により通常の使用形態で1カ月程度使用することができる。当然ながら、それより短期間で交換してもよい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
以下に実施例および比較例の組成物を構成する成分を示す。
(A)成分;ホスホリルコリン基含有メタクリルエステルモノマー
MPC:(2-メタクリロイルオキシエチル)ホスホリルコリン
【0054】
(B)成分;親水性モノマー
・NVP:N-ビニルピロリドン
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
・HPMA:2-ヒドロキシプロピルメタクリレート
・HBMA:2-ヒドロキシブチルメタクリレート
・EGMV:エチレングリコールモノビニルエーテル
・DEGMV:ジエチレングリコールモノビニルエーテル
【0055】
(C)成分;アクリルアミド含有モノマー
・DMAA:N,N-ジメチルアクリルアミド
・DEAA:N,N-ジエチルアクリルアミド
【0056】
(D)成分;シロキサニル基含有イタコン酸ジエステルモノマー
・ETS:式(2)の化合物
【0057】
(E)成分;シロキサニル基含有メタクリレート
・X-22-174ASX:式(3)において、R1がメチル基、mが0である化合物[数平均分子量(Mn);約900]
【0058】
(F)成分;(A)~(E)以外のモノマー
・MMA:メチルメタクリレート
・SiGMA:メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールメタクリレート
・EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
・TEGDV:トリエチレングリコールジビニルエーテル
・X-22-164AS:式(4)において、p=r=0である化合物[数平均分子量(Mn);約900]
【0059】
(G)成分;溶剤
・NPA:1-プロパノール(ノルマルプロピルアルコール)
・HeOH:1-ヘキサノール(ノルマルヘキサノール)
【0060】
(H)成分;重合開始剤
・AIBN:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(10時間半減期温度:65℃)
【0061】
各実施例および比較例の組成物、重合体およびコンタクトレンズ(モデルコンタクトレンズ)について、以下の評価項目によって評価した。以後、各評価項目及び各表での「コンタクトレンズ(モデルコンタクトレンズ)」とは、各々実施例だけでなく、比較例に係るものも含む。
【0062】
[重合体の透明性]
重合体の透明性を目視により以下の基準で評価した。
○:透明
△:微濁
×:白濁
【0063】
[コンタクトレンズの透明性]
重合体を精製した後、ISO-18369-3に記載の生理食塩水中に浸漬し、膨潤させて得られるヒドロゲルをモデルコンタクトレンズとし、目視により以下の基準で評価した。
○:透明
△:微濁
×:白濁
【0064】
[コンタクトレンズの機械的強度測定]
モデルコンタクトレンズの機械的強度の評価のため、山電社製BAS-3305(W)破断強度解析装置を用い、JIS-K7127にしたがってモジュラス(MPa)を測定した。ロードセルは2Nのものを使用した。測定試料として、モデルコンタクトレンズを幅2mmに切断したものを用い、クランプ間6mmとして1mm/秒の速度で引張り、初期の応力からモジュラスを測定した。また、サンプルが破断するまでの距離を測定し、サンプル長6mmに対する伸び率を破断伸び[%]とした。モジュラスおよび破断伸びは以下の範囲にて記号で併せて表記した。
モジュラス[MPa]
◎:0.4以上0.6以下
〇:0.3以上0.4未満、又は0.6超0.7以下
×:0.3未満、又は0.7超
破断伸び[%]
◎:250以上
〇:200以上250未満
×:200未満
【0065】
[コンタクトレンズの含水率]
モデルコンタクトレンズの含水率はISO18369-4に記載の手法に従って測定した。含水率[%]は以下の範囲にて記号で併せて表記した。
◎:30以上40以下
〇:40超45以下
△:45超55以下
×:55超
【0066】
[コンタクトレンズの酸素透過係数]
モデルコンタクトレンズの酸素透過係数はISO18369-4に記載の手法に従って測定した。酸素透過係数は以下の範囲にて記号で併せて表記した。
◎:85以上
〇:70以上85未満
×:70未満
【0067】
[実施例1]
MPC 0.50g(10質量%)、HPMA 0.45g(9質量%)、ETS 1.05g(21質量%)、EGDMA 0.05g(1質量部)、NPA 0.40g(8質量部)を容器中で混合し、室温下で、MPCが溶解するまで撹拌した。さらに、NVP 0.25g(5質量%)、DEAA 1.25g(25質量%)、X-22-174ASX 1.50g(30質量%)、AIBN 0.03g(0.6質量部)を容器に添加し、室温下で、均一になるまで撹拌して組成物を得た。 組成物を、厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートシートをスペーサーとして2枚のポリプロピレン板の間に挟みこんだ25mm×70mm×0.2mmのセル内およびレンズ成形型に流し込み、オーブン内の窒素置換を行った。次いで、95℃まで昇温し、95℃で4時間維持することで組成物を重合させて重合体を得た。重合体をセルおよびレンズ成形型から取り出した。
重合体を、50wt%2-プロパノール水溶液 100gに4時間浸漬後、イオン交換水 100gに4時間浸漬して未反応物等を除去して精製した。精製後の重合体を、ISO-18369-3に記載の生理食塩水中に浸漬し、膨潤(水和)させてモデルコンタクトレンズを調製した。
得られたモデルコンタクトレンズを上記各評価に適するサイズおよび形状に分割し、各評価を行った。
組成物中の各成分の配合割合、重合条件、および各評価結果を表1に示す。なお、表中の「その他成分」の欄における各成分の数値は、(A)~(E)成分の合計量100質量部に対する質量部数を示す。
【0068】
[実施例2~8]
組成物中の各成分の配合割合、および重合条件を表1に示した通りとした以外は、実施例1と同様にして、各実施例のモデルコンタクトレンズを調製した。また、各実施例のモデルコンタクトレンズについて実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0069】
[比較例1]
MPC 1.25g(25質量%)、EGMV 1.00g(20質量%)、ETS 1.10g(22質量%)、NPA 0.75g(15質量部)を容器中で混合し、室温下で、MPCが溶解するまで撹拌した。さらに、NVP 0.5g(10質量%)、X-22-174ASX 1.15g(23質量部)、X-22-164AS 0.15g(3質量部)、 AIBN 0.035g(0.7質量部)を容器に添加し、室温下で、均一になるまで撹拌して比較例1の組成物を得た。
比較例1の組成物を、厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートシートをスペーサーとして2枚のポリプロピレン板の間に挟みこんだ25mm×70mm×0.2mmのセル内およびレンズ成形型に流し込み、オーブン内の窒素置換を行った。次いで、65℃まで昇温し、65℃で2時間維持した後、100℃まで昇温し、100℃で2時間維持することで組成物を重合させて重合体を得た。重合体をセルおよびレンズ成形型から取り出した。
重合体を、50wt%2-プロパノール水溶液 100gに4時間浸漬後、イオン交換水 100gに4時間浸漬して未反応物等を除去して精製した。精製後の重合体を、ISO-18369-3に記載の生理食塩水中に浸漬し、膨潤(水和)させてモデルコンタクトレンズを調製した。
得られたモデルコンタクトレンズを上記各評価に適するサイズおよび形状に分割し、各評価を行った。
比較例1の組成物中の各成分の配合割合、重合条件、および各評価結果を表2に示す。
比較例1のコンタクトレンズは、各実施例のコンタクトレンズと比較して含水率が劣っていた。
【0070】
[比較例2~4]
各比較例の組成物中の各成分の配合割合、および重合条件を表2に示した通りとした以外は、比較例1と同様にして、各比較例用の組成物、重合体、およびモデルコンタクトレンズの調製を試みた。評価結果を表2に示す。
比較例2のコンタクトレンズは、各実施例のコンタクトレンズと比較して含水率が劣っていた。比較例3のコンタクトレンズは、各実施例のコンタクトレンズと比較して機械的強度が劣っていた。比較例4のコンタクトレンズは、各実施例のコンタクトレンズと比較して、透明性が劣っており、以降の評価は実施できなかった。
【0071】
【0072】