(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ブローバイガスリーク診断装置
(51)【国際特許分類】
F01M 13/00 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
F01M13/00 K
F01M13/00 E
(21)【出願番号】P 2020219565
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】小牧 親夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮太
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-184935(JP,A)
【文献】特開2018-168824(JP,A)
【文献】特開2020-183737(JP,A)
【文献】特許第6270890(JP,B2)
【文献】国際公開第2021/176501(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/245770(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのクランクケースと前記エンジンのインテークマニホールドにおけるスロットル弁より下流側とを連通する第1のPCV流路と、
前記エンジンの前記クランクケースと前記インテークマニホールドにおける前記スロットル弁よりも上流側とを連通する第2のPCV流路と、
前記エンジンの前記クランクケースと前記インテークマニホールドにおける前記スロットル弁よりも上流側とを連通する新気導入路と、
を含み、前記第1のPCV流路のリークを診断するブローバイガスリーク診断装置であって、
前記第1のPCV流路内の圧力を測定する圧力測定部と、
前記第1のPCV流路を開閉する第1のバルブと、
前記第2のPCV流路を開閉する第2のバルブと、
前記新気導入路を開閉する第3のバルブと、
前記第3のバルブの開度を制御するバルブ制御部と、
前記第1のPCV流路内のリークを診断するリーク診断部と、
を備え、
前記バルブ制御部は、前記インテークマニホールドにおける前記スロットル弁よりも下流側が負圧であって前記第2のバルブが閉状態である場合に、前記第3のバルブの開度を制御し、
前記リーク診断部は、前記圧力測定部により測定された圧力に基づいて前記第1のPCV流路におけるリークの有無の診断を行
い、
前記リーク診断部は、
前記第3のバルブを開状態としたときの前記エンジン内の第1の圧力を測定するとともに、前記第3のバルブを閉状態としたときの前記エンジン内の第2の圧力を測定し、
各測定後において前記第1の圧力と前記第2の圧力との差圧を算出し、当該差圧が閾値以上とならない場合に前記第1のPCV流路にリークが発生していると診断する
ブローバイガスリーク診断装置。
【請求項2】
前記第1のバルブ及び前記第2のバルブは一方向排出弁であり、
前記第3のバルブは電磁弁である
請求項1に記載のブローバイガスリーク診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブローバイガスリーク診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンには、燃焼室からシリンダとピストンとの隙間を通ってクランクケース内に漏れ出したブローバイガスを排出するために、クランクケース内のブローバイガスをインテークマニホールド(吸気経路)に戻すためのブローバイガス処理装置が設けられている。
【0003】
一般的なブローバイガス処理装置は、インテークマニホールドのスロットル弁よりも上流側とクランクケースとを連通する新気導入路と、インテークマニホールドのスロットル弁よりも下流側とクランクケースとを連通するブローバイガス経路とを備える。新気導入路には流路の開閉を制御するリーク検出用バルブが設けられ、ブローバイガス経路には開度の調整が可能な逆止弁が設けられている。
【0004】
ブローバイガス処理装置によれば、高負荷領域を除く通常の運転条件下において、新気導入路を通して新気がクランクケース内に導入され、クランクケース内が換気される。また、インテークマニホールドで負圧が発生することでブローバイガス経路の逆止弁が開弁状態となり、クランクケース内のブローバイガスがインテークマニホールドへ流入し、エンジン内部へ還流される。
【0005】
ここで、ブローバイガス処理装置において、ブローバイガス流路の損傷、劣化等によりブローバイガス流路にリークが発生する場合がある。この場合には、ブローバイガスがブローバイガス流路から大気へ放出されてしまう虞があるため、ブローバイガス流路でリークが発生したか否かを検出する必要がある。そこで、特許文献1には、エンジンの低負荷運転時において、新気導入路のリーク検出用バルブを閉鎖した後のクランクケース内の圧力を測定し、この圧力に基づいてブローバイガス流路のリークを検出するリーク検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のリーク検出装置等では、エンジンの高負荷運転時において、インテークマニホールドのスロットル弁下流側は正圧となり、ブローバイガス流路の逆止弁は閉弁状態となる。これにより、クランクケース内のブローバイガスは、過給機上流側に連通する新気導入路を通してエンジンに還流し、その際に新気導入路のリーク検出用バルブ付近に固着物(デポジット)として滞留してしまう虞がある。この場合には、リーク検出用バルブが劣化し、リーク検出用バルブを用いたブローバイガス流路のリーク診断を正確に実施できない場合がある。
【0008】
そこで、本開示は、上記課題を解決するものであり、エンジンの高負荷駆動時においてクランクケース内から排出されるブローバイガスが新気導入路に導入されることを防止し、ブローバイガス経路におけるリーク診断の精度を向上させることが可能なリーク診断装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のブローバイガスリーク診断装置の一つの態様は、エンジンのクランクケースと前記エンジンのインテークマニホールドにおけるスロットル弁より下流側とを連通する第1のPCV(Positive Crankcase Ventilation)流路と、前記エンジンの前記クランクケースと前記インテークマニホールドにおける前記スロットル弁よりも上流側とを連通する第2のPCV流路と、前記エンジンの前記クランクケースと前記インテークマニホールドにおける前記スロットル弁よりも上流側とを連通する新気導入路と、を含み、前記第1のPCV流路のリークを診断するブローバイガスリーク診断装置であって、前記第1のPCV流路内の圧力を測定する圧力測定部と、前記第1のPCV流路を開閉する第1のバルブと、前記第2のPCV流路を開閉する第2のバルブと、前記新気導入路を開閉する第3のバルブと、前記第3のバルブの開度を制御するバルブ制御部と、前記第1のPCV流路内のリークを診断するリーク診断部と、を備え、前記バルブ制御部は、前記インテークマニホールドにおける前記スロットル弁よりも下流側が負圧であって前記第2のバルブが閉状態である場合に、前記第3のバルブの開度を制御し、前記リーク診断部は、前記圧力測定部により測定された圧力に基づいて前記第1のPCV流路におけるリークの有無の診断を行う。
【発明の効果】
【0010】
本開示のブローバイガスリーク診断装置の一つの態様によれば、エンジンの高負荷駆動時においてクランクケース内のブローバイガスを新気導入路ではなく、第2のPCV流路に導入させるので、新気導入路に設けられた第3のバルブにブローバイガスを含む固着物が滞留することを防止できる。これにより、第3のバルブの劣化を回避でき、第1のPCV流路のリーク診断の精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態に係るブローバイガスリーク診断装置を備えたエンジンの概略図である。
【
図2】
図2は、低負荷時、高負荷時及びリーク診断時における、エンジンの状態と、インテークマニホールドの圧力の状態と、第1のバルブ等の状態との関係を説明するための表である。
【
図3】
図3は、ブローバイガスリーク診断装置による第1のPCV流路のリーク診断時のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
<エンジン10の構成例>
図1は、本実施の形態に係るブローバイガスリーク診断装置100を備えたエンジン10の概略図である。なお、
図1において、エンジン10が低負荷(自然吸気)の運転領域におけるブローバイガス及び新気の流れを実線矢印で示し、エンジン10が高負荷(過給)の運転領域におけるブローバイガスの流れを太い破線矢印で示す。
【0014】
図1に示すように、内燃機関であるエンジン10は、シリンダブロック13と、シリンダブロック13の上部に設けられるシリンダヘッド14と、シリンダブロック14の下部に設けられるクランクケース12とを備える。クランクケース12の下部には、図示しないオイルパンが設けられる。シリンダブロック13の内部にはシリンダ16が設けられ、シリンダ16にはピストン18が往復動可能に設けられる。シリンダブロック13とピストン18とで囲まれた空間は、燃焼室19となっている。
【0015】
エンジン10においては、エンジン10の燃焼行程時に、燃焼室19内の圧力の上昇により、燃焼室19からピストン18の周囲の隙間を通してクランクケース12内に微量に未燃ガス(一部に既燃ガスも含む)、いわゆるブローバイガスが漏れ出す場合がある。ブローバイガスには、有害物質である窒素酸化物(NOx)等が含まれる。そのため、本実施の形態では、クランクケース12内のブローバイガスを排出するための第1のPCV流路30及び第1のバルブ32等をエンジン10に設けている。なお、第1のPCV流路30等については後述する。
【0016】
シリンダヘッド14に形成される吸気ポートにはインテークマニホールド26の下流側端部が連通し、シリンダヘッド14に形成される排気ポートにはイグゾーストマニホールド(排気通路)28の上流側端部が連通している。インテークマニホールド26には、空気の流れ方向の上流側から、エアクリーナ20、過給機22及びスロットル弁24が順番に設けられる。
【0017】
エアクリーナ20は、吸気に含まれる塵及び埃等の異物を除去する。過給機22は、例えばターボ過給機であり、イグゾーストマニホールド28中の図示しない排気タービンによって駆動されるコンプレッサである。なお、過給機22には、エンジン10の出力や電動モータ等によって駆動される機械式過給機を用いることもできる。
【0018】
スロットル弁24は、図示しない電動モータ等のアクチュエータにより開度が調整されることで、燃焼室19に供給される吸気の流量を可変する。なお、図示していないが、インテークマニホールド26の過給機22下流側に、過給により高温となった吸気を冷却するためのインタークラーを設けても良い。
【0019】
また、エンジン10には、クランクケース12内からブローバイガスを排出するための第1のPCV流路30及び第2のPCV流路40と、クランクケース12内に新気を導入するための新気導入路50とが設けられる。
【0020】
第1のPCV流路30において、一端部はエンジン10のクランクケース12に連通し、第1のPCV流路30の他端部はインテークマニホールド26におけるスロットル弁24の下流側接続部に連通している。
【0021】
第1のPCV流路30には、第1のPCV流路30を開閉し、クランクケース12内からインテークマニホールド26に向かうブローバイガスの流れのみを許容する第1のバルブ32が設けられる。第1のバルブ32は、例えばインテークマニホールド26側の負圧、具体的にはエンジン10内部とインテークマニホールド26側の前後の圧力差に応じて開度が調整される流量制御弁で構成することができる。なお、
図1では第1のバルブ32を第1のPCV流路30の経路途中に設けているが、例えば第1のバルブ32をクランクケース12との接続部に設けても良いし、インテークマニホールド26との接続部に設けても良い。
【0022】
第2のPCV流路40において、一端部はエンジン10のクランクケース12に連通し、第2のPCV流路40の他端部はインテークマニホールド26におけるスロットル弁24の上流側接続部に連通している。
【0023】
第2のPCV流路40には、第2のPCV流路40を開閉し、クランクケース12内からインテークマニホールド26に向かうブローバイガスの流れのみを許容する第2のバルブ42が設けられる。第2のバルブ42は、エンジン10内部とインテークマニホールド26側の前後の圧力差に応じて開度が調整される流量制御弁で構成することができる。なお、
図1では第2のバルブ42を第2のPCV流路40の経路途中に設けているが、例えば第2のバルブ42をクランクケース12との接続部に設けても良いし、インテークマニホールド26との接続部に設けても良い。
【0024】
新気導入路50において、一端部はエンジン10のクランクケース12に連通し、新気導入路50の他端部はインテークマニホールド26におけるスロットル弁24の上流側接続部に連通している。
【0025】
新気導入路50には、新気導入路50の流路の開閉を行う第3のバルブ52が設けられる。第3のバルブ52は、例えば電磁バルブ(ソレノイドバルブ)で構成され、後述するバルブ制御部72の制御に基づいて開度を調整することでインテークマニホールド26からクランクケース12内への新気の導入を制御できるようになっている。なお、
図1では第3のバルブ52を新気導入路50の経路途中に設けているが、例えば第3のバルブ52をクランクケース12との接続部に設けても良いし、インテークマニホールド26との接続部に設けても良い。
【0026】
制御装置70は、例えばエンジン10全体の動作を制御するECU(Engine Control Unit)で構成され、CPU(Central Processing Unit)等を含むプロセッサ、プログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)、ワークエリアとしてのRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の記憶部を含む。制御装置70は、第3のバルブ52の開度を制御するバルブ制御部72を有する。
【0027】
<ブローバイガスリーク診断装置100の構成例>
本実施の形態において、エンジン10には、第1のPCV流路30等でリークが発生しているか否かを診断するためのブローバイガスリーク診断装置100が設けられる。ブローバイガスリーク診断装置100は、上述した第1のPCV流路30、第2のPCV流路40、新気導入路50、第1のバルブ32、第2のバルブ42、第3のバルブ52及びバルブ制御部72に加えて、圧力測定部60及び制御装置70を構成するリーク診断部74を有する。
【0028】
圧力測定部60は、例えばクランクケース12に付設され、クランクケース12内の圧力を測定する。本実施の形態では、クランクケース12と第1のPCV流路30とは互いに連通しているため、クランクケース12内の圧力を測定することで第1のPCV流路30内の圧力の状態も同時に診断できる。圧力測定部60は、制御装置70に接続され、測定したクランクケース12内の圧力に応じた検出信号を制御装置70のリーク診断部74に出力する。
【0029】
バルブ制御部72は、インテークマニホールド26におけるスロットル弁24よりも下流側が負圧であって第2のバルブ42が閉状態である場合に、第3のバルブ52の開度を制御する。バルブ制御部72の機能は、上述したプロセッサ等によって実現される。
【0030】
リーク診断部74は、圧力測定部60から出力されたクランクケース12内の圧力情報に基づいて第1のPCV流路30でリークが発生しているか否かを判定する。具体的には、リーク診断部74は、圧力測定部60から取得した第3のバルブ52の開閉時におけるクランクケース12内の圧力(例えば差圧)と予め設定された閾値との比較結果に基づいて、第1のPCV流路30でリークが発生しているか否かを診断する。リーク診断部74の機能は、上述したプロセッサ等によって実現される。
【0031】
<ブローバイガスリーク診断装置100の各運転時の動作例>
図2は、低負荷時、高負荷時及びリーク診断時の各運転時における、エンジン10の状態と、インテークマニホールド26の圧力の状態と、第1のバルブ32の状態と、第2のバルブ42の状態と、第3のバルブ52の状態との関係を説明するための表である。なお、本実施の形態においてエンジン10が低負荷の状態とは、例えば過給機22が作動していない場合のエンジン10の状態である。エンジン10が高負荷の状態とは、例えば過給機22が作動している場合のエンジン10の状態である。
【0032】
図2(A)に示すエンジン10の状態が低負荷時においては、インテークマニホールド26におけるスロットル弁24下流側が、負圧となり、インテークマニホールド26における過給機22上流側よりも圧力が低くなる。この場合、第3のバルブ52は開くように制御され、インテークマニホールド26における過給機22上流側から新気導入路50を通して新気がクランクケース12内に導入され、クランクケース12内が換気される。
【0033】
同時に、インテークマニホールド26におけるスロットル弁24下流側とクランクケース12内との圧力差によって、第1のバルブ32が開弁状態となる。これにより、クランクケース12内のブローバイガスが第1のPCV流路30を通じてインテークマニホールド26におけるスロットル弁24下流側に導入(吸引)され、燃焼室19内に還流される。
【0034】
一方、インテークマニホールド26における過給機22上流側の圧力は、インテークマニホールド26におけるスロットル弁24下流側の圧力と比べて高くなるので、第2のバルブ42は閉弁状態となり、クランクケース12内からインテークマニホールド26への第2のPCV流路40を通したブローバイガスの流れは発生しない。
【0035】
図2(B)に示すエンジン10の状態が高負荷時においては、インテークマニホールド26におけるスロットル弁24下流側が、正圧(大気圧以上)となり、インテークマニホールド26における過給機22上流側の圧力よりも高くなる。そのため、第2のバルブ42が開弁状態となり、クランクケース12内のブローバイガスが第2のPCV流路40を通じてインテークマニホールド26におけるスロットル弁24下流側に導入される。
【0036】
一方、第1のバルブ32は閉弁状態となり、クランクケース12から第1のPCV流路30を通したインテークマニホールド26におけるスロットル弁24下流側へのブローバイガスの流れは発生しない。また、第3のバルブ52は閉じるように制御され、クランクケース12内から新気導入路50へのブローバイガスの流れは第3のバルブ52によって遮断される。
【0037】
図2(C)に示す第1のPCV流路30のリーク診断は、例えば、エンジン10が自然吸気で駆動している低負荷時の所定のタイミングで実行することができる。エンジン10の状態が低負荷時において、第3のバルブ52が開くように制御され、過給機22上流側のインテークマニホールド26から新気導入路50を通してクランクケース12内に新気が導入される。圧力測定部60は、第3のバルブ52を開弁状態としたときのクランクケース12内の第1の圧力P1を測定する。
【0038】
次に、第3のバルブ52が閉じるように制御され、インテークマニホールド26における過給機22上流側から新気導入路50を通じたクランクケース12内への新気の導入が遮断される。このとき、クランクケース12内の圧力は、インテークマニホールド26で発生する負圧の影響を受けて負圧となる。圧力測定部60は、第3のバルブ52を閉弁状態としたときのクランクケース12内の第2の圧力P2を測定する。
【0039】
ここで、第3のバルブ52を閉弁状態とした場合であって、第1のPCV流路30にリークが発生していない場合には、第1のPCV流路30及びクランクケース12内の負圧は時間の経過に伴って次第に大きくなる。これに対し、第1のPCV流路30にリークが発生している場合には、リーク箇所から第1のPCV流路30内へ空気が流れ込むため、第1のPCV流路30及びクランクケース12内の負圧は時間が経過しても大きくならない。そのため、第1のPCV流路30にリークが発生していない状態であれば、第3のバルブ52の開弁時のクランクケース12内の第1の圧力P1と第3のバルブ52の閉弁時のクランクケース12内の第2の圧力P2との差圧P3は大きくなる。
【0040】
そこで、本実施の形態では、エンジン10の低負荷時の第3のバルブ52の開弁時におけるクランクケース12内の第1の圧力P1と第3のバルブ52の閉弁時におけるクランクケース12内の第2の圧力P2との差圧P3を算出し、算出した差圧P3が予め設定された閾値Pthより大きくなる場合には第1のPCV流路30にリークが発生していないと診断する。一方、算出した差圧P3が閾値Pthより小さくなる場合には、第1のPCV流路30にリークが発生していると診断する。
【0041】
なお、閾値Pthとしては、例えば第1のPCV流路30にリークが発生していない正常時の状態における第1の圧力P1、第2の圧力P2及び差圧P3を基準として用いることで任意の値を設定できる。閾値Pthは、制御装置70内に設けられる図示しない記憶部に記憶される。
【0042】
<ブローバイガスリーク診断装置100のリーク診断時の動作例>
次に、ブローバイガスリーク診断装置100による第1のPCV流路30のリーク診断時の動作について説明する。
図3は、ブローバイガスリーク診断装置100による第1のPCV流路30のリーク診断時のフローチャートを示す。
【0043】
ステップS100において、バルブ制御部72は、エンジン10が低負荷駆動である所定のタイミングにおいて、新気導入路50に設けられた第3のバルブ52を開くよう制御する。これにより、第3のバルブ52が開弁状態となり、インテークマニホールド26における過給機22上流側からクランクケース12内へ新気が導入される。
【0044】
ステップS110において、圧力測定部60は、新気導入路50の第3のバルブ52を開状態としたときのクランクケース12内の第1の圧力P1を測定し、測定したクランクケース12内の第1の圧力P1を示す検出信号をリーク診断部74へ出力する。
【0045】
ステップS120において、バルブ制御部72は、新気導入路50に設けられた第3のバルブ52が閉じるよう制御する。これにより、第3のバルブ52が閉弁状態となり、インテークマニホールド26における過給機22上流側からクランクケース12内へ新気の導入が遮断される。
【0046】
ステップS130では、エンジン10の低負荷駆動時において、インテークマニホールド26におけるスロットル弁24下流側に負圧が発生している。これにより、第1のバルブ32は開弁状態となり、第2のバルブ42は閉弁状態となる。
【0047】
ステップS140において、圧力測定部60は、新気導入路50の第3のバルブ52を閉弁状態としたときのクランクケース12内の第2の圧力P2を測定し、測定したクランクケース12内の第2の圧力P2を示す検出信号をリーク診断部74へ出力する。
【0048】
ステップS150において、リーク診断部74は、圧力測定部60から供給された検出信号に基づいて、第3のバルブ52を開弁状態としたときのクランクケース12内の第1の圧力P1と第3のバルブ52を閉弁状態としたときのクランクケース12内の第2の圧力P2との差圧P3を算出する。続けて、算出した差圧P3が予め設定された閾値Pth以上であるか否かを診断する。
【0049】
リーク診断部74は、クランクケース12内における差圧P3が閾値Pth以上である場合にはステップS160に進み、第1のPCV流路30にリークが発生していないと診断し、リーク診断処理を終了する。
【0050】
一方、リーク診断部74は、クランクケース12内における差圧P3が閾値Pth以上とならない場合、すなわち閾値Pth未満である場合にはステップS170に進み、第1のPCV流路30にリークが発生していると診断する。
【0051】
ステップS180において、リーク診断部74は、第1のPCV流路30にリークが発生していることを示す故障コードを制御装置70内の図示しない記憶部に記憶し、リーク診断処理を終了する。なお、第1のPCV流路30のリークの発生を報知する手段としては、例えば、運転席のメインパネルにリークの発生を知らせる旨の表示をするようにしても良いし、音声により案内するようにしても良い。
【0052】
なお、第2のPCV流路40はクランクケース12に連通しているため、上述した第1のPCV流路30におけるリークの診断方法を実行することで、第2のPCV流路40を含めた流路のリーク診断を行うことができる。
【0053】
また、上述した第1のPCV流路30におけるリークの診断方法は、
図3に示した診断方法に限定されることはない。例えば、エンジン10の低負荷駆動時において、第3のバルブ52を閉鎖してから所定時間経過後におけるクランクケース12内の圧力を圧力測定部60により測定し、クランクケース12内の圧力が第1のPCV流路30に空気が流入する等の原因で所定の閾値(負圧値)以下とならない場合に、第1のPCV流路30にリークが発生していると診断するようにしても良い。
【0054】
本実施の形態によれば、エンジン10の高負荷駆動時においてクランクケース12内のブローバイガスを新気導入路50ではなく、第2のPCV流路40に流入させるので、新気導入路50に設けられた第3のバルブ52にブローバイガスを含む固着物が滞留することを防止できる。これにより、第3のバルブ52の劣化を回避できる。特に、第3のバルブ52を構成する弁座にゴムシールを用いる場合には、固着物が滞留することによるシール部分の劣化を効果的に回避でき、第3のバルブ52の機能が低下することを防止できる。その結果、第1のPCV流路30のリーク診断時に、第3のバルブ52の機能が低下することがないので、リーク診断を正確に実行することができ、リーク診断の精度の向上を図ることができる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、新気導入路50に設ける第3のバルブ52を電磁弁で構成するため、第3のバルブ52の開閉時の応答性の向上を図ることができる。これにより、第1のPCV流路30のリーク診断の精度の向上を図ることができる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されることはない。本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施の形態等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
10…エンジン、12…クランクケース、24…スロットル弁、26…インテークマニホールド、30…第1のPCV流路、32…第1のバルブ(一方向排出弁)、40…第2のPCV流路、42…第2のバルブ(一方向排出弁)、50…新気導入路、52…第3のバルブ、60…圧力測定部、70…制御装置、72…バルブ制御部、74…リーク診断部、100…ブローバイガスリーク診断装置、P1…第1の圧力、P2…第2の圧力、P3…差圧、Pth…閾値