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特許7593107半導体装置用基板、半導体装置用基板の製造方法および無線通信装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】半導体装置用基板、半導体装置用基板の製造方法および無線通信装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20241126BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20241126BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20241126BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01L23/12 Z
H01L29/78 612Z
H01L29/78 618B
H01L21/88 S
H01L21/88 Z
H01L21/285 S
H01L21/28 301B
H01L29/44 P
H01L29/44 L
H01L29/58 G
H05K1/02 G
H05K3/00 X
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2020547150
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2020033493
(87)【国際公開番号】W WO2021054143
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2019171865
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020079010
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河井 翔太
(72)【発明者】
【氏名】田中 龍一
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 清一郎
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0248826(US,A1)
【文献】特開平9-283889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/28-21/288
H01L21/3205-21/3213
H01L21/329
H01L21/336
H01L21/44-21/445
H01L21/768
H01L23/12-23/15
H01L23/522
H01L23/532
H01L29/40-29/49
H01L29/786
H01L29/872
H05K1/00-1/02
H05K3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の樹脂基材と、前記樹脂基材上に備えられた複数の半導体装置と、を有し、前記樹脂基材上に、前記複数の半導体装置を囲うように設けられた補強線を有し、
前記補強線が、前記複数の半導体装置に含まれる電極層のうち少なくとも一つを構成する材料と同一の材料によって構成され、
前記補強線によって前記複数の半導体装置のうち一つ以上が囲われている領域が、前記樹脂基材上に複数存在する、
ことを特徴とする半導体装置用基板。
【請求項2】
樹脂基材と、前記樹脂基材上に備えられた複数の半導体装置と、を有し、前記樹脂基材上に、前記複数の半導体装置を囲うように設けられた補強線を有し、
前記補強線が、前記複数の半導体装置に含まれる電極層のうち少なくとも一つを構成する材料と同一の材料によって構成され、
前記補強線によって前記複数の半導体装置のうち一つ以上が囲われている領域が、前記樹脂基材上に複数存在し、
前記複数の半導体装置は、各々、電界効果型トランジスタを備え、
前記電界効果型トランジスタは、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極とそれぞれ接する半導体層と、前記ソース電極、前記ドレイン電極および前記半導体層を前記ゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、を有し、
複数の前記電界効果型トランジスタの少なくとも一部は、前記電界効果型トランジスタの半導体層に対しゲート絶縁層とは反対側で前記半導体層と接する第2絶縁層を有し、
前記樹脂基材上に、前記第2絶縁層を構成する材料と同一の材料によって構成される第2補強線を有する、
ことを特徴とする半導体装置用基板。
【請求項3】
樹脂基材と、前記樹脂基材上に備えられた複数の半導体装置と、を有し、前記樹脂基材上に、前記複数の半導体装置を囲うように設けられた補強線を有し、
前記補強線が、前記複数の半導体装置に含まれる電極層のうち少なくとも一つを構成する材料と同一の材料によって構成され、
前記補強線によって前記複数の半導体装置のうち一つ以上が囲われている領域が、前記樹脂基材上に複数存在し、
前記複数の半導体装置の各々は無線通信装置である、
ことを特徴とする半導体装置用基板。
【請求項4】
前記補強線が、前記複数の半導体装置を個別に囲うように設けられている、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の半導体装置用基板。
【請求項5】
前記補強線の厚みは、前記複数の半導体装置の各々の厚みと同じ、または前記複数の半導体装置の各々の厚みよりも薄い、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の半導体装置用基板。
【請求項6】
前記樹脂基材は、長手方向と短手方向とを有し、
前記複数の半導体装置は、前記樹脂基材上の長手方向に列をなすように形成され、
前記補強線の一部は、前記樹脂基材の長手方向に略連続的に設けられている、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の半導体装置用基板。
【請求項7】
前記樹脂基材は、長手方向と短手方向とを有し、
前記複数の半導体装置は、前記樹脂基材上の長手方向に列をなすように形成され、
前記補強線の一部は、前記複数の半導体装置の列の両外縁部において、前記樹脂基材の長手方向に略連続的に設けられている、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の半導体装置用基板。
【請求項8】
前記複数の半導体装置は、各々、電界効果型トランジスタを備え、
前記電界効果型トランジスタは、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極とそれぞれ接する半導体層と、前記ソース電極、前記ドレイン電極および前記半導体層を前記ゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、を有する、
ことを特徴とする請求項1、3のいずれか一つに記載の半導体装置用基板。
【請求項9】
前記半導体層は、カーボンナノチューブを含有する、
ことを特徴とする請求項2または8に記載の半導体装置用基板。
【請求項10】
前記複数の半導体装置は、各々、電界効果型トランジスタを備え、
前記補強線は、前記電界効果型トランジスタに含まれるソース電極、ドレイン電極およびゲート電極のうち、前記樹脂基材に近い側に位置する基材側の電極と同一の材料によって、前記基材側の電極と同一の層に設けられている、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の半導体装置用基板。
【請求項11】
前記複数の半導体装置は、各々、ボトムゲート構造を有する電界効果型トランジスタを備え、
前記補強線は、前記電界効果型トランジスタに含まれるゲート電極を構成する材料と同一の材料によって、前記ゲート電極と同一の層に設けられている、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一つに記載の半導体装置用基板。
【請求項12】
複数の前記電界効果型トランジスタの少なくとも一部は、前記電界効果型トランジスタの半導体層に対しゲート絶縁層とは反対側で前記半導体層と接する第2絶縁層を有し、
前記樹脂基材上に、前記第2絶縁層を構成する材料と同一の材料によって構成される第2補強線を有する、
ことを特徴とする請求項11のいずれか一つに記載の半導体装置用基板。
【請求項13】
前記電界効果型トランジスタのゲート電極および前記補強線は互いに同じ厚みであり、
前記厚みは30nm以上500nm以下である、
ことを特徴とする請求項11または12に記載の半導体装置用基板。
【請求項14】
前記電界効果型トランジスタは、トップコンタクト構造を有する電界効果型トランジスタである、
ことを特徴とする請求項2、813のいずれか一つに記載の半導体装置用基板。
【請求項15】
前記複数の半導体装置の各々は無線通信装置である、
ことを特徴とする請求項1、2、414のいずれか一つに記載の半導体装置用基板。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一つに記載の半導体装置用基板の製造方法であって、
前記樹脂基材上における、前記複数の半導体装置の構成部材のうちいずれか一つの形成と前記補強線の形成とを同一の工程で行う、
ことを特徴とする半導体装置用基板の製造方法。
【請求項17】
樹脂基材と、前記樹脂基材上に備えられた複数の半導体装置と、を有し、前記樹脂基材上に、前記複数の半導体装置を囲うように設けられた補強線を有し、前記補強線が、前記複数の半導体装置に含まれる電極層のうち少なくとも一つを構成する材料と同一の材料によって構成され、前記補強線によって前記複数の半導体装置のうち一つ以上が囲われている領域が、前記樹脂基材上に複数存在する、半導体装置用基板の製造方法であって、
前記樹脂基材上における、前記複数の半導体装置の構成部材のうちいずれか一つの形成と前記補強線の形成とを同一の工程で行い、
前記複数の半導体装置は、各々、ボトムゲート構造を有する電界効果型トランジスタを備えるように形成され、
前記電界効果型トランジスタに含まれるゲート電極の形成と前記補強線の形成とを同一の工程で行い、
複数の前記電界効果型トランジスタの少なくとも一部は、前記電界効果型トランジスタの半導体層に対しゲート絶縁層とは反対側で前記半導体層と接する第2絶縁層を有するように形成され、
前記樹脂基材上における、前記第2絶縁層を構成する材料と同一の材料によって構成される第2補強線の形成と前記第2絶縁層の形成とを同一の工程で行う、
ことを特徴とする半導体装置用基板の製造方法。
【請求項18】
前記複数の半導体装置および前記補強線の形成は、前記樹脂基材をロール・トゥ・ロール方式で搬送しながら実施される、
ことを特徴とする請求項16または17に記載の半導体装置用基板の製造方法。
【請求項19】
前記複数の半導体装置の各々に含まれる電極層のうち少なくとも一つの形成と前記補強線の形成とを同一の工程で行う、
ことを特徴とする請求項16~18のいずれか一つに記載の半導体装置用基板の製造方法。
【請求項20】
前記複数の半導体装置は、各々、電界効果型トランジスタを備えるように形成され、
前記電界効果型トランジスタに含まれるソース電極、ドレイン電極およびゲート電極のうち、前記樹脂基材に近い側に位置する基材側の電極の形成と、前記補強線の形成とを同一の工程で行う、
ことを特徴とする請求項1619のいずれか一つに記載の半導体装置用基板の製造方法。
【請求項21】
前記複数の半導体装置は、各々、ボトムゲート構造を有する電界効果型トランジスタを備えるように形成され、
前記電界効果型トランジスタに含まれるゲート電極の形成と前記補強線の形成とを同一の工程で行う、
ことを特徴とする請求項16、1820のいずれか一つに記載の半導体装置用基板の製造方法。
【請求項22】
複数の前記電界効果型トランジスタの少なくとも一部は、前記電界効果型トランジスタの半導体層に対しゲート絶縁層とは反対側で前記半導体層と接する第2絶縁層を有するように形成され、
前記樹脂基材上における、前記第2絶縁層を構成する材料と同一の材料によって構成される第2補強線の形成と前記第2絶縁層の形成とを同一の工程で行う、
ことを特徴とする請求項21に記載の半導体装置用基板の製造方法。
【請求項23】
前記ゲート電極の形成と前記補強線の形成とを同一の工程で行う補強線形成工程は、前記樹脂基材上にスパッタリングもしくは真空蒸着法によって成膜した金属膜を加工し、前記ゲート電極および前記補強線に対応するパターンに加工するパターニング工程を含む、
ことを特徴とする請求項17、21または22に記載の半導体装置用基板の製造方法。
【請求項24】
前記ゲート電極の形成と前記補強線の形成とを同一の工程で行う補強線形成工程は、
前記樹脂基材上に、導電体粒子と感光性有機成分とを含有する感光性ペーストを用いて塗布膜を形成する成膜工程と、
前記塗布膜を、フォトリソグラフィ法によって前記ゲート電極および前記補強線に対応するパターンに加工するパターニング工程と、
を含むことを特徴とする請求項17、21または22に記載の半導体装置用基板の製造方法。
【請求項25】
前記補強線を、前記複数の半導体装置を個別に囲うように設ける、
ことを特徴とする請求項1624のいずれか一つに記載の半導体装置用基板の製造方法。
【請求項26】
前記樹脂基材は、長手方向と短手方向とを有し、
前記複数の半導体装置を、前記樹脂基材上の長手方向に列をなすように形成し、
前記補強線の一部を、前記樹脂基材の長手方向に略連続的に設ける、
ことを特徴とする請求項1625のいずれか一つに記載の半導体装置用基板の製造方法。
【請求項27】
前記樹脂基材は、長手方向と短手方向とを有し、
前記複数の半導体装置を、前記樹脂基材上の長手方向に列をなすように形成し、
前記補強線の一部を、前記複数の半導体装置の列の両外縁部において、前記樹脂基材の長手方向に略連続的に設ける、
ことを特徴とする請求項1626のいずれか一つに記載の半導体装置用基板の製造方法。
【請求項28】
請求項1~15のいずれか一つに記載の半導体装置用基板の製造方法であって、
前記樹脂基材上における、前記複数の半導体装置の構成部材のうちいずれか一つの形成と前記補強線の形成とを同一の工程で行い、
前記複数の半導体装置の各々は、無線通信装置または無線通信装置の回路である、
ことを特徴とする半導体装置用基板の製造方法。
【請求項29】
樹脂基材と、前記樹脂基材上に備えられた複数の半導体装置と、を有し、前記樹脂基材上に、前記複数の半導体装置を囲うように設けられた補強線を有し、前記補強線が、前記複数の半導体装置に含まれる電極層のうち少なくとも一つを構成する材料と同一の材料によって構成され、前記補強線によって前記複数の半導体装置のうち一つ以上が囲われている領域が、前記樹脂基材上に複数存在する、半導体装置用基板の製造方法であって、
前記樹脂基材上における、前記複数の半導体装置の構成部材のうちいずれか一つの形成と前記補強線の形成とを同一の工程で行い、
前記複数の半導体装置の各々は、無線通信装置または無線通信装置の回路である、
ことを特徴とする半導体装置用基板の製造方法。
【請求項30】
請求項28または29に記載の半導体装置用基板の製造方法によって得られた半導体装置用基板を前記無線通信装置毎に切り分ける工程を含む、
ことを特徴とする無線通信装置の製造方法。
【請求項31】
請求項28または29に記載の半導体装置用基板の製造方法によって得られた半導体装置用基板を前記無線通信装置の回路毎に切り分ける工程と、
切り分けられた前記無線通信装置の回路をアンテナへ貼り合わせる工程と、
を含むことを特徴とする無線通信装置の製造方法。
【請求項32】
請求項28または29に記載の半導体装置用基板の製造方法によって得られた半導体装置用基板の前記無線通信装置の回路をアンテナと貼り合わせる工程と、
前記無線通信装置の回路と前記アンテナとが貼り合わされた後の前記半導体装置用基板を、前記無線通信装置の回路と前記アンテナとを備える無線通信装置毎に切り分ける工程と、
を含むことを特徴とする無線通信装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置用基板、半導体装置用基板の製造方法および無線通信装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency IDentification)技術を用いた無線通信システムが注目されている。RFIDタグは、電界効果型トランジスタ(以下、FETという)で構成された回路を有するICチップと、リーダ/ライタとの無線通信を行うためのアンテナとを有する。RFIDタグ内に設置されたアンテナが、リーダ/ライタから送信される搬送波を受信し、ICチップ内の駆動回路が動作する。
【0003】
RFIDタグは、物流管理、商品管理、万引き防止などの様々な用途での利用が期待されており、交通カードなどのICカード、商品タグなど、一部の用途では導入され始めている。今後、あらゆる商品でRFIDタグが使用されるためには、RFIDタグの製造コストの低減が必要である。そのため、RFID技術の分野においては、塗布・印刷技術を用いてフレキシブル基板上にRFIDタグの回路やアンテナを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
RFIDタグ内の回路を構成するFETにおいては、特性ばらつき(例えば、駆動電流値のばらつき)が生じると、設計仕様通りの安定した回路動作の実現が困難となる。特に基板として安価なプラスチックフィルムを用いた場合、温度や湿度による基板の伸縮が大きいため、その伸縮に起因して、FETを構成する部材のパターンずれが生じてしまう。そのため、FETを安定して製造することができず、FETの特性ばらつきが大きくなってしまう。
【0005】
上記パターンずれを抑制するための技術として、基板にアライメントマークを設けて当該アライメントマークを検出し、検出されたアライメントマークの位置ずれ量の大きさに基づいて、基板の温度制御や基板の湿度制御をすることで基板の伸縮を制御する方法が検討されている(例えば、特許文献2参照)。また、基板上に形成したゲート電極を、ソース電極およびドレイン電極のパターニングのためのフォトマスクとして利用し、基板の裏面から露光することで、各電極間の位置ずれを抑制する方法が検討されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/030070号
【文献】国際公開第2015/133391号
【文献】国際公開第2018/051860号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載された方法では、個々のFETの位置ずれを補正することはできても、基板内でのFETの特性ばらつきを抑制することはできず、また、基板の歪みが不均一(すなわち変形方向や変形量に規則性が無い故に予測困難な歪み)である場合、FETの位置ずれを制御することも困難となるという課題があった。また、特許文献3に記載された方法では、個々のFETにおける電極形成位置のばらつきは抑制できても、基板の伸縮に由来した、FET相互間のばらつきを抑制することができなかった。
【0008】
また、特許文献2および3のどちらの方法でも、FETの位置ずれを補正するといった製造工程による特性ばらつきの抑制は考慮しているが、FET形成後の温度や湿度の変化による基板の伸縮ばらつきや、連続する基板上にFETを連続形成し、ロール状に巻取られた基板の巻ずれの影響によるFET相互間の特性ばらつきの制御については考慮できていない。
【0009】
本発明は、上記課題に着目してなされたものであって、基板上にFET等の複数の半導体装置を形成した後においても半導体装置の特性ばらつきを抑制することができる半導体装置用基板、半導体装置用基板の製造方法および無線通信装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る半導体装置用基板は、樹脂基材と、前記樹脂基材上に備えられた複数の半導体装置と、を有し、前記樹脂基材上に、前記複数の半導体装置を囲うように設けられた補強線を有し、前記補強線が、前記複数の半導体装置に含まれる電極層のうち少なくとも一つを構成する材料と同一の材料によって構成され、前記補強線によって前記複数の半導体装置のうち一つ以上が囲われている領域が、前記樹脂基材上に複数存在する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る半導体装置用基板は、上記の発明において、前記補強線が、前記複数の半導体装置を個別に囲うように設けられている、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る半導体装置用基板は、上記の発明において、前記補強線の厚みは、前記複数の半導体装置の各々の厚みと同じ、または前記複数の半導体装置の各々の厚みよりも薄い、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る半導体装置用基板は、上記の発明において、前記樹脂基材は、長手方向と短手方向とを有し、前記複数の半導体装置は、前記樹脂基材上の長手方向に列をなすように形成され、前記補強線の一部は、前記樹脂基材の長手方向に略連続的に設けられている、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る半導体装置用基板は、上記の発明において、前記樹脂基材は、長手方向と短手方向とを有し、前記複数の半導体装置は、前記樹脂基材上の長手方向に列をなすように形成され、前記補強線の一部は、前記複数の半導体装置の列の両外縁部において、前記樹脂基材の長手方向に略連続的に設けられている、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る半導体装置用基板は、上記の発明において、前記複数の半導体装置は、各々、電界効果型トランジスタを備え、前記電界効果型トランジスタは、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極とそれぞれ接する半導体層と、前記ソース電極、前記ドレイン電極および前記半導体層を前記ゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、を有する、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る半導体装置用基板は、上記の発明において、前記半導体層は、カーボンナノチューブを含有する、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る半導体装置用基板は、上記の発明において、前記複数の半導体装置は、各々、電界効果型トランジスタを備え、前記補強線は、前記電界効果型トランジスタに含まれるソース電極、ドレイン電極およびゲート電極のうち、前記樹脂基材に近い側に位置する基材側の電極と同一の材料によって、前記基材側の電極と同一の層に設けられている、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る半導体装置用基板は、上記の発明において、前記複数の半導体装置は、各々、ボトムゲート構造を有する電界効果型トランジスタを備え、前記補強線は、前記電界効果型トランジスタに含まれるゲート電極を構成する材料と同一の材料によって、前記ゲート電極と同一の層に設けられている、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る半導体装置用基板は、上記の発明において、複数の前記電界効果型トランジスタの少なくとも一部は、前記電界効果型トランジスタの半導体層に対しゲート絶縁層とは反対側で前記半導体層と接する第2絶縁層を有し、前記樹脂基材上に、前記第2絶縁層を構成する材料と同一の材料によって構成される第2補強線を有する、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る半導体装置用基板は、上記の発明において、前記電界効果型トランジスタのゲート電極および前記補強線は互いに同じ厚みであり、前記厚みは30nm以上500nm以下である、ことを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る半導体装置用基板は、上記の発明において、前記電界効果型トランジスタは、トップコンタクト構造を有する電界効果型トランジスタである、ことを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る半導体装置用基板は、上記の発明において、前記複数の半導体装置の各々は無線通信装置である、ことを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る半導体装置用基板の製造方法は、上記の発明のいずれか一つに記載の半導体装置用基板の製造方法であって、前記樹脂基材上における、前記複数の半導体装置の構成部材のうちいずれか一つの形成と前記補強線の形成とを同一の工程で行う、ことを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る半導体装置用基板の製造方法は、上記の発明において、前記複数の半導体装置および前記補強線の形成は、前記樹脂基材をロール・トゥ・ロール方式で搬送しながら実施される、ことを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る半導体装置用基板の製造方法は、上記の発明において、前記複数の半導体装置の各々に含まれる電極層のうち少なくとも一つの形成と前記補強線の形成とを同一の工程で行う、ことを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る半導体装置用基板の製造方法は、上記の発明において、前記複数の半導体装置は、各々、電界効果型トランジスタを備えるように形成され、前記電界効果型トランジスタに含まれるソース電極、ドレイン電極およびゲート電極のうち、前記樹脂基材に近い側に位置する基材側の電極の形成と、前記補強線の形成とを同一の工程で行う、ことを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る半導体装置用基板の製造方法は、上記の発明において、前記複数の半導体装置は、各々、ボトムゲート構造を有する電界効果型トランジスタを備えるように形成され、前記電界効果型トランジスタに含まれるゲート電極の形成と前記補強線の形成とを同一の工程で行う、ことを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る半導体装置用基板の製造方法は、上記の発明において、複数の前記電界効果型トランジスタの少なくとも一部は、前記電界効果型トランジスタの半導体層に対しゲート絶縁層とは反対側で前記半導体層と接する第2絶縁層を有するように形成され、前記樹脂基材上における、前記第2絶縁層を構成する材料と同一の材料によって構成される第2補強線の形成と前記第2絶縁層の形成とを同一の工程で行う、ことを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る半導体装置用基板の製造方法は、上記の発明において、前記ゲート電極の形成と前記補強線の形成とを同一の工程で行う補強線形成工程は、前記樹脂基材上にスパッタリングもしくは真空蒸着法によって成膜した金属膜を加工し、前記ゲート電極および前記補強線に対応するパターンに加工するパターニング工程を含む、ことを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る半導体装置用基板の製造方法は、上記の発明において、前記ゲート電極の形成と前記補強線の形成とを同一の工程で行う補強線形成工程は、前記樹脂基材上に、導電体粒子と感光性有機成分とを含有する感光性ペーストを用いて塗布膜を形成する成膜工程と、前記塗布膜を、フォトリソグラフィ法によって前記ゲート電極および前記補強線に対応するパターンに加工するパターニング工程と、を含むことを特徴とする。
【0031】
また、本発明に係る半導体装置用基板の製造方法は、上記の発明において、前記補強線を、前記複数の半導体装置を個別に囲うように設ける、ことを特徴とする。
【0032】
また、本発明に係る半導体装置用基板の製造方法は、上記の発明において、前記樹脂基材は、長手方向と短手方向とを有し、前記複数の半導体装置を、前記樹脂基材上の長手方向に列をなすように形成し、前記補強線の一部を、前記樹脂基材の長手方向に略連続的に設ける、ことを特徴とする。
【0033】
また、本発明に係る半導体装置用基板の製造方法は、上記の発明において、前記樹脂基材は、長手方向と短手方向とを有し、前記複数の半導体装置を、前記樹脂基材上の長手方向に列をなすように形成し、前記補強線の一部を、前記複数の半導体装置の列の両外縁部において、前記樹脂基材の長手方向に略連続的に設ける、ことを特徴とする。
【0034】
また、本発明に係る半導体装置用基板の製造方法は、上記の発明において、前記複数の半導体装置の各々は、無線通信装置または無線通信装置の回路である、ことを特徴とする。
【0035】
また、本発明に係る無線通信装置の製造方法は、上記の発明に記載の半導体装置用基板の製造方法によって得られた半導体装置用基板を前記無線通信装置毎に切り分ける工程を含む、ことを特徴とする。
【0036】
また、本発明に係る無線通信装置の製造方法は、上記の発明に記載の半導体装置用基板の製造方法によって得られた半導体装置用基板を前記無線通信装置の回路毎に切り分ける工程と、切り分けられた前記無線通信装置の回路をアンテナへ貼り合わせる工程と、を含むことを特徴とする。
【0037】
また、本発明に係る無線通信装置の製造方法は、上記の発明に記載の半導体装置用基板の製造方法によって得られた半導体装置用基板の前記無線通信装置の回路をアンテナと貼り合わせる工程と、前記無線通信装置の回路と前記アンテナとが貼り合わされた後の前記半導体装置用基板を、前記無線通信装置の回路と前記アンテナとを備える無線通信装置毎に切り分ける工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、基板上に複数の半導体装置を形成した後においても半導体装置の特性ばらつきを抑制することができる半導体装置用基板、半導体装置用基板の製造方法および無線通信装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1の変形例に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。
図3図3は、本発明の実施の形態2に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。
図4図4は、本発明の実施の形態3に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。
図5図5は、本発明の実施の形態4に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。
図6図6は、本発明の実施の形態5に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。
図7図7は、本発明の実施の形態5の変形例1に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。
図8図8は、本発明の実施の形態5の変形例2に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。
図9図9は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置用基板の一部を抜粋して示す斜視図である。
図10図10は、図9に示す半導体装置用基板のI-I’線における模式断面図である。
図11図11は、図10に示す半導体装置用基板の第1変形例を示す模式断面図である。
図12図12は、図10に示す半導体装置用基板の第2変形例を示す模式断面図である。
図13図13は、本発明の実施の形態6に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。
図14図14は、図13に示す半導体装置用基板のII-II’線における模式断面図である。
図15図15は、図13に示す半導体装置用基板の第1変形例を示す模式断面図である。
図16図16は、図13に示す半導体装置用基板の第2変形例を示す模式断面図である。
図17図17は、本発明の実施の形態5に係る半導体装置用基板の製造方法の一例を説明するための斜視図である。
図18A図18Aは、本発明の実施の形態5に係る半導体装置用基板の製造方法の第1工程例を示す部分拡大模式図である。
図18B図18Bは、本発明の実施の形態5に係る半導体装置用基板の製造方法の第2工程例を示す部分拡大模式図である。
図19A図19Aは、本発明の実施の形態6に係る半導体装置用基板の製造方法の第1工程例を示す部分拡大模式図である。
図19B図19Bは、本発明の実施の形態6に係る半導体装置用基板の製造方法の第2工程例を示す部分拡大模式図である。
図20図20は、本発明を適用される無線通信装置の第1構成例を示す模式図である。
図21図21は、本発明を適用される無線通信装置の第2構成例を示す模式図である。
図22A図22Aは、本発明の実施例1に係る半導体装置用基板の製造方法の第1工程例を示す模式図である。
図22B図22Bは、本発明の実施例1に係る半導体装置用基板の製造方法の第2工程例を示す模式図である。
図23図23は、実施例2の半導体装置用基板から得られる基板サンプルの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る半導体装置用基板、半導体装置用基板の製造方法および無線通信装置の製造方法の好適な実施形態を、図面を適宜参照し詳細に説明する。なお、これらの実施の形態により本発明が限定されるものではなく、発明の目的を達成でき、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然ありえる。
【0041】
<半導体装置用基板>
本発明の実施の形態に係る半導体装置用基板は、樹脂基材と、樹脂基材上に備えられた複数の半導体装置と、を有し、樹脂基材上に、半導体装置を囲うように設けられた補強線を有し、補強線が、半導体装置に含まれる電極層のうち少なくとも一つを構成する材料と同一の材料によって構成され、補強線が、半導体装置が1つ以上含まれる領域毎に個別に囲うように設けられた半導体装置用基板である。別の言い方をすると、本発明の実施の形態に係る半導体装置用基板は、樹脂基材と、上記樹脂基材上に備えられた複数の半導体装置と、を有し、上記樹脂基材上に、上記複数の半導体装置を囲うように設けられた補強線を有し、上記補強線が、上記複数の半導体装置に含まれる電極層のうち少なくとも一つを構成する材料と同一の材料によって構成され、上記補強線によって上記複数の半導体装置のうち一つ以上が囲われている領域が、前記樹脂基材上に複数存在する、半導体装置用基板である。
【0042】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。図1に示すように、本発明の実施の形態1に係る半導体装置用基板50は、樹脂基材1を有し、この樹脂基材1の上に複数の半導体装置、例えば、9個の半導体装置10を有する。また、半導体装置用基板50は、樹脂基材1の上に、樹脂基材1の横方向に延在する複数(例えば4本)の補強線11a~11dと、樹脂基材1の縦方向に延在する複数(例えば4本)の補強線12a~12dとを有する。補強線11a~11dおよび補強線12a~12dは、それぞれ直交するように配置され、これら複数の半導体装置10を個別に囲う。この際、補強線11a~11dおよび補強線12a~12dによって各半導体装置10が囲われている領域は、樹脂基材1の上に複数(実施形態1では図1に例示するように9個)存在する。また、樹脂基材1がその横方向に対して平行な端部を有する場合、補強線11a~11dは、樹脂基材1の上記平行な端部に対し平行に配置されることが好ましい。
【0043】
樹脂基材1の横方向および縦方向は、互いに垂直な方向であり且つ樹脂基材1の厚み方向に対して垂直な方向である。樹脂基材1の厚み方向は、図の紙面(実施形態1では図1の紙面)に対して垂直な方向である。樹脂基材1の厚み方向、横方向および縦方向の定義は、本発明における全ての実施の形態に共通する。
【0044】
また、本実施の形態1において、樹脂基材1は、長手方向と短手方向とを有する基材である。例えば、図1に示す樹脂基材1において、樹脂基材1の長手方向は当該樹脂基材1の横方向であり、樹脂基材1の短手方向は当該樹脂基材1の縦方向である。9個の半導体装置10は、樹脂基材1上の長手方向に列をなすように形成されている。図1に示す例では、半導体装置10の列は、一列に3個の半導体装置10が含まれ、短手方向(縦方向)に並ぶ列である。この半導体装置10の列数は3である。そして、補強線11a~11dの一部、例えば、これらの補強線11a~11dのうち樹脂基材1の短手方向の両端側に位置する補強線11aおよび補強線11dは、この半導体装置10の列(図1では合計3つの列)の外縁部において、樹脂基材1の長手方向に連続的に設けられている。すなわち、補強線11aおよび補強線11dは、半導体装置10の列の両外縁部において連続的に設けられた補強線である。なお、半導体装置10の列の両外縁部とは、樹脂基材1の長手方向に延在する両外縁部とも言え、この点は、以下に示す全ての実施の形態に共通する。
【0045】
半導体装置用基板50が補強線11a~11dおよび補強線12a~12dを有することにより、半導体装置用基板50は、湿度や温度といった環境の変化にさらされた際に、樹脂基材1の面内の伸縮を抑制することができる。よって、半導体装置用基板50の伸縮ばらつきに起因する、9個の半導体装置10間の特性ばらつきを抑制することができる。
【0046】
樹脂基材1に用いられる材料は、特に制限はないが、少なくとも半導体装置10が配置される基材面が絶縁性となる材料であれば良い。このような樹脂基材1の材料として、例えば、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、シクロオレフィン樹脂などの樹脂、または、ポリプロピレン(PP)を含むシートが好適に用いられる。しかし、樹脂基材1に用いられる材料は、これらに限定されない。
【0047】
これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、PPS、ポリフェニレンサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミドまたはPIの中から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが、樹脂基材1の材料として好ましい。低価格の観点からは、PETフィルムが樹脂基材1の材料として好ましい。
【0048】
また、樹脂基材1と、電極や配線との密着性の観点からは、ポリサルフォン樹脂、PPS樹脂も樹脂基材1の材料として好ましい。これは、電極や配線中の金属原子が、これらの樹脂に含まれる硫黄原子と強く相互作用するためと推定される。
【0049】
樹脂基材1の厚みは、25μm以上100μm以下であることが好ましい。樹脂基材1の厚みが当該範囲内にあることにより、半導体装置用基板50は、高い耐久性と適度な柔軟性とを有し得る。
【0050】
補強線11a~11dおよび補強線12a~12dは、全て同一材料で形成され、その厚みを等しくすることが好ましい。また、補強線11a~11dおよび補強線12a~12dの厚みは、複数の半導体装置10の各々の厚みと同じ、または当該半導体装置10の厚みよりも薄くすることが好ましい。半導体装置10の厚みよりも当該補強線の厚みを厚くした場合、半導体装置用基板50を積み重ねたりロール状に巻き取ったりした際に、樹脂基材1と当該補強線とが擦れることで当該補強線が帯電しやすくなり、この結果、半導体装置10に損傷が発生しやすくなる。
【0051】
本発明において、「半導体装置の厚み」とは、樹脂基材上に形成された半導体装置の断面において、樹脂基材と半導体装置との界面から樹脂基材の垂直方向(厚み方向)における半導体装置の一番高い箇所までの厚みである。
【0052】
また、補強線11a~11dおよび補強線12a~12dは、それぞれ、複数の半導体装置10に含まれる電極層のうち少なくとも一つを構成する材料と同一材料によって構成されている。すなわち、補強線11a~11dおよび補強線12a~12dに用いられる材料は、半導体装置10を構成する層の1つである電極層の少なくとも一つと同一材料である。これにより、半導体装置用基板50の製造コストを低減することができる。
【0053】
本発明において、「補強線と、半導体装置を構成する電極層の少なくとも一つとが同一材料から構成される」とは、「補強線」と「半導体装置を構成する電極層の少なくとも一つ」とに含まれる元素の中で最も含有モル比率が高い元素が同一であることをいう。「補強線」と「半導体装置を構成する電極層の少なくとも一つ」との元素の種類および含有比率は、X線光電子分光(XPS)や二次イオン質量分析法(SIMS)などの元素分析によって、同定することができる。
【0054】
また、複数(実施の形態1では9個)の半導体装置10は、これらの全てが互いに同じ半導体装置でもよいし、これらのうち一部または全てが互いに異なる半導体装置でもよいが、半導体装置10を構成する材料および層構成や各層の厚みは同一である方が好ましい。半導体装置10の詳細については後に説明する。
【0055】
(実施の形態1の変形例)
図2は、本発明の実施の形態1の変形例に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。上述した実施の形態1では、補強線11a~11dおよび補強線12a~12dによって複数の半導体装置10の全てがそれぞれ個別に囲まれているが、これに限らず、複数の半導体装置10のまとまりが補強線によって囲まれていてもよい。例えば、図2に示すように、この変形例に係る半導体装置用基板50Aは、樹脂基材1上に補強線11a、11b、11dおよび補強線12a、12b、12dを有している。半導体装置用基板50Aでは、これらの補強線11a、11b、11dおよび補強線12a、12b、12dによって、複数の半導体装置10のうち一つ以上が囲われている領域が4つ形成されている。この変形例における当該領域としては、図2に示すように、一つの半導体装置10が含まれる領域と、二つの半導体装置10のまとまりが含まれる領域と、四つの半導体装置10のまとまりが含まれる領域とが挙げられる。
【0056】
この変形例において、補強線11a、11b、11dおよび補強線12a、12b、12dによって囲まれた領域の形状や、これらの補強線によって囲まれた半導体装置10のまとまりの数および当該まとまりに含まれる半導体装置10の数は、図2に示すものに限定されない。例えば、樹脂基材1上における補強線の構成は、樹脂基材1の縦方向に並ぶ3個の半導体装置10を一まとまりとし、当該まとまりが3個できる構成等であってもよい。ただし、当該補強線の構成については、上記複数の半導体装置10を個別に囲うように設けられた構成の方が半導体装置10のまとまりを囲うように設けられた構成よりも好ましい。何故ならば、当該補強線によって半導体装置10を個別に囲う方が、半導体装置10のまとまりを囲う場合に比べて、樹脂基材1の面内の伸縮ばらつきをより低減しやすいためである。
【0057】
上述した実施の形態1では、補強線11a~11dおよび補強線12a~12dと、半導体装置10とを樹脂基材1上の同一面に形成した場合を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、補強線11a~11dおよび補強線12a~12dと半導体装置10とは、樹脂基材1に対し、それぞれ反対の面に形成されてもよい。
【0058】
また、上述した実施の形態1およびその変形例では、樹脂基材1上に9個の半導体装置10が設けられた場合を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、樹脂基材1上における半導体装置10の配置数は、上述した9個に限らず、2個以上9個未満であってもよいし、9個以上であってもよい。また、上述した実施の形態1およびその変形例では、半導体装置10が樹脂基材1上に3行3列配置されているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上述した補強線および半導体装置は、樹脂基材1上に補強線と半導体装置とを形成できる範囲内において、任意の行数および列数となるよう樹脂基材1上に配置することができる。
【0059】
以上説明した実施の形態1およびその変形例に関する変更は、以下に説明する各実施の形態においても同様に行うことができる。
【0060】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。図3に示すように、本発明の実施の形態2に係る半導体装置用基板50Bは、樹脂基材1を有し、この樹脂基材1の上に複数の半導体装置、例えば、12個の半導体装置10を有する。また、半導体装置用基板50Bは、樹脂基材1の上に、これらの半導体装置10を個別に囲う複数(例えば半導体装置10と同数の12本)の補強線13を有する。これらの補強線13は、それぞれ、略円状の形状に形成され、補強線13同士が接触するように配置されている。例えば、これらの補強線13によって複数の半導体装置10が個別に囲われている略円状の領域は、樹脂基材1の上に複数(図3では12個)存在する。半導体装置用基板50Bにおける補強線13の役割は、上述した実施の形態1におけるものと同様である。
【0061】
上述した実施の形態2では、補強線13同士が接触するように配置された場合を例示したが、本発明は、これに限定されるものではなく、補強線13同士が離れるように配置されていてもよい。ただし、補強線13同士が接触するように配置された方が、樹脂基材1全体の変形を抑制しやすいため、有利である。
【0062】
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。図4に示すように、本発明の実施の形態3に係る半導体装置用基板50Cは、樹脂基材1を有し、この樹脂基材1の上に複数の半導体装置、例えば、18個の半導体装置10を有する。また、半導体装置用基板50Cは、樹脂基材1の上に、樹脂基材1の縦方向および横方向に対して傾斜する方向に延在する複数の補強線14、15と、樹脂基材1の横方向に延在する補強線16とを有する。補強線14は、横方向の補強線16に対して所定の方向(例えば図4の紙面の左上側から右下側へ向かう方向)に傾斜するように、樹脂基材1の上に複数(図4では5本)形成されている。補強線15は、横方向の補強線16に対して上記補強線15とは異なる方向(例えば図4の紙面の右上側から左下側へ向かう方向)に傾斜するように、樹脂基材1の上に複数(図4では4本)形成されている。補強線16は、樹脂基材1の縦方向両端のうち少なくとも一方の端部に対し平行に配置される。
【0063】
上述した補強線14~16は、図4に示すように、樹脂基材1の面上において互いに交差しており、複数の半導体装置10を個別に囲う三角形状の領域を形成している。これらの補強線14~16によって複数の半導体装置10が個別に囲われている三角形状の領域は、樹脂基材1の上に複数存在する。半導体装置用基板50Cにおける補強線14~16の役割は、上述した実施の形態1におけるものと同様である。
【0064】
(実施の形態4)
図5は、本発明の実施の形態4に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。図5に示すように、本発明の実施の形態4に係る半導体装置用基板50Dは、樹脂基材1を有し、この樹脂基材1の上に複数の半導体装置、例えば、13個の半導体装置10を有する。また、半導体装置用基板50Dは、樹脂基材1の上に、これら複数の半導体装置10を個別に囲う補強線17を有する。補強線17は、互いに隣接する複数の六角形をなすように形成され、いわゆるハニカム構造をとるように樹脂基材1の上に配置されている。例えば、補強線17によって複数の半導体装置10が個別に囲われている六角形状の領域は、樹脂基材1の上に複数存在する。半導体装置用基板50Dにおける補強線17の役割は、上述した実施の形態1におけるものと同様である。
【0065】
(実施の形態5)
図6は、本発明の実施の形態5に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。図6に示すように、本発明の実施の形態5に係る半導体装置用基板50Eは、ロール状に巻かれた状態から連続的に払い出してロール状に巻き取られた状態にすることが可能な長尺フィルム状の樹脂基材1を有する。また、半導体装置用基板50Eは、ロール状に巻かれた状態から再びロール状に巻き取られた状態まで連続する樹脂基材1の上に、複数の半導体装置と補強線とを含むデザインを樹脂基材1の長手方向に沿って複数有する。当該デザインは、樹脂基材1の上において、少なくとも複数の半導体装置と補強線とを組み合わせることによって構成され、樹脂基材1の長手方向に沿って繰り返される構造部である。例えば、図6に示すように、半導体装置用基板50Eは、複数の半導体装置と補強線とを有するデザインD1と、このデザインD1と同様の構造を有するデザインD2とを備えている。
【0066】
図6に示すように、デザインD1は、上述した実施の形態1で記載した9個の半導体装置10と、横方向の4本の補強線11a~11dと、縦方向の4本の補強線12a~12dとを有する構造部である。デザインD2は、上記デザインD1と同様の構造を繰り返すものである。すなわち、デザインD2に含まれる9個の半導体装置は、上記デザインD1と同様の半導体装置10である。また、デザインD2に含まれる横方向の4本の補強線11e~11hは上記デザインD1の補強線11a~11dと同様であり、縦方向の4本の補強線12e~12hは上記デザインD1の補強線12a~12dと同様である。半導体装置用基板50Eの樹脂基材1上には、これらのデザインD1、D2が、樹脂基材1の長手方向に略連続的に並んでいる。
【0067】
本実施の形態5において、図6に示すように、樹脂基材1は、長手方向と短手方向とを有し、ロール状に巻かれた状態からロール状に巻き取られた状態まで連続して搬送することが可能な長尺の基材である。すなわち、この樹脂基材1は、ロール・トゥ・ロール方式により、その長手方向へ連続的に搬送することが可能である。複数の半導体装置10は、樹脂基材1上の長手方向に列をなすように形成されている。図6に示す例では、半導体装置10の列は、樹脂基材1の短手方向(縦方向)に3つ(3列)並んでいる。すなわち、この半導体装置10の列数は3である。
【0068】
複数の補強線11a~11hおよび補強線12a~12hの一部、例えば、補強線11a~11hは、樹脂基材1の長手方向に略連続的に設けられている。そして、補強線11a、11dおよび補強線11e、11hは、この半導体装置10の列の両外縁部において、樹脂基材1の長手方向に略連続的に設けられている。すなわち、デザインD1における補強線11aとデザインD2における補強線11eとは、樹脂基材1上におけるデザイン間の間隙部を除いて、樹脂基材1の長手方向に連続的に形成されている。これと同様に、デザインD1における補強線11dとデザインD2における補強線11hとは、樹脂基材1上におけるデザイン間の間隙部を除いて、樹脂基材1の長手方向に連続的に形成されている。補強線11a~11hが樹脂基材1の長手方向に略連続的に形成されることで、連続的に形成された場合に比べ、樹脂基材1が巻き取られた際の折り曲げストレスを定期的(周期的)に緩和することができる。この結果、補強線11a~11hの断線を抑制することができる。
【0069】
本発明において、「長手方向に略連続的に設けられている」とは、長手方向と短手方向とを有する樹脂基材上の長手方向に対して形成されている補強線が、当該樹脂基材の長手方向に連続的である状態と、一定または不定間隔で小さな隙間を有している状態との双方を含む概念である。後者の例は、例えば、デザインD1における補強線11aとデザインD2における補強線11eのように、樹脂基材上の長手方向に対して間隔をあけて補強線が形成されている状態である。補強線が複数の間隔を有する場合は、間隔によって分断された補強線のそれぞれの長さが一定であり、複数の間隔も一定である方が好ましい。これにより、半導体装置用基板の製造工程において、フォトリソグラフィ法や印刷法により樹脂基材の一定の搬送の送り量で補強線を形成し続けることができるため、当該製造工程の煩雑化を防ぐことができる。
【0070】
半導体装置用基板50Eが補強線11a~11hおよび補強線12a~12hを有することにより、半導体装置用基板50Eは、湿度や温度といった環境の変化にさらされた際に、樹脂基材1のデザイン毎の面内の伸縮を制御することができる。よって、半導体装置用基板50Eの伸縮ばらつきに起因する、デザイン内の9個の半導体装置10間の特性ばらつきや、略連続的に形成されたデザイン毎の半導体装置10間の特性ばらつきを抑制することができる。
【0071】
また、樹脂基材1は長手方向と短手方向とを有し、補強線11a~11hは、樹脂基材1の長手方向に延在する樹脂基材端(すなわち樹脂基材1の短手方向両端のうち少なくとも一方)に対して平行に配置されることが好ましい。また、複数の半導体装置10は、樹脂基材1の長手方向に延在する樹脂基材端と平行になる列上に配置されることが好ましい。これにより、樹脂基材1の歪みの制御が、樹脂基材1に対し、その長手方向と平行な方向に働くため、半導体装置用基板50Eにおける樹脂基材1の巻状態が安定し、外部衝撃や温度、湿度変化による樹脂基材1の巻ズレ(延いては半導体装置用基板50Eの巻ズレ)を低減しやすくなる。
【0072】
また、樹脂基材1の厚みは、巻き取り可能な長尺の基材であっても、25μm以上100μm以下であることが好ましい。樹脂基材1の厚みが当該範囲内にあることにより、半導体装置用基板50Eは、高い耐久性と適度な柔軟性とを有し得る。
【0073】
補強線11a~11hおよび補強線12a~12hは、全て同一材料で形成され、その厚みを等しくすることが好ましい。また、補強線11a~11hおよび補強線12a~12hに用いられる材料は、半導体装置10を構成する層の1つである電極層の少なくとも一つと同一材料であることが好ましい。これにより、半導体装置用基板50Eの製造コストを低減すると同時に、連続する樹脂基材1がロール状に巻かれた際の擦れなどによる機械的衝撃耐性を向上させることができる。
【0074】
上述した実施の形態5では、補強線11a~11hおよび補強線12a~12hと、半導体装置10とを樹脂基材1上の同一面に形成した場合を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、補強線11a~11hおよび補強線12a~12hと半導体装置10とは、樹脂基材1に対し、それぞれ反対の面に形成されてもよい。ただし、これらの補強線および半導体装置を樹脂基材1上の同一面上に形成した方が、連続する樹脂基材1をロール状に巻いた際に補強線と半導体装置とが直接擦れることを防ぐことができるため、有利である。
【0075】
(実施の形態5の変形例1)
図7は、本発明の実施の形態5の変形例1に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。上述した実施の形態5では、ロール状に巻かれた状態からロール状に巻き取られる状態まで連続する樹脂基材1の上に、9個の半導体装置10と横方向の4本の補強線11a~11dと縦方向の4本の補強線12a~12dとを有するデザインD1と、これと同様の構造を有するデザインD2とが樹脂基材1の長手方向に略連続的に並んでいるが、本発明に係る半導体装置用基板の構成は、これに限定されない。例えば、図7に示すように、実施の形態5の変形例1に係る半導体装置用基板50Fは、実施の形態5と同様の樹脂基材1の上に、上述したデザインD1、D2の繰返し構造に代えてデザインD1a、D2aの繰返し構造を備える。
【0076】
図7に示すように、デザインD1aは、上述した9個の半導体装置10と、横方向の3本の補強線11a~11cと、縦方向の4本の補強線12a~12dとを有する構造部である。デザインD2aは、上記デザインD1aと同様の構造を繰り返すものである。すなわち、デザインD2aに含まれる9個の半導体装置は、上記デザインD1aと同様の半導体装置10である。また、デザインD2aに含まれる横方向の3本の補強線11e~11gは上記デザインD1aの補強線11a~11cと同様であり、縦方向の4本の補強線12e~12hは上記デザインD1aの補強線12a~12dと同様である。半導体装置用基板50Fの樹脂基材1上には、これらのデザインD1a、D2aが、樹脂基材1の長手方向に略連続的に並んでいる。
【0077】
本実施の形態5の変形例1において、図7に示すように、樹脂基材1は、上述した実施の形態5と同様に長手方向と短手方向とを有する。複数の半導体装置10は、上述した実施の形態5と同様に、樹脂基材1上の長手方向に列をなすように形成されている。そして、補強線11a~11cおよび補強線11e~11gは、これら複数の半導体装置10の列に対して平行となるように形成され、樹脂基材1の長手方向に略連続的に設けられている。すなわち、デザインD1aにおける補強線11a~11cと、デザインD2aにおける補強線11e~11gとは、樹脂基材1上におけるデザイン間の間隙部を除いて、樹脂基材1の長手方向に連続的に形成されている。この変形例1に係る半導体装置用基板50Fでは、実施の形態5と異なり、補強線11dおよび補強線11hが形成されていない。このため、これら複数の半導体装置10の列の外縁部の一方において、補強線が樹脂基材1の長手方向に略連続的に設けられているわけではない。
【0078】
(実施の形態5の変形例2)
図8は、本発明の実施の形態5の変形例2に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。図8に示すように、この変形例2に係る半導体装置用基板50Gは、ロール状に巻かれた状態からロール状に巻き取られる状態まで連続する樹脂基材1の上に、上述したデザインD1、D2の繰返し構造に代えてデザインD1b、D2bの繰返し構造を備える。デザインD1bは、上述した9個の半導体装置10と、横方向の3本の補強線11a、11c、11dと、縦方向の4本の補強線12a~12dとを有する構造部である。デザインD2bは、上記デザインD1bと同様の構造を繰り返すものである。すなわち、デザインD2bに含まれる9個の半導体装置は、上記デザインD1bと同様の半導体装置10である。また、デザインD2bに含まれる横方向の3本の補強線11e、11g、11hは上記デザインD1bの補強線11a、11c、11dと同様であり、縦方向の4本の補強線12e~12hは上記デザインD1bの補強線12a~12dと同様である。半導体装置用基板50Gの樹脂基材1上には、これらのデザインD1b、D2bが、樹脂基材1の長手方向に略連続的に並んでいる。
【0079】
本実施の形態5の変形例2において、図8に示すように、樹脂基材1は、上述した実施の形態5と同様に長手方向と短手方向とを有する。複数の半導体装置10は、上述した実施の形態5と同様に、樹脂基材1上の長手方向に列をなすように形成されている。そして、補強線11a、11c、11dおよび補強線11e、11g、11hは、これら複数の半導体装置10の列に対して平行となるように形成され、樹脂基材1の長手方向に略連続的に設けられている。すなわち、デザインD1bにおける補強線11a、11c、11dと、デザインD2bにおける補強線11e、11g、11hとは、樹脂基材1上におけるデザイン間の間隙部を除いて、樹脂基材1の長手方向に連続的に形成されている。
【0080】
この変形例2に係る半導体装置用基板50Gでは、実施の形態5と同様に、補強線11a、11dおよび補強線11e、11hは、これら複数の半導体装置10の列の両外縁部において、樹脂基材1の長手方向に略連続的に設けられている。すなわち、デザインD1bにおける補強線11aおよび補強線11dと、デザインD2bにおける補強線11eおよび補強線11hとは、樹脂基材1上におけるデザイン間の間隙部を除いて、樹脂基材1の長手方向に連続的に形成されている。また、半導体装置用基板50Gでは、実施の形態5と異なり、補強線11bおよび補強線11fが形成されていない。このため、これら複数の半導体装置10の全列において、補強線が樹脂基材1の長手方向に略連続的に設けられているわけではない。
【0081】
樹脂基材1上に略連続的に形成された補強線の配置は、上述したものに限らないが、実施の形態5やその変形例2のように、樹脂基材1の長手方向に延在する全ての補強線が略連続的に形成され、かつ複数の半導体装置10の列の両外縁部に補強線を有している方が好ましい。何故ならば、樹脂基材1がロール状に巻かれた際に、外部衝撃や温度、湿度変化による樹脂基材1の巻ズレ(延いては半導体装置用基板の巻ズレ)を低減しやすくなるからである。また、この効果は、複数の半導体装置10の列の両外縁部および各列の間の全てに補強線が形成されている場合により高まるため、このように補強線が形成されることが特に好ましい。
【0082】
<半導体装置>
次に、上記した本発明の各実施の形態に好適に用いられる半導体装置について、実施の形態1に係る半導体装置用基板50の一部分を代表例とする内容を中心に詳細に説明する。本発明に係る半導体装置用基板には、上述したように、複数の半導体装置(例えば図1に示す半導体装置10)が用いられる。例えば、これら複数の半導体装置は、各々、電界効果型トランジスタ(FET)や、FETを備えた各種電子機器のIC、ディスプレイ用TFTアレイ、TFTメモリ、センサ、RFIDタグなどの無線通信装置である。本発明において、当該半導体装置は、これらの具体例に制限されない。
【0083】
図9は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置用基板の一部を抜粋して示す斜視図である。図10は、図9に示す半導体装置用基板のI-I’線における模式断面図である。図9、10では、実施の形態1に係る半導体装置用基板50の半導体装置10(図1参照)がFET20である場合を例示して、本発明の半導体装置用基板に適用される複数の半導体装置を説明する。特に図示しないが、FET20の構成は、半導体装置10がFET20を備える装置である場合も同様である。
【0084】
図9、10に示すように、FET20は、樹脂基材1の上に形成されるゲート電極2と、ゲート電極2を覆うゲート絶縁層3と、その上に設けられるソース電極5およびドレイン電極6と、それらの電極の間に設けられる半導体層4とを有する。また、図9、10に示すように、半導体装置用基板50は、樹脂基材1の上に、複数の補強線11、12を有する。補強線11は、上述した実施の形態1における横方向の補強線11a~11dを総称するものである。補強線12は、上述した実施の形態1における縦方向の補強線12a~12dを総称するものである。
【0085】
FET20の構造は、図10に例示したように、ゲート電極2が半導体層4の下側に配置される、いわゆるボトムゲート構造である。FET20の構造がボトムゲート構造である場合、樹脂基材1の材質によるFET20の特性変化を起こりにくくすることができる。
【0086】
また、FET20の構造は、図10に例示した態様のボトムゲート構造に限定されない。図11は、図10に示す半導体装置用基板の第1変形例を示す模式断面図である。FET20の構造は、図11に例示したように、複数のFET20に共通するゲート絶縁層3が形成されているボトムゲート構造であってもよい。この場合、補強線12は、図11に示すように、ゲート絶縁層3によって覆われていても良い。特に図11には図示されていないが、上記補強線12と同様に、補強線11もゲート絶縁層3によって覆われていても良い。
【0087】
補強線11、12は、複数の半導体装置(例えばFET20)に含まれる電極層のうち少なくとも一つを構成する材料と同一の材料によって構成される。図9、10においては、補強線11、12とゲート電極2とは、同一の材料によって、同一の層に形成されている。図12は、図10に示す半導体装置用基板の第2変形例を示す模式断面図である。補強線11、12は、ソース電極5およびドレイン電極6と同一材料によって、これらの電極と同一の層に形成されても構わない。その場合、FET20の構造は、図12に例示するように、複数のFET20に共通するゲート絶縁層3が形成されているボトムゲート構造であってもよい。これらFET20のボトムゲート構造において、補強線11、12とソース電極5およびドレイン電極6とは、ゲート絶縁層3上に形成される。
【0088】
補強線11、12とゲート電極2とが同一の層に形成されていること、または、補強線11、12とソース電極5およびドレイン電極6とが同一の層に形成されていることは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などで半導体装置用基板50の断面を観察することで確認することができる。
【0089】
また、FET20の構造は、図10に例示したように、半導体層4の上面にソース電極5およびドレイン電極6が配置される、いわゆるトップコンタクト構造である。しかし、FET20に適用できる構造は、これに限られるものではなく、ボトムコンタクト構造であっても構わない。
【0090】
また、図10、11に例示したFET20の構造は、ゲート電極2が半導体層4の下側(樹脂基材1側)に配置される、いわゆるボトムゲート構造であるが、これに限られるものではない。例えば、FET20の構造は、ゲート電極2が半導体層4の上側(樹脂基材1とは反対側)に配置される、いわゆるトップゲート構造であっても構わない。特に図示しないが、FET20の構造がトップゲート構造である場合、補強線11、12は、半導体層4の下側に位置するソース電極5およびドレイン電極6と同一の材料によって、これらソース電極5およびドレイン電極6と同一の層に設けられることが好ましい。
【0091】
以上から、FET20の構造がボトムゲート構造であるかトップゲート構造であるかに関わらず、補強線11、12は、FET20に含まれるソース電極5、ドレイン電極6およびゲート電極2のうち、樹脂基材1に近い側(例えば半導体層4の下部側)に位置する電極(すなわち基材側の電極)と同一の材料によって、当該基材側の電極と同一の層に設けられている方が、樹脂基材1の変形を抑制しやすくなる。FET20の構造がボトムゲート構造である場合、当該基材側の電極は、ゲート電極2である(図10、11参照)。FET20の構造がトップゲート構造である場合、当該基材側の電極は、ソース電極5およびドレイン電極6である。
【0092】
ただし、FET20の構造がボトムゲート構造である方が、トップゲート構造の場合に比べ、樹脂基材1の材質によるFET20の特性変化を起こりにくくすることができる。
【0093】
(実施の形態6)
図13は、本発明の実施の形態6に係る半導体装置用基板の一構成例を示す模式図である。図13には、本発明の実施の形態6に係る半導体装置用基板50Hの一部を抜粋して示す斜視図が示されている。図14は、図13に示す半導体装置用基板のII-II’線における模式断面図である。本発明の実施の形態6では、半導体装置用基板50Hが上述した複数の半導体装置10として複数のFET20およびFET30を備える場合を例示して、本発明に係る半導体装置用基板およびこれに適用される複数の半導体装置の構成を説明する。
【0094】
図13に示すように、半導体装置用基板50Hは、樹脂基材1を有し、この樹脂基材1の上に、複数のFET20、30と、複数の補強線11、12と、複数の第2補強線41、42とを有する。複数のFET20、30は、FET20およびFET30の1セットが上述した半導体装置10を構成するものである。補強線11、12は、これら複数のFET20、30を1セット毎に囲む領域を樹脂基材1の上に複数形成している。第2補強線41、42は、それぞれ、補強線11、12に沿って樹脂基材1の上に設けられている。例えば、第2補強線41は、横方向(樹脂基材1の長手方向)の補強線11の上に重なるように形成されている。第2補強線42は、縦方向(樹脂基材1の短手方向)の補強線12の上に重なるように形成されている。
【0095】
また、図13、14に示すように、FET20およびFET30は、樹脂基材1の上に形成されるゲート電極2と、ゲート電極2を覆うゲート絶縁層3と、その上に設けられるソース電極5およびドレイン電極6と、それらの電極の間に設けられる半導体層4とを有する。FET30は、さらに、ゲート絶縁層3とは反対側で半導体層4と接する第2絶縁層7を有する。このような第2絶縁層7を半導体層4上に形成することにより、例えば、通常はp型半導体特性を示すCNT-FETを、n型半導体特性を示す半導体素子へ転換できる。当該「CNT-FET」は、カーボンナノチューブ(以下、CNTという)によって形成された半導体層を備えるFETである。例えば、本実施の形態6では、FET20およびFET30が各々CNT-FETであり、これらFET20およびFET30の各半導体層4は、CNTを含有する。
【0096】
FET20、30の構造は、図14に例示したように、ゲート電極2が半導体層4の下側に配置される、いわゆるボトムゲート構造である。FET20、30の構造がボトムゲート構造である場合、樹脂基材1の材質によるFET20、30の特性変化を起こりにくくすることができる。
【0097】
また、FET20、30の構造は、図14に例示した態様のボトムゲート構造に限定されない。図15は、図13に示す半導体装置用基板の第1変形例を示す模式断面図である。FET20、30の構造は、図15に例示したように、複数のFET20、30同士で連続するゲート絶縁層3が形成されているボトムゲート構造であってもよい。この場合、補強線12は、図15に示すように、ゲート絶縁層3によって覆われていても良い。特に図15には図示されていないが、上記補強線12と同様に、補強線11もゲート絶縁層3によって覆われていても良い。
【0098】
補強線11、12は、複数の半導体装置(例えばFET20、30)に含まれる電極層のうち少なくとも一つを構成する材料と同一の材料によって構成される。図13、14においては、補強線11、12とゲート電極2とは、同一の材料によって、同一の層に形成されている。図16は、図13に示す半導体装置用基板の第2変形例を示す模式断面図である。補強線11、12は、ソース電極5およびドレイン電極6と同一材料によって、これらの電極と同一層に形成されても構わない。その場合、FET20およびFET30の構造は、図16に例示するように、複数のFET20およびFET30に共通するゲート絶縁層3が形成されているボトムゲート構造であってもよい。これらFET20およびFET30のボトムゲート構造において、補強線11、12とソース電極5およびドレイン電極6とは、ゲート絶縁層3上に形成される。
【0099】
また、第2補強線41、42は、上述したFET20、30のボトムゲート構造の種類によらず、第2絶縁層7と同一の材料によって構成されることが好ましい。これにより、局所的に形成された第2絶縁層7によって生じる樹脂基材1の剃りを抑制することができる。
【0100】
図13、14に示す例では、第2補強線41および第2補強線42は、それぞれ補強線11および補強線12と重なるように形成されているが、これらの補強線11、12の一部だけと重なるように形成しても、これらの補強線11、12と重ならないように形成しても良い。また、図13に示す例では、第2補強線41および第2補強線42は、互いに連続するように形成されているが、それぞれ断続的に形成されていても構わない。
【0101】
また、図15に例示したように、ゲート絶縁層3は、複数のFET20および複数のFET30に共通する構造となるよう形成しても良い。この場合、ゲート絶縁層3によって補強線11、12が覆われていても良く、ゲート絶縁層3の上に第2補強線41、42が形成されていても良い。
【0102】
補強線11、12とゲート電極2とが同一の層に形成されていること、または、補強線11、12とソース電極5およびドレイン電極6とが同一の層に形成されていることは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などで半導体装置用基板50Hの断面を観察することで確認することができる。
【0103】
また、FET20およびFET30の構造は、図14に例示したように、半導体層4の上面にソース電極5およびドレイン電極6が配置される、いわゆるトップコンタクト構造である。しかし、FET20およびFET30に適用できる構造は、これに限られるものではなく、ボトムコンタクト構造であっても構わない。
【0104】
(ゲート電極)
ゲート電極2は、電極として使用されうる導電性材料を含むものであれば、いかなるものでもよい。ゲート電極2の導電性材料としては、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。また、ゲート電極2の導電性材料としては、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、モリブデン、アモルファスシリコンやポリシリコンなどの金属、これらの中から選択される複数の金属の合金、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質が挙げられる。また、ゲート電極2の導電性材料としては、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸との錯体、ヨウ素などのドーピングによって導電率を向上させた導電性ポリマーが挙げられる。さらには、ゲート電極2の導電性材料としては、炭素材料、有機成分と導電体とを含有する材料などが挙げられる。
【0105】
ゲート電極2の材料として上記有機成分と導電体とを含有する材料を用いた場合、ゲート電極2の柔軟性が増し、屈曲時にもゲート電極2の密着性が良く、ゲート電極2の電気的接続が良好となる。このような材料に含有される有機成分としては、特に制限はないが、モノマー、オリゴマーもしくはポリマー、光重合開始剤、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、顔料などが挙げられる。これらの中でも、ゲート電極2の折り曲げ耐性向上の観点からは、オリゴマーもしくはポリマーが好ましい。しかし、ゲート電極2および配線の導電性材料は、これらに限定されるものではない。これらの導電性材料は、単独で用いてもよいが、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
【0106】
また、ゲート電極2の幅、厚み、および各ゲート電極間の間隔は任意である。具体的には、ゲート電極2の幅は、5μm以上、1mm以下であることが好ましい。ゲート電極2の幅をこの範囲内とすることで、ゲート電極2とソース電極5およびドレイン電極6とのオーバーラップ制御やチャネル長制御によるFET特性制御が行いやすくなる。ゲート電極2の厚みは、FET(例えば上述したFET20、30)がボトムゲート構造である場合、補強線11、12と同じ厚みであり、30nm以上、500nm以下であることが好ましい。補強線11、12の厚みとゲート電極2の厚みとが同じであることは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などで半導体装置用基板の断面を観察することで確認することができる。
【0107】
(ゲート絶縁層)
ゲート絶縁層3に用いられる材料としては、特に限定されないが、酸化シリコン、アルミナ等の無機材料;ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール等の有機高材料;あるいは無機材料粉末と有機材料との混合物が挙げられる。中でも、ゲート絶縁層3の材料は、ケイ素原子と炭素原子との結合を有する有機化合物を含むことが好ましい。また、それに加えて、ゲート絶縁層3の材料は、金属原子と酸素原子との結合を有する金属化合物を含むことがさらに好ましい。
【0108】
ゲート絶縁層3は、単層でも複数層でもよい。また、ゲート絶縁層3は、1つの層を複数の絶縁性材料から形成したものでもよいし、複数の絶縁性材料を積層して複数の絶縁層を形成したものでも構わない。
【0109】
(ソース電極およびドレイン電極)
ソース電極5およびドレイン電極6(以下、ソース・ドレイン電極と適宜略記する)は、電極として使用されうる導電材料を含むものであれば、いかなるものでもよい。ソース・ドレイン電極の導電性材料としては、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。また、ソース・ドレイン電極の導電性材料としては、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、モリブデン、アモルファスシリコンやポリシリコンなどの金属、これらの中から選択される複数の金属の合金、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質が挙げられる。また、ソース・ドレイン電極の導電性材料としては、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸との錯体、ヨウ素などのドーピングによって導電率を向上させた導電性ポリマーが挙げられる。さらには、ソース・ドレイン電極の導電性材料としては、炭素材料、有機成分と導電体とを含有する材料などが挙げられる。
【0110】
ソース・ドレイン電極の導電性材料として上記有機成分と導電体とを含有する材料を用いた場合、ソース・ドレイン電極の柔軟性が増し、屈曲時にもソース・ドレイン電極の密着性が良く、ソース・ドレイン電極の電気的接続が良好となる。このような材料に含有される有機成分としては、特に制限はないが、モノマー、オリゴマーもしくはポリマー、光重合開始剤、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、顔料などが挙げられる。これらの中でも、ソース・ドレイン電極の折り曲げ耐性向上の観点からは、オリゴマーもしくはポリマーが好ましい。しかし、ソース・ドレイン電極および配線の導電性材料は、これらに限定されるものではない。これらの導電性材料は、単独で用いてもよいが、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
【0111】
ソース電極5とドレイン電極6との間隔は、1μm以上、500μm以下であることが好ましい。さらに、ソース・ドレイン電極に接続する配線の幅および厚みも任意である。具体的には、当該配線の厚みは、0.01μm以上、100μm以下であることが好ましい。当該配線の幅は、5μm以上、500μm以下であることが好ましい。しかし、これらの寸法は、上記のものに限らない。
【0112】
(半導体層)
半導体層4に用いられる材料としては、半導体性を示す材料であれば特に限定されず、キャリア移動度の高い材料が好ましく用いられる。また、半導体層4の材料としては、低コストで簡便な塗布プロセスが適用できるものが好ましく、有機半導体やカーボン材料が好ましい例として挙げられる。
【0113】
半導体層4に用いられる有機半導体としては、ペンタセン、ポリチオフェン類、チオフェンユニットを主鎖中に含む化合物、ポリピロール類、ポリ(p-フェニレンビニレン)類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリジアセチレン類、ポリカルバゾール類、ポリフラン類、含窒素芳香環を構成単位とするポリヘテロアリール類、縮合多環芳香族化合物、複素芳香族化合物、芳香族アミン誘導体、ビスカルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン類、銅ポルフィリンなどの金属ポルフィリン類、ジスチリルベンゼン誘導体、アミノスチリル誘導体、芳香族アセチレン誘導体、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、有機色素、など公知のものを利用することができる。上記の有機半導体は、これらを2種以上含有してもよい。
【0114】
半導体層4に用いられるカーボン材料としては、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、フラーレンなどが挙げられる。中でも、樹脂基材1の搬送方式としてロール・トゥ・ロール方式を適用した場合、200℃以下の低温形成が可能である点、塗布プロセスへの適性が高い点から、上記カーボン材料としてCNTが好ましい。さらには、有機半導体と異なり結晶化を必要とせず、CNT同士のネットワーク構造によって高移動度が達成できるため、シート基材が熱や張力などの外部起因によって伸縮しても高移動度が維持しやすい点からも、上記カーボン材料としてCNTが好ましい。
【0115】
CNTとしては、1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT、複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNTのいずれを用いてもよく、これらを2種以上用いてもよい。中でも、半導体の特性を示すという観点から、単層CNTを用いることが好ましく、特に、当該単層CNTは、半導体型単層CNTを90重量%以上含むことがより好ましい。さらに好ましくは、単層CNTが半導体型単層CNTを95重量%以上含むことである。
【0116】
さらに、表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したCNT(以下、CNT複合体という)は、溶液中での分散安定性に優れ、高移動度が得られるため、半導体層4のカーボン材料として特に好ましい。ここで、共役系重合体とは、繰り返し単位が共役構造をとり、重合度が2以上の化合物を指す。また、CNTが均一に分散した溶液を用いることで、CNTが均一に分散した膜(半導体層4を構成する膜)をインクジェット法等の塗布法により形成することができる。
【0117】
「共役系重合体がCNTの表面の少なくとも一部に付着した状態」とは、CNT表面の一部、あるいは全部を共役系重合体が被覆した状態を意味する。共役系重合体がCNTを被覆できるのは、それぞれの共役系構造に由来するπ電子雲が重なることによって相互作用が生じるためと推測される。CNTが共役系重合体で被覆されているか否かは、対象とするCNTの反射色が被覆されていないCNTの色から共役系重合体の色に近づくことで判別できる。定量的には、X線光電子分光法(XPS)などの元素分析によって、付着物の存在とCNTに対する付着物の質量比とを同定することができる。
【0118】
CNTに付着させる共役系重合体は、分子量、分子量分布や構造に関わらず用いることができる。CNTへの付着のし易さという観点から、該共役系重合体は、重量平均分子量が1000以上であることが好ましい。
【0119】
共役系重合体をCNTに付着させる方法としては、例えば、以下に示す第1~第4の方法等が挙げられる。第1の方法としては、溶融した共役系重合体中にCNTを添加して混合する方法が挙げられる。第2の方法としては、共役系重合体を溶媒中に溶解させ、この中にCNTを添加して混合する方法が挙げられる。第3の方法としては、CNTを溶媒中で予め超音波等で予備分散しておいた所に共役系重合体を添加し混合する方法が挙げられる。第4の方法としては、溶媒中に共役系重合体とCNTを入れ、この混合系に超音波を照射して混合する方法が挙げられる。本発明では、これら複数の方法を組み合わせてもよい。
【0120】
本発明において、CNTの長さは、ソース電極5とドレイン電極6との間の距離(チャネル長)よりも短いことが好ましい。CNTの平均長さは、チャネル長によるが、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下である。一般に市販されているCNTは長さに分布があり、チャネル長よりも長いCNTが含まれることがある。このため、半導体層4を形成する工程には、CNTをチャネル長よりも短くする工程を加えることが好ましい。CNTをチャネル長よりも短くする方法としては、例えば、硝酸、硫酸などによる酸処理、超音波処理、または凍結粉砕法などにより、CNTを短繊維状にカットする方法が有効である。また、フィルターによる分離を併用することは、CNTの純度を向上させるという観点から、さらに好ましい。また、CNTの直径は、特に限定されないが、1nm以上100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。
【0121】
上記のCNTを被覆する共役系重合体としては、ポリチオフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリ-p-フェニレン系重合体、ポリ-p-フェニレンビニレン系重合体、チオフェンユニットとヘテロアリールユニットを繰り返し単位中に有するチオフェン-ヘテロアリーレン系重合体などが挙げられる。上記共役系重合体は、これらを2種以上用いたものでもよい。上記共役系重合体としては、単一のモノマーユニットが並んだもの、異なるモノマーユニットをブロック共重合したもの、ランダム共重合したもの、または、グラフト重合したものなどを用いることができる。
【0122】
また、半導体層4としては、CNT複合体と有機半導体とを混合したものを用いてもよい。有機半導体中にCNT複合体を均一に分散させることにより、有機半導体そのものの特性を維持しつつ、高い移動度を実現することが可能となる。
【0123】
また、半導体層4は、さらに絶縁性材料を含んでもよい。ここで用いられる絶縁性材料としては、本発明の絶縁材料組成物や、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリマー材料が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0124】
半導体層4は、単層でも複数層でもよい。半導体層4の膜厚は、1nm以上200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。半導体層4をこの範囲内の膜厚にすることにより、均一な薄膜形成が容易になり、さらにゲート電圧によって制御できないソース・ドレイン電極間の電流を抑制し、FETのオンオフ比をより高くすることができる。半導体層4の膜厚は、原子間力顕微鏡やエリプソメトリ法などにより測定できる。
【0125】
また、ゲート絶縁層3と半導体層4との間に配向性層を設けることもできる。この配向性層の材料としては、シラン化合物、チタン化合物、有機酸、ヘテロ有機酸など、公知の材料を用いることができ、特に有機シラン化合物が好ましい。
【0126】
本発明では、複数のFETの少なくとも一部の半導体層4に対して、ゲート絶縁層3とは反対側で半導体層4と接する第2絶縁層(例えば図14に示す第2絶縁層7)を形成してもよい。これにより、半導体層4を酸素や水分などの外部環境から保護することができる。
【0127】
上記第2絶縁層に用いられる材料としては、特に限定されないが、具体的には酸化シリコン、アルミナ等の無機材料、ポリイミドやその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサンやその誘導体、ポリビニルフェノールやその誘導体等などのポリマー材料、あるいは無機材料粉末とポリマー材料との混合物や有機低分子材料とポリマー材料との混合物を挙げることができる。
【0128】
形成されたFET(例えば図14等に示すFET20、30)は、ソース電極5とドレイン電極6との間に流れる電流を、ゲート電圧を変化させることによって制御することができる。FETの性能の指標となる移動度は、下記の(a)式を用いて算出することができる。
移動度μ=(δId/δVg)L・D/(W・εr・ε・Vsd)(a)
【0129】
ただし、(a)式において、Idはソース・ドレイン電極間の電流であり、Vsdはソース・ドレイン電極間の電圧である。Vgは、ゲート電圧である。Dは、ゲート絶縁層3の厚みである。Lはチャネル長であり、Wはチャネル幅である。εrはゲート絶縁層3の比誘電率であり、εは真空の誘電率(8.85×10-12F/m)である。
【0130】
上記のFETは、移動度が高く、ゲート電極2とソース電極5およびドレイン電極6との相対位置が高精度に制御されたFETとなる。
【0131】
(第2絶縁層)
第2絶縁層7は、半導体層4に対してゲート絶縁層3が形成された側の反対側に形成される。「半導体層4に対してゲート絶縁層3が形成された側の反対側」とは、例えば、半導体層4の下側にゲート絶縁層3を有する場合は、半導体層4の上側を指す。第2絶縁層を形成することにより、通常はp型半導体特性を示すCNT-FETを、n型半導体特性を示す半導体素子へ転換することができる。
【0132】
第2絶縁層7は、炭素原子と窒素原子との結合を有する有機化合物を含有することが好ましい。そのような有機化合物としては、いかなる有機化合物でもよいが、例えば、アミド系化合物、イミド系化合物、ウレア系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、アニリン系化合物、ニトリル系化合物などを挙げることができる。さらに、第2絶縁層7は、ポリマーを含有することにより、炭素原子と窒素原子との結合を有する有機化合物とCNTとが相互作用する場を安定に保つことができると考えられるので、より安定したn型半導体特性が得られると推定される。第2絶縁層7に含まれるポリマーとしては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、オレフィンポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリカーボネート、ビニルアルコール系樹脂、フェノール系樹脂などが挙げられる。
【0133】
第2絶縁層7は、有機化合物やポリマー以外に、他の化合物を含有していてもよい。当該他の化合物としては、例えば、第2絶縁層7を塗布で形成する場合における、溶液の粘度やレオロジーを調節するための増粘剤やチクソ剤などが挙げられる。また、第2絶縁層7は、単層でも複数層でもよい。
【0134】
第2絶縁層7の形成方法としては、特に限定されず、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、CVDなどの乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から、塗布法を用いることが好ましい。当該塗布法として、具体的には、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、ドロップキャスト法などを好ましく用いることができる。塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて、第2絶縁層7の塗布法を選択することができる。
【0135】
<半導体装置用基板の製造方法>
つぎに、本発明に係る半導体装置用基板の製造方法について、上述した実施の形態5に係る半導体装置用基板50Eの製造方法を代表例とする内容を中心に詳細に説明する。本発明に係る半導体装置用基板の製造方法は、上述した各実施の形態に係る半導体装置用基板のいずれかを製造するものである。上述した各実施の形態に係る半導体装置用基板のおずれかを製造する場合の製造方法は、樹脂基材1上における、複数の半導体装置の構成部材のうちいずれか一つの形成と補強線の形成とを同一の工程で行う、ことが好ましい。これにより、半導体装置用基板の製造に要する材料の種類および工程数を削減することができる。
【0136】
図17は、本発明の実施の形態5に係る半導体装置用基板の製造方法の一例を説明するための斜視図である。図18Aは、本発明の実施の形態5に係る半導体装置用基板の製造方法の第1工程例を示す部分拡大模式図である。図18Bは、本発明の実施の形態5に係る半導体装置用基板の製造方法の第2工程例を示す部分拡大模式図である。図18A、18Bには、図17に示す半導体装置用基板50Eの一部分(破線IIIで囲まれる部分)を抜粋して、この半導体装置用基板50Eの製造方法の各工程が示されている。この半導体装置用基板50Eを製造する上で、以下の各工程は、長尺の樹脂基材1をロール・トゥ・ロール方式によって搬送しながら行われる。このロール・トゥ・ロール方式の搬送において、樹脂基材1の搬送方向は、この樹脂基材1の長手方向(図17中の太線矢印参照)と同じ方向である。
【0137】
半導体装置用基板50Eの製造方法では、まず、図18Aの状態S1に示すように、樹脂基材1の面上に対してゲート電極2の形成と補強線31~38の形成とを行う補強線形成工程が実施される。この補強線形成工程では、樹脂基材1の上にゲート電極2および補強線31~38を同一の工程で形成する。なお、ここでいう同一の工程とは、ゲート電極2および補強線31~38を一括で形成することだけでなく、ゲート電極2または補強線31~38の一方を先に形成し、続いて、次のゲート絶縁層を形成する工程の前に他方(ゲート電極2または補強線31~38のうち未だ形成していないもの)を形成することも含む。これらの中でも、ゲート電極2および補強線31~38を一括で形成することが好ましい。
【0138】
上記補強線形成工程におけるゲート電極2および補強線31~38の形成方法としては、真空蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、メッキ、CVD、イオンプレーティングコーティング、インクジェット、印刷などの公知技術を用いた方法や、有機成分および導電体粒子を含むペーストをブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法などの公知の技術で絶縁基板上に塗布し、オーブン、ホットプレート、赤外線などを用いて乾燥を行い形成する方法などが挙げられる。これらのゲート電極2および補強線31~38の形成方法は、ゲート電極2と配線(図示せず)との導通を取ることができれば、特に制限されない。また、上記補強線形成工程において、補強線31~38は、ゲート電極2を構成する材料と同一の材料によって形成される。
【0139】
また、上記補強線形成工程において、ゲート電極2および補強線31~38をパターン状に形成するパターン形成方法としては、上記方法で作製した電極薄膜を公知のフォトリソグラフィ法などで所望の形状にパターン形成するものでもよいし、あるいは電極および配線物質の真空蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターン形成するものでもよい。また、上記パターン形成方法としては、インクジェット法や印刷法を用いて直接パターンを形成するものでもよい。
【0140】
上記補強線形成工程は、これらの方法の中でも、樹脂基材1上にスパッタリングもしくは真空蒸着法によって成膜した金属膜を加工し、当該金属膜をゲート電極2および補強線31~38に対応するパターンに加工するパターニング工程を含むものが好ましい。また、上記補強線形成工程は、樹脂基材1上に導電体粒子と感光性有機成分とを含有する感光性ペーストを用いて塗布膜を形成する成膜工程と、その塗布膜をフォトリソグラフィ法によってゲート電極2および補強線31~38に対応するパターンに加工するパターニング工程とを含むものも好ましい。これらの方法(工程)を上記補強線形成工程に用いることで、平坦性が高く、厚みおよびパターン形状が均一なゲート電極2および補強線31~38を形成することができる。このため、作製されるFETのリーク率を低減し且つ当該FETの特性ばらつきを低減することができる。本発明に用いられる感光性ペーストの好ましい実施の形態としては、例えば、国際公開第2018/051860号や国際公開第2017/030070号に記載されているものが挙げられる。
【0141】
ロール・トゥ・ロール方式によって連続して搬送される樹脂基材1をロール状に巻き取った際、補強線31~34に対応する樹脂基材1の箇所は、それらの重なりによってロール厚みが厚くなり、補強線31~34の列数分のゲージ状のバンドができる。補強線31~34の厚みが均一である場合、それぞれのバンドの厚みが均一となることで樹脂基材1の巻きズレを低減することができる。また、補強線31~38の厚みとゲート電極2の厚みとを均一とすることで、ロール状に巻かれた樹脂基材1において、ゲート電極2が重なって蓄積される厚みよりも補強線31~34が重なって蓄積される厚みの方が厚くなる。このため、樹脂基材1のロールが巻き締まり擦れることで発生するゲート電極2の断線発生を低減することができる。
【0142】
樹脂基材1の厚みは、25μm以上100μm以下であることが好ましい。樹脂基材1の厚みをこの範囲内にすることで、樹脂基材1は高い耐久性と適度な柔軟性とを有し得るため、ロール・トゥ・ロール方式における、樹脂基材1の搬送蛇行や巻ズレを抑えることができる。この結果、樹脂基材1上への半導体装置の形成効率が向上する。
【0143】
なお、厚みが均一とは、任意の5カ所の厚みを測定した際の平均値に対する標準偏差が5%以内に収まっていることをいう。また、ゲート電極等の電極の厚みと補強線の厚みとが同じであるとは、樹脂基材1の面内に形成されている電極および補強線について、それぞれ任意の5カ所の厚みを測定した際の平均値の差が、より値が大きい方の平均値に対し10%以内に収まっていることをいう。
【0144】
次に、図18Aの状態S2に示すように、ゲート絶縁層3の形成を行う第1絶縁層形成工程が実施される。この第1絶縁層形成工程では、上述したゲート電極2(図18Aの状態S1参照)の上にゲート絶縁層3を形成する。ゲート絶縁層3の形成方法としては、真空蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、メッキ、CVD、イオンプレーティングコーティング、インクジェット、印刷、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法などの公知の技術が挙げられる。しかし、ゲート絶縁層3の形成方法は、これらに限定されるものではない。
【0145】
また、図18Aには図示しないが、ゲート絶縁層3は、補強線31~38の上にも形成されても構わないし、ゲート電極2および補強線31~38が形成された樹脂基材1の全面に形成されても構わない。
【0146】
次に、図18Bの状態S3に示すように、半導体層4の形成を行う半導体層形成工程が実施される。この半導体層形成工程では、上述したゲート絶縁層3(図18Aの状態S2参照)の上に、CNTを含む溶液を塗布して半導体層4を形成する。半導体層4の形成方法としては、製造コストや大面積への適合の観点から、塗布法を用いることが好ましい。当該塗布法としては、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコート法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の塗布方法が挙げられる。中でも、当該塗布法は、インクジェット法、ディスペンサー法およびスプレー法からなる群より選ばれるいずれか一つであることが好ましい。さらに、原料の使用効率の観点から、インクジェット法がより好ましい。当該塗布法としては、これらの塗布方法の中から、塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて適切なものを選択できる。また、この半導体層形成工程では、形成した塗膜に対して、大気下、減圧下または不活性ガス雰囲気下(窒素やアルゴン雰囲気下)でアニーリング処理を行ってもよい。
【0147】
次に、図18Bの状態S4に示すように、ソース・ドレイン電極の形成を行う電極形成工程が実施される。この電極工程では、上述したゲート絶縁層3および半導体層4(図18Bの状態S3参照)の上に、ソース電極5およびドレイン電極6を形成する。ソース電極5およびドレイン電極6の形成方法としては、真空蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、メッキ、CVD、イオンプレーティングコーティング、インクジェット、印刷などの公知技術を用いた方法や、有機成分および導電性粒子を含むペーストをスピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法などの公知の技術で絶縁基板上に塗布し、オーブン、ホットプレート、赤外線などを用いて乾燥を行い形成する方法などが挙げられる。しかし、これらの電極の形成方法は、ソース電極5およびドレイン電極6と配線(図示せず)との導通を取ることができれば、特に制限されない。
【0148】
また、半導体装置用基板50Eの製造方法では、上述したようにゲート電極2と補強線31~38とを同一の工程で形成する代わりに、ソース電極5およびドレイン電極6と補強線31~38とを同一の工程で形成する補強線形成工程を行ってもよい。この際、補強線31~38の材料は、ソース電極5およびドレイン電極6を構成する材料と同一の材料である。当該補強線形成工程において、ソース電極5およびドレイン電極6と補強線31~38とをパターン状に形成するパターン形成方法としては、上記方法で作製した電極薄膜を公知のフォトリソグラフィ法などで所望の形状にパターン形成するものでもよいし、あるいは電極および配線物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターン形成するものでもよい。また、上記パターン形成方法としては、インクジェット法や印刷法を用いて直接パターンを形成するものでもよい。
【0149】
次に、上述した実施の形態6に係る半導体装置用基板50H(図13参照)を例示して、本発明に係る半導体装置用基板の製造方法の変形例を説明する。図19Aは、本発明の実施の形態6に係る半導体装置用基板の製造方法の第1工程例を示す部分拡大模式図である。図19Bは、本発明の実施の形態6に係る半導体装置用基板の製造方法の第2工程例を示す部分拡大模式図である。図19A、19Bには、本実施の形態6に係る半導体装置用基板50Hの一部分を抜粋して、この半導体装置用基板50Hの製造方法の各工程が示されている。図19A、19Bに示す半導体装置用基板50Hの一部分は、図17に示した半導体装置用基板50Eの破線IIIで囲まれる部分と同様である。この半導体装置用基板50Hの製造方法において、樹脂基材1は、上述した実施の形態5に係る半導体装置用基板50Eの製造方法(図17参照)と同様に、長尺の樹脂基材である。また、この半導体装置用基板50Hを製造する上で、以下の各工程は、長尺の樹脂基材1をロール・トゥ・ロール方式によって搬送しながら行われる。この際、樹脂基材1の搬送方向は、上述した実施の形態5における搬送方向(図17中の太線矢印参照)と同じ方向である。
【0150】
半導体装置用基板50Hの製造方法では、まず、図19Aに示すように、ゲート電極2の形成と補強線31~38の形成とを行う補強線形成工程(状態S11)と、ゲート絶縁層3の形成を行う第1絶縁層形成工程(状態S12)と、半導体層4の形成を行う半導体層形成工程(状態S13)とが実施される。本実施形態6の補強線形成工程では、ゲート電極2の形成数以外、上述した実施の形態5と同様の方法によって、樹脂基材1の上にゲート電極2および補強線31~38を同一の工程で形成する。本実施形態6の第1絶縁層形成工程では、ゲート絶縁層3が覆うゲート電極2の数以外、上述した実施の形態5と同様の方法によって、上記ゲート電極2の上にゲート絶縁層3を形成する。この際、ゲート絶縁層3は、図19Aに示すように2つ1組のゲート電極2を覆うように形成されても構わないし、補強線31~38の上にも形成されても構わないし、ゲート電極2および補強線31~38が形成された樹脂基材1の全面に形成されても構わない。本実施形態6の半導体層形成工程では、半導体層4の形成パターン以外、上述した実施の形態5と同様の方法によって、上記ゲート絶縁層3の上に半導体層4を形成する。
【0151】
次に、図19Bの状態S14に示すように、ソース・ドレイン電極の形成を行う電極形成工程が実施される。本実施の形態6の電極形成工程では、ソース・ドレイン電極の形成数以外、上述した実施の形態5と同様の方法によって、上記ゲート絶縁層3および半導体層4の上に、ソース電極5およびドレイン電極6を形成する。この際、上述した補強線形成工程においてゲート電極2と補強線31~38とを同一の工程で形成する代わりに、ソース電極5およびドレイン電極6と補強線31~38とを同一の工程で形成してもよい。この工程において、補強線31~38の材料は、ソース電極5およびドレイン電極6を構成する材料と同一の材料である。
【0152】
次に、図19Bの状態S15に示すように、第2絶縁層7の形成と第2補強線51~58の形成とを行う第2補強線形成工程が実施される。この第2補強線形成工程では、上述した複数の半導体層4のうち一部の半導体層4の上に第2絶縁層7を形成する工程と、上述した補強線31~38の上に第2補強線51~58を形成する工程とを同一の工程で行う。この際、第2補強線51~58の材料は、第2絶縁層7を構成する材料と同一の材料である。
【0153】
第2絶縁層7および第2補強線51~58の形成方法としては、特に限定されず、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、CVDなどの乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から、塗布法を用いることが好ましい。当該塗布法として、具体的には、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、ドロップキャスト法などを好ましく用いることができる。塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて、第2絶縁層7および第2補強線51~58の塗布法を選択することができる。また、上記第2補強線形成工程では、形成した塗膜に対して、大気下、減圧下または不活性ガス雰囲気下(窒素やアルゴン雰囲気下)でアニーリング処理を行ってもよい。
【0154】
ロール・トゥ・ロール方式によって連続して搬送される樹脂基材1をロール状に巻き取った際、第2補強線51~54(樹脂基材1の長手方向に延在する第2補強線)に対応する樹脂基材1の箇所は、それらの重なりによって樹脂基材1のロール厚みが厚くなる。これにより、巻取られた際のロール状の樹脂基材1内で発生する局所的且つ不均一な厚みムラを防ぐことができる。この結果、ロール状に巻かれた樹脂基材1と第2絶縁層7とが擦れることによる第2絶縁層7の剥離を抑制することができる。
【0155】
以上説明した実施の形態5、6に係る半導体装置用基板の製造方法によれば、複数の半導体装置が、各々、ボトムゲート構造を有する電界効果型トランジスタを備えるように樹脂基材上に形成され、電界効果型トランジスタに含まれるゲート電極の形成と補強線の形成とを同一の工程で行うものであるので、ゲート電極を形成した直後から、補強線によって樹脂基材内の伸縮を制御することができる。そのため、その後の絶縁層形成工程やソース電極およびドレイン電極の形成工程において、位置合わせ精度が向上し、樹脂基材面内の複数の電界効果型トランジスタにおける特性ばらつきを抑えることができる。
【0156】
また、長手方向と短手方向とを有する樹脂基材に対し、複数の半導体装置を樹脂基材上の長手方向に列をなすように形成し、補強線の一部を、半導体装置の列の両外縁部において、樹脂基材の長手方向に略連続的に設けるようにしたので、略連続的に形成された補強線が重なりながら樹脂基材が巻き取られるようになり、この結果、樹脂基材の巻姿が強固になるとともに、ロール状に巻き取られた樹脂基材の巻ズレを抑制することができる。また、略連続的に形成された補強線によって樹脂基材面に半導体装置を囲う領域を複数形成しているので、半導体装置用基板が湿度や温度といった環境の変化にさらされた際に、略連続的な補強線によって囲まれた領域毎に樹脂基材面内の伸縮のばらつきを制御することができる。よって、複数の半導体装置を略連続的に形成する際の、略連続する樹脂基材面の領域毎に位置合わせ精度を向上させることができ、樹脂基材面上における複数の半導体装置の特性ばらつきを抑えることができる。
【0157】
なお、本発明の半導体装置用基板の製造方法は、上述した実施の形態5、6の製造方法に限定されず、例えば、ロール・トゥ・ロール方式以外の手法によって樹脂基材を連続的または断続的に搬送し、当該樹脂基材上に複数の半導体装置および補強線を形成するものでもよい。また、半導体装置に含まれる電極層のうち少なくとも一つの形成と補強線の形成とを同一の工程で行うことが好ましい。すなわち、ソース電極およびドレイン電極の形成と補強線の形成とを同一の工程で行ってもよい。
【0158】
また、図18A、18Bおよび図19A、19Bに例示したFETの構造は、ゲート電極2が半導体層4の下側(樹脂基材1側)に配置される、いわゆるボトムゲート構造であるが、これに限られるものではない。例えば、上記FETの構造は、ゲート電極2が半導体層4の上側(樹脂基材1とは反対側)に配置される、いわゆるトップゲート構造であっても構わない。特に図示しないが、上記FETの構造がトップゲート構造である場合、補強線31~38は、半導体層4の下側に位置するソース電極5およびドレイン電極6と同一の材料によって、これらソース電極5およびドレイン電極6と同一の層に設けられることが好ましい。
【0159】
以上から、上記FETの構造がボトムゲート構造であるかトップゲート構造であるかに関わらず、補強線31~38は、上記FETに含まれるソース電極5、ドレイン電極6およびゲート電極2のうち、樹脂基材1に近い側(例えば半導体層4の下部側)に位置する基材側の電極と同一の材料によって、当該基材側の電極と同一の層に設けられている方が、樹脂基材1の変形を抑制し易くなるので好ましい。中でも、上記FETの構造は、ボトムゲート構造であることが好ましい。何故ならば、樹脂基材1の変形をゲート電極2の形成時から抑制することができるため、その後のゲート電極2とソース電極5およびドレイン電極6との位置合わせなど、素子構造のFETを構成する部材のパターンずれを抑制しやすくすることができるからである。
【0160】
<無線通信装置>
次に、本発明に用いられる半導体装置(例えば図1等に示す半導体装置10)が無線通信装置である場合について説明する。この無線通信装置は、例えば、商品タグ、万引き防止タグ、各種チケットやスマートカードのような、無線電波を用いて情報の通信を行う装置である。この無線通信装置は、例えばRFIDタグのように、外部のリーダ/ライタに搭載されたアンテナから送信される無線信号(搬送波)を受信することで電気通信を行う装置である。
【0161】
無線通信装置の一例としてのRFIDタグの具体的な動作は、例えば、以下の通りである。リーダ/ライタに搭載されたアンテナから送信された無線信号を、RFIDタグのアンテナが受信する。RFIDタグ内のFETは、この受信した無線信号をもとにコマンドを取得し、このコマンドに応じた動作を行う。その後、RFIDタグは、このコマンドに応じた結果の回答を無線信号として、自身のアンテナからリーダ/ライタのアンテナへ送信する。なお、コマンドに応じた動作は、FETから構成される公知の復調回路、動作制御ロジック回路、変調回路などで行われる。
【0162】
本発明に用いられる無線通信装置の好適な実施の形態は、上述のFETと、アンテナと、を少なくとも有するものである。図20は、本発明に適用される無線通信装置の第1構成例を示す模式図である。図21は、本発明に適用される無線通信装置の第2構成例を示す模式図である。本発明における無線通信装置のより具体的な構成としては、図20または図21に示す一例が挙げられる。すなわち、図20または図21に示すように、無線通信装置110、110Aは、基板100を備え、この基板100の上に、アンテナパターン101と、FETを含む回路102と、これら回路102とアンテナパターン101とを接続する接続配線103とを備えている。これらの無線通信装置110、110Aにおいて、基板100は、上述した本発明の半導体装置用基板の樹脂基材(例えば図1等に示す樹脂基材1)を半導体装置毎に切り分けることによって形成される。
【0163】
本発明の半導体装置用基板の製造方法において、複数の半導体装置の各々が無線通信装置である場合、同一の樹脂基材上に上記のような複数の無線通信装置が形成された半導体装置用基板を得ることができる。本発明に係る無線通信装置の製造方法は、このような半導体装置用基板を無線通信装置毎に切り分ける切断工程を含む。具体的には、この無線通信装置の製造方法では、この切断工程により、上記の半導体装置用基板を無線通信装置毎に切り分けることで、個別に無線通信装置を得ることができる。
【0164】
また、本発明の半導体装置用基板の製造方法において、複数の半導体装置の各々が無線通信装置のうちの回路(例えば図20、21に示す回路102)である場合は、これら複数の回路102が樹脂基材上に形成された半導体装置用基板を得ることができる。本発明に係る無線通信装置の製造方法は、このような半導体装置用基板を上記無線通信装置の回路毎に切り分ける切断工程と、この切断工程によって切り分けられた上記無線通信装置の回路をアンテナへ貼り合わせる貼付工程とを含む。具体的には、この無線通信装置の製造方法では、この切断工程により、上記の半導体装置用基板を回路102毎に個別に切り分けた後、得られた複数の回路102を、この貼付工程により、それぞれアンテナに貼り合わせる。これにより、これらの回路102とアンテナ(例えば図20、21に示すアンテナパターン101)とは、上述した接続配線103等の配線によって接続される。この結果、無線通信装置を得ることができる。
【0165】
或いは、本発明に係る無線通信装置の製造方法は、上記のような半導体装置用基板に形成されている無線通信装置の回路102をアンテナと貼り合わせる貼付工程と、この貼付工程によって回路102とアンテナとを貼り合わせた後の半導体装置用基板を無線通信装置(これらの回路102とアンテナとを備えるもの)毎に切り分ける切断工程とを含む。具体的には、この無線通信装置の製造方法では、この貼付工程により、複数の回路102が形成された半導体装置用基板の回路部分をアンテナと貼り合わせてから、この切断工程により、回路102と当該アンテナとを備える無線通信装置を個別に切り分ける。上記貼付工程では、これらの回路102とアンテナとが配線によって接続されている。この結果、無線通信装置を得ることができる。
【0166】
上述した無線通信装置の製造方法において、アンテナ材料および接続配線材料は、導電材料であれば、いかなるものでもよい。具体的には、当該導電材料として、ゲート電極材料と同様のものが挙げられる。中でも、柔軟性が増し、屈曲時にも密着性が良く電気的接続が良好となる点から、導電体とバインダーとを含有するペースト材料が好ましい。アンテナ材料および接続配線材料は、製造コスト低減の観点から、互いに同一材料であることが好ましい。
【0167】
アンテナパターンおよび接続配線パターンを形成するパターン形成方法としては、抜き刃を用いて銅箔やアルミニウム箔などの金属箔を加工して樹脂基材に転写する方法、樹脂基材に貼り付けた金属箔を、金属箔上に形成したレジスト層をマスクとしてエッチングする方法、樹脂基材に導電性ペーストのパターンを塗布法により形成し、熱や光によってそのパターンを硬化させる方法などがある。中でも、製造コスト低減の観点から、樹脂基材に導電ペーストを塗布して形成する方法が好ましい。
【0168】
また、上記導電材料として導電体とバインダーとを含有するペーストを用いた場合は、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法などの公知の技術を用いて、当該ペーストを樹脂基材上に塗布し、オーブン、ホットプレート、赤外線などを用いて乾燥を行う方法なども、上記パターン形成方法の一例として挙げられる。また、アンテナパターンおよび接続配線パターンは、上記方法で作製した導電膜を公知のフォトリソグラフィ法などで所望の形状にパターン形成してもよいし、真空蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターン形成してもよい。
【0169】
さらに、アンテナパターンおよび接続配線パターンは、FETのゲート電極および配線と同一材料から構成されることが好ましい。何故ならば、無線通信装置の製造に要する材料の種類を少なくでき、且つ上記アンテナパターンおよび接続配線パターンとFETのゲート電極および配線とを同一工程で作製することで無線通信装置の製造工程数を削減でき、この結果、無線通信装置の製造コストの低減が可能となるからである。
【0170】
「アンテナパターンおよび接続配線パターンと、FETのゲート電極および配線とが同一材料から構成される」とは、アンテナパターンおよび接続配線パターンとFETのゲート電極および配線とに含まれる元素の中で最も含有モル比率が高い元素が同一であることをいう。アンテナパターンおよび接続配線パターンとFETのゲート電極および配線とに含まれる元素の種類および含有比率は、X線光電子分光(XPS)や二次イオン質量分析法(SIMS)などの元素分析によって、同定することができる。
【0171】
アンテナパターン、接続配線パターン、FETのゲート電極、および配線が同一工程で作製されると、アンテナパターンと接続配線パターンとの接続部、並びに接続配線パターンとFETのゲート電極用配線との接続部は、それぞれ連続相で形成される。アンテナパターン、接続配線パターン、FETのゲート電極、および配線は、これらの密着性、製造コスト低減の観点から、連続相を成すように形成することが好ましい。「アンテナパターン、接続配線パターン、FETのゲート電極、および配線パターンが連続相である」とは、それらのパターンが一体化しており、それらの接続部に接続界面が存在しないことをいう。当該接続部が連続相であることは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などで接続部の断面を観察することで確認することができる。
【0172】
本発明において、アンテナパターンと接続配線パターンとの接続部の幅および厚み、並びに接続配線パターンとFETのゲート電極用配線との接続部の幅および厚みは、それぞれ任意である。
【実施例
【0173】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0174】
(感光性ペーストの作製)
(合成例1)
合成例1では、感光性有機成分として化合物P1を合成した。この化合物P1の合成における共重合比率は、以下の通りである。
共重合比率(質量基準):エチルアクリレート(以下、「EA」)/メタクリル酸2-エチルヘキシル(以下、「2-EHMA」)/スチレン(以下、「St」)/グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」)/アクリル酸(以下、「AA」)=20/40/20/5/15
【0175】
具体的には、まず、窒素雰囲気の反応容器中に、150gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「DMEA」)を仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのEA、40gの2-EHMA、20gのSt、15gのAA、0.8gの2,2’-アゾビスイソブチロニトリルおよび10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのGMA、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライドおよび10gのDMEAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、化合物P1を得た。
【0176】
(合成例2)
合成例2では、感光性有機成分として化合物P2を合成した。この化合物P2の合成における共重合比率は、以下の通りである。
共重合比率(質量基準):2官能エポキシアクリレートモノマー(エポキシエステル3002A;共栄社化学社製)/2官能エポキシアクリレートモノマー(エポキシエステル70PA;共栄社化学社製)/GMA/St/AA=20/40/5/20/15
【0177】
具体的には、まず、窒素雰囲気の反応容器中に、150gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「DMEA」)を仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのエポキシエステル3002A、40gのエポキシエステル70PA、20gのSt、15gのAA、0.8gの2,2’-アゾビスイソブチロニトリルおよび10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのGMA、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライドおよび10gのDMEAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、化合物P2を得た。
【0178】
(合成例3)
合成例3では、感光性有機成分として化合物P3を合成した。化合物P3は、上記合成例2の化合物P2のウレタン変性化合物である。
【0179】
具体的には、まず、窒素雰囲気の反応容器中に、100gのDMEAを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、10gの化合物P2(合成例2の感光性成分)、3.5gのn-ヘキシルイソシアネートおよび10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに3時間反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、ウレタン結合を有する化合物P3を得た。
【0180】
(調製例1)
調製例1では、感光性ペーストAを調製した。具体的には、まず、100mLのクリーンボトルに、上記合成例1により得られた化合物P1(16g)と、上記合成例3により得られた化合物P3(4g)と、共栄社化学社製のライトアクリレートBP-4EA(2g)と、BASFジャパン社製の光重合開始剤OXE-01(4g)と、三新化学工業社製の酸発生剤SI-110(0.6g)と、三菱ガス化学社製のγ-ブチロラクトン(10g)とを入れ、自転-公転真空ミキサー“あわとり練太郎”(登録商標)(ARE-310;シンキー社製)で混合した。これにより、調製例1の感光性樹脂溶液(固形分78.5質量%)を得た。このとき、感光性樹脂溶液の質量は、34.6gであった。この得られた感光性樹脂溶液(8.0g)と平均粒子径0.06μmのAg粒子(42.0g)とを混ぜ合わせ、3本ローラー“EXAKT M-50”(商品名、EXAKT社製)を用いて混練した。これにより、50gの感光性ペーストAを得た。
【0181】
(調製例2)
調製例2では、感光性ペーストBを調製した。具体的には、まず、クリーンボトルに、25.0gのアルカリ可溶性樹脂の溶液(40質量%)、光重合開始剤として1.5gのイルガキュア(登録商標)OXE02(オキシムエステル系化合物;BASF社製)、5.5gのライトアクリレート(登録商標)PE-4A(共栄社化学社製)及び分散剤として2.0gのDISPERBYK(登録商標)140(ビックケミー・ジャパン社製)(アミン価:146mgKOH/g)を入れ、自転公転ミキサー“あわとり練太郎”(登録商標)(ARE-310;シンキー社製)で混合した。これにより、調製例2の感光性樹脂溶液を得た。この調製例2で得られた感光性樹脂溶液(8.0g)と平均粒子径0.06μmのAg粒子(42.0g)とを混ぜ合わせ、さらにDMEAを固形分比率が80質量%になるように加えた後に3本ローラー“EXAKT M-50”(商品名、EXAKT社製)を用いて混練した。これにより、感光性ペーストBを得た。
【0182】
(調製例3)
調製例3では、感光性ペーストCを調製した。具体的には、平均粒子径0.15μmのAg粒子を用いたこと以外は、上述した調製例2と同様の方法で調製を行い、これにより、感光性ペーストCを得た。
【0183】
(半導体溶液の作製)
半導体溶液の作製では、まず、P3HT(アルドリッチ社製、ポリ(3-ヘキシルチオフェン))を2.0mg含有するクロロホルム溶液(10mL)に、CNT(CNI社製、単層CNT、純度95%)を1.0mg加え、氷冷しながら、超音波ホモジナイザー(東京理化器械社製、VCX-500)を用いて出力20%で4時間、超音波撹拌した。これにより、CNT分散液A11(溶媒に対するCNT複合体濃度が0.96g/lのもの)を得た。
【0184】
つぎに、メンブレンフィルター(孔径10μm、直径25mm、ミリポア社製オムニポアメンブレン)を用いて、上記CNT分散液A11の濾過を行い、長さ10μm以上のCNT複合体を除去した。これによって得られた濾液に、o-DCB(和光純薬工業社製)を5mL加えた後、ロータリーエバポレーターを用いて、低沸点溶媒であるクロロホルムを留去し、これにより、溶媒をo-DCBで置換して、CNT分散液B11を得た。CNT分散液B11(1mL)に、o-DCBを3mL加え、これにより、半導体溶液A10(溶媒に対するCNT複合体濃度が0.03g/lのもの)を得た。
【0185】
(ゲート絶縁層の作製例)
ゲート絶縁層の作製例では、ゲート絶縁層溶液A20を作製した。具体的には、まず、メチルトリメトキシシラン(61.29g(0.45モル))、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(12.31g(0.05モル))、およびフェニルトリメトキシシラン(99.15g(0.5モル))を、203.36gのプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃)に溶解した。これに、水(54.90g)およびリン酸(0.864g)を、撹拌しながら加えた。これによって得られた溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分を留出させた。ついで、バス温130℃で2時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水とプロピレングリコールモノブチルエーテルとからなる成分を留出させた。その後、室温まで冷却し、固形分濃度26.0重量%のポリシロキサン溶液A3を得た。得られたポリシロキサン溶液A3中のポリシロキサンの重量平均分子量は、6000であった。
【0186】
つぎに、得られたポリシロキサン溶液A3を10gはかり取り、これに、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、PGMEAという)を54.4g混合して、室温にて2時間撹拌した。このようにして、ゲート絶縁層溶液A20を得た。
【0187】
(第2絶縁層の作製例)
第2絶縁層の作製例では、第2絶縁層溶液A30を作製した。具体的には、まず、2.5gのポリメチルメタクリレート(富士フィルム和光純薬社製)を7.5gのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、ポリマー溶液A31を調製した。次に、1gのN,N,N´,N´-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン(東京化成工業社製)を9.0gのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、化合物溶液A32を調製した。その後、ポリマー溶液A31(0.68g)に化合物溶液A32(0.30g)を添加し、これにより、第2絶縁層溶液A30を得た。
【0188】
(実施例1)
実施例1では、本発明の実施の形態1に係る半導体装置用基板50(図1参照)の一具体例となる半導体装置用基板を作製した。この実施例1の半導体装置用基板は、半導体装置としてボトムゲート-トップコンタクト構造の電界効果型トランジスタを有するタイプの半導体装置用基板である。図22Aは、本発明の実施例1に係る半導体装置用基板の製造方法の第1工程例を示す模式図である。図22Bは、本発明の実施例1に係る半導体装置用基板の製造方法の第2工程例を示す模式図である。
【0189】
具体的には、まず、PETフィルム製の樹脂基材1(幅300mm、長さ420mm、膜厚50μm)上に、抵抗加熱法により、銅を100nm全面に真空蒸着した。その上にフォトレジスト(商品名「LC100-10cP」、ローム・アンド・ハース社製)をスリット塗布で全面印刷し、100℃で4分間、熱風乾燥炉によって加熱乾燥した。これによって作製したフォトレジスト膜に対し、ゲート電極2がデザインされた有効マスクサイズ280mm×400mmのフォトマスクを介して、露光量60mJ/cm2(波長365nm換算)の全線露光を行った。このフォトマスクにデザインされたゲート電極幅は、100μmとした。露光した後、2.38重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で30秒間現像し、次いで、水で1分間洗浄した。その後、混酸(商品名SEA-5、関東化学社製)で30秒間エッチング処理した後、水で30秒間洗浄した。次いで、AZリムーバ100(商品名、AZエレクトロニックマテリアルズ社製)に2分間浸漬してフォトレジスト膜を剥離し、水で30秒間洗浄後、水滴をエアナイフで除去し、その後、80℃で60秒間、熱風乾燥炉によって加熱乾燥した。これにより、図22Aに示すように、樹脂基材1の面上に9カ所のゲート電極2を形成した(状態S21)。
【0190】
その後、ゲート絶縁層3となるゲート絶縁層溶液A20を、スリット塗布で全面連続印刷し、熱風乾燥炉によって大気雰囲気下、100℃で3分間熱処理し、IR乾燥炉によって窒素雰囲気下、150℃で20分間熱処理した。これにより、図22Aに示すように、樹脂基材1上に膜厚500nmのゲート絶縁層3を形成した(状態S22)。
【0191】
上記のようにゲート絶縁層3が形成された樹脂基材1上において、9カ所のゲート電極2を投影した位置となるゲート絶縁層3上の各部分に、それぞれ100pLの半導体溶液A10をインクジェット法で塗布し、IR乾燥炉で窒素気流下、150℃で30分間の熱処理を行った。これにより、図22Aに示すように、ゲート絶縁層3上の9カ所に半導体層4を形成した(状態S23)。
【0192】
つぎに、上記ゲート絶縁層3が形成されたPETフィルム製の樹脂基材1上に、感光性ペーストAをスクリーン印刷によって塗布した。この際、感光性ペーストAは、印刷サイズ280mm×400mmでゲート電極2および補強線31~38を形成した際の露光エリアと重なるように塗布した。ついで、この塗布した感光性ペーストAに対し、熱風乾燥炉によって100℃、4分間のプリベークを行った。その後、ソース電極5およびドレイン電極6がデザインされた有効マスクサイズ280mm×400mmのフォトマスクを介して、感光性ペーストAが塗布されたエリアと重なるように、露光量80mJ/cm2(波長365nm換算)の全線露光を行った。露光した後、0.5%のNa2CO3溶液で30秒間現像し、超純水で60秒間洗浄後、IR乾燥炉で150℃、10分間キュアを行った。これにより、図22Bに示すように、ゲート絶縁層3上に9カ所のソース電極5およびドレイン電極6を形成した(状態S24)。ソース電極5およびドレイン電極6の幅は100μmとし、これらの電極間の距離は20μmとした。
【0193】
つぎに、ソース電極5およびドレイン電極6が形成されたPETフィルム製の樹脂基材1上に、感光性ペーストBをDMEAで2倍希釈したペーストを、インクジェット塗布して補強線31~38のパターンを形成し、熱風乾燥炉によって大気雰囲気下、100℃で4分間、熱処理した。その後、露光量80mJ/cm2(波長365nm換算)で全線露光を行った。露光した後、IR乾燥炉で150℃、10分間キュアを行い、これにより、図22Bに示すように、補強線31~38を形成した(状態S25)。
【0194】
以上のようにして、実施例1の半導体装置用基板が得られた。得られた半導体装置用基板について、FETのゲート電圧(Vg)を変えたときのソース・ドレイン電極間の電流(Id)とソース・ドレイン電極間の電圧(Vsd)との電流-電圧特性を測定した。この測定には、半導体特性評価システム4200-SCS型(ケースレーインスツルメンツ社製)を用い、大気下で上記特性を測定した。実施例1では、Vg=+5V~-5Vに変化させたときのVsd=-5VにおけるVg=-5V時のIdの値を計測した。その後、サンプルを85℃、85%RHの恒温恒湿槽に24時間投入し、サンプルを取り出した後で再度、Vg=+5V~-5Vに変化させたときのVsd=-5VにおけるVg=-5V時のIdの値を測定した。この測定は、9カ所のFET全てについて行い、これら9カ所FETの平均値および標準偏差を算出し、以下の基準で評価を行った。実施例1の結果は、後述の表1に示す。
A(良好):平均値に対し標準偏差が15%以内である。
B(可):平均値に対し標準偏差が15%より大きく30%以内である。
C(不可):平均値に対し標準偏差が30%より大きい。
【0195】
(比較例1)
比較例1では、実施例1における補強線31~38を形成する工程を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で、実施例1と同様の評価を行った。比較例1の評価結果は、表1に示す。
【0196】
【表1】
【0197】
(実施例2)
実施例2では、本発明の実施の形態5に係る半導体装置用基板50E(図6参照)の一具体例となる半導体装置用基板を作製した。この実施例2の半導体装置用基板は、半導体装置としてボトムゲート-トップコンタクト構造の電界効果型トランジスタを有するタイプのものであり、ロール・トゥ・ロール方式によって樹脂基材1を搬送しながら連続して作製した(図17、18A,18B参照)。
【0198】
具体的には、まず、PETフィルム製の樹脂基材1(幅300mm、長さ50m、膜厚50μm)上に、抵抗加熱法により、銅を100nm全面に真空蒸着した。その上にフォトレジスト(商品名「LC100-10cP」、ローム・アンド・ハース社製)をスリット塗布で全面連続印刷し、100℃で4分間、熱風乾燥炉によって加熱乾燥した。これによって作製したフォトレジスト膜に対し、ゲート電極2および補強線31~38がデザインされた有効マスクサイズ280mm×400mmのフォトマスクを介して、露光量が60mJ/cm2(波長365nm換算)であり且つ樹脂基材1の送り量が420mmであるという条件で100ショット、全線露光を行った。このフォトマスクにデザインされたゲート電極幅は100μmとし、補強線31~38の幅は1mmとし、補強線31~34の長さは370mmとし、補強線35~38の長さは280mmとした。露光した後、2.38重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で30秒間現像し、次いで、水で1分間洗浄した。その後、混酸(商品名SEA-5、関東化学社製)で30秒間エッチング処理した後、水で30秒間洗浄した。次いで、AZリムーバ100(商品名、AZエレクトロニックマテリアルズ社製)に2分間浸漬してフォトレジスト膜を剥離し、水で30秒間洗浄後、水滴をエアナイフで除去し、その後、80℃で60秒間、熱風乾燥炉によって加熱乾燥した。これにより、図18Aに示したように、樹脂基材1の面上に露光エリア1カ所あたり9カ所のゲート電極2と、補強線31~38とを形成した(状態S1)。
【0199】
その後、ゲート絶縁層3となるゲート絶縁層溶液A20を、スリット塗布で全面連続印刷し、熱風乾燥炉によって大気雰囲気下、100℃で3分間熱処理し、IR乾燥炉によって窒素雰囲気下、150℃で20分間熱処理した。これにより、図18Aに示したように、樹脂基材1上に膜厚500nmのゲート絶縁層3を形成した(状態S2)。
【0200】
上記のようにゲート絶縁層3が形成された樹脂基材1上において、9カ所のゲート電極2を投影した位置となるゲート絶縁層3上の各部分に、それぞれ100pLの半導体溶液A10をインクジェット法で塗布し、IR乾燥炉で窒素気流下、150℃で30分間の熱処理を行った。これにより、図18Bに示したように、ゲート絶縁層3上の9カ所に半導体層4を形成した(状態S3)。
【0201】
つぎに、上記ゲート絶縁層3が形成されたPETフィルム製の樹脂基材1上に、感光性ペーストAをスクリーン印刷によって塗布した。この際、感光性ペーストAは、印刷サイズ280mm×400mmでゲート電極2および補強線31~38を形成した際の露光エリアと重なるように、樹脂基材1の送り量を420mmにして100ショット塗布した。ついで、この塗布した感光性ペーストAに対し、熱風乾燥炉によって100℃、4分間のプリベークを行った。その後、ソース電極5およびドレイン電極6がデザインされた有効マスクサイズ280mm×400mmのフォトマスクを介して、感光性ペーストAが塗布されたエリアと重なるように、露光量80mJ/cm2(波長365nm換算)、樹脂基材1の送り量420mmピッチで全線露光を行った。露光した後、0.5%のNa2CO3溶液で30秒間現像し、超純水で60秒間洗浄後、IR乾燥炉で150℃、10分間キュアを行った。これにより、図18Bに示したように、ゲート絶縁層3上に9カ所のソース電極5およびドレイン電極6を形成した(状態S4)。ソース電極5およびドレイン電極6の幅は100μmとし、これらの電極間の距離は20μmとした。
【0202】
以上のようにして、実施例2の半導体装置用基板が得られた。得られた半導体装置用基板について、以下の第1項目~第4項目で説明する各評価を行った。第1項目および第2項目の各評価の結果は表2に示し、第3項目の評価の結果は表3に示し、第4項目の評価の結果は表4に示す。
【0203】
(第1項目:巻ズレ試験)
第1項目では、半導体装置用基板の巻ズレ試験について説明する。第1項目の巻ズレ試験では、幅が300mm、長さが50mの半導体装置用基板を、幅が320mm、直径が3インチのABSコアを中心に±1mm精度でロール状に巻き取った。その後、このABSコアの幅方向に対して垂直の方向に10cmの高さから上記ロール状の半導体装置用基板を落とした際のロール巻取り幅をデジタルノギスで測定した。得られたロール巻取り幅の測定値をもとに、以下の基準で巻ズレの評価を行った。
A(良好):ロール巻取り幅が301mm以内である。
B(可):ロール巻取り幅が301mmより大きく305mm以内である。
C(不可):ロール巻取り幅が305mmより大きい。
【0204】
(第2項目:膜厚の測定)
第2項目では、半導体装置用基板の膜厚の測定について説明する。第2項目の膜厚の測定では、長さが50mの半導体装置用基板から、上述した露光工程で実施した送りピッチで1ショット目から100ショット目までの各部分(基板サンプル)を枚葉紙状に切り出した。これら切り出した基板サンプルのうち、10ショット目、50ショット目、90ショット目の各基板サンプルについて、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて断面を観察し、ゲート電極から任意の5カ所および補強線から任意の5カ所の厚み(膜厚)を計測した。これら計測したゲート電極膜厚および補強線膜厚について、それぞれ、平均値および標準偏差を算出した。
【0205】
(第3項目:FETのIdばらつきの評価)
第3項目では、半導体装置用基板上に形成したFETのIdばらつきの評価について説明する。図23は、実施例2の半導体装置用基板から得られる基板サンプルの一例を示す模式図である。図23には、ロール状に連続する半導体装置用基板から切り出した基板サンプル(測定に用いるサンプル)を、その厚み方向に重ねて見た際の投影図が図示されている。第3項目の評価では、上記第2項目の評価と同様に半導体装置用基板から切り出した複数の基板サンプルのうち、10ショット目、50ショット目、90ショット目の各基板サンプルを用い、図23に示す9個のFET21~29のそれぞれについて、ゲート電圧(Vg)を変えたときのソース・ドレイン電極間の電流(Id)とソース・ドレイン電極間の電圧(Vsd)との電流-電圧特性を測定した。この測定には、半導体特性評価システム4200-SCS型(ケースレーインスツルメンツ社製)を用い、大気下で測定した。Vg=+5V~-5Vに変化させたときのVsd=-5VにおけるVg=-5V時のIdに関し、上記各ショットの基板サンプル毎に9個のFET21~29による平均値および標準偏差を算出した。得られたIdの平均値および標準偏差をもとに、以下の基準でFETのIdばらつきの評価を行った。
A(良好):Idの平均値に対し標準偏差が15%以内である。
B(可):Idの平均値に対し標準偏差が15%より大きく30%以内である。
C(不可):Idの平均値に対し標準偏差が30%より大きい。
【0206】
(第4項目:ゲート電極パターンの座標計測)
第4項目では、半導体装置用基板のゲート電極パターンの座標計測について説明する。第4項目の計測では、上記第2項目の評価と同様に半導体装置用基板から切り出した複数の基板サンプルのうち、10ショット目、50ショット目、90ショット目の各基板サンプルについて、座標測定機SMIC-800(新東Sプレシジョン社製)を用いて、9個のFET21~29(図23参照)における各ゲート電極の座標を計測し、ショット間におけるゲート電極毎の座標ばらつきとして、半導体装置用基板の長手方向および短手方向の標準偏差をそれぞれ算出した。得られた長手方向の標準偏差および短手方向の標準偏差のうち大きい方の値を評価対象とし、以下の基準でゲート電極パターンの座標ばらつきの評価を行った。後述の表4において、「21」~「29」の数値は、評価対象の各FETを特定する数値(符号)である。
A(良好):標準偏差が20μm以下である。
B(可):標準偏差が20μmより大きく40μm以下である。
C(不可):標準偏差が40μmより大きい。
【0207】
(実施例3)
実施例3では、ゲート電極2および補強線31~38を形成する際の抵抗加熱法において、銅のかわりにアルミニウムを60nm全面に真空蒸着したこと以外は実施例2と同様の方法で、実施例2の第1項目~第3項目の各評価と同様の評価を行った。実施例3の評価結果は、表2および表3に示す。
【0208】
(実施例4)
実施例4では、本発明の実施の形態1に係る半導体装置用基板50(図1参照)の一具体例となる半導体装置用基板を作製した。この実施例4の半導体装置用基板は、半導体装置として電界効果型トランジスタを有するタイプの半導体装置用基板であり、上述した実施の形態5と同様にロール・トゥ・ロール方式によって樹脂基材1を搬送しながら連続して作製した。
【0209】
具体的には、まず、PETフィルム製の樹脂基材1(幅300mm、長さ50m、膜厚50μm)上に、感光性ペーストBをスリット塗布で全面連続印刷し、熱風乾燥炉によって大気雰囲気下、100℃で4分間熱処理した。これによって作製した塗布膜に対し、ゲート電極2および補強線31~38がデザインされた有効マスクサイズ280mm×400mmのフォトマスクを介して、露光量が80mJ/cm2(波長365nm換算)であり且つ樹脂基材1の送り量が420mmピッチであるという条件で全線露光を行った。露光した後、2.38%のTMAH溶液で30秒間現像し、超純水で60秒間洗浄後、IR乾燥炉で150℃、10分間キュアを行った。これにより、樹脂基材1の面上に、露光エリア1カ所あたり9カ所のゲート電極2と、補強線31~38とを形成した。ゲート絶縁層3以降の工程は実施例2と同様の方法で行い、実施例2と同様の評価を行った。実施例4の評価結果は、表2~4に示す。
【0210】
(実施例5)
実施例5では、ゲート電極2および補強線31~38を形成する際に、感光性ペーストBの代わりに感光性ペーストCを用いてスリット塗布したこと以外は実施例4と同様の方法で半導体装置用基板を作製し、実施例2の第1項目~第3項目の各評価と同様の評価を行った。実施例5の評価結果は、表2および表3に示す。
【0211】
(実施例6)
実施例6では、本発明の実施の形態1の変形例に係る半導体装置基板(図2参照)の一具体例となる半導体装置用基板を作製した。実施例6の半導体装置用基板は、半導体装置としてボトムゲート-トップコンタクト構造の電界効果型トランジスタを有するタイプの半導体装置用基板であり、ロール・トゥ・ロール方式によって樹脂基材1を搬送(図6参照)しながら連続して作製した。具体的には、実施例6の半導体装置用基板の作製は、実施例1で使用したフォトマスクのデザインから補強線33および補強線37を除いたデザインのフォトマスクを用いたこと以外、実施例1と同様の方法で行った。また、実施例6では、実施例2の第1項目~第3項目の各評価と同様の評価を行った。実施例6の評価結果は、表2および表3に示す。
【0212】
(実施例7)
実施例7では、本発明の実施の形態4に係る半導体装置用基板50D(図5参照)の一具体例となる半導体装置用基板を作製した、実施例7の半導体装置用基板は、半導体装置としてボトムゲート-トップコンタクト構造の電界効果型トランジスタを有するタイプの半導体装置用基板であり、ロール・トゥ・ロール方式によって樹脂基材1を搬送(図6参照)しながら連続して作製した。具体的には、実施例7の半導体装置用基板は、実施例2におけるゲート電極2および補強線31~38を形成する工程とソース電極5およびドレイン電極6を形成する工程とにおいて使用するフォトマスクを、補強線31~38および半導体装置10(実施例7ではFET)の配置デザインが図5に示した本発明の実施の形態4における配置デザインとなるようにデザインされたフォトマスクを使用したこと以外、実施例2と同様の方法で作製した。また、実施例7では、実施例2の第1項目~第3項目の各評価と同様の評価を行った。実施例7における第3項目の評価では、各基板サンプルの13カ所のFET中、任意の9カ所のFETを測定し、実施例2と同様の評価を行った。実施例7の評価結果は、表2および表3に示す。
【0213】
(実施例8)
実施例8では、本発明の実施の形態5の変形例1に係る半導体装置用基板(図6および図7参照)の一具体例となる半導体装置用基板を作製した。実施例8の半導体装置用基板は、半導体装置としてボトムゲート-トップコンタクト構造の電界効果型トランジスタを有するタイプの半導体装置用基板であり、ロール・トゥ・ロール方式によって樹脂基材1を搬送しながら連続して作製した。具体的には、実施例8の半導体装置用基板は、実施例2におけるゲート電極2および補強線31~38を形成する工程で使用するフォトマスクを、補強線31~38および半導体装置10(実施例8ではFET)の配置デザインが図7に示した本発明の実施の形態5の変形例1における配置デザインとなるようにデザインされたフォトマスクを使用したこと以外、実施例2と同様の方法で作製した。また、実施例8では、実施例2の第1項目~第3項目の各評価と同様の評価を行った。実施例7における第3項目の評価では、各基板サンプルの13カ所のFET中、任意の9カ所のFETを測定し、実施例2と同様の評価を行った。実施例8の評価結果は、表2および表3に示す。
【0214】
(比較例2)
比較例2では、実施例2におけるゲート電極2および補強線31~38を形成する工程で使用するフォトマスクとして、補強線31~38がデザインされていないフォトマスクを使用したこと以外は実施例2と同様の方法で、実施例2と同様の評価を行った。比較例2の評価結果は、表2~4に示す。
【0215】
(比較例3)
比較例3では、実施例4におけるゲート電極2および補強線31~38を形成する工程で使用するフォトマスクとして、補強線31~38がデザインされていないフォトマスクを使用したこと以外は実施例4と同様の方法で、実施例2と同様の評価を行った。比較例3の評価結果は、表2~4に示す。
【0216】
【表2】
【0217】
【表3】
【0218】
【表4】
【0219】
(実施例9)
実施例9では、本発明の実施の形態5の変形例1に係る半導体装置用基板50Fの一具体例となる半導体装置用基板を作製した。この実施例9の半導体装置用基板は、半導体装置としてボトムゲート-トップコンタクト構造の電界効果型トランジスタを有するタイプのものであり、ロール・トゥ・ロール方式によって樹脂基材1を搬送しながら連続して作製した。
【0220】
具体的には、まず、PETフィルム製の樹脂基材1(幅300mm、長さ50m、膜厚50μm)上に、抵抗加熱法により、銅を100nm全面に真空蒸着した。その上にフォトレジスト(商品名「LC100-10cP」、ローム・アンド・ハース社製)をスリット塗布で全面連続印刷し、100℃で4分間、熱風乾燥炉によって加熱乾燥した。これによって作製したフォトレジスト膜に対し、ゲート電極2および補強線31~38がデザインされた有効マスクサイズ280mm×400mmのフォトマスクを介して、露光量が60mJ/cm2(波長365nm換算)であり且つ樹脂基材1の送り量が420mmであるという条件で100ショット、全線露光を行った。このフォトマスクにデザインされたゲート電極幅は100μmとし、補強線31~38の幅は1mmとし、補強線31~34の長さは370mmとし、補強線35~38の長さは280mmとした。露光した後、2.38重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で30秒間現像し、次いで、水で1分間洗浄した。その後、混酸(商品名SEA-5、関東化学社製)で30秒間エッチング処理した後、水で30秒間洗浄した。次いで、AZリムーバ100(商品名、AZエレクトロニックマテリアルズ社製)に2分間浸漬してフォトレジスト膜を剥離し、水で30秒間洗浄後、水滴をエアナイフで除去し、その後、80℃で60秒間、熱風乾燥炉によって加熱乾燥した。これにより、樹脂基材1の面上に露光エリア1カ所あたり18カ所のゲート電極2と、補強線31~38とを形成した(図19Aの状態S11参照)。
【0221】
その後、ゲート絶縁層3となるゲート絶縁層溶液A20を、スリット塗布で全面連続印刷し、熱風乾燥炉によって大気雰囲気下、100℃で3分間熱処理し、IR乾燥炉によって窒素雰囲気下、150℃で20分間熱処理した。これにより、樹脂基材1上に膜厚500nmのゲート絶縁層3を形成した(図19Aの状態S12参照)。
【0222】
上記のようにゲート絶縁層3が形成された樹脂基材1上において、18カ所のゲート電極2を投影した位置となるゲート絶縁層3上の各部分に、それぞれ100pLの半導体溶液A10をインクジェット法で塗布し、IR乾燥炉で窒素気流下、150℃で30分間の熱処理を行った。これにより、ゲート絶縁層3上の18カ所に半導体層4を形成した(図19Aの状態S13参照)。
【0223】
つぎに、上記ゲート絶縁層3が形成されたPETフィルム製の樹脂基材1上に、感光性ペーストAをスクリーン印刷によって塗布した。この際、感光性ペーストAは、印刷サイズ280mm×400mmでゲート電極2および補強線31~38を形成した際の露光エリアと重なるように、樹脂基材1の送り量を420mmにして100ショット塗布した。ついで、この塗布した感光性ペーストAに対し、熱風乾燥炉によって100℃、4分間プリベークを行った。その後、ソース電極5およびドレイン電極6がデザインされた有効マスクサイズ280mm×400mmのフォトマスクを介して、感光性ペーストAが塗布されたエリアと重なるように、露光量80mJ/cm2(波長365nm換算)、樹脂基材1の送り量420mmピッチで全線露光を行った。露光した後、0.5%のNa2CO3溶液で30秒間現像し、超純水で60秒間洗浄後、IR乾燥炉で150℃、10分間キュアを行った。これにより、ゲート絶縁層3上に18カ所のソース電極5およびドレイン電極6を形成した(図19Bの状態S14参照)。ソース電極5およびドレイン電極6の幅は100μmとし、これらの電極間の距離は20μmとした。
【0224】
(実施例10)
実施例10では、本発明の実施の形態6に係る半導体装置用基板50H(図13参照)の一具体例となる半導体装置用基板を作製した。この実施例10の半導体装置用基板は、半導体装置としてボトムゲート-トップコンタクト構造の電界効果型トランジスタを有するタイプのものであり、ロール・トゥ・ロール方式によって樹脂基材1を搬送しながら連続して作製した(図19A、19B参照)。
【0225】
具体的には、まず、PETフィルム製の樹脂基材1(幅300mm、長さ50m、膜厚50μm)上に、抵抗加熱法により、銅を100nm全面に真空蒸着した。その上にフォトレジスト(商品名「LC100-10cP」、ローム・アンド・ハース社製)をスリット塗布で全面連続印刷し、100℃で4分間、熱風乾燥炉によって加熱乾燥した。これによって作製したフォトレジスト膜に対し、ゲート電極2および補強線31~38がデザインされた有効マスクサイズ280mm×400mmのフォトマスクを介して、露光量が60mJ/cm2(波長365nm換算)であり且つ樹脂基材1の送り量が420mmであるという条件で100ショット、全線露光を行った。このフォトマスクにデザインされたゲート電極幅は100μmとし、補強線31~38の幅は1mmとし、補強線31~34の長さは370mmとし、補強線35~38の長さは280mmとした。露光した後、2.38重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で30秒間現像し、次いで、水で1分間洗浄した。その後、混酸(商品名SEA-5、関東化学社製)で30秒間エッチング処理した後、水で30秒間洗浄した。次いで、AZリムーバ100(商品名、AZエレクトロニックマテリアルズ社製)に2分間浸漬してフォトレジスト膜を剥離し、水で30秒間洗浄後、水滴をエアナイフで除去し、その後、80℃で60秒間、熱風乾燥炉によって加熱乾燥した。これにより、図19Aに示したように、樹脂基材1の面上に露光エリア1カ所あたり18カ所のゲート電極2と、補強線31~38とを形成した(状態S11)。
【0226】
その後、ゲート絶縁層3となるゲート絶縁層溶液A20を、スリット塗布で全面連続印刷し、熱風乾燥炉によって大気雰囲気下、100℃で3分間熱処理し、IR乾燥炉によって窒素雰囲気下、150℃で20分間熱処理した。これにより、図19Aに示したように、樹脂基材1上に膜厚500nmのゲート絶縁層3を形成した(状態S12)。
【0227】
上記のようにゲート絶縁層3が形成された樹脂基材1上において、18カ所のゲート電極2を投影した位置となるゲート絶縁層3上の各部分に、それぞれ100pLの半導体溶液A10をインクジェット法で塗布し、IR乾燥炉で窒素気流下、150℃で30分間の熱処理を行った。これにより、図19Aに示したように、ゲート絶縁層3上の18カ所に半導体層4を形成した(状態S13)。
【0228】
つぎに、上記ゲート絶縁層3が形成されたPETフィルム製の樹脂基材1上に、感光性ペーストAをスクリーン印刷によって塗布した。この際、感光性ペーストAは、印刷サイズ280mm×400mmでゲート電極2および補強線31~38を形成した際の露光エリアと重なるように、樹脂基材1の送り量を420mmにして100ショット塗布した。ついで、この塗布した感光性ペーストAに対し、熱風乾燥炉によって100℃、4分間プリベークを行った。その後、ソース電極5およびドレイン電極6がデザインされた有効マスクサイズ280mm×400mmのフォトマスクを介して、感光性ペーストAが塗布されたエリアと重なるように、露光量80mJ/cm2(波長365nm換算)、樹脂基材1の送り量420mmピッチで全線露光を行った。露光した後、0.5%のNa2CO3溶液で30秒間現像し、超純水で60秒間洗浄後、IR乾燥炉で150℃、10分間キュアを行った。これにより、図19Bに示したように、ゲート絶縁層3上に18カ所のソース電極5およびドレイン電極6を形成した(状態S14)。ソース電極5およびドレイン電極6の幅は100μmとし、これらの電極間の距離は20μmとした。
【0229】
つぎに、上記半導体層4が形成されたPETフィルム製の樹脂基材1上において、第2絶縁層溶液A30(5μL)を、複数(図19Bでは18カ所)の半導体層4のうち一部の半導体層4上に、半導体層4を覆うようにドロップキャスト法で滴下した。また、同様の方法で第2絶縁層溶液A30を半導体装置が囲われるように連続滴下した。実施例10では、当該第2絶縁層溶液A30を上記補強線31~38の上に連続滴下した。その後、これらの滴下した第2絶縁層溶液A30を窒素気流下、110℃で30分間、熱処理した。これにより、図19Bに示したように、樹脂基材1上に第2絶縁層7および第2補強線51~58を形成した(状態S15)。これら第2絶縁層7および第2補強線51~58の厚みは、20μmであった。
【0230】
以上のようにして、実施例9、10の半導体装置用基板が各々得られた。これらの得られた半導体装置用基板について、実施例2の第1項目の評価と同様の評価を行ったところ、実施例9、10の各評価結果は、双方とも「A」(良好)であった。また、実施例9、10の各半導体装置用基板(長さ50m)を、露光工程で実施した送りピッチで1ショット目から100ショット目までの各部分に枚葉紙状に切り出して、得られた各基板サンプルの外観を確認した結果、第2絶縁層7が剥がれている箇所はなかった。
【0231】
(比較例5)
比較例5では、実施例10における第2絶縁層7および第2補強線51~58を形成する工程で、第2補強線51~58を形成しなかったこと以外は実施例10と同様の方法で、実施例10と同様の評価を行った。比較例5において、実施例2の第1項目の評価と同様の評価を行ったところ、比較例5の当該第1項目の評価結果は「C」(不可)であった。また、比較例5の半導体装置用基板では、第2絶縁層7の剥がれも発生していた。
【産業上の利用可能性】
【0232】
以上のように、本発明に係る半導体装置用基板、半導体装置用基板の製造方法および無線通信装置の製造方法は、基板上に複数の半導体装置を形成した後においても半導体装置の特性ばらつきを抑制することができる半導体装置用基板、半導体装置用基板の製造方法および無線通信装置の製造方法に適している。
【符号の説明】
【0233】
1 樹脂基材
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁層
4 半導体層
5 ソース電極
6 ドレイン電極
7 第2絶縁層
10 半導体装置
11、11a~11h、12、12a~12h、13~17、31~38 補強線
20~30 FET
41、42、51~58 第2補強線
50、50A、50B、50C、50D、50E、50F、50G、50H 半導体装置用基板
100 基板
101 アンテナパターン
102 回路
103 接続配線
110、110A 無線通信装置
D1、D1a、D1b、D2、D2a、D2b デザイン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図20
図21
図22A
図22B
図23