(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】電力変換装置および電気機器
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241126BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/48 F
(21)【出願番号】P 2020571886
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2020037352
(87)【国際公開番号】W WO2021085026
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】201911036259.0
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 明賛
(72)【発明者】
【氏名】欧陽 毅翔
(72)【発明者】
【氏名】游 欣璋
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-192197(JP,A)
【文献】特開2006-101675(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0070172(US,A1)
【文献】RYUTARO OHYAMA et al,Efficiency Comparison of PAM-PWM Inverter with Partially Boost Converter for Motor Drive System,2019 22ND INTERNATIONAL CONFERENCE ON ELECTRICAL MACHINES AND SYSTEMS (ICEMS),IEEE,2019年08月11日,pages 1-6
【文献】GOH TECK CHIANG et al,Comparison of Two Overmodulation Strategies in an Indirect Matrix Converter,IEEE TRANSACTIONS ON INDUSTRIAL ELECTRONICS,vol. 60, no. 1,米国,IEEE,2013年01月01日,pages 43,44,48-52, Figs.1,4,19,21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相モータの各相に給電する電力変換装置であって、
直流電源に接続され、パルス幅変調昇圧信号に基づいて前記直流電源から入力された入力電圧を昇圧する昇圧回路部と、
前記昇圧回路部に接続され、複数のスイッチング素子で構成される三相スイッチング回路を有するインバータ部と、
前記昇圧回路部にパルス幅変調昇圧信号を出力する制御部と、
を備え、
前記インバータ部はさらに出力部を有し、前記出力部は前記三相スイッチング回路に接続され、前記三相モータの各相に給電し、
前記制御部は、前記昇圧回路部が昇圧状態にあることを検出した際に、前記インバータ部にパルス幅変調スイッチング信号を出力し、
前記三相モータの前記各相を、それぞれ、A相、B相、およびC相と呼ぶとき、
ベクトル空間における0°~60°の区間において、
A相では、前記三相スイッチング回路の対応する前記スイッチング素子を常にオンにするとともに、前記昇圧回路部を制御して前記インバータ部への入力電圧を高めることにより、常に1より大きくし、
C相では、前記三相スイッチング回路の対応する前記スイッチング素子を常にオンにするとともに、記昇圧回路部を制御して前記インバータ部への入力電圧を高めることにより、常に-1より小さくし、
B相では、デューティ比を-1から1の間にすることにより、PWM周期中に、インバータ部中のある一相のスイッチの上下アームのオン時間割合を制御する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は前記昇圧回路部が昇圧状態にあることを検出したとき、前記スイッチング回路における他の一相のスイッチング素子を制御して1つのパルス幅変調周期においてオンまたはオフに切り替える、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記三相スイッチング回路は6個のスイッチング素子を含み、
前記6個のスイッチング素子はブリッジ回路の3個のアームを2個ずつの対で構成し、
前記3個のアームはそれぞれ前記三相モータの三相に対応し、
各アームの2個のスイッチング素子はそれぞれ各アームの上アームと下アームを構成し、
前記制御部は前記昇圧回路部が昇圧状態にあることを検出したとき、前記3個のアームのうちの1個のアームの上アームと下アームが1つのパルス幅変調周期においてオン/オフ制御し、前記3個のアームの内の他の2個のアームの上アームと下アームが1つのパルス幅変調周期においてオンしないように制御し、前記他の2個のアームの内の1個のアームの上アームをオンし下アームをオフし、前記他の2個のアームのうちの他の1個のアーム内の上アームをオフし、下アームをオンする、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
1つのパルス幅変調周期において、前記制御部は前記1個のアームの上アームと下アームを1回オン/オフ制御する、
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部は前記昇圧回路部の出力電圧に基づいて前記パルス幅変調スイッチング信号のデューティ比を設定し、前記デューティ比に基づいて前記1個のアームの上アームおよび下アームのオン/オフを制御する、
請求項3または4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は電圧制御器およびPWM信号発生器を含み、
前記電圧制御器は前記昇圧回路部の出力電圧および目標電圧に基づいて前記パルス幅変調昇圧信号のデューティ比を決定し、前記目標電圧は予め設定された前記直流電源から入力された入力電圧を乗算して得られ、
前記PWM信号発生器は前記デューティ比に基づいて前記パルス幅変調昇圧信号を生成して前記昇圧回路部に提供し、前記昇圧回路部を昇圧制御する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記電力変換装置は、前記昇圧回路部に直流電圧を供給する直流電源をさらに含む、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の電力変換装置および三相モータを有し、前記電力変換装置は前記三相モータの各相に給電する、
電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかのDC/ACインバータの用途では、インバータの出力電圧は、入力電源電圧よりも高い必要がある。したがって、インバータの出力電圧を上昇させるために、インバータの前段に昇圧コンバータを追加してインバータの直流リンク(DC BUS)電圧を上昇させる必要がある。しかし、昇圧コンバータを追加することにより、回路損失が必然的に増加し、昇圧コンバータの効率が低下する。
【0003】
従来技術はいくつかの解決策を提案している。
【0004】
第1の解決策は、三相フルブリッジ整流器と平滑コンデンサとの間に従来の昇圧コンバータを用いて平滑コンデンサの直流リンク電圧を上昇させ、さらに三相フルブリッジインバータによって三相交流電圧を変調して出力してモータを駆動し、モータの動作条件に基づいて昇圧コンバータの出力電圧を決定し、それによりモータ効率を向上させるという目的を達成する。
【0005】
第2の解決策は、セグメント化された昇圧コンバータ回路アーキテクチャを用い、交流モータが定格回転数を超える必要がある場合、駆動装置はより高い電圧を出力する必要がある。したがって、昇圧コンバータを利用してインバータの直流リンク電圧を昇圧し、出力電圧を上昇させるという目的を達成し、かつ、交流モータの回転数と負荷要求に応じて、昇圧コンバータが3種類の動作モードで動作するように制御し、適切な電圧を出力し、交流モータの運転効率を向上させるという目的を達成する。
【0006】
第3の解決策は、インバータに振幅変調(PAM)方式を用い、6ステップ方形波電圧形式で可変周波数の三相交流電源を生成し、出力電圧振幅は昇圧コンバータによって制御される。6ステップ方形波変調は1つの電源周期において6種類のスイッチの切り替え状態を変更するため、スイッチのスイッチング損失を大幅に減少させ、ドライバの効率を向上できる。
【0007】
第4の解決策は、空間ベクトルパルス幅変調(Space Vector Pulse Width Modulation:SVPWM)を利用して電力スイッチの切り替え回数を減少させてスイッチング損失を減少させるという目的を達成する。例えば、従来のSVPWMは、1周期の三相パルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)信号の波形を7段に分割し(即ち、7段式SVPWMスイッチング方式)、1周期当たりのPWMに6回のスイッチ切り替えがある。あるいは、5セグメント式SVPWMスイッチング方式により、1周期の三相PWM波形を5セグメントに分割し、周期毎のPWMに4回のスイッチングを共有することで、7セグメント式SVPWMスイッチング方式に比べて、スイッチング損失を1/3に低減できる。または、4段式非対称SVPWMスイッチング方式を利用し、PWM波形を対称式から非対称式に変更する。これにより、電流サンプリングを容易にするが、各周期のPWMは同様に4回のスイッチ切り替えを有し、5段式に比べて、スイッチング損失をさらに減少させることはない。
【0008】
第5の解決策は、組み合わせ式SVPWM変調方式を用い、交流モータの回転速度(固定子周波数)と電圧要求に応じて、異なるSVPWMスイッチング方式を用いる。例えば、交流モータの固定子周波数が低周波数帯域に位置する場合、半周波数式SVPWM方式を用いることで、7段式SVPWMスイッチング方式に比べて、スイッチング損失を1/2に減少できる。交流モータの固定子周波数が中低周波数帯域に位置する場合、フラットトップ式SVPWM方式を用いることで、スイッチング損失を1/3削減できる。交流モータの固定子周波数が中高周波数帯域に位置する場合、7段式SVPWM方式を用いる。交流モータの固定子周波数が高周波数帯域に位置する場合、FFC SVPWM方式を用いることで、スイッチング損失は最小になる。上記4種類の方式では、インバータの電力損失は、一般的には7段式SVPWM>フラットトップ式SVPWM>半周波数式SVPWM>FFC SVPWMであるため、様々な動作条件に応じて様々なSVPWMスイッチング方式を変更でき、ドライバのスイッチング損失を減少させて効率を向上できる。
【0009】
以下では7段式SVPWMスイッチング方式を例としてSVPWMスイッチング方式を説明する。
図8は一般的な三相インバータが三相モータに接続される回路模式図であり、
図9は従来の7段式SVPWMスイッチング方式の波形模式図であり、
図10は空間電圧ベクトル模式図である。
図9に示すa、b、c信号は、
図8におけるインバータ801の3つの上アームスイッチング素子T
a~T
cをそれぞれ制御し、3つの下アームスイッチング素子T
a′~T
c′を制御する信号a′、b′、c′はa、b、c信号を反転したものであるが、
図9には信号a′、b′、c′を示していない。
【0010】
6つのスイッチング素子T
a~T
c、T
a′~T
c′は、PWM信号a、b、c、a′、b′、c′によって制御され、各アームの上アームまたは下アームをオンさせて、3相モータ802のA、B、Cの3相に対応する位相の電圧を出力する。PWM信号のハイレベルが‘1’を示し、ローレベルが‘0’を示すと仮定し、信号a、b、cに対応する(abc)で電圧空間における電圧ベクトルを示し、
図10に示される6つの異なる空間電圧ベクトルV
1~V
6、および2つのゼロ電圧ベクトルV
0およびV
7を生成できる。
【0011】
ここで、6つの空間電圧ベクトルはそれぞれ60°異なり、電圧平面を6つの区間に分割する。三相交流モータに滑らかな回転磁界を発生させるためには、三相インバータは滑らかな円周電圧ベクトルを出力する必要があり、この場合、各区間の電圧ベクトルを生成する必要がある。この区間の端にある2つの電圧ベクトル合成を用いて、平均電圧の概念から所望の円周電圧ベクトルを得ることができる。V1とV2の合成電圧を例にとると、V1電圧出力時間をT1、V2電圧出力時間をT2、およびV0またはV7電圧出力時間をT0とすると、等価な平均電圧出力は数式1のとおりである。
【0012】
【数1】
ここで、PWM周期T=T
1+T
2+T
0である。
【0013】
上記式から分かるように、時間T1と時間T2との比率を調整することで合成電圧の位相を変えることができ、時間T0の長さを変えることで出力電圧の大きさを変えることができるため、従来のSVPWM技術はインバータにおける6つの電力スイッチの切り替え状態を制御し、それにより空間電圧ベクトルに必要な位相と振幅の電圧を組み合わせる。
【0014】
以上の技術的背景の説明は本出願の技術的解決手段を明確で、完全に説明することを容易にするためのものに過ぎず、かつ当業者の理解および説明を容易にするためのものである事に注意されたい。本出願の背景技術の部分に記載されている事をもって、上記の技術的解決策は、当業者には周知であると解釈する事は誤りである。
【発明の概要】
【0015】
本出願の発明者は、第1の解決策がモータ効率のみを向上させ、昇圧コンバータを追加した後にもたらされるドライバ全体の効率低下の問題を解決しないことを発見した。第2の解決策は、交流モータの効率を改善できるが、該解決策は回路素子の数および複雑度を増加させ、かつ昇圧コンバータを増加させた後のドライバ損失増加の問題を解決しない。第3の解決策は大きな奇数次高調波を含み、大きな高調波電流を発生させ、交流モータのノイズと振動を引き起こし、ノイズと振動に対する要求が高い応用分野には適用できない。第4の解決策および第5の解決策はスイッチング損失を低減できるが、一部のスイッチング損失のみを低減させることができ、かつ電流高調波を増大させ、昇圧コンバータを追加した後にもたらされるドライバ全体の効率が低下するという問題を効果的に解決することができない。
【0016】
本発明は、上記課題の少なくとも1つを解決するためになされたものであり、昇圧コンバータおよびインバータ全体のスイッチング損失を低減できる電力変換装置および電気機器を提供することを目的とする。
【0017】
本願の実施例の一態様によれば、三相モータの各相に給電する電力変換装置であって、直流電源に接続され、前記直流電源から入力される入力電圧をパルス幅変調昇圧信号に従って昇圧する昇圧回路部と、前記昇圧回路部に接続され、複数のスイッチング素子からなる三相スイッチング回路を有するインバータ部と、を備え、前記インバータ部は、前記三相スイッチング回路に接続され、前記三相モータの各相に給電する出力部をさらに有し、 前記制御部は、前記昇圧回路部が昇圧状態にあることを検出した際に、前記インバータ部にパルス幅変調スイッチング信号を出力し、前記三相モータの前記各相を、それぞれ、A相、B相、およびC相と呼ぶとき、ベクトル空間における0°~60°の区間において、A相では、前記三相スイッチング回路の対応する前記スイッチング素子を常にオンにするとともに、前記昇圧回路部を制御して前記インバータ部への入力電圧を高めることにより、常に1より大きくし、C相では、前記三相スイッチング回路の対応する前記スイッチング素子を常にオンにするとともに、記昇圧回路部を制御して前記インバータ部への入力電圧を高めることにより、常に-1より小さくし、B相では、デューティ比を-1から1の間にすることにより、PWM周期中に、インバータ部中のある一相のスイッチの上下アームのオン時間割合を制御する。
【0018】
少なくとも1つの実施例において、前記制御部は前記昇圧回路部が昇圧状態にあることを検出したとき、前記スイッチング回路における他の1つの相のスイッチング素子を1つのパルス幅変調周期においてオン/オフ制御する。
【0019】
少なくとも1つの実施例において、前記三相スイッチング回路は6個のスイッチング素子を含み、前記6個のスイッチング素子はブリッジ回路の3個のアームを2個ずつの対で構成し、前記3個のアームはそれぞれ前記三相モータの三相に対応し、各アームの2個のスイッチング素子はそれぞれ各アームの上アームと下アームを構成し、前記制御部は前記昇圧回路部が昇圧状態にあることを検出したとき、前記3個のアームのうちの1個のアームの上アームと下アームが1つのパルス幅変調周期においてオン/オフするように制御し、前記3個のアームのうちの他の2個のアームの上アームと下アームが1つのパルス幅変調周期においてオンしないように制御し、ここで、前記他の2個のアームのうちの1つのアームの上アームがオンし、下アームがオフするように制御し、前記他の2個のアームのうちの他の1つのアームの上アームをオフに制御し、下アームをオンにする。
【0020】
少なくとも1つの実施例において、1つのパルス幅変調周期において、前記制御部は前記1個のアームの上アームと下アームを1回のオン/オフ制御する。
【0021】
少なくとも1つの実施例において、前記制御部は前記昇圧回路部の出力電圧に基づいて前記パルス幅変調スイッチング信号のデューティ比を設定し、前記デューティ比に基づいて前記1回のアームの上アームと下アームのオン/オフを制御する。
【0022】
少なくとも1つの実施例において、前記制御部は電圧制御器およびPWM信号発生器を含み、前記電圧制御器は前記昇圧回路部の出力電圧および目標電圧に基づいて前記パルス幅変調昇圧信号のデューティ比を決定し、前記目標電圧は予め設定された目標デューティ比に前記直流電源から入力された入力電圧を乗じて得られ、前記PWM信号発生器は前記デューティ比に基づいて前記パルス幅変調昇圧信号を生成して前記昇圧回路部に提供し、前記昇圧回路部を昇圧制御する。
【0023】
少なくとも1つの実施例において、前記電力変換装置は、前記昇圧回路部に直流電圧を提供する直流電源をさらに含む。
【0024】
本願の実施例の別の態様によれば、電気機器を提供し、それは前記電力変換装置および三相モータを含み、前記電力変換装置は前記三相モータの各相に給電する。
【0025】
本願の実施例の有益な効果の1つは、この電力変換装置において、インバータ部の三相スイッチング回路における二相のスイッチング素子を、1つのパルス幅変調周期ではスイッチングさせず、他の一相のスイッチング素子のみを、1つのパルス幅変調周期でオンさせることにより、2段式空間ベクトルパルス変調方式を構成することにある。これにより、7段式SVPWMスイッチング方式に比べて、インバータのスイッチング損失を2/3倍に低減でき、ドライバ効率を向上できる。
【0026】
また、本出願の実施例は昇圧回路部によって可変の直流リンク電圧を生成し、それによりインバータ部はゼロ電圧ベクトルを出力することによって出力電圧の振幅を制御する必要がなく、2つの異なる電圧ベクトルの出力時間比率を変更するだけで、滑らかな円周電圧ベクトルを出力しかつ電圧位相を制御するという目的を達成できる。
本出願の特定の実施形態は、本出願の原理が採用され得る方法を示す以下の説明および添付の図面を参照して詳細に開示される。本出願の実施形態は、それによって範囲が限定されないことを理解されたい。本出願の実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内で、多くの変更、修正、および等価物を含む。
【0027】
本出願の実施例の1つの図面または1つの実施形態に記載された要素および特徴は1つまたは複数の他の図面または実施形態に示された要素および特徴と組み合わせることができる。さらに、図面において、同様の参照番号は、いくつかの図面における対応する構成要素を示し、複数の実施形態において使用される対応する構成要素を示すために使用され得る。
【0028】
添付図面は本出願の実施例に対するさらなる理解を提供することに用いられ、それは明細書の一部を構成し、本出願の実施形態を例示することに用いられ、かつ明細書と共に本出願の原理を説明する。明らかに、以下の説明における図面は本出願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本出願の実施例の電力変換装置のモジュール化概略図である。
【
図2】
図1に示す電力変換装置の一部の回路図である。
【
図3】PWM周期におけるスイッチング信号のタイミング図である。
【
図4】
図3に示すスイッチング信号でスイッチング素子を制御したときの各スイッチング素子のスイッチング状態を示す図である。
【
図5】本出願の実施例に基づく三相スイッチング回路の各相のオン時間と位相との関係を示す図である。
【
図6】ある期間に亘るスイッチング信号のタイミング図である。
【
図7】制御部が昇圧信号を生成する回路を示す図である。
【
図8】一般的な三相インバータ回路の概略図である。
【
図9】従来の7段式SVPWMスイッチング方式の波形模式図である。
【
図10】三相インバータの空間電圧ベクトルを示す図である。
【
図11】本出願の実施例の電力変換装置をモータ駆動装置に応用することと従来の7段式SVPWMスイッチング方式を利用して制御する電力変換装置を同一のモータドライバに応用することの効率を比較する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本出願の上記および他の特徴は、添付の図面を参照して以下の説明から明らかにされる。本明細書および図面において、本出願の特定の実施形態が具体的に開示され、本出願の原理が使用され得る実施形態の一部を示すが、本出願は、記載された実施形態に限定されるものではなく、むしろ、本出願は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入る全ての修正、変更、および等価物を含むことが理解されるべきである。
【0031】
本出願の実施例において、用語「第1の」、「第2の」、「上」、「下」等は異なる要素を名称から区別することに用いられるが、これらの要素の空間配列または時間順序等を示すものではなく、これらの要素はこれらの用語に限定されるべきではない。「および/または」という用語は、関連して列挙された用語の1つまたは複数の任意の1つおよびすべての組合せを含む。「備える」、「含む」、「有する」などの用語は、述べられた特徴、要素、要素、または構成要素の存在を指すが、1つまたは複数の他の特徴、要素、要素、または構成要素の存在または追加を除外しない。
【0032】
本出願の実施例において、単数形「一」、「該」等は複数形を含み、広義に「一」または「一類」と理解すべきでありかつ「1個」に限定されるものではない。また用語「前記」は、文脈が明確に示さない限り単数形および複数形を含むと理解すべきである。さらに、「~に基づいて」という用語は「少なくとも部分的に~に基づいて」と理解されるべきであり、「~に基づいて」という用語は「少なくとも部分的に~に基づいて」と理解されるべきである。
【0033】
(第1態様の実施例)
本出願の第1態様の実施例は電力変換装置を提供し、
図1は本出願の実施例の電力変換装置のモジュール化概略図であり、
図2は
図1に示される電力変換装置の一部の回路概略図である。
【0034】
本出願の実施例において、
図1に示すように、電力変換装置100は昇圧回路部101、インバータ部102、制御部103および直流電源104を含むことができ、電力変換装置100は三相モータ200に三相交流電力を提供する。ここで、制御部103は昇圧回路部101にパルス幅変調昇圧信号PB(以下では「昇圧信号PB」と略称する)を出力できる。昇圧回路部101は直流電源104に接続され、制御部103からの昇圧信号PBに基づいて直流電源104の出力電圧U
dcを昇圧し、かつ昇圧後の電圧をインバータ部102に出力できる。
【0035】
図2に示すように、インバータ部102は出力部1021および三相スイッチング回路1022を含むことができ、三相スイッチング回路1022は複数のスイッチング素子で構成することができ、出力部1021は三相スイッチング回路1022に接続され、三相モータ200の各相に給電し、出力部1021は例えばダイオード等の電気素子を含み、具体的には関連技術を参照でき、本出願はこれに限定されない。
【0036】
本発明の実施例において、制御部103は昇圧回路部101の出力電圧を検出し、昇圧回路部101が昇圧状態にあるとき、制御部103はインバータ部102にパルス幅変調スイッチング信号PI(以下では「スイッチング信号PI」と略称する)を出力し、三相スイッチング回路1022における二相のスイッチング素子が1つのパルス幅変調周期(以下では「PWM周期」と略称する)においてオンしないように制御し、他の一相のスイッチング素子が該PWM周期においてオン/オフするように制御する。これにより、スイッチング回数が少なくなるため、全体としてスイッチング損失が少なくなる。
【0037】
少なくとも1つの実施例において、
図2に示すように、三相スイッチング回路1022は6個のスイッチング素子でブリッジ回路を構成することができ、T
1~T
3、T
1′~T
3′でこの6個のスイッチング素子を示し、T
1とT
1′、T
2とT
2′、T
3とT
3′はそれぞれ対になり、ブリッジ回路の第1アーム、第2アームおよび第3アームを構成し、ここで、T
1、T
2、T
3は上アームと記し、T
1′、T
2′、T
3′は下アームと記し、ブリッジ回路の3つのアームは三相モータ200の三相に対応し、スイッチング信号PIで制御され、三相モータ200の各相は給電される。
図2では、三相のスイッチング回路1022を6個のスイッチング素子で構成した場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の数のスイッチング素子でスイッチング回路を構成して3相モータに電力を供給するようにしてもよく、具体的には従来技術を参照できる。なお、
図2ではスイッチング素子をトランジスタの回路記号で示しているが、本願のスイッチング素子はトランジスタに限定されず、他の電気素子でスイッチング素子を構成してもよい。
【0038】
図3は、1つのPWM周期Tにおいて制御部103がインバータ部102の上アームT
1、T
2、T
3に出力するスイッチング信号PI
1~PI
3の模式図であり、制御部103がインバータ部102の下アームT
1′、T
2′、T
3′に出力するスイッチング信号PI
1′~PI
3′は、スイッチング信号PI
1~PI
3と逆相であり、
図3には示されていない。
図4は、
図3に示すスイッチング信号でスイッチング素子T
1~T
3、T
1′~T
3′を制御したときの各スイッチング素子のスイッチング状態である。
【0039】
次に、
図2から
図4を例に制御部103が行う通電制御について説明する。
【0040】
少なくとも1つの実施例において、制御部103は昇圧回路部101が昇圧状態にあることを検出すると、三相スイッチング回路1022にスイッチング信号PI(例えば、スイッチング信号PI1~PI3およびスイッチング信号PI1′~PI3′)を出力する。スイッチング信号PIは、3相スイッチング回路1022における2つのアームの上アームと下アームとが、一方のPWM周期ではオン/オフしないように制御し、他方のアームの上アームと下アームとが、このPWM周期でオン/オフするように制御する。
【0041】
図3に示すように、スイッチング信号PIはPWM信号であり、PWM周期T=t
1+t
2である。1つのPWM周期Tにおいて、PI
1は常にハイレベルであり、PI
3は常にローレベルであり、PI
2のローレベル持続時間はt
1であり、ハイレベル持続時間はt
2である。これに対応して、該1つのPWM周期において、PI
1′は常にローレベルであり、PI
3′は常にハイレベルであり、PI
2′のハイレベル持続時間はt
1であり、ローレベル持続時間はt
2である。
図4に示すように、
図3に示すPWM周期においては、上アームt
1は常にオン状態(ON)であり、下アームt
1′は常にオフ状態(OFF)であり、上アームT
3は常にオフ状態(OFF)であり、下アームT
3′は常にオン状態(ON)であり、上アームT
2はt
1オン状態に切り替わり、下アームT
2′はt
1期間でオン状態、T
2期間でオフ状態に切り替わる。これにより、PWM周期では、第2アーム(上アームT
2がオフからオン、下アームT
2′がオンからオフ)のみがスイッチングし、第1アーム(上アームT
1が常にオン、下アームT
1′が常にオフ)と第3アーム(上アームT
3が常にオフ、下アームT
3′が常にオン)はスイッチングしない。(PI
1PI
2PI
3)を空間電圧ベクトルと表記すると、
図3に示すPWM周期において、空間電圧ベクトルV
1(100)の継続時間はt
1であり、空間電圧ベクトルV
2(110)の継続時間はt
2であり、インバータ部102の出力電圧はベクトル空間における0°~60°で変化する。
【0042】
同様に、別のPWM周期において、PI1は常にハイレベルであり、PI2は常にローレベルであり、PI3のローレベル持続時間はt1であり、ハイレベル持続時間はt2である。これに対応して、該1つのPWM周期において、PI1′は常にローレベルであり、PI2′は常にハイレベルであり、PI3′のハイレベル持続時間はt1であり、ローレベル持続時間はt2である。すると、このPWM周期において、上アームt1は常にオン状態(ON)にあり、下アームt1′は常にオフ状態(OFF)にあり、上アームT2は常にオフ状態(OFF)にあり、下アームT2′は常にオン状態(ON)にあり、上アームT3はt1期間でオフ状態にあり、T2期間でオン状態に切り替わり、下アームT3′はt1期間でオン状態にあり、T2期間でオフ状態に切り替わる。これにより、PWM周期では、第3アーム(上アームT3がオフからオン、下アームT3′がオンからオフ)のみがスイッチングし、第1アーム(上アームT1が常にオン、下アームT1′が常にオフ)と第2アーム(上アームT2が常にオフ、下アームT2′が常にオン)はスイッチングしない。このPWM周期において、空間電圧ベクトルV1(100)の継続時間はt1であり、空間電圧ベクトルV6(101)の継続時間はt2であり、インバータ部102の出力電圧はベクトル空間において300°~360°で変化する。
【0043】
同様に、別の1つのPWM周期において、PI2は常にハイレベルであり、PI3は常にローレベルであり、PI1のローレベル持続時間はt1であり、ハイレベル持続時間はt2である。これに対応して、該1つのPWM周期において、PI2′は常にローレベルであり、PI3′は常にハイレベルであり、PI1′のハイレベル持続時間はt1であり、ローレベル持続時間はt2である。すると、このPWM周期において、上アームT2は常にオン状態(ON)にあり、下アームT2′は常にオフ状態(OFF)にあり、上アームT3は常にオフ状態(OFF)にあり、下アームT3′は常にオン状態(ON)にあり、上アームt1はt1期間でオフ状態にあり、T2期間でオン状態に切り替わり、下アームt1′はt1期間でオン状態にあり、T2期間でオフ状態に切り替わる。これにより、1つのPWM周期において、第1アーム(上アームT1がオフからオン、下アームT1′がオンからオフ)のみがスイッチングされ、第2アーム(上アームT2が常にオン、下アームT2′が常にオフ)と第3アーム(上アームT3が常にオフ、下アームT3′が常にオン)はスイッチングされない。このPWM周期において、空間電圧ベクトルV3(010)の継続時間はt1であり、空間電圧ベクトルV2(110)の継続時間はt2であり、インバータ部102の出力電圧はベクトル空間において60°~120°で変化する。
【0044】
同様に、別のPWM周期において、PI1は常にローレベルであり、PI3は常にハイレベルであり、PI2のローレベル持続時間はt1であり、ハイレベル持続時間はt2である。これに対応して、該1つのPWM周期において、PI1′は常にハイレベルであり、PI3′は常にローレベルであり、PI2′のハイレベル持続時間はt1であり、ローレベル持続時間はt2である。すると、このPWM周期において、上アームt1は常にオフ状態(OFF)にあり、下アームt1′は常にオン状態(ON)にあり、上アームT3は常にオン状態(ON)にあり、下アームT3′は常にオフ状態(OFF)にあり、上アームT2はt1の期間でオフ状態にあり、T2の期間でオン状態に切り替わり、下アームT2′はt1の期間でオン状態にあり、T2の期間でオフ状態に切り替わる。これにより、PWM周期では、第2アーム(上アームT2がオフからオン、下アームT2′がオンからオフ)のみがスイッチングし、第1アーム(上アームT1が常にオン、下アームT1′が常にオフ)と第3アーム(上アームT3が常にオフ、下アームT3′が常にオン)はスイッチングしない。このPWM周期において、空間電圧ベクトルV5(001)の継続時間はt1であり、空間電圧ベクトルV4(011)の継続時間はt2であり、インバータ部102の出力電圧はベクトル空間において180°~240°で変化する。
【0045】
同様に、別の1つのPWM周期において、PI1は常にローレベルであり、PI2は常にハイレベルであり、PI3のローレベル持続時間はt1であり、ハイレベル持続時間はt2である。これに対応して、該1つのPWM周期において、PI1′は常にハイレベルであり、PI2′は常にローレベルであり、PI3′のハイレベル持続時間はt1であり、ローレベル持続時間はt2である。すると、このPWM周期において、上アームt1は常にオフ状態(OFF)にあり、下アームt1′は常にオン状態(ON)にあり、上アームT2は常にオン状態(ON)にあり、下アームT2′は常にオフ状態(OFF)にあり、上アームT3はt1の期間でオフ状態にあり、T2の期間でオン状態に切り替わり、下アームT3′はt1の期間でオン状態にあり、T2の期間でオフ状態に切り替わる。これにより、PWM周期では、第3アーム(上アームT3がオフからオン、下アームT3′がオンからオフ)のみがスイッチングし、第1アーム(上アームT1が常にオフ、下アームT1′が常にオン)と第2アーム(上アームT2が常にオン、下アームT2′が常にオフ)はスイッチングしない。このPWM周期において、空間電圧ベクトルV3(010)の継続時間はt1であり、空間電圧ベクトルV4(011)の継続時間はt2であり、インバータ部102の出力電圧はベクトル空間において120°~180°で変化する。
【0046】
同様に、別の2つのPWM周期において、PI1は常にローレベルであり、PI3は常にハイレベルであり、PI1のローレベル持続時間はt1であり、ハイレベル持続時間はt2である。これに対応して、該2つのPWM周期において、PI1′は常にハイレベルであり、PI3′は常にローレベルであり、PI1′のハイレベル持続時間はt1であり、ローレベル持続時間はt2である。すると、このPWM周期において、上アームT2は常にオフ状態(OFF)にあり、下アームT2′は常にオン状態(ON)にあり、上アームT3は常にオン状態(ON)にあり、下アームT3′は常にオフ状態(OFF)にあり、上アームt1はt1の期間でオフ状態にあり、T2の期間でオン状態に切り替わり、下アームt1′はt1の期間でオン状態にあり、T2の期間でオフ状態に切り替わる。これにより、1つのPWM周期において、第1アーム(上アームT1がオフからオン、下アームT1′がオンからオフ)のみがスイッチングされ、第2アーム(上アームT2が常にオフ、下アームT2′が常にオン)と第3アーム(上アームT3が常にオン、下アームT3′が常にオフ)はスイッチングされない。このPWM周期において、空間電圧ベクトルV5(001)の継続時間はt1であり、空間電圧ベクトルV6(101)の継続時間はt2であり、インバータ部102の出力電圧はベクトル空間において240°~300°で変化する。
【0047】
これにより、従来の7段式SVPWM制御方式と比較して、従来の7段式SVPWM制御方式において、1つのPWM周期内に6回のスイッチ切り替えが必要であり、ここで、ゼロ電圧ベクトル(
図9に示すように、ゼロ電圧ベクトルV
0およびV
7)が存在するため、ゼロ電圧ベクトルのスイッチ切り替えを4回行う必要があり、本出願において、1つのPWM周期に1回のスイッチ切り替えのみを行い、2段式SVPWM制御方式に属し、本出願は1つのPWM周期内にゼロ電圧ベクトルがないため、インバータのスイッチング損失を2/3倍に低減できる。
【0048】
図5は、本願の2段式SVPWM制御方式により制御される電力変換器が出力する三相スイッチング回路の各相の導通時間と位相との関係を示す図である。
図5に示すように、A相は例えば第1アーム(上アームT
1と下アームT
1′)に対応し、B相は例えば第2アーム(上アームT
2と下アームT
2′)に対応し、C相は例えば第3アーム(上アームT
3と下アームT
3′)に対応し、以下ではベクトル空間における0°~60°区間を例として
図5を説明する。ベクトル空間における0°~60°の区間において、A相のデューティ比が常に1より大きく、A相の上アームT
1がPWM周期全体において常にオンし、下アームT
1′がPWM周期全体において常にオフすることを示す。C相のデューティ比が常に-1より小さく、C相の上アームT
3がPWM周期全体において常にオフし、下アームT
3′がPWM周期全体において常にオンすることを示す。B相のデューティ比が-1~1の間にあり、位相が0°であるとき、デューティ比が1であり、上アームT
2がオンし、デューティ比が1より小さいとき、上アームT
2と下アームT
2′のONとOFFとの切り替え(即ち、スイッチング)を行うにあたり、実際のPWMデューティ(DUTY_PWM)には、例えば、DUTY_PWM=0.5×DUTY+0.5のような関数関係がある。例えば、位相が30°のとき、デューティ(DUTY)は0、実際のPWMデューティ(DUTY_PWM)は0.5である。これは、上下アームがそれぞれ50%のPWM周期の間オンすることを示す。また、A相の上アームとC相の下アームとが連続してオンしてもインバータ部の出力電圧を高くすることができないので、昇圧回路部によりインバータ部の直流リンク電圧を高くすることができ、電圧値はA相またはC相のオン時間割合の絶対値に比例するので、インバータ部は要求電圧に見合った正弦波電圧を出力する。インバータ部の出力電圧の振幅は昇圧回路部制御で決定できるので、PWM周期中に、インバータ部中のある一相のスイッチの上下アームのオン時間割合を制御するだけで、空間電圧ベクトルの位相を決定でき、これにより、インバータスイッチのスイッチング損失を2/3倍に低減できる。
【0049】
図6は、スイッチング信号PI
1~PI
3の一例を示す図であり、スイッチング信号PI
1′~PI
3′とスイッチング信号PI
1~PI
3とは反転しており、
図6には示されていない。スイッチング信号PI
1~PI
3およびスイッチング信号PI
1′~PI
3′の制御により、インバータ部102の出力電圧の位相がベクトル空間において連続的に変化する。また、昇圧回路部101によって可変の直流リンク電圧を生成することができ、インバータ部102はゼロ電圧ベクトルを出力することなく三相モータの振幅要件を満たす電圧を出力することができ、従って、2つの異なる非ゼロ電圧ベクトルの出力時間比率を変更するだけで、滑らかな円周電圧ベクトルを出力し、電流高調波を減少できる。
【0050】
図7は、制御部103が昇圧信号PBを生成する回路図である。
【0051】
少なくとも1つの実施例において、
図7に示すように、制御部103は電圧制御器1031およびPWM信号発生器1032を含むことができ、電圧制御器1031は昇圧回路部101の出力電圧U
Bおよび目標電圧U
Mに基づいて昇圧信号PBのデューティ比D
PBを決定することができ、目標電圧U
Mは例えば三相モータ300に必要な電圧U
Mであり、予め設定された目標デューティ比D
Mに直流電源104の出力電圧U
dcを乗じて得られる。PWM信号発生器1032はデューティ比D
PBに基づいて昇圧信号PBを生成して昇圧回路部101に提供し、昇圧回路部101を昇圧制御する。
【0052】
少なくとも1つの実施例において、
図7に示すように、予め設定された目標デューティ比のピーク値D
Mに直流電源104の出力電圧U
dcを乗算して得られた信号を電圧制御コマンドとし、昇圧回路部101からフィードバックされた出力電圧U
Bを減算し、電圧誤差を得て、電圧制御器1031は該電圧誤差に基づいて昇圧信号PBのデューティ比D
PBを計算し、PWM信号発生器1032は該デューティ比D
PBを三角波信号と比較して昇圧信号PBを生成する。
【0053】
また、制御部103は、三相モータに必要な電圧の位相に応じて、どの2つの空間電圧ベクトルおよびそのそれぞれの継続する時間を必要とするかを決定して、スイッチング信号PIのデューティ比を決定し、このデューティ比を他の三角波信号と比較してスイッチング信号PIを生成してもよい。スイッチング信号PIを生成する三角波の周波数と、昇圧信号PBを生成する三角波の周波数とは、無相関であってもよい。
【0054】
少なくとも1つの実施例において、制御部103はさらに昇圧回路部101が昇圧状態にあるか否かを検出することができ、例えば、
図1に示すように、制御部103は昇圧回路部101の出力電圧U
Bおよび直流電源104の出力電圧U
dcを検出することができ、出力電圧U
Bが直流電源104の出力電圧U
dcより高くかつ三相モータ200に必要な電圧UMより小さければ、昇圧回路部101が昇圧状態にあると判断する。そうでなければ、昇圧回路部101が昇圧状態にないと判断する。制御部103は、昇圧回路部101が昇圧状態部は、インバータ部102を、例えば、従来の7段SVPWMスイッチング方式または5段SVPWMスイッチング方式で制御する。
【0055】
図11は本出願の実施例の電力変換装置をモータ駆動装置に応用することと従来の7段式SVPWMスイッチング方式を利用して制御する電力変換装置を同一のモータドライバに応用することの効率を比較する概略図である。本出願の実施例の電力変換装置をモータ駆動装置に適用し、かつ1つの交流永久磁石同期モータを制御し、それに対して、従来の7段式SVPWMスイッチング方式で制御される電力変換装置を同様に該モータ駆動装置に適用しかつ交流永久磁石同期モータを制御し、それぞれ2者の効率を計測し、
図11に示すように、曲線TSは本出願の2段式SVPWMスイッチング方式の効率に対応し、曲線CSは従来の7段式SVPWMスイッチング方式の効率に対応する。以上から分かるように、本出願の2段式SVPWMスイッチング方式の効率は従来の7段式SVPWMスイッチング方式の効率より明らかに高い。
【0056】
本願実施例によれば、インバータ部の3相スイッチング回路における二相のスイッチング素子を1つのパルス幅変調周期ではオンスイッチングさせず、他の一相のスイッチング素子のみを1つのパルス幅変調周期でオンスイッチングさせることで、2段式空間ベクトルパルス変調方式を構成している。これにより、インバータスイッチのスイッチング損失を2/3倍に低減し、ドライバ効率を向上できる。
【0057】
(第2態様の実施例)
第2の発明に係る電気機器は、第1の発明に係る電力変換装置と、三相モータとを備え、電力変換装置は、三相モータの各相に電力を供給する。この電力変換装置の特徴については、第1の発明の実施の形態において詳細に説明したので、ここではその内容を省略する。
本出願の実施例において、該電気装置の応用分野および/または応用シーンは限定されず、例えば、それは交流モータ駆動装置および直流/交流電力変換器等の応用場面に応用することができ、例えば、バッテリを電源とする駆動装置、例えば電気自動車またはロボットアーム等、または高速エアコン/コンプレッサ装置等に用いられ、または、ウォーターサーバー、洗濯機、掃除機、コンプレッサ、送風機、撹拌機等の家電製品であってもよく、他の分野の電気装置であってもよい。
【0058】
本願実施例によれば、この電力変換装置において、インバータ部の3相スイッチング回路における二相のスイッチング素子を1つのパルス幅変調周期ではオンスイッチングさせず、他の一相のスイッチング素子のみを1つのパルス幅変調周期でオンスイッチングさせて、2段式空間ベクトルパルス変調方式を構成する。これにより、インバータのスイッチング損失を2/3倍に低減でき、ドライバ効率が向上し、電気機器の効率が向上する。
【0059】
以上は具体的な実施形態を参照しながら本出願を説明したが、これらの説明は例示的なものであり、本出願の保護範囲を限定するものではないことは、当業者には明らかである。当業者は本出願の精神および原理に基づいて本出願に対して様々な変更および修正を行うことができ、これらの変更および修正も本出願の範囲内にある。