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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】偽造防止媒体
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20241126BHJP
   B42D 25/378 20140101ALI20241126BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/378
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021003385
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108415
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 実紀
(72)【発明者】
【氏名】西谷 果純
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-035548(JP,A)
【文献】特開2003-200647(JP,A)
【文献】国際公開第2001/094122(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/00- 3/18
7/00- 9/04
B42D 15/02
25/00-25/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、背景部と潜像部を形成してなる印刷層を備えた偽造防止媒体であって、該潜像部が、少なくとも1種類の蛍光性を有する蛍光インキで形成され、かつ一定の線幅で配置した細線の集合で実線が表現されており、
前記実線が、短辺の長さが前記実線の幅より短くかつ幅0.05mm以上0.5mm以下で、長辺の長さが前記短辺の長さの100倍以下である長方形から成る前記細線を、前記長辺を該実線の法線方向に、前記短辺を該実線の接線方向に、隣接する細線との間隔が前記細線の短辺長と等しい間隔で配置して表現されていることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項2】
前記印刷層が、所定の波長の光の照射に対して、それと同一または異なる波長の発光をする白色に近い少なくとも1つの顔料と無色透明ベースインキからなる酸化重合硬化タイプの前記蛍光インキと、
前記蛍光インキと同色であるニスの積層から成ることを特徴とする、請求項1に記載の偽造防止媒体。
【請求項3】
前記印刷層がオフセット印刷によって形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の偽造防止媒体。
【請求項4】
インク密度が40%以上90%以下となるように前記実線が形成され、それらを複数並べてベタ塗りのパターンが表現されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の偽造防止媒体。
【請求項5】
前記ニスが、マットニス、グロスニスまたはこれらの混合物からなり、前記蛍光インキの印刷のパターンに関わらず、網点が40%以上100%以下の範囲で存在する全面ベタ版で形成されることを特徴とする請求項2に記載の偽造防止媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
偽造防止媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品券、銀行券、株券、債権等の有価証券類、各種証明書及び貴重書類等の媒体の偽造・複製による不正使用を防止するため、精巧な印刷技術による印刷等が施されているのが一般的であったが、近年の偽造・複製による不正使用の頻発に鑑み、これら精巧な印刷等に加え特殊な偽造防止策が施されるようになってきた。
【0003】
この特殊な偽造防止策として、ホログラムやレーザーエングレービングなど、形成が容易でない部材や構造を組み込む方法や潜像を作り込む方法などが知られている。
【0004】
潜像を応用した技術としては、例えば紫外線や赤外線など、特定の波長の光の照射に対して発色する材料から成る特殊インキ等を用いて通常の環境光下では肉眼で観察できない潜像を媒体に作り込み、当該特定波長の光を照射して該潜像を浮かび上がらせ顕像化することで真贋判定をする方法などが挙げられる。
【0005】
しかしながら、潜像形成に用いるインキの含侵やインキまたは媒体自身の光沢によってこれらの潜像が目視で確認できてしまう場合がある。
【0006】
このように潜像部位を容易に特定されてしまうと、潜像を形成している材料を特定し易くなることから、媒体が偽造される危険が高まることになる。
【0007】
これを防ぐ対策として、潜像部位を媒体の深層部に作り込んだり(下記特許文献1)、媒体表面に設けた保護層によって潜像部位を視認しづらくする(下記特許文献2)などの提案がなされている。
【0008】
またこのように媒体上下方向に潜像を作り込むような複雑な構造によらず、印刷デザイン部とニス部をネガポジ版とし、かつ網点パターンを用いることで、蛍光インキの印刷領域の境目をより目立たなく不可視印刷する技術も提案されている(下記特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許4517109号公報
【文献】特許4028851号公報
【文献】特許5262961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし上記特許文献1または2の技術では、媒体の縦方向に潜像部位を作り込む工程が付加されることから、製造コストが上昇するという課題があった。
【0011】
また上記特許文献3の技術では、視認を困難にするために潜像部に網点を用いるが、このため特殊インキ印刷部の面積が小さくなることから、十分な発光強度が得られず、潜像の顕像化が不十分となり、判定が困難になるという課題があった。
【0012】
そこで、本発明は、上記のような課題に対処するためになされたものであって、潜像部
を細線の集合で構成することによって、特定波長に対する潜像の顕像化における発光強度を高めて真贋判定が確実に行える状態に保ちながらも、潜像インキ印刷部の通常環境光下での視認性を低下させて、偽造・複製することを困難にしたセキュリティ性の高い偽造防止媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材上に、背景部と潜像部を形成してなる印刷層を備えた偽造防止媒体であって、該潜像部が、少なくとも1種類の蛍光性を有する蛍光インキで形成され、かつ一定の線幅で配置した細線の集合で実線が表現されている偽造防止媒体である。
実線は、短辺の長さが実線の幅より短くかつ幅0.05mm以上0.5mm以下で、長辺の長さが短辺の長さの100倍以下である長方形から成る細線を、長辺を実線の法線方向に、短辺を実線の接線方向に、隣接する細線との間隔が細線の短辺長と等しい間隔で配置して表現されている。
【0014】
また請求項2に記載の発明は、前記印刷層が、所定の波長の光の照射に対して、それと同一または異なる波長の発光をする白色に近い少なくとも1つの顔料と無色透明ベースインキからなる酸化重合硬化タイプの前記蛍光インキと、
前記蛍光インキと同色であるニスの積層から成ることを特徴とする、請求項1に記載の偽造防止媒体である。
【0015】
また請求項3に記載の発明は、前記印刷層がオフセット印刷によって形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の偽造防止媒体である。
【0017】
この偽造防止媒体においては、インク密度が40%以上90%以下となるように実線が形成され、それらを複数並べてベタ塗りのパターンが表現されてもよい。
【0018】
また請求項5に記載の発明は、前記ニスが、マットニス、グロスニスまたはこれらの混合物からなり、前記蛍光インキの印刷のパターンに関わらず、網点が40%以上100%以下の範囲で存在する全面ベタ版で形成されることを特徴とする請求項2に記載の偽造防止媒体である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、潜像印刷層にのみ加工を施すため、基材を特別なものにする必要がないことから、媒体の製造コストの上昇を抑えることができる。
【0020】
また、実線、ベタ塗りパターン共に、従来の潜像外観を変更することなく、蛍光印刷を施すことができる。
【0021】
潜像部の環境光下での隠蔽性を保って高い偽造防止効果を維持しながらも、蛍光印刷部密度を高く保つことができることから、判定時に必要となる蛍光輝度が確保でき、真贋判定の信頼度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態における実線部分を示す平面模式図。
図2】実施形態におけるベタ塗りパターン部分を示す平面模式図。
図3】実施例3で得られた発光分光スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明を実施するための形態について説明する。
【0024】
図1は実線1で構成される潜像部分のイメージ図である。左下に実寸のイメージを、右上に拡大したイメージを示す。実線1に対して全面または網点で潜像の絵柄を印刷するのではなく、実線1の接線方向に対して細線の集合を形成するように、細線2を等間隔に並べることで、実線1を表現している。
【0025】
それぞれ長方形からなる細線2の大きさについては以下のとおりである。短辺の長さDは実線1の幅よりも短く、0.05mm以上0.5mm以下、好ましくは0.1mm以上0.5mm以下で、長辺の長さLは実線1の幅Wに等しく、前記短辺の長さの100倍を上回らない。
【0026】
前記細線2の配置については以下のとおりである。前記長辺Lを該実線1の法線方向に、前記短辺Dを該実線1の接線方向になるように、また各細線2の隣接する細線2との間隔は細線2の短辺Dと等しくなるように、等間隔に配置する。
【0027】
例えば実線1が水平方向に置かれている場合、細線2の向きは細線の短辺Dが水平方向に、長辺Lが垂直方向になる。
【0028】
以上を実線1の各部に対して細線2の集合となるように配置し、実線1としての潜像部分を形成する。
【0029】
図2はベタ塗りのパターン3(以下ベタパターン3)で構成される潜像部分のイメージ図である。左下に実寸のイメージを、右上に拡大したイメージを示す。これもベタパターン3に対して全面または網点で潜像の絵柄を印刷するのではなく、前記の方法で形成された細線2の集合としての実線1を並置した集合として表現している。
【0030】
この場合、隣接する細線2とのピッチP、すなわち細線2の幅Dとインクのないスペースの寸法Sの和は、実線1におけるインクの密度が40パーセント以上90パーセント以下であることから、D/Pが40パーセント以上90パーセント以下となるためには、スペースの寸法Sは細線2の幅Dと必ずしも同一ではなく、Dの3/2倍から1/9倍となる。
【0031】
各実線1の隣接する実線1との間隔は前記スペースSとなるようにする。また各実線1の幅Wは一つのベタパターン3の中で必ずしも同一である必要はなく、各ベタパターン3の端の形状に応じて選ぶことが可能である。このことによって、ベタパターン3端部のより円滑な表現が可能となる。
【0032】
<実施例1>
UV蛍光インキを使用して偽造防止媒体の潜像部分を作製した実施例を以下に示す。
【0033】
基材として、日本製紙株式会社のユーライトナチュラルF(登録商標)を用いた。コートはマットタイプ、グロスタイプ等、任意に選択することが可能であるが、本実施例ではマットタイプを用いた。
【0034】
<潜像の形成>
この基材上に、UV蛍光インキで絵柄層を、続いてオーバーコートニスで保護層を、それぞれオフセット印刷で作製し、潜像パターンを形成した。
【0035】
蛍光インキとして、黄色のものは株式会社T&K TOKAのUV蛍光メジウムYを、青色のものは、同社のUV蛍光メジウムBをそれぞれ用いた。
【0036】
またオーバーコートニスは同社のUV161メジウムSを用いた。マットニス、グロスニス等、任意に選択することが可能であるが、本実施例ではグロスタイプを用いた。
【0037】
潜像の環境光下での隠蔽性と、UV光下での視認性が、印刷デザインの違いによってどのように変化するかを調べるため、印刷デザインを以下のように変化させたチャートパターンを印刷形成した。
【0038】
絵柄層については、前記細線が、0.1mm、0.2mm、0.3mm、および0.5 mmの線幅で、それぞれ線幅の2倍のピッチで5本ずつ並べた細線の集合を、また実線との比較のため、線幅が0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.7mmおよび1.0mmのものを各1本単独で配置したものを、それぞれチャートを形成した。
【0039】
また版の網点濃度を10パーセントから100パーセントまで10パーセント刻みで変化させた版を用いてチャートを形成した。
【0040】
オーバーコート層については、全面ベタ版とし、網点濃度が40パーセント、60パーセント、100パーセントの3種類の版を用いて比較した。
【0041】
<潜像の観察>
前記のようにして得られたチャートパターンについて、顕像化された潜像の視認性を波長365nmのUVライト下で、また隠蔽性を可視光下で、それぞれ目視観察した。
【0042】
前記視認性については絵柄層の網点濃度が60パーセントから100パーセントの範囲において、発光輝度の変化は認められなかった。またオーバーコート層の網点濃度についても、40パーセント、60パーセント、100パーセントいずれの場合においても発光輝度の変化は認められなかった。
【0043】
また前記細線の集合については、線幅0.1mmを0.2mmピッチで5本並べたものと、線幅1.0mmの単独線の間に発光輝度の違いは認められなかった。
【0044】
前記隠蔽性については、オーバーコート層形成によって前記のいずれの絵柄層パターンにおいても視認が容易ではなくなるが、特に前記細線幅が0.1mm以上0.5mm以下の範囲においては目視で確認することができない程度に隠蔽性が確保されていた。
【0045】
以上から、蛍光インキの網点濃度を60パーセントで表現するよりも、少なくとも線幅が0.1mm以上0.5mm以下の細線を、それぞれ同じ寸法の間隔で、すなわち蛍光インキの存在濃度が50パーセントとなるように繰り返し配列することによって、環境光下での隠蔽性と、UV光下での視認性を両立させた偽造防止媒体に必要な潜像を得ることができた。
【0046】
<実施例2>
赤外線蛍光インキを使用して偽造防止媒体の潜像部分を作製した実施例を以下に示す。
【0047】
基材として、日本製紙株式会社のユーライトナチュラルF(登録商標)を用いた。コー
トはマットタイプ、グロスタイプ等、任意に選択することが可能であるが、本実施例ではマットタイプを用いた。
【0048】
<潜像の形成>
この基材上に、赤外線蛍光インキで絵柄層を、続いてオーバーコートニスで保護層を、それぞれオフセット印刷で作製し、潜像パターンを形成した。
【0049】
蛍光インキとして、顔料は根本特殊化学社のSG-YSを、またメジウムとして株式会社T&K TOKAのUV161メジウムSを用い、樹脂に対する顔料の比率(P/B比)が1~50パーセントになるように調製した。
【0050】
またオーバーコートニスについてもUV161メジウムSを用いた。マットニス、グロスニス等、任意に選択することが可能であるが、本実施例ではグロスタイプを用いた。
【0051】
潜像の環境光下での隠蔽性と、赤外光下での視認性が、印刷デザインの違いによってどのように変化するかを調べるため、印刷デザインを以下のように変化させたチャートパターンを印刷形成した。
【0052】
絵柄層については、前記細線が、0.1mm、0.2mm、0.3mm、および0.5
mmの線幅で、それぞれ線幅の2倍のピッチで5本ずつ並べた細線の集合を、また実線との比較のため、線幅が0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.7mmおよび1.0mmのものを各1本単独で配置したものを、それぞれチャートを形成した。
【0053】
また版の網点濃度を10パーセントから100パーセントまで10パーセント刻みで変化させた版を用いてチャートを形成した。
【0054】
オーバーコート層については、全面ベタ版とし、網点濃度が40パーセント、60パーセント、100パーセントの3種類の版を用いて比較した。
【0055】
<潜像の観察>
前記のようにして得られたチャートパターンについて、顕像化された潜像の視認性を波長800nm付近に感度を有する赤外線カメラで、また隠蔽性を可視光下の目視観察で、それぞれ確認した。
【0056】
前記視認性については絵柄層の網点濃度が60パーセントから100パーセントの範囲において、発光輝度の変化は認められなかった。またオーバーコート層の網点濃度についても、40パーセント、60パーセト、100パーセントいずれの場合においても発光輝度の変化は認められなかった。
【0057】
また前記細線の集合については、線幅0.1mmを0.2mmピッチで5本並べたものと、線幅1.0mmの単独線の間に発光輝度の違いは認められなかった。
【0058】
前記隠蔽性については、オーバーコート層形成によって前記のいずれの絵柄層パターンにおいても視認が容易ではなくなるが、特に前記細線幅が0.1mm以上0.5mm以下の範囲においては目視で確認することができない程度に隠蔽性が確保されていた。
【0059】
以上から、蛍光インキの網点濃度を60パーセントで表現するよりも、少なくとも線幅が0.1mm以上0.5mm以下の細線を、それぞれ同じ寸法の間隔で、すなわち蛍光インキの存在濃度が50パーセントとなるように繰り返し配列することによって、環境光下での隠蔽性と、赤外光下での視認性を両立させた偽造防止媒体に必要な潜像を得ることができた。
【0060】
<実施例3>
より定量的な評価を行うため、UV蛍光インキをそれぞれ網点と細線の集合で印刷し、その発光量比較を分光器を用いて行った。
【0061】
基材として、日本製紙株式会社のユーライトナチュラルF(登録商標)を用いた。コートはマットタイプ、グロスタイプ等、任意に選択することが可能であるが、本実施例ではマットタイプを用いた。
【0062】
<潜像の形成>
この基材上に、UV蛍光インキで絵柄層を、続いてオーバーコートニスで保護層を、それぞれオフセット印刷で作製し、潜像パターンを形成した。
【0063】
蛍光インキとして、青色蛍光を発する株式会社T&K TOKAのUV蛍光メジウムBを用いた。
【0064】
またオーバーコートニスは同社のUV161メジウムSを用いた。マットニス、グロスニス等、任意に選択することが可能であるが、本実施例ではグロスタイプを用いた。
【0065】
潜像のUV光下での視認性に影響を与える発光強度が、印刷デザインの違いによってどのように変化するかを調べるため、以下の2種類の絵柄層を印刷形成した。
【0066】
まず本発明を実施したものとして、前記細線2の短辺Dが0.4mm、実線の接線方向に隣接する細線との間隔が0.74mm、すなわち実線1の蛍光インキ密度が35パーセント程度になるように細線を配置して実線1のパターンを形成した。
【0067】
本発明に対する比較例として、網点濃度が60パーセントの版を用いて前記実線1と同じ実線幅のパターンを形成した。
【0068】
オーバーコート層については、全面ベタ版とし、網点濃度が40パーセント、60パーセント、100パーセントの3種類の版を用いて比較した。
【0069】
<潜像の観察>
前記のようにして得られた2つのパターンについて、オーシャンフォトニクス社の分光器USB2000を用い、それぞれ測定面積を等しく一定にしてUV光に対する発光分光スペクトルを測定した。図3にその結果を示す。
【0070】
得られたスペクトルの青色発光に相当する波長430nm~490nmの強度を積分し、発光強度を求めた。その結果、本発明を実施した細線の集合による実線部については34.5μW/cm/nmの、比較例としての網点による実線部については30.6μW/cm/nmの発光強度がそれぞれ得られた。
【0071】
以上から、コート紙上に蛍光インキの透明印刷を行う際に、網点濃度を60パーセントで表現するよりも、細線の集合で表現する方が、蛍光インキ印刷面積比が35パーセントと低いにもかかわらず、より高い発光強度が得られることから、環境光下での隠蔽性が印刷面積比の低さによって保たれ、かつ顕像化時の視認性が発光強度の高さによってより確実となる、偽造防止媒体用の潜像を得られることが確認できた。
【符号の説明】
【0072】
1 潜像部を構成する実線部分
2 実線部分を構成する細線
3 潜像部を構成するベタパターン部分
図1
図2
図3