(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ステータおよび回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20241126BHJP
H02K 11/25 20160101ALI20241126BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K11/25
H02K15/02 D
(21)【出願番号】P 2021004186
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 玲二
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-097261(JP,A)
【文献】特開2017-189007(JP,A)
【文献】特開2016-046937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/50
H02K 11/25
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、
前記ステータコアに配置されるコイル部と、
前記コイル部と電気的に接続されるバスバーを含むバスバーユニットと、
前記コイル部の温度を検知する温度検知部と、前記温度検知部に接続される配線部とを含む温度検知ユニットと、を備え、
前記バスバーユニットは、
絶縁カバーを含み、
前記絶縁カバーは、前記配線部を保持する保持部を含む、ステータ。
【請求項2】
前記
絶縁カバーは、前記バスバーを有するバスバーモジュールと、前記バスバーと前記コイル部とが接続される
2つの接続部を
遮蔽板によって互いに絶縁するとともに、前記バスバーモジュールに係合され
ている、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記絶縁カバーは、前記ステータコアの軸方向と交差するように延びる平面部と、前記平面部から前記軸方向に沿って延びる壁部と、を含み、
前記壁部は、前記軸方向から見て、前記配線部が前記保持部に保持される保持領域を囲むように設けられている、請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記温度検知ユニットは、前記温度検知部とは反対側の前記配線部の端部に設けられる第1接続部を含み、
前記保持部は、前記配線部を前記保持部へ挿入するための挿入開口部と、前記挿入開口部に対して前記配線部の挿入方向側に設けられ、前記配線部の前記挿入方向側への移動を規制する規制部と、を有し、
前記配線部は、前記保持部に保持された状態で、かつ、第2接続部に前記第1接続部が接続された状態で、前記配線部のうち前記保持部に保持される部分と前記第1接続部との間の部分が、前記挿入方向とは反対側に折れ曲げられる、請求項1~3のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項5】
絶縁カバーと、ステータコアに配置されるコイル部と電気的に接続されるバスバー
とを含むバスバーユニット
の、前記絶縁カバーに設けられる保持部により、前記コイル部の温度を検知する温度検知部に接続される配線部が保持されるように、前記配線部を前記保持部に取り付ける取り付け工程と、
前記取り付け工程の後、前記配線部が前記保持部に保持された状態で、前記ステータコアをロータに対して相対的に移動させることによって、前記ステータコアの径方向において前記ロータと対向する位置に前記ステータコアを配置する配置工程と、を備える、回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータおよび回転電機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バスバーユニットを備えるステータおよび回転電機の製造方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の回転電機用ステータは、複数のスロットが形成されているステータコアと、複数のスロットに挿入されるコイルと、を備える。また、上記回転電機用ステータは、コイルに電気的に接続されるバスバーと、バスバーを保持する保持部材とを含むバスバーユニットを備える。バスバーユニットの保持部材は、コイルのコイルエンド部の上に載置されている。また、上記回転電機用ステータは、コイルとバスバーとの接続部を覆う内側(外側)カバー(絶縁カバー)を備える。また、保持部材には、コイルの温度を検知する温度検知部(サーミスタまたは熱電対)が嵌め込まれる凹部が設けられている。また、温度検知部が検知したコイルの温度を示す信号は、温度検知部に接続された配線部を介して回転電機を制御する制御装置に出力される。また、回転電機用ステータは、径方向において回転電機用ステータと対向する位置に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載されているような従来の回転電機用ステータでは、回転電機用ステータと回転電機用ロータとを組み付ける際に、回転電機用ステータと回転電機用ロータとが径方向に互いに対向するように、回転電機用ステータが回転電機用ロータに対して軸方向に沿って相対的に移動される場合がある。この場合、温度検知部に接続される配線部が回転電機用ロータと干渉するのを防止するために、配線部を保持するための部品(治具)がステータとは別個に追加的に設けられる場合がある。このため、回転電機の製造工程においてステータとは別個の追加の部品を要する分、回転電機の製造工程が煩雑になることが考えられる。したがって、回転電機用ロータに対する回転電機用ステータの相対移動時に、追加の部品を用いずに、温度検知部に接続される配線部が回転電機用ロータと干渉するのを防止することが可能な回転電機用ステータ(ステータ)および回転電機の製造方法が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ロータに対するステータの相対移動時に、追加の部品を用いずに、温度検知部に接続される配線部がロータと干渉するのを防止することが可能なステータおよび回転電機の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面によるステータは、ステータコアと、ステータコアに配置されるコイル部と、コイル部と電気的に接続されるバスバーを含むバスバーユニットと、コイル部の温度を検知する温度検知部と、温度検知部に接続される配線部とを含む温度検知ユニットと、を備え、バスバーユニットは、絶縁カバーを含み、絶縁カバーは、配線部を保持する保持部を含む。
【0008】
この発明の第1の局面によるステータでは、上記のように、バスバーユニットは、絶縁カバーを含み、絶縁カバーは、配線部を保持する保持部を含む。これにより、保持部が、ステータに備えられるバスバーユニットの絶縁カバーに設けられているので、追加の部品を用いずに、温度検知部に接続される配線部を保持することができる。その結果、ロータに対するステータの相対移動時に、追加の部品を用いずに、温度検知部に接続される配線部がロータと干渉するのを防止することができる。
【0009】
また、この発明の第2の局面による回転電機の製造方法は、絶縁カバーと、ステータコアに配置されるコイル部と電気的に接続されるバスバーとを含むバスバーユニットの、絶縁カバーに設けられる保持部により、コイル部の温度を検知する温度検知部に接続される配線部が保持されるように、配線部を保持部に取り付ける取り付け工程と、取り付け工程の後、配線部が保持部に保持された状態で、ステータコアをロータに対して相対的に移動させることによって、ステータコアの径方向においてロータと対向する位置にステータコアを配置する配置工程と、を備える。
【0010】
この発明の第2の局面による回転電機の製造方法では、上記のように、配線部がバスバーユニットの、絶縁カバーに設けられる保持部に保持された状態で、径方向においてロータと対向する位置にステータコアを配置する配置工程を備える。これにより、保持部がステータに備えられるバスバーユニットに設けられているので、追加の部品を用いずに、温度検知部に接続される配線部を保持することができる。その結果、ロータに対するステータの相対移動時に、追加の部品を用いずに、温度検知部に接続される配線部がロータと干渉するのを防止することが可能な回転電機の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロータに対するステータの相対移動時に、追加の部品を用いずに、温度検知部に接続される配線部がロータと干渉するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態による回転電機の構成を示す部分拡大平面図である。
【
図2】一実施形態によるステータの構成を示す径方向に沿った部分拡大断面図である。
【
図3】一実施形態によるバスバーモジュールの構成を示す斜視図である。
【
図4】一実施形態による絶縁カバーの保持部近傍の構成を示す部分拡大斜視図である。
【
図5】一実施形態による絶縁カバーの保持部近傍の側面図である。
【
図6】一実施形態による絶縁カバーの保持部近傍の平面図である。
【
図7】一実施形態によるコネクタ端子の接続状態における配線部の状態を示す概略的な平面図である。
【
図8】一実施形態による回転電機の製造方法を示すフロー図である。
【
図9】一実施形態による回転電機の製造方法におけるステータコアがロータ(ケース)に配置される様子を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
[ステータの構造]
図1~
図9を参照して、ステータ100の構造および回転電機102の製造方法について説明する。
【0015】
本願明細書では、「軸方向」とは、
図1に示すように、ステータ100の中心軸線Cに沿った方向(Z方向)を意味する。また、「周方向」とは、ステータ100の周方向(A方向)を意味する。また、「径方向」とは、ステータ100の半径方向(R方向)を意味する。
【0016】
ステータ100は、ロータ101と共に、回転電機102の一部を構成する。回転電機102は、たとえば、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータとして構成される。ステータ100は、
図1に示すように、永久磁石(図示せず)が設けられるロータ101の径方向外側に配置されている。すなわち、ステータ100は、インナーロータ型の回転電機102の一部を構成する。
【0017】
ステータ100は、ステータコア10と、ステータコア10に配置されるコイル部20(
図2参照)とを備える。
【0018】
(ステータコアの構造)
ステータコア10は、中心軸線C(
図1参照)を中心軸とした円筒形状を有する。また、ステータコア10は、たとえば、複数枚の電磁鋼板(たとえば、珪素鋼板)が軸方向に積層されることにより、形成されている。ステータコア10には、軸方向に見て円環状を有するバックヨーク11(
図2参照)と、バックヨーク11の径方向内側に設けられ、軸方向に延びる複数のスロット12(
図2参照)とが設けられている。
【0019】
図2に示すように、スロット12には、径方向内側に開口する開口部12aが設けられている。また、スロット12は、軸方向両側のそれぞれが開口している。
【0020】
(コイル部の構造)
コイル部20は、スロット12に収容(配置)されているスロット収容部21と、ステータコア10(スロット12)の軸方向の外側に配置されているコイルエンド部22と、を含む。
【0021】
コイル部20は、電源部(図示せず)から3相交流の電力が供給されることにより、磁束を発生させるように構成されている。具体的には、コイル部20は、3相のY結線により接続(結線)されている。
【0022】
また、コイル部20は、動力線20Pと、中性線20Nとを含む。
【0023】
(バスバーユニットの構造)
また、ステータ100は、バスバーユニット30を備える。バスバーユニット30は、バスバーモジュール30aを含む。バスバーモジュール30aは、コイル部20と電気的に接続されるバスバー31を有する。バスバーモジュール30aは、バスバー31を保持するバスバー保持部32を有する。
【0024】
図3に示すように、バスバー31は、第1バスバー31aと、第2バスバー31bと、第3バスバー31cと、中性線バスバー31dと、を含む。第1バスバー31a、第2バスバー31b、および第3バスバー31cはそれぞれ、3相のコイル部20の互いに異なる相のコイル部20に接続される。中性線バスバー31dは、3相のコイル部20の各々に接続される。第1バスバー31a、第2バスバー31b、第3バスバー31c、および中性線バスバー31dは、バスバー保持部32に一体的に保持されている。
【0025】
第1バスバー31a、第2バスバー31b、および第3バスバー31cの各々は、コイル部20の動力線20Pに接続される複数の動力線接続端子30Pを有する。また、中性線バスバー31dは、コイル部20の中性線20Nに接続される複数の中性線接続端子30Nを有する。
【0026】
動力線接続端子30Pおよび中性線接続端子30Nはそれぞれ、バスバー保持部32から径方向外側(R2側)および径方向内側(R1側)に突出するように設けられている。また、動力線接続端子30Pと動力線20Pとが接続されることにより接続部40P(
図2参照)が形成される。また、中性線接続端子30Nと中性線20Nとが接続されることにより接続部40N(
図2参照)が形成される。
【0027】
図3に示すように、バスバーモジュール30a(バスバー31)は、径方向内側(R1側)および径方向外側(R2側)の各々において、周方向(A方向)の一方側から他方側に向かって、一対の動力線接続端子30Pと一対の中性線接続端子30Nとが交互に配置されるように構成されている。
【0028】
また、第1バスバー31a、第2バスバー31b、および第3バスバー31cの各々は、外部接続端子33を有する。外部接続端子33は、バスバー保持部32からZ1側に突出するように設けられている。なお、外部接続端子33は、図示しない外部回路に電気的に接続される。
【0029】
また、
図1に示すように、ステータ100は、絶縁カバー50を備える。絶縁カバー50は、バスバーモジュール30aに係合されている。また、絶縁カバー50は、接続部(40P、40N)を絶縁するように構成されている。具体的には、絶縁カバー50は、周方向に並ぶ一対の接続部40Pと一対の接続部40Nとの間に設けられる複数の遮蔽板51を含む。これにより、一対の接続部40Pと一対の接続部40Nとが絶縁される。なお、絶縁カバー50は、樹脂製(たとえばナイロン系)である。また、
図1では、簡略化のため、接続部(40P、40N)の図示は省略されている。
【0030】
また、ステータ100は、コイル部20の温度を検知するサーミスタ61と、サーミスタ61に接続される配線部62とを含む温度検知ユニット60を備える。サーミスタ61は、バスバーユニット30に取り付けられている。具体的には、サーミスタ61は、バスバーモジュール30aに埋め込まれるように設けられている。また、温度検知ユニット60は、サーミスタ61とは反対側の配線部62の端部に設けられるコネクタ端子63を含む。コネクタ端子63は、回転電機102を制御する制御装置(図示せず)に設けられるコネクタ端子103(
図7参照)に接続される。サーミスタ61が検知したコイル部20の温度を示す信号は、配線部62を介して、上記制御装置に出力される。なお、サーミスタ61は、特許請求の範囲の「温度検知部」の一例である。また、コネクタ端子63およびコネクタ端子103は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1接続部」および「第2接続部」の一例である。なお、コネクタ端子103は、ステータ100に設けられていてもよい。
【0031】
ここで、
図4に示すように、バスバーユニット30は、配線部62を保持する保持部52を含む。保持部52は、バスバーモジュール30a(バスバー31)とは異なる箇所に設けられている。具体的には、保持部52は、絶縁カバー50に設けられている。詳細には、保持部52は、絶縁カバー50に一体的に設けられている。すなわち、保持部52は、樹脂製である。
【0032】
これにより、保持部52が、ステータ100に備えられるバスバーユニット30に設けられているので、追加の部品を用いずに、サーミスタ61に接続される配線部62を保持することができる。その結果、ロータ101に対するステータ100の相対移動時に、追加の部品を用いずに、サーミスタ61に接続される配線部62がロータ101と干渉するのを防止することができる。
【0033】
また、保持部52が絶縁カバー50に設けられていることによって、保持部52に保持された配線部62(コネクタ端子63)がバスバー31(バスバーモジュール30a)等に接触して導通するのをより確実に防止することができる。
【0034】
絶縁カバー50は、軸方向と交差(直交)するように延びる平面部53を含む。また、絶縁カバー50は、平面部53から軸方向に沿って延びる壁部54を含む。保持部52は、壁部54の平面部53とは反対側(Z1側)の端部54a(
図5参照)に接続されている。
【0035】
図5に示すように、保持部52は、先端部52aの近傍の部分52bが折り返されるように構成されるフック形状を有する。なお、先端部52aとは、壁部54に接続されている保持部52の根本部52cとは反対側に設けられている部分である。また、折り返されている部分52bにより、保持部52に保持される配線部62が保持部52から外れるのが抑制される。
【0036】
また、保持部52は、配線部62を保持部52へ挿入するための挿入開口部52dを含む。配線部62は、挿入開口部52dを介して径方向内側(R1側)から保持部52に挿入される。すなわち、先端部52aのZ2方向側には、配線部62を挿入するための隙間が形成されている。
【0037】
また、保持部52は、挿入開口部52dに対して配線部62の挿入方向側(R2側)に設けられ、配線部62の挿入方向側への移動を規制する規制部52eを有する。規制部52eは、Z方向に沿って形成されている。規制部52eは、壁状である。
【0038】
保持部52(規制部52e)の径方向における厚みtは、絶縁カバー50の他の部分の厚み(たとえば平面部53の軸方向の厚み(符号付さず))よりも大きい。これにより、保持部52の機械的強度を高くすることが可能である。
【0039】
また、保持部52は、挿入開口部52dが規制部52eに対してステータコア10の径方向内側(R1側)に配置されるように設けられている。これにより、配線部62を径方向内側から保持部52に挿入する作業を容易にすることが可能である。
【0040】
また、保持部52は、根本部52cを支点に径方向外側(R2側)に撓み変形可能に構成されている。保持部52が径方向外側に撓み変形することにより、挿入開口部52dの軸方向における開口幅Wが変化(拡大)される。保持部52が撓み変形していない状態での開口幅Wは、配線部62の断面(配線部62が延びる方向と直交する断面)の外径rよりも小さい。なお、配線部62の外径rは、配線部62の部分によらず一定(一様)である。また、配線部62は、軸方向に圧縮されながら保持部52に挿入される。なお、開口幅Wとは、先端部52aと根本部52cとの間の軸方向における距離に相当する。
【0041】
また、保持部52は、先端部52aの径方向内側(R1側)において先端部52aと連続するように設けられる面取り部52fを有する。面取り部52fは、軸方向に対して傾斜する傾斜面を構成する。具体的には、面取り部52fは、径方向内側(R1側)に向かってZ1側に延びるように傾斜している。配線部62は、径方向内側から保持部52に挿入される際、面取り部52fに当接される。すなわち、配線部62が面取り部52fに当接されながらR2方向側に移動されることにより、挿入開口部52dの開口幅Wが拡大されて、配線部62が保持部52に挿入される。
【0042】
また、
図6に示すように、壁部54は、軸方向から見て、配線部62が保持部52に保持される保持領域52gを囲むように設けられている。
【0043】
これにより、軸方向から見て壁部54により囲まれる領域にワニスが侵入するのを壁部54により防止することができるので、壁部54に囲まれる上記領域にワニスが滞留されるのを防止することができる。その結果、配線部62を保持部52の保持領域52gに挿入する際に、配線部62が固化したワニスと接触する(擦れる)ことにより傷付けられるのを防止することができる。
【0044】
具体的には、壁部54は、軸方向から見て、保持領域52gを周状に取り囲むように配置されていることによって、保持領域52gと重なる位置に孔部54bが形成されるように設けられている。すなわち、壁部54は、軸方向から見て、環状に形成されている。壁部54は、軸方向から見て、孔部54bが矩形形状を有するように設けられている。なお、孔部54bからは、バスバーモジュール30a(
図3参照)およびコイルエンド部22(
図2参照)が露出されている。また、孔部54bは、絶縁カバー50を成形する際(型抜きする際)に形成される孔である。
【0045】
また、
図7に示すように、配線部62は、保持部52に保持された状態で、かつ、コネクタ端子103にコネクタ端子63が接続された状態で、配線部62のうち保持部52に保持される部分62aとコネクタ端子63との間の部分62bが、配線部62の挿入方向(R2側)とは反対側(R1側)に折れ曲げられる。すなわち、保持部52の規制部52eは、保持部52に保持される部分62aに対して、折れ曲がり方向(R1側)とは反対側(R2側)に設けられている。言い換えると、規制部52eは、保持部52に保持される部分62aに対して、挿入方向側(R2側)に設けられている。なお、
図7では、簡略化のために、説明に不要な部分の図示は省略されている。
【0046】
ここで、配線部62には、折れ曲がり状態から元の状態に戻ろうとする反力が、折れ曲がり方向(R1側)とは反対方向(R2側)にかかる。また、保持部52の規制部52eは、上記挿入方向側(R2側)への配線部62の移動を規制するように設けられている。すなわち、規制部52eは、配線部62に対して、上記反力がかかる方向側(R2側)に設けられている。これにより、配線部62が上記反力によって保持部52から外れることを、規制部52eにより防止することができる。
【0047】
また、
図1に示すように、サーミスタ61は、軸方向から見て、絶縁カバー50のA1側の端部近傍に設けられている。また、保持部52は、絶縁カバー50のA1側の端部近傍に設けられている。これにより、軸方向から見てサーミスタ61と保持部52とは比較的近接して配置されるので、配線部62を比較的短くすることが可能である。具体的には、保持部52は、軸方向から見て、絶縁カバー50の周方向中央部近傍に配置される外部接続端子33と、サーミスタ61との間に設けられている。
【0048】
(回転電機の製造方法)
次に、
図8を参照して、回転電機102の製造方法を説明する。
【0049】
まず、ステップS1において、絶縁カバー50がバスバーモジュール30aに取り付けられる。その後、バスバーユニット30(絶縁カバー50およびバスバーモジュール30a)のZ1側からワニスが射出される。この際、配線部62およびコネクタ端子63は、ワニスがかからないように、軸方向から見てコイルエンド部22と重ならない位置に逃がされている。
【0050】
次に、ステップS2において、配線部62が保持部52に取り付けられる取り付け工程が行われる。この取り付け工程においては、コネクタ端子63の近傍の配線部62の部分62c(
図4参照)が保持部52により保持される。コネクタ端子63の近傍の部分62cが保持されることにより、コネクタ端子63の移動がより確実に規制される。
【0051】
また、取り付け工程においては、配線部62(部分62c)は、径方向内側(R1側)から挿入開口部52d(
図5参照)を介して保持部52に挿入される。これにより、配線部62(部分62c)は、保持領域52g(
図5参照)に導入される。
【0052】
次に、ステップS3において、ステータコア10(ステータ100)を配置する配置工程が行われる。
【0053】
具体的には、配置工程は、配線部62が保持部52に保持された状態で、ステータコア10をロータ101に対して相対的に移動させることによって、径方向(R方向)においてロータ101と対向する位置にステータコア10を配置する工程である。
【0054】
これにより、保持部52がステータ100に備えられるバスバーユニット30に設けられているので、追加の部品を用いずに、サーミスタ61に接続される配線部62を保持することができる。その結果、ロータ101に対するステータ100の相対移動時に、追加の部品を用いずに、サーミスタ61に接続される配線部62がロータ101と干渉するのを防止することが可能な回転電機102の製造方法を提供することができる。
【0055】
また、
図9に示すように、配置工程では、ロータ101が固定された状態で、ステータコア10が軸方向に移動される。これにより、ステータコア10のロータ挿入孔10aにロータ101が挿入される。また、ロータ101は、回転電機102のケース104に収容された状態で固定されている。ステータコア10は、絶縁カバー50が設けられているコイルエンド部22側からケース104に挿入されるように移動される。
【0056】
また、配置工程は、コネクタ端子63の近傍の配線部62の部分62c(
図4参照)を保持部52により保持した状態で、ステータコア10を配置する工程である。これにより、ステータコア10の配置時にコネクタ端子63が移動するのをより確実に防止することが可能である。その結果、ステータコア10の配置時にコネクタ端子63がロータ101と接触するのをより確実に防止することが可能である。
【0057】
そして、ステップS4において、コネクタ端子63を、回転電機102を制御する制御装置(図示せず)に設けられるコネクタ端子103に接続する接続工程が行われる。
【0058】
接続工程において、部分62c(
図4参照)に対してコネクタ端子63とは反対側の配線部62の部分62aを保持部52により保持した状態(
図7参照)で、コネクタ端子63がコネクタ端子103に接続される。具体的には、配線部62の部分62cが保持部52から一旦取り外された後に、配線部62の部分62aが保持部52に挿入される。なお、配線部62の部分62cを保持部52から取り外さずに(配線部62が保持部52に保持されたまま)、配線部62をコネクタ端子63側に引っ張ることにより、部分62aが保持されるようにしてもよい。
【0059】
部分62cに対してコネクタ端子63とは反対側の部分62aが保持されることにより、保持部52よりもサーミスタ61側の配線部62の長さを短くすることができるので、回転電機102の駆動時において配線部62が振動するのを極力防止することが可能である。
【0060】
また、ケース104には、開口部104a(
図9参照)が設けられている。作業者は、開口部104aを介して、ケース104内の絶縁カバー50に設けられる保持部52への配線部62の着脱作業等を行うことが可能である。
【0061】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0062】
たとえば、上記実施形態では、保持部52が絶縁カバー50に設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、保持部52は、バスバーモジュール30aに設けられていてもよい。なお、この場合、絶縁カバー50がステータ100に設けられていなくてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、平面部53に壁部54が設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、平面部53に壁部54が設けられておらず、保持部52が平面部53に設けられていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、平面部53が軸方向と直交するように延びる例を示したが、本発明はこれに限られない。平面部53が、軸方向とは直交せずに交差するように延びていてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、壁部54が、軸方向から見て、保持領域52gを周状に取り囲むように設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、壁部54が、軸方向から見て、保持領域52gを所定の方向(たとえば径方向)に挟むように設けられていてもよい。また、軸方向から見て、壁部54が、保持領域52gに対して一方側にのみ(たとえば径方向内側にのみ)設けられていてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、コネクタ端子63(第1接続部)がコネクタ端子103に接続された状態で、配線部62が、保持部52への配線部62の挿入方向とは反対側に折れ曲がる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、コネクタ端子63(第1接続部)がコネクタ端子103に接続された状態で、配線部62が、保持部52への配線部62の挿入方向側に折れ曲がっていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、保持部52の挿入開口部52dが規制部52eに対して径方向内側に設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。挿入開口部52dが規制部52eに対して径方向外側に設けられていてもよい。また、挿入開口部52dが規制部52eに対して周方向の一方側に設けられていてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、ステータ100にサーミスタ61が設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。ステータ100にサーミスタ61以外の温度検知部(たとえば熱電対)が設けられていてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、保持部52がフック形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。保持部52は、配線部62を保持できればフック形状以外の形状を有していてもよい。たとえば、保持部52は、配線部62が嵌め込まれる凹部を構成していてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、ロータ101が固定された状態でステータコア10が移動される例を示したが、本発明はこれに限られない。ステータコア10が固定された状態でロータ101が移動されてもよい。
【0071】
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0072】
保持部(52)は、先端部(52a)近傍の部分(52b)が折り返されるように構成されるフック形状を有する。
【0073】
保持部(52)は、挿入開口部(52d)が規制部(52e)に対してステータコア(10)の径方向内側に配置されるように設けられている。
【0074】
壁部(54)は、軸方向から見て、保持領域(52g)を周状に取り囲むように配置されていることによって、保持領域(52g)と重なる位置に孔部(54b)が形成されるように設けられている。
【0075】
配置工程(S3)は、温度検知部(61)とは反対側の配線部(62)の端部に設けられる第1接続部(63)の近傍の配線部(62)の第1部分(62c)を保持部(52)により保持した状態で、ステータコア(10)を配置する工程である。回転電機(102)の製造方法は、第1部分(62c)に対して第1接続部(63)とは反対側の配線部(62)の第2部分(62a)を保持部(52)により保持した状態で、第1接続部(63)を、第2接続部(103)に接続する接続工程を備える。
【符号の説明】
【0076】
10…ステータコア、20…コイル部、30…バスバーユニット、30a…バスバーモジュール、31…バスバー、40P、40N…接続部、50…絶縁カバー、52…保持部、52d…挿入開口部、52e…規制部、52g…保持領域、53…平面部、54…壁部、60…温度検知ユニット、61…サーミスタ(温度検知部)、62…配線部、62a…部分(保持部に保持されている部分)、62b…部分(折れ曲がる部分)、63…コネクタ端子(第1接続部)、100…ステータ、101…ロータ、102…回転電機、103…コネクタ端子(第2接続部)