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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20241126BHJP
   A45D 29/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B41J2/165
B41J2/165 501
A45D29/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021005038
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109632
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 桃子
(72)【発明者】
【氏名】上原 伸五
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-090460(JP,A)
【文献】特開2020-178925(JP,A)
【文献】特開2008-036905(JP,A)
【文献】特開2007-254067(JP,A)
【文献】特開2020-019230(JP,A)
【文献】特開2010-058458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/165
A45D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象の配置領域内について前記印刷対象の有無を検出する検出手段と、
印刷動作以外の動作指示があった際に、前記検出手段の検出結果に基づいて前記印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うか否かを判断する制御手段と、
を備え
前記制御手段は、前記印刷動作以外の動作指示があった際に、前記検出手段により前記印刷対象の配置領域内に前記印刷対象があると検出された場合、前記印刷動作以外の動作の優先度に応じて前記印刷動作以外の動作指示に従った動作をキャンセルするか否かを判断する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記印刷動作以外の動作指示に従った動作をキャンセルすると判断した場合は、前記印刷動作以外の動作指示に従った動作をキャンセルし、
前記印刷動作以外の動作指示に従った動作をキャンセルできないと判断した場合は、前記検出手段により前記印刷対象の配置領域内に前記印刷対象が検出されなくなるまで、ユーザに対して報知を行い、
前記報知後、前記検出手段により前記印刷対象の配置領域内に前記印刷対象がないことが検出された場合に、前記印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うように動作部を制御することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記印刷動作以外の動作指示に従った動作をキャンセルした場合は、予め設定された一連の印刷動作が終了した後、前記印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うように動作部を制御することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷動作以外の動作指示は、機械的動作を伴う動作を指示するものであることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷動作以外の動作指示は、動作音を伴う動作を指示するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷動作以外の動作は、印刷ヘッドのクリーニング動作であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記印刷対象の形状を検出するために用いられる2次元センサであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項8】
印刷対象の配置領域内について前記印刷対象の有無を検出する検出工程と、
印刷動作以外の動作指示があった際に、前記検出工程における検出結果に基づいて前記印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うか否かを判断する判断工程と、
を含み、
前記判断工程は、前記印刷動作以外の動作指示があった際に、前記検出工程により前記印刷対象の配置領域内に前記印刷対象があると検出された場合、前記印刷動作以外の動作の優先度に応じて前記印刷動作以外の動作指示に従った動作をキャンセルするか否かを判断することを特徴とする印刷制御方法。
【請求項9】
コンピュータに、
印刷対象の配置領域内について前記印刷対象の有無を検出する検出機能と、
印刷動作以外の動作指示があった際に、前記検出機能による検出結果に基づいて前記印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うか否かを判断する判断機能と、
を実現させ
前記判断機能は、前記印刷動作以外の動作指示があった際に、前記検出機能により前記印刷対象の配置領域内に前記印刷対象があると検出された場合、前記印刷動作以外の動作の優先度に応じて前記印刷動作以外の動作指示に従った動作をキャンセルするか否かを判断することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人の爪等の印刷対象に印刷を行う印刷装置が知られている。
印刷装置は、印刷対象に対して印刷動作を行う他、所定の位置(例えば所定の待機位置や原点位置等)に印刷ヘッドを移動させたり、各種アライメント動作を行ったり、印刷ヘッドのクリーニング動作を行う等、印刷動作以外の動作も適宜行うようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インクジェット方式で印刷を行う印刷装置において、印刷ヘッドのインク吐出口のクリーニングを行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-153940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般にユーザとしては印刷動作を行っている場合以外は、印刷装置は特に動作しないものと思っていることが多い。
このため、印刷動作を行っていないときに、印刷ヘッド等を移動させるためのモータの音やクリーニング動作において生じる音が聞こえると、装置に異常が生じたのではないかと疑ったり、不意に発生する異音に不安を覚えたり、驚いてしまう等のおそれがある。
【0006】
また、爪や紙等の印刷対象を配置する配置領域に指等を入れた状態で各種のクリーニング動作が開始されると、クリーニング動作によって発生したインクミスト等が爪や紙等の表面に付着して印刷対象面を汚してしまうおそれもある。
【0007】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、不用意に印刷動作以外の動作に移行することのない印刷装置、印刷制御方法及びプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の印刷装置の一態様は、
印刷対象の配置領域内について前記印刷対象の有無を検出する検出手段と、
印刷動作以外の動作指示があった際に、前記検出手段の検出結果に基づいて前記印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うか否かを判断する制御手段と、
を備え、前記制御手段は、前記印刷動作以外の動作指示があった際に、前記検出手段により前記印刷対象の配置領域内に前記印刷対象があると検出された場合、前記印刷動作以外の動作の優先度に応じて前記印刷動作以外の動作指示に従った動作をキャンセルするか否かを判断することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不用意に印刷動作以外の動作に移行しないようにすることができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る印刷装置の外観構成を示す要部斜視図である。
図2】本実施形態に係る印刷装置の内部構成を示す要部斜視図である。
図3】本実施形態に係る印刷装置及びこれと連携する端末装置の制御構成を示した要部ブロック図である。
図4】本実施形態における印刷制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1から図4を参照しつつ、本発明に係る印刷装置、印刷制御方法及びプログラムの一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、印刷装置が手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷する印刷装置を例に説明するが、本発明における印刷装置の印刷対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪等を印刷対象としてもよい。また、ネイルチップや各種アクセサリの表面等、人の爪以外の爪様のものやその他各種の対象物を印刷対象としてもよい。
【0012】
図1は、本実施形態における印刷装置の要部外観構成を示す斜視図である。
なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、図1に示した向きをいうものとする。また、X方向、Y方向は、図1に示した方向をいうものとする。
【0013】
図1に示すように、印刷装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
筐体2(筐体本体20)の前面側(印刷装置1の正面側、図1において前側)の下側部分には、左右方向(印刷装置1の横方向、図1において左右方向、X方向)のほぼ全面に亘って開口部21が形成されている。また、筐体2(筐体本体20)の前面側の上側部分は前壁部22となっており、前壁部22における筐体2の左右方向のほぼ中央部には、開口部21の上側に連続して切り欠き部23が形成されている。切り欠き部23は、後述するカートリッジ41(41a,41b)を装置に対して着脱する際の出入口として機能する。
【0014】
また筐体2は、切り欠き部23を覆う前カバー25を有している。
前カバー25は、前壁部22の上端部又は筐体本体20の上面(天板)の前端部に設けられたヒンジ機構24を介して、筐体本体20に対して回動可能に連結されている。
上カバー25は、筐体本体20の前壁部22の前面側を覆う閉状態から筐体本体20の前面側が開披された(本実施形態では切り欠き部23を含む前壁部22が露出した)開状態まで回動可能となっている。
なお、図1では上カバー25が開状態である場合を図示している。
【0015】
筐体2の内部には、装置本体10が収容されている。
装置本体10は、筐体2内に固定された基台11等を備えている。
基台11上には、印刷対象の表面(印刷対象面)に印刷を施す印刷部40が設けられている。本実施形態では指の爪が印刷対象であり、爪の表面が印刷対象の表面(印刷対象面)となる場合を例示する。
【0016】
印刷部40は、印刷ヘッドとしての機能を有するカートリッジ41、カートリッジ41を保持するカートリッジホルダ42、カートリッジホルダ42をX方向に移動可能に支持するキャリッジ8、X方向移動モータ46及びY方向移動モータ48等を備えている。
【0017】
カートリッジ41は、上述のとおり印刷ヘッドとして機能するものであり、その下面(基台11表面と対向する面)には図示しないインク吐出部が設けられている。
カートリッジ41は、インク吐出部から微滴化したインクを印刷対象面に吹き付けて印刷を行うインクジェットヘッドである。
カートリッジ41の種類や数は特に限定されないが、本実施形態では、2つのカートリッジ41がX方向に並設されてカートリッジホルダ42に搭載されている。2つのカートリッジ41は、例えば、シアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)等の各色のインク(以下「色インク」という。)を吐出可能なデザイン用ヘッド41aと、デザインを印刷する前に下地となる液剤を印刷する下地用ヘッド41bである。なお、単に「カートリッジ41」としたときには、デザイン用ヘッド41aと下地用ヘッド41bとを含むものとする。
【0018】
カートリッジホルダ42は、カートリッジ41を着脱可能に保持している。
カートリッジホルダ42は、X方向に移動可能なようにキャリッジ8の前部に支持されている。キャリッジ8には、左右方向に延在するガイド軸80と、X方向移動モータ46と、図示しない駆動ベルト等が設けられている。ガイド軸80はカートリッジホルダ42の後部に挿通されている。カートリッジホルダ42は、X方向移動モータ46が駆動して駆動ベルトが回転することによって、キャリッジ8上をガイド軸80に沿ってX方向に移動可能となっている。
【0019】
キャリッジ8内等には、カートリッジホルダ42(及びこれに支持されたカートリッジ41)が原点位置(例えばキャリッジ8上の左側端部)に到達したときにこれを検知するX方向原点センサ411(図3参照)が設けられている。
また、本実施形態のキャリッジ8内には、カートリッジホルダ42(及びこれに支持されたカートリッジ41)の移動を検出するエンコーダセンサ413(図3参照)が設けられている。
【0020】
キャリッジ8は、左右方向(X方向)に延在する矩形箱状に形成され、左右両端部がそれぞれガイドレール81に支持されている。
各ガイドレール81は、Y方向に延在しており、キャリッジ8をY方向に移動可能に支持している。
なお、左右いずれかのガイドレール81の端部(例えば装置前方側(手前側)の端部)等には、カートリッジホルダ42を搭載したキャリッジ8が原点位置(例えば装置前方側の端部等)に到達したときにこれを検知するY方向原点センサ412(図3参照)が設けられている。
【0021】
キャリッジ8の左右両端部の各々には、ベルトクリップ82を介してタイミングベルト83が連結されている。各タイミングベルト83は、Y方向に延在した状態でプーリー84(図1では右側のもののみ図示)に張架されている。左右両側のタイミングベルト83のうち、右側のタイミングベルト83は主動(駆動)側であり、Y方向移動モータ48に連結されている。一方、左側のタイミングベルト83は従動側であり、左右両側のプーリー84を連結する連結シャフト85によって、主動側と回転速度及び回転量が同期化されている。
キャリッジ8は、Y方向移動モータ48が駆動することでプーリー84が回転し、これに伴ってタイミングベルト83が回転することによって、ガイドレール81に支持された状態でY方向に移動可能となっている。
【0022】
本実施形態において、X方向移動モータ46はDCモータやACモータ等であり、エンコーダセンサ413により取得された情報に基づいて、正確な移動制御が行われる。またY方向移動モータ48としては、例えば入力パルスに同期してモータが回転するステッピングモータ等が適用される。
本実施形態では、X方向移動モータ46及びY方向移動モータ48の駆動によってカートリッジ41がXY方向に移動可能となっており、X方向移動モータ46及びY方向移動モータ48を含んでヘッド移動機構49が構成される。
【0023】
基台11のうちの前側(手前側)部分であって左右方向のほぼ中央部には、指固定部6が配置されている。指固定部6は、装置前面側に開口する開口部61を有する箱状の部材であり、開口部61から装置内に印刷対象の爪(爪に対応する指)が挿入され、この爪に対して印刷が行われる。
指固定部6の天面奥側(後側)は、開口した窓部63となっている。窓部63からは指固定部6内に挿入された指の爪が露出するようになっている。
【0024】
基台11のうちの後部右側は、非印刷時にカートリッジ41(カートリッジホルダ42)が待機する待機領域(ホームポジション)A1となっている。待機領域A1には、カートリッジ41下面のインク吐出面を覆って乾燥等から保護するキャップ部(図示省略)が設けられている。
基台11のうちの後部左側は、非印刷時にカートリッジ41(インク吐出部等)のクリーニング(メンテナンス)動作等を行うクリーニング領域A2となっている。クリーニング領域A2には、図示は省略するが、例えばパージ(スピット)処理を行うパージ部、インク吐出部をワイプしてインク吐出部に付着したインクや汚れを除去するするワイプ部、ワイプ部のワイプ部材に付着したインク等を除去するスクレープ部等で構成されるクリーニング部7が設けられている。
【0025】
また、基台11のうちの前側部分であって左右方向のほぼ中央部は、指固定部6の窓部63に対応する領域であって、印刷時においてカートリッジ41が印刷動作を行う印刷動作領域A3となっている。
本実施形態では、印刷動作領域A3が、印刷対象である爪等を配置する「印刷対象の配置領域」となる。
なお、「印刷対象の配置領域」は、印刷動作領域A3に限定されない。例えば印刷動作領域A3とその周辺領域を含む所定の領域を「印刷対象の配置領域」としてもよい。
本実施形態の印刷装置1では、装置全体を比較的コンパクトに構成し、カートリッジ41の移動の動線を短くする等のため、図2に示すように、「印刷対象の配置領域」である印刷動作領域A3は、クリーニング領域A2と比較的近接した位置に設けられている。
【0026】
また筐体2の内部には、撮影部50(図3参照)が設けられている。
撮影部50は、撮影装置51と、照明装置52とを備えている。
撮影装置51は、筐体2の天面内側や、基台11上に立設された図示しない支持部材等に取り付けられている。撮影装置51の配置は特に限定されないが、例えば図1に示すように、装置左右方向(X方向)のほぼ中央に配置される。
なお、撮影部50は、カートリッジ41を移動させるヘッド移動機構49等の移動機構によってXY方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0027】
撮影装置51は、例えば、200万画素以上の画素を有するCCD(Charge Coupled Device)型やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型等の固体撮影素子とレンズ等を備えて構成された小型カメラである。
撮影部50(特に撮影装置51)は、指固定部6の窓部63の上方に配置され、窓部63から露出する指の爪を撮影してその画像を取得する。
本実施形態では、後述するように撮影部50により撮影された爪を含む指の画像(「爪画像」という)から印刷対象である爪の形状を検出するようになっており、撮影装置51は、印刷対象の形状を検出するために用いられる2次元センサである。
また、本実施形態の撮影装置51は、印刷動作領域A3又は印刷動作領域A3を含む領域である「印刷対象の配置領域」内について印刷対象(例えば爪)の有無を検出する検出手段として機能する。撮影装置51が印刷動作領域A3よりも広い範囲を「印刷対象の配置領域」として印刷対象(例えば爪)の有無を検出する場合には、検出を行う対象となる領域全体をカバーできるだけの画角のレンズ(図示せず)を備える。
【0028】
照明装置52は、例えば撮影装置51の左右両側等に配置され、撮影装置51の撮影対象(印刷対象である爪の表面やこれを含む指)を照明する。
照明装置52の具体的な構成や配置は特に限定されないが、例えば複数のLEDを備える照明ユニットである。なお照明装置52の光源は、撮影装置51の撮影対象を照明可能であれば、LEDに限定されない。
【0029】
図3は、本実施形態の制御構成を示すブロック図である。
印刷装置1に搭載される制御装置30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される制御部31(図3参照)と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)で構成される記憶部32(図3参照)とを備えるコンピュータである。
制御装置30は、例えば筐体2の上面(天板)の内側(下面側)等に配置された図示しない基板等に搭載されている。
【0030】
記憶部32は、印刷装置1を動作させるための各種プログラム等が格納されたプログラム記憶領域321を有している。
具体的には、記憶部32には、印刷処理を行うための印刷プログラム等の各種プログラムが格納されており、制御部31がこれらのプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して、プログラムが制御部31において実行されることによって、印刷装置1の各部が統括制御されるようになっている。
また、記憶部32は、爪情報記憶領域322を有している。爪情報記憶領域322には、後述の情報検出部313によって検出された爪に関する各種の情報が記憶される。
なお、記憶部32には、撮影部50によって取得された爪画像等のデータが記憶されてもよいし、その他各種データが記憶されてもよい。
【0031】
制御部31は、機能的に見た場合、通信制御部311、撮影制御部312、情報検出部313、印刷データ生成部314、印刷制御部315等を備えている。これら通信制御部311、撮影制御部312、情報検出部313、印刷データ生成部314、印刷制御部315等としての機能は、制御部31と記憶部32のプログラム記憶領域321に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0032】
通信制御部311は、印刷装置1の通信部13の動作を制御するものである。
通信部13は、端末装置9の通信部73との間で通信可能な無線通信モジュール等を備えており、通信制御部311は、印刷装置1、端末装置9間で各種のデータ等を送受信する際に通信部13の動作を制御する。
本実施形態の印刷装置1は、後述する端末装置9と連携してネイルデザイン(以下単に「デザイン」ともいう。)の印刷を行うようになっている。例えば爪に印刷するデザインのデータは端末装置9側に記憶されており、通信制御部311は適宜通信部13による通信を制御し、通信部13を介して端末装置9側からデザインのデータを取得する。
また、撮影部50によって取得された爪画像等のデータが、通信部13を介して端末装置9側に送信されてもよい。
【0033】
撮影制御部312は、撮影部50の撮影装置51及び照明装置52を制御して撮影を行わせ、画像を取得するものである。
本実施形態において撮影制御部312は、撮影部50(撮影部50の撮影装置51)により、指固定部6に載置された爪(爪を含む指)を撮影させ、爪画像を取得する。
また特に本実施形態では、撮影制御部312は、撮影部50(撮影部50の撮影装置51)により「印刷対象の配置領域」内を撮影させ、配置領域内(本実施形態では印刷動作領域A3内)の画像を取得する。
なお、撮影装置51による撮影は、静止画撮影、動画撮影のいずれであってもよい。撮影装置51による撮影が動画撮影である場合には、撮影制御部312は、例えば撮影された動画像の中から適宜フレームを抜き出し静止画像として取得する。
撮影制御部312は、取得した画像のデータを記憶部32に記憶させてもよい。
【0034】
情報検出部313は、撮影制御部312によって取得された各種画像を解析することにより情報を取得するものである。
具体的には、撮影制御部312によって取得された爪画像に基づき、指の爪についての爪情報を検出する。
情報検出部313によって取得される爪情報は、例えば、爪とそれ以外の部分(指の皮膚部分等)とを分けて爪の領域を画する爪輪郭である。
なお、情報検出部313によって検出される爪情報は爪輪郭に限定されない。
情報検出部313によって検出される爪情報は、例えば、爪の表面の、XY平面に対する傾斜角度(爪の傾斜角度、爪曲率)等を含んでいてもよい。また、撮影装置51によって撮影された画像等から爪の高さ(爪の垂直方向の位置)を取得できる場合には、爪の高さも爪情報に含まれてよい。
【0035】
また、情報検出部313は、印刷動作以外の動作指示があった際に、撮影制御部312によって取得された「印刷対象の配置領域」内の画像(検出手段の検出結果)に基づいて、印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うか否かを判断する制御手段として機能する。
ここで、「印刷動作以外の動作」とは、例えば「機械的動作を伴う動作」や、「動作音を伴う動作」又はその両方に該当するような動作である。
例えばカートリッジ41のクリーニング動作や、カートリッジ41を待機領域A1からクリーニング領域A2又は印刷動作領域A3に移動させたり、カートリッジ41をX方向の原点位置、Y方向の原点位置、カートリッジ41の交換位置(例えば装置前側の切り欠き部23に対応する位置)等、所定の位置まで移動させる動作、カートリッジ41や撮影装置51の位置や姿勢を正しい状態に合わせるアライメント動作等は、「機械的動作を伴う動作」又は「機械的動作を伴う動作」でありかつ「動作音を伴う動作」であって、本実施形態にいう「印刷動作以外の動作」に該当する。
【0036】
これらの動作の際には、カートリッジ41を移動させるために各種モータ(X方向移動モータ46,Y方向移動モータ48等)が動作するため、モータ音が発生する他、各部の部品部材がぶつかり合う音等が生じる。このため、爪(爪に対応する指)を装置内に配置している場合のように、印刷装置1にごく近い距離にユーザがいた場合には、不意に音が生じることで不安感を抱かせたり、驚かせてしまうおそれがある。
また、カートリッジ41のクリーニング動作においては、パージ等においてインク吐出部から吐出されたインクミストや、ワイプによってインク吐出部から撥ねたインク等が印刷対象である爪の表面等に付着してしまうおそれもある。この場合、印刷対象面が汚れてしまい、一旦手を洗う等しなければ印刷(ネイルプリント)を行うことができない。また既にネイルプリントが施された状態である場合には、初めからやり直さなければならないおそれもある。
なお、「印刷対象の配置領域」内に印刷対象物があるか否かが問題となる場面は、音やインクミスト等を発生させるような動作をいい、例えば制御装置内における演算処理動作等、物理的な影響を外部に与えないような動作は、ここに言う「印刷動作以外の動作」に含まれない。
【0037】
また「印刷動作以外の動作」を指示する動作指示とは、印刷装置1に何らかの操作部がある場合には、当該操作部から入力された指示であってもよいし、印刷装置1と連携する後述の端末装置9の操作部93から入力された指示であってもよい。
さらに、一定時間ごとにクリーニング動作を行うように設定されている場合には、当該設定に基づく動作指示であってもよい。
また、本実施形態のように印刷装置1が前カバー25を有する場合であって、前カバー25を開披した際にはカートリッジ41のクリーニング動作やカートリッジ41の交換等、所定の「印刷動作以外の動作」が行われることが設定されている場合には、前カバー25が開披されたことをもって「印刷動作以外の動作」を指示する動作指示としてもよい。この場合、例えば前カバー25の開閉状況を検知するセンサやメカ的なスイッチ等を設けて、前カバー25が開披されたときにそれを検知できるように構成する。
【0038】
印刷データ生成部314は、情報検出部313によって検出され爪情報記憶領域322に記憶された爪輪郭に所望のデザインを合わせ込む等により印刷データを生成する。
具体的には、印刷データ生成部314は、ユーザによって選択されたネイルデザイン(デザイン)の画像データを切り出し、適宜拡大縮小、配置の調整等を行うとともに、爪の画像から検出された爪輪郭内にフィッティングする。
なお、情報検出部313において爪の曲率等が取得された場合には、印刷データ生成部314は、この爪の曲率等に基づいて、印刷データに適宜曲面補正を行ってもよい。曲面補正を行った場合には、より爪の形状に合った印刷データを生成することができる。
【0039】
印刷制御部315は、印刷データ生成部314において生成された印刷データにしたがって爪に印刷を施すように印刷部40を制御する。
具体的には、印刷制御部315は、印刷データに基づいて印刷部40に制御信号を出力し、爪に対してこの印刷データにしたがった印刷を施すように印刷部40のX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、カートリッジ41等を制御する。
また、本実施形態の印刷制御部315は、印刷装置1について、印刷動作以外の動作指示があった際に、情報検出部313によって、印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うように判断された場合に、動作指示の内容に従って印刷部40のX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、カートリッジ41等を制御して指示された動作を実行させる。
【0040】
なお、印刷装置1に図示しない表示部や音声出力部等が設けられている場合には、情報検出部313によって、印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うように判断された場合に、制御部31は、これからカートリッジ41の移動やクリーニング動作等、「印刷動作以外の動作」が開始される旨や「印刷対象の配置領域」から印刷対象である爪(爪を有する指)を退避させるように促すメッセージ等を表示部や音声出力部等から出力させ、ユーザに対する報知を行わせる制御手段として機能してもよい。
また、表示部や音声出力部等が設けられていない場合には、制御部31は、通信制御部311を介して連携する端末装置9の制御部91に判断結果を送信し、端末装置9の表示部や音声出力部等においてユーザに対する報知を行わせてもよい。
【0041】
また、前述のように、本実施形態の印刷装置1は、端末装置9と連携して爪に対する印刷を行う。
端末装置9は、例えばスマートフォン等の携帯端末装置である。なお、端末装置9はスマートフォンに限定されない。例えばタブレット型のパーソナルコンピュータ(以下において「PC」とする。)やノート型のPC、据置型のPC、ゲーム用の端末装置等であってもよい。
図3に示すように、端末装置9は、操作部93、表示部94、通信部95及び制御装置90等を備えている。
【0042】
操作部93は、ユーザの操作に応じて各種の入力・設定等を行うことができるようになっており、例えば表示部94の表面に一体的に設けられたタッチパネルである。操作部93が操作されると、当該操作に対応する入力信号が制御部91に送信される。
表示部94に構成されるタッチパネルには、後述する表示制御部912の制御にしたがって各種の操作画面が表示され、ユーザはタッチパネルへのタッチ操作によって各種の入力・設定等の操作を行うことができる。なお、各種の入力・設定等の操作を行う操作部93はタッチパネルである場合に限定されない。
【0043】
本実施形態では、ユーザが操作部93を操作することで、端末装置9から印刷装置1に対して印刷開始等の各種指示が出力されるようになっており、端末装置9は印刷装置1の操作部としても機能する。
また、ユーザが操作部93を操作することで、爪に印刷するネイルデザイン(デザイン)を選択すること等ができるようになっている。
【0044】
表示部94は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
なお、前述のように、表示部94の表面に各種の入力を行うためのタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、タッチパネルが操作部93として機能する。
本実施形態では、ユーザが操作部93から入力・選択したネイルデザインや、各種の案内画面、警告表示画面等が表示部94に表示可能となっている。
また、表示部94は、後述するように印刷装置1が印刷動作以外の動作を行おうとするときにこれをユーザに報知する報知手段として機能する。
なお、表示部94に表示される内容はこれに限定されない。
【0045】
通信部95は、印刷装置1の通信部13との間で通信可能に構成されたものである。
印刷装置1と端末装置9との間での通信は、無線接続方式、有線接続方式のどちらでもよく、具体的な方式は限定されない。通信部95は印刷装置1との間で通信を行うことのできるものであればよく、印刷装置1の通信部13の通信規格と合致するものが適用される。
【0046】
図3に示すように、本実施形態の端末装置9の制御装置90は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される制御部91と、図示しないROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成される記憶部92とを備えるコンピュータである。
【0047】
記憶部92には、端末装置9の各部を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、本実施形態のROM等には、端末装置9の各部を統括制御するための動作プログラム921aの他、印刷装置1を用いたネイルプリントを行うためのネイルプリントアプリケーションプログラム921b(以下「ネイルプリントAP」とする。)等の各種プログラムが格納されており、制御部91がこれらのプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して、プログラムが制御部91において実行されることによって、端末装置9の各部が統括制御されるようになっている。
【0048】
また、本実施形態の記憶部92には、ネイルデザイン(デザイン)のデータを格納するデザイン記憶領域922等が設けられている。
なお、デザイン記憶領域922に格納されるネイルデザイン(デザイン)は、予め用意された既存のデザインであってもよいし、ユーザが自ら作成したデザインであってもよい。また、端末装置9が各種ネットワークに接続可能である場合には、ネットワーク接続可能な図示しないサーバ装置等に記憶されているネイルデザイン(デザイン)を取り込むことが可能となっていてもよい。
【0049】
端末装置9の制御部91は、機能的に見た場合、通信制御部911、表示制御部912等を備えている。これら通信制御部911、表示制御部912等としての機能は、制御部91のCPUと記憶部92のROMに記憶されたプログラムとの協働によって実現される。なお、端末装置9の制御部91が備える機能はこれに限定されず、その他各種の機能部を備えていてもよい。
通信制御部911は、通信部95の動作を制御するものである。
また、表示制御部912は、表示部94を制御して表示部94に各種の表示画面を表示させる。
【0050】
次に、図4を参照しつつ、本実施形態の印刷制御方法について説明する。
図4は、本実施形態における印刷制御処理を示すフローチャートである。
本実施形態の印刷装置1を用いてネイルプリントを行う場合には、ユーザは、印刷装置1の操作部12(操作ボタン)等を操作して電源を入れ起動させる(ステップS1)。
また、端末装置9についても電源を入れて端末装置9の操作部91からネイルプリント処理の実行を選択する。これによりネイルプリントAP921bが起動する。
【0051】
端末装置9においてネイルプリントAP921bが起動すると、端末装置9の表示制御部912が、デザインを選択することのできるデザイン選択画面(図示せず)を表示部94に表示させ、いずれかのデザインを選択する操作が行われると、当該選択されたデザインが爪に印刷するデザインとして設定される。
【0052】
また電源が投入されると、制御部31は、印刷装置1の初期状態(例えば、カートリッジ41が待機領域Ar2にある状態)から、カートリッジ41を移動させ印刷を開始するための準備動作を開始する。この準備動作は、例えばカートリッジ41や撮影装置51のアラメントのための動作、パージ処理やワイプ処理などのクリーニング動作によるカートリッジ41のインク吐出準備を整えるための動作等のイニシャル処理(後述のステップS5)やカートリッジ41の原点位置への移動(後述のステップS6)であり、「印刷動作以外の動作」である。
【0053】
このような印刷開始時の準備動作としての「印刷動作以外の動作」は、印刷終了後等に後回しにすることのできない処理である。そこで、制御部31は、「印刷対象の配置領域」に爪等の印刷対象があるか否かを確認し、印刷対象がある場合には、これを退避させて、適切に準備動作(「印刷動作以外の動作」)を行うことのできる状態とする。
具体的には、まず制御部31は、撮影装置51によって本実施形態における「印刷対象の配置領域」である印刷動作領域A3を撮影させ、画像を取得する(ステップS2)。制御部31(情報検出部313)は、取得された画像を解析して、撮影された範囲(「印刷対象の配置領域」)に爪等の印刷対象があるか否かを検出する(ステップS3)。
特に本実施形態では、ネイルプリントとして絵柄を印刷する前に爪に下地用ヘッド41bにより白色等の下地を印刷するようになっており、撮影装置51によって撮影された画像から白色等の領域を検出することで、比較的容易に爪等の印刷対象があるか否かを検出することができる。
【0054】
取得された画像に爪等が写り込んでいることを検出すると(ステップS3;YES)、「指や爪を装置から出してください」等のメッセージを文字や音声によってユーザに報知する(ステップS4)。報知は、例えば連携する端末装置9に情報を送信し、端末装置9の表示部94に表示させる等の手法により行う。報知の内容は、ここに示したものに限定されない。例えば、カートリッジ41の移動に伴いモータ音等が発生するのみである場合には、「カートリッジが動きます」等、ユーザを驚かせないように状況を知らせるメッセージを出し、「よろしければOKボタンを押してください」等の対応をユーザに求めてもよい。
ユーザに対して報知を行った後、制御部31は再びステップ2に戻って、爪等の印刷対象が「印刷対象の配置領域」である印刷動作領域A3から取り除かれるまで判断処理を繰り返す。なお、爪等が取り除かれない場合でも、ユーザが報知された状況を許容する指示(例えばOKボタンの操作等)を行った場合には、爪等が「印刷対象の配置領域」から取り除かれた場合と同様の対応を行ってもよい。
そして、爪等の印刷対象が「印刷対象の配置領域」内にない、又はすでに「印刷対象の配置領域」内から取り除かれた場合(ステップS3;NO)には、カートリッジ41や撮影装置51のアライメントを行ったり、カートリッジ41をクリーニング領域A2に移動させてクリーニングを行う等のイニシャル処理を適宜行い(ステップS5)、さらにカートリッジ41をXY方向の所定の原点位置(例えばY方向において装置の前側かつX方向において装置の左側端部等)に移動させ、当該原点位置で待機させる(ステップS6)。
【0055】
制御部31は、印刷動作以外の動作が指示されたか否かを判断し(ステップS7)、印刷動作以外の動作が指示された場合(ステップS7;YES)には、「印刷対象の配置領域」に爪等の印刷対象があるか否かを確認し、印刷対象がある場合には、これを退避させて、適切に「印刷動作以外の動作」を行うことのできる状態とする。
具体的には、まず制御部31は、撮影装置51によって本実施形態における「印刷対象の配置領域」である印刷動作領域A3を撮影させ、画像を取得する(ステップS8)。そして、制御部31(情報検出部313)は、取得された画像を解析して、撮影された範囲(「印刷対象の配置領域」)に爪等の印刷対象があるか否かを検出する(ステップS9)。
【0056】
爪等の印刷対象が「印刷対象の配置領域」内にない、又はすでに「印刷対象の配置領域」内から取り除かれた場合(ステップS9;NO)には、制御部31は各動作部(例えばヘッド移動機構49のモータ46,48等)を動作させて、カートリッジ41のインク吐出部のクリーニング動作等の「印刷動作以外の動作」を実施する(ステップS10)。
他方、「印刷対象の配置領域」内を撮影した画像に爪等が写り込んでいることを検出すると(ステップS9;YES)、さらに制御部31は、指示されていた「印刷動作以外の動作」をキャンセルするか否かを判断する(ステップS11)。
【0057】
例えば、指示された「印刷動作以外の動作」が、クリーニング動作である場合に、前回のクリーニング動作から所定時間以上経過している場合や、所定量以上の印刷が行われた後である場合等、当該動作を行ってからでないと正常な印刷を行うことができないと判断されるような場合には、制御部31は「印刷動作以外の動作」をキャンセルできないと判断し(ステップS11;NO)、ステップS4で説明したものと同様に、「指や爪を装置から出してください」等のメッセージを表示させる等により、ユーザに報知する(ステップS12)。そして状況が解消されるまでステップS8に戻って判断処理を繰り返す。なお、爪等が取り除かれない場合でも、ユーザが報知された状況を許容する指示(例えばOKボタンの操作等)を行った場合には、爪等が「印刷対象の配置領域」から取り除かれた場合と同様の対応を行ってもよい点についても、ステップS4の場合と同様である。
【0058】
他方、前回のクリーニング動作からあまり時間が経過していない場合や、あまり印刷動作を行っていない場合には、このまま印刷動作を行ってもさほど問題ない。このため、このような場合に制御部31は、「印刷動作以外の動作」をキャンセルできると判断し(ステップS11;YES)、ステップS10の場合と同様に、次のステップS13に進む。なおこの場合には、予め設定された一連の印刷動作(例えば左右の手の10本の指に印刷することが予め設定されている場合には、10本の指の爪に対する印刷動作)が終了した後に、キャンセルした「印刷動作以外の動作」を実施する(後述のステップS25)。
【0059】
「印刷動作以外の動作」が指示されていない場合(ステップS7;NO)、「印刷動作以外の動作」が実施された場合(ステップS10)、指示された「印刷動作以外の動作」をキャンセルする場合(ステップS11;YES)には、制御部31はさらに、印刷動作の指示があったか否かを判断する(ステップS13)。印刷動作の指示があった場合とは、例えば、印刷すべきデータが端末装置9等から送られてきた場合等である。
印刷動作の指示がない場合(ステップS13;NO)には、ステップS7に戻って処理を繰り返す。
一方、印刷動作の指示がある場合(ステップS13;YES)には、制御部31(撮影制御部312)は撮影部50を制御して指固定部6に保持されている指(爪を含む指)を撮影させ、爪画像を取得する(ステップS14)。
爪画像が取得されると、制御部31は、爪画像に基づき印刷領域及び印刷開始位置を設定する(ステップS15)。具体的には、まず制御部31(情報検出部313)は爪画像から爪輪郭等の爪情報を検出する。爪輪郭が検出されると、制御部31(印刷データ生成部314)は、爪輪郭にデザインデータを合わせ込むとともに、適宜補正等を行い、デザインデータに基づく印刷データを生成する。
【0060】
印刷領域及び印刷開始位置が設定されると、印刷動作が行われる。
具体的には、まず制御部31はY方向移動モータ48を動作させて、Y方向の印刷開始位置へのカートリッジ41の移動を開始させる(ステップS16)。
制御部31は、目的のY方向位置までカートリッジ41が移動したか否かを判断し(ステップS17)、目的の位置まで移動していない場合(ステップS17;NO)には、ステップS17の判断を繰り返す。なお、目的のY方向位置までカートリッジ41が移動したか否かの判断は、ステッピングモータであるY方向移動モータ48に投入されるパルス数を監視することで行ってもよいし、カートリッジ41の移動状況を撮影装置51に継続的に撮影させ、モータへの入力パルス数の監視に代えて又はこれと併せて、撮影装置51による画像に基づく位置確認を行ってもよい。
【0061】
他方、目的の位置まで移動した場合(ステップS17;YES)には、制御部31は、Y方向への移動を停止させ、X方向移動モータ46を動作させて、X方向の印刷開始位置へのカートリッジ41の移動を開始させる(ステップS18)。
制御部31は、目的のX方向位置までカートリッジ41が移動したか否かを判断し(ステップS19)、目的のX方向位置までカートリッジ41が移動していない場合(ステップS19;NO)には、さらにエンコーダセンサ413がカートリッジ41の移動を検知したか否かを判断する(ステップS20)。
【0062】
エンコーダセンサ413がカートリッジ41の移動を検知した場合(ステップS20;YES)には、ステップS19に戻ってカートリッジ41が目的のX方向位置まで移動したか否かの判断を繰り返す。
一方エンコーダセンサ413がカートリッジ41の移動を検知しない場合(ステップS20;NO)には、何らかの異常が生じていると考えられる。このため、制御部31は、X方向移動モータ46を緊急停止させ、エラーを表示させる等によりユーザにエラーを報知する(ステップS21)。
【0063】
カートリッジ41が目的のX方向位置まで移動した場合(ステップS19;YES)には、制御部31(印刷制御部315)は、印刷部40を制御してX方向に一行印刷を行わせる(ステップS22)。
そして、予め設定された印刷が完了したか否かを判断し(ステップS23)、印刷が完了していない場合(ステップS23;NO)には、当該爪についての印刷が完了したか否かをさらに判断する(ステップS24)。1つの爪について印刷していない行が残っている場合(ステップS24;NO)には、ステップS16に戻って以降の処理を繰り返す。また、1つの爪については印刷を終了した(ステップS24;YES)が、予め設定されている爪のうち、印刷が終了していない爪がある場合には、ステップS2に戻って以降の処理を繰り返す。
【0064】
一方、予め設定された印刷がすべて完了した場合(ステップS23;YES)には、印刷動作前にキャンセルした「印刷動作以外の動作」がある場合には、これを行い(ステップS25)、印刷処理を終了する。
例えば、クリーニング動作が指示されていたが、これをキャンセルして印刷動作に進んだ場合には、制御部31は印刷処理を終了する前にカートリッジ41をクリーニング領域A2に移動させ、「印刷動作以外の動作」としてのクリーニング動作を行わせる。
【0065】
このように、「印刷動作以外の動作」を行おうとする場合に、ユーザの爪等、印刷対象が印刷動作領域A3内にあるか否かを確認して、適宜対応することにより、不用意にクリーニング動作が行われて印刷対象面である爪の表面等が印刷前に汚れてしまうのを防止することができる。また、ユーザに報知等の対応を行うことで、不意にモータ音がしてユーザに不安感を与えたり、驚かせてしまうおそれも軽減することができる。
【0066】
以上のように、本実施形態の印刷装置1は、印刷対象である爪の配置領域内について爪(印刷対象)の有無を検出し、クリーニング動作等の印刷動作以外の動作指示があった際に、印刷対象である爪の配置領域内について爪(印刷対象)があるか否かを確認し、その結果に応じて印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うか否かを判断する。
これにより、不用意にクリーニング動作が行われるのを防止することができる。
このため、爪等が配置される領域(印刷動作領域A3等)とクリーニング領域A2とが近接していてクリーニングで発生したインクミスト等が印刷動作領域A3まで飛散するおそれがある場合でも、印刷対象面である爪の表面等が印刷前に汚れてしまったり、すでに印刷を終えた部分に汚れが付着してやり直しとなってしまうのを防止することができる。
また、不用意に各動作部を動作させないことで、不意にモータ音がしてユーザに不安感を抱かせたり、驚かせてしまうおそれを軽減することができる。
これにより、安心して安全に使用できる印刷装置1を実現することができる。
【0067】
また本実施形態にいう「印刷動作以外の動作」は、「機械的動作を伴う動作」又は「動作音を伴う動作」もしくは「機械的動作を伴う動作」でありかつ「動作音を伴う動作」である。
本実施形態では、このような動作を行う指示があった場合に当該動作指示に従った動作を行うか否かを判断する。このため、不用意にクリーニング動作が行われて爪が汚れてしまったり、不意にモータ音等がしてユーザに不安感を抱かせたり、驚かせてしまうおそれを回避でき、安心して安全に装置を使用することができる。
【0068】
また本実施形態では、印刷動作以外の動作指示があった際に、印刷対象の配置領域内に爪等の印刷対象があると検出された場合には、その旨をユーザに対して報知するようになっている。
このため、ユーザが気付かぬままクリーニング動作等が行われて爪が汚れてしまう等の危険を回避することができる。また突然モータ音がしてユーザが不安に感じたり、驚いたりすることも防止することができる。
【0069】
また本実施形態では、報知後、検出手段(撮影装置51)により印刷対象の配置領域内に爪等の印刷対象がないことが検出された場合に、印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うように動作部を制御する。
このように、報知後、爪等が配置された状況が解消されたことを確認してから「印刷動作以外の動作」を行うため、クリーニング動作により爪等が汚れることを確実に防止することができる。
【0070】
また本実施形態では、印刷動作以外の動作指示があった際に、検出手段(撮影装置51)により印刷対象の配置領域内に爪等の印刷対象があると検出された場合、印刷動作以外の動作の優先度に応じて印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うか否かを判断する。
これにより、適切な印刷を行うのに必要な動作は後回しにせずに行い、高品位の印刷処理と印刷動作以外の動作を行うことによる弊害(すなわち、爪等のインク汚れや、モータ音等によるユーザの不安感)回避との両立を図ることができる。
【0071】
また本実施形態では、制御部31は、予め設定された一連の印刷動作が終了したか否かを判断し、一連の印刷動作が終了している場合に印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うように動作部を制御する。
これにより、後回しにできる動作については、印刷後に行うようにすることができ、効率的に印刷処理を行うことができる。
【0072】
また本実施形態において、印刷動作以外の動作は、印刷ヘッドのクリーニング動作等である。
図2に示すように、本実施形態の印刷装置1において、印刷対象である爪等を配置する領域は、クリーニング領域A2と比較的近接している。このため、ユーザが、クリーニング動作が行われることに気付かずに装置内に爪を配置していると、パージやワイプの際に発生するインクミスト等によって爪の表面が汚れてしまうおそれがある。
この点、本実施形態ではクリーニング動作等の「印刷動作以外の動作」が行われる際には、印刷対象である爪等が印刷対象の配置領域内に配置されていないかを確認する。このため、不用意に爪が汚れる等のおそれを回避して、安心、安全にネイルプリントを行うことができる。
【0073】
また本実施形態では、検出手段は、印刷対象の形状を検出するために用いられる2次元センサとしての撮影装置51である。
このため、別途検出手段を設ける必要がなく、装置構成の複雑化やコスト増を抑えることができる。
【0074】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0075】
例えば、本実施形態では、「印刷動作以外の動作」としてクリーニング動作とアライメント等のイニシャル処理とカートリッジ41の移動動作を例示したが、「印刷動作以外の動作」はこれに限定されない。
このほかの動作でも、「機械的動作を伴う動作」又は「動作音を伴う動作」もしくは「機械的動作を伴う動作」でありかつ「動作音を伴う動作」、例えば装置内に挿入されている指に各種の機構部がぶつかったり、爪や指に汚れが付着したり、ユーザに不安感を抱かせるような異音等が発生するような動作については、本実施形態において示したのと同様の対応を取り得る。
【0076】
また本実施形態では、検出手段が印刷対象の形状を検出するために用いられる2次元センサとしての撮影装置51である場合を例示したが、検出手段はこれに限定されない。
例えば、所定範囲内に指が置かれているか否かを検出可能な接触センサ等、他のセンサが検出手段として設けられていてもよい。
【0077】
また本実施形態では、印刷対象が爪である場合を例示したが、印刷対象はこれに限定されず、例えば試し刷り用の紙等であってもよい。
【0078】
また「印刷対象の配置領域」は、実際に印刷が行われる印刷動作領域A3に限定されず、その周辺領域でもよい。
これにより、例えば試し刷り用の紙を装置内に置き忘れた場合等でも、クリーニング動作の際に誤って汚れてしまうのを防止することができる。
【0079】
また、本実施形態では、印刷装置1のカートリッジ41として、インクジェット方式のカートリッジ41を備える構成としたが、カートリッジ41の構成はこれに限定されない。
シリンジ型のヘッドやペン型のヘッド等、インクジェット方式のカートリッジ41とは異なる構成のものを備えてもよい。
【0080】
また、本実施形態では、印刷装置1が端末装置9と連携して爪に印刷を行う場合を例示したが、印刷装置1はここに示すようなものに限定されず、単体で印刷動作が完結するように構成されたものであってもよい。
例えば、本実施形態では、印刷開始指示の入力やネイルデザイン(デザイン)の選択等を端末装置9側の操作部91から行う場合を例としたが、各種指示の入力等を印刷装置1側の操作部12において行う構成としてもよい。この場合、印刷装置1にタッチパネル式の操作部を備えてもよい。また、印刷装置1に表示部を備えてもよく、この場合には当該表示部にタッチパネルが一体的に設けられていてもよい。
【0081】
また、本実施形態では、ネイルデザイン(デザイン)のデータを格納するネイルデザイン記憶領域822が端末装置9の記憶部92に設けられている場合を例示したが、ネイルデザインのデータは端末装置9の記憶部92に保存されている場合に限定されず、印刷装置1の記憶部32に保存されていてもよい。
また、ネットワーク回線等を介して接続可能なサーバ装置等にネイルデザインの画像データを記憶させておき、サーバ装置等にアクセスしてネイルデザインのデータを参照可能に構成してもよい。
このようにすることで、記憶部92等の容量を大きくしなくても、より多くのネイルデザインの中から印刷するデザインを選択することが可能となる。
【0082】
なお、本実施形態では、情報検出部313及び印刷データ生成部314が印刷装置1に設けられており、印刷装置1の制御装置30において、爪画像からの爪情報の検出や印刷データの生成を行う構成である場合を例示したが、印刷装置1の構成はこれに限定されない。
例えば、印刷装置1が印刷部40及び撮影部50のみを備え、爪情報の検出や印刷データの生成は、外部端末(例えばスマートフォン等である端末装置9)において行われる構成としてもよい。
この場合には、撮影部50の撮影装置51により爪が撮影され爪画像(指を含む爪の画像)が取得されると、撮影部50によって取得された爪画像は、通信部13を介して端末装置9の制御装置90に送られる。この場合には、印刷装置1の構成を簡易なものとすることができる。
【0083】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
印刷対象の配置領域内について前記印刷対象の有無を検出する検出手段と、
印刷動作以外の動作指示があった際に、前記検出手段の検出結果に基づいて前記印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うか否かを判断する制御手段と、
を備えていることを特徴とする印刷装置。
<請求項2>
前記印刷動作以外の動作指示は、機械的動作を伴う動作を指示するものであることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
<請求項3>
前記印刷動作以外の動作指示は、動作音を伴う動作を指示するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
<請求項4>
前記印刷動作以外の動作指示があった際に、前記検出手段により前記印刷対象の配置領域内に前記印刷対象があると検出された場合、
前記制御手段は、ユーザに対する報知を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項5>
前記報知後、前記検出手段により前記印刷対象の配置領域内に前記印刷対象がないことが検出された場合に、
前記制御手段は、前記印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うように動作部を制御することを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
<請求項6>
前記印刷動作以外の動作指示があった際に、前記検出手段により前記印刷対象の配置領域内に前記印刷対象があると検出された場合、
前記制御手段は、前記印刷動作以外の動作の優先度に応じて前記印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うか否かを判断することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項7>
前記制御手段は、予め設定された一連の印刷動作が終了したか否かを判断し、前記一連の印刷動作が終了している場合に前記印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うように動作部を制御することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項8>
前記印刷動作以外の動作は、印刷ヘッドのクリーニング動作であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項9>
前記検出手段は、前記印刷対象の形状を検出するために用いられる2次元センサであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項10>
印刷対象の配置領域内について前記印刷対象の有無を検出する検出工程と、
印刷動作以外の動作指示があった際に、前記検出工程における検出結果に基づいて前記印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うか否かを判断する判断工程と、
を含んでいることを特徴とする印刷制御方法。
<請求項11>
コンピュータに、
印刷対象の配置領域内について前記印刷対象の有無を検出する検出機能と、
印刷動作以外の動作指示があった際に、前記検出機能による検出結果に基づいて前記印刷動作以外の動作指示に従った動作を行うか否かを判断する判断機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0084】
1 印刷装置
9 端末装置
31 制御部
32 記憶部
40 印刷部
41 カートリッジ(印刷ヘッド)
46 X方向移動モータ
48 Y方向移動モータ
49 ヘッド移動機構
50 撮影部
51 撮影装置
315 印刷制御部
411 X方向原点センサ
412 Y方向原点センサ
413 エンコーダセンサ
図1
図2
図3
図4