(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】熱供給システム
(51)【国際特許分類】
F24D 3/00 20220101AFI20241126BHJP
F24D 3/02 20060101ALI20241126BHJP
F24D 3/10 20060101ALI20241126BHJP
G05D 23/19 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
F24D3/00 M
F24D3/02 A
F24D3/10 B
G05D23/19 H
(21)【出願番号】P 2021005945
(22)【出願日】2021-01-18
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】森 雄作
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-287865(JP,A)
【文献】実開昭61-001036(JP,U)
【文献】実開昭55-128107(JP,U)
【文献】米国特許第06463999(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/00
F24D 3/02
F24D 3/10
F24D 10/00
F24D 17/00
F24D 19/00
F24H 1/00
F24F 3/00
F24H 15/00
G05D 23/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の負荷機器に、前記負荷機器毎に設定される温度の熱媒を供給する熱供給システムであって、
前記熱媒を加熱する熱媒加熱装置と、
前記熱媒加熱装置から前記負荷機器側に前記熱媒を送出する第1供給ラインと、
前記熱媒加熱装置に前記負荷機器側から前記熱媒を還流させる第1回収ラインと、
前記熱媒を冷却する熱媒冷却装置と、
前記熱媒冷却装置から前記負荷機器側に前記熱媒を送出する第2供給ラインと、
前記熱媒冷却装置に前記負荷機器側から前記熱媒を還流させる第2回収ラインと、
前記負荷機器毎に配設され、前記負荷機器に前記熱媒を供給する複数の温度調節部と、
を備え、
前記温度調節部は、
前記負荷機器を通して前記熱媒を循環させるゾーン循環ラインと、
前記第1供給ラインから前記ゾーン循環ラインに前記熱媒を導入する第1導入ラインと、
前記ゾーン循環ラインから前記第1回収ラインに前記熱媒を還流させる第1還流ラインと、
前記第1導入ラインから前記ゾーン循環ラインへの前記熱媒の導入量を調整する第1導入調整弁と、
前記第2供給ラインから前記ゾーン循環ラインに前記熱媒を導入する第2導入ラインと、
前記ゾーン循環ラインから前記第2回収ラインに前記熱媒を還流させる第2還流ラインと、
前記第2導入ラインから前記ゾーン循環ラインへの前記熱媒の導入量を調整する第2導入調整弁と、
前記ゾーン循環ラインを循環する前記熱媒の温度に応じて前記第1導入調整弁及び前記第2導入調整弁の開度を制御する制御装置と、
前記第1導入ラインから前記第1還流ラインに前記熱媒を逃がし、前記第1導入ラインから前記ゾーン循環ラインに前記熱媒を導入しないときにも前記第1導入ラインに前記熱媒を流通させる第1バイパスラインと、
前記第2導入ラインから前記第2還流ラインに前記熱媒を逃がし、前記第2導入ラインから前記ゾーン循環ラインに前記熱媒を導入しないときにも前記第2導入ラインに前記熱媒を流通させる第2バイパスラインと、
をそれぞれ有する、熱供給システム。
【請求項2】
前記第1導入調整弁は、前記第1導入ラインの前記熱媒を前記ゾーン循環ラインと前記第1バイパスラインとに振り分ける比例三方弁であり、
前記第2導入調整弁は、前記第2導入ラインの前記熱媒を前記ゾーン循環ラインと前記第2バイパスラインとに振り分ける比例三方弁である、請求項
1に記載の熱供給システム。
【請求項3】
前記温度調節部は、
前記第1バイパスラインにおいて圧力損失を発生させる第1圧力損失機構と、
前記第2バイパスラインにおいて圧力損失を発生させる第2圧力損失機構と、
をさらに有する、請求項
1又は2に記載の熱供給システム。
【請求項4】
前記第1圧力損失機構及び第2圧力損失機構は、開度を変更できる圧力調節弁をそれぞれ含む、請求項
3に記載の熱供給システム。
【請求項5】
前記第1圧力損失機構及び第2圧力損失機構は、オリフィスをそれぞれ含む、請求項
3又は4に記載の熱供給システム。
【請求項6】
前記温度調節部は、
前記ゾーン循環ラインと前記第1還流ラインとの間又は前記ゾーン循環ラインと前記第2還流ラインとの間を遮断する選択弁をさらに有する、請求項1から
5のいずれかに記載の熱供給システム。
【請求項7】
前記第1供給ライン又は前記第1回収ラインに設けられ、前記熱媒を加圧する第1循環ポンプと、
前記第2供給ライン又は前記第2回収ラインに設けられ、前記熱媒を加圧する第2循環ポンプと、
前記第1循環ポンプの上流側及び前記第2循環ポンプの上流側に接続される膨張タンクと、
をさらに備える、請求項
6に記載の熱供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱を消費する負荷機器と熱交換する熱媒を用いて、負荷機器に熱を供給する熱供給システムが用いられる場合がある。複数の負荷機器が存在し、それぞれの負荷機器が異なる熱媒の温度を要求する場合、それぞれの負荷機器に独立した熱源を設けることが分かりやすいが、コスト及び接地スペースが大きくなるという不都合が生じる。
【0003】
そこで、ボイラによって十分な高温に加熱した熱媒を循環させる主循環流路と、負荷機器毎に熱媒を循環させる複数の副循環流路と、主循環流路から制御弁を介して各副循環流路に熱媒をそれぞれ供給する複数の第1の接続配管と、第1の接続配管からの熱媒の供給により各副循環流路において過剰となった熱媒を主循環流路にそれぞれ還流させる第2の接続配管と、を備え、それぞれの循環流路の熱媒の温度を設定値に保つよう制御弁の開度を調整するシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシステムでは、負荷機器に供給する熱媒の温度を迅速に低下させることができない。各副循環流路に熱媒と冷却水との間で熱交換する冷却器を設けることも考えられるが、設備コストや占有スペースが増大する。そこで、本発明は、低コストで、負荷機器に供給する熱媒の温度を迅速に調整できる熱供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る熱供給システムは、複数の負荷機器に、前記負荷機器毎に設定される温度の熱媒を供給する熱供給システムであって、前記熱媒を加熱する熱媒加熱装置と、前記熱媒加熱装置から前記負荷機器側に前記熱媒を送出する第1供給ラインと、前記熱媒加熱装置に前記負荷機器側から前記熱媒を還流させる第1回収ラインと、前記熱媒を冷却する熱媒冷却装置と、前記熱媒冷却装置から前記負荷機器側に前記熱媒を送出する第2供給ラインと、前記熱媒冷却装置に前記負荷機器側から前記熱媒を還流させる第2回収ラインと、前記負荷機器毎に配設され、前記負荷機器に前記熱媒を供給する複数の温度調節部と、を備え、前記温度調節部は、前記負荷機器を通して前記熱媒を循環させるゾーン循環ラインと、前記第1供給ラインから前記ゾーン循環ラインに前記熱媒を導入する第1導入ラインと、前記ゾーン循環ラインから前記第1回収ラインに前記熱媒を還流させる第1還流ラインと、前記第1導入ラインから前記ゾーン循環ラインへの前記熱媒の導入量を調整する第1導入調整弁と、前記第2供給ラインから前記ゾーン循環ラインに前記熱媒を導入する第2導入ラインと、前記ゾーン循環ラインから前記第2回収ラインに前記熱媒を還流させる第2還流ラインと、前記第2導入ラインから前記ゾーン循環ラインへの前記熱媒の導入量を調整する第2導入調整弁と、前記ゾーン循環ラインを循環する前記熱媒の温度に応じて前記第1導入調整弁及び前記第2導入調整弁の開度を制御する制御装置と、をそれぞれ有する。
【0007】
上述の熱供給システムにおいて、前記温度調節部は、前記第1導入ラインから前記第1還流ラインに前記熱媒を逃がす第1バイパスラインと、前記第2導入ラインから前記第2還流ラインに前記熱媒を逃がす第2バイパスラインと、をさらに有してもよい。
【0008】
上述の熱供給システムにおいて、前記第1導入調整弁は、前記第1導入ラインの前記熱媒を前記ゾーン循環ラインと前記第1バイパスラインとに振り分ける比例三方弁であり、前記第2導入調整弁は、前記第2導入ラインの前記熱媒を前記ゾーン循環ラインと前記第2バイパスラインとに振り分ける比例三方弁であってもよい。
【0009】
上述の熱供給システムにおいて、前記温度調節部は、前記第1バイパスラインにおいて圧力損失を発生させる第1圧力損失機構と、前記第2バイパスラインにおいて圧力損失を発生させる第2圧力損失機構と、をさらに有してもよい。
【0010】
上述の熱供給システムにおいて、前記第1圧力損失機構及び第2圧力損失機構は、開度を変更できる圧力調節弁をそれぞれ含んでもよい。
【0011】
上述の熱供給システムにおいて、前記第1圧力損失機構及び第2圧力損失機構は、オリフィスをそれぞれ含んでもよい。
【0012】
上述の熱供給システムにおいて、前記温度調節部は、前記ゾーン循環ラインと前記第1還流ラインとの間又は前記ゾーン循環ラインと前記第2還流ラインとの間を遮断する選択弁をさらに有してもよい。
【0013】
上述の熱供給システムは、前記第1供給ライン又は前記第1回収ラインに設けられ、前記熱媒を加圧する第1循環ポンプと、前記第2供給ライン又は前記第2回収ラインに設けられ、前記熱媒を加圧する第1循環ポンプと、前記第1循環ポンプの上流側及び前記第1循環ポンプの上流側に接続される膨張タンクと、をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低コストで、負荷機器に供給する熱媒の温度を迅速に調整できる熱供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る熱供給システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱供給システム1の構成を示す図である。熱供給システム1は、複数の負荷機器Lに、負荷機器L毎に設定される温度の熱媒を供給する。熱媒としては、熱媒体油が想定されるが、水等の他の流体であってもよい。
【0017】
熱供給システム1は、熱媒を加熱する熱媒加熱装置11と、熱媒加熱装置11から負荷機器L側に熱媒を送出する第1供給ライン12と、熱媒加熱装置11に負荷機器L側から熱媒を還流させる第1回収ライン13と、熱媒を冷却する熱媒冷却装置21と、熱媒冷却装置21から負荷機器L側に熱媒を送出する第2供給ライン22と、熱媒冷却装置21に負荷機器L側から熱媒を還流させる第2回収ライン23と、負荷機器L毎に配設され、負荷機器Lに熱媒を供給する複数の温度調節部30と、を備える。
図1には2つの温度調節部30が図示されているが、熱供給システム1における温度調節部30の数は、特に制限されない。
【0018】
さらに、熱供給システム1は、第1供給ライン12又は第1回収ライン13の熱媒加熱装置11の近傍に設けられ、熱媒を加圧する第1循環ポンプ14と、第2供給ライン22又は第2回収ライン23の熱媒冷却装置21の近傍に設けられ、熱媒を加圧する第2循環ポンプ24と、第1循環ポンプ14の上流側及び第2循環ポンプ24の上流側に接続される膨張タンク15と、を備える。
【0019】
熱媒加熱装置11は、例えばボイラ、ヒータ等の熱媒を加熱する装置であって、第1供給ライン12に供給する熱媒を第1供給温度に加熱するよう熱量が制御される。第1供給温度は、全ての負荷機器Lの想定される熱媒の設定温度の最高温度よりも十分に高い温度に設定される。
【0020】
第1供給ライン12は、熱媒加熱装置11から流出する比較的高温の熱媒を各温度調節部30に案内する配管路である。第1回収ライン13は、各温度調節部30から温度が低下した熱媒を回収して熱媒加熱装置11に送り返す配管路である。第1供給ライン12の末端と第1回収ライン13の末端とは、第1供給ライン12の圧力を保持するために、不図示の背圧弁、オリフィス等を介して接続される。したがって、第1供給ライン12及び第1回収ライン13は、熱媒加熱装置11を起点とする無端状の流路を形成し、第1循環ポンプ14によって熱媒が循環させられる。
【0021】
熱媒冷却装置21は、例えば冷却水、ブライン等の冷熱源流体と熱媒との間で熱交換を行う装置であって、第2供給ライン22に供給する熱媒を第2供給温度に冷却するよう、冷熱源流体の温度又は流量が制御される。第2供給温度は、全ての負荷機器Lの想定される熱媒の設定温度の最低温度よりも十分に低い温度に設定される。
【0022】
第2供給ライン22は、熱媒冷却装置21から流出する比較的低温の熱媒を各温度調節部30に案内する配管路である。第2回収ライン23は、各温度調節部30から温度が上昇した熱媒を回収して熱媒冷却装置21に送り返す配管路である。第2供給ライン22の末端と第2回収ライン23の末端とは、第2供給ライン22の圧力を保持するために、不図示の背圧弁、オリフィス等を介して接続される。したがって、第2供給ライン22及び第2回収ライン23は、熱媒冷却装置21を起点とする無端状の流路を形成し、第2循環ポンプ24によって熱媒を循環させる。
【0023】
温度調節部30は、それぞれの負荷機器Lに、負荷機器L毎に設定される温度の熱媒を供給する。なお、負荷機器Lは、一体に制御される複数の装置を含んでもよい。
【0024】
温度調節部30は、負荷機器Lを通して熱媒を循環させるゾーン循環ライン31と、第1供給ライン12からゾーン循環ライン31に熱媒を導入する第1導入ライン41と、ゾーン循環ライン31から第1回収ライン13に熱媒を還流させる第1還流ライン42と、第1導入ライン41からゾーン循環ライン31への熱媒の導入量を調整する第1導入調整弁43と、第2供給ライン22からゾーン循環ライン31に熱媒を導入する第2導入ライン51と、ゾーン循環ライン31から第2回収ライン23に熱媒を還流させる第2還流ライン52と、第2導入ライン51からゾーン循環ライン31への熱媒の導入量を調整する第2導入調整弁53と、ゾーン循環ライン31を循環する熱媒の温度に応じて第1導入調整弁43及び第2導入調整弁53の開度を制御する制御装置61と、をそれぞれ有する。
【0025】
熱供給システム1は、負荷機器Lを通して熱媒を循環させるゾーン循環ライン31を有し、必要に応じて熱媒加熱装置11で加熱され第1供給ライン12及び第1回収ライン13を循環する熱媒、又は熱媒冷却装置21で冷却されて第2供給ライン22及び第2回収ライン23を循環する熱媒をゾーン循環ライン31に導入する温度調節部30を備えることで、温度調節部30における熱媒の設定温度を変更したときに実際に負荷機器に供給される熱媒の温度を迅速に調整することができる。
【0026】
熱供給システム1では、ゾーン循環ライン31に第1導入ライン41又は第2導入ライン51から熱媒が供給されると、ゾーン循環ライン31内の熱媒の量が増大するため、過剰となった熱媒が第1還流ライン42又は第2還流ライン52に流出し、第1回収ライン13又は第2回収ライン23に回収される。第1回収ライン13又は第2回収ライン23によって回収された熱媒は、熱媒加熱装置11で再加熱又は熱媒冷却装置21で再冷却されて、再び温度調節部30に供給され得る。
【0027】
また、熱供給システム1は、各温度調節部30が共通の第1供給ライン12及び第2供給ライン22からそれぞれ必要に応じて熱媒を取り込んで温度調節部30の中を循環する熱媒の温度を調節するため、単一の熱媒加熱装置11及び単一の熱媒冷却装置21によって、必要とする熱媒の温度が異なる複数の負荷機器Lに必要な温度の熱媒を供給できる。このため、熱供給システム1は、設備コストを低減すると共に占有スペースを小さくできる。また、熱供給システム1は、熱媒加熱装置11及び熱媒冷却装置21を共有化したことによって、設備の管理も容易である。
【0028】
それぞれの温度調節部30は、図示するように、第1導入ライン41から第1回収ライン13に熱媒を逃がす第1バイパスライン44と、第1バイパスライン44において圧力損失を発生させる第1圧力損失機構45と、第2導入ライン51から第2還流ライン52に熱媒を逃がす第2バイパスライン54と、第2バイパスライン54において圧力損失を発生させる第2圧力損失機構55と、ゾーン循環ライン31と第1還流ライン42との間又はゾーン循環ライン31と第2還流ライン52との間を遮断する選択弁32と、をさらに有することが好ましい。また、ゾーン循環ライン31には、熱媒を循環させるゾーンポンプ33と、循環する熱媒の温度を検出する温度センサ34と、が設けられる。
【0029】
温度調節部30が第1バイパスライン44及び第2バイパスライン54を有することによって、ゾーン循環ライン31に熱媒を導入しないときにも第1導入ライン41及び第2導入ライン51を熱媒が流れるため、第1導入ライン41及び第2導入ライン51が長い場合でも第1導入ライン41からゾーン循環ライン31に導入される熱媒の温度及び第2導入ライン51からゾーン循環ライン31に導入される熱媒の温度を安定させられる。このため、ゾーン循環ライン31の熱媒の温度を迅速かつ正確に調整できる。
【0030】
さらに、温度調節部30は、選択弁32を備えることによって、第1導入ライン41から熱媒がゾーン循環ライン31に導入される場合にはゾーン循環ライン31から第1還流ライン42だけに熱媒を還流させ、第2導入ライン51から熱媒がゾーン循環ライン31に導入される場合にはゾーン循環ライン31から第2還流ライン52だけに熱媒を還流させる。これにより、第1供給ライン12からゾーン循環ライン31を介して第2回収ライン23へ、又は第2供給ライン22からゾーン循環ライン31を介して第1回収ライン13へ熱媒が流れ込むことを防止できる。つまり、熱供給システム1は、選択弁32を備えることによって、第1供給ライン12及び第1回収ライン13を循環する熱媒の量、並びに第2供給ライン22及び第2回収ライン23を循環する熱媒の量が変動することを防止できる。選択弁32は、2つのバルブから構成されてもよいが、本実施形態では単一の三方弁から構成される。
【0031】
制御装置61は、温度センサ34の検出値を設定温度に保つよう、第1導入調整弁43及び第2導入調整弁53並びに選択弁32を制御する。制御装置61は、例えばプログラマブルコントローラ、パーソナルコンピュータ等に適切な制御プログラムを実行させることによって実現可能である。
【0032】
制御装置61は、第1導入調整弁43と第2導入調整弁53とを同時に開放、つまり第1導入ライン41及び第2導入ライン51から同時にゾーン循環ライン31に熱媒を導入しないようにプログラムされることが好ましい。さらに、制御装置61は、第1導入調整弁43が開放される場合は、ゾーン循環ライン31と第1還流ライン42とを連通させるとともに、ゾーン循環ライン31と第2還流ライン52との間を遮断し、第2導入調整弁53が開放される場合は、ゾーン循環ライン31と第1還流ライン42との間を遮断するとともに、ゾーン循環ライン31と第2還流ライン52とを連通させるよう、選択弁32を動作させることが好ましい。つまり、選択弁32は、第1導入ライン41からゾーン循環ライン31に熱媒を導入するときはゾーン循環ライン31から第1還流ライン42のみに熱媒を流出させ、第2導入ライン51からゾーン循環ライン31に熱媒を導入するときはゾーン循環ライン31から第2還流ライン52のみに熱媒を流出させるよう、制御されることが好ましい。
【0033】
このように、熱媒加熱装置11によって熱媒を加熱する系統と、熱媒冷却装置21によって熱媒を冷却する系統との間の熱媒の往来を防止することにより、2つの系統が単一の膨張タンク15を共用できる。つまり、選択弁32を設けることによって、膨張タンク15の配管を介して2つの系統が温度調節部30以外の場所で接続されても、膨張タンク15の配管を通して熱媒が2つの系統間を移動することがないため、不必要なエネルギー消費を防止できる。これにより、熱供給システム1は、それぞれの系統における熱媒の体積変化を共通の膨張タンク15によって吸収することができるため、設備コストを低減できる。
【0034】
さらに、熱供給システム1は、選択弁32を備えることによって、2つの系統間での熱媒の移動によるそれぞれの系統内の熱媒に不規則な温度変化が生じないので、熱媒加熱装置11及び熱媒冷却装置21の制御が安定する。選択弁32を設けない場合、例えば第1循環ポンプ14を停止しているのに膨張タンク15の配管を通して熱媒が2つの系統間を移動することで、熱媒加熱装置11に予期しない熱媒の流れによる差圧が生じ、熱媒加熱装置11の異常と判断されるおそれがある。
【0035】
本実施形態において、第1導入ライン41と第2導入ライン51とは、ゾーン循環ライン31に対する接続部が共通化されているが、別々にゾーン循環ライン31に接続されてもよい。同様に、第1還流ライン42と第2還流ライン52とも、別々にゾーン循環ライン31に接続されてもよい。第1導入調整弁43及び第2導入調整弁53からゾーン循環ライン31までの配管距離は、ゾーン循環ライン31の熱媒温度の調節の応答性を向上するために、滞留する熱媒の量を少なくするようできるだけ短いことが好ましい。
【0036】
本実施形態において、第1導入調整弁43は、第1導入ライン41の熱媒をゾーン循環ライン31と第1バイパスライン44とに振り分ける比例三方弁であり、第2導入調整弁53は、第2導入ライン51の熱媒をゾーン循環ライン31と第2バイパスライン54とに振り分ける比例三方弁である。これにより、第1導入ライン41及び第1還流ライン42並びに第2導入ライン51及び第2還流ライン52の熱媒の流量を保持し、複数の温度調節部30が互いに影響を与え合うことを防止できる。
【0037】
また、本実施形態の熱供給システム1は、第1バイパスライン44に第1圧力損失機構45を、第2バイパスライン54に第2圧力損失機構55をそれぞれ有するため、第1バイパスライン44及び第2バイパスライン54の熱媒の流量が過度に大きくなることを防止できる。これにより、上流側の温度調節部30に集中して熱媒が流れ、下流側の温度調節部30への熱媒の供給量が不足することを防止できる。このため、熱媒加熱装置11及び熱媒冷却装置21の容量が比較的小さくても、複数の温度調節部に十分な量の熱媒を供給できる。
【0038】
本実施形態において、第1圧力損失機構45は、開度を変更できる第1圧力調節弁46と、局所的に流路面積を減少させる第1オリフィス47と、を有し、第2圧力損失機構55は、開度を変更できる第2圧力調節弁56と、局所的に流路面積を減少させる第2オリフィス57と、を有する。第1圧力調節弁46及び第2圧力調節弁56は、第1導入ライン41及び第1還流ライン42並びに第2導入ライン51及び第2還流ライン52の熱媒の流量を一定に保持できるよう、発生する圧力損失を調整できる。このため、複数の温度調節部30の間のゾーン循環ライン31への熱媒の供給量のバラツキを正確に抑制できる。一方、第1オリフィス47及び第2オリフィス57は、比較的簡単な構成で確実に圧力損失を生じさせることができ、第1圧力調節弁46及び第2圧力調節弁56を誤って全開にしたとしても、その温度調節部30だけを熱媒が流れることを防止できる。
【0039】
以上のように、熱供給システム1は、それぞれ負荷機器Lを通して熱媒を循環させるゾーン循環ライン31を有し、必要に応じて熱媒加熱装置11で加熱され第1供給ライン12及び第1回収ライン13を循環する熱媒、又は熱媒冷却装置21で冷却されて第2供給ライン22及び第2回収ライン23を循環する熱媒をゾーン循環ライン31に導入するよう構成された温度調節部30を備えることで、負荷機器Lに供給される熱媒の設定温度を変更したときに実際に負荷機器Lに供給される熱媒の温度を迅速に調整することができる。また、必要とする熱媒の温度が異なる複数の負荷機器Lが同じ熱媒加熱装置11及び熱媒冷却装置21を共有するため、熱供給システム1は設備コストが小さい。
【0040】
以上、本発明に係る熱供給システムの好ましい実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0041】
例として、本発明に係る熱供給システムにおいて、第1圧力損失機構及び第2圧力損失機構は、導入調整弁及びオリフィスの一方だけを有してもよく、圧力損失を発生する他の構成を有してもよい。
【0042】
また、本発明に係る熱供給システムにおいて、第1導入調整弁及び第2導入調整弁をそれぞれ2つのバルブによって構成、つまり第1導入調整弁を第1導入ラインの第1バイパスラインとの分岐よりも下流側設けられるバルブ及び第1バイパスラインに設けられるバルブによって構成し、第2導入調整弁を第2導入ラインの第2バイパスラインとの分岐よりも下流側設けられるバルブ及び第2バイパスラインに設けられるバルブによって構成することも可能である。
【0043】
本発明に係る熱供給システムは、例えばストップ弁、ストレーナ等、さらなる構成要素を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 熱供給システム
11 熱媒加熱装置
12 第1供給ライン
13 第1回収ライン
14 第1循環ポンプ
15 膨張タンク
21 熱媒冷却装置
22 第2供給ライン
23 第2回収ライン
24 第2循環ポンプ
30 温度調節部
31 ゾーン循環ライン
33 ゾーンポンプ
34 温度センサ
41 第1導入ライン
42 第1還流ライン
43 第1導入調整弁
44 第1バイパスライン
45 第1圧力損失機構
46 第1圧力調節弁
47 第1オリフィス
51 第2導入ライン
52 第2還流ライン
53 第2導入調整弁
54 第2バイパスライン
55 第2圧力損失機構
56 第2圧力調節弁
57 第2オリフィス
61 制御装置
L 負荷機器