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7593138三次元造形装置および三次元造形物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】三次元造形装置および三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/35 20170101AFI20241126BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20241126BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20241126BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241126BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241126BHJP
【FI】
B29C64/35
B29C64/106
B29C64/209
B33Y10/00
B33Y30/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021009951
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022113927
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 達雄
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-502184(JP,A)
【文献】特表2010-530326(JP,A)
【文献】登録実用新案第3190955(JP,U)
【文献】国際公開第2019/141892(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/061544(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B29C 67/00-67/08
B29C 67/24-69/02
B29C 73/00-73/34
B29D 1/00-29/10
B29D 33/00
B29D 99/00
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑化材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化機構、及び、ノズルを有し、前記造形材料を前記ノズルから射出する射出部と、
前記造形材料が積層されるステージと、
前記射出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する駆動部と、
ブラシ、及び、ブレードを有するクリーニング機構と、
前記ノズルを清掃するクリーニング処理を実行可能な制御部と、を備え、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記ノズルと接触可能な高さに配置されており、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記可塑化材料の可塑化温度よりも高い融点を有し、かつ、前記ノズルの硬度よりも低い硬度を有し、
前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記ノズルが前記クリーニング機構を複数回に亘って横切るように前記ノズルを往復移動させることで、前記ブラシ及び前記ブレードの少なくとも一方と前記ノズルとを接触させるクリーニング動作を実行し、
前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記ノズルが前記ブラシ又は前記ブレードの異なる位置で接触するように、前記ノズルを前記往復移動させ
前記ブレードの弾性率は、前記ブラシの弾性率よりも高い、
三次元造形装置。
【請求項2】
可塑化材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化機構、及び、ノズルを有し、前記造形材料を前記ノズルから射出する射出部と、
前記造形材料が積層されるステージと、
前記射出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する駆動部と、
ブラシ、及び、ブレードを有するクリーニング機構と、
前記ノズルを清掃するクリーニング処理を実行可能な制御部と、を備え、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記ノズルと接触可能な高さに配置されており、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記可塑化材料の可塑化温度よりも高い融点を有し、かつ、前記ノズルの硬度よりも低い硬度を有し、
前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記ノズルが前記クリーニング機構を複数回に亘って横切るように前記ノズルを往復移動させることで、前記ブラシ及び前記ブレードの少なくとも一方と前記ノズルとを接触させるクリーニング動作を実行し、
前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記ノズルが前記ブラシ又は前記ブレードの異なる位置で接触するように、前記ノズルを前記往復移動させ、
前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記ノズルを、前記クリーニング機構の長手方向に沿って、三角波、矩形波、正弦波、または、のこぎり波、の形状を示す経路に従って前記往復移動させる、三次元造形装置。
【請求項3】
可塑化材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化機構、及び、ノズルを有し、前記造形材料を前記ノズルから射出する射出部と、
前記造形材料が積層されるステージと、
前記射出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する駆動部と、
ブラシ、及び、ブレードを有するクリーニング機構と、
前記ノズルを清掃するクリーニング処理を実行可能な制御部と、を備え、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記ノズルと接触可能な高さに配置されており、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記可塑化材料の可塑化温度よりも高い融点を有し、かつ、前記ノズルの硬度よりも低い硬度を有し、
前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記ノズルが前記クリーニング機構を複数回に亘って横切るように前記ノズルを往復移動させることで、前記ブラシ及び前記ブレードの少なくとも一方と前記ノズルとを接触させるクリーニング動作を実行し、
前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記ノズルが前記ブラシ又は前記ブレードの異なる位置で接触するように、前記ノズルを前記往復移動させ、
前記ブレードの先端が、前記ブラシの先端よりも下方に配置される、三次元造形装置。
【請求項4】
可塑化材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化機構、及び、ノズルを有し、前記造形材料を前記ノズルから射出する射出部と、
前記造形材料が積層されるステージと、
前記射出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する駆動部と、
ブラシ、及び、ブレードを有するクリーニング機構と、
前記ノズルを清掃するクリーニング処理を実行可能な制御部と、を備え、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記ノズルと接触可能な高さに配置されており、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記可塑化材料の可塑化温度よりも高い融点を有し、かつ、前記ノズルの硬度よりも低い硬度を有し、
前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記ノズルが前記クリーニング機構を複数回に亘って横切るように前記ノズルを往復移動させることで、前記ブラシ及び前記ブレードの少なくとも一方と前記ノズルとを接触させるクリーニング動作を実行し、
前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記ノズルが前記ブラシ又は前記ブレードの異なる位置で接触するように、前記ノズルを前記往復移動させ、
前記ノズルは、前記ノズルの先端よりも上方にシールドを有し、
前記ブラシの先端が、前記シールドに接触可能な高さに配置され、
前記ブレードの先端が、前記シールドに接触しない高さに配置される、三次元造形装置。
【請求項5】
可塑化材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化機構、及び、ノズルを有し、前記造形材料を前記ノズルから射出する射出部と、
前記造形材料が積層されるステージと、
前記射出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する駆動部と、
ブラシ、及び、ブレードを有するクリーニング機構と、
前記ノズルを清掃するクリーニング処理を実行可能な制御部と、を備え、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記ノズルと接触可能な高さに配置されており、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記可塑化材料の可塑化温度よりも高い融点を有し、かつ、前記ノズルの硬度よりも低い硬度を有し、
前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記ノズルが前記クリーニング機構を複数回に亘って横切るように前記ノズルを往復移動させることで、前記ブラシ及び前記ブレードの少なくとも一方と前記ノズルとを接触させるクリーニング動作を実行し、
前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記ノズルが前記ブラシ又は前記ブレードの異なる位置で接触するように、前記ノズルを前記往復移動させ、
前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記ノズルが前記ブラシを横切る回数を、前記ノズルが前記ブレードを横切る回数よりも多くする、三次元造形装置。
【請求項6】
可塑化材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化機構、及び、ノズルを有し、前記造形材料を前記ノズルから射出する射出部と、
前記造形材料が積層されるステージと、
前記射出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する駆動部と、
ブラシ、及び、ブレードを有するクリーニング機構と、
前記ノズルを清掃するクリーニング処理を実行可能な制御部と、を備え、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記ノズルと接触可能な高さに配置されており、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記可塑化材料の可塑化温度よりも高い融点を有し、かつ、前記ノズルの硬度よりも低い硬度を有し、
前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記ノズルが前記クリーニング機構を複数回に亘って横切るように前記ノズルを往復移動させることで、前記ブラシ及び前記ブレードの少なくとも一方と前記ノズルとを接触させるクリーニング動作を実行し、
前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記ノズルが前記ブラシ又は前記ブレードの異なる位置で接触するように、前記ノズルを前記往復移動させ、
前記クリーニング機構は、パージ部を有し、
前記パージ部と前記ブラシとの間に前記ブレードが配置され、
前記パージ部は、前記ブレードから遠い順、かつ、鉛直方向における位置が低い順に、第1傾斜面と第2傾斜面と第3傾斜面とを有し、前記第2傾斜面および前記第3傾斜面の水平面からの傾斜角度は、前記第1傾斜面の水平面からの傾斜角度よりも大きい、三次元造形装置。
【請求項7】
請求項に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記パージ部上で前記ノズルから前記造形材料を射出させた後、前記ノズルを前記ブラシ及び前記ブレードに向かって移動させる、三次元造形装置。
【請求項8】
可塑化材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化機構、及び、ノズルを有し、前記造形材料を前記ノズルから射出する射出部と、
前記造形材料が積層されるステージと、
前記射出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する駆動部と、
ブラシ、及び、ブレードを有するクリーニング機構と、
前記ノズルを清掃するクリーニング処理を実行可能な制御部と、を備え、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記ノズルと接触可能な高さに配置されており、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記可塑化材料の可塑化温度よりも高い融点を有し、かつ、前記ノズルの硬度よりも低い硬度を有し、
前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記ノズルが前記クリーニング機構を複数回に亘って横切るように前記ノズルを往復移動させることで、前記ブラシ及び前記ブレードの少なくとも一方と前記ノズルとを接触させるクリーニング動作を実行し、
前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記ノズルが前記ブラシ又は前記ブレードの異なる位置で接触するように、前記ノズルを前記往復移動させ、
前記射出部は、第1造形材料を射出する第1ノズルが備えられた第1射出部と、第2造形材料を射出する第2ノズルが備えられた第2射出部とを有し、
前記クリーニング機構は、前記第1ノズルを清掃するためのブラシおよびブレードを有する第1クリーニング機構と、前記第2ノズルを清掃するためのブラシおよびブレードを有する第2クリーニング機構とを有し、
前記制御部は、前記第1クリーニング機構と前記第2クリーニング機構とを用いて、前記第1ノズルと前記第2ノズルとに対して、同時に前記クリーニング処理を実行する、三次元造形装置。
【請求項9】
可塑化材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化機構、及び、ノズルを有し、前記造形材料を前記ノズルから射出する射出部と、
前記造形材料が積層されるステージと、
前記射出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する駆動部と、
ブラシ、及び、ブレードを有するクリーニング機構と、
前記ノズルを清掃するクリーニング処理を実行可能な制御部と、を備え、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記ノズルと接触可能な高さに配置されており、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記可塑化材料の可塑化温度よりも高い融点を有し、かつ、前記ノズルの硬度よりも低い硬度を有し、
前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記ノズルが前記クリーニング機構を複数回に亘って横切るように前記ノズルを往復移動させることで、前記ブラシ及び前記ブレードの少なくとも一方と前記ノズルとを接触させるクリーニング動作を実行し、
前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記ノズルが前記ブラシ又は前記ブレードの異なる位置で接触するように、前記ノズルを前記往復移動させ、
前記制御部は、前記クリーニング処理の実行回数に基づいて、前記クリーニング機構の摩耗状態を特定し、
前記制御部は、前記摩耗状態に応じて、前記クリーニング機構と前記ノズルとの間隔を調整する、三次元造形装置。
【請求項10】
請求項に記載の三次元造形装置であって、
報知部を備え、
前記制御部は、前記摩耗状態に応じて、前記報知部を制御して、前記クリーニング機構の交換を促す情報を報知する、三次元造形装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記ノズルの先端を前記ブレードに接触させた後、前記ノズルの先端を前記ブラシに接触させる、三次元造形装置。
【請求項12】
可塑化材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化機構、及び、ノズルを備え、前記造形材料を前記ノズルから射出する射出部と、
前記造形材料が積層されるステージと、
前記射出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する駆動部と、
ブラシ、及び、ブレードを有するクリーニング機構と、
を備え、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記ノズルと接触可能な高さに配置されており、
前記ブラシ及び前記ブレードは、前記可塑化材料の可塑化温度よりも高い融点を有し、かつ、前記ノズルの硬度よりも低い硬度を有する、三次元造形装置における三次元造形物の製造方法であって、
前記射出部から前記造形材料を前記ステージに射出させて三次元造形物を造形する造形工程と、
前記造形工程の前、前記造形工程の最中、前記造形工程の後、の少なくともいずれか1つのタイミングにおいて、前記ノズルが前記クリーニング機構を複数回に亘って横切るように前記ノズルを往復移動させることで、前記ブラシ及び前記ブレードの少なくとも一方と前記ノズルとを接触させるクリーニング動作を実行するクリーニング工程と、を備え、
前記クリーニング工程では、前記クリーニング動作において、前記ノズルが前記ブラシ又は前記ブレードの異なる位置で接触するように、前記ノズルを前記往復移動させ
前記ブレードの弾性率は、前記ブラシの弾性率よりも高い、
三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形装置および三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フリッカー板及びブラシを有する端部洗浄アセンブリーを備える三次元造形装置が開示されている。この三次元造形装置では、押出ヘッドをフリッカー板及びブラシに接触させることにより、押出ヘッドのクリーニングが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2010-530326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
押出ヘッドのクリーニングを行うと、フリッカー板及びブラシは摩耗するため、これらの交換が必要になる場合がある。そこで、三次元造形装置において、フリッカー板やブラシのようなクリーニング機構の摩耗を抑制し、交換の頻度を低減させることのできる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、可塑化材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化機構、及び、ノズルを有し、前記造形材料を前記ノズルから射出する射出部と、前記造形材料が積層されるステージと、前記射出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する駆動部と、ブラシ、及び、ブレードを有するクリーニング機構と、前記ノズルを清掃するクリーニング処理を実行可能な制御部と、を備え、前記ブラシ及び前記ブレードは、前記ノズルと接触可能な高さに配置されており、前記ブラシ及び前記ブレードは、前記可塑化材料の可塑化温度よりも高い融点を有し、かつ、前記ノズルの硬度よりも低い硬度を有し、前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記ノズルが前記クリーニング機構を複数回に亘って横切るように前記ノズルを往復移動させることで、前記ブラシ及び前記ブレードの少なくとも一方と前記ノズルとを接触させるクリーニング動作を実行し、前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記ノズルが前記ブラシ又は前記ブレードの異なる位置で接触するように、前記ノズルを前記往復移動させる。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、可塑化材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化機構、及び、ノズルを備え、前記造形材料を前記ノズルから射出する射出部と、前記造形材料が積層されるステージと、前記射出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する駆動部と、ブラシ、及び、ブレードを有するクリーニング機構と、を備え、前記ブラシ及び前記ブレードは、前記ノズルと接触可能な高さに配置されており、前記ブラシ及び前記ブレードは、前記可塑化材料の可塑化温度よりも高い融点を有し、かつ、前記ノズルの硬度よりも低い硬度を有する、三次元造形装置における三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、前記射出部から前記造形材料を前記ステージに射出させて三次元造形物を造形する造形工程と、前記造形工程の前、前記造形工程の最中、前記造形工程の後、の少なくともいずれか1つのタイミングにおいて、前記ノズルが前記クリーニング機構を複数回に亘って横切るように前記ノズルを往復移動させることで、前記ブラシ及び前記ブレードの少なくとも一方と前記ノズルとを接触させるクリーニング動作を実行するクリーニング工程と、を備え、前記クリーニング工程では、前記クリーニング動作において、前記ノズルが前記ブラシ又は前記ブレードの異なる位置で接触するように、前記ノズルを前記往復移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す図である。
図2】射出部の概略構成を示す図である。
図3】スクリューの構成を示す概略斜視図である。
図4】バレルの構成を示す上面図である。
図5】クリーニング機構の概略構成を示す説明図である。
図6】三次元造形処理のフローチャートである。
図7】クリーニング処理のフローチャートである。
図8】クリーニング動作の説明図である。
図9】クリーニング動作の他の例の説明図である。
図10】クリーニング動作の他の例の説明図である。
図11】クリーニング動作の他の例の説明図である。
図12】クリーニング動作の他の例の説明図である。
図13】第2実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す図である。
図14】第3実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す図である。
図15】第3実施形態における射出部の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形装置10の概略構成を示す図である。図1には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X,Y,Z方向は、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸に沿った方向であり、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に沿う一方側の方向と、その反対方向とを、両方含む。X軸及びY軸は、水平面に沿った軸であり、Z軸は、鉛直線に沿った軸である。-Z方向は、鉛直方向であり、+Z方向は、鉛直方向とは逆向きの方向である。-Z方向のことを「下」ともいい、+Z方向のことを「上」ともいう。図1におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を表している。
【0009】
本実施形態の三次元造形装置10は、射出部100と、材料収容部20と、筐体110と、駆動部210と、ステージ220と、クリーニング機構250と、制御部300と、報知部としての表示装置400と、を備える。
【0010】
射出部100は、材料収容部20から供給された可塑化材料の少なくとも一部を可塑化して造形材料を生成する可塑化機構30と、ノズル60とを有している。射出部100は、可塑化機構30によって可塑化された造形材料を、ノズル60からステージ220に向かって射出する。射出部100は、射出ヘッド、吐出部、吐出ヘッド、押出部、押出ヘッド、あるいは、単に、ヘッド、とも呼ばれる。なお、本明細書において、「射出」には、「吐出」あるいは「押出」の意味も含まれる。
【0011】
筐体110は、内部に造形空間111を有する。造形空間111には、造形材料が積層されるステージ220が配置されている。筐体110には、例えば、造形空間111と外部とを連通させる開口部や、開口部を開閉する扉等が設けられていてもよい。ユーザーは、扉を開いて開口部を開状態とすることで、ステージ220で造形された造形物を開口部から取り出すことができる。
【0012】
駆動部210は、射出部100とステージ220との相対的な位置を変更する。本実施形態では、駆動部210は、ステージ220をZ方向に沿って移動させる第1駆動部211と、射出部100をX方向およびY方向に沿って移動させる第2駆動部212とを有する。第1駆動部211は、昇降装置として構成されており、ステージ220をZ方向に移動させるためのモーターを備える。第2駆動部212は、水平搬送装置として構成されており、射出部100を、X方向に沿ってスライド移動させるためのモーターと、Y方向に沿ってスライド移動させるためのモーターとを備える。各モーターは、制御部300の制御下にて駆動される。なお、他の実施形態では、駆動部210は、ステージ220または射出部100をX,Y,Zの3方向に移動させる構成であってもよいし、ステージ220をX方向およびY方向に沿って移動させて、射出部100をZ方向に移動させる構成であってもよい。
【0013】
クリーニング機構250は、ノズル60を清掃するためのブラシ251及びブレード252を有する。クリーニング機構250は、水平方向において、ステージ220とは異なる領域に配置されている。クリーニング機構250は、鉛直方向において、ブラシ251及びブレード252がノズル60と接触可能な高さに配置されている。本実施形態では、クリーニング機構250は、筐体110に設けられた高さ調整装置280に接続されている。高さ調整装置280は、制御部300による制御下において、Z方向に沿ってクリーニング機構250を移動させるためのモーターを備える。クリーニング機構250の下方には、パージ廃材容器260が備えられている。パージ廃材容器260には、クリーニング機構250によって除去された樹脂ゴミが落下し、収集される。なお、ブレード252は、フリッカー板とも呼ばれる。クリーニング機構250は、チップワイプアセンブリーとも呼ばれる。なお、高さ調整装置280は、クリーニング機構250のブラシ251及びブレード252の各々に接続されていて、ブラシ251及びブレード252の各々の高さを個別に調整可能な構成としてもよい。
【0014】
制御部300は、1以上のプロセッサーと、メモリーと、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成されている。本実施形態では、制御部300は、メモリーに読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、三次元造形物を造形するための造形用データに基づき、射出部100および駆動部210を制御して後述する三次元造形処理、および、ノズルを清掃するクリーニング処理を実行可能である。なお、制御部300は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0015】
制御部300には、表示装置400が接続されている。表示装置400は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイによって構成される。本実施形態では、表示装置400は、筐体110に設けられているが、表示装置400は、筐体110から分離して配置されてもよい。
【0016】
図2は、本実施形態の射出部100の概略構成を示す図である。射出部100は、可塑化機構30と、ノズル60とを備えている。可塑化機構30は、材料搬送機構40と、加熱ブロック90とを有している。射出部100には、材料収容部20に収容されている材料が供給される。射出部100は、制御部300の制御下で、材料収容部20から供給された材料の少なくとも一部を可塑化機構30によって可塑化して造形材料を生成し、生成した造形材料をノズル60からステージ220上に射出して積層させる。なお、ステージ220に積層された材料のことを、積層材料と呼ぶこともある。また、材料をノズルから射出し、射出した材料を積層させることによって三次元造形物を造形する三次元造形の方式を、材料押出法(ME:Material Extrusion)と呼ぶこともある。
【0017】
本実施形態において、「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。「溶融」とは、熱可塑性を有する材料が融点以上の温度に加熱されて液状になることのみならず、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現することをも意味する。
【0018】
本実施形態の材料収容部20には、ペレットや粉末等の状態の材料が収容されている。本実施形態において、材料収容部20に収容されている材料は、ペレット状の樹脂である。本実施形態の材料収容部20は、ホッパーによって構成されている。材料収容部20に収容された材料は、材料収容部20と射出部100とを接続するように材料収容部20の下方に設けられた供給路22を介して、可塑化機構30の材料搬送機構40に供給される。
【0019】
加熱ブロック90は、ヒーター58を有している。ヒーター58は、制御部300により制御され、材料を可塑化するための可塑化温度まで加熱される。可塑化温度は、使用する材料の種類に応じて異なり、例えば、その材料のガラス転移点または融点である。材料がABS樹脂であれば、可塑化温度は、例えば、ABS樹脂のガラス転移点である約110℃に設定される。加熱ブロック90には、貫通孔80が設けられている。貫通孔80は、ノズル60を着脱可能に構成されている。材料搬送機構40は、加熱ブロック90の貫通孔80に取り付けられたノズル60のノズル流路61に向けて、造形材料を搬送する。可塑化機構30は、材料収容部20から材料搬送機構40に供給された材料を、材料搬送機構40によってノズル60のノズル流路61に向かって搬送しつつ、加熱ブロック90の熱によって加熱しながら可塑化する。
【0020】
本実施形態の材料搬送機構40は、スクリューケース31と、スクリューケース31内に収容されたスクリュー41と、スクリュー41を駆動させる駆動モーター32とを備えている。本実施形態の加熱ブロック90は、開口部94を有するケース部91と、ケース部91内に配置されたバレル50とを備えている。バレル50には連通孔56が設けられている。本実施形態の貫通孔80は、開口部94と連通孔56とが連通することによって形成されている。また、上述したヒーター58は、バレル50に内蔵されている。なお、本実施形態のスクリュー41は、いわゆるフラットスクリューであり、「スクロール」と呼ばれることもある。
【0021】
スクリュー41は、その中心軸RXに沿った方向の高さが直径よりも小さい略円柱形状を有している。スクリュー41は、バレル50に対向する面に、スクリュー溝45が形成された溝形成面42を有している。溝形成面42は、後述するバレル50のスクリュー対向面52と対向する。なお、本実施形態の中心軸RXは、スクリュー41の回転軸と一致する。スクリュー41の溝形成面42側の構成の詳細については後述する。
【0022】
駆動モーター32は、スクリュー41の溝形成面42とは反対側の面に接続されている。駆動モーター32は、制御部300の制御下で駆動される。スクリュー41は、駆動モーター32の回転で生じるトルクによって、中心軸RXを中心に回転する。なお、駆動モーター32は、直接、スクリュー41と接続されていなくてもよく、例えば、減速機を介して接続されていてもよい。
【0023】
バレル50は、スクリュー41の溝形成面42に対向するスクリュー対向面52を有している。ケース部91は、バレル50のスクリュー対向面52と反対側の面、すなわち、バレル50の下面を覆うように配置されている。上述した連通孔56および開口部94は、スクリュー41の中心軸RXと重なる位置に設けられている。すなわち、貫通孔80は、中心軸RXと重なる位置に位置している。
【0024】
ノズル60は、上述したように、加熱ブロック90の貫通孔80に着脱可能に取り付けられる。ノズル60は、ノズルチップとも呼ばれる。ノズル60には、上述したノズル流路61が設けられている。ノズル流路61は、ノズル60の先端にノズル開口63を有し、ノズル60の後端に流入口65を有している。ノズル開口63は、流入口65の-Z方向の位置に位置している。本実施形態のノズル60は、貫通孔80と流入口65とを介してノズル流路61に流入した材料を、ノズル開口63から、ステージ220に向けて吐出する。ノズル60は、ノズル60の先端よりも上方に、シールド68を有する。より具体的には、シールド68は、ノズル60の外周において、ノズル開口63と加熱ブロック90との間に配置されている。シールド68は、水平方向に沿った円盤状の形状を有している。シールド68は、加熱ブロック90の熱が積層材料へ伝熱することを抑制する。
【0025】
図3は、スクリュー41の溝形成面42側の構成を示す概略斜視図である。図3には、スクリュー41の中心軸RXの位置が一点鎖線で示されている。上述したように、溝形成面42には、スクリュー溝45が設けられている。スクリュー41の溝形成面42の中央部であるスクリュー中央部47は、スクリュー溝45の一端が接続されている窪みとして構成されている。スクリュー中央部47は、バレル50の連通孔56に対向する。スクリュー中央部47は、中心軸RXと交差する。
【0026】
スクリュー41のスクリュー溝45は、いわゆるスクロール溝を構成する。スクリュー溝45は、スクリュー中央部47から、スクリュー41の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。スクリュー溝45は、インボリュート曲線状や、螺旋状に延びるように構成されてもよい。溝形成面42には、スクリュー溝45の側壁部を構成し、各スクリュー溝45に沿って延びている凸条部46が設けられている。スクリュー溝45は、スクリュー41の側面43に形成された材料導入口44まで連続している。材料導入口44は、材料収容部20の供給路22を介して供給された材料を受け入れる部分である。
【0027】
図3には、3つのスクリュー溝45と、3つの凸条部46と、を有するスクリュー41の例が示されている。スクリュー41に設けられるスクリュー溝45や凸条部46の数は、3つには限定されず、1つのスクリュー溝45のみが設けられていてもよいし、2以上の複数のスクリュー溝45が設けられていてもよい。また、図3には、材料導入口44が3箇所に形成されているスクリュー41の例が図示されている。スクリュー41に設けられる材料導入口44の数は、3箇所に限定されず、1箇所にのみ設けられていてもよいし、2箇所以上の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0028】
図4は、バレル50のスクリュー対向面52側の構成を示す上面図である。上述したとおり、スクリュー対向面52の中央には、連通孔56が形成されている。スクリュー対向面52における連通孔56の周りには、複数の案内溝54が形成されている。それぞれの案内溝54は、一端が連通孔56に接続され、連通孔56からスクリュー対向面52の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝54は、造形材料を連通孔56に導く機能を有している。なお、案内溝54の一端は連通孔56に接続されていなくてもよい。また、バレル50には案内溝54が形成されていなくてもよい。
【0029】
図5は、クリーニング機構250の概略構成を示す説明図である。クリーニング機構250は、上述のとおり、ブラシ251及びブレード252を有する。ブラシ251は、複数の毛束がY方向に沿って並ぶことにより構成されている。ブレード252は、Z方向およびY方向に沿う平板状の部材である。ブラシ251の先端及びブレード252の先端は、+Z方向を向いている。ブレード252の先端は、ブラシ251の先端よりも下方に配置されている。上述したように、ブラシ251及びブレード252はノズル60と接触可能な高さに配置されている。また、ブラシ251の先端は、ノズル60に設けられたシールド68に接触可能な高さに配置され、ブレード252の先端は、シールド68に接触しない高さに配置されている。本実施形態では、ブラシ251とブレード252とが、固定具258によって一体化されており、消耗時に同時に交換することが可能である。なお、ブラシ251とブレード252とは、個別に交換可能であってもよい。
【0030】
ブラシ251およびブレード252は、射出部100において可塑化する可塑化材料の可塑化温度よりも高い融点を有している。また、ブラシ251およびブレード252は、ノズル60の硬度よりも低い硬度を有している。本実施形態において、硬度とは、ビッカース硬さのことをいう。更に、本実施形態では、ブレード252の弾性率は、ブラシ251の弾性率よりも高くなっている。本実施形態において、弾性率とは、ヤング率のことをいう。ノズル60は、例えば、超硬合金や工具鋼、SUSなどの金属によって形成され、ブラシ251およびブレード252は、例えば、SUSや鉄、真鍮などの金属によって形成される。なお、ブラシ251およびブレード252は、それぞれ、樹脂によって形成されてもよい。また、ブラシ251は、天然繊維や化学繊維によって形成されてもよく、ブレード252はセラミックによって形成されてもよい。なお、他の実施形態では、ブレード252とブラシ251の弾性率は、同じであってもよいし、ブラシ251の弾性率の方が、ブレード252の弾性率よりも高くてもよい。
【0031】
クリーニング機構250は、更に、パージ部253を備えている。パージ部253は、パージレッジとも呼ばれる。本実施形態では、パージ部253とブレード252とブラシ251とが、この順で+X方向に沿って並んでいる。つまり、ブレード252が、パージ部253とブラシ251との間に配置されている。パージ部253の+Z方向の先端は、ブレード252の先端よりも低い。パージ部253上には、後述するクリーニング処理において、ノズル60から射出された廃材料が落下してパージ部253上で球状にまとめられ、パージ廃材容器260に落下する。パージ部253の上面は、廃材料の落下を促進するために、傾斜面として構成されている。より具体的には、パージ部253は、ブレード252から遠い順、かつ、鉛直方向における位置が低い順に、第1傾斜面254と第2傾斜面255と第3傾斜面256とを有する。第1傾斜面254、第2傾斜面255、および、第3傾斜面256は、それぞれ、それらの-X方向の端部の位置よりも+X方向の端部の位置が高くなるように傾斜している。本実施形態では、第2傾斜面255および第3傾斜面256の水平面からの傾斜角度は、第1傾斜面254の水平面からの傾斜角度よりも大きい。
【0032】
図6は、三次元造形物の製造方法を表す三次元造形処理のフローチャートである。この三次元造形処理は、三次元造形装置10の制御部300が、ユーザーから所定の操作を受け付けた場合に実行される。
【0033】
ステップS100において、制御部300は、外部のコンピューターや記録媒体などから造形データを取得する。造形データには、三次元造形物を形成する層毎に、ノズル60の移動経路を表す造形パスデータが含まれている。造形パスデータには、ノズル60から射出する材料の射出量を表す射出量データが関連付けられている。
【0034】
ステップS110において、制御部300は、クリーニング処理を実行する。クリーニング処理とは、ノズル60を清掃するための処理である。クリーニング処理が実行されるステップS110、および、後述するステップS140,S160のことを、クリーニング工程ともいう。
【0035】
図7は、クリーニング処理のフローチャートである。クリーニング処理が実行されると、ステップS300において、制御部300は、駆動部210を制御して、ノズル60をパージ部253上に移動させた後、可塑化機構30を制御して、パージ部253に向けてノズル60から所定量の材料を射出させる。パージ部253に向けて射出される材料のことを、廃材料ともいう。パージ部253に射出された廃材料は、パージ部253上の傾斜面に沿ってパージ廃材容器260に落下する。射出する材料の量は、例えば、ノズル流路61の容積に相当する量である。
【0036】
パージ部253上で廃材料を射出した後、制御部300は、ノズル60をブラシ251及びブレード252に向かって移動させ、ステップS310において、クリーニング動作を実行する。クリーニング動作とは、ノズル60がクリーニング機構250を複数回に亘って横切るようにノズル60を往復移動させることで、ブラシ及びブレード252の少なくとも一方とノズル60とを接触させる動作である。
【0037】
図8は、本実施形態におけるクリーニング動作の説明図である。図8には、ノズル60の先端と、クリーニング機構250のブラシ251およびブレード252とを、上方から見た様子を示しており、ノズル60が移動する経路を破線の矢印で示している。図8に示すように、クリーニング機構250は、長手方向を有しており、本実施形態では、長手方向はY方向である。本実施形態において、制御部300は、クリーニング動作において、ノズル60の先端をブレード252に接触させた後、ノズル60の先端を、ブラシ251に接触させる。そして、その後、制御部300は、ブラシ251およびブレード252を複数回横切るようにノズル60を往復移動させる。具体的には、本実施形態では、制御部300は、ノズル60を、クリーニング機構250の長手方向に沿って、M字あるいはW字状の経路、換言すれば、三角波の形状を示す経路に従って往復移動させる。こうすることにより、制御部300は、クリーニング動作において、ノズル60がブラシ251又はブレード252の異なる位置で接触するように、ノズル60を往復移動させることができる。なお、制御部300は、往復移動における全ての移動時に、クリーニング機構250上の異なる位置を横切るようにノズルを移動させてもよいし、往復移動における一部の移動時にクリーニング機構250上の同じ位置を横切るように、ノズル60を移動させてもよい。
【0038】
説明を図7に戻す。制御部300は、クリーニング動作を完了させると、ステップS320において、クリーニング処理の実行回数をカウントする。クリーニング処理の実行回数のことを、以下では、クリーニング回数ともいう。カウントしたクリーニング回数は、制御部300に備えられたメモリーに不揮発的に記憶させる。本実施形態において、制御部300は、上述したステップS310の処理を1回、実行する毎に、クリーニング回数を、1回、加算する。クリーニング回数は、クリーニング機構250が交換されるまで、加算され続け、クリーニング機構250が交換された場合に、リセットされる。制御部300は、クリーニング機構250が交換されたことをセンサー等によって検知してもよいし、ユーザーからの所定の操作を受け付けることによって検知してもよい。
【0039】
説明を図6に戻す。以上のようにしてクリーニング処理が実行されると、続いて、制御部300は、ステップS120において、積層処理の実行を開始する。この積層処理は、造形データに従って駆動部210および射出部100を制御して層毎にステージ220上に射出部100から造形材料を射出させることによって、複数の層からなる三次元造形物を造形する処理である。ステップS120から後述するステップS150までの処理のことを、造形工程ともいう。
【0040】
積層処理の実行中、ステップS130において、制御部300は、クリーニング処理を実行するか否かを判断する。例えば、制御部300は、可塑化機構30において造形材料の射出異常が検出された場合や、予め定められた数の層が形成された場合、造形材料の種類が変更された場合などに、クリーニング処理を実行すると判断する。クリーニング処理を実行すると判断した場合、制御部300は、ステップS140において、図7および図8を用いて説明したクリーニング処理と同じクリーニング処理を実行する。クリーニング処理を実行しないと判断した場合、制御部300は、ステップS140におけるクリーニング処理をスキップする。
【0041】
ステップS150において、制御部300は、積層処理が完了したか否か、すなわち、三次元造形物の造形が完了したか否かを判断する。積層処理が完了していなければ、制御部300は、処理をステップS120に戻して、引き続き、積層処理を続行する。積層処理が完了して入れば、制御部300は、ステップS160において、図7および図8を用いて説明したクリーニング処理と同じクリーニング処理を実行する。
【0042】
ステップS160におけるクリーニング処理が完了した後、制御部300は、ステップS170において、クリーニング機構250の摩耗状態を確認する。本実施形態では、制御部300は、図7に示したステップS320においてカウントされたクリーニング回数を、自身のメモリーから取得することによって、クリーニング機構250の摩耗状態を特定する。本実施形態では、クリーニング回数が、クリーニング機構250の摩耗状態を表す。より具体的には、クリーニング回数が多いほど、クリーニング機構250の摩耗量が多いことを表す。なお、他の実施形態では、クリーニング処理1回あたりの摩耗量を予め求めておき、制御部300は、その値とクリーニング回数とに基づいて、摩耗量を算出してもよい。
【0043】
ステップS180において、制御部300は、クリーニング機構250の摩耗状態に基づいて、摩耗量が規定以上であるか否かを判断する。例えば、制御部300は、クリーニング回数が、予め定められた閾値を超えた場合に、摩耗量が規定以上であると判断する。摩耗量が規定以上であると判断した場合、制御部300は、ステップS190において、クリーニング機構250の交換を提案する。具体的には、例えば、制御部300は、表示装置400を制御して、クリーニング機構250の交換を促す情報を報知することにより、クリーニング機構250の交換を提案する。制御部300は、クリーニング機構250の交換の報知を、報知部としての音声出力装置を用いて音声を出力することによって行ってもよいし、報知部としてのLEDなどの光源を点灯させることによって行ってもよい。
【0044】
ステップS180において、クリーニング機構250の摩耗量が規定以上ではないと判断した場合、制御部300は、ステップS200において、クリーニング機構250の高さ調整を行う。具体的には、制御部300は、クリーニング回数が多いほど、クリーニング機構250の高さが高くなるように、高さ調整装置280を制御し、クリーニング機構250とノズル60の間隔を調整する。本実施形態では、制御部300は、この高さ調整において、ブラシ251及びブレード252がノズル60と接触可能な高さとなり、クリーニング処理の最中に、ブレード252の先端がシールド68に接触せず、ブラシ251の先端がシールド68に接触可能となるように、クリーニング機構250とノズル60の間隔を調整する。なお、クリーニング機構250の高さ調整処理は、次回の三次元造形処理の実行が開始されたタイミングで実行されてもよい。以上で説明した一連の処理が完了すると、三次元造形処理は終了する。
【0045】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置10によれば、ノズル60がクリーニング機構250を複数回に亘って横切るようにノズル60を往復移動させることで、ブラシ251およびブレード252の少なくとも一方とノズル60とを接触させるクリーニング動作が実行され、クリーニング動作では、ノズル60がブラシ251またはブレード252の異なる位置で接触するように、ノズル60が往復移動する。そのため、ノズル60がクリーニング機構250の特定の場所を集中的に横切って接触することが抑制され、これにより、クリーニング機構250が早期に摩耗することを抑制できる。この結果、クリーニング機構250の交換の頻度を低減させることができる。
【0046】
また、本実施形態では、クリーニング機構250に備えられたブレード252の弾性率が、ブラシ251の弾性率よりも高い。そのため、ブレード252によってノズル60に付着した材料を除去しやすい。
【0047】
また、本実施形態では、制御部300は、クリーニング動作において、ノズル60を、クリーニング機構250の長手法置くに沿って、三角波の形状を示す経路に従って移動させる。そのため、効率的にノズル60をクリーニング機構250上の異なる位置を横切らせることができる。
【0048】
また、本実施形態では、クリーニング機構250において、ブレード252の先端がブラシ251の先端よりも下方に配置されているので、ブレード252によってノズル60の先端に付着した材料を効率的に除去できる。
【0049】
また、本実施形態では、ブラシ251の先端がシールド68に接触可能な高さに配置され、ブレード252の先端がシールド68に接触しない高さに配置されているので、ブラシ251によって、シールド68に付着した材料を除去することができる。
【0050】
また、本実施形態では、制御部300は、クリーニング動作において、ノズル60の先端をブレード252に接触させてノズル60の先端に付着した造形材料を除去した後に、ノズル60の先端をブラシ251に接触させるので、効率的にノズル60を清掃できる。
【0051】
また、本実施形態では、制御部300は、クリーニング処理において、パージ部253上でノズル60から廃材料を射出させた後、ノズル60をブラシ251およびブレード252に向かって移動させるので、ノズル流路61に残存した造形材料を除去した上で、ノズル60を清掃できる。
【0052】
また、本実施形態では、制御部300は、クリーニング処理の実行回数に基づいて、クリーニング機構250の摩耗状態を特定するので、簡易な処理によって摩耗状態を把握することができる。
【0053】
また、本実施形態では、制御部300は、クリーニング機構250の摩耗状態に応じて、クリーニング機構250の交換を提案するので、利便性を高めることができる。
【0054】
また、本実施形態では、制御部300は、クリーニング機構250の摩耗状態に応じて、クリーニング機構250とノズル60との間隔を調整するので、ノズル60の清掃をより確実に行うことができる。
【0055】
また、本実施形態では、造形前、造形中、造形後の3段階において、クリーニング処理を実行するので、ノズル60に材料が付着したまま三次元造形物の造形が行われることを抑制できる。この結果、ノズル60から造形中の三次元造形物に樹脂ゴミが落下することを抑制できるので、三次元造形物の造形精度を高めることができる。なお、他の実施形態では、クリーニング処理は、造形前、造形中、造形後の3つタイミングのうち、いずれか1または2のタイミングで実行されてもよい。また、制御部300は、これらのタイミングにかかわらず、ユーザーからの所定の操作を受け付けた場合に、クリーニング処理を実行するものとしてもよい。
【0056】
図9~12は、クリーニング動作の他の例の説明図である。図9には、ノズル60を、クリーニング機構250の長手方向に沿って、矩形波の形状を示す経路に従って移動させている例を示している。図10には、ノズル60を、クリーニング機構250の長手方向に沿って、正弦波の形状を示す経路に従って移動させている例を示している。図11には、ノズル60を、クリーニング機構250の長手方向に沿って、のこぎり波の形状を示す経路に従って移動させている例を示している。これらの図に示すように、制御部300は、クリーニング動作において、ノズル60を様々な経路で往復移動させることが可能である。また、図12に示すように、制御部300は、クリーニング動作において、ノズル60がブラシ251を横切る回数を、ブレード252を横切る回数よりも多くしてもよい。こうすることにより、ブレード252の摩耗を抑制できる。
【0057】
B.第2実施形態:
図13は、第2実施形態における三次元造形装置11の概略構成を示す図である。本実施形態では、三次元造形装置11は、2つの射出部と、2つのクリーニング機構とを備えている。具体的には、本実施形態における射出部は、第1造形材料を射出する第1ノズル71が備えられた第1射出部101と、第2造形材料を射出する第2ノズル72が備えられた第2射出部102とを含む。第1造形材料および第2造形材料は、例えば、造形用の材料とサポート用の材料の組み合わせとすることができ、その他にも、例えば、異なる色や異なる材質の材料の組み合わせとすることができる。第1射出部101および第2射出部102の構成は、第1実施形態における射出部100の構成と同じである。
【0058】
本実施形態におけるクリーニング機構は、第1ノズル71を清掃するためのブラシおよびブレードを備える第1クリーニング機構261と、第2ノズル72を清掃するためのブラシおよびブレードを備える第2クリーニング機構262とを有している。第1クリーニング機構261および第2クリーニング機構262の構成は、第1実施形態におけるクリーニング機構250の構成と同じである。なお、本実施形態において、2つのクリーニング機構261,262は、X方向に所定の間隔を空けて配置され、それぞれのクリーニング機構261,262に備えられたパージ部とブレードとブラシとが、この順で+Y方向に向けて並んでいるものとする。
【0059】
本実施形態では、制御部300は、2つの射出部101,102および2つのクリーニング機構261,262を用いて、図6に示した三次元造形処理を実行する。本実施形態における三次元造形処理では、2つの射出部101,102が使い分けられて、積層処理が実行される。そして、図7に示したクリーニング処理では、制御部300は、第1射出部101に備えられた第1ノズル71と、第2射出部102に備えられた第2ノズル72とに対して、それぞれ、図8に示すようなクリーニング動作を行わせることによって、第1ノズル71と第2ノズル72とを、第1クリーニング機構261と第2クリーニング機構262とを用いて同時に清掃する。
【0060】
以上で説明した第2実施形態によれば、2つの射出部101,102に備えられた2つのノズル71,72を同時に清掃できるので、クリーニング処理に要する時間を短縮できる。この結果、三次元造形処理を効率的に実行することができる。なお、本実施形態では、三次元造形装置11に、射出部とクリーニング機構とが2つずつ備えられた例を示したが、射出部とクリーニング機構とは、3つずつ以上、備えられてもよい。
【0061】
C.第3実施形態:
図14は、第3実施形態における三次元造形装置12の概略構成を示す図である。第3実施形態の三次元造形装置12は、主に射出部の構成が第1実施形態と異なり、他の構成および三次元造形処理の処理内容は第1実施形態と同じである。そのため、以下では、主に射出部の構成について説明する。
【0062】
本実施形態の三次元造形装置12は、射出部103と、材料収容部23と、筐体110と、駆動部210と、ステージ220と、制御部300とを備える。三次元造形装置12は、ブロアー16を更に備える。ブロアー16は、マニホールド17を介して射出部103に向けて送風を行う送風機として構成されている。本実施形態では、筐体110内の造形空間111には、マニホールド17の一部と、射出部103と、駆動部210と、ステージ220とが収容されている。
【0063】
本実施形態の材料収容部23は、フィラメント状の材料を収容するホルダーとして構成されている。材料収容部23は、内部に収容された材料を、材料収容部23の外部へと巻き出し可能に構成されている。
【0064】
図15は、本実施形態の射出部103の概略構成を示す図である。射出部103は、ヒーターを有し、貫通孔180が設けられた可塑化機構としての加熱ブロック190と、貫通孔80に着脱可能に取り付けられるノズル73と、加熱ブロック190に取り付けられたノズル73のノズル流路74に向けて材料MFを搬送する材料搬送機構140とを備えている。また、射出部103は、Z方向において、材料搬送機構140と加熱ブロック190との間に配置され、加熱ブロック190から材料搬送機構140への伝熱を抑制するシールド92を更に備えている。本実施形態の材料搬送機構140は、第1実施形態と異なり、スクリューケース31やスクリュー41を備えることなく、2つのホイール49によって構成されている。加熱ブロック190は、第1実施形態と異なり、バレル50やケース部91を備えていない。
【0065】
本実施形態のノズル73は、-Z方向から、貫通孔180と、シールド92に設けられたシールド開口93とに挿通されることによって、加熱ブロック190に取り付けられる。すなわち、本実施形態では、ノズル73のZ方向に沿った寸法、および、ノズル流路74のZ方向に沿った寸法は、貫通孔180のZ方向に沿った寸法よりも長い。従って、本実施形態では、ノズル73の後端に設けられた流入口165は、加熱ブロック190の+Z方向、より具体的には、シールド92の+Z方向側に位置している。
【0066】
材料搬送機構140を構成する2つのホイール49は、その回転によって、材料収容部23内の材料MFを外部へと引き出して2つのホイール49の間へ導くとともに、加熱ブロック190の貫通孔180に取り付けられたノズル73のノズル流路74に向けて搬送する。加熱ブロック190は、加熱ブロック190に内蔵された図示しないヒーターの熱によって、ノズル73のノズル流路74内へと搬送された材料MFを可塑化する。
【0067】
本実施形態の材料MFは、ノズル73の流入口165付近において、上述したブロアー16からマニホールド17を介して送られる空気によって冷却される。これによって、材料MFの流入口165付近における可塑化が抑制され、材料MFが流入口165内へと効率的に搬送される。なお、マニホールド17の出口端18は、シールド92の+Z方向側に位置している。これによって、マニホールド17から送出される空気が、シールド92によって流入口165付近へと導かれやすくなるため、流入口165付近の材料MFが効率的に冷却される。
【0068】
なお、本実施形態におけるクリーニング機構250の構成は第1実施形態と同じであるが、クリーニング処理の最中にブラシ251の先端はシールド92に接触しない。本実施形態では、シールド92は、加熱ブロック190よりも上方に位置しているためである。
【0069】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置12においても、クリーニング機構250を用いて、ノズル73の清掃を行うことが可能である。
【0070】
D.他の実施形態:
(D1)上記実施形態では、クリーニング機構250は、パージ部253を備えている。これに対して、クリーニング機構250は、パージ部253を備えていなくてもよい。
【0071】
(D2)上記実施形態では、ノズル60,73は、シールド68,92を備えている。これに対して、ノズル60,73は、シールド68,92を備えていなくてもよい。
【0072】
(D3)上記実施形態において、制御部300は、ブレード252とブラシ251の摩耗状態を別々に確認し、個別に交換を提案してもよい。より具体的には、制御部300は、ノズル60がブレード252とブラシ251を通過した回数を、別々にカウントし、それぞれのクリーニング回数をメモリーに記憶させる。そして、制御部300は、ブレード252とブラシ251に対してそれぞれ設定された閾値と、それぞれのクリーニング回数とを比較する。こうすることにより、制御部300は、ブレード252とブラシ251とについて、別々に交換を提案することができる。
【0073】
(D4)上記実施形態において、クリーニング回数のカウントや摩耗量の検知、クリーニング機構の交換の提案は実行しなくてもよい。つまり、図6における、ステップS170~S190の処理は省略してもよい。
【0074】
(D5)上記実施形態では、高さ調整装置280を用いて、ノズル60とクリーニング機構250の間隔を調整している。これに対して、例えば、駆動部210が、射出部100をZ方向に沿って移動させることが可能であれば、制御部300は、射出部100の高さを調整することによって、クリーニング処理時におけるノズル60とクリーニング機構250の間隔を調整してもよい。
【0075】
(D6)上記実施形態において、高さ調整装置280によるクリーニング機構250の高さ調整は省略してもよい。つまり、図6における、ステップS200の処理は省略してもよい。この場合、クリーニング機構250は、高さ調整装置280ではなく、筐体110に直接固定されていてもよい。
【0076】
(D7)上記実施形態では、クリーニング機構250の摩耗状態を、クリーニング回数に基づいて判断している。これに対して、例えば、ブレード252やブラシ251の高さを検出可能な測距センサーを筐体110に設け、そのセンサーによるブレード252やブラシ251の高さの測定結果に基づいて、クリーニング機構の摩耗状態を判断してもよい。この場合、ブレード252やブラシ251の高さが低いほど、摩耗量が多いことを表す。
【0077】
(D8)上記実施形態では、クリーニング機構250は、高さ調整装置280を介して筐体110に固定されている。これに対して、クリーニング機構250は、ステージ220に固定されていてもよい。クリーニング機構250がステージ220に固定されていれば、制御部300は、第2駆動部212を用いて、クリーニング処理時におけるクリーニング機構250とノズル60の間隔を調整することができる。
【0078】
(D9)上記実施形態では、クリーニング機構250は、水平方向において、ステージ220とは異なる領域に配置されている。これに対して、クリーニング機構250は、水平方向において、ステージ220と重なる領域であって、三次元造形物が造形されるステージ220の造形領域と異なる領域に配置されていてもよい。これにより、コンパクトな三次元造形装置とすることができる。
【0079】
E.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0080】
(1)本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、可塑化材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化機構、及び、ノズルを有し、前記造形材料を前記ノズルから射出する射出部と、前記造形材料が積層されるステージと、前記射出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する駆動部と、ブラシ、及び、ブレードを有するクリーニング機構と、前記ノズルを清掃するクリーニング処理を実行可能な制御部と、を備え、前記ブラシ及び前記ブレードは、前記ノズルと接触可能な高さに配置されており、前記ブラシ及び前記ブレードは、前記可塑化材料の可塑化温度よりも高い融点を有し、かつ、前記ノズルの硬度よりも低い硬度を有し、前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記ノズルが前記クリーニング機構を複数回に亘って横切るように前記ノズルを往復移動させることで、前記ブラシ及び前記ブレードの少なくとも一方と前記ノズルとを接触させるクリーニング動作を実行し、前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記ノズルが前記ブラシ又は前記ブレードの異なる位置で接触するように、前記ノズルを前記往復移動させる。
このような形態であれば、ノズルがクリーニング機構を複数回に亘って横切るようにノズルを往復移動させることで、ブラシ及び前記ブレードの少なくとも一方とノズルとを接触させるクリーニング動作が実行され、クリーニング動作では、ノズルがブラシ又はブレードの異なる位置で接触するように、ノズルが往復移動される。そのため、ノズルがクリーニング機構の特定の場所を集中的に横切ることが抑制され、これにより、クリーニング機構が早期に摩耗することを抑制できる。この結果、クリーニング機構の交換の頻度を低減させることができる。
【0081】
(2)上記形態において、前記ブレードの弾性率は、前記ブラシの弾性率よりも高くてもよい。このような形態であれば、ノズルに付着した材料を除去しやすい。
【0082】
(3)上記形態において、前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記ノズルを、前記クリーニング機構の長手方向に沿って、三角波、矩形波、正弦波、または、のこぎり波、の形状を示す経路に従って前記往復移動させてもよい。このような形態であれば、効率的にノズルをクリーニング機構上の異なる位置を横切らせることができる。
【0083】
(4)上記形態において、前記ブレードの先端が、前記ブラシの先端よりも下方に配置されてもよい。このような形態であれば、ブレードによってノズルの先端に付着した材料を効率的に除去できる。
【0084】
(5)上記形態において、前記ノズルは、前記ノズルの先端よりも上方にシールドを有し、
前記ブラシの先端が、前記シールドに接触可能な高さに配置され、前記ブレードの先端が、前記シールドに接触しない高さに配置されてもよい。このような形態であれば、シールドに付着した材料を除去することができる。
【0085】
(6)上記形態において、前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記ノズルの先端を前記ブレードに接触させた後、前記ノズルの先端を前記ブラシに接触させてもよい。このような形態であれば、ブレードによってノズルの先端に付着した材料を除去したのちに、ブラシによってノズル全体の清掃を行うことができる。そのため、効率的にノズルを清掃できる。
【0086】
(7)上記形態において、前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記ノズルが前記ブラシを横切る回数を、前記ノズルが前記ブレードを横切る回数よりも多くしてもよい。このような形態であればブレードの摩耗を抑制できる。
【0087】
(8)上記形態において、前記クリーニング機構は、パージ部を有し、前記パージ部と前記ブラシとの間に前記ブレードが配置され、前記パージ部は、前記ブレードから遠い順、かつ、鉛直方向における位置が低い順に、第1傾斜面と第2傾斜面と第3傾斜面とを有し、第2傾斜面および第3傾斜面の水平面からの傾斜角度は、前記第1傾斜面の水平面からの傾斜角度よりも大きくてもよい。
【0088】
(9)上記形態において、前記クリーニング処理において、前記パージ部上で前記ノズルから前記造形材料を射出させた後、前記ノズルを前記ブラシ及び前記ブレードに向かって移動させてもよい。このような形態であれば、ノズル内に残存した材料を除去した上で、ノズルを清掃できる。
【0089】
(10)上記形態において、前記射出部は、第1造形材料を射出する第1ノズルが備えられた第1射出部と、第2造形材料を射出する第2ノズルが備えられた第2射出部とを有し、前記クリーニング機構は、前記第1ノズルを清掃するためのブラシおよびブレードを有する第1クリーニング機構と、前記第2ノズルを清掃するためのブラシおよびブレードを有する第2クリーニング機構とを有し、前記制御部は、前記第1クリーニング機構と前記第2クリーニング機構とを用いて、前記第1ノズルと前記第2ノズルとに対して、同時に前記クリーニング処理を実行してもよい。このような形態であれば、2つの射出部に備えられたノズルを同時に清掃できるので、クリーニング処理に要する時間を短縮できる。
【0090】
(11)上記形態において、前記制御部は、前記クリーニング処理の実行回数に基づいて、前記クリーニング機構の摩耗状態を特定してもよい。このような形態であれば、簡易な処理によって摩耗状態を把握できる。
【0091】
(12)上記形態において、報知部を備え、前記制御部は、前記摩耗状態に応じて、前記報知部を制御して、前記クリーニング機構の交換を促す情報を報知してもよい。このような形態であれば、三次元造形装置の利便性を高めることができる。
【0092】
(13)上記形態において、前記制御部は、前記摩耗状態に応じて、前記クリーニング機構と前記ノズルとの間隔を調整してもよい。このような形態であれば、ノズルの清掃をより確実に行うことができる。
【0093】
(14)本開示の第2の形態によれば、可塑化材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化機構、及び、ノズルを備え、前記造形材料を前記ノズルから射出する射出部と、前記造形材料が積層されるステージと、前記射出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する駆動部と、ブラシ、及び、ブレードを有するクリーニング機構と、を備え、前記ブラシ及び前記ブレードは、前記ノズルと接触可能な高さに配置されており、前記ブラシ及び前記ブレードは、前記可塑化材料の可塑化温度よりも高い融点を有し、かつ、前記ノズルの硬度よりも低い硬度を有する、三次元造形装置における三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、前記射出部から前記造形材料を前記ステージに射出させて三次元造形物を造形する造形工程と、前記造形工程の前、前記造形工程の最中、前記造形工程の後、の少なくともいずれか1つのタイミングにおいて、前記ノズルが前記クリーニング機構を複数回に亘って横切るように前記ノズルを往復移動させることで、前記ブラシ及び前記ブレードの少なくとも一方と前記ノズルとを接触させるクリーニング動作を実行するクリーニング工程と、を備え、前記クリーニング工程では、前記クリーニング動作において、前記ノズルが前記ブラシ又は前記ブレードの異なる位置で接触するように、前記ノズルを前記往復移動させる。
【符号の説明】
【0094】
10,11,12…三次元造形装置、16…ブロアー、17…マニホールド、18…出口端、20…材料収容部、22…供給路、23…材料収容部、30…可塑化機構、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…材料搬送機構、41…スクリュー、42…溝形成面、43…側面、44…材料導入口、45…スクリュー溝、46…凸条部、47…スクリュー中央部、49…ホイール、50…バレル、52…スクリュー対向面、54…案内溝、56…連通孔、58…ヒーター、60…ノズル、61…ノズル流路、63…ノズル開口、65…流入口、68…シールド、71…第1ノズル、72…第2ノズル、73…ノズル、74…ノズル流路、80…貫通孔、90…加熱ブロック、91…ケース部、92…シールド、93…シールド開口、94…開口部、100…射出部、101…第1射出部、102…第2射出部、103…射出部、110…筐体、111…造形空間、140…材料搬送機構、165…流入口、180…貫通孔、190…加熱ブロック、210…駆動部、211…第1駆動部、212…第2駆動部、220…ステージ、250…クリーニング機構、251…ブラシ、252…ブレード、253…パージ部、254…第1傾斜面、255…第2傾斜面、256…第3傾斜面、258…固定具、260…パージ廃材容器、261…第1クリーニング機構、262…第2クリーニング機構、280…高さ調整装置、300…制御部、400…表示装置
図1
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