(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
B41J2/175 315
B41J2/175 113
B41J2/175 119
B41J2/175 169
B41J2/175 171
B41J2/175 175
B41J2/175 501
(21)【出願番号】P 2021011888
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】白野 太一
(72)【発明者】
【氏名】刑部 吉記
(72)【発明者】
【氏名】中澤 史朗
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 聡
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓介
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-125825(JP,A)
【文献】特開平02-155745(JP,A)
【文献】特開2009-269269(JP,A)
【文献】特開2008-000962(JP,A)
【文献】特開2019-059200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
液体を貯留する液体貯留室、前記液体貯留室と外部とを連通させるための大気連通路、及び、前記大気連通路を連通させる連通状態及び前記大気連通路を遮断する遮断状態のいずれか一方を選択的に取ることが可能な電気で駆動するバルブを有する液体貯留部と、
前記液体吐出ヘッドと前記液体貯留室とを、液体が流通可能に接続する液体流路と、
前記液体吐出ヘッド、前記液体貯留部、及び、前記液体流路を収容する筐体と、
前記筐体が水平面に対して閾値を超えて傾いていることを検出するためのセンサと、
前記液体吐出ヘッド及び前記バルブを制御する制御部と、を備えており、
前記制御部は、
前記筐体が前記閾値を超えて傾いていることを前記センサが検出したときに、前記バルブが前記遮断状態を取るように、前記バルブを制御
し、
さらに前記制御部は、
前記ノズルからの液体の吐出量に応じて更新される液体カウント値、基準値、及び、前記ノズルに形成された液体メニスカスの耐圧値未満を示す液体閾値を記憶するメモリを有し、
前記バルブが前記連通状態から前記遮断状態を取るときの前記液体カウント値を前記基準値として前記メモリに記憶する記憶処理と、
前記液体カウント値と前記基準値との差分が前記液体閾値に達しているか否かを判定する判定処理と、
前記筐体が前記閾値を超えて傾いていることを前記センサが検出しているときに、前記判定処理において差分が前記液体閾値に達していると判定されると、前記バルブが前記大気連通路を一旦連通させて遮断するように、前記バルブを制御する連通処理とを実行可能であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
液体を貯留する液体貯留室、前記液体貯留室と外部とを連通させるための大気連通路、及び、前記大気連通路を連通させる連通状態及び前記大気連通路を遮断する遮断状態のいずれか一方を選択的に取ることが可能な電気で駆動するバルブを有する液体貯留部と、
前記液体吐出ヘッドと前記液体貯留室とを、液体が流通可能に接続する液体流路と、
前記液体吐出ヘッド、前記液体貯留部、及び、前記液体流路を収容する筐体と、
前記筐体が水平面に対して閾値を超えて傾いていることを検出するためのセンサと、
前記液体吐出ヘッド及び前記バルブを制御する制御部と、を備えており、
前記制御部は、
前記筐体が前記閾値を超えて傾いていることを前記センサが検出したときに、前記バルブが前記遮断状態を取るように、前記バルブを制御し、
前記液体貯留部は、前記液体貯留室と外部とを連通する液体注入口をさらに有しており、
前記液体貯留室への前記液体注入口からの液体注入を検出する液体注入検出手段をさらに備えており、
前記制御部は、
前記筐体が前記閾値を超えて傾いていることを前記センサが検出しているときに、前記液体注入検出手段が前記液体注入口からの液体注入を検出すると、前記バルブが前記大気連通路を一旦連通させて遮断するように、前記バルブを制御する注入処理をさらに実行可能であることを特徴とす
る液体吐出装置。
【請求項3】
前記センサは、液体が接液することを検出する接液センサであることを特徴とする請求項1
又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記接液センサは、透過型光センサ、及び、電圧が印加された電極棒を有し当該電極棒の短絡を検出する短絡検出センサのいずれかであることを特徴とする請求項
3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記接液センサは、前記液体貯留室の液体量が満量であるときの液面位置を示す箇所よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項
3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記大気連通路は、前記液面位置を示す箇所よりも上方に配置されており、
前記接液センサは、前記液面位置を示す箇所と前記大気連通路との間に配置されていることを特徴とする請求項
5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記センサは、前記筐体の傾きを検出する傾きセンサであることを特徴とする請求項1
又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記バルブが前記遮断状態を取るときに、前記筐体の傾きが前記閾値以下であることを前記センサが検出したときに、前記バルブが前記連通状態を取るように前記バルブを制御することを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記液体吐出ヘッド、及び、前記液体貯留部を支持するキャリッジと、
前記搬送方向と交差する走査方向にキャリッジを移動させる移動機構と、をさらに備えていることを特徴とする請求項1~
8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドに連通する液体貯留室と外部とを連通させるための大気連通路を連通させる連通状態、及び、大気連通路を遮断する遮断状態のいずれか一方を選択的に取ることが可能な電気で駆動するバルブを有する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクタンクから供給されたインクがインクバッファに貯留され、キャリッジ上の印字ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録動作を行うインクジェット記録装置について記載されている。このインクジェット記録装置においては、インク供給の間、インクバッファ内の上部空気層と大気との連絡を制御する大気開放用電磁バルブは開放されている。これにより、インク供給時に、インクバッファ内の上部の空気を逃がすことが可能となって、インクバッフア内のインクが加圧されない。また、このインクジェット記録装置においては、パージング時には、大気開放用電磁バルブは閉塞されており、インクタンクから加圧されたインクが供給され、パージング動作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように上記特許文献1には、インク供給の間などに大気開放用電磁バルブが開放されることが記載されているが、装置本体の設置状況に応じた大気開放用電磁バルブの動作については記載されていない。なお、パージング動作以外のときに大気開放用電磁バルブを開いておくことで、環境温度に大きな変化が生じてもインクバッファ内の圧力変動が生じにくくなる。装置本体を設置した際に、装置本体の筐体が大きく傾いた状態であるにもかかわらず、インクバッファ内の圧力変動を抑制するために大気開放用電磁バルブを開放し続けると、インクバッファ内のインクがその開放された部分から外部に大量に漏れる問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、筐体が閾値を超えて傾いているときに、液体貯留室の液体が大気連通路から漏れ出すのを抑制することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、第1の観点では、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、液体を貯留する液体貯留室、前記液体貯留室と外部とを連通させるための大気連通路、及び、前記大気連通路を連通させる連通状態及び前記大気連通路を遮断する遮断状態のいずれか一方を選択的に取ることが可能な電気で駆動するバルブを有する液体貯留部と、前記液体吐出ヘッドと前記液体貯留室とを、液体が流通可能に接続する液体流路と、前記液体吐出ヘッド、前記液体貯留部、及び、前記液体流路を収容する筐体と、前記筐体が水平面に対して閾値を超えて傾いていることを検出するためのセンサと、前記液体吐出ヘッド及び前記バルブを制御する制御部と、を備えている。そして、前記制御部は、前記筐体が前記閾値を超えて傾いていることを前記センサが検出したときに、前記バルブが前記遮断状態を取るように、前記バルブを制御する。さらに前記制御部は、前記ノズルからの液体の吐出量に応じて更新される液体カウント値、基準値、及び、前記ノズルに形成された液体メニスカスの耐圧値未満を示す液体閾値を記憶するメモリを有し、前記バルブが前記連通状態から前記遮断状態を取るときの前記液体カウント値を前記基準値として前記メモリに記憶する記憶処理と、前記液体カウント値と前記基準値との差分が前記液体閾値に達しているか否かを判定する判定処理と、前記筐体が前記閾値を超えて傾いていることを前記センサが検出しているときに、前記判定処理において差分が前記液体閾値に達していると判定されると、前記バルブが前記大気連通路を一旦連通させて遮断するように、前記バルブを制御する連通処理とを実行可能である。
本発明の液体吐出装置は、第2の観点では、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、液体を貯留する液体貯留室、前記液体貯留室と外部とを連通させるための大気連通路、及び、前記大気連通路を連通させる連通状態及び前記大気連通路を遮断する遮断状態のいずれか一方を選択的に取ることが可能な電気で駆動するバルブを有する液体貯留部と、前記液体吐出ヘッドと前記液体貯留室とを、液体が流通可能に接続する液体流路と、前記液体吐出ヘッド、前記液体貯留部、及び、前記液体流路を収容する筐体と、前記筐体が水平面に対して閾値を超えて傾いていることを検出するためのセンサと、前記液体吐出ヘッド及び前記バルブを制御する制御部と、を備えている。そして、前記制御部は、前記筐体が前記閾値を超えて傾いていることを前記センサが検出したときに、前記バルブが前記遮断状態を取るように、前記バルブを制御する。前記液体貯留部は、前記液体貯留室と外部とを連通する液体注入口をさらに有しており、前記液体貯留室への前記液体注入口からの液体注入を検出する液体注入検出手段をさらに備えており、前記制御部は、前記筐体が前記閾値を超えて傾いていることを前記センサが検出しているときに、前記液体注入検出手段が前記液体注入口からの液体注入を検出すると、前記バルブが前記大気連通路を一旦連通させて遮断するように、前記バルブを制御する注入処理をさらに実行可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体吐出装置によると、筐体が閾値を超えて傾いているときに、液体貯留室の液体が大気連通路から漏れ出すのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの概略斜視図である。
【
図2】
図1に示すプリンタの内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】
図2に示すインクタンク及びインクジェットヘッドを示しており、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【
図4】
図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】(a)は筐体が閾値を超えて傾いていないときのインク貯留室のインクの状況を示す状況図であり、(b)は筐体が閾値を超えて傾くときのインク貯留室のインクの状況を示す状況図である。
【
図6】プリンタが傾いて設置され筐体が閾値を超えて傾くときのプリンタ1の動作を示すフローチャートである。
【
図7】プリンタの筐体が閾値を超えて傾いた状態から筐体の傾きが閾値以下となるときのプリンタの動作を示すフローチャートである。
【
図8】プリンタの記録動作を示すフローチャートである。
【
図9】インクタンクにインクを注入して補充するときのプリンタの動作を示すフローチャートである。
【
図10】
図3に示すインクタンクのインク注入口にインクボトルのインク注入部を挿入した状態を示す側面図である。
【
図11】第1及び第2変形例に係るプリンタのインクタンクを示しており、(a)は筐体が閾値を超えて傾いていないときのインク貯留室のインクの状況を示す状況図であり、(b)は筐体が閾値を超えて傾くときのインク貯留室のインクの状況を示す状況図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るプリンタ1について説明する。プリンタ1は、
図1に示す状態に設置されて使用される。本実施形態において、
図1に矢印を付して示す3つの方向が、上下方向A1、前後方向A2、及び、左右方向A3である。
図2、
図3、
図5及び
図10にも、
図1に示す3つの方向を反映して示す。
【0010】
<プリンタ1の概要>
図1に示すように、プリンタ1は、概ね直方体形状の筐体11を有する。筐体11の前壁11aの略中央には、開口12が形成されている。開口12には、給紙トレイ15及び排紙トレイ16が、上下2段に設けられている。給紙トレイ15は、開口12から前後方向A2に挿抜可能、すなわち、筐体11から着脱可能に構成されている。所望のサイズ(例えば、A4サイズ)の用紙Pが給紙トレイ15に載置される。プリンタ1は、パーソナルコンピュータ(以下PCと称する)などの外部機器と接続可能である。そして、PCなどからの記録データに基づいて記録動作を実行する。
【0011】
前壁11aの上部には、
図1に示すように、操作部13が設けられている。操作部13は、各種設定のために操作されるボタンや、各種情報が表示される液晶ディスプレイなどによって構成されている。本実施形態において、操作部13は、ボタン及び液晶ディスプレイの双方の機能を有するタッチパネルによって構成されている。
【0012】
筐体11は、
図1及び
図2に示すように、その天井部分を構成する開閉カバー14を有する。開閉カバー14は、後端部において、左右方向A3に沿う回転軸(不図示)を回転中心として回動可能に構成されている。開閉カバー14を開くことで、後述のインクタンク61が露出され、インクタンク61にインクを注入して補充することが可能となる。
【0013】
<プリンタ1の内部構造>
次に、プリンタ1の内部構造について説明する。
図2に示すように、プリンタ1は、給送部20と、搬送ローラ対35と、記録部40と、排紙ローラ対36と、ASF(Auto Sheet Feed)モータ20M(
図4参照)と、LF(Line Feed)モータ35M(
図4参照)と、開閉センサ6(
図4参照)と、短絡検出センサ8(
図4参照)と、制御部5(
図4参照)とを含む。
【0014】
給送部20は、
図2に示すように、給紙トレイ15に載置される用紙Pを搬送路25へ給送する。搬送ローラ対35は、給送部20によって給紙された用紙Pを記録部40に搬送する。記録部40は、例えば、インクジェット記録方式の構成を有し、搬送ローラ対35によって搬送された用紙Pに画像を記録する。排紙ローラ対36は、記録部40によって記録された用紙Pを排紙トレイ16に排紙する。
【0015】
<給送部20>
図2に示すように、給送部20が給紙トレイ15の上側に設けられている。給送部20は、給紙ローラ21とアーム22を有する。給紙ローラ21は、アーム22の先端に軸支されている。アーム22は、支軸22aに回動自在に支持され、バネなどにより付勢されて給紙ローラ21が給紙トレイ15に接触するように下側へ回動されている。また、アーム22は、給紙トレイ15を着脱する際に上方へ退避可能に構成されている。給紙ローラ21は、伝達機構(不図示)を介してASFモータ20Mの動力が伝達されて回転し、給紙トレイ15内に積載された用紙Pが、搬送路25へ給送される。
【0016】
<給紙トレイ15>
図2に示すように、給紙トレイ15は、斜壁部15aを有する。斜壁部15aは、給紙トレイ15に載置される用紙Pが給紙ローラ21によって給送されるときに、用紙Pを搬送路25に案内する。
【0017】
<搬送路25>
搬送路25は、筐体11内に構成されており、
図2に示すように、給紙トレイ15の後側の端部から上方且つプリンタ1の前側へ曲がっている。給紙トレイ15から給送された用紙Pは、搬送路25により下方から上方へUターンするように案内されて記録部40に至る。
【0018】
<搬送ローラ対35>
搬送ローラ対35は、下側に配置された搬送ローラ35aと上側に配置されたピンチローラ35bとを有する。搬送ローラ35aは、伝達機構(不図示)を介してLFモータ35Mの動力が伝達されて回転する。ピンチローラ35bは、搬送ローラ35aの回転に伴って連れ回る。搬送ローラ35aとピンチローラ35bとは、協働して用紙Pを上下方向A1から挟持し、用紙Pを記録部40へ搬送する。
【0019】
<排紙ローラ対36>
排紙ローラ対36は、下側に配置された排紙ローラ36aと、上側に配置された拍車ローラ36bとを有する。排紙ローラ36aは、伝達機構(不図示)を介してLFモータ35Mの動力が伝達されて回転する。拍車ローラ36bは、排紙ローラ36aの回転に伴って連れ回る。排紙ローラ36aと拍車ローラ36bとは、協働して用紙Pを上下方向A1から挟持し、用紙Pを排紙トレイ16に搬送する。
【0020】
<記録部40>
図2及び
図3に示すように、記録部40は、インクジェットヘッド41と、インクタンク61と、キャリッジ70と、移動機構71と、プラテン17とを有する。キャリッジ70は、走査方向(左右方向A3であって、用紙Pの搬送方向と直交する方向)へ往復移動する。インクジェットヘッド41及びインクタンク61は、キャリッジ70に支持されている。つまり、本実施形態におけるプリンタ1は、インクタンク61及びインクジェットヘッド41がキャリッジ70に搭載された所謂オンキャリッジ型である。本実施形態におけるインクタンク61は、その全体がインクジェットヘッド41よりも上方に位置する。しかし、これに限らず、インクタンク61の一部がインクジェットヘッド41の上面よりも上方に位置し、残りの部分が当該上面よりも下方に位置していてもよい。
【0021】
<インクタンク61>
インクタンク61は、
図3に示すように、タンク本体62と、キャップ63と、電磁バルブ64とを有している。タンク本体62は、絶縁性の合成樹脂から構成されている。また、タンク本体62は、略直方体形状を有しており、内部にインクを貯留するためのインク貯留室62aが形成されている。インク貯留室62aには、ブラックインクが貯留される。また、タンク本体62は、主に透光性材料(例えば、透明又は半透明樹脂)により作製される。これにより、ユーザがインク貯留室62aにおけるインクの量を視認できる。
【0022】
タンク本体62には、
図3に示すように、その上壁62bを貫通する貫通孔62cが形成されている。貫通孔62cは、上壁62bの左右方向A3の中央であって、やや前方寄りの位置に配置されている。貫通孔62cには、筒体66が嵌め込まれている。筒体66は、その上端部にインク注入口67を有する。インク注入口67は、上方(すなわち、外部)に向かって開放された開口である。筒体66の内周面は、インク注入口67からインク貯留室62aに至るインク供給路66aを区画する。これにより、インク注入口67は、インク貯留室62aと連通する。
【0023】
図3に示すキャップ63は、例えば柔軟性樹脂で作製され、インク注入口67を密閉可能である。キャップ63は、ユーザ操作により、筒体66の上端部に着脱可能であり、インク注入口67を閉塞または開放する。より詳細には、キャップ63は、
図3(b)に示すように、後端部において、左右方向A3に沿う回転軸63aを回転中心として回動可能に、支持部62b1に支持されている。支持部62b1は、タンク本体62の上壁62bに形成されている。そして、ユーザ操作により、キャップ63がインク注入口67を閉塞する閉状態(
図3(b)中実線で示す状態)からキャップ63がインク注入口67を開放する開状態(
図3(b)中二点鎖線で示す状態)へと回動可能に構成されている。なお、インク注入口67は、キャップ63によって通常は閉塞されており、インク貯留室62aにインクを注入する際に、開放される。
【0024】
タンク本体62には、
図3(b)に示すように、その後方側壁62dを貫通し、インク貯留室62aと外部とを連通する大気連通口62eが形成されている。大気連通口62eは、後方側壁62dの上端部付近に配置されている。また、タンク本体62には、
図3に示すように、その前方側壁62fに上側指標62f1及び下側指標62f2が形成されている。なお、大気連通口62eは、上側指標62f1よりも上方に配置されておればよく、例えば、上壁62bに形成されていてもよい。
【0025】
図3において、上側指標62f1は、前方側壁62fの外表面において、上端部付近の位置で、左右に延びる線状形状を有する。また、上側指標62f1は、上下方向A1において、
図3(b)に示すように、大気連通口62eよりも下方に配置されている。上側指標62f1は、インク貯留室62aに貯留可能な最大のインク量の液面の位置を示す指標の一例である。また、下側指標62f2は、前方側壁62fの外表面において、下端部付近の位置で、左右に延びる線状形状を有する。下側指標62f2は、インク貯留室62aにインクの補充、すなわちインク注入が必要となる液面の位置を示す指標である。なお、上側指標62f1および下側指標62f2は、前方側壁62fの外表面に形成された凹凸、または塗料等による着色によっても実現可能である。
【0026】
電磁バルブ64は、
図3(b)に示すように、公知の2方向電磁バルブであって、弁部64aとソレノイド部64bとを有する。電磁バルブ64は、上側指標62f1よりも上方に配置されるように、上壁62bに固定されている。弁部64aは、インク貯留室62aに配置され、大気連通口62eとインク貯留室62aとに連通する内部流路(不図示)と当該内部流路を開閉する弁(不図示)とを有している。ソレノイド部64bは、上壁62b上に配置されており、弁部64aの弁の開閉を行う。電磁バルブ64は、制御部5の制御により、ソレノイド部64bが駆動されることで、弁部64aが、大気連通口62eとインク貯留室62aとを連通させる連通状態(すなわち、弁が内部通路を開とした状態)と、大気連通口62eとインク貯留室62aとの連通を遮断する遮断状態(すなわち、弁が内部通路を閉とした状態)とを選択的にとる。
【0027】
変形例として、電磁バルブ64は、弁部64aがインクタンク61の外部において大気連通口62eと外部とを連通可能に接続されていてもよい。これにおいて、大気連通口62eを外部と連通する連通状態及び外部との連通を遮断する遮断状態を選択的に取ることが可能となる。また、電磁バルブ64全体が、インク貯留室62aに配置されていてもよい。また、電磁バルブ64は、弁部64aの内部流路が大気連通口62eと連通可能に接続されておれば、タンク本体62の上壁62b以外の前後左右の側壁の少なくともいずれかに固定されて設置されていてもよい。
【0028】
また、タンク本体62には、その底壁62gを貫通し、インク貯留室62aのインクをインクジェットヘッド41へ流出する流出口62hが形成されている。流出口62hは、底壁62gの左右方向A3の中央であって、前端部付近の位置に配置されている。
【0029】
<開閉センサ6>
開閉センサ6は、
図3(b)に示すように、タンク本体62の上壁62b上に配置されている。開閉センサ6は、公知のメカスイッチであって、キャップ63がインク注入口67を開状態とするときにちょうど当接する位置に配置されており、キャップ63と当接するときと当接しないときとで異なる信号を制御部5に出力する。つまり、開閉センサ6は、インク注入口67を開状態とするときのキャップ63と当接し、このときにインク注入口67が開である信号を制御部5に出力する。一方、キャップ63がインク注入口67を閉状態とするときは、キャップ63が開閉センサ6に当接しない。このとき、開閉センサ6は、インク注入口67が閉である信号を制御部5に出力する。このように開閉センサ6は、インク注入口67が開状態とされ、インク貯留室62aにインクが注入されることを検出する。
【0030】
<短絡検出センサ8>
短絡検出センサ8は、
図4に示すように、電極棒8aと、電圧印加回路8bと、電圧検出回路8cとを有する。タンク本体62の後方側壁62dには、
図3(b)に示すように、貫通孔62d1が形成されている。貫通孔62d1は、上下方向A1において、上側指標62f1と、大気連通口62eとの間に配置されている。そして、電極棒8aは、貫通孔62d1に嵌め込まれており、先端面8a1がインク貯留室62aの壁面の一部を構成している。電極棒8aは、上側指標62f1よりも上方であって、インク貯留室62aのインク量が満量であるときの液面よりも上方に配置されている。電圧印加回路8bは、電極棒8aに所定の電圧を印加する。電圧検出回路8cは、電極棒8aの電圧を検出する。より詳細には、電圧検出回路8cは、プリンタ1が傾いて設置されるなどして筐体11が閾値を超えて傾き、インク貯留室62aのインクが先端面8a1に接触すると、短絡を示す信号(すなわち、筐体11が閾値を超えて傾いていることを示す信号)を制御部5に出力する。
【0031】
ここでいう閾値は、筐体11が傾くことで、インク貯留室62aのインクが大気連通口62eに差しかかる直前であって電極棒8aの先端面8a1に接触するときの筐体11の傾きをいう。つまり、閾値としての角度は、インク貯留室62aのインク量が少なくなるほど、大きくなる。インク量が少ない場合は、筐体11が大きく傾くと電極棒8aとインクが接触する。そして、短絡検出センサ8から筐体11が閾値を超えて傾いていることを示す信号が出力される。一方、インク量が多い場合(例えば、満量)は、インク量が少ないときより筐体11の傾きが小さいときでも、電極棒8aとインクが接触する。そして、短絡検出センサ8から筐体11が閾値を超えて傾いていることを示す信号が出力される。
【0032】
<インクジェットヘッド41>
インクジェットヘッド41には、インクタンク61からのブラックインクが供給される内部流路(不図示)を有する。また、インクジェットヘッド41は、
図3(b)に示すように、その下面であるノズル面41aに形成された複数のノズル42からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル42は、前後方向A2であって用紙Pの搬送方向に沿ったノズル列を形成している。複数のノズル42からは、ブラックのインクが吐出される。
【0033】
インクジェットヘッド41は、
図3に示すように、接続部材69を介してインクタンク61と接続されている。接続部材69には、流出口62hとインクジェットヘッド41の内部流路とを繋ぐ連通路(液体流路)69aが形成されている。これにより、インクタンク61のインク貯留室62aのインクがインクジェットヘッド41に供給される。
【0034】
<プラテン17>
プラテン17は、インクジェットヘッド41の下方に配設されており、搬送ローラ対35によって搬送される用紙Pを支持する。プラテン17は、キャリッジ70の往復移動範囲のうち、用紙Pが通過する部分に配設されている。プラテン17の幅は、搬送可能な用紙Pの最大幅より十分に大きいので、搬送路25を搬送される用紙Pは常にプラテン17上を通過する。
【0035】
<移動機構71>
移動機構71は、
図2に示すように、一対のガイドレール72、及び、ベルト伝達機構(不図示)を含む。一対のガイドレール72は、前後方向A2に離隔して配置され、左右方向A3に互いに平行に延在している。キャリッジ70は、これら一対のガイドレール72を跨ぐように配置されている。キャリッジ70は、ベルト伝達機構を介してキャリッジモータ70M(
図4参照)に接続されており、キャリッジモータ70Mを駆動させると、ベルト伝達機構が駆動される。これにより、キャリッジ70が一対のガイドレール72に沿って走査方向(左右方向A3)に移動し、メンテナンスキャップ(不図示)と対向するメンテナンス位置と当該メンテナンスキャップと対向しない非メンテナンス位置との間においてインクジェットヘッド41を移動させる。
【0036】
インクジェットヘッド41は、記録データに基づく制御部5の制御により、ノズル42からインクを吐出する。つまり、キャリッジ70が左右方向A3へ往復移動することにより、インクジェットヘッド41が用紙Pに対して走査されると共に、ノズル42から、インクを吐出することで、プラテン17上を搬送される用紙Pに画像が記録される。なお、プリンタ1内には、走査方向に間隔を空けて配列された多数の透光部(スリット)を有するリニアエンコーダ(不図示)が設けられている。一方、キャリッジ70には、発光素子と受光素子とを有する透過型の位置検出センサ(不図示)が設けられている。そして、プリンタ1は、キャリッジ51の移動中に位置検出センサが検出したリニアエンコーダの透光部の計数値から、キャリッジ70の走査方向に関する現在位置を認識できるようになっており、キャリッジモータ70Mの回転駆動が制御される。
【0037】
<制御部5>
図4に示すように、制御部5は、CPU(Central Processing Unit)131、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)135、及び、メモリ140を含む。これらCPU131、ASIC135、メモリ140は内部バス137によって接続される。メモリ140は、ROM(Read Only Memory)132、RAM(Random Access Memory)133、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)134を含む。ROM132には、プリンタ1の各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。CPU131は、プログラムをRAM133やEEPROM134を使いつつ実行する。
【0038】
ASIC135は、ASFモータ20M、LFモータ35M、キャリッジモータ70M、電磁バルブ64、インクジェットヘッド41等に制御信号を出力し、これらの動作を制御する。例えば、制御部5は、外部機器(例えばPCやスマートフォン)から送信された記録データに基づいて、インクジェットヘッド41、ASFモータ20M、LFモータ35M、キャリッジモータ70M等を制御して、搬送処理と記録処理とを交互に実行し、用紙Pに画像等を記録させる。また、ASIC135は、開閉センサ6や短絡検出センサ8からの信号を受信する。
【0039】
搬送処理は、搬送ローラ対35及び排紙ローラ対36に所定改行量だけ用紙Pを搬送させる処理である。制御部5は、LFモータ35Mを制御することによって、搬送ローラ対35及び排紙ローラ対36に搬送処理を実行させる。記録処理は、キャリッジ70を左右方向A3に沿って移動させながら、インクジェットヘッド41を制御して、ノズル42からインク滴を吐出させる処理である。そして、制御部5は、今回の搬送処理と次回の搬送処理との間、用紙Pの搬送を一定期間停止させ、用紙Pの搬送が停止している間に記録処理を実行する。つまり、制御部5は、記録処理において、キャリッジ70を右向きまたは左向きに移動させながら、ノズル42からインク滴を吐出させる1回のパスを実行する。これにより、用紙Pに対して1パス分の画像記録が実行される。制御部5は、搬送処理と記録処理とを交互に繰り返し実行することによって、用紙Pの画像記録可能な全領域に、画像記録することが可能である。つまり、制御部5は、複数回のパスで1枚の用紙Pに画像記録させる。
【0040】
なお、本実施形態の制御部5では、CPU及びASICを1つずつ有しているが、制御部5は、ASICを1つだけ含み、この1つのASICが必要な処理を一括して行うものであってもよいし、ASICを複数含み、これら複数のASICが必要な処理を分担して行うものであってもよい。
【0041】
メモリ140には、インクカウント値(液体カウント値)、基準値、インク閾値(液体閾値)が記憶される。インクカウント値は、インクジェットヘッド41からのインクの吐出量に応じて更新される値であり、RAM133またはEEPROM134に記憶される。インクカウント値は、用紙Pへ記録される画像のデータである記録データに基づいて算出される。
【0042】
詳述すると、制御部5は、外部機器(例えばPCやスマートフォン)などから送信されてきた記録データを参照する。記録データは、外部機器から逐次送信されてくる。制御部5は、記録データに基づいて、次回の記録処理において吐出されるインク量を推定して、当該インク量に対応するインクカウント値を決定する。つまり、制御部5は、記録データに基づいて、次の記録処理の際に吐出される領域内の各ドットについて、インク滴の吐出回数を決定する。これにより、当該領域内の全ドットの吐出回数が各ドットの吐出回数の合算によって算出される。算出された当該領域内の全ドットの吐出回数が、次回の記録処理において吐出されるインク量に対応するインクカウント値である。
【0043】
後述するように、インクカウント値は、記録データに基づいて積算されることによって更新される。また、インクカウント値は、制御部5の制御によって所定のタイミング(インク補充のタイミング)で初期値にリセットされる。初期値は、インクカウント値の初期値であって予め設定された値がROM132またはEEPROM134に記憶される。本実施形態において、初期値はゼロである。なお、本実施形態において、インクカウント値は、初期値のゼロからカウントアップされるが、これに限らない。例えば、インクカウント値は、ゼロではない初期値からカウントダウンされてもよい。
【0044】
インク閾値は、インク貯留室62aに貯留されたインクの消費量と比較される値であって、電磁バルブ64を開放するタイミングを決めるための値である。詳述すると、インク閾値は、インク貯留室62aの負圧上昇によってノズル42に形成されたインクメニスカスの破損が発生する前に、インクカウント値と基準値の差分が当該インク閾値に達するように予め設定された値である。インク閾値は、インクメニスカス耐圧に対して設計的に決められる値であり、当該耐圧値未満を示す値である。つまり、差分がインク閾値に達していない場合は、インク貯留室62aの負圧がそれほど大きくない状態であり、ノズル42に形成されたインクメニスカスが破損しない。一方、差分がインク閾値に達している場合は、負圧の上昇によって、ノズル42に形成されたインクメニスカスが破損しやすい状態となる。また、インク閾値は、インク貯留室62aにインクが最大量貯留されたときのインク部分の空間の体積と空気部分の空間の体積との比率によって決定される。本実施形態においてインク閾値は、ROM132またはEEPROM134に記憶される。
【0045】
続いて、プリンタ1が傾いて設置され筐体11が閾値を超えて傾くときのプリンタ1の動作について、
図5及び
図6を参照しつつ以下に説明する。プリンタ1では、待機時(記録動作が実行されていないとき)に、インクジェットヘッド41はメンテナンス位置に位置している。このとき、電磁バルブ64は、大気連通口62eを連通する連通状態を取る。このため、環境温度が変化してもインク貯留室62a内の圧力が変動しない。このため、ノズル42に形成されたインクメニスカスが破損し、インクが漏れたり、ノズル42に外気が侵入するのを抑制することが可能となる。
【0046】
制御部5は、
図6に示すように、S101において、筐体11が閾値を超えて傾いているかを判定する。
図5(a)に示すように、プリンタ1が水平な設置面に設置されているときは、筐体11は傾かず、インク貯留室62aのインクの液面は、電極棒8aの先端面8a1に接触しない。つまり、電極棒8aには所定の電圧が印加された状態が維持され、電圧検出回路8cは電圧が印加された状態を示す信号を制御部5に出力する。このようなプリンタ1の設置状況においては、筐体11は閾値を超えて傾いておらず(NO)、S101を繰り返して待機する。
【0047】
一方、
図5(b)に示すように、プリンタ1が水平に対して傾斜した設置面に設置されているときは、筐体11が傾く。このときの筐体11の傾きが閾値を超えて傾くと、インク貯留室62aのインクが電極棒8aの先端面8a1に接触する。つまり、短絡検出センサ8が短絡を検出し、電圧検出回路8cが短絡を示す信号(筐体11が閾値を超えて傾いていることを示す信号)を制御部5に出力する。この場合(S101:YES)、S102に進む。
【0048】
次に、制御部5は、S102において、遮断処理を実行する。つまり、制御部5は、電磁バルブ64を駆動させ、連通状態から遮断状態を取らせる。これにより、大気連通口62eの連通が遮断され、インク貯留室62aが大気に対して閉鎖された状態となる。このとき、制御部5は、現在メモリ140に記憶されているインクカウント値を基準値として、メモリ140に記憶する(記憶処理)。こうして、フローが終了する。
【0049】
続いて、プリンタ1の筐体11が閾値を超えて傾いた状態から水平な設置面に設置され筐体11の傾きが閾値以下となるときのプリンタ1の動作について、
図7を参照しつつ以下に説明する。上述のように、プリンタ1の筐体11が閾値を超えて傾いている場合、電磁バルブ64は大気連通口62eの連通を遮断する遮断状態を取る。
【0050】
制御部5は、
図7に示すように、S201において、筐体11の傾きが閾値以下であるかを判定する。このとき、インクタンク61が、
図5(b)に示す状態が維持されると、筐体11が閾値を超えて傾いた状態のままであるため(S201:NO)、S201を繰り返して待機する。一方、インクタンク61が、
図5(b)に示す状態から
図5(a)に示す状態になると、インク貯留室62aのインクの液面は、電極棒8aの先端面8a1に接触しなくなる。つまり、電極棒8aには所定の電圧が印加された状態に戻り、電圧検出回路8cは電圧が印加された状態を示す信号を制御部5に出力する。この場合(S201:YES)、S202に進む。
【0051】
次に、制御部5は、S202において、連通処理を実行する。つまり、制御部5は、電磁バルブ64を駆動させ、遮断状態から連通状態を取らせる。これにより、大気連通口62eが連通し、インク貯留室62aが大気に対して開放された状態となる。したがって、環境温度が変化してもインク貯留室62a内の圧力が変動するのを抑制することが可能となる。こうして、フローが終了する。
【0052】
続いて、プリンタ1の記録動作について、
図8を参照しつつ以下に説明する。プリンタ1では、待機時(記録動作が実行されていないとき)に、インクジェットヘッド41はメンテナンス位置に位置している。このとき、電磁バルブ64は、上述したように筐体11が閾値を超えて傾いているか否かに応じて、連通状態及び遮断状態のいずれかを制御部5の制御により取る。
【0053】
プリンタ1の操作部13や外部機器などから、記録コマンドが制御部5へ送られる。記録コマンドは、記録動作を開始する旨のコマンドと、用紙Pのサイズに関する情報と、用紙Pへ画像記録される記録データとを含んでいる。
【0054】
制御部5は、S301において、記録コマンドを取得していない場合(NO)はS301を繰り返して待機し、記録コマンドを取得した場合(Yes)、S302に進む。
【0055】
制御部5は、S302において、ASF20Mを駆動させ、給紙トレイ15の用紙Pの給送を実行する。また、制御部5は、S302において、LFモータ35Mを駆動させ、用紙Pの先端が搬送ローラ対35へ到達したときに、当該用紙Pを搬送し、頭出しを実行する。頭出しにおいて、制御部5は、用紙Pを画像記録開始位置で停止させる。画像記録開始位置とは、用紙Pにおける画像記録領域の搬送方向の先端(下流端)が、複数のノズル42のうち搬送方向の最下流に配置されたノズル42と対向する位置である。
【0056】
また、S302において、制御部5は、キャリッジモータ70Mを駆動させて、キャリッジ70(インクジェットヘッド41)をメンテナンス位置から開始位置へ移動させる。開始位置は、記録処理(S307)が実行されるときのキャリッジ70の移動開始位置であり、記録データに基づいて決定される。なお、S302において、用紙Pの給送から頭出しまでの動作と、キャリッジ70の移動動作とは、並行して実行される。
【0057】
次に、制御部5は、S303において、上述のS101と同様に、筐体11が閾値を超えて傾いているかを判定する。閾値を超えて傾いている場合(YES)、上述したようにS102により、電磁バルブ64は遮断状態を取っている。この場合、S304に進む。一方、閾値以下である場合(NO)、上述したようにS202により、電磁バルブ64は連通状態を取っている。この場合、S307に進む。
【0058】
次に、制御部5は、S304において、記録データを参照して、次に実行されるパスにおいて、つまり次回の記録処理(S307)において吐出されるインク量に対応するインクカウント値を決定する。そして、制御部5は、決定したインクカウント値を現在メモリ140に記憶されているインクカウント値に加算して、加算した結果を新たなインカウント値としてメモリ140に記憶する。これにより、インクカウント値が更新される。
【0059】
次に、制御部5は、S305において、インクカウント値と基準値との差分がインク閾値に達しているかを判定する(判定処理)。なお、基準値は、電磁バルブ64が連通状態から遮断状態を取る前回の遮断処理(S102)のときに、制御部5が、そのときにメモリ140に記憶されているインクカウント値を基準値として、メモリ140に記憶している(記憶処理)。そして、後述のS307の記録処理が繰り返し実行されインクカウント値が更新されていくことで、インクカウント値と基準値との差分がインク閾値に達することがある。この場合(YES)、S306に進む。一方、差分がインク閾値に達していない場合(NO)、S307に進む。
【0060】
次に、制御部5は、S306において、連通処理を実行する。このとき、筐体11は閾値を超えて傾いているため、電磁バルブ64は遮断状態を取っている。この状況下で、制御部5は、電磁バルブ64を駆動させ、遮断状態から連通状態を一旦取らせた後、遮断状態とする。つまり、制御部5が、電磁バルブ64が大気連通口62eを一旦開いて閉じるように、電磁バルブ64を制御する。これにより、大気連通口62eが連通し、インク貯留室62aが大気に対して一時的に開放された状態となる。したがって、インク貯留室62aの負圧が小さくなる(圧力が大気圧と平衡した状態となる)。この結果、ノズル42に形成されたインクメニスカスの破損が抑制され、ノズル42内に空気が侵入したり、ノズル42からインクが漏れるのを抑制することが可能となる。また、このような連通処理を実行しても、大気連通口62eは一時的に連通する状態となるだけであるため、インク貯留室62aのインクが大気連通口62eから漏れ出すのを抑制することができる。なお、大気連通口62eは、一時的に連通した後、その連通が遮断され、インク貯留室62aが大気に対して閉鎖された状態となる。また、このとき、制御部5は、現在メモリ140に記憶されているインクカウント値を基準値として、メモリ140に記憶する(記憶処理)。
【0061】
次に、制御部5は、S307において、記録処理を実行する。つまり、制御部5は、キャリッジ70を開始位置から移動させながら、ノズル42からインク滴を吐出させる1回のパスを実行する。
【0062】
次に、制御部5は、S308において、記録コマンドに含まれる用紙Pのサイズに関する情報や記録データに基づいて、用紙Pへの画像記録が終了したか否かを判定する。用紙Pへの画像記録が終了していない場合(NO)、S309に進み、搬送処理が実行される。用紙Pへの画像記録が終了した場合(YES)、S310に進む。
【0063】
次に、制御部5は、S309において、LFモータ35Mを駆動させて、搬送ローラ対35及び排紙ローラ対36に用紙Pを所定改行量だけ搬送させる。この後、S303に戻り、S303からS304に進む場合、制御部5は、次回の記録処理(S307)において吐出されるインク量に対応するインクカウント値を決定し、当該決定したインクカウント値をそれまでのインクカウント値に加算する。その後、ステップS305~S308の処理が再び実行される。なお、S304のインクカウント値の更新は搬送処理と並行して実行されてもよい。
【0064】
次に、制御部5は、S310において、LFモータ35Mを駆動させて、搬送ローラ対35及び排紙ローラ対36に、用紙Pを搬送させて、排紙トレイ16へ排紙する。
【0065】
次に、制御部5は、S311において、記録コマンドに含まれる画像データに用紙Pに記録されていない画像データがあるか否か、すなわち、次ページの画像記録があるか否かを判定する。次ページの画像記録がある場合(YES)、S302に戻る。一方、次ページの画像記録がない場合(NO)、制御部5は、一連の記録動作を終了する。
【0066】
続いて、インクタンク61にインクを注入して補充するときのプリンタ1の動作について、
図9及び
図10を参照しつつ以下に説明する。
図9に示すように、制御部5は、S401において、インク注入口67が開状態であるか否かを判定する。このとき、電磁バルブ64は、上述したように筐体11が閾値を超えて傾いているか否かに応じて、連通状態及び遮断状態のいずれかを制御部5の制御により取る。
【0067】
ユーザは、インクタンク61のインク液面が下側指標62f2付近又はこれ以下になるときに、インクタンク61にインクを補充する。なお、プリンタ1にインクタンク61のインク量がエンプティであるか否かを検出する液量センサを設け、その液量センサからの検出信号に基づいて、エンプティを検知したときにインクタンク61のインクがエンプティであることをユーザに報知してもよい。そして、ユーザがその報知によって、インクタンク61にインクを補充してもよい。また、ユーザが開閉カバーを定期的に開けてインクタンク61のインク量をチェックして、適宜のタイミングでインクタンク61にインクを補充してもよい。
【0068】
インクタンク61にインクを補充するときは、
図10に示すインクボトル90を準備する。インクボトル90には、ブラックインクが貯留されたボトル本体91と、ボトル本体91内のインクをインクタンク61に注入するためのインク注入部92とを有する。インク注入部92は、インク注入口67を介してインクタンク61に挿入する注入ノズル92aを有する。そして、ユーザが開閉カバー14を開き、インクタンク61のキャップ63を回動させて、インク注入口67を閉状態(
図3(b)中実線で示す状態)から
図7に示す開状態にする。これにより、キャップ63が、開閉センサ6に当接し、開閉センサ6が制御部5にインク注入口67が開状態であることを示す信号を出力する。
【0069】
S401において、インク注入口67が開状態の場合(YES)、制御部5はインク注入口67からインク貯留室62aにインクが注入されると判定し、S402に進む。一方、インク注入口67が閉状態の場合(NO)、制御部5はインク注入口67からインク貯留室62aにインクが注入されないと判定し、S401を繰り返して待機する。
【0070】
次に、制御部5は、S402において、上述のS101と同様に、筐体11が閾値を超えて傾いているかを判定する。閾値を超えて傾いている場合(YES)、上述したようにS102により、電磁バルブ64は遮断状態を取っている。この場合、S403に進む。一方、閾値以下である場合(NO)、上述したようにS202により、電磁バルブ64は連通状態を取っている。この場合、大気連通口62eが連通し、インク貯留室62aが大気に対して開放された状態となっている。ユーザは、キャップ63を開状態とした後、所定のタイミングでインク注入部92の注入ノズル92aをインク注入口67に挿入する。そして、インクボトル90のインクをインク貯留室62aに注入して補充する。このとき、インク貯留室62aが大気に対して開放された状態であるため、インク貯留室62a内のインク液面が上昇しても、インク貯留室62aの内圧変動が生じない。こうして、フローが終了する。
【0071】
次に、制御部5は、S403において、注入処理を実行する。このとき、筐体11は閾値を超えて傾いているため、電磁バルブ64は遮断状態を取っている。この状況下で、制御部5は、電磁バルブ64を駆動させ、遮断状態から連通状態を一旦取らせた後、遮断状態とする。つまり、制御部5が、電磁バルブ64が大気連通口62eを一旦開いて閉じるように、電磁バルブ64を制御する。これにより、大気連通口62eが連通し、インク貯留室62aが大気に対して一時的に開放された状態となる。したがって、インクボトル90のインクをインク貯留室62aに注入して補充する際に、インク貯留室62a内のインク液面が上昇しても、インク貯留室62aが大気に対して開放された状態であるため、インク貯留室62aの内圧が増大しにくくなる。この結果、ノズル42に形成されたインクメニスカスの破損が抑制され、ノズル42からインクが漏れるのを抑制することが可能となる。また、このような注入処理を実行しても、大気連通口62eは一時的に連通する状態となるだけであるため、インク貯留室62aのインクが大気連通口62eから漏れ出すのを抑制することができる。なお、大気連通口62eは、一時的に連通した後、その連通が遮断され、インク貯留室62aが大気に対して閉鎖された状態となる。
【0072】
次に、制御部5は、S404において、インク注入口67が閉状態であるか否かを判定する。インク貯留室62aへのインクの注入により、インク液面が上側指標62f1に達すると、ユーザは、インクの注入を終了して注入ノズル92aをインク注入口67から抜き出す。そして、ユーザは、キャップ63を回動させて、インク注入口67を開状態から閉状態にする。この後、ユーザは、開閉カバー14も閉じる。これにより、キャップ63が、開閉センサ6から離れ、開閉センサ6が制御部5にインク注入口67が閉状態であることを示す信号を出力する。
【0073】
S404において、インク注入口67が閉状態の場合(YES)、制御部5はインク貯留室62aへのインクの注入が終了したと判定し、S405に進む。一方、インク注入口67が開状態の場合(NO)、制御部5はインク貯留室62aにインクが注入されていると判定し、S404を繰り返して待機する。変形例として、S404において、インク注入口67が開状態の場合(NO)、S403まで戻ってもよい。こうすることで、ノズル42からインクが漏れるのを効果的に抑制することが可能となる。
【0074】
次に、制御部5は、S405において、現在メモリ140に記憶されているインクカウント値を初期値にリセットするとともに、このインクカウント値を基準値として、メモリ140に記憶する。こうして、フローが終了する。
【0075】
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ1によると、S101において、筐体11が閾値を超えて傾いているときに、S102の遮断処理により、電磁バルブ64が遮断状態を取る。このため、筐体11が閾値を超えて傾いても、インク貯留室62aのインクが大気連通口62eから漏れ出すのを抑制することが可能となる。
【0076】
筐体11が閾値を超えて傾いているかを検出するセンサが、電極棒8aにインクが接液することで検出する短絡検出センサ8であるため、大気連通口62eからインクが漏れるのを確実に抑制することが可能となる。また、センサの構成が簡易になる。
【0077】
短絡検出センサ8の電極棒8aが、インク貯留室62aのインク量が満量であるときの液面位置を示す上側指標62f1よりも上方に配置されている。これにより、インクが大気連通口62eに辿り着く前に、電磁バルブ64に遮断状態を取らせることが可能となる。
【0078】
また、電極棒8aは、上側指標62f1と大気連通口62eとの間に配置されている。これにより、インクが大気連通口62eに辿り着く前により確実に電磁バルブ64に遮断状態を取らせることが可能となる。
【0079】
上述の実施形態においては、短絡検出センサ8でインクの接液により、筐体11が閾値を超えて傾いているかを検出していたが、透過型光センサ208への接液により、筐体11が閾値を超えて傾いているかを検出してもよい。この第1変形例においては、
図11(a)に示すように、タンク本体62の後方側壁62dに、後方へ突出する突出部62iが形成されている。突出部62iは、透光性材料からなり、概ね直方体形状を有する。突出部62iは、上側指標62f1よりも上方の位置から大気連通口62eの下方の位置まで上下方向A1へ延びる。突出部62iの左右寸法は、インク貯留室62aの左右寸法より小さい。突出部62iは、インク貯留室62aと連通する内部空間を区画している。
【0080】
透過型光センサ(接液センサ)208は、
図11(a)に示すように、上側指標62f1と大気連通口62eとの間に配置されている。また、透過型光センサ208は、発光素子と、発光素子との間に突出部62iを挟む位置に配置され、発光素子からの光を受光する受光素子とを有する。発光素子は、突出部62iの下側指標62f2とほぼ同じ上下位置の部分に向けて、左右方向A3に平行な光を照射する。透過型光センサ208は、受光素子の受光量に応じたレベルを示す信号を制御部5に出力する。透過型光センサ208は、プリンタ1が傾いて設置されるなどして筐体11が閾値を超えて傾き、
図11(b)に示すように、インク貯留室62aのインク液面が、突出部62iの内部空間に侵入するときと、そうでないときとで異なる信号を制御部5に出力する。本変形例における閾値は、筐体11が傾くことで、インク貯留室62aのインクが大気連通口62eに差しかかる直前であって突出部62iの内部空間に侵入するときの筐体11の傾きをいう。
【0081】
本変形例においても、上述の実施形態と同様に、制御部5が、S101において、筐体11が閾値を超えて傾いているかを判定する。
図11(a)に示すように、プリンタ1が水平な設置面に設置されているときは、筐体11(インクタンク61)は傾かず、インク貯留室62aのインクが突出部62iの内部空間に侵入しない。このとき、透過型光センサ208は、筐体11が閾値を超えて傾いていないことを示す信号を制御部5に出力する。このようなプリンタ1の設置状況においては、筐体11は閾値を超えて傾いておらず(NO)、S101を繰り返して待機する。一方、
図11(b)に示すように、プリンタ1が水平に対して傾斜した設置面に設置されているときは、筐体11(インクタンク61)が傾く。このときの筐体11の傾きが閾値を超えて傾くと、インク貯留室62aのインクが突出部62iに侵入する。つまり、透過型光センサ208は、筐体11が閾値を超えて傾いていることを示す信号を制御部5に出力する。この場合(S101:YES)、S102に進む。こうして、上述の実施形態と同様な制御が行われる。
【0082】
また、本変形例においても、上述の実施形態と同様に、制御部5が、S201において、筐体11の傾きが閾値以下であるかを判定する。このとき、インクタンク61が、
図11(b)に示す状態が維持されると、筐体11が閾値を超えて傾いた状態のままであるため(S201:NO)、S201を繰り返して待機する。一方、インクタンク61が、
図11(b)に示す状態から
図11(a)に示す状態になると、インク貯留室62aのインクが、突出部62iの内部空間から排出される。つまり、透過型光センサ208は、筐体11が閾値を超えて傾いていないことを示す信号を制御部5に出力する。この場合(S201:YES)、S202に進む。こうして、上述の実施形態と同様な制御が行われる。このように本変形例においても、上述の実施形態と同様な構成においては、同じ効果を得ることができる。
【0083】
また、第2変形例として、短絡検出センサ8及び透過型光センサ208に代えて、
図11中二点鎖線で示すように、インクタンク61の上壁62b上に傾きセンサ308を設けてもよい。なお、傾きセンサ308の設置場所はプリンタ1内の適宜の位置に配置されておればよい。この場合、筐体11の傾きをインクの接液で検出することができないため、予め閾値となる傾きを設定する必要がある。本変形例における閾値としては、インク貯留室62aのインク量が満量であるときに筐体11を傾けた際に、当該インクが大気連通口62eに差しかかる直前(すなわち、
図11(b)に示すインク液面の状態)の筐体11の傾きとする。
【0084】
本変形例においても、上述の実施形態と同様に、制御部5が、S101において、筐体11が閾値を超えて傾いているかを判定する。
図11(a)に示すように、筐体11(インクタンク61)が傾いていないとき、傾きセンサ308は、筐体11が閾値を超えて傾いていないことを示す信号を制御部5に出力する。このようなプリンタ1の設置状況においては、筐体11は閾値を超えて傾いておらず(NO)、S101を繰り返して待機する。一方、
図11(b)に示すように、プリンタ1が水平に対して傾斜した設置面に設置されているときは、筐体11(インクタンク61)が傾く。このときの筐体11の傾きが閾値を超えて傾くと、傾きセンサ308は、筐体11が閾値を超えて傾いていることを示す信号を制御部5に出力する。この場合(S101:YES)、S102に進む。こうして、上述の実施形態と同様な制御が行われる。
【0085】
また、本変形例においても、上述の実施形態と同様に、制御部5が、S201において、筐体11の傾きが閾値以下であるかを判定する。このとき、インクタンク61が、
図11(b)に示す状態が維持されると、筐体11が閾値を超えて傾いた状態のままであるため(S201:NO)、S201を繰り返して待機する。一方、インクタンク61が、
図11(b)に示す状態から
図11(a)に示す状態になると、傾きセンサ308は、筐体11が閾値を超えて傾いていないことを示す信号を制御部5に出力する。この場合(S201:YES)、S202に進む。こうして、上述の実施形態と同様な制御が行われる。このように本変形例においても、上述の実施形態と同様な構成においては、同じ効果を得ることができる。
【0086】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。上述の実施形態、第1及び第2変形例においては、モノクロプリンタに採用しているが、カラープリンタに採用してもよい。これにおいても、上述と同様の効果を得ることができる。また、インクタンク61には、大気連通口62eとインク貯留室62aとを繋ぐ連通路を有していてもよい。この場合、電磁バルブ64は、当該連通路及び大気連通口62eから構成される大気連通路を、外部と連通する連通状態及び外部との連通を遮断する遮断状態を選択的に取ることが可能であればよい。また、電磁バルブ64が、大気連通口62eを直接的に開閉することで、連通状態及び遮断状態を選択的に取ってもよい。
【0087】
また、大気連通口62eは、インク貯留室62aの満量のインク液面よりも上方に配置されておれば、どこに形成されていてもよい。つまり、上壁62bやタンク本体62の後方側壁62d以外の側壁に形成されていてもよい。そして、電磁バルブなどの電気で駆動可能なバルブにより、当該大気連通口が連通する連通状態とその連通を遮断する遮断状態を選択的に取ることが可能であればよい。また、大気連通口が上壁62dに形成されている場合は、大気連通口の周囲近傍にインクを検出するセンサを設ければよい。また、タンク本体62の側壁に大気連通口が形成されている場合は、上下方向A1において、大気連通口と上側指標62f1(インク貯留室62aの満量のインク液面)との間に、インクを検出するセンサを設ければよい。
【0088】
また、筐体11が閾値を超えて傾いている場合は、S306やS403において、電磁バルブ64を遮断状態から連通状態を一旦取らせなくてもよい。
【0089】
上述の実施形態及び第1及び第2変形例においては、インクタンク61及びインクジェットヘッド41がキャリッジ70に搭載されたオンキャリッジ型であるが、キャリッジ70が設けられておらず、インクジェットヘッドが固定されたライン型インクジェットヘッドにおいても、本発明を採用することが可能である。これにおいても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0090】
また、インク以外の液体を吐出する液体吐出ヘッドを有する液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。バルブが、電磁バルブ64以外の電動ボールバルブや電動バタフライバルブなどから構成されていてもよい。すなわち、電気で駆動することが可能なバルブであればよい。
【0091】
また、上述の実施形態においては、キャップ63の開閉を検出した開閉センサ6からの信号に基づいて、インク注入口67からのインク注入を検出しているが、インク注入部92がインク注入口67に挿入された挿入状態及び抜去された抜去状態を検出する挿抜センサを設け、当該挿抜センサからの信号に基づいてインク注入口67からのインク注入を検出してもよい。また、インク貯留室62aのインクが増加したことを検出するセンサを設け、当該センサからのインク量の増加を示す信号の有無により、インク注入口67からのインク注入を検出してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 プリンタ(液体吐出装置)
5 制御部
6 開閉センサ(液体注入検出手段)
8 短絡検出センサ(センサ、接液センサ)
11 筐体
20 給送部(搬送機構)
35 搬送ローラ対(搬送機構)
36 排紙ローラ対(搬送機構)
41 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
42 ノズル
61 インクタンク(液体貯留部)
62a インク貯留室(液体貯留室)
62e 大気連通口(大気連通路)
63 キャップ(液体注入検出手段)
64 電磁バルブ(バルブ)
67 インク注入口(液体注入口)
69a 連通路(液体流路)
70 キャリッジ
71 移動機構
140 メモリ
208 透過型光センサ(センサ、接液センサ)
308 傾きセンサ