(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】クリーニング装置、画像形成装置および巻き取り制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20241126BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B41J2/165 307
B41J2/01 401
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2021012001
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽平
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-007577(JP,A)
【文献】特開2013-214033(JP,A)
【文献】特開2010-274533(JP,A)
【文献】特開2001-260368(JP,A)
【文献】特開2011-126130(JP,A)
【文献】特開2004-202842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドにより記録媒体上に画像を形成するヘッドユニットのノズル面に接触し、前記ノズル面に残留するインクをクリーニングするクリーニング部材と、
前記クリーニング部材を巻き取る巻き取り部と、
前記クリーニング部材によるクリーニング動作が実行される際、前記巻き取り部を制御し、防塵部材によって防塵されていなかった部分が前記ノズル面に接触しないように前記クリーニング部材を巻き取らせる制御部と、
を備え
、
前記制御部は、前記クリーニング部材によるクリーニング動作が複数回連続で実行される場合、2回目以降のクリーニング動作における前記クリーニング部材の巻き取り量が1回目のクリーニング動作における前記クリーニング部材の巻き取り量より小さくなるように前記巻き取り部を制御し、
前記クリーニング動作は、前記ノズル面への前記クリーニング部材の圧接、前記ノズル面からの前記クリーニング部材の離間、及び前記クリーニング部材の巻き取りを含む、
クリーニング装置。
【請求項2】
インクジェットヘッドにより記録媒体上に画像を形成するヘッドユニットのノズル面に接触し、前記ノズル面に残留するインクをクリーニングするクリーニング部材と、
前記クリーニング部材を巻き取る巻き取り部と、
前記クリーニング部材によるクリーニング動作が実行される際、前記巻き取り部を制御し、防塵部材によって防塵されていなかった部分が前記ノズル面に接触しないように前記クリーニング部材を巻き取らせる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記クリーニング部材によるクリーニング動作が実行された後、前記クリーニング部材を巻き戻すように前記巻き取り部を制御する、
クリーニング装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記クリーニング部材によるクリーニング動作が前回実行されてからの経過時間が所定時間以上である場合、前記クリーニング部材によるクリーニング動作が今回実行される際、前記防塵部材によって防塵されていなかった部分が前記ノズル面に接触しないように前記クリーニング部材を巻き取らせる、
請求項1
または2に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記クリーニング部材によるクリーニング動作が今回実行されてから次回実行されるまでの間、前記クリーニング部材を巻き取らないように前記巻き取り部を制御する、
請求項1
~3の何れか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記クリーニング部材によるクリーニング動作が複数回連続で実行される場合、2回目以降のクリーニング動作における前記クリーニング部材の巻き取り量が1回目のクリーニング動作における前記クリーニング部材の巻き取り量より小さくなるように前記巻き取り部を制御
し、
前記クリーニング動作は、前記ノズル面への前記クリーニング部材の圧接、前記ノズル面からの前記クリーニング部材の離間、及び前記クリーニング部材の巻き取りを含む、
請求項
2、あるいは、請求項2に従属する請求項3または4の何れか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記クリーニング部材によるクリーニング動作が実行された後、前記クリーニング部材を巻き戻すように前記巻き取り部を制御する、
請求項1
、あるいは、請求項1に従属する請求項3または4の何れか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項7】
前記巻き取り部は、回転しながら前記クリーニング部材を巻き取り、
前記制御部は、前記巻き取り部を回転駆動するステッピングモーターに出力される駆動パルス数に基づいて、前記クリーニング部材の巻き取り量を検出する、
請求項1~
6の何れか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項8】
前記巻き取り部は、回転しながら前記クリーニング部材を巻き取り、
前記巻き取り部の回転軸に、切り欠き部が形成された回転体が設けられ、
前記制御部は、前記回転体の回転に応じて検出される前記切り欠き部の回転量に基づいて、前記クリーニング部材の巻き取り量を検出する、
請求項1~
6の何れか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項9】
前記クリーニング部材は、布部材である、
請求項1~
8の何れか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項10】
請求項1~
9の何れか1項に記載のクリーニング装置と、
前記ヘッドユニットと、
を備える画像形成装置。
【請求項11】
インクジェットヘッドにより記録媒体上に画像を形成するヘッドユニットのノズル面に接触し、前記ノズル面に残留するインクをクリーニングするクリーニング部材と、
前記クリーニング部材を巻き取る巻き取り部と、
を備えるクリーニング装置の巻き取り制御方法であって、
前記クリーニング部材によるクリーニング動作が実行される際、前記巻き取り部を制御し、防塵部材によって防塵されていなかった部分が前記ノズル面に接触しないように前記クリーニング部材を巻き取ら
せ、
前記クリーニング部材によるクリーニング動作が複数回連続で実行される場合、2回目以降のクリーニング動作における前記クリーニング部材の巻き取り量が1回目のクリーニング動作における前記クリーニング部材の巻き取り量より小さくなるように前記巻き取り部を制御し、
前記クリーニング動作は、前記ノズル面への前記クリーニング部材の圧接、前記ノズル面からの前記クリーニング部材の離間、及び前記クリーニング部材の巻き取りを含む、
巻き取り制御方法。
【請求項12】
インクジェットヘッドにより記録媒体上に画像を形成するヘッドユニットのノズル面に接触し、前記ノズル面に残留するインクをクリーニングするクリーニング部材と、
前記クリーニング部材を巻き取る巻き取り部と、
を備えるクリーニング装置の巻き取り制御方法であって、
前記クリーニング部材によるクリーニング動作が実行される際、前記巻き取り部を制御し、防塵部材によって防塵されていなかった部分が前記ノズル面に接触しないように前記クリーニング部材を巻き取らせ、
前記クリーニング部材によるクリーニング動作が実行された後、前記クリーニング部材を巻き戻すように前記巻き取り部を制御する、
巻き取り制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング装置、画像形成装置および巻き取り制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送装置により搬送される記録媒体に対し、インクジェットヘッドに設けられた複数のノズルからインクを吐出することにより記録媒体に画像を形成(記録)するインクジェット画像形成装置が知られている。
【0003】
インクジェット画像形成装置が有するインクジェットヘッドは、複数のノズルからインクを吐出する。各ノズルは個別に圧力が印加されて記録する画像に応じたインクの吐出制御が行われる。ノズルのインク吐出口は、画像形成時に記録媒体に対向するインクジェットヘッドの一面(ノズル面)に整列して開口している。
【0004】
このような構成のインクジェット画像形成装置において、ノズル面に異物の付着、乾燥増粘したインクの残留、気泡の混在等があると、画像形成を行うための良好なインク吐出が行えない。そこで、インクの吐出状態を良好に維持するためにヘッドクリーニングが行われる。
【0005】
ヘッドクリーニングとして、ノズル上流側から加圧またはノズル面側からの吸引によってノズル内のインクを排出させることにより、排出されるインクとともに異物や乾燥増粘したインク、混入した気泡などを排除(浄化)することが行われる。
【0006】
また、このようなクリーニング動作としてのインク排出の後などにおいて、ノズル面にワイピング部材(クリーニング部材)を当接して移動させるワイピング動作によって、当該ノズル面に残留するインクをクリーニング(除去)することが行われる(例えば、特許文献1を参照)。ワイピング動作においては、インクを掻き落とすワイパーブレードや、吸収性のあるシート部材等のワイピング部材が使用される。
【0007】
上記特許文献1には、クリーニング部材としてのシート状部材の一部分で記録ヘッドのフェイス面をクリーニングした後、次回のクリーニングにおいてシート状部材の未使用部分が記録ヘッドのフェイス面に接触するように、シート状部材を巻き取る技術が記載されている。そして、上記特許文献1に記載の技術では、記録ヘッドのフェイス面に付着したインクを拭き取る動作(払拭動作)からの経過時間が長いほど、シート状部材に付着したインクが滲んで広がっていく(具体的には、拭き跡の幅が徐々に太くなってしまう)ため、払拭後におけるシート状部材の巻き取り量が多くなるように制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、クリーニング部材(シート状部材)によるクリーニング動作が実行されていない放置時において、当該クリーニング部材の表面が露出した状態で空気にさらされるため、空気中のごみや埃などの異物が当該クリーニング部材の表面に付着する場合がある。この場合、ノズル面(記録ヘッドのフェイス面)にクリーニング部材を接触させて当該ノズル面に残留するインクをクリーニングする際、クリーニング部材の表面に付着した異物がノズル面に開口しているインク吐出口に進入する。ひいては、異物が進入したインク吐出口からインクが吐出されて記録媒体に形成される画像の品質低下を招いてしまうという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、クリーニング部材を用いてノズル面に残留するインクをクリーニングする際、当該ノズル面に開口しているインク吐出口への異物の進入を防止することが可能なクリーニング装置、画像形成装置および巻き取り制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るクリーニング装置は、
インクジェットヘッドにより記録媒体上に画像を形成するヘッドユニットのノズル面に接触し、前記ノズル面に残留するインクをクリーニングするクリーニング部材と、
前記クリーニング部材を巻き取る巻き取り部と、
前記クリーニング部材によるクリーニング動作が実行される際、前記巻き取り部を制御し、防塵部材によって防塵されていなかった部分が前記ノズル面に接触しないように前記クリーニング部材を巻き取らせる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記クリーニング部材によるクリーニング動作が複数回連続で実行される場合、2回目以降のクリーニング動作における前記クリーニング部材の巻き取り量が1回目のクリーニング動作における前記クリーニング部材の巻き取り量より小さくなるように前記巻き取り部を制御し、
前記クリーニング動作は、前記ノズル面への前記クリーニング部材の圧接、前記ノズル面からの前記クリーニング部材の離間、及び前記クリーニング部材の巻き取りを含む。
また、本発明に係るクリーニング装置は、
インクジェットヘッドにより記録媒体上に画像を形成するヘッドユニットのノズル面に接触し、前記ノズル面に残留するインクをクリーニングするクリーニング部材と、
前記クリーニング部材を巻き取る巻き取り部と、
前記クリーニング部材によるクリーニング動作が実行される際、前記巻き取り部を制御し、防塵部材によって防塵されていなかった部分が前記ノズル面に接触しないように前記クリーニング部材を巻き取らせる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記クリーニング部材によるクリーニング動作が実行された後、前記クリーニング部材を巻き戻すように前記巻き取り部を制御する。
【0012】
本発明に係る画像形成装置は、
上記クリーニング装置と、
前記ヘッドユニットと、
を備える。
【0013】
本発明に係る巻き取り制御方法は、
インクジェットヘッドにより記録媒体上に画像を形成するヘッドユニットのノズル面に接触し、前記ノズル面に残留するインクをクリーニングするクリーニング部材と、
前記クリーニング部材を巻き取る巻き取り部と、
を備えるクリーニング装置の巻き取り制御方法であって、
前記クリーニング部材によるクリーニング動作が実行される際、前記巻き取り部を制御し、防塵部材によって防塵されていなかった部分が前記ノズル面に接触しないように前記クリーニング部材を巻き取らせ、
前記クリーニング部材によるクリーニング動作が複数回連続で実行される場合、2回目以降のクリーニング動作における前記クリーニング部材の巻き取り量が1回目のクリーニング動作における前記クリーニング部材の巻き取り量より小さくなるように前記巻き取り部を制御し、
前記クリーニング動作は、前記ノズル面への前記クリーニング部材の圧接、前記ノズル面からの前記クリーニング部材の離間、及び前記クリーニング部材の巻き取りを含む。
また、本発明に係る巻き取り制御方法は、
インクジェットヘッドにより記録媒体上に画像を形成するヘッドユニットのノズル面に接触し、前記ノズル面に残留するインクをクリーニングするクリーニング部材と、
前記クリーニング部材を巻き取る巻き取り部と、
を備えるクリーニング装置の巻き取り制御方法であって、
前記クリーニング部材によるクリーニング動作が実行される際、前記巻き取り部を制御し、防塵部材によって防塵されていなかった部分が前記ノズル面に接触しないように前記クリーニング部材を巻き取らせ、
前記クリーニング部材によるクリーニング動作が実行された後、前記クリーニング部材を巻き戻すように前記巻き取り部を制御する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、クリーニング部材を用いてノズル面に残留するインクをクリーニングする際、当該ノズル面に開口しているインク吐出口への異物の進入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】インクジェット画像形成装置の概略構成を示す図である。
【
図3】インクジェット画像形成装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
【
図4】クリーニング装置の構成および動作を説明する図である。
【
図5】クリーニング部材の巻き取り動作を説明する図である。
【
図6】インクジェット画像形成装置の巻き取り制御動作例を示すフローチャートである。
【
図7】クリーニング部材の巻き取り量を検出する構成の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、インクジェット画像形成装置1(本発明の「画像形成装置」として機能)の概略構成を示す図である。インクジェット画像形成装置1は、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30と、制御部40(
図3を参照)とを備える。
【0017】
インクジェット画像形成装置1は、制御部40による制御下で、給紙部10に格納された記録媒体Pを画像形成部20に搬送し、画像形成部20で記録媒体Pに画像を形成し、画像が形成された記録媒体Pを排紙部30に搬送する。記録媒体Pとしては、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛またはシート状の樹脂等、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0018】
給紙部10は、記録媒体Pを格納する給紙トレイ11と、給紙トレイ11から画像形成部20に記録媒体Pを搬送して供給する媒体供給部12とを有する。媒体供給部12は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを備え、このベルト上に記録媒体Pを載置した状態でローラーを回転させることで記録媒体Pを給紙トレイ11から画像形成部20へ搬送する。
【0019】
画像形成部20は、搬送部21と、受け渡しユニット22と、加熱部23と、ヘッドユニット24と、定着部25と、デリバリー部28などを有する。
【0020】
搬送部21は、円筒状の搬送ドラム211の搬送面211a(載置面)の上に載置された記録媒体Pを保持し、搬送ドラム211がX方向(
図1の紙面垂直方向)に延びた回転軸(円筒軸)を中心に回転して周回移動することで搬送ドラム211上の記録媒体Pを搬送方向(Y方向)に搬送する搬送動作を行う。
【0021】
搬送ドラム211は、その搬送面211a上で記録媒体Pを保持するための図示しない爪部および吸気部を備える。記録媒体Pは、爪部により端部が押さえられ、かつ吸気部により搬送面211aに吸い寄せられることで搬送面211aに保持される。搬送部21は、搬送ドラム211を回転させるための搬送ドラムモーター(図示せず)に接続されている。搬送ドラム211は、搬送ドラムモーターの回転量に比例した角度だけ回転する。
【0022】
受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12により搬送された記録媒体Pを搬送部21に引き渡す。受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12と搬送部21との間の位置に設けられ、媒体供給部12から搬送された記録媒体Pの一端をスイングアーム部221で保持して取り上げ、受け渡しドラム222を介して搬送部21に引き渡す。
【0023】
加熱部23は、受け渡しドラム222の配置位置とヘッドユニット24の配置位置との間に設けられ、搬送部21により搬送される記録媒体Pが所定の温度範囲内の温度となるように当該記録媒体Pを加熱する。加熱部23は、例えば、赤外線ヒーター等を有し、制御部40から供給される制御信号に基づいて赤外線ヒーターに通電して当該赤外線ヒーターを発熱させる。
【0024】
ヘッドユニット24は、記録媒体Pが保持された搬送ドラム211の回転に応じた適切なタイミングで、搬送ドラム211の搬送面211aに対向するノズル面(インク吐出面)に設けられたインク吐出口(ノズル開口部)から記録媒体Pに対してインクを吐出して画像を形成する。ヘッドユニット24は、ノズル面と搬送面211aとが所定の距離だけ離隔されるように配置される。
【0025】
本実施の形態におけるインクジェット画像形成装置1では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット24が記録媒体Pの搬送方向上流側からY,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
【0026】
図2は、ヘッドユニット24の構成を示す模式図である。ここでは、ヘッドユニット24のうち搬送ドラム211の搬送面211aと対向するノズル面245(
図4を参照)が示されている。
【0027】
ヘッドユニット24は、取り付け部材244に取り付けられた4つのインクジェットヘッド242を備える。インクジェットヘッド242の各々には、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、ノズル243とを各々有する複数の画像形成素子(記録素子)が設けられている。この画像形成素子は、圧電素子を変形動作させる駆動信号が入力されると、圧電素子の変形により圧力室が変形して圧力室内の圧力が変化し、圧力室に連通するノズル243からインクを吐出する。
【0028】
インクジェットヘッド242では、記録媒体Pの搬送方向と交差する方向(本実施の形態では、搬送方向と直交する方向、すなわちX方向)に等間隔に配列されたノズル243からなる2つのノズル列が形成されている。これら2つのノズル列は、ノズル243の配置位置が、各ノズル列におけるノズル243の配置間隔の2分の1だけX方向について互いにずれるように設けられている。
【0029】
4つのインクジェットヘッド242は、ノズル列のX方向についての配置範囲が切れ目なく繋がるように千鳥格子状に配置されている。ヘッドユニット24に含まれるノズル243のX方向についての配置範囲は、搬送部21により搬送される記録媒体Pのうち画像が形成される領域のX方向の幅をカバーしており、ヘッドユニット24の位置は、画像形成時には搬送ドラム211の回転軸に対して固定されて用いられる。すなわち、ヘッドユニット24は、記録媒体Pに対するX方向についての画像形成可能幅に亘ってインクを吐出可能なラインヘッドを有しており、インクジェット画像形成装置1は、シングルパス形式のインクジェット画像形成装置である。
【0030】
なお、インクジェットヘッド242が有するノズル列の数は、2つではなく、1つまたは3つ以上であっても良い。また、ヘッドユニット24が有するインクジェットヘッド242の数は、4つでなく、3つ以下または5つ以上であっても良い。
【0031】
画像形成素子のノズル243から吐出されるインクとしては、顔料を含むインクであって、例えば二酸化チタンなどを顔料として含有させた白インクが用いられる。また、画像形成素子のノズル243から吐出されるインクとしては、ゲル化剤を含有して、温度によってゲル状またはゾル状に相変化し、紫外線等のエネルギー線を照射することにより硬化する性質を有するゲルインクが用いられる。本実施の形態では、画像形成素子のノズル243から吐出されるインクとして、顔料を含むゲルインクが用いられる。
【0032】
ヘッドユニット24は、ヘッドユニット24内に貯留されるインクを加熱するインク加熱部(図示せず)を備える。インク加熱部は、制御部40による制御下で動作し、ゾル状となる温度にインクを加熱する。
【0033】
インクジェットヘッド242は、加熱されてゾル状となったインクを吐出する。このゾル状のインクが記録媒体Pに吐出されると、インク滴が記録媒体Pに着弾した後、自然冷却されることで速やかにインクがゲル状となって記録媒体P上で凝固する。
【0034】
定着部25は、搬送部21のX方向の幅に亘って配置された発光部を有し、搬送部21に載置された記録媒体Pに対して当該発光部から紫外線等のエネルギー線を照射して記録媒体P上に吐出されたインク(ゲルインク)を硬化させて定着させる。定着部25の発光部は、搬送方向についてヘッドユニット24の配置位置からデリバリー部28の受け渡しドラム281の配置位置までの間において搬送面211aと対向して配置される。
【0035】
デリバリー部28は、記録媒体Pを搬送部21からベルトループ282に受け渡す円筒状の受け渡しドラム281と、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを有するベルトループ282とを有し、受け渡しドラム281により搬送部21からベルトループ282上に受け渡された記録媒体Pをベルトループ282により搬送して排紙部30に送出する。
【0036】
排紙部30は、デリバリー部28により画像形成部20から送り出された記録媒体Pが載置される板状の排紙トレイ31を有する。
【0037】
インクジェット画像形成装置1においては、インクを吐出するノズル243が形成されたノズル面245に異物の付着、乾燥増粘したインクの残留、気泡の混在等があると、画像形成を行うための良好なインク吐出が行えない。そこで、インクの吐出状態を良好に維持するためにヘッドクリーニングが行われる。
【0038】
ヘッドクリーニングとして、ノズル上流側から加圧またはノズル面245側からの吸引によってノズル内のインクを強制排出させるパージ動作により、排出されるインクとともに異物や乾燥増粘したインク、混入した気泡などを排除(浄化)することが行われる。
【0039】
また、このようなクリーニング動作としてのインク排出の後などにおいて、ノズル面245にクリーニング部材を当接して移動させるワイピング動作によって、ノズル面245に残留するインクをクリーニングすることが行われる。ワイピング動作においては、吸収性のあるスポンジ部材や布部材(例えば布、不織布)、または、インクを掻き落とすゴムブレード(ブレード部材)等のクリーニング部材が使用される。
【0040】
図3は、インクジェット画像形成装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。インクジェット画像形成装置1は、加熱部23と、ヘッド駆動部241およびインクジェットヘッド242と、定着部25と、制御部40と、搬送駆動部51と、操作表示部52と、入出力インターフェース53と、クリーニング装置55とを備える。
【0041】
ヘッド駆動部241は、インクジェットヘッド242の画像形成素子に対して適切なタイミングで画像データに応じて圧電素子を変形動作させる駆動信号を供給することにより、インクジェットヘッド242のノズル243から画像データの画素値に応じた量のインクを吐出させる。
【0042】
制御部40は、CPU41(Central Processing Unit)、RAM42(Random Access Memory)、ROM43(Read Only Memory)および記憶部44を有する。
【0043】
CPU41は、ROM43に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM42に記憶させ、当該プログラムを実行して各種演算処理を行う。また、CPU41は、インクジェット画像形成装置1の全体動作を統括制御する。
【0044】
RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM42は、不揮発性メモリーを含んでも良い。
【0045】
ROM43は、CPU41により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM43に代えてEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられても良い。
【0046】
記憶部44には、入出力インターフェース53を介して外部装置2から入力された印刷ジョブ(画像形成命令)および当該印刷ジョブに係る画像データなどが記憶される。このうち印刷ジョブには、形成する画像に係る画像データを指定する情報の他、画像を形成する記録媒体Pの種別に係る情報(例えば、記録媒体Pの大きさおよび厚さ)が含まれる。記憶部44としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されても良い。
【0047】
搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて搬送ドラム211の搬送ドラムモーターに駆動信号を供給して搬送ドラム211を所定の速度およびタイミングで回転させる。
【0048】
また、搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて媒体供給部12、受け渡しユニット22およびデリバリー部28を動作させるためのモーターに駆動信号を供給して、記録媒体Pの搬送部21への供給および搬送部21からの排出を行わせる。
【0049】
操作表示部52は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといった表示装置と、操作キーや、表示装置の画面に重ねられて配置されたタッチパネルといった入力装置とを備える。操作表示部52は、表示装置において各種情報を表示させ、また入力装置に対するユーザーの入力操作を操作信号に変換して制御部40に出力する。
【0050】
入出力インターフェース53は、外部装置2と制御部40との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース53は、例えば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースの何れかまたはこれらの組み合わせで構成される。
【0051】
外部装置2は、例えばパーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース53を介してプリントジョブおよび画像データ等を制御部40に供給する。
【0052】
クリーニング装置55は、ヘッドユニット24のノズル面245にクリーニング部材70(
図4を参照)が当接した状態でヘッドユニット24を移動させるワイピング動作によって、ノズル面245に残留するインクをクリーニングする。本実施の形態では、クリーニング部材70として、吸収性のある布部材(例えば布、不織布)が使用される。
【0053】
図4は、クリーニング装置55の構成および動作を説明する図である。
図4に示すように、クリーニング装置55は、圧接離間部60と、繰り出しローラー62と、巻き取りローラー64(本発明の「巻き取り部」として機能)と、繰り出しローラー62と巻き取りローラー64との間に張設されたクリーニング部材70と、収容部90とを備える。なお、制御部40およびクリーニング装置55は、本発明の「クリーニング装置」として機能する。また、収容部90は、本発明の「防塵部材」として機能する。
【0054】
収容部90(ハウジング)は、
図4Aに示すように、繰り出しローラー62と、巻き取りローラー64と、クリーニング部材70とを収容し、繰り出しローラー62、巻き取りローラー64およびクリーニング部材70に対する塵埃の付着を防止する防塵機能を有する。また、収容部90は、繰り出しローラー62と巻き取りローラー64との間において上方に開口し、クリーニング部材70の一部の表面(上面)を上方に露出させる上方開口部92を有する。巻き取りローラー64の巻き取り方向(図中右方向)における上方開口部92の開口長さ、すなわち収容部90によりクリーニング部材70が覆われていない長さはdである。
【0055】
繰り出しローラー62は、制御部40の制御下において、巻回されたクリーニング部材70を回転しながら繰り出す。巻き取りローラー64は、制御部40の制御下において、繰り出しローラー62によって繰り出されたクリーニング部材70を回転しながら巻き取る。
【0056】
繰り出しローラー62と、巻き取りローラー64との間には、クリーニング部材70を下方から支持するバックアップ部材61が設けられている。バックアップ部材61は、例えば空気を透過可能な多孔質体(例えば、多孔質セラミック、液体透過性樹脂)から構成される平板上の部材である。バックアップ部材61は、ヘッドユニット24のノズル面245に対して平行であり、クリーニング部材70の内側に当接させることで、クリーニング部材70がノズル面245に平行となるように支持する。圧接離間部60は、公知の構成を有し、制御部40の制御下において、バックアップ部材61を上方に移動させることによってクリーニング部材70をヘッドユニット24のノズル面245に圧接させ、または、バックアップ部材61を下方に移動させることによってクリーニング部材70をヘッドユニット24のノズル面245から離間させる。
【0057】
図4Aは、クリーニング装置55によるクリーニングが行われる前の状態を示している。この状態では、制御部40は、圧接離間部60を制御し、バックアップ部材61を下方に移動させることによってクリーニング部材70をヘッドユニット24のノズル面245から離間させる。ヘッドユニット24のノズル面245には、インク80が残留している。なお、
図4B~4Dでは、クリーニング動作に関する理解の容易化を図るため、
図4Aに示す収容部90の図示を省略している。
【0058】
図4Bは、クリーニング装置55によるクリーニングが行われている状態を示している。この状態では、制御部40は、圧接離間部60を制御し、バックアップ部材61を上方に移動させることによってクリーニング部材70をヘッドユニット24のノズル面245に圧接させる。その結果、ヘッドユニット24のノズル面245に残留しているインク80は、クリーニング部材70に吸液(吸着)されてクリーニングされる。
【0059】
本実施の形態では、ノズル面245にクリーニング部材70を当接してヘッドユニット24を移動させるワイピング動作(擦過動作)によって、ノズル面245に残留するインク80をクリーニングすることが行われる。なお、このワイピング動作は、必ずしも必須の動作ではない。
【0060】
図4Cは、クリーニング装置55によるクリーニングが行われた後の状態を示している。この状態では、制御部40は、圧接離間部60を制御し、バックアップ部材61を下方に移動させることによってクリーニング部材70をヘッドユニット24のノズル面245から離間させる。
【0061】
図4Dは、クリーニング装置55による次回のクリーニングにおいて、クリーニング部材70の未使用部分がヘッドユニット24のノズル面245に接触するようにクリーニング部材70を巻き取っている状態を示している。制御部40は、繰り出しローラー62および巻き取りローラー64を制御し、巻回されたクリーニング部材70を繰り出させるとともに巻き取らせる。
【0062】
本実施の形態では、繰り出しローラー62および巻き取りローラー64を回転駆動する駆動モーターとしてステッピングモーターが使用される。制御部40は、ステッピングモーターに出力される駆動パルス数に基づいて、クリーニング部材70の巻き取り量を検出する。そして、制御部40は、検出した巻き取り量が所望の巻き取り量となるように繰り出しローラー62および巻き取りローラー64を制御する。
【0063】
ところで、
図4に示すように、クリーニング部材70によるクリーニング動作が実行されていない放置時において、収容部90の上方開口部92により当該クリーニング部材70の表面が露出した状態で空気にさらされる。そのため、空気中のごみや埃などの異物がクリーニング部材70の表面に付着する場合がある。この場合、ヘッドユニット24のノズル面245にクリーニング部材70を接触させて当該ノズル面245に残留するインクをクリーニングする際、クリーニング部材70の表面に付着した異物がノズル面245に開口しているインク吐出口に進入する。ひいては、異物が進入したインク吐出口からインクが吐出されて記録媒体Pに形成される画像の品質低下を招いてしまうという問題があった。
【0064】
そこで、本実施の形態では、クリーニング部材70を用いてノズル面245に残留するインク80をクリーニングする際、当該ノズル面245に開口しているインク吐出口への異物の進入を防止することを目的とし、制御部40は、クリーニング部材70によるクリーニング動作が実行される際、巻き取りローラー64を制御し、収容部90によって防塵されていなかった部分70A(
図5Aを参照)がノズル面245に接触しないようにクリーニング部材70を巻き取らせる。その後、収容部90によって防塵されていた防塵部分70B(具体的には、放置時において空気にさらされておらず空気中のごみや埃などの異物が表面に付着していない部分、
図5Bを参照)がノズル面245に対向し、ノズル面245に当該防塵部分70Bを当接してヘッドユニット24を移動させるワイピング動作(擦過動作)によって、ノズル面245に残留するインク80をクリーニングすることが行われる。
【0065】
これにより、ヘッドユニット24のノズル面245にクリーニング部材70を接触させて当該ノズル面245に残留するインクをクリーニングする際、クリーニング部材70の表面に付着した異物がノズル面245に開口しているインク吐出口に進入することを防止することができる。ひいては、異物が進入したインク吐出口からインクが吐出されることにより記録媒体Pに形成される画像の品質低下の発生を防止することができる。
【0066】
なお、
図4Dに示す例では、クリーニング装置55による次回のクリーニングにおいて、クリーニング部材70の未使用部分がヘッドユニット24のノズル面245に接触するようにクリーニング部材70を巻き取っている。この場合、クリーニング部材70によるクリーニング動作が実行されていない放置時において、収容部90の上方開口部92によりクリーニング部材70の未使用部分が露出した状態で空気にさらされる。そのため、空気中のごみや埃などの異物がクリーニング部材70の未使用部分(表面)に付着する場合がある。そして、クリーニング部材70によるクリーニング動作が実行される際、収容部90によって防塵されていなかった未使用部分がノズル面245に接触しないように、すなわちノズル面245に残留するインク80のクリーニングに使用されずにクリーニング部材70が巻き取られると、クリーニング部材70の不必要な消費(無駄)につながってしまう。
【0067】
そこで、クリーニング部材70の不必要な消費を減らす観点から、制御部40は、
図5Bに示すように、バックアップ部材61を下方に移動させることによってクリーニング部材70をヘッドユニット24のノズル面245から離間させた後、クリーニング部材70を巻き取らせなくても良い。つまり、制御部40は、クリーニング部材70によるクリーニング動作が今回実行されてから次回実行されるまでの間、クリーニング部材70を巻き取らないように繰り出しローラー62および巻き取りローラー64を制御しても良い。
【0068】
これにより、クリーニング部材70のうちクリーニング動作により汚れた部分(インク80が付着している部分であって、空気中のごみや埃などの異物が付着しても問題ない部分)をあえて巻き取らせることなく放置することで、次回のクリーニングにおいて、収容部90によって防塵されていなかった未使用部分がノズル面245に接触しないように不必要に巻き取られることを防止し、クリーニング部材70の無駄な消費を防止することができる。
【0069】
さらにクリーニング部材70の不必要な消費を減らす観点から、制御部40は、
図5Cに示すように、バックアップ部材61を下方に移動させることによってクリーニング部材70をヘッドユニット24のノズル面245から離間させた後、クリーニング部材70を巻き戻すように繰り出しローラー62および巻き取りローラー64を制御しても良い。
図5Cに示すように、クリーニング部材70の巻き取り方向において、クリーニング部材70のうちクリーニング動作により汚れた部分(インク80が付着している部分)の最上流位置70Pと、収容部90の上方開口部92の最上流位置とが一致している。
【0070】
これにより、クリーニング部材70の巻き取り方向において、クリーニング部材70のうちクリーニング動作により汚れた部分(インク80が付着している部分)の上流側部分70C(汚れていない部分であってインクのクリーニングに使用可能な部分、
図5Bを参照)が、次回のクリーニングにおいて、ノズル面245に接触しないように不必要に巻き取られることなく、ノズル面245に残留するインクのクリーニングに使用される。よって、
図5Bに示す例と比べて、クリーニング部材70の不必要な消費をさらに減らすことができる。
【0071】
次に、インクジェット画像形成装置1の巻き取り制御動作について説明する。
図6は、インクジェット画像形成装置1の巻き取り制御動作例(本発明の「巻き取り制御方法」に対応)を示すフローチャートである。
図6におけるステップS100は、インクジェット画像形成装置1においてヘッドクリーニングの実行指示が発生した場合に開始する。また、
図6に示す巻き取り制御動作では、クリーニング装置55によるクリーニングが行われる毎に、クリーニング装置55による次回のクリーニングにおいてクリーニング部材70の未使用部分がヘッドユニット24のノズル面245に接触するように、クリーニング部材70を巻き取っている。
【0072】
まず、制御部40は、クリーニング部材70によるクリーニング動作が前回実行されてからの経過時間が所定時間(例えば、3時間)以上であるか否かについて判定する(ステップS100)。判定の結果、クリーニング動作が前回実行されてからの経過時間が所定時間以上である場合(ステップS100、YES)、制御部40は、巻き取りローラー64を制御し、収容部90によって防塵されていなかった部分70Aがノズル面245に接触しないようにクリーニング部材70を巻き取らせる(ステップS120)。これにより、収容部90によって防塵されていた防塵部分70B(具体的には、放置時において空気にさらされておらず空気中のごみや埃などの異物が表面に付着していない部分)がノズル面245に対向する。その後、処理はステップS140に遷移する。
【0073】
一方、クリーニング動作が前回実行されてからの経過時間が所定時間未満である場合(ステップS100、NO)、処理はステップS140に遷移する。これは、クリーニング部材70によるクリーニング動作が実行されていない放置時間(経過時間)が短く、収容部90の上方開口部92によりクリーニング部材70の表面が露出した状態で空気にさらされても、空気中のごみや埃などの異物がクリーニング部材70の表面に付着する量が少ないことが想定されるからである。
【0074】
ステップS140においては、圧接離間部60を制御し、バックアップ部材61を上方に移動させることによってクリーニング部材70をヘッドユニット24のノズル面245に圧接させる(ステップS140)。その結果、ヘッドユニット24のノズル面245に残留しているインク80は、クリーニング部材70に吸液(吸着)されてクリーニングされる。
【0075】
次に、制御部40は、圧接離間部60を制御し、バックアップ部材61を下方に移動させることによってクリーニング部材70をヘッドユニット24のノズル面245から離間させる(ステップS160)。
【0076】
最後に、制御部40は、繰り出しローラー62および巻き取りローラー64を制御し、クリーニング装置55による次回のクリーニングにおいてクリーニング部材70の未使用部分がヘッドユニット24のノズル面245に接触するようにクリーニング部材70を繰り出させるとともに巻き取らせる(ステップS180)。ステップS180の処理が完了することによって、インクジェット画像形成装置1は、巻き取り制御動作を終了する。
【0077】
以上詳しく説明したように、本実施の形態におけるインクジェット画像形成装置1(画像形成装置)は、インクジェットヘッド242により記録媒体P上に画像を形成するヘッドユニット24のノズル面245に接触し、ノズル面245に残留するインクをクリーニングするクリーニング部材70と、クリーニング部材70を巻き取る巻き取りローラー64(巻き取り部)と、クリーニング部材70によるクリーニング動作が実行される際、巻き取りローラー64を制御し、収容部90(防塵部材)によって防塵されていなかった部分70Aがノズル面245に接触しないようにクリーニング部材70を巻き取らせる制御部40とを備える。
【0078】
このように構成した本実施の形態によれば、収容部90によって防塵されていた防塵部分70B(具体的には、放置時において空気にさらされておらず空気中のごみや埃などの異物が表面に付着していない部分)がノズル面245に対向し、ノズル面245に当該防塵部分70Bを当接してヘッドユニット24を移動させるワイピング動作によって、ノズル面245に残留するインク80をクリーニングすることが行われる。これにより、ヘッドユニット24のノズル面245にクリーニング部材70を接触させて当該ノズル面245に残留するインクをクリーニングする際、クリーニング部材70の表面に付着した異物がノズル面245に開口しているインク吐出口に進入することを防止することができる。ひいては、異物が進入したインク吐出口からインクが吐出されることにより記録媒体Pに形成される画像の品質低下の発生を防止することができる。
【0079】
なお、上記実施の形態において、制御部40は、クリーニング部材70によるクリーニング動作が複数回連続で実行される場合、2回目以降のクリーニング動作におけるクリーニング部材70の巻き取り量が1回目のクリーニング動作におけるクリーニング部材70の巻き取り量より小さくなるように繰り出しローラー62および巻き取りローラー64を制御しても良い。2回目以降のクリーニング動作においては、1回目のクリーニング動作と異なり、クリーニング部材70のうち収容部90により防塵されていた防塵部分(具体的には、放置時において空気にさらされておらず空気中のごみや埃などの異物が表面に付着していない部分)が継続的にノズル面245に接触するように巻き取られるからである。ここで、クリーニング部材70によるクリーニング動作が複数回連続で実行されるとは、同一のヘッドユニット24のノズル面245に対するクリーニング動作が複数回連続で実行される場合と、複数の異なるヘッドユニット24のノズル面245に対するクリーニング動作が連続で実行される場合とが含まれる。
【0080】
また、上記実施の形態では、繰り出しローラー62および巻き取りローラー64を回転駆動するステッピングモーターに出力される駆動パルス数に基づいて、クリーニング部材70の巻き取り量を検出する例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、
図7に示すように、巻き取りローラー64の回転軸64Aにおいて、切り欠き部94A(スリット)が形成された回転体94(円盤)が設けられても良い。回転体94は、巻き取りローラー64の回転に連動して回転する。そして、非接触式の反射型フォトセンサー96は、回転体94の回転に応じて、回転体94に形成された切り欠き部94Aの通過回数(すなわち、回転量)を検出し、その検出結果を制御部40に出力する。制御部40は、反射型フォトセンサー96から出力された検出結果に基づいて、クリーニング部材70の巻き取り量を検出する。
【0081】
また、上記実施の形態では、シングルパス形式のインクジェット画像形成装置1を例に挙げて説明したが、ヘッドユニットを走査させながら画像の記録を行うインクジェット画像形成装置に本発明を適用しても良い。また、ヘッドユニットに単一のノズルが設けられたインクジェット画像形成装置に本発明を適用しても良い。
【0082】
また、上記実施の形態では、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 インクジェット画像形成装置
2 外部装置
10 給紙部
11 給紙トレイ
12 媒体供給部
20 画像形成部
21 搬送部
211 搬送ドラム
211a 搬送面
22 受け渡しユニット
23 加熱部
24 ヘッドユニット
241 ヘッド駆動部
242 インクジェットヘッド
243 ノズル
244 取り付け部材
245 ノズル面
25 定着部
28 デリバリー部
30 排紙部
31 排紙トレイ
40 制御部
41 CPU
42 RAM
43 ROM
44 記憶部
51 搬送駆動部
52 操作表示部
53 入出力インターフェース
55 クリーニング装置
60 圧接離間部
61 バックアップ部材
62 繰り出しローラー
64 巻き取りローラー
70 クリーニング部材
80 インク
90 収容部
92 上方開口部
94 回転体
94A 切り欠き部
96 反射型フォトセンサー
P 記録媒体