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特許7593150液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20241126BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/01 451
B41J2/165 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021013140
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116785
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】飯田 翔太郎
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-245489(JP,A)
【文献】特開2018-039198(JP,A)
【文献】特開平08-197744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有するヘッドと、
キャップと、
前記キャップが前記ヘッドに接触して前記複数のノズルを覆うキャッピング状態と前記キャップが前記ヘッドから離隔して前記複数のノズルを覆わないアンキャッピング状態とを選択的に取り得るように、前記ヘッド及び前記キャップを相対的に移動させる移動機構と、
前記ヘッドに対して相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、
前記ヘッドを走査方向に移動させる走査機構であって、前記移動機構を構成する走査機構と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記キャップが前記アンキャッピング状態にあるときに、画像データに基づいて、前記搬送機構により記録媒体を搬送させ、かつ、前記ヘッドに電圧を出力して記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、記録処理と、
前記キャップが前記アンキャッピング状態にあるときに、前記画像データとは異なるフラッシングデータに基づいて、前記ヘッドに電圧を出力して前記複数のノズルから液体を吐出させる、フラッシング処理と、
前記移動機構を駆動させ、前記キャップを前記アンキャッピング状態から前記キャッピング状態に移行させる、キャップ処理と、を実行し、
さらに、
前記記録処理の後、前記記録処理の後かつ前記キャップ処理の前に実行される前記フラッシング処理である第1フラッシング処理の前に、前記ヘッドの温度を取得する、第1取得処理と、
前記第1取得処理で取得された温度に基づいて第1フラッシング用電圧を決定する、第1決定処理と、を実行し、
前記第1フラッシング処理において、前記第1決定処理で決定された前記第1フラッシング用電圧を前記ヘッドに出力し、
1の記録媒体に対する前記記録処理は、第1記録処理及び第2記録処理を含み、前記第1記録処理と前記第2記録処理との間に前記フラッシング処理である第2フラッシング処理が実行される場合において、
前記制御部は、
前記第1記録処理の後、前記第2フラッシング処理の前に、前記ヘッドの温度を取得する、第2取得処理と、
前記第2取得処理で取得された温度に基づいて第2フラッシング用電圧を決定する、第2決定処理と、を実行し、
前記第2フラッシング処理において、前記第2決定処理で決定された前記第2フラッシング用電圧を前記ヘッドに出力し、
さらに、前記制御部は、
前記第1記録処理の前に、前記ヘッドの温度を取得する、第3取得処理と、
前記第3取得処理で取得された温度に基づいて記録用電圧を決定する、第3決定処理と、を実行し、
前記第1記録処理及び前記第2記録処理において、前記第3決定処理で決定された前記記録用電圧を前記ヘッドに出力し、
前記第1記録処理の後、前記第2フラッシング処理の前に、前記走査機構によって前記ヘッドを移動させる間に、前記ヘッドに出力される電圧を前記記録用電圧から前記第2フラッシング用電圧に変更することを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第2フラッシング処理の後、前記第2記録処理の前に、前記走査機構によって前記ヘッドを移動させる間に、前記ヘッドに出力される電圧を前記第2フラッシング用電圧から前記記録用電圧に変更することを特徴とする、請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第2フラッシング処理において前記複数のノズルから液体が吐出されるフラッシング領域は、前記第2記録処理において前記複数のノズルから液体が吐出される吐出領域に対し、前記走査方向の一方に位置し、
前記制御部は、
前記フラッシング領域と前記吐出領域との前記走査方向の間隔が第1所定間隔未満であるか否かを判断する、第1判断処理をさらに実行し、
前記第1判断処理において、前記間隔が前記第1所定間隔未満であると判断された場合、
前記走査方向の一方から他方に向かう第1方向に前記ヘッドを移動させる第1移動と、
前記第1移動の後、前記走査方向の他方から一方に向かう第2方向であって前記第1方向と逆の第2方向に前記ヘッドを移動させる第2移動と、
前記第2移動の後、前記第1方向に前記ヘッドを移動させる第3移動と、
を前記走査機構に実行させ、
前記第1移動中に、前記第2フラッシング処理を実行することを特徴とする、請求項又はに記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第2フラッシング処理において前記複数のノズルから液体が吐出されるフラッシング領域は、前記第2記録処理において前記複数のノズルから液体が吐出される吐出領域に対し、前記走査方向の一方に位置し、
前記制御部は、
前記フラッシング領域と前記吐出領域との前記走査方向の間隔が第2所定間隔未満であるか否かを判断する、第2判断処理をさらに実行し、
前記第2判断処理において、前記間隔が前記第2所定間隔未満であると判断された場合、
前記走査方向の一方から他方に向けて前記ヘッドを移動させるときに、
第1速度で移動させる低速移動と、
前記第1速度よりも高い第2速度で移動させる高速移動と、
を前記走査機構に実行させ、
前記低速移動中に、前記第2フラッシング処理を実行することを特徴とする、請求項又はに記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第2フラッシング処理において前記複数のノズルから液体が吐出されるフラッシング領域は、前記第2記録処理において前記複数のノズルから液体が吐出される吐出領域に対し、前記走査方向の一方に位置し、
前記制御部は、
前記記録処理において、前記走査機構により前記走査方向の他方から一方に向けて前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる正走査動作と、前記走査機構により前記走査方向の一方から他方に向けて前記ヘッドを移動させながら前記複数のノズルから液体を吐出させる逆走査動作と、を行わせ、
前記第1記録処理で行われる前走査動作と、前記第2記録処理で行われる前記前走査動作と連続する後走査動作とが、共に、前記正走査動作であるか否かを判断する、第3判断処理をさらに実行し、
前記第3判断処理において、前記前走査動作と前記後走査動作とが共に前記正走査動作であると判断された場合、
前記前走査動作と前記後走査動作との間であって、前記走査機構により前記走査方向の一方から他方に向けて前記ヘッドを移動させる間に、
前記第2フラッシング処理を実行し、
前記第2フラッシング処理の後、前記ヘッドに出力される電圧を前記第2フラッシング用電圧から前記記録用電圧に変更することを特徴とする、請求項又はに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
複数のノズルを有するヘッドと、キャップと、前記キャップが前記ヘッドに接触して前記複数のノズルを覆うキャッピング状態と前記キャップが前記ヘッドから離隔して前記複数のノズルを覆わないアンキャッピング状態とを選択的に取り得るように、前記ヘッド及び前記キャップを相対的に移動させる移動機構と、前記ヘッドに対して相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、前記ヘッドを走査方向に移動させる走査機構であって、前記移動機構を構成する走査機構と、を備えた液体吐出装置を制御する制御方法であって、
前記キャップが前記アンキャッピング状態にあるときに、画像データに基づいて、前記搬送機構により記録媒体を搬送させ、かつ、前記ヘッドに電圧を出力して記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、記録処理と、
前記キャップが前記アンキャッピング状態にあるときに、前記画像データとは異なるフラッシングデータに基づいて、前記ヘッドに電圧を出力して前記複数のノズルから液体を吐出させる、フラッシング処理と、
前記移動機構を駆動させ、前記キャップを前記アンキャッピング状態から前記キャッピング状態に移行させる、キャップ処理と、を実行し、
さらに、
前記記録処理の後、前記記録処理の後かつ前記キャップ処理の前に実行される前記フラッシング処理である第1フラッシング処理の前に、前記ヘッドの温度を取得する、第1取得処理と、
前記第1取得処理で取得された温度に基づいて第1フラッシング用電圧を決定する、第1決定処理と、を実行し、
前記第1フラッシング処理において、前記第1決定処理で決定された前記第1フラッシング用電圧を前記ヘッドに出力し、
さらに、
1の記録媒体に対する前記記録処理は、第1記録処理及び第2記録処理を含み、前記第1記録処理と前記第2記録処理との間に前記フラッシング処理である第2フラッシング処理が実行される場合において、
前記第1記録処理の後、前記第2フラッシング処理の前に、前記ヘッドの温度を取得する、第2取得処理と、
前記第2取得処理で取得された温度に基づいて第2フラッシング用電圧を決定する、第2決定処理と、を実行し、
前記第2フラッシング処理において、前記第2決定処理で決定された前記第2フラッシング用電圧を前記ヘッドに出力し、
さらに、
前記第1記録処理の前に、前記ヘッドの温度を取得する、第3取得処理と、
前記第3取得処理で取得された温度に基づいて記録用電圧を決定する、第3決定処理と、を実行し、
前記第1記録処理及び前記第2記録処理において、前記第3決定処理で決定された前記記録用電圧を前記ヘッドに出力し、
前記第1記録処理の後、前記第2フラッシング処理の前に、前記走査機構によって前記ヘッドを移動させる間に、前記ヘッドに出力される電圧を前記記録用電圧から前記第2フラッシング用電圧に変更することを特徴とする、制御方法。
【請求項7】
複数のノズルを有するヘッドと、キャップと、前記キャップが前記ヘッドに接触して前記複数のノズルを覆うキャッピング状態と前記キャップが前記ヘッドから離隔して前記複数のノズルを覆わないアンキャッピング状態とを選択的に取り得るように、前記ヘッド及び前記キャップを相対的に移動させる移動機構と、前記ヘッドに対して相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、前記ヘッドを走査方向に移動させる走査機構であって、前記移動機構を構成する走査機構と、を備えた液体吐出装置を、
前記キャップが前記アンキャッピング状態にあるときに、画像データに基づいて、前記搬送機構により記録媒体を搬送させ、かつ、前記ヘッドに電圧を出力して記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、記録処理を実行する記録手段、
前記キャップが前記アンキャッピング状態にあるときに、前記画像データとは異なるフラッシングデータに基づいて、前記ヘッドに電圧を出力して前記複数のノズルから液体を吐出させる、フラッシング処理を実行するフラッシング手段、及び、
前記移動機構を駆動させ、前記キャップを前記アンキャッピング状態から前記キャッピング状態に移行させる、キャップ処理を実行するキャップ手段、として機能させ、
さらに、前記液体吐出装置を、
前記記録処理の後、前記記録処理の後かつ前記キャップ処理の前に実行される前記フラッシング処理である第1フラッシング処理の前に、前記ヘッドの温度を取得する、第1取得手段、及び、
前記第1取得手段により取得された温度に基づいて第1フラッシング用電圧を決定する、第1決定手段、として機能させ、
前記フラッシング手段は、前記第1フラッシング処理において、前記第1決定手段により決定された前記第1フラッシング用電圧を前記ヘッドに出力し、
さらに、前記液体吐出装置を、
1の記録媒体に対する前記記録処理は、第1記録処理及び第2記録処理を含み、前記第1記録処理と前記第2記録処理との間に前記フラッシング処理である第2フラッシング処理が実行される場合において、
前記第1記録処理の後、前記第2フラッシング処理の前に、前記ヘッドの温度を取得する、第2取得手段、及び、
前記第2取得手段により取得された温度に基づいて第2フラッシング用電圧を決定する、第2決定手段、として機能させ、
前記フラッシング手段は、前記第2フラッシング処理において、前記第2決定手段により決定された前記第2フラッシング用電圧を前記ヘッドに出力し、
さらに、前記液体吐出装置を、
前記第1記録処理の前に、前記ヘッドの温度を取得する、第3取得手段、及び、
前記第3取得手段により取得された温度に基づいて記録用電圧を決定する、第3決定手段、として機能させ、
前記記録手段は、
前記第1記録処理及び前記第2記録処理において、前記第3決定手段により決定された前記記録用電圧を前記ヘッドに出力し、
前記第1記録処理の後、前記第2フラッシング処理の前に、前記走査機構によって前記ヘッドを移動させる間に、前記ヘッドに出力される電圧を前記記録用電圧から前記第2フラッシング用電圧に変更することを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシング処理を実行する液体吐出装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、用紙への画像の印刷(記録処理)の直前に、フラッシング処理を行うことが示されている。これにより、ノズル内の液体の増粘を解消し、記録処理時の吐出不良を抑制できる。
【0003】
また、特許文献1には、用紙への画像の印刷(記録処理)が行われないときには、ノズルをキャップ部材で覆うこと(キャップ処理)が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-175361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、長期間のキャッピングにおけるノズル内の液体の増粘を抑制するという観点等から、記録処理の後かつキャップ処理の前に、フラッシング処理(第1フラッシング処理)を実行することが考えられる。しかしながら、第1フラッシング処理において、記録処理時の電圧と同じ電圧をヘッドに出力すると、液体の吐出量が不足して増粘抑制効果が不十分になったり、液体の吐出量が多過ぎて液体の消費量が過大になったりという問題が生じ得る。
【0006】
本発明の目的は、適切な吐出量で第1フラッシング処理を実行できる液体吐出装置、その制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液体吐出装置は、複数のノズルを有するヘッドと、キャップと、前記キャップが前記ヘッドに接触して前記複数のノズルを覆うキャッピング状態と前記キャップが前記ヘッドから離隔して前記複数のノズルを覆わないアンキャッピング状態とを選択的に取り得るように、前記ヘッド及び前記キャップを相対的に移動させる移動機構と、前記ヘッドに対して相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記キャップが前記アンキャッピング状態にあるときに、画像データに基づいて、前記搬送機構により記録媒体を搬送させ、かつ、前記ヘッドに電圧を出力して記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、記録処理と、前記キャップが前記アンキャッピング状態にあるときに、前記画像データとは異なるフラッシングデータに基づいて、前記ヘッドに電圧を出力して前記複数のノズルから液体を吐出させる、フラッシング処理と、前記移動機構を駆動させ、前記キャップを前記アンキャッピング状態から前記キャッピング状態に移行させる、キャップ処理と、を実行し、さらに、前記記録処理の後、前記記録処理の後かつ前記キャップ処理の前に実行される前記フラッシング処理である第1フラッシング処理の前に、前記ヘッドの温度を取得する、第1取得処理と、前記第1取得処理で取得された温度に基づいて第1フラッシング用電圧を決定する、第1決定処理と、を実行し、前記第1フラッシング処理において、前記第1決定処理で決定された前記第1フラッシング用電圧を前記ヘッドに出力することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る制御方法は、複数のノズルを有するヘッドと、キャップと、前記キャップが前記ヘッドに接触して前記複数のノズルを覆うキャッピング状態と前記キャップが前記ヘッドから離隔して前記複数のノズルを覆わないアンキャッピング状態とを選択的に取り得るように、前記ヘッド及び前記キャップを相対的に移動させる移動機構と、前記ヘッドに対して相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、を備えた液体吐出装置を制御する制御方法であって、前記キャップが前記アンキャッピング状態にあるときに、画像データに基づいて、前記搬送機構により記録媒体を搬送させ、かつ、前記ヘッドに電圧を出力して記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、記録処理と、前記キャップが前記アンキャッピング状態にあるときに、前記画像データとは異なるフラッシングデータに基づいて、前記ヘッドに電圧を出力して前記複数のノズルから液体を吐出させる、フラッシング処理と、前記移動機構を駆動させ、前記キャップを前記アンキャッピング状態から前記キャッピング状態に移行させる、キャップ処理と、を実行し、さらに、前記記録処理の後、前記記録処理の後かつ前記キャップ処理の前に実行される前記フラッシング処理である第1フラッシング処理の前に、前記ヘッドの温度を取得する、第1取得処理と、前記第1取得処理で取得された温度に基づいて第1フラッシング用電圧を決定する、第1決定処理と、を実行し、前記第1フラッシング処理において、前記第1決定処理で決定された前記第1フラッシング用電圧を前記ヘッドに出力することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るプログラムは、複数のノズルを有するヘッドと、キャップと、前記キャップが前記ヘッドに接触して前記複数のノズルを覆うキャッピング状態と前記キャップが前記ヘッドから離隔して前記複数のノズルを覆わないアンキャッピング状態とを選択的に取り得るように、前記ヘッド及び前記キャップを相対的に移動させる移動機構と、前記ヘッドに対して相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、を備えた液体吐出装置を、前記キャップが前記アンキャッピング状態にあるときに、画像データに基づいて、前記搬送機構により記録媒体を搬送させ、かつ、前記ヘッドに電圧を出力して記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、記録手段、前記キャップが前記アンキャッピング状態にあるときに、前記画像データとは異なるフラッシングデータに基づいて、前記ヘッドに電圧を出力して前記複数のノズルから液体を吐出させる、フラッシング手段、及び、前記移動機構を駆動させ、前記キャップを前記アンキャッピング状態から前記キャッピング状態に移行させる、キャップ手段、として機能させ、さらに、前記記録手段による処理の後、前記記録手段による処理の後かつ前記キャップ手段による処理の前に実行される前記フラッシング手段による処理である第1フラッシング処理の前に、前記ヘッドの温度を取得する、第1取得手段、及び、前記第1取得手段により取得された温度に基づいて第1フラッシング用電圧を決定する、第1決定手段、として機能させ、前記第1フラッシング処理において、前記第1決定手段により決定された前記第1フラッシング用電圧を前記ヘッドに出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録処理の後かつ第1フラッシング処理の前にヘッドの温度を取得し、当該温度に基づく電圧で第1フラッシング処理を実行する。これにより、適切な吐出量で第1フラッシング処理を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタの全体構成を示す平面図である。
図2図1に示されているヘッドの断面図である。
図3図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図4図1のプリンタのCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る記録処理における走査動作と各種フラッシング処理との関係を示す模式図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るプリンタのCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る記録処理における走査動作と各種フラッシング処理との関係を示す模式図である。
図8】本発明の第3実施形態に係るプリンタのCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る記録処理における走査動作と各種フラッシング処理との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
先ず、図1図3を参照し、本発明の第1実施形態に係るプリンタ100の全体構成、及び、プリンタ100の各部の構成について説明する。
【0013】
プリンタ100は、図1に示すように、下面に複数のノズルNが形成されたヘッド10と、ヘッド10を保持するキャリッジ20と、キャリッジ20及びヘッド10を走査方向(鉛直方向と直交する方向)に移動させる走査機構30と、用紙1(記録媒体)を下方から支持するプラテン40と、用紙1を搬送方向(走査方向及び鉛直方向と直交する方向)に搬送する搬送機構50と、プラテン40に対して走査方向の一方に配置されたフラッシング受容部材60と、プラテン40に対して走査方向の他方に配置されたキャップ70と、制御装置90とを備えている。
【0014】
ノズルNは、走査方向に並ぶ4つのノズル列Nc,Nm,Ny,Nkを構成している。各ノズル列Nc,Nm,Ny,Nkは、搬送方向に並ぶ複数のノズルNで構成されている。ノズル列Ncを構成するノズルNはシアンのインク、ノズル列Nmを構成するノズルNはマゼンタのインク、ノズル列Nyを構成するノズルNはイエローのインク、ノズル列Nkを構成するノズルNはブラックのインクを、それぞれ吐出する。
【0015】
走査機構30は、キャリッジ20を支持する一対のガイド31,32と、キャリッジ20に連結されたベルト33とを含む。ガイド31,32及びベルト33は、走査方向に延びている。制御装置90の制御によりキャリッジモータ30m(図3参照)が駆動されると、ベルト33が走行し、ガイド31,32に沿ってキャリッジ20及びヘッド10が走査方向に移動する。
【0016】
プラテン40は、ヘッド10の下方に配置されている。プラテン40の上面に、用紙1が支持される。
【0017】
搬送機構50は、2つのローラ対51,52を有する。搬送方向においてローラ対51とローラ対52との間に、ヘッド10及びプラテン40が配置されている。制御装置90の制御により搬送モータ50m(図3参照)が駆動されると、ローラ対51,52が用紙1を挟持した状態で回転し、用紙1が搬送方向に搬送される。このように、搬送機構50はヘッド10に対して相対的に用紙1を搬送する。
【0018】
フラッシング受容部材60は、搬送方向においてガイド31,32の間に配置されており、その表面にフラッシング領域60rを有する。フラッシング領域60rは、搬送機構50による用紙1の搬送領域外にあり、搬送領域と走査方向に隣接する位置にある。フラッシング領域60rに向けて、後述するキャップ前フラッシング処理(第1フラッシング処理)や記録中フラッシング処理(第2フラッシング処理)が行われる。
【0019】
キャップ70は、上面が開口した箱状の部材であり、キャップ昇降モータ70m(図3参照)の駆動により鉛直方向に移動可能である。ヘッド10がキャップ70の上方に位置するときに、制御装置90の制御によりキャップ昇降モータ70mが駆動され、キャップ70が上方に移動されることで、キャップ70がヘッド10の下面に接触し、キャップ70とヘッド10との間に密閉空間が形成される。このとき、ヘッド10に形成された全てのノズルNがキャップ70で覆われる。このときのキャップ70の状態を「キャッピング状態」という。一方、キャップ70がヘッド10から離隔してノズルNを覆わない状態(キャップ70とヘッド10との間に密閉空間が形成されない状態)を「アンキャッピング状態」という。
【0020】
ここで、走査機構30(図1参照)及びキャップ昇降モータ70m(図3参照)は、キャップ70がキャッピング状態とアンキャッピング状態とを選択的に取り得るようにヘッド10及びキャップ70を相対的に移動させるものであり、本発明の「移動機構」を構成する。
【0021】
キャップ70は、チューブ及び吸引ポンプ70pを介して、廃インクタンク77と連通している。キャップ70がキャッピング状態にあるときに、制御装置90の制御により吸引ポンプ70pが駆動されると、キャップ70とヘッド10との間の密閉空間が減圧され、ノズルNからインクが強制的に排出される。排出されたインクは、キャップ70に受容され、廃インクタンク77へと流れる。
【0022】
ヘッド10は、図2に示すように、流路ユニット12と、アクチュエータユニット13とを含む。
【0023】
流路ユニット12の下面に、複数のノズルN(図1参照)が形成されている。流路ユニット12の内部には、インクタンク(図示略)に連通する共通流路12aと、ノズルN毎に個別の個別流路12bとが形成されている。個別流路12bは、共通流路12aの出口から圧力室12pを経てノズルNに至る流路である。流路ユニット12の上面には、複数の圧力室12pが開口している。
【0024】
アクチュエータユニット13は、流路ユニット12の上面に複数の圧力室12pを覆うように配置された金属製の振動板13aと、振動板13aの上面に配置された圧電層13bと、圧電層13bの上面に複数の圧力室12pのそれぞれと対向するように配置された複数の個別電極13cとを含む。
【0025】
振動板13a及び複数の個別電極13cは、ドライバIC14と電気的に接続されている。ドライバIC14は、振動板13aの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極13cの電位をグランド電位と駆動電位との間で変化させる。具体的には、ドライバIC14は、制御装置90からの制御信号(波形信号FIRE及び選択信号SIN)に基づいて駆動信号を生成し、信号線14sを介して駆動信号を個別電極13cに供給する。これにより、個別電極13cの電位が駆動電位とグランド電位との間で変化する。このとき、振動板13a及び圧電層13bにおいて個別電極13cと圧力室12pとで挟まれた部分(アクチュエータ13x)が変形することにより、圧力室12pの容積が変化し、圧力室12p内のインクに圧力が付与され、ノズルNからインクが吐出される。アクチュエータ13xは、個別電極13c毎(即ち、ノズルN毎)に設けられており、当該個別電極13cに供給される電位に応じて独立して変形可能である。
【0026】
制御装置90は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)91と、ROM(Read Only Memory)92と、RAM(Random Access Memory)93と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)94とを含む。このうち、CPU91及びASIC94が本発明の「制御部」に該当する。
【0027】
ROM92には、CPU91やASIC94が各種制御を行うためのプログラムやデータが格納されている。RAM93は、CPU91やASIC94がプログラムを実行する際に用いるデータ(画像データ等)を一時的に記憶する。制御装置90は、外部装置(パーソナルコンピュータ等)150と通信可能に接続されており、当該外部装置150やプリンタ100の入力部(プリンタ100の筐体の外面に設けられたスイッチやボタン)から入力されたデータに基づいて、CPU91やASIC94により記録処理等を実行する。
【0028】
記録処理において、ASIC94は、CPU91からの指令にしたがい、外部装置150等から受信した記録指令(画像データを含む。)に基づいて、ドライバIC14、キャリッジモータ30m及び搬送モータ50mを駆動させ、搬送機構50によって用紙1を搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、ヘッド10を走査方向に移動させながらノズルNからインクを吐出させる走査動作とを、交互に行わせる。これにより、用紙1上に、インクのドットが形成され、画像が記録される。
【0029】
記録処理が実行される間、キャップ70はアンキャッピング状態に維持され、ヘッド10のドライバIC14には記録用電圧V1が出力される。
【0030】
ドライバIC14には、処理に応じて、記録用電圧V1の他、フラッシング用電圧V2,V3が出力される(図4及び図5参照)。ドライバIC14に出力される電圧を異ならせるため、例えば、プリンタ100は、出力電圧が互いに異なる複数の電源回路を備えている。CPU91は、複数の電源回路のうち、電圧V1~V3に対応する電源回路をドライバIC14に割り当てる。ドライバIC14は、割り当てられた電源回路からの電圧によって駆動信号を生成する。
【0031】
ASIC94は、図3に示すように、出力回路94a及び転送回路94bを含む。
【0032】
出力回路94aは、波形信号FIRE及び選択信号SINを生成し、これら信号を記録周期毎に転送回路94bに出力する。記録周期は、用紙1上に形成される画像の解像度に対応する単位距離だけ用紙1がヘッド10に対して相対移動するのに要する時間であり、1画素に対応する。
【0033】
波形信号FIREは、4つの波形データを直列化したシリアル信号である。4つの波形データは、それぞれ1記録周期におけるノズルNから吐出されるインクの液滴量が「ゼロ(吐出なし)」「小」「中」「大」に対応するものであり、パルス数が互いに異なる。
【0034】
選択信号SINは、上記4つの波形データの中から1つを選択するための選択データを含むシリアル信号であり、記録指令に含まれる画像データに基づいて、アクチュエータ13x毎、かつ、記録周期毎に生成される。
【0035】
転送回路94bは、出力回路94aから受信した波形信号FIRE及び選択信号SINをドライバIC14に転送する。転送回路94bは、上記各信号に対応するLVDS(Low Voltage Differential Signaling)ドライバを内蔵しており、各信号をパルス状の差動信号としてドライバIC14に転送する。
【0036】
ASIC94は、記録処理において、ドライバIC14を制御し、画素毎に、波形信号FIRE及び選択信号SINに基づいて駆動信号を生成させ、信号線14sを介して駆動信号を個別電極13cに供給させる。これにより、ASIC94は、画素毎に、複数のノズルNのそれぞれから、4種類の液滴量(ゼロ、小、中、大)の中から選択された液滴量のインクを用紙に向けて吐出させる。
【0037】
ASIC94は、ドライバIC14、キャリッジモータ30m、搬送モータ50m、キャップ昇降モータ70m及び吸引ポンプ70pに加え、温度センサ80と電気的に接続されている。温度センサ80は、ヘッド10の温度を検知し、当該温度を示すデータをASIC9に出力する。
【0038】
次いで、図4及び図5を参照し、CPU91が実行するプログラムについて説明する。
【0039】
当該プログラムの開始時点において、ヘッド10はキャップ70の上方に位置し(図1参照)、キャップ70はキャッピング状態にある。このとき、ヘッド10に形成された全てのノズルNがキャップ70で覆われている。
【0040】
CPU91は、先ず、図4に示すように、外部装置150等から記録指令を受信したか否かを判断する(S1)。記録指令を受信していない場合(S1:NO)、CPU91は、S1の処理を繰り返す。
【0041】
記録指令を受信した場合(S1:YES)、CPU91は、キャップ昇降モータ70mを駆動させ、キャップ70を下方に移動させることで、キャップをキャッピング状態からアンキャッピング状態に移行させる(S2)。
【0042】
S2の後、CPU91は、温度センサ80から受信したデータに基づき、ヘッド10の温度を取得する(S3:第3取得処理)。
【0043】
S3の後、CPU91は、S3で取得された温度に基づいて、記録用電圧V1を決定する(S4:第3決定処理)。
【0044】
S4において、CPU91は、例えば、ROM92に記憶されたテーブル(ヘッド10の温度と記録用電圧V1との対応関係を示すテーブル)から、S3で取得された温度に対応する記録用電圧V1を抽出する。或いは、CPU91は、ROM92に記憶された演算式(ヘッド10の温度から記録用電圧V1を算出するための演算式)と、S3で取得された温度とから、記録用電圧V1を算出する。即ち、「記録用電圧V1を決定すること」は、テーブルから記録用電圧V1を抽出すること、演算式から記録用電圧V1を算出すること等を意味する。
【0045】
S4の後、CPU91は、n=1とする(S5)。
【0046】
S5の後、CPU91は、ドライバIC14に記録用電圧V1を出力しつつ、第n走査動作を行わせる(S6)。
【0047】
走査動作は、走査機構30により走査方向の他方(図5の右側)から一方(図5の左側)に向かう方向D1にヘッド10を移動させながらノズルNからインクを吐出させる「正走査動作」と、走査機構30により走査方向の一方(図5の左側)から他方(図5の右側)に向かう方向D2にヘッド10を移動させながらノズルNからインクを吐出させる「逆走査動作」とを含む。CPU91は、記録処理において、正走査動作と逆走査動作とを行わせる。S6の第n走査動作は、正走査動作及び逆走査動作のいずれかである。各走査動作が正走査動作及び逆走査動作のいずれであるかは、例えば、ROM92に記憶された評価テーブル(方向D1,D2によるインクの重なり順の違いに起因する色の相違を抑制するためのテーブルであって、画素値(RGB値:0~255の階調値)の組と重み値とが対応付けられたテーブル)に基づいて決定される。
【0048】
フラッシング領域60rは、各走査動作でノズルNからインクが吐出される吐出領域Rに対し、走査方向の一方(図5の左側:方向D1)に位置する。
【0049】
S6の後、CPU91は、S1で受信した記録指令に基づく記録処理が完了したか否かを判断する(S7)。
【0050】
記録処理が完了していない場合(S7:NO)、CPU91は、n=n+1とする(S8)。
【0051】
S8の後、CPU91は、記録中フラッシング処理を実行するか否かを判断する(S9)。
【0052】
フラッシング処理は、画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてノズルNからインクを吐出させる処理をいい、「キャップ前フラッシング処理(第1フラッシング処理)」及び「記録中フラッシング処理(第2フラッシング処理)」を含む。
【0053】
キャップ前フラッシング処理は、S1で受信した記録指令に基づく記録処理の後(S7:YES)、キャップ処理(S23)の前に実行される。
【0054】
記録中フラッシング処理は、1の用紙1に対する記録処理中であって、連続して実行される走査動作の間に実行される。例えば、図5に示すように、1の用紙1に対する記録処理に含まれる第n-1走査動作及び第n走査動作において、第n-1走査動作と第n走査動作との間に記録中フラッシング処理が実行される場合、第n-1走査動作が本発明の「第1記録処理」に該当し、第n走査動作が本発明の「第2記録処理」に該当する。本実施形態では、第n-1走査動作が正走査動作であり、かつ、第n走査動作が逆走査動作である場合であって、所定の条件(前回のフラッシング処理からの経過時間等の条件)が満たされたときに、記録中フラッシング処理を実行する(S9:YES)と判断される。
【0055】
各フラッシング処理が実行される間、キャップ70はアンキャッピング状態に維持される。記録中フラッシング処理が実行される間、ドライバIC14には記録中フラッシング用電圧V2(第2フラッシング用電圧)が出力され、キャップ前フラッシング処理が実行される間、ドライバIC14にはキャップ前フラッシング用電圧V3(第1フラッシング用電圧)が出力される。
【0056】
また、本実施形態において、各フラッシング処理は、ヘッド10が方向D2に移動する間に(ヘッド10を停止させることなく)実行される。具体的には、CPU91は、ヘッド10が方向D2に移動する間に、ノズル列Nc,Nm,Ny,Nk毎に、当該ノズル列がフラッシング領域60rと鉛直方向に重なるタイミングで、フラッシングデータに基づいて、ドライバIC14の駆動によりアクチュエータ13xを変形させ、当該ノズル列に属するノズルNからインクを吐出させる。吐出されたインクは、フラッシング領域60rに受容され、廃インクタンク77(図1参照)へと流れる。
【0057】
記録中フラッシング処理を実行しない場合(S9:NO)、CPU91は、処理をS6に戻す。
【0058】
記録中フラッシング処理を実行する場合(S9:YES)、CPU91は、温度センサ80から受信したデータに基づき、ヘッド10の温度を取得する(S10:第2取得処理)。
【0059】
S10の後、CPU91は、S10で取得された温度に基づいて、記録中フラッシング用電圧V2を決定する(S11:第2決定処理)。
【0060】
S11において、CPU91は、例えば、ROM92に記憶されたテーブル(ヘッド10の温度と記録中フラッシング用電圧V2との対応関係を示すテーブル)から、S10で取得された温度に対応する記録中フラッシング用電圧V2を抽出する。或いは、CPU91は、ROM92に記憶された演算式(ヘッド10の温度から記録中フラッシング用電圧V2を算出するための演算式)と、S10で取得された温度とから、記録中フラッシング用電圧V2を算出する。即ち、「記録中フラッシング用電圧V2を決定すること」は、テーブルから記録中フラッシング用電圧V2を抽出すること、演算式から記録中フラッシング用電圧V2を算出すること等を意味する。
【0061】
S11の後、CPU91は、図5に示すように、ヘッド10の移動M0中に、ドライバIC14に出力される電圧を記録用電圧V1から記録中フラッシング用電圧V2に変更する(S12)。移動M0は、第n-1走査動作(当該吐出領域Rに対する吐出)の終了後、走査機構30によって当該吐出領域Rからフラッシング領域60rに向けてさらに方向D1にヘッド10を移動させる動作をいう。
【0062】
S12の後、CPU91は、フラッシング領域60rと第n走査動作の吐出領域Rとの走査方向の間隔Xが第1所定間隔X1未満であるか否かを判断する(S13:第1判断処理)。
【0063】
間隔Xが第1所定間隔X1未満である場合(S13:YES)、CPU91は、図5に示すように、走査機構30を駆動させ、方向D2にヘッド10を移動させる(S14:第1移動M1)。CPU91は、第1移動M1中に、ドライバIC14に記録中フラッシング用電圧V2を出力しつつ、記録中フラッシング処理を実行する。
【0064】
S14の後、CPU91は、走査機構30を駆動させ、図5に示すように、方向D1にヘッド10を移動させる(S15:第2移動M2)。CPU91は、第2移動M2中に、ドライバIC14に出力される電圧を記録中フラッシング用電圧V2から記録用電圧V1に変更する。
【0065】
S15の後、CPU91は、走査機構30を駆動させ、図5に示すように、方向D2にヘッド10を移動させる(S16:第3移動M3)。CPU91は、第3移動M3中に、ドライバIC14に記録用電圧V1を出力しつつ、第n走査動作を実行する。
【0066】
ヘッド10の移動M0の終点、第1移動M1の始点、第2移動M2の終点及び第3移動M3の始点は、フラッシング領域60rと鉛直方向に重なる位置である。第1移動M1の終点及び第2移動M2の始点は、第n走査動作の吐出領域Rの走査方向の一端(図5の左端)近傍と鉛直方向に重なる位置である。
【0067】
間隔Xが第1所定間隔X1未満でない場合(S13:NO)、CPU91は、走査機構30を駆動させ、図5に示す第3移動M3と同様に、方向D2にヘッド10を移動させる。CPU91は、当該ヘッド10の移動中に、ドライバIC14に記録中フラッシング用電圧V2を出力しつつ記録中フラッシング処理を実行し、さらにその後当該ヘッド10の移動を続けながら(ヘッド10を停止させることなく)、ドライバIC14に出力される電圧を記録中フラッシング用電圧V2から記録用電圧V1に変更し、ドライバIC14に記録用電圧V1を出力しつつ第n走査動作を実行する(S17)。
【0068】
S16又はS17の後、CPU91は、処理をS7に戻す。
【0069】
記録処理が完了した場合(S7:YES)、CPU91は、温度センサ80から受信したデータに基づき、ヘッド10の温度を取得する(S18:第1取得処理)。
【0070】
S18の後、CPU91は、S18で取得された温度に基づいて、キャップ前フラッシング用電圧V3を決定する(S19:第1決定処理)。
【0071】
S19において、CPU91は、例えば、ROM92に記憶されたテーブル(ヘッド10の温度とキャップ前フラッシング用電圧V3との対応関係を示すテーブル)から、S18で取得された温度に対応するキャップ前フラッシング用電圧V3を抽出する。或いは、CPU91は、ROM92に記憶された演算式(ヘッド10の温度からキャップ前フラッシング用電圧V3を算出するための演算式)と、S18で取得された温度とから、キャップ前フラッシング用電圧V3を算出する。即ち、「キャップ前フラッシング用電圧V3を決定すること」は、テーブルからキャップ前フラッシング用電圧V3を抽出すること、演算式からキャップ前フラッシング用電圧V3を算出すること等を意味する。
【0072】
S19の後、CPU91は、走査機構30を駆動させ、図5に示すように、方向D1にヘッド10を移動させる間(移動M4中)に、ドライバIC14に出力される電圧を記録用電圧V1からキャップ前フラッシング用電圧V3に変更する(S20)。
【0073】
S20の後、CPU91は、方向D2にヘッド10を移動させる間(移動M5中)に、ドライバIC14にキャップ前フラッシング用電圧V3を出力しつつ、キャップ前フラッシング処理を実行する(S21)。
【0074】
S21の後、CPU91は、図5に示すように、ヘッド10の移動M6中に、ドライバIC14に出力される電圧をキャップ前フラッシング用電圧V3からゼロ(OFF)に変更する(S22)。移動M6は、キャップ前フラッシング処理が実行される移動M5に続いて(ヘッド10を停止させることなく)、さらに方向D2にヘッド10を移動させる動作をいう。
【0075】
S22の後、CPU91は、移動M6によりヘッド10がキャップ70の上方に配置されたときにヘッド10を停止し、ヘッド10を停止した後キャップ昇降モータ70mを駆動させ、キャップ70を上方に移動させることで、キャップ70をアンキャッピング状態からキャッピング状態に移行させる(S23:キャップ処理)。
【0076】
S23の後、CPU91は、当該プログラムを終了する。
【0077】
以上に述べたように、本実施形態によれば、CPU91は、記録処理の後(S7:YES)かつキャップ前フラッシング処理(S21)の前に、ヘッドの温度を取得し(S18)、S18で取得した温度に基づいてキャップ前フラッシング用電圧V3を決定する(S19)。そしてCPU91は、キャップ前フラッシング処理(S21)において、S19で決定されたキャップ前フラッシング用電圧V3をドライバIC14に出力する。仮に、キャップ前フラッシング処理(S21)において、記録用電圧V1(記録処理の開始直前のヘッド10の温度に基づく電圧)をドライバIC14に出力すると、キャップ前フラッシング処理(S21)を実行する時点と記録処理の開始直前(S3)の時点とでヘッド10の温度が互いに異なるため、インクの吐出量が不足して増粘抑制効果が不十分になったり、インクの吐出量が多過ぎてインクの消費量が過大になったりという問題が生じ得る。この点、本実施形態では、記録処理の後(S7:YES)かつキャップ前フラッシング処理(S21)の前にヘッドの温度を取得し(S18)、当該温度に基づくキャップ前フラッシング用電圧V3をドライバIC14に出力してキャップ前フラッシング処理(S21)を実行することにより、適切な吐出量でキャップ前フラッシング処理を実行できる。
【0078】
CPU91は、第n-1走査動作と第n走査動作との間に記録中フラッシング処理を実行する場合において、第n-1走査動作の後かつ記録中フラッシング処理(S14)の前にヘッドの温度を取得し(S10)、S10で取得した温度に基づいて記録中フラッシング用電圧V2を決定する(S11)。そしてCPU91は、記録中フラッシング処理(S14)において、S11で決定された記録中フラッシング用電圧V2をドライバIC14に出力する。これにより、適切な吐出量で記録中フラッシング処理(S14)を実行できる。
【0079】
CPU91は、第n-1走査動作の後、記録中フラッシング処理(S14)の前に、走査機構30によってヘッド10を移動させる間(ヘッド10の移動M0中)に、ドライバIC14に出力される電圧を記録用電圧V1から記録中フラッシング用電圧V2に変更する(S12)。この場合、ヘッド10を一旦停止させてヘッド10の停止中に電圧を変更する場合に比べ、高速記録を実現できる。
【0080】
CPU91は、記録中フラッシング処理(S14)の後、第n走査動作の前に、走査機構30によってヘッド10を移動させる間(第2移動M2中)に、ドライバIC14に出力される電圧を記録中フラッシング用電圧V2から記録用電圧V1に変更する(S15)。記録中フラッシング処理(S14)の後、第n走査動作の前に、ドライバIC14に出力される電圧を変更しない場合、第n-1走査動作と第n走査動作とにおいて、ドライバIC14に出力される電圧が互いに異なることで、同一の駆動信号によるインクの液滴量に差が生じ、画像に濃度差が生じてしまう。これに対し、本実施形態では、記録中フラッシング処理(S14)の後、第n走査動作の前に、ドライバIC14に出力される電圧を記録用電圧V1に戻すことで、上記濃度差の問題を抑制できる。また本実施形態では、ヘッド10の移動中に電圧を変更することで、ヘッド10を一旦停止させてヘッド10の停止中に電圧を変更する場合に比べ、高速記録を実現できる。
【0081】
CPU91は、フラッシング領域60rと第n走査動作の吐出領域Rとの走査方向の間隔Xが第1所定間隔X1未満である場合(S13:YES)、図5に示すように、方向D2にヘッド10を移動させ(S14:第1移動M1)、その後、方向D1にヘッド10を移動させ(S15:第2移動M2)、さらにその後、方向D2にヘッド10を移動させる(S16:第3移動M3)。そしてCPU91は、第1移動M1中に、記録中フラッシング処理を実行する(S14)。この場合、ヘッド10を一旦停止させてヘッド10の停止中に記録中フラッシング処理を実行する場合に比べ、記録処理に係る時間を短縮できる。さらに、記録中フラッシング処理(S14)の後、第n走査動作の前に、第2移動M2を実行させることで、時間に余裕ができ、ドライバIC14に出力される電圧を記録中フラッシング用電圧V2から記録用電圧V1に確実に変更することができる。
【0082】
<第2実施形態>
続いて、図6及び図7を参照し、本発明の第2実施形態に係るプリンタについて説明する。
【0083】
CPU91は、第1実施形態(図4及び図5参照)では、間隔Xが第1所定間隔X1未満であるか否かを判断し(S13)、間隔Xが第1所定間隔X1未満である場合(S13:YES)、方向D2への第1移動M1、方向D1への第2移動M2及び方向D2への第3移動M3を走査機構30に順次実行させるが、第2実施形態(図6及び図7参照)では、間隔Xが第2所定間隔X2未満であるか否かを判断し(S53)、間隔Xが第2所定間隔X2未満である場合(S53:YES)、方向D2への移動において低速移動(S54)と高速移動(S55)とを走査機構30に順次実行させる。
【0084】
第2所定間隔X2は、第1所定間隔X1よりも大きい(X2>X1)。例えば、第2所定間隔X2は10~15mm、第1所定間隔X1は5mm程度であってよい。
【0085】
S12の後、CPU91は、間隔Xが第2所定間隔X2未満であるか否かを判断する(S53:第2判断処理)。
【0086】
間隔Xが第2所定間隔X2未満である場合(S53:YES)、CPU91は、図7に示すように、走査機構30を駆動させ、方向D2にヘッド10を移動させる。このときCPU91は、キャリッジモータ30m(図3参照)を制御し、低速移動(S54)と高速移動(S55)とを走査機構30に実行させる。
【0087】
低速移動(S54)は、ヘッド10がフラッシング領域60rと鉛直方向に重なる位置を始点として、ヘッド10を第1速度で方向D2に移動させる動作をいう。高速移動(S55)は、低速移動(S54)に続いて(ヘッド10を停止させることなく)、ヘッド10を第2速度(>第1速度)で方向D2に移動させる動作をいう。
【0088】
CPU91は、低速移動(S54)中に、ドライバIC14に記録中フラッシング用電圧V2を出力しつつ、記録中フラッシング処理を実行する。CPU91は、高速移動(S55)中に、ドライバIC14に記録用電圧V1を出力しつつ、第n走査動作を実行する。CPU91は、低速移動(S54)の終了時、高速移動(S55)の開始時等に、ドライバIC14に出力される電圧を記録中フラッシング用電圧V2から記録用電圧V1に変更する。
【0089】
以上に述べたように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の構成に基づく同様の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0090】
CPU91は、間隔Xが第2所定間隔X2未満である場合(S53:YES)、図7に示すように、方向D2にヘッド10を移動させるときに、低速移動(S54)と高速移動とを走査機構30に実行させ、低速移動(S54)中に記録中フラッシング処理を実行する。この場合、ヘッド10を一旦停止させてヘッド10の停止中に記録中フラッシング処理を実行する場合に比べ、記録処理に係る時間を短縮できる。また、高速移動(S55)中に記録中フラッシング処理を実行すると、ヘッド10内の動圧により負圧が発生することで、インクの吐出量が不足し、増粘抑制効果が不十分になり得る。この点、本実施形態では、低速移動(S54)中に記録中フラッシング処理を実行することで、ヘッド10内の動圧に起因する上記問題を抑制できる。
【0091】
<第3実施形態>
続いて、図8及び図9を参照し、本発明の第3実施形態に係るプリンタについて説明する。
【0092】
CPU91は、第1実施形態(図4及び図5参照)では、間隔Xが第1所定間隔X1未満であるか否かを判断し(S13)、間隔Xが第1所定間隔X1未満である場合(S13:YES)、方向D2への第1移動M1、方向D1への第2移動M2、及び、方向D2への第3移動M3を走査機構30に順次実行させるが、第3実施形態(図8及び図9参照)では、第n走査動作が正走査動作であるか否かを判断し(S63)、第n走査動作が正走査動作である場合(S63:YES)、第n-1走査動作と第n走査動作との間であって、方向D2にヘッド10を移動させる間(D2移動中)に、記録中フラッシング処理と電圧の変更(V2→V1)とを実行し(S64)、その後、方向D1にヘッド10を移動させ、第n走査動作(正走査動作)を実行する(S65)。
【0093】
S12の後、CPU91は、第n走査動作が正走査動作であるか否かを判断する(S63:第3判断処理)。なお、本実施形態では、第n-1走査動作が正走査動作である場合であって、所定の条件(前回のフラッシング処理からの経過時間等の条件)が満たされたときに、記録中フラッシング処理を実行する(S9:YES)と判断される。したがって、S63は、第n-1走査動作(前走査動作)と第n走査動作(後走査動作)とが共に正走査動作であるか否かを判断する処理である。
【0094】
第n走査動作が正走査動作である(即ち、第n-1走査動作と第n走査動作とが共に正走査動作である)場合(S63:YES)、CPU91は、第n-1走査動作と第n走査動作との間であって、走査機構30により方向D2にヘッド10を移動させる間(D2移動中)に、ドライバIC14に記録中フラッシング用電圧V2を出力しつつ記録中フラッシング処理を実行し、さらに記録中フラッシング処理の後、D2移動を続けながら(ヘッド10を停止させることなく)、ドライバIC14に出力される電圧を記録中フラッシング用電圧V2から記録用電圧V1に変更する(S64)。
【0095】
S64の後、CPU91は、走査機構30により方向D1にヘッド10を移動させ、ドライバIC14に記録用電圧V1を出力しつつ第n走査動作(正走査動作)を実行する(S65)。
【0096】
以上に述べたように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の構成に基づく同様の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0097】
CPU91は、第n-1走査動作と第n走査動作とが共に正走査動作である場合(S63:YES)、第n-1走査動作と第n走査動作との間であって、走査機構30により方向D2にヘッド10を移動させる間(D2移動中)に、記録中フラッシング処理と電圧の変更(V2→V1)とを実行する(S64)。この場合、第n-1走査動作と第n走査動作との間のヘッド10の移動時間を利用して、電圧を確実に変更することができる。
【0098】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0099】
上述の実施形態のヘッドは、互いに異なる種類の液体(色が異なるインク)を吐出するノズルを備えているが、これに限定されない。例えば、ヘッドは、同一種類の液体(例えば、色が同じインクのみ)を吐出するノズルを備えてもよい。
【0100】
ヘッドの移動中にフラッシング処理を実行することに限定されず、ヘッドの停止中にフラッシング処理を実行してもよい。
【0101】
ヘッドの移動中に電圧を変更することに限定されず、ヘッドの停止中に電圧を変更してもよい。
【0102】
ヘッドは、上述の実施形態ではシリアル式であるが、ライン式であってもよい。
【0103】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、インク以外の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってもよい。
【0104】
記録媒体は、用紙に限定されず、例えば、布、樹脂部材等であってもよい。
【0105】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【0106】
本発明に係るプログラムは、フレキシブルディスク等のリムーバブル型記録媒体やハードディスク等の固定型記録媒体に記録して配布可能である他、通信回線を介して配布可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 用紙(記録媒体)
10 ヘッド
30 走査機構(移動機構)
50 搬送機構
60r フラッシング領域
70 キャップ
70m キャップ昇降モータ(移動機構)
80 温度センサ
91 CPU(制御部)
94 ASIC(制御部)
100 プリンタ(液体吐出装置)
D1 第1方向
D2 第2方向
M1 第1移動
M2 第2移動
M3 第3移動
N ノズル
R 吐出領域
V1 記録用電圧
V2 記録中フラッシング用電圧(第2フラッシング用電圧)
V3 キャップ前フラッシング用電圧(第1フラッシング用電圧)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9