(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】通信装置および通信方法
(51)【国際特許分類】
H04J 3/00 20060101AFI20241126BHJP
H04W 72/0446 20230101ALI20241126BHJP
【FI】
H04J3/00 H
H04W72/0446
(21)【出願番号】P 2021029981
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 智祐
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0303923(US,A1)
【文献】特開2003-174425(JP,A)
【文献】特開平05-145505(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0224719(US,A1)
【文献】特開2001-086565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 3/00-3/14
H04W 72/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TDMA(Time Division Multiple Access)方式の通信装置であって、
複数の区間からなる音声データを
符号化して所定区間からなる第1のタイムスロットのデータとして符号化する送信データ生成部と、
前記所定区間を有し、前記第1のタイムスロットとは異なる第2のタイムスロットのデータ送信を中断する中断制御部と、
前記音声データを複数区間からなる所定期間に分け、前記所定期間ごとに無音区間を検出する無音検出部と、
前記所定期間に前記無音区間が検出された場合は前記無音区間を破棄データとして選択し、前記所定期間に前記無音区間が存在しない場合は前記複数区間のいずれかの区間を破棄データとして選択し、前記破棄データから前記第2のタイムスロットを生成する破棄データ選択部と、を備え、
前記送信データ生成部は、前記破棄データ選択部により選択された音声データの前後の音声データを連結して前記第1のタイムスロットのデータとして符号化する通信装置。
【請求項2】
前記破棄データ選択部は、所定期間の音声データ内に前記無音区間が存在しない場合は、前記所定期間内の最後の区間を前記破棄データとして選択する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記送信データ生成部は、前記第2のタイムスロットの直前の前記第1のタイムスロットのデータに送信停止指示を受け付ける旨の情報を含める請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記送信データ生成部は、前記第2のタイムスロットの直前の前記第1のタイムスロットのデータに他のチャネルのスキャンを許可する情報を含める請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
TDMA方式の通信装置が実行する通信方法であって、
データ送信を行うタイムスロットを第1のタイムスロットと呼び、データ送信を中断するタイムスロットを第2のタイムスロットと呼ぶとき、
音声データを複数区間からなる所定期間に分け、前記所定期間ごとに無音区間を検出するステップと、
前記所定期間に前記無音区間が検出された場合は前記無音区間を破棄データとして選択し、前記所定期間に前記無音区間が存在しない場合は前記複数区間のいずれかの区間を破棄データとして選択し、前記破棄データから前記第2のタイムスロットを生成するステップと、
複数の区間からなる前記音声データを符号化して所定区間からなる前記第1のタイムスロットのデータとして符号化するステップと、
前記所定区間を有し、前記第1のタイムスロットとは異なる第2のタイムスロットのデータ送信を中断するステップと、
を
含む、通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特にTDMA(Time Division Multiple Access)方式の通信装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TDMA方式の通信を行う送信側の無線機において、所定のタイムスロットのデータ送信を停止し、その間に受信を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2009/0303923号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで、所定のタイムスロットのデータ送信を停止する場合、連続した音声データが欠落することになり、受信側での音声品質が劣化することがあった。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、TDMA方式の通信において所定のタイムスロットのデータ送信を停止する場合に、音声品質の劣化を抑制する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の通信装置は、TDMA(Time Division Multiple Access)方式の通信装置であって、音声データを第1のタイムスロットのデータとして符号化する送信データ生成部と、第1のタイムスロットとは異なる第2のタイムスロットのデータ送信を中断する中断制御部と、音声データにおける連続しない複数の区間から第2のタイムスロット分の音声データを選択する破棄データ選択部と、を備える。送信データ生成部は、破棄データ選択部により選択された音声データの前後の音声データを連結して第1のタイムスロットのデータとして符号化する。
【0007】
本発明の別の態様は、通信方法である。この方法は、TDMA方式の通信装置が実行する通信方法であって、データ送信を行うタイムスロットを第1のタイムスロットと呼び、データ送信を中断するタイムスロットを第2のタイムスロットと呼ぶとき、音声データにおける連続しない複数の区間から第2のタイムスロット分の音声データを選択する破棄データ選択ステップと、破棄データ選択ステップで選択された音声データの前後の音声データを連結して第1のタイムスロットのデータとして符号化するステップと、第2のタイムスロットのデータ送信を中断するステップと、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現をシステム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、TDMA方式の通信において所定のタイムスロットのデータ送信を停止する場合に、音声品質の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例の通信システムの構成を示す図である。
【
図2】
図1の通信装置が備える機能ブロックを示すブロック図である。
【
図3】通信装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】従来送信機のデータ送信に関するタイミングチャートである。
【
図5】実施例の通信装置のデータ送信に関するタイミングチャートである。
【
図6】実施例の通信装置のデータ送信に関するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、実施例の概要を説明する。TDMA方式で無線通信を行う送信機には、受信機との通話中に受信機からの要求(以下「送信中断指示」とも呼ぶ。)に応じてデータ送信を停止させるコール・インタラプション機能を備えるものがある。コール・インタラプションは、送信機と受信機が通話中に同じタイミングにて1つのタイムスロットだけ送信と受信を切り替えることによって実現される。これまで、送信機が所定のタイムスロットのデータ送信を停止する場合、連続した音声データが欠落することになり、受信側での音声品質が劣化することがあった。
【0012】
実施例の送信機(後述の通信装置12)は、音声データの送信を中断するタイムスロットにおいて、受信機からの送信中断指示を受信可能なように構成される。また、実施例の送信機(後述の通信装置12)は、音声データにおける連続しない複数の区間から、言い換えれば、離散した複数の区間から、データ送信を中断するタイムスロット分の音声データを選択する。これにより、TDMA方式の通信において所定のタイムスロットのデータ送信を停止する場合に、連続した音声データの欠落を抑制し、受信側での音声品質の劣化を抑制することができる。
【0013】
実施例の詳細を説明する。
図1は、実施例の通信システム10の構成を示す。通信システム10は、通信装置12と通信装置14とを備える。通信装置12と通信装置14は、TDMA方式でデータを送受信する無線通信装置である。実施例では、通信装置12は、基本的に音声データの送信機として動作し、通信装置14は、基本的に音声データの受信機として動作する。通信装置12は、通信装置14から送信中断指示を受信した場合、以降のデータ送信を停止する。
【0014】
図2は、
図1の通信装置12が備える機能ブロックを示すブロック図である。本明細書のブロック図で示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ、CPU、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0015】
通信装置12は、CPU20、アンテナ34、アンテナ切替部36、復調回路38、A/Dコンバータ40、マイク42、A/Dコンバータ44、D/Aコンバータ46、変調回路48を備える。
【0016】
CPU20は、受信データ解析部22、送受制御部24、送信データ生成部26、破棄データ選択部30を備える。送信データ生成部26は、中断制御部28を含む。破棄データ選択部30は、無音検出部32を含む。CPU20が備える複数の機能ブロックの機能が実装されたコンピュータプログラムは、通信装置12の記憶部(不図示)に記憶されてもよい。CPU20は、上記コンピュータプログラムをメインメモリ(不図示)に読み出して実行することにより、上記複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
【0017】
アンテナ34は、RF(Radio Frequency)信号を送受信する。アンテナ切替部36は、送受制御部24によって制御され、受信時はアンテナ34と復調回路38とを接続し、送信時はアンテナ34と変調回路48とを接続する。復調回路38は、アンテナ34で受信されたRF信号を復調し、復調したアナログ信号をA/Dコンバータ40へ出力する。A/Dコンバータ40は、復調回路38から入力されたアナログ信号をデジタル信号(以下「受信データ」とも呼ぶ。)に変換し、受信データを受信データ解析部22へ出力する。
【0018】
受信データ解析部22は、A/Dコンバータ40から入力された受信データに対して、所定のフィルタを用いて不要な帯域の信号成分の除去と、ビット検出と、誤り訂正とを行って、受信データの内容を解析する。受信データに同期データまたは制御データが含まれる場合、受信データ解析部22は、同期データまたは制御データを送受制御部24へ出力する。
【0019】
送受制御部24は、送信時、アンテナ切替部36を制御してアンテナ34を変調回路48に接続し、変調回路48の電源をオンに切り替えてRF信号を送信させる。また、送受制御部24は、受信時、アンテナ切替部36を制御してアンテナ34を復調回路38に接続し、復調回路38の電源を入れてRF信号を受信させる。
【0020】
マイク42は、話者の音声をアナログ信号に変換し、変換後のアナログ信号をA/Dコンバータ44へ出力する。A/Dコンバータ44は、マイク42から入力されたアナログ信号をデジタル信号(以下「音声データ」とも呼ぶ。)に変換し、音声データを破棄データ選択部30へ出力する。
【0021】
破棄データ選択部30は、A/Dコンバータ44から入力された音声データ(以下「入力音声データ」とも呼ぶ。)を受け付ける。入力音声データは、符号化の単位となる20ミリ秒のデータごとに複数の区間に分割されてもよい。また、A/Dコンバータ44から出力された音声データは、一旦、所定の記憶領域(バッファ)(不図示)に格納されてもよく、破棄データ選択部30は、その記憶領域から音声データを読み出してもよい。
【0022】
以下、TDMA方式における複数のタイムスロットのうち、データを送信する第1のタイムスロットを「通常タイムスロット」とも呼ぶ。また、通常タイムスロットと異なるタイムスロットであって、コール・インタラプション機能が有効な場合にデータ送信を中断する第2のタイムスロットを「送信中断タイムスロット」と呼ぶ。破棄データ選択部30は、入力音声データにおける連続しない複数の区間から送信中断タイムスロット分の音声データを選択する。送信中断タイムスロット分の音声データとして破棄データ選択部30により選択される音声データは、送信されずに破棄されるものであり、以下「破棄データ」とも呼ぶ。
【0023】
無音検出部32は、入力音声データにおける無音区間を検出する。例えば、無音検出部32は、入力音声データのうち、予め設定された時間(例えば20ミリ秒)、振幅の絶対値が所定の閾値以下である区間を無音区間として検出してもよい。この閾値は、通信装置12の開発者の知見や、通信システム10を用いた実験等により適切な値が定められてよい。破棄データ選択部30は、入力音声データのうち無音検出部32により検出された無音区間の音声データを送信中断タイムスロット分の音声データ(すなわち破棄データ)として優先的に選択する。
【0024】
破棄データ選択部30は、入力音声データのうち破棄データとして選択した音声データを、破棄データであることを示す所定値(言い換えれば所定のビット列)に置き換える。破棄データ選択部30は、一部の区間の値を破棄データを示す値に置き換えた入力音声データを送信データ生成部26へ出力する。
【0025】
送信データ生成部26は、破棄データ選択部30から入力された入力音声データに対してボコーダー等を用いて音声符号化処理を実行する。実施例では、送信データ生成部26は、入力音声データを所定の区間(20ミリ秒)単位で符号化する。また、送信データ生成部26は、符号化された音声データ、同期データ、制御データを配置した送信データを生成する。また、送信データ生成部26は、所定のフィルタを用いて不要な帯域の信号成分を除去する。送信データ生成部26は、不要な帯域の信号成分を除去した送信データをD/Aコンバータ46へ出力する。
【0026】
D/Aコンバータ46は、送信データ生成部26から入力された送信データをアナログ信号に変換し、変換後のアナログ信号を変調回路48へ出力する。変調回路48は、D/Aコンバータ46から入力されたアナログ信号をもとに搬送波を変調し、変調後のRF信号をアンテナ34へ出力する。
【0027】
送信データ生成部26を詳細に説明する。送信データ生成部26は、破棄データ選択部30から入力された入力音声データを通常タイムスロットのデータとして符号化する。送信データ生成部26は、入力音声データのうち破棄データを示す上記所定値の部分を破棄データ選択部30により選択された破棄データとして識別し、入力音声データにおける破棄データの前後の音声データを連結して通常タイムスロットのデータとして符号化する。
【0028】
中断制御部28は、予め定められた送信中断タイムスロットのデータ送信を中断する。送信データ生成部26は、入力音声データのうち破棄データを示す値が設定された区間については符号化を抑制し、廃棄する。すなわち、送信中断タイムスロットでは送信データを生成しない。
【0029】
また、送信データ生成部26は、送信中断タイムスロットの直前の通常タイムスロットのデータに送信停止指示を受け付ける旨の情報を含める。送信停止指示を受け付ける旨の情報は、次のタイムスロットにおいて送信機が送信動作を中断し、受信動作を行う旨を示す情報と言え、また、コール・インタラプションのタイミングを示す情報とも言える。
【0030】
以上の構成による通信装置12の動作を説明する。
図3は、通信装置12の動作を示すフローチャートである。破棄データ選択部30は、マイク42に入力された音声に基づく入力音声データを取得する(S10)。破棄データ選択部30の無音検出部32は、入力音声データにおける無音区間を検出する(S11)。破棄データ選択部30は、入力音声データにおける連続しない複数の区間から送信中断タイムスロット分の音声データである破棄データを選択する(S12)。
【0031】
S12において、破棄データ選択部30は、無音区間の音声データを破棄データとして優先的に選択する。また、後述するように、所定の期間内(例えば80ミリ秒内)に無音区間が存在しない場合、破棄データ選択部30は、当該期間内の1つの区間の音声データを強制的に廃棄データとして選択する。
【0032】
送信データ生成部26の中断制御部28は、送信中断タイミング(送信中断タイムスロット)か否かを判定する。送信中断タイミングでなければ(S13のN)、送信データ生成部26は、破棄データ選択部30から入力された入力音声データを通常タイムスロットのデータとして符号化して送信データを生成する(S14)。処理対象の区間に破棄データが含まれる場合、送信データ生成部26は、破棄データの前後の音声データを連結して符号化し、送信データを生成する。送信データは、D/A変換および変調を経て、アンテナ34から送信される(S15)。
【0033】
なお、次のタイムスロットが送信中断タイムスロットである場合、送信データ生成部26は、送信中断タイムスロットの直前の通常タイムスロットのデータに送信停止指示を受け付ける旨の情報を含める。
【0034】
送信中断タイミング(送信中断タイムスロット)であれば(S13のY)、中断制御部28は、データ処理を中断させる。具体的には、中断制御部28は、送信モードから受信モードへの切替処理を送受制御部24に実行させる(S16)。送信中断タイミング(送信中断タイムスロット)において、通信装置14から送信された送信停止指示を受信した場合(S17のY)、送受制御部24は、以降のタイムスロットでのデータ送信を停止する(S18)。送信停止指示を未受信であれば(S17のN)、送受制御部24は、受信モードから送信モードへ切り替え、送信データ生成部26は、次の通常タイムスロットにおいてデータ送信を再開する。
【0035】
図4は、実施例の通信装置12の特徴を備えない従来送信機のデータ送信に関するタイミングチャートである。
図4に示すように、従来送信機は、送信対象の音声データに対し、20ミリ秒単位での音声符号化処理を実行してデータを圧縮する。すなわち、送信対象の音声データの1つの区間は20ミリ秒である。また、従来送信機は、圧縮された3区間の音声データと、同期・制御データとを結合して、1タイムスロット分の送信データを生成する。従来送信機は、生成した1タイムスロット分の送信データを30ミリ秒間隔でD/Aコンバータに出力する。
【0036】
同期・制御データについて、タイムスロット1の送信データには、スロットタイミングに同期するために受信機が使用する同期ワードが配置される。タイムスロット2の送信データには、発信元や宛先IDを含んだ制御データが配置される。タイムスロット3の送信データには、Nullデータが配置される。送信中は、この3種類の同期・制御データを繰り返し送信スロットに配置する。
図4では、タイムスロット1~5が通常タイムスロットであり、タイムスロット6が送信中断タイムスロットである。
【0037】
コール・インタラプションに関する手順を説明する。
従来送信機は、タイムスロット5に配置する制御データに、送信停止指示を受け付ける旨の情報を含め、言い換えれば、次のタイムスロットで送信を停止して受信動作を行う旨の情報を挿入する。これを受信した受信機は、次のタイムスロットにおいて送信機が送信を停止して受信動作を行うこと、言い換えれば、次のタイムスロットにおいて送信中断指示(コール・インタラプション情報)を送信可能であることを認識する。
【0038】
従来送信機は、タイムスロット6において送信動作を停止して受信動作を行う。このタイミングにおいて、受信機は、送信機からのデータ送信を停止させる場合、送信中断指示(「コール・インタラプション情報」とも呼ぶ。)を含む送信データを生成し、その送信データを従来送信機へ送信する。送信機からのデータ送信を継続させる場合、受信機は、送信中断指示を送信せず、受信動作を継続する。
【0039】
従来送信機は、タイムスロット6において送信中断指示を受信した場合、直ちに送信を停止する。一方、タイムスロット6において送信中断指示を受信しなければ、従来送信機は、タイムスロット7においてデータ送信を再開する。タイムスロット7以降、従来送信機は、受信機から送信中断指示を受信するまで、タイムスロット1~6の動作を繰り返す。すなわち、周期的にデータ送信を中断して受信動作を行う。以上説明した従来送信機の動作は、実施例の通信装置12においても同様に実行される。
【0040】
図4では、入力された音声データにおける「無音」は、無音区間を示している。
図4に示すように、実施例の通信装置12の特徴を備えない従来送信機は、タイムスロット6において送信を中断する場合に、連続した複数区間の音声データを廃棄する。
図4では、3つの連続した有音区間の音声データが廃棄される。連続した複数区間の音声データが受信機に届かなくなるため、受信側での音声品質が劣化する。
【0041】
図5は、実施例の通信装置12のデータ送信に関するタイミングチャートである。同図の破棄データ選択部入力は、破棄データ選択部30へ入力された音声データを示し、破棄データ選択部出力は、破棄データ選択部30から出力された音声データを示す。破棄データ選択部出力の「廃棄」は、破棄データを示す値が設定されることを示す。
【0042】
図5の例では、破棄データ選択部30の無音検出部32は、入力音声データから3つの無音区間を検出し、破棄データ選択部30は、それら3つの無音区間を破棄データとして選択する。送信データ生成部26は、破棄データ以外の音声データを連結して、通常タイムスロットの送信データを生成する。実施例の通信装置12によると、無音区間の音声データが送信されなくなるため、言葉と言葉の間が短縮されることがあるが、話者が発した言葉が受信側で欠けることを抑制でき、すなわち、受信側での音声品質の劣化を抑制することができる。
【0043】
図6も、実施例の通信装置12のデータ送信に関するタイミングチャートである。同図は、コール・インタラプション機能を実施する際に、送信中断タイムスロット分の無音区間が存在しない場合のタイミングチャートである。
図6の例では、破棄データ選択部30の無音検出部32は、1つの無音区間を検出する。
【0044】
破棄データ選択部30は、所定期間(ここでは80ミリ秒)の音声データ内に無音区間が存在しなければ、当該期間内の1つの区間(ここでは最後の区間)を強制的に破棄データとして選択する。
図6の例では、1番目の80ミリ秒の期間には無音区間が存在しないため、破棄データ選択部30は、当該期間の最後の区間を破棄データとして選択する。2番目の80ミリ秒の期間には無音区間が存在するため、破棄データ選択部30は、その無音区間を優先的に破棄データとして選択する。3番目の80ミリ秒の期間には無音区間が存在しないため、破棄データ選択部30は、当該期間の最後の区間を破棄データとして選択する。
【0045】
送信データ生成部26は、破棄データ前後の音声データを連結して。通常タイムスロットの送信データを生成する。実施例の通信装置12によると、無音区間が少ない場合であっても、連続しない複数の区間から破棄データを選択するため、受信側での音声品質の劣化を抑制することができる。また、無音区間を優先的に破棄データとして選択するため。有音区間の欠落頻度を小さくでき、受信側での音声品質の劣化を抑制することができる。
【0046】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。実施例に記載の内容は例示であり、実施例の構成要素や処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0047】
第1変形例を説明する。上記実施例の音質改善技術は、コール・インタラプション機能以外にも適用可能である。例えば、通信装置14(受信機)が或る周波数にてデータを受信中に、特定のタイムスロットにおいて、別の周波数をモニタ(スキャンとも言える)する場合にも適用可能である。別の周波数をモニタする目的としては、現在よりも優先度の高い音声通信が別の周波数で発生していないかを周期的にモニタし、発生していれば、そちらの音声を聞くために周波数を切り替える、といったことが考えられる。同時に1つの周波数だけ受信できる受信機では、周期的に別の周波数に切り替えると、元の周波数での受信音声が途切れることになるため、音質が劣化してしまう。
【0048】
そこで、本変形例の通信装置12(送信機)は、実施例と同様に送信中断タイムスロットを設け、送信中断タイムスロットでのデータ送信を停止する。また、通信装置12の送信データ生成部26は、送信中断タイムスロットの直前の通常タイムスロット(例えば、
図5と
図6におけるタイムスロット5)の送信データに、実施例の送信停止指示を受け付ける旨の情報に代えて、他のチャネルのスキャンを許可する情報(「優先通信モニタ情報」とも言える。)を含める。
【0049】
本変形例においても、通信装置12の破棄データ選択部30は、入力音声データにおける連続しない複数の区間から送信中断タイムスロット分の音声データ(すなわち破棄データ)を選択する。本変形例の通信装置12によると、通信装置14(受信機)が周期的に別のチャネルをスキャンする場合に、受信側の音声品質の劣化を抑制することができる。
【0050】
第2変形例を説明する。上記実施例では、破棄データ選択部30は、入力音声データ内の無音区間の音声データを破棄データとして優先的に選択した。変形例として、破棄データ選択部30は、入力音声データ内の変化が少ない区間の音声データ(長音等)を破棄データとして優先的に選択してもよい。例えば、破棄データ選択部30は、入力音声データ内の各区間の音声データについて振幅と周波数の一方または両方の変化量を検出してもよい。破棄データ選択部30は、振幅と周波数の一方または両方の変化量が所定の閾値以下の区間を、変化が少ない区間として識別してもよい。この閾値は、通信装置12の開発者の知見や、通信システム10を用いた実験等により適切な値が定められてよい。
【0051】
本変形例の通信装置12によると、入力音声データ内の変化が少ない区間の音声データを破棄データとして優先的に選択することにより、意味のある音声が廃棄される頻度を低減でき、受信側での音声品質の劣化を抑制することができる。なお、破棄データ選択部30は、入力音声データ内の無音区間の音声データを第1優先度で破棄データとして選択し、入力音声データ内の変化が少ない区間の音声データを第1優先度より低い第2優先度で破棄データとして選択してもよい。さらに、破棄データ選択部30は、所定期間(例えば80ミリ秒)の音声データ内に無音区間と変化が少ない区間のいずれもが存在しない場合、当該期間内の1つの区間(例えば最後の区間)を強制的に破棄データとして選択してもよい。
【0052】
上述した実施例および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施例および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施例および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0053】
10 通信システム、 12 通信装置、 14 通信装置、 26 送信データ生成部、 28 中断制御部、 30 破棄データ選択部、 32 無音検出部。