(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】エンジンの排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20241126BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20241126BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20241126BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
F01N3/08 B ZAB
F01N3/28 301E
F01N3/24 N
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 400
(21)【出願番号】P 2021035564
(22)【出願日】2021-03-05
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】中野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】和田 好隆
(72)【発明者】
【氏名】古田 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】福尾 奈央斗
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐也
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0308234(US,A1)
【文献】特表2015-537145(JP,A)
【文献】特開2013-142368(JP,A)
【文献】特開2018-123788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/28
F01N 3/24
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路に設けられ、排気中のHC及びCOを酸化する酸化触媒と、
前記排気通路における前記酸化触媒よりも下流側且つ低位置に設けられ、前記排気中のNOxを選択的に還元浄化するNOx選択還元触媒と、を備え、
前記酸化触媒は、その軸心が横方向に延び、前記排気が流出する流出口を有し、
前記NOx選択還元触媒は、前記排気が流入する流入口を有し、
前記流出口と前記流入口を結ぶ排気通路部は、排気の流れが前記横方向から縦方向の下向きに変わるように曲がった屈曲部を備え、
前記屈曲部に該屈曲部の下流側の縦方向に延びる通路軸心を旋回軸として前記排気を旋回させる旋回部が設けられ、
前記NOx選択還元触媒によるNOx浄化のための還元剤を前記旋回部に噴射する還元剤噴射装置と、
前記酸化触媒の流出口に設けられ、前記排気を前記旋回部に対して前記旋回軸から片側に逸れた部位を指向して流入するようにガイドする整流部材と、を備えて
おり、
前記排気通路における前記旋回部と前記NOx選択還元触媒との間には、前記旋回部よりも通路径が小さくなった絞り部が設けられていることを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの排気浄化装置において、
前記酸化触媒の流出口の軸心が前記旋回部の旋回軸に交わらず、該流出口の軸心の位置が該旋回軸の位置から前記片側にずれていることを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエンジンの排気浄化装置において、
前記整流部材は、排気流れ方向の前方に行くにつれて前記片側に寄るように傾斜していることを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のエンジンの排気浄化装置において、
前記整流部材は相対する側壁を備え、
前記相対する両側壁のうちの前記片側に配置された側壁は、前記旋回部の内周壁に沿うように湾曲して該旋回部に向かって延びていることを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項5】
請求項
1~4のいずれか1つに記載のエンジンの排気浄化装置において、
前記絞り部には、前記排気の流れに抵抗を与える抵抗部材が設けられていることを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に用いられるエンジンの排気にはNOx(窒素酸化物)が含まれている。この排気中のNOxを浄化するための触媒の一例として、NOx選択還元触媒と、このNOx触媒よりも上流側に還元剤を噴射する装置とを備えた排気浄化装置が知られている。自動車のエンジンでは、還元剤として尿素水が広く用いられている。この構成では、還元剤噴射装置から噴射された還元剤が排気と混合される。還元剤が混合された排気は、NOx触媒に供給され浄化される。
【0003】
このような排気浄化装置の一例が特許文献1に記載されている。この排気浄化装置は、排気通路内の還元剤噴射装置と、NOx触媒との間に、スタテッィクミキサ、還元剤拡散部材が、上流側から順に配設されている。還元剤拡散部材は、複数のフラップを有するミキサで形成されている。
【0004】
この排気浄化装置では、還元剤噴射装置から還元剤拡散部材に向けて、還元剤が噴射される。これにより、還元剤は、微粒化・気化し排気中に分散させられる。還元剤が分散した排気は、還元剤拡散部材のフラップを通過するときに渦流が生じ、排気ガスと還元剤との混合が促進される。その後、スタティックミキサを通過することで大きな渦流が発生し、還元剤の分布が均一化するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NOx浄化効率を高めるためには排気中に混合される還元剤の濃度分布が均質になることが好ましい。このため、特許文献1の構成では、還元剤拡散手段によって還元剤の微粒化・気化を促進することで、排気中に還元剤が均質に分散されるようになっている。さらに、スタティックミキサの過流により、排気中の還元剤の分布の均一化が促進されている。
【0007】
ところで、排気中に混合された還元剤は排気の熱により熱分解される。NOx選択還元触媒による排気中のNOx浄化性能のさらなる向上のためには、この熱分解を促進することが好ましい。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みて為されたものであり、その目的とすることは排気中に混合された還元剤の熱分解を促進することで、排気浄化装置のNOx浄化性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では旋回流の生成を促進する整流部材を設けることで、還元剤と排気とを均質に混ぜ合わせるようにした。
【0010】
具体的に、ここに開示するエンジンの排気浄化装置は、
エンジンの排気通路に設けられ、排気中のHC及びCOを酸化する酸化触媒と、
前記排気通路における前記酸化触媒よりも下流側且つ低位置に設けられ、前記排気中のNOxを選択的に還元浄化するNOx選択還元触媒と、を備え、
前記酸化触媒は、その軸心が横方向に延び、前記排気が流出する流出口を有し、
前記NOx選択還元触媒は、前記排気が流入する流入口を有し、
前記流出口と前記流入口を結ぶ排気通路部は、排気の流れが前記横方向から縦方向の下向きに変わるように曲がった屈曲部を備え、
前記屈曲部に該屈曲部の下流側の縦方向に延びる通路軸心を旋回軸として前記排気を旋回させる旋回部が設けられ、
前記NOx選択還元触媒によるNOx浄化のための還元剤を前記旋回部に噴射する還元剤噴射装置と、
前記酸化触媒の流出口に設けられ、前記排気を前記旋回部に対して前記旋回軸から片側に逸れた部位を指向して流入するようにガイドする整流部材と、を備えており、
前記排気通路における前記旋回部と前記NOx選択還元触媒との間には、前記旋回部よりも通路径が小さくなった絞り部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
このエンジンの浄化装置によれば、まず排気通路内を通る排気は酸化触媒により、HC及びCOが酸化浄化される。酸化浄化された排気は、酸化触媒の流出口から流出して旋回部に流入する。この旋回部に流入する排気は、旋回部の内周壁に沿うように整流部材によってガイドされる。これにより、旋回部の内周壁に沿った排気の旋回流が強化される。
【0012】
旋回する排気は、屈曲部の下流側の縦方向に延びる通路軸心を旋回軸としながら、下方へ流れる。NOxを還元浄化するための還元剤が、還元剤噴射装置から旋回部を旋回する排気中に噴射されて、排気と混合される。この還元剤と排気との混合が、前述の排気の旋回により促進されることで、排気からの入熱による還元剤の気化・熱分解が促進される。
【0013】
還元剤が混合された排気は、低位置に設けられたNOx選択還元触媒にその流入口から流入する。そして、NOx還元触媒により排気中のNOxが還元浄化される。
【0014】
前記のエンジンの排気浄化装置において、
前記酸化触媒の流出口の軸心が前記旋回部の旋回軸に交わらず、該流出口の軸心の位置が該旋回軸の位置から前記片側にずれていることを特徴とする。
【0015】
これにより、前記整流部材による排気のガイドと相俟って、酸化触媒から流出する排気が旋回部に対してその内周壁に沿うように流入しやすくなり、旋回部における排気の旋回流の強化に有利になる。
【0016】
前記のエンジンの排気浄化装置において、
前記整流部材は、排気流れ方向の前方に行くにつれて前記片側に寄るように傾斜していることを特徴とする。
【0017】
従って、旋回部において排気の旋回流を強化することができる。
【0018】
前記のエンジンの排気浄化装置において、
前記整流部材は相対する側壁を備え、
前記相対する両側壁のうちの前記片側に配置された側壁は、前記旋回部の内周壁に沿うように湾曲して該旋回部に向かって延びていることを特徴とする。
【0019】
すなわち、整流部材の相対する両側壁によって、酸化触媒から旋回部に流入する排気の流路断面に制約をつけることにより、排気に旋回流を生じさせる趣旨である。片側の側壁が旋回部の内周壁に沿うように湾曲していることにより、旋回部の内周壁が排気の旋回流の生成に寄与し易くなるため、旋回流の強化に有利になる。
【0020】
上述のごとく、前記のエンジンの排気浄化装置において、
前記排気通路における前記旋回部と前記NOx選択還元触媒との間には、前記旋回部よりも通路径が小さくなった絞り部が設けられていることを特徴とする。
【0021】
このようにすれば、絞り部によって排気の流れに抵抗が与えられる。これにより、旋回部での排気の滞留時間を確保できるから、還元剤と排気との混合が促進されることで、還元剤の気化・熱分解が促進される。また、絞り部によって旋回流れの半径が徐々に小さくなることで旋回の角速度が成長し、還元剤と排気との混合が促進される。
【0022】
前記のエンジンの排気浄化装置において、
前記絞り部には、前記排気の流れに抵抗を与える抵抗部材が設けられていることを特徴とする。
【0023】
このようにすれば、旋回部における排気の滞留時間を十分に確保することができる。これにより、排気中への還元剤の混合が促進される。また、液体状態もしくは未分解の還元剤が抵抗部材によってトラップされ、そのすり抜けが抑制される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、還元剤と排気とを均質に混ぜ合わせることにより、排気からの入熱による還元剤の熱分解が促進され、NOx選択還元触媒によるNOx浄化効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】エンジンの排気浄化装置の構成を示す図である。
【
図4】第1屈曲部と旋回部とを除いた、エンジンの排気浄化装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0027】
<排気浄化装置の構成>
図1に示すエンジン(ディーゼルエンジン)Eの排気浄化装置において、1はエンジンEから排出される排気ガスを通す排気通路である。この排気通路1に、排気ガス流れ方向の上流側から順に、酸化触媒2及び尿素SCR触媒付きフィルタ(以下、「SCR ON F」という。)3が配置されている。そうして、排気浄化装置は、酸化触媒2とSCR ON F3との間に尿素水を噴射供給する還元剤噴射装置としての尿素噴射装置(インジェクタ)4と、を備えている。尿素水としてはアドブルーと呼ばれるものが用いられる。
【0028】
酸化触媒2は、排気ガス中のHC及びCOを酸化させる触媒であり、ハニカム状担体に触媒金属としての貴金属を担持させてなる。本例では、触媒金属としてPtを採用し、Ptのサポート材としては活性アルミナを採用している。
【0029】
SCR ON F3は、排気ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタに、NOxを選択的に還元するNOx選択還元触媒としての尿素SCR触媒を担持させたものである。フィルタはウォールフロータイプのハニカム構造体であり、セルの内壁面及びセル同士を隔てる多孔質壁の細孔内面に尿素SCR触媒が担持されている。尿素SCR触媒は、尿素の加熱分解によって生ずるNH3、並びにその加熱分解で生ずるイソシアン酸の加水分解によって生ずるNH3を還元剤として排気ガス中のNOxを還元浄化する。尿素SCR触媒は、ゼオライトにCuをイオン交換によって担持させたCuゼオライトを好ましく採用できる。ゼオライトとしてはCHA(チャバサイト)を好ましく採用することができる。触媒成分として、Fe、Ti、Ce、Wを採用することもできる。
【0030】
尿素噴射装置4は、尿素水供給管によって尿素水タンクに接続されている。尿素水タンクの尿素水を尿素噴射装置4に供給するポンプが尿素水供給管に介装されている。
【0031】
図2~
図4に示すように、酸化触媒2とSCR ON F3とは各々の軸方向が互いに略平行となるように並設されている。本実施形態では、SCR ON F3は酸化触媒2よりも低位置に配置されている。
図5に示すように、酸化触媒2の排気が流出する流出口21と、SCR ON F3の排気が流入する流入口31とは、略同じ方向に開口している。
【0032】
酸化触媒2の流出口21とSCR ON F3の流入口31とを結ぶ排気通路部10は、排気の流れが酸化触媒2の軸方向からその軸方向に対して交差する方向(縦方向)の下向きに変わるように曲がった第1屈曲部11と、排気の流れがSCR ON F3の軸方向(横方向)に変わるように曲がった第2屈曲部12とを備える。本実施形態において、SCR ON F3が酸化触媒2の下側に配置されているため、排気通路部10は第1屈曲部11において略水平な横方向から縦方向(上下方向)に曲がり、第2屈曲部12において縦方向から横方向に曲がっている。
【0033】
第1屈曲部11には、前記縦方向(本実施形態では上下方向)に延びる通路軸心を旋回軸として排気を旋回させる旋回部112が設けられている。この旋回部112には酸化触媒2の流出口21からの排気が流入する。酸化触媒2の流出口21は、
図4に示すように、酸化触媒2の軸心から片側(
図4では左側)にずらして設けられている。これにより、流出口21の軸心と旋回部112の旋回軸とが交わらないようになっている。この流出口21からの排気が、前記縦方向に延びる通路軸心から片側にそれた方向を指向して、旋回部112に流入する。これにより、旋回部112に流入した排気は、
図5の矢印に示すように、縦方向を旋回軸として旋回する。
【0034】
また、流出口21には旋回部112に向けて延びる整流部材5が設けられている。この整流部材5は、排気を旋回部112に対して旋回軸から片側(
図4では左側)に逸れた部位を指向して流入するようにガイドする部材である。
【0035】
旋回部112の下流側、すなわち排気通路1における第1屈曲部11と第2屈曲部12とを結んで前記縦方向に延びる部位には、絞り部13が設けられている。絞り部13の通路径は、旋回部112の通路径よりも小さくなっている。この絞り部13には、排気に抵抗をあたえるための抵抗部材6が設けられている。この抵抗部材6が
図6に示されている。抵抗部材6は円形であり、排気通路を横断するように配置されている。抵抗部材6の外周には取付フランジ61が設けられている。抵抗部材6には、4ヵ所の四半円部分62が下流側に切り起こされて開口が形成されている。四半円部分62は排気の旋回方向に沿うように切り起こされ、四半円部分62によって排気の旋回が阻害されないようになっている。
図5の矢印に示すように旋回部112を流れてきた排気は、絞り部13と抵抗部材6とから抵抗を与えられ、抵抗部材6の開口から下流側へ流れる。また、絞り部13によって旋回流れの半径が徐々に小さくなることで旋回の角速度が成長し、還元剤と排気との混合が促進される。
【0036】
図5に示すように、第1屈曲部11には、前記旋回部112に向けて前記縦方向に尿素水を噴射する尿素噴射装置4が設けられている。本実施形態では、尿素噴射装置4は、第1屈曲部11を形成する排気通路の上壁部に設けられ、下方に向かって尿素水を噴射する。
【0037】
旋回部112の内周壁における尿素噴射装置4の下方には、旋回部112の中心方向に延びる平板で形成された複数の衝突壁7が設けられている。本実施形態では、3枚の衝突壁7各々の壁面が上下方向に間隔を置いて、旋回部112における排気の旋回軸に対して略垂直になるように配置されている。尿素噴射装置4が噴射した尿素水は、これらの衝突壁7に衝突する。
【0038】
図7には整流部材5が、
図8~
図10には、整流部材5と酸化触媒2の流出口21とが描かれている。
図7に示すように、整流部材5の上下には固定フランジ51が設けられている。この固定フランジ51を、
図9に示すように酸化触媒2の流出口21の上下に溶接することで、整流部材5は酸化触媒2に固定されている。これにより、
図11に示すように、酸化触媒2の流出口21から旋回部112内に延びるように整流部材5が設けられている。
【0039】
整流部材5は、
図7に示すように、その上側半部52と下側半部53と夫々に設けられた結合フランジ74同士を溶接することによって形成されている。この整流部材5の断面は、図中で上下方向に長い略四角形状である。この整流部材5は、相対する外側側壁55(図中で左側)と内側側壁56(図中で右側)とを備えている。
【0040】
整流部材5は、
図11に示すように、排気流れ方向の前方に行くにつれて片側(図中で左側)に寄るように傾斜している。また、整流部材5の外側側壁55は、旋回部112の内周壁に沿うように湾曲している。
【0041】
<排気の浄化>
[酸化触媒による酸化浄化]
酸化触媒2により、排気中に含まれるHC及びCOは酸化浄化される。
【0042】
[旋回部への流入]
酸化触媒2により酸化浄化された排気は、整流部材5にガイドされて酸化触媒2の流出口21から、第1屈曲部11の旋回部112に流入する。このとき、流出口21の軸心と旋回部112の旋回軸とは交わらないようになっているため、旋回部112の内周壁に沿うように排気が流入する。このため、旋回部112においてその内周壁を沿うように排気が旋回する。
【0043】
また、整流部材5は前述のように傾斜している。この傾斜に沿って整流部材5にガイドされた排気は、旋回部112にその内周壁に沿うようにして流入する。このため、旋回部112における排気の旋回流が強化される。
【0044】
さらに、整流部材5は相対する両側壁55、56によって、酸化触媒2から旋回部112に流入する排気の流路断面に制約をつけることで、排気に旋回流が生じるようになっている。この整流部材5の外側側壁55は、旋回部112の内周壁に沿って湾曲している。従って、この外側側壁55にガイドされる排気は、旋回部112の内周壁に沿うようにして、旋回部112に流入する。このため、旋回部112の内周壁が排気の生成に寄与しやすくなり、旋回流が強化される。
【0045】
このようにして旋回させられた排気は、縦方向を旋回軸として旋回部112から絞り部13の方へ流れる。
【0046】
[還元剤の供給]
SCR ON F3に流入する排気のNOx濃度値、並びにSCR ON F3に流入する排気温度(例えば200℃以上)に応じて、旋回部112には、尿素噴射装置4から還元剤としての尿素水が噴射供給される。尿素噴射装置4から噴射された尿素水は、衝突壁7に衝突することにより、その液滴が微粒化して旋回する排気中に拡散される。排気中に拡散した尿素水は排気からの入熱により気化・熱分解されて、NH3及びHNCOが生成する。
【0047】
前述のように旋回部112において排気が旋回しているため、排気と尿素水との混合が促進される。これにより、尿素水は排気からの熱を受けやすくなり、尿素の熱分解が促進される。
【0048】
また、尿素噴射装置4よりも上流側に設けられた流出口21と整流部材5とによって、排気は旋回する。このため、排気中に尿素水が拡散されるときには、排気は強い旋回流となっている。従って、排気と尿素水との混合が促進され、排気からの入熱による尿素水の熱分解が促進される。
【0049】
[絞り部への流入]
旋回部112から絞り部13へ流れる排気は、絞り部13と抵抗部材6とによって排気抵抗が与えられる。これにより、旋回部112内における排気の滞留時間は長くなる。このため、旋回部112内において、排気と尿素水及びNH3とを混合する時間が十分に確保され、排気中の尿素水及びNH3の濃度分布が均質になる。さらに、絞り部13によって旋回流れの半径が徐々に小さくなることで旋回の角速度が成長し、還元剤と排気との混合が促進される。また、液体状態もしくは未分解の尿素水が抵抗部材6によってトラップされ、そのすり抜けが抑制される。
【0050】
[SCR ON FによるNOx選択還元]
排気は絞り部13の抵抗部材6の開口から、第2屈曲部12及び流入口31を経由してSCR ON F3に供給される。前述の熱分解によって生じるNH3がSCR ON F3のCuゼオライトに吸着される。また、HNCOはSCR ON F3において加水分解されゼオライトに吸着される。SCR ON F3に流入するNOx(NO、NO2)は、Cuゼオライトに吸着されたNH3によってN2に還元浄化され、そのときに生成するH2Oと共に排出される。Cuゼオライトに吸着されなかったNH3はSCR ON F3よりも下流側に配置されたNH3酸化触媒(図示省略)によって酸化されることで、大気中への排出が阻止される。
【符号の説明】
【0051】
1 排気通路
2 酸化触媒
3 SCR ON F
4 尿素噴射装置
5 整流部材
6 抵抗部材
7 衝突壁