IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三浦工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-真空冷却装置 図1
  • 特許-真空冷却装置 図2
  • 特許-真空冷却装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】真空冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 7/00 20060101AFI20241126BHJP
   A23L 3/36 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
F25D7/00 A
A23L3/36 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021041784
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141466
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】蔵野 雅夫
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-091052(JP,A)
【文献】特開平11-082346(JP,A)
【文献】特開2016-095044(JP,A)
【文献】特開昭61-213594(JP,A)
【文献】特開2020-094794(JP,A)
【文献】中国実用新案第203469527(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0184784(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00-9/00
A23L 3/36
F26B 5/04
B01J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内に収容された被冷却物を冷却する真空冷却装置であって、
エゼクタと、熱交換器と、水封式の真空ポンプと、圧力検知手段と、温度検知手段と、制御手段とを備え、
前記エゼクタは、前記処理槽に接続されるとともに、その排気側に前記熱交換器を介して前記真空ポンプが接続され、
前記熱交換器は、前記処理槽から排気された蒸気を凝縮可能に構成され、
前記圧力検知手段は、前記処理槽の槽内圧力を検知可能に構成され、
前記温度検知手段は、前記真空ポンプの封水温度を検知可能に構成され、
前記制御手段は、前記エゼクタの作動及び前記真空ポンプの駆動を制御可能に構成されるとともに、前記真空ポンプを駆動させて前記処理槽内を減圧する第1冷却工程と、前記エゼクタを作動させる第2冷却工程とを実行するよう構成され、
前記制御手段は、前記第1冷却工程において、前記真空ポンプの封水として常温水を用いる常温水冷却工程と、前記封水として冷水を用いる冷水冷却工程とを順次実行するよう構成されており、
前記制御手段は、前記冷水冷却工程において、前記槽内圧力及び前記封水温度を取得するとともに、これら槽内圧力及び封水温度に基づいて、前記冷水冷却工程から前記第2冷却工程へと移行する、真空冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の真空冷却装置であって、
前記制御手段は、下記(1)又は(2)を条件として、前記冷水冷却工程から前記第2冷却工程へと移行する、真空冷却装置。
(1)前記封水温度から前記真空ポンプ内の封水温度換算圧力を算出し、(前記槽内圧力-前記封水温度換算圧力)が第1の所定圧力以下になったこと
(2)前記槽内圧力から槽内圧力換算温度を算出し、(前記槽内圧力換算温度-前記封水温度)が第1の所定温度以下になったこと
【請求項3】
請求項2に記載の真空冷却装置であって、
前記制御手段は、前記条件を第1条件とし、前記被冷却物の温度が第2の所定温度以下且つ前記槽内圧力が第2の所定圧力以下になったことを第2条件として、前記第1条件又は前記第2条件が満たされた場合に、前記冷水冷却工程から前記第2冷却工程へと移行する、真空冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプを備えた真空冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱調理された食品等の被冷却物を処理槽内で真空冷却する真空冷却装置がある。例えば、特許文献1に開示される真空冷却装置は、蒸気凝縮用の熱交換器と水封式の真空ポンプに加えてエゼクタ(蒸気エゼクタ)を備えており、低温でごく低い圧力となっても処理槽(冷却槽)内を真空吸引することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平9-296975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されるような真空ポンプとエゼクタとを備える真空冷却装置では、圧力が下がりにくくなったタイミングとして、処理槽内が所定の圧力(又は所定の温度)となったタイミングでエゼクタを作動させるようになっている。しかしながら、処理槽内の圧力又は温度のみでエゼクタの作動タイミングを決定すると、真空ポンプの駆動環境によっては冷却にもたつきが生じ、真空ポンプにおいてキャビテーションが発生するおそれもあった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、エゼクタを適切なタイミングで作動させることの可能な真空冷却装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、処理槽内に収容された被冷却物を冷却する真空冷却装置であって、エゼクタと、熱交換器と、水封式の真空ポンプと、圧力検知手段と、温度検知手段と、制御手段とを備え、前記エゼクタは、前記処理槽に接続されるとともに、その排気側に前記熱交換器を介して前記真空ポンプが接続され、前記熱交換器は、前記処理槽から排気された蒸気を凝縮可能に構成され、前記圧力検知手段は、前記処理槽の槽内圧力を検知可能に構成され、前記温度検知手段は、前記真空ポンプの封水温度を検知可能に構成され、前記制御手段は、前記エゼクタの作動及び前記真空ポンプの駆動を制御可能に構成されるとともに、前記真空ポンプを駆動させて前記処理槽内を減圧する第1冷却工程と、前記エゼクタを作動させる第2冷却工程とを実行するよう構成されており、前記制御手段は、前記槽内圧力及び前記封水温度を取得するとともに、これら槽内圧力及び封水温度に基づいて、前記第1冷却工程から前記第2冷却工程へと移行する、真空冷却装置が提供される。
【0007】
本発明によれば、制御手段が槽内圧力に加えて封水温度をもとにエゼクタを作動させるため、真空ポンプの状況に応じて適切なタイミングでエゼクタを作動させることが可能となっている。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0009】
好ましくは、前記制御手段は、下記(1)又は(2)を条件として、前記第1冷却工程から前記第2冷却工程へと移行する。
(1)前記封水温度から前記真空ポンプ内の封水温度換算圧力を算出し、(前記槽内圧力-前記封水温度換算圧力)が第1の所定圧力以下になったこと
(2)前記槽内圧力から槽内圧力換算温度を算出し、(前記槽内圧力換算温度-前記封水温度)が第1の所定温度以下になったこと
【0010】
好ましくは、前記制御手段は、前記条件を第1条件とし、前記被冷却物の温度が第2の所定温度以下且つ前記槽内圧力が第2の所定圧力以下になったことを第2条件として、前記第1条件又は前記第2条件が満たされた場合に、前記第1冷却工程から前記第2冷却工程へと移行する。
【0011】
好ましくは、前記第1冷却工程は、前記真空ポンプに供給する封水として常温水を用いる工程と、前記封水として冷水を用いる工程とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る真空冷却装置1を示す概念図である。
図2図1の真空冷却装置1の動作を示すフローチャートである。
図3図3A及び図3Bは、本発明の変形例に係る真空冷却装置1の一部の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0014】
1.真空冷却装置1の構成
まず、本発明の一実施形態に係る真空冷却装置1の構成について説明する。真空冷却装置1は、熱調理された食品等の被冷却物Fを処理槽2内で真空冷却するものである。本実施形態の真空冷却装置1は、図1に示すように、処理槽2と、エゼクタ3と、熱交換器4と、真空ポンプ5と、給水手段6と、復圧手段7と、圧力検知手段8と、温度検知手段9と、制御手段10とを備える。また、本実施形態の真空冷却装置1は、処理槽2内の気体(空気及び蒸気)を排気するための排気路11が設けられており(図の太線参照)、当該排気路11に、エゼクタ3、熱交換器4及び真空ポンプ5がこの順に接続されている。また、熱交換器4と真空ポンプ5の間には、逆止弁12が設けられている。
以下、各構成を具体的に説明する。
【0015】
処理槽2は、内部空間の減圧に耐える中空容器であり、ドア(図示省略)で開閉可能とされる。処理槽2は、典型的には略矩形の箱状に形成され、正面の開口部がドアで開閉可能とされる。ドアを開けることで、処理槽2に被冷却物Fを出し入れすることができ、ドアを閉じることで、処理槽2の開口部を気密に閉じることができる。ドアは、処理槽2の正面および背面の双方に設けられてもよい。なお、図示例では、被冷却物Fは、ホテルパンや番重のような食品容器に入れられて、処理槽2内に収容されている。
【0016】
エゼクタ3は、吸引口3aと、排気口3bと、流体入口3cとを備える。エゼクタ3は、流体入口3cに設けたノズル(図示せず)から排気口3bへ向けて流体を高速で通過させることによって減圧域を作り、減圧域の周囲に設けた吸引口3aから流体を吸引するものである。本実施形態のエゼクタ3は、排気路11に設けられ、吸引口3aが処理槽2に接続され、排気口3bが熱交換器4に接続されており、処理槽2内の気体を吸引口3aを介して排気口3bへ吸引排出するよう構成されている。また、本実施形態のエゼクタ3は、蒸気エゼクタとされ、エゼクタ給蒸路30から供給される蒸気を噴出することで処理槽2内の気体を吸引する構成となっている。ここで、エゼクタ給蒸路30にはエゼクタ給蒸弁31が設けられており、エゼクタ給蒸弁31の開閉操作により、エゼクタ3の作動を切り替えることが可能となっている。
【0017】
熱交換器4は、排気路11内の流体(エゼクタ3からの流体)と冷却水とを混ぜることなく熱交換する間接熱交換器である。熱交換器4により、排気路11内の蒸気を、冷却水により冷却し凝縮させることができる。冷却水は、後述する給水手段6から熱交給水路40を介して供給され、熱交排水路41を介して排出される。熱交排水路41は、図示しない冷水タンク(チラーの給水源)への冷水戻し路42と、外部への排水出口路43とに分岐されており、冷水戻し路42には冷水戻し弁44が設けられ、排水出口路43には排水出口弁45が設けられている。冷水戻し弁44及び排水出口弁45により、熱交換器4を通過後の水を、冷水タンクへ戻すか、排水出口路43から排出するか、あるいはいずれも行わずに熱交換器4の通水を阻止するか(つまり熱交換器4の冷却水出口側を閉じるか)を切り替えることができる。
【0018】
真空ポンプ5は、水封式の真空ポンプであり、封水と呼ばれる水が供給されつつ駆動される。封水を供給するため、真空ポンプ5の給水口5aには、後述する給水手段6から封水給水路50を介して水が供給される。封水給水路50から給水しつつ真空ポンプ5を作動させると、真空ポンプ5は、吸気口5bから気体を吸入し、排気口5cへ排気および排水する。封水給水路50には、封水弁51及び定流量弁52が設けられる。ここで、定流量弁52は、周知の通り、一定の流量で通水可能に構成される。
【0019】
なお、封水弁51は、例えば、開度調整の可能な電動弁とされ、封水量を調整可能とされる。また、真空ポンプ5は、オンオフ制御されてもよいし、出力を調整可能とされてもよい。たとえば、真空ポンプ5は、インバータを用いて、モータの駆動周波数ひいては回転数を変更可能とされる。
【0020】
給水手段6は、熱交換器4及び真空ポンプ5へ常温水又は冷水を供給可能に構成される。ここで、冷水とは、チラー(図示省略)により所定温度に冷却を図られた水(チラー水)であり、常温水とは、そのような冷却を図られない水である。給水手段6は、具体的には、給水源に接続された常温水給水路60と、チラーに接続された冷水給水路61とを備える。また、常温水給水路60には常温水給水弁62が設けられ、冷水給水路61には、冷水給水弁63が設けられている。
【0021】
常温水給水路60と冷水給水路61とは、常温水給水弁62及び冷水給水弁63それぞれの下流の位置において合流し、共通給水路64となっている。この共通給水路64は、熱交換器4への熱交給水路40と、真空ポンプ5への封水給水路50とに分岐されている。そして、給水手段6は、常温水給水弁62または冷水給水弁63を開けることで、熱交換器4に冷却水を給水し、さらに封水弁51を開けることで、真空ポンプ5に給水するようになっている。
【0022】
復圧手段7は、減圧された処理槽2内へ外気を導入して、処理槽2内を復圧する手段である。本実施形態では、復圧手段7は、処理槽2に接続される給気路70を備え、給気路70には、上流側から順にエアフィルタ71と給気弁72とが設けられている。処理槽2内が減圧された状態で給気弁72を開けると、外気がエアフィルタ71を介して処理槽2内へ導入され、処理槽2内を復圧することができる。給気弁72は、好ましくは開度調整可能な電動弁とされ、復圧の速度を調整可能とされる。なお、給気弁72をこのような電動弁とすれば、後述する第1冷却工程S1及び第2冷却工程S2において、処理槽2の槽内圧力を調整しながら減圧する徐冷制御を行うことが可能となる。
【0023】
圧力検知手段8は、処理槽2に設けられる。本実施形態の圧力検知手段8は、処理槽2内の圧力を検知する圧力センサである。
【0024】
温度検知手段9は、真空ポンプ5に設けられ、真空ポンプ5の内部に存在する封水の温度(封水温度)を検知可能に構成される。温度検知手段9は、具体的には例えば、真空ポンプ5の内部に挿入された熱電対により構成することができる。
【0025】
なお、真空冷却装置1は、さらに、処理槽2内に収容された被冷却物Fの温度(品温)を検出する品温センサ(図示省略)が設けられてもよい。ただし、本実施形態の真空冷却装置1では、品温センサの設置は必須ではない。
【0026】
制御手段10は、圧力検知手段8及び温度検知手段9の検出信号や経過時間などに基づき、上述した各構成を制御する。制御手段10は、具体的には、エゼクタ3(エゼクタ給蒸弁31)と、冷水戻し弁44及び排水出口弁45と、真空ポンプ5と、封水弁51と、常温水給水弁62及び冷水給水弁63と、給気弁72とを制御する。また、制御手段10には、圧力検知手段8及び温度検知手段9などが接続されている。本実施形態において、制御手段10は、温度検知手段9が検知する封水温度を取得し、封水温度から封水温度換算圧力、すなわち、その封水温度における飽和圧力(飽和水蒸気圧)を算出可能に構成されている。なお、制御手段10は、予め登録された所定の演算式(またはテーブル)に基づいて、封水温度から封水温度換算圧力を求めるようになっている。加えて、制御手段10は、後述するように、所定の手順(プログラム)に従い、被冷却物Fの冷却のための制御を行う。
【0027】
なお、上記構成の制御手段10は、具体的には例えば、CPU、メモリ(例えばフラッシュメモリ)、入力部及び出力部を備えた情報処理装置により構成することができる。そして、情報処理装置により構成された制御手段10の上述した各構成要素による処理は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが読み出して実行することで行われる。情報処理装置としては、例えば、パーソナルコンピュータ、PLC(プログラマラブルロジックコントローラ)あるいはマイコンが用いられる。ただし、制御手段10の一部の機能を、任意の通信手段により接続されたクラウド上で実行されるよう構成しても良い。
【0028】
2.真空冷却装置1の動作
次に、本実施形態の真空冷却装置1の動作について説明する。本実施形態の真空冷却装置1は、制御手段10の制御により、第1冷却工程S1と第2冷却工程S2とを実行するよう構成されている。ここで、真空冷却装置1の運転開始前(第1冷却工程S1の開始前)において、復圧手段7の給気弁72を除く各弁は閉じられた状態となっている。真空冷却装置1の動作を開始するには、まず、処理槽2内に被冷却物Fを収容し、処理槽2のドアを気密に閉じた後、各工程を実行する。以下、各工程の動作について詳細に説明する。
【0029】
<第1冷却工程S1(常温水冷却工程S11)>
第1冷却工程S1は、真空ポンプ5を駆動させて処理槽2内を減圧し、被冷却物Fを冷却する工程である。第1冷却工程S1は、封水として常温水を用いる常温水冷却工程S11と、封水として冷水を用いる冷水冷却工程S12とを備える。制御手段10は、真空冷却装置1の運転開始後、まず常温水冷却工程S11を実行し、冷却が進んだ後、冷水冷却工程S12を実行する。なお、第1冷却工程S1において、制御手段10はエゼクタ給蒸弁31を閉じており、エゼクタ3を作動させないようにしている。
【0030】
真空冷却装置1のスタートボタン(図示せず)が押されるなど、運転開始が指示されると、制御手段10は、常温水冷却工程S11において、まず、給気弁72を閉じる。そして、制御手段10は、真空ポンプ5の駆動を開始するとともに、給水手段6の常温水給水弁62及び封水弁51を開くことで、真空ポンプ5に封水として常温水を供給し、真空ポンプ5による処理槽2内の減圧を開始する。これにより、高温の被冷却物Fから発生される蒸気を含む空気が排気路11を通って排出される。
【0031】
また、同時に、制御手段10は、排水出口路43の排水出口弁45も開く。これにより、給水手段6からは熱交換器4にも常温水が供給されることになり、処理槽2内からの蒸気と常温水の間で熱交換が行われ、処理槽2内からの蒸気が凝縮されて真空ポンプ5に送水される。一方、熱交換器4において吸熱した常温水は、排水出口路43を通って外部へと排出される。
【0032】
常温水冷却工程S11における冷却により処理槽2内の減圧が進み、圧力検知手段8の検知する槽内圧力が所定の冷水供給開始圧力(例えば、20kPa)以下になると(図2の分岐B1参照)、制御手段10は、これを条件として、常温水冷却工程S11から冷水冷却工程S12へと移行する。
【0033】
<第1冷却工程S1(冷水冷却工程S12)>
冷水冷却工程S12に移行するには、制御手段10は、具体的には、給水手段6の常温水給水弁62を閉じるとともに冷水給水弁63を開いて、真空ポンプ5に封水として冷水を供給する。また、制御手段10は、排水出口弁45を閉じるとともに冷水戻し弁44を開くことで、熱交換器4にも冷水を供給し、熱交換器4において吸熱した冷水を冷水タンク(図示せず)へと戻す。冷水タンクに戻された水は、チラー(図示せず)で冷却されて、再び冷水給水路61へ供給されることになる。
【0034】
冷水冷却工程S12においては、封水として冷水を用いることにより、真空ポンプ5内の飽和圧力を下げることができるため、真空ポンプ5の能力を向上させ、減圧された処理槽2内をさらに減圧することが可能となる。また、熱交換器4にも冷水を供給することで、排気路11を通る気体を凝縮できるようになっている。
【0035】
なお、封水弁51が開度調整の可能な電動弁である場合には、封水弁51の開度を調整することで、真空ポンプ5の排気速度を制御して処理槽2内の減圧速度を制御するとともに、真空ポンプ5におけるキャビテーションを防止しつつ冷水の使用量を抑制することが可能となる。
【0036】
冷水冷却工程S12において、制御手段10は、温度検知手段9の検知する封水温度に基づいて封水温度換算圧力を算出する。そして、圧力検知手段8の検知する槽内圧力からこの封水温度換算圧力を引いた値(槽内圧力-封水温度換算圧力)が第1の所定圧力以下になると(図2の分岐B2参照)、制御手段10は、これを条件として、冷水冷却工程S12から第2冷却工程S2へと移行する。ここで、第1の所定圧力は、例えば、5kPaである。なお、第1の所定圧力は、真空冷却装置1の運転前に予め設定されるものであるが、制御手段10が備えるメモリに記憶させておくとともに、ユーザからの入力を受け付けて適宜変更可能とすることが好適である。
【0037】
<第2冷却工程>
第2冷却工程S2に移行するには、制御手段10は、具体的には、エゼクタ給蒸弁31を開けて、エゼクタ3を作動させる。この際、制御手段10は、給水手段6による冷水の供給を継続させる。
【0038】
第2冷却工程S2においては、エゼクタ3を起動させることにより、槽内圧力が真空ポンプ5によっては減圧ができないような低圧になった状態でも、処理槽2内をさらに減圧することが可能となる。
【0039】
そして、第2冷却工程S2における処理槽2内の減圧により、処理槽2の槽内圧力が目標圧力(例えば、1.2kPa)以下になれば(図2の分岐B3参照)、第2冷却工程S2を終了し、真空冷却装置1による被冷却物Fの冷却を停止する。なお、冷却を停止するには、具体的には、制御手段10は、エゼクタ給蒸弁31、冷水戻し弁44及び排水出口弁45、封水弁51、常温水給水弁62及び冷水給水弁63の各弁を閉じ、エゼクタ3及び真空ポンプ5を停止し、熱交換器4への通水を停止する。その後、給気弁72を開けて、処理槽2内を大気圧まで復圧する。
【0040】
3.作用効果
以上のように、本実施形態の真空冷却装置1は、制御手段10が真空ポンプ5を駆動させて処理槽2内を減圧する第1冷却工程S1と、エゼクタ3を作動させる第2冷却工程S2とを実行するよう構成され、(槽内圧力-封水温度換算圧力)が第1の所定圧力以下となったことを第1冷却工程S1から第2冷却工程S2への移行条件(すなわち、エゼクタ3の作動条件)としている。エゼクタ3の作動条件として封水温度から算出される封水温度換算圧力を条件式に加えることで、真空ポンプ5の駆動環境(具体的には例えば、封水温度が高い場合等)が考慮され、槽内圧力のみを条件とする場合と比較して、より適切なタイミングでエゼクタ3を作動させることができる。
【0041】
なお、封水温度換算圧力を条件式に加える理由は、以下の通りである。すなわち、本願で用いられるような水封式の真空ポンプ5は、原理上、封水内部温度(真空ポンプメカ室温度)に対応する飽和圧力以下に減圧することができない。そこで、槽内圧力が封水温度換算圧力+第1の所定圧力(余裕分)を下回ること、すなわち、槽内圧力-封水温度換算圧力が第1の所定圧力以下となることを条件とすることで、真空ポンプ5のみでの減圧の限界を判断することができるのである。
【0042】
そして、本実施形態の真空冷却装置1は、真空ポンプ5による減圧の限界を適切に把握することで、エゼクタ3の作動の遅れによる真空ポンプ5のキャビテーションを抑制することが可能となっている。また、被冷却物Fが冷えにくいもの(例えば、液深の影響を受ける食材)である場合でも、冷却のもたつきを起こさせないことが可能となっている。
【0043】
4.変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0044】
上記実施形態では、制御手段10は、(槽内圧力-封水温度換算圧力)が第1の所定圧力以下になったことを条件として、第1冷却工程S1(冷水冷却工程S12)から第2冷却工程S2へと移行していた。しかしながら、当該条件(第1条件)に加えて、第2条件として品温センサによって検知される被冷却物Fの温度が所定温度(例えば、30℃)以下且つ槽内圧力が第2の所定圧力(例えば、45hPa)以下になったことを条件とし、第1条件又は第2条件が満たされた場合に、第1冷却工程S1から第2冷却工程S2へと移行するようにしても良い。
【0045】
上記実施形態では、第1冷却工程S1(冷水冷却工程S12)から第2冷却工程S2へと移行する条件を圧力を基準として規定していたが、温度を基準にして条件を規定することも可能である。すなわち、制御手段10は、圧力検知手段8の検知する槽内圧力に基づいて槽内圧力換算温度(槽内圧力における飽和温度)を算出する。そして、当該槽内圧力換算温度から、温度検知手段9の検知する封水温度を引いた値(槽内圧力換算温度-封水温度)が第1の所定温度(例えば、5℃)以下になると、制御手段10が、これを条件として、第1冷却工程S1(冷水冷却工程S12)から第2冷却工程S2へと移行するようにしても良い。なお、この場合にも、当該条件(第1条件)に加えて第2条件として品温センサによって検知される被冷却物Fの温度が第2の所定温度(例えば、30℃)以下且つ槽内圧力が第2の所定圧力(例えば、45hPa)以下になったことを条件とし、第1条件又は第2条件が満たされた場合に、第1冷却工程S1から第2冷却工程S2へと移行するようにしても良い。
【0046】
上記実施形態では、封水温度を検知する温度検知手段9は真空ポンプ5に設けられていた。しかしながら、図3Aに示すように、温度検知手段9を給水手段6の封水給水路50に設けることも可能である。封水給水路50を流通する水の水温を検知することによっても、封水温度を推定することが可能である。
【0047】
上記実施形態では、封水弁51を開度調整の可能な電動弁とすることで封水量を制御可能とされていた。しかしながら、図3Bに示すように、封水給水路50を定流量弁52を備えた2つの封水給水路50A,50Bに分岐させ、一方の封水給水路50Aに設けられた電磁弁53の開閉を制御することにより封水量を制御する構成とすることも可能である。
【0048】
上記実施形態では、第1冷却工程S1が常温水を熱交換器4及び真空ポンプ5に供給する常温水冷却工程S11と冷水を熱交換器4及び真空ポンプ5に供給する冷水冷却工程S12とを備えていた。しかしながら、第1冷却工程S1において、常時冷水を供給する構成とすることも可能である。
【0049】
上記実施形態では、処理槽2内の気体を排気するためのエゼクタ3は、エゼクタ給蒸路30から供給される蒸気を噴出することで処理槽2内の気体を吸引する蒸気エゼクタとされていた。しかしながら、エゼクタとして、エゼクタ給水路から供給される水を噴出する水エゼクタを用いることも可能である。
【0050】
上記実施形態では、真空冷却装置1は真空ポンプ5を1台のみ備える構成であったが、真空冷却装置1は、真空ポンプ5を複数台備える大容量型のものであっても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 :真空冷却装置
2 :処理槽
3 :エゼクタ
3a :吸引口
3b :排気口
3c :流体入口
4 :熱交換器
5 :真空ポンプ
5a :給水口
5b :吸気口
5c :排気口
6 :給水手段
7 :復圧手段
8 :圧力検知手段
9 :温度検知手段
10 :制御手段
11 :排気路
12 :逆止弁
30 :エゼクタ給蒸路
31 :エゼクタ給蒸弁
40 :熱交給水路
41 :熱交排水路
42 :冷水戻し路
43 :排水出口路
44 :冷水戻し弁
45 :排水出口弁
50 :封水給水路
50A :封水給水路
50B :封水給水路
51 :封水弁
52 :定流量弁
53 :電磁弁
60 :常温水給水路
61 :冷水給水路
62 :常温水給水弁
63 :冷水給水弁
64 :共通給水路
70 :給気路
71 :エアフィルタ
72 :給気弁
B1~B3 :分岐
F :被冷却物
S1 :第1冷却工程
S11 :常温水冷却工程
S12 :冷水冷却工程
S2 :第2冷却工程
図1
図2
図3