(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】内燃機関用の点火コイル
(51)【国際特許分類】
F02P 15/00 20060101AFI20241126BHJP
H01F 38/12 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
F02P15/00 303H
H01F38/12 L
H01F38/12 G
(21)【出願番号】P 2021043321
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 昌冬
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/102976(WO,A1)
【文献】特開2009-188364(JP,A)
【文献】特開2012-094644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 1/00- 3/12、7/00-17/12
H01F 30/00-38/12、38/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心状に配置された一次コイル(2A,2B)及び二次コイル(3)と、
前記一次コイル及び前記二次コイルの内側に配置された内側コア(41)と、
前記内側コアの側面の外側に配置された一対の側面コア部(421)と、前記内側コアの端面の外側に配置された一対の端面コア部(422)とによる四角環形状を有する外側コア(42)と、
前記一次コイルへの通電及び通電の遮断を行う機能を有する第1電子回路(51A)が設けられた第1イグナイタ(5A)と、
前記第1電子回路の機能とは異なる機能を有する第2電子回路(51B)が設けられた第2イグナイタ(5B)と、を備え、
前記第1イグナイタ及び前記第2イグナイタは、前記外側コアの開口方向(D)に直交する横方向(W)に並んで
いると共に、
イグナイタカバー(6)に配置された状態で、前記外側コアの一方の前記端面コア部に対面している、内燃機関用の点火コイル(1)。
【請求項2】
前記第1イグナイタには、電源線(+B)、グラウンド線(GND)及び信号線(IGt,IGw)それぞれを構成する複数の第1イグナイタ導体(53A)が設けられており、
前記第2イグナイタには、電源線、グラウンド線及び信号線のそれぞれを構成する複数の第2イグナイタ導体(53B)が設けられており、
前記イグナイタカバーには、複数の前記第1イグナイタ導体と、複数の前記第2イグナイタ導体とを、電源線、グラウンド線及び信号線ごとに接続する複数の接続導体(63)が設けられている、請求項1に記載の内燃機関用の点火コイル。
【請求項3】
電源線、グラウンド線及び信号線のそれぞれを構成する複数の前記接続導体は、前記イグナイタカバーの同一平面内において、互いに交差せずに折り返し形状に並んで、複数の前記第1イグナイタ導体と複数の前記第2イグナイタ導体とを接続している、請求項2に記載の内燃機関用の点火コイル。
【請求項4】
前記一次コイル、前記二次コイル、前記内側コア、前記外側コア、前記第1イグナイタ、前記第2イグナイタ及び前記イグナイタカバーを収容するコイルケース(13)と、
前記コイルケースに配置されて、複数の前記接続導体に接続される複数のコネクタ導体(141)が設けられたコネクタ部(14)と、をさらに備えており、
複数の前記接続導体は、前記イグナイタカバー内に埋設された複数の埋設導体部(631)と、複数の前記埋設導体部に繋がり、前記イグナイタカバーから突出して複数の前記第1イグナイタ導体及び複数の前記第2イグナイタ導体に接続された複数の突出導体部(632)とによって構成されており、
いずれかの前記突出導体部には、前記第1イグナイタ導体又は前記第2イグナイタ導体が接続された部位よりも先端側の部位に、前記コネクタ導体が接続されている、請求項
2又は3に記載の内燃機関用の点火コイル。
【請求項5】
前記イグナイタカバーは、
複数の前記埋設導体部が同一平面内に埋設され、前記第1イグナイタ及び前記第2イグナイタと対面するカバー本体部(61)と、
前記カバー本体部の外縁部位、及び前記カバー本体部の、前記第1イグナイタと前記第2イグナイタとの間の中間部位から突出して、前記第1イグナイタの側面及び前記第2イグナイタの側面をガイドする突出ガイド部(62)とを有する、請求項
4に記載の内燃機関用の点火コイル。
【請求項6】
前記一次コイルは、前記二次コイルに誘導起電力を生じさせるための一次主コイル(2A)と、前記二次コイルに流れる電流を維持するための一次副コイル(2B)とによって構成されており、
前記第1電子回路は、前記一次主コイルへの通電及び通電の遮断を行う機能を有しており、
前記第2電子回路は、前記二次コイルに流れる電流を検出して前記一次副コイルへの通電及び通電の遮断を行う機能を有している、請求項
1~5のいずれか1項に記載の内燃機関用の点火コイル。
【請求項7】
前記第1電子回路は、前記一次コイルへの通電及び通電の遮断を行う機能を有しており、
前記第2電子回路は、点火プラグ(100)の点火時に前記二次コイルに流れるイオン電流を検出する機能を有している、請求項1~
5のいずれか1項に記載の内燃機関用の点火コイル。
【請求項8】
前記カバー本体部における、前記埋設導体部同士の間には、前記カバー本体部の表面に垂直な状態で複数の貫通孔(611)が形成されている、請求項
5に記載の内燃機関用の点火コイル。
【請求項9】
前記カバー本体部における、前記第1イグナイタ及び前記第2イグナイタと対面する表面には、前記貫通孔に連通する状態でガス抜き溝(612)が形成されている、請求項
8に記載の内燃機関用の点火コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の点火コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関用の点火コイルは、内燃機関としてのエンジンの燃焼室において、燃料と燃焼用空気との混合気に点火するために用いられる。点火コイルは、一次コイル、一次コイルの外周側に同軸状に配置されて一次コイルに磁気的に結合される二次コイル、一次コイルへの通電を断続するスイッチング素子が内蔵されたイグナイタ、一次コイル及び二次コイルによって生じる磁束を通過させる中心コア及び外周コア等を備えている。
【0003】
点火コイルには、一次コイルへの通電及び通電の遮断を行う機能を有するイグナイタの他にも、他の機能を有するイグナイタを用いたい場合がある。例えば、特許文献1には、第1の回路を内蔵する第1のパッケージと第2の回路を内蔵する第2のパッケージとを備
える内燃機関用点火コイルについて記載されている。第1のパッケージ及び第2のパッケージは、所定の角度を有する状態で樹脂構造体の内部に個別に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
点火コイルにおいて複数のイグナイタを用いる場合には、点火コイルにおける複数のイグナイタの配置位置が重要であることが分かった。特許文献1の内燃機関用点火コイルにおいては、互いに直交する状態又は互いに傾斜する状態で2つのパッケージ(イグナイタ)が配置されている。そのため、複数のイグナイタにおける複数の導体を、点火コイルのコネクタ部における複数の導体に接続する配線の構造が複雑になる。また、特許文献1の内燃機関用点火コイルにおいては、2つのパッケージが互いに直交する状態又は互いに傾斜する状態で配置されていることにより、2つのパッケージの冷却を効果的にする工夫はなされていない。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、2つのイグナイタの配線の構造を簡単にするとともに、2つのイグナイタの冷却効果を高めることができる内燃機関用の点火コイルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
同心状に配置された一次コイル(2A,2B)及び二次コイル(3)と、
前記一次コイル及び前記二次コイルの内側に配置された内側コア(41)と、
前記内側コアの側面の外側に配置された一対の側面コア部(421)と、前記内側コアの端面の外側に配置された一対の端面コア部(422)とによる四角環形状を有する外側コア(42)と、
前記一次コイルへの通電及び通電の遮断を行う機能を有する第1電子回路(51A)が設けられた第1イグナイタ(5A)と、
前記第1電子回路の機能とは異なる機能を有する第2電子回路(51B)が設けられた第2イグナイタ(5B)と、を備え、
前記第1イグナイタ及び前記第2イグナイタは、前記外側コアの開口方向(D)に直交する横方向(W)に並んでいると共に、イグナイタカバー(6)に配置された状態で、前記外側コアの一方の前記端面コア部に対面している、内燃機関用の点火コイル(1)にある。
【発明の効果】
【0008】
前記一態様の内燃機関用の点火コイルは、第1イグナイタの他に第2イグナイタを備える。そして、第1イグナイタ及び第2イグナイタは、外側コアの開口方向に直交する横方向に並んで、外側コアの一方の端面コア部に対面している。これにより、第1イグナイタ及び第2イグナイタの各導体が、点火コイルのコネクタ部の導体に接続される配線の構造を簡単にすることができる。
【0009】
また、第1イグナイタ及び第2イグナイタは、外側コアの一方の端面コア部に対面している。これにより、第1イグナイタ及び第2イグナイタの熱を外側コアに効果的に逃がすことができ、第1イグナイタ及び第2イグナイタの冷却効果を高めることができる。
【0010】
前記一態様の内燃機関用の点火コイルによれば、2つのイグナイタの配線の構造を簡単にするとともに、2つのイグナイタの冷却効果を高めることができる。
【0011】
なお、本発明の一態様において示す各構成要素のカッコ書きの符号は、実施形態における図中の符号との対応関係を示すが、各構成要素を実施形態の内容のみに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかる、点火コイルを正面から見た断面で示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態1にかかる、
図1の一部を拡大した状態で示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施形態1にかかる、点火コイルを上方から見た断面で示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態1にかかる、点火コイルの電気的構成を示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態1にかかる、イグナイタカバーを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態1にかかる、イグナイタカバーを示す正面図である。
【
図7】
図7は、実施形態1にかかる、第1イグナイタ、第2イグナイタ及びイグナイタカバーを上方から見た状態で示す説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態1にかかる、第1イグナイタ及び第2イグナイタをイグナイタカバーに配置する状態を示す説明図である。
【
図9】
図9は、実施形態1にかかる、第1イグナイタ、第2イグナイタ及びイグナイタカバーを上方から見た断面で示す説明図である。
【
図10】
図10は、実施形態1にかかる、他のイグナイタカバーを示す正面図である。
【
図11】
図11は、実施形態1にかかる、第1イグナイタ、第2イグナイタ及び他のイグナイタカバーを上方から見た断面で示す説明図である。
【
図12】
図12は、実施形態1にかかる、エンジン制御装置の点火信号及び放電信号、第2イグナイタの第2スイッチング素子のゲート放電電圧、一次主コイルの電流、一次副コイルの電流、及び二次コイルの放電電流の時間的変化を示すグラフである。
【
図13】
図13は、実施形態3にかかる、第1イグナイタ、第2イグナイタ及びイグナイタカバーを上方から見た断面で示す説明図である。
【
図14】
図14は、実施形態3にかかる、第1イグナイタ、第2イグナイタ及び他のイグナイタカバーを上方から見た断面で示す説明図である。
【
図15】
図15は、実施形態3にかかる、第1イグナイタ、第2イグナイタ及び他のイグナイタカバーを上方から見た断面で示す説明図である。
【
図16】
図16は、実施形態3にかかる、第1イグナイタ、第2イグナイタ及び他のイグナイタカバーを上方から見た断面で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前述した内燃機関用の点火コイルにかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態の内燃機関用の点火コイル1は、
図1~
図3に示すように、一次コイルとしての一次主コイル2A及び一次副コイル2B、二次コイル3、内側コア41、外側コア42、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bを備える。一次主コイル2A、一次副コイル2B及び二次コイル3は、同心状に配置されている。内側コア41は、一次主コイル2A、一次副コイル2B及び二次コイル3の内側に配置されている。外側コア42は、内側コア41の側面の外側に配置された一対の側面コア部421と、内側コア41の端面の外側に配置された一対の端面コア部422とによる四角環形状を有する。
【0014】
図4に示すように、第1イグナイタ5Aは、一次主コイル2Aへの通電及び通電の遮断を行う機能を持つ第1電子回路51Aを有する。第2イグナイタ5Bは、第1電子回路51Aの機能とは異なる機能として、一次副コイル2Bへの通電制御を行う機能を持つ第2電子回路51Bを有する。第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bは、外側コア42の開口方向Dに直交する横方向Wに並んで、外側コア42の一方の端面コア部422に対面している。
【0015】
以下に、本形態の内燃機関用の点火コイル1について詳説する。
(点火コイル1)
図1に示すように、点火コイル1は、車両の内燃機関としてのエンジンにおいて、シリンダヘッドカバー7に配置され、シリンダヘッドに配置された点火プラグ100から、シリンダヘッドの燃焼室内に火花放電を発生させるために用いられる。本形態の点火コイル1は、車載用のものである。点火コイル1は、一次主コイル2A、一次副コイル2B、二次コイル3、第1イグナイタ5A、第2イグナイタ5B、コイルケース13等によって構成されたコイル本体部11と、コイル本体部11から突出して、二次コイル3と点火プラグ100とを高圧端子44及びバネ45を介して電気的に接続するためのジョイント部12とを有する。コイル本体部11は、シリンダヘッドカバー7に配置され、ジョイント部12は、シリンダヘッドカバー7のプラグホール71に配置される。
【0016】
点火コイル1は、一次主コイル2A、一次副コイル2B、二次コイル3、内側コア41、外側コア42、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの他に、一次ボビン21、二次ボビン31、コイルケース13、コネクタ部14、イグナイタカバー6、絶縁固着樹脂15等を備える。一次ボビン21は、一次主コイル2A、一次副コイル2Bが外周に配置されたものである。二次ボビン31は、二次コイル3が外周に配置されたものである。コイルケース13は、一次主コイル2A、一次副コイル2B、二次コイル3、内側コア41、外側コア42、第1イグナイタ5A、第2イグナイタ5B、イグナイタカバー6等を収容するものである。
【0017】
図1~
図4に示すように、コネクタ部14は、コイルケース13に配置されて、点火コイル1を外部のエンジン制御装置8に電気接続するためのものである。コネクタ部14には、イグナイタカバー6の複数の接続導体63に接続される複数のコネクタ導体141が設けられている。イグナイタカバー6は、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bが配置されたものである。絶縁固着樹脂15は、コイルケース13内に形成された隙間を埋めるものである。
【0018】
(軸方向L,開口方向D,横方向W)
図1~
図11に示すように、軸方向Lとは、一次主コイル2A、一次副コイル2B及び二次コイル3の断面の中心(図心)を通る仮想線としての中心軸線が延びる方向のことをいう。軸方向Lにおいて、二次コイル3に高電圧が生じる側を高電圧側L1といい、高電圧側L1の反対側を低電圧側L2という。開口方向Dとは、軸方向Lに直交する方向であって、四角環形状の外側コア42が開口する方向のことをいう。開口方向Dにおいて、点火プラグ100が配置される側を底側D1といい、底側D1の反対側であってコイルケース13の開口部132が位置する側を開口側D2という。また、軸方向L及び開口方向Dの双方に直交する方向を横方向Wという。
【0019】
(一次主コイル2A、一次副コイル2B)
図1~
図4に示すように、本形態の一次コイルは、二次コイル3に誘導起電力を生じさせて点火プラグ100に火花点火を発生させるための一次主コイル2Aと、発生した火花点火が継続するよう二次コイル3に流れる電流を維持するための一次副コイル2Bとによって構成されている。一次主コイル2Aには、第1イグナイタ5Aによって、点火時期に応じて断続的に電流が流れる。一次副コイル2Bには、第2イグナイタ5Bによって、
図12に示すように、一次主コイル2Aに電流が流れた後に電流が流れる。
【0020】
一次副コイル2Bは、一次主コイル2Aに接続されており、一次主コイル2Aへの通電が遮断されたときに発生する磁束と同じ向きの磁束を発生させるよう構成されている。一次主コイル2A及び一次副コイル2Bは、一次ボビン21の筒状部22の外周面に配置された巻線としてのマグネットワイヤによって構成されている。一次副コイル2Bは、一次主コイル2Aの外周に配置されている。
【0021】
(二次コイル3)
図1~
図3に示すように、二次コイル3は、一次主コイル2A及び一次副コイル2Bの外周側において、一次主コイル2A及び一次副コイル2Bと同軸状に配置されている。二次コイル3は、二次ボビン31の筒状部32の外周面に配置された巻線としてのマグネットワイヤによって構成されている。二次コイル3の巻線は一次主コイル2A及び一次副コイル2Bの巻線よりも細く、二次コイル3の巻線数は一次主コイル2A及び一次副コイル2Bの巻線数よりも多い。二次コイル3は、一次主コイル2Aへの通電が遮断されたときに、相互誘導作用による誘導起電力を発生させるものである。一次主コイル2Aへの通電が遮断されたときには、二次コイル3には、相互誘導作用によって一次主コイル2Aにおける磁束の変化を妨げるように誘導起電力が生じる。
【0022】
一次主コイル2A、一次副コイル2B及び二次コイル3の中心軸線は、コイルケース13の開口部132に対して直交する方向に向けられている。二次コイル3の巻線の低電圧側L2の端部は、第2イグナイタ5Bに接続されている。二次コイル3の巻線の高電圧側L1の端部は、点火プラグ100の中心側電極に繋がる高圧端子44に接続されている。
【0023】
(内側コア41)
図1~
図3に示すように、一次主コイル2A及び一次副コイル2Bの内周側には、一次主コイル2A、一次副コイル2B及び二次コイル3によって生じる磁束を通過させるための内側コア41が配置されている。本形態の内側コア41は、軟磁性材料からなる板状の電磁鋼板が複数積層されて形成されている。内側コア41は、直方体形状に形成されている。なお、内側コア41は、軟磁性材料からなる粉末が圧縮成形されて形成されたものであってもよい。
【0024】
(外側コア42)
図1~
図3に示すように、二次コイル3の外周側には、一次主コイル2A、一次副コイル2B及び二次コイル3によって生じる磁束を通過させるための外側コア42が配置されている。外側コア42は、内側コア41と磁気結合して、磁束が通過する閉磁路を形成するものである。内側コア41と外側コア42との間には、磁気飽和を防止するための永久磁石43が配置されている。本形態の外側コア42は、軟磁性材料からなる板状の電磁鋼板が複数積層されて形成されている。外側コア42は、開口方向Dから見た断面において、内側コア41を内側に配置する四角環形状に形成されている。なお、外側コア42は、軟磁性材料からなる粉末が圧縮成形されて形成されたものであってもよい。
【0025】
外側コア42は、二次コイル3の外周側であって横方向Wの両側に位置する一対の側面コア部421と、二次コイル3の軸方向Lの両側L1,L2に位置して一対の側面コア部421を連結する一対の端面コア部422とを有する。第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bは、外側コア42における、二次コイル3の軸方向Lの低電圧側L2に位置する端面コア部422に対面して配置される。第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bは、端面コア部422に近接して配置されている。
【0026】
(一次ボビン21)
図1~
図3に示すように、一次主コイル2A及び一次副コイル2Bが配置された一次ボビン21は、熱可塑性樹脂の成形品によって形成されている。本形態においては、一次ボビン21とコネクタ部14とがボビン成形体210として一体成形されている。ボビン成形体210は、一次主コイル2A及び一次副コイル2Bが配置された、四角形状の断面を有する筒状部22と、コネクタ部14と、筒状部22とコネクタ部14とを中継する中継部23とを有する。筒状部22の軸方向Lの両側には、筒状部22の外周から突出する鍔部221が形成されている。ボビン成形体210は、一次ボビン21の筒状部22に内側コア41を配置するとともに、コネクタ部14にコネクタ導体141を配置した、樹脂のインサート成形を行って形成されている。
【0027】
図2に示すように、中継部23における開口方向Dの底側D1には、外側コア42の端面コア部422、第1イグナイタ5A、第2イグナイタ5B及びイグナイタカバー6が配置される配置凹部231が形成されている。中継部23には、イグナイタのイグナイタ導体及びコネクタ部14のコネクタ導体141が挿通される挿通穴232が形成されている。なお、コネクタ部14は、コネクタ24として、一次ボビン21の筒状部22と別体に形成してもよい。コネクタ部14には、複数のコネクタ導体141が、インサート成形によって設けられている。コネクタ部14は、コイルケース13の外部に突出する状態に形成されている。
【0028】
(二次ボビン31)
図1及び
図3に示すように、二次コイル3が配置された二次ボビン31は、熱可塑性樹脂の成形品によって形成されている。二次ボビン31は、四角形状の断面を有する筒状部32と、筒状部32の外周における軸方向Lの複数箇所において、筒状部32の外周から突出する複数の鍔部33とを有する。鍔部33は、筒状部32の外周を、軸方向Lに並ぶ複数の凹部に仕切っている。二次コイル3の巻線は、複数の凹部に分けられて配置されている。
【0029】
(コイルケース13)
図1及び
図3に示すように、コイルケース13は、熱可塑性樹脂の成形品として形成されている。コイルケース13は、一次主コイル2A、一次副コイル2B、二次コイル3、内側コア41、外側コア42、第1イグナイタ5A、第2イグナイタ5B、イグナイタカバー6等を収容する収容部131を有する。コイルケース13には、一次主コイル2A、一次副コイル2B、一次ボビン21、二次コイル3、二次ボビン31、内側コア41、外側コア42、第1イグナイタ5A、第2イグナイタ5B、イグナイタカバー6等のコイル組付体10を収容部131内に配置するための開口部132が形成されている。開口部132は、収容部131の開口方向Dの開口側D2の端部に形成されている。また、液状の絶縁固着樹脂15は、開口部132から収容部131内の隙間に注入される。
【0030】
コイルケース13の一部には、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bを外部のエンジン制御装置8と電気接続するための、ボビン成形体210のコネクタ部14が配置されている。コイルケース13には、ボビン成形体210のコネクタ部14が装着される装着用切欠き134が形成されている。コイルケース13の一部の壁部は、コネクタ部14のコネクタ壁部によって形成される。
【0031】
また、
図1に示すように、コイルケース13の開口方向Dの底側D1に位置する底部133には、ジョイント部12を構成するタワー部135が形成されている。タワー部135には、点火コイル1とプラグホール71との間を封止するためのシールラバー136が装着されている。
【0032】
(絶縁固着樹脂15)
図1及び
図3に示すように、絶縁固着樹脂15は、熱硬化性樹脂によって構成されている。コイルケース13内にコイル組付体10が配置された後に、このコイルケース13内の隙間に液状の熱硬化性樹脂が注入され、この液状の熱硬化性樹脂が硬化される。そして、熱硬化性樹脂からなる絶縁固着樹脂15によって、コイルケース13内の一次主コイル2A、一次副コイル2B、一次ボビン21、二次コイル3、二次ボビン31、内側コア41、外側コア42、第1イグナイタ5A、第2イグナイタ5B、イグナイタカバー6等が絶縁された状態で互いに固着される。
【0033】
(コネクタ導体141)
図1及び
図4に示すように、コネクタ部14には、電源線+B、グラウンド線GND及び信号線IGt,IGwのそれぞれを構成する複数のコネクタ導体141が設けられている。信号線IGt,IGwには、一次主コイル2Aへの点火信号の信号線IGtと、一次副コイル2Bへの放電信号の信号線IGwとがある。以下に、点火信号の信号線IGtを点火信号線IGtといい、放電信号の信号線IGwを放電信号線IGwという。電源線+Bは、外部のバッテリ81に接続され、グラウンド線GNDは、外部のグラウンドに接続される。点火信号線IGt及び放電信号線IGwは、外部のエンジン制御装置8に接続される。
【0034】
(第1イグナイタ5A)
図4に示すように、第1イグナイタ5Aは、一次主コイル2Aへの通電及び通電の遮断を行う機能を持つ第1電子回路51Aを有する。第1電子回路51Aは、エンジン制御装置8からの指令を受けて、一次主コイル2Aへの通電及び通電の遮断を繰り返し行う第1スイッチング素子52Aを有する。
【0035】
図4~
図9に示すように、第1イグナイタ5Aには、電源線+B、グラウンド線GND、点火信号線IGt、第1出力線MC-のそれぞれを構成する複数の第1イグナイタ導体53Aが設けられている。第1出力線MC-は、第1イグナイタ5Aの第1スイッチング素子52Aと一次主コイル2Aの一端部とを接続する。第1イグナイタ5Aは、第1電子回路51Aが形成された回路基板と、回路基板に一体化された放熱板と、回路基板及び放熱板を被覆するモールド樹脂とを有する。複数の第1イグナイタ導体53Aは、回路基板に設けられて、回路基板からモールド樹脂の外部に引き出されている。
【0036】
ここで、
図5及び
図6においては、複数の接続導体63が設けられたイグナイタカバー6を示す。
図7においては、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bが配置されたイグナイタカバー6を示す。
図8においては、イグナイタカバー6に配置される前の第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bを示す。
図9においては、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bが配置されたイグナイタカバー6の断面を示す。
【0037】
(第2イグナイタ5B)
図4に示すように、第2イグナイタ5Bは、二次コイル3に流れる電流を検出して、一次副コイル2Bへの通電制御を行う機能を持つ第2電子回路51Bを有する。第2電子回路51Bは、二次コイル3に流れる電流が目標範囲内になるよう、一次副コイル2Bへの通電制御を行うよう構成されている。第2電子回路51Bは、二次コイル3に流れる電流を検出する機能も有する。第2電子回路51Bは、エンジン制御装置8からの指令を受けて、一次副コイル2Bへの通電制御を行う第2スイッチング素子52Bと、二次コイル3に流れる電流を検出する電流検出部54Bとを有する。
【0038】
図4~
図9に示すように、第2イグナイタ5Bには、電源線+B、グラウンド線GND、点火信号線IGt、放電信号線IGw、第2出力線SC-及び電流検出線I2のそれぞれを構成する複数の第2イグナイタ導体53Bが設けられている。第2出力線SC-は、第2イグナイタ5Bの第2スイッチング素子52Bと一次副コイル2Bの一端部とを接続する。電流検出線I2は、第2イグナイタ5Bの電流検出部54Bと二次コイル3の低電圧側L2の端部とを接続する。第2イグナイタ5Bは、第2電子回路51Bが形成された回路基板と、回路基板に一体化された放熱板と、回路基板及び放熱板を被覆するモールド樹脂とを有する。複数の第2イグナイタ導体53Bは、回路基板に設けられて、回路基板からモールド樹脂の外部に引き出されている。
【0039】
(点火コイル1の電気的構成)
図4には、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bを用いた点火コイル1の電気的構成を示す。車両のバッテリ81は、電源線+Bによって、第1イグナイタ5A、第2イグナイタ5B、一次主コイル2A及び一次副コイル2Bに接続されている。車両のグラウンドは、グラウンド線GNDによって、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bに接続されている。エンジン制御装置8の点火信号は、点火信号線IGtによって、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bに伝達される。エンジン制御装置8の放電信号は、放電信号線IGwによって第2イグナイタ5Bに伝達される。
【0040】
図4においては、イグナイタカバー6における複数の接続導体63に形成される、電源線+B、グラウンド線GND、点火信号線IGt、放電信号線IGw、第1出力線MC-、第2出力線SC-、電流検出線I2のそれぞれが示される。また、コネクタ部14の複数のコネクタ導体141と点火コイル1の外部との接続点を符号P1で示す。イグナイタカバー6の複数の接続導体63と、複数のコネクタ導体141、一次主コイル2A、一次副コイル2B及び二次コイル3との接続点を符号P2で示す。第1イグナイタ5Aの複数の第1イグナイタ導体53A及び第2イグナイタ5Bの複数の第2イグナイタ導体53Bと、複数の接続導体63との接続点を符号P3で示す。
【0041】
(イグナイタカバー6)
図5に示すように、イグナイタカバー6は、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bを保持して、コネクタ部14と第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bとの接続を中継するよう構成されている。第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bは、イグナイタカバー6に配置された状態で、外側コア42の端面コア部422に対面している。イグナイタカバー6を用いることにより、第1イグナイタ5Aにおける第1イグナイタ導体53A、及び第2イグナイタ5Bにおける第2イグナイタ導体53Bの配線の取り回しを容易にすることができる。また、イグナイタカバー6を用いることにより、ボビン成形体210に対する第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの組み付けを容易にすることができる。
【0042】
第1イグナイタ5Aの軸方向Lの厚みと第2イグナイタ5Bの軸方向Lの厚みとは互いに異なっていてもよい。第1イグナイタ5Aの軸方向Lの厚みと第2イグナイタ5Bの軸方向Lの厚みとが互いに異なっている場合には、イグナイタカバー6の厚みを適宜変化させることによって、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bが端面コア部422に近接するようにする。
【0043】
図4~
図7に示すように、イグナイタカバー6には、複数の第1イグナイタ導体53Aと、複数の第2イグナイタ導体53Bとを、電源線+B、グラウンド線GND、点火信号線IGt、及び放電信号線IGwごとに接続する複数の接続導体63が設けられている。複数の接続導体63が設けられたイグナイタカバー6を用いることにより、複数のコネクタ導体141と複数の第1イグナイタ導体53A及び第2イグナイタ導体53Bとの接続をまとめて適切に行うことができる。
【0044】
電源線+Bを構成する接続導体63は、電源線+Bのコネクタ導体141を、電源線+Bの第1イグナイタ導体53Aと電源線+Bの第2イグナイタ導体53Bとに接続するものである。グラウンド線GNDを構成する接続導体63は、グラウンド線GNDのコネクタ導体141を、グラウンド線GNDの第1イグナイタ導体53Aとグラウンド線GNDの第2イグナイタ導体53Bとに接続するものである。
【0045】
点火信号線IGtを構成する接続導体63は、点火信号線IGtのコネクタ導体141を、点火信号線IGtの第1イグナイタ導体53Aと点火信号線IGtの第2イグナイタ導体53Bとに接続するものである。放電信号線IGwを構成する接続導体63は、放電信号線IGwのコネクタ導体141を、放電信号線IGwの第2イグナイタ導体53Bに接続するものである。
【0046】
また、イグナイタカバー6には、第1出力線MC-を構成する接続導体63、第2出力線SC-を構成する接続導体63、及び電流検出線I2を構成する接続導体63も設けられている。第1出力線MC-を構成する接続導体63は、第1イグナイタ5Aの第1スイッチング素子52Aと一次主コイル2Aの一端部とを接続するものである。第2出力線SC-を構成する接続導体63は、第2イグナイタ5Bの第2スイッチング素子52Bと一次副コイル2Bの一端部とを接続するものである。電流検出線I2を構成する接続導体63は、第2イグナイタ5Bの電流検出部54Bと二次コイル3の低電圧側L2の端部とを接続するものである。
【0047】
一次主コイル2Aの両端部、一次副コイル2Bの両端部、及び二次コイル3の低電圧側L2の端部のそれぞれは、図示しない導体金具を介して、各コネクタ導体141又は各接続導体63と接続されていてもよい。
【0048】
図2及び
図3に示すように、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bは、イグナイタカバー6に配置された状態で、一次主コイル2A、一次副コイル2B及び二次コイル3の軸方向Lにおいて、外側コア42の端面コア部422の低電圧側L2に対面して配置されている。第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bが保持されたイグナイタカバー6は、コイルケース13に装着されるコネクタ部14と外側コア42の端面コア部422との間に配置されている。第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bによって点火コイル1が動作するときには、各スイッチング素子52A,52Bが主に発熱し、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの熱は、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの放熱板を介して外側コア42の端面コア部422に放熱される。
【0049】
複数の第1イグナイタ導体53Aの各一部は、第1イグナイタ5Aから開口方向Dの開口側D2に突出している。複数の第2イグナイタ導体53Bの各一部は、第2イグナイタ5Bから開口方向Dの開口側D2に突出している。複数の接続導体63の各一部は、イグナイタカバー6から開口方向Dの開口側D2に突出している。複数の接続導体63の残部は、イグナイタカバー6の内部に埋設されている。
【0050】
複数の第1イグナイタ導体53Aの各先端部及び複数の第2イグナイタ導体53Bの各先端部と、複数の接続導体63の各基端部とは、軸方向Lに対面して接合されている。また、複数の接続導体63の各先端部と、複数のコネクタ導体141の各先端部とは、軸方向Lに対面して接合されている。コネクタ導体141、第1イグナイタ導体53A、第2イグナイタ導体53B、接続導体63同士の接合は、半田付け、溶接等によって行われる。
【0051】
複数の接続導体63は、イグナイタカバー6内に埋設された複数の埋設導体部631と、埋設導体部631に繋がり、イグナイタカバー6から突出して第1イグナイタ導体53A又は第2イグナイタ導体53Bに接続された複数の突出導体部632とによって構成されている。埋設導体部631は、必ずしも全体が埋設されている必要はなく、一部がイグナイタカバー6から露出していてもよい。複数の突出導体部632には、第1イグナイタ導体53A又は第2イグナイタ導体53Bが接続された部位よりも先端側の部位に、コネクタ導体141が接続されている。この構成により、複数の接続導体63を介する、複数のコネクタ導体141と複数の第1イグナイタ導体53A及び複数の第2イグナイタ導体53Bとの接続を、横方向Wの小さなスペースの範囲内で簡単に行うことができる。
【0052】
図5及び
図7に示すように、イグナイタカバー6は、樹脂体60として、カバー本体部61及び突出ガイド部62を有する。イグナイタカバー6を構成する樹脂体60は、複数の接続導体63をインサート部品として、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂によって形成されている。
【0053】
カバー本体部61は、イグナイタカバー6において、第1イグナイタ5Aの主面及び第2イグナイタ5Bの主面に、軸方向Lの低電圧側L2から対面する部分として形成されている。突出ガイド部62は、カバー本体部61の外縁部位、及びカバー本体部61の、第1イグナイタ5Aと第2イグナイタ5Bとの間の中間部位から、軸方向Lの高電圧側L1(第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの配置側)に突出している。突出ガイド部62は、第1イグナイタ5Aの側面及び第2イグナイタ5Bの側面をガイドするよう構成されている。
【0054】
図5及び
図6に示すように、突出ガイド部62の形成によって、イグナイタカバー6には、第1イグナイタ5Aが保持される第1保持凹部621と、第2イグナイタ5Bが保持される第2保持凹部622とが形成されている。突出ガイド部62における、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの横方向Wの両側に位置する部分には、内側に突出する突起623が形成されている。突出ガイド部62における、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの開口方向Dの底側D1に位置する部分には、内側に突出する台座部624が形成されている。換言すれば、突起623は、第1保持凹部621及び第2保持凹部622の横方向Wの両側の部位を構成する突出ガイド部62の内側に形成されている。台座部624は、第1保持凹部621及び第2保持凹部622の開口方向Dの底側D1の部位を構成する突出ガイド部62の内側に形成されている。
【0055】
複数の突起623は、第1イグナイタ5Aに接触して第1イグナイタ5Aを第1保持凹部621に保持し、また、第2イグナイタ5Bに接触して第2イグナイタ5Bを第2保持凹部622に保持するものである。換言すれば、第1イグナイタ5Aは、複数の突起623に接触して、第1保持凹部621内に圧入されており、第2イグナイタ5Bは、複数の突起623に接触して、第2保持凹部622内に圧入されている。第1保持凹部621の横方向Wの両側の部位であって、開口方向Dの開口側D2の部位を構成する第1突出ガイド部62Aは、撓みやすくするために、他の突出ガイド部62から独立して形成されている。また、第2保持凹部622の横方向Wの両側の部位であって、開口方向Dの開口側D2の部位を構成する第2突出ガイド部62Bは、撓みやすくするために、他の突出ガイド部62から独立して形成されている。
【0056】
図5及び
図6に示すように、第1イグナイタ5Aと第2イグナイタ5Bとの間に位置する突出ガイド部62に形成された突起623は、第1イグナイタ5Aを横方向Wに保持するためのものと、第2イグナイタ5Bを横方向Wに保持するためのものとがある。第1イグナイタ5Aの開口方向Dの開口側D2に位置する、横方向Wの両側の側面を保持する突起623は、第1イグナイタ5Aの横方向Wの外側に位置する独立した第1突出ガイド部62Aと、第1イグナイタ5Aと第2イグナイタ5Bとの間に位置する独立した第1突出ガイド部62Aとに、互いに対向して形成されている。
【0057】
また、第2イグナイタ5Bの開口方向Dの開口側D2に位置する、横方向Wの両側の側面を保持する突起623は、第2イグナイタ5Bの横方向Wの外側に位置する独立した第2突出ガイド部62Bと、第1イグナイタ5Aと第2イグナイタ5Bとの間に位置する独立した第2突出ガイド部62Bとに、互いに対向して形成されている。一対の第2突出ガイド部62Bは、一対の第1突出ガイド部62Aと開口方向Dに隣接してずれた位置に形成されている。この構成により、イグナイタカバー6の小型化を図っている。また、イグナイタカバー6における、第1イグナイタ5Aと第2イグナイタ5Bとの間に位置する部分に、第1突出ガイド部62Aと第2突出ガイド部62Bとが開口方向Dに並んで形成されていることにより、イグナイタカバー6の横方向Wの寸法を小さくすることができる。
【0058】
図示は省略するが、突出ガイド部62の先端には、カバー本体部61との間に第1イグナイタ5A又は第2イグナイタ5Bを挟持するための挟持爪が形成されていてもよい。この場合には、イグナイタカバー6に対する第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの保持状態を確実にすることができる。
【0059】
図5、
図6及び
図9に示すように、電源線+B、グラウンド線GND、点火信号線IGt及び放電信号線IGwのそれぞれを構成する複数の接続導体63は、イグナイタカバー6の同一平面内において、互いに交差せずに折り返し形状に並んで、複数の第1イグナイタ導体53Aと複数の第2イグナイタ導体53Bとを接続している。この構成により、第1イグナイタ5Aの複数の第1イグナイタ導体53A及び第2イグナイタ5Bの複数の第2イグナイタ導体53Bを、コネクタ部14の複数のコネクタ導体141に接続する配線の構造を簡単にすることができる。また、この構成により、1枚の平板にプレス加工を行って、複数の接続導体63を同時に成形することができる。そのため、イグナイタカバー6の生産性を高めることができる。
【0060】
カバー本体部61には、複数の接続導体63の埋設導体部631が埋設されている。複数の埋設導体部631は、カバー本体部61の開口方向D及び横方向Wに広がる同一平面内に埋設されている。換言すれば、複数の埋設導体部631は、1段の状態で互いに交差しないようにカバー本体部61内に埋設されている。この構成により、イグナイタカバー6内における埋設導体部631の配列状態を適切にまとめることができる。
【0061】
図5~
図7に示すように、電源線+B、グラウンド線GND及び点火信号線IGtの各第1イグナイタ導体53Aが、横方向Wの外側から内側へ並ぶ順序は、電源線+B、グラウンド線GND及び点火信号線IGtの各第2イグナイタ導体53Bが、横方向Wの外側から内側へ並ぶ順序と同じである。本形態においては、横方向Wの外側から順に、電源線+B、点火信号線IGt及びグラウンド線GNDの各第1イグナイタ導体53A及び各第2イグナイタ導体53Bが並んでいる。
【0062】
第1出力線MC-の第1イグナイタ導体53Aは、電源線+B、グラウンド線GND及び点火信号線IGtの各第1イグナイタ導体53Aの横方向Wの間又は横方向Wの隣に配置されている。放電信号線IGw、第2出力線SC-及び電流検出線I2の各第2イグナイタ導体53Bは、電源線+B、グラウンド線GND及び点火信号線IGtの各第2イグナイタ導体53Bの横方向Wの間又は横方向Wの隣に配置されている。
【0063】
図5及び
図6に示すように、電源線+B、グラウンド線GND、点火信号線IGt及び放電信号線IGwの各接続導体63の埋設導体部631は、各第1イグナイタ導体53Aと各第2イグナイタ導体53Bとを接続するために、U形状に形成されている。換言すれば、電源線+B、グラウンド線GND、点火信号線IGt及び放電信号線IGwの各接続導体63の埋設導体部631は、開口方向Dに平行な一対の平行部位633と、一対の平行部位633の端部を横方向Wに繋ぐ垂直部位634とによって構成されている。
【0064】
イグナイタカバー6における、第1イグナイタ5Aが配置される横方向Wの一方側領域において、電源線+B、グラウンド線GND、点火信号線IGt及び放電信号線IGwの各接続導体63が横方向Wの外側から内側へ並ぶ順序は、イグナイタカバー6における、第2イグナイタ5Bが配置される横方向Wの他方側領域において、電源線+B、グラウンド線GND、点火信号線IGt及び放電信号線IGwの各接続導体63が横方向Wの外側から内側へ並ぶ順序と同じである。本形態においては、横方向Wの外側から順に、電源線+B、放電信号線IGw、点火信号線IGt及びグラウンド線GNDの各接続導体63が並んでいる。
【0065】
U形状の電源線+B、グラウンド線GND及び点火信号線IGtの各接続導体63は、電源線+B、グラウンド線GND及び点火信号線IGtの各第1イグナイタ導体53A及び各第2イグナイタ導体53Bが横方向Wの外側から内側へ並ぶ順序と同じ順序で、横方向W及び開口方向Dの外側から内側に向けて並んでいる。本形態においては、横方向W及び開口方向Dの外側から順に、電源線+B、放電信号線IGw、点火信号線IGt及びグラウンド線GNDの各接続導体63が並んでいる。
【0066】
成形型において、複数の接続導体63をインサート部品としたイグナイタカバー6のインサート成形を行う際には、成形型には、複数の接続導体63の間に配置されて、複数の接続導体63の間隔が狭くなることを防止する間隔形成ピンが複数配置される。複数の間隔形成ピンは、成形型における、イグナイタカバー6のカバー本体部61を成形する部位に配置される。間隔形成ピンの使用により、インサート成形時における樹脂の圧力によって接続導体63同士が接触することが回避される。
【0067】
図5及び
図6に示すように、イグナイタカバー6のカバー本体部61における、複数の接続導体63の埋設導体部631同士の間には、カバー本体部61の表面に垂直な状態で複数の貫通孔611が形成されている。複数の貫通孔611は、複数の間隔形成ピンによって、イグナイタカバー6のインサート成形時に形成されたものである。貫通孔611は、接続導体63同士の間の間隔と同じ大きさに形成されている。複数の貫通孔611が形成されていることにより、複数の接続導体63同士の間の間隔が、狙いとする所定の間隔に維持されている。貫通孔611は、丸穴に形成される以外にも、角穴に形成されていてもよい。貫通孔611は、カバー本体部61における、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの少なくとも一方に対向する位置に形成されている。点火コイル1の製造時に、貫通孔611には、絶縁固着樹脂15が充填される。
【0068】
図6及び
図9に示すように、貫通孔611Aは、各接続導体63の埋設導体部631の主面の両側に対向する位置に形成されていてもよい。この場合には、イグナイタカバー6のインサート成形を行う際に、ピンによって各接続導体63の主面の両側を挟み込み、各接続導体63が成形型に対して、軸方向L(複数の接続導体63の平面方向に垂直な方向)に位置ずれしないようにすることができる。貫通孔611Aは、ピンが配置されていた位置に形成される。
【0069】
また、
図10及び
図11に示すように、イグナイタカバー6のカバー本体部61における、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bと対面する表面には、貫通孔611に連通する状態でガス抜き溝612が形成される。本形態のカバー本体部61においては、複数の接続導体63同士の間に、接続導体63の形成方向に平行な状態で複数のガス抜き溝612が形成される。カバー本体部61に複数のガス抜き溝612が形成されていることにより、絶縁固着樹脂15の注型時において、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの主面とカバー本体部61との隙間にボイド(気泡)が発生することが抑制される。
【0070】
横方向Wの最も内側に位置するU形状の接続導体63の、横方向Wの内側に形成された複数のガス抜き溝612は、横方向W及び開口方向Dに交差して形成されている。交差するガス抜き溝612も、いずれかの貫通孔611に繋がっている。
【0071】
また、
図6に示すように、複数の接続導体63のうちのいずれかには、第1イグナイタ5A又は第2イグナイタ5Bの放熱性を高めるために、一般部635の幅よりも広い幅を有する幅広部636が形成されていてもよい。
図6においては、横方向Wの最も内側に位置するU形状の接続導体63に、イグナイタカバー6における空きスペースを利用して幅広部636が形成された例を示す。
【0072】
(点火コイル1の動作)
以下に、
図12のタイミングチャートを参照して点火コイル1の動作を説明する。
点火コイル1においては、一次主コイル2A及び二次コイル3による点火プラグ100の放電が行われた後には、この放電が持続するように、一次副コイル2Bによって二次コイル3に電流が継続して流れるようにする。エンジンの各気筒においては、燃焼サイクルが繰り返し行われる際の燃焼行程において、点火コイル1による混合気への着火が行われる。燃焼行程において火花放電を発生させる際には、
図4及び
図12に示すように、エンジン制御装置8による点火信号IGtを受けて、第1イグナイタ5Aの第1スイッチング素子52Aがオンになって、一次主コイル2Aに電流Iaが流れる。また、点火信号がHiになった後には、放電信号IGwもHiになる。
【0073】
そして、第1スイッチング素子52Aがオフになって一次主コイル2Aへの通電が遮断されるときには、相互誘導作用によって、二次コイル3に高電圧が発生し、点火プラグ100の放電間隙に火花放電が発生する。
【0074】
次いで、第2イグナイタ5Bにおける電流検出部54Bによって二次コイル3を流れる放電電流が検出される。そして、放電電流が制御下限値Imin以下になったときには、第2イグナイタ5Bの第2スイッチング素子52Bのゲート信号電圧VgがHiになるとともに第2スイッチング素子52Bがオンになって、一次副コイル2Bに電流Ibが流れる。これにより、相互誘導作用によって、二次コイル3に流れる放電電流が増加する。次いで、二次コイル3の放電電流が、制御上限値Imax以上になったときには、ゲート信号電圧VgがLoになるとともに第2スイッチング素子52Bがオフになって、一次副コイル2Bへの通電が抑制される。
【0075】
その後、放電信号IGwがLoになるまで、一次副コイル2Bへの通電制御が行われ、二次コイル3の放電電流を所定の範囲内に制御することによって点火プラグ100の放電間隙における火花放電の発生が継続される。また、点火コイル1における動作は、エンジンの各気筒において燃焼行程が行われる度に繰り返し実行される。
【0076】
(作用効果)
本形態の内燃機関用の点火コイル1は、第1イグナイタ5Aの他に第2イグナイタ5Bを備える。そして、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bは、イグナイタカバー6に配置された状態で横方向Wに並んで、外側コア42の低電圧側L2の端面コア部422に対面している。また、第1イグナイタ5Aの複数の第1イグナイタ導体53A及び第2イグナイタ5Bの複数の第2イグナイタ導体53Bは、イグナイタカバー6の複数の接続導体63を介して、コネクタ部14の複数のコネクタ導体141に接続されている。
【0077】
イグナイタカバー6を用いることにより、第1イグナイタ5Aの第1イグナイタ導体53A及び第2イグナイタ5Bの第2イグナイタ導体53Bの配線の取り回しを適切に行い、第1イグナイタ導体53A及び第2イグナイタ導体53Bの配線の構造を簡単にすることができる。また、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bが一方の端面コア部422に対面していることにより、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの熱を外側コア42に効果的に逃がすことができる。これにより、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの冷却効果を高めることができる。また、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bがイグナイタカバー6に保持されていることにより、ボビン成形体210に対する第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの配置を容易にし、点火コイル1における第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの組付性を確保することができる。
【0078】
一次主コイル2A用の第1イグナイタ5Aと、一次副コイル2B用の第2イグナイタ5Bとが別々に用いられることにより、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの製造装置を小型かつ簡単にすることができる。そして、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの配線をイグナイタカバー6によってまとめることにより、配線の取り回し及び点火コイル1の組付性が改善される。
【0079】
このように、本形態の内燃機関用の点火コイル1によれば、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの配線の構造を簡単にするとともに、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bの冷却効果を高めることができる。
【0080】
<実施形態2>
本形態は、一次コイルが1つのコイルによって形成され、第2イグナイタ5Bの用途が実施形態1と異なる場合について示す。
本形態の第1イグナイタ5Aは、実施形態1と同様に、一次コイルへの通電及び通電の遮断を行う機能を持つ第1電子回路51Aを有する。本形態の第2イグナイタ5Bは、第1電子回路51Aの機能とは異なる機能として、点火プラグ100の点火時に二次コイル3に流れるイオン電流を検出する機能を持つ第2電子回路51Bを有する。
【0081】
エンジンの燃焼室内において燃焼が行われたときには、点火プラグ100の放電間隙にイオン電流が流れる。本形態の第2イグナイタ5Bは、二次コイル3に流れるイオン電流を検出して、エンジンの各気筒の点火状態、各気筒における失火の有無等を確認するよう構成されている。
【0082】
本形態においても、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bが保持されるイグナイタカバー6を用いる。本形態の点火コイル1は、一次コイル、及び第2イグナイタ5Bの第2電子回路51Bの構成が実施形態1と異なる以外は、実施形態1の点火コイル1と同様である。
【0083】
本形態の点火コイル1における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1の点火コイル1の構成、作用効果等と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の構成要素と同様である。
【0084】
<実施形態3>
本形態は、イグナイタカバー6の構成が実施形態1と異なる場合について示す。
図13に示すように、イグナイタカバー6のカバー本体部61における、第1保持凹部621及び第2保持凹部622のうちの少なくともいずれかを形成する内側底面には、第1保持凹部621及び第2保持凹部622のうちの少なくともいずれかに部分的に接触する1つ又は複数のリブ613が形成されていてもよい。なお、内側底面とは、カバー本体部61における、第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bと対向する側の表面のことをいう。この場合には、リブ613の形成により、軸方向Lの厚みが互いに異なる第1イグナイタ5A及び第2イグナイタ5Bも端面コア部422に接触させることができる。
図13においては、各接続導体63の埋設導体部631の主面の両側に対向する位置に貫通孔611Aが形成された状態も示す。
【0085】
また、複数の接続導体63の埋設導体部631は、カバー本体部61内に埋設される以外にも、
図14に示すように、カバー本体部61の内側底面に露出する位置に配置されていてもよい。この場合には、イグナイタカバー6の成形時において、ピンと成形型とによって複数の接続導体63の埋設導体部631を挟み込んで、複数の接続導体63の位置決めを行ってもよい。
【0086】
また、
図15に示すように、複数の接続導体63は、カバー本体部61において、厚み方向としての軸方向Lの異なる位置に適宜オフセットして配置されていてもよい。この場合に、複数の接続導体63は、カバー本体部61の内側底面に露出する位置において、厚み方向の異なる位置にオフセットして配置されていてもよい。
【0087】
また、
図16に示すように、複数の接続導体63は、カバー本体部61の外側面に露出する位置に配置されていてもよい。この場合には、イグナイタカバー6の成形時において、ピンと成形型とによって複数の接続導体63の埋設導体部631を挟み込んで、複数の接続導体63の位置決めを行ってもよい。
【0088】
本形態の点火コイル1における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1,2の点火コイル1の構成、作用効果等と同様である。また、本形態においても、実施形態1,2に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の構成要素と同様である。
【0089】
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。さらに、本発明から想定される様々な構成要素の組み合わせ、形態等も本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1 点火コイル
2A 一次主コイル
2B 一次副コイル
3 二次コイル
41 内側コア
42 外側コア
5A 第1イグナイタ
5B 第2イグナイタ
6 イグナイタカバー