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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 43/00 20060101AFI20241126BHJP
   B65H 5/00 20060101ALI20241126BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20241126BHJP
   B41J 3/407 20060101ALI20241126BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20241126BHJP
   B65H 5/02 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B65H43/00
B65H5/00 D
G03G21/16 138
B41J3/407
B41J29/38 301
B65H5/02 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021051765
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149554
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】松本 祐介
(72)【発明者】
【氏名】松山 徹
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-331276(JP,A)
【文献】国際公開第2008/013294(WO,A1)
【文献】特開2010-156730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/00,5/04,5/08-5/20,
5/24-5/38,7/00-7/20,29/52,
43/00-43/08
G03G 13/00,13/34,15/00,15/14,
15/36,21/00-21/02,
21/14-21/20
B41J 3/407,11/00-11/70,29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カルシウムを含む媒体に印刷を行う印刷手段と、
前記媒体が搬送される搬送経路の少なくとも一部を構成する搬送ベルトを回転駆動させる搬送手段と、
前記搬送ベルトを帯電させる帯電ローラーに帯電電圧を供給する電圧供給手段と、
前記搬送ベルトに帯電異常が生じているか否かを検出する検出手段と、
前記搬送ベルトの回転量と前記検出手段の検出結果とに基づいて、前記電圧供給手段に異常が生じているのか、前記搬送ベルトに異常が生じているのか、前記電圧供給手段及び前記搬送ベルトに異常は生じていないのか、を判別する判別手段と、
を備え、
前記搬送ベルトは、メラミン樹脂によりコーティングされている、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記判別手段は、
前記搬送ベルトが所定量移動する移動期間に、前記検出手段が前記帯電異常を検出する期間と、前記検出手段が前記帯電異常を検出しない期間と、が含まれる場合、前記判別手段は、前記帯電異常の原因が前記搬送ベルトの異常であると判別し、
前記移動期間に、前記検出手段が前記帯電異常を検出する期間が含まれ、且つ前記検出手段が前記帯電異常を検出しない期間が含まれない場合、前記判別手段は、前記帯電異常の原因が前記電圧供給手段の異常であると判別する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記移動期間は、回転駆動される前記搬送ベルトが一回転する期間である、
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記検出手段は、
閾値情報が記録されている記録部と、
前記閾値情報を補正する閾値補正部と、
補正された前記閾値情報と前記搬送ベルトに帯電している帯電量とを比較することで前記帯電異常が生じているか否かを検出する比較部と、
を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記判別手段において前記帯電異常の原因が前記搬送ベルトの異常であると判別された場合、前記閾値補正部は、前記帯電異常の検出を緩和するように前記閾値情報を補正する、
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記閾値補正部が前記閾値情報を補正する補正値は、前記搬送ベルトが交換された場合に初期化される、
ことを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記判別手段において前記帯電異常の原因が前記搬送ベルトの異常であると判別された場合に警告情報を報知する報知部を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記判別手段において前記帯電異常の原因が前記電圧供給手段の異常であると判別された場合、前記印刷手段は前記媒体への印刷を停止する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記帯電電圧の電圧値は、前記判別手段における判別結果に基づいて調整される、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記媒体は、漆喰が塗布された漆喰紙である、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記媒体を加熱する加熱手段を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記印刷手段は、水溶性の印刷材を前記媒体に吐出又は塗布することで印刷を行う、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷技術の革新はすさまじく、多種多様な媒体に対して印刷が行われるようになっている。例えば、特許文献1には、印刷が行われる媒体として、漆喰の印刷層を有する印刷媒体が開示されている。
【0003】
また、印刷装置では、搬送ベルトによって媒体を所望の搬送位置に搬送するとともに、インクジェット方式や電子写真方式などの印刷手段によって当該媒体に印刷処理を実行することで、媒体に所望の画像を形成している。例えば、特許文献2には、ポリエチレンテレフタレートを用いた搬送ベルトを帯電させることで、媒体を吸着し、当該搬送ベルトを駆動することで、媒体を所望の搬送位置に搬送するとともに、搬送される媒体に印刷処理を実行する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2008/013294号
【文献】特開2007-210725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されるような漆喰等の炭酸カルシウム等を含む媒体に対して、長期間に亘って印刷処理を実行した場合、媒体に含まれる炭酸カルシウムが印刷装置の内部に蓄積するとともに、蓄積した炭酸カルシウムが空気中等に含まれる水分と反応することによって凝固する。このような凝固した炭酸カルシウムは、特許文献2に記載される搬送ベルトを構成するポリエチレンテレフタレートと比較して硬質であるが故に、当該搬送ベルトに傷をつけるおそれがあった。
【0006】
特に、特許文献2に記載されるような印刷装置では、高電圧回路が搬送ベルトに高電圧を供給し搬送ベルトを帯電することで、媒体を搬送ベルトに吸着し、安定した媒体搬送を実現しているが故に、凝固した炭酸カルシウムによって搬送ベルトに傷が生じると、搬送ベルトに帯電している帯電電圧に異常が生じ、印刷処理が停止する場合があった。
【0007】
すなわち、特許文献2に記載されるような印刷装置を用いて、特許文献1に記載されるような炭酸カルシウムを含む媒体に印刷処理を実行した場合に、印刷装置の動作の安定性が低下するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る印刷装置の一態様は、
炭酸カルシウムを含む媒体に印刷を行う印刷手段と、
前記媒体が搬送される搬送経路の少なくとも一部を構成する搬送ベルトを回転駆動させる搬送手段と、
前記搬送ベルトを帯電させる帯電ローラーに帯電電圧を供給する電圧供給手段と、
前記搬送ベルトに帯電異常が生じているか否かを検出する検出手段と、
前記搬送ベルトの回転量と前記検出手段の検出結果とに基づいて、前記電圧供給手段に異常が生じているのか、前記搬送ベルトに異常が生じているのか、前記電圧供給手段及び前記搬送ベルトに異常は生じていないのか、を判別する判別手段と、
を備え、
前記搬送ベルトは、メラミン樹脂によりコーティングされている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】印刷装置の外観構造を示す図である。
図2】印刷装置の内部構造を示す図である。
図3】媒体排出経路の一例を示す図である。
図4】記録搬送経路の周辺の構造の一例を示す図である。
図5】印刷装置の機能構成の一例を示す図である。
図6】検出ユニットの機能構成を示す図である。
図7】搬送ベルト上の任意の位置p1と位置p2との間の領域において、帯電異常が生じていない場合を示す図である。
図8】搬送ベルト上の任意の位置p1と位置p2との間の領域において、電圧供給ユニットの異常に起因した帯電異常が生じている場合を示す図である。
図9】搬送ベルト上の任意の位置p1と位置p2との間の領域において、搬送ベルトの異常に起因した帯電異常が生じている場合を示す図である。
図10】判別ユニットの動作の一例を示すフローチャート図である。
図11】搬送ベルトに使用され得るコーティング剤の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
ここで、以下の説明では、本発明に係る印刷装置の一例として、媒体に対してインクを吐出することで画像を印刷するインクジェットプリンターを例に挙げて説明を行う。しかしながら、印刷装置は、インクジェットプリンターに限るものではなく、例えば、ドットインパクトプリンターや熱転写プリンター、レーザープリンター等であってもよく、さらに、コピー機などの複写機であってもよい。また、印刷装置は、インクジェットプリンター、ドットインパクトプリンター、熱転写プリンター、及びレーザープリンター等に加えて、スキャナーやFAXなどが一体となった所謂複合機であってもよい。
【0012】
1.印刷装置の構造
まず、本実施形態における印刷装置の構造の一例について説明する。図1は、印刷装置1の外観構造を示す図である。本実施形態における印刷装置1は、炭酸カルシウムを含む媒体であって、具体的には漆喰が塗布された漆喰紙に印刷を行うことが可能な印刷装置であって、例えば、水溶性の印刷材であるインクを媒体に吐出又は塗布することで印刷を行う所謂インクジェットプリンターである。
【0013】
ここで、以下の説明では、印刷装置1の奥行方向に相当する方向をX方向、印刷装置1の幅方向に相当する方向をY方向、印刷装置1の高さ方向であって重力方向沿った方向に相当する方向をZ方向と称する場合がある。また、以下の説明において、媒体が搬送されていく方向を「下流」、その反対側を「上流」と称する場合がある。なお、以下の説明では、X方向、Y方向、及びZ方向が、互いに直交する方向であるとして説明を行うが、印刷装置1が備える各構成が互いに直交して配置されていることに限定するものではない。
【0014】
図1に示すように、印刷装置1は、媒体に印刷を行う装置本体2Aと、装置本体2Aの上側に位置するスキャナーユニット3と、装置本体2Aの下側に位置する増設ユニット2B、2Cと、を備える。また、装置本体2Aは、媒体カセット10A、排出トレイ4、操作パネル5、及び給送ユニット35を有する。
【0015】
操作パネル5には、使用者が印刷装置1の各種操作を行うための操作情報が入力される。このような操作パネル5としては、例えば、使用者による操作情報が入力される操作部と、使用者に対して情報を報知する表示部とが一体に積層された所謂タッチパネルを用いることができる。すなわち、操作パネル5は、使用者による印刷装置1の操作を受け付ける操作手段であるとともに、印刷装置1の状態を使用者に報知する報知手段としても機能する。なお、印刷装置1の操作パネル5は、使用者が押下する押下スイッチと、使用者に対して情報を報知する表示パネルとを、個別に備える構成であってもよい。
【0016】
排出トレイ4には、印刷装置1において印刷処理が実行された後の媒体が排出される排出口であって、本実施形態の印刷装置1が備える排出トレイ4は、直近に印刷処理が実行された印刷面を下側にして排出されるフェイスダウン排出トレイに相当する。
【0017】
媒体カセット10Aには、印刷装置1において印刷処理が実行される媒体が収容されている。印刷装置1は、媒体カセット10Aに収容されている媒体を、媒体カセット10Aから順次送り出すとともに、送り出された媒体に対して印刷処理を実行し、排出トレイ4から排出する。
【0018】
また、印刷装置1の側面には、給送ユニット35が位置している。給送ユニット35は、後述する揺動軸6aを中心に回動することで装置本体2Aに対して開閉することができる開閉カバー6を含む。すなわち、開閉カバー6は、揺動軸6aを中心に揺動可能に構成されており、図1に示す矢印e及び矢印fで示す方向に開閉する。本実施形態における印刷装置1では、給送ユニット35から供給される媒体に対しても印刷処理を実行することが可能であり、印刷処理が実行された媒体は、排出トレイ4から排出される。すなわち、給送ユニット35は、使用者が媒体を手差しする場合に使用される所謂手差トレイに相当する。ここで、図1に示す仮想線及び符号6-1は、開閉カバー6の開閉途中の状態を示している。
【0019】
増設ユニット2Bは、媒体カセット10Bを備え、増設ユニット2Cは、媒体カセット10Cを備える。この増設ユニット2B、2Cは、印刷装置1に収容される媒体の枚数を増やすためのオプションユニットであって、装置本体2Aに対して任意的に着脱可能である。
【0020】
以上のように構成された印刷装置1では、操作パネル5を介して入力される操作情報に基づいて、媒体カセット10A,10B,10C、又は給送ユニット35から供給される媒体を、印刷装置1の左右方向に沿った方向に搬送するとともに、搬送される媒体に対して印刷処理を実行する。そして、印刷処理が実行された媒体は、排出トレイ4から排出される。なお、印刷装置1は、操作パネル5を介して入力される操作情報に加えて、印刷装置1の外部に設けられたパーソナルコンピューター等の外部端末から供給される画像情報に基づいて、印刷処理を実行してもよい。
【0021】
次に、印刷装置1の内部で媒体が搬送される搬送経路の一例について説明する。図2は、印刷装置1の内部構造を示す図である。ここで、図2には、媒体カセット10Aから媒体は給送される場合の給送軌跡S1、図2では図示を省略する媒体カセット10B、10Cから媒体が給送される場合の給送軌跡S2、及び給送ユニット35から媒体が給送される場合の給送軌跡S3、の3つの媒体給送軌跡と、直近に印刷処理が実行された印刷面を上にした状態で媒体が排出される場合の排出軌跡T1、及び直近に印刷処理が実行された印刷面を下にした状態で媒体が排出される場合の排出軌跡T2、の2つの媒体排出軌跡を図示している。なお、以下の説明において、直近に印刷処理が実行された印刷面を上にして媒体を排出することをフェイスアップ排出と称し、直近に印刷処理が実行された印刷面を下にして媒体を排出することをフェイスダウン排出と称する場合がある。
【0022】
また、図2には、媒体が搬送される媒体搬送経路として、記録搬送経路R1、スイッチバック搬送経路R2、反転搬送経路R3、フェイスダウン搬送経路R4、及びフェイスアップ搬送経路R5、の5つの媒体搬送経路を図示している。
【0023】
図2示すように、媒体が搬送される媒体搬送経路には、フラップ33が設けられている。フラップ33は、不図示の駆動源により駆動される。これにより、媒体が搬送される搬送経路を、フェイスダウン搬送経路R4とするのか、フェイスアップ搬送経路R5とするのかが切り替えられる。具体的には、フラップ33は、図2において実線で図示する状態と、仮想線及び符号33-1で図示する状態とで切り換えられる。フラップ33が実線で図示する状態の場合、媒体はフェイスダウン搬送経路R4に案内され、排出軌跡T2に沿って排出トレイ4に排出される。一方で、フラップ33が図2の仮想線及び符号33-1で図示する状態の場合、媒体はフェイスアップ搬送経路R5に案内され、排出軌跡T1に沿って排出トレイ7に排出される。
【0024】
ここで、排出軌跡T1に沿って搬送される媒体が排出される排出トレイ7は、回動軸7aを中心に回動することにより、図2に示すような収納状態と、不図示の開放状態とを取り得る。媒体は、フラップ33が図2の仮想線及び符号33-1で示す状態の場合にフェイスアップ搬送経路R5に案内され、排出軌跡T1に沿って排出トレイ7から排出される。このとき、排出トレイ7は、不図示の開放状態となっている。
【0025】
印刷装置1の内部で媒体が搬送される媒体搬送経路の内、印刷ヘッド8の上流側に位置するレジストローラー対17まで媒体が搬送される媒体給送経路について図2を用いて説明する。
【0026】
媒体カセット10Aは、装置本体2Aに着脱可能に設けられている。媒体カセット10Aは、ホッパー11を有する。そして、ホッパー11が軸11aを中心に揺動することで、媒体カセット10Aに収容された媒体が、図示しないモーターにより回転駆動される給送ローラー12に対し接離する。給送ローラー12により媒体カセット10Aから送り出された媒体は、分離ローラー対13によるニップ位置を通過することで分離され、搬送ローラー対14からの送り力を受けることで搬送され、レジストローラー対17に到達する。これにより、媒体カセット10Aに収容された媒体が、複数重なった状態で搬送される所謂重送が防止される。ここで、図2では図示省略するが、装置本体2Aの下側に位置する増設ユニット2B,2Cも同様に、給送ローラー12、分離ローラー対13を有し、媒体カセット10B,10Cのそれぞれから送り出された媒体は、図2に示す搬送ローラー対14からの送り力を受けることで搬送され、レジストローラー対17に到達する。
【0027】
また、給送ユニット35は、開閉カバー6の内側に手差しトレイ41を有する。手差しトレイ41は揺動軸41aを中心に回動し、開閉カバー6とともに開閉できる様になっている。そして、開閉カバー6が揺動軸6aを中心に回動し開放されるとともに、手差しトレイ41が、揺動軸41aを中心に回動し開放されることで、手差しトレイ41は、不図示の開放状態となり、使用者による媒体の手差し給紙が可能となる。また、手差しトレイ41から媒体が搬送される給送軌跡S3には、給送ローラー15と分離ローラー16とが設けられている。そして、手差しトレイ41にセットされた媒体は、給送ローラー15及び分離ローラー16の回転によって搬送されレジストローラー対17に到達する。
【0028】
次に、印刷装置1の内部で媒体が搬送される媒体搬送経路の内、レジストローラー対17より下流の媒体排出経路について図3を用いて説明する。図3は、レジストローラー対17より下流の媒体排出経路の一例を示す図である。なお、以下の説明では媒体がフェイスダウン搬送経路R4を介して排出トレイ4に排出される場合について説明する。
【0029】
媒体排出経路の一例について説明するにあたり、まず、媒体排出経路に設けられた複数のローラーについて説明する。図3に示すように、媒体排出経路には、搬送ローラー対20~24,26~29と、排出ローラー対25とが設けられている。搬送ローラー対20~24,26~29は、媒体排出経路に沿って媒体を搬送するローラー対であって、排出ローラー対25は、媒体排出経路に沿って搬送された媒体を排出トレイ4に排出するローラー対である。
【0030】
図3では、レジストローラー対17及び搬送ローラー対29以外の各ローラー対の一方側のローラーを符号Fとして図示し、他方側のローラーを符号Gとして図示している。ローラーFは、不図示のモーターにより駆動される駆動ローラーであって、例えば、媒体の幅方向に適宜の間隔を置いて複数設けられるゴムローラーである。一方で、ローラーGは、不図示の付勢手段によってローラーFとの間で媒体をニップ可能であるとともに、媒体と接して従動回転する従動ローラーであって、媒体の幅方向に適宜の間隔を空けて、ローラーFと一対で設けられる。このローラーGは、外周に複数の歯を有するギザローラーであって、媒体の印刷面に対して点接触することで、媒体に印刷された画像に白ヌケや転着が生じるおそれを低減する。なお、ローラーGは、搬送ローラー対20~24,26~28、及び排出ローラー対25を構成する以外にも、媒体搬送経路上の適宜の位置に設けられていてもよく、この場合において、ローラーGは、直近の印刷面に接する側に設けられていてもよい。
【0031】
レジストローラー対17及び搬送ローラー対29は、搬送ローラー対20~24,26~28、及び排出ローラー対25と構成が異なる。具体的には、搬送ローラー対29は、回転駆動される駆動ローラー29aと、駆動ローラー29aに向けて押圧された、従動回転可能な従動ローラー29bとを備える。このうち従動ローラー29bは、外周面が滑らかな樹脂ローラーである。一方、レジストローラー対17は、回転駆動される駆動ローラー17aと、不図示の付勢手段によって駆動ローラー17aに向けて押圧された、従動回転可能な従動ローラー17bとを備えている。このうち駆動ローラー17aは、外周に微細な凹凸を有するローラーであって、従動ローラー17bは、外周面が滑らかな樹脂ローラーである。
【0032】
記録搬送経路R1は、媒体に印刷を行う印刷ヘッド8の下側を通り、印刷ヘッド8の上流側から下流側に延在する媒体搬送経路である。なお、本実施形態では便宜上、記録搬送経路R1は、概ね図3に示す位置M1~位置M2までの範囲であるとして説明を行う。この記録搬送経路R1において媒体は、レジストローラー対17、及びベルトユニット18からの送り力を受け搬送されるとともに、媒体が印刷ヘッド8の下側を通過する際に、印刷ヘッド8が媒体に対して印刷処理を実行する。
【0033】
スイッチバック搬送経路R2は、記録搬送経路R1と接続する媒体搬送経路であって、印刷ヘッド8の下側を通過した媒体が送り込まれるとともに、送り込まれた媒体をスイッチバックさせることで送り込まれた方向とは逆方向に搬送する。このようなスイッチバック搬送経路R2は、後述する湾曲したフェイスダウン搬送経路R4の内側に位置している。なお、本実施形態では便宜上、スイッチバック搬送経路R2は、概ね図3に示す位置M3よりも左側の範囲であるとして説明する。このスイッチバック搬送経路R2において媒体は、搬送ローラー対26からの送り力を受けて搬送される。
【0034】
反転搬送経路R3は、スイッチバック搬送経路R2と接続する媒体搬送経路であって、スイッチバック搬送経路R2においてスイッチバックされた後の媒体を、印刷ヘッド8の上側を通るように迂回させた後、記録搬送経路R1における印刷ヘッド8の上流側で合流させる。なお、本実施形態では便宜上、反転搬送経路R3は、概ね図3に示す位置M3~位置M4までの範囲であるとして説明する。この反転搬送経路R3において媒体は、搬送ローラー対27,28,29からの送り力を受けて搬送される。
【0035】
フェイスダウン搬送経路R4は、記録搬送経路R1と接続する媒体搬送経路であって、印刷ヘッド8の下側を通った媒体を印刷ヘッド8と対向した面を内側にして湾曲させ、反転させた状態で排出トレイ4に排出する経路である。なお、本実施形態では便宜上、フェイスダウン搬送経路R4は、概ね図3に示す位置M2よりも左側の範囲であるとして説明する。このフェイスダウン搬送経路R4において媒体は、搬送ローラー対20~24、及び排出ローラー対25からの送り力を受けて搬送される。
【0036】
なお、記録搬送経路R1、スイッチバック搬送経路R2、反転搬送経路R3、フェイスダウン搬送経路R4、及びフェイスアップ搬送経路R5の接続部には、媒体搬送経路の切り替えを行う経路切り替え部材としてフラップ31及びフラップ32が設けられている。フラップ31は、不図示の駆動手段から駆動力を受けることで、揺動支点31aを中心に揺動可能である。また、フラップ32は不図示の係合部を介しフラップ31と係合可能に設けられ、フラップ31の揺動に応じ、揺動支点32aを中心に揺動する。このフラップ31,32によって、媒体が搬送される媒体搬送経路が設定される。
【0037】
次に、図4を用いて記録搬送経路R1の周辺の構成について説明する。図4は、記録搬送経路R1の周辺の構造の一例を示す図である。印刷装置1では、記録搬送経路R1において、媒体が印刷ヘッド8の下側を通過する際に、印刷ヘッド8が媒体に印刷処理を実行する。すなわち、記録搬送経路R1は、媒体搬送経路の内、媒体に印刷処理が実行される領域に相当する。
【0038】
図4に示すように、記録搬送経路R1は、媒体を搬送するレジストローラー対17、及びベルトユニット18を有する。また、ベルトユニット18は、駆動プーリー18a、従動プーリー18b、及び搬送ベルト18cを含む。搬送ベルト18cは、ウレタンやゴム等からなるベース材に、電荷を蓄える帯電材が含有、又は塗布された無端ベルトである。そして、搬送ベルト18cは、記録搬送経路R1の上流側において駆動プーリー18aに掛け回されるとともに、記録搬送経路R1の下流側において従動プーリー18bに掛け回されている。また、搬送ベルト18cには、不図示のテンショナーによって所定のテンションが付与されている。そして、駆動プーリー18aが、モーター37により回転駆動されることで搬送ベルト18cが回転駆動し、搬送ベルト18cに支持された媒体が搬送される。
【0039】
また、搬送ベルト18cの内側には支持プレート45、46が設けられている。搬送ベルト18cはこれら支持プレート45、46によって内側への撓みが規制された状態で設けられている。この支持プレート45、46は、例えば金属などの導電性材料で形成されているとともに接地されている。
【0040】
搬送ベルト18cを挟んで駆動プーリー18aと対向する位置には、帯電ローラー44が設けられている。帯電ローラー44は、搬送ベルト18cの外面に接触している。そして、帯電ローラー44は、搬送ベルト18cの稼働に応じて従動回転する。この帯電ローラー44には、後述する電源装置49から高電圧の直流電圧が供給されている。これにより、帯電ローラー44を介して、帯電ローラー44に接触する搬送ベルト18cに電荷が供給され、その結果、搬送ベルト18cに電荷が蓄えられる。
【0041】
搬送ベルト18cに支持された媒体は、帯電ローラー44を介して蓄えられた電荷によりベルトユニット18に吸着される。以下の説明において、ベルトユニット18の媒体が吸着される面であって、搬送ベルト18cの内、印刷ヘッド8と向かい合って位置する外側の面を、吸着面18dと称する場合がある。
【0042】
また、搬送ベルト18cを挟んで駆動プーリー18aの上側には、従動ローラー19aが設けられている。また、搬送ベルト18cを挟んで従動プーリー18bの上側には、従動ローラー19bが設けられている。搬送ベルト18cによって搬送される媒体は、従動ローラー19a,19bによって搬送ベルト18cに押し付けられる。これにより、媒体は、吸着面18dに密着する。なお、従動ローラー19a,19bは、例えば金属などの導電材料で構成されるとともに、接地されている。
【0043】
印刷ヘッド8の上流側には、媒体に接触する除電ブラシ43が設けられている。この除電ブラシ43は、媒体の上面の電荷、及び搬送ベルト18cの外面即ち吸着面18dの電荷を除去する。具体的には、帯電ローラー44によって搬送ベルト18cの吸着面18dに電荷が蓄えられると、吸着面18dに接する媒体の面には、吸着面18dとは反対の極性の電荷が生じる。したがって、媒体の反対側の面であって印刷ヘッド8により印刷処理が実行される印刷面には、媒体と吸着面18dとが接触する面とは反対の極性の電荷が生じる。除電ブラシ43は、この媒体の印刷面に蓄えられた電荷を除去する。これにより、媒体には、搬送ベルト18cと接する側の面の電荷だけが残る。その結果、媒体が吸着面18dに吸着される。このような除電ブラシ43は、媒体及び搬送ベルト18cから電荷を除去できる材質であればよく、例えば、導電性ナイロン等の樹脂材料で形成される。
【0044】
また、印刷ヘッド8の下流側には、加熱ヒーター48が設けられている。加熱ヒーター48は、印刷ヘッド8によって印刷処理が実行された媒体を加熱することで、媒体に形成された画像を媒体に定着させる。なお、加熱ヒーター48は、印刷ヘッド8の下流側に加えて、上流側にも設けられていてもよく、搬送ベルト18cの内側に位置していてもよい。すなわち、印刷装置1は、媒体を加熱する加熱ヒーター48を備える。この加熱ヒーター48が加熱手段の一例である。
【0045】
また、ベルトユニット18の下側であって、支持プレート46との間で搬送ベルト18cを挟む様にクリーニングブレード47が設けられている。クリーニングブレード47は、搬送ベルト18cの吸着面18dをワイピングすることで、吸着面18dに付着したインクや異物等を除去する。
【0046】
以上のように、本実施形態における印刷装置1では、媒体カセット10A,10B,10Cに収容された媒体、若しくは、給送ユニット35から供給される媒体を媒体搬送経路に沿って搬送する。そして、媒体が記録搬送経路R1にまで搬送された場合に、印刷ヘッド8が媒体に対して印刷処理を実行する。その後、印刷処理が実行された媒体は、フェイスダウン搬送経路R4を介して排出トレイ4から排出される。
【0047】
2.印刷装置の機能構成
次に、印刷装置1の機能構成について説明する。図5は、印刷装置1の機能構成の一例を示す図である。図5に示すように印刷装置1は、制御ユニット100、印刷ユニット200、駆動信号出力ユニット210、搬送ユニット300、電圧供給ユニット400、検出ユニット500、判別ユニット600、及びインターフェースユニット700を備える。
【0048】
印刷装置1は、使用者がインターフェースユニット700を操作することで入力される操作情報や、インターフェースユニット700を介して通信可能に接続されるホストコンピューター等の外部機器を使用者が操作することで供給される画像データに基づいて、媒体に印刷処理を実行する。すなわち、インターフェースユニット700は、印刷装置1を操作する使用者からの操作情報を受け付けるユーザーインターフェースとして機能する。このようなインターフェースユニット700には、前述した操作パネル5や、印刷装置1と外部機器とを通信可能に接続する通信ポート等が含まれる。そして、インターフェースユニット700は、使用者による操作に基づく操作情報や画像データを含む操作情報信号UIを生成し、制御ユニット100に出力する。
【0049】
制御ユニット100は、入力される操作情報信号UIに基づいて、印刷ユニット200、駆動信号出力ユニット210、搬送ユニット300、電圧供給ユニット400、検出ユニット500、判別ユニット600、及びインターフェースユニット700を制御するための各種の制御信号を出力する。
【0050】
具体的には、制御ユニット100は、操作情報信号UIに基づく印刷制御データ信号DATAを生成し印刷ユニット200に出力するとともに、基駆動信号dDRVを生成し駆動信号出力ユニット210に出力する。駆動信号出力ユニット210は、入力される基駆動信号dDRVに基づいて印刷ユニット200が媒体に画像を形成する際に駆動する駆動素子を駆動するための駆動信号DRVを生成し、印刷ユニット200に出力する。
【0051】
ここで、印刷装置1が、媒体に対してインクを吐出することで媒体に画像を形成する所謂インクジェットプリンターの場合、駆動信号DRVによって駆動する駆動素子としては、例えば、駆動信号DRVに応じて変形し、変形することでインクが充填されているキャビティーの内部容積を変化させることでノズルからインクを吐出させる圧電素子や、駆動信号DRVに応じて発熱し、発熱することでインクが充填されているキャビティーの内部圧力を変化させることでノズルからインクを吐出させる発熱素子を用いることができる。
【0052】
また、印刷ユニット200は、上述した印刷ヘッド8を含む。そして、印刷ユニット200は、制御ユニット100から入力される印刷制御データ信号DATAと、駆動信号出力ユニット210から入力される駆動信号DRVとに基づいて、媒体に所望の大きさのドットを形成する。具体的には、印刷ユニット200が有する印刷ヘッド8が、印刷制御データ信号DATAに基づくタイミングで駆動素子に駆動信号DRVを供給することで、印刷制御データ信号DATAで規定される所望のタイミングで媒体にインクが吐出される。この印刷ユニット200が、炭酸カルシウムを含む漆喰紙などの媒体に印刷を行う印刷手段の一例である。
【0053】
また、制御ユニット100は、媒体の搬送を制御するための搬送制御信号TCを生成し、搬送ユニット300に出力する。搬送ユニット300は、入力される搬送制御信号TCに基づいて、媒体を所定の媒体搬送経路に沿って搬送する。すなわち、搬送ユニット300は、前述した媒体給送経路を構成する給送ローラー12、分離ローラー対13や、媒体排出経路を構成する搬送ローラー対20~24,26~29、排出ローラー対25、レジストローラー対17、及びベルトユニット18を含む。そして、搬送ユニット300は、制御ユニット100から入力される搬送制御信号TCに基づいて、前述したモーター37を含む各種のモーターを駆動することで、搬送ローラー対20~24,26~29、排出ローラー対25、及びレジストローラー対17を含む各種ローラーを駆動するとともに、ベルトユニット18に含まれる搬送ベルト18cを回転駆動させる。これにより、搬送ユニット300は、媒体を媒体搬送経路に沿って搬送する。この媒体が搬送される媒体搬送経路の少なくとも一部を構成する搬送ベルト18cを回転駆動させる搬送ユニット300が、搬送手段の一例である。
【0054】
また、搬送ユニット300は、媒体の搬送位置及び搬送ベルト18cの回転位置を示す位置情報信号PIを生成し、制御ユニット100に出力する。制御ユニット100は、搬送ユニット300から入力される位置情報信号PIに基づいて、媒体の搬送位置に応じた印刷制御データ信号DATAを生成し、印刷ユニット200に出力する。これにより、印刷ユニット200は、媒体の搬送に同期したタイミングで媒体にインクを吐出することができる。その結果、媒体に所望のインクが着弾し、媒体に所望の画像が形成される。
【0055】
ここで、搬送ユニット300が出力する位置情報信号PIは、例えばエンコーダー等が出力するエンコーダー情報に基づいて生成された信号であってもよく、また、搬送ユニット300の所定の位置に設けられた不図示のセンサー素子によって検出されたセンサー検出情報に基づいて生成された信号であってもよい。さらに、搬送ユニット300が出力する位置情報信号PIは、媒体の搬送位置を示す位置情報信号PIと、搬送ベルト18cの回転位置を示す位置情報信号PIとを個別に含んでいてもよい。
【0056】
また、制御ユニット100は、電圧供給ユニット400に電圧値制御信号VCを出力する。電圧供給ユニット400は、入力される電圧値制御信号VCによって規定される電圧値の帯電制御電圧CVを生成し、搬送ユニット300が有する帯電ローラー44に供給する。これにより、搬送ベルト18cには、帯電ローラー44を介して帯電制御電圧CVに応じた電荷が供給され、搬送ベルト18cには、帯電制御電圧CVに応じた電荷が蓄えられる。すなわち、帯電制御電圧CVが、前述した搬送ベルト18cに蓄えられる電荷の基となる高電圧の直流電圧に相当し、電圧供給ユニット400は、高電圧の直流電圧を出力する電源装置49を含む。この搬送ベルト18cを帯電させる帯電ローラー44に供給される帯電制御電圧CVが帯電電圧の一例であり、帯電ローラー44に帯電制御電圧CVを供給する電圧供給ユニット400が電圧供給手段の一例である。
【0057】
搬送ユニット300は、電圧供給ユニット400が出力する帯電制御電圧CVに基づいて搬送ベルト18cに蓄えられた電荷量に応じた帯電検出電圧CDを生成し、検出ユニット500に出力する。
【0058】
検出ユニット500は、入力される帯電検出電圧CDに基づいて、搬送ベルト18cに帯電されている電荷量が正常であるか否か、すなわち、搬送ベルト18cに帯電している帯電電圧が正常であるか否かを検出し、検出結果を示す帯電電圧判定信号CEを生成する。換言すれば、検出ユニット500は、搬送ベルト18cに帯電異常が生じているか否かを検出する。そして、検出ユニット500は、搬送ベルト18cに帯電異常が生じているか否か示す帯電電圧判定信号CEを制御ユニット100及び判別ユニット600に出力する。
【0059】
ここで、検出ユニット500の構成の具体例について図6を用いて説明する。図6は、検出ユニット500の機能構成を示す図である。図6に示すように、検出ユニット500は、記録回路510、閾値補正回路520、及び比較回路530を有する。
【0060】
記録回路510には、検出ユニット500において、搬送ベルト18cに帯電異常が生じているか否かを検出する閾値情報Cthが記録されている。この記録回路510に記録されている閾値情報Cthは、閾値補正回路520によって読み出される。また、閾値補正回路520には、制御ユニット100が出力する閾値補正情報HIが入力される。そして、閾値補正回路520は、記録回路510から読み出した閾値情報Cthを制御ユニット100から入力される閾値補正情報HIに基づいて補正し、補正した閾値情報Cthとして補正閾値情報HCthを比較回路530に出力する。すなわち、閾値補正回路520は、閾値情報Cthを補正する。
【0061】
比較回路530は、補正された閾値情報Cthに相当する補正閾値情報HCthと、搬送ユニット300が有する搬送ベルト18cに帯電している電荷量を示す帯電検出電圧CDとを比較することで搬送ベルト18cに帯電異常が生じているか否かを検出する。そして、比較回路530は、比較結果に応じた帯電電圧判定信号CEを制御ユニット100及び判別ユニット600に出力する。
【0062】
ここで、本実施形態において比較回路530は、帯電検出電圧CDが補正閾値情報HCthを上回った場合に搬送ベルト18cに帯電異常が生じているとするハイレベルの帯電電圧判定信号CEを出力し、帯電検出電圧CDが補正閾値情報HCthを下回っている場合に搬送ベルト18cに帯電異常が生じていないとするローレベルの帯電電圧判定信号CEを出力するとして説明を行う。なお、比較回路530は、帯電検出電圧CDが補正閾値情報HCthを下回った場合に搬送ベルト18cに帯電異常が生じていると判定し、帯電検出電圧CDが補正閾値情報HCthを上回っている場合に、搬送ベルト18cに帯電異常が生じていないと判定してもよい。さらに、比較回路530は、搬送ベルト18cに帯電異常が生じている場合にローレベルの帯電電圧判定信号CEを出力し、搬送ベルト18cに帯電異常が生じていない場合にハイレベルの帯電電圧判定信号CEを出力してもよい。
【0063】
ここで、搬送ベルト18cに帯電異常が生じているか否かを検出する検出ユニット500が検出手段の一例であり、検出ユニット500に含まれる記録回路510が記録部の一例であり、閾値補正回路520が閾値補正部の一例であり、比較回路530が比較部の一例である。
【0064】
図5に戻り、検出ユニット500が出力する帯電電圧判定信号CEは、制御ユニット100に入力されるとともに、判別ユニット600にも供給される。また、判別ユニット600には、搬送ユニット300が出力する搬送ベルト18cの回転位置を示す位置情報信号PIも入力される。そして、判別ユニット600は、帯電電圧判定信号CEと位置情報信号PIとに基づいて、搬送ベルト18cに帯電異常が生じているか否かを判別するとともに、搬送ベルト18cに帯電異常が生じている場合、搬送ベルト18cに生じている帯電異常の原因を判別する。そして、判別ユニット600は、判別結果を示す判別結果信号RDを生成し、制御ユニット100に出力する。すなわち、判別ユニット600は、搬送ベルト18cの回転量と検出ユニット500の検出結果に基づいて、帯電異常の原因を判別する。この判別ユニット600が判別手段の一例である。
【0065】
ここで、搬送ベルト18cの帯電異常の原因について説明する。搬送ベルト18cに帯電異常には、搬送ベルト18cに電荷を蓄えるための帯電制御電圧CVを出力する電圧供給ユニット400の異常に起因する帯電異常と、電荷が帯電する搬送ベルト18cに傷などが生じたことに起因する帯電異常と、が挙げられる。
【0066】
電圧供給ユニット400に異常が生じたことに起因する帯電異常が発生した場合、電圧供給ユニット400が高電圧の直流電圧を出力しているが故に、印刷装置1の各構成に対して異常が波及するおそれがあり、そのため、印刷装置1では、印刷ユニット200における印刷処理を停止させることが好ましい。一方で、電荷が帯電する搬送ベルト18cに傷などが生じたことに起因する帯電異常が発生した場合、搬送ベルト18cに蓄えられる電荷分布にばらつきが生じるおそれがあるものの、印刷装置1の各構成に対して異常が波及するおそれは低く、そのため、使用者の利便性を考慮した場合、印刷ユニット200は、印刷処理を継続することが好ましい。
【0067】
すなわち、判別ユニット600が、帯電電圧判定信号CEと位置情報信号PIとに基づいて、搬送ベルト18cに帯電異常が生じているか否かを判別するとともに、搬送ベルト18cに帯電異常が生じている原因が、電圧供給ユニット400の異常に起因する帯電異常であるのか、搬送ベルト18cに傷などが生じたことに起因する帯電異常であるのかを判別し、判別ユニット600における判別結果に基づいて、制御ユニット100が、印刷ユニット200における印刷処理を継続するのか否かを制御することで、搬送ベルト18cの帯電異常に起因した異常が印刷装置1の各構成に波及するおそれを低減しつつ、意図せず印刷処理が停止するおそれも低減している。
【0068】
特に、本実施形態の印刷装置1のように炭酸カルシウムを含む媒体に印刷を行う印刷装置1であって、媒体として漆喰が塗布された漆喰紙が用いられる印刷装置1では、長期間の印刷処理に伴い、媒体に含まれる炭酸カルシウム等が印刷装置1の内部に蓄積し、蓄積した炭酸カルシウムに空気中の水分や印刷材の一例としてのインクに含まれる水分が反応することで、当該炭酸カルシウムが凝固するとともに搬送ベルト18cに固着する。そして固着した炭酸カルシウムが搬送ベルト18cと各種のローラーとに挟まれることにより、搬送ベルト18cが傷つけられる。すなわち、炭酸カルシウムを含む媒体に印刷を行う印刷装置1であって、媒体として漆喰が塗布された漆喰紙が用いられる印刷装置1では、搬送ベルト18cに傷などの損傷を与えるおそれが高まり、その結果、印刷装置1における印刷処理が意図せず停止するおそれが高まる。
【0069】
このような問題に対して、判別ユニット600が、帯電異常の原因を判別し、制御ユニット100が、判別結果に応じて印刷装置1の動作を制御することで、搬送ベルト18cの帯電異常に起因した異常が印刷装置1の各構成に波及するおそれを低減しつつ、意図せず印刷処理が停止するおそれを低減することができる。なお、判別ユニット600における判別動作の具体例については後述する。
【0070】
制御ユニット100は、判別ユニット600から入力される判別結果信号RDに基づいて印刷装置1の各構成の動作を制御する。
【0071】
制御ユニット100に入力される判別結果信号RDが、搬送ベルト18cに生じている帯電異常の原因が、電圧供給ユニット400の異常に起因するものであることを示す場合、制御ユニット100は、印刷処理を停止させるための印刷制御データ信号DATAを生成し、印刷ユニット200に出力する。これにより、印刷ユニット200は、印刷処理を停止する。すなわち、判別ユニット600において搬送ベルト18cに生じた帯電異常の原因が電圧供給ユニット400の異常であると判別された場合、印刷ユニット200は媒体への印刷を停止する。
【0072】
電圧供給ユニット400は、帯電制御電圧CVとして高電圧の直流電圧を生成し帯電ローラー44を介して搬送ベルト18cに供給する。このような高電圧の直流電圧を生成する電圧供給ユニット400に異常が生じた状態で、印刷ユニット200における印刷処理が継続された場合、電圧供給ユニット400が出力する高電圧の帯電制御電圧CVによって、正常に動作している印刷装置1の構成にも電圧供給ユニット400の異常が波及するおそれがある。すなわち、印刷装置1において異常が拡大するおそれがある。
【0073】
このような問題に対して、高電圧の直流電圧を出力する電圧供給ユニット400に異常が生じた場合、制御ユニット100が印刷ユニット200における印刷処理を停止することで、電圧供給ユニット400に生じた異常が印刷装置1の異なる構成に波及するおそれが低減される。
【0074】
また、制御ユニット100に入力される判別結果信号RDが、搬送ベルト18cに生じている帯電異常の原因が、搬送ベルト18cの異常に起因するものであるとすることを示す場合、制御ユニット100は、搬送ベルト18cに異常が生じている旨を示す警告情報を表示させるための操作部制御信号UCを生成し、インターフェースユニット700に出力する。これにより、インターフェースユニット700に含まれる操作パネル5が有する表示部に、搬送ベルト18cに異常が生じている旨を示す警告情報を表示させる。すなわち、判別ユニット600において搬送ベルト18cに生じた帯電異常の原因が搬送ベルト18cの異常であると判別された場合、制御ユニット100は、インターフェースユニット700が有する操作パネル5に含まれる表示部を介して、使用者に警告情報を報知する。すなわち、操作パネル5に含まれる表示部が警告情報を報知する報知部の一例である。
【0075】
なお、使用者に対して警告情報を報知する報知部としては、液晶パネルやタッチパネル等の表示部の他に、音声により使用者に警告情報を報知するスピーカーなどの音声出力部であってもよい。
【0076】
また、前述のとおり、搬送ベルト18cに生じている帯電異常の原因が、搬送ベルト18cの異常に起因している場合、搬送ベルト18cに生じている帯電異常の原因が、電圧供給ユニット400に異常が生じた場合と比較して、印刷装置1が有する異なる構成に異常が波及するおそれが低い。そのため、使用者の利便性を損なわないとの観点において、搬送ベルト18cに生じた帯電異常が搬送ベルト18cの異常に起因する場合に印刷装置1は、印刷ユニット200における印刷処理を継続して実施することが好ましい。そこで、判別ユニット600において搬送ベルト18cに生じている帯電異常の原因が搬送ベルト18cの異常に起因していると判別された場合、制御ユニット100が、搬送ベルト18cに異常が生じている旨の警告情報を使用者に報知するための操作部制御信号UCを生成し出力することで、使用者は、印刷処理の弊害とならない任意のタイミングで搬送ベルト18cを交換することができる。すなわち、搬送ベルト18cの異常に伴い印刷装置1における印刷処理が意図せず停止するおそれが低減し、使用者の利便性を阻害するおそれを低減することができる。
【0077】
さらに、制御ユニット100は、入力される判別結果信号RDに搬送ベルト18cに帯電異常が生じている旨の情報が含まれる場合、帯電制御電圧CVの電圧値を変化させるための電圧値制御信号VCを生成し、電圧供給ユニット400に出力してもよい。すなわち、搬送ベルト18cに帯電する帯電電圧の電圧値は、判別ユニット600における判別結果に応じて調整されてもよい。
【0078】
制御ユニット100が、判別ユニット600の判別結果に応じて、帯電ローラー44に供給される帯電制御電圧CVの電圧値を制御することで、搬送ベルト18cに帯電する帯電電圧を検出ユニット500において帯電異常が検出されない電位にまで調整することができる。これにより、搬送ベルト18cに生じている帯電異常を一時的に解消することができる。その結果、印刷ユニット200が継続して印刷処理を実行する場合において、警告情報が継続して報知されるおそれが低減するととともに、使用者による任意のタイミングで、当該帯電異常の原因を取り除くことができる。これにより、印刷処理が意図せず停止することに起因して、使用者の利便性を阻害するおそれが低減される。
【0079】
この場合において、制御ユニット100は、インターフェースユニット700が有する操作パネル5に含まれる表示部等の報知部を介して、搬送ベルト18cの帯電電圧を調整している旨を使用者に対して報知してもよい。これにより、使用者は、搬送ベルト18cに生じている帯電異常を解消するための各種の処置の実行する失念することなく、最適なタイミングで帯電異常を解消するための各種の処置の実行が可能となる。
【0080】
また、制御ユニット100に入力される判別結果信号RDが、搬送ベルト18cに生じている帯電異常の原因が、搬送ベルト18cの異常に起因するものであるとすることを示す場合、制御ユニット100は、帯電異常の検出を緩和するように閾値情報Cthを補正するための閾値補正情報HIを生成し、検出ユニット500が有する閾値補正回路520に出力してもよい。すなわち、判別ユニット600において搬送ベルト18cに生じた帯電異常の原因が搬送ベルト18cの異常であると判別された場合、閾値補正回路520は、帯電異常の検出を緩和するように閾値情報Cthを補正してもよい。
【0081】
これにより、搬送ベルト18cに生じている帯電異常の原因が搬送ベルト18cの異常に起因する場合に、使用者に対して警報情報が継続して報知されることによる煩わしさが低減される。すなわち、印刷装置1を使用する使用者の利便性をさらに向上することができる。なお、閾値補正回路520が、帯電異常の検出を緩和するように閾値情報Cthを補正している場合、制御ユニット100は、搬送ベルト18cの交換を促す警告情報を、インターフェースユニット700を介して定期的に使用者に対して報知してもよい。これにより、帯電異常が生じている搬送ベルト18cが継続的に使用されるおそれが低減する。
【0082】
また、閾値補正回路520が閾値情報Cthを補正している場合において、使用者によって搬送ベルト18cの交換がなされた場合、制御ユニット100は、閾値補正回路520における閾値情報Cthの補正値を初期化する閾値補正情報HIを生成し閾値補正回路520に出力する。すなわち、閾値補正回路520が閾値情報Cthを補正する補正値は、搬送ベルト18cが交換された場合に初期化される。
【0083】
搬送ベルト18cが交換されると、搬送ベルト18cに起因して生じていた帯電異常は改善したものと推測される。よって、搬送ベルト18cが交換されることに起因して閾値補正回路520による閾値情報Cthの補正値を初期化することで、交換後の搬送ベルト18cにおける帯電異常の検出精度を高めることができる。
【0084】
3.判断部による帯電異常の原因の判別
次に、判別ユニット600における搬送ベルト18cに帯電異常が生じているか否かの判別方法、及び搬送ベルト18cに帯電異常が生じている場合に、当該帯電異常の原因が電圧供給ユニット400の異常に起因するものなのか、搬送ベルト18cの異常に起因するものなのかの判別方法について説明する。
【0085】
判別ユニット600における判別方法について説明するにあたり、まず、検出ユニット500が検出する搬送ベルト18cにおける帯電異常の有無、及び帯電異常の原因別の帯電電圧判定信号CEの一例について図7図9を用いて説明する。なお、図7図9では、搬送ベルト18c上における任意の位置p1と位置p2との間の領域において、搬送ユニット300から出力される帯電検出電圧CDを例示している。
【0086】
図7は、搬送ベルト18c上の任意の位置p1と位置p2との間の領域において、帯電異常が生じていない場合を示す図である。図7に示すように、搬送ベルト18cに帯電異常が生じていない場合、検出ユニット500に入力される帯電検出電圧CDは、補正閾値情報HCthよりも低電位となる。その結果、検出ユニット500に含まれる比較回路530は、搬送ベルト18cに帯電異常が生じていないことを示すローレベルの帯電電圧判定信号CEを出力する。
【0087】
図8は、搬送ベルト18c上の任意の位置p1と位置p2との間の領域において、電圧供給ユニット400の異常に起因した帯電異常が生じている場合を示す図である。電圧供給ユニット400に異常が生じている場合、電圧供給ユニット400は、正常な場合と比較して高電位の帯電制御電圧CVを出力する。そのため、搬送ベルト18c上の任意の位置p1と位置p2との間の領域に蓄えられる電荷量も増加し、その結果、図8に示すように、検出ユニット500に入力される帯電検出電圧CDの電位は、補正閾値情報HCthを上回る。その結果、検出ユニット500に含まれる比較回路530は、搬送ベルト18cに帯電異常が生じていることを示すハイレベルの帯電電圧判定信号CEを出力する。すなわち、電圧供給ユニット400に異常が生じている場合、搬送ベルト18c上の任意の位置p1と位置p2との間の領域において、検出ユニット500は、ハイレベルを継続する帯電電圧判定信号CEを出力する。
【0088】
図9は、搬送ベルト18c上の任意の位置p1と位置p2との間の領域において、搬送ベルト18cの異常に起因した帯電異常が生じている場合を示す図である。図9に示すように、搬送ベルト18cの異常として搬送ベルト18cの表面に傷Sc1,Sc2が生じている場合、傷Sc1,Sc2に起因して搬送ベルト18cの表面インピーダンスが変化し、その結果、搬送ベルト18cの内の傷が生じている領域と、搬送ベルト18cの内の傷が生じていない領域とで、蓄えられる電荷量にばらつきが生じる。これにより、搬送ベルト18cの内、傷Sc1が生じている領域において搬送ユニット300から出力される帯電検出電圧CDにはパルス電圧Se1が重畳し、搬送ベルト18cの内、傷Sc2が生じている領域において搬送ユニット300から出力される帯電検出電圧CDにはパルス電圧Se2が重畳する。すなわち、搬送ベルト18cに傷Sc1,Sc2などの異常が生じている場合、搬送ユニット300は、図7に示すような帯電異常が生じていない場合の帯電検出電圧CDに、傷Sc1に対応するパルス電圧Se1と傷Sc2に対応するパルス電圧Se2とが重畳した帯電検出電圧CDを出力する。その結果、検出ユニット500に含まれる比較回路530は、搬送ベルト18c上の任意の位置p1と位置p2との間の領域において、傷Sc1,Sc2に対応する領域でのみハイレベルとなる帯電電圧判定信号CEを出力する。
【0089】
以上のように、本実施形態における印刷装置1では、搬送ベルト18cに帯電異常が生じているか否かは、搬送ベルト18cの所定の範囲である位置p1から位置p2の領域において、検出ユニット500に入力される帯電検出電圧CDが補正閾値情報HCthを超えているか否かによって判別することができ、また、搬送ベルト18cに帯電異常が生じている場合であって、当該帯電異常の原因が電圧供給ユニット400の異常であるのか、搬送ベルト18cの異常であるのかは、搬送ベルト18cの所定の範囲である位置p1から位置p2の領域において、検出ユニット500に入力される帯電検出電圧CDが、補正閾値情報HCthを超えている期間と、補正閾値情報HCthを超えていない期間との双方が含まれるか否かによって判別することができる。すなわち、判別ユニット600は、
搬送ベルト18cの回転量と検出ユニット500の検出結果とに基づいて、電圧供給ユニット400に異常が生じているのか、搬送ベルト18cに異常が生じているのか、電圧供給ユニット400及び搬送ベルト18cに異常は生じていないのか、を判別する。
【0090】
具体的には、判別ユニット600は、搬送ユニット300から入力される位置情報信号PIに基づいて回転駆動する搬送ベルト18cの位置を把握するとともに、検出ユニット500から入力される帯電電圧判定信号CEがハイレベルであるのかローレベルであるのかによって、帯電検出電圧CDが補正閾値情報HCthを超えているか否かを判別する。そして、判別ユニット600は、位置情報信号PIに基づいて搬送ベルト18cが位置p1から位置p2の間の領域の範囲内を回転移動する期間において、ハイレベルの帯電電圧判定信号CEとローレベルの帯電電圧判定信号CEとが入力された場合、搬送ベルト18cに生じた帯電異常の原因が搬送ベルト18cの異常であると判別し、搬送ベルト18cが当該領域の範囲内を回転移動する期間において、ハイレベルの帯電電圧判定信号CEのみが入力され、ローレベルの帯電電圧判定信号CEが入力されない場合、搬送ベルト18cに生じた帯電異常の原因が電圧供給ユニット400の異常であると判別する。
【0091】
すなわち、判別ユニット600は、搬送ベルト18cが所定の領域の範囲内を回転移動する期間に、検出ユニット500において帯電異常が検出される期間と、検出ユニット500において帯電異常が検出されない期間とが含まれる場合、帯電異常の原因が搬送ベルト18cの異常であると判別し、搬送ベルト18cが所定の領域の範囲内を回転移動する期間に、検出ユニット500において帯電異常が検出される期間が含まれ、且つ検出ユニット500において帯電異常が検出されない期間が含まれない場合、帯電異常の原因が電圧供給ユニット400の異常であると判別する。
【0092】
ここで、判別ユニット600における帯電異常の原因判別の具体的な手法の一例について、図10を用いて説明する。図10は、判別ユニット600の動作の一例を示すフローチャート図である。ここで、図10では、搬送ベルト18cが回転駆動する位置p1から位置p2の領域をn+1個に分割し、分割したそれぞれの領域において、検出ユニット500が、搬送ベルト18cに帯電異常が生じているか否を検出し、判別ユニット600が、搬送ベルト18cの回転位置と検出ユニット500の検出結果とに基づいて、帯電異常の原因が電圧供給ユニット400の異常に起因するものなのか、搬送ベルト18cの異常に起因するものなのかを判別する。
【0093】
また、図10では、搬送カウントTc、正常フラグNf、及び異常フラグEfを用いて説明を行う。搬送カウントTcは、検出ユニット500に入力される帯電検出電圧CDの検出領域が搬送ベルト18cの位置p1から位置p2に向かい移動する場合の検出位置を示すカウンターとして機能する。具体的には、検出ユニット500が搬送ベルト18cの所定の位置p1における帯電検出電圧CDを検出し、対応する帯電電圧判定信号CEを出力する場合の搬送カウントTcを“0”とし、検出ユニット500が搬送ベルト18cの所定の位置p2における帯電検出電圧CDを検出し、対応する帯電電圧判定信号CEを出力する場合の搬送カウントTcを“n”とする。
【0094】
また、正常フラグNfには初期値として“0”が保持され、検出ユニット500からローレベルの帯電電圧判定信号CEが入力されることで保持される情報が“1”に更新される。同様に、異常フラグEfには初期値として“0”が保持され、検出ユニット500からハイレベルの帯電電圧判定信号CEが入力されることで保持される情報が“1”に更新される。
【0095】
図10に示すように、判別ユニット600は、搬送ベルト18cが所定の位置p1に達する直前において、搬送カウントTc、正常フラグNf、及び異常フラグEfを初期化する(ステップS110)。具体的には、搬送カウントTcを“0”に設定するとともに、正常フラグNf、及び異常フラグEfの双方に“0”を保持させる。
【0096】
その後、判別ユニット600は、搬送カウントTcが“n”未満であるか否かを判定する(ステップS120)。搬送カウントTcが“n”未満である場合(ステップS120のY)、判別ユニット600は、検出ユニット500から入力される帯電電圧判定信号CEの論理レベルに基づいて、搬送ベルト18cの帯電電圧が正常であるか否かを判定する(ステップS130)。
【0097】
そして、判別ユニット600は、検出ユニット500から入力される帯電電圧判定信号CEがローレベルの場合、搬送ベルト18cの帯電電圧が正常であると判断し(ステップS130のY)、正常フラグNfとして保持される情報を“1”とする(ステップS140)。その後、判別ユニット600は、搬送ベルト18cが回転駆動することにより、検出ユニット500が帯電電圧を検出する搬送ベルト18cの検出位置が移動することで、搬送カウントTcに1を加算し(ステップS160)、再度、搬送カウントTcが“n”未満であるか否かの判定を行う(ステップS120)。
【0098】
一方で、判別ユニット600は、検出ユニット500から入力される帯電電圧判定信号CEのハイレベルの場合、搬送ベルト18cの帯電電圧が異常であると判断し(ステップS130のN)、異常フラグEfとして保持される情報を“1”とする(ステップS150)。その後、判別ユニット600は、搬送ベルト18cが回転駆動することにより、検出ユニット500が帯電電圧を検出する搬送ベルト18cの検出位置が移動することで、搬送カウントTcに1を加算し(ステップS160)、再度、搬送カウントTcが“n”未満であるか否かの判定を行う(ステップS120)。
【0099】
判別ユニット600は、上述したステップS120~S160を搬送ベルト18cにおける位置p1と位置p2との間の全ての領域において実行する。すなわち、判別ユニット600は、搬送カウントTcが“n”以上となるまで、上述したステップS120~S160を繰り返す。そして、搬送カウントTcが“n”以上になると(ステップS120のN)、判別ユニット600は、異常フラグEfとして保持されている情報が“1”であるか否かを判定する(ステップS210)。すなわち、搬送カウントTcが“0”から“n”になるまでの期間において、判別ユニット600に、搬送ベルト18cの帯電電圧が異常であることを示すハイレベルの帯電電圧判定信号CEが入力されたか否かを判別する。
【0100】
そして、異常フラグEfとして“1”が保持されていない場合(ステップS210のN)、判別ユニット600は、搬送カウントTcが“0”から“n”になるまでの期間であって、搬送ベルト18cが回転駆動する位置p1から位置p2の領域において、搬送ベルト18cに帯電異常が生じていないと判別し、搬送ベルト18cに帯電異常が生じていないことを示す判別結果信号RDを制御ユニット100に出力する(ステップS250)。
【0101】
一方、異常フラグEfとして“1”が保持されている場合(ステップS210のY)、判別ユニット600は、搬送カウントTcが“0”から“n”になるまでの期間であって、搬送ベルト18cが回転駆動する位置p1から位置p2の領域の少なくとも一部において、搬送ベルト18cに帯電異常が生じていたと判別する。その後、判別ユニット600は、正常フラグNfとして保持されている情報が“1”であるか否かを判定する(ステップS220)。すなわち、搬送カウントTcが“0”から“n”になるまでの期間において、判別ユニット600に、搬送ベルト18cの帯電電圧が正常であることを示すローレベルの帯電電圧判定信号CEが入力されたか否かを判別する。
【0102】
正常フラグNfとして“1”が保持されていない場合(ステップS210のN)、判別ユニット600は、搬送カウントTcが“0”から“n”になるまでの期間であって、搬送ベルト18cが回転駆動する位置p1から位置p2の領域において、搬送ベルト18cに帯電異常が生じていない期間は無いと判別する。これにより、判別ユニット600は、搬送ベルト18cに生じている帯電異常の原因が、電圧供給ユニット400の異常であるとする判別し、搬送ベルト18cに生じている帯電異常の原因が、電圧供給ユニット400の異常であることを示す判別結果信号RDを生成し、制御ユニット100に出力する(ステップS240)。
【0103】
一方で、正常フラグNfとして“1”が保持されている場合(ステップS210のY)、判別ユニット600は、搬送カウントTcが“0”から“n”になるまでの期間であって、搬送ベルト18cが回転駆動する位置p1から位置p2の領域において、搬送ベルト18cに帯電異常が生じていない期間が含まれる判別する。これにより、判別ユニット600は、搬送ベルト18cに生じている帯電異常の原因が、搬送ベルト18cの異常であるとする判別し、搬送ベルト18cに生じている帯電異常の原因が、搬送ベルト18cの異常であることを示す判別結果信号RDを生成し、制御ユニット100に出力する(ステップS230)。
【0104】
ここで、判別ユニット600は、複数回にわたって検出ユニット500からローレベルの帯電電圧判定信号CEが入力された場合に正常フラグNfとして保持される情報を“1”とし、また、複数回にわたって検出ユニット500からハイレベルの帯電電圧判定信号CEが入力された場合に異常フラグEfとして保持される情報を“1”としてもよい。すなわち、判別ユニット600は、所定の期間連続して検出ユニット500が帯電異常を検出した場合に、搬送ベルト18cが所定量移動する移動期間に検出ユニット500が帯電異常を検出する期間が含まれると判別し、また、所定の期間連続して検出ユニット500が帯電異常を検出しない場合に、搬送ベルト18cが所定量移動する移動期間に検出ユニット500が帯電異常を検出しない期間が含まれると判別してもよい。
【0105】
また、搬送ベルト18cの所定の範囲である位置p1から位置p2の領域は、搬送ベルト18cの全領域であることが好ましく、具体的には、位置p1と位置p2とは、搬送ベルト18cの同じ地点であることが好ましい。すなわち、搬送ベルト18cの位置p1から位置p2に向かい移動する期間とは、搬送ベルト18cが一回転する期間であることが好ましい。これにより、搬送ベルト18cの全領域において、搬送ベルト18cの帯電異常の有無を検出でき、判別ユニット600における判別結果の精度が向上する。ここで、搬送ベルト18cの位置p1から位置p2に向かい移動する期間が、所定量移動する期間に相当する。
【0106】
以上のように、本実施形態における印刷装置1では、判別ユニット600が、搬送ベルト18cが所定量移動するのに要する期間と、当該期間において検出ユニット500が出力する帯電電圧判定信号CEとに基づいて、搬送ベルト18cに帯電異常が生じているか否か、及び搬送ベルト18cに帯電異常が生じている場合においては、当該帯電異常の原因が電圧供給ユニット400の異常であるのか、搬送ベルト18cの異常であるのかを判別する。
【0107】
これにより、印刷装置1に搬送ベルト18cに帯電異常が生じている場合、制御ユニット100が、当該帯電異常の原因に応じた最適な処理を選択するとともに、印刷装置1を当該帯電異常の原因に応じた最適な状態に制御することができる。よって、搬送ベルト18cを傷つけるおそれが高い炭酸カルシウムを含む媒体に対して印刷処理を実行する印刷装置1であっても、搬送ベルト18cに生じた傷によって意図せず印刷処理が停止するおそれが低減するとともに、電圧供給ユニット400に異常が生じている場合には、印刷処理を停止させるなどの制御を実行することが可能となり、印刷装置1の動作異常が波及するおそれを低減できる。
【0108】
すなわち、漆喰紙のような多量の炭酸カルシウムを含む媒体に印刷処理を実行する印刷装置1であっても、動作の安定性が向上する。なお、印刷装置1が使用する媒体は、漆喰紙に限るものではなく、例えば、上質紙や中質紙など、炭酸カルシウムを含むいかなる媒体であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0109】
4.搬送ベルトのコーティング
次に、搬送ベルト18cを覆うコーティング材料について説明する。本実施形態における印刷装置1において、搬送ベルト18cは、炭酸カルシウムなどが付着した場合であっても、傷などの損傷が生じ難いメラミン樹脂によりコーティングされている。
【0110】
媒体を搬送する搬送ベルト18cのコーティング剤には、印刷装置1で使用されるが故の複数の条件が課される。
【0111】
第1の条件として、有機溶剤、塩類、酸類、及びアルカリ類などに対して高い耐性を有する物質であることが求められる。印刷装置1において印刷処理に使用される印刷材の種類は多岐にわたる。そのため、印刷装置1において印刷処理が実行される媒体を搬送する搬送ベルト18cには、いかなる印刷材が選択された場合であっても、腐食などの劣化が生じ難い高い耐薬品性が求められる。
【0112】
また、第2の条件として、高い耐熱性が求められる。前述の通り、印刷装置1では、媒体に印刷処理が実行された後、印刷材を媒体に定着させるために、加熱ヒーター48等によって加熱される。搬送ベルト18cには、この加熱処理によって、変形・変質が生じない高い耐熱性が求められる。さらに、印刷装置1が工場などで使用される場合、印刷装置1は、長期にわたり連続して稼働することとなる。そのため、印刷装置1では、長期にわたり連続して稼働される稼働期間において、仮に印刷装置1に異常が生じた場合であっても、発煙、発火などが生じない材質であることが求められる。すなわち、印刷装置1で使用される搬送ベルト18cの材質には、高い耐熱性として、加熱ヒーター48等による過熱に耐えうる高い耐熱温度と、発煙・発火などが生じ難い難燃性能と、が求められる。
【0113】
これらを加味し、従前の印刷装置1では、第1の条件である有機溶剤、塩類、酸類、及びアルカリ類などに対して高い耐性と、第2の条件である高い耐熱性とを備えた材質が搬送ベルト18cのコーティング剤として用いられていた。
【0114】
しかしながら、炭酸カルシウムを含む媒体に印刷を行う印刷装置1であって、媒体が搬送される搬送ベルト18cに電荷を帯電することで、搬送ベルト18cに対する媒体の吸着性を高めた印刷装置1では、搬送ベルト18cに電荷を蓄えるための電圧供給ユニット400が正常に動作しているにもかかわらず、搬送ベルト18cに帯電電圧の異常が生じ、印刷装置1が印刷処理を停止するとの問題が生じた。係る問題に直面した発明者は、印刷装置1が印刷処理を停止する原因が、印刷装置1の長期間に亘る使用によって、媒体に含まれる炭酸カルシウムが印刷装置1の内部に堆積し、堆積した炭酸カルシウムが空気中の水分や印刷材に含まれる水分と反応し、凝固することによって、搬送ベルト18cが損傷し、その結果、搬送ベルト18cの帯電電圧に異常をきたすことを見出した。そして、搬送ベルト18cに電荷を蓄えるための電圧供給ユニット400が正常に動作しているにもかかわらず、搬送ベルト18cに帯電電圧の異常が生じるとの問題を解決するために、搬送ベルト18cのコーティング材を選定すると新たな第3の条件として、コーティング材の圧縮強さを加えることが有効であることを見出した。
【0115】
図11は、搬送ベルト18cに使用され得るコーティング剤の一例を示す図である。図11に示すように、印刷装置1において、第1の条件である耐薬品性及び第2の条件である耐熱性の2つの指標を満たす搬送ベルト18cの材質としては、ポリエチレン(PE:Polyethylene)、ポリプロピレン(PP:Polypropylene),ポリフッ化ビニリデン(PVDF:Poly Vinylidene Di Fluoride)、フッ素系樹脂、及びメラミン樹脂が挙げられる。この内、コスト、デリバリー、汎用性等の観点において、従前の印刷装置1では、ポリエチレンが搬送ベルト18cのコーティング剤として広く用いられていた。
【0116】
これに対して、炭酸カルシウムを含む媒体に対して印刷処理を実行する印刷装置1では、新たに見出した第3の条件である圧縮強さの指標を加味することで、図11に示すように、搬送ベルト18cのコーティング材には、メラミン樹脂を用いることがより適していることがわかる。これにより、炭酸カルシウムを含む媒体に対して長期間に亘り印刷処理を実行した場合であっても、搬送ベルト18cに固着した炭酸カルシウムによって搬送ベルト18cに損傷が生じるおそれが低減し、電荷が帯電される搬送ベルト18cにおいて、搬送ベルト18cの異常に起因した帯電異常が生じるおそれを低減することができる。すなわち、印刷装置1が意図せず印刷処理を停止するおそれが低減し、印刷装置1の安定した動作を実現することができる。
【0117】
5.作用効果
以上のように本実施形態における印刷装置1では、媒体を搬送する搬送ベルト18cは、メラミン樹脂によりコーティングされている。これにより、炭酸カルシウムを含む媒体に印刷を行う印刷装置1であって、当該媒体に含まれる炭酸カルシウムが印刷装置1の内部に蓄積するとともに、蓄積した炭酸カルシウムが空気中の水分や印刷材に含まれる水分と反応し凝固した場合であっても、搬送ベルト18cに損傷が生じるおそれが低減される。これにより、搬送ベルト18cの異常に起因して、搬送ベルト18cに帯電異常が生じるおそれが低減し、よって、印刷装置1の動作の安定性が向上する。
【0118】
また、搬送ベルト18cに帯電異常が生じた場合であっても、判別ユニット600において当該帯電異常の原因が電圧供給ユニット400の異常なのか、搬送ベルト18cの異常なのかを判別する。具体的には、本実施形態における印刷装置1では、搬送ベルト18cが所定量移動する移動期間に、検出ユニット500が帯電異常を検出する期間と、検出ユニット500が帯電異常を検出しない期間と、が含まれる場合、判別ユニット600は、帯電異常の原因が搬送ベルト18cの異常であると判別し、搬送ベルト18cが所定量移動する移動期間に、検出ユニット500が帯電異常を検出する期間が含まれ、且つ検出ユニット500が帯電異常を検出しない期間が含まれない場合、すなわち、搬送ベルト18cが所定量移動する移動期間において、検出ユニット500が帯電異常を検出し続けた場合、判別ユニット600は、帯電異常の原因が電圧供給ユニット400の異常であると判別する。
【0119】
搬送ベルト18cに帯電される電圧値に異常が生じた原因が、電圧供給ユニット400の異常である場合、電圧供給ユニット400は高電圧の直流電圧である帯電制御電圧CVを出力しているが故に、電圧供給ユニット400で生じた異常が印刷装置1の各構成に波及するおそれがある。そのため、印刷装置1では、安全性を考慮し、例えば印刷ユニット200における印刷処理を停止させるなどの制御を実施することができる。一方で、搬送ベルト18cに帯電される電圧値に異常が生じた原因が、搬送ベルト18cの異常である場合、搬送ベルト18cの異常に起因して印刷装置1の各構成に異常が生じるそれは低い。そのため、使用者の利便性を考慮した場合、搬送ベルト18cに帯電される電圧値に異常が生じた原因が、搬送ベルト18cの異常である場合には、印刷装置1の各構成が、継続して動作することができる。すなわち、本実施形態における印刷装置1では、判別ユニット600において、搬送ベルト18cに帯電される電圧値に異常が生じた原因を判別することで、搬送ベルト18cに帯電される電圧値に異常が生じた場合であっても印刷装置1の安全性と使用者の利便性とを加味して制御することができる。よって、印刷装置1の動作の安定性が向上する。
【0120】
そのため、本実施形態における印刷装置1が、炭酸カルシウムを多く含む漆喰紙に印刷処理を実行する印刷装置1や、印刷材を媒体に定着させる加熱ヒーター48を有することで、炭酸カルシウムと水分との化学反応を促進するおそれがある印刷装置1、水分を含むインクを吐出することで媒体に画像を形成するインクジェットプリンターなどの印刷装置1などの、搬送ベルト18cに凝固した炭酸カルシウムが付着するおそれが高い印刷装置1であっても、印刷装置1の動作の安定性を向上することができる。
【0121】
6.変形例
以上に説明した印刷装置1では、炭酸カルシウムを含む媒体が、漆喰が塗布された漆喰紙であるとして説明を行ったがこれに限るものではなく、印刷装置1において印刷処理が実行される媒体は、炭酸カルシウムが含有される上質紙や中質紙、コート原紙などの場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0122】
また、本実施形態において検出ユニット500は、搬送ユニット300から入力される帯電検出電圧CDが閾値情報Cthに応じた補正閾値情報HCthを上回るか下回るかによって、搬送ベルト18cに帯電する帯電電圧の異常の有無を検出しているが、検出ユニット500は、2つの閾値を用いて、搬送ユニット300から入力される帯電検出電圧CDが当該2つの閾値の間にあるか否かに応じて、搬送ベルト18cに帯電する帯電電圧の異常の有無を検出してもよい。
【0123】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0124】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0125】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0126】
印刷装置の一態様は、
炭酸カルシウムを含む媒体に印刷を行う印刷手段と、
前記媒体が搬送される搬送経路の少なくとも一部を構成する搬送ベルトを回転駆動させる搬送手段と、
前記搬送ベルトを帯電させる帯電ローラーに帯電電圧を供給する電圧供給手段と、
前記搬送ベルトに帯電異常が生じているか否かを検出する検出手段と、
前記搬送ベルトの回転量と前記検出手段の検出結果とに基づいて、前記電圧供給手段に異常が生じているのか、前記搬送ベルトに異常が生じているのか、前記電圧供給手段及び前記搬送ベルトに異常は生じていないのか、を判別する判別手段と、
を備え、
前記搬送ベルトは、メラミン樹脂によりコーティングされている。
【0127】
この印刷装置によれば、帯電ローラーを介して供給される帯電電圧により帯電する搬送ベルトがメラミン樹脂によってコーティングされているが故に、印刷手段が印刷を行う媒体が、炭酸カルシウムを含む場合であっても、搬送ベルトに損傷が生じるおそれが低減される。よって、搬送ベルトの異常に起因して、搬送ベルトに帯電異常が生じるおそれが低減し、その結果、印刷装置の動作の安定性が向上する。
【0128】
前記印刷装置の一態様において、
前記判別手段は、
前記搬送ベルトが所定量移動する移動期間に、前記検出手段が前記帯電異常を検出する期間と、前記検出手段が前記帯電異常を検出しない期間と、が含まれる場合、前記判別手段は、前記帯電異常の原因が前記搬送ベルトの異常であると判別し、
前記移動期間に、前記検出手段が前記帯電異常を検出する期間が含まれ、且つ前記検出手段が前記帯電異常を検出しない期間が含まれない場合、前記判別手段は、前記帯電異常の原因が前記電圧供給手段の異常であると判別してもよい。
【0129】
この印刷装置によれば、搬送ベルトが所定量移動する移動期間に、検出手段が帯電異常を検出する期間と、検出手段が帯電異常を検出しない期間と、が含まれる場合、判別手段は、帯電異常の原因が搬送ベルトの異常であると判別し、搬送ベルトが所定量移動する移動期間に、検出手段が帯電異常を検出する期間が含まれ、且つ検出手段が帯電異常を検出しない期間が含まれない場合、判別手段は、帯電異常の原因が電圧供給手段の異常であると判別することで、精度よく搬送ベルトに生じた帯電異常の原因を判別することができる。すなわち、搬送ベルトに生じた帯電異常の原因を、異常が波及するおそれのある電圧供給手段の異常であるのか、異常が波及するおそれの小さな搬送ベルトの異常であるのかを判別することができる。これにより、仮に、搬送ベルトに損傷が生じた場合であっても、印刷装置の動作の安定性が低下するおそれが低減される。
【0130】
前記印刷装置の一態様において、
前記移動期間は、回転駆動される前記搬送ベルトが一回転する期間であってもよい。
【0131】
この印刷装置によれば、搬送ベルトの全領域において搬送ベルトに帯電異常が生じているか否かが検出できるとともに、搬送ベルトの広範囲における検出手段の検出結果に基づいて、搬送ベルトに帯電異常の原因が電圧供給手段の異常であるのか、搬送ベルトの異常であるのかを判別することができる。よって、判別手段における判別精度が向上する。
【0132】
前記印刷装置の一態様において、
前記検出手段は、
閾値情報が記録されている記録部と、
前記閾値情報を補正する閾値補正部と、
補正された前記閾値情報と前記搬送ベルトに帯電している帯電量とを比較することで前記帯電異常が生じているか否かを検出する比較部と、
を有してもよい。
【0133】
この印刷装置によれば、検出手段における帯電異常の有無の検出を高精度に実施することができる。
【0134】
前記印刷装置の一態様において、
前記判別手段において前記帯電異常の原因が前記搬送ベルトの異常であると判別された場合、前記閾値補正部は、前記帯電異常の検出を緩和するように前記閾値情報を補正してもよい。
【0135】
この印刷装置によれば、判別手段において、搬送ベルトの帯電異常の原因が、異常が波及するおそれの小さな搬送ベルトの異常であると判別された場合に、搬送ベルトの帯電異常が継続して生じるおそれが低減する。すなわち、継続して搬送ベルトの帯電異常が生じることによるわずらわしさが低減し、使用者における印刷装置の利便性が向上する。
【0136】
前記印刷装置の一態様において、
前記閾値補正部が前記閾値情報を補正する補正値は、前記搬送ベルトが交換された場合に初期化されてもよい。
【0137】
この印刷装置によれば、搬送ベルトが交換されることにより搬送ベルトに生じた損傷が取り除かれたと推定できる。このような損傷が取り除かれたに対応する補正値を初期化することで、交換後の搬送ベルトにおいける帯電異常の検出精度、及び以上の原因の判別精度を高めることができる。
【0138】
前記印刷装置の一態様において、
前記判別手段において前記帯電異常の原因が前記搬送ベルトの異常であると判別された場合に警告情報を報知する報知部を備えてもよい。
【0139】
この印刷装置によれば、帯電異常の原因が搬送ベルトの異常であると判別された場合に報知部によって警告情報を報知することで、使用者に対して搬送ベルトの交換を促すことができる。これにより、損傷が生じた搬送ベルトが継続して使用されるおそれが低減し、その結果、印刷装置の動作の安定性が低下するおそれがさらに低減される。
【0140】
前記印刷装置の一態様において、
前記判別手段において前記帯電異常の原因が前記電圧供給手段の異常であると判別された場合、前記印刷手段は前記媒体への印刷を停止してもよい。
【0141】
この印刷装置によれば、帯電異常の原因が電圧供給手段の異常であると判別された場合に、印刷手段が印刷処理を停止することで、電圧供給手段で生じた異常が、印刷装置の各構成に波及するおそれが低減される。
【0142】
前記印刷装置の一態様において、
前記帯電電圧の電圧値は、前記判別手段における判別結果に基づいて調整されてもよい。
【0143】
この印刷装置によれば、判別手段による判別結果に応じて帯電制御電圧CVの電圧値を調整することで、搬送ベルトに帯電異常が継続して生じるおそれを低減できる。
【0144】
前記印刷装置の一態様において、
前記媒体は、漆喰が塗布された漆喰紙であってもよい。
【0145】
この印刷装置によれば、判別手段によって搬送ベルトに生じた帯電異常の原因を判別できるが故に、媒体が多量の炭酸カルシウムを含む漆喰紙であっても、印刷装置の動作の安定性が低下するおそれを低減することができる。
【0146】
前記印刷装置の一態様において、
前記媒体を加熱する加熱手段を備えてもよい。
【0147】
この印刷装置によれば、判別手段によって搬送ベルトに生じた帯電異常の原因を判別できるが故に、印刷装置が媒体を加熱する加熱手段を備える場合であっても、印刷装置の動作の安定性が低下するおそれを低減することができる。
【0148】
前記印刷装置の一態様において、
前記印刷手段は、水溶性の印刷材を前記媒体に吐出又は塗布することで印刷を行ってもよい。
【0149】
この印刷装置によれば、判別手段によって搬送ベルトに生じた帯電異常の原因を判別できるが故に、印刷装置が水溶性の印刷材を媒体に吐出又は塗布することで印刷を行う場合であっても、印刷装置の動作の安定性が低下するおそれを低減することができる。
【符号の説明】
【0150】
1…印刷装置、2A…装置本体、2B,2C…増設ユニット、3…スキャナーユニット、4…排出トレイ、5…操作パネル、6…開閉カバー、6a…揺動軸、7…排出トレイ、7a…回動軸、8…印刷ヘッド、10A,10B,10C…媒体カセット、11…ホッパー、11a…軸、12…給送ローラー、13…分離ローラー対、14…搬送ローラー対、15…給送ローラー、16…分離ローラー、17…レジストローラー対、17a…駆動ローラー、17b…従動ローラー、18…ベルトユニット、18a…駆動プーリー、18b…従動プーリー、18c…搬送ベルト、18d…吸着面、19a,19b…従動ローラー、20,21,22,23,24…搬送ローラー対、25…排出ローラー対、26,27,28,29…搬送ローラー対、29a…駆動ローラー、29b…従動ローラー、31…フラップ、31a…揺動支点、32…フラップ、32a…揺動支点、33…フラップ、35…給送ユニット、37…モーター、41…手差しトレイ、41a…揺動軸、43…除電ブラシ、44…帯電ローラー、45,46…支持プレート、47…クリーニングブレード、48…加熱ヒーター、49…電源装置、100…制御ユニット、200…印刷ユニット、210…駆動信号出力ユニット、300…搬送ユニット、400…電圧供給ユニット、500…検出ユニット、510…記録回路、520…閾値補正回路、530…比較回路、600…判別ユニット、700…インターフェースユニット、F…ローラー、G…ローラー、R1…記録搬送経路、R2…スイッチバック搬送経路、R3…反転搬送経路、R4…フェイスダウン搬送経路、R5…フェイスアップ搬送経路、S1,S2,S3…給送軌跡、Sc1,Sc2…傷、Se1,Se2…パルス電圧、T1,T2…排出軌跡
図1
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