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  • 特許-車両後部構造 図1
  • 特許-車両後部構造 図2
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  • 特許-車両後部構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】車両後部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20241126BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B62D25/08 L
B62D25/04 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021052625
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150154
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英也
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-936(JP,A)
【文献】実開平6-74574(JP,U)
【文献】特開2011-225046(JP,A)
【文献】特開2020-100223(JP,A)
【文献】特開2016-203709(JP,A)
【文献】特開2020-83230(JP,A)
【文献】特開2020-131951(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009046721(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00- 25/08
B62D 25/14- 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフサイドレールからバックドア用開口の側部に沿って下降しながら後方に延びる上側部材と、
前記バックドア用開口の下部のコーナーから該バックドア用開口の側部に沿って上昇しながら前方に延び前記上側部材に重なって接続される下側部材と、
リヤシートベルトの引き出しおよび巻き取りが可能なシートベルトリトラクタが取り付けられたリヤピラーインナリンフォースとを備え、
前記リヤピラーインナリンフォースは、車両後輪の上部を取り巻くホイールハウスから上方に延びて前記上側部材および前記下側部材に跨って取り付けられていて、
前記リヤピラーインナリンフォースには、車両前後方向の両端に沿って段差になっている稜線がそれぞれ形成されていて、
前記稜線の一方は、前記上側部材および前記下側部材に重なって接合されていることを特徴とする車両後部構造。
【請求項2】
前記リヤピラーインナリンフォースには、前記稜線の一方を境界として車内側に膨出した第1ビード部が形成されていることを特徴とする請求項に記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記第1ビード部には、前記シートベルトリトラクタが取り付けられる第1リトラクタ取付部が設けられることを特徴とする請求項に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記第1ビード部は、車両下方に向かうほど車両前後方向の幅が小さくなることを特徴とする請求項3に記載の車両後部構造。
【請求項5】
前記リヤピラーインナリンフォースにはさらに、前記稜線の他方を境界として車内側に膨出した第2ビード部であって、前記第1ビード部から車両前後方向に離間した第2ビード部が形成されていて、
前記第2ビード部には、前記シートベルトリトラクタが取り付けられる第2リトラクタ取付部が設けられていて、
前記シートベルトリトラクタは、前記第1ビード部と前記第2ビード部とに跨って、前記第1リトラクタ取付部と前記第2リトラクタ取付部とに取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の車両後部構造。
【請求項6】
当該車両後部構造はさらに、前記ホイールハウスに取り付けられ車両後輪からの衝撃を吸収する長尺状のショックアブソーバを備え、
前記第1ビード部は前記第2ビード部の車両後方に位置していて、
前記第1ビード部の車両前側の壁面のうち上部および下部の傾斜、および、前記第2ビード部の車両後側の壁面のうち上部および下部の傾斜は、前記ショックアブソーバの長手方向の傾斜と同じであることを特徴とする請求項に記載の車両後部構造。
【請求項7】
前記リヤピラーインナリンフォースには、車両後側に拡張していて前記上側部材および前記下側部材に重なる後側拡張部が形成されていて、
互いに重なった前記上側部材、前記下側部材および前記リヤピラーインナリンフォースの後側拡張部は、前記稜線の一方に沿って連続する溶接列によって溶接されていることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の車両後部構造。
【請求項8】
前記リヤピラーインナリンフォースには、車両前側に拡張していて前記上側部材および前記下側部材に重なる前側拡張部が形成されていて、
互いに重なった前記上側部材、前記下側部材および前記リヤピラーインナリンフォースの前側拡張部は、前記稜線の他方に沿って連続する溶接列によって溶接されていることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の車両後部構造。
【請求項9】
前記溶接列のうち、前記後側拡張部に配置される列の方向は、前記バックドア用開口を塞いだ状態のバックドアの法線方向に沿っていることを特徴とする請求項に記載の車両後部構造。
【請求項10】
前記溶接列のうち、前記前側拡張部に配置される列の方向は、前記バックドア用開口を塞いだ状態のバックドアの法線方向に沿っていることを特徴とする請求項に記載の車両後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の後部は、例えば走行する車両の振動などを減衰するリヤショックアブソーバからの荷重を受ける。リヤショックアブソーバの上端部は、車両後輪の上部を取り巻くリヤホイールハウスなどに取り付けられている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、第1の補強部材、クォータパネルおよび第2の補強部材を備えた車両後部構造が記載されている。第1の補強部材は、リヤホイールハウスの上端部と最後部のピラー部とを連結する部材であり、リヤショックアブソーバの軸方向と同方向に設けられている。クォータパネルは、サイドドア用開口部の後方部分のピラー部と第1の補強部材とを連結する。第2の補強部材は、クォータパネルの上端部とリヤホイールハウスの上端部とを連結する。
【0004】
特許文献1では、リヤショックアブソーバの上端部を通してリヤホイールハウスの上端部に入力される入力荷重を、第1の補強部材および第2の補強部材に分散して受ける構成にしたことにより、簡単な構成で、リヤショックアブソーバからの入力荷重を分散して車体に伝達することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-100223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで車両の後部には、リヤシートベルトの引き出しおよび巻き取りが可能なシートベルトリトラクタが取り付けられている。このため、車両の後部には、例えばリヤシートベルトにテンションが加えられたとき、シートベルトリトラクタからの荷重が入力される。
【0007】
特許文献1の車両後部構造は、リヤショックアブソーバからの入力荷重を分散して車体に伝達することができるものの、シートベルトリトラクタからの荷重への対策については改善の余地がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、シートベルトリトラクタからの荷重を分散して車体に伝達することができる車両後部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、車両のルーフサイドレールからバックドア用開口の側部に沿って下降しながら後方に延びる上側部材と、バックドア用開口の下部のコーナーからバックドア用開口の側部に沿って上昇しながら前方に延び上側部材に重なって接続される下側部材と、リヤシートベルトの引き出しおよび巻き取りが可能なシートベルトリトラクタが取り付けられたリヤピラーインナリンフォースとを備え、リヤピラーインナリンフォースは、車両後輪の上部を取り巻くホイールハウスから上方に延びて上側部材および下側部材に跨って取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シートベルトリトラクタからの荷重を分散して車体に伝達することができる車両後部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係る車両後部構造を示す図である。
図2図1(b)の車両後部構造を車内側から見た状態を示す側面図である。
図3図2の車両後部構造の要部を示す図である。
図4図3の車両後部構造の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態の代表的な構成は、車両のルーフサイドレールからバックドア用開口の側部に沿って下降しながら後方に延びる上側部材と、バックドア用開口の下部のコーナーからバックドア用開口の側部に沿って上昇しながら前方に延び上側部材に重なって接続される下側部材と、リヤシートベルトの引き出しおよび巻き取りが可能なシートベルトリトラクタが取り付けられたリヤピラーインナリンフォースとを備え、リヤピラーインナリンフォースは、車両後輪の上部を取り巻くホイールハウスから上方に延びて上側部材および下側部材に跨って取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
上記構成のリヤピラーインナリンフォースは、上側部材と下側部材の両方に跨って取り付けられているため、バックドア用開口に取り付けられるバックドアからの荷重を受けつつ、上側部材および下側部材を支持することができる。なおバックドアからの荷重とは、バックドアがバックドア開口を塞いだ閉状態での静的荷重や、バックドアの閉時の衝撃荷重である。また上側部材と下側部材は、最後部のピラーの一部を構成していて、互いに接続された状態で車両後方に向かうほど下方に傾斜している。このためリヤピラーインナリンフォースは、上側部材および下側部材を支持することにより、傾斜した最後部のピラーを補強することができる。
【0014】
また、リヤピラーインナリンフォースは、ホイールハウスに接続されているため、ホイールハウスから伝達される荷重が入力される。さらに、リヤピラーインナリンフォースは、シートベルトリトラクタが取り付けられているため、例えばリヤシートベルトにテンションが加えられたとき、シートベルトリトラクタからの荷重が入力される。このように、リヤピラーインナリンフォースには、バックドアやホイールハウスからだけでなく、シートベルトリトラクタからも荷重が入力されるものの、上側部材と下側部材の両方に跨って取り付けられるので、上側部材および下側部材に荷重を振り分けて伝達して分散させることができる。
【0015】
上記のリヤピラーインナリンフォースには、車両前後方向の両端に沿って段差になっている稜線がそれぞれ形成されていて、稜線の一方は、上側部材および下側部材に重なって接合されているとよい。
【0016】
これにより、上側部材と下側部材とが重なった箇所にさらにリヤピラーインナリンフォースの稜線の一方が重なって三枚接合される。このため、リヤピラーインナリンフォースが受けた荷重を稜線に沿って分散することが可能となり、バックドアの支持剛性を向上させることができる。また、上側部材、下側部材およびリヤピラーインナリンフォースが重なって三枚接合された箇所に稜線の一方が接続されている。このため、シートベルトリトラクタから引き出されるリヤシートベルトによる前方からの引っ張り荷重を、稜線に沿って三枚接合された箇所まで分散させることができる。これにより、リヤピラーインナリンフォースによるシートベルトリトラクタの支持剛性を向上させることができる。
【0017】
上記のリヤピラーインナリンフォースには、稜線の一方を境界として車内側に膨出した第1ビード部が形成されているとよい。これにより、第1ビード部は、上側部材、下側部材およびリヤピラーインナリンフォースが重なって三枚接合され支持剛性が大きい箇所につながっている。このため、リヤピラーインナリンフォースに入力された荷重を、第1ビード部で確実に受けてさらに三枚接合された箇所まで分散させることができる。
【0018】
上記の第1ビード部には、シートベルトリトラクタが取り付けられる第1リトラクタ取付部が設けられるとよい。このように、第1ビード部に第1リトラクタ取付部を設けたので、シートベルトリトラクタに荷重が加わったとき、第1リトラクタ取付部が変形することを抑制できる。
【0019】
上記の第1ビード部は、車両下方に向かうほど車両前後方向の幅が小さくなるとよい。第1ビード部は、稜線の一方を境界としているため、車両下方に向かうほど車両前後方向の幅が小さくなることにより、リヤピラーインナリンフォースが受けた荷重を、稜線の一方に沿って伝達しやすくなる。
【0020】
上記のリヤピラーインナリンフォースにはさらに、稜線の他方を境界として車内側に膨出した第2ビード部であって、第1ビード部から車両前後方向に離間した第2ビード部が形成されていて、第2ビード部には、シートベルトリトラクタが取り付けられる第2リトラクタ取付部が設けられていて、シートベルトリトラクタは、第1ビード部と第2ビード部とに跨って、第1リトラクタ取付部と第2リトラクタ取付部とに取り付けられているとよい。
【0021】
これにより、シートベルトリトラクタに加わった荷重を、第1リトラクタ取付部と第2リトラクタ取付部を介して、車両前後方向に離間した第1ビード部と第2ビード部にそれぞれ伝達することができる。
【0022】
上記の車両後部構造はさらに、ホイールハウスに取り付けられ車両後輪からの衝撃を吸収する長尺状のショックアブソーバを備え、第1ビード部は第2ビード部の車両後方に位置していて、第1ビード部の車両前側の壁面のうち上部および下部の傾斜、および、第2ビード部の車両後側の壁面のうち上部および下部の傾斜は、ショックアブソーバの長手方向の傾斜と同じであるとよい。
【0023】
このように、第1ビード部および第2ビード部の壁面のうち、上部および下部の傾斜が、上下運動をするショックアブソーバの長手方向の傾斜と同じ角度になっている。このため、ショックアブソーバからの荷重を、リヤピラーインナリンフォースの第1ビード部および第2ビード部に効率的に伝達して分散することができる。
【0024】
上記のリヤピラーインナリンフォースには、車両後側に拡張していて上側部材および下側部材に重なる後側拡張部が形成されていて、互いに重なった上側部材、下側部材およびリヤピラーインナリンフォースの後側拡張部は、稜線の一方に沿って連続する溶接列によって溶接されているとよい。
【0025】
これにより、リヤピラーインナリンフォースが受けた荷重を、稜線の一方に沿った溶接列によって後側拡張部から上側部材および下側部材に効率的に伝達し分散させることができる。
【0026】
上記のリヤピラーインナリンフォースには、車両前側に拡張していて上側部材および下側部材に重なる前側拡張部が形成されていて、互いに重なった上側部材、下側部材およびリヤピラーインナリンフォースの前側拡張部は、稜線の他方に沿って連続する溶接列によって溶接されているとよい。
【0027】
これにより、リヤピラーインナリンフォースが受けた荷重を、稜線の他方に沿った溶接列によって前側拡張部から上側部材および下側部材に効率的に伝達し分散させることができる。
【0028】
上記の溶接列のうち、後側拡張部に配置される列の方向は、バックドア用開口を塞いだ状態のバックドアの法線方向に沿っているとよい。これにより、バックドアからの荷重を、上側部材と下側部材の両方に効率的に伝達して分散させることができる。
【0029】
上記の溶接列のうち、前側拡張部に配置される列の方向は、バックドア用開口を塞いだ状態のバックドアの法線方向に沿っているとよい。これにより、バックドアからの荷重を、上側部材と下側部材の両方に効率的に伝達して分散させることができる。
【実施例
【0030】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0031】
図1は、本発明の実施例に係る車両後部構造100を示す図である。図1(a)は、車両後部構造100が適用される車両102を概略的に示す図である。図1(b)は、図1(a)の車両後部構造100を車室内において斜め下方から見上げた状態を示す図である。図2は、図1(b)の車両後部構造100を車内側から見た状態を示す側面図である。
【0032】
以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。なお以下の説明では、図1(a)の車両102の右側の後部周辺を例示するが、車両102の左右いずれの後部周辺に本実施例を適用してもよい。
【0033】
車両後部構造100は、図1(b)に示す上側部材104と下側部材106を備える。上側部材104と下側部材106は、車両102の最後部のピラー108の一部を構成する部材であって、バックドア開口110の側部112に沿うように配置されている。また、バックドア開口110には、図2に示すバックドアガラス114を含むバックドア116が取り付けられている。
【0034】
このため、バックドア開口110の側部112は、図2に示すようにバックドア116がバックドア開口110を塞いだ閉状態でバックドア116から静的荷重を受け、さらにバックドア116の閉時には衝撃荷重を受ける。また、バックドア用開口部110の側部112は、図2に示すように車両後方に向かうほど下方に傾斜し、バックドア116のバックドアガラス114の下端118付近からより鉛直に近くなるよう傾斜している。
【0035】
上側部材104は、車両102のルーフサイドレール120からバックドア用開口110の側部112に沿って下降しながら後方に延びている。ルーフサイドレール120は、車両102のルーフ122の側縁124(図1(b)参照)に沿って車両前後方向に延び、車両後側で上側部材104の前端部126に接続されている。
【0036】
バックドア用開口110の下側には、図1(b)に示すようにバックパネル128とテールエンドメンバ130が配置されている。バックパネル128とテールエンドメンバ130は、車幅方向に延び互いに接合されてバックドア開口110の下部132を構成している。
【0037】
バックドア用開口110の上側には、図1(b)に示すルーフバックインナメンバ134が配置されている。ルーフバックインナメンバ134は、ルーフ122の車室側の面に配置され車幅方向に延びていて、上側部材104の車幅方向内側に延びる端部136に接続されている。これにより、ルーフバックインナメンバ134は、上側部材104の端部136とともにバックドア開口110の上部138を構成している。
【0038】
下側部材106は、図1(b)に示すようにバックドア用開口110の下部132のコーナー140からバックドア用開口110の側部112に沿って上昇しながら前方に延びていて、さらに上側部材104に重なって接続される。このように上側部材104と下側部材106は、最後部のピラー108の一部を構成しつつ、互いに接続された状態で車両後方に向かうほど下方に傾斜している。
【0039】
車両後部構造100はさらに、図2に示すリヤピラーインナリンフォース142と図中点線で示すショックアブソーバ144とを備える。リヤピラーインナリンフォース142は、図2に示すようにその下端部145がホイールハウス146に接続され、ホイールハウス146から上方に延び、さらに、その上端部147が上側部材104および下側部材106に跨って取り付けられている。
【0040】
ホイールハウス146は、不図示の車両後輪の上部を取り巻くアーチ状の断面を有する部材であって、前部パネル148、中間パネル150および後部パネル152により構成されている。ホイールハウス146の中間パネル150には、リヤピラーインナリンフォース142の下端部145が接続されている。
【0041】
このようにリヤピラーインナリンフォース142は、上側部材104と下側部材106の両方に跨って取り付けられているため、バックドア用開口110に取り付けられるバックドア116からの静的荷重や閉時の衝撃荷重を受けつつ、上側部材104および下側部材106を支持することができる。そして、リヤピラーインナリンフォース142は、最後部のピラー108(図1(b)参照)の一部を構成する上側部材104および下側部材106を支持することにより、最後部のピラー108を補強することもできる。
【0042】
リヤピラーインナリンフォース142には、図2に示すように、リヤシートベルト154の引き出しおよび巻き取りが可能なシートベルトリトラクタ156が取り付けられている。なお図2では、リヤシートベルト154の一部のみを示している。
【0043】
シートベルトリトラクタ156は、リヤピラーインナリンフォース142の車両前後方向に沿った所定の寸法Aの幅を有する範囲内に取り付けられている。またシートベルトリトラクタ156は、リヤピラーインナリンフォース142に設けられた第1リトラクタ取付部158と第2リトラクタ取付部160(図3参照)とに取り付けられている。
【0044】
ショックアブソーバ144は、車両後輪からの衝撃を吸収し振動を減衰するために上下運動を行う長尺状の部材である。ショックアブソーバ144は、図2に示すようにその上部161がホイールハウス146の中間パネル150に取り付けられていて、図中Bで示す傾斜した長手方向を有する。またショックアブソーバ144の上部161には、ショックアブソーバキャップ162が取り付けられている。
【0045】
リヤピラーインナリンフォース142は、ホイールハウス146に接続されているため、ショックアブソーバ144が取り付けられたホイールハウス146から伝達される荷重が入力される。また、リヤピラーインナリンフォース142は、シートベルトリトラクタ156が取り付けられているため、例えばリヤシートベルト154にテンションが加えられたとき、シートベルトリトラクタ156からの荷重が入力される。
【0046】
このように、リヤピラーインナリンフォース142は、ホイールハウス146やシートベルトリトラクタ156から荷重が入力されるものの、上側部材104と下側部材106の両方に跨って取り付けられるので、上側部材104および下側部材106に荷重を振り分けて伝達して分散させることができる。
【0047】
図3は、図2の車両後部構造100の要部を示す図である。リヤピラーインナリンフォース142には、車両前後方向の両端に沿って段差になっている稜線164、166がそれぞれ形成されている。なお稜線164は、図示のように稜線166の車両後方に位置している。リヤピラーインナリンフォース142には、稜線164、166をそれぞれ境界として車内側に膨出した剛性の高い第1ビード部168、第2ビード部170が形成されている。第1ビード部168と第2ビード部170の間には、車外側に凹んだ凹部172が形成されている。これにより、第1ビード部168、第2ビード部170は、凹部172により隔てられ車両前後方向に離間している。
【0048】
第1ビード部168は、凹部172との境界となる車両前側の壁面174を有する。この壁面174は、連続する上部176、中間部178および下部180を有する。また第2ビード部170は、凹部172との境界となる車両後側の壁面182を有する。この壁面182は、連続する上部184、中間部186および下部188を有する。
【0049】
第1ビード部168の車両前側の壁面174のうち上部176および下部180の傾斜、および、第2ビード部170の車両後側の壁面182のうち上部184および下部188の傾斜は、ショックアブソーバ144の図中Bで示す長手方向の傾斜と同じになっている。このため、上下運動するショックアブソーバ144からの荷重を、リヤピラーインナリンフォース142の第1ビード部168および第2ビード部170に効率的に伝達して分散することができる。
【0050】
また、第1ビード部168の車両前側の壁面174のうち中間部178、および、第2ビード部170の車両後側の壁面182のうち中間部186は、図示のように上部176、184から車両下方に向かうほど稜線164、166に近づくように延びて、さらに下部180、188につながっている。このため、第1ビード部168、第2ビード部170は、車両下方に向かうほど車両前後方向の幅が小さくなり、リヤピラーインナリンフォース142が受けた荷重を、それぞれの稜線164、166に沿って伝達しやすくなる。
【0051】
さらに剛性の高い第1ビード部168、第2ビード部170には、シートベルトリトラクタ156が取り付けられる第1リトラクタ取付部158、第2リトラクタ取付部160がそれぞれ設けられている。このため、シートベルトリトラクタ156に荷重が加わったとき、第1リトラクタ取付部158および第2リトラクタ取付部160が変形することを抑制することができる。
【0052】
また、シートベルトリトラクタ156は、図2に示すように第1ビード部168と第2ビード部170とに跨って、第1リトラクタ取付部158と第2リトラクタ取付部160とに取り付けられている。このため、シートベルトリトラクタ156に加わった荷重を、第1リトラクタ取付部158と第2リトラクタ取付部160を介して、車両前後方向に離間した剛性の高い第1ビード部168と第2ビード部170にそれぞれ伝達することができる。
【0053】
リヤピラーインナリンフォース142の上端部147には、図3に示す後側拡張部190が形成されている。後側拡張部190は、車両上方に向かうほど車両後側に拡張した部位であって、上側部材104の下端部192および下側部材106の上端部194に重なっている。なお下側部材106の上端部194は、上側部材104の下端部192に車室側から重なっている。
【0054】
さらに、互いに重なった上側部材104の下端部192、下側部材106の上端部194およびリヤピラーインナリンフォース142の後側拡張部190は、稜線164に沿って連続する複数(本実施例では4箇所)の溶接点196で溶接されて三枚接合されている。そして溶接点196を含んで上下に溶接列198が設けられている。このため、リヤピラーインナリンフォース142が受けた荷重を、稜線164に沿った溶接列198によって後側拡張部190から上側部材104および下側部材106に効率的に伝達し分散させることができる。
【0055】
また、上側部材104の下端部192、下側部材106の上端部194およびリヤピラーインナリンフォース142の後側拡張部190が重なって三枚接合された溶接点196には、稜線164が接続されている。このため車両後部構造100では、シートベルトリトラクタ156から引き出されるリヤシートベルト154による前方からの引っ張り荷重を、稜線164に沿って三枚接合された箇所まで伝達し分散させることができる。これにより、リヤピラーインナリンフォース142によるシートベルトリトラクタ156の支持剛性を向上させることができ、取付後のシートベルトリトラクタ156の位置を安定させることができる。
【0056】
また第1ビード部168は、溶接点196に接続された稜線164を境界として車内側に膨出した部位である。さらに後側拡張部190は、図示のように稜線164を含んでいる。このため車両後部構造100では、バックドア116からリヤピラーインナリンフォース142に入力された荷重を稜線164に沿って伝達し分散させることにより、バックドア116の支持剛性を向上させることもできる。
【0057】
また後側拡張部190に配置される溶接点196を含む溶接列198の方向は、図2に示すバックドア用開口110を塞いだ状態のバックドア116の図中Cで示す法線方向に沿っている。このため車両後部構造100では、バックドア116からの荷重を、上側部材104と下側部材106の両方に効率的に伝達して分散させることができる。
【0058】
また車両後部構造100では、シートベルトリトラクタ156がリヤピラーインナリンフォース142の車両前後方向に沿った所定の寸法Aの幅を有する範囲(図2参照)内に取り付けられているため、シートベルトリトラクタ156の取付精度を高めることができる。
【0059】
図4は、図3の車両後部構造100の変形例を示す図である。変形例の車両後部構造100Aは、上記の後側拡張部190に代えて、リヤピラーインナリンフォース142Aの上端部147Aに前側拡張部190Aが形成されている点で、上記の車両後部構造100と異なる。
【0060】
前側拡張部190Aは、車両上方に向かうほど車両前側に拡張した部位であって、上側部材104Aの下端部192Aおよび下側部材106Aの上端部194Aに重なっている。下側部材106Aの上端部194Aは、上側部材104Aの下端部192Aに車室側から重なっている。なお第1ビード部168Aは、稜線164Aを境界として車内側に膨出した部位であって、図示のように上端部147Aで下側部材106Aに重なっていて、上側部材104Aには重なっていない。
【0061】
さらに、互いに重なった上側部材104Aの下端部192A、下側部材106Aの上端部194Aおよびリヤピラーインナリンフォース142Aの前側拡張部190Aは、稜線166Aに沿って連続する複数(本実施例では4箇所)の溶接点196Aで溶接されて三枚接合されている。そして溶接点196Aを含んで上下に溶接列198Aが設けられている。このため、リヤピラーインナリンフォース142Aが受けた荷重を、稜線166Aに沿った溶接列198Aによって前側拡張部190Aから上側部材104Aおよび下側部材106Aに効率的に伝達し分散させることができる。
【0062】
また、上側部材104Aの下端部192A、下側部材106Aの上端部194Aおよびリヤピラーインナリンフォース142Aの前側拡張部190Aが重なって三枚接合された溶接点196Aには、稜線166Aが接続されている。このため車両後部構造100Aでは、シートベルトリトラクタ156から引き出されるリヤシートベルト154による前方からの引っ張り荷重を、稜線166Aに沿って三枚接合された箇所まで伝達し分散させることができる。これにより、リヤピラーインナリンフォース142Aによるシートベルトリトラクタ156の支持剛性を向上させることができ、取付後のシートベルトリトラクタ156の位置を安定させることができる。
【0063】
また第2ビード部170Aは、溶接点196Aに接続された稜線166Aを境界として車内側に膨出した部位である。さらに前側拡張部190Aは、図示のように稜線166Aを含んでいる。このため車両後部構造100Aでは、バックドア116からリヤピラーインナリンフォース142Aに入力された荷重を稜線166Aに沿って伝達し分散させることにより、バックドア116の支持剛性を向上させることもできる。
【0064】
また前側拡張部190Aに配置される溶接点196Aを含む溶接列198Aの方向は、図2に示すバックドア用開口110を塞いだ状態のバックドア116の図中Cで示す法線方向に沿っている。このため車両後部構造100Aでは、バックドア116からの荷重を、上側部材104Aと下側部材106Aの両方に効率的に伝達して分散させることができる。
【0065】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、車両後部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
100、100A…車両後部構造、102…車両、104、104A…上側部材、106、106A…下側部材、108…ピラー、110…バックドア開口、112…バックドア開口の側部、114…バックドアガラス、116…バックドア、118…バックドアガラスの下端、120…ルーフサイドレール、122…ルーフ、124…ルーフの側縁、126…上側部材の前端部、128…バックパネル、130…テールエンドメンバ、132…バックドア開口の下部、134…ルーフバックインナメンバ、136…上側部材の端部、138…バックドア開口の上部、140…下部のコーナー、142、142A…リヤピラーインナリンフォース、144…ショックアブソーバ、145…リヤピラーインナリンフォースの下端部、146…ホイールハウス、147、147A…リヤピラーインナリンフォースの上端部、148…前部パネル、150…中間パネル、152…後部パネル、154…リヤシートベルト、156…シートベルトリトラクタ、158…第1リトラクタ取付部、160…第2リトラクタ取付部、161…ショックアブソーバの上部、162…ショックアブソーバキャップ、164、164A、166、166A…稜線、168、168A…第1ビード部、170、170A…第2ビード部、172…凹部、174、182…壁面、176、184…壁面の上部、178、186…壁面の中間部、180、188…壁面の下部、190…後側拡張部、190A…前側拡張部、192、192A…上側部材の下端部、194、194A…下側部材の上端部、196、196A…溶接点、198、198A…溶接列
図1
図2
図3
図4