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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】車両のパネル構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
B62D25/20 E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021054621
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152018
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 伸
(72)【発明者】
【氏名】長尾 邦昭
(72)【発明者】
【氏名】成田 周平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智也
(72)【発明者】
【氏名】小橋 正信
(72)【発明者】
【氏名】山川 啓介
(72)【発明者】
【氏名】三好 雄二
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕士
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-050276(JP,A)
【文献】特開2014-162393(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109808479(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第00001176(EP,A1)
【文献】特開2015-104948(JP,A)
【文献】特開2018-177126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内外方向に互いに対向する外壁と内壁とを備え、これら外壁と内壁との間に密閉された中空層が形成された二重壁パネルからなる、車両のパネル構造であって、
前記外壁と前記内壁との間に介設されて、前記中空層を4~8の何れかの数のエリアに分割する隔壁を備え、
前記隔壁には、当該隔壁を隔てて互いに隣接するエリア同士を連通させる一乃至複数の連通部が形成され、
前記連通部は、前記隔壁のうち前記外壁側の端部に形成された切欠部であり、
前記隔壁には、前記切欠部からなる連通部であってかつ当該隔壁の延在方向に所定間隔を隔てて並ぶ複数の第1連通部と、当該隔壁をその厚み方向に貫通する貫通孔からなる連通部であって、前記第1連通部よりも前記内壁側の位置で前記延在方向に所定間隔を隔てて並ぶ複数の第2連通部とが形成され、
前記第1連通部と前記第2連通部とは、前記延在方向に互いに配列ピッチがずれた千鳥状の配置で並んでいる、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のパネル構造において、
前記隔壁は、前記中空層を4、6、8の何れかの数のエリアに等分している、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両のパネル構造において、
前記隔壁には、前記外壁及び前記内壁に沿った第1方向に直線状に延びる第1隔壁と、第1方向と交差する方向であって前記外壁及び前記内壁に沿った第2方向に直線状に延びる第2隔壁とを含む、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の車両のパネル構造において、
前記連通部は、当該隔壁の延在方向に沿って延びる細長い形状である、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の車両のパネル構造において、
前記第1連通部と前記第2連通部とは、前記延在方向に互いオーバーラップする領域を有している、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項6】
車両の内外方向に互いに対向する外壁と内壁とを備え、これら外壁と内壁との間に密閉された中空層が形成された二重壁パネルからなる、車両のパネル構造であって、
前記外壁と前記内壁との間に介設されて、前記中空層を4~8の何れかの数のエリアに分割する隔壁を備え、
前記隔壁には、当該隔壁を隔てて互いに隣接するエリア同士を連通させる一乃至複数の連通部が形成され、
前記隔壁は、隔壁本体と、当該隔壁本体と外壁との間に介設される粘弾性部材とで構成され、
前記隔壁本体に沿った互いに離間する複数の位置に前記粘弾性部材が設けられることにより、隣接する当該粘弾性部材の間に前記連通部が形成されている、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項7】
請求項6に記載の車両のパネル構造において、
前記隔壁は、前記中空層を4、6、8の何れかの数のエリアに等分している、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の車両のパネル構造において、
前記隔壁には、前記外壁及び前記内壁に沿った第1方向に直線状に延びる第1隔壁と、第1方向と交差する方向であって前記外壁及び前記内壁に沿った第2方向に直線状に延びる第2隔壁とを含む、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れか一項に記載の車両のパネル構造において、
前記連通部は、当該隔壁の延在方向に沿って延びる細長い形状である、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項10】
請求項6乃至の何れか一項に記載の車両のパネル構造において、
前記隔壁本体は、前記内壁から前記外壁に向かって伸びる隔壁主部と、その先端から前記外壁に沿って両側に伸びるフランジ部とを備えた断面T字形状であり、
前記粘弾性部材は、前記フランジ部と前記外壁との間に介設されている、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項11】
車両の内外方向に互いに対向する外壁と内壁とを備え、これら外壁と内壁との間に密閉された中空層が形成された二重壁パネルからなる、車両のパネル構造であって、
前記外壁と前記内壁との間に介設されて、前記中空層を4~8の何れかの数のエリアに分割する隔壁を備え、
前記隔壁には、当該隔壁を隔てて互いに隣接するエリア同士を連通させる一乃至複数の連通部が形成され、
前記隔壁は、前記内壁から前記外壁に向かって伸びる内壁側隔壁部と、前記外壁から前記内壁に向かって伸びかつ前記内壁側隔壁部に対面する外壁側隔壁部と、前記内壁側隔壁部と前記外壁側隔壁部との間に介設される粘弾性部材とで構成され、
前記内壁側隔壁部及び前記外壁側隔壁部に沿った互いに離間する複数の位置に前記粘弾性部材が設けられることにより、隣接する当該粘弾性部材の間に前記連通部が形成されている、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項12】
請求項11に記載の車両のパネル構造において、
前記隔壁は、前記中空層を4、6、8の何れかの数のエリアに等分している、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の車両のパネル構造において、
前記隔壁には、前記外壁及び前記内壁に沿った第1方向に直線状に延びる第1隔壁と、第1方向と交差する方向であって前記外壁及び前記内壁に沿った第2方向に直線状に延びる第2隔壁とを含む、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項14】
請求項11乃至13の何れか一項に記載の車両のパネル構造において、
前記連通部は、当該隔壁の延在方向に沿って延びる細長い形状である、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか一項に記載の車両のパネル構造において、
当該パネル構造は、フロアパネル、ダッシュパネル、ルーフパネル、及びドアパネルのうちの何れかのパネル構造である、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車外側に位置する外壁と車内側に位置する内壁との間に、密閉中空層(中間層)が形成された二重壁パネルからなる、車両のパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の一部を上記のような二重壁パネルで構成することにより、車外から車室内への音響エネルギーの侵入を抑制して、車室内の静粛性を高める研究が進んでいる。
【0003】
二重壁パネルは、車室内の静粛性(遮音性)を高める上で有効な手段と言えるが、そもそも中空構造であるために剛性の確保が難しい。そのため、車両への適用に際しては、遮音性の確保とともに、十分な剛性を確保することが主な課題とされている。
【0004】
この課題の解決手段の一つとして、例えば特許文献1のような技術が開示されている。この文献1には、二重壁パネルが適用された車両のフロア構造が開示されている。具体的には、フロアを構成する、上板部と下板部との間の中空層を複数の空間(セル)に仕切るリブを設け、これにより、中空層を確保しつつパネル剛性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-177126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上板部と下板部との間にリブを設けるパネル構造では、リブ自体が音響エネルギーの伝播経路となるため、パネル剛性はアップするものの、遮音性が犠牲になる。特に、特許文献1のように中空層をリブによって多数のセルに細分化する構造では、フロアの剛性は確保できるものの、高い遮音性を達成することは難しいと考えられる。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みて成されたものであり、車両の剛性と車室内の静粛性とを、共に高いレベルで達成することが可能な、車両のパネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
二重壁パネルのパネル剛性と遮音性とは既述の通りトレードオフの関係にある。本願の発明者は、この点に鑑み鋭意検討を重ねた結果、後に詳述する通り、二重壁パネルの中空層を所定の数に分割した場合には、パネル剛性と遮音性とを比較的高いレベルで両立させることが可能との知見を得た。本発明は、係る知見に基づき成されたものである。すなわち、本発明は、車両の内外方向に互いに対向する外壁と内壁とを備え、これら外壁と内壁との間に密閉された中空層が形成された二重壁パネルからなる、車両のパネル構造であって、前記外壁と前記内壁との間に介設されて、前記中空層を4~8の何れかの数のエリアに分割する隔壁を備え、前記隔壁には、当該隔壁を隔てて互いに隣接するエリア同士を連通させる一乃至複数の連通部が形成され、前記連通部は、前記隔壁のうち前記外壁側の端部に形成された切欠部であり、前記隔壁には、前記切欠部からなる連通部であってかつ当該隔壁の延在方向に所定間隔を隔てて並ぶ複数の第1連通部と、当該隔壁をその厚み方向に貫通する貫通孔からなる連通部であって、前記第1連通部よりも前記内壁側の位置で前記延在方向に所定間隔を隔てて並ぶ複数の第2連通部とが形成され、前記第1連通部と前記第2連通部とは、前記延在方向に互いに配列ピッチがずれた千鳥状の配置で並んでいることを特徴とする。
【0009】
このように、中空層の分割数を4~8の何れかの数になるように隔壁を設ければ、後述する解析結果に示す通り、隔壁を設けながらも、剛性と遮音性とを比較的高いレベルで両立させることができる。従って、上記のような車両のパネル構造によれば、車両の剛性と車室内の静粛性とをより高いレベル達成することが可能となる。
また、連通部が隔壁における音響エネルギー伝播の妨げとなるため、隔壁を介した外壁から内壁への音響エネルギーの伝播が抑制される。また、隣接するエリア同士が連通していることで、音響エネルギーが中空層(空気層)を伝播することによる透過損失を、隔壁に連通部が設けられていない場合に比べて増大させることが可能となる。よって、遮音性の向上により寄与するものとなる。
また、切欠部によって外壁から隔壁への音響エネルギーの入射経路が制限されるため、隔壁を介した音響エネルギーの伝播が効果的に抑制される。この場合、各々切欠部からなる第1連通部と第2連通部とが千鳥状の配置で並んでいるので、外壁側から内壁側へ音響エネルギーが伝播し難くなり、遮音性の向上に寄与する。
【0010】
この場合、前記隔壁は、前記中空層を4、6、8の何れかの数のエリアに等分しているのが好適である。
【0011】
この構成によれば、中空層が均等に分割されることで、二重壁パネル全体について、より均質な剛性および遮音性を確保することが可能となる。
【0012】
上記のパネル構造において、前記隔壁には、前記外壁及び前記内壁に沿った第1方向に直線状に延びる第1隔壁と、第1方向と交差する方向であって前記外壁及び前記内壁に沿った第2方向に直線状に延びる第2隔壁とを含むのが好適である。
【0013】
この構造によれば、隔壁が湾曲や屈曲している場合に比べて、隔壁(第1、第2隔壁)の長さを短くできる。その分、隔壁を介した外壁から内壁への音響エネルギーの伝播が抑制され、遮音性を確保する上で有利となる。
【0016】
この場合、前記連通部は、当該隔壁の延在方向に沿って延びる細長い形状であるのが好適である。
【0017】
この構造によれば、外壁から隔壁への音響エネルギーの伝播経路を連通部によって効果的に遮断することができる。そのため、遮音性の向上により一層寄与するものとなる。
【0022】
この場合、さらに、前記第1連通部と前記第2連通部とは、前記延在方向に互いオーバーラップする領域を有しているのが好適である。
【0023】
この構造によれば、外壁側から内壁側へ音響エネルギーがより伝播し難くなる。そのため、遮音性の向上により一層寄与すると言える。
【0024】
なお、本発明は、車両の内外方向に互いに対向する外壁と内壁とを備え、これら外壁と内壁との間に密閉された中空層が形成された二重壁パネルからなる、車両のパネル構造であって、前記外壁と前記内壁との間に介設されて、前記中空層を4~8の何れかの数のエリアに分割する隔壁を備え、前記隔壁には、当該隔壁を隔てて互いに隣接するエリア同士を連通させる一乃至複数の連通部が形成され、前記隔壁は、隔壁本体と、当該隔壁本体と外壁との間に介設される粘弾性部材とで構成され、前記隔壁本体に沿った互いに離間する複数の位置に前記粘弾性部材が設けられることにより、隣接する当該粘弾性部材の間に前記連通部が形成されていることを特徴とする
【0025】
このように、中空層の分割数を4~8の何れかの数になるように隔壁を設ければ、後述する解析結果に示す通り、隔壁を設けながらも、剛性と遮音性とを比較的高いレベルで両立させることができる。従って、上記のような車両のパネル構造によれば、車両の剛性と車室内の静粛性とをより高いレベル達成することが可能となる。
また、連通部が隔壁における音響エネルギー伝播の妨げとなるため、隔壁を介した外壁から内壁への音響エネルギーの伝播が抑制される。また、隣接するエリア同士が連通していることで、音響エネルギーが中空層(空気層)を伝播することによる透過損失を、隔壁に連通部が設けられていない場合に比べて増大させることが可能となる。よって、遮音性の向上により寄与するものとなる。
また、外壁に入射する音響エネルギーは、粘弾性部材を伝って内壁へ伝播するため、その過程で、音響エネルギー(振動エネルギー)の一部が熱エネルギーへと変換される。そのため、外壁から内壁へ音響エネルギーが伝播し難くなり、遮音性の向上に寄与する。
【0026】
この場合、前記隔壁本体は、前記内壁から前記外壁に向かって伸びる隔壁主部と、その先端から前記外壁に沿って両側に伸びるフランジ部とを備えた断面T字形状であり、前記粘弾性部材は、前記フランジ部と前記外壁との間に介設されているのが好適である。
【0027】
この構造によると、隔壁本体と外壁との間に介在する粘弾性部材の占有面積をより広く確保することが可能となり、前記エネルギー変換による音響エネルギーの伝播抑制効果が向上する。
【0028】
また、本発明は、車両の内外方向に互いに対向する外壁と内壁とを備え、これら外壁と内壁との間に密閉された中空層が形成された二重壁パネルからなる、車両のパネル構造であって、前記外壁と前記内壁との間に介設されて、前記中空層を4~8の何れかの数のエリアに分割する隔壁を備え、前記隔壁には、当該隔壁を隔てて互いに隣接するエリア同士を連通させる一乃至複数の連通部が形成され、前記隔壁は、前記内壁から前記外壁に向かって伸びる内壁側隔壁部と、前記外壁から前記内壁に向かって伸びかつ前記内壁側隔壁部に対面する外壁側隔壁部と、前記内壁側隔壁部と前記外壁側隔壁部との間に介設される粘弾性部材とで構成され、前記内壁側隔壁部及び前記外壁側隔壁部に沿った互いに離間する複数の位置に前記粘弾性部材が設けられることにより、隣接する当該粘弾性部材の間に前記連通部が形成されていることを特徴とする
【0029】
このように、中空層の分割数を4~8の何れかの数になるように隔壁を設ければ、後述する解析結果に示す通り、隔壁を設けながらも、剛性と遮音性とを比較的高いレベルで両立させることができる。従って、上記のような車両のパネル構造によれば、車両の剛性と車室内の静粛性とをより高いレベル達成することが可能となる。
また、連通部が隔壁における音響エネルギー伝播の妨げとなるため、隔壁を介した外壁から内壁への音響エネルギーの伝播が抑制される。また、隣接するエリア同士が連通していることで、音響エネルギーが中空層(空気層)を伝播することによる透過損失を、隔壁に連通部が設けられていない場合に比べて増大させることが可能となる。よって、遮音性の向上により寄与するものとなる。
また、この構造の場合も、音響エネルギー(振動エネルギー)の一部を熱エネルギーへと変換可能である。よって、外壁から内壁へ音響エネルギーが伝播し難くなり、遮音性の向上に寄与する。
【0030】
なお、当該パネル構造は、フロアパネル、ダッシュパネル、ルーフパネル、及びドアパネルのうちの何れかのパネル構造である。
【0031】
この構造によれば、車両の剛性を確保しながら、ロードノイズや走行音など、車外から車室内への騒音の侵入を抑制して、高い静粛性を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明に係る車両のパネル構造によれば、車両の剛性と車室内の静粛性を、共に高いレベルで達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係るパネル構造が適用された自動車の車体の斜視図である。
図2】フロアパネルを含む車体の部分断面図である。
図3】フロアパネルを構成する二重壁パネルの斜視図である。
図4】二重壁パネルの一部を示す断面図である。
図5】二重壁パネルのねじり剛性と透過損失の関係を示す図(グラフ)である。
図6】CAE解析に用いた二重壁パネルのモデルを示す模式図であり、(a)は中空層を4等分に分割したモデルを、(b)は対角線に沿った隔壁で中空層を4等分したモデルを、(c)は中空層を8等分に分割したモデルを、(d)は中空層を32等分に分割したモデルを各々示す。
図7】変形例に係る二重壁パネルの一部を示す断面図である。
図8】変形例に係る二重壁パネルの一部を示す断面図である。
図9】変形例に係る二重壁パネルの一部を示す断面図であり、(a)は、車幅方向に沿った二重壁パネルの要部断面図であり、(b)は、(a)のIX-IX線に沿った断面図である。
図10】変形例に係る二重壁パネルの一部を示す断面図であり、(a)は、車幅方向に沿った二重壁パネルの要部断面図であり、(b)は、(a)のX-X線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0035】
[車体の構造]
図1は、本発明に係る車両のパネル構造が適用された自動車の車体の斜視図である。図1において、符号1はエンジンルーム1(電気自動車の場合はモータルーム)を示し、符号2は車室を示している。エンジンルーム1と車室2との間には、車両を前後方向に仕切るダッシュパネル3が設けられている。ダッシュパネル3の車幅方向両側上部から各々車両前方に向かってエプロン4が延在し、エプロン4よりも下方であってかつ車幅方向内側には、ダッシュパネル3から各々車両前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム5が設けられている。これらフロントサイドフレーム5の前端には、クラッシュカンを介して車幅方向に延びるバンパビーム6が取付けられている。
【0036】
前記ダッシュパネル3の下部後端には、車室2の床面を形成するフロアパネル7が連設され、このフロアパネル7の車幅方向中央に、車室2内に膨出して車両の前後方向に延びるトンネル部8が設けられている。フロアパネル7の後端には、上下方向に延びるキックアップ部9が設けられ、当該キックアップ部9の後方にリヤフロア10が連設されている。
【0037】
前記ダッシュパネル3の車幅方向両端には、車両上下方向に延びるヒンジピラー11が各々設けられている。各ヒンジピラー11の下端部には、車両前後方向に延びるサイドシル12が連結され、ヒンジピラー11の上端部には、車両の後方かつ上方に傾斜して延びるフロントピラー13が連結されている。
【0038】
フロントピラー13の後端部には、車両前後方向に延びるルーフサイドレール14が連結され、このルーフサイドレール14の後端部に、車両の後方かつ下方に傾斜して延びるリヤピラー15が連結されている。
【0039】
ルーフサイドレール14の前後方向中間部とサイドシル12の前後方向中間部とは、上下方向に延びるセンタピラー16で連結されている。そして、ヒンジピラー11、フロントピラー13、ルーフサイドレール14、センタピラー16及びサイドシル12で囲まれたフロントドア開口部17が形成され、このフロントドア開口部17に、図外のフロントドアが開閉可能に組み込まれている。
【0040】
また、ルーフサイドレール14の後部とサイドシル12の後部とが、中間ピラー19およびリヤホイールハウス部20で上下方向に連結されている。そして、センタピラー16、ルーフサイドレール14、中間ピラー19、リヤホイールハウス部20及びサイドシル12で囲まれたリヤドア開口部21が形成され、このリヤドア開口部21に、図外のリヤドアが開閉可能に組み込まれている。
【0041】
また、左右のフロントピラー13の上端部に亘って車幅方向に延びるフロントヘッダ22が連結されるとともに、左右のリヤピラー15の上端部に亘って車幅方向に延びるリヤヘッダ23が連結されている。そして、フロントヘッダ22、リヤヘッダ23および左右のルーフサイドレール14で囲まれた空間にルーフパネル24が組み込まれている。
【0042】
図2は、車体の主に下部、すなわちフロアパネル7を含む車体の部分断面図(図1のII-II線断面図)である。
【0043】
前記トンネル部8は、断面門形状の本体部30と、その左右両側の下方部から各々車幅方向外側に向かって突出する側方突出部32とを備えている。側方突出部32は、前後方向に延びる断面矩形(当例では長方形又は正方向)の閉断面構造を有しており、本体部30に一体に形成されている。側方突出部32の内部の前後方向における複数箇所には、補強用の節部が設けられている。
【0044】
トンネル部8の下方の開口部分はトンネルカバー部材36で覆われている。これらトンネル部8及びトンネルカバー36により囲まれた空間に、排気管Ep(又はプロペラシャフト)が配設される。
【0045】
サイドシル12は、前後方向に延びる断面矩形(当例では長方形又は正方向)の閉断面構造を有している。サイドシル12の内部の前後方向における複数箇所には、側方からの衝突荷重に対する補強用の節部が設けられている。
【0046】
図2に示すように、サイドシル12の上面とトンネル部8における前記側方突出部32の上面とは、略同じ高さに設定されており、トンネル部8の左右両側において各々、サイドシル12の上面と側方突出部32の上面とに亘って、シートを支持するための図外のシート支持フレームが水平に取付けられている。
【0047】
フロアパネル7は、トンネル部8の左右両側において各々、サイドシル12の内側面12aと側方突出部32の外側面32aとの間に組み込まれている。図2では明示されていないが、互いに向かい合うこれらの内側面12a及び外側面32aは、例えば上側から下側に向かって若干先窄まり(テーパ状)に形成されており、フロアパネル7は、これら内側面12aと外側面32aとの間のスペースに上側から嵌め込まれている。
【0048】
フロアパネル7は、二重壁パネル、すなわち、互いに対向する内壁と外壁との間に密閉中空層が形成されたパネルで構成されている。図3は、フロアパネル7を構成する二重壁パネル40を示す斜視図である。
【0049】
図2及び図3に示すように、二重壁パネル40は、上下方向に扁平かつ一定厚みを有した、前後方向に細長い平面視長方形の中空パネルである。二重壁パネル40は、外壁42、内壁43、周壁44及び隔壁45を備えている。各壁42~45は各々、一定の厚みを有した剛性を有する板部材からなり、例えば、アルミニウム、マグネシウム、鉄等の金属、ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、若しくは、CFRPやGFRP等の繊維強化樹脂で形成されている。
【0050】
二重壁パネル40のうち、外壁42は、フロアパネル7のうち車外側の壁面(下面)を形成する部分であり、内壁43は、フロアパネル7のうち車内側の壁面(上面)を形成する部分であり、これら外壁42と内壁43とは互いに平行に設けられている。
【0051】
周壁44は、フロアパネル7の外周壁面を形成する部分である。当例では、周壁44は、外壁42の周縁部に一体形成されている。つまり、外壁42と周壁44とは上向きに開口する箱形の形状を成すように一体に形成されている。そして、内壁43が周壁44に接合されることにより、外壁42、内壁43及び周壁44により密閉された中空層50が形成されている。なお、周壁44は、内壁43の周縁部に一体に形成されてもよいし、外壁42及び内壁43とは別体に形成されて当該外壁42及び内壁43に接合されていてもよい。
【0052】
隔壁45は、外壁42と内壁43との間に介設された、二重壁パネル40の補強部材である。隔壁45が設けられることで、二重壁パネル40の剛性が確保される。
【0053】
隔壁45は、図3に示すように、前後方向に直線状に延在する第1隔壁46と、この第1隔壁46に対して直交方向に交差する2つの第2隔壁47とを含む。第1隔壁46は、外壁42(内壁43)の左右方向中央に配置され、第2隔壁47は、外壁42(内壁43)を前後方向に3等分する位置に各々配置されている。第1、第2の隔壁46、47の下面は外壁42に接合され、上面は内壁43に接合されている。また、第1、第2の隔壁46、47の長手方向両端面は、周壁44に接合されている。接合手段は、溶接、溶着及び接着等、各壁42~45の材質に適した手段が採用されている。
【0054】
これにより、前記中空層50が、平面視長方形の同一形状でかつ同一容積を有する6つのエリアSに分割されている。つまり、隔壁45によって中空層50が6等分されている。
【0055】
なお、図3及び図4に示すように、第1隔壁46には、当該第1隔壁46を隔てて互いに隣接するエリアS同士を連通させる複数の連通部48が設けられている。第2隔壁47にも同様に、当該第2隔壁47を挟んで隣接するエリアS同士を連通させる複数の連通部48が形成されている。これにより、二重壁パネル40内の全てのエリアSが連通している。
【0056】
連通部48は、第1、第2の隔壁46、47のうち下側(外壁42側)の端部に、それらの長手方向に沿って形成された細長い門型の切欠部である。これにより、当該第1、第2の隔壁46、47と外壁42との間にスリット状の隙間が形成されて、隣接するエリアS同士が当該スリット状の隙間を通じて互いに連通している。
【0057】
二重壁パネル40は、既述の通り、隔壁45により中空層50が6つのエリアSに分割され、さらに、隔壁45に連通部48が設けられることにより、隣接するエリアS同士が連通した構造を有している。このような二重壁パネル40は、次に説明する通り、パネル剛性と遮音性とが高いレベルで両立された構造であり、フロアパネル7に適した構造と言える。
【0058】
[パネル剛性と遮音性]
図5は、平面視長方形の二重壁パネル40であって中空層50の分割構造が互いに異なる複数のモデルについて、その剛性(ねじり剛性)と透過損失とをCAE(Computer-aided Engineering)解析に基づき比較した結果を示している。なお、図5において、横軸はねじり剛性を、縦軸は透過損失を各々単位質量当りの値で示している。また、図6(a)~(d)は、前記複数のモデルの一部のモデルを示す模式平面図である(隔壁45のみ符号を付している)。
【0059】
図5中のモデルN0は、隔壁45の無い二重壁パネルである。同図では、このモデルN0のねじり剛性及び透過損失の値を各々「100」としている。
【0060】
モデルN1,N2は、図6(a)に示すような、互いに直交する縦横の隔壁45により中空層が4等分された二重壁パネルである。モデルN3、N4は、図6(b)に示すような、対角線上に設けられた隔壁45により中空層が4等分された二重壁パネルである。また、モデルN5、N6は、互いに直交する縦横の隔壁45により中空層が6等分された二重壁パネル40で、モデルN7、N8は、図6(c)に示すような、互いに直交する縦横の隔壁45により中空層が8等分された二重壁パネル40である。また、モデルN9は、図6(d)に示すような、互いに直交する縦横の隔壁45により中空層が32等分された二重壁パネル40である。なお、ここでの「等分」とは、中空層を、平面視において面積が等しい複数のエリアに分割することを意味する。但し、隔壁45の配置は、完全に等分となる位置に限らず、周囲の構造の剛性を考慮して適宜変更することができる。
【0061】
これらモデルのうち、N1、N3、N5、N7は、隔壁45に連通部48が設けられていないモデルであり、N2、N4、N6、N8は、隔壁45に連通部48が設けられたモデルである。なお、図中の直線Lは、全モデルの値の一次近似直線を示している。
【0062】
図5に示す通り、隔壁45が設けられていないモデルN0は、最も透過損失が大きい、つまり、遮音性が最も高い。これは、音響エネルギーの殆が空気伝播するため、二重壁パネルの遮音効果が最大限に発揮されているためである。その一方、隔壁45による補強が無いため、モデルN0のねじり剛性は最も低い。
【0063】
逆に、中空層が隔壁45によって32等分されたモデルN9では、隔壁45による補強効果が高く、ねじり剛性は最も高い。しかし、入射する音響エネルギーの多くが隔壁45を介して伝播するために、空気伝播よる透過損失の低下が大きく、遮音性は最も低い。
【0064】
モデルN0、N9以外のモデルN1~N8のねじり剛性及び透過損失の値は、共にモデルN0、N9の間にある。なお、隔壁45に連通部48が設けられているモデルN2、N4、N6、N8は、連通部48が設けられていないモデルN1、N3、N5、N7に比べて相対的に透過損失が増加している。これは、外壁から隔壁45への音響エネルギーの入射が連通部48(切欠部)で制限されることにより、隔壁45を介した音響エネルギーの伝播が抑制されていること、また、隣接するエリアS同士が連通していることにより、連通部48が設けられていない場合に比べて、音響エネルギーの空気伝播の機会が増加していることに起因すると考えられる。そして、モデルN1~N8のうち、特に、モデルN3、N4、N6、N7、N8は、共に一次近似直線Lの上の領域にあることから、何れも、ねじり剛性及び透過損失が高いレベルで両立していると言うことができる。
【0065】
以上のような知見に基づき、当例では、フロアパネル7を構成する二重壁パネル40として、ねじり剛性及び透過損失が高いレベルで両立しているモデルN3、N4、N6、N7、N8のうち、特に両者のバランスが良いモデルN6の構造が適用されている。すなわち、フロアパネル7を構成する二重壁パネル40は、既述の通り、平面視長方形の同一形状でかつ同一容積を有する6つのエリアSに分割され、さらに、隔壁45に連通部48が設けられることにより、隣接するエリアS同士が連通した構造を有している。
【0066】
[作用効果等]
以上のようなフロアパネル7を備える車両によれば、既述の通り、フロアパネル7を構成する二重壁パネル40の剛性及び透過損失(遮音性)が高いレベルで両立している。従って、車両の剛性と車室2内の静粛性とを、より高いレベルで両立させることが可能と言える。
【0067】
特に、フロアパネル7を構成する二重壁パネル40は、中空層50を6つのエリアSに等分するように隔壁45が設けられているため、フロアパネル7全体について均質な剛性と遮音性とを確保することできる。
【0068】
この場合、隔壁45は、直線状に延在する第1隔壁46及び第2隔壁47からなるので、隔壁45を可及的に短くできる。従って、隔壁45が湾曲や屈曲している場合に比べると、外壁42から隔壁45への音響エネルギーの伝播をより抑制すること、換言すれば、透過損失の低下を抑制して、遮音性向上に寄与するという利点がある。
【0069】
また、上記二重壁パネル40では、隔壁45に連通部48が設けられているが、当該連通部48は、既述の通り、隔壁45(第1隔壁46、第2隔壁47)の下側(外壁42側)の端部に、それらの長手方向に沿って形成された細長い門型の切欠部である。このような構造によれば、連通部48(切欠部)によって外壁42から内壁43への音響エネルギーの入射経路が制限されるため、隔壁45を介しての外壁42から内壁43への音響エネルギーの伝播が効果的に抑制される。そのため、隔壁45による二重壁パネル40の補強効果を著しく低下させることなく、外壁42から隔壁45への音響エネルギーの伝播を効果的に抑制すること、すなわち、遮音性を効果的に向上させることができる。
【0070】
[変形例等]
以上説明した実施形態のフロアパネル7の構造は、本発明に係る車両のパネル構造の好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成を採用することも可能である。
【0071】
(1)実施形態の二重壁パネル40は、隔壁45により中空層50が6等分された構造であるが、既述の通り、中空層50が4等分、8等分に分割された構造(図5のモデルN1~N4、N7、N8)の場合も、ねじり剛性と透過損失とを比較的高いレベルで両立させることが可能である。また、図5の知見に基づけば、等分に限らず、中空層50が4~8の何れかの数のエリアSに分割された構造であれば、前記モデルN1~N8と同等又はこれらに近いねじり剛性と透過損失を達成することが可能と予測される。従って、二重壁パネル40は、中空層50を4~8の何れかの数のエリアSに分割するように隔壁45を備えていればよい。
【0072】
(2)実施形態の二重壁パネル40では、隔壁45の連通部48は、既述の通り、隔壁45(第1隔壁46、第2隔壁47)の下側(外壁42側)の端部に、それらの長手方向に沿って形成された細長い門型の切欠部である。しかし、連通部48は、例えば、隔壁45(第1隔壁46、第2隔壁47)に形成された、当該隔壁45の長手方向に細長いスリット状の開口部(隔壁45をその厚み方向に貫通する貫通孔)であってもよい。この場合、開口部からなる連通部48のみを設けてもよいが、切欠部からなる連通部48と、開口部からなる連通部とを併用するのが好適である。
【0073】
例えば、図7及び図8は、切欠部からなる連通部48(第1連通部48と称する)と、開口部からなる連通部49(第2連通部49と称する)とを併用した構造(第1隔壁46)の一例を示している。
【0074】
図7の例では、第1連通部48よりも内壁43側の位置に第2連通部49が形成され、第1連通部48と第2連通部49とが、第1隔壁46の延在方向(前後方向)に互いに配列ピッチがずれた千鳥状の配置で並んでいる。また、図8の例は、図7の例の変形例であり、この例では、第1連通部48と第2連通部49とが、前記延在方向に互いオーバーラップする領域Arを有している。このように、切欠部からなる第1連通部48と、開口部からなる第2連通部49とを併用する構造によると、隔壁45による二重壁パネル40の補強効果を著しく低下させることなく、隔壁45を介した外壁42から内壁43への音響エネルギーの伝播を抑制することが可能となる。特に、図8の例によれば、同図中に破線矢印で示すように、音響エネルギーの伝播経路が屈曲するため、外壁42から内壁43へ音響エネルギーが伝播し難くなり、従って、遮音性の向上により一層寄与すると言える。
【0075】
なお、連通部48(49)の具体的な形態は、既述の実施形態に限定されるものではなく、仕切壁部45を介した音響エネルギーの伝播がより効果的に抑制されるように適宜選定することができる。
【0076】
(3)実施形態では、隔壁45は、剛体(剛性を有する板部材)で構成されているが、隔壁45は、剛体と粘弾性部材との組合せにより構成されていてもよい。図9は、そのような二重壁パネル40の構造を示しており、図9(a)は、車幅方向に沿った要部断面図で、図9(b)は、図9(a)のIX-IX線に沿った断面図で、各々二重壁パネル40を示している。
【0077】
図9(a)、(b)に示すように、第1隔壁46は、剛体からなる隔壁本体46aと、当該隔壁本体46aと外壁42との間に介設される粘弾性部材46bとで構成されている。
【0078】
隔壁本体46aは、内壁43の下面から外壁42に向かって伸びる隔壁主部461と、その先端から外壁42に沿って車幅方向両側に伸びるフランジ部462とを備えた断面T字型の形状を有している。
【0079】
粘弾性部材46bとしては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム等のゴム材料や、ポリエステル樹脂等のエラストマ樹脂を用いることができる。粘弾性部材46bは、フランジ部462と外壁42との間に介設されている。詳しくは、図9(b)に示すように、粘弾性部材46bは、隔壁本体46aの長手方向(図9(b)では左右方向)に沿った互いに離間する複数の位置に設けられている。これにより、隣接する粘弾性部材46bの間に、前記連通部48が形成されている。なお、図示を省略しているが、第2隔壁47も第1隔壁46と同様に構成されている。
【0080】
図9(a)、(b)に示す二重壁パネル40によれば、外壁42に入射する音響エネルギーのうち、粘弾性部材46bを伝って内壁43へ伝播する音響エネルギー(振動エネルギー)の一部が熱エネルギーへと変換されて消失する。そのため、外壁42から内壁43への音響エネルギーが伝播し難くなり、遮音性の向上に寄与する。
【0081】
なお、図9の構造においては、例えば隔壁本体46aのフランジ部462を省略し、隔壁主部461の末端と外壁42との間に粘弾性部材46bを介在させるようにしてもよい。但し、フランジ部462を備える構造によれば、隔壁本体46aと外壁42との間に介在する粘弾性部材46bの占有面積をより広く確保することができる。そのため、既述のエネルギー変換による音響エネルギーの伝播抑制効果の向上を図る上では有利である。
【0082】
図10は、隔壁45が、剛体と粘弾性部材との組合せにより構成された二重壁パネル40の他の例である。図10(a)は、車幅方向に沿った二重壁パネル40の要部断面図で、図10(b)は、図10(a)のX-X線に沿った断面で、各々二重壁パネル40を示している。
【0083】
図10に示す例も、剛体からなる隔壁本体46aと粘弾性部材46bとで第1隔壁46が構成されているが、次の点で図9の例と構成が相違する。
【0084】
隔壁本体46aは、内壁43から外壁42に向かって伸びる(垂下する)内壁側隔壁部463と、外壁42から内壁43に向かって伸びて(立上り)内壁側隔壁部463に対して車幅方向に対面(対向)する外壁側隔壁部464とを有する。
【0085】
粘弾性部材46bは、内壁側隔壁部463と外壁側隔壁部464との間に介設されている。詳しくは、図10(b)に示すように、隔壁本体46a(内壁側隔壁部463及び外壁側隔壁部464)の長手方向(図10(b)では左右方向)に沿った互いに離間する複数の位置に設けられている。これにより、隣接する粘弾性部材46bの間に、前記連通部48が形成されている。なお、図示を省略しているが、第2隔壁47も第1隔壁46と同様に構成されている。
【0086】
このような図10に示す構造の場合も、図9に示す構造と同様の作用効果を享受することができる。
【0087】
(4)実施形態では、フロアパネル7を二重壁パネル40により構成した例について説明したが、例えばダッシュパネル3、リヤフロア10、ルーフパネル24、図外のフロントドア及びリヤドアを、既述の二重壁パネル40に準じた構造の二重壁パネルにより構成するようにしてもよい。これらの構造によれば、車両の剛性を確保しながら、ロードノイズや走行音など、車外から車室2内への騒音の侵入を効果的に抑制して、高い静粛性を確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0088】
2 車室
3 ダッシュパネル
7 フロアパネル
8 トンネル部
10 リヤフロア
12 サイドシル
24 ルーフパネル
30 本体部
32 側方突出部
40 二重壁パネル
42 外壁
43 内壁
44 周壁
45 隔壁
46 第1隔壁
47 第2隔壁
48 連通部(第1連通部)
49 第2連通部
50 中空層
S エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10