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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20241126BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241126BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20241126BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 303
B41J2/045
B41J2/14 611
B41J2/14 305
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021058293
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154994
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】天野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】松山 徹
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-189872(JP,A)
【文献】特開平06-231998(JP,A)
【文献】特開2003-229323(JP,A)
【文献】特開2021-030700(JP,A)
【文献】特開2019-022944(JP,A)
【文献】特開2015-182341(JP,A)
【文献】特開平04-165611(JP,A)
【文献】特開平03-085715(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0259562(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/015
B41J 2/01
B41J 2/045
B41J 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電位と、前記第1電位よりも低電位の第2電位との間で変位する駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号に基づいて駆動する圧電素子を含み、前記圧電素子の駆動により液体を吐出する吐出部と、
を備え、
前記駆動信号出力回路は、
前記駆動信号の基となる基駆動信号を変調した変調信号を出力する変調回路と、
前記変調信号を増幅した増幅変調信号を出力する増幅回路と、
コンデンサーを含み、前記増幅変調信号を復調した前記駆動信号を出力する復調回路と、
を有し、
前記第1電位は25V以上であって、
前記コンデンサーは、
樹脂薄膜層と金属薄膜層とが積層された積層部を含む表面実装部品であり、
前記金属薄膜層と電気的に接続される真鍮製の第1電極と、
前記第1電極を覆うように設けられた銅製の第2電極と、
前記第2電極を覆うように設けられた錫製の第3電極と、
を有する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
25V以上の第1電位と、前記第1電位よりも低電位の第2電位との間で変位する駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号に基づいて駆動する圧電素子を含み、前記圧電素子の駆動により液体を吐出する吐出部と、
を備え、
前記駆動信号出力回路は、
前記駆動信号の基となる基駆動信号を変調した変調信号を出力する変調回路と、
前記変調信号を増幅した増幅変調信号を出力する増幅回路と、
樹脂薄膜層と金属薄膜層とが積層された積層部を含む表面実装部品であるコンデンサーを含み、前記増幅変調信号を復調した前記駆動信号を出力する復調回路と、
を有し、
周囲温度が20℃の場合に前記駆動信号出力回路が出力する前記駆動信号の前記第2電位に対する、周囲温度が60℃の場合に前記駆動信号出力回路が出力する前記駆動信号の前記第2電位の変動幅は、5%以下である、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
周囲温度が20℃の場合に前記駆動信号出力回路が出力する前記駆動信号の前記第2電位に対する、周囲温度が60℃の場合に前記駆動信号出力回路が出力する前記駆動信号の前記第2電位の変動幅は、5%以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記積層部は、磁性体材料を含まない、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記増幅変調信号の周波数は、1MHz以上8MHz以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記増幅変調信号の周波数は、1MHz以上4MHz以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
媒体が搬送される搬送方向と交差する主走査方向に沿って往復移動するキャリッジを備え、
前記駆動信号出力回路及び前記吐出部は、前記キャリッジに搭載されている、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記変調回路、前記増幅回路、及び前記コンデンサーを含む前記復調回路は、前記駆動信号出力回路が実装される基板の同一実装面に設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体としてのインクを吐出することで、媒体に画像や文書を印刷するインクジェットプリンター等の液体吐出装置には、ピエゾ素子等の圧電素子を用いたものが知られている。圧電素子は、ヘッドユニットにおいて複数のノズルのそれぞれに対応して設けられている。そして、複数の圧電素子のそれぞれが、駆動信号に従って駆動することで、対応するノズルから所定のタイミングで所定量のインクが吐出される。このような圧電素子は、電気的にみればコンデンサーのような容量性負荷であり、駆動させるためには、圧電素子に十分な電流を供給する必要がある。特に、多数のノズルを有するインクジェットプリンター等の液体吐出装置の場合、多数のノズルに対応する多数の圧電素子を有するが故に、圧電素子を動作させるために必要な電流量が非常に大きくなる。そのため、液体吐出装置において、圧電素子を駆動する駆動信号を出力する駆動信号出力回路は、圧電素子に十分な電流を含む駆動信号を出力する必要があり、例えば、増幅回路等を含んで構成されている。
【0003】
特許文献1には、増幅回路を含む駆動回路(駆動信号出力回路)として、消費電力の低減が可能なD級増幅回路を含む駆動回路を備えた液体吐出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-108739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の液体吐出装置に対する画像形成速度の高速化、吐出精度の向上、及び液体吐出装置の小型化の要求の高まりをうけ、特許文献1に記載の液体吐出装置では十分でなく、さらなる改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体吐出装置の一態様は、
第1電位と、前記第1電位よりも低電位の第2電位との間で変位する駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号に基づいて駆動する圧電素子を含み、前記圧電素子の駆動により液体を吐出する吐出部と、
を備え、
前記駆動信号出力回路は、
前記駆動信号の基となる基駆動信号を変調した変調信号を出力する変調回路と、
前記変調信号を増幅した増幅変調信号を出力する増幅回路と、
コンデンサーを含み、前記増幅変調信号を復調した前記駆動信号を出力する復調回路と、
を有し、
前記第1電位は25V以上であって、
前記コンデンサーは、樹脂薄膜層と金属薄膜層とが積層された積層部を含む表面実装部品である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】液体吐出装置の内部の概略構成を示す図である。
図2】液体吐出装置の機能構成を示す図である。
図3】吐出部の概略構成を示す図である。
図4】駆動信号COMA,COMBの波形の一例を示す図である。
図5】駆動信号VOUTの波形の一例を示す図である。
図6】選択制御回路及び選択回路の構成を示す図である。
図7】デコーダーにおけるデコード内容を示す図である。
図8】選択回路の構成を示す図である。
図9】選択制御回路及び選択回路の動作を説明するための図である。
図10】駆動信号出力回路の電気的な構成を示す図である。
図11】コンデンサーの構造を示す断面図である。
図12図11に示すα部の拡大図である。
図13】コンデンサーの直流バイアス特性の一例を示す図である。
図14】コンデンサーの温度特性の一例を示す図である。
図15】コンデンサーにモーター駆動による振動を加えた場合のコンデンサーの両端電圧を示す図である。
図16】従前のコンデンサーにモーター駆動による振動を加えた場合のコンデンサーの両端電圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.液体吐出装置の構成
図1は、本実施形態の液体吐出装置1の内部の概略構成を示す図である。液体吐出装置1は、外部に設けられたホストコンピューターから供給された画像データに応じて液体の一例としてのインクを吐出させることで、紙などの媒体Pにドットを形成し、これにより、供給される画像データに応じた画像を印刷するインクジェットプリンターである。なお、図1では、筐体やカバー等の液体吐出装置1の構成の一部の図示を省略している。
【0010】
図1に示されるように、液体吐出装置1は、ヘッドユニット2を搭載したキャリッジ24を、主走査方向に移動させる移動機構3を備える。移動機構3は、ヘッドユニット2の駆動源となるキャリッジモーター31と、両端が固定されたキャリッジガイド軸32と、キャリッジガイド軸32とほぼ平行に延在し、キャリッジモーター31により駆動されるタイミングベルト33と、を有する。また、移動機構3は、ヘッドユニット2の主走査方向における位置を検出するためのリニアエンコーダー90を備える。
【0011】
ヘッドユニット2はキャリッジ24に搭載されている。また、キャリッジ24には、所定数のインクカートリッジ22を載置可能に構成されている。そして、キャリッジ24は、キャリッジガイド軸32に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト33の一部に固定されている。したがって、キャリッジモーター31によりタイミングベルト33を正逆走行させることで、キャリッジ24は、キャリッジガイド軸32に案内されて主走査方向に沿って往復移動する。すなわち、キャリッジモーター31は、キャリッジ24を主走査方向に移動させる。また、キャリッジ24の媒体Pと対向する部分にはプリントヘッド20が取り付けられている。プリントヘッド20は、後述するように、多数のノズルを有し、各ノズルから所定のタイミングで所定量のインクを吐出する。以上のように動作するヘッドユニット2には、フレキシブルフラットケーブル等のケーブル190を介して各種制御信号が供給される。
【0012】
また、液体吐出装置1は、主走査方向と交差する副走査方向に沿って媒体Pを搬送させる搬送機構4を備える。搬送機構4は、媒体Pを支持するプラテン43と、駆動源である搬送モーター41と、搬送モーター41により回転することで媒体Pを副走査方向に搬送する搬送ローラー42と、を備える。そして、媒体Pが、プラテン43によって支持された状態で、搬送機構4によって搬送されるタイミングに伴って、プリントヘッド20から媒体Pにインクが吐出されることで、媒体Pの表面に所望の画像が形成される。ここで、媒体Pが搬送される副走査方向が、媒体Pが搬送される搬送方向に相当する。
【0013】
また、キャリッジ24の移動範囲内における端部領域には、キャリッジ24の移動の基点となるホームポジションが設定されている。ホームポジションには、プリントヘッド20のノズル形成面を封止するキャッピング部材70と、当該ノズル形成面を払拭するためのワイパー部材71と、が配置されている。液体吐出装置1は、このホームポジションから反対側の端部へ向けてキャリッジ24が移動する往動時、及び反対側の端部からホームポジション側にキャリッジ24が移動する復動時の双方向で、媒体Pの表面に画像を形成する。
【0014】
プラテン43の主走査方向側の端部であって、キャリッジ24が移動するホームポジションから反対側の端部には、フラッシング動作の際にプリントヘッド20から吐出されたインクを捕集するフラッシングボックス72が配置されている。フラッシング動作とは、ノズル付近のインクの増粘によりノズルが目詰、ノズル内への気泡混入等により、適正な量のインクが吐出されなくなってしまうおそれを防止するために、画像データとは関係なく、強制的に各ノズルからインクを吐出させる動作である。なお、フラッシングボックス72は、プラテン43の主走査方向の両側の端部に設けられていてもよい。
【0015】
以上のように、本実施形態における液体吐出装置1は、搬送機構4が副走査方向に沿って媒体Pを搬送させるとともに、ヘッドユニット2を搭載したキャリッジ24が、副走査方向と交差する主走査方向に沿って往復移動する。そして、媒体Pの搬送とキャリッジ24の往復移動とに同期して、キャリッジ24に搭載されたヘッドユニット2に含まれるプリントヘッド20が、媒体Pに対してインクを吐出することで、媒体Pの所望の位置にインクを着弾させることができ、その結果、媒体Pに所望の画像が形成される。
【0016】
2.液体吐出装置の電気的構成
図2は、液体吐出装置1の機能構成を示す図である。図2に示すように、液体吐出装置1は、制御ユニット10とヘッドユニット2とを有する。そして、制御ユニット10とヘッドユニット2とは、ケーブル190を介して電気的に接続されている。
【0017】
制御ユニット10は、制御回路100、キャリッジモータードライバー35、搬送モータードライバー45、及び電圧出力回路110を有する。制御回路100は、ホストコンピューターから供給される画像データに応じた各種制御信号を生成し、対応する構成に出力する。
【0018】
具体的には、制御回路100は、リニアエンコーダー90の検出信号に基づいてヘッドユニット2の現在の走査位置を把握する。そして、制御回路100は、ヘッドユニット2の現在の走査位置に応じた制御信号CTR1,CTR2を生成する。制御信号CTR1は、キャリッジモータードライバー35に供給される。キャリッジモータードライバー35は、入力される制御信号CTR1に従ってキャリッジモーター31を駆動する。また、制御信号CTR2は、搬送モータードライバー45に供給される。搬送モータードライバー45は、入力される制御信号CTR2に従って搬送モーター41を駆動する。これにより、キャリッジ24の主走査方向への往復移動と、媒体Pの副走査方向への搬送と、が制御
される。
【0019】
また、制御回路100は、外部に設けられたホストコンピューターから供給された画像データ、及びリニアエンコーダー90が出力する検出信号に基づいてヘッドユニット2の現在の走査位置に応じたクロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び基駆動信号dA,dBを生成し、ヘッドユニット2に出力する。
【0020】
さらに、制御回路100は、メンテナンスユニット80に、吐出部600におけるインクの吐出状態を正常に回復させるためのメンテナンス処理を実行させる。メンテナンスユニット80は、クリーニング機構81及びワイピング機構82を有する。クリーニング機構81は、メンテナンス処理として、吐出部600の内部に貯留される増粘したインクや気泡等を不図示のチューブポンプにより吸引するポンピング処理を行う。また、ワイピング機構82は、メンテナンス処理として、吐出部600が有するノズルの近傍に付着した紙粉等の異物をワイパー部材71により拭き取るワイピング処理を行う。なお、制御回路100は、吐出部600におけるインクの吐出状態を正常に回復させるためのメンテナンス処理として、上述したフラッシング動作を実行させてもよい。
【0021】
電圧出力回路110は、例えば42Vの直流電圧の電圧VHVを生成し、ヘッドユニット2に出力する。この電圧VHVは、ヘッドユニット2が有する各種構成の電源電圧等として用いられる。また、電圧出力回路110で生成された電圧VHVは、制御ユニット10の各種構成の電源電圧として用いられてもよい。さらに、電圧出力回路110は、電圧VHVとは電圧値の異なる複数の直流電圧信号を生成し、制御ユニット10及びヘッドユニット2に含まれる各構成に供給してもよい。
【0022】
ヘッドユニット2は、駆動回路50及びプリントヘッド20を有する。すなわち、ヘッドユニット2を搭載するキャリッジ24には、駆動回路50も搭載されている。
【0023】
駆動回路50は、駆動信号出力回路51a,51bを有する。駆動信号出力回路51aには、デジタルの基駆動信号dAと電圧VHVとが入力される。駆動信号出力回路51aは、入力される基駆動信号dAをデジタル/アナログ変換し、変換されたアナログ信号を電圧VHVに応じた電圧値にD級増幅することで駆動信号COMAを生成する。そして、駆動信号出力回路51aは、生成した駆動信号COMAをプリントヘッド20に出力する。同様に、駆動信号出力回路51bには、デジタルの基駆動信号dBと電圧VHVとが入力される。駆動信号出力回路51bは、入力される基駆動信号dBをデジタル/アナログ変換し、変換されたアナログ信号を電圧VHVに応じた電圧値にD級増幅することで駆動信号COMBを生成する。そして、駆動信号出力回路51bは、生成した駆動信号COMBをプリントヘッド20に出力する。
【0024】
すなわち、基駆動信号dAは駆動信号COMAの波形を規定する信号であり、基駆動信号dBは駆動信号COMBの波形を規定する信号である。そのため、基駆動信号dA,dBは、駆動信号COMA,COMBの波形を規定することが可能な信号であればよく、例えば、アナログの信号であってもよい。なお、駆動信号出力回路51a,51bの詳細については後述する。
【0025】
また、駆動回路50は、電圧値が5.5V、6V等で一定の基準電圧信号VBSを生成し、プリントヘッド20に供給する。ここで、基準電圧信号VBSは、圧電素子60の駆動の基準となる電位を示す信号であって、例えば、グラウンド電位であってもよい。
【0026】
プリントヘッド20は、選択制御回路210と、複数の選択回路230と、複数の選択回路230のそれぞれに対応する複数の吐出部600と、を含む。選択制御回路210は
、制御回路100から供給されるクロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHに基づいて、駆動信号COMA,COMBの波形を選択又は非選択とするための選択信号を生成し、複数の吐出部600に対応する複数の選択回路230のそれぞれに出力する。
【0027】
各選択回路230には、駆動信号COMA,COMBと、選択制御回路210が出力する選択信号が入力される。そして、選択回路230は、入力される選択信号に基づいて、駆動信号COMA,COMBの波形を選択又は非選択とすることで、駆動信号VOUTを生成し、対応する吐出部600に出力する。
【0028】
各吐出部600は、圧電素子60を含む。圧電素子60の一端には、対応する選択回路230から出力された駆動信号VOUTが供給され、他端には、基準電圧信号VBSが供給される。そして、圧電素子60は、一端に供給される駆動信号VOUTと、他端に供給される基準電圧信号VBSとの電位差に応じて駆動する。これにより、圧電素子60の駆動に応じた量のインクが、吐出部600から吐出される。
【0029】
以上のように、本実施形態における液体吐出装置1は、駆動信号COMA,COMBを出力する駆動信号出力回路51a,51bと、駆動信号COMA,COMBに基づく駆動信号VOUTに基づいて駆動する圧電素子60を含み、圧電素子60の駆動によりインクを吐出する吐出部600と、を備え、駆動信号出力回路51a,51bと吐出部600とを含むヘッドユニット2は、キャリッジ24に搭載されている。
【0030】
3.吐出部の構成
次に、吐出部600の構成について説明する。図3は、プリントヘッド20が有する複数の吐出部600の内の1つの吐出部600の概略構成を示す図である。図3に示すように、吐出部600は、圧電素子60、振動板621、キャビティー631、及びノズル651を含む。
【0031】
キャビティー631には、リザーバー641から供給されるインクが充填している。また、リザーバー641には、インクカートリッジ22から不図示のインクチューブ、及び供給口661を経由してインクが導入される。すなわち、キャビティー631には、対応するインクカートリッジ22に貯留されているインクが充填している。
【0032】
振動板621は、図3において上面に設けられた圧電素子60の駆動によって変位する。そして、振動板621の変位に伴って、インクが充填されるキャビティー631の内部容積が拡大、縮小する。すなわち、振動板621は、キャビティー631の内部容積を変化させるダイヤフラムとして機能する。
【0033】
ノズル651は、ノズルプレート632に設けられるとともに、キャビティー631に連通する開孔部である。そして、キャビティー631の内部容積が変化することで、内部容積の変化に応じた量のインクがノズル651から吐出される。
【0034】
圧電素子60は、圧電体601を一対の電極611,612で挟んだ構造である。このような構造の圧電体601は、電極611に供給される電圧と電極612に供給される電圧との電位差に応じて、中央部分が上下方向に撓むように駆動する。具体的には、圧電素子60の電極611には、駆動信号VOUTが供給される。また、圧電素子60の電極612には、基準電圧信号VBSが供給される。そして、圧電素子60は、駆動信号VOUTと基準電圧信号VBSとの電位差が小さくなると上方向に撓み、駆動信号VOUTと基準電圧信号VBSとの電位差が大きくなると下方向に撓むように駆動する。
【0035】
以上のように構成された吐出部600では、圧電素子60が上方向に撓むように駆動することで振動板621が変位し、キャビティー631の内部容積が拡大する。その結果、インクがリザーバー641からキャビティー631に引き込まれる。一方、圧電素子60が下方向に撓むように駆動することで、振動板621が変位し、キャビティー631の内部容積が縮小する。その結果、縮小の程度に応じた量のインクがノズル651から吐出される。すなわち、プリントヘッド20が有する吐出部600は、駆動信号VOUTに基づいて駆動する圧電素子60の駆動によりインクを吐出する。
【0036】
ここで、圧電素子60は、図3に示す構造に限られず、吐出部600からインクが吐出できる構造であればよい。すなわち、圧電素子60は、上述した屈曲振動の構成に限られず、縦振動の構成であってもよい。
【0037】
4.プリントヘッドの構成及び動作
次にプリントヘッド20の構成及び動作について説明する。前述の通り、プリントヘッド20は、駆動回路50から出力された駆動信号COMA,COMBを、クロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHに基づいて選択又は非選択とすることで、駆動信号VOUTを生成し、対応する吐出部600に供給する。そこで、プリントヘッド20の構成及び動作を説明するにあたり、まず、駆動回路50から入力される駆動信号COMA,COMBの波形の一例、及び吐出部600へ出力する駆動信号VOUTの波形の一例について説明する。
【0038】
図4は、駆動信号COMA,COMBの波形の一例を示す図である。図4に示すように、駆動信号COMAは、ラッチ信号LATが立ち上がってからチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間T1に配置された台形波形Adp1と、チェンジ信号CHが立ち上がってからラッチ信号LATが立ち上がるまでの期間T2に配置された台形波形Adp2と、を連続させた波形の信号である。
【0039】
台形波形Adp1は、電圧値が電位Vc、電位Vad1、電位Vau1、電位Vcの順に変化する。具体的には、期間T1において、台形波形Adp1の電圧値は、電位Vcから開始し、その後、電位Vcよりも低電位の電位Vad1となり、電位Vad1の後、電位Vcよりも高電位の電位Vau1となる。その後、台形波形Adp1の電圧値は、電位Vcとなる。このような台形波形Adp1が吐出部600に供給された場合、電圧値が電位Vad1となる期間において、圧電素子60が上方向に撓むように駆動する。これにより、キャビティー631の内部にインクが供給される。そして、電圧値が電位Vau1となる期間において、圧電素子60が下方向に撓むように駆動する。これにより、キャビティー631の内部に充填されたインクがノズル651から吐出される。
【0040】
台形波形Adp2は、電圧値が電位Vc、電位Vad2、電位Vau2、電位Vcの順に変化する。具体的には、期間T1において、台形波形Adp2の電圧値は、電位Vcから開始し、その後、電位Vcよりも低電位の電位Vad2となり、電位Vad2の後、電位Vcよりも高電位の電位Vau2となる。その後、台形波形Adp2の電圧値は、電位Vcとなる。このような台形波形Adp2が吐出部600に供給された場合、電圧値が電位Vad2となる期間において、圧電素子60が上方向に撓むように駆動する。これにより、キャビティー631の内部にインクが供給される。そして、電圧値が電位Vau2となる期間において、圧電素子60が下方向に撓むように駆動する。これにより、キャビティー631の内部に充填されたインクがノズル651から吐出される。
【0041】
以上のような駆動信号COMAにおいて、図4に示すように、台形波形Adp1に含まれる電位Vau1は、台形波形Adp2に含まれる電位Vau2よりも低電位であり、台形波形Adp1に含まれる電位Vad1は、台形波形Adp2に含まれる電位Vad2よ
りも高電位である。すなわち、台形波形Adp2に含まれる電位Vau2は、駆動信号COMAにおける最大電圧値であって、本実施形態において、台形波形Adp2に含まれる電位Vau2は25V以上である。したがって、台形波形Adp1が吐出部600に供給された場合に、ノズル651から吐出されるインクの量は、台形波形Adp1が吐出部600に供給された場合に、ノズル651から吐出されるインクの量よりも少ない。そこで、以下の説明では、台形波形Adp1が吐出部600に供給された場合に、対応するノズル651から吐出されるインクの量を小程度の量と称し、台形波形Adp2が吐出部600に供給された場合に、対応するノズル651から吐出されるインクの量を、上述した小程度の量よりも多い中程度の量と称する。
【0042】
また、図4に示すように、駆動信号COMBは、期間T1に配置された台形波形Bdp1と、期間T2に配置された台形波形Bdp2とを連続させた波形を含む。
【0043】
台形波形Bdp1は、電圧値が電位Vc、電位Vbd1、電位Vcの順に変化する。具体的には、期間T1において、台形波形Bdp1の電圧値は、電位Vcから開始し、その後、電位Vcよりも低電位の電位Vbd1となり、電位Vbd1の後、電位Vcとなる。このような台形波形Bdp1が吐出部600に供給された場合、電圧値が電位Vad1となる期間において、圧電素子60は、ノズル651からインクが吐出されない程度に駆動する。以下の説明において、ノズル651からインクが吐出されない程度に圧電素子60を駆動することを、「微振動」と称する場合がある。
【0044】
台形波形Bdp2は、電圧値が電位Vc、電位Vbd2、電位Vbu2、電位Vcの順に変化する波形である。具体的には、期間T2において、台形波形Bdp2の電圧値は、電位Vcから開始し、その後、電位Vcよりも低電位の電位Vbd2となり、電位Vbd2の後、電位Vcよりも高電位の電位Vbu2となる。その後、台形波形Bdp2の電圧値は、電位Vcとなる。このような台形波形Bdp2が吐出部600に供給された場合、電圧値が電位Vbd2となる期間において、圧電素子60が上方向に撓むように駆動する。これにより、キャビティー631の内部にインクが供給される。そして、電圧値が電位Vbu2となる期間において、圧電素子60が下方向に撓むように駆動する。これにより、キャビティー631の内部に充填されたインクがノズル651から吐出される。
【0045】
以上のような駆動信号COMBにおいて、台形波形Bdp2に含まれる電位Vbu2は、台形波形Adp1に含まれる電位Vau1と同等の電位であり、台形波形Bdp2に含まれる電位Vbd2は、台形波形Adp1に含まれる電位Vad1と同等の電位である。したがって、台形波形Bdp2が吐出部600に供給された場合、台形波形Adp1が吐出部600に供給された場合と同様に、対応するノズル651から小程度の量のインクが吐出される。
【0046】
ここで、図4では、台形波形Adp1と台形波形Bdp2とが同様の波形であるとして図示しているが、台形波形Adp1と台形波形Bdp2とは異なる波形であってもよい。また、台形波形Adp1が吐出部600に供給された場合と、台形波形Bdp2が吐出部600に供給された場合とでは、共に対応するノズル651から小程度の量のインクが吐出されるとして説明を行うが、台形波形Adp1が吐出部600に供給された場合と、台形波形Bdp2が吐出部600に供給された場合とで、異なる量のインクが吐出されてもよい。すなわち、駆動信号COMA,COMBの波形は、図4に示す波形に限られるものではなく、プリントヘッド20が取り付けられるキャリッジ24の移動速度、ノズル651から吐出されるインクの性質、及び媒体Pの材質等に応じて、様々な波形が組み合わされてもよい。
【0047】
図5は、駆動信号VOUTの波形の一例を示す図である。図5には、駆動信号VOUT
の波形と、媒体Pに形成されるドットの大きさが「大ドットLD」、「中ドットMD」、「小ドットSD」及び「非記録ND」のそれぞれの場合とを対比して示している。
【0048】
図5に示すように、媒体Pに大ドットLDが形成される場合の駆動信号VOUTは、周期Taにおいて、期間T1に配置された台形波形Adp1と、期間T2に配置された台形波形Adp2とを連続させた波形となっている。この駆動信号VOUTが吐出部600に供給された場合、周期Taにおいて、対応するノズル651から、小程度の量のインクと中程度の量のインクとが吐出される。その結果、媒体Pには、それぞれのインクが着弾し合体することで大ドットLDが形成される。
【0049】
媒体Pに中ドットMDが形成される場合の駆動信号VOUTは、周期Taにおいて、期間T1に配置された台形波形Adp1と、期間T2に配置された台形波形Bdp2とを連続させた波形となっている。この駆動信号VOUTが吐出部600に供給された場合、周期Taにおいて、対応するノズル651から、小程度の量のインクが2回吐出される。その結果、媒体Pには、それぞれのインクが着弾し合体することで中ドットMDが形成される。
【0050】
媒体Pに小ドットSDが形成される場合の駆動信号VOUTは、周期Taにおいて、期間T1に配置された台形波形Adp1と、期間T2に配置された電圧値が電位Vcで一定の波形とを連続させた波形となっている。この駆動信号VOUTが吐出部600に供給された場合、周期Taにおいて、対応するノズル651から、小程度の量のインクが吐出される。したがって、媒体Pには、このインクが着弾して小ドットSDが形成される。
【0051】
媒体Pにドットを形成しない非記録NDに対応する駆動信号VOUTは、周期Taにおいて、期間T1に配置された台形波形Bdp1と、期間T2に配置された電圧値が電位Vcで一定の波形とを連続させた波形となっている。この駆動信号VOUTが吐出部600に供給された場合、周期Taにおいて、対応するノズル651の開孔部付近のインクが微振動するのみで、インクは吐出されない。したがって、媒体Pには、インクが着弾せずドットが形成されない。
【0052】
ここで、吐出部600に供給される電圧値が電位Vcで一定の波形とは、駆動信号VOUTとして台形波形Adp1,Adp2,Bdp1,Bdp2のいずれも選択されていない場合において、直前に吐出部600に供給されている電位Vcの電圧信号が、容量性負荷である圧電素子60に保持されることで生じる波形である。すなわち、駆動信号VOUTとして台形波形Adp1,Adp2,Bdp1,Bdp2のいずれも選択されていない場合に、吐出部600には、電圧値が電位Vcで一定の駆動信号VOUTが供給されている。
【0053】
以上のような駆動信号VOUTは、選択制御回路210及び選択回路230の動作により駆動信号COMA,COMBの波形が選択又は非選択されることにより生成される。図6は、選択制御回路210及び選択回路230の構成を示す図である。図6に示すように、選択制御回路210には、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKが入力される。選択制御回路210には、シフトレジスター(S/R)212とラッチ回路214とデコーダー216との組が、m個の吐出部600の各々に対応して設けられている。すなわち、選択制御回路210は、m個の吐出部600と同数のシフトレジスター212とラッチ回路214とデコーダー216との組を含む。
【0054】
印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期した信号であって、m個の吐出部600の各々に対して、大ドットLD、中ドットMD、小ドットSD,及び非記録NDのいずれかを選択するための2ビットの印刷データ[SIH,SIL]を含む、合計2mビッ
トの信号である。入力される印刷データ信号SIは、m個の吐出部600に対応して、印刷データ信号SIに含まれる2ビット分の印刷データ[SIH,SIL]毎に、シフトレジスター212に保持される。具体的には、選択制御回路210は、m個の吐出部600に対応したm段のシフトレジスター212が互いに縦続接続されるとともに、シリアルで入力された印刷データ信号SIが、クロック信号SCKに従って順次後段に転送される。なお、図6では、m個のシフトレジスター212を区別するために、印刷データ信号SIが入力される上流側から順番に1段、2段、…、m段と表記している。
【0055】
m個のラッチ回路214の各々は、m個のシフトレジスター212の各々で保持された2ビットの印刷データ[SIH,SIL]をラッチ信号LATの立ち上がりでラッチする。
【0056】
図7は、デコーダー216におけるデコード内容を示す図である。デコーダー216は、ラッチ回路214によってラッチされた2ビットの印刷データ[SIH,SIL]に従い選択信号S1,S2を出力する。例えば、デコーダー216は、2ビットの印刷データ[SIH,SIL]が[1,0]の場合、選択信号S1の論理レベルを期間T1,T2においてH,Lレベルとして出力し、選択信号S2の論理レベルを期間T1,T2においてL,Hレベルとして選択回路230に出力する。
【0057】
選択回路230は、吐出部600のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、プリントヘッド20が有する選択回路230の数は、吐出部600の総数と同じm個である。図8は、吐出部600の1個分に対応する選択回路230の構成を示す図である。図8に示すように、選択回路230は、NOT回路であるインバーター232a,232bと、トランスファーゲート234a,234bと、を有する。
【0058】
選択信号S1は、トランスファーゲート234aにおいて丸印が付されていない正制御端に入力される一方で、インバーター232aによって論理が反転され、トランスファーゲート234aにおいて丸印が付された負制御端にも入力される。また、トランスファーゲート234aの入力端には、駆動信号COMAが供給される。そして、トランスファーゲート234aは、選択信号S1がHレベルの場合、入力端と出力端との間が導通となり、選択信号S1がLレベルの場合、入力端と出力端との間が非導通となる。選択信号S2は、トランスファーゲート234bにおいて丸印が付されていない正制御端に入力される一方で、インバーター232bによって論理が反転され、トランスファーゲート234bにおいて丸印が付された負制御端にも入力される。また、トランスファーゲート234bの入力端には、駆動信号COMBが供給される。そして、トランスファーゲート234bは、選択信号S2がHレベルの場合、入力端と出力端との間が導通となり、選択信号S2がLレベルの場合、入力端と出力端との間が非導通となる。そして、トランスファーゲート234a,234bの出力端は、共通に接続されている。このトランスファーゲート234a,234bの出力端に出力される信号が駆動信号VOUTに相当する。
【0059】
以上のように、選択回路230は、入力される選択信号S1,S2に基づいて、トランスファーゲート234a,234bを制御することで、駆動信号COMA,COMBの波形を選択し、駆動信号VOUTとして出力する。
【0060】
ここで、図9を用いて、選択制御回路210及び選択回路230の動作について説明する。図9は、選択制御回路210及び選択回路230の動作を説明するための図である。選択制御回路210に入力された印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期して吐出部600に対応するシフトレジスター212において順次転送される。そして、クロック信号SCKの入力が停止すると、各シフトレジスター212には、吐出部600の各々に対応した2ビットの印刷データ[SIH,SIL]が保持される。なお、本実施形態
では、印刷データ信号SIは、シフトレジスター212のm段、…、2段、1段の吐出部600に対応した順に入力される。
【0061】
そして、ラッチ信号LATが立ち上がると、ラッチ回路214のそれぞれは、シフトレジスター212に保持されている2ビットの印刷データ[SIH,SIL]を一斉にラッチする。なお、図9に示すLT1、LT2、…、LTmは、1段、2段、…、m段のシフトレジスター212に対応するラッチ回路214によってラッチされた2ビットの印刷データ[SIH,SIL]を示す。
【0062】
デコーダー216は、ラッチされた2ビットの印刷データ[SIH,SIL]で規定されるドットのサイズに応じて、期間T1,T2のそれぞれにおいて、選択信号S1,S2の論理レベルを図7に示す内容で出力する。
【0063】
具体的には、デコーダー216は、印刷データ[SIH,SIL]が[1,1]の場合、選択信号S1を期間T1,T2においてH,Hレベルとし、選択信号S2を期間T1,T2においてL,Lレベルとする。この場合、選択回路230は、期間T1において台形波形Adp1を選択し、期間T2において台形波形Adp2を選択する。その結果、選択回路230は、図5に示す大ドットLDに対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0064】
また、デコーダー216は、印刷データ[SIH,SIL]が[1,0]の場合、選択信号S1を期間T1,T2においてH,Lレベルとし、選択信号S2を期間T1,T2においてL,Hレベルとする。この場合、選択回路230は、期間T1において台形波形Adp1を選択し、期間T2において台形波形Bdp2を選択する。その結果、選択回路230は、図5に示す中ドットMDに対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0065】
また、デコーダー216は、印刷データ[SIH,SIL]が[0,1]の場合、選択信号S1を期間T1,T2においてH,Lレベルとし、選択信号S2を期間T1,T2においてL,Lレベルとする。この場合、選択回路230は、期間T1において台形波形Adp1を選択し、期間T2において台形波形Adp2,Bdp2のいずれも選択しない。その結果、選択回路230は、図5に示す小ドットSDに対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0066】
また、デコーダー216は、印刷データ[SIH,SIL]が[0,0]の場合、選択信号S1を期間T1,T2においてL,Lレベルとし、選択信号S2を期間T1,T2においてH,Lレベルとする。この場合、選択回路230は、期間T1において台形波形Bdp1を選択し、期間T2において台形波形Adp2,Bdp2のいずれも選択しない。その結果、選択回路230は、図5に示す非記録NDに対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0067】
以上のように、選択制御回路210及び選択回路230は、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKに基づいて、駆動信号COMA,COMBの波形を選択し、駆動信号VOUTとして吐出部600に出力する。
【0068】
ここで、駆動信号出力回路51a,51bが出力する駆動信号COMA,COMBと、駆動信号COMA,COMBに含まれる台形波形Adp1,Adp2,Bdp1,Bdp2を選択、又は非選択とすることで生成される駆動信号VOUTとが駆動信号の一例である。そして、駆動信号VOUTにおいて、最も高電位である駆動信号COMAの台形波形Adp2に含まれる電位Vau2が第1電位の一例であり、最も低電位である駆動信号COMAの台形波形Adp2に含まれる電位Vad2が第2電位の一例である。すなわち、吐出部600に供給される駆動信号VOUTは、電位Vau2と電位Vad2との間で変
位する。
【0069】
5.駆動信号出力回路の構成
次に、駆動信号COMA,COMBを出力する駆動信号出力回路51a,51bの構成、及び動作について説明する。図10は、駆動信号出力回路51a,51bの電気的な構成を示す図である。ここで、駆動信号出力回路51aと駆動信号出力回路51bとは入力される信号、及び出力する信号のみが異なり、同様の構成である。したがって、以下の説明では、駆動信号出力回路51a,51bを区別することなく単に駆動信号出力回路51と称し、その構成及び動作について説明を行う。また、この場合において、駆動信号出力回路51が出力する信号を単に駆動信号COMと称し、駆動信号COMの基となる信号を基駆動信号doと称する。
【0070】
図10に示すように、駆動信号出力回路51は、変調回路510を含む集積回路500と、増幅回路550と、復調回路560と、帰還回路570,572とを有する。すなわち、駆動信号出力回路51は、駆動信号COMの基となる基駆動信号doを変調した変調信号Msを出力する変調回路510と、変調信号Msを増幅した増幅変調信号AMsを出力する増幅回路550と、コンデンサーC1とインダクターL1とを含み、増幅変調信号AMsを復調した駆動信号COMを出力する復調回路560と、を有する。
【0071】
集積回路500は、端子In、端子Bst、端子Hdr、端子Sw、端子Gvd、端子Ldr、端子Gnd、及び端子Vbsを含む複数の端子を有する。集積回路500は、当該複数の端子を介して外部に設けられた不図示の基板と電気的に接続される。図10に示すように集積回路500は、DAC(Digital to Analog Converter)511、変調回路510、ゲートドライブ回路520、基準電圧生成回路530、及び電源回路590を含む。
【0072】
電源回路590は、第1電圧信号DAC_HVと第2電圧信号DAC_LVとを生成し、DAC511に供給する。DAC511は、入力される駆動信号COMの波形を規定するデジタルの基駆動信号doを、第1電圧信号DAC_HVと第2電圧信号DAC_LVとの間の電圧値のアナログ信号である基駆動信号aoに変換し、変調回路510に出力する。ここで、基駆動信号aoの電圧振幅の最大値は、第1電圧信号DAC_HVで規定され、最小値は、第2電圧信号DAC_LVで規定される。すなわち、第1電圧信号DAC_HVは、DAC511における高電圧側の基準電圧であり、第2電圧信号DAC_LVは、DAC511における低電圧側の基準電圧となる。そして、アナログの基駆動信号aoが増幅された信号が、駆動信号COMとなる。つまり、基駆動信号aoは、駆動信号COMの増幅前の目標となる信号に相当する。換言すれば、基駆動信号ao、及び基駆動信号aoの基となるデジタル信号の基駆動信号doは、駆動信号COMの基となる信号である。
【0073】
変調回路510は、基駆動信号aoを変調した変調信号Msを生成し、ゲートドライブ回路520に出力する。変調回路510は、加算器512,513、コンパレーター514、インバーター515、積分減衰器516、及び減衰器517を含む。
【0074】
積分減衰器516は、端子Vfbを介して入力される駆動信号COMを減衰するとともに積分し加算器512の-側の入力端に供給する。また、加算器512の+側の入力端には基駆動信号aoが入力される。そして、加算器512は、+側の入力端に入力された電圧から-側の入力端に入力された電圧を差し引き積分した電圧を加算器513の+側の入力端に供給する。ここで、基駆動信号aoの電圧振幅の最大値は、前述の通り2V程度であるのに対して、駆動信号COMの電圧の最大値は、25V以上であって40Vを超える場合もある。このため、積分減衰器516は、偏差を求めるにあたり両電圧の振幅範囲を
合わせるために、端子Vfbを介して入力された駆動信号COMの電圧を減衰させる。
【0075】
そして、減衰器517は、端子Ifbを介して入力した駆動信号COMの高周波成分を減衰した電圧を、加算器513の-側の入力端に供給する。また、加算器513の+側の入力端には、加算器512から出力された電圧が入力される。そして、加算器513は、+側の入力端に入力された電圧から、-側の入力端に入力された電圧を減算した電圧信号Osを、コンパレーター514に出力する。
【0076】
この加算器513から出力される電圧信号Osは、基駆動信号aoの電圧から端子Vfbに供給された信号の電圧を差し引き、さらに、端子Ifbに供給された信号の電圧を差し引いた電圧である。このため、加算器513から出力される電圧信号Osの電圧は、目標である基駆動信号aoの電圧から、駆動信号COMの減衰電圧を差し引いた偏差を、駆動信号COMの高周波成分で補正した信号となる。
【0077】
コンパレーター514は、加算器513から出力される電圧信号Osをパルス変調した変調信号Msを出力する。具体的には、コンパレーター514は、加算器513から出力される電圧信号Osの電圧値が上昇している時であって、所定の閾値Vth1以上になった場合にHレベルとなり、電圧信号Osの電圧値が下降している時であって、所定の閾値Vth2を下回った場合にLレベルとなる変調信号Msを出力する。この閾値Vth1,Vth2は、閾値Vth1>閾値Vth2という関係に設定されている。ここで、変調信号Msは、基駆動信号do,aoに合わせて周波数やデューティー比が変化する。そのため、減衰器517が感度に相当する変調利得を調整することで、変調信号Msの周波数やデューティー比の変化量を調整することができる。
【0078】
コンパレーター514から出力された変調信号Msは、ゲートドライブ回路520に含まれるゲートドライバー521に供給される。また、変調信号Msは、インバーター515により論理レベルが反転された後、ゲートドライブ回路520に含まれるゲートドライバー522にも供給される。すなわち、ゲートドライバー521とゲートドライバー522に供給される信号の論理レベルは、互いに排他的な関係にある。
【0079】
ここで、ゲートドライバー521及びゲートドライバー522に供給される信号の論理レベルは、同時にHレベルとはならないようにタイミングが制御されてもよい。すなわち、互いに排他的な関係にあるとは、厳密にいえば、ゲートドライバー521及びゲートドライバー522に供給される信号の論理レベルが同時にHレベルになることがないことを意味し、詳細には、後述する増幅回路550に含まれるトランジスターM1とトランジスターM2とが同時にオンすることがないことを意味する。
【0080】
ゲートドライブ回路520は、ゲートドライバー521と、ゲートドライバー522とを含む。ゲートドライバー521は、コンパレーター514から出力される変調信号Msをレベルシフトして、端子Hdrから増幅制御信号Hgdとして出力する。ゲートドライバー521の電源電圧のうち高位側は、端子Bstを介して供給される電圧であり、低位側は、端子Swを介して供給される電圧である。端子Bstは、コンデンサーC5の一端及び逆流防止用のダイオードD1のカソードに接続される。端子Swは、コンデンサーC5の他端に接続される。ダイオードD1のアノードは、端子Gvdに接続される。これにより、ダイオードD1のアノードには、不図示の電源回路から供給される例えば7.5Vの直流電圧である電圧Vmが供給される。したがって、端子Bstと端子Swとの電位差は、コンデンサーC5の両端の電位差、すなわち電圧Vmにおよそ等しくなる。そして、ゲートドライバー521は、入力される変調信号Msに従い端子Swに対して電圧Vmだけ大きな電圧の増幅制御信号Hgdを端子Hdrから出力する。
【0081】
ゲートドライバー522は、ゲートドライバー521よりも低電位側で動作する。ゲートドライバー522は、コンパレーター514から出力された変調信号Msの論理レベルがインバーター515によって反転された信号をレベルシフトして、端子Ldrから増幅制御信号Lgdとして出力する。ゲートドライバー522の電源電圧のうち高位側は、電圧Vmが印加され、低位側は、端子Gndを介して例えば0Vのグラウンド電位が供給される。そして、ゲートドライバー522に入力される信号に従う端子Gndに対して電圧Vmだけ大きな電圧の増幅制御信号Lgdを端子Ldrから出力する。
【0082】
ここで、基駆動信号do及び基駆動信号aoを変調した信号とは、狭義にはコンパレーター514が出力する変調信号Msを意味するが、デジタルの基駆動信号doに基づくアナログの基駆動信号aoをパルス変調した信号であると考えれば、変調信号Msの論理レベルが反転された信号も基駆動信号do及び基駆動信号aoを変調した信号である。すなわち、基駆動信号do及び基駆動信号aoを変調した信号には、コンパレーター514が出力する変調信号Msのみならず、コンパレーター514が出力する変調信号Msの論理レベルを反転した信号や、変調信号Msに対してタイミングが制御された信号も含まれる。さらに、ゲートドライバー521が出力する増幅制御信号Hgdは、入力される変調信号Msをレベルシフトした信号であり、ゲートドライバー522が出力する増幅制御信号Lgdは、変調信号Msの論理レベルが反転された信号をレベルシフトした信号である。そうするとゲートドライバー521,522が出力する増幅制御信号Hgd,Lgdであって、集積回路500から出力される増幅制御信号Hgd,Lgdもまた基駆動信号do及び基駆動信号aoを変調した信号である。
【0083】
基準電圧生成回路530は、圧電素子60の電極612に供給される基準電圧信号VBSを生成し、集積回路500の端子Vbsを介して圧電素子60の電極612に出力する。このような基準電圧生成回路530は、例えば、バンドギャップ・リファレンス回路を含む定電圧回路で構成される。
【0084】
ここで、図10において、基準電圧生成回路530は、駆動信号出力回路51が有する集積回路500に含まれるとして説明したが、基準電圧生成回路530は、集積回路500の外部に構成されていてもよく、さらには、駆動信号出力回路51の外部に構成されていてもよい。
【0085】
増幅回路550は、トランジスターM1とトランジスターM2とを含む。トランジスターM1のドレインには、電圧VHVが供給される。トランジスターM1のゲートは、抵抗R1の一端と電気的に接続され、抵抗R1の他端は、集積回路500の端子Hdrと電気的に接続されている。すなわち、トランジスターM1のゲートには、集積回路500の端子Hdrから出力される増幅制御信号Hgdが供給される。トランジスターM1のソースは、集積回路500の端子Swと電気的に接続されている。
【0086】
トランジスターM2のドレインは、集積回路500の端子Swと電気的に接続されている。すなわち、トランジスターM2のドレインとトランジスターM1のソースとは、互いに電気的に接続されている。トランジスターM2のゲートは、抵抗R2の一端と電気的に接続され、抵抗R2の他端は、集積回路500の端子Ldrと電気的に接続されている。すなわち、トランジスターM2のゲートには、集積回路500の端子Ldrから出力される増幅制御信号Lgdが供給される。トランジスターM2のソースには、グラウンド電位が供給される。
【0087】
以上のように構成された増幅回路550において、トランジスターM1がオフ、トランジスターM2がオンに制御されている場合、端子Swが接続されるノードの電圧は、グラウンド電位となる。したがって、端子Bstには電圧Vmが供給される。一方、トランジ
スターM1がオン、トランジスターM2がオフに制御されている場合、端子Swが接続されるノードの電圧は、電圧VHVとなる。したがって、端子Bstには電圧VHV+Vmの電位の電圧信号が供給される。
【0088】
すなわち、トランジスターM1を駆動させるゲートドライバー521は、コンデンサーC5をフローティング電源として、トランジスターM1及びトランジスターM2の動作に応じて、端子Swの電位が0V又は電圧VHVに変化することで、Lレベルが電圧VHVの電位であって、且つ、Hレベルが電圧VHV+電圧Vmの電位の増幅制御信号HgdをトランジスターM1のゲートに供給する。
【0089】
一方、トランジスターM2を駆動させるゲートドライバー522は、トランジスターM1及びトランジスターM2の動作に関係なく、Lレベルがグラウンド電位であって、且つ、Hレベルが電圧Vmの電位の増幅制御信号LgdをトランジスターM2のゲートに供給する。
【0090】
以上のように、増幅回路550は、トランジスターM1とトランジスターM2とで基駆動信号do,aoが変調された変調信号Msを電圧VHVに基づいて増幅する。これにより、トランジスターM1のソース、及びトランジスターM2のドレインが共通に接続される接続点には、増幅変調信号AMsが生成される。そして、増幅回路550で生成された増幅変調信号AMsは、復調回路560に入力される。
【0091】
復調回路560は、増幅回路550から出力された増幅変調信号AMsを復調することで、駆動信号COMを生成し、駆動信号出力回路51から出力する。
【0092】
復調回路560は、インダクターL1とコンデンサーC1とを含む。そして、インダクターL1の一端は、コンデンサーC1の一端と接続されている。また、インダクターL1の他端には、増幅回路550から出力された増幅変調信号AMsが入力され、コンデンサーC1の他端には、グラウンド電位が供給されている。すなわち、復調回路560においてインダクターL1とコンデンサーC1とは、ローパスフィルターを構成する。そして、復調回路560は、当該ローパスフィルターによって増幅回路550から出力される増幅変調信号AMsを平滑することにより復調し、復調した信号を駆動信号COMとして出力する。
【0093】
帰還回路570は、抵抗R3と抵抗R4とを含む。抵抗R3の一端には、駆動信号COMが供給され、他端は、端子Vfb及び抵抗R4の一端と接続されている。抵抗R4の他端には、電圧VHVが供給される。これにより、端子Vfbには、帰還回路570を通過した駆動信号COMが、電圧VHVでプルアップされた状態で帰還する。
【0094】
帰還回路572は、コンデンサーC2,C3,C4と、抵抗R5,R6を含む。コンデンサーC2の一端には、駆動信号COMが供給され、他端は、抵抗R5の一端、及び抵抗R6の一端と接続されている。抵抗R5の他端にはグラウンド電位が供給される。これにより、コンデンサーC2と抵抗R5とがハイパスフィルター(High Pass Filter)として機能する。このハイパスフィルターのカットオフ周波数は、例えば約9MHzに設定される。また、抵抗R6の他端は、コンデンサーC4の一端、及びコンデンサーC3の一端と接続されている。コンデンサーC3の他端には、グラウンド電位が供給される。これにより、抵抗R6とコンデンサーC3とは、ローパスフィルター(Low Pass Filter)として機能する。このローパスフィルターのカットオフ周波数は、例えば約160MHzに設定される。すなわち、帰還回路572は、ハイパスフィルターとローパスフィルターと備え、駆動信号COMに含まれる所定の周波数域の信号を通過させるバンドパスフィルター(Band Pass Filter)として機能する。
【0095】
そして、コンデンサーC4の他端は集積回路500の端子Ifbと接続されている。これにより、端子Ifbには、バンドパスフィルターとして機能する帰還回路572を通過した駆動信号COMの高周波成分のうち、直流成分がカットされた信号が帰還する。
【0096】
ところで、駆動信号COMは、基駆動信号doに基づく増幅変調信号AMsを復調回路560によって平滑された信号である。そして、駆動信号COMは、端子Vfbを介して積分・減算された上で、加算器512に帰還される。よって、駆動信号出力回路51は、帰還の遅延と、帰還の伝達関数で定まる周波数で自励発振する。ただし、端子Vfbを介した帰還経路は、遅延量が大きいため、当該端子Vfbを介した帰還のみでは自励発振の周波数を駆動信号COMの精度を十分に確保できるほど高くすることができない場合がある。そこで、端子Vfbを介した経路とは別に、端子Ifbを介して、駆動信号COMの高周波成分を帰還する経路を設けることで、回路全体でみた場合における遅延を小さくしている。これにより、電圧信号Osの周波数は、端子Ifbを介した経路が存在しない場合と比較して、駆動信号COMの精度を十分に確保できるほどに高くすることができる。
【0097】
ここで、本実施形態における駆動信号出力回路51における自励発振の発振周波数は、駆動信号COMの精度を十分に確保しつつ、駆動信号出力回路51で生じる発熱を低減させるとの観点において1MHz以上8MHz以下であることが好ましく、特に、液体吐出装置1の消費電力を低減させる場合においては、駆動信号出力回路51の自励発振の発振周波数が1MHz以上4MHz以下であることが好ましい。換言すれば、トランジスターM1,M2の駆動周波数であって、トランジスターM1,M2を含む増幅回路550が出力する増幅変調信号AMsの周波数は、トランジスターM1,M2で生じる発熱を低減させるとの観点において1MHz以上8MHz以下であることが好ましく、さらに、トランジスターM1,M2で生じる損失を低減させることで、液体吐出装置1の消費電力を低減させる場合においては、1MHz以上4MHz以下であることが好ましい。
【0098】
本実施形態における液体吐出装置1では、駆動信号出力回路51が、増幅変調信号AMsを平滑して駆動信号COMを生成し、プリントヘッド20が有する圧電素子60に供給する。そして、圧電素子60は、駆動信号COMに含まれる台形波形が供給されることによって駆動し、圧電素子60の駆動に応じた量のインクが吐出部600から吐出される。
【0099】
このような圧電素子60を駆動する駆動信号COMの信号波形に対して周波数スペクトル解析を実行すると、駆動信号COMには、50kHz以上の周波数成分が含まれていることが知られている。このような50kHz以上の周波数成分を含む駆動信号COMの信号波形を生成するに際して、変調信号の周波数を1MHzよりも低くすると、駆動信号出力回路51から出力される駆動信号COMの信号波形のエッジ部に鈍りが生じる。換言すれば、駆動信号COMの信号波形を精度よく生成するには、変調信号Msの周波数を1MHz以上とする必要がある。換言すれば、駆動信号出力回路51の自励発振の発振周波数であって、トランジスターM1,M2の駆動周波数に相当する増幅変調信号AMsの周波数を1MHz以下とした場合、駆動信号COMの波形精度が低下し、圧電素子60の駆動精度が低下する。その結果、液体吐出装置1から吐出されるインクの吐出特性が悪化する。
【0100】
このような問題に対して、変調信号Msの周波数、駆動信号出力回路51の自励発振の発振周波数であって、トランジスターM1,M2の駆動周波数に相当する増幅変調信号AMsの周波数を1MHz以上とすることで、駆動信号COMの信号波形のエッジ部に鈍りが生じるおそれが低減し、駆動信号COMの信号波形の波形精度が向上する。その結果、駆動信号COMに基づいて駆動される圧電素子60の駆動精度が向上し、液体吐出装置1から吐出されるインクの吐出特性が悪化するおそれが低減される。
【0101】
しかしながら、変調信号Msの周波数、駆動信号出力回路51の自励発振の発振周波数であって、トランジスターM1,M2の駆動周波数を高くすると、トランジスターM1,M2におけるスイッチング損失が大きくなる。このようなトランジスターM1,M2の生じるスイッチング損失は、駆動信号出力回路51での消費電力を増加させるとともに、駆動信号出力回路51における発熱量も増加させる。すなわち、駆動信号出力回路51の自励発振の発振周波数であって、トランジスターM1,M2の駆動周波数を高くしすぎた場合、トランジスターM1,M2におけるスイッチング損失が大きくなり、その結果、AB級アンプなどのリニア増幅に対するD級アンプの優位性の1つである省電力性、及び省発熱性が損なわれる。このようなトランジスターM1,M2のスイッチング損失を低減するとの観点において、変調信号Msの周波数、駆動信号出力回路51の自励発振の発振周波数であって、トランジスターM1,M2の駆動周波数に相当する増幅変調信号AMsの周波数は、8MHz以下であることが好ましく、特に、液体吐出装置1の省電力性を高めることが求められる場合にあっては、増幅変調信号AMsの周波数は、4MHz以下であることが好ましい。
【0102】
以上のように、D級アンプを用いた駆動信号出力回路51において、出力する駆動信号COMの信号波形の精度の向上と、省電力化とを両立させるとの観点において、駆動信号出力回路51の自励発振の発振周波数であってトランジスターM1,M2の駆動周波数に相当する増幅変調信号AMsの周波数は、1MHz以上8MHz以下であることが好ましく、特に、液体吐出装置1の消費電力を低減させる場合には、増幅変調信号AMsの周波数が1MHz以上4MHz以下であることが好ましい。
【0103】
ここで、駆動信号出力回路51が出力する駆動信号COMは、選択回路230において選択又は非選択とされることで、駆動信号VOUTとして圧電素子60に供給される。そのため、駆動信号出力回路51が出力する駆動信号COMに基づく出力電流は、駆動信号VOUTとして供給される圧電素子60の数に応じて大きく変化する。そして、駆動信号出力回路51が出力する出力電流が大きく変化した場合、駆動信号出力回路51に入力される電圧VHVの電圧値が変動するおそれがある。その結果、変調信号Msを電圧VHVに基づいて増幅することで生成される増幅変調信号AMs、及び増幅変調信号AMsを復調することで生成される駆動信号COMの波形精度が低下するおそれがある。
【0104】
このような問題に対して、本実施形態における駆動信号出力回路51は、駆動信号COMに基づく電流量が変化した場合であっても、駆動信号出力回路51に供給される電圧VHVに電圧変動が生じるおそれを低減するためのコンデンサーC6を備える。コンデンサーC6は、増幅回路550に入力される電圧VHVが伝搬する伝搬経路に電気的に接続されている。このようなコンデンサーC6としては、駆動信号COMにより生じる出力電流の大きな変化に対して電圧VHVの電圧変動を低減するために比較的大容量の容量素子であって、且つ電圧VHVの電圧値以上の耐圧を有することが求められる。そのため、コンデンサーC6は、比較的大容量が得られ、且つ数十V以上の耐圧を有する電解コンデンサーであることが好ましい。これにより、駆動信号出力回路51が出力する出力電流が大きく変化した場合であっても、電圧VHVの電圧値が変動するおそれ低減することができ、その結果、駆動信号出力回路51が出力する駆動信号COMの波形精度が向上する。
【0105】
また、本実施形態における液体吐出装置1では、媒体Pに形成されるドットサイズを大きくすることにより、ドット埋まりの効率を高め、これにより、媒体Pに画像が形成される画像形成速度の高速化を実現している。
【0106】
具体的には、駆動回路50は、吐出部600が吐出するインクの吐出量を増加させるために吐出部600に供給される駆動信号VOUTの最大電圧値が25V以上の高電圧とな
るような駆動信号COMA,COMBを生成し出力する。
【0107】
しかしながら、駆動信号VOUTの最大電圧値が25V以上の高電位となった場合、増幅変調信号AMsを平滑することで復調し、駆動信号COMとして出力する復調回路560のコンデンサーC1に供給される直流電圧成分が増加する。そして、コンデンサーC1に供給される直流電圧成分が増加した場合、コンデンサーC1の静電容量が低下するおそれがあった。このようなコンデンサーC1の静電容量の低下は、復調回路560における増幅変調信号AMsの平滑精度を悪化させ、その結果、復調回路560が出力する駆動信号COMAの波形精度を低下させるおそれがある。
【0108】
すなわち、液体吐出装置1において、画像形成速度の高速化を実現しようとした場合、吐出部600に供給される駆動信号VOUTの波形精度が低下し、その結果、インクの吐出精度、及び媒体Pに形成される画像品質が低下するおそれがあった。
【0109】
このような問題に対して、本実施形態における液体吐出装置1では、復調回路560が有するコンデンサーC1として特徴的な構成の容量素子を用いることで、コンデンサーC1に25V以上の高電位の直流電圧が供給された場合であっても、コンデンサーC1の静電容量が低下するおそれを低減し、復調回路560が出力する駆動信号COMの波形精度が低下するおそれを低減している。
【0110】
このようなコンデンサーC1の構成の具体例について説明する。図11は、コンデンサーC1の構造を示す断面図である。図11に示すように、コンデンサーC1は、積層部Clと積層部Clの両端に設けられた外部電極Ct1,Ct2とを有する積層型の表面実装部品である。
【0111】
積層部Clは、交互に積層された樹脂薄膜層Cdと金属薄膜層Cmと有する。ここで、積層部Clにおいて樹脂薄膜層Cdと金属薄膜層Cmとが交互に積層されているとは、2層の金属薄膜層Cmの間に2層以上の樹脂薄膜層Cdが積層されている場合も含まれる。すなわち、積層部Clにおいて樹脂薄膜層Cdと金属薄膜層Cmとが交互に積層されているとは、単層の金属薄膜層Cmと単層又は複層の樹脂薄膜層Cdとが交互に積層されている場合が含まれる。そして、積層部Clにおいて樹脂薄膜層Cdと金属薄膜層Cmとが交互に数千層にわたり積層されていることで、コンデンサーC1は、十分な静電容量を有する容量素子を形成する。
【0112】
樹脂薄膜層Cdは、磁性体材料を含まず、誘電性を有するプラスチックフィルムなどのシート状の樹脂薄膜であって、例えば、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレン・スルファイド(PPS)、アクリル系樹脂等の誘電性を有する各種の樹脂材料を用いることができる。なお、本実施形態におけるコンデンサーC1が、前述の通り表面実装部品である点に鑑みれば、樹脂薄膜層Cdとしては、高い耐熱性を有する熱硬化性樹脂であって、アクリル系樹脂が用いられることが好ましい。
【0113】
金属薄膜層Cmは、樹脂薄膜層Cdに蒸着などにより形成された金属薄膜であって、高い導電性を有するアルミニウム等で構成される。そして金属薄膜層Cmは、積層部Clの両端に設けられた外部電極Ct1及び外部電極Ct2に交互に電気的に接続される。具体的には、積層された金属薄膜層Cmの内、2n層(nは1以上の整数)の金属薄膜層Cmは、外部電極Ct1と電気的に接続され、2n+1層の金属薄膜層Cmは、外部電極Ct2と電気的に接続される。なお、金属薄膜層Cmは、優れた導電性を有し、蒸着などにより樹脂薄膜層Cd上に形成可能な物質であればよく、例えば、金等が用いられてもよい。
【0114】
ここで、外部電極Ct1,Ct2と金属薄膜層Cmとの電気的接続の具体例について説
明する。なお、外部電極Ct1と外部電極Ct2とは、電気的に接続される金属薄膜層Cmが異なるのみであり、同様の構成である。そのため、以下の説明では、外部電極Ct1と金属薄膜層Cmとの電気的接続についてのみ説明を行い、外部電極Ct2と金属薄膜層Cmとの電気的接続についての説明は省略する。
【0115】
図12は、外部電極Ct1と金属薄膜層Cmとの電気的接続の一例を示す図であって、図11に示すα部の拡大図である。図12に示すように、外部電極Ct1は、電極Tm1、電極Tm2、及び電極Tm3を含む。
【0116】
電極Tm1は、金属薄膜層Cmと電気的に接続している。この電極Tm1は、真鍮製を含む電極であって、後述する電極Tm2との電気的な接合性を高める役割を担う。このような電極Tm1は、コンデンサーC1におけるメタリコン電極と称される場合がある。電極Tm2は、電極Tm1を覆うように設けられている。この電極Tm2は、電極Tm1を介して電気的に接続された多層の金属薄膜層Cmを一体に電気的に接続するための構成であって、導電性に優れた銅を含む。そして、電極Tm3は、電極Tm2を覆うように設けられている。この電極Tm3が、駆動信号出力回路51が実装される不図示の基板と電気的に接続する。すなわち、電極Tm3が、はんだなどの接合手段により不図示の基板と電気的に接続される。この電極Tm3は、はんだの濡れ性を向上させることで、コンデンサーC1と基板との電気接続を向上させるとの機能を担い、錫を含んで構成される。
【0117】
以上のように、外部電極Ct1は、金属薄膜層Cmと電気的に接続される真鍮製の電極Tm1と、電極Tm1を覆うように設けられた銅製の電極Tm2と、電極Tm2を覆うように設けられた錫製の電極Tm3と、を有する。これにより、コンデンサーC1と駆動信号出力回路51が設けられた不図示の基板との電気的接続性能を高めることができるとともに、コンデンサーC1が有する積層された金属薄膜層Cmの相互間における電気的接続性を高めることができる。したがって、コンデンサーC1の信頼性が向上する。ここで、電極Tm1が第1電極の一例であり、電極Tm2が第2電極の一例であり、電極Tm3が第3電極の一例である。
【0118】
以上のように構成されたコンデンサーC1は、外部電極Ct1と電気的に接続された金属薄膜層Cmと、外部電極Ct2と電気的に接続された金属薄膜層Cmとの有効断面積と、2つの金属薄膜層Cmの間に設けられた樹脂薄膜層Cdの誘電率とに応じた静電容量を有する。そのため、金属薄膜層Cmには、外部電極Ct1と電気的に接続された金属薄膜層Cmと、外部電極Ct2と電気的に接続された金属薄膜層Cmとの有効断面積を調整するための特定のパターン形状に加工されていてもよい。これにより、コンデンサーC1が有する静電容量が規定される。
【0119】
また、コンデンサーC1は、駆動信号出力回路51が実装される不図示の基板において、駆動信号出力回路51が有する変調回路510を含む集積回路500、及び増幅回路550を構成するトランジスターM1,M2と同一実装面の設けられることが好ましい。これにより、変調回路510、増幅回路550、及びコンデンサーC1を含む復調回路560を含む、駆動信号出力回路51を同一のプロセスで基板上に構成することができ、駆動信号出力回路51を含むヘッドユニット2の生産性が向上する。
【0120】
6.作用効果
以上のように構成された本実施形態における液体吐出装置1では、駆動信号出力回路51において、高電圧の増幅変調信号AMsを復調する復調回路560が有するコンデンサーC1が、樹脂薄膜層Cdと金属薄膜層Cmとが積層された積層部Clを含む表面実装部品でとして構成されている。これにより、駆動信号VOUTが25V以上の高電圧の直流電圧成分を有する場合であっても、コンデンサーC1の静電容量が低下するおそれが低減
される。
【0121】
図13は、特許文献1に示されるような従前の駆動回路で用いられるセラミックコンデンサーと、本実施形態における樹脂薄膜層Cdと金属薄膜層Cmとが積層された積層部Clを含むコンデンサーC1との直流バイアス特性の一例を示す図である。ここで、図13では、特許文献1に示されるような従前の駆動回路で用いられるセラミックコンデンサーの直流バイアス特性の一例を破線で示し、本実施形態における樹脂薄膜層Cdと金属薄膜層Cmとが積層された積層部Clを含むコンデンサーC1の直流バイアス特性を実線で示している。なお、以下の説明において、特許文献1に示されるような従前の駆動回路で用いられるセラミックコンデンサーを、単に従前のコンデンサーと称する場合がある。
【0122】
図13に示すように従前のコンデンサーでは、直流電圧が供給された場合、当該直る電圧の電圧値の上昇に伴い静電容量が著しく低下する。このような従前のコンデンサーにみられる静電容量の低下は、従前のコンデンサーが誘電体としてチタン酸バリウム等のセラミックを有し、当該セラミックにおいて元来ばらばらの方向に生じていた自発分極が、供給される直流電圧によって整列を開始し、当該直流電圧の電圧値が上昇することで、自発分極の整列が終わることで分極が飽和することに起因する。すなわち、従前のコンデンサーを用いて、画像形成速度の高速化の観点において、駆動信号VOUTの電圧値を大きくした場合、駆動信号出力回路51が出力する駆動信号COMの波形に歪みが生じ、インクの吐出特性が悪化するおそれがある。
【0123】
これに対して、図13に示すように、本実施形態におけるコンデンサーC1は、誘電体として、セラミックに替えて樹脂薄膜層Cdを有するが故に、直流電圧の電圧値が上昇した場合であっても、静電容量の変化が小さく、そのため出力する駆動信号VOUTに波形歪みが生じるおそれが低減される。
【0124】
さらに、本実施形態におけるコンデンサーC1が表面実装部品であるが故に、ヘッドユニット2が大型化するおそれも低減し、その結果、液体吐出装置1が大型化するおそれも低減する。
【0125】
すなわち、駆動信号出力回路51において、増幅変調信号AMsを平滑することで復調する復調回路560が有するコンデンサーC1を、樹脂薄膜層Cdと金属薄膜層Cmとが積層された積層部Clを含む表面実装部品とすることで、近年の液体吐出装置1に要求される画像形成速度の高速化、インクの吐出精度の向上、及び液体吐出装置1の小型化を一括して実現することができる。
【0126】
また、本実施形態における液体吐出装置1では、復調回路560に含まれるコンデンサーC1が、樹脂薄膜層Cdと金属薄膜層Cmとが積層された積層部Clを含む表面実装部品で構成されるが故に、誘電体として幅広い材料の選定が可能となる。そのため、コンデンサーC1の誘電体として、温度による静電容量の変化の小さい材料であってアクリル系樹脂を用いることで、コンデンサーC1の周囲温度の変化によって生じ得るコンデンサーC1の静電容量の変化を低減することもできる。
【0127】
図14は、コンデンサーC1の樹脂薄膜層Cdにアクリル系樹脂を用いた場合における温度特性の一例を示す図である。なお、図14には、本実施形態における樹脂薄膜層Cdと金属薄膜層Cmとが積層された積層部を含むコンデンサーC1の温度特性を実線で図示し、従前のコンデンサーの温度特性を破線で示している。
【0128】
図14に示すように、本実施形態におけるコンデンサーC1では、液体吐出装置1における駆動回路50の動作温度範囲であってコンデンサーC1の周囲温度が20℃~60℃
の範囲において、静電容量の変化率は5%以下となる。そのため、コンデンサーC1を含む駆動信号出力回路51の周囲温度が20℃~60℃の範囲で変化した場合であっても、復調回路560は安定して増幅変調信号AMsを平滑し復調することができる。したがって、駆動信号出力回路51の周囲温度が20℃~60℃の範囲で変化した場合であっても、複雑な構成を用いずに駆動信号COM及び駆動信号COMに基づく駆動信号VOUTの波形の変化率を5%以下とすることが可能となる。換言すれば、本実施形態における液体吐出装置1では、コンデンサーC1が樹脂薄膜層Cdと金属薄膜層Cmとが積層された積層部Clを含むことで、周囲温度が20℃の場合に駆動信号出力回路51が出力する駆動信号COMの最大電圧値であって電位Vau2に対する、周囲温度が60℃の場合に駆動信号出力回路51が出力する駆動信号COMの最大電圧値であって電位Vau2の変動幅を5%以下とすることができ、液体吐出装置1におけるインクの吐出精度をさらに向上させることができる。
【0129】
また、本実施形態における液体吐出装置1では、コンデンサーC1に含まれる積層部Clを、磁性体材料が含まれない樹脂薄膜層Cd,及び磁性体材料を含まない金属薄膜層Cmで構成することで、コンデンサーC1に対して周辺回路で生じた磁界が寄与するおそれが低減する。特に、本実施形態に示すような増幅変調信号AMsをインダクターL1とコンデンサーC1とで構成されたローパスフィルターで平滑する場合、コンデンサーC1の近傍には、インダクターL1が位置する。このような場合であっても、コンデンサーC1に含まれる積層部Clが磁性体材料を含まないことで、コンデンサーC1にインダクターL1で生じた磁界が寄与するおそれが低減し、復調回路560が出力する駆動信号COMの波形精度がさらに向上する。
【0130】
さらに、コンデンサーC1にインダクターL1で生じた磁界が寄与するおそれが低減することで、コンデンサーC1の近傍にインダクターL1を設けることが可能となり、復調回路560を含む駆動信号出力回路51の小型化が可能となる。
【0131】
また、本実施形態における液体吐出装置1では、復調回路560に含まれるコンデンサーC1が、樹脂薄膜層Cdと金属薄膜層Cmとが積層された積層部Clを含む表面実装部品であって、誘電体としてセラミックを含まないことで、コンデンサーC1に振動が生じた場合に、当該振動に起因したノイズが重畳するおそれも低減する。
【0132】
図15は、本実施形態におけるコンデンサーC1にモーター駆動による振動を加えた場合のコンデンサーC1の両端電圧を示す図であり、図16は、従前のコンデンサーにモーター駆動による振動を加えた場合の当該コンデンサーの両端電圧を示す図である。
【0133】
図16に示すように、従前のコンデンサーであってセラミックの誘電体を含むコンデンサーでは、振動が加わることによって誘電体であるセラミックに圧電電圧が生じ、
当該圧電電圧がノイズとしてコンデンサーに重畳するおそれがあった。このような問題に対して、本実施形態におけるコンデンサーC1では、誘電体としてセラミックに代えて樹脂薄膜層Cdを有することで、コンデンサーC1に振動が生じた場合であっても、当該振動に起因したノイズが重畳するおそれが低減する。
【0134】
そのため、本実施形態に示すように、液体吐出装置1において、コンデンサーC1を含む復調回路560を有する駆動信号出力回路51が、往復移動するキャリッジ24に搭載されている場合であっても、当該キャリッジの往復移動により生じる振動により、コンデンサーC1にノイズが重畳するおそれが低減する。すなわち、本実施形態におけるコンデンサーC1では、誘電体としてセラミックに代えて樹脂薄膜層Cdを有することで、当該コンデンサーC1を含む駆動信号出力回路51を往復移動するキャリッジ24に搭載した場合であっても、駆動信号出力回路51は、精度よく駆動信号COMを出力することがで
きる。
【0135】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態及び変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能であり、例えば、実施形態及び変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0136】
また、本発明は、実施形態及び変形例で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態及び変形例で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態及び変形例で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態及び変形例で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0137】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0138】
液体吐出装置の一態様は、
第1電位と、前記第1電位よりも低電位の第2電位との間で変位する駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号に基づいて駆動する圧電素子を含み、前記圧電素子の駆動により液体を吐出する吐出部と、
を備え、
前記駆動信号出力回路は、
前記駆動信号の基となる基駆動信号を変調した変調信号を出力する変調回路と、
前記変調信号を増幅した増幅変調信号を出力する増幅回路と、
コンデンサーを含み、前記増幅変調信号を復調した前記駆動信号を出力する復調回路と、
を有し、
前記第1電位は25V以上であって、
前記コンデンサーは、樹脂薄膜層と金属薄膜層とが積層された積層部を含む表面実装部品である。
【0139】
この液体吐出装置によれば、増幅変調信号を復調し駆動信号を出力する復調回路が有するコンデンサーが樹脂薄膜層と金属薄膜層とが積層された積層部を含むことで、復調回路が出力する駆動信号の電圧値が25V以上の高電位の場合であっても、コンデンサーの静電容量が低下するおそれが低減する。これにより、駆動信号の波形精度が低下するおそれを低減しつつ、インクを吐出する吐出部は一度の吐出で多くのインクを吐出することが可能となる。すなわち、インクの吐出精度が低下することなく、媒体に画像を形成する画像形成速度の高速化ができる。
【0140】
また、この液体吐出装置によれば、樹脂薄膜層と金属薄膜層とが積層された積層部を含むコンデンサーが表面実装部品であるが故に、駆動信号出力回路が大型化するおそれも低減する。
【0141】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記コンデンサーは、
前記金属薄膜層と電気的に接続される真鍮製の第1電極と、
前記第1電極を覆うように設けられた銅製の第2電極と、
前記第2電極を覆うように設けられた錫製の第3電極と、
を有してもよい。
【0142】
この液体吐出装置によれば、コンデンサーが有する金属薄膜層とコンデンサーの外部に設けられた基板などとの電気的接続性の信頼性が向上する。
【0143】
前記液体吐出装置の一態様において、
周囲温度が20℃の場合に前記駆動信号出力回路が出力する前記駆動信号の前記第2電位に対する、周囲温度が60℃の場合に前記駆動信号出力回路が出力する前記駆動信号の前記第2電位の変動幅は、5%以下であってもよい。
【0144】
この液体吐出装置によれば、樹脂薄膜層と金属薄膜層とが積層された積層部を含むコンデンサーを有するが故に、誘電体として様々な特性の材料を選定することが可能となり、周囲温度が20℃~60℃の範囲において、駆動信号出力回路が出力する駆動信号の変動が低減された液体吐出装置を実現することができる。
【0145】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記積層部は、磁性体材料を含まなくてもよい。
【0146】
この液体吐出装置によれば、コンデンサーの周囲で生じた磁界がコンデンサーの特性に影響を及ぼすおそれを低減することができる。
【0147】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記増幅変調信号の周波数は、1MHz以上8MHz以下であってもよい。
【0148】
この液体吐出装置によれば、駆動信号出力回路が出力する駆動信号の波形精度を高めるとともに、増幅回路における損失を低減でき、駆動信号出力回路における消費電力を低減することができる。
【0149】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記増幅変調信号の周波数は、1MHz以上4MHz以下であってもよい。
【0150】
この液体吐出装置によれば、駆動信号出力回路が出力する駆動信号の波形精度を高めるとともに、増幅回路における損失をさらに低減することができる。
【0151】
前記液体吐出装置の一態様において、
媒体が搬送される搬送方向と交差する主走査方向に沿って往復移動するキャリッジを備え、
前記駆動信号出力回路及び前記吐出部は、前記キャリッジに搭載されていてもよい。
【0152】
この液体吐出装置によれば、コンデンサーが樹脂薄膜層と金属薄膜層とが積層された積層部を含むことで、キャリッジの移動に伴い生じる振動によって、コンデンサーの両端の電圧値が変動するおそれが低減する。その結果、駆動信号出力回路をキャリッジに搭載した場合であっても、駆動信号の波形精度が低下するおそれが低減される。
【0153】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記変調回路、前記増幅回路、及び前記コンデンサーを含む前記復調回路は、前記駆動信号出力回路が実装される基板の同一実装面に設けられていてもよい。
【0154】
この液体吐出装置によれば、コンデンサーを変調回路、及び増幅回路と同一の実装面に設けることで、駆動信号出力回路の製造効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0155】
1…液体吐出装置、2…ヘッドユニット、3…移動機構、4…搬送機構、10…制御ユニット、20…プリントヘッド、22…インクカートリッジ、24…キャリッジ、31…キャリッジモーター、32…キャリッジガイド軸、33…タイミングベルト、35…キャリッジモータードライバー、41…搬送モーター、42…搬送ローラー、43…プラテン、45…搬送モータードライバー、50…駆動回路、51a,51b…駆動信号出力回路、60…圧電素子、70…キャッピング部材、71…ワイパー部材、72…フラッシングボックス、80…メンテナンスユニット、81…クリーニング機構、82…ワイピング機構、90…リニアエンコーダー、100…制御回路、110…電圧出力回路、190…ケーブル、210…選択制御回路、212…シフトレジスター、214…ラッチ回路、216…デコーダー、230…選択回路、232a,232b…インバーター、234a,234b…トランスファーゲート、500…集積回路、510…変調回路、512,513…加算器、514…コンパレーター、515…インバーター、516…積分減衰器、517…減衰器、520…ゲートドライブ回路、521,522…ゲートドライバー、530…基準電圧生成回路、550…増幅回路、560…復調回路、570,572…帰還回路、590…電源回路、600…吐出部、601…圧電体、611,612…電極、621…振動板、631…キャビティー、632…ノズルプレート、641…リザーバー、651…ノズル、661…供給口、C1,C2,C3,C4,C5,C6…コンデンサー、Cd…樹脂薄膜層、Cl…積層部、Cm…金属薄膜層、Ct1,Ct2…外部電極、D1…ダイオード、L1…インダクター、M1,M2…トランジスター、P…媒体、R1,R2,R3,R4,R5,R6…抵抗、Tm1,Tm2,Tm3…電極
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