(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】エアレスタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 7/00 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
B60C7/00 H
(21)【出願番号】P 2021077497
(22)【出願日】2021-04-30
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岡野 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 卓馬
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-268665(JP,A)
【文献】特開2019-31243(JP,A)
【文献】特開2014-69869(JP,A)
【文献】特開2000-178992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 9/00- 9/28
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車軸に固定されるホイール部と、
前記ホイール部よりもタイヤ径方向外側に配置され、地面と接地する接地面を有する外周リング部と、
前記ホイール部よりもタイヤ径方向外側、且つ前記外周リング部よりもタイヤ径方向内側に配置され、前記ホイール部と前記外周リング部とを弾性的に連結するスポーク部と、を有するエアレスタイヤにおいて、
前記ホイール部が前記車軸に固定されたときに前記車両の車体と向き合う一方のタイヤ側面であるタイヤ裏面と、前記タイヤ裏面と対となる他方のタイヤ側面であるタイヤ表面とを備え、
前記ホイール部は、
前記タイヤ裏面と前記タイヤ表面とが相対するように前記エアレスタイヤ同士が上下方向に積み重ねられた状態において、互いに係止することで前記エアレスタイヤ同士の横方向の位置ずれを規制する規制構造を備える
エアレスタイヤ。
【請求項2】
前記規制構造は、
前記ホイール部の前記タイヤ裏面側に設けられ、タイヤ幅方向において前記外周リング部及び前記スポーク部の最外端よりも外方に突出したフランジ部と、
前記ホイール部の前記タイヤ表面側に設けられ、前記フランジ部が係止可能に凹状に窪んだガイド部と、を有する
請求項1記載のエアレスタイヤ。
【請求項3】
前記最外端から突出する前記フランジ部の高さは、前記ガイド部の深さよりも大きい
請求項2記載のエアレスタイヤ。
【請求項4】
前記フランジ部及び前記ガイド部は、タイヤ径方向において前記ホイール部の最外端よりもタイヤ回転軸側に配置されている
請求項2又は3記載のエアレスタイヤ。
【請求項5】
前記フランジ部は、前記ホイール部とは異なる材料から構成される保護部材によって覆われている
請求項2から4いずれか一項記載のエアレスタイヤ。
【請求項6】
前記保護部材は、前記スポーク部と同一材料から構成され、前記スポーク部と一体的に造形されている
請求項5記載のエアレスタイヤ。
【請求項7】
前記フランジ部及び前記ガイド部の少なくとも一方は、前記フランジ部と前記ガイド部とが係止する部位が傾斜した形状又は曲面形状に形成されている
請求項2から6いずれか一項記載のエアレスタイヤ。
【請求項8】
前記フランジ部及び前記ガイド部の少なくとも一方は、前記フランジ部と前記ガイド部とが係止する部位に滑り止め構造を有している
請求項2から7のいずれか一項記載のエアレスタイヤ。
【請求項9】
前記フランジ部及び前記ガイド部のそれぞれ、タイヤ周方向に沿って連続的又は断続的に設けられ、
タイヤ周方向において前記フランジ部が存在している角度範囲の合計値と、タイヤ周方向において前記ガイド部が存在している角度範囲の合計値とを加算した総角度は、360°よりも大きい
請求項2から8いずれか一項記載のエアレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアレスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホイール部と、地面と接地する外周リング部と、ホイール部と外周リング部とを弾性的に接続するスポーク部と、を有するエアレスタイヤが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、特許文献2には、タイヤのサイドウォール部に凸部を設けることで、段積み時の荷崩れを防止する空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6619552号公報
【文献】特開2004-268665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアレスタイヤでは、樹脂などで形成されたスポーク部の耐久性の向上が課題となっている。そのため、走行中のみならず、保管中及び運搬中であっても損傷の原因となる傷及び擦れなどが生じないように配慮する必要がある。しかしながら、従来のエアレスタイヤにあっては、上下方向に積み重ねたエアレスタイヤ同士の位置が横方向にずれてしまい、スポーク部が損傷してしまう問題があった。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、上下方向に積み重ねたエアレスタイヤ同士の横方向の位置ずれを抑制することができるエアレスタイヤを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るエアレスタイヤは、ホイール部が車軸に固定されたときに車両の車体と向き合う一方のタイヤ側面をタイヤ裏面、タイヤ裏面と対となる他方のタイヤ側面をタイヤ表面として備えている。ホイール部は、タイヤ裏面とタイヤ表面とが相対するようにエアレスタイヤ同士が上下方向に積み重ねられた状態において、互いに係止することでエアレスタイヤ同士の横方向の位置ずれを規制する規制構造を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上下方向に積み重ねたエアレスタイヤ同士の横方向の位置ずれを抑制することできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、エアレスタイヤのタイヤ表面側を示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すエアレスタイヤの要部を示す斜視断面図である。
【
図3】
図3は、
図1にAA線で示すように、タイヤ回転軸を含む断面においてエアレスタイヤの要部を示す図である。
【
図4】
図4は、エアレスタイヤのタイヤ表面の構造を模式的に図である。
【
図5】
図5は、エアレスタイヤ同士を積み重ねる状態を模式的に示す説明図である。
【
図6】
図6は、エアレスタイヤ同士を積み重ねた状態を模式的に示す説明図である。
【
図7】
図7は、変形例に係るエアレスタイヤを示す説明図である。
【
図8】
図8は、変形例に係るエアレスタイヤを示す説明図である。
【
図9】
図9は、変形例に係るエアレスタイヤを示す説明図である。
【
図10】
図10は、変形例に係るエアレスタイヤを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0011】
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係るエアレスタイヤ1の構成を説明する。エアレスタイヤ1は、ホイール部2と、スポーク部3と、外周リング部4とを有している。
図2では、ホイール部2の記載が省略されている。
【0012】
ホイール部2は、円盤形状を有している。ホイール部2は、車両の車軸が連結される部材であり、ボルトなどの締結手段によってハブを介して車軸に固定される。車軸は、ホイール部2のホイール中心に固定される。ホイール中心は、エアレスタイヤ1の回転軸に対応する。ホイール部2は、アルミニウム合金などの金属材料から構成されている。
【0013】
スポーク部3は、ホイール部2よりもタイヤ径方向外側、且つ外周リング部4よりもタイヤ径方向内側に配置されている。スポーク部3は、ホイール部2と外周リング部4とを連結する機能を担っている。スポーク部3は、樹脂又はゴムといった弾性変形可能な材料から形成されている。スポーク部3が弾性変形することで、エアレスタイヤ1は、車両の重量を支えたり、地面から入力される衝撃を吸収したりすることができる。
【0014】
スポーク部3は、内筒部31と、複数の連結部材32と、外筒部33とを有している。内筒部31と、複数の連結部材32と、外筒部33とは、一体に形成されている。
【0015】
内筒部31は、ホイール部2のタイヤ径方向外側に配置されている。内筒部31は、円筒形状を有し、内筒部31の内周面は、ホイール部2の外周面と結合されている。
【0016】
複数の連結部材32は、タイヤ周方向に間隔をあけて配置され、タイヤ径方向に沿って放射状に延在している。個々の連結部材32は、内筒部31と外筒部33とを接続している。連結部材32のタイヤ径方向外側の端部は外筒部33の内周面に連結され、連結部材32のタイヤ径方向内側の端部は、内筒部31の外周面に連結されている。
【0017】
タイヤ周方向に隣り合う一対の連結部材32と、内筒部31と、外筒部33との間には、空間部が形成されている。この空間部は、タイヤ回転軸方向に連通する空間である。空間部には、スポーク部3を形成する材料とは異なる材料が充填されてもよい。
【0018】
外筒部33は、外周リング部4のタイヤ径方向内側に配置されている。外筒部33は、円筒形状を有しており、外筒部33の外周面は、外周リング部4の内周面と結合されている。
【0019】
内筒部31と外筒部33とを接続する場合、複数の連結部材32を放射状に設ける構造に限らない。ハニカム構造を有するセル型、又は、放射形状以外の空隙構造であってもよい。
【0020】
外周リング部4は、ホイール部2よりもタイヤ径方向外側に、スポーク部3を隔てて同心円状に配置されている。外周リング部4は、円筒形状を有している。外周リング部4の外周面は、地面と接地する接地面としての機能を備えている。
【0021】
外周リング部4は、ホイール部2に入力される荷重を支持する機能を担うため、ゴムなどの素材からなる母材と、この母材の内部に内包されているスチールコードなどの補強繊維とを含んでいる。外周リング部4の外周面には、トレッドパターンと呼ばれる溝模様が刻まれている。
【0022】
ホイール部2と内筒部31との結合、及び外筒部33と外周リング部4との結合は、例えば接着剤によって行われている。ただし、結合方法はこれに限定されず、機械式、はめ込み式などであってもよい。
【0023】
このような構成のエアレスタイヤ1は、車両に設けられたハブを介して車軸に固定される。車両側で発生した力(駆動力又は制動力)は、ホイール部2、スポーク部3、及び外周リング部4を介して地面に伝達される。そして、エアレスタイヤが転舵された場合、タイヤ進行方向とタイヤ中心方向とのずれにより、外周リング部4は、タイヤ回転軸方向(タイヤ幅方向)の力(横力)を発生させる。
【0024】
また、エアレスタイヤ1を保管する、或いは運搬する際には、複数のエアレスタイヤ1が段積みされる。段積みとは、タイヤ側面が上下方向に向くようにエアレスタイヤ1を横に寝かせた状態で、個々のエアレスタイヤ1を上下方向に積み重ねることをいう。以下の説明では、ホイール部2が車軸に固定されたときに車両の車体と向き合う一方のタイヤ側面をタイヤ裏面、タイヤ裏面と対となる他方のタイヤ側面をタイヤ表面という。
【0025】
段積みでは、下段のエアレスタイヤ1のタイヤ表面に、上段のエアレスタイヤ1のタイヤ裏面が重なるように、エアレスタイヤ1同士が積み重ねられる。個々のエアレスタイヤ1の位置が横方向(タイヤ回転軸に対して直交する方向)にずれていると、エアレスタイヤ1が傾斜して荷崩れしてしまう。
【0026】
横ずれが発生し、上段のエアレスタイヤ1の外周リング部4が、下段のエアレスタイヤ1の外周リング部4よりも内側にずれたとする。この場合、上段のエアレスタイヤ1の外周リング部4の角(接地面とタイヤ裏面との角)が、下段のエアレスタイヤ1のスポーク部3に接触することで、下段のエアレスタイヤ1のスポーク部3が破損してしまう可能性がある。また、横方向の逆側では、下段のエアレスタイヤ1の外周リング部4の角が、上段のエアレスタイヤ1のスポーク部3に接触することにより、上段のエアレスタイヤ1のスポーク部3が破損してしまう可能性がある。加えて、床面及び路面などが平滑でない場合には、床面及び路面に接触することで、最下段のエアレスタイヤ1のスポーク部3及び外周リング部4に傷がついてしまうこともある。
【0027】
そこで、段積みを行う際には、下段側のエアレスタイヤ1の外形位置に対して上段側のエアレスタイヤ1の外形位置を合わせてタイヤ同士を積み重ねることが重要である。また、段積みされたエアレスタイヤ1同士で横ずれが発生することを防止することが重要である。
【0028】
図3及び
図4を参照し、本実施形態に係るエアレスタイヤ1の横ずれ防止構造について説明する。具体的は、エアレスタイヤ1のホイール部2は、他のエアレスタイヤ1のホイール部2と互いに係止することでエアレスタイヤ1同士の横方向の位置ずれを規制する規制構造を備えている。
【0029】
規制構造は、フランジ部21と、ガイド部22とで構成されている。フランジ部21及びガイド部22は、タイヤ径方向においてホイール部2の最外端Dw1よりもタイヤ回転軸Cr側に設けられている。ホイール部2の外周部分は、スポーク部3と結合する箇所であるため、スポーク部3の内筒部31に沿ってタイヤ幅方向に幅広に形成された円筒部が設けられており、高い剛性を備えている。フランジ部21及びガイド部22は、剛性が高いホイール部2の円筒部に設けられる。
【0030】
フランジ部21は、ホイール部2のタイヤ裏面側に設けられている。フランジ部21は、タイヤ幅方向において外周リング部4及びスポーク部3のタイヤ裏面側の最外端Pisよりも外方に、高さHfだけ突出している。フランジ部21は、タイヤ周方向に沿って一定の角度範囲で延在している。フランジ部21は、タイヤ回転軸Crに沿って起立する凸壁面21aと、フランジ部21の突端に位置するタイヤ支持面21bとを備えている。凸壁面21aは、タイヤ径方向の外側を臨むように設定されている。
【0031】
ガイド部22は、ホイール部2のタイヤ表面側に設けられている。ガイド部22は、エアレスタイヤ1同士が段積みされた際に、上段に積み重ねられたエアレスタイヤ1のフランジ部21が係止可能に構成されている。ガイド部22は、タイヤ幅方向において外周リング部4及びスポーク部3のタイヤ表面側の最外端Posよりも内方に、深さDgだけ窪んでいる。ガイド部22は、タイヤ周方向に沿って一定の角度範囲で延在している。ガイド部22は、タイヤ回転軸Crに沿って落ち込んだ凹壁面22aと、ガイド部22の底端に位置するフランジ受け面22bとを備えている。凹壁面22aは、タイヤ径方向の内側を臨むように設定されている。
【0032】
このような規制構造において、フランジ部21の高さHfは、ガイド部22の深さDgよりも大きくなるように設定されている。タイヤ回転軸Crからフランジ部21の凸壁面21aまでの距離をDw2、タイヤ回転軸Crからガイド部22の凹壁面22aまでの距離をDw3とする。
図3に示す例では、フランジ部21の凸壁面21aまでの距離Dw2は、ガイド部22の凹壁面22aまでの距離Dw3と一致するように設定されている。
【0033】
フランジ部21及びガイド部22は、タイヤ周方向において全角度範囲(360°)に連続して存在してもよいし、タイヤ周方向において一定の角度範囲に存在してもよい。また、フランジ部21及びガイド部22もタイヤ周方向において一定の角度範囲で設ける場合には、このようなフランジ部21及びガイド部22をタイヤ周方向に沿って断続的に設けてもよい。
図4に示す例では、フランジ部21は、180°のピッチで2箇所に設けられており、個々のフランジ部21は、135°の角度範囲で存在している。一方、ガイド部22は、180°のピッチで2箇所に設けられており、個々のガイド部22は、90°の角度範囲で存在している。
【0034】
本実施形態において、タイヤ周方向においてフランジ部21が存在している角度範囲の合計値と、タイヤ周方向においてガイド部22が存在している角度範囲の合計値とを加算した総角度は、360°よりも大きくなるように設定されている。例えば、
図4に示す例では、フランジ部21の角度範囲の合計値は、270°(135°×2)となる。一方、ガイド部22の角度範囲の合計値は、180°(90°×2)となる。よって、フランジ部21の角度範囲の合計値と、ガイド部22の角度範囲の合計値とを加算した総角度は、450°となり、360°よりも大きくなっている。
【0035】
図5及び
図6に示すように、エアレスタイヤ1の段積みでは、下段のエアレスタイヤ1のタイヤ表面に、上段のエアレスタイヤ1のタイヤ裏面が重なるように、エアレスタイヤ1同士が積み重ねられる。このとき、上段のエアレスタイヤ1は、フランジ部21のタイヤ支持面21bを介して、下段のエアレスタイヤ1が備えるガイド部22のフランジ受け面22bに載置される。エアレスタイヤ1同士が積み重ねられると、フランジ部21の凸壁面21aと、ガイド部22の凹壁面22aとが相互に係止され、エアレスタイヤ1同士が相互に固定される。これにより、エアレスタイヤ1の横ずれを防止することができる。
【0036】
このように、本実施形態のエアレスタイヤ1によれば、規制構造によって、上下方向において向かい合うホイール部2同士が互いに係止される。これにより、複数のエアレスタイヤ1を積み重ねた状態でも、横ずれが発生することを防止することができる。また、横ずれを防止することができるので、スポーク部3が損傷するという事態を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態のエアレスタイヤ1によれば、スポーク部3及び外周リング部4は、ホイール部2と比べて軟質な材料で形成されている。そのため、スポーク部3に規制構造を設けた場合には、積み重ねたエアレスタイヤ1に横ずれ方向の力が作用したときに、規制構造によってスポーク部3を損傷させてしまう虞がある。このような損傷は、外周リング部4に規制構造を設けた場合であっても同様に起こり得る。その点、本実施形態では、規制構造はホイール部2に設けられているため、ホイール部2同士を係止する構造となっている。ホイール部2は、車両の車軸が固定されるため、剛性の高い構造となっている。そのため、破損の影響が少ないホイール部2同士が接触することとなり、スポーク部3及び外周リング部4の損傷を防止することができる。
【0038】
本実施形態のエアレスタイヤ1によれば、フランジ部21とガイド部22とが互いに係止可能となっている。これにより、エアレスタイヤ1同士を積み重ねたときの横ずれを抑制することできる。また、外方へと突出するフランジ部21がタイヤ裏面側に設けられているため、車両装着時における車体表面側への出っ張りを少なくすることができる。加えて、タイヤ表面を上に向けた状態で複数のエアレスタイヤ1を積み重ねたときには、突出したフランジ部21によって、最下段のエアレスタイヤ1と地面の間に隙間G1を作ることができる。これにより、地面に置かれたエアレスタイヤ1のスポーク部3及び外周リング部4が損傷することを防止することができる。
【0039】
本実施形態のエアレスタイヤによれば、フランジ部21の高さHfがガイド部22の深さDgよりも大きくなっている。このため、エアレスタイヤ1同士を積み重ねたときには、下段のエアレスタイヤ1と上段のエアレスタイヤ1との間に隙間G2を作ることができる。これにより、2段目以上のエアレスタイヤ1においてもスポーク部3及び外周リング部4に生じる損傷を防止することができる。
【0040】
なお、フランジ部21の突出量(高さHf)は、車両装着時に他部品に対して干渉がない程度に設定すればよい。突出量がタイヤ幅に対して大きすぎると、フランジ部21とガイド部22とをはめ合わせるときに、位置決めに時間を要してしまい作業性が悪くなることも考えられる。そこで、フランジ部21の突出量(高さHf)は、タイヤ幅に対して略10%以下に設定することが好ましい。
【0041】
エアレスタイヤ1を段積みした時のタイヤ自重は、フランジ部21のタイヤ支持面21bを介して、ガイド部22のフランジ受け面22bで支持される。本実施形態のエアレスタイヤによれば、フランジ部21及びガイド部22は、タイヤ径方向におけるホイール部2の最外端Dw1よりもタイヤ回転軸Cr側に配置されている。これにより、剛性が高いホイール部2で荷重を支持することができる。一方、樹脂材料で構成されるスポーク部3の場合、荷重が付加された状態が長期間継続すると、経時劣化によって永久ひずみが生じてしまう恐れがある。一方、ホイール部2、特にその円筒部で荷重を受けることで、永久ひずみの発生を防止することができる。
【0042】
本実施形態のエアレスタイヤ1では、フランジ部21の角度範囲の合計値と、ガイド部22の角度範囲の合計値とを加算した総角度が、360°よりも大きく設定されている。このような角度条件を設けることで、タイヤ周方向で捉えた場合に、フランジ部21の存在範囲とガイド部22の存在範囲とを重複させることができる。これにより、フランジ部21がタイヤ周方向に断続的に設けられるような場合でも、フランジ部21の一部が必ず、相対するガイド部22の一部と干渉する。フランジ部21とガイド部22とが重複しない場合には、段積みしたエアレスタイヤ1に横方向の力が作用したときに、フランジ部21がガイド部22をすり抜けてしまうことがある。その点、本実施形態によれば、フランジ部21のすり抜けを防止することができるので、エアレスタイヤ1の横ずれを防止することができる。加えて、フランジ部21及びガイド部22のタイヤ周方向における位置関係を気にすることなく、エアレスタイヤ1同士を積み重ねても、フランジ部21とガイド部22とが相互に係止することとなる。これにより、エアレスタイヤ1を積み重ねるときの作業者の作業負担を軽減し、作業性の向上を図ることができる。なお、加算した総角度が360°の場合、フランジ部21とガイド部22とがひっかかる可能性があるものの、フランジ部21とガイド部22との干渉範囲が狭い。そのため、フランジ部21及びガイド部22の端部が損傷する可能性があるため、好ましくない。
【0043】
このように本実施形態では、横ずれを防止する規制構造をホイール部2に設けている。横ずれを防止する観点でいえば、規制構造をスポーク部3又は外周リング部4に設けることも考えられる。しかしながら、スポーク部3に規制構造を持たせた場合、スポーク部3同士が接触することとなり、破損する可能性がある。一方、外周リング部4に規制構造を持たせた場合、スポーク部3の破損を防止することはできる。しかしながら、外周リング部4の外周面は、路面と接触する部位であるため、路面との干渉によって規制構造が摩耗してしまうこと考えられる。この場合、規制構造の機能が発揮されなくなってしまう可能性があるため好ましくない。
【0044】
なお、フランジ部21とガイド部22との間に滑りが生じると、エアレスタイヤ1にずれが生じることが考えられる。そこで、フランジ部21の凸壁面21a及びタイヤ支持面21bに、滑り止め構造を設けてもよい。滑り止め構造は、例えば、ローレット加工などにより、タイヤ支持面21bに細かい凹凸形状の模様を設けるなどによって形成することができる。また、凹凸形状に限らず、ぎざぎざ形状、山谷形状、波形状、あるいはそれらの形状を組み合わせてもよい。また、滑り止め構造としては、ゴムなどのキャップを設けてもよいし、後述する保護部材によって実現してもよい。また、滑り止め構造は、ガイド部22の凹壁面22a及びフランジ受け面22bに設けてもよく、フランジ部21及びガイド部22の双方に設けてもよい。
【0045】
この滑り止め構造によれば、床面又は地面に対する最下段のエアレスタイヤ1の横ずれ、下段のエアレスタイヤ1に対する上段のエアレスタイヤ1の横ずれを防止することができる。また、トラックなどで搬送する際には、車両の揺れ及び振動で上段のエアレスタイヤ1がタイヤ周方向にずれてしまうことを防止することができる。また、タイヤ周方向のずれによって、フランジ部21とガイド部22とが擦れると傷がついてしまう、あるいは破損してしまう恐れがある。そこで、滑り止め構造を設けることで摩擦力を高めることができるので、フランジ部21及びガイド部22の滑りを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、フランジ部21及びガイド部22を、専用の部位としてホイール部2に形成している。しかしながら、フランジ部21及びガイド部22は、上段及び下段のエアレスタイヤ1のホイール部2が相互に係止する機能を担っていればよく、単に、ホイール部2の造形の一部を利用するものであってもよい。
【0047】
以上、本実施形態に係るエアレスタイヤ1の基本的な構造を説明したが、本実施形態に係るエアレスタイヤ1は、以下に示すような変形例によって実現されてもよい。
【0048】
図7は、変形例に係るエアレスタイヤの構造を示す図である。上述した実施形態では、フランジ部21及びガイド部22を含む規制構造が、ホイール部2の一部分によって形成している。ホイール部2は金属材料で構成されているため、フランジ部21が床面に直に接すると、床面に傷がついてしまう。そのため、フランジ部21を、ホイール部2とは異なる材料から構成されている保護部材21cによって覆ってもよい。
図7に示す例では、保護部材21cは、スポーク部3と同一材料、すなわち、樹脂又はゴムなどの材料から構成され、スポーク部3と一体的に造形されている。
【0049】
また、
図7に示す例では、フランジ部21に加え、ガイド部22も保護部材22cによって覆われている。
【0050】
この変形例に係るエアレスタイヤ1によれば、フランジ部21が保護部材21cによって覆われているので、フランジ部21が床面と接触して、床面が傷つくことを抑制することができる。また、トラックなどで運搬する際に、フランジ部21が床面と直接接触することがなくなるため、低級音の発生、横滑りの発生を抑制することができる。
【0051】
また、この変形例に係るエアレスタイヤ1によれば、保護部材21cが、スポーク部3と同一材料から構成され、スポーク部3と一体的に造形されている。これにより、保護部材21cのために、新たな部品を準備する必要がなくなる。また、スポーク部3は、注型方式で成形されるが、このような成形工程において保護部材21cを同時に成形することができる。さらに、ホイール部2とスポーク部3との間にタイヤ回転軸Cr方向のずれが生じるような場合でも、保護部材21cによってずれが規制されるので、ホイール部2がフランジ部21側に脱落することを防止することができる。
【0052】
また、この変形例のエアレスタイヤ1によれば、保護部材22cが、スポーク部3と同一材料から構成され、スポーク部3と一体的に造形されている。これにより、保護部材22cのために、新たな部品を準備する必要がなくなる。また、スポーク部3は、注型方式で成形されるが、このような成形工程において保護部材22cを同時に成形することができる。さらに、ホイール部2とスポーク部3との間にタイヤ回転軸Cr方向のずれが生じるような場合でも、保護部材22cによってずれが規制されるので、ホイール部2がガイド部22側に脱落することを防止することができる。
【0053】
もっとも、保護部材21c、22cは、フランジ部21及びガイド部22を保護することができればよいので、スポーク部3とは独立した部材で構成されてもよい。この場合、保護部材21c、22cは、ホイール部2とは異なる材料から構成されていればよく、スポーク部3と同一材料で構成されることに限らない。
【0054】
なお、
図3に示す例では、タイヤ表面側をみたとき、タイヤ幅方向におけるホイール部2の最外端の位置は、外周リング部4及びスポーク部3の最外端Pisの位置と一致している。しかしながら、
図8に示すように、ガイド部22の深さDgを確保するために、タイヤ幅方向におけるホイール部2の最外端を、外周リング部4及びスポーク部3の最外端Pisよりも外方へと突出させてもよい。
【0055】
また、
図3に示す例では、フランジ部21の凸壁面21aまでの距離Dw2は、ガイド部22の凹壁面22aまでの距離Dw3と一致するように設定されている。しかしながら、ガイド部22の凹壁面22aまでの距離Dw3は、フランジ部21の凸壁面21aまでの距離Dw2よりも大きくなる関係であってもよい。
【0056】
また、
図3に示す例では、凸壁面21aが、タイヤ径方向の外側を臨むように設けられ、凹壁面22aは、タイヤ径方向の内側を臨むように設けられている。しかしながら、凸壁面21aが、タイヤ径方向の内側を臨むように設けられ、凹壁面22aは、タイヤ径方向の外側を臨むように設けられてもよい。この場合、フランジ部21の凸壁面21aまでの距離Dw2は、ガイド部22の凹壁面22aまでの距離Dw3よりも大きくなる関係であってもよい。
【0057】
エアレスタイヤ1同士が積み重ねられると、フランジ部21とガイド部22とは嵌まり合うこととなる。フランジ部21の凸壁面21aまでの距離Dw2と、ガイド部22の凹壁面22aまでの距離Dw3とが同じ場合、フランジ部21とガイド部22との間に隙間がない。いわゆるしまりばめとなり、作業性が悪い。そこで、距離Dw2、Dw3をずらし、エアレスタイヤ1が崩れ落ちない程度に隙間を設けてよい。この場合、エアレスタイヤ1を段積みするときにエアレスタイヤ1同士の位置を厳密に合わせる必要性がない。これにより、作業性を改善することができる。なお、隙間の大きさは、運搬中の車両の振動などによってエアレスタイヤ1が動いても異音が発生しない程度であればよい。
【0058】
また、
図9に示すように、フランジ部21とガイド部22とが係止する部位は、タイヤ回転軸Crに対して傾斜した形状であってもよい。また、
図10に示すように、フランジ部21とガイド部22とが係止する部位は、曲面形状であってもよい。
【0059】
フランジ部21とガイド部22との相対する部位を傾斜した形状としておけば、エアレスタイヤ1を段積みする場合であっても、タイヤ同士の位置を厳密に合わせる必要性もない。これにより、作業性を改善することができる。
【0060】
また、フランジ部21とガイド部22との相対する部位を曲面形状としておけば、段積み作業時、又はタイヤ脱着作業時における作業者の指を保護することできる。曲面形状は特に限定されるものではなく、半円形状、波形状などであってよく、さらにはそれらの形状を組み合わせた形状であってもよい。
【0061】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0062】
1 エアレスタイヤ
2 ホイール部
21 フランジ部
21a 凸壁面
21b タイヤ支持面
21c 保護部材
22 ガイド部
22a 凹壁面
22b フランジ受け面
22c 保護部材
3 スポーク部
31 内筒部
32 連結部材
32a 主部材
32b 補強部材
33 外筒部
4 外周リング部