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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/06 20060101AFI20241126BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01L29/78 652P
H01L29/78 652T
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/06 301D
H01L29/78 652H
H01L29/78 658A
H01L29/78 652N
H01L29/78 655F
H01L29/78 655A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021082807
(22)【出願日】2021-05-14
(65)【公開番号】P2022175975
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 龍太
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-012966(JP,A)
【文献】特開2014-139967(JP,A)
【文献】特開2019-046908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/06
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が形成されるセル領域(1)と、前記セル領域の外周を囲む外周領域(2)とを有する半導体装置であって、
第1導電型または第2導電型とされ、炭化珪素で構成される基板(11)と、
前記基板上に形成され、前記基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型のドリフト層(19)と、
前記ドリフト層を挟んで前記基板と反対側に形成され、前記セル領域に形成された前記半導体素子と電気的に接続される第1電極(29)と、
前記基板を挟んで前記ドリフト層と反対側に形成され、前記セル領域に形成された前記半導体素子と電気的に接続される第2電極(32)と、を備え、
前記外周領域は、前記セル領域を囲む枠状とされ、前記ドリフト層の内部に形成された第2導電型の第1FLR部(16)と、前記セル領域を囲む枠状とされ、前記ドリフト層のうちの表層部に形成されると共に前記第1FLR部と対向する部分を有する第2導電型の第2FLR部(24)と、を有するFLR領域(2a)を有し、
前記第1FLR部と前記第2FLR部との間に配置されるドリフト層は、第1導電型とされたイオン注入層(17a)を含んで構成されている炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第1FLR部と前記第2FLR部との間に配置されるドリフト層は、エピタキシャル膜を含んで構成され、
前記イオン注入層は、前記第1FLR部と前記第2FLR部との配列方向に沿った全体の電荷量(Q)に対し、前記イオン注入層による前記エピタキシャル膜の電荷量に対する重畳分の重畳電荷量(Qimp)が50%以上となる状態で形成されている請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記基板上に配置され、前記基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型の低濃度層(13)と、
前記低濃度層上に形成され、前記基板の面方向における一方向を長手方向とする複数の線状部分を有する第2導電型の第1ディープ層(15)と、
前記低濃度層上に配置され、前記第1ディープ層に挟まれた線状部分を有する第1導電型のJFET部(14)と、
前記JFET部上に配置され、前記低濃度層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の電流分散層(17)と、
前記第1ディープ層上に配置された第2導電型の第2ディープ層(18)と、
前記電流分散層および前記第2ディープ層の上に配置された第2導電型のベース層(21)と、
前記ベース層の表層部に形成された第1導電型の不純物領域(22)と、を備え、
前記ドリフト層は、前記低濃度層、前記JFET部、および前記電流分散層を含んで構成され、
前記第1FLR部は、前記第1ディープ層と同じ深さ、同じ厚さ、同じ不純物濃度となるように形成され、
前記第2FLR部は、前記ベース層と同じ深さ、同じ厚さ、同じ不純物濃度となるように形成されている請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(以下では、SiCともいう)を用いて構成されたSiC半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistorの略)等の半導体素子が形成されるセル領域と、このセル領域を囲む外周領域とを有するSiC半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、このSiC半導体装置は、ドリフト層を有する半導体基板を備え、セル領域にベース領域やソース領域等が形成されてMOSFETが構成されている。また、このSiC半導体装置は、外周領域に、耐圧を向上させるためのFLR(Field Limiting Ringの略)領域が形成されている。そして、FLR領域には、ベース領域等が形成される半導体基板の一面側に上段FLR部が形成されていると共に、上段FLR部より半導体基板の内部となる部分に、上段FLR部と離れた下段FLR部が形成されている。
【0003】
このようなSiC半導体装置では、上段FLR部および下段FLR部により、等電位線がセル領域から外周領域に向かって伸ばされると共に徐々に終端させられるため、電界集中を緩和して耐圧向上を図ることができる。
【0004】
なお、このようなSiC半導体装置は、エピタキシャル膜を適宜形成した後、イオン注入等を行って上段FLR部および下段FLR部を形成することによって製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許6139356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記SiC半導体装置では、エピタキシャル膜の厚さや不純物濃度がばらつき易いため、上段FLR部と下段FLR部との間の電荷量がばらつきやすい。このため、上記SiC半導体装置では、FLR領域の耐圧がばらつく可能性がある。この場合、耐圧のばらつきを考慮してFLR領域を広くすることも考えられるが、SiC半導体装置が大型化することが懸念される。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、FLR領域の耐圧を確保し易くできるSiC半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1では、半導体素子が形成されるセル領域(1)と、セル領域の外周を囲む外周領域(2)とを有する半導体装置であって、第1導電型または第2導電型とされ、SiCで構成される炭化珪素基板(11)と、基板上に形成され、基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型のドリフト層(19)と、ドリフト層を挟んで基板と反対側に形成され、セル領域に形成された半導体素子と電気的に接続される第1電極(29)と、基板を挟んでドリフト層と反対側に形成され、セル領域に形成された半導体素子と電気的に接続される第2電極(32)と、を備え、外周領域は、セル領域を囲む枠状とされ、ドリフト層の内部に形成された第2導電型の第1FLR部(16)と、セル領域を囲む枠状とされ、ドリフト層のうちの表層部に形成されると共に第1FLR部と対向する部分を有する第2導電型の第2FLR部(24)と、を有するFLR領域(2a)を有し、第1FLR部と第2FLR部との間に配置されるドリフト層は、第1導電型とされたイオン注入層(17a)を含んで構成されている。
【0009】
これによれば、FLR領域では、第1FLR部と第2FLR部との間に配置されるドリフト層は、イオン注入層を含んで構成されている。このため、この部分のドリフト層がエピタキシャル膜のみによって構成される場合と比較して、電荷量を安定させることができ、FLR領域における耐圧を確保し易くできる。したがって、耐圧のばらつきを考慮してFLR領域を広くしなくてもよく、SiC半導体装置の小型化を図ることができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
図2図1中のセル領域を示す斜視図である。
図3】第1FLR部と第2FLR部との間の不純物濃度を示す図である。
図4A】第1実施形態におけるSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図4B図4Aに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図4C図4Bに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図4D図4Cに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図4E図4Dに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図4F図4Eに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図4G図4Fに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5】第2実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
図6】第3実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
図7】第4実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態のSiC半導体装置について、図1および図2を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、セル領域1に、半導体素子として、トレンチゲート構造の反転型のMOSFETが形成されているSiC半導体装置について説明する。
【0014】
SiC半導体装置は、トレンチゲート構造のMOSFETが形成されるセル領域1と、このセル領域1を囲む外周領域2とを有する構成とされている。外周領域2は、FLR領域2aと、FLR領域2aよりも内側に配置される繋ぎ領域2bとを有する構成とされている。言い換えると、外周領域2は、FLR領域2aと、セル領域1とFLR領域2aとの間に配置される繋ぎ領域2bとを有する構成とされている。以下では、後述する基板11の面方向における一方向をX軸方向とし、基板の面方向における一方向と交差する方向をY軸方向とし、X軸方向およびY軸方向と直交する方向をZ軸方向として説明する。なお、本実施形態では、X軸方向とY軸方向とは直交している。また、図1では、紙面左右方向がX軸方向に相当し、紙面奥行き方向がY軸方向に相当し、紙面上下方向がZ軸方向に相当している。
【0015】
SiC半導体装置は、半導体基板10を用いて構成されている。具体的には、SiC半導体装置は、SiCからなるn型の基板11を備えている。本実施形態では、基板11として、例えば、(0001)Si面に対して0~8°のオフ角を有し、窒素やリン等のn型不純物濃度が1.0×1019/cmとされ、厚さが300μm程度とされたものが用いられる。なお、基板11は、本実施形態ではドレイン領域を構成するものである。
【0016】
基板11の表面上には、SiCからなるn型のバッファ層12が形成されている。バッファ層12は、基板11の表面にエピタキシャル成長を行うことによって構成される。そして、バッファ層12は、n型不純物濃度が、基板11と、後述する低濃度層13との間の不純物濃度とされ、厚さが1μm程度とされている。
【0017】
バッファ層12の表面上には、例えば、n型不純物濃度が5.0~10.0×1015/cmとされ、厚さが10~15μm程度とされたSiCからなるn型の低濃度層13が形成されている。この低濃度層13は、不純物濃度がZ軸方向において一定とされていてもよいが、濃度分布に傾斜が付けられ、低濃度層13のうちの基板11側の方が基板11から離れる側よりも高濃度となるようにされると好ましい。例えば、低濃度層13は、基板11の表面から3~5μm程度の部分の不純物濃度が2.0×1015/cm程度他の部分よりも高くされるのが好ましい。このような構成にすることにより、低濃度層13の内部抵抗を低減でき、オン抵抗を低減することができる。
【0018】
低濃度層13の表層部には、セル領域1および外周領域2の繋ぎ領域2bにおいて、JFET部14および第1ディープ層15が形成されている。本実施形態では、JFET部14および第1ディープ層15は、それぞれX軸方向に沿って延設されると共に、Y軸方向において交互に繰り返し並べて配置された線状部分を有している。つまり、JFET部14および第1ディープ層15は、基板11の表面に対する法線方向(以下では、単に法線方向ともいう)において、それぞれX軸方向に沿って延設されたストライプ状とされ、それらがY軸方向に沿って交互に並べられたレイアウトとなる構成とされている。なお、基板11の表面に対する法線方向においてとは、言い換えると、基板11の表面に対する法線方向から視たときということもできる。
【0019】
JFET部14は、低濃度層13よりも高不純物濃度とされたn型とされており、深さが0.3~1.5μmとされている。本実施形態では、JFET部14は、n型不純物濃度が7.0×1016~5.0×1017/cmとされている。
【0020】
第1ディープ層15は、例えば、ボロン等のp型不純物濃度が2.0×1017~2.0×1018/cmとされている。なお、本実施形態の第1ディープ層15は、JFET部14よりもFLR領域2a側まで延設されている。
【0021】
そして、本実施形態の第1ディープ層15は、JFET部14より浅く形成されている。つまり、第1ディープ層15は、底部がJFET部14内に位置するように形成されている。言い換えると、第1ディープ層15は、低濃度層13との間にJFET部14が位置するように形成されている。
【0022】
また、低濃度層13の表層部には、外周領域2のFLR領域2aにおいて、セル領域1を囲むように、複数本のp型の第1FLR部16が形成されている。なお、各第1FLR部16は、例えば、四隅が丸められた四角枠状とされて同心状に形成されるが、円形枠状等の他の枠状とされて同心状に形成されていてもよい。また、この第1FLR部16は、基板11側の下面が第1ディープ層15の下面と同じ深さとされ、第1ディープ層15と同じ厚さとされている。第1FLR部16は、p型不純物濃度が第1ディープ層15と同じとされている。
【0023】
セル領域1におけるJFET部14および第1ディープ層15上には、電流分散層17、第2ディープ層18、ベース層21等が形成されている。外周領域2のFLR領域2aにおける低濃度層13および第1FLR部16上には、電流分散層17および第2FLR部24が形成されている。外周領域2の繋ぎ領域2bにおけるJFET部14および第1ディープ層15上には、リサーフ層20等が形成されている。
【0024】
電流分散層17は、n型不純物層で構成され、セル領域1ではJFET部14と繋がっている。このため、本実施形態では、低濃度層13、JFET部14、および電流分散層17が繋がり、これらによってドリフト層19が構成されている。
【0025】
第2ディープ層18は、厚さが電流分散層17と等しくされている。また、第2ディープ層18は、第1ディープ層15と接続されるように形成されている。
【0026】
そして、電流分散層17および第2ディープ層18は、セル領域1においては、JFET部14のうちのストライプ状とされた部分や、第1ディープ層15の長手方向に対して交差する方向に延設されている。本実施形態では、電流分散層17および第2ディープ層18は、Y軸方向を長手方向として延設されると共に、X軸方向において交互に複数本並べたレイアウトとされている。なお、電流分散層17および第2ディープ層18の形成ピッチは、後述するトレンチゲート構造の形成ピッチに合わせてあり、第2ディープ層18は、後述するトレンチ25を挟むように形成されている。
【0027】
リサーフ層20は、厚さが電流分散層17や第2ディープ層18と等しくされており、繋ぎ領域2bにて第1ディープ層15と接続されるように形成されている。
【0028】
ここで、電流分散層17は、具体的には後述するが、イオン注入によって形成されたイオン注入層17aを含んで形成されている。詳しくは、イオン注入層17aは、後述するように、エピタキシャル膜で構成される構成層40にイオン注入することで構成されている。そして、本実施形態の電流分散層17は、セル領域1においては、構成層40のうちのイオン注入層17aと異なる部分を基準層17bとすると、第1ディープ層15側から基準層17bとイオン注入層17aとが積層されて構成されている。また、電流分散層17は、FLR領域2aにおいては、構成層40のうちのイオン注入層17aと異なる部分を第1基準層171bおよび第2基準層172bとすると、低濃度層13側から第1基準層171b、イオン注入層17a、第2基準層172bが積層されて構成されている。つまり、FLR領域2aにおいては、電流分散層17は、第1基準層171bおよび第2基準層172bにイオン注入層17aが挟まれた構成されている。
【0029】
セル領域1および繋ぎ領域2bでは、電流分散層17および第2ディープ層18上にp型のベース層21が形成されている。ベース層21の表層部には、セル領域1においては、n型のソース領域22およびp型のコンタクト領域23が形成されている。ソース領域22は、後述するトレンチ25の側面に接するように形成され、コンタクト領域23は、ソース領域22を挟んで後述するトレンチ25と反対側に形成されている。なお、本実施形態では、ソース領域22が不純物領域に相当している。
【0030】
ベース層21は、例えば、p型不純物濃度が3.0×1017/cm以下とされている。また、本実施形態のベース層21は、例えば、イオン注入等で形成されている。ソース領域22は、表層部におけるn型不純物濃度、すなわち表面濃度が例えば1.0×1021/cmとされている。コンタクト領域23は、表層部におけるp型不純物濃度、すなわち表面濃度が例えば1.0×1021/cmとされている。
【0031】
一方、FLR領域2aにおいては、電流分散層17は、第2基準層172bが半導体基板10の一面10aを構成するように配置されている。そして、電流分散層17の第2基準層172bには、複数本のp型の第2FLR部24が形成されている。本実施形態の第2FLR部24は、第1FLR部16と対向する部分を有するように形成されている。このため、第1FLR部16と第2FLR部24との間には、第1基準層171bとイオン注入層17aとが配置された状態となっている。
【0032】
なお、各第2FLR部24は、例えば、四隅が丸められた四角枠状とされて同心状に形成されるが、円形枠状等の他の枠状とされて同心状に形成されていてもよい。また、この第2FLR部24は、基板11側の下面がベース層21の下面と同じ深さとされ、ベース層21と同じ厚さとされている。第2FLR部24は、p型不純物濃度がベース層21と同じとされている。
【0033】
さらに、本実施形態の第1FLR部16および第2FLR部24は、Z軸方向において、隣合う第1FLR部16に位置する部分と、隣合う第2FLR部24に位置する部分とが異なる位置となるように形成されている。つまり、第1FLR部16と第2FLR部24とは、Z軸方向において、隣合う第1FLR部16に位置する部分と、隣合う第2FLR部24に位置する部分とが重ならないように形成されている。
【0034】
ここで、FLR領域2aにおける第1FLR部16と第2FLR部24との間に位置する電流分散層17(すなわち、ドリフト層19)の不純物濃度について説明する。まず、具体的には後述するが、本実施形態の電流分散層17は、エピタキシャル膜を含んで構成され、イオン注入層17aは、電流分散層17を構成するエピタキシャル膜にイオン注入を行うことで形成されている。そして、第1FLR部16と第2FLR部24との間には、第1基準層171bとイオン注入層17aとが配置された状態となっている。
【0035】
このため、図3に示されるように、第1FLR部16と第2FLR部24との間では、第1FLR部16と第2FLR部24との配列方向に沿って、不純物濃度は、イオン注入層17aにおける深さ方向の中心で最も高くなる。なお、第1FLR部16と第2FLR部24との配列方向に沿ってとは、言い換えると、半導体基板10の厚さ方向のことである。
【0036】
そして、本実施形態では、第1FLR部16と第2FLR部24との間(すなわち、イオン注入層17aおよび第1基準層171b)において、イオン注入層17aおよび第1基準層171bの全体の電荷量を全体電荷量Qとする。また、イオン注入層17aの重畳分の電荷量を重畳電荷量Qimpとする。つまり、エピタキシャル膜にイオン注入することで増加した電荷量を重畳電荷量Qimpとする。なお、重畳電荷量Qimpは、エピタキシャル膜の電荷量をQepiとすると、Q-Qepiでも示される。そして、イオン注入層17aは、全体電荷量Qに対する重畳電荷量Qimp(すなわち、Qimp/Q)が50%以上となるように形成されている。
【0037】
また、イオン注入層17aを形成する際には、第1基準層171b側へも不純物が染み出す。このため、本実施形態では、第1基準層171bへ染み出す部分の染み出し電荷量Qimp1が5%以下となるように、加速電圧等を適宜調整している。
【0038】
本実施形態では、以上のように、基板11、バッファ層12、低濃度層13、JFET部14、第1ディープ層15、電流分散層17、第2ディープ層18、ベース層21、ソース領域22、コンタクト領域23等が積層されて半導体基板10が構成されている。そして、半導体基板10の一面10aがソース領域22や電流分散層17等で構成され、半導体基板10の他面10bが基板11で構成されている。
【0039】
半導体基板10には、セル領域1において、ベース層21等を貫通して電流分散層17に達すると共に、底面が電流分散層17内に位置するように、例えば、幅が1.4~2.0μmとされたトレンチ25が形成されている。なお、トレンチ25は、JFET部14および第1ディープ層15に達しないように形成されている。つまり、トレンチ25は、底面よりも下方にJFET部14および第1ディープ層15が位置するように形成されている。また、本実施形態のトレンチ25は、電流分散層17において、底面が基準層17bに位置するように形成されている。
【0040】
そして、トレンチ25は、Y軸方向に沿って延びるように複数本が延設されていると共に、X軸方向に等間隔で並べられてストライプ状に形成されている。つまり、本実施形態では、トレンチ25は、長手方向が第1ディープ層15の長手方向と直交するように形成されている。また、トレンチ25は、法線方向において、第2ディープ層18に挟まれるように形成されている。
【0041】
トレンチ25は、内壁面に形成されたゲート絶縁膜26と、ゲート絶縁膜26の表面に形成されたドープトPoly-Siによって構成されるゲート電極27によって埋め込まれている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。特に限定されるものではないが、ゲート絶縁膜26は、トレンチ25の内壁面を熱酸化する、またはCVD(chemical vapor depositionの略)法を行うことで形成される。そして、ゲート絶縁膜26は、厚さがトレンチ25の側面側および底面側で共に100nm程度とされている。
【0042】
なお、ゲート絶縁膜26は、トレンチ25の内壁面以外の表面にも形成されている。具体的には、ゲート絶縁膜26は、半導体基板10の一面10aの一部も覆うように形成されている。より詳しくは、ゲート絶縁膜26は、ソース領域22の表面の一部も覆うように形成されている。言い換えると、ゲート絶縁膜26には、ゲート電極27が配置される部分と異なる部分において、コンタクト領域23およびソース領域22の残部を露出させるコンタクトホール26aが形成されている。
【0043】
また、ゲート絶縁膜26は、繋ぎ領域2bにおけるベース層21の表面にも形成されている。ゲート電極27についても、ゲート絶縁膜26と同様に、繋ぎ領域2bにおけるゲート絶縁膜26の表面上まで延設されている。以上のようにして、本実施形態のトレンチゲート構造が構成されている。
【0044】
半導体基板10の一面10a上には、ゲート電極27やゲート絶縁膜26等を覆うように、層間絶縁膜28が形成されている。層間絶縁膜28は、BPSG(Borophosphosilicate Glassの略)等で構成されている。
【0045】
層間絶縁膜28には、コンタクトホール26aと連通してソース領域22およびコンタクト領域23を露出させるコンタクトホール28aが形成されている。また、層間絶縁膜28には、ゲート電極27のうちの繋ぎ領域2bまで延設された部分を露出させるコンタクトホール28bが形成されている。つまり、層間絶縁膜28には、セル領域1にコンタクトホール28aが形成され、外周領域2にコンタクトホール28bが形成されている。
【0046】
なお、層間絶縁膜28に形成されたコンタクトホール28aは、ゲート絶縁膜26に形成されたコンタクトホール26aと連通するように形成されており、当該コンタクトホール26aと共に1つのコンタクトホールとして機能する。このため、以下では、コンタクトホール26aおよびコンタクトホール28aを纏めてコンタクトホール26bともいう。そして、コンタクトホール26bのパターンは、任意であり、例えば複数の正方形のものを配列させたパターン、長方形のライン状のものを配列させたパターン、または、ライン状のものを並べたパターン等が挙げられる。本実施形態では、コンタクトホール26bは、トレンチ25の長手方向に沿ったライン状とされている。
【0047】
層間絶縁膜28上には、コンタクトホール26bを通じてソース領域22およびコンタクト領域23と電気的に接続されるソース電極29が形成されている。なお、本実施形態のソース電極29は、外周領域2のベース層21に形成されたコンタクト領域23とも接続されている。また、層間絶縁膜28上には、コンタクトホール28bを通じてゲート電極27と電気的に接続されるゲート配線30が形成されている。なお、本実施形態では、ソース電極29が第1電極に相当している。
【0048】
本実施形態のソース電極29は、例えば、Ni/Al等の複数の金属にて構成されている。そして、複数の金属のうちのn型SiC(すなわち、ソース領域22)を構成する部分と接触する部分は、n型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうちの少なくともp型SiC(すなわち、コンタクト領域23)と接触する部分は、p型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。なお、ゲート配線30は、ソース電極と同様の構成とされていてもよいし、Al-Si等で構成されていてもよい。
【0049】
さらに、繋ぎ領域2bおよびFLR領域2aを覆うように、ポリイミド等によって構成される保護膜31が形成されている。本実施形態では、保護膜31は、ソース電極29と後述するドレイン電極32との間で沿面放電が発生することを抑制するため、外周領域2からセル領域1の外縁部上まで形成されている。具体的には、保護膜31は、セル領域1において、ソース電極29のうちの外周領域2側の部分を覆いつつ、ソース電極29のうちの内縁側の部分を露出させるように形成されている。
【0050】
半導体基板10の他面10b側には、基板11と電気的に接続されるドレイン電極32が形成されている。なお、本実施形態では、ドレイン電極32が第2電極に相当している。
【0051】
本実施形態のSiC半導体装置では、このような構造により、セル領域1にnチャネルタイプの反転型であるトレンチゲート構造のMOSFETが構成されている。なお、本実施形態では、n型、n型、n型が第1導電型に相当しており、p型、p型、p型が第2導電型に相当している。
【0052】
次に、上記SiC半導体装置の作動および効果について説明する。
【0053】
まず、SiC半導体装置では、ゲート電極27にゲート電圧が印加される前のオフ状態では、ベース層21に反転層が形成されない。このため、ドレイン電極32に正の電圧、例えば1600Vが印加されたとしても、ソース領域22からベース層21内に電子が流れず、SiC半導体装置は、ソース電極29とドレイン電極32との間に電流が流れないオフ状態となる。
【0054】
また、SiC半導体装置がオフ状態である場合には、ドレイン-ゲート間に電界がかかり、ゲート絶縁膜26の底部に電界集中が発生し得る。しかしながら、上記SiC半導体装置では、トレンチ25よりも深い位置に、第1ディープ層15およびJFET部14が備えられている。このため、第1ディープ層15およびJFET部14との間に構成される空乏層により、ドレイン電圧の影響による等電位線のせり上がりが抑制され、高電界がゲート絶縁膜26に入り込み難くなる。したがって、本実施形態では、ゲート絶縁膜26が破壊されることを抑制できる。
【0055】
また、FLR領域2aには、第1FLR部16と第2FLR部24とが形成されている。このため、第1FLR部16および第2FLR部24とドリフト層19との間に構成される空乏層により、ドレイン電圧の影響による等電位線が集中することを抑制できる。したがって、FLR領域2aの耐圧の向上を図ることができる。
【0056】
また、第1FLR部16と第2FLR部24との間に位置する電流分散層17は、イオン注入層17aを含んで形成されている。このため、この部分の電流分散層17がエピタキシャル膜のみによって構成される場合と比較して、電荷量を安定させることができ、FLR領域2aにおける耐圧を確保し易くできる。したがって、耐圧のばらつきを考慮してFLR領域2aを広くしなくてもよく、SiC半導体装置の小型化を図ることができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、第1FLR部16と第2FLR部24との間に位置する電流分散層17は、全体電荷量Qに対して重畳電荷量Qimpが50%以上となるように構成されている。このため、全体電荷量Qに対して重畳電荷量Qimpが支配的となり、電流分散層17の電荷量をさらに安定化させることができる。
【0058】
そして、ゲート電極27に所定のゲート電圧、例えば20Vが印加されると、ベース層21のうちのトレンチ25に接している表面にチャネルが形成される。これにより、ソース電極29とドレイン電極32との間に電流が流れ、SiC半導体装置がオン状態となる。なお、本実施形態では、チャネルを通過した電子が電流分散層17、JFET部14および低濃度層13を通過して基板11へ流れるため、電流分散層17、JFET部14および低濃度層13を有するドリフト層19が構成されているといえる。
【0059】
続いて、本実施形態のSiC半導体装置の製造方法について図4A図4Fを参照して説明する。
【0060】
まず、図4Aに示されるように、基板11の表面上に、SiCからなる、バッファ層12、低濃度層13、JFET部14が形成されたものを用意する。
【0061】
そして、図4Bに示されるように、図示しないマスクを用いてイオン注入を行うことにより、第1ディープ層15および第1FLR部16を形成する。本実施形態では、第1FLR部16の下面と第1ディープ層15の下面とが同じ深さとされ、第1FLR部16の厚さと第1ディープ層15の厚さとが同じとされ、第1FLR部16の不純物濃度と第1ディープ層15の不純物濃度とが同じとされている。このため、イオン注入を行うことにより、第1ディープ層15および第1FLR部16を同時に形成する。
【0062】
続いて、図4Cに示されるように、低濃度層13、JFET部14、第1ディープ層15、第1FLR部16上に、電流分散層17する構成層40をエピタキシャル成長させて半導体基板10を構成する。なお、この構成層40は、セル領域1においては、上記のZ軸方向に順に積層された電流分散層17、ベース層21、ソース領域22の厚さとされる。
【0063】
次に、図4Dに示されるように、構成層40上に図示しないマスクを用いてn型不純物をイオン注入することにより、半導体基板10の一面10aから所定深さの位置にイオン注入層17aを形成する。これにより、セル領域1においては、低濃度層13、JFET部14、イオン注入層17aおよび基準層17bを含む電流分散層17を有するドリフト層19が構成される。また、FLR領域2aにおける電流分散層17は、第1基準層171b、イオン注入層17a、第2基準層172bを含む構成とされる。なお、基準層17b、第1基準層171b、および第2基準層172bは、構成層40のうちのイオン注入層17aと異なる部分で構成される。
【0064】
次に、図4Eに示されるように、構成層40上に図示しないマスクを用いてp型不純物をイオン注入することにより、第2ディープ層18およびリサーフ層20を形成する。
【0065】
続いて、図4Fに示されるように、構成層40上に図示しないマスクを用いてp型不純物をイオン注入することにより、ベース層21および第2FLR部24を形成する。本実施形態では、第2FLR部24の下面とベース層21の下面とが同じ深さとされ、第2FLR部24の厚さとベース層21の厚さとが同じとされ、第2FLR部24の不純物濃度とベース層21の不純物濃度とが同じとされている。このため、イオン注入を行うことにより、ベース層21および第2FLR部24を同時に形成する。
【0066】
その後、図4Gに示されるように、詳細な工程については省略するが、所定の半導体製造プロセスを行い、ソース領域22、コンタクト領域23、トレンチゲート構造等を形成する。これにより、本実施形態のSiC半導体装置が製造される。
【0067】
以上説明した本実施形態によれば、FLR領域2aでは、第1FLR部16と第2FLR部24との間に位置する電流分散層17がイオン注入層17aを含んで形成されている。このため、この部分の電流分散層17がエピタキシャル膜のみによって構成される場合と比較して、電荷量を安定させることができ、FLR領域2aにおける耐圧を確保し易くできる。したがって、耐圧のばらつきを考慮してFLR領域2aを広くしなくてもよく、SiC半導体装置の小型化を図ることができる。
【0068】
(1)本実施形態では、第1FLR部16と第2FLR部24との間に位置する電流分散層17は、全体電荷量Qに対して重畳電荷量Qimpが50%以上とされている。このため、全体電荷量Qに対して重畳電荷量Qimpが支配的となり、電流分散層17の電荷量をさらに安定化させることができる。
【0069】
(2)本実施形態では、第1FLR部16と第2FLR部24との間に位置する電流分散層17は、第1基準層171b上にイオン注入層17aが配置されて構成されている。このため、第1FLR部16と第2FLR部24との間に位置する電流分散層17がイオン注入層17aのみで構成されている場合と比較して、第1FLR部16および第2FLR部24の本数を削減するためにイオン注入層17aの不純物濃度を高くしたとしても、電流分散層17、第1FLR部16、低濃度層13の交点となる部分(すなわち、図1中の領域A)に電界集中が発生し難い。したがって、リーク電流が増加することを抑制でき、さらに耐圧を確保し易くできる。
【0070】
(3)本実施形態では、第1FLR部16は、第1ディープ層15と同じ深さ、同じ厚さ、同じ不純物濃度とされている。このため、第1FLR部16と第1ディープ層15とを同じ工程で形成できる。また、第2FLR部24は、ベース層21と同じ深さ、同じ厚さ、同じ不純物濃度とされている。このため、第2FLR部24とベース層21とを同じ工程で形成できる。したがって、製造工程が複雑になることを抑制しつつ、第1FLR部16と第2FLR部24とを形成できる。
【0071】
(4)本実施形態では、第1FLR部16および第2FLR部24は、Z軸方向において、隣合う第1FLR部16に位置する部分と、隣合う第2FLR部24に位置する部分とが異なる位置となるように形成されている。このため、ドレイン電圧の影響による等電位線が集中することを抑制できる。
【0072】
(5)本実施形態では、第2FLR部24とイオン注入層17aとが接するように形成されている。言い換えると、第2FLR部24とイオン注入層17aとの間に基準層17bが配置されていない。このため、セル領域1においても、ベース層21とイオン注入層17aとが接した状態となり、ベース層21とイオン注入層17aとが離れている場合と比較して、オン抵抗が増加することを抑制できる。
【0073】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、イオン注入層17aと第1FLR部16との位置関係を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0074】
本実施形態の半導体装置では、図5に示されるように、イオン注入層17aは、FLR領域2aにおいて、隣合う第2FLR部24の間にも入り込むように形成されている。具体的には、隣合う第2FLR部24の間には、半導体基板10の一面10a側に第2基準層172bが配置され、他面10b側にイオン注入層17aが配置された状態となっている。
【0075】
以上説明した本実施形態のように、イオン注入層17aが隣合う第2FLR部24の間に配置されていても、第1FLR部16と第2FLR部24との間にイオン注入層17aを含む電流分散層17が配置されることにより、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、イオン注入層17aと第1FLR部16との位置関係を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0077】
本実施形態の半導体装置では、図6に示されるように、イオン注入層17aは、FLR領域2aにおいて、第2FLR部24と離れて形成されている。そして、イオン注入層17aと第2FLR部24との間には、第2基準層172bが配置されている。つまり、本実施形態の半導体装置では、FLR領域2aにおいて、第1FLR部16と第2FLR部24との間では、第1FLR部16側から第1基準層171b、イオン注入層17a、第2基準層172bが順に配置された状態となっている。
【0078】
以上説明した本実施形態のように、イオン注入層17aが第2FLR部24と離れて配置されていても、第1FLR部16と第2FLR部24との間にイオン注入層17aを含む電流分散層17が配置されることにより、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、イオン注入層17aの構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0080】
本実施形態の半導体装置では、図7に示されるように、イオン注入層17aは、FLR領域2aにおいて、間引かれた部分を有するように形成されている。なお、図7では、Z軸方向において、イオン注入層17aのうちの隣合う第2FLR部24の間に位置する部分が間引かれた図を示している。しかしながら、イオン注入層17aは、Z軸方向において、隣合う第1FLR部16の間に位置する部分が間引かれていてもよい。
【0081】
以上説明した本実施形態のように、イオン注入層17aが間引かれて配置されていても、第1FLR部16と第2FLR部24との間にイオン注入層17aを含む電流分散層17が配置されることにより、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0083】
上記各実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETを半導体素子の一例として説明した。しかしながら、これは一例を示したに過ぎず、半導体素子は、例えばnチャネルタイプに対して各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETとされてもよい。さらに、半導体装置は、MOSFET以外に、同様の構造のIGBTが形成された構成とされていてもよい。IGBTの場合、上記第1実施形態におけるn型のドレイン領域(すなわち、基板11)をp型のコレクタ領域に変更する以外は、上記第1実施形態で説明した縦型MOSFETと同様である。
【0084】
また、上記各実施形態では、第1ディープ層15がX軸方向に沿って延設されている例について説明したが、第1ディープ層15がY軸方向に延設されていてもよい。
【0085】
さらに、上記各実施形態では、JFET部14、第1ディープ層15、および第2ディープ層18等を備えない構成としてもよい。
【0086】
そして、上記各実施形態において、FLR領域2aにおいて、第1FLR部16と第2FLR部24との間に位置する電流分散層17は、イオン注入層17aのみで構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 セル領域
2 外周領域
2a FLR領域
11 基板
17a イオン注入層
19 ドリフト層
29 上部電極(第1電極)
32 下部電極(第2電極)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5
図6
図7