(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】車両および車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
B60L 58/26 20190101AFI20241126BHJP
B60L 50/64 20190101ALI20241126BHJP
B60L 58/27 20190101ALI20241126BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20241126BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20241126BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20241126BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241126BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20241126BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20241126BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241126BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20241126BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20241126BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20241126BHJP
【FI】
B60L58/26
B60L50/64
B60L58/27
B60L58/18
B60L3/00 S
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/633
H01M10/625
H01M10/6571
H01M10/6563
H01M10/651
(21)【出願番号】P 2021086973
(22)【出願日】2021-05-24
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大坪 伸光
(72)【発明者】
【氏名】辻 幸一
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-58121(JP,A)
【文献】特開2020-96508(JP,A)
【文献】特開2019-118221(JP,A)
【文献】特開2017-216765(JP,A)
【文献】特開2020-13726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
B60K 1/04
H01M 10/52-10/667
B60H 1/00- 3/06
H02J 7/00- 7/12
H02J 7/34- 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電池パックと、
前記第1の電池パックとは異なる位置に配置され、前記第1の電池パックに直列接続された第2の電池パックと、
前記第1の電池パックの温度調整が可能に構成された第1の温度調整装置と、
前記第2の電池パックの温度調整が可能に構成された第2の温度調整装置と、
前記第1および第2の温度調整装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記第1の電池パックの温度と前記第2の電池パックの温度との間の温度差が基準量を超える場合、前記温度差が前記基準量未満になるように、前記第1および第2の温度調整装置のうちの少なくとも一方を制御する、車両。
【請求項2】
前記第1の電池パックは、車室の外部に配置され、
前記第2の電池パックは、前記車室の内部に配置されている、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第1および第2の温度調整装置の各々は、前記第1および第2の電池パックのうちの対応する電池パックを冷却する冷却装置を含み、
前記制御装置は、前記温度差が前記基準量を超える場合、前記第1および第2の電池パックのうちの高温の電池パックが冷却されるように、前記高温の電池パックに対応する冷却装置を制御する、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記制御装置は、前記温度差が前記基準量を超える場合には、前記高温の電池パックの温度が所定の高温領域よりも低い温度領域内であっても、前記高温の電池パックが冷却されるように前記対応する冷却装置を制御する、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記第1および第2の温度調整装置の各々は、前記第1および第2の電池パックのうちの対応する電池パックを加熱する加熱装置を含み、
前記制御装置は、前記温度差が前記基準量を超える場合、前記第1および第2の電池パックのうちの低温の電池パックが加熱されるように、前記低温の電池パックに対応する加熱装置を制御する、請求項1または2に記載の車両。
【請求項6】
前記制御装置は、前記温度差が前記基準量を超える場合には、前記低温の電池パックの温度が所定の低温領域よりも高い温度領域内であっても、前記低温の電池パックが加熱されるように前記対応する加熱装置を制御する、請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記第1および第2の温度調整装置の各々は、
前記第1および第2の電池パックのうちの対応する電池パックを冷却する冷却装置と、
前記第1および第2の電池パックのうちの対応する電池パックを加熱する加熱装置とを含み、
前記制御装置は、前記温度差が前記基準量を超える場合、
前記温度差が基準量未満になるように前記第1および第2の電池パックのうちの高温の電池パックを冷却するときの電力消費量である冷却電力量と、前記温度差が基準量未満になるように前記第1および第2の電池パックのうちの低温の電池パックを加熱するときの電力消費量である加熱電力量とを算出し、
前記冷却電力量が前記加熱電力量よりも小さいときには、前記高温の電池パックが冷却されるように、前記高温の電池パックに対応する冷却装置を制御する一方で、
前記加熱電力量が前記冷却電力量よりも小さいときには、前記低温の電池パックが加熱されるように、前記低温の電池パックに対応する加熱装置を制御する、請求項1または2に記載の車両。
【請求項8】
前記制御装置は、前記温度差が前記基準量を超える場合には、前記高温の電池パックおよび前記低温の電池パックの各々の温度が所定の高温領域よりも低く、かつ、所定の低温領域よりも高い温度領域内であっても、
前記冷却電力量が前記加熱電力量よりも小さいときには、前記高温の電池パックが冷却されるように、前記高温の電池パックに対応する冷却装置を制御する一方で、
前記加熱電力量が前記冷却電力量よりも小さいときには、前記低温の電池パックが加熱されるように、前記低温の電池パックに対応する加熱装置を制御する、請求項7に記載の車両。
【請求項9】
車両の制御方法であって、
前記車両は、
第1の電池パックと、
前記第1の電池パックとは異なる位置に配置され、前記第1の電池パックに直列接続された第2の電池パックと、
前記第1の電池パックの温度調整が可能に構成された第1の温度調整装置と、
前記第2の電池パックの温度調整が可能に構成された第2の温度調整装置とを備え、
前記制御方法は、
前記第1の電池パックの温度と前記第2の電池パックの温度との間の温度差を取得するステップと、
前記温度差が基準量を超える場合、前記温度差が前記基準量未満になるように前記第1および第2の温度調整装置のうちの少なくとも一方を動作させるステップとを含む、車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両および車両の制御方法に関し、より特定的には、電池パックが搭載された車両の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2010-23636号公報(特許文献1)は、複数の電池パックが異なる位置に搭載された車両を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電気自動車またはプラグインハイブリッド車等の車両においては、電池パックに蓄えられた電力で走行可能な距離(いわゆるEV距離)を延ばすため、電池パックが大型化する傾向がある。一方で、電池パックを搭載可能な車両スペースは限られている。そこで、大型の電池パックに代えて、より小型の2つの電池パックを用いることが考えられる。2つの電池パックは、直列接続され、互いに異なる位置に搭載される。たとえば、一方の電池パックを車室外(床下など)に配置し、他方の電池パックを車室内(トランク内など)に配置できる。
【0005】
上記のように2つの電池パックが搭載された車両においては、電池パック間で使用環境が異なるため、一方の電池パックが他方の電池パックよりも早期に劣化する可能性が考えられる。一般に、電池パックの劣化は、満充電容量の低下、出力性能(放電可能な最大電力)の低下などを引き起こす。特に、2つの電池パックが直列接続されている場合には、一方の電池パックの出力性能が低下すると、たとえ他方の電池パックの出力性能は低下していなかったとしても、2つの電池パックの全体としての出力性能が低下する。満充電容量についても同様である。よって、2つの電池パックの全体としての劣化をできるだけ抑制することが望ましい。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、直列接続された2つの電池パックが搭載された車両において、2つの電池パックの全体としての劣化を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示のある局面に係る車両は、第1の電池パックと、第1の電池パックとは異なる位置に配置され、第1の電池パックに直列接続された第2の電池パックと、第1の電池パックの温度調整が可能に構成された第1の温度調整装置と、第2の電池パックの温度調整が可能に構成された第2の温度調整装置と、第1および第2の温度調整装置を制御する制御装置とを備える。制御装置は、第1の電池パックの温度と第2の電池パックの温度との間の温度差が基準量を超える場合、温度差が基準量未満になるように、第1および第2の温度調整装置のうちの少なくとも一方を制御する。
【0008】
(2)第1の電池パックは、車室の外部に配置されている。第2の電池パックは、車室の内部に配置されている。
【0009】
上記(1),(2)の構成のように第1の電池パックが車室外部に配置され、第2の電池パックが車室の内部に配置されている構成等では、第1の電池パックの温度と第2の電池パックの温度との間の温度差が大きくなりやすい。そこで、温度差が基準量を超える場合には、第1および第2の温度調整装置のうちの少なくとも一方を制御することで、温度差が基準量未満に調整される。これにより、第1の電池パックと第2の電池パックとの間での温度に依存する劣化の進行度合いの差が低減される。よって、上記(1),(2)の構成によれば、2つの電池パックの全体としての劣化を抑制できる。
【0010】
(3)第1および第2の温度調整装置の各々は、第1および第2の電池パックのうちの対応する電池パックを冷却する冷却装置を含む。制御装置は、温度差が基準量を超える場合、第1および第2の電池パックのうちの高温の電池パックが冷却されるように、高温の電池パックに対応する冷却装置を制御する。
【0011】
(4)制御装置は、温度差が基準量を超える場合には、高温の電池パックの温度が所定の高温領域よりも低い温度領域内であっても、高温の電池パックが冷却されるように対応する冷却装置を制御する。
【0012】
上記(3),(4)の構成においては、温度差が基準量を超える場合には、たとえば高温の電池パックの温度が所定の高温領域よりも低い温度領域内であっても、高温の電池パックが冷却される。これにより、2つの電池パックの全体としての劣化を抑制できる。
【0013】
(5)第1および第2の温度調整装置の各々は、第1および第2の電池パックのうちの対応する電池パックを加熱する加熱装置を含む。制御装置は、温度差が基準量を超える場合、第1および第2の電池パックのうちの低温の電池パックが加熱されるように、低温の電池パックに対応する加熱装置を制御する。
【0014】
(6)制御装置は、温度差が基準量を超える場合には、低温の電池パックの温度が所定の低温領域よりも高い温度領域内であっても、低温の電池パックが加熱されるように対応する加熱装置を制御する。
【0015】
上記(5),(6)の構成においては、温度差が基準量を超える場合には、たとえば低温の電池パックの温度が所定の低温領域よりも低い高い温度領域内であっても、低温の電池パックが加熱される。これにより、2つの電池パックの全体としての劣化を抑制できる。
【0016】
(7)第1および第2の温度調整装置の各々は、第1および第2の電池パックのうちの対応する電池パックを冷却する冷却装置と、第1および第2の電池パックのうちの対応する電池パックを加熱する加熱装置とを含む。制御装置は、温度差が基準量を超える場合、温度差が基準量未満になるように高温の電池パックを冷却するときの電力消費量である冷却電力量と、温度差が基準量未満になるように低温の電池パックを加熱するときの電力消費量である加熱電力量とを算出する。制御装置は、冷却電力量が加熱電力量よりも小さいときには、高温の電池パックが冷却されるように、高温の電池パックに対応する冷却装置を制御する一方で、加熱電力量が冷却電力量よりも小さいときには、低温の電池パックが加熱されるように、低温の電池パックに対応する加熱装置を制御する。
【0017】
(8)制御装置は、高温の電池パックおよび低温の電池パックの各々の温度が所定の高温領域よりも低く、かつ、所定の低温領域よりも高い温度領域内であっても、温度差が基準量を超える場合には、冷却電力量が加熱電力量よりも小さいときには、高温の電池パックが冷却されるように、高温の電池パックに対応する冷却装置を制御する一方で、加熱電力量が冷却電力量よりも小さいときには、低温の電池パックが加熱されるように、低温の電池パックに対応する加熱装置を制御する。
【0018】
上記(7),(8)の構成においては、温度差が基準量を超える場合には、たとえば、高温の電池パックおよび低温の電池パックの各々の温度が所定の高温領域よりも低く、かつ、所定の低温領域よりも高い温度領域内であっても、高温の電池パックが冷却されるか、低温の電池パックが加熱される。これにより、2つの電池パックの全体としての劣化を抑制できる。また、高温の電池パックの冷却と低温の電池パックの加熱とのうち、電力消費量がより小さい方が実行される。これにより、電池パックの温度調整後にも、より大きな電力を電池パックの残るので、車両が走行可能な距離(EV距離)を確保できる。
【0019】
(9)本開示の他の局面に係る車両の制御方法において、車両は、第1の電池パックと、第1の電池パックとは異なる位置に配置され、第1の電池パックに直列接続された第2の電池パックと、第1の電池パックの温度調整が可能に構成された第1の温度調整装置と、第2の電池パックの温度調整が可能に構成された第2の温度調整装置とを備える。制御方法は、第1の電池パックの温度と第2の電池パックの温度との間の温度差を取得するステップと、温度差が基準量を超える場合、温度差が基準量未満になるように第1および第2の温度調整装置のうちの少なくとも一方を制御するステップとを含む。
【0020】
上記(9)の方法によれば、上記(1)の構成と同様に、2つの電池パックの全体としての劣化を抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、2つの電池パックが搭載された車両において、2つの電池パックの全体としての劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る車両の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】車両の構成をより詳細に示す回路ブロック図である。
【
図3】実施の形態1における電池温調制御の概要を説明するための図である。
【
図4】実施の形態1における電池温調制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態2における電池温調制御の概要を説明するための図である。
【
図6】実施の形態2における電池温調制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態3における電池温調制御の概要を説明するための図である。
【
図8】冷却電力量および加熱電力量の算出手法を説明するためのタイムチャートである。
【
図9】実施の形態3における電池温調制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0024】
[実施の形態1]
図1は、本開示の実施の形態1に係る車両の全体構成を概略的に示す図である。車両1は、電池パックが搭載される車両であって、この例では電気自動車(EV:Electric Vehicle)である。車両1は、ハイブリッド車(HV:Hybrid Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHV:Plug-in Hybrid Vehicle)または燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)であってもよい。
【0025】
車両1は、第1電池パック11と、第2電池パック12とを備える。本実施の形態において、第1電池パック11は、車室の外部(この例では床下)に配置されている。第2電池パック12は、車室の内部(この例ではトランク内)に配置されている。
【0026】
ただし、第1電池パック11および第2電池パック12の配置は、車室の外部と内部との組み合わせには限定されない。第1電池パック11と第2電池パック12とは、異なる位置に搭載されていればよく、たとえば特許文献1に記載されているような様々な位置に配置され得る。
【0027】
図2は、車両1の構成をより詳細に示す回路ブロック図である。車両1は、第1電池パック11および第2電池パック12に加えて、電池温度センサ21,22と、電流センサ23と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)31と、PCU(Power Control Unit)32と、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)33と、DC/DCコンバータ34と、電気ヒータ41,42と、冷却ファン51,52と、インレット61と、AC/DCコンバータ62と、充電リレー(CHR:Charge Relay)63と、DCM(Data Communication Module)71と、GPS(Global Pointing System)受信機72と、外気温センサ81と、車室内温度センサ82と、ECU(Electronic Control Unit)9とを備える。
【0028】
第1電池パック11および第2電池パック12の各々は、複数のセル(図示せず)を含む組電池である。各セルは、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池などの二次電池である。第1電池パック11と第2電池パック12とは直列接続されている。以下、第1電池パック11および第2電池パック12を包括的に「バッテリ」とも記載する。バッテリは、モータジェネレータ33を駆動するための電力を蓄え、PCU32を通じてモータジェネレータ33へ電力を供給する。また、バッテリは、車両1のプラグイン充電時にはAC/DCコンバータ62から出力された電力により充電される。さらに、バッテリは、モータジェネレータ33の発電時(回生発電時など)にもPCU32を通じて発電電力を受けて充電される。
【0029】
電池温度センサ21は、第1電池パック11の温度Tb1を検出する。電池温度センサ22は、第2電池パック12の温度Tb2を検出する。電流センサ23は、バッテリに入出力される電流Iを検出する。各センサは、その検出結果をECU9に出力する。図示しないが、バッテリには、各セルの電圧を検出する電圧センサも設けられている。
【0030】
SMR31は、バッテリ(直列接続された第1電池パック11および第2電池パック12の両端)に電気的に接続されている。SMR31は、ECU9からの制御指令に従って開閉される。これにより、バッテリが電力線に電気的に接続されたり、電力線から電気的に遮断したりする。
【0031】
PCU32は、インバータと、コンバータ(いずれも図示せず)とを含む。PCU32は、ECU9からの制御指令に従って、バッテリとモータジェネレータ33との間で双方向の電力変換を実行する。
【0032】
モータジェネレータ33は、たとえば永久磁石がロータ(図示せず)に埋設された三相交流回転電機である。モータジェネレータ33は、バッテリからの供給電力を用いて駆動軸を回転させる。また、モータジェネレータ33は回生制動によって発電することも可能である。モータジェネレータ33によって発電された交流電力は、PCU32により直流電力に変換されてバッテリに充電される。
【0033】
DC/DCコンバータ34は、バッテリと負荷(具体的には電気ヒータ41,42および冷却ファン51,52)との間に電気的に接続された片方向DC/DCコンバータである。DC/DCコンバータ34は、ECU9からの制御指令に従って、バッテリから伝達される電力の電圧を降圧し、降圧した電圧を負荷に供給する。
【0034】
電気ヒータ41は、たとえばPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータであって、ECU9からの制御指令に従って第1電池パック11を加熱するように構成されている。電気ヒータ42は、たとえばPTCヒータであって、ECU9からの制御指令に従って第2電池パック12を加熱するように構成されている。
【0035】
冷却ファン51は、ECU9からの制御指令に従って第1電池パック11を冷却するように構成されている。冷却ファン52は、ECU9からの制御指令に従って第2電池パック12を冷却するように構成されている。
【0036】
このように、本実施の形態では、第1電池パック11と第2電池パック12とを別々に加熱したり冷却したりすることができる。なお、電気ヒータ41,42は、本開示に係る「加熱装置」の一例である。冷却ファン51,52は、本開示に係る「冷却装置」の一例である。本開示に係る「冷却装置」は、空冷式の冷却ファンに限らず、たとえばバッテリを冷却液(冷媒)を用いて冷却する冷却機構であってもよい。
【0037】
インレット61は、図示しない充電ケーブルの先端に設けられた充電コネクタを挿入可能に構成されている。充電ケーブルを介して、車両1と、車両1の外部に設置された充電器とが電気的に接続される。
【0038】
AC/DCコンバータ62は、インレット61と充電リレー63との間に電気的に接続されている。AC/DCコンバータ62は、充電器からインレット61を介して供給される交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を充電リレー63に出力する。また、AC/DCコンバータ62は、バッテリ(またはPCU32)から充電リレー63を介して供給される直流電力を交流電力に変換し、その交流電力をインレット61に出力する。
【0039】
充電リレー63は、AC/DCコンバータ62とバッテリとを結ぶ電力線に電気的に接続されている。充電リレー63は、ECU9からの制御指令に応じて開放/閉成される。
【0040】
DCM71は、外部サーバ(図示せず)と無線での双方向通信が可能に構成されている。DCM71を用いた通信により、ECU9は、車両1の走行地域における様々な情報(天気予報、外気温の変化に関する情報など)を取得できる。
【0041】
GPS受信機72は、ナビゲーションシステムに設けられ、人工衛星からの電波に基づいて車両1の位置を特定する。ECU90は、GPS受信機72により特定された車両1の位置情報とメモリ(図示せず)に格納された道路地図データとに基づいて、車両1の現在地から目的地までの走行予定経路を取得できる。
【0042】
外気温センサ81は、車両1の外気温Taを検出する。車室内温度センサ82は、車室内温度Tcを検出する。各センサは、その検出結果をECU9に出力する。
【0043】
ECU9は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリと、各種信号が入出力される入出力ポート(いずれも図示せず)とを含む。ECU9は、各センサからの信号の入力ならびにメモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両1に含まれる機器類を制御する。なお、ECU9は、機能毎に分割された複数のECUにより構成されていてもよい。
【0044】
以上のように構成された車両1において、第1電池パック11と第2電池パック12ととの間では使用環境が異なる。車室の外部に配置された第1電池パック11は、第2電池パック12と比べて、外気温Taの影響を受けやすい。これに対し、車室の内部に配置された第2電池パック12は、第1電池パック11と比べて、車室内温度Tcの影響を受けやすい。たとえば外気温が高い場合、第1電池パック11の温度は外気温Taとともに上昇しやすい。一方、空調装置(図示せず)の冷房運転により第2電池パック12も冷やされるため、第2電池パック12の温度は第1電池パック11の温度ほどは上昇しにくい。逆に外気温が低い場合には、第1電池パック11の温度は外気温Taとともに低下しやすい。一方、空調装置の暖房運転により第2電池パック12も暖められるため、第2電池パック12の温度は第1電池パック11の温度ほどは低下しにくい。
【0045】
このように、第1電池パック11と第2電池パック12との間では、使用環境の温度の違いに起因する温度バラツキが生じ得る。一般に、二次電池の温度が高いほど、その二次電池の劣化は速く進行する。具体的には、電池パックの出力性能が低下(内部抵抗が上昇)したり、満充電容量が減少したりする。したがって、過度に大きな温度バラツキが生じた場合、一方の電池パックの劣化が他方の電池パックの劣化よりも速く進行する結果、劣化の進行度合いに顕著な違いが生じる可能性がある。
【0046】
第1電池パック11と第2電池パック12とは直列接続されている。そのため、一方の電池パックの出力性能が低下すると、たとえ他方の電池パックの出力性能は低下していなくても、バッテリ(第1電池パック11および第2電池パック12)全体としての出力性能が低下する。満充電容量についても同様である。よって、温度バラツキを低減することで劣化の進行度合いの違いを低減し、それによりバッテリ全体としての劣化をできるだけ抑制することが望ましい。そこで、本実施の形態において、ECU9は、第1電池パック11および/または第2電池パック12の温度を調整する「電池温調制御」を実行する。
【0047】
<電池温調制御>
図3は、実施の形態1における電池温調制御の概要を説明するための図である。この例では、電池パックの温度が高温領域、常温領域および低温領域に区別されている。常温領域の上限温度をULと記載し、下限温度をLLと記載する。上限温度は、たとえば40℃~50℃の範囲内の温度である。下限温度LLは、たとえば氷点下である。
【0048】
高温領域とは、常温領域の上限温度ULよりも高い温度領域であり、電池パックを保護するために電池パックを冷却することが望ましい領域である。低温領域とは、常温領域の下限温度LLよりも低い温度領域であり、電池パックを保護するために電池パックを加熱することが望ましい領域である。なお、常温領域が本開示に係る「所定の高温領域よりも低い温度領域」および「所定の低温領域よりも高い温度領域」に相当する。
【0049】
第1電池パック11の温度である「電池温度Tb1」と、第2電池パック12の温度である「電池温度Tb2」との間の差分を「温度バラツキΔTb」と記載する。本実施の形態においては、温度バラツキΔTb(絶対値)が基準量よりも大きい場合、ECU9は、たとえ電池温度Tb1,Tb2が常温領域に収まっていたとしても、第1電池パック11および第2電池パック12のうちの高温の電池パックの冷却を指令する。
図3の例では、第1電池パック11の方が第2電池パック12よりも高温であるので、第1電池パック11が冷却ファン51により冷却される。これにより、温度バラツキΔTbが基準量未満に低減されるので、第1電池パック11の劣化が第2電池パック12の劣化よりも進行しやすい状況が緩和される。よって、バッテリ全体としての出力性能および/または満充電容量の低下を抑制できる。
【0050】
<処理フロー>
図4は、実施の形態1における電池温調制御の処理手順を示すフローチャートである。
図4および後述する
図6等に示されるフローチャートは、予め定められた条件が成立する度(たとえば制御周期毎)に図示しないメインルーチンから呼び出されて実行される。各ステップは、ECU9によるソフトウェア処理により実現されるが、ECU9内に配置されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。
【0051】
S101において、ECU9は、電池温度センサ21から電池温度Tb1を取得するとともに、電池温度センサ22から電池温度Tb2を取得する。
【0052】
S102において、ECU9は、電池温度Tb1と電池温度Tb2との間の温度バラツキΔTbが所定の基準量を超えているかどうかを判定する。基準量は、第1電池パック11および第2電池パック12の特性に応じて定められる。より詳細には、事前の評価試験の結果に基づき、第1電池パック11と第2電池パック12との間の劣化の進行度合いの違いが無視できない程度に大きくなる温度差を基準量として定めることができる。基準量は、たとえば10℃~20℃の範囲内の温度である。温度バラツキΔTbが基準量以下である場合(S102においてNO)には、以降の処理は実行されず、処理がメインルーチンに戻される。
【0053】
温度バラツキΔTbが基準量を超えている場合(S102においてYES)、ECU9は、電池温度Tb1および電池温度Tb2のうちの少なくとも一方が下限温度LLよりも高いかどうかを判定する(S103)。電池温度Tb1,Tb2の両方が下限温度LL以下(すなわち、低温領域内)である場合(S103においてNO)には、それ以上、第1電池パック11および第2電池パック12を冷却しないことが望ましい。よって、ECU9は、以降の処理を実行することなく、処理をメインルーチンに戻す。
【0054】
電池温度Tb1および電池温度Tb2のうちの少なくとも一方が下限温度LLよりも高い場合(S103においてYES)、ECU9は、処理をS104に進め、電池温度Tb1が電池温度Tb2よりも高いかどうかを判定する(S104)。
【0055】
電池温度Tb1が電池温度Tb2よりも高い場合(S104においてYES)、ECU9は、第1電池パック11を冷却するように冷却ファン51を制御する(S105)。ECU9は、所定の冷却終了条件が成立するまで第1電池パック11の冷却を継続する(S106においてNO)。ECU9は、たとえば、電池温度Tb1が電池温度Tb2まで低下し、温度バラツキΔTbが解消された場合に冷却終了条件が成立したと判定する。ただし、ECU9は、温度バラツキΔTbが基準量未満になる各種条件の成立時に冷却終了条件が成立したと判定できる。ECU9は、電池温度Tb1が所定温度だけ低下した場合に冷却終了条件が成立したと判定してもよいし、第1電池パック11の冷却開始時から所定時間が経過した場合に冷却終了条件が成立したと判定してもよい。冷却終了条件が成立すると(S106においてYES)、ECU9は、冷却ファン51を停止させて第1電池パック11の冷却を終了する(S107)。その後、ECU9は、処理をメインルーチンに戻す。
【0056】
一方、電池温度Tb2が電池温度Tb1よりも高い場合(S104においてNO)、ECU9は、第2電池パック12を冷却するように冷却ファン52を制御する(S108)。ECU9は、たとえば、電池温度Tb2が電池温度Tb1まで低下した場合に第2電池パック12の冷却を終了する(S110)。ECU9は、電池温度Tb2が所定温度だけ低下した場合、または、第2電池パック12の冷却開始時から所定時間が経過した場合に、第2電池パック12の冷却を終了してもよい。その後、ECU9は、処理をメインルーチンに戻す。
【0057】
以上のように、電池温度Tb1と電池温度Tb2との間の温度バラツキΔTbが基準量を超えた場合には、相対的に高温の電池パックの劣化が相対的に低温の電池パックの劣化よりも顕著に速く進行する可能性がある。第1電池パック11と第2電池パック12とは直列接続されているので、劣化により高温の電池パックの出力性能が低下すると、2つの電池パック全体としての出力性能が低下する。したがって、実施の形態1においては、温度バラツキΔTbが基準量を超えた場合には、第1電池パック11および第2電池パック12のうちの高温の電池パックを冷却することで、温度バラツキΔTbが基準量未満に低減される。これにより、高温の電池パックの劣化の進行速度と低温の電池パックの劣化の進行速度とが近付くため、劣化の進行度合いの違いが小さくなる。よって、実施の形態1によれば、バッテリ(第1電池パック11および第2電池パック12)全体としての劣化を抑制できる。
【0058】
[実施の形態2]
実施の形態1では、高温の電池パックの冷却により温度バラツキΔTbを低減する構成について説明した。実施の形態2においては、低温の電池パックの加熱により温度バラツキΔTbを低減する構成について説明する。なお、実施の形態2に係る車両の構成は、実施の形態1に係る車両1の構成(
図1および
図2参照)と共通であるため、説明は繰り返さない。
【0059】
図5は、実施の形態2における電池温調制御の概要を説明するための図である。実施の形態2においては、温度バラツキΔTb(絶対値)が基準量よりも大きい場合、ECU9は、たとえ電池温度Tb1,Tb2が常温領域に収まっていたとしても、第1電池パック11および第2電池パック12のうちの低温の電池パックの加熱を指令する。
図5の例では、第2電池パック12が電気ヒータ42により加熱される。これにより、温度バラツキΔTbが低減されるので、第1電池パック11の劣化が第2電池パック12の劣化よりも進行しやすい状況が緩和される。よって、バッテリ全体としての出力性能および/または満充電容量の低下を抑制できる。
【0060】
図6は、実施の形態2における電池温調制御の処理手順を示すフローチャートである。S201,S202の処理は、実施の形態1におけるS101,S102の処理(
図4参照)と同等である。
【0061】
S203において、ECU9は、電池温度Tb1および電池温度Tb2のうちの少なくとも一方が上限温度UL未満であるかどうかを判定する。電池温度Tb1,Tb2の両方が上限温度UL以上(すなわち、高温領域内)である場合(S203においてNO)には、それ以上、第1電池パック11および第2電池パック12を昇温させないことが望ましい。よって、ECU9は、以降の処理を実行することなく、処理をメインルーチンに戻す。
【0062】
電池温度Tb1および電池温度Tb2のうちの少なくとも一方が上限温度UL未満である場合(S203においてYES)、ECU9は、処理をS204に進め、電池温度Tb1が電池温度Tb2よりも高いかどうかを判定する。
【0063】
電池温度Tb1が電池温度Tb2よりも高い場合(S204においてYES)、ECU9は、第2電池パック12を加熱するように電気ヒータ42を制御する(S205)。ECU9は、所定の加熱終了条件が成立するまで第2電池パック12の加熱を継続する(S206においてNO)。ECU9は、たとえば、電池温度Tb2が電池温度Tb1まで上昇し、温度バラツキΔTbが解消された場合に加熱終了条件が成立したと判定する。ただし、ECU9は、温度バラツキΔTbが基準量未満になる各種条件の成立時に加熱終了条件が成立したと判定できる。ECU9は、電池温度Tb2が所定温度だけ上昇した場合に加熱終了条件が成立したと判定してもよいし、第2電池パック12の加熱開始時から所定時間が経過した場合に加熱終了条件が成立したと判定してもよい。加熱終了条件が成立すると(S206においてYES)、ECU9は、電気ヒータ42を停止させて第2電池パック12の加熱を終了する(S207)。その後、ECU9は、処理をメインルーチンに戻す。
【0064】
一方、電池温度Tb2が電池温度Tb1よりも高い場合(S204においてNO)、ECU9は、第1電池パック11を加熱するように電気ヒータ41を制御する(S208)。ECU9は、たとえば、電池温度Tb1が電池温度Tb2まで上昇した場合に第1電池パック11の加熱を終了する(S210)。ECU9は、電池温度Tb1が所定温度だけ低下した場合、または、第1電池パック11の加熱開始時から所定時間が経過した場合に、第1電池パック11の加熱を終了してもよい。その後、ECU9は、処理をメインルーチンに戻す。
【0065】
以上のように、実施の形態2においては、温度バラツキΔTbが基準量を超えた場合には、第1電池パック11および第2電池パック12のうちの低温の電池パックを加熱することで、温度バラツキΔTbが基準量未満に低減される。これにより、高温の電池パックの劣化の進行速度と低温の電池パックの劣化の進行速度とが近付くため、劣化の進行度合いの違いが小さくなる。よって、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、バッテリ全体としての劣化を抑制できる。
【0066】
なお、実施の形態1,2においては、高温の電池パックの冷却と、低温の電池パックの加熱とのうちのいずれか一方のみが実行される例について説明した。しかし、ECU9は、高温の電池パックを冷却するように電気ヒータを制御しつつ、低温の電池パックを加熱するように冷却ファンを制御してもよい。
【0067】
[実施の形態3]
実施の形態3においては、高温の電池パックの冷却と、低温の電池パックの加熱とのうちの一方が車両1の走行状況に応じて適宜選択される構成について説明する。
【0068】
図7は、実施の形態3における電池温調制御の概要を説明するための図である。実施の形態3においては、温度バラツキΔTbが基準量を超えている場合(または温度バラツキΔTbが基準量を超えると予測される場合)、ECU9は、相対的に高温の電池パックを冷却するのに消費される電力量(冷却電力量)α[単位:Wh]と、相対的に低温の電池パックを加熱するのに消費される電力量(加熱電力量)β[単位:Wh]とを算出する。
図5に示す例では、第1電池パック11が第2電池パック12よりも高温である。したがって、電池温度Tb1を電池温度Tb2へと低下させるための冷却電力量αと、電池温度Tb2を電池温度Tb1へと上昇させるための加熱電力量βとが算出される。
【0069】
ECU9は、冷却電力量αと加熱電力量βとを比較する。冷却電力量αが加熱電力量β以下(α≦β)である場合、ECU9は、第1電池パック11の冷却を選択する。一方、冷却電力量αが加熱電力量βよりも大きい(α>β)場合、ECU9は、第2電池パック12の加熱を選択する。以下では簡単のため、第1電池パック11および第2電池パック12のうちの高温の電池パックを「高温電池」とも略し、低温の電池パックを「低温電池」とも略す。
【0070】
図8は、冷却電力量αおよび加熱電力量βの算出手法を説明するためのタイムチャートである。横軸は経過時間を表す。縦軸は上から順に、高温電池が冷却される場合の各電池パックの温度、低温電池が加熱される場合の各電池パックの温度、および、バッテリに入出力される電流を表す。
【0071】
まず、冷却電力量αの算出手法について説明する。
図8では対比のため、高温電池が冷却された場合の高温電池の温度推移と、高温電池が冷却されなかった場合の高温電池の温度推移とが併せて示されている。この例に示す状況では、高温電池および低温電池の各々の温度が時間の経過とともに徐々に上昇している。
【0072】
現時刻t1において、たとえば高温電池と低温電池との間の温度差(温度バラツキΔTb)が基準量を超え、高温電池の冷却が開始される。そうすると、高温電池が冷却されなかった場合と比べて高温電池の温度上昇が緩やかになることで、温度バラツキΔTbが次第に減少する。この例では時刻t3において高温電池の温度が低温電池の温度に一致した場合に冷却終了条件が成立する。
【0073】
ECU9は、上記の冷却終了条件に加えて冷却ファン51,52の冷却能力を考慮した上で、高温電池の環境温度と、高温電池において発生するジュール熱とに応じて、冷却電力量αを算出する。より具体的には、ECU9のメモリには、外気温Taと、車室内温度Tcと、高温電池に入出力される電流の2乗値I2(∝ジュール熱)と、単位時間当たりの高温電池の温度変化量ΔTとの間の対応関係が、たとえばマップとして格納されている。このマップは、事前の実験結果またはシミュレーション結果に基づき、冷却ファン51,52の冷却能力に応じて準備される。
【0074】
ECU9は、外気温Taとしては、たとえば外気温センサ81により検出された値を使用できる。ECU9は、車両1の走行地域における天気予報(外気温を含む気象情報)をDCM71を介して外部サーバ(図示せず)から取得してもよい。
【0075】
ECU9は、電流Iとしては、GPS受信機72により特定される車両1の走行位置に応じた値を使用できる。たとえば、今回の車両1の走行予定経路を車両1が過去に走行したことがある場合には、ECU9は、過去の車両1の走行履歴に基づいて、電流Iに関するデータを外部サーバとの通信により取得できる。今回の車両1の走行予定経路を車両1が走行したことがない場合には、ECU9は、車両1と同型の他の多数の車両の走行履歴(いわゆるビッグデータ)から電流Iに関するデータを取得できる。
【0076】
なお、高温電池が車室の外部に配置された第1電池パック11である場合、外気温Taが高温電池を大きく左右する一方で、車室内温度Tcが高温電池の温度に与える影響は比較的小さい。したがって、上記マップは、車室内温度Tcを含まないもの(すなわち、外気温Taと、電流の2乗値I2と、単位時間当たりの高温電池の温度変化量ΔTとの間の対応関係を規定するもの)であってもよい。一方、高温電池が車室の内部に配置された第2電池パック12である場合には、外気温Taが高温電池の温度に与える影響は比較的小さい。したがって、上記マップは、外気温Taを含まないもの(車室内温度Tcと、電流の2乗値I2と、単位時間当たりの高温電池の温度変化量ΔTとの間の対応関係を規定する)ものであってもよい。
【0077】
ECU9は、当該マップを参照することで、外気温センサ81により検出された外気温Taおよび/または車室内温度センサ82により検出された車室内温度Tcと、電流センサ23により検出された電流の2乗値I2とから、単位時間当たりの高温電池の温度変化量ΔTを算出できる。したがって、ECU9は、単位時間当たりの温度変化量Δに基づき、時刻t1から時刻t3までの期間中の高温電池の温度推移を推定できる。
【0078】
さらに、ECU9は、冷却ファン51,52の仕様から、単位時間当たりの冷却電力量Δαを算出可能である。よって、ECU9は、現時刻から冷却終了条件が成立するまでの期間に亘って単位時間毎の冷却電力量Δαを積算することで、冷却電力量αを算出できる。
【0079】
冷却と加熱とが異なるものの、ECU9は加熱電力量βについても同様に算出できるため、加熱電力量βの算出手法についての詳細な説明は繰り返さない。
図8に示す例では、冷却終了条件が成立する時刻t3に先立つ時刻t2に加熱終了条件が成立する。
【0080】
ECU9は、冷却電力量αと加熱電力量βとを比較し、より消費電力量が小さな態様で電池パックの温度調整を行う。つまり、ECU9は、冷却電力量αが加熱電力量β以下である場合には高温電池を冷却する一方で、加熱電力量βが冷却電力量αよりも小さい場合には低温電池を加熱する。このような冷却または加熱によっても温度バラツキΔTbが低減されるので、実施の形態1,2と同様に、高温電池の劣化が低温電池の劣化よりも過度に進行しやすい状況が緩和される。よって、バッテリ全体としての出力性能および/または満充電容量の低下を抑制できる。
【0081】
なお、
図8では、現時刻t1に温度バラツキΔTbが基準量を超えたため、冷却または加熱が開始されると説明したが、冷却または加熱の開始タイミングはこれに限定されない。温度バラツキΔTbが基準量を超えるのに先立って冷却または加熱が開始されてもよい。言い換えると、ECU9は、温度バラツキΔTbが基準量を超えることが予測される場合に冷却または加熱を開始してもよい。
【0082】
図9は、実施の形態3における電池温調制御の処理手順を示すフローチャートである。S301,S302の処理は、実施の形態1におけるS101,S102の処理(
図4参照)と同等である。
【0083】
温度バラツキΔTbが基準量を超えている場合または温度バラツキΔTbが基準量を超えると予測される場合(S302においてYES)、ECU9は、高温電池の温度が上限温度ULよりも高いかどうかを判定する(S303)。高温電池の温度が上限温度ULよりも高い場合(S303においてYES)、ECU9は、高温電池を冷却するように冷却ファン(冷却ファン51,52のうち高温電池に対応するもの)を制御する(S304)。
【0084】
高温電池の温度が上限温度UL以下である場合(S303においてNO)、ECU9は、低温電池の温度が下限温度LLよりも低いかどうかを判定する(S305)。低温電池の温度が下限温度LLよりも低い場合(S305においてYES)、ECU9は、低温電池を加熱するように電気ヒータ(電気ヒータ41,42のうち低温電池に対応するもの)を制御する(S306)。
【0085】
高温電池の温度が上限温度UL以下であり、かつ、低温電池の温度が下限温度LL以上である場合(S305においてNO)、すなわち、高温電池および低温電池の両方が常温領域内である場合、ECU9は、高温電池を冷却するための冷却電力量αと、低温電池を加熱するための加熱電力量βとを算出する(S307)。この算出手法については
図8にて詳細に説明したため、ここでの説明は繰り返さない。
【0086】
S308において、ECU9は、冷却電力量αが加熱電力量β以下であるかどうかを判定する。冷却電力量αが加熱電力量β以下である場合(S308においてYES)、ECU9は、高温電池を冷却するように、高温電池に対応する冷却ファンを制御する(S309)。一方、冷却電力量αが加熱電力量βよりも大きい場合(S308においてNO)、ECU9は、低温電池を加熱するように、低温電池に対応する電気ヒータを制御する(S310)。
【0087】
紙面の都合で図示しないが、ECU9は、高温電池の冷却中に冷却終了条件が成立すると、高温電池の冷却を終了させる。また、ECU9は、低温電池の加熱中に加熱終了条件が成立すると、低温電池の加熱を終了させる。その後、処理がメインルーチンに戻される。
【0088】
以上のように、実施の形態3においても、温度バラツキΔTbが基準量を超えた(超えると予測される)場合には、高温電池の冷却または低温電池の加熱により、2つの電池パック間の温度バラツキΔTbが低減される。これにより、高温電池の劣化の進行速度と低温電池の劣化の進行速度とが近付くため、劣化の進行度合いの違いが小さくなる。よって、実施の形態3によれば、実施の形態1,2と同様に、バッテリ全体としての劣化を抑制できる。
【0089】
さらに、実施の形態3においては、より消費電力量が小さな態様で電池パックの温度調整が行われる。これにより、冷却または加熱のためにバッテリから消費される電力が低減されるので、冷却または加熱の終了後にバッテリにより大きな電力を残すことができる。よって、温度調整に伴う車両1のEV距離の減少を最低限に抑制できる。
【0090】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1 車両、11 第1電池パック、12 第2電池パック、21,22 電池温度センサ、23 電流センサ、31 SMR、32 PCU、33 モータジェネレータ、34 DC/DCコンバータ、41,42 電気ヒータ、51,52 冷却ファン、61 インレット、62 AC/DCコンバータ、63 充電リレー、71 DCM、72 GPS受信機、81 外気温センサ、82 車室内温度センサ、9 ECU。