(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20241126BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241126BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20241126BHJP
【FI】
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L58/10
(21)【出願番号】P 2021088490
(22)【出願日】2021-05-26
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】菅生 雄基
(72)【発明者】
【氏名】若林 謙太
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-68380(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3400763(EP,A1)
【文献】特開2013-136286(JP,A)
【文献】特開2020-182287(JP,A)
【文献】特開2019-49416(JP,A)
【文献】特開2006-25471(JP,A)
【文献】特開2019-132608(JP,A)
【文献】特開2018-137165(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0334158(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
H02J 7/00- 7/12
H02J 7/34- 7/36
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源となる電動モータと、
作業機械と連結可能であり、前記電動モータの駆動力で走行する車体と、
前記電動モータに電力を供給するバッテリと、
前記バッテリに流れる電流を検出する電流センサと、
検出対象箇所を挟んだ一対の特定ノード間の電圧を検出する電圧センサと、
前記検出対象箇所における電気的導通の異常を検出する異常検出装置とを有し、
前記異常検出装置は、
前記電流センサの検出値及び前記電圧センサの検出値に基づいて前記検出対象箇所の電気抵抗を算出する抵抗算出処理と、
前記電気抵抗の時間変化において前記電気抵抗が予め定められた基準値を挟んで増減を繰り返しているときに前記異常を検出する異常検出処理と
を実行する
トラクタ。
【請求項2】
前記車体に連結された前記作業機械をさらに備え、
前記作業機械は、前記電動モータの駆動力で回転する回転体を有し、
前記回転体は、予め定められた回転速度で回転し、
前記異常検出処理では、前記回転体が回転している状況下で、前記電気抵抗の時間変化において前記電気抵抗が前記回転体の回転速度に応じた周波数帯で増減を繰り返しているときに前記異常を検出する
請求項1に記載のトラクタ。
【請求項3】
前記抵抗算出処理は、
前記異常検出処理に先立って、前記電気抵抗を1度のみ算出する第1抵抗算出処理と、
前記第1抵抗算出処理で算出した前記電気抵抗が前記基準値よりも大きいことを条件に、前記電気抵抗を経時的に算出する第2抵抗算出処理と、を含み、
前記異常検出処理では、前記第2抵抗算出処理で算出した前記電気抵抗の時間変化に基づいて前記異常を検出する
請求項1又は2に記載のトラクタ。
【請求項4】
駆動源となる電動モータと、
作業機械と連結可能であり、前記電動モータの駆動力で走行する車体と、
前記電動モータに電力を供給するバッテリと、
前記バッテリに流れる電流を検出する電流センサと、
検出対象箇所を挟んだ一対の特定ノード間の電圧を検出する電圧センサと、
前記検出対象箇所における電気的導通の異常を検出する異常検出装置とを有し、
前記異常検出装置は、
前記電流センサの検出値及び前記電圧センサの検出値に基づいて前記検出対象箇所の電気抵抗を算出する抵抗算出処理と、
前記電気抵抗が予め定められた判定値よりも大きい場合に前記異常を検出する異常検出処理と
を実行する
トラクタ。
【請求項5】
前記抵抗算出処理では、前記車体の上下方向の加速度が増減を繰り返しており、且つ前記加速度が増加又は減少する際の当該加速度の単位時間当たりの変化量の絶対値が予め定められた規定変化量以上である状況下での前記電気抵抗である振動時抵抗を算出し、
前記異常検出処理では、前記振動時抵抗が前記判定値よりも大きい場合に前記異常を検出する
請求項4に記載のトラクタ。
【請求項6】
光及び音の少なくとも一方により報知を行う報知装置を有し、
前記異常検出装置は前記報知装置を制御対象とし、
前記異常検出装置は、前記異常を検出すると、前記異常が生じている旨を前記報知装置に報知させる報知処理を実行する
請求項1~5のいずれか一項に記載のトラクタ。
【請求項7】
前記検出対象箇所は、前記バッテリであり、
前記電圧センサは、前記バッテリの端子間電圧を検出する
請求項1~6のいずれか一項に記載のトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたトラクタは、バッテリ、電動モータ、及びロータリ耕耘機を有する。バッテリは、電動モータに電力を供給する。電動モータは、バッテリからの電力供給を受けて駆動する。電動モータの駆動力は、トラクタを走行させたり、ロータリ耕耘機を動作させたりする。トラクタは、例えば田畑といった圃場内を走行する。その際、ロータリ耕耘機を動作させることにより、圃場を耕耘できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のようなトラクタは、舗装された平坦な走行路のみならず、凹凸のある圃場内を走行する。トラクタが圃場内を走行する際、トラクタには、舗装された平坦な走行路を走行する場合よりも大きな振動が生じる。また、トラクタにおいてロータリ耕耘機を動作させると、トラクタには当該ロータリ耕運機を動作させることに伴う大きな振動が生じる。一方、バッテリから電動モータへの電気経路上には、端子同士が接触することにより電気的導通を実現している箇所がある。上述したように、トラクタに大きな振動が生じた場合、端子同士の接触を維持するための締結具等の緩み、すなわち、端子同士の接続に緩みが生じ得る。この場合、電気的導通が不安定になることがある。しかし、端子同士の接続に多少の緩みが生じても、電気的導通が完全に失われるわけではない。そのため、端子同士の接続に緩みが生じたことを、異常として早期に検出することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのトラクタは、駆動源となる電動モータと、作業機械と連結可能であり、前記電動モータの駆動力で走行する車体と、前記電動モータに電力を供給するバッテリと、前記バッテリに流れる電流を検出する電流センサと、検出対象箇所を挟んだ一対の特定ノード間の電圧を検出する電圧センサと、前記検出対象箇所における電気的導通の異常を検出する異常検出装置とを有し、前記異常検出装置は、前記電流センサの検出値及び前記電圧センサの検出値に基づいて前記検出対象箇所の電気抵抗を算出する抵抗算出処理と、前記電気抵抗の時間変化において前記電気抵抗が予め定められた基準値を挟んで増減を繰り返しているときに前記異常を検出する異常検出処理とを実行する。
【0006】
例えば一対の特定ノードの間において端子同士の接続に緩みが生じると、端子間でがたつきが生じ得る。こうしたがたつきに起因して、端子同士の接触面積は増減する。端子同士の接触面積が増減すると、端子間の電気抵抗が増減する。このように、電気抵抗の増減は、端子同士の接続に緩みが生じている状況を反映している。上記構成によれば、電気抵抗が増減していることを指標とすることで、一対の特定ノードの間、すなわち検出対象箇所で端子同士に接続の緩みが生じたことを早期に検出できる。
【0007】
トラクタは、前記車体に連結された前記作業機械をさらに備え、前記作業機械は、前記電動モータの駆動力で回転する回転体を有し、前記回転体は、予め定められた回転速度で回転し、前記異常検出処理では、前記回転体が回転している状況下で、前記電気抵抗の時間変化において前記電気抵抗が前記回転体の回転速度に応じた周波数帯で増減を繰り返しているときに前記異常を検出してもよい。
【0008】
端子同士の接続に緩みが生じている場合、回転体の周期的な回転動作に伴って、端子同士のがたつきに係る動作も周期的に生じる可能性が高い。そして、それに伴って電気抵抗が周期的に増減する可能性が高い。上記構成によれば、電気抵抗の増減の要因が、端子同士の接続の緩みに起因していることをある程度担保できる。そのため、端子同士の接続の緩みを正確に検出できる。
【0009】
トラクタにおいて、前記抵抗算出処理は、前記異常検出処理に先立って、前記電気抵抗を1度のみ算出する第1抵抗算出処理と、前記第1抵抗算出処理で算出した前記電気抵抗が前記基準値よりも大きいことを条件に、前記電気抵抗を経時的に算出する第2抵抗算出処理と、を含み、前記異常検出処理では、前記第2抵抗算出処理で算出した前記電気抵抗の時間変化に基づいて前記異常を検出してもよい。
【0010】
異常検出処理では電気抵抗の時間変化を診ることから、電気抵抗の推移の情報が必要である。したがって、異常検出処理を行うためには電気抵抗を経時的に算出する必要がある。しかし、トラクタの運行中に電気抵抗の算出を繰り返し続けると、異常検出装置の処理負担が大きくなる。この点、上記構成では、第1抵抗算出処理で算出した電気抵抗が基準値よりも大きい場合、すなわち、異常が生じていることが疑われる場合にのみ、第2抵抗算出処理によって経時的に電気抵抗を算出して異常検出処理を行う。そのため、電気抵抗を経時的に算出する機会を最低限に抑えることができる。このことにより、異常検出装置の処理負担を最低限に抑えることができる。
【0011】
上記課題を解決するためのトラクタは、駆動源となる電動モータと、作業機械と連結可能であり、前記電動モータの駆動力で走行する車体と、前記電動モータに電力を供給するバッテリと、前記バッテリに流れる電流を検出する電流センサと、検出対象箇所を挟んだ一対の特定ノード間の電圧を検出する電圧センサと、前記検出対象箇所における電気的導通の異常を検出する異常検出装置とを有し、前記異常検出装置は、前記電流センサの検出値及び前記電圧センサの検出値に基づいて前記検出対象箇所の電気抵抗を算出する抵抗算出処理と、前記電気抵抗が予め定められた判定値よりも大きい場合に前記異常を検出する異常検出処理とを実行する。
【0012】
例えば一対の特定ノードの間の端子同士の接続に緩みが生じると、端子間でがたつきが生じ得る。こうしたがたつきに起因して、端子同士の接触面積は増減する。そして、接触面積が減る際には、端子間の電気抵抗が大きくなる。このように、電気抵抗が大きくなることは、端子同士の接続に緩みが生じている状況を反映している。上記構成によれば、電気抵抗が大きくなったことを指標とすることで、一対の特定ノードの間、すなわち検出対象箇所で端子同士に接続の緩みが発生したことを早期に検出できる。
【0013】
トラクタにおいて、前記抵抗算出処理では、前記車体の上下方向の加速度が増減を繰り返しており、且つ前記加速度が増加又は減少する際の当該加速度の単位時間当たりの変化量の絶対値が予め定められた規定変化量以上である状況下での前記電気抵抗である振動時抵抗を算出し、前記異常検出処理では、前記振動時抵抗が前記判定値よりも大きい場合に前記異常を検出してもよい。
【0014】
上記構成の手法で異常を検出する場合、電気抵抗の時間変化を長期に亘って監視して実際に電気抵抗が増減していることを検出しなくても、振動時抵抗を1度算出してその振動時抵抗が大きければ、異常を検出できる。したがって、異常の検出に時間を要さない。また、繰り返し電気抵抗を算出し続ける必要がないため、異常検出装置の処理の負担を抑えることができる。
【0015】
トラクタは、光及び音の少なくとも一方により報知を行う報知装置を有し、前記異常検出装置は前記報知装置を制御対象とし、前記異常検出装置は、前記異常を検出すると、前記異常が生じている旨を前記報知装置に報知させる報知処理を実行してもよい。上記構成によれば、異常の存在を乗員に知らせることができる。このことにより、乗員は必要な対処を速やかに行うことができる。
【0016】
トラクタにおいて、前記検出対象箇所は、前記バッテリであり、前記電圧センサは、前記バッテリの端子間電圧を検出してもよい。
バッテリは、複数の電池セル含んでいる。これら複数の電池セルを接続する必要上、バッテリ内には端子同士の接続を行っている箇所が複数ある。端子同士の接続を行っている箇所が複数あれば、その分だけ接続に緩みが生じる可能性も高くなる。上記構成では、このような、緩みが生じる可能性が高い機器であるバッテリの内部を対象として、異常検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】トラクタの電気的構成及び動力伝達経路を表した図。
【
図5】第1実施形態の接続診断処理の処理手順を表したフローチャート。
【
図6】第2実施形態の接続診断処理の処理手順を表したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下、トラクタの第1実施形態を、図面を参照して説明する。
<トラクタの全体構成>
図1に示すように、トラクタ10は、車両11、作業機械20、及び昇降機構30を有する。車両11は、複数の車輪12、及び車体13を有する。複数の車輪12は、車体13に連結している。車体13は、キャビン14を有する。キャビン14は、車体13に区画された空間である。キャビン14は、乗員が乗り込む操縦室である。
【0019】
作業機械20は、車両11から視て後方に位置している。作業機械20は、支持体22と回転体21とを有する。支持体22は、昇降機構30を介して車体13に連結している。回転体21は、回転軸21A及び複数のブレード21Bを有する。回転軸21Aは、支持体22で回転可能に支持された状態にある。複数のブレード21Bは、回転軸21Aと一体回転する。なお、
図1では、ブレード21Bを簡略化して円柱状に図示している。ブレード21Bが圃場の地面200に触れている状態で回転軸21Aが回転すると、圃場を耕耘できる。なお、回転体21は、予め定められた複数の回転速度で回転可能である。
【0020】
昇降機構30は、複数のアーム32及び油圧装置35を有する。複数のアーム32は、車体13と作業機械20の支持体22とを連結している。油圧装置35は、油圧を発生する。この油圧に応じて、各アーム32は動作する。それに伴い、
図1の矢印Dで示すように、作業機械20は昇降する。それとともに、作業機械20の回転体21は、地面200に接したり地面200から離れたりする。
【0021】
トラクタ10は、操作台16及びディスプレイ15を有する。操作台16は、キャビン14内に位置している。ディスプレイ15は操作台16上に位置している。ディスプレイ15は各種の情報を表示可能である。すなわち、ディスプレイ15は、各種の情報を光によって報知する報知装置である。
【0022】
図2に示すように、トラクタ10は、操作部50として、第1スイッチ51、第2スイッチ52、及び第3スイッチ56を有する。第1スイッチ51は、トラクタ10が圃場内に位置しているか否かに応じて乗員がオンオフするスイッチである。すなわち、第1スイッチ51は、トラクタ10の位置情報を入力するためのスイッチである。第2スイッチ52は、昇降機構30による作業機械20の昇降を切り替えるためのスイッチである。第3スイッチ56は、後述の接続診断処理に伴うディスプレイ15の表示を消去するためのリセット用のスイッチである。これら第1スイッチ51、第2スイッチ52、及び第3スイッチ56は、例えば操作台16上に位置している。
【0023】
また、トラクタ10は、操作部50として、第1レバー53、第2レバー54、スタートスイッチ55、及びステアリングハンドル57を有する。第1レバー53は、回転体21の回転速度を切り替えるためのものである。第1レバー53には、回転体21の回転速度毎の切り替え位置が設定してある。なお、切り替え位置の1つは、回転速度をゼロにするためのものである。第2レバー54は、トラクタ10の走行速度を切り替えるためのものである。第2レバー54には、予め定められた走行速度毎の切り替え位置が設定してある。なお、切り替え位置の1つは、走行速度をゼロにするためのものである。スタートスイッチ55は、トラクタ10を起動させるためのものである。ステアリングハンドル57は、トラクタ10の走行方向を操作する操舵用のものである。これら第1レバー53、第2レバー54、スタートスイッチ55、及びステアリングハンドル57は、例えば、キャビン14内に位置している。なお、
図2では、各操作部50を簡略化して模式的に示している。
【0024】
トラクタ10は、加速度センサ59を有する。加速度センサ59は、車体13に取り付けられている。加速度センサ59は、車体13の上下方向の加速度を検出加速度Wとして検出する。
【0025】
<トラクタの動力伝達経路>
図2に示すように、トラクタ10は、第1電動モータ41、第2電動モータ42、第3電動モータ43、動力伝達機構19、及びPTO25を有する。第1電動モータ41、第2電動モータ42、及び第3電動モータ43は、発電電動機である。
【0026】
第1電動モータ41は、トラクタ10を走行させるための駆動源である。第1電動モータ41は、動力伝達機構19を介して車輪12に連結している。動力伝達機構19は、例えば、トルクを増幅して出力する減速機構を含んでいる。
【0027】
第2電動モータ42は、作業機械20の駆動源である。第2電動モータ42は、PTO25を介して作業機械20の回転体21に連結している。PTO25は、第2電動モータ42のトルクを回転体21に伝達するための装置である。PTO25は、例えば減速機構を含んでいる。
【0028】
第3電動モータ43は、油圧装置35の駆動源である。第3電動モータ43は、油圧装置35の油圧ポンプに連結している。第3電動モータ43は、油圧ポンプを駆動する。
なお、上記のとおり、第1電動モータ41、第2電動モータ42、及び第3電動モータ43は発電電動機である。そのため、これらの電動モータは、発電機として機能させることができる。例えば第1電動モータ41であれば、トラクタ10が減速する際に当該第1電動モータ41を発電機として機能させることができる。その際、トラクタ10には、第1電動モータ41の発電量に応じた回生制動力が発生する。
【0029】
トラクタ10は、第1回転センサ61、第2回転センサ62、及び第3回転センサ63を有する。第1回転センサ61は、第1電動モータ41の回転子の回転位置を第1検出位置A1として検出する。第2回転センサ62は、第2電動モータ42の回転子の回転位置を第2検出位置A2として検出する。第3回転センサ63は、第3電動モータ43の回転子の回転位置を第3検出位置A3として検出する。
【0030】
<トラクタの電気的構成>
図2に示すように、トラクタ10は、電源回路99を有する。電源回路99は、車体13に搭載されている。電源回路99は、第1バッテリ77、第2バッテリ78、正極ライン81、負極ライン82、正極リレー83、及び負極リレー84を有する。また、電源回路99は、第1コンバータ85、第2コンバータ86、第1インバータ71、第2インバータ72、及び第3インバータ73を有する。また、電源回路99は、電流センサ91、及び電圧センサ92を有する。
【0031】
第1バッテリ77は二次電池である。第1バッテリ77は、トラクタ10の走行、作業機械20の駆動、及び昇降機構30の駆動を担う高電圧のメインバッテリである。第1バッテリ77は、複数の電池セルを有する。図示は省略するが、複数の電池セルの端子同子は、バスバーで接続している。バスバーは、電池セルの端子に接触した状態でボルトによって電池セルに固定されている。第1バッテリ77は、第1電動モータ41、第2電動モータ42、及び第3電動モータ43との間で電力を授受する。
【0032】
正極ライン81は、第1バッテリ77の高電位側の端子と第1コンバータ85とを接続している。負極ライン82は、第1バッテリ77の低電位側の端子と第1コンバータ85とを接続している。第1コンバータ85は、電圧の大きさを変換して出力する。なお、正極ライン81は、接続クリップを介して第1バッテリ77の端子に接続している。接続クリップは、第1バッテリ77の端子を囲む円弧状である。接続クリップは、ボルトで第1バッテリ77の端子に固定されている。負極ライン82は、上記と同様の接続クリップを介して第1バッテリ77の端子に接続している。
【0033】
正極リレー83は、正極ライン81の途中に位置している。負極リレー84は、負極ライン82の途中に位置している。正極リレー83及び負極リレー84は、第1バッテリ77と第1コンバータ85との間の電気的接続をオンオフする。
【0034】
電流センサ91は、正極ライン81の途中に取り付けられている。詳細には、電流センサ91は、正極ライン81上における第1バッテリ77と正極リレー83との間に取り付けられている。電流センサ91は、第1バッテリ77の高電位側の端子に流れる電流を検出電流91Aとして検出する。本実施形態において、電流センサ91は、第1バッテリ77の放電時に検出電流91Aを正の値、充電時に検出電流91Aを負の値として検出する。
【0035】
電圧センサ92は、正極ライン81及び負極ライン82に接続している。詳細には、電圧センサ92の一方の端子は、正極ライン81上における第1バッテリ77と正極リレー83との間の第1特定ノードN1に接続されている。電圧センサ92の他方の端子は、負極ライン82上における第1バッテリ77と負極リレー84との間の第2特定ノードN2に接続されている。
【0036】
第1インバータ71及び第2インバータ72は、第1コンバータ85に接続している。第1インバータ71及び第2インバータ72は、互いに並列になっている。第1インバータ71は、第1電動モータ41に接続している。第1インバータ71は、第1コンバータ85と第1電動モータ41との間で直流交流の電力変換を行う。第2インバータ72は、第2電動モータ42に接続している。第2インバータ72は、第1コンバータ85と第2電動モータ42との間で直流交流の電力変換を行う。
【0037】
第3インバータ73は、第1バッテリ77に接続している。第3インバータ73は、第1コンバータ85と並列になっている。第3インバータ73は、第3電動モータ43に接続している。第3インバータ73は、第1バッテリ77と第3電動モータ43との間で直流交流の電力変換を行う。
【0038】
第2コンバータ86は、第1バッテリ77に接続している。第2コンバータ86は、第1コンバータ85と並列になっている。第2コンバータ86は、電圧の大きさを変換して出力する。第2コンバータ86は、第2バッテリ78に接続している。第2バッテリ78は、二次電池である。第2バッテリ78は、第1バッテリ77よりも低電圧の補助バッテリである。第2バッテリ78は、例えば、ディスプレイ15、各操作部50、及び後述する制御装置100といった低電圧の機器に接続している。
【0039】
<制御装置の概略構成>
トラクタ10は、制御装置100を有する。制御装置100は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサとして構成し得る。なお、制御装置100は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、またはそれらの組み合わせを含む回路(circuitry)として構成してもよい。プロセッサは、CPU102及び、RAM並びにROM104等のメモリを含む。メモリは、処理をCPU102に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置100は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである記憶装置を有する。
【0040】
制御装置100は、各操作部50からの信号Pを受信する。制御装置100は、例えば第1レバー53からは、当該第1レバー53の切り替え位置に関する信号Pを受信する。また、制御装置100は、例えば第1スイッチ51からは、当該第1スイッチ51がオン状態である信号Pを受信する。なお、制御装置100は、各スイッチ及び各レバーから個別に信号を受信するが、本明細書及び図面では各操作部50からの信号に統一の符号Pを付している。
【0041】
また、制御装置100は、各種センサからの検出信号を受信する。制御装置100は、加速度センサ59が検出する検出加速度Wを受信する。制御装置100は、電圧センサ92が検出する検出電圧92Vを受信する。制御装置100は、電流センサ91が検出する検出電流91Aを受信する。
【0042】
制御装置100は、第1回転センサ61が検出する第1検出位置A1、第2回転センサ62が検出する第2検出位置A2、及び第3回転センサ63が検出する第3検出位置A3を受信する。制御装置100は、第1検出位置A1に基づいて、第1電動モータ41の回転子の回転速度である第1回転速度Smg1を算出する。同様に、制御装置100は、第2検出位置A2に基づいて、第2電動モータ42の回転子の回転速度である第2回転速度Smg2を算出する。同様に、制御装置100は、第3検出位置A3に基づいて、第3電動モータ43の回転子の回転速度である第3回転速度Smg3を算出する。
【0043】
制御装置100は、第1電動モータ41を制御対象とする。制御装置100は、第1電動モータ41を制御することによって、トラクタ10を走行させたり、トラクタ10の走行を停止させたりする。なお、制御装置100は、実質的には、第1インバータ71を制御することによって第1電動モータ41を制御する。制御装置100は、第2レバー54を通じて乗員から指示されるトラクタ10の走行速度を実現できるように、第1回転速度Smg1を参照しつつ第1電動モータ41を制御する。
【0044】
制御装置100は、第2電動モータ42を制御対象とする。制御装置100は、第2電動モータ42を制御することによって、回転体21を回転させたり回転体21の回転を停止させたりする。なお、制御装置100は、実質的には、第2インバータ72を制御することによって第2電動モータ42を制御する。制御装置100は、第1レバー53を通じて乗員から指示される回転体21の回転速度を実現できるように、第2回転速度Smg2を参照しつつ第2電動モータ42を制御する。
【0045】
制御装置100は、第3電動モータ43を制御対象とする。また、制御装置100は、油圧装置35における油路の制御弁を制御対象とする。制御装置100は、これらを制御することを通じて、油圧装置35が発する油圧を制御する。それによって作業機械20を昇降させる。なお、制御装置100は、実質的には、第3インバータ73を制御することによって第3電動モータ43を制御する。制御装置100は、第2スイッチ52を通じて乗員から指示される作業機械20の昇降を実現できるように、第3回転速度Smg3を参照しつつ第3電動モータ43を制御するとともに、上記制御弁を制御する。
【0046】
制御装置100は、ディスプレイ15を制御対象とする。制御装置100は、各種情報をディスプレイ15に表示させるための表示信号をディスプレイ15に出力する。ディスプレイ15は、表示信号を受信すると、当該表示信号に応じた内容を表示する。
【0047】
<接続診断処理の概要>
制御装置100は、電源回路99の異常検出装置として機能する。すなわち、制御装置100は、上記した各制御対象を制御するための処理と並行して、電源回路99に関する異常を検出するための診断処理を実行可能である。制御装置100は、そうした診断処理の1つとして、接続診断処理を実行可能である。上記のとおり、正極ライン81は、接続クリップを介して第1バッテリ77の端子に接続している。また、第1バッテリ77を構成している複数の電池セルの端子同士は、バスバーで接続されている。これら接続クリップ及びバスバーといった接続部品においては、接続対象である端子との接続状態を維持しているボルトの締結に緩みが生じることがある。この場合、端子と接続部品との接触不良が生じ、これらの間の電気的導通に異常が生じる。接続診断処理は、このような、締結の緩みに起因した電気的導通の異常を検出するためのものである。なお、接続診断処理での検出対象箇所は、第1特定ノードN1及び第2特定ノードN2の間である。すなわち、検出対象箇所は、第1バッテリ77内部のバスバー、第1バッテリ77と正極ライン81とを接続する接続クリップ、及び第1バッテリ77と負極ライン82とを接続する接続クリップを含んでいる。
【0048】
制御装置100は、接続診断処理の一環として、抵抗算出処理を実行可能である。制御装置100は、抵抗算出処理では、電圧センサ92が検出する検出電圧92V及び電流センサ91が検出する検出電流91Aに基づいて、検出対象箇所の電気抵抗である対象抵抗Rを算出する。この実施形態では、対象抵抗Rは、第1バッテリ77自身の内部抵抗、第1バッテリ77と各接続クリップとの間の電気抵抗を合わせたものである。対象抵抗Rの具体的な算出方法については後述する。なお、抵抗算出処理には、第1抵抗算出処理と、第2抵抗算出処理とを含む。第1抵抗算出処理は、対象抵抗Rを単発的に1度のみ算出する処理である。第2抵抗算出処理は、対象抵抗Rを経時的に繰り返し算出する処理である。
【0049】
制御装置100は、異常検出処理の一環として、異常検出処理を実行可能である。ここで、仮に接続部品の締結に緩みが生じている状態でトラクタ10が振動すると、接続部品にがたつきが生じる。このがたつきに伴い、接続部品と端子との接触面積が増減する。このことに伴い、
図3の白丸で示すように、対象抵抗Rが増減する。そこで、制御装置100は、異常検出処理では、第2抵抗算出処理を通じて経時的に算出する対象抵抗Rの時間変化を診断する。そして、制御装置100は、対象抵抗Rの時間変化において対象抵抗Rが基準値RKを挟んで増減を繰り返しているときに、第1バッテリ77及び電流センサ91間における電気的導通の異常を検出する。詳細には、制御装置100は、回転体21が回転している状況下であることを前提に、異常検出処理を行う。そして、制御装置100は、回転体21に設定されている複数の回転速度のうち、現状の回転速度に応じた周波数帯(以下、特定周波数帯と呼称する。)Lで対象抵抗Rが増減を繰り返しているときに、上記の異常を検出する。なお、
図3では、対象抵抗Rが基準値RKを挟んで増減している状況をわかり易く示すために、対象抵抗Rが増加したときと減少したときのピークのデータのみを示し、その間の推移のデータの図示を省略している。
【0050】
制御装置100は、異常検出処理の一環として、報知処理を実行可能である。制御装置100は、報知処理では、接続部品の締結の緩みに起因した電気的導通の異常が生じている旨をディスプレイ15に表示させる。
【0051】
制御装置100は、異常検出処理の一環として、仮診断処理を実行可能である。制御装置100は、この仮診断処理を異常検出処理に先立って行う。制御装置100は、仮診断処理では、第1抵抗算出処理で単発的に算出した対象抵抗Rが基準値RKよりも大きいか否かを判定する。ここで、対象抵抗Rが増減を繰り返している場合、対象抵抗Rが基準値RKよりも大きくなる状況が存在する。したがって、第1抵抗算出処理で単発的に算出した対象抵抗Rが基準値RKよりも大きければ、対象抵抗Rが増減を繰り返している可能性が疑われる。制御装置100は、この仮診断処理において対象抵抗Rが基準値RKよりも大きいことを条件に、第2抵抗算出処理を行って経時的に対象抵抗Rを算出する。そして、その対象抵抗Rの時間変化に基づいて、本診断として上記の異常検出処理を行う。
【0052】
制御装置100は、上記の基準値RKを予め記憶している。基準値RKは、接続部品の締結を含め、第1バッテリ77が正常であるときに生じ得る対象抵抗Rの最大値として例えば実験で定めてある。
【0053】
制御装置100は、回転体21の回転速度に応じた複数の特定周波数帯Lを予め記憶している。ここで、回転体21がある回転速度で回転すると、その回転動作に伴ってトラクタ10に周期的な振動が生じる。接続部品の締結が緩んだ状態でこのような周期的な振動が生じると、接続部品のがたつきに係る動作は、トラクタ10の振動に応じた周期的なものになる。上記の特定周波数帯Lは、回転体21がある回転速度で回転しているときに、その回転動作に応じて対象抵抗Rが変動する周波数帯として例えば実験で定めてある。特定周波数帯Lを定めるための実験では、具体的には、接続部品の締結を意図的に緩めた状態で回転体21を回転させる。そして、そのときの対象抵抗Rの変動の周波数帯を調べる。こうした実験を、回転体21に設定されている回転速度毎に行う。本実施形態において、制御装置100は、回転体21の回転速度を切り替えるための第1レバー53の切り替え位置と対応させて、複数の特定周波数帯Lを記憶している。具体的には、制御装置100は、第1レバー53の切り替え位置と、回転体21の回転速度毎の特定周波数帯Lとを対応付けた特定マップを記憶している。
【0054】
<対象抵抗の算出方法>
同じタイミングで受信した検出電圧92V及び検出電流91Aをデータ組と呼称する。制御装置100は、対象抵抗Rを算出するにあたり、予め定められたデータ取得期間H1に受信する複数のデータ組を利用する。詳細には、
図4に示すように、制御装置100は、上記データ取得期間H1に受信した複数のデータ組に関する回帰分析を行う。この回帰分析の具体的な手順として、制御装置100は、先ず、電流P1及び電圧P2を座標軸とする直交座標を準備する。そして、制御装置100は、上記複数のデータ組を、上記の直交座標における対応する座標位置にプロットする。制御装置100は、この結果得られる散布図についての回帰直線を求める。検出電流91Aの正負の定義上、回帰直線は、電圧P2が高くなるほど電流P1が小さくなる特性を示す。すなわち、回帰直線は、式(1)で示すように、ベース電圧Bを切片、対象抵抗Rに「-1」を乗算した値を傾きとした直線になる。ベース電圧Bは、第1バッテリ77の理論上の起電力である。すなわち、ベース電圧Bは、第1バッテリ77の内部抵抗、及び、第1バッテリ77と各接続クリップとの間の電気抵抗がゼロと仮定した場合の第1バッテリ77の出力電圧である。
【0055】
P2=B-P1×R・・・(1)
回帰分析を利用して対象抵抗Rを算出するのに際し、信頼性の高い対象抵抗Rを得るのに必要なデータ組のサンプル数を必要サンプル数と呼称する。データ取得期間H1は、必要サンプル数を得ることができる時間の長さとして、検出電圧92V及び検出電流91Aを受信する時間間隔との兼ね合いから定めてある。本実施形態において、データ取得期間H1は1秒である。
【0056】
<劣化診断処理>
対象抵抗Rは、接続部品の締結の緩み以外にも、第1バッテリ77の化学的な劣化などに応じた内部抵抗の増加に因っても大きくなる。ただし、接続部品の締結の緩みとは無関係な第1バッテリ77の劣化が生じている場合、
図3の三角で示すように、対象抵抗Rは、トラクタ10の振動に伴って増減するような変動は示さず、継続的に大きな値の状態が継続する。制御装置100は、上記の接続診断処理とは別に、第1バッテリ77の劣化を診断するための処理として劣化診断処理を実行可能である。制御装置100は、スタートスイッチ55がオンになると、この劣化診断処理を行う。制御装置100は、劣化診断処理を開始すると、ある一定期間、対象抵抗Rを繰り返し算出する。一定期間は、例えば数分である。そして、制御装置100は、対象抵抗Rが上記の基準値RKよりも高い状態が継続しているか否かを判定する。制御装置100は、対象抵抗Rが基準値RKよりも高い状態が継続している場合には第1バッテリ77が劣化していると判定し、そうでない場合には第1バッテリ77は劣化していないと判定する。制御装置100は、第1バッテリ77が劣化していると判定した場合には劣化フラグをオンにする。制御装置100は、第1バッテリ77が劣化していないと判定した場合には劣化フラグをオフにする。なお、劣化診断処理で対象抵抗Rを算出する手法は、接続診断処理で対象抵抗を算出する手法と同じである。
【0057】
<接続診断処理の具体的な処理手順>
制御装置100は、スタートスイッチ55がオンである状況下において、予め定められた開始条件が成立している場合、接続診断処理を行う。開始条件は、次の要件(A1)~(A3)の全てが満たされていることである。
【0058】
(A1)現在のトリップでの劣化診断処理が完了しており、且つ劣化フラグがオフである。
(A2)異常表示信号Jを出力していない。
【0059】
(A3)作業機械20の回転体21が動作中である。
要件(A1)が満たされていることは、第1バッテリ77が劣化していないことを意味する。なお、上記のトリップとは、スタートスイッチ55がオンになってからオフになるまでの間のことである。要件(A2)に関して、異常表示信号Jは、後述のステップS170を契機として制御装置100が出力する表示信号である。異常表示信号Jは、詳細には、接続部品の締結の緩みに起因した電気的導通の異常が生じていることを示すものである。要件(A3)の成立可否は、第2電動モータ42の制御状態、第2回転速度Smg2、又は第1レバー53からの切り替え位置の信号Pに基づいて判定すればよい。
【0060】
図5に示すように、制御装置100は、接続診断処理を開始すると、ステップS110の処理を実行する。ステップS110において、制御装置100は、対象抵抗Rを算出する。このステップS110において、制御装置100は、対象抵抗Rを経時的にではなく1度のみ算出する。上記のとおり、制御装置100は、対象抵抗Rを算出する上では、回帰分析を利用する。すなわち、制御装置100は、ステップS110に処理が進んだタイミングからデータ取得期間H1が経過するまでの間に受信する検出電圧92V及び検出電流91Aのデータ組についての散布図を作成する。そして、制御装置100は、検出電圧92V及び検出電流91Aの関係性を示す回帰直線の傾きを対象抵抗Rとして算出する。この後、制御装置100は、処理をステップS120に進める。なお、ステップS120の処理は、第1抵抗算出処理である。
【0061】
ステップS120において、制御装置100は、ステップS110で算出した対象抵抗Rが基準値RKよりも大きいか否かを判定する。このステップS120の処理は、仮診断処理である。制御装置100は、対象抵抗Rが基準値RK以下の場合(ステップS120:NO)、接続診断処理を終了する。制御装置100は、接続診断処理を終了した場合、予め定められた待機期間H2の経過後に開始条件が成立していれば、再度ステップS110の処理を行う。待機期間H2は、数分である。一方、制御装置100は、接続診断処理を終了してから待機期間H2の経過後に開始条件が成立していなければ、接続診断処理を実行しない。制御装置100は、その後再び開始条件が成立する状況が訪れれば、そのタイミングで接続診断処理を実行する。
【0062】
一方、ステップS120において、制御装置100は、対象抵抗Rが基準値RKよりも大きい場合(ステップS120:YES)、処理をステップS130に進める。ここで、本接続診断処理は、劣化フラグがオフである状態、すなわち第1バッテリ77が劣化していない状態であることを前提にして行っている。そのため、ステップS120の判定がYESであったとしても、対象抵抗Rが基準値RKよりも大きい状態が継続していることはあり得ない。そうすると、ステップS120の判定がYESの状況は、つぎのいずれかの状況に対応している。一つ目の状況は、対象抵抗Rが増減を繰り返していて、その繰り返しの過程のうち、対象抵抗Rが増加したタイミングでステップS110及びステップS120の処理を行った状況である。二つ目の状況は、基本的には対象抵抗Rが基準値RK以下の状況が継続しているものの、何らかの要因で偶発的に対象抵抗Rが高くなったときにステップS110及びステップS120の処理を行った状況である。
【0063】
さて、ステップS130において、制御装置100は、対象抵抗Rの時系列データを作成する。具体的には、制御装置100は、予め定められたデータ作成期間H3について、対象抵抗Rを経時的に繰り返し算出する。そして、制御装置100は、算出した対象抵抗Rを順に記憶していく。上記のとおり、対象抵抗Rの算出には、回帰分析を利用する。また、上記のとおり、1回の回帰分析につき上記データ取得期間H1を要する。このことから、対象抵抗Rの時系列データにおける隣り合う対象抵抗Rの時間間隔は、データ取得期間H1である。なお、後述のステップS150では、この時系列データから、対象抵抗Rの変動の周波数帯を算出することになる。その際に信頼性の高い値を得るのに必要なデータサンプル数を有効サンプル数と呼称する。上記のデータ作成期間H3は、有効サンプル数を得ることのできる時間の長さとして定めてある。本実施形態において、データ作成期間H3は1分である。制御装置100は、対象抵抗Rの時系列データを作成すると、処理をステップS140に進める。なお、ステップS130の処理は、第2抵抗算出処理である。
【0064】
ステップS140において、制御装置100は、ステップS130で作成した時系列データにおいて、対象抵抗Rが基準値RKを挟んで増減を繰り返しているか否かを判定する。上記のとおり、ステップS140に処理が進んでいる状況は、対象抵抗Rが増減を繰り返している状況か、基本的には対象抵抗Rが基準値RK以下の状態が継続している状況か、のいずれかである。制御装置100は、時系列データにおける対象抵抗Rの推移に基づいて、ステップS140の判定を行う。具体的には、制御装置100は、対象抵抗Rの時系列データの推移を当該時系列データの初めから辿る。そして、制御装置100は、対象抵抗Rが増加から減少に転じるピークが存在しているか否かを判定する。制御装置100は、上記のピークが存在していて、且つこのピークの値が基準値RKよりも大きい場合、時系列データの推移をさらに辿る。そして、制御装置100は、対象抵抗Rが減少から増加に転じるピークが存在しているか否かを判定する。制御装置100は、ピークが存在していて、且つこのピークの値が基準値RK以下である場合、増減関係が1回成立したと判定する。制御装置100は、同様にして増減関係の成立を判定していく。制御装置100は、時系列データにおいて増減関係が2回以上連続して成立している場合、対象抵抗Rが基準値RKを挟んで増減を繰り返していると判定する。一方、制御装置100は、時系列データにおいて増減関係が2回以上連続して成立していない場合、対象抵抗Rが基準値RKを挟んで増減を繰り返していると判定する。上記の増減関係とは、要するに、時系列データにおいて、基準値RKよりも大きい極大値の次にくる極小値が基準値RK以下であるという関係である。制御装置100は、このようにしてステップS140の判定を行う。制御装置100は、対象抵抗Rが増減を繰り返していない場合(ステップS140:NO)、接続診断処理の一連の処理を終了する。接続診断処理を終了した後の処理の流れについては、ステップS120の処理との関連で既に説明したおりである。
【0065】
一方、ステップS140において、制御装置100は、対象抵抗Rが基準値RKを挟んで増減を繰り返している場合(ステップS140:YES)、処理をステップS150に進める。
【0066】
ステップS150において、制御装置100は、対象抵抗Rが特定周波数帯Lで変動しているか否かを判定する。先ず、制御装置100は、特定マップと、第1レバー53からの切り替え位置の信号Pとを参照する。上記のとおり、特定マップは、回転体21の回転速度毎の特定周波数帯Lを表したものである。また、第1レバー53は、回転体21の回転速度を切り替えるためのものである。制御装置100は、特定マップにおける複数の特定周波数帯Lのうち、第1レバー53からの切り替え位置に対応する特定周波数帯Lを特定する。次に、制御装置100は、ステップS130で作成した対象抵抗Rの時系列データについて、対象抵抗Rが増加から減少に転じるピークを全て特定する。そして、制御装置100は、これらの複数のピークについて、隣り合うピークの時間間隔を算出する。隣り合うピーク間の時間間隔は、隣り合うピーク間に存在しているデータの個数に上記データ取得期間H1を乗算することで得ることができる。この後、制御装置100は、つぎの判定条件が成立しているか否かに応じてステップS150の判定の成立可否を判断する。判定条件は、特定した全てのピークに関して、隣り合うピークの時間間隔の逆数が特定周波数帯Lに収まっていることである。制御装置100は、判定条件が成立していない場合、対象抵抗Rは特定周波数帯Lで変動していないと判定する(ステップS150:NO)。この場合、制御装置100は、接続診断処理の一連の処理を終了する。
【0067】
一方、制御装置は、判定条件が成立している場合、対象抵抗Rは特定周波数帯Lで変動していると判定する(ステップS150:YES)。この場合、制御装置100は、処理をステップS160に進める。
【0068】
ステップS160において、制御装置100は、接続部品の締結の緩みに起因した電気的導通の異常を検出する。この後、制御装置100は、処理をステップS170に進める。なお、ステップS140~S160の処理は、異常検出処理である。
【0069】
ステップS170において、制御装置100は、ディスプレイ15にメッセージの表示を開始させる。メッセージの内容は、第1バッテリ77に電気的導通の異常が生じている旨、及びその原因が、接続部品の締結の緩みである可能性が高い旨の情報を含んでいる。制御装置100は、実質的には、上記の内容に関する表示信号である異常表示信号Jの出力を開始する。ディスプレイ15は、異常表示信号Jを受信すると、上記の内容の表示を開始する。制御装置100は、ステップS170の処理を実行すると、対象抵抗Rの時系列データを消去した上で、接続診断処理の一連の処理を終了する。
【0070】
なお、制御装置100は、ステップS170の処理を契機として開始したディスプレイ15の表示を、乗員がリセット用の第3スイッチ56を操作するまで継続する。制御装置100は、乗員がリセット用の第3スイッチ56を操作すると、ディスプレイ15に対する異常表示信号Jの出力を終了する。これに伴い、ディスプレイ15は、メッセージの表示を終了する。ステップS170でディスプレイ15に対する異常表示信号Jの出力を開始してから、当該異常表示信号Jの出力を終了するまでの処理は、上記の報知処理である。なお、制御装置100は、第3スイッチ56を操作されることなくスタートスイッチ55がオフにされた場合、次にスタートスイッチ55がオンにされたときに異常表示信号Jの出力を再開する。
【0071】
<第1実施形態の作用>
いま、トラクタ10は圃場内を走行しているものとする。そして、作業機械20を動作させて耕耘を行っているものとする。この場合、制御装置100は、接続診断処理を行う。接続診断処理において、制御装置100は、先ず、仮診断を行うべく対象抵抗Rを1度のみ単発的に算出する(ステップS110)。このときの対象抵抗Rが基準値RKよりも大きい場合(ステップS120:YES)、接続部品の締結の緩みに関する異常が疑われる。そこで、この場合には、本診断を行うべく、制御装置100は対象抵抗Rの時系列データを作成する(ステップS130)。そして、制御装置100は、時系列データにおいて、対象抵抗Rが基準値RKを挟んで増減を繰り返していれば(ステップS140:YES)、さらに診断を進める。そして、制御装置100は、対象抵抗Rの変動が、回転体21の回転速度に応じた特定周波数帯Lのものである場合(ステップS150:YES)、接続部品の締結に緩みに起因した電気的導通の異常を検出する(ステップS160)。この後、制御装置100は、異常が生じている旨のメッセージをディスプレイ15に表示する(ステップS170)。
【0072】
<第1実施形態の効果>
(1-1)接続部品の締結に緩みが生じると、接続部品にがたつきが生じ得る。この状態でトラクタ10が振動すると、接続部品ががたついて対象抵抗Rが増減する。このように、対象抵抗Rの増減は、接続部品の締結に緩みが生じている状況を反映している。したがって、本実施形態のように、対象抵抗Rの増減を指標にすることで、接続部品の締結に緩みが生じたことを、異常として早期に検出できる。
【0073】
(1-2)対象抵抗Rの増減は、何らかの要因で偶発的に生じることもあり得る。つまり、対象抵抗Rの増減は、接続部品の締結の緩み以外の要因によっても生じ得る。したがって、対象抵抗Rの増減が生じたという情報のみでは、その要因まではわからない。
【0074】
回転体21の回転動作に応じてトラクタ10が周期的な振動が生じている状況であれば、接続部品のがたつきに係る動作も周期的に生じる可能性が高い。そして、それに伴って対象抵抗Rも周期的に増減する可能性が高い。したがって、本実施形態のように、回転体21が回転している状況であることを前提に対象抵抗Rの増減を検出すれば、その増減の要因が、接続部品の締結の緩みに起因していることをある程度担保できる。そのため、回転体21が回転している状況であることを前提にしている本実施形態では、接続部品の締結の緩みを正確に検出できる。
【0075】
(1-3)対象抵抗Rが増減を繰り返していることを把握する上では、対象抵抗Rの推移の情報が必要である。そうした情報を得る上で、圃場内での耕耘作業の開始から終了に亘って継続して、対象抵抗Rを経時的に算出し続けることが考えられる。しかし、この場合、制御装置100の処理の負担が大きくなる。この点、本実施形態では、仮診断として、対象抵抗Rを1度算出し、その対象抵抗Rが基準値RKよりも大きい場合にのみ、すなわち接続部品の締結の緩みが疑われる場合にのみ、本診断を行うべく対象抵抗Rを経時的に算出する。このことにより、制御装置100の処理の負担を最小限に抑えることができる。
【0076】
(1-4)本実施形態では、接続部品の締結の緩みに係る異常を検出した場合、その情報をディスプレイ15に表示する。したがって、その情報を乗員に知らせることができる。このことにより、乗員は必要な対処を速やかに行うことができる。
【0077】
(1-5)第1バッテリ77は、複数の電池セル含んでいる。これら複数の電池セルを接続する必要上、第1バッテリ77内には複数のバスバーが存在している。そして、バスバーが複数あれば、その分だけバスバーの締結に緩みが生じる可能性も高くなる。本実施形態では、このような、締結の緩みが生じる可能性が高い機器である第1バッテリ77を検出対象箇所に含んでいる。つまり、本実施形態では、異常が生じ易い機器の状態を重点的に監視し、異常が生じた場合には早期に検出できる。
【0078】
<第2実施形態>
以下、トラクタの第2実施形態を説明する。第2実施形態では、制御装置100における異常検出装置としての機能のみが第1実施形態とは異なる。以下では、これら第1実施形態とは異なる部分を主として説明し、第1実施形態と重複した内容については説明を簡略、又は割愛する。
【0079】
制御装置100は、第1実施形態と同様の劣化診断処理を行う。また、制御装置100は、接続診断処理を行う。接続診断処理は、第1実施形態と同様、接続部品の締結の緩みに起因した電気的導通の異常を検出するための処理である。ただし、本実施形態の接続診断処理では、第1実施形態とは異なる手法で異常を検出する。
【0080】
制御装置100は、接続診断処理の一環として、抵抗値算出処理を実行可能である。車体13の上下方向の加速度の単位時間当たりの変化量を加速度変化量と呼称する。制御装置100は、抵抗値算出処理では、検出加速度Wが増減を繰り返しており、且つ検出加速度Wが増加又は減少する際の加速度変化量の絶対値が規定変化量WK以上である状況下で対象抵抗Rを算出する。この対象抵抗Rを振動時抵抗RSと呼称する。すなわち、振動時抵抗RSは、検出加速度Wが大きな振幅で変動している状況下での対象抵抗Rである。振動時抵抗RSの算出方法は、第1実施形態で説明した算出方法と同じである。
【0081】
制御装置100は、規定変化量WKを予め記憶している。規定変化量WKは、トラクタ10が圃場内で耕耘を行っているときに生じ得る加速度変化量の絶対値の最小値として例えば実験で定めてある。トラクタ10が圃場内で耕耘を行っているときとは、具体的には、回転体21を回転させながらトラクタ10を圃場内で走行させているときである。
【0082】
制御装置100は、接続診断処理の一環として、異常検出処理を実行可能である。制御装置は、異常検出処理では、振動時抵抗RSが判定値RWよりも大きい場合に、接続部品の締結の緩みに起因した電気的導通の異常を検出する。
【0083】
制御装置100は、接続診断処理の一環として、報知処理を実行可能である。報知処理の内容は、第1実施形態で説明した内容と同じである。
本実施形態の接続診断処理における異常の検出原理を説明する。第1実施形態で説明したとおり、接続部品の締結に緩みが生じている場合、トラクタ10に振動が生じると、接続部品ががたついて対象抵抗Rが増減を繰り返す。つまり、
図3の白丸で示すように、接続部品の締結に緩みが生じている状況下において、車体13の上下方向の加速度の変動が大きければ、対象抵抗Rが増減を繰り返すことになる。このことに伴い、
図3の矢印Fで一例として示すように、接続部品の締結に緩みが生じているときには、対象抵抗Rが増加して当該対象抵抗Rが大きくなる状況が生じる。
【0084】
一方、接続部品の締結に緩みが生じていなければ、仮に上下方向の加速度の変動が大きくても、接続部品は端子に接触する状態が継続する。そのため、
図3の黒丸で示すように、対象抵抗Rは小さい状態が継続する。つまり、接続部品の締結に緩みが生じていない状況では、対象抵抗Rが大きくなることは基本的にはあり得ない。
【0085】
上記の背景があることから、検出加速度Wの変動が大きい状況下での対象抵抗Rである振動時抵抗RSが判定値RWよりも大きい場合、対象抵抗Rが増減を繰り返していて、その増減の繰り返しのうちの、対象抵抗Rが大きくなった状況を捉えていると推定できる。そこで、上記異常検出処理では、振動時抵抗RSが大きいときには、対象抵抗Rが増減を繰り返している、すなわち接続部品の締結の緩みに起因した電気的導通の異常が生じていると判断する。
【0086】
対象抵抗Rが増減を繰り返していると判断する基準となる判定値RWについて説明する。接続部品が端子に接触する状態が継続するときの対象抵抗Rを通常時抵抗RZと呼称する。判定値RWは、この通常時抵抗RZよりも相当に大きな値である。具体的には、判定値RWは、1よりも大きい係数Cを通常時抵抗RZに乗算した値である。係数Cは、接続部品が端子に接触する状態が継続するときは取り得ない対象抵抗Rを規定する値として例えば実験で定めてある。つまり、異常検出処理では、通常時抵抗RZに対する対象抵抗Rの乖離が相当に大きいときに異常を検出することになる。なお、制御装置100は、係数Cを予め記憶している。通常時抵抗RZの取り扱いについては、以下のとおりである。
【0087】
通常時抵抗RZは、第1バッテリ77の劣化度合いに応じて変化する。そのため、例えば、通常時抵抗RZの代表値とみなせる一律の値を便宜的に定めてしまうと、判定値RWの精度が低下するおそれがある。そこで、制御装置100は、以下の態様により、ある程度定期的に通常時抵抗RZをアップデートしつつ最新の通常時抵抗RZを保持する。ここで、接続部品の締結に緩みが生じていない場合はもちろん、仮に接続部品の締結に緩みが生じている場合でも、車体13の振動が小さければ、接続部品は端子と接触する状態が継続する。そこで、制御装置100は、車体13の振動が小さい状況下での対象抵抗Rを通常時抵抗RZとして算出する。具体的には、制御装置100は、トラクタ10が圃場外に位置しているときに劣化診断処理を行う場合に当該劣化診断処理の一環として通常時抵抗RZを算出する。トラクタ10が圃場外に位置していることは、第1スイッチ51からオン状態の信号Pを受信していないことで把握できる。トラクタ10が圃場外に位置していれば、停車中であれ走行中であれ、車体13の振動は小さい。そのため、トラクタ10が圃場外に位置している状況下であれば、通常時抵抗RZとして適切な値を得ることができる。上記のとおり、制御装置100は、劣化診断処理では、対象抵抗Rを繰り返し算出する。制御装置100は、劣化診断処理の実行期間中に算出した複数の対象抵抗Rの平均値を通常時抵抗RZとして算出する。制御装置100は、通常時抵抗RZを算出すると、前回算出した通常時抵抗RZを上書きする。したがって、制御装置100は、トラクタ10が圃場外に位置しているときに劣化診断処理を行う度に、通常時抵抗RZをアップデートする。
【0088】
<接続診断処理の具体的な処理手順>
制御装置100は、スタートスイッチ55がオンである状況下において、予め定められた開始条件が成立している場合、接続診断処理を行う。開始条件は、次の要件(B1)~(B3)の全てが満たされていることである。
【0089】
(B1)現在のトリップでの劣化診断処理が完了しており、且つ劣化フラグがオフである。
(B2)異常表示信号Jを出力していない。
【0090】
(B3)第1スイッチからオン状態の信号Pを受信している。
要件(B1)及び(B2)は、第1実施形態で説明した要件(A1)及び(A2)と同じである。要件(B3)は、トラクタ10が圃場内に位置していることを意味する。
【0091】
図6に示すように、制御装置100は、接続診断処理を開始すると、ステップS210の処理を実行する。ステップS210において、制御装置100は、車体13に大きな振動が生じた状態が継続しているか否かを判定する。検出加速度Wが増減を繰り返しており、且つ検出加速度Wが増加又は減少する際の加速度変化量が規定変化量WK以上である状態を振動状態と呼称する。検出加速度Wが増減を繰り返しているとは、検出加速度Wの時間変化において検出加速度Wが増加から減少に転じるピークと、検出加速度Wが減少から増加に転じるピークとが交互に繰り返し表れている状況である。制御装置100は、ステップS210の処理として、上記の振動状態が判定期間H4継続しているか否かを判定する。制御装置100は、判定期間H4を予め記憶している。判定期間H4は、検出加速度Wが大きく変動している状態がある程度安定して続いているとみなせる期間として定めてある。制御装置100は、検出加速度Wの履歴を参照して上記の判定を行う。制御装置100は、振動状態が判定期間H4継続していない場合(ステップS210:NO)、接続診断処理の一連の処理を終了する。接続診断処理を終了した後の処理の流れは、第1実施形態で説明したものと同じである。
【0092】
一方、ステップS210において、制御装置100は、振動状態が判定期間H4継続している場合(ステップS210:YES)、処理をステップS220に進める。
ステップS220において、制御装置100は、振動時抵抗RSを算出する。制御装置100は、第1実施形態のステップS120と同じ処理によって対象抵抗Rを算出する。制御装置100は、算出した対象抵抗Rを振動時抵抗RSとして取り扱う。制御装置100は、振動時抵抗RSを算出すると、処理をステップS230に進める。なお、ステップS220の処理は、抵抗算出処理である。
【0093】
ステップS230において、制御装置100は、振動時抵抗RSが判定値RWよりも大きいか否かを判定する。先ず、制御装置100は、判定値RWを算出する。すなわち、制御装置100は、現在保持している通常時抵抗RZに係数Cを乗算する。制御装置100は、このことによって得られる判定値RWと、ステップS220で算出した振動時抵抗RSとの大小関係を比較する。制御装置100は、振動時抵抗RSが判定値RW以下の場合(ステップS230:NO)、接続診断処理の一連の処理を終了する。
【0094】
一方、ステップS230において、制御装置100は、振動時抵抗RSが判定値RWよりも大きい場合(ステップS230:YES)、処理をステップS240に進める。
ステップS240において、制御装置100は、接続部品の締結の緩みに起因した電気的導通の異常を検出する。この後、制御装置100は、処理をステップS250に進める。なお、ステップS230及びステップS240の処理は、異常検出処理である。
【0095】
ステップS250において、制御装置100は、ディスプレイ15にメッセージの表示を開始させる。ステップS250の処理の内容は、第1実施形態のステップS170の処理の内容と同じである。制御装置100は、ステップS250の処理を実行すると、接続診断処理の一連の処理を終了する。
【0096】
<第2実施形態の作用>
いま、トラクタ10は圃場内を走行しているものとする。そして、作業機械20を動作させて耕耘を行っているものとする。この場合、トラクタ10に大きな振動が生じた状態が継続する(ステップS210:YES)。すると、制御装置100は、振動時抵抗RSを算出する(ステップS220)。この振動時抵抗RSが判定値RWよりも大きい場合(ステップS220:YES)、対象抵抗Rが増減を繰り返していて、その増減の繰り返しのうちの、対象抵抗Rが大きくなった状況を捉えたと推定できる。そこで、この場合には、制御装置100は、接続部品の締結に緩みに起因した電気的導通の異常を検出する(ステップS240)。この後、制御装置100は、異常が生じている旨のメッセージをディスプレイ15に表示する(ステップS250)。
【0097】
<第2実施形態の効果>
第2実施形態によれば、第1実施形態の(1-4)及び(1-5)に加えて以下の効果を得ることができる。
【0098】
(2-1)接続部品の締結に緩みが生じると、接続部品にがたつきが生じ得る。この状態でトラクタ10が振動すると、接続部品ががたついて対象抵抗Rが増減する。そして、対象抵抗Rが増加することに伴って当該対象抵抗Rが大きくなる状況が生じる。したがって、対象抵抗Rが大きくなることは、接続部品の締結の緩みが生じている状況を反映している。本実施形態では、対象抵抗Rが大きくなったことを指標とすることで、接続部品の締結に緩みが生じたことを、異常として早期に検出できる。
【0099】
(2-2)上記構成の手法で異常を検出する場合、対象抵抗Rの時間変化を長期に亘って監視して実際に対象抵抗Rが増減していることを検出しなくても、振動時抵抗RSを1度算出してその振動時抵抗RSが大きければ、異常を検出できる。したがって、異常の検出に時間を要さない。また、繰り返し対象抵抗Rを算出し続ける必要がないため、異常検出装置の処理の負担を抑えることができる。
【0100】
(2-3)通常時抵抗RZは、第1バッテリ77の劣化度合いに応じて変化する。そのため、上記のとおり、例えば、通常時抵抗RZの代表値とみなせる一律の値を便宜的に定めてしまうと、判定値RWの精度が低下するおそれがある。この点、本実施形態では、通常時抵抗RZを定期的に更新している。そのため、判定値RWを適切な値に設定できる。このことにより、異常検出の精度が高くなる。
【0101】
<変更例>
第1実施形態及び第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。第1実施形態、第2実施形態、及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0102】
・第1実施形態に関して、データ取得期間H1は、上記の長さに限定されない。データ取得期間H1は、必要サンプル数を得ることができる時間であればよい。データ取得期間H1は、検出電流91A及び検出電圧92Vを受信する時間間隔に応じて適宜定めればよい。
【0103】
・第1実施形態及び第2実施形態に関して、待機期間H2は、上記の長さに限定されない。待機期間H2は、接続診断処理の実行周期として適切な時間であればよい。例えば、回転体21の回転速度が速いときにはトラクタ10の振動の大きくなり、接続部品の締結の緩みが生じ易くなる可能性がある。そこで、回転体21の回転速度が速いときには遅いときよりも待機期間H2を短くしてもよい。このように、回転体21の回転速度に応じて待機期間H2を可変に設定してもよい。
【0104】
・第1実施形態に関して、データ作成期間H3は、上記の長さに限定されない。データ作成期間H3は、有効サンプル数を得ることができる時間であればよい。データ取得期間H1が短ければ、同じ有効サンプル数を得るのに必要なデータ作成期間H3は短くなる。
【0105】
・第1実施形態に関して、基準値RKは、上記の大きさに限定されない。例えば、基準値RKとして、劣化診断のための閾値とは異なる専用の値を設定してもよい。基準値RKは、接続部品の締結が正常であるときと異常であるときとを切り分けられる値であればよい。
【0106】
・第1実施形態に関して、第1バッテリ77の温度に応じて基準値RKを可変に設定してもよい。例えば、第1バッテリ77の温度が低い場合には、第1バッテリ77の温度が高い場合よりも対象抵抗Rが小さくなりがちである。そこで、第1バッテリ77の温度が低い場合には高い場合よりも基準値RKを小さく設定してもよい。なお、第1バッテリ77の温度に応じて基準値RKを可変に設定する場合には、第1バッテリ77に温度センサを取り付けておけばよい。
【0107】
・第1実施形態のステップS150に関して、対象抵抗Rの変動周波数帯を特定する手法は、上記の手法に限定されない。例えば、対象抵抗Rが減少から増加に転じるピークを利用して周波数帯を特定してもよい。また、対象抵抗Rの時系列データにスペクトル解析を適用してもよい。そして、それによって得られるパワースペクトルに基づいて、対象抵抗Rの変動周波数帯を特定してもよい。対象抵抗Rの変動周波数帯を特定できるのであれば、手法は問わない。
【0108】
・第1実施形態に関して、対象抵抗Rの時系列データを作成し終えてから対象抵抗Rの増減の有無を判定するのではなく、対象抵抗Rを算出するのと並行して対象抵抗Rの増減の判定及び変動周波数帯の特定を行ってもよい。すなわち、ステップS130の処理と並行して、ステップS140及びステップS150の処理を行ってもよい。
【0109】
・第1実施形態に関して、異常検出処理を行う前に仮診断処理を行うことは必須ではない。すなわち、ステップS110及びステップS120の処理を廃止してもよい。そして、接続診断処理を開始したらすぐに対象抵抗Rを経時的に算出して対象抵抗Rの増減の判定及び変動周波数帯の特定を行ってもよい。
【0110】
・第1実施形態に関して、ステップS110及びステップS120を廃止した上で、待機期間H2をおくことなく、ステップS130以降の処理を繰り替えしてもよい。すなわち、開始条件が成立している間、対象抵抗Rを経時的に算出し続けるとともに、その対象抵抗Rの時間変化において対象抵抗Rの増減の判定及び変動周波数帯の特定を行ってもよい。
【0111】
・第1実施形態に関して、開始条件は、上記の内容に限定されない。例えば、要件(A3)に代えて、第1スイッチ51からオン状態を示す信号Pを受信している、という要件を採用してもよい。つまり、トラクタ10が圃場内に位置していることを条件に、接続異常処理を行ってもよい。圃場の地面200には凹凸がある。そのため、回転体21を回転させていなくても、トラクタ10が圃場内を走行すれば、トラクタ10に振動が生じる。したがって、接続部品の締結に緩みが生じている場合には、トラクタ10が圃場内を走行した際にトラクタ10に振動が生じて対象抵抗Rが増減する。この対象抵抗Rの増減を捉えて、異常を検出してもよい。ただし、この場合には、対象抵抗Rがある決まった周波数帯で増減するとは限らない。そこで、上記のように要件(A3)を変更する場合には、対象抵抗Rの変動の周波数帯に拘わらず、対象抵抗Rが基準値RKを挟んで増減を繰り返しているときに、電気的導通の異常を検出してもよい。すなわち、ステップS150の処理を廃止し、ステップS140の判定がYESであればその時点でステップS160に処理を進めてもよい。
【0112】
・上記変更例に記載したように、第1実施形態に関して、電気的導通の異常を検出する上で、対象抵抗Rがある決まった周波数帯で変動していることを条件とするのは必須ではない。
【0113】
・第2実施形態に関して、ステップS210で利用する規定変化量WKの定め方は、上記の定め方に限定されない。回転体21を停止させた状態であっても、トラクタ10が圃場内を走行する場合、圃場の地面200の凹凸に応じて検出加速度Wは大きくなる。そこで、回転体21を停止させている状態で圃場内を走行したときにトラクタ10に生じ得る加速度変化量の絶対値の最小値を規定変化量WKとして定めてもよい。規定変化量WKは、通常の自動車では生じ得ない加速度変化量、すなわち舗装された道路を走行されている場合には生じ得ないような大きな加速度変化量として定めてあればよい。
【0114】
・第2実施形態のステップS210の処理に関して、振動状態が判定期間H4継続しているか否かの判定の仕方は、検出加速度Wを利用したものに限定されない。検出加速度Wを利用した態様に代えて、トラクタ10が圃場内での耕耘中であるか否かを判定してもよい。そして、トラクタ10が圃場内での耕耘中である場合には、振動状態が判定期間H4継続しているとみなしてもよい。トラクタ10が圃場内で耕耘中であることは、例えば、第1スイッチ51からオン状態の信号Pを受信しており、且つ、第1回転速度Smg1及び第2回転速度Smg2の双方がゼロよりも大きいことで判断できる。
【0115】
・上記変更例に関して、トラクタ10が圃場内を耕耘中であることを判断する上で、回転体21の回転速度及びトラクタ10の走行速度に閾値を設けてもよい。つまり、第1スイッチ51からオン状態の信号Pを受信している状況下において、回転体21の回転速度が予め定められた規定回転速度以上であり、且つ、走行速度が予め定められた規定車速以上である場合に、耕耘中であると判断してもよい。回転体21の回転速度は、例えば、第2回転速度Smg2から算出できる。回転体21の回転速度は、例えば、第1レバー53の切り替え位置から把握することもできる。回転体21の回転軸21Aの回転位置を検出する回転センサを作業機械20に取り付け、この回転センサの検出値に基づいて回転体21の回転速度を算出してもよい。トラクタ10の走行速度は、第1回転速度Smg1から算出できる。トラクタ10の走行速度は、例えば第2レバー54の切り替え位置から把握することもできる。トラクタ10の走行速度を検出する車速センサをトラクタ10に取り付け、車速センサの検出値に基づいて走行速度を算出してもよい。
【0116】
・上記変更例に記載したとおり、仮に回転体21を停止させた状態であってもトラクタ10が圃場内を走行すれば、トラクタ10には地面200の凹凸に応じた振動が生じる。そのため、第2実施形態に関して、回転体21が回転しているか否かに拘わらず、トラクタ10が圃場内を走行している場合に、振動状態が判定期間H4継続していると判定してもよい。
【0117】
・第2実施形態に関して、回転体21が回転中であることのみをもって振動状態が判定期間H4継続していると判定してもよい。
・第2実施形態に関して、開始条件は、上記の内容に限定されない。例えば、要件(B3)を、トラクタ10が圃場内で耕耘中であるという内容に変更してもよい。開始条件は、接続診断処理を行う上で適切なものであればよい。
【0118】
・第2実施形態に関して、通常時抵抗RZの算出の仕方は、上記の算出の仕方に限定されない。例えばトラクタ10が舗装された路面を走行中である状況下で繰り返し通常時抵抗RZを更新してもよい。トラクタ10が舗装された路面を走行中であることは、例えば、第1スイッチ51からの信号P、及び第1回転速度Smg1といった情報から判断すればよい。通常時抵抗RZは、接続部品が端子に接触する状態が継続するときの対象抵抗Rであればよい。
【0119】
・第2実施形態に関して、係数Cを一律の値に定めるのではなく、可変に設定してもよい。例えば、第1バッテリ77の温度が低い場合には、第1バッテリ77の温度が高い場合よりも対象抵抗Rが小さくなりがちである。そこで、第1バッテリ77の温度が低い場合には高い場合よりも係数Cを小さく設定してもよい。つまり、判定値RWを第1バッテリ77の温度に応じて可変に設定してもよい。こうした態様を採用する場合には、第1バッテリ77に温度センサを取り付けておけばよい。
【0120】
・第2実施形態に関して、判定値RWを定める上で、通常時抵抗RZの代表値とみなせる一律の値を定めてもよい。そして、係数Cを適宜増減させてもよい。接続部品が端子に接触する状態が継続するときには生じ得ない対象抵抗Rとして判定値RWを定めることができるのであれば、判定値RWの定め方は問わない。
【0121】
・第2実施形態に関して、通常時抵抗RZに係数Cを乗算して判定値RWを定めるのではなく、通常時抵抗RZに係数Cを加算してもよい。この場合、係数Cを適切な値にすればよい。また、係数Cを利用せずに判定値RWを設定してもよい。このように、判定値RWの定め方は、適宜変更可能である。
【0122】
・第2実施形態に関して、判定値RWを一律の値に定めてもよい。開始条件(B1)が設定されていることから、第1バッテリ77の劣化が相当に進んでいる状況下で接続診断処理を行うことはない。そのため、判定値RWをある程度大きい値に定めておけば、異常の誤検知を防げる。
【0123】
・第2実施形態に関して、検出加速度Wの大小に拘わらず対象抵抗Rを算出し、当該対象抵抗Rが判定値RWよりも大きいときに異常を検出してもよい。この場合でも、接続部品の締結の緩みに起因した何らかの異常が疑われる。そのため、こういった態様での異常の検出も有効である。
【0124】
・各実施形態に関して、異常を検出した際の報知の仕方は、上記した報知の仕方に限定されない。例えば、ディスプレイ15にメッセージを表示することに代えて、又は加えて、ディスプレイ15に表示していたメッセージの内容についての音声案内を行ってもよい。この場合、トラクタ10に、音により報知を行う報知装置としてのスピーカを設ければよい。そして、スピーカを制御装置100の制御対象とすればよい。
【0125】
・異常の報知の仕方に関して、例えば、警告灯による報知を行ってもよい。この場合、光による報知を行う報知装置として警告灯を設ければよい。そして、警告灯を制御装置100の制御対象とすればよい。例えば、接続部品の締結の緩みを報知するための専用の色を点灯するようにすれば、接続部品の締結の緩みに係る異常が生じたことを乗員に把握させることができる。警告灯による報知を、メッセージの表示及び音声案内の少なくとも一方と併用してもいし、警告灯のみを利用した報知を行ってもよい。
【0126】
・異常の報知の仕方に関して、例えば、ブザーによる報知を行ってもよい。この場合、上記音声案内の変更例と同様、トラクタ10に報知装置としてのスピーカを設ければよい。接続部品の締結の緩みを報知するための専用の音を鳴らすようにすれば、接続部品の締結の緩みに係る異常が生じたことを乗員に把握させることができる。こうしたブザーによる報知を、メッセージの表示、音声案内、及び警告灯の少なくとも1つと併用してもいし、ブザーのみを利用した報知を行ってもよい。
【0127】
・異常の報知の仕方を変更した場合でも、乗員がリセット用の第3スイッチ56を操作したときに報知を終了すればよい。
・異常の報知を終了するタイミングは、第3スイッチ56が操作されることに限定されない。例えば、予め定めた期間が経過したときに報知を終了してもよい。
【0128】
・スタートスイッチ55がオフにされる前に報知を終了しなかった場合に、次にスタートスイッチ55がオンになったときに報知を再開しなくてもよい。
・異常の報知は必須ではない。異常の報知をしないのであれば、例えば、異常を検出したことを記憶装置に記憶しておけばよい。異常を検出したことを記憶装置に記憶しておけば、定期的な点検時等にトラクタ10を整備工場に持ち込んだときに異常が検出されたことを把握できる。
【0129】
・異常を報知し、且つ、上記変更例のように異常を検出したことを記憶装置に記憶してもよい。
・各実施形態に関して、対象抵抗Rを算出する手法は、上記の手法に限定されない。対象抵抗Rは、検出電流91A及び検出電圧92Vから算出したものであればよい。例えば、検出電流91A及び検出電圧92Vの瞬時値を式(1)に代入して対象抵抗Rを算出してもよい。ベース電圧Bがわかっているのであれば、そうした算出の仕方も可能である。
【0130】
・各実施形態に関して、接続部品の締結の緩みに起因した異常を検出したい対象、すなわち検出対象箇所は上記の箇所に限らない。例えば、検出対象箇所は、第1コンバータ85であってもよい。この場合、対象抵抗Rは第1コンバータ85の電気抵抗である。この対象抵抗Rは、電流センサ91が検出する検出電流91A及び電圧センサ92が検出する検出電圧92Vに基づいて算出できる。
【0131】
・各実施形態に関して、電流センサ91及び電圧センサ92の取り付け位置は上記の位置に限定されない。第1バッテリ77を含む直列回路上に電流センサ91が位置していれば、電流センサ91は、第1バッテリ77に流れる電流を検出することができる。また、電圧センサ92は、接続部品の緩みに起因した異常を検出したい検出対象箇所を挟んだ一対の特定ノード間の電圧を検出できればよい。例えば、第1バッテリ77の内部のバスバーの緩みを検出したい場合、つまり、検出対象箇所を第1バッテリ77のみとする場合、電圧センサ92は、第1バッテリ77の高電位側端子及び低電位側端子に接続されていればよい。この場合、電圧センサ92は、第1バッテリ77の端子間電圧を検出する。
【0132】
・各実施形態に関して、検出対象箇所は、第2バッテリ78を含んでいてもよい。この場合、第2バッテリ78に流れる電流を検出できるように電流センサ91を取り付ければよい。また、第2バッテリ78を挟む一対の特定ノードに電圧センサ92を接続すればよい。これらの電圧センサ92及び電流センサ91の検出値を利用して接続診断処理を行えば、第2バッテリ78に関して、接続部品の締結の緩みに起因した電気的導通の異常を検出できる。第2バッテリ78も、各電動モータに電力を供給し得る。
【0133】
・各実施形態に関して、接続部品の構成は、上記の構成に限定されない。接続部品は、異なる機器の端子同士を接続できる構成であればよい。また、接続部品を固定する手段がボルトであるとは限らず、例えば、溶接を利用していることもあり得る。この場合でも、溶接に亀裂が入ることで、接続部品のがたつきが生じることもある。
【0134】
・各実施形態に関して、操作部50の構成は、上記の構成に限定されない。例えば、スイッチとして構成していたものをレバーにしたり、その逆の変更を行ったりしてもよい。操作部50は、トラクタ10の各種部位を動作させるための乗員からの指示を制御装置100に入力できるものであればよい。
【0135】
・各実施形態に関して、トラクタ10が圃場内に位置しているか否かを把握するための手法は、第1スイッチ51を利用するものに限定されない。例えば、GPSの位置情報と地図情報とを利用してもよい。この場合、トラクタ10にGPS受信器を設け、制御装置100に地図情報を記憶させておけばよい。
【0136】
・各実施形態に関して、制御装置100とは別の処理装置として、異常検出装置を設けてもよい。そして、異常検出装置で接続診断処理を行ってもよい。この場合、接続診断処理を行う上で必要な情報を異常検出装置に送信できるようになっていればよい。上記の必要な情報は、電流センサ91の検出電流91A及び電圧センサ92の検出電圧92Vを含む。
【0137】
・各実施形態に関して、作業機械20の構成を変更してもよい。作業機械20は、PTO25からのトルクによって動作する機械であれば、どのようなものでも構わない。
・各実施形態に関して、トラクタ10の全体構成は上記の構成に限定されない。トラクタ10を、電動モータとエンジンとを駆動源とするハイブリッド車として構成してもよい。
【0138】
・各実施形態に関して、トラクタ10の利用場所、すなわち作業機械20の用途に応じた作業を行う場所は、圃場に限定されない。トラクタ10の利用場所に拘わらず、トラクタ10が振動する状況下であれば、上記の手法を利用して接続部品の締結の緩みに起因した異常を検出できる。
【符号の説明】
【0139】
10…トラクタ
13…車体
15…ディスプレイ
20…作業機械
21…回転体
41…第1電動モータ
42…第2電動モータ
43…第3電動モータ
77…第1バッテリ
78…第2バッテリ
91…電流センサ
92…電圧センサ
100…制御装置