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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】インバータの出力電圧検出装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241126BHJP
   H03M 3/02 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H02M7/48 H
H03M3/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021094923
(22)【出願日】2021-06-07
(65)【公開番号】P2022187100
(43)【公開日】2022-12-19
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】柴▲崎▼ 正貴
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-225210(JP,A)
【文献】特開2015-047021(JP,A)
【文献】特開平6-14560(JP,A)
【文献】特開2015-49104(JP,A)
【文献】特開2016-217732(JP,A)
【文献】特開2013-58894(JP,A)
【文献】特開2005-116587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H03M 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータの出力電圧を検出する装置であって、
インバータの出力電圧を低圧に変換して検出する分圧回路と、
前記インバータの制御部から送られるクロック信号に基づいて動作し、前記分圧回路で検出されたアナログ電圧値をデジタルのビット列に変換するΔΣ変調器と、
前記ΔΣ変調器で変換されたデジタル信号を光通信により前記インバータの制御部に送信する光送信器、前記インバータの制御部から送られるクロック信号を光通信により受信する光受信器、前記光送信器および光受信器と前記インバータの制御部の間を接続する光ケーブルを有した光通信部と、
前記インバータの制御部に設けられ、前記ΔΣ変調器から光通信部を介して送信されたデジタルのビット列を入力とし、インバータのスイッチング周期と同期して、前記デジタルのビット列に含まれるΔΣ変調器の量子化ノイズとスイッチング周波数成分を同時に除去するデシメーションフィルタと、
前記インバータの制御部からΔΣ変調器に送るクロック信号を、前記デシメーションフィルタで使用するクロックに対して同位相とするか反転位相とするかを選択する位相選択部と、
を備えたことを特徴とするインバータの出力電圧検出装置。
【請求項2】
前記位相選択部は、前記ΔΣ変調器から光通信部を介して送信されたデジタルのビット列の立上がり時刻と前記デシメーションフィルタで使用するクロックの立上がり時刻との時間差を測定する時間差測定回路と、前記時間差測定回路で測定された時間差に応じて前記位相の選択を行う位相選択回路と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のインバータの出力電圧検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ、特に高圧インバータの出力電圧の検出手法に関する。
【背景技術】
【0002】
セル多重高圧インバータにおいて、例えば特許文献1に記載のように制御性能向上を目的として出力電圧を検出する場合がある。高電圧であるインバータ出力電圧を検出し、制御装置に入力する手段としては一般に計器用変圧器が用いられる。
【0003】
また、インバータの出力電圧を直流からキャリア周波数までの広い帯域で検出可能な技術として、例えば特許文献2の図2や特許文献3に記載のように、絶縁型A/D変換器を用いる方式が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3892804号公報
【文献】特開2015-049104号公報
【文献】特開2017-225210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方式では、インバータ出力周波数が変圧器の定格周波数を大幅に上回ると、変圧器の特性により電圧検出値の基本波成分の誤差が増大するという問題がある。
【0006】
また、特許文献2、3の方式では電圧検出部の絶縁がプリント基板上で行われるため耐圧が低く、高圧インバータへの適用はされていなかった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、インバータの出力電圧を広い周波数範囲で検出可能にすることで、装置の制御性能および保護機能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載のインバータの出力電圧検出装置は、
インバータの出力電圧を検出する装置であって、
インバータの出力電圧を低圧に変換して検出する分圧回路と、
前記インバータの制御部から送られるクロック信号に基づいて動作し、前記分圧回路で検出されたアナログ電圧値をデジタルのビット列に変換するΔΣ変調器と、
前記ΔΣ変調器で変換されたデジタル信号を光通信により前記インバータの制御部に送信する光送信器、前記インバータの制御部から送られるクロック信号を光通信により受信する光受信器、前記光送信器および光受信器と前記インバータの制御部の間を接続する光ケーブルを有した光通信部と、
前記インバータの制御部に設けられ、前記ΔΣ変調器から光通信部を介して送信されたデジタルのビット列を入力とし、インバータのスイッチング周期と同期して、前記デジタルのビット列に含まれるΔΣ変調器の量子化ノイズとスイッチング周波数成分を同時に除去するデシメーションフィルタと、
前記インバータの制御部からΔΣ変調器に送るクロック信号を、前記デシメーションフィルタで使用するクロックに対して同位相とするか反転位相とするかを選択する位相選択部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載のインバータの出力電圧検出装置は、請求項1において、
前記位相選択部は、前記ΔΣ変調器から光通信部を介して送信されたデジタルのビット列の立上がり時刻と前記デシメーションフィルタで使用するクロックの立上がり時刻との時間差を測定する時間差測定回路と、前記時間差測定回路で測定された時間差に応じて前記位相の選択を行う位相選択回路と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
(1)請求項1、2に記載の発明によれば、直流からキャリア周波数までの広い周波数範囲でインバータの出力電圧値が得られ、且つ従来の絶縁型A/D変換器を用いる手法よりも高耐圧を実現することができる。また、ΔΣ変調器に送るクロック信号の位相を選択することができるので、通信遅延がある場合でも安定した動作が可能になる。
【0011】
(2)請求項2に記載の発明によれば、ΔΣ変調器に送るクロック信号の位相を、通信遅延の量に応じて適切な位相のクロックに自動で選択することができ、調整の手間が省ける。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1による出力電圧検出装置の構成図。
図2】本発明の実施例1で用いるデシメーションフィルタの構成図。
図3図2のデシメーションフィルタの時間応答の説明図。
図4】本発明の実施例2に搭載するクロック位相選択回路の回路図。
図5図4のクロック位相選択回路のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
図1に実施例1のハードウェア構成を示す。図1において1は、負荷としてのモータ(三相モータM)2を駆動するインバータである。このインバータ1は、例えばセル多重高圧インバータで構成され、図示省略の制御部で作成されるPWM信号により、インバータの主回路を構成する半導体素子がスイッチング制御され、三相出力電圧Vu,Vv,Vwをモータ2に印加する。インバータ1内の制御部には後述するデシメーションフィルタが設けられている。
【0015】
インバータ1およびモータ2を結ぶ三相電路と接地間には、抵抗3a~3iを備えた分圧回路3が接続されている。分圧回路3の、抵抗3a~3cはインバータ1のU相出力電圧Vuを低圧に変換して検出し、抵抗3d~3fはインバータ1のV相出力電圧Vvを低圧に変換して検出し、抵抗3g~3iはインバータ1のW相出力電圧Vwを低圧に変換して検出する。
【0016】
分圧回路3により検出された電圧は電圧検出回路4内の作動増幅器11u,11v,11wを介してΔΣ変調器(1bit-ADC)12u,12v,12wに入力される。
【0017】
ΔΣ変調器12u,12v,12wは、インバータ1内の制御部から光ケーブル13cを介して送られ、光受信器14(光RX)により受信されたクロック信号CLKに基づいて、作動増幅器11u,11v,11wの出力である三相各相のアナログ電圧値をデジタル値(ビット列)に変換する。
【0018】
ΔΣ変調器12u,12v,12wにより変換されたデジタル信号は光送信器15u,15v,15w(光TX)および光ケーブル13u,13v,13wを介してインバータ1内の制御部に送信される。
【0019】
前記光ケーブル13c,13u,13v,13w、光受信器14、光送信器15u,15v,15wによって光通信部を構成している。
【0020】
図1のように、電圧検出回路4では、インバータ1から送られるクロック信号CLKに基づいてΔΣ変調器12u,12v,12wを動作させ、それぞれの相電圧をデジタル値(ビット列)に変換してインバータ1の制御部に送信する。
【0021】
電圧検出回路4とインバータ1の通信を光ケーブル13c,13u,13v,13wで行うことで、回路間の絶縁を先行技術よりも高耐圧で実現した。インバータ1側に実装されるデシメーションフィルタと共通のクロックを使用するため、インバータ1から電圧検出回路4にクロック信号CLKを送る必要がある。
【0022】
図2に実施例1のインバータ側で使用するデシメーションフィルタの構成を示す。このフィルタはsincフィルタと呼ばれるものであり、ΔΣ変調器(1bit-ADC)12u,12v,12wと共通のクロック周波数(FADC)で動作する積算器20と、インバータの等価スイッチング周波数(FPWM)の2倍で動作する微分器30を縦続接続した構成となっている。
【0023】
積算器20は、図1の光送信器15u,15v,15wおよび光ケーブル13u,13v,13wを介して送られてくるΔΣ変調器12u,12v,12wのビット列に、遅延部21で遅延された前回値を加算器22において加算する。
【0024】
微分器30は、積算器20の出力を遅延部31、32で遅延させた値を、減算器33において積算器20の出力から差し引く。微分器30の出力(Output To CPU)は制御部のCPU回路(図示省略)へ入力され、CPU回路はこの入力値に基づいてインバータ1の制御を行う。
【0025】
積算器20、微分器30の構成によって、ΔΣ変調器12u,12v,12wから送られてくるビット列を等価スイッチング周期の区間で合計した値(移動平均×区間幅)を等価スイッチング周期の半周期ごとに取得できる。このフィルタにより、ビット列が持つ量子化ノイズとインバータ1のスイッチング成分を同時に除去する。
【0026】
ΔΣ変調器12u,12v,12wとインバータ1間の光通信の遅延により、送られてくるビット列の位相がデシメーションフィルタのクロックに対して大きく遅れる場合がある。その結果ΔΣ変調器12u,12v,12wから送られてくるビット列のエッジとクロックの立ち上がりが重なると、積算器20が正常に動作しなくなり電圧検出が不可能になる。
【0027】
この問題への対策として、本実施例1では、インバータ1から図1の電圧検出回路4のΔΣ変調器12u,12v,12wに送るクロック(Clock To ADC)を、積算器20に入るクロック(FADC)と同位相とするか又は180度遅れとするかを選択できるようにした。
【0028】
すなわち、一方の入力端に入力した、同位相又は180度遅れを選択するSelect信号と、他方の入力端に入力した、デシメーションフィルタで使用するクロック信号FADC(ΔΣ変調器と共通のクロック周波数)との排他的論理和をとるXORゲート(exclusive OR)40を設け、XORゲート40の出力を、図1のΔΣ変調器12u,12v,12wへ送るクロック(Clock To ADC)としている。XORゲート40は本発明の位相選択部を構成している。
【0029】
図2の構成によって、Select信号が0の時は同位相、1の時は180度遅れのクロックが図1のΔΣ変調器12u,12v,12wに送られる。インバータ1-電圧検出回路4間の通信遅延の量に応じて適切な位相のクロックを選択することで、遅延がある場合でも安定した動作が可能になる。高圧インバータではユニット故障時以外で配線を繋ぎ変えることはなく、遅延の大きさは一定になるため、Select信号の値は製品出荷時に手動で調整すればよい。
【0030】
図3に、インバータ1の相電圧指令(L1)、相電圧出力(L2)、相電圧検出(L3)(上記図2のフィルタ出力理論値の電圧換算)を時間軸上で重ねた波形を示す。V_dcはセル多重高圧インバータにおけるセル1段分の直流電圧である。図3よりわかるように、相電圧検出値(L3)にはスイッチング成分が含まれておらず、位相は相電圧指令値(L1)に対してスイッチング半周期分遅れる。
【0031】
以上のように実施例1によれば、変圧器等を介さずに高圧インバータの出力電圧を検出するため、直流からキャリア周波数までの広い周波数範囲で出力電圧値を得ることができる。また、光ケーブルにより絶縁を行うため、従来の絶縁型A/D変換器を用いる手法よりも高耐圧を実現できる。また、デシメーションフィルタの動作をインバータのスイッチング周期と同期させることで検出値からスイッチング周波数成分を除去できる。また、ΔΣ変調器(A/D変換器)に送るクロックの位相を選択できるため、通信の遅延が大きい場合でも安定して動作できる。
【実施例2】
【0032】
実施例1では手動で調整(設定)したSelect信号によってクロック位相を選択していたが、本実施例2ではクロック位相を自動で選択するように構成した。
【0033】
図4に実施例2における位相選択部を構成するクロック位相選択回路を示す。図4のクロック位相選択回路は、ΔΣ変調器12u,12v,12wから送られてくるビット列信号(DATA)のエッジ(立上がり時刻)とデシメーションフィルタで使用するクロックCLKの立上がり時刻との時間差を測定する要素(時間差測定回路)と、その大きさに応じてクロック位相選択信号(SELECT)を切り替える要素(位相選択回路)とを有する。
【0034】
図4において、51は図2のデシメーションフィルタで使用するクロックCLK(FADC)の立上がりを検出するエッジ検出器であり、52は図1のΔΣ変調器12u,12v,12wから送られてくるビット列信号DATAの立上がりを検出してその立上がりエッジに対応したパルス(2)を得るエッジ検出器である。
【0035】
エッジ検出器51の出力と前記クロックCLKの論理積がANDゲート53によってとられ、その出力側にCLKの立上がりエッジに対応したパルス(1)が得られる。
【0036】
前記得られたパルス(1)と(2)をSRラッチ回路55に入力することで、前記CLKおよびDATAのエッジ同士の時間差に比例した幅のパルス(3)を得るものであるが、SRラッチ回路55の両入力がともに1になることは禁止であるため、入力端子「R」が1のときは「S」が常に0となる回路(54)を挿入しておく。
【0037】
すなわち、反転入力端子付きANDゲート54の反転入力端子にパルス(1)を、非反転入力端子にパルス(2)を各々入力し、反転入力端子付きANDゲート54の出力をSRラッチ回路55のセット端子Sに入力している。前記エッジ検出器51~SRラッチ回路55によって、本発明の時間差測定回路を構成している。
【0038】
SRラッチ回路55のQ出力に得られるパルス(3)を積分器56によって積分することで、エッジ間の時間差(3)を電圧に換算した信号(4)が得られる。
【0039】
このエッジ間の時間差を電圧に換算した信号(4)はコンパレータ57において、クロック周期の半分から積算器のホールド時間Thを引いて設定された基準値(0.5clk-Th)と比較される。
【0040】
前記クロックCLKの立上がり時点でコンパレータ57の比較出力信号(5)が0の場合、デシメーションフィルタに送られてくるビット列信号DATAとクロックCLKの立上りが重なっているので、電圧検出回路4のΔΣ変調器12u,12v,12wに送るクロックの位相を、以降の回路によって現在選択中のものから180度ずらす。ただし、インバータ運転中などの望ましくないタイミングで位相が切り替わるのを防ぐため、HOLD信号が1のときは選択する位相を固定するように構成した。
【0041】
すなわち、例えばインバータ運転中などの望ましくないタイミングのとき1となるHOLD信号をNORゲート(否定論理和回路)58の一方の入力端に入力し、コンパレータ57の比較出力信号(5)をNORゲート58の他方の入力端に入力し、クロックCLKをD型フリップフロップ59のクロック端子に入力し、NORゲート58の出力をD型フリップフロップ59のD入力端子に入力することにより、HOLD信号が0、かつ位相反転条件が成立する(コンパレータ57の出力が0となる)とD型フリップフロップ59のQ出力信号(6)が1になる。
【0042】
そして、前記出力信号(6)が1になったとき1クロックだけ1になる信号(7)を、次の回路で得る。すなわち、D入力端に前記信号(6)を入力し、クロック端子に前記クロックCLKを入力したD型フリップフロップ60と、非反転入力端に前記出力信号(6)を入力し、反転入力端にD型フリップフロップ60のQ出力を入力した反転入力端子付きANDゲート61とを設け、反転入力端子付きANDゲート61の出力端側に前記信号(7)を得る。
【0043】
前記信号(6)が1になったとき1クロックだけ1になる信号(7)は、クロック端子に前記クロックCLKが入力されるT型フリップフロップ62のT入力端子に入力される。
【0044】
これによって、位相反転条件の成立により信号(7)が1になることによりT型フリップフロップ62のQ出力であるSELECT信号が切り替り、クロック位相の選択動作が完了する。
【0045】
SELECT信号が切り替わった時点でΔΣ変調器12u,12v,12wに送るクロックは180度遅れになるため、ΔΣ変調器12u,12v,12wからのビット列信号DATAのエッジも180度後ろにずれる。よって、以降は位相反転条件が不成立となりD型フリップフロップ59のQ出力信号(6)は0になる。
【0046】
実施例2の位相選択回路(図4)はΔΣ変調器12u,12v,12wから送られてくる信号の品質が悪くジッタが大きい場合に適切な位相を選択できない可能性があり、この場合は実施例1のように手動調整するのが望ましい。
【0047】
次に、図4の回路における各部の波形を示したタイミングチャートを図5とともに説明する。図5において図4と同一部分は同一符号をもって示している。尚図中のCLKはデシメーションフィルタで使用しているクロック(FADC)であり、(CLK_ADC)は、インバータ1の制御部からΔΣ変調器12u,12v,12wへ送るクロックである。
【0048】
図5において、クロックCLKが立上がる例えば時刻t1において、エッジ検出器51、ANDゲート53によってCLKの立上がりエッジに対応したパルス(1)が発生する。
【0049】
エッジ検出器52の出力パルス(2)が立上がる例えば時刻t2からクロックCLKを検出したパルス(1)の立上がり時刻t3の間、エッジ同士の時間差に比例した幅のパルス(3)が発生する。
【0050】
この時刻t2、t3では、HOLD信号が1のため、D型フリップフロップ59のQ出力信号(6)、反転入力端子付きANDゲート61の出力(7)はともに0であり、SELECT信号は切り替らず、クロックCLKとクロック(CLK_ADC)は同位相である。
【0051】
本実施例では、例えば時刻t4でHOLD信号が0に切り替わる。時刻t4からクロックCLK1個分が経過した時刻t5において、HOLD信号が0、コンパレータ57の比較出力信号(5)が0、D型フリップフロップ59のクロック端子に入るクロックCLKが1となるため、D型フリップフロップ59のQ出力信号(6)が1となり、これによりT型フリップフロップ62のT入力端子の信号(7)も1となる。
【0052】
時刻t5からクロックCLK1個分が経過した時刻t6において、T型フリップフロップ62のT入力端子の信号(7)が0になってQ出力のSELECT信号が1に切り替わる。
【0053】
これによって、時刻t6以降、ΔΣ変調器12u,12v,12wに送るクロック(CLK_ADC)はクロックCLKに対して180度遅れとなり、ΔΣ変調器12u,12v,12wからのビット列信号DATAのエッジも時刻t7以降180度後にずれる。
【0054】
時刻t7後に積分器56の出力信号(4)がコンパレータ57の基準値(0.5clk-Th)を超える時刻t8においてコンパレータ57の出力信号(5)は1となり、次にD型フリップフロップ59に入力されるクロックCLKが立上がる時刻t9において、D型フリップフロップ59のQ出力信号(6)は0となる。
【0055】
時刻t9後の、前記出力信号(4)がコンパレータ57の基準値以下となる時刻t10において、コンパレータ57の出力信号(5)は0となる。
【0056】
本実施例では、例えば時刻t11においてHOLD信号を1に切り替えている。
【0057】
以上のように本実施例2によれば、実施例1の効果に加えて、ΔΣ変調器12u,12v,12wに送るクロック信号の位相を、通信遅延の量に応じて適切な位相のクロックに自動で選択することができ、調整の手間が省ける。
【符号の説明】
【0058】
1…インバータ
2…モータ
3…分圧回路
4…電圧検出回路
11u,11v,11w…差動増幅器
12u,12v,12w…ΔΣ変調器
13c,13u,13v,13w…光ケーブル
14…光受信器
15u,15v,15w…光送信器
20…積算器
21,31,32…遅延部
22…加算器
30…微分器
33…減算器
40…XORゲート
51,52…エッジ検出器
53…ANDゲート
54,61…反転入力端子付きANDゲート
55…SRラッチ回路
56…積分器
57…コンパレータ
58…NORゲート
59,60…D型フリップフロップ
62…T型フリップフロップ
図1
図2
図3
図4
図5