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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20241126BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20241126BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20241126BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241126BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241126BHJP
   H01M 10/627 20140101ALI20241126BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20241126BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20241126BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20241126BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241126BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60L58/26
B60L1/00 L
B60L3/00 S
H01M10/613
H01M10/627
H01M10/633
H01M10/6569
H01M10/651
H01M10/48 301
H01M10/44 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021110520
(22)【出願日】2021-07-02
(65)【公開番号】P2023007581
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 優
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-352866(JP,A)
【文献】特開2006-123807(JP,A)
【文献】特開2014-235897(JP,A)
【文献】特開2018-034744(JP,A)
【文献】特開2021-040378(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0129620(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0129006(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
B60L 58/26
B60L 1/00
B60L 3/00
H01M 10/42 - 10/48
H01M 10/52 - 10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室を冷房する空調装置の冷媒を電池の冷却のために使用する車両において、前記空調装置及び前記電池を制御する車両用制御装置であって、
前記空調装置が所定負荷以上で駆動しているか否かを判定する空調負荷判定部と、
前記電池における電力の入出力の少なくとも一方を制御する電池入出力制御部と、
を備え、
前記空調装置が前記所定負荷以上で駆動している場合に、前記電池の冷却を実施せずに、前記電力の入出力の少なくとも一方を制限し、
前記電力の入出力の少なくとも一方の制御は、
前記電池への入力を禁止する制御、前記電池へ入力する直流電力を所定以下の直流電力とする制御、前記電池の温度が高くなるにしたがって前記電池へ入力可能な直流電力の最大値を連続的又は段階的に減少させる制御、又は、前記電池の温度が所定温度までは、前記電池の温度が高くなるにしたがって前記電池へ入力可能な直流電力の最大値を連続的又は段階的に減少させるようにする一方、前記電池の温度が前記所定温度以上になると、前記電池への入力を禁止する制御を含む、車両用制御装置。
【請求項2】
記空調装置が前記所定負荷以上で駆動している場合に、前記電池の冷却を実施せずに、前記電力の入出力の方を制限し、
前記電力の入出力の両方の制限では、前記電池の温度が所定温度までは、前記電池の温度が高くなるにしたがって前記電池へ入力可能な直流電力の最大値を連続的又は段階的に減少させるようにする一方、前記電池の温度が前記所定温度以上になると、前記電池への入力を禁止する制御と、前記電池の温度が高くなるにしたがって連続的又は段階的に前記電池が出力する直流電力の最大値を減少させる制御とが、行われる、請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記車両の外気温を検出する外気温検出部と、
前記外気温が所定温度未満であるか否かを判定する外気温判定部と、を備え、
前記外気温が前記所定温度未満である場合には、前記電力の入出力を制限しない、請求項1又は2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記電池の温度を検出する電池温度検出部と、
前記電池の温度が所定温度未満であるか否かを判定する電池温度判定部と、を備え、
前記電池の温度が前記所定温度未満である場合には、前記電力の入出力を制限しない、請求項1から3のいずれか1つに記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記空調装置が前記所定負荷以上で駆動している場合に、前記電池への電力の供給のみを制限し、前記電池からの電力の出力を制限しない、請求項1からのいずれか1つに記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置と電池を制御する車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用制御装置としては、特許文献1に記載されているものがある。この車両用制御装置は、空調が高負荷状態となったときに、電池の出力の上限値を増大させる。この結果、空調の高負荷状態でアクセルペダルが大きく踏み込まれたときにも、電池から駆動モータに大きな電力が供給可能と成る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-40378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記車両用制御装置の制御では、空調が高負荷状態となっている際に電池温度が高くなって、電池劣化が生じる虞があるが、このような電池温度上昇による電池劣化は、空調で電池の冷却を行う車両においても起こり得る。
【0005】
詳しくは、空調で電池の冷却を行う車両において、空調が高負荷状態となっているときに電池冷却を一定時間禁止する制御を行うと、空調の冷房性能を車室の冷房に優先的に使用できるので、車室の冷房性能が低下しにくくなり乗員の快適性を確保し易い。しかし、外気温が高い地域、例えば、中東等でそのような制御を行うと、電池温度が過度に高くなって電池劣化が生じる虞があるため、電池冷却を禁止できない場合がある。よって、電池冷却をする分、車室の冷房性能が低下して、乗員の快適性が低下する場合がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、空調で電池の冷却を行う車両において、空調が高負荷状態となっているときに、冷房性能の低下を抑制でき、電池温度の上昇による電池劣化も抑制できる車両用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る車両用制御装置は、車室を冷房する空調装置の冷媒を電池の冷却のために使用する車両において、前記空調装置及び前記電池を制御する車両用制御装置であって、前記空調装置が所定負荷以上で駆動しているか否かを判定する空調負荷判定部と、前記電池における電力の入出力の少なくとも一方を制御する電池入出力制御部と、を備え、前記空調装置が前記所定負荷以上で駆動している場合に、前記電池の冷却を実施せずに、前記電力の入出力の少なくとも一方を制限する。
【0008】
本発明によれば、空調装置が所定負荷以上で駆動している場合に、電池の冷却を実施しない。したがって、空調装置が所定負荷以上で駆動している場合に、電池の冷却に用いていた空調装置の冷却性能を車室の冷房に用いることができ、乗員の快適性を確保し易い。
【0009】
また、空調装置が所定負荷以上で駆動している場合に、電池における電力の入出力の少なくとも一方を制限するので、電池の発熱を抑制でき、電池温度の上昇による電池劣化を抑制できる。
【0010】
また、本発明の車両用制御装置において、前記車両の外気温を検出する外気温検出部と、前記外気温が所定温度未満であるか否かを判定する外気温判定部と、を備え、前記外気温が前記所定温度未満である場合には、前記電力の入出力を制限しなくてもよい。
【0011】
本構成によれば、電池温度が上がりにくい外気温が所定温度未満である状況で電池に対する電力の入出力を制限しない。したがって、電池における電力の入出力を過度に制限することを抑制でき、その制限に起因する走行性能の低下等を抑制できる。
【0012】
また、本発明の車両用制御装置において、前記電池の温度を検出する電池温度検出部と、前記電池の温度が所定温度未満であるか否かを判定する電池温度判定部と、を備え、前記電池の温度が前記所定温度未満であると共に前記空調装置が前記所定負荷以上で駆動している場合には、前記電力の入出力を制限しなくてもよい。
【0013】
本構成によれば、電池の温度を考慮して電池における電力の入出力を制限できるのでその入出力を過度に制限することを抑制できる。
【0014】
また、本発明の車両用制御装置において、前記空調装置が前記所定負荷以上で駆動している場合に、前記電池への電力の供給のみを制限し、前記電池からの電力の出力を制限しなくてもよい。
【0015】
本構成によれば、電池への電力の入力のみを制限することで、電池の出力制限による走行性能の低下を防ぎつつ、電池温度の上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係る車両用制御装置によれば、空調で電池の冷却を行う車両において、空調が高負荷状態となっているときに、冷房性能の低下を抑制でき、電池温度の上昇による電池劣化も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の一実施形態に係る車両の概略構成図である。
図2】空調装置の構成を説明する図である。
図3】車両用制御装置の制御ブロック図である。
図4】車両用制御装置の制御の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、本開示の一実施形態に係る車両10の概略構成図である。車両10は、モータジェネレータ15が生成する動力で走行する電気自動車(BEV(Battery Electric Vehicle))であるが、エンジン及びモータジェネレータが生成する動力で走行するハイブリッド車(HEV(Hybrid Electric Vehicle))でもよく、又はプラグインハイブリッド車(PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle))でもよい。図1に示すように、車両10は、モータジェネレータ15と、モータジェネレータ15にインバータ17を介して電気的に接続された電池11と、車室12内の空気を調和すると共に電池11を冷却する空調装置20と、空調装置20を制御すると共に電池11における電力の入出力を制御する車両用制御装置50とを備える。
【0020】
モータジェネレータ15は、例えば、三相交流モータで構成され、電池11は、二次電池、例えば、リチウムイオン電池等で構成される。電池11が出力した直流電力は、インバータ17で交流電力に変換された後、モータジェネレータ15に供給される。また、逆に、モータジェネレータ15が回生動作で交流電力を生成した際には、その交流電力をインバータ17で直流電力に変換した後、電池11に充電する。
【0021】
図2は、空調装置20の構成を説明する図である。図2に示すように、空調装置20は、車室12内を空気調和する空気通路21と、車室12に供給する空気を加熱する加熱回路22と、車室12に供給する空気を冷却すると共に電池11を冷却する冷却回路30とを有する。
【0022】
空調装置20は、空気通路21において車室12に向かう空気流を発生させる送風機23と、車室12内の空気(内気)の導入と車両10の外部の空気(外気)の導入を切替える内外気切替ドア24と、冷却回路30に接続されると共に冷媒を蒸発させることによって空気通路21を通過する空気を冷却するエバポレータ34と、加熱回路22の一部を構成すると共に加熱空気通路27を通過する空気を加熱するヒータコア25と、加熱空気通路27を開閉するエアミックスドア26とを有する。
【0023】
加熱空気通路27は、空気通路21内に設けられる。また、ヒータコア25は、加熱空気通路27に設置され、加熱空気通路27を流動する空気を加熱する。加熱回路22は、ヒータコア25の他に、加熱回路22を循環する水を加熱するヒータ28と、加熱回路22の水を循環させるポンプ29とを有する。加熱回路22は、ヒータ28によって加熱された水を熱源として循環させることでヒータコア25を加熱し、加熱したヒータコア25で加熱空気通路27を通過する空気を加熱する回路である。
【0024】
冷却回路30は、蒸気圧縮冷凍サイクルによって冷媒を循環させて、空気冷却回路31及び電池冷却回路41に冷媒を供給して車室12内の空気及び電池11を冷却する回路である。冷却回路30は、空気冷却回路31又は電池冷却回路41の一方のみに冷媒を供給して一方のみを冷却することができる。冷却回路30は、空気冷却回路31と、電池冷却回路41との他に、冷媒を圧縮する圧縮機32と、圧縮機32から吐出された高温高圧の冷媒を凝縮する凝縮器33とを含む。
【0025】
空気冷却回路31は、空調装置20の冷房要求に応じて車室12内の空気を冷却する回路である。空気冷却回路31は、空気通路21の内部に設けられるエバポレータ34と、エバポレータ34の上流側に設けられると共に空気冷却回路31を開閉する空気冷却電磁弁35と、エバポレータ34の上流側に設けられると共にエバポレータ34に供給する冷媒循環量を調整する空気冷却膨張弁36とを含む。
【0026】
電池冷却回路41は、電池11を冷却する回路である。電池冷却回路41は、電池11に近接して設けられる電池熱交換器42と、電池熱交換器42の上流側に設けられると共に電池冷却回路41を開閉する電池冷却電磁弁43と、電池熱交換器42の上流側に設けられると共に電池熱交換器42に供給する冷媒循環量を調整する電池冷却膨張弁44とを含む。電池冷却回路41は、冷媒を用いて電池熱交換器42で熱交換を行うことで電池11を冷却する。
【0027】
次に、図2乃至図4を用いて、車両用制御装置50について説明する。図3は、車両用制御装置50の制御ブロック図であり、図4は、車両用制御装置50の制御の一例を説明するフローチャートである。図3に示すように、車両用制御装置50は、電子制御ユニット(Electronic Control Unit)61と、電池11の温度を検出する電池温度センサ52と、エバポレータ34を通過後の冷却空気温度を検出する冷却空気温度センサ53と、車室12の設定温度を変更可能な操作部70と、車室12の温度を検出する内気温度センサ71と、外気温度を検出する外気温度センサ72と、日射センサ73とを有する。
【0028】
電子制御ユニット61は、コンピュータ、例えば、マイクロコンピュータによって構成され、制御部62と、記憶部63を含む。制御部62、すなわち、プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。また、記憶部63は、ハードディスクドライブ(HDD)や、半導体メモリ等で構成され、半導体メモリは、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリや、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリで構成される。記憶部63は、一つのみの記憶媒体で構成されてもよく、複数の異なる記憶媒体で構成されてもよい。不揮発性メモリは、制御プログラムや所定の閾値等を予め記憶する。また、揮発性メモリは、読み出した制御プログラムや閾値や処理データ等を一時的に記憶する。また、CPUは、例えば、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。
【0029】
電子制御ユニット61は、上述の各種センサ52,53,71,72,73から受信した信号と操作部70から受信した信号とに基づいて、インバータ17、送風機23、内外気切替ドア24、エアミックスドア26、ヒータ28、ポンプ29、圧縮機32、空気冷却電磁弁35、空気冷却膨張弁36、電池冷却電磁弁43、及び電池冷却膨張弁44を制御する。
【0030】
具体的には、制御部62は、空調負荷判定部62a、外気温判定部62b、電池温度判定部62c、電池入出力制御部62d、及び空調制御部62eを有する。空調制御部62eは、電池温度センサ52によって検出された電池温度と、冷却空気温度センサ53によって検出されたエバポレータ34を通過後の冷却空気温度と、操作部70にて設定された車室12の設定温度と、内気温度センサ71によって検出された車室12の内気温度と、外気温度センサ72によって検出された車両10外の外気温度と、日射センサ73によって検出された日射量とを取得する。
【0031】
空調制御部62eは、空調装置が所定負荷以内で駆動している場合は、通常制御を行って、車室温度が上記設定温度となると共に電池温度が所定温度以下になるように、送風機23の出力、内外気切替ドア24の開度、エアミックスドア26の開度、ヒータ28の出力、ポンプ29の出力、圧縮機32の回転数、空気冷却電磁弁35の開閉、空気冷却膨張弁36の開度、電池冷却電磁弁43の開閉、及び電池冷却膨張弁44の開度を制御する。
【0032】
上記通常制御を行う際、電池11の電池温度が所定温度より大きくなっている場合には、空調制御部62eは、電池冷却電磁弁43を開とすると共に、電池冷却膨張弁44の開度を調整することで、電池冷却回路41の冷媒循環量を調整して、電池温度が所定温度以下となるように電池11を冷却する。
【0033】
<空調装置が所定負荷以上で駆動している場合>
制御部62は、空調装置20が所定負荷以上で駆動している場合、通常制御を行わずに、次の制御を優先的に行う。詳しくは、空調負荷判定部62aは、空調装置20が所定負荷以上で駆動しているか否かを判定する。例えば、空調負荷判定部62aは、空調制御部62eが圧縮機32に出力している圧縮機32の回転数情報に基づいて圧縮機32の回転数が所定回転数以上になっているか否かを判定することで、空調装置20が所定負荷以上で駆動しているか否かを判定する。
【0034】
そして、空調制御部62eは、空調装置20が所定負荷以上で駆動している場合に、電池11の温度が如何なる温度であっても、電池冷却電磁弁43を閉として、電池11の冷却を停止する。また、電池入出力制御部62dは、空調装置20が所定負荷以上で駆動している場合に、インバータ17を制御することで、電池11の入出力の少なくとも一方を制限する。
【0035】
ここで、電池11への入力(電力供給)を制限する場合、その制限は、例えば、電池11への入力の禁止でもよく、又は電池11へ入力する直流電力を所定以下の直流電力とすることで実現してもよい。又は、電池11への入力制限は、電池温度に基づいて変動するようにしてもよく、例えば、電池温度が高くなるにしたがって電池11へ入力可能な直流電力の最大値を連続的又は段階的に減少させるようにしてもよい。
【0036】
又は、電池11への入力制限は、電池温度が所定温度までは、電池温度が高くなるにしたがって電池11へ入力可能な直流電力の最大値を連続的又は段階的に減少させるようにする一方、電池温度が所定温度以上になると、電池11への入力を禁止するようにしてもよい。空調装置20が所定負荷以上で駆動している場合における電池11への入力制限は、上述の通常制御との比較において、電池11への入力を制限するものであればよい。例えば、上記通常制御で、電池11へ入力可能な直流電力の閾値(最大値)が設定されている場合には、空調装置20が所定負荷以上で駆動している場合における電池11への電力供給の制限は、通常制御での閾値よりも閾値を下げることで実現してもよい。
【0037】
また、電池11からの電力の出力を制限する場合、その制限は、電池11が出力する直流電力を所定以下の直流電力とすることで実現してもよい。又は、電池11からの出力制限は、電池温度に基づいて変動するようにしてもよく、例えば、電池温度が高くなるにしたがって連続的又は段階的に電池11が出力する直流電力の最大値を減少させるようにしてもよい。空調装置20が所定負荷以上で駆動している場合における電池11からの出力制限は、上述の通常制御との比較において、電池11からの出力を制限するものであればよい。
【0038】
<空調装置が所定負荷以上で駆動し、更に、外気温が所定温度未満である条件と電池温度が所定温度未満である条件のうちの少なくとも一方が成立する場合>
図4は、車両用制御装置50が行う空調制御と電池制御の一例について説明するフローチャートである。図4を参照して、車両10のパワースイッチがオンに操作されて、モータジェネレータ15が始動すると、制御がスタートして、ステップS11で、空調負荷判定部62aが、空調負荷が所定以上であるか否かを判定する。ステップS11で否定判定されると、ステップS12に移行して、上述の通常制御を行い、その後、制御がリターンとなって、ステップS11以下が繰り返される。
【0039】
他方、ステップS11で肯定判定されると、ステップS13で、電池冷却電磁弁43を閉として、電池11の冷却を停止し、ステップS14で、外気温判定部62bが、外気温度センサ72からの情報に基づいて外気温が所定温度未満であるか否かを判定する。ステップS14で、肯定判定されると、ステップS15で、電池温度判定部62cが、電池温度センサ52からの情報に基づいて電池温度が所定温度未満であるか否かを判定する。ステップS15でも肯定判定されると、制御がリターンとなって、ステップS11以下が繰り返される。
【0040】
一方、ステップS14で、否定判定されるか、ステップS15で否定判定されると、ステップS16で、電池11からの電力の出力は制限しない一方、電池11への電力供給を制限する。ステップS16が終了すると、制御がリターンとなって、ステップS11以下が繰り返される。本制御は、車両10のパワースイッチがオフに操作されると終了する。
【0041】
以上、車両用制御装置50によれば、空調装置20が所定負荷以上で駆動している場合に、電池11の冷却を実施しない。したがって、空調装置20が所定負荷以上で駆動している場合に、電池11の冷却に用いていた空調装置20の冷却性能を車室12の冷房に用いることができ、乗員の快適性を確保し易い。
【0042】
また、外気温が所定温度以上であると共に空調装置20が所定負荷以上で駆動している場合に、電池11への電力の供給を制限するので、電池温度が上がり易い外気温が高い場合に、電池11の発熱を抑制でき、電池温度の上昇を抑制できる。また、電池11の温度が所定温度以上であると共に空調装置20が所定負荷以上で駆動している場合に、電池11への電力の供給を制限するので、この場合においても電池温度の上昇を抑制できる。
【0043】
また、電池温度が上がりにくい外気温が所定温度未満であって電池温度が所定温度未満である場合に、電池11に対する電力の入出力を制限しないので、電池11における電力の入出力を過度に制限することを抑制でき、その制限に起因する走行性能の低下等を抑制できる。
【0044】
更には、電池11の発熱を抑制する際、電池11への電力の供給のみを制限し、電池11からの電力の出力を制限しないので、電池11の出力制限による走行性能の低下を防ぎつつ、電池温度の上昇を抑制することができる。
【0045】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、電池11の発熱を抑制する場合に、電池11への電力の供給のみを制限し、電池11からの電力の出力を制限しなかった。しかし、電池11の発熱を抑制する場合に、上述の通常制御との比較において、電池11への電力の供給と電池11からの電力の出力の両方を制限してもよく、又は、電池11への電力の供給を制限しない一方、電池11からの電力の出力を制限してもよい。
【0047】
また、空調負荷が所定負荷以上になっている条件に加えて、外気温度が所定以上であること、及び電池温度が所定温度以上であることの少なくとも一方が成立した場合に、電池11の入出力の少なくとも一方を制限する場合について説明した。
【0048】
しかし、空調負荷が所定負荷以上になっている条件に加えて、外気温度が所定以上である場合のみに、電池の入出力の少なくとも一方を制限してもよく、電池温度の情報を電池の入出力制限に用いなくてもよい。又は、空調負荷が所定負荷以上になっている条件に加えて、電池温度が所定以上である場合のみに、電池の入出力の少なくとも一方を制限してもよく、外気温度の情報を電池の入出力制限に用いなくてもよい。又は、空調負荷が所定負荷以上になっている条件が成立しているときには、他の条件に無関係に電池の入出力の少なくとも一方を制限してもよい。
【0049】
また、圧縮機32の回転数に基づいて空調負荷が所定負荷以上になっているか否かを判定する場合について説明した。しかし、圧縮機32の回転数>所定回転数[rpm]、エバポレータ温度>所定温度[℃]、車室温度>所定温度[℃]、ブロワ出力>所定出力[%]、日射量>所定日射量[W/m]、外気温>所定温度[℃]、及びエアミックス開度<所定開度[%]のうちの1以上の条件が成立している場合に、空調負荷が所定負荷以上になっていることを判定してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 車両、 11 電池、 12 車室、 15 モータジェネレータ、 17 インバータ、 20 空調装置、 21 空気通路、 22 加熱回路、 23 送風機、
24 内外気切替ドア、 25 ヒータコア、 26 エアミックスドア、 27 加熱空気通路、 28 ヒータ、 29 ポンプ、 30 冷却回路、 31 空気冷却回路、 32 圧縮機、 33 凝縮器、 34 エバポレータ、 35 空気冷却電磁弁、 36 空気冷却膨張弁、 41 電池冷却回路、 42 電池熱交換器、 43 電池冷却電磁弁、 44 電池冷却膨張弁、 50 車両用制御装置、 52 電池温度センサ、 53 冷却空気温度センサ、 61 電子制御ユニット、 62 制御部、 62a 空調負荷判定部、 62b 外気温判定部、 62c 電池温度判定部、 62d 電池入出力制御部、 62e 空調制御部、 63 記憶部、 70 操作部、 71 内気温度センサ、 72 外気温度センサ、 73 日射センサ。
図1
図2
図3
図4